(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-18
(45)【発行日】2022-03-01
(54)【発明の名称】流体浸入阻止構成要素を有する一体化された陰圧源を用いた創傷被覆材及び使用方法
(51)【国際特許分類】
A61M 27/00 20060101AFI20220221BHJP
【FI】
A61M27/00
(21)【出願番号】P 2018553968
(86)(22)【出願日】2017-04-26
(86)【国際出願番号】 EP2017059883
(87)【国際公開番号】W WO2017186771
(87)【国際公開日】2017-11-02
【審査請求日】2020-04-15
(32)【優先日】2016-04-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】391018787
【氏名又は名称】スミス アンド ネフュー ピーエルシー
【氏名又は名称原語表記】SMITH & NEPHEW PUBLIC LIMITED COMPANY
【住所又は居所原語表記】Building 5,Croxley Park,Hatters Lane,Watford,Hertfordshire WD18 8YE,United Kingdom
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ベン・アラン・アスケム
(72)【発明者】
【氏名】ヴィクトリア・ビードル
(72)【発明者】
【氏名】ジョン・フィリップ・ゴワンス
(72)【発明者】
【氏名】マーク・ヘスケス
(72)【発明者】
【氏名】アラン・ケネス・フレイザー・グルージョン・ハント
(72)【発明者】
【氏名】ウィリアム・ケルビー
(72)【発明者】
【氏名】ダミン・マスグレイブ
(72)【発明者】
【氏名】ジョセフ・ウィリアム・ロビンソン
【審査官】中村 一雄
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-526938(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0174304(US,A1)
【文献】特表2015-502775(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第01512452(EP,A1)
【文献】特表2013-545519(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
創傷被覆材装置であって、
創傷部位の上に配置されるよう構成された創傷被覆材(1200、1300)であって、
創傷に接触して配置されるよう構成された創傷接触層と、
第1エリアと、前記第1エリアに隣接して配置された第2エリアであって、前記第1エリアが吸収材を含むよう構成された第1エリア及び第2エリアと、
前記創傷接触層と、前記第1エリアと、前記第2エリアとを覆い、その上で封止を形成するよう構成されたカバー層と、
を含む創傷被覆材と、
前記創傷被覆材の前記第2エリアの上に配置された、又は、その中に配置されたポンプ(1304、1704)であって、入口と出口とを備え、前記創傷部位に陰圧を印加するよう動作可能であるポンプと、
前記入口と流体連通する1以上の構成要素(1510、1710)であって、前記入口の閉鎖が阻止されるよう、前記創傷被覆材の内部と前記入口との間に複数の流路を画定する1以上の構成要素と、
を備え、
前記構成要素が前記吸収材と流体連通し、創傷滲出液が前記創傷部位から前記入口へ流れるのを阻止するよう構成され、
前記構成要素が、前記ポンプの前記入口に連結されたポート(1511、1715)を備える創傷被覆材装置。
【請求項2】
前記構成要素が、創傷滲出液を弾くよう構成された疎水性材を備える、請求項1に記載の創傷被覆材装置。
【請求項3】
前記構成要素が、毛細管現象による創傷滲出液の浸入に抵抗するよう構成された孔サイズを有する材料を備える、請求項1又は2に記載の創傷被覆材装置。
【請求項4】
前記構成要素が、多孔質ポリマ成型構成要素である、請求項1から3のいずれかに記載の創傷被覆材装置。
【請求項5】
前記多孔質ポリマ成型構成要素を含むポリマが疎水性であり、約20ミクロンから約40ミクロンまでの範囲の孔サイズを有する、または、前記多孔質ポリマ成型構成要素を含むポリマが疎水性であり、約5ミクロンから約40ミクロンまでの範囲の孔サイズを有する、請求項4に記載の創傷被覆材装置。
【請求項6】
前記ポリマが、疎水性ポリエチレン及び疎水性ポリプロピレンのうちの1つである、請求項5に記載の創傷被覆材装置。
【請求項7】
複数の前記多孔質ポリマ成型構成要素を備える、請求項4から6のいずれかに記載の創傷被覆材装置。
【請求項8】
前記多孔質ポリマ成型構成要素が、三日月形状、指貫形状、もしくは、直方体又は略直方体形状である、請求項4から7のいずれかに記載の創傷被覆材装置。
【請求項9】
前記多孔質ポリマ成型構成要素が、湾曲しているか又は傾斜した角部及び/又は縁部を備える、請求項4から8のいずれかに記載の創傷被覆材装置。
【請求項10】
前記多孔質ポリマ成型構成要素が、前記入口、または、前記入口及び前記創傷被覆材の前記内部と流体連通した管状延長部の端部、に取り付くよう構成された、請求項4から8のいずれかに記載の創傷被覆材装置。
