(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-18
(45)【発行日】2022-03-01
(54)【発明の名称】抗原アレイ
(51)【国際特許分類】
G01N 33/543 20060101AFI20220221BHJP
G01N 33/53 20060101ALI20220221BHJP
G01N 37/00 20060101ALI20220221BHJP
【FI】
G01N33/543 501D
G01N33/53 N
G01N33/53 Q
G01N33/53 D
G01N37/00 102
(21)【出願番号】P 2018551824
(86)(22)【出願日】2017-03-30
(86)【国際出願番号】 EP2017057481
(87)【国際公開番号】W WO2017167843
(87)【国際公開日】2017-10-05
【審査請求日】2020-03-05
(32)【優先日】2016-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】518342250
【氏名又は名称】マクロアレイ・ダイアグノスティックス・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100120112
【氏名又は名称】中西 基晴
(72)【発明者】
【氏名】ハルヴァネック,クリスティアン
(72)【発明者】
【氏名】ミッテラー,ゲオルク
【審査官】草川 貴史
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2008/0176253(US,A1)
【文献】国際公開第02/029415(WO,A1)
【文献】特開2005-077284(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/48-33/98
G01N 35/00-37/00
G01N 1/00- 1/44
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固形担体に固着させた抗原コーティングビーズの異なる群を含む抗原アレイであって、各群が、
(i)1つの検出抗原でコーティングされた異なる型のビーズ、または
(ii)一組の検出抗原でコーティングされた異なる型のビーズ、を含み、
前記固形担体がシートまたはプレートであり、前記検出抗原がアレルゲン、感染症マーカーまたは自己抗原であり、前記検出抗原または一組の検出抗原が異なる結合化学で前記異なる群のビーズに結合されている、前記抗原アレイ。
【請求項2】
前記検出抗原が、核酸および/またはアミノ酸で製造された生体分子、または有機もしくは無機化合物である、請求項1に記載の抗原アレイ。
【請求項3】
前記生体分子が、タンパク質、ペプチド、抗体またはDNA分子で製造されたものである、請求項2に記載の抗原アレイ。
【請求項4】
前記検出抗原が、組換えDNA技術によって作製された抗原、または生物材料から単離され精製された抗原である、請求項1~3のいずれか一項に記載の抗原アレイ。
【請求項5】
検出抗原の前記組が、2つ以上の抗原を含有する生物学的供給源材料からの抽出物または溶解物から得られる、請求項1~4のいずれか一項に記載の抗原アレイ。
【請求項6】
前記ビーズが、マイクロまたはナノビーズである、請求項1~5のいずれか一項に記載の抗原アレイ。
【請求項7】
前記ビーズが、直径5~500nmのサイズを有する、請求項6に記載の抗原アレイ。
【請求項8】
前記ビーズが、直径200~500nmのサイズを有する、請求項6に記載の抗原アレイ。
【請求項9】
前記ビーズが、ラテックスビーズ、ポリマープラスチックビーズ、生体適合性ポリマーで製造されたビーズまたはガラスビーズである、請求項1~8のいずれか一項に記載の抗原アレイ。
【請求項10】
前記ポリマープラスチックビーズがポリスチレンビーズであり、前記ガラスビーズが二酸化ケイ素ビーズである、請求項9に記載の抗原アレイ。
【請求項11】
前記検出抗原が、共有結合的または非共有結合的に結合される、請求項1~10のいずれか一項に記載の抗原アレイ。
【請求項12】
前記検出抗原が、受動的吸着により結合される、請求項1~10のいずれか一項に記載の抗原アレイ。
【請求項13】
前記固形担体が、多孔性または無孔性材料のシートまたはプレートである、請求項1~12のいずれか一項に記載の抗原アレイ。
【請求項14】
前記固形担体が、ニトロセルロースシート、または積層ニトロセルロースシートである、請求項1~12のいずれか一項に記載の抗原アレイ。
【請求項15】
前記抗原アレイが、少なくとも25個の異なる群を含み、各群が、四角形の抗原アレイまたはオレンジパックト抗原アレイのアドレス可能なエレメントとして、任意選択で1mm
2当たり1個のアドレス可能なエレメントの密度で固着されている、請求項1~14のいずれか一項に記載の抗原アレイ。
【請求項16】
前記抗原コーティングビーズが、アレルゲンコーティングビーズであって、アレルゲンコーティングビーズの各群が、
(i)1つのアレルゲンでコーティングされた異なる型のビーズ、または
(ii)一組のアレルゲン、またはアレルゲン抽出物でコーティングされた異なる型のビーズ、を含み、前記アレルゲンまたは一組のアレルゲンが異なる結合化学で前記異なる群のビーズに結合されている、請求項1~15のいずれか一項に記載の抗原アレイ。
【請求項17】
検出抗原または一組の検出抗原に特異的な免疫グロブリンを検出する方法であって、
(i)請求項1~16のいずれか一項に記載の抗原アレイを準備する工程、
(ii)前記抗原アレイをサンプルとインキュベートする工程、
(iii)前記抗原アレイを検出試薬とインキュベートする工程、
(iv)任意選択で前記抗原アレイをシグナル生成試薬とインキュベートする工程、および、
(v)検出可能なシグナルを測定する工程、
を含む、前記方法。
【請求項18】
前記免疫グロブリンが、アレルギーと関連するIgE抗体または感染症もしくは自己免疫性疾患と関連するIgG抗体である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記サンプルが、対象または対象のプール由来の生体液である、請求項17または18に記載の方法。
【請求項20】
前記サンプルが、血清、全血もしくは処理血、鼻汁もしくは尿、細胞溶解物または組織ホモジネートである、請求項17または18に記載の方法。
【請求項21】
前記検出試薬が、前記免疫グロブリンに特異的な親和性結合剤である、請求項17~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記検出試薬が、抗体、アプタマーまたはアフィボディである、請求項17~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記検出試薬が、(i)着色もしくは蛍光化合物で、または金ナノ粒子もしくは着色したラテックスナノ粒子で直接標識されているか;または(ii)酵素にコンジュゲートされている、請求項21または22に記載の方法。
【請求項24】
前記抗原アレイを請求項
17の工程(iv)に記載のシグナル生成試薬とインキュベートする工程をさらに含み、前記検出試薬が、酵素にコンジュゲートされており、前記シグナル生成試薬が、前記酵素用の基質を含む、請求項17~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
請求項17の工程(iv)の後に前記抗原アレイを停止溶液とインキュベートする工程をさらに含む、請求項17~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記免疫グロブリンが、アレルギーと関連するIgE抗体であって、
(i)請求項16に記載の抗原アレイを準備する工程と、
(ii)前記抗原アレイをサンプルとインキュベートする工程と、
(iii)前記抗原アレイを検出試薬とインキュベートする工程と、
(iv)任意選択で前記抗原アレイをシグナル生成試薬とインキュベートする工程と、
(v)検出可能なシグナルを測定する工程と
を含む、請求項17~25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
工程(iii)の検出試薬がIgE特異的抗体またはIgE特異的アプタマーである、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
請求項1~16のいずれか一項に記載の抗原アレイのための試験容器、廃水のための貯蔵槽、および任意選択でバーコードを含むカートリッジ。
【請求項29】
請求項1~16のいずれか一項に記載の抗原アレイ、検出試薬、1つまたは複数の緩衝液、および1つまたは複数の対照サンプルを含むキットであって、請求項1~18のいずれか一項に記載の方法において前記キットを使用するための説明書を含み、任意選択でシグナル生成試薬を含む、前記キット。
【請求項30】
請求項28に記載の1つまたは複数のカートリッジのための容器、ピペッターおよびシグナル検出のためのデバイスを含む装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗原アレイ、および生体サンプル中の、アレイの抗原のいずれか1つに特異的な免疫グロブリンを検出する方法に関する。特に、本発明は、固体支持体に固着させた抗原コーティングビーズの群を含む抗原アレイに関する。抗原アレイを含むカートリッジ、キットおよび装置ならびにそれを使用する方法が、本明細書にさらに包含される。
【背景技術】
【0002】
アレルギー、および気管支喘息などの密接に関連する疾患は、工業国人口の1/4に影響を及ぼしている。WHOは、アレルギーを21世紀の主要な健康問題と指定している。現在のところ、1型アレルギーは、工業国人口のほぼ1/3に影響を及ぼしている。しばしば無害であるが、アレルギーの発生率および重症度は、社会に対する直接および間接的コストとして増加している。理論的には、アレルギー診断は、単純な作業であり、そのことが診断産業および保健医療提供者への挑戦をなお示している。著しいパーセンテージの患者が、適切な診断および処置を受けていない。その結果が、生活の質の低下、回避可能な死、および一般により高い疾患管理コストである。個々の患者に対する処置を最適化するには、診断は、アレルゲン供給源(例えば花粉、動物、食物)の同定で留まることはできず、分子感作プロファイルへとより深く進歩しなければならない。疾患を惹起する単一のアレルゲン分子は、アレルゲン供給源間の交差反応性、リスク分類(重篤な反応または軽度の形態)、症状の型(くしゃみ、喘息など)、治療の選択;および疾患の進行に対する予後に関与するので、正しく同定されなければならない。診断分解能の増大に対するこの必要性は、日常的に試験すべき数多くのパラメータの乗数を生じさせ、すなわち、償還制度、または日常的なアレルギー診断器械の現在の技術的能力のいずれとも適合しない。
【0003】
特定の生物学的または非生物学的抗原標的に対する特異的抗体産生の形態での特異的免疫反応の検出はしたがって、1型アレルギーだけでなく自己免疫性疾患および感染性疾患など他の免疫学的状態の診断に対しても鍵となる。
【0004】
これらのエリア全てにおいて、根本的な状態は、疾患マーカーとして作用し得る抗原、または自己免疫性疾患の場合のように状態もしくは予後予測の代替マーカーとしての役割を果たす抗原を惹起する種々の疾患に起因し得る。
【0005】
一般に用語抗原は、免疫系にそれに対する抗体応答を産生させ得、抗体が、適当なin vivo条件下でその抗原に結合した際に生物学的反応を場合によっては誘発し得る物質のことを指す。
【0006】
理論的には、第1の工程において綿密な既往歴を行うことにより、in vitro試験の第2の工程の試験パラメータの数を、相当に少ない数に狭めることが可能になる。数多くの実用的制限のため、しかしながら、これは必ずしも容易に実現できるとは限らず、いくつかの疾患について多パラメータ診断試験の適用を魅力的なものにする。特に同一の抗体クラス(例えばIgE、IgG、IgA)が多数の抗原に対する免疫反応に関与する場合にこれは有効であり、そのため複数抗原に基づく抗体応答モニタリングは、個々の患者に対するより良い健康管理を容易にすることができる。抗原プロファイルもしくはパターンを同定するためのバイオインフォマティクスまたは予測アルゴリズムを使用することにより、診断および処置選択を非常に容易にすることができ、内科医は、処置および処置のモニタリングにおいて患者により合わせた手法を提供することが可能になる。
【0007】
抗原特異的免疫グロブリン検出のin vitro試験は、主にELISA原理に基づき、ELISAでは、抗原が、固相上に固定化され、サンプルとともに次いでインキュベートされ、非結合サンプルおよび非特異的抗体を洗い流した後に、特異的に結合している抗体が、二次抗体または当業技術者に公知の検出可能なシグナル(色、光子等)を生成するある種の親和性結合剤によって検出される。
【0008】
この文脈において固定化するとは、固相、例えばプラスチック表面もしくは抗原を保持するのに適切な物理化学的特質を持つ他の任意の固形担体に化学的結合または他の非共有結合性結合方法のいずれかによって抗原を結合することを指す。
【0009】
試験形式は、固定化およびアッセイ手順両方の間で各抗原と同一のまたは少なくとも類似の条件を適用することしか通常できないが、多パラメータ免疫学的in vitro試験を開発した場合、一般的な複雑さは、抗原の不均一な性質である。結果的に、これは、試験に含める抗原の数と熟練した専門家に公知の規模による試験の技術的成績との妥協をもたらす。
【0010】
該当する抗原の圧倒的多数は、食物、植物、細菌もしくはウイルスなどの生物学的供給源由来のタンパク質、または自己免疫の場合、ヒト生物自体によって産生されるタンパク質のいずれかである。例えば遺伝的試験におけるDNAと比較して、タンパク質は、非常に用途が広いが、極度に不均一でもあり(荷電、構造、安定性、表面特質等)、取扱いおよび試験製造の間に各タンパク質の物理化学的特質を提供することが必要なだけではない。さらに重要なことに、例えば、実際のエピトープならびに抗体結合部位を生じさせる生体分子の2次および3次構造を無傷に保つことにより生物活性を保存することが、必要である。さもなければ、臨床的に関連する感受性および特異性による機能的アッセイを、達成することができない。
【0011】
アレルギー、感染または自己免疫性疾患に関連するいくつかの抗原は、遊離または可溶性タンパク質ではなく、溶液中に留まらせるには比較的厳しい化学溶媒を必要とし、このことが、in vitro試験の製造過程における従来通りのタンパク質結合または取扱いを手間のかかるものにしている。これらの例は、ナッツもしくは種の貯蔵タンパク質、または細胞膜内もしくはそれらを局所的に産生する組織中に存在する細胞性抗原である。
【0012】
アレルギーのin vitro診断分野における、さらなる複雑さは、疾患惹起抗原を含有する生物学的供給源が、供給源間だけでなく内でも非常に不均一であるということである。一般に、いわゆるアレルゲン抽出物は、in vivoおよびin vitro診断の両方に使用される。アレルゲン抽出物は、食物、動物、植物、植物花粉等のような、それぞれの供給源由来のタンパク質内容物の水性の抜粋である。アレルゲン抽出物において、アレルギー性ならびに非アレルギー性構成要素の混合物を標準化することの複雑さおよび困難さが、患者表皮に示され、または特異的IgE抗体を含有し得る患者血液サンプルに対して試験される。
【0013】
タンパク質、脂質、炭水化物および他の化合物のこの複雑な混合物の中から、各アレルゲン供給源中の比較的少数のタンパク質またはタンパク質ファミリーだけが、免疫系に抗体応答を産生させ得るように実際にアレルギー性であることは公知である。
【0014】
無関係な材料で圧倒的多数において実際に関連する抗原のこの画分は、固体支持体材料の結合能力に対して高い要求を出し、一般に、アレルギー性画分をさらに濃縮し、非アレルギー性材料を除去せずに、ELISAプレートなど単純な無地の表面上でアレルギー診断の高感度かつ特異的なIgEアッセイを作ることはできない。
【0015】
過去30年にわたって、アレルギー診断に関連するいわゆる分子抗原が多数同定され、天然の供給源から精製されるかまたは組換えDNA技術によって作製されてきた。分子抗原の使用は、分子交差反応性のより良い理解および予測に対する標準化から、患者および適応可能な処置のリスク分類まで多くの利点を有する。しかしながら、あらゆる日常的試験に対する大きな短所は、第1に、試験のためのパラメータ選択において内科医にいっそう多くの専門知識を要求することである。第2に、商業的市場の99%より多くを今なお占める単一パラメータ試験の従来通りの手段で試験する場合、患者当たり著しくより高いコストを生じさせる。さらに、患者から採取すべき血液の量は、実行される従来通りの各単一パラメータ試験とともに、一般に1パラメータ当たり50~100マイクロリットルの範囲で直線的に上昇する。
【0016】
結果的に、多パラメータ(多重化とも呼ばれる)アッセイシステムは、いくつかのグループによって開発され、公開されてきており、従来通りの小型化されたマイクロタイタープレート(MTP)に基づくELISAシステムから様々な実装形態の懸濁ビーズアレイまたはマイクロアレイまで様々な基礎技術を利用している。
【0017】
例えば、WO2004/104586A1は、反応性表面を持つバイオチップに結合されている捕捉試薬(例えば、プロテインA、プロテインGまたは免疫グロブリンに特異的に結合する抗体)に対するそのような抗体の結合に基づいてアレルゲン特異的抗体を検出する方法およびデバイスについて記述している。結合しているアレルゲン特異的抗体は、そのそれぞれのアレルゲンと次いで接触され、そのアレルゲンは、標識されたアレルゲン特異的抗体によって検出される。