【請求項11】
前記構成要素が、
ポーチの形状に形成され、前記入口に
嵌合しかつ取り付けられたマイクロ多孔質膜である、請求項1から3のいずれかに記載の創傷被覆材装置。
【請求項12】
前記ポーチ内に配置されて前記膜が崩壊するのを阻止するよう構成されたスペーサ材をさらに備える、請求項11に記載の創傷被覆材装置。
【請求項13】
前記ポンプがマイクロポンプであり、陰圧を前記創傷部位に印加する前記マイクロポンプの動作を制御するよう構成されたコントローラをさらに備える、請求項1から12のいずれかに記載の創傷被覆材装置。
【請求項14】
前記吸収材が、創傷滲出液を吸収するよう構成された、請求項1から13のいずれかに記載の創傷被覆材装置。
【請求項15】
前記構成要素が前記入口に取り付けられた、請求項1から14のいずれかに記載の創傷被覆材装置。
【請求項16】
前記構成要素が前記ポンプの前記入口を受けるように構成された、請求項1から15のいずれかに記載の創傷被覆材装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に記載の実施形態は、例えば、陰圧創傷療法と組み合わせて被覆材を使用する、創傷を治療する装置、システム、及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
開放創又は慢性創が大きすぎて自然に閉鎖できないか、又はその他の方法で治癒できない場合、創傷部位に陰圧を印加することによる開放創又は慢性創の治療が、当技術分野でよく知られている。当技術分野で現在既知の陰圧閉鎖療法(NPWT)システムは、一般に、流体不透性又は半透性であるカバーを創傷の上に配置すること、様々な手段を使用して創傷周りの患者の組織にカバーを封止すること、及び、カバーの下で陰圧が発生して維持されるように陰圧源(真空ポンプなど)をカバーに接続することを含む。このような陰圧は、創傷部位における肉芽組織の形成を促進し、かつ人体の通常の炎症プロセスを補助しながら、同時に有害なサイトカイン及び/又はバクテリアを含む可能性がある過剰な流体を除去することにより、創傷の治癒を促進すると考えられている。しかし、治療の利点を完全に実現するために、NPWTのさらなる改善が必要とされている。
【0003】
NPWTシステムを援助するための、多くの様々なタイプの創傷被覆材が既知である。これらの様々なタイプの創傷被覆材は、例えば、ガーゼ、パッド、フォームパッド、又は多層創傷被覆材等、多くの様々なタイプの材料及び層を含む。多層創傷被覆材の一例は、Smith&Nephew社製のPICO被覆材であり、これは、バッキング層の下に超吸収層を具備し、NPWTによって創傷を治療するためのキャニスターレスシステムをもたらしている。創傷被覆材は、1本の管材に接続する吸引ポートに対して封止され得、その吸引ポートは、被覆材から流体を吸い出し、及び/又は、ポンプから創傷被覆材に陰圧を伝達するのに使用され得る。
【0004】
上述の被覆材のような、陰圧を使用した従来の被覆材は、創傷被覆材から離れた場所に位置する陰圧源を具備してきた。創傷被覆材から離れて配置された陰圧源は、ユーザ又はその他のポンプサポート機構によって保持されるか、又は、ユーザ又はその他のポンプサポート機構に取り付けられなければならない。さらに、管材又はコネクタで、離れた陰圧源を創傷被覆材に接続することが求められる。離れたポンプ及び管材は、患者の衣類の中に隠したり、取り付けたりするには取り扱いにくく、困難な場合がある。創傷被覆材の位置によっては、離れたポンプ及び管材を快適かつ便利に位置させるのが難しい場合がある。動作時、創傷滲出液が被覆材内に染み込む場合があり、創傷からの水分によって電子構成要素を被覆材内へ取り込むことが困難となっている。
【発明の概要】
【0005】
本開示の実施形態は、創傷治療のための装置及び方法に関する。本明細書に記載の創傷治療装置のうちのいくつかは、創傷に陰圧をかけるための陰圧源又はポンプシステムを含む。また、創傷治療装置は、本明細書に記載の陰圧源及びポンプアセンブリと組み合わせて使用され得る創傷被覆材を含み得る。いくつかの実施形態では、創傷被覆材及び陰圧源が、創傷被覆材及び陰圧源を同時に患者の創傷に適用する、不可欠な、又は一体化した創傷被覆材構造の一部であるよう、陰圧源が創傷被覆材装置内に組み込まれる。陰圧源及び/又は電子構成要素は、創傷被覆材の創傷接触層とカバー層との間に配置され得る。構成要素は、創傷滲出液が陰圧源の入口に接触するのを防止するために使用され得る。これらの、及び、本明細書に記載のその他の実施形態は、陰圧源及び/又は電子構成要素を創傷被覆材内に取りこむことに関する特定の問題点を克服することに関する。
【0006】
いくつかの態様では、創傷被覆材装置は、創傷部位の上に配置されるよう構成された創傷被覆材を含み、創傷被覆材は、創傷に接触して配置されるよう構成された創傷接触層と、第1エリアと、第1エリアに隣接して配置された第2エリアであって、第1エリアが吸収材を含み、第2エリアが陰圧源を受容するよう構成された第1エリア及び第2エリアと、創傷接触層、第1エリア、及び第2エリアを覆い、その上で封止を形成するよう構成されたカバー層と、創傷被覆材の第2エリア内の上に配置されるか、又はその中に配置された陰圧源であって、入口と出口とを含み、陰圧を創傷部位に印加するよう動作可能である陰圧源と、入口と流体連通する構成要素であって、入口の閉鎖が阻止されるよう、創傷被覆材の内部と入口との間に複数の流路を画定する構成要素とを含み、構成要素が吸収材と流体連通し、創傷滲出液が創傷部位から入口へ流れるのを阻止するよう構成される。