【0018】
米国特許出願公開第2005/079592A1号は、その表面に固着させた、タンパク質などの生体物質を含むビーズが、固相基部の特定の位置に射出される多重化ビーズアッセイを製造するデバイスについて開示する。
【0019】
サンプル中の複数の分析物の分析のアッセイについて、米国特許第6268222B1号にさらに記述されている。アッセイは、表面により小さい蛍光標識ポリマー粒子またはナノ粒子を複数有する中核もしくは担体粒子に基づく。
【0020】
米国特許出願公開第2002/0015666A1号は、大量貯蔵配列から選択した多数の試薬を保存し、分注するシステムおよび過程を提供し、Taiら(Analytical Biochemistry、第391巻、2号、2009年8月、98~105頁)は、多重化免疫アッセイ用の微小流体カートリッジおよびシステムについて記述している。
【0021】
懸濁ビーズアレイは、少ない容積に高度な多重化を理論的に有し得るが、実用的な適用は、一般に20個未満のパラメータに限定される。血清または血漿などの生物学的マトリックスの内因的変動性は、試験のために溶血性、脂肪血症または黄疸性サンプル(sampes)がしばしば届く場合、日常的な研究室全てにおいて使用を困難にする。なおさらに、IgE検出のような感度を要求する適用において、結合能力は、高純度抗原とだけ働き、例えば、アレルゲン粗抽出物とは働かないことも可能にする。さらに、器械は、FACS(蛍光活性化細胞選別)またはいくつかのレーザー流路および共焦点レーザー走査精度を必要とする他の高価な技術に基づく。
【0022】
スライドガラス上またはマイクロタイタープレート内における従来通りのマイクロアレイは、各患者サンプルの必要に応じてオンデマンドで試薬を混合する柔軟性および各パラメータを抜本的に最適化する可能性を犠牲にすることによって、懸濁ビーズの制限のいくつかを克服することができる。現実に、タンパク質抗原の結合に平らで均一な活性表面を使用しなければならないことは、最高の成績を達成するには著しい阻害要因である。さらに、製造が高価であるだけでなく、再現可能な方法で分注または沈着させる必要があるピコリットル量のため、非常に複雑である。現在市場にある技術提供者を含め、1年に数百万個の高品質診断マイクロアレイを作製する真の高スループット可能な器械は存在しない。バッチサイズは一般に小さく(数百個またはより少ない)、変動係数(CV)は、最先端の自動化された免疫分析器と比較して高い。懸濁ビーズ技術と類似して、マイクロアレイは、主に蛍光または発光読み出しにより作動し、この点でも高価な器械を必要とする。小型化されたアッセイ形式のため、自動化は容易ではなく、精巧な機器および/または微小流体設計を必要とし、このことは、日常的な研究室サンプルで再び問題になり得る。
【0023】
ラテラルフロー型試験など他の多パラメータ試験には、パラメータ当たり比較的低コストであるという利点があるが、感度、再現性を欠くことに悩まされ、ほとんど自動化されておらず、試験ストリップ当たり5~20個より多いパラメータを有することができない。
【0024】
したがって臨床化学市場のこの部門において、全ての必要性、特に:試験当たりの低コスト、高度の多重化(>200個)、再現性および優れた技術的成績特性(CV、感度、特異性、測定範囲、定量化等)に役立ち得る利用可能な技術は、現在のところ存在しない。
【0025】
したがって、再現性が著しく改善され、多くのパラメータを含む可能性をなお持続する優れた技術的成績特性を持つ抗原アレイを提供し、コスト効率が非常に高い試験を作製することが、本発明の目的である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0026】
目的は、請求された主題によって特に解決される。
【課題を解決するための手段】
【0027】
分子研究と多重免疫アッセイ技術における進歩を本明細書において組み合わせて、in vitro試験のためのワンストップショップ産物、すなわち、固体支持体に固定された、抗原コーティングビーズの群を含む抗原アレイを形成する。この新規のアレイ形式およびそれを作製し、使用する方法が、単一パラメータアッセイの最先端の方法の利点に基づいて、主に、各個々の抗原の結合を最適化するが、代替方法と比較して、特に試験当たりのコスト、製造の拡張性、またはパラメータ当たりの血清必要量に関する著しい妥協を導入しないという著しい多重化の可能性を含む技術的アッセイ成績に基づいて開発された。マイクロアレイ試験などの小型化された形式は、費用効率が高く、さらに高成績の試験形式に不適であり、したがって、以下で詳細に記述される抗原アレイは、各抗原結合ビーズ集団の別々の実体を形成する固定化されたナノまたはマイクロ粒子であるが、従来通りのマイクロアレイより著しく大きな規模からなるin vitroマクロアレイ試験と見なされ得る。
【0028】
この新規の技術は、固相へのアレルゲンなど任意の抗原(例えば検出抗原)の個別に最適化された結合を可能にし、それによって高感度で、さらに強力なアッセイ設計を可能にし、コスト効果と個々の試験パラメータ成績との妥協を排除する。本明細書に提供される抗原アレイおよび方法は、全般的な感度を改善するが、特に、第1に粒子へ、第2に固相または多孔性3次元構造の固相へという2段階結合手法が、アッセイインキュベーション工程の間に抗体が結合し得る表面を提示する抗原の多重増幅を生じさせる限りにおいて、不均一な供給源材料とともに働く際の感度を改善する。最新技術の自動化およびソフトウェアソリューションが、試薬を補う。
【0029】
アッセイの堅牢性、感度および特異性ならびにその簡単な使用と組み合わせた知的に設計された抗原パネルの使用は、より良い、結果の臨床解釈および交差反応性の予測、したがって有効な処置方法の選択を提供する。
【0030】
したがって、本明細書に開示されるアレイおよび方法は、アレルギー診断および感染性または自己免疫性疾患など特異的かつ信頼性が高い抗体検出に基づく他の免疫学的状態の日常業務を変化させる潜在性を有する初めての試験を提供する。特にアレルギー診断に関して、現在のin vitro試験は、診断過程の第2または第3工程として行われているが、本明細書に記載の包括的、高解像度さらに高感度のスクリーニング試験は、既往歴確認、皮膚試験または誘因試験によって追跡調査されるだけの第1レベルのツールになり得る。利益は、全価値連鎖に適用することになるが、最も重要なことには免疫学的状態に悩まされる患者に適用することになる。
【0031】
一態様において、固形担体に固着させた抗原コーティングビーズの群を含む抗原アレイであって、各群は、
(i)1つの検出抗原でコーティングされたビーズ、または
(ii)一組の検出抗原でコーティングされたビーズ
を含み、好ましくは、固形担体がシートまたはプレートであり、検出抗原が、アレルゲン、感染症マーカーまたは自己抗原である、抗原アレイが本明細書に提供される。
【0032】
一部の実施形態において、検出抗原は、核酸および/またはアミノ酸、好ましくはタンパク質、ペプチド、抗体またはDNA分子で製造された、生体分子または有機もしくは無機化合物である。
【0033】
一部の実施形態において、検出抗原は、アレルゲンである。
一部の実施形態において、検出抗原は、感染症マーカーである。
一部の実施形態において、検出抗原は、自己抗原である。
【0034】
一部の実施形態において、検出抗原は、組換えDNA技術によって作製された抗原、または生物材料から単離され精製された抗原である。
一部の実施形態において、ビーズが、一組の検出抗原でコーティングされている場合に、検出抗原の前記組は、2つ以上の抗原を含有する生物学的供給源材料からの抽出物もしくは溶解物から得られ、またはそのような抽出物もしくは溶解物の精製画分または細胞培養由来材料の精製画分から得られる。
【0035】
一部の実施形態において、検出抗原は、単一エピトープ、抗体結合エピトープをいくつか含む単一高分子または種々のエピトープを含有する異なる抗原を含む様々なタンパク質の混合物を含む。
【0036】
一部の実施形態において、ビーズはマイクロまたはナノビーズである。特に、ビーズは、直径5~500nm、好ましくは直径200~500nmのサイズを有する。
一部の実施形態において、ビーズは、ラテックスビーズ、ポリマープラスチックビーズ、好ましくはポリスチレンビーズ、生体適合性ポリマーで製造されたビーズまたはガラスビーズ、好ましくは二酸化ケイ素ビーズである。特に、ビーズの表面は、多孔性または無孔性である。
【0037】
一部の実施形態において、検出抗原は、ビーズに共有結合的または非共有結合的に結合される。特に、検出抗原は、ビーズに受動的吸着によって、好ましくは疎水性および/または静電性結合によって非共有結合的に結合される。
【0038】
一部の実施形態において、検出抗原は、抗原スペーサーによって結合される。特に、検出抗原は、結合される抗原に存在するエピトープを提示するのに好ましい方向を生じさせるように結合される。
【0039】
一部の実施形態において、固形担体は、多孔性または無孔性材料のシートまたはプレート、好ましくはニトロセルロースシート、より好ましくは積層ニトロセルロースシートである。
【0040】
一部の実施形態において、アレイは、少なくとも25個の異なる群を含む。特に、アレイ内または1群内のビーズは、同一または異なる型を有する。一部の実施形態において、抗原コーティングビーズの群は、接触法または非接触法を使用して、好ましくはソレノイド分注システムを使用して固形担体上に固着される。特に、各群は、四角形のアレイまたはオレンジパックトアレイ(orange-packed array)のアドレス可能なエレメントとして、好ましくは1mm2当たり1個のアドレス可能なエレメントの密度で固着されている。
【0041】
一部の実施形態において、本明細書に記述される抗原アレイのビーズは、同一または異なる型である。特に、ビーズの異なる群のビーズは、同一の型であり得(例えば、抗原アレイのビーズの全群は、直径200~500nmのポリスチレンビーズを含む)、またはビーズの異なる群のビーズは、異なる型であり得る(例えば、群1はポリスチレンビーズを含み、群2はガラスビーズを含む)。また、1群内のビーズは、同一または異なる型を有し得る。
【0042】
一態様において、固形担体に固着させたアレルゲンコーティングビーズの群を含むアレルゲンアレイが、本明細書に提供され、各群は、
(i)1つのアレルゲンでコーティングされたビーズ、または
(ii)一組のアレルゲン、好ましくはアレルゲン抽出物でコーティングされたビーズを含み、好ましくは、固形担体は、シートまたはプレートである。
【0043】
さらなる態様において、検出抗原または一組の検出抗原に特異的な免疫グロブリンを検出する方法が本明細書に提供され、好ましくは検出抗原または検出抗原の組が、アレルゲン、感染症マーカーまたは自己抗原であり、本方法は、
(i)本明細書に記述される抗原アレイのいずれか1つによる抗原アレイを準備する工程と、
(ii)アレイをサンプルとインキュベートする工程と、
(iii)アレイを検出試薬とインキュベートする工程と、
(iv)任意選択でアレイをシグナル生成試薬とインキュベートする工程と、
(v)検出可能なシグナルを測定する工程と
を含む。
【0044】
一部の実施形態において、免疫グロブリンは、アレルギーと関連するIgE抗体である。
一部の実施形態において、免疫グロブリンは、感染症または自己免疫性疾患と関連するIgG抗体である。
【0045】
アレルギーと関連するIgE抗体を検出する方法であって、
(i)本明細書に記載のアレルゲンアレイを準備する工程と、
(ii)アレイをサンプルとインキュベートする工程と、
(iii)アレイを検出試薬、好ましくはIgE特異的抗体またはIgE特異的アプタマーとインキュベートする工程と、
(iv)任意選択でアレイをシグナル生成試薬とインキュベートする工程と、
(v)検出可能なシグナルを測定する工程と
を含む方法が、本明細書にさらに提供される。
【0046】
一部の実施形態において、サンプルは、対象または対象のプール由来の生体液、好ましくは血清、全血もしくは処理血、鼻汁もしくは尿、細胞溶解物または組織ホモジネートである。
【0047】
一部の実施形態において、検出試薬は、免疫グロブリンに特異的な親和性結合剤であり、好ましくは抗体(例えば抗IgEもしくは抗IgG抗体)、アプタマー(例えばIgE特異的アプタマーもしくはIgG特異的アプタマー)またはアフィボディである。特に、検出試薬は、(i)好ましくは着色もしくは蛍光化合物で、または金ナノ粒子もしくは着色したラテックスナノ粒子で直接標識されているか;または(ii)酵素にコンジュゲートされている(例えば、直接検出可能な標識を持つまたは酵素にコンジュゲートされた抗IgEもしくは抗IgG抗体)。
【0048】
一部の実施形態において、本方法は、アレイを本明細書に記述される方法の工程(iv)によるシグナル生成試薬とインキュベートする工程をさらに含み、検出試薬は、酵素にコンジュゲートされており、シグナル生成試薬は、前記酵素用の基質を含む。
【0049】
一部の実施形態において、本方法は、本明細書に記述される方法の工程(iv)の後に本明細書に記述される抗原アレイを停止溶液とインキュベートする工程をさらに含み、すなわちシグナル生成試薬と抗原アレイをインキュベートした後に停止溶液を添加してシグナル生成を終了させる。
【0050】
本明細書に提供される別の態様は、本明細書に記述される抗原アレイのいずれかのための試験容器、廃水のための貯蔵槽、任意選択でバーコードを含むカートリッジである。カートリッジは、任意の検出試薬のいずれか1つまたは複数、シグナル生成試薬、停止溶液、1つまたは複数の緩衝液および1つまたは複数の対照サンプルのための貯蔵槽または組み込まれたバイアルをさらに含むことができる。
【0051】
さらに、本明細書に記載のいずれかの抗原アレイ、検出試薬、1つまたは複数の緩衝液、1つまたは複数の対照サンプル、本明細書に記述される方法のいずれかにおいてキットを使用するための説明書、および任意選択でシグナル生成試薬を含むキットが、本明細書に提供される。キットは、停止溶液をさらに含むことができる。
【0052】
別の態様において、本明細書に記載の1つまたは複数のカートリッジのための容器、ピペッターおよびシグナル検出のためのデバイスを含む装置が、本明細書に提供される。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【
図1A】アレルギー個体由来ヒト血清プールによって標準アッセイを実行し、フラットベッドスキャナーで画像をスキャンした後の245個のアレルゲン特異的IgE測定および濃度を増大させた5個のIgE標準(右上隅)のB/W表示を示す図である。元の画像は、16ビットグレイスケールTIFF形式であった。
【
図1B】陰性対照由来ヒト血清プールによって標準アッセイを実行し、フラットベッドスキャナーで画像をスキャンした後の245個のアレルゲン特異的IgE測定および濃度を増加させた5個のIgE標準(右上隅)のB/W表示を示す図である。元の画像は、16ビットグレイスケールTIFF形式であった。
【
図1C】
図1AおよびBに対応するアレルゲン位置の配置図である。各アレルゲンの外観は、直径およそ600ミクロンであり、外観間の距離は、各方向とも1mmであった。
【
図2】参照方法との比較による試験評価を示す図である。
【
図3】固体支持体に直接固定化された分子アレルゲンを含むアレイと同じ分子アレルゲンと結合され、同じ型の固体支持体に固定化されたナノ粒子を含むアレイとの比較を示す図である。表4の結果の図式表示である。
【
図4】8つの異なる陽性サンプルおよびPru p 3、桃由来主要アレルゲンに対する1つの陰性サンプルによる特異的IgE測定を示す図である。
【
図5】特異的IgE測定に利用可能な多パラメータアッセイの技術的仕様および比較を示す図である。(*)個々のアレルゲンに対する国際的な参照標準標本が利用できないので、定義による特異的IgE測定は、半定量的である。(**)>100個の試験サンプルの平均線形相関ならびにImmunoCAPおよびImmunoCAP ISACを用いたアレルゲン成分とアレルゲン抽出物の比較。
【
図6】アレルゲンコーティングしたビーズの同じ標本を使用して0日目および330日目に試験したサンプルのIgE測定の比較を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0054】
明細書の全体を通じて使用される特定の用語は、以下の意味を有するものとする。
本明細書では用語「抗原」とは、免疫系にそれに対する抗体応答を産生させ得、抗体が、適当なin vivo条件下でその抗原に結合した際に生物学的反応を場合によっては誘発し得る物質のことを指す。本明細書では用語抗原は、全標的分子または抗原結合部位によって認識されるそのような分子の断片を指すものとする。特に、免疫学的に関連する「エピトープ」と一般に呼ばれる抗原の下部構造、例えばポリペプチドまたは炭水化物構造は、そのような抗原結合部位によって認識され得る。
【0055】
用語「検出抗原」、「検出される抗原」または「検出可能な抗原」とは、抗体-抗原反応などの抗原特異的反応を決定する抗原のことを指す。用語「抗原」、「検出抗原」、「検出される抗原」および「検出可能な抗原」は、本明細書において互換的に使用される。
【0056】