【0007】
前述の段落の装置はまた、本明細書の記載の中でも特に、本段落に記載される以下の特徴の、任意の組み合わせを含み得る。また、以下の段落に記載される特徴はそれぞれ、別の実施形態の一部であってもよく、その別の実施形態は、必ずしも前の段落の特徴すべてを含む必要はない。構成要素は、創傷滲出液を弾くよう構成された疎水性材を含み得る。構成要素は、毛細管現象による創傷滲出液の浸入に抵抗するよう構成された孔サイズを有する材料を含み得る。構成要素は、1つ又は複数の多孔質ポリマ成型構成要素を含み得る。1つ又は複数の多孔質ポリマ成型構成要素を含むポリマは疎水性であり、約20ミクロンから約40ミクロンの範囲の孔サイズを有し得る。孔サイズは約30ミクロンであってもよい。1つ又は複数の多孔質ポリマ成型構成要素を含むポリマは疎水性であり、約5ミクロンから約40ミクロンの範囲の孔サイズを有し得る。孔サイズは約10ミクロンであってもよい。
【0008】
ポリマは、POREX(商標)又はPORVAIR(商標)であってもよい。ポリマは、疎水性ポリエチレン又は疎水性ポリプロピレンのうちの1つであってもよい。1つ又は複数の多孔質ポリマ成型構成要素はそれぞれ、ポンプ入口と創傷被覆材の内部との間の接触エリアを増加させるよう構成され得る。1つ又は複数の多孔質ポリマ構成要素は、三次元形状を有する。例えば、1つ又は複数の多孔質ポリマ構成要素は、三日月形状、指貫形状、もしくは直方体又は略直方体形状であってもよい。1つ又は複数の多孔質ポリマ構成要素はまた、湾曲しているか、又は、傾斜した角部及び/又は縁部を有し得る。1つ又は複数の多孔質ポリマ構成要素は、入口と、入口と創傷被覆材の内部と流体連通する管状延長部の端部のうちの少なくとも1つに取り付くよう構成され得る。
【0009】
構成要素は、入口に取り付けられた1つ又は複数のマイクロ多孔質膜を含み得る。創傷被覆材装置は、膜内に配置されたスペーサ材を含み得、そのスペーサ材は膜が崩壊するのを阻止するよう構成される。マイクロ多孔質膜は、孔サイズが0.2ミクロンであるヴェルサポー(Versapore)(Pall社)を含み得る。構成要素は、1つ又は複数の、細ボア管材の長さを含み得、その細ボア管材はその長さに沿った複数の穴を画定する。細ボア管材のうちの1つ又は複数の長さは、入口と創傷被覆材との間に1つ又は複数のループを形成し得る。細ボア管材のうちの1つ又は複数の長さは、入口から、創傷被覆材内の1つ又は複数の異なる点に延在し得る。陰圧源は、マイクロポンプであり得る。創傷被覆材装置は、陰圧を創傷部位に印加するマイクロポンプの動作を制御するよう構成されたコントローラを含み得る。吸収材は、創傷滲出液を吸収するよう構成され得る。構成要素は、入口に取り付けられ得る。構成要素は、入口に嵌合され得る。
【0010】
一実施形態では、創傷被覆材装置は、創傷部位の上に配置されるよう構成された創傷被覆材と、創傷被覆材上に配置されるか、又は、創傷被覆材内に配置される陰圧源であって、入口及び出口を含み、陰圧を創傷部位に印加するよう動作可能である陰圧源と、陰圧源の入口に嵌合され、入口と流体連通する多孔質ポリマ構成要素であって、入口の閉鎖が阻止されるよう、創傷被覆材の内部と入口との間に複数の流路を画定する三次元体を含む多孔質ポリマ構成要素と、を含む。
【0011】
多孔質ポリマ構成要素は、創傷滲出液を弾くよう構成された疎水性材を含み得る。多孔質ポリマ構成要素は、約20ミクロンから約40ミクロンの範囲の孔サイズを有し得る。孔サイズは約30ミクロンであってもよい。多孔質ポリマ構成要素は、約5ミクロンから約40ミクロンの範囲の孔サイズを有し得る。孔サイズは約10ミクロンであってもよい。ポリマは、PORVAIR Vyon(商標)であってもよい。多孔質ポリマ構成要素は、三日月形状、指貫形状、もしくは直方体又は略直方体形状であってもよい。多孔質ポリマ構成要素はまた、湾曲しているか、又は傾斜した角部及び/又は縁部を有し得る。
【0012】
以下に開示されるポンプの実施形態のいずれも、及び、陰圧創傷療法の実施形態のいずれも含むがこれらに限定しないものとし、本出願に開示された配置又は実施形態のいずれかの特徴、構成要素、又は詳細のいずれも、新しい配置及び実施形態を形成するよう本明細書に開示された配置又は実施形態のいずれかのその他の特徴、構成要素、又は詳細のいずれとも相互に組み合わせ可能である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
本開示の実施形態は、単に例示として、添付図面を参照して、ここで以下に記載される。
【0014】
【
図1】
図1は、ポンプと組み合わされた創傷被覆材を含む創傷治療装置の一実施形態を図示する。
【
図2】
図2は、一体化された被覆材内に含まれる陰圧源及びバッテリーの一実施形態を図示する。
【
図3A】3Aは、陰圧源及び/又はその他の電子構成要素を創傷被覆材内に取り込んだ、創傷被覆材の一実施形態を図示する。
【
図3B】