用語「検出抗原の組」は、状態に特異的な反応を決定する1つまたは複数の抗原のことを指す。したがって、状態は、アレルギーまたは自己免疫性疾患などの疾患もしくは障害もしくは素因であることができ;本用語は、いかなる身体および/または臨床症状も示さない状態を含む。状態に特異的な反応は、前記状態に特徴的であり/それと関連する少なくとも1つの抗体との抗体-抗原反応であってもよく、その状態は、そのような反応によって決定され得;例えば、状態がアレルギーである場合、アレルゲンに特異的なIgE抗体である。本明細書では用語「抗原の組」とは、同じ生物学的供給源材料から得られる、例えば細胞溶解物、細胞もしくは組織ホモジネートまたはその精製画分から得られる1つまたは複数の抗原のことを指す。
【0057】
用語「エピトープ」とは、免疫学的特異性を決定する抗原の部分のことを指す。本明細書では用語エピトープとは、抗体の結合部位に対する特異的結合パートナーを完全に占め得るまたは特異的結合パートナーの部分であり得る分子構造のことを特に指すものとする。エピトープは、炭水化物、ペプチド性構造、脂肪酸、有機、生化学的もしくは無機物質またはその誘導体およびその任意の組合せで構成され得る。
【0058】
エピトープは、直鎖状または立体配座エピトープのいずれであることができる。直鎖状エピトープは、ポリペプチドまたは糖鎖の一次配列の単一区分から構成される。直鎖状エピトープは、隣接または重複することができる。立体配座エピトープは、ポリペプチドをフォールディングして三次構造を形成することにより集合したアミノ酸または炭水化物から構成され、アミノ酸は、直鎖配列内で必ずしも互いに近接していない。特に、ポリペプチド抗原に関しては、立体配座または不連続エピトープは、一次配列中で分離されているが、ポリペプチドが天然タンパク質/抗原にフォールドする際に分子の表面上で一貫した構造を組み立てる2つ以上の別々のアミノ酸残基の存在によって特徴付けられる。
【0059】
一般に、エピトープは、天然に存在する抗原中のポリペプチドまたは多糖である。通常、B細胞エピトープは、少なくとも約5アミノ酸を含むことになるが、3~4アミノ酸程に小さくなり得る。エピトープは、免疫BおよびT細胞によって認識される形状を示し、非抗原由来ペプチドおよび自然抗原中に存在する同じエピトープ形状を保有する他の分子によって示されることもあり得る。エピトープ形状によるエレメントの例は、アプタマーである。アプタマーは、免疫学的エピトープを模倣できる形状を提供する分子である。ペプチドのような分子の部分または翻訳後修飾を示す分子、炭水化物、脂質および他の分子を使用して、個々のエピトープを示すことができる。
【0060】
用語「アレイ」とは、抗原コーティングビーズの群の集まりのことを指し、各群は、空間的に分離されたアドレス可能なエレメントを示す。そのようなエレメントまたは分子的実体は、マイクロタイタープレートに含有された、または平面上に固定化されたアレイなど空間的にアドレス可能であることができ、各エレメントは、固有のXおよびY座標に存在する。そのような空間的アドレス指定能力、別名コーディングのために、分子の位置が確定され、その位置は、同一性と関連付けられ、それによって、アレイにおいて試験しようとするサンプルに含有される抗体の特異性を同定することが可能になる。この型の空間アレイは、平面基材上へ一般に合成またはスポットされ、小さい領域に高密度に配置された多数の異なるエレメントを作製する。
【0061】
特に明記しない限り、本明細書では用語「粒子」、「ナノ粒子」、「球体」、「微小球体」および「ビーズ」は、交換可能であり、抗原(検出抗原)または一組の抗原(検出抗原の組)によってコーティングしやすい球形、卵形または球状の小さい不活性支持体のことを指す。
【0062】
本明細書では用語「ビーズの群」とは、抗体-抗原反応において前記抗原に特異的な抗体で同定され得る特異的な検出抗原で結合もしくはコーティングされた(本明細書において互換的に使用される)ビーズの集団、またはその組の検出抗原のうち1つに特異的な少なくとも1つの抗体で同定され得る一組の検出抗原でコーティングされたビーズの集団のことを指す。
【0063】
用語「ビーズの型」とは、サイズ、材料、表面コーティングの分子特質、疎水性、電荷、表面特質(多孔性または無孔性表面)、結合化学または化学リンカー/スペーサー化学によって定義されるビーズの特性のことを指す。同じ型のビーズは、同じサイズ、材料、表面特質を有し、同じ化学が、抗原を結合するために使用される。異なる型のビーズは、これら特性のうち少なくとも1つにおいて異なるビーズを意図する。
【0064】
本明細書では、「支持体」、「固体支持体」、「担体」、「固形担体」または「固相」とは、アドレス可能なエレメント/分子的実体(抗原コーティングビーズ)を沈着、固定化してアッセイおよび反応を行うことができる任意の固体表面のことを指す。
【0065】
用語「固定化される」または「固着される」は、本明細書において互換的に使用され、材料または粒子、特に抗原コーティングビーズが、共有結合的または非共有結合的に固体支持体に結合されることを意味する。本用語は、固体支持体とともに実行されるインキュベーションおよび、または洗浄工程の間に比較的変化せず、遊離されない材料もしくは粒子のことを指す。
【0066】
用語「免疫グロブリン(Ig)」とは、血清のグロブリンタンパク質の免疫付与部分、および同じ機能的特性を有する他の糖タンパク質のことを指す。それらは、ジスルフィド結合によってともに連結されている4つのポリペプチド鎖、2つの同一の軽鎖および2つの同一の重鎖を一般に含む。
【0067】
用語「IgG」とは、血清中に見られるIgアイソタイプのうちの1つのことを指し、抗原に反応して上昇する主な抗体であり、4つの主要なサブタイプ、IgG1、IgG2、IgG3およびIgG4がある。
【0068】
用語「IgE」とは、血清中に見られるIgアイソタイプのうちの1つのことを指し、肥満細胞および好塩基球に強固に結合し、さらに抗原に結合すると、ヒスタミンおよび即時型過敏の他の媒介物質を放出させる。このアイソタイプのIgは、花粉症、喘息およびアナフィラキシーなどI型アレルギーの主反応において、中心的な役割を果たす。
【0069】
本明細書では用語「抗体」とは、リンカー配列の有無にかかわらず免疫グロブリンの重鎖ならびに/または軽鎖の定常および/もしくは可変ドメインと理解される抗体ドメインからなるもしくはそれを含むポリペプチドもしくはタンパク質のことを指す。ポリペプチドは、ループ配列によって接続された抗体ドメイン構造の少なくとも2つのβ鎖からなるβバレル構造を含む場合、抗体ドメインと理解される。抗体ドメインは、天然の構造のものであることができ、または突然変異誘発もしくは誘導体化によって修飾して、例えば、抗原結合特質、または安定性など他の任意の特質、またはFc受容体FcRnおよび/もしくはFcγ受容体に対する結合などの機能特質を修飾することができる。用語「抗体」は、ヒト、マウス、ウサギ、ラット、ヤギ、ラマ、ウシおよびウマまたは雌鶏などの鳥を含めた哺乳動物など、ヒト種を含めた動物起源の抗体に適用され、その用語は、動物起源の配列に基づく組換え抗体を特に含むものとする。
【0070】
抗体は、無傷の免疫グロブリンとして、または例えば、軽および重鎖可変領域だけを含有するFv断片、可変領域および定常領域の部分を含有するFabまたは(Fab)’2断片、一本鎖抗体ならびに同類のものを含めた様々な形態の修飾物として存在することができる。抗体は、動物(特にマウス、ヤギ、ウサギまたはラット)またはヒト起源であることができ、またはキメラであることができる。本明細書では用語「抗体」は、全抗体の修飾によって作製されるおよび/または組換えDNA方法論を使用してde novo合成され得るこれらの様々な形態を含む。「モノクローナル」抗体とは、少量存在する可能性がある起こり得る天然に存在する突然変異を除いて、抗体が特異性および親和性において同一である個々の抗体または個々の抗体の集団のことを指す。
【0071】
本明細書では用語「標識」とは、抗体もしくは抗体断片に直接または間接的にコンジュゲートされて、「標識」抗体/抗体断片または「検出抗体」を生成する検出可能な化合物もしくは組成物のことを指す。標識は、それ自体によって検出可能であってもよく、例えば放射性同位元素標識、色もしくは蛍光標識、金ナノ粒子もしくは着色したラテックスナノ粒子、または酵素標識の場合、検出可能な基質化合物もしくは組成物の化学的変質を触媒してもよい。
【0072】
本明細書では用語「抽出物」とは、一般に濃縮された形態であり、抽出物が単離される生物材料などの材料を溶媒で処理し、単離後に溶媒が除去されることによって得られる1つまたは複数の物質のことを指す。用語「抽出物」は、当業技術者に公知のそれに続く精製過程に一次抽出物を供することによって得られる1つまたは複数の物質を包含すると理解されることになる。一般に、抽出物は、タンパク質と他の分子の混合物を含む。
【0073】
アレルゲン抽出物は、生物学的供給源材料からのアレルゲンの抽出によって一般に調製される。生物学的供給源材料は、一般に真菌、植物界もしくは動物界の多細胞生物由来の多細胞または非細胞性材料であり、ときには細菌起源である。そのようなアレルゲン抽出物は、機械的均質化手順(例えば、激しい混合および攪拌)を使用する水溶性材料の水抽出、続いて溶液、すなわち抽出物を得るための濾過または分画のような精製工程によって得ることができる。次いで抽出物は、実質的に全ての水を除去する凍結乾燥のようなさらなる精製および/または処理に供することができる。一般に、アレルゲン抽出物は、タンパク質と他の分子の混合物を含む。
【0074】
本文脈において、用語「アレルゲン」とは、任意の天然に存在するタンパク質、そのアイソフォーム、修飾タンパク質、組換えタンパク質、組換え変異体タンパク質もしくは任意のそのタンパク質断片、または個体への反復曝露によりアレルギー性、すなわちIgE媒介反応を誘導する能力があるタンパク質の混合物のことを指す。本明細書では用語「アレルゲンの組」とは、同じ生物学的アレルゲン供給源材料から得られる、例えば生物学的アレルゲン供給源材料のアレルゲン抽出物から得られる1つまたは複数のアレルゲンのことを指す。
【0075】
用語「生物学的供給源材料」または「生物学的材料」とは、任意の生体に由来する任意の材料のことを指す。それは、分離された細胞、組織片、細菌、ウイルス、酵母、およびこれまでの供給源(1つまたは複数の抗原を含む)の多くの細画分(分離された核または細胞質など)を特に意図する。
【0076】
本明細書では表現「生物学的アレルゲン供給源材料」とは、1つまたは複数のアレルゲンを含む任意の生物材料のことを指す。そのような材料の例は、コナダニPMB(純粋なダニ虫体)またはWMC(全ダニ培養物)、脱脂したもしくは脱脂していない、例えば牧草、ハーブ、雑草および樹木由来の花粉、動物の毛およびふけ、毛皮、真菌菌糸体および胞子、昆虫体、毒液または唾液ならびに食物である。
【0077】
用語「自己免疫性疾患」には、病原性自己抗体と関連付けられる任意の疾患、最も可能性が高いことにT細胞媒介性である疾患および病原性過程の証拠が直接的なだけの疾患がある。前記障害は、それだけには限らないが、急性特発性血小板減少症、自己免疫性溶血性貧血、自己免疫性白血球減少症、自己免疫性赤芽球減少症、重症筋無力症、ギランバレー症候群、慢性炎症性脱髄性多発ニューロパチー、多発性硬化症、抗mag活性を伴う単クローン性免疫グロブリン血症、副腎白質ジストロフィー、グレーブス病、全身性エリテマトーデス、抗カルジオリピン抗体および再発流産、不応性多発性筋炎、若年性関節炎、関節リウマチ、フェルティー症候群、潰瘍性大腸炎、クローン病、特定の糸球体腎炎、ANCA陽性全身性血管炎、川崎病、抗第VIII因子自己免疫性疾患およびバードショット網膜症であり得る。
【0078】
用語「共有結合」または「共有結合性相互作用」とは、原子間で一対の電子を共有することによって生じる結合または相互作用のことを指す。共有結合性結合/相互作用には、原子結合、等極結合、σ-σ-相互作用、σ-π-相互作用、2電子中心結合、単結合、二重結合、三重結合およびこれら相互作用/結合の組合せがあるが、これに限定されない。前述の相互作用/結合は、極性もしくは分極化され得、または無極性もしくは非分極化され得る。
【0079】
「非共有結合性」とは、イオン相互作用(例えば、双極子-双極子相互作用、イオン対合および塩形成)、水素結合、無極性相互作用、包接錯体、包接化、ファンデルワールス相互作用(例えば、π-πスタッキング)およびその組合せなど原子間および分子間の会合のことを指す。
【0080】
用語「受動的吸着」、「吸着」または「吸収」とは、表面へのガス、液体もしくは溶解性物質由来の原子、イオンまたは分子の接着のことを指す。吸着の機序は、吸着される分子の疎水性部分と表面との間の疎水性(ファンデルワールス、ロンドン型)誘因力に主に基づく。大部分の疎水性分子は、受動的吸着によって表面に接着する。疎水性が小さい分子(または-COOHまたはNH2修飾表面などのより親水性の表面)の場合、イオン相互作用および疎水的相互作用の両方による結合が起こり得る。
【0081】
本明細書では用語「静電相互作用」または「静電結合」とは、逆電荷の成分が、互いに引きつけられる際の引力による、荷電成分、分子またはイオン間で起こる任意の相互作用のことを指す。例には:イオン相互作用、共有結合性相互作用、イオンと双極子との相互作用(イオンと極性分子)、2つの双極子(極性分子の部分的荷電)間相互作用、水素結合およびロンドン分散結合(分極可能な分子の誘起双極子)があるが、これに限定されない。
【0082】
「検出可能なシグナル」とは、視覚もしくは機器的方法によって測定することができる物理または化学シグナルのことを指し、比色、蛍光、電気、化学発光シグナルを含む。
「対照値」または「対照シグナル」とは、対象のサンプルまたは対象のプールで得られるシグナルを、比較することができる参照値のことを指す。陰性対照シグナルは、例えば、(i)いかなる免疫グロブリンも含有しないサンプル、(ii)いかなる抗原によってもコーティングされていないビーズ、すなわち固体支持体上に固定化されたコーティングしてないビーズ、(iii)その上にいかなるビーズも固着されていない固体支持体材料それ自体または、(iv)健康な個体または健康な個体のプールもしくは群由来のサンプルで得ることができる。「陽性対照シグナル」は、例えば、指定量の分析物(すなわち全免疫グロブリンまたは特定の抗原/アレルゲンに特異性がある定義済みの免疫グロブリン)を含む市販の参照サンプル、標準アッセイにおいて陽性と検証もしくは試験されたサンプル、または検出される免疫グロブリンの指定量と結合され、固体支持体に固着されるビーズで得ることができる。
【0083】
用語「サンプル」は、事実上任意の液体サンプルのことを指す。サンプルは、生理液、例えば、血液、唾液、眼レンズ液、脳脊髄液、汗、尿、乳汁、腹水、粘液性、滑膜性液、腹水、羊水その他同種のものなど、所望の任意の供給源から得ることができる。液体試験サンプルは、血液から血清または血漿を調製する、粘稠液を希釈するその他同種のものなど、使用前に前処理することができ;処置の方法は、分離、濾過、蒸留、濃縮、干渉成分の不活化および試薬の添加を含むこともできる。加えて、固体は、修飾して液体媒体を一旦形成させてから使用することができる。本用語は、in vitroアッセイに使用できる任意の体液に適用される。
【0084】
本明細書では用語「対象」または「患者」とは、温血哺乳類、特に人間またはヒト以外の動物を指すものとする。
用語「生体分子」とは、生体の部分である任意の有機分子のことを指す。とりわけ、生体分子には、ヌクレオチド、ポリヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、ペプチド、タンパク質、炭水化物、グリコシル化分子、脂質がある。本明細書では用語は、生体分子の構造および結合特異性を模倣する、したがって生体分子と同じ抗体によって認識される有機分子、例えばアプタマーにも適用される。
【0085】
「組換えDNA技術」とは、例えば、WeigelおよびGlazebrookによって編集された、Laboratory Manual、2002年、Cold Spring Harbor Lab Press;およびSambrookら、1989年、Cold Spring Harbor、N.Y.:Cold Spring Harbor Laboratory Pressに記述される組換え核酸配列を調製するための分子生物学手順のことを指す。
【0086】
用語「抗原スペーサー」とは、固体表面と結合される抗原との間に定義済みの距離を生じさせる中間層を導入するために使用され、前記中間層の化学的特質を定義することができる化学リンカーのことを指す、例えば:Bioconjugate Techniques、Greg T.Hermanson、Academic Press、25.07.2013年。
【0087】
固形担体に固着させた抗原コーティングビーズの群を含む抗原アレイを提供することが、本発明の目的である。一部の実施形態において、抗原コーティングビーズは、1つの検出抗原(例えば、組換えDNA技術によって作製される抗原または生物学的供給源から単離、精製される抗原)でコーティングされたビーズである。一部の実施形態において、抗原コーティングビーズは、一組の検出抗原(例えば、アレルゲン抽出物などの抽出物から得られる抗原、細菌細胞溶解物などの溶解物から得られる抗原、細胞もしく組織ホモジネートまたはその精製画分から得られる抗原)でコーティングされたビーズである。
【0088】
例えば、ビーズの第1の群は、組換えDNA技術によって作製される特定の(第1)検出抗原と結合され、ビーズの第2群は、生物材料から精製される、異なる(第2)検出抗原と結合され、第3群は、一組の検出抗原と結合され、その組は、第1および第2検出抗原とさらに異なり、検出抗原のその組は、細胞溶解物から得られ、ビーズの第4の群は、さらに別の組の検出抗原と結合され、その組は、抽出物から得られ、以下同様である。したがって、抗原アレイの抗原コーティングビーズ(ビーズの集団)の異なる群は、それに結合される抗原(例えば検出抗原または検出抗原の組)が異なる。
【0089】
異なる検出抗原または検出抗原の組を担持するビーズのそのような群は、異なる供給源(例えば溶解物、抽出物、組換え作製)の検出抗原、異なる型のビーズ(異なるサイズおよび/または材料のビーズ)および/または異なる結合化学(非共有結合性または共有結合性結合抗原)を使用して作製することができる。
【0090】
本明細書に記述される抗原アレイは、少なくとも25個の異なるビーズの群を含む。一部の実施形態において、本明細書に記述される抗原アレイは、25、50、75、100、125、150、175、200または250個のビーズの群の少なくともいずれかを含む。一部の実施形態において、抗原アレイは、300、400、500または1000個までのビーズの群のいずれか1つを含む。一部の実施形態において、抗原アレイは、200~500個のビーズの群、好ましくは250~350個のビーズの群を含む。
【0091】
一部の実施形態において、抗原アレイ中のビーズの群は、1つの型のビーズだけを含む(例えばポリスチレンビーズだけ、直径200~500nmのビーズだけ、など)。一部の実施形態において、抗原アレイ中のビーズの群は、異なる型のビーズ(例えば直径350nmのポリスチレンビーズ、直径300~500nmのラテックスビーズおよび直径5~500nmのガラスビーズ)を含む群を含む。一部の実施形態において、抗原アレイ中のビーズの群は、同じ結合化学を使用して作製される(例えば、異なる検出抗原/検出抗原の組は、受動的吸着によってビーズの異なる群に結合される)。一部の実施形態において、結合化学は、ビーズの異なる群間で異なる(例えば第1検出抗原/検出抗原の組は、受動的吸着を使用してビーズの第1の群と結合され、第2検出抗原/検出抗原の組は、共有結合性リンカーを使用してビーズの第2の群と結合される)。特に、抗原アレイは、直径約200nmのポリスチレンマイクロビーズを含むビーズの第1の群であり、第1検出抗原が、受動的吸着によって表面に結合されている群、直径約500nmでありNH2表面コーティングのポリスチレンマイクロビーズを含むビーズの第2の群であり、第2検出抗原が、原子12個のスペーサーを導入するEGS(エチレングリコールビス[スクシンイミジルコハク酸])架橋剤によって表面に結合されている群、直径約200nmでありCOOH表面コーティングのポリスチレンマイクロビーズを含むビーズの第3の群であり、第3検出抗原が、長さゼロのEDCカルボジイミド結合化学によって表面に結合されている群を含むことができる。
【0092】
一部の実施形態において、ビーズの1つの群内のビーズ(すなわち同じ検出抗原でコーティングされているビーズの集団または同じ組の検出抗原でコーティングされているビーズの集団)は、同じ型のビーズを含む。一部の実施形態において、ビーズの1つの群内のビーズ(すなわち、同じ検出抗原でコーティングされているビーズの集団または同じ組の検出抗原でコーティングされているビーズの集団)は異なる型のビーズを含む。例えば、ビーズの1つ群内において、一部のビーズ(ビーズの第1の下位集団/型)は、直径約200nmを有するビーズであり、一方で他の一部のビーズ(ビーズの第2の下位集団/型)は、直径約350nmを有する。一部の実施形態において、直径約200nmのビーズは、抽出物または溶解物(すなわちタンパク質と他の分子の混合物)を200nmの前記ビーズと混合することによって第1検出抗原と優先的に結合され、直径350nmのビーズは、同じ抽出物と混合することによって第2検出抗原に優先的に結合され、同じ抽出物または溶解物から得られた異なる2つの検出抗原と結合された2つの型のビーズを次いでプールし、それによって、一組の検出抗原でコーティングされた異なる型のビーズの一群を生じさせる。
【0093】
一部の実施形態において、本明細書に記述される抗原アレイは、検出アレルゲン(例えば、組換えDNA技術によって作製されたアレルゲンまたは精製された天然のアレルゲン)または一組の検出アレルゲン(例えば、アレルゲン抽出物と結合されたビーズ)と結合された25、50、75、100、125、150、175、200または250個のビーズの群の少なくともいずれか1つを含むアレルゲンアレイである。一部の実施形態において、アレルゲンアレイは、300、400、500または1000個までのビーズの群のいずれか1つを含む。一部の実施形態において、アレルゲンアレイは、200~500個のビーズの群、好ましくは250~350個のビーズの群を含む。
【0094】
一部の実施形態において、アレルゲンアレイは、分子/組換え作製アレルゲンでコーティングされたビーズの1つまたは複数の群を、アレルゲン抽出物でコーティングされたビーズの1つまたは複数の群をおよび/または生物学的供給源から単離され精製された1つまたは複数のアレルゲンでコーティングされたビーズの1つまたは複数の群を含む。
【0095】
一部の実施形態において、本明細書に記述される抗原またはアレルゲンアレイは、固形プレートまたはシート(例えばニトロセルロース膜)上に固着させた少なくとも200個のビーズの群(例えば200~300個のビーズの群)を含み、アレイは、(i)ビーズの群(群Aビーズ)、異なる検出抗原/アレルゲンでコーティングされた(群Aビーズの)各群(例えば、組換え作製された第1の抗原/アレルゲンでコーティングされた群1、抽出物または溶解物から精製された第2の抗原/アレルゲンでコーティングされた群2、組換え作製された第3の抗原/アレルゲンでコーティングされた群3等)および(ii)ビーズの群(群Bビーズ)、異なる一組の検出抗原/一組のアレルゲンでコーティングされた(群Bビーズの)各群(例えば第1の生物材料から得られた第1の抗原/アレルゲン抽出物でコーティングされた群I、第2の生物材料から得られた第2の抗原/アレルゲン抽出物でコーティングされた群II)を含み、ビーズの群(群Aおよび群B両方のビーズ)は、直径約200~500nm(例えば直径約350nm)を有する(例えばポリスチレンビーズ)から作られるビーズであり、検出抗原/アレルゲンまたは検出抗原の組/アレルゲンの組は、同じまたは異なる結合化学によって共有結合的もしくは非共有結合的にビーズに結合される。一部の実施形態において、異なる検出抗原/アレルゲンまたはその組は、受動的吸着によってビーズに結合される。一部の実施形態において、検出抗原/アレルゲンの部分またはその組は、受動的吸着によって結合され、一方で他の検出抗原/アレルゲンは、例えばEGSリンカーまたはEDC化学によって共有結合的に結合される。
【0096】
一部の実施形態において、ビーズの群は、行および列の四角形のパターンまたはオレンジパックトパターンで本明細書に記述される抗原もしくはアレルゲンアレイ上に配列される。一部の実施形態において、本明細書に記述される抗原またはアレルゲンアレイは、アレイ内の定義済みの位置(例えばマーカースポット)に陽性および/または陰性対照スポットをさらに含み、それを使用してアレイの抗原コーティングビーズを位置決めし、同定することができる。
【0097】
抗原
抗原とは、免疫系にそれに対する抗体応答を産生させ得る物質である。抗原は、一般に巨大分子またはタンパク質、ペプチド、抗体、多糖、ポリヌクレオチド、RNA、DNA、脂質などの分子、グリコシル化分子、炭水化物、有機もしくは無機化合物、そのような分子の天然に存在する修飾物、宿主と無関係のアプタマーである。抗原は、1つまたは複数の免疫学的エピトープを含む。
【0098】
本明細書に記述される抗原は、検出抗原、すなわち抗原特異的反応を決定する抗原である。一部の実施形態において、検出抗原は、アレルゲン、感染症マーカーおよび/または自己抗原である。
【0099】
アレルゲンは、免疫グロブリンE(IgE)反応によってアトピー性個体においてI型過敏性反応を刺激することができる抗原である。アレルゲンは、例えば、乳製品(例えば、牛乳)、卵、セロリ、ゴマ、小麦、大豆、魚、甲殻類、糖(例えば、α-ガラクトースなど肉に存在する糖)、ピーナッツ、他のマメ類(例えば、インゲン豆、エンドウ、ダイズ、など)、および木の実などの食料品に含有されるまたはそれに由来し得る。あるいは、アレルゲンは、動物産物、例えば、イエダニ排泄物、毛皮およびふけ、ウール;花粉、例えば、樹木花粉(カバ花粉、スギ花粉、オーク花粉、ハンノキ花粉、シデ花粉、トチノキ花粉、ヤナギ花粉、ポプラ花粉、プラタナス花粉、ボダイジュ花粉、オレウム花粉、マウンテンシダー花粉およびジタノキ花粉など)、雑草(ブタクサ、シャゼンソウ、イラクサ、オウシュウヨモギ、シロザ、スイバ)、牧草(ライ麦草、チモシー草);昆虫毒液(例えば、ミツバチ、スズメバチ、蚊、ヒアリ等の毒液)、カビ、ラテックス、金属(例えば、ニッケル)、家庭用クリーナー、界面活性剤、医薬品、化粧品(例えば、香水等)、薬物(例えば、ペニシリン、スルホンアミド、サリチル酸等)、治療用モノクローナル抗体(例えば、セツキシマブ)などの非食料品に含有されるまたはそれに由来し得る。
【0100】
一部の実施形態において、アレルゲンは交差反応性アレルゲンである。交差反応性アレルゲンは、異なる供給源(例えばリンゴ)のアレルゲンと構造類似性を共有する1つ供給源(例えばカバ)のアレルゲンである。患者が、第1の供給源に対するアレルギーになると、彼/彼女は、第2の供給源に対するアレルギーも発症する可能性が高い。一部の実施形態において、アレルゲンは、マーカーアレルゲンである。マーカーアレルゲンは、1つの特定の供給源に主に見られる。一部の実施形態において、アレルゲンは、汎アレルゲンである。汎アレルゲン(例えばプロフィリン)は、様々な異なる供給源に存在する。一部の実施形態において、アレルゲンは、主要アレルゲンであり、主要アレルゲンは、アレルギー集団において支配的なIg反応を誘導し、一方別の実施形態において、アレルゲンは、少数のアレルギー患者だけが反応する軽度のアレルゲンであることができる。一部の実施形態において、アレルゲンは、他の任意のアレルゲンと交差反応しないアレルゲンである。
【0101】
【0102】
【0103】
【0104】
【0105】
【0106】
【0107】
【0108】
【0109】
【0110】
【0111】
【0112】
【0113】
感染症マーカーは、ウイルス、寄生虫、細菌、プリオンおよび真菌などの感染性因子の存在の指標となる物質、組成物または粒子である。
感染症マーカーには、タンパク質、糖タンパク質(例えば細菌またはウイルスの表面もしくはコートタンパク質)、タンパク質の混合物(例えば細菌細胞溶解物)、感染性因子または粒子と関連する他の検出可能な化合物(例えば、ウイルス様粒子またはウイルスコートタンパク質、細菌表面抗原等)があるが、これに限定されない。
【0114】
自己抗原は、ヒトなどの生物によって生じる分子であり、その場合自己抗原に対する抗体の生成、すなわち自己抗体の生成などその生物による免疫反応が存在する。自己抗体の産生は、一般に自己免疫性疾患と関連する。自己抗原の例には、サイログロブリンなどの器官特異的抗原ならびにDNA、ヒストンおよびリボ核タンパク質粒子などの遍在する細胞性抗原の両方がある。本明細書に記述される抗原アレイに含まれ得る典型的な自己抗原を、表2に挙げる。
【0115】
【0116】
本明細書に記述される抗原アレイの抗原、すなわち検出抗原は、組換えDNA技術によって作製される抗原または生物学的供給源材料から精製、単離される抗原(例えば、他の任意の抗原を実質的に含まない生物材料由来抗原であり、当業で公知の方法によって同じ生物材料から単離され得る)であり得る(Ian R. MackayおよびNoel R. Rose、The Autoimmune Diseases、第5編、Academic Press 2014年を比較)。一部の実施形態において、ビーズは、組換えにより作製された抗原と結合される。一部の実施形態において、ビーズは、生物学的供給源から単離、精製された検出抗原と結合される。
【0117】
一部の実施形態において、抗原アレイは、一組の検出抗原(例えば、少なくとも1つ、2つまたはより多くの検出抗原)を含むビーズの群を含む。例えば、検出抗原の組は、生物学的供給源の抽出物(例えばアレルゲン抽出物)または溶解物(例えば細菌溶解物もしくは他の細胞溶解物)から得ることができる。一部の実施形態において、ビーズは、生物学的供給源の抽出物または溶解物と結合され、それによって一組の検出抗原を含む抗原コーティングビーズが作製される。
【0118】
一部の実施形態において、ビーズは、組換えDNA技術によって作製される分子アレルゲンでコーティングされる。一部の実施形態において、ビーズは、生物学的供給源から単離または精製されるアレルゲンでコーティングされる。一部の実施形態において、ビーズは、アレルゲン抽出物(例えば生物材料由来の少なくとも1つ、2つまたはより多くのアレルゲンなど一組のアレルゲン)でコーティングされる。アレルゲン抽出物は、生アレルゲン抽出物;濃縮したアレルゲン抽出物;またはアレルゲン抽出物から精製された数種のアレルゲンを含むことができる。アレルゲンは、天然に存在するアレルゲンである。アレルギー性抽出物は、同じアレルゲンの1つまたは複数のアイソフォームを天然に含有することができる。アレルゲン抽出物は、異なる生物学的供給源の少なくとも2つのアレルゲン抽出物の混合物からなっていてもよく、例えば、通常属種と呼ばれる、類似の基本的起源に由来する2つの異なる、ただし密接に関連する種からなっていてもよい。
【0119】
マイクロまたはナノ粒子を使用する抗原結合
本明細書に記述される抗原アレイは、不均一で複雑な生物学的抗原(すなわち、検出抗原)の個別的に最適化した結合戦略の原理を利用する。多重化免疫学的抗体検出アッセイにおいて、これは、各単一パラメータについて最適な試験成績を達成するための必要条件である。
【0120】
抗原結合は、2つの固有の工程で進める。第1の工程において、各抗原は、マイクロメーターまたはナノメートルスケールの懸濁粒子、例えば、マイクロビーズまたはナノビーズと結合される。
【0121】
特定の実施形態において、それらの粒子は、タンパク質またはより一般には生体分子貯蔵に通常使用されるものなど水性緩衝液の溶液中に保つことができる球状粒子である。粒子は、ラテックスもしくはポリスチレン粒子、プラスチックポリマー粒子もしくはガラス(二酸化ケイ素)から製作される粒子、多孔性もしくは無孔性表面粒子、または他の生体適合性ポリマーから製作される粒子であることもできる。粒子のサイズは、数ナノメートル~1ミクロンまでであることができ、そのため、粒子の好ましいサイズは、直径5~500nm、より好ましくは200~500nm、さらにより好ましくは直径200~350nm(例えば約350nm)である。一部の実施形態において、ビーズは、ポリスチレンナノ粒子である。
【0122】
抗原(タンパク質、ペプチド、抗体、DNAならびに抗原としての役割を果たし得る核酸、アミノ酸または有機もしくは無機化合物で製造された他の生体分子)の結合は、様々な結合戦略によって進めることができる。
【0123】
最も単純な実施形態において、抗原性分子または巨大分子は、受動的吸着、例えば疎水性および/または静電結合によって粒子(ビーズ)に結合することになる。結合は、適当な緩衝液系を選択することによって促進することができ、その緩衝液系は、例えば抗原の等電点近くのpH値を有し、それにより平均して表面荷電を中和する緩衝液系を選択することによって最大結合のための環境を生じさせる。
【0124】
より複雑な準備において、結合すべき抗原は、様々な、単一抗原を担持する分子またはいくつかの抗体結合エピトープを含む単一巨大分子またはさらに様々なエピトープを含有する個別に異なる抗原を含む様々なタンパク質の複雑な混合物(例えば一組の検出抗原を含む生物学的供給源材料の抽出物または溶解物)のいずれかからなり、その抗原は、最適な生物学的結合能力(結合力)を達成するために異なる吸着条件を必要とする可能性がある。そのような場合において、抗原または抗原混合物を、いくつかのアリコートに分割することができ、各アリコートは、異なる状態下、例えば異なるpH値もしくは異なるイオン性緩衝液強度、または塩、界面活性剤、緩衝物質等などの異なる緩衝液添加物で結合され得る。各条件下で、各抗原は、生物活性に好ましい可能性がある特定の構成で結合し、または一部の特定の抗原は、選択した条件下で別の部分母集団より容易に結合するかまたは全く結合しない可能性がある。以下の工程において、異なるアリコートを再統合して、初期の複雑な混合物由来の異なる抗原、または様々な構造的構成の単一抗原を保有するマイクロもしくはナノ粒子の集団を生じさせることができる。これを達成することにより、選択したエピトープだけが保存される、または複雑な混合物から選択した抗原担体だけが実際に結合されるようなバイアスを生じることなく、生体サンプルの元のエピトープレパートリーを粒子に結合することができる。
【0125】
充分な数の異なる結合条件を選択し、差異的に結合している粒子-抗原組合せの混合物を最適化することにより、抗原で飽和された最終的な粒子溶液は、元の混合物のエピトープレパートリーを密に組み立てることになり、または全体として完全なエピトープ複雑性を維持したまま粒子溶液中で好ましい抗原担体を富化することが可能になる。
【0126】
さらに洗練された準備において、抗原は、当業技術者に公知の非常に多くの組合せの有機結合化学を利用することによって結合され得る。この戦略により、抗原は、共有結合的に粒子に結合され得、抗原の表面上に存在する特定の化学基、例えばアミノまたはカルボキシ基、スルフヒドリル基、芳香族残基等に選択的に結合することが可能である。
【0127】