図3Bは、陰圧源及び/又はその他の電子構成要素を創傷被覆材内に取り込んだ、創傷被覆材の一実施形態を図示する。
【
図3C】
図3Cは、1つ又は複数の埋込型電子構成要素を有する創傷被覆材システムの側面横断面図である。
【
図4】
図4Aは、ポンプ入口に直接結合する構成要素の一実施形態を図示する。
図4B及び
図4Cは、中間管状材を介してポンプ入口に間接結合する構成要素の一実施形態を図示する。
【
図6】
図6A及び
図6Bは、システムに類似した、流体浸入阻止システムを図示する。
【
図7】
図7Aは、ポンプと、ポンプ入口に直接結合する構成要素とを具備する電子ユニットの頂面図を図示する。
図7Bは、ポンプと、ポンプ入口に直接結合する構成要素とを具備する電子ユニットの底面又は創傷に対向する表面を図示する。
【
図8】
図8は、陰圧源及び/又はその他の電子構成要素を創傷被覆材内に取り込んだ、創傷被覆材の層の一実施形態を図示する。
【
図9】
図9は、ポンプ入口に結合するためのポートを有する構成要素の一実施形態を図示する。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本明細書に開示された実施形態は、陰圧源及び創傷被覆材構成要素及び装置を含む、減圧によって創傷を治療する装置及び方法に関する。創傷に重ね、パッキングする材料を含む装置及び構成要素があれば、本明細書では集合的に被覆材として称される場合がある。
【0016】
本明細書全体を通して、創傷に関して言及することが理解されるであろう。創傷という用語は広く解釈され、皮膚が断裂、切開、もしくは穿孔される、又は外傷によって挫傷が引き起こされる開放創及び閉鎖創、あるいは患者の皮膚における任意の他の表面もしくは他の状態又は欠陥、あるいは減圧治療によって利益を得る他のものを包含することを理解されたい。よって、創傷は、流体が生成されることもされないこともある、組織の任意の損傷領域として広く定義される。そのような創傷の例としては、腹部創傷、又は手術、外傷、胸骨切開、筋膜切開、あるいは他の状態のいずれかの結果としての他の大規模又は切開性の創傷、裂開創傷、急性創傷、慢性創傷、亜急性創傷及び裂開創傷、外傷性創傷、フラップ及び皮膚移植片、裂傷、擦傷、挫傷、火傷、糖尿病性潰瘍、褥瘡性潰瘍、ストーマ、術創、外傷性潰瘍及び静脈性潰瘍などが挙げられるが、それらに限定されない。
【0017】
本開示の実施形態は、概して、局所陰圧(「TNP」)療法システムで使用するのに適用可能であることが理解されるであろう。簡潔には、陰圧創傷療法は、組織浮腫を軽減し、血流及び肉芽組織の形成を促進し、過剰な滲出液を除去することによって、多くの形態の「難治性」創傷の閉鎖及び治癒を支援するとともに、細菌負荷(それによる感染のリスク)を低減することができる。さらに、この療法によって創傷の障害をより少なくすることができ、より迅速な治癒に結び付く。TNP療法システムはまた、流体を取り除くことによって、且つ、閉鎖の並置位置にある組織を安定化させるのを助けることによって、外科的に閉鎖された創傷の治癒を支援することができる。TNP療法のさらなる有益な使用は、過剰な流体を除去することが重要であり、組織の生存度を確保するために移植片が組織に近接していることが求められる、移植片及びフラップにおいて見出すことができる。
【0018】
本明細書で使用する場合、-XmmHgといった減圧又は陰圧レベルは、760mmHg(又は、1気圧、29.93inHg、101.325kPa、14.696psi、等)に相当し得る、標準大気圧に対する圧力レベルを表す。したがって、-XmmHgの陰圧値は、760mmHgよりもXmmHg低い絶対圧力、又は、言い換えれば、(760-X)mmHgの絶対圧力を反映する。さらに、XmmHgよりも「低い」又は「小さい」陰圧は、大気圧により近い圧力に相当する(例えば、-40mmHgは-60mmHgよりも低い)。-XmmHgよりも「高い」又は「大きい」陰圧は、大気圧からより遠い圧力に相当する(例えば、-80mmHgは-60mmHgよりも高い)。いくつかの実施形態では、局部大気圧が基準点として使用され、そのような局部大気圧は、例えば、必ずしも760mmHgでなくてもよい。
【0019】
本開示の幾つかの実施形態に関する陰圧範囲は、約-80mmHg、又は約-20mmHgから-200mmHgの間であり得る。これらの圧力は、正常な大気圧に対する相対値であり、つまり、760mmHgであり得ることに留意されたい。つまり、実用的用語では、-200mmHgは約560mmHgであるだろう。いくつかの実施形態では、圧力範囲は約-40mmHgから-150mmHgの間であり得る。あるいは、-75mmHg以下、-80mmHg以下、又は80mmHg超過の圧力範囲が使用され得る。また、その他の実施形態では、-75mmHg未満の圧力範囲が使用され得る。あるいは、約-100mmHg超過、又は-150mmHgすら超える圧力範囲を、陰圧装置によって供給することができる。
【0020】