ペプチドまたは化合物などの小さい抗原とともに働かせる場合、適切な抗原スペーサーを使用して抗原提示を最適化することがさらに可能である。
粒子表面の化学表面操作によって、固形担体表面へのビーズの結合を最適化する、非特異的結合を抑制するまたは抗体結合を増強することがさらに可能になる。
【0128】
一部の実施形態において、検出抗原または検出抗原の組は、(例えば、NH2表面ビーズに対してはEGSリンカーによって、COOH表面ビーズに対してはEDCリンカーによって)ビーズに共有結合される。一部の実施形態において、検出抗原または検出抗原の組は、ビーズに非共有結合的に結合される。例えば、ビーズは、受動的吸着によって抗原または検出抗原の組でコーティングされ得る。
【0129】
粒子サイズを最適化して、製造過程の要求に適合させることがさらに可能である。粒子は、取り扱いおよび溶液中に保つことが容易であるものとし、同時にそれらは、最終的な固体支持体に一旦沈着されたら特異的または非特異的に結合するものとする。抗原で粒子を飽和させた後、飽和された粒子は、例えば、特に遠心分離、磁気分離、電荷またはサイズ排除により残りの抗原溶液から分離され得る。この分離により、好ましく結合している抗原の画分だけを維持し、元の抗原混合物の残りの、おそらく非抗原性の画分を取り除くことが可能になる。
【0130】
抗原結合粒子の機能試験を実行することができ、その結果を、参照in vitro診断方法で実行された利用可能な参照試験に対して、臨床参照データに対して、または利用可能な標準的な標本に対して比較した。極めて少ない抗原特異的IgE抗体に対する国際的に認識された実験室基準がないので、利用可能な参照システムの1つは、最も広く使用されている3つの自動免疫アッセイ機器で主要アレルゲンに対するIgEについて試験されたBiorad Lyphocheck(登録商標)品質管理サンプルである(www.bio-rad.com)。
【0131】
抗原結合の程度は、当業で公知の様々な方法によって確認され得る。例えば、結合反応からの上清を使用して、ELISAアッセイすることができ、タンパク質含有量について測定することができ、または1次元もしくは2次元タンパク質ゲルで試験することができ、それにより結合していない抗原の全量を推定できるだけでなく、結合していないおよび結合している抗原担体(ゲル上にもはや存在しない)の性質を、タンパク質ピークまたは点のサイズ/位置を見ることによって記録することもできる。必要であれば、上清を、質量分析によってさらに分析することができる。
【0132】
類似の手法を、結合の安定性を試験するために適用することができる。例えば、粒子を結合し、次いで定義済みの時間間隔後に上清(粒子を含有しない溶液)を試験することにより、抗原性タンパク質が粒子に永久に結合され続けるのか、あるいはそれらが特定の時間後または特定の貯蔵緩衝液もしくは界面活性剤を含む特定の貯蔵条件下で溶液中へと拡散するのかを決定することができる。
【0133】
抗原結合ビーズの貯蔵および製造の間のその取扱い
結合したビーズの貯蔵は、第1に、タンパク質を粒子に結合させ続け、第2に、より重要なことに、タンパク質を生物学的に活性に保ち、分解、例えばタンパク質消化からそれらを保護することを主要な2つの目的にして、最初の結合後少なくとも数ヵ月間、好ましくは数年間、粒子に結合しているタンパク質を安定化する条件で進めることができる。また、ビーズは、溶液中に保たれなければならず、いかなる沈殿も避けなければならない、なぜならこの沈殿は、より厳しく、潜在的に抗原を損傷する方法(熱、剪断、超音波処理、ボルテックス等)を使用せずには以後溶解することができない凝集体の形成を導き、それにより元の抗原溶液に存在するエピトープレパートリーの部分をブロックまたは破壊する可能性があるためである。
【0134】
例えば-80℃で保存した場合に試薬をより長期間またはさらには無期限に十分に安定化することができるとすると、上記の手法はあらゆる免疫アッセイ製造過程に著しい改善を提示する。その後の製造過程のために安定な一次試薬セットを有する利点は主に、良い試薬が一度作製されたら、それが長期間安定であると仮定して、品質管理手順に比較的少ない労力しか費やす必要がないということである。一方、結合を、より短い間隔で新しく行わなければならない場合、結合が完了する度に、完全な組の品質管理計測および記録を提出しなければならない。変動が、結合過程か抗原溶液の前の劣化が原因かに関わらず不確実性がなお残ることになり、このことは、粒子の表面上に抗原を実際に吸着するよりも、より長期間保存することが困難である可能性がある。主に、冷凍および解凍の反復は品質を低下させる場合があり、タンパク質は、沈殿または互いに結合する傾向を有するので、低温であっても単純溶液中でタンパク質を永久保存できないことは当業技術者に公知である。しかしながら表面結合タンパク質の安定性は、好ましくない貯蔵条件下でも著しくより長くなり得る。
【0135】
より長期間の貯蔵が可能になる条件は、最良の温度範囲、通常-20℃または2~8℃好ましくは2~4℃の範囲のいずれかを選択することも含む。
本明細書に記載の抗原コーティングビーズの貯蔵に適用できる緩衝液には、それだけには限らないが:単純なNaCl溶液、リン酸緩衝液、トリス緩衝液、MES緩衝液、クエン酸緩衝液、HEPES緩衝液等がある。
【0136】
貯蔵のためのpH条件は、生理的範囲、pH7~8であることが好ましいが、pH6~9またはさらにpH2~14の範囲であることもできる。
より長い貯蔵を可能にする添加物には、それだけには限らないが:Tween-20、SDS、Tritonなどの非イオン性界面活性剤、その他がある。
【0137】
アジ化ナトリウム、kathonまたは他の防腐剤を使用して、貯蔵の間の標本における細菌または真菌の増殖を避けることができる。
グリセロール、ポリビニルアルコール等などの多価アルコールを使用して、溶液中の粒子および粒子上のタンパク質の両方を安定化することができる。
【0138】
トレハロース、スクロース等などの多糖は、特に構造的分解からタンパク質をさらに安定化することができる。
粒子が最終的なアッセイの固相に結合された後でも、さらに、糖を使用してタンパク質を安定化することができる。
【0139】
アレイ形式における抗原を飽和したビーズの表面沈着
溶液から固相へのビーズの移動は、当業技術者に公知のいくつかの方法によって達成することができる。目的は、一連の個々の抗原含有粒子溶液(ビーズの群)をアドレス可能なエレメント(アレイ上で定義された場所がある別個の分子的実体)の秩序あるアレイに移動することであり、その結果抗原含有生体サンプル、例えば患者血清とインキュベーションし、結合事象を適当に検出した後に、検出されたシグナルをそれぞれの抗原性供給源材料に関連付けることができる。
【0140】
溶液から固体支持体への液体の沈着の原理方法は、接触または非接触方式である。接触方法の場合、一般に、ある種のスタンプまたはピンを供給源液体へ繰り返し浸漬し、供給源液体に浸漬する間に、スタンプまたはピンに吸収する集められた材料が、固体支持体上に沈着される。しかしながら、過程成績の多くが、スタンプおよび供給源液体の性質、ならびに固相の湿潤性、粘性、液体の組成等によって決まることになるので、より簡単な代替物であるこの方法は、拡張性および再現性に関して著しい欠点を有する。
【0141】
したがって、ごく最近の適用において非接触方法が好ましい。本明細書に記述されるアレイの場合、ソレノイド分注システムを使用することができ、それによって、シリンジが、抗原性供給源溶液を含有する液体流路に圧力を生じさせ、ソレノイド弁の正確な時限開口により、セラミックチップからの正確に均一な小滴の形成が可能になる。次いで液滴は、セラミックチップから放出され、短い飛行相の後着地し、固相に結合する。セラミックチップの下での固相の動作(または、逆に電動軸によるチップの動作)により、異なる供給源液体を整然とした方法で次々と沈着する際に固有のアレイを作製することが可能になる。別法として、液滴の沈着は、圧電駆動滴形成によって進めることができ、そのため以前に記載されている方法との主要な差異は、圧力が、シリンジによってではなく、圧電性クリスタルへの電気インパルスによって高められることであり、分注容積は、一般にピコリットル範囲でずっと少ないが、分注ソレノイドは、ナノリットル範囲の液滴で最も良く作動する。
【0142】
形成される小滴の好ましいサイズは、直径1mmであり、固相上に直径ほぼ1mmの円形の外観(アドレス可能なエレメントとしての分離した分子的実体)を得られる。そのような大きさを使用して、1平方センチメートル当たりおおよそ10×10個(合計100個)の異なる抗原を結合した領域のアレイを生じさせることができる。そのような方法で固相に分注される液体の量は、液滴当たりおよそ30nLであるが、1ナノリットル~200ナノリットル、またはさらにより大きいことができる。抗原コーティングビーズの特定の群を含む円形の外観または単位は、その場所/位置(空間的にアドレス可能である)によって同定することができ、規則的な四角形のアレイまたはオレンジパックトアレイに配列することができる。本明細書に記述されるアレイは、1mm2当たり1~9個、例えば、1mm2当たり1、2、3、4、5、6、7、8または9個のアドレス可能なエレメントのうちいずれか1つのアドレス可能なエレメントを有する。
【0143】
最終的な測定の変動係数の観点で沈着されたスポットの品質(均一性、形状、位置公差等)および定量的再現性に関する重要な変数は:標的からの距離、流路内圧力;弁の開放時間;液滴容積;軸の動作速度;分注間の時間;進行中のおよび過程間の清掃および調整におけるセラミックチップ;実際のスポット沈着過程の前の前スポッティングルーチン;吸引容積および吸引速度;およびマイクロタイタープレートの幾何学的形状である。沈着過程を通じて、リキッドハンドリング機器内にあるときに溶液中に抗原結合粒子を保ち、吸引および分注サイクルの間に液体流路を充分に清掃することによって異なる抗原コーティングビーズを沈着する間あらゆる相互汚染を避けることが義務付けられる。
【0144】
無欠陥沈着過程を達成するには、あらゆる単一分注欠損事象を検出することが重要であり、例えば、粒子溶液に、固相への液体の沈着の成功を検出することを可能にするが、実際の試験手順の間に洗い流されることになる恒久的でない着色剤を添加することによる。そのようにして、欠落した液滴を検出することができ、最初の分注の一巡後に遡及的に追加することができ、それにより100%の回数100%完全なバッチになる。
【0145】
固体支持体
沈着過程は、より大きなシートまたはプレートの固体支持体材料上で通常行われ、それにより各バッチは、数百から数千個の同一のアレイから一般になる。連続的な過程は、必要な数の分注流路を整列させる工程と、基質をプレート上へまたはさらにリールを分注チップ下のリールシステムへ動かす工程と、位置取りおよび分注事象を時間調節する工程によって実現され得、その結果、粒子スポットの規則正しいアレイが、固体支持体上に生じる。
【0146】
分注工程後、固体支持体を、さらなる組み立てまたは貯蔵のために適切なサイズの一片に切断する。別法として、一片のサイズが沈着される粒子の群の数および個々の群の密度に対応する場合、固体支持体は、抗原コーティングビーズの沈着前でも適切なサイズに切断され得る。好ましい実施形態において、固体支持体の個々の一片は、四角形であり、5×5mm~200×200mmまたはより大きく、さらに好ましくは10×10~20×30mmである。
【0147】
固体支持体は、ニトロセルロース、積層ニトロセルロースもしくはジアゾ紙またはポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリフルオロエチレン、ポリエチレンオキシ、ポリビニリデンジフルオリド(PVDF)、ポリアクリルアミド、ポリカーボネート、ポリアロマー、ポリビニル、ナイロンなどの有機ポリマー、ならびにそのコポリマーおよびグラフトまたは他の官能性プラスチックで構成され得る。固体支持体は、ガラス、二酸化ケイ素、制御された多孔性ガラス(CPG)または逆相二酸化ケイ素などの無機であることもできる。固体支持体の構成は、膜または表面の形態であることができ、平面、実質的な平面、または非平面であり得る。固体支持体は、多孔性または無孔性であることができ、膨潤または非膨潤特性を有することができる。
【0148】
固体支持体の性質は、タンパク質抗原で飽和された粒子を保持することができる多孔性または無孔性材料であることができる。例えば、ニトロセルロースシートまたは積層ニトロセルロースシートを固相として使用することができ、それによってニトロセルロースの細孔径および正確な組成は、試験の成績に著しい効果を有し得る。生体分子を共有結合することができるためのニトロセルロースの化学的活性化でさえ、試験結果に有益な効果を有する可能性がある。異なる型のニトロセルロース膜が、固体支持体として利用可能であり、そのようなニトロセルロース膜は、細孔径、流速または基部材料の点で異なる。好ましくは、細孔径は、粒子サイズの範囲にあるものとし、その結果粒子は、細孔によって表面上に保持され得るが、同時に固体支持体の構造内に消失しない、その消失は、抗体が粒子の表面に結合することをより困難にすることになる。
【0149】
固相は、耐久性があり、数時間のインキュベーションおよび水溶液中での洗浄を必要とする典型的なELISA手順に適合性があるものとする。表面への非特異的結合は、内因的に低いかまたは固相へのあらゆる非特異的結合をブロッキングして必要な信号対雑音比(ノイズ標準偏差で割ったシグナル)を達成することが可能でなければならないかいずれかであるとする。
【0150】
試験の貯蔵およびカートリッジへの組み立て
固体支持体に沈着させた後に粒子を安定化させるために、固体支持体を、適当な温度、好ましくは2~8℃で保存することができる。加えて、糖または他の安定化物質を、粒子沈着後にスプレーコーティングによって添加することができる。安定性の要件は、製造後少なくとも1年間、好ましくは製造後少なくとも30ヵ月間であり、30か月間は、製造後の最終使用者への出荷に6ヵ月間が残り、最終使用者において24ヵ月間の貯蔵寿命が残ることになる。
【0151】
実用的な取扱い、貯蔵および出荷ならびにキット梱包目的の場合、固体支持体の切断したストリップは、以下でより詳細に記述されるカートリッジへと組み立てられることになる。カートリッジは、固体支持体マクロアレイの物理的保護を提供するだけでなく、試験の自動処理、リキッドハンドリングおよび潜在的に汚染されている材料の廃棄を大いに促進する非常に精巧で、機能的な容器も提供する。
【0152】
アッセイ手順
本明細書に記述される抗原アレイを使用して検出抗原または一組の検出抗原に特異的な免疫グロブリンを検出するin vitro方法が、本明細書にさらに記述される。特に、本方法は、
(i)本明細書に記載の抗原アレイを準備する工程と、
(ii)アレイをサンプルとインキュベートする工程と、
(iii)アレイを検出試薬とインキュベートする工程と、
(iv)任意選択でアレイをシグナル生成試薬とインキュベートする工程と、
(v)検出可能なシグナルを測定する工程と
を含む。
【0153】
陰性対照シグナルと比較して増大した検出可能なシグナルは、サンプル中に免疫グロブリンがあることを示し、シグナル増加がないことは、サンプル中に免疫グロブリンがないことを示す。
【0154】
一部の実施形態において、検出可能なシグナルは、比色、蛍光、電気または化学発光シグナルである。
本明細書に記載の生物学的アッセイは、単一の解析手順で複数の抗原に対する特異的免疫グロブリンを検出する目的を有し、その方法は、ELISA原理に基づき、通常以下の基本的な工程:
1)前洗浄
2)ブロッキング
3)サンプルとのインキュベーション
4)洗浄
5)検出試薬とのインキュベーション
6)洗浄
7)任意選択で:シグナル生成を伴うインキュベーション
8)任意選択で:シグナル生成を停止する
9)結果の検出および測定
からなる。
【0155】
一部の実施形態において、本明細書に記述される抗原アレイを使用して検出抗原または一組の検出抗原に特異的な免疫グロブリン(例えば、アレルゲンまたはアレルゲンの組)を検出する方法は、
(i)本明細書に記載の抗原アレイ(例えばアレルゲンアレイ)を準備する工程と、
(ii)アレイをサンプル(例えば血清または全血または処理血)とインキュベートする工程と、
(iii)アレイを検出試薬(例えば、検出可能なシグナルで直接標識された抗IgEもしくは抗IgG抗体またはIgE特異的もしくはIgG特異的アプタマー、酵素にコンジュゲートされた抗IgEもしくはIgG抗体またはIgE特異的もしくはIgG特異的アプタマー)とインキュベートする工程と、
(iv)任意選択でアレイをシグナル生成試薬(例えば、酵素反応用基質)とインキュベートする工程と、
(v)任意選択で停止溶液を添加して、シグナル生成を終わらせる工程と、
(vi)検出可能なシグナルを測定する工程と
を含む。
【0156】
その点でサンプルは、患者血清、全血もしくは処理血液、鼻汁、尿、他の体液または組織からの細胞溶解物もしくはホモジネート等であることができる。サンプルは、単一の対象からまたは対象のプール(例えば、対象の大規模集団をスクリーニングする場合、10、20、30名の対象の血清のプール)からあることができる。一部の実施形態において、サンプルは血液サンプル(例えば血清サンプル)である。一部の実施形態において、サンプルサイズは、1μL~2000μLのうちのいずれか1つ、例えば1μ~10μL、10μL~50μL、50μL~100μL、100μL~500μL、500μL~2000μLのうちのいずれか1つである。一部の実施形態において、サンプルサイズは、1μL、2μL、3μL、4μL、5μL、10μL、20μL、50μL、100μL、250μL、500μL、または1000μL、または2000μLのうちのいずれか1つである。一部の実施形態において、サンプルは原液である。一部の実施形態において、サンプルは希釈される。一部の実施形態において、サンプル希釈は、1:1~1:10、1:10~1:100、1:100~1:1000または1:1000~1:10000である。一部の実施形態において、サンプル希釈は、1:10、1:100、1:1000または1:10000のうちのいずれか1つである。必要なサンプルの実際の量は、インキュベーション反応に使用されるサンプル希釈に依存し得る。
【0157】
たとえサンプルが完全な状態でないとしても、試験の成績は、生体サンプルによって著しく影響されないものとし、これは日常的な採血中にしばしば起こる。典型的な問題は、脂肪血症、溶血性もしくは黄疸性サンプル液体、高タンパク質含有量または高抗体含有量(IgG、IgE等)サンプルであり得る。
【0158】
検出試薬は、生物起源の親和性結合剤であり、好ましくは免疫化またはランダムライブラリを介した人為選択いずれかによる抗体(例えば検出抗体)である。他の親和性結合剤は、タンパク質または核酸、アプタマーもしくはアフィボディなど人工的に選択された結合剤であることができる。
【0159】
最初の洗浄工程は、そうしないとサンプルインキュベーション工程において固相結合抗原および遊離可溶性抗原の結合と競合することになる非永久的に結合しているあらゆる粒子を固相から除去することを目的とする。
【0160】
一般論として、洗浄工程は、1回の工程ではなく、通常繰り返し実施して、検出限界未満のあらゆる不要な試薬の最終的な除外を達成する。特に、洗浄工程の使用は、3~5回繰り返すことができ、それによって容積の希釈が、カートリッジを傾けることによって推測され、新たな洗浄溶液の添加は、少なくとも30倍であり、それにより3巡の洗浄後に希釈は、およそ27000分の1になり、どんな追加の洗浄工程も、30倍の倍率で希釈をなおさらに増大させることになる。
【0161】
ブロッキング工程は、検出されるが、固定化した抗原に特異的でない抗体などサンプルの構成要素の非特異的結合、および検出試薬の非特異的結合のあらゆる可能性をブロッキングすることを意図する。
【0162】
ブロッキングは、サンプルとのインキュベーションの前に一度行うことができ、もしくはアッセイのあらゆる工程の前に繰り返し行うことができ、またはブロッキング試薬を添加して、測定しようとするサンプルを希釈することができ、もしくはさらに検出試薬(例えば検出抗体、アプタマーまたはアフィボディ)をブロッキング試薬に含有させることもできる。
【0163】
その点でブロッキング試薬とは、生物学的または他の起源の任意の物質のことを指し、血液もしくは血清などの複雑な生体サンプルと固相上の多数の抗原との間で通常起こる意図しないまたは非特異的な結合反応を軽減することができる。ブロッキングは、しなければさらなる非特異的結合、および信号対雑音の生成の減少を引き起こす可能性がある潜在的抗原性タンパク質を好ましくは含まない。
【0164】
例えば、ウシ血清アルブミン(BSA)は、潜在的食物アレルゲンであり、かつウシの乳または肉製品をよく消費するヒトにおいて非関連IgGのよくある誘導物質なので、ヒトIgEまたはIgGの検出を含む場合、安定化またはブロッキング剤として単純なELISA手順に多用されるBSAは、一般に不適である。したがってBSAによってブロッキングされるどの結合部位も、サンプルが検出されるサブクラスのそれぞれの抗BSA抗体を含有する場合よりも、非特異的バックグラウンドに関する問題をより多く与える可能性がある。類似の環境は、他の領域において頻繁な使用が見られる多くの安価で容易に利用可能なブロッキング試薬を使用することを実行できなくする。
【0165】
したがって、タンパク質ブロッカーを使用する場合、それらは、どんなヒト抗体も通常結合しないヒト血清アルブミンなどヒトに対して免疫原性であるべきでない。
ブロッキングの代替方法は、抗原-抗体結合複合体(一般に10-9Mまたはより低い親和定数)ほど強くなく、特異的でない相互作用パートナー間の弱い結合を不安定化することができる界面活性剤、糖、多価アルコールまたは他の化合物を含む。
【0166】
サンプルまたは検出試薬(例えば検出抗体)とのインキュベーション工程は、通常全体手順で比例的に最も長時間かかり、数分から数時間の範囲のインキュベーション時間である。好ましくは、サンプルのインキュベーションは、2時間未満かかり、検出試薬とのインキュベーションは、30分間未満かかる。検出試薬が、検出可能な標識をすでに有している場合、シグナル生成インキュベーション工程を、省略することができる。一方、特に酵素的シグナル生成を使用する場合、シグナル生成試薬との典型的なインキュベーション時間は、好ましくは5分間未満である。
【0167】
インキュベーションの間、カートリッジの本設計により、液体を撹拌し、それによりサンプルを混合し、それぞれの抗原への親和性結合剤の物質移行を増大させることが可能になる。好ましくは、撹拌は、入れ物のふちから液体をあふれさせないために十分柔らかいが、混合しないインキュベーションと比較して動力学的反応を十分に増大させるために十分堅いカートリッジの長辺に沿った動作にしたがう。
【0168】
別で、アッセイ動態は、温度もしくは液体をより効率的に混合することを意図する電磁波によって増大させるまたは制御することができる。
検出および測定
検出可能なシグナルを生成する場合、当業技術者に公知のいくつかの可能性がある。最も単純な形態において、特定の免疫グロブリンが付いた抗原部位に結合する検出試薬は、色もしくは蛍光染など励起可能な化合物または金ナノ粒子または着色したラテックスナノ粒子または同様のもののいずれかで直接標識される。そのような場合、検出は、シグナル生成のためのいかなる追加工程も必要とせず、シグナルは、結合していない検出試薬を洗い流した直後に読み取ることができる。
【0169】
好ましい実施形態において、酵素的シグナル生成は、酵素にコンジュゲートされた検出試薬を使用することによって利用され、その酵素は、シグナル生成試薬に含有される基質を検出可能なシグナルに転換する。
【0170】
検出試薬にコンジュゲートされる酵素には、それだけには限らないが、アルカリホスファターゼ(AP)、ワサビペルオキシダーゼ(HRP)またはβ-ガラクトシダーゼ(GAL)がある。これらの酵素は、それぞれ、基質(NCIB/NBTなど)から着色した沈殿物を生じさせることができ、または発光団転換(例えばLumingen APS-5)から光子を生じさせることができ、または基質を転換して特定の波長、例えばo-ニトロフェニル-β-D-ガラクトピラノシダーゼで吸光係数を変化させることができる。
【0171】
必要に応じて、酵素反応は、酵素による基質の転換に強く干渉する物質、いわゆる停止溶液(例えば蒸留水、EDTA、NaOH、HCl等)を添加することによって直ちに停止され得る。
【0172】
一部の実施形態において、検出試薬は、色化合物、金ナノ粒子もしくは着色したラテックスナノ粒子、または励起可能な化合物で直接標識された抗ヒトIgE抗体である。一部の実施形態において、検出試薬は、色、金ナノ粒子、着色したラテックスナノ粒子、または励起可能な化合物で直接標識された抗ヒトIgG抗体である。一部の実施形態において、検出試薬は、ヒトIgEまたはIgG抗体を特異的に認識するアプタマーもしくはアフィボディであり、アプタマーまたはアフィボディは、色、金ナノ粒子、着色したラテックスナノ粒子または励起可能な化合物で直接標識される。一部の実施形態において、検出試薬は、酵素(例えば、AP、HRPまたはGAL)とコンジュゲートされた抗ヒトIgEまたはIgG抗体であり、方法は、アレイを本明細書に記述される方法の工程(iv)によるシグナル生成試薬(例えば、酵素反応の基質)とインキュベートする工程と、任意選択で、工程(iv)の後に停止溶液(例えばddH2O、EDTA、NaOH、塩酸、硫酸、または触媒反応のためのpH値要件のため反応を不可能にする、化学的に基質を破壊もしくは改変する、酵素の活性中心をブロッキングする、もしくは反応をわずかなレベルに遅らせる等のいずれかによって酵素反応に干渉し得る任意の試薬)をさらに添加する工程とを含む。
【0173】
一部の実施形態において、検出試薬は、2つの成分:(i)抗IgEまたは抗IgG抗体を含む第1成分;および(ii)抗IgEまたは抗IgG抗体を認識する試薬を含む第2成分を含み、第2試薬は、色もしくは励起可能な化合物で直接標識されるまたは酵素とコンジュゲートされるかいずれかであり、抗原アレイは、本明細書に記述される方法の工程(iii)により(i)次いで(ii)とインキュベートされる(間に洗浄工程を含む)。例えば、第1成分は、ラット、マウス、ウサギ等などの生物から得られる抗体など特定の型の抗IgEまたは抗IgG抗体であることができ、第2成分は、前記型の抗体、例えば抗ラット、抗マウス、抗ウサギ抗体等に結合する抗体であることができる。
【0174】
特に、アレルギーと関連するIgE抗体を検出するin vitro方法であって、
(i)本明細書に記載のアレルゲンアレイを準備する工程と、
(ii)アレイをサンプル(例えば血清または全血または処理血)とインキュベートする工程と、
(iii)アレイを検出可能なシグナルで直接標識された抗IgE抗体もしくは抗IgEアプタマー、または酵素にコンジュゲートされた(例えばAP、HRPまたはGALにコンジュゲートされた)抗IgEもしくは抗IgEアプタマーとインキュベートする工程と、
(iv)任意選択で、アレイをシグナル生成試薬(例えば、酵素反応の基質)とインキュベートする工程と、
(v)任意選択で停止溶液(例えばddH2O、EDTA、NaOH、塩酸、硫酸または酵素反応に干渉し得る任意の試薬)を添加して、シグナル生成を終わらせる工程と、
(vi)検出可能なシグナルを測定する工程と
を含む、方法が本明細書に提供される。着色したシグナルの検出は、単純なCCDカメラ、CMOSカメラ、従来通りのフラットベッドスキャナーなどのレーザースキャナ、または固体支持体の通常白色もしくは透明なバックグラウンドと結合反応が検出された着色された反応部位との強度差異を測定することができる他の任意のデバイスによって進めることができる。光子測定の場合、充分な感度を持つカメラまたは光電子増倍管デバイスを使用して、シグナルを個別に測定することが必要である。
【0175】
定量化の場合、個々の抗原が固定化されている領域を同定することが第1に必要である。これは、検出可能で強いシグナルを常に与える陽性対照スポット、いわゆるマーカースポットのパターンによって促進され得る。例えば、陽性対照スポットは、精製したヒトIgE抗体と結合された一群のビーズであることができる。マーカースポットの位置および方向から、他の全ての部位の相対的な位置およびそのサイズは公知であり、取得した画像またはデータポイントのアレイ内に位置決めすることができる。
【0176】
固定化された抗原飽和粒子の一般に丸い各領域に対して、シグナル統合は、合計シグナルに予想されるシグナル内にある各ピクセルを加えることによって算出することができ、外側にある各ピクセルは、バックグラウンドに加えることができる。加えて、平均、中央値および標準偏差を、シグナルおよびバックグラウンドについて算出することができる。全ての算出は、当業者に公知の、例えばNIHのImageJのような画像分析ソフトウェアツールによって取り扱うことになる。
【0177】
本明細書に記述される方法において、ローカルバックグラウンド算出が好ましく、それは、スポット領域の直径の3倍の中にあるが、同時にいかなる抗原部位の中にもない全ピクセルを合計することによって行われる。
【0178】
加えて、統計的管理手段を使用して、中央値変動、シグナル変動、ノイズ変動に対する平均および外れ値検出などシグナルの品質または信頼性に基づいて判断することができる。
【0179】
測定可能な全シグナル-バックグラウンド、または信号対雑音比のいずれかに関して閾値を適用して、生の測定データをフィルターにかける。好ましくは、バックグラウンドノイズ変動より少なくとも2倍高いシグナルだけを、陽性シグナル(例えば、検出可能なシグナル)と見なす。
【0180】
結果の標準化および較正
生測定データの取得後、生分析データから臨床的に関連する反応単位にするために必要とされる工程が2つある。
【0181】
本明細書に記述される方法において、結果の第1の標準化および第2の較正を達成するために異なる2つの方法が利用される。
標準化は、その点に関して測定、日、ロットまたは操作者間の全体のシグナルレベルの変動を平均して同一レベルに標準化する過程である。そのようにして、インキュベーションの正確な時間調節の変動、周囲温度変動による差異、サンプルマトリックスに起因する変動等は、ある程度補償され得る。
【0182】
本適用の場合、アッセイにおいて測定される特定の抗体サブクラスの標準曲線を使用して、この標準化を達成する。精製抗体、例えば、ヒトIgEが、マクロアレイ形式の異なる部位に濃度を増大させて固定化される。この手法によると、標準曲線上で最も高い濃度は、100%シグナルと見なされ得るが、標準曲線の各公知の希釈は、濃度値において対応する減少を割り当てる。曲線の全ての点から、曲線フィッティングを算出し、それを使用して、各生測定値に曲線方程式を適用することによって任意の強度単位を相対的シグナル単位に変換する。
【0183】
この方法により、測定間の平均シグナル強度の標準化が可能になるが、それぞれのバッチにおける各個々のパラメータに対する個々の揺らぎを補償することはできない。一般に、各作製ロットにおいてある程度の製造変動が存在し、これらの変動は、例えば、パラメータ1が、次いで長時間平均より10%高い可能性があり、パラメータ2が、長時間平均より5%低い可能性があり、パラメータ3が、仕様内である可能性があるようにしばしば系統的である。そのような差異を必要最低限になくすために、製造業者の品質管理現場ですでに明確に定義された対照サンプルを使用して長時間平均から任意の系統的変動を検出することが、適している。この系統的変動が同定されたら、最終使用者にこれらの差異をデータシートの形態、または好ましくは、各バッチ上に印刷された2次元バーコードなどの自動コーディング形式で伝達することが適している。このバーコードを読み込み、解釈することによって、ソフトウェアツールによって促進される最終使用者は、製造業者の現場におけるQC手順の間に同定された変動にしたがって測定値を自動的に調整でき、上記の例において次いでパラメータ1測定を10%だけ減少させることにより調整し、パラメータ2を5%だけ増大させることによって調整し、パラメータ3を変えないままにする。結果的に、設定可能で、統計学的に正当化されたこのデータ調整がないよりも低いレベルに免疫アッセイの合計変動を減少させることが可能になるものとする。
【0184】
最終的な工程において、結果の実際の較正は、達成されなければならない。この点で較正は、調整された相対的な反応単位を何らかの形で絶対単位に転換する過程である。絶対単位は、研究室間または時点間で、さらにシステムに対する著しい変更が行われた場合でも、結果を他の製造業者のシステムと比較することを可能にする値としての役割を果たすものとする。
【0185】
較正は、利用可能であれば、国際的に認められた参照標本に対して製作することができる。多くの疾患領域について、定量的参照標準を、購入し、較正に使用することができる。較正の通常の過程は、しかしながら、単にそれが実際の測定を行うよりシステムを較正するために著しく多くの労力およびコストを必要とするので、多パラメータアッセイ形式における使用に実用的でない。
【0186】
単一パラメータアッセイにおける較正の標準的な手法は、相応する較正であり、そのため特定の抗原の測定結果、後者の濃度未知のサンプルから測定されるものとする抗体相互作用が測定され、生測定結果を絶対定量化測定結果に変換するための参照曲線を使用して、それぞれの抗原に対する免疫グロブリンの定義済みの濃度を持つ定義済みのサンプルの測定結果に対して比較される。
【0187】
これは、較正目的で比較的少数の標準的な標本を測定する場合、比較的大きな数の未知のサンプルと比較して容易に達成される。
しかしながら各反応において測定される数百個の個々のパラメータ、および同一抗体サブクラスの結合を示すが異なる抗原に対しては示さない各パラメータを用いる適用において、各個々のパラメータに相同な較正曲線は適しておらず、著しい追加の変動をおそらく導入することになる。したがって、いわゆる非相同な較正手法が、利用される。較正曲線は、違ったサンプルにおいて測定されるそれぞれの抗体の異なる濃度の単一抗原抗体測定のためには作製されないが、一連の異なる固定化抗原に対する一連の特定の抗体濃度を示す単一サンプルのためには作製される。本方法は、同じ免疫グロブリンが異なる抗原に対する結合について検出される場合に、各標的抗原に対する抗体応答を個別に較正することは絶対要件でないが、検出される免疫グロブリンの各クラスに対してだけ同じ較正曲線を保つことは絶対要件であるという事実に依存する。
【0188】
ソフトウェアツールによって支持される結果の解釈
多パラメータ免疫学的測定の記述される適用は、患者の感作プロファイルの通常の単一パラメータに基づく臨床検査より有意に多くの試験結果を作製することになる。
【0189】
結果的に、バイオインフォマティクスツールの適用は、内科医がより簡単にデータを検討し、可能な最善の診断結論をいつでも得ることができるようになる形式への結果の解釈および視覚化を促進するものとする。以下の因子は、ソフトウェアで促進される提示または指針に関連すると見なされなければならない:
1)病状の全般的な分類、例えば、プロファイルに基づいて、患者が、試験が命じられた推定される疾患を患う可能性が高い。
【0190】
2)疾患の詳細な分類、例えば、疾患の状態または疾患の原因を示す関連するパラメータもしくはパラメータのパターン。
3)患者のリスク分類、例えば患者を、特定の標的に対する抗体応答のレベル、または標的の組合せに対する抗体応答のパターン、または特定の標的に対する防御抗体の非存在、または異なる抗原標的に対する異なる抗体サブクラスの比率で区別することによる。
【0191】
4)患者の処置に対する転帰、例えば適当な医薬品を選択すること、回避について正しい勧告を与えることまたはさらにおそらく無効な医薬品を投与することを回避することによる。
【0192】
臨床解釈に対する完全なパネル
高度に多重化された免疫アッセイの主要な利点は、1つの試験の中に関連する全ての臨床的指標を含む可能性であり、これは、各一人の患者に対して試験をあらかじめ選択し、1回の分析工程で常に完全な臨床検査を得るための内科医に対する負担を減少させる。
【0193】
カートリッジ設計および自動化に関連する利点
本明細書に記述される抗原アレイのいずれかのための試験容器、廃水のための貯蔵槽、任意選択で同定および較正のためのバーコードを含むカートリッジが、本明細書にさらに提供される。カートリッジは、任意の検出試薬(例えば、標識抗体、標識アプタマーまたは標識アフィボディ)、シグナル生成試薬(例えば酵素基質)、および停止溶液(例えば蒸留水、EDTA、NaOH、HCl等)のための貯蔵槽または組み込まれたバイアルのうち1つまたは複数をさらに含むことができる。一部の実施形態において、カートリッジは、1つまたは複数の対照サンプル(例えば陽性および/または陰性対照)および/またはアッセイ手順の間に使用される1つまたは複数の緩衝液(例えば洗浄緩衝液、ブロッキング緩衝液、希釈緩衝液)用の貯蔵槽または組み込まれたバイアルをさらに含む。一部の実施形態において、陽性対照サンプルは、定義された量の免疫グロブリン(例えば、全IgGもしくはIgEおよび/または特定の抗原/アレルゲンに特異的な定義済みのIgGもしくはIgE)を含む市販されている標準化されたサンプルである。一部の実施形態において、陽性対照サンプルは、それぞれの免疫グロブリンについて標準アッセイにおいて陽性と検証または試験されたサンプルである。一部の実施形態において、陰性対照サンプルは、いかなる免疫グロブリンも含有しない市販されているサンプルまたはそれぞれの免疫グロブリンについて標準アッセイにおいて陰性と検証または試験されたサンプルである。カートリッジは、試験容器中の抗原アレイまたは中に置かれた抗原アレイとともに試験容器全体を穏やかに動かして、アレイのインキュベーション期間ならびに完全な洗浄の間アレイ上でのサンプルおよび緩衝液の均等な分布を確実にする手段をさらに提供することができる。カートリッジの寸法は、アレイのサイズ、使用する試薬の型および数に依存することになる。好ましくは、サイズは、1cm×1cm×5cm~2cmx5cm×15cmの範囲になる。
【0194】
カートリッジへの抗原アレイの固着は、周囲の正確な寸法に切断することによる機械的固着を含む、ストリップの端における機械的固着を使用する、またはELISA手順の間に洗浄およびインキュベーション工程にも耐える生体適合性接着剤を使用するいくつかの方法のうち1つによって行うことができる。固着の重要な態様は、インキュベーション工程の間に非特異的結合が起こり得るカートリッジ内またはカートリッジと固相試験ストリップの間のギャップ、領域もしくは穴を生じさせないことであり、これは検出工程において全体の非特異的シグナル生成を大いに増大させ、したがってアッセイのピーク信号対雑音およびアッセイ全体の成績を減少させるので、効率的な洗浄に適さない場合がある。
【0195】
当業技術者に周知の、インキュベーションおよびシグナル検出の位置効果がない因子が、同様に重要である。典型的なバイアスは、いわゆる端効果であり、アレイの辺縁近くおよび壁またはバイアルを囲むカートリッジに隣接した反応部位(スポット)によって生じ、アレイ中央にあるスポットよりも有意かつ再現性よくより大きいかまたはより低いかいずれかである。差異は、撹拌もしくは混合中の液体の挙動、選択された場所での結合剤の蓄積、もしくは表面張力、またはより固着された辺縁に囲まれており、したがってより中央にあり、端もしくは壁による阻害が少ない部位より自由拡散が限定される反応部位の動力学的差異に起因し得る。空間的温度差異さえ、観察される差異、および器の幾何学的形状に起因する検出事象におけるバイアスに影響を及ぼす可能性がある。例は、円形のマイクロウエルプレート内に沈着されたマイクロアレイを有するものであり、中心にあるスポットは、一般に、プレートの辺縁により近いスポットと大きく異なった挙動を示す。一部の製造業者が「円形アレイ」またはパターンを印刷することによってこの制限を克服しているが、これは当然ながら、使用可能な領域および領域当たりの外観の数を大幅に減少させ、反応に数百個の固有のアッセイを含む真の多パラメータアッセイに適さない。
【0196】
示された発明におけるカートリッジ設計は、さらなる利点を提供する。カートリッジは、キットそのものとほぼ見なすことができ、したがって設計された入れ物内に試験手順に必要な全ての液体および試薬を含有することができる。カートリッジは、ロット同定のためのバーコードを含むことができ、較正等に関する補正係数をそのようなバーコードに保存することもできる。
【0197】
同様に、一組の使い捨てプラスチックチップをカートリッジに搭載することができ、ピペッターは、過程のためにそこからチップをつかみ、使用後にカートリッジに再投入することができる。そのようにして、全ての液体が、設計された廃棄物投入器によりカートリッジ自体の中に集められるので、周囲のシステム部分(例えばリキッドハンドリング)が、潜在的な感染性の生物学的危険物質である液体と接触することは起こらない。したがって、機器のためにどんな特別な清掃または消毒手順も必要ない。
【0198】
カートリッジは、そのような設計に基づいて試験手順に必要な全ての液体を捕捉またはさらに含有することのいずれもできるので、それは、リキッドハンドリング部分だけを、維持する必要がなくまたは機器の通常予想される寿命の間にどんな弁もしくは配管も置き換える必要がない使い捨てチップを使用する空気置換ピペッターにできるようにアッセイ自動化を設計することが適している。全体の開発コストおよびそのようなほぼ保守不要の機器を所有するコストは、繰り返し置き換える必要がある多くの可動部分、弁および管を含有する典型的な自動免疫分析器より非常に低い。
【0199】
洗浄工程の間、カートリッジは、単純に一方の側に傾けられ、それにより、含有されている液体は、それが捕捉され、最終的に処分されるカートリッジ内の貯蔵槽に流れ込む。
本明細書に記載の抗原アレイまたはカートリッジ、検出試薬、対照サンプル(例えば陽性または陰性対照)、アッセイ中に使用される緩衝液および使用のための説明書を含むキットが、本明細書にさらに提供される。キットは、シグナル生成試薬(例えば酵素の基質)および任意選択で停止溶液(例えば蒸留水、EDTA、NaOH、HCl等)をさらに含むことができる。一部の実施形態において、キットは、抗原アレイ(例えばアレルゲンアレイ)、IgEまたはIgGに特異的な検出試薬(例えば、直接標識または酵素とコンジュゲートされている抗IgEもしくは抗IgG抗体、IgEもしくはIgGに特異的なアプタマーもしくはアフィボディ)、緩衝液(例えば洗浄緩衝液、ブロッキング緩衝液、希釈緩衝液)、および任意選択でシグナル生成試薬(例えば酵素基質)を含む。一部の実施形態において、キットは停止溶液(例えば蒸留水、EDTA、NaOH、HCl等)をさらに含む。
【0200】
さらに、本明細書に記載の1つまたは複数のカートリッジのための容器、ピペッターおよびシグナル検出のためのデバイス(例えばCCDカメラ、CMOSカメラ、レーザースキャナ)を含む装置が、本明細書に提供される。
【0201】
本発明は、以下の項目をさらに含む:
1.固形担体に固着させた抗原コーティングビーズの群を含む抗原アレイであって、各群が、
(i)1つの検出抗原でコーティングされたビーズ、または
(ii)一組の検出抗原でコーティングされたビーズ
を含み、好ましくは、固形担体がシートまたはプレートであり、検出抗原が、アレルゲン、感染症マーカーまたは自己抗原である、抗原アレイ。
【0202】
2.検出抗原が、核酸および/またはアミノ酸、好ましくはタンパク質、ペプチド、抗体またはDNA分子で製造された、生体分子または有機もしくは無機化合物である、項目1の抗原アレイ。
【0203】
3.検出抗原が、アレルゲンである、項目1または2のうちいずれか1つの抗原アレイ。
4.検出抗原が、感染症マーカーである、項目1から3のいずれか1つの抗原アレイ。
【0204】
5.検出抗原が、自己抗原である、項目1から4のうちいずれか1つの抗原アレイ。
6.検出抗原が、組換えDNA技術によって作製された抗原、または生物材料から単離され精製された抗原である、項目1から5のいずれか1つの抗原アレイ。
【0205】
7.検出抗原の組が、2つ以上の抗原を含有する生物学的供給源材料からの抽出物または溶解物から得られる、項目1から6のいずれか1つの抗原アレイ。
8.検出抗原が、単一エピトープ、抗体結合エピトープをいくつか含む単一高分子または種々のエピトープを含有する異なる抗原を含む様々なタンパク質の混合物を含む、項目1から7のいずれか1つの抗原アレイ。
【0206】
9.ビーズが、マイクロまたはナノビーズである、項目1から8のいずれか1つの抗原アレイ。
10.ビーズが、直径5~500nm、好ましくは直径200~500nmのサイズを有する、項目1から9のいずれか1つの抗原アレイ。
【0207】
11.ビーズが、ラテックスビーズ、ポリマープラスチックビーズ、好ましくはポリスチレンビーズ、生体適合性ポリマーで製造されたビーズまたはガラスビーズ、好ましくは二酸化ケイ素ビーズである、項目1から10のいずれか1つの抗原アレイ。
【0208】
12.ビーズの表面が、多孔性または無孔性である、項目1から11のいずれか1つの抗原アレイ。
13.検出抗原が、共有結合的または非共有結合的に結合される、項目1から12のいずれか1つの抗原アレイ。
【0209】
14.検出抗原が、ビーズに受動的吸着によって、好ましくは疎水性および/または静電性結合によって非共有結合的に結合される、項目1または13のいずれか1つの抗原アレイ。
【0210】
15.検出抗原が、抗原スペーサーによって結合される、項目1から14のいずれか1つの抗原アレイ。
16.検出抗原が、結合される抗原に存在するエピトープを提示するのに好ましい方向を生じさせるように結合される、項目1から15のいずれか1つの抗原アレイ。
【0211】
17.固形担体が、多孔性または無孔性材料のシートまたはプレート、好ましくはニトロセルロースシート、より好ましくは積層ニトロセルロースシートである、項目1から16のいずれか1つの抗原アレイ。
【0212】
18.同じまたは異なる型のビーズを含む、項目1から17のいずれか1つの抗原アレイ。
19.アレイが、少なくとも25個の異なる群を含む、項目1から18のいずれか1つの抗原アレイ。
【0213】
20.抗原コーティングビーズの群が、接触法または非接触法を使用して、好ましくはソレノイド分注システムを使用して固形担体上に固着される、項目1から19のいずれか1つの抗原アレイ。
【0214】
21.各群が、四角形のアレイまたはオレンジパックトアレイのアドレス可能なエレメントとして、好ましくは1mm2当たり1個のアドレス可能なエレメントの密度で固着されている、項目1から20のいずれか1つの抗原アレイ。
【0215】
22.抗原コーティングビーズが、固形担体に固着させたアレルゲンコーティングビーズであり、好ましくは固形担体が、シートまたはプレートであり、各群が、
(i)1つのアレルゲンでコーティングされたビーズ、または
(ii)一組のアレルゲン、好ましくはアレルゲン抽出物でコーティングされたビーズ
を含む、項目1から3および6から21のいずれか1つの抗原アレイ。
【0216】
23.検出抗原または一組の検出抗原に特異的な免疫グロブリンを検出する方法であって、
(i)項目1から22のいずれか1つによる抗原アレイを準備する工程と、
(ii)アレイをサンプルとインキュベートする工程と、
(iii)アレイを検出試薬とインキュベートする工程と、
(iv)任意選択でアレイをシグナル生成試薬とインキュベートする工程と、
(v)検出可能なシグナルを測定する工程と
を含む、方法。
【0217】
24.免疫グロブリンが、アレルギーと関連するIgE抗体である、項目23の方法。
25.免疫グロブリンが、感染症または自己免疫反応と関連するIgG抗体である、項目23の方法。
【0218】
26.サンプルが、対象または対象のプール由来の生体液、好ましくは血清、全血もしくは処理血、鼻汁もしくは尿、細胞溶解物または組織ホモジネートである、項目23から25のいずれか1つの方法。
【0219】
27.検出試薬が、免疫グロブリンに特異的な親和性結合剤であり、好ましくは抗体、アプタマーまたはアフィボディである、項目23から26のいずれか1つの方法。
28.検出試薬が、抗IgE抗体、IgE特異的アプタマー、IgE特異的アフィボディ、抗IgG抗体、IgG特異的アプタマーまたはIgG特異的アフィボディである、項目23から27のいずれか1つの方法。検出試薬が、(i)好ましくは着色もしくは蛍光化合物または金ナノ粒子もしくは着色したラテックスナノ粒子で直接標識されており;または(ii)酵素にコンジュゲートされている、項目23から27のいずれか1つの方法。
【0220】
29.アレイを項目23の工程(iv)によるシグナル生成試薬とインキュベートする工程をさらに含み、検出試薬が、酵素にコンジュゲートされ、シグナル生成試薬が、前記酵素用の基質を含む、項目23から28のいずれか1つの方法。
【0221】
30.工程(iv)の後に停止溶液を含むアレイをさらに含む項目30の方法。
31.アレルギーと関連するIgE抗体を検出する方法であって、
(i)項目22による抗原アレイを準備する工程と、
(ii)アレイをサンプルとインキュベートする工程と、
(iii)アレイを検出試薬(例えば、抗IgE抗体またはIgE特異的アプタマーまたはIgE特異的アフィボディ)とインキュベートする工程と、
(iv)任意選択でアレイをシグナル生成試薬とインキュベートする工程と、
(v)検出可能なシグナルを測定する工程と
を含む、項目23から30のいずれか1つの方法。
【0222】
32.項目1から22のいずれか1つの抗原アレイのための試験容器、廃水のための貯蔵槽、任意選択でバーコードを含むカートリッジ。
33.項目1から22のいずれか1つによる抗原アレイ、検出試薬、1つまたは複数の緩衝液、1つまたは複数の対照サンプルおよび項目23から31のいずれか1つによる方法においてキットを使用するための説明書、任意選択でシグナル生成試薬を含むキット。
【0223】
34.項目32による1つまたは複数のカートリッジのための容器、ピペッターおよびシグナル検出のためのデバイスを含む装置。
【実施例】
【0224】
本明細書に記述される例は、本発明の例示であり、それを制限することを意図するものではない。本発明の異なる実施形態が、本発明により記述されている。本発明の精神および範囲から逸脱することなく多くの修正および変更を、本明細書に記述され、例示される技術に行うことができる。
【0225】
実施例1
材料および方法
アレルギー性供給源材料
アレルゲンは、様々な外部の提供者から購入するかまたは研究室内で作製した。アレルゲンは、アレルギー性抽出物、精製した天然のアレルゲンまたは組換えアレルゲンのいずれかであった。緩衝液および貯蔵条件については、アレルゲンを、供給元の推奨にしたがってまたは社内の経験にしたがって処置した。繰り返しの凍結/解凍は避けた。凍結乾燥形態で届けられたアレルゲンの場合、再構成を製造業者の説明書にしたがって行った。
【0226】
ナノ粒子へのアレルゲン結合
ポリスチレンナノ粒子を、Polysciences Europe GmbHから購入した。粒子へのアレルゲン材料の結合は、製造業者によって提供される推奨に沿って行ったが、各アレルゲン標本に対して最終的には最適化しなければならなかった。様々な異なる手法を適用して、最適な結合効率および生物活性を得た。一部のアレルゲンは、満足な結果で受動的吸着によって結合できたが、多くのアレルゲンは、特別な結合条件または共有結合性結合戦略を必要とした。この目的のために、NH2またはCOOH表面修飾を持つポリスチレン粒子、およびホモまたはヘテロ二機能性架橋剤を使用した。いくつかのアレルゲン標本は、それらを、第1にいくつかのアリコートに分割し、次いで異なる条件で結合させ、最後に再びプールして機能試験の間に完全なアレルゲンエピトープレパートリーを示すように処置しなければならなかった。
【0227】
受動的吸着結合(標準的な手順)
ナノ粒子は、製造業者の説明書にしたがって調製した。アレルゲンまたはアレルゲン抽出物を、アレルゲンの等電点に一致する緩衝液に、適用可能な結合濃度、一般に0.5mg/mL未満に希釈した。粒子(1%固体)およびアレルゲンを、最初から最後まで一定の混合下で、室温で3時間インキュベートした。インキュベーションを、混合せずに2~8℃で終夜続けた。最後に、粒子を、10000rpm、4℃で15分間の遠心分離によってペレット化し、上清を採集し、ビーズを、長期貯蔵のために適当な緩衝液および防腐剤中に懸濁した。
【0228】
受動的吸着結合(高度なプロトコール)
上記の標準的なプロトコールと類似するが、少なくとも3つの異なるpH範囲、一般に中性、酸性、および塩基性範囲を個々に使用した。結合プロトコールの実施後、粒子を中性pHで一緒にプールした。