本明細書に記載の創傷閉鎖デバイスのいくつかの実施形態では、創傷収縮の増加が、周囲創傷組織内の組織拡張の増加をもたらすことがある。この影響は、場合によっては創傷閉鎖デバイスの実施形態を介して創傷に印加される引張力の増加と共に、組織に印加される力を変化させること、例えば、経時的に創傷に印加される陰圧を変化させることによって、増加され得る。いくつかの実施形態では、陰圧は、例えば正弦波、方形波を使用して、及び/又は、1つ又は複数の患者の生理的指標(例えば、心拍)と同期して、経時的に変化させられ得る。前述の開示に関連する追加の開示が記載され得るそのような出願の例は、2012年8月7日に出願された、「Wound treatment apparatus and method,」と題する米国特許第8,235,955号、及び、2010年7月13日に出願された、「Wound cleansing apparatus with stress,」と題する米国特許第7,753,894号を含む。これらの特許の両方の開示は、その全体が参照によりここに組み込まれる。
【0021】
2012年7月12日に出願されると共に2013年1月17日に国際公開第2013/007973 A2として公開された「WOUND DRESSING AND METHOD OF TREATMENT」と題する国際出願番号PCT/GB2012/000587は、本書に組み込まれ、本明細書の一部であるとみなされる出願であり、これは、本明細書に記載された実施形態と組み合わせたり加えたりして使用され得る、実施形態、製造方法、及び、創傷被覆材の構成要素と創傷治療装置に関する。さらに、また、本明細書に記載された創傷被覆材、創傷治療装置、及び方法の実施形態は、2012年5月23日に出願された、「APPARATUSES AND METHODS FOR NEGATIVE PRESSURE WOUND THERAPY」と題する米国仮特許出願第61/650,904号と、2013年5月22日に出願されると共に2013年11月28日に国際公開2013/175306として公開された「APPARATUSES AND METHODS FOR NEGATIVE PRESSURE WOUND THERAPY」と題する国際出願番号PCT/IB2013/001469と、2015年1月30日に出願され、米国公開番号第2015/0216733号として公開され、2015年8月6日に公開された、「WOUND DRESSING AND METHOD OF TREATMENT」と題する米国特許出願第14/418,874号と、2015年1月30日に出願され、米国公開番号第2015/0190286号として公開され、2015年7月9日に公開された、「WOUND DRESSING AND METHOD OF TREATMENT」と題する米国特許出願第14/418,908号と、2015年3月13日に出願された米国特許出願第14/658,068号と、2015年7月2日に公開された、「WOUND DRESSING AND METHOD OF TREATMENT」と題する米国出願第2015/0182677号とに開示された実施形態と組み合わせたり加えたりして使用されてもよく、それらは、それらの全体が参照によってここに組み込まれる。本明細書に記載された創傷被覆材、創傷治療装置、及び方法の実施形態は、2011年4月21日に出願されると共に米国特許公開第2011/0282309号として公開された「WOUND DRESSING AND METHOD OF USE」と題する米国出願第13/092,042号に記載された実施形態と組み合わせたり加えたりして用いられてもよく、それは、その全体が参照によってここに組み込まれ、それは、創傷被覆材の実施形態、創傷被覆材の構成要素と原理、及び創傷被覆材に使用される材料に関するさらなる詳細を含んでいる。さらに、本出願は2016年3月7日出願の、「REDUCED PRESSURE APPARATUSES AND METHODS」と題する米国仮出願第62/304,790号に関し、その主題が本出願の一部として考慮され、以下の付録に含まれる。
【0022】
図1は、ポンプ2800と組み合わされた創傷被覆材2100を含むTNP創傷治療の一実施形態を図示する。上術の通り、創傷被覆材2100は、本明細書で開示される任意の創傷被覆材実施形態であってもよいし、又は本明細書で開示される任意の数の創傷被覆材実施形態の特徴の任意の組み合わせを有してもよい。ここでは、被覆材2100が創傷の上に設置され得、次いで、導管2220がポート2150に接続され得るが、いくつかの実施形態では、被覆材2100は、ポート2150にあらかじめ取り付けられた導管2220の少なくとも一部分を備え得る。被覆材2100にはすべての創傷被覆材要素(ポート2150を含む)があらかじめ取り付けられ、単一のユニットに一体化された、単一の物品として設けられるのが好ましい。次いで、創傷被覆材2100は、導管2220を介して、ポンプ2800といった陰圧源に接続され得る。ポンプ2800は小形化され、持ち運び可能とすることができるが、より大きな従来のポンプを被覆材2100と共に使用してもよい。いくつかの実施形態では、ポンプ2800は、被覆材2100上に、又は、被覆材2100に隣接して取り付けられ得るか、又は装着され得る。コネクタ2221はまた、創傷被覆材2100に繋がる導管2220をポンプから取り外すことができるように設けられ得、例えばそれは、被覆材の変更時に有用であり得る。
【0023】
いくつかの実施形態では、陰圧源(ポンプ等)及び、電源、センサ、コネクタ、ユーザインターフェース構成要素(ボタン、スイッチ、スピーカ、スクリーン、等)等といった、TNPシステムのいくつか又はすべてのその他の構成要素は、創傷被覆材と一体になり得る。
図2に図示されるように、陰圧源及びバッテリーは、一体化型被覆材200内に具備されてもよい。
図2は(吸収層といった)被覆材層240の上に配置された陰圧源及びバッテリー210を図示するが、陰圧源及び1つ又は複数の構成要素が異なるように被覆材内へ組み込まれてもよい。陰圧源及び1つ又は複数の構成要素は、必ずしも同じ方法で被覆材内に組み込まれる必要はない。例えば、圧力センサが層240の下(又は創傷により近く)に配置され、陰圧源が層240の上に配置されてもよい。
図2に図示された一体化型被覆材200は、創傷周りの皮膚に被覆材を固定し得るカバー層230を具備する。カバー層230は、フィルム(例えば、プラスチックフィルム)といった、実質的に流体不透過の材料で形成されてもよい。カバー層は、被覆材を周りの皮膚又は創傷接触層に固定するための接着剤を具備し得る。
【0024】
いくつかの実施形態では、被覆材は、被覆材の上に、及び/又は、被覆材内に組み込まれた、電源や、電子機器といったその他の構成要素を具備し得、被覆材内の創傷接触層及び第1スペーサ層を利用し得る。創傷接触層は、創傷に接触してもよい。創傷接触層は接着剤を、被覆材を創傷周りの皮膚に固定するため、患者に対向する側に具備するか、又は、創傷接触層をカバー層又は被覆材のその他の層に固定するため、上側に具備し得る。動作時、創傷接触層は、滲出液が創傷に戻るのを阻止又は実質的に防止しつつ、創傷から滲出液を取り除きやすくするよう、一方向流をもたらし得る。第1スペーサ層は、創傷部位の上に陰圧を分配し、創傷被覆材内へ創傷滲出液及び流体を輸送しやすくするよう支援する。さらに、創傷から吸引された滲出液を吸収及び保持するための吸収層(層240等)が利用され得る。いくつかの実施形態では、吸収体は、ポンプ、電子機器、及び付帯構成要素のための凹部又はコンパートメントを有する、形状化された超吸収層形態を具備する。これらの層は、フィルム又はカバー層(又は第1カバー層)のうちの1つ又は複数で覆われ得る。第1カバー層はフィルタセットを具備し得、そのフィルタセットは、凹部のうちの1つの中に配置され得る。フィルタは、吸収層の少なくとも1つの凹部のうちの1つと整列し得、フィルタは、液体の滲出液からポンプ及び/又はその他の構成要素を保護するための疎水性材料を具備し得る。フィルタは、ガスの透過は可能にしつつ、流体を阻止し得る。選択的に、ポンプ、電子機器、スイッチ、及びバッテリーのうちの1つ又は複数が、
図2に図示される通り、第1カバー層の上に配置され得る。スペーサの別セクション、第2スペーサは、ポンプの上及び/又はポンプ周りに配置され得る。いくつかの実施形態では、第2スペーサは、創傷接触層の上で使用される第1スペーサよりも小さくてもよい。最上フィルム又はカバー層の1セクション(すなわち第2カバー層)が、第2カバー層に関連付けられた、又は、その層内に配置された第2フィルタを有する第2スペーサの上を覆って配置される。いくつかの実施形態では、第1カバー層及び第2カバー層は、同一材料から成り得る。いくつかの実施形態では、第1カバー層及び第2カバー層は、異なる材料から成り得る。
【0025】
いくつかの実施形態では、ポンプ及び/又はその他の電子構成要素が未だ、ポンプ及び/又はその他の電子機器が創傷部位から離れて配置された状態で患者に適用されることになる単一の装置の一部であるが、ポンプ及び/又はその他の電子構成要素は、吸収体及び/又は伝達層に隣接して、又はそれらの隣に配置されるよう構成され得る。
図3Aから
図3Cは、陰圧源及び/又はその他の電子構成要素を創傷被覆材内に取り込んだ創傷被覆材を図示する。
図3Aから
図3Cは、ポンプ及び/又はその他の電子機器が創傷部位から離れて配置された創傷被覆材1200を図示する。創傷被覆材は、電子機器エリア1261、1361と、吸収エリア1260、1360とを具備し得る。被覆材は、創傷接触層1310(
図3A及び
図3Bには図示なし)と、被覆材の接触層とその他の層の上方に配置された透湿性フィルム、すなわちカバー層1213、1313とを含み得る。創傷被覆材層及び、電子機器エリアと吸収エリアの構成要素は、
図3Aから
図3Cに示すように、1つの連続したカバー層1213、1313によって覆われ得る。
【0026】
被覆材は、創傷接触層1310と、スペーサ層1311と、吸収層1212、1322と、創傷接触層、スペーサ層、吸収層、又は被覆材のその他の層の上方に配置された透湿性フィルム、すなわちカバー層1213、1313とを含み得る。創傷接触層は、創傷に接触するように構成され得る。創傷接触層は接着剤を、被覆材を周りの皮膚に固定するため、患者に対向する側に具備するか、又は、創傷接触層をカバー層又は被覆材のその他の層に固定するため、上側に具備し得る。動作時、創傷接触層は、滲出液が創傷に戻るのを阻止又は実質的に防止しつつ、創傷から滲出液を取り除きやすくするよう、一方向流をもたらすように構成され得る。
【0027】