【0229】
COOH表面粒子による化学結合
ナノ粒子を、適当な濃度、一般に固体1%に希釈し、次いで活性化緩衝液(例えば、MES緩衝液pH5~7.5)で3回洗浄し、洗浄工程の間にペレット化および懸濁した。活性化のために、表面COOH基を含有する粒子を、水溶性カルボジイミド、例えば1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミドで15~30分間活性化した。活性化後、粒子を活性化緩衝液でさらに2回洗浄した。タンパク質を、滴定実験によって一般に最適化した濃度に、いかなる遊離NH2基も含有しない結合緩衝液で希釈した。活性化粒子およびタンパク質溶液を、室温で少なくとも3時間または2~8℃で終夜インキュベートした。最後に、粒子を、上記の通り遠心分離によってペレット化し、さらなる使用まで防腐剤を含有する貯蔵緩衝液中に懸濁した。
【0230】
NH2表面粒子による化学結合
アミノ反応性試薬、例えばグルタルアルデヒドまたはEGS架橋剤などのスクシンイミド化学を使用するという相違を含む、上述と非常によく似たプロトコールを使用して、ナノ粒子上のNH2基を活性化した。したがって、緩衝液およびpH値を調整して、適用する各化学について結合効率を最適化しなければならなかった。全ての場合において、理論的に最適なpH値が所望の最適な結合効率を与えるというわけではなく、むしろある程度タンパク質の理論的特質を考えることによって選択されなかったpH値であった。
【0231】
結合効率の評価
結合効率を、直接および間接方法の両方を使用して測定した。結合の前後に、溶液中のタンパク質濃度を、測定した。結合の後の溶液からのタンパク質除去の程度は、タンパク質結合の優れた指標であるが、生物活性ではそうでなかった。加えて、結合しているビーズを、提供者によって記述されている方法を使用してタンパク質からはぎとって、ビーズからタンパク質を取り去った。それらのはぎとられたタンパク質標本も、濃度測定、ならびに変性SDSゲル電気泳動およびクマシーブルーによる染色を使用して特徴付けた。
【0232】
結合したアレルゲンの生物活性の最終評価のために、標準的なアッセイおよび分析手順(下記参照)を使用して機能的測定を行ない、各アレルゲン標本に特異的な陽性血清を試験した。試験で使用されるパラメータは:ブロッキング15分間、1:5希釈した血清サンプルとの血清インキュベーション2時間、検出抗体インキュベーション30分間であった。
【0233】
固相へのアレルゲン粒子の分注
ニトロセルロース膜を、GE HealthcareおよびPall Europeから購入した。様々な異なる膜型を、細孔径、流速または基部材料の点で異なる特質で評価した。
【0234】
分注を、動作、吸引、分注および洗浄サイクルの最適化した設定を使用してBiodot AD1520機器で行った。各アレルゲン標本を、少なくとも20nLの容積で、中心と中心の間隔1mmで、固相上に沈着させた。最終的なアレイは、一般に10行および25列の幾何学的形状を有した。
【0235】
分注後、NCシートを密閉し、さらなる処理まで2~8℃で保存した。アッセイ前に、NCシートを、適当なサイズに切断し、試験アレイを含有する小さいビネット(vignettes)を、アッセイカセット内に置いた。
【0236】
標準的なアッセイ手順
アレイ容器カセットを穏やかに振とうしながら、高濃度の非アレルギー性タンパク質を含有する緩衝液中での非特異的結合から初めにブロッキングした250個の異なる外観を含有する試験アレイを、生成した。
【0237】
過程工程間の洗浄は、pH7.4および界面活性剤として0.2%Tween-20のTris緩衝食塩水を使用して行った(TBS-T)。
ブロッキング後、アレイを、一定の穏やかな振とう下で、患者血清または血漿と少なくとも15分間インキュベートした。血清を捨て、アレイを、穏やかな撹拌下でTBS-Tで数回洗浄した。
【0238】
洗浄サイクル後、アレイを、アルカリホスファターゼ(AP)で標識した、希釈した抗ヒトIgE抗体とインキュベートした。次いで抗体を捨て、残りの結合していない抗体をTBS-Tで数回洗い流した。
【0239】
最後に、アレイを、BCIP/NBT発色基質(5-ブロモ-4-クロロ-3-インドリル-リン酸/ニトロブルーテトラゾリウム)と充分な感度に達するまで数分間インキュベートし、次いで反応を停止させ、残りの基質を洗い流した。
【0240】
アレイを、スキャンまたは画像化する前に乾燥させた。画像を、24ビットカラー画像として撮像し、16ビットグレイスケールデータに転換した。
分析
円形の各外観を、強度の中央値を算出し、外観値から局所バックグラウンドを減算することによって定量化した。信号対雑音比>2を、陽性シグナルと見なした。
【0241】
アレイを、アレルゲン標本と一緒にスポットした、固定化した精製ヒトIgEの標準曲線によって標準化した。加えて、標準化した値を、複数の陽性試験結果を含む参照サンプルに対する非相同な較正を使用することによって較正した。
【0242】
実施例2
抗原コーティングビーズ245群を含む抗原アレイを、実施例1に記述される材料および方法を使用して生成した。ここで示すデータの場合、受動的吸着されたアレルゲンだけを、スポットした。数人のアレルギー患者からプールしたヒトサンプルを使用した245個のアレルゲンおよび5個のIgE標準に対する特異的IgE測定を、
図1Aに示す。有意でないレベルの特異的IgEを含むそれぞれの陰性サンプルを、
図1Bに示す。抗原群のレイアウトを、
図1Cに示す。抗原群間の間隔は、xおよびy方向に1mmであった。
【0243】
実施例3a
参照方法と比較することによる試験評価
合計137個以下の患者サンプル(患者数は、表3にnとして挙げた)を、実施例1に記載の開示された方法で試験した。患者サンプルを、1:5希釈して試験し、標準的なアッセイ手順を適用した。データ比較のために、得られた結果を、異なるバージョンのImmunoCAP ISAC試験(Thermo Fisher、Uppsala、Sweden)を使用して作製された利用可能な参照データと比較した。参照アッセイにおいて陽性または陰性試験された患者サンプルを、それぞれ「pos」または「neg」として、表3に示す。データ比較のために、Medcal Version 16.1を使用して、ROC統計(Response Operator Curve)を生じさせた。この目的のために、ImmunoCAP ISAC試験における製造業者カットオフより高い任意の抗原特異的結果を、真の陽性(=1)、さもなければ真の陰性(=0)と見なした。統計評価の出力は:曲線下面積AUC(完全相関=1、相関なし=0)、分析感度、分析特異性であった。合計3619個の測定結果、692個の陽性結果および2927個の陰性結果を考慮した。結果を、下の表3に要約する。それぞれ99%および95%であった平均感度および特異性も示し、それにより特異性の減少を、参照より多くの陽性測定結果を生成することになる新たな方法のより高い感度によって説明することができる。
【0244】
【0245】
実施例3b
参照方法と比較することによる試験評価
220個の患者サンプルを、実施例1に記載の開示される方法で試験した。アレルゲンを、受動的に吸着させたかまたは例えば異なる化学リンカーを使用して化学的結合させた。患者サンプルを、1:5希釈して試験し、標準的なアッセイ手順を適用した。データ比較のために、得られた結果を、異なるバージョンのImmunoCAP ISAC試験(Thermo Fisher、Uppsala、Sweden)を使用して作製された利用可能な参照データと比較した。選択したアレルゲンに対する感度、特異性およびr2相関を、
図2に示す。感度および特異性を、MedCalcを使用して、試験のための製造業者プロトコールおよびカットオフ0.3ISUを使用して参照データに対して評価した。測定結果の線形回帰分析を、マイクロソフトエクセルで実行した。合計、779個の陽性結果および2772個の陰性結果を、考慮した。
【0246】
実施例4
シグナル増幅
ミルクおよび卵由来の12個のアレルゲン抽出物または分子アレルゲンを、固相担体材料(ニトロセルロースProtran、0.2μm、GE Healthcare)に異なる2つの条件下で固定化した。第1の条件は、ウェスタンブロッティング手順のために製造業者によって記述されている通りに固相にアレルギー性タンパク質を直接結合させた。第2に、12個のアレルゲンを、実施例1の材料および方法に記載の結合条件をさらに最適化することなく、中性pH条件下で受動的吸着によって350nmサイズのポリスチロールナノ粒子に先ず結合させた。
【0247】
次いで、20個のミルクおよび卵アレルギー患者血清を、12個のタンパク質に対する特異的IgEについて試験した。直接固定化した各タンパク質標本または固定化した各粒子結合抗原(表5に示される全20個の血清に関する生データ)から得られたアレルゲン特異的シグナルを、全20個の血清全体で平均し、アレルゲンごとに2つの集計値を比較し、これらの値間で係数を算出した。結果を、表4および
図3に示す。
【0248】
表4:直接固定されたまたは粒子結合標本として固定されたいずれかの12個のアレルゲンに関する要約結果。生の強度測定データを示す、較正していない。アレルゲンを粒子と結合させた場合、粒子と結合していないアレルゲンと比較して平均シグナル増幅は、ほぼ8倍であり、係数ほぼ2~17の範囲であった。結果を、
図3にグラフで示す。
【0249】
【0250】
【0251】
【0252】
実施例5
機能的アッセイにおける特異的IgE反応に対する異なる結合条件の効果
桃由来主要アレルゲンであるPru p3に対して陽性の異なる8つのサンプルによる特異的IgE測定を、実行した(
図4)。陰性サンプル1つを、対照として試験した。Pru p3を、3つの異なる共有結合性結合方法(条件1~3)を含めたいくつかの異なる方法を使用して結合させた。受動的タンパク質吸着は、全く働かず、ほとんど全てのタンパク質が、受動的吸着だけではナノ粒子に結合できなかった(結果不掲載)。結合効率の分析によると、異なる共有結合性結合手法の間で大きな差異は、観察できなかった。しかしながら、一連の血清を試験し、結果をThermofisher、Uppsala、Swedenの参照方法ImmunoCAP 100と比較した場合、機能的アッセイは、結合しているアレルゲンの生物活性における大きな差異を表した。
【0253】
試験した血清に応じて、著しい差異が、様々な方法と結合手法による結果の間で観察できた。根本的な説明は、血清がどのエピトープに対する特異的IgEを有するかに応じて、特定の結合方法またはアッセイ方法が、活性立体配座をとるそれぞれのエピトープの多少を示すということである。
【0254】
各方法は、異なる単位の結果を作製するので、値を直接比較することはできないが、その値は、同程度になるように内部的に較正される。
実施例6
さらなる感作を表す患者の事例研究
ネコがいる友人宅で一泊した際に夜間の2回の喘息発作後に患者は、地元のアレルギークリニックを訪問した。牧草およびカバアレルギーは前から知っていたが、これまでに呼吸障害が起こったことはなかった。Immuno CAP方法を使用してアレルギークリニックにおいて得られた結果を、下の表6(参照IC)に示し、本明細書に記述される方法(表6における「FABER」と呼ばれる)と比較する。表6は、皮膚プリック試験(SPT)の結果をさらに示し、選択したアレルゲンに対する患者の症状を観察した。
【0255】
本明細書に記述される方法と参照方法ImmunoCAPの間のin vitro結果の定性的相関(陽性または陰性)は、一般に高い。得られた値が、参照方法より初めに低かったので、商業的に入手したアレルギー性抽出物(例えばBet v、Amb a)のいくつかが、充分な量のアレルゲンを含有していないと仮定することができる。しかしながら、分子試験結果を要約した場合、非常によく似た結果を、本方法(Bet v 1.0101+Bet v 2.0101)とImmunoCAPの間で得られる可能性がある。
【0256】
患者における皮膚プリック試験(SPT)は、ネコに対して陰性であった。皮膚試験およびImmunoCAPシステムによるIVD試験を、ネコアレルゲン抽出物で実行した。実行した試験の両方が不十分であり、SPTにおいて陰性試験およびImmunoCAP試験において中等度の陽性を与えた。アレルギー性抽出物に伴う全般的な問題は、混合物中に存在するアレルゲンの正確な性質が不明であるということ、および抽出または貯蔵の間に起こり得るアレルゲンの分解である。本試験形式は、商業的に得られたネコ抽出物に対して同等に低い結果を示したが、組換え高純度ネコアレルゲンFel d 1に対して非常に高い陽性結果を示した。そのような高い陽性のin vitro結果が、陰性のSPT試験結果に基づいて臨床医により容易に却下されることになった可能性は極めて低い。
【0257】
さらなる感作が見つかったが、その一部は、アレルゲン交差反応性によって説明することができず、したがって、例えばエビおよびゴキブリに対して潜在的に関連すると見なすことができた。例えば、陽性と判明した高く関連するPR10型のアレルゲン(Bet v1相同性)は:Bet v 1.0101、Mal d 1.0108、Cor a 1.0103を含み;また、陽性と判明した種間で高く保存されているプロフィリンは、:Ara h 8.0101、Bet v 2.0101、Hev b 8、Mer a 1であり;また、多くの動物上皮または動物由来ミルクもしくは食肉タンパク質は、動物種間の交差反応性によって説明することができる。
【0258】
他方、ゴキブリ由来のBla g 1またはエビ由来のPen m 1などのアレルゲンは、いかなる参照試験によっても見出されず、他の陽性試験結果に対する交差反応性によって説明できない真性の感作と見なすことができた。したがって、これらのタンパク質を、臨床的関連についてさらに調査することができた。
【0259】
【0260】
実施例7
参照方法との試験比較
83個のサンプルを、本明細書に記述される(実施例1および2を参照のこと)抗原アレイを使用しておよび参照方法としてImmunoCAP ISAC試験(Thermo Fisher Uppsala、Sweden)を使用して試験した。2つの試験の技術的仕様を、
図5において比較する。
【0261】
合計245個のアレルゲンを、実施例1および2に記述される抗原アレイにおいて試験し、112個のアレルゲンを、参照方法において試験し、70個のアレルゲンが、2つの試験間で重複した。2つの試験間で直接比較できた(同一の)これらアレルゲンに対する結果はよく相関し、76%ピアソンの相関を示した。これら重複するアレルゲンに対して1057個の陽性結果が、参照方法において得られ、一方で1159個の陽性結果が、本明細書に記述される方法で得られ、このことは約10%(9.65%)の増加に相当し、本方法の感度の増大を示した。
【0262】
さらに、合計で2508個の陽性試験結果を、参照方法で得、一方で合計4740個の陽性結果を、本発明の方法で得た。したがって、本明細書に記述される抗原アレイは、より多くの感作、すなわち、89%の増加を同定し、参照アレイ/方法と比較してインスタント抗原アレイ/方法のより高い感度をさらに示した。結果を、表7に要約する。
【0263】
【0264】
実施例8
抗原結合ビーズの安定性
アレルゲン結合ビーズを、実施例1に記載の通り調製し、アレルゲンアレイを、0日目に作製した。いくつかのさらなる抗原アレイ(約40個)を、同じ標本のアレルゲン結合ビーズを使用して330日間にわたって作製した。抗原結合ビーズは、それを使用してアレルゲンアレイを作製するために室温で約30分間保つときを除き、2~8℃でこの期間保存された。
【0265】
同じサンプルを、0日目に作製したアレルゲンアレイにおいて0日目に、次いで330日目に作製したアレルゲンアレイにおいて330日目に再び試験した。2つの試験の結果および変異係数(CV)を、表8に示す。
図6は、0日目および330日目に対する結果の図面を示す。
【0266】
これらのデータは、アレルゲンコーティングしたビーズの極めて高い安定性および方法の再現性を示す。
【0267】
【0268】
【0269】
実施例9
アレルゲンコーティングしたビーズを調製するための抽出物最適化
カバ花粉を、商業的な提供者から購入し、アレルゲン抽出物を、当業技術者に公知の方法によって調製し、基本的には定義済み条件下での攪拌および生理的緩衝液の時間調節による。カバ花粉抽出物を、4つの異なるpHおよび塩条件を使用して受動的結合によってナノ粒子に結合させた。データが示す通り(表9)、患者の分子プロファイルに基づいて(例えば、患者が血清中に特異的抗体を有する分子アレルゲン)、異なるpH値は、sIgEの異なる定量化を与える。これは、異なるpH条件を組み合わせることにより、抽出物の分子エピトープレパートリーが保存され、より正確で、より高感度な測定を得られることを示す。
【0270】
加えて、カバ抽出物を、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)によってさらに処理した。元の抽出物の定義した分子量範囲を示す個々の画分を、採集し、単一条件を使用してナノ粒子に結合させた。予想通りに、分子認識パターンに応じて、さらに顕著な測定結果が、患者の分子感作パターンにしたがって得られる。例えば、サンプル1は、全ての画分において比較可能なレベルの特異的IgEを示したのに対して、サンプル2は、画分1に対して低レベルだが画分3に対して高いsIgEを示し、一方サンプル3は、画分1に対して最も高いsIgEレベルを有した。個々の画分を組み合わせ、さらに各画分について結合条件pHを最適化することにより、参照方法より高い分析感度が得られることになる。
【0271】