創傷接触層1310は、ポリウレタン層、ポリエチレン層、又は、ホットピンプロセス、レーザアブレーションプロセス、又は超音波プロセスを介すか、又はその他のいくつかの方法でパーフォレートされた、あるいは別の方法で液体及び気体が透過するようにしたその他の柔軟性のある層であってもよい。創傷接触層1310は、下面と上面とを有する。パーフォレーションは、創傷接触層1310において貫通穴を含み、それによって流体が層1310を通って流れることが可能となるのが好ましい。創傷接触層1310は、創傷被覆材のその他の材料内に組織が内部成長するのを防止する一助となる。パーフォレーションは、その中を通って流体が流れるのを可能にしつつ、この要件を満たすのに十分小さいことが好ましい。例えば、0.025mmから1.2mmの範囲のサイズを有するスリット又は穴として形成されたパーフォレーションは、創傷滲出液が被覆材内に流れるのを可能にしつつ、創傷被覆材内に組織が内部成長するのを防止する一助となるには十分小さいと考えられる。いくつかの構成では、創傷接触層1310は、創傷における陰圧を維持するために、吸収パッド周りでしっかりと空気を封止しながら、被覆材1200、1300全体の完全性を維持する一助となり得る。
【0028】
創傷接触層1310のいくつかの実施形態はまた、任意の下側及び上側接着剤層(図示なし)のキャリアとして作用し得る。例えば、感低圧性接着剤が創傷被覆材1200、1300の下面に設けられ得、感高圧性接着剤が創傷接触層の上面に設けられ得る。感圧性接着剤は、シリコン、ホットメルト、ヒドロコロイド又はアクリルベースの接着剤、又はそのようなその他の接着剤であってよいが、創傷接触層の両側、又は任意の選択した一方において形成されてもよく、又は、創傷接触層のどちらの側にも形成されなくてもよい。感低圧性接着剤層を利用すると、創傷被覆材1200、1300を創傷部位周りの皮膚に接着するのに有用となり得る。いくつかの実施形態では、創傷接触層は、パーフォレートされたポリウレタンフィルムを含み得る。フィルムの下面には、シリコン感圧性接着剤が設けられ得、上面には、アクリル感圧性接着剤が設けられ得、それによって被覆材がその完全性を維持する一助となり得る。いくつかの実施形態では、ポリウレタンフィルム層には、その上面と下面の両方において接着剤層が設けられ得、それら三層すべてが共にパーフォレートされ得る。
【0029】
多孔質材の層1311は、創傷接触層1310の上方に配置され得る。本明細書で使用されるように、用語多孔質材、スペーサ、及び/又は、伝達層は、被覆材内で、創傷エリア全体において陰圧を分配するよう構成された材料の層を言及するのに交換可能に使用され得る。この多孔質層、すなわち伝達層1311は、液体及びガスを含む流体が創傷部位から創傷被覆材の上層内に伝達するのを可能にする。特に、伝達層1311によって、吸収層が相当量の滲出液を吸収しても創傷エリアの上に陰圧を伝えるよう、外気チャネル(open air channel)が確実に維持され得ることが好ましい。層1311は、好ましくは、上述の通り、陰圧創傷療法時に印加されることになる通常の圧力の下で開放されたままになるべきであり、それによって、創傷部位全体が等しい陰圧を受ける。層1311は、三次元構造を有する材料から形成され得る。例えば、編まれるか又は織られたスペーサ繊維(例えば、Baltex7970横編みポリエステル)又は非織物繊維が使用され得る。
【0030】
スペーサ層は、創傷部位の上に陰圧を分配し、創傷被覆材内へ創傷滲出液及び流体を輸送しやすくするよう支援する。いくつかの実施形態では、スペーサ層は、三次元(3D)繊維から少なくとも部分的に形成され得る。
【0031】
いくつかの実施形態では、伝達層1311は、84/144加工ポリエステルである最上層(すなわち、使用時に創床から遠位である層)と、10デニールフラットポリエステルである底面層(すなわち、使用時に創床に近位に横たわる層)とを具備する3Dポリエステルスペーサ繊維層と、これら2つの層の間に挟まれて形成された、編みポリエステルビスコース、セルロース等のモノフィラメント繊維によって画定された領域である、第3の層とを含む。もちろん、他の材料及び他の線質量密度の繊維が使用されてもよい。
【0032】
本開示の全体にわたってモノフィラメント繊維を参照するが、もちろん、代わりに多重撚り線繊維を使用してもよいことが理解されよう。したがって、最上スペーサ繊維は、それを形成するのに使用される糸に、底面スペーサ繊維層を形成するのに使用される糸を構成するフィラメントの数よりも多くのフィラメントを有する。
【0033】
間隔を置いて配置された層におけるフィラメント数のこの差は、伝達層を横切る水分の流れを制御する一助となる。特に、最上層よりもフィラメント数を多くすることによって、底面層において使用される糸よりも多くのフィラメントを有する糸から最上層が形成され、底面層よりも多くの液体が最上層に沿って移動する傾向がある。使用時には、この差によって、液体が創床から創傷被覆材の中央領域に吸い込まれ、吸収層1212、1322が液体を保持するか、又は液体層自体が液体をカバー層1213、1313の方へ外側に移動させ、カバー層1213、1313において液体を蒸散させることができる。
【0034】
好ましくは、伝達層1311を横切る(すなわち、最上スペーサ層と底面スペーサ層との間に形成されたチャネル領域に垂直な)液体流を改善するために、3D繊維が、伝達層の親水機能に干渉することがある、従来使用されている鉱物油、脂肪、又はろうのようなあらゆる工業製品を除去する一助となるように乾燥洗浄剤(ペルクロロエチレン等であるがそれに限定されない)によって、処理され得る。いくつかの実施形態では、その後、3Dスペーサ繊維が親水化剤(Rudolph Groupから市販されているFeran Ice 30g/L等であるがそれに限定されない)で洗浄される追加の製造ステップを実施してもよい。このプロセスは、水といった液体が3Dニット生地に接触した直後に布に進入することができるほど、物質上の表面張力が低くなるのを確実にする一助となる。このことはまた、いかなる滲出液の液体障害成分(liquid insult component)の流れも制御するのを援助する。
【0035】
さらに、創傷から吸引された滲出液を吸収及び保持するための吸収層(層1212等)が利用され得る。いくつかの実施形態では、超吸収性材が、吸収層1212に使用され得る。いくつかの実施形態では、吸収体は、形状設定された超吸収層形態を具備する。
【0036】
伝達層1311の上方に吸収材の層1212、1322が設けられる。吸収材は、発泡体又は不織天然材料もしくは不織合成材料を含み、選択的に超吸収性材料を含み、創傷部位から除去された流体、特に液体のリザーバを形成する。いくつかの実施形態では、層10はまた、バッキング層1213、1313へ流体を吸い込むのを援助し得る。
【0037】
吸収層1212、1322の材料はまた、創傷被覆材内に収集された液体が被覆材内で自由に流れるのを防止し得、好ましくは、収集されたいかなる液体も被覆材内に含むよう作用する。吸収層1212、1322はまた、ウィッキング動作を介して層全体にわたって流体を分散させ、それによって、流体は創傷部位から吸い出され、吸収層全体にわたって保存される。これによって吸収層の領域における凝集が防止される。吸収材の容量は、陰圧が印加されるときに創傷の滲出液流量を管理するのに十分な容量でなければならない。使用時には、吸収層が陰圧を受けるので、そのような状況の下で液体を吸収する吸収層の材料が選択される。陰圧下で液体を吸収することのできる多くの材料、例えば、超吸収性材料が存在する。吸収層1212、1322は通常、ALLEVYN(商標)発泡体、Freudenberg 114-224-4、又はChem-Posite(商標)11C-450から製造されてもよい。いくつかの実施形態では、吸収層1212、1322は、超吸収パウダー、セルロースといった繊維材料、及び接着性繊維を含む合成物を含み得る。好適な実施形態では、合成物は、風成(airlaid)の、熱結合合成物である。
【0038】
いくつかの実施形態では、吸収層1212、1322は、全体にわたって分散された乾燥粒子の形態である超吸収性材料を有する不織セルロース繊維の層である。セルロース繊維を使用すると、被覆材によって組み込まれた液体を高速にかつ均等に分散させる一助となる高速ウィッキング要素が導入される。複数の撚り糸状繊維を並置すると、繊維状パッド内で強力な毛細管現象が生じ、液体を分散させる一助となる。このように、超吸収性材料に液体が効率的に供給される。ウィッキング動作はまた、被覆材の蒸散率が上昇するのを援助するよう、液体を上側カバー層に接触させるのを支援する。
【0039】
電子機器エリアの創傷被覆材層及び吸収層は、1つの連続したカバー層、すなわちバッキング層1213によって覆われ得る。本明細書に使用されるように、用語カバー層及び/又はバッキング層は、下にある被覆材層を覆い、創傷接触層及び/又は創傷周りの皮膚に封止するよう構成された、被覆材内の材料の層を言及するのに互換可能に使用され得る。いくつかの実施形態では、カバー層は、ガスの通過を可能にしつつも、創傷から取り除かれた液体の滲出液及びその他の液体が通過するのを防止する透湿性材を具備し得る。
【0040】
バッキング層1213、1313は、気体を透過させないが、水蒸気を透過させるのが好ましく、創傷被覆材100の幅を横切って延在し得る。バッキング層1213、1313は、例えば一方の側に感圧性接着剤を有するポリウレタンフィルム(例えば、Elastollan SP9109)であってもよいが、気体を透過させないため、この層が創傷を覆い、創傷被覆材が配置される創腔を封止する。このようにして、陰圧が確立されるバッキング層1213、1313と創傷部位との間に効果的なチャンバが形成される。バッキング層1213、1313は、例えば接着技術又は溶接技術を介して、被覆材の周囲の境界領域内において、創傷接触層1310に対して封止され、境界領域に空気が吸い込まれないようにするのが好ましい。バッキング層1213、1313は、外部細菌汚染から創傷を保護し(細菌バリア)、創傷滲出液からの液体がこの層を通過してフィルムの外面から蒸発するのを可能にする。バッキング層1213、1313は、2つの層、すなわちポリウレタンフィルムとこのフィルム上に広げられた接着パターンとを含むのが好ましい。ポリウレタンフィルムは透湿性であるのが好ましく、かつ、濡れると透水率が高くなる材料から製造されてもよい。いくつかの実施形態では、バッキング層の透湿性は、バッキング層が濡れると高くなる。濡れたバッキング層の透湿性は、乾燥したバッキング層の透湿性の約10倍にもなり得る。
【0041】
電子機器エリア1261は、陰圧源(ポンプ等)及び、電源、センサ、コネクタ、ユーザインターフェース構成要素(ボタン、スイッチ、スピーカ、スクリーン、等)等といった、創傷被覆材と一体になり得るTNPシステムのいくつか又はすべてのその他の構成要素を具備し得る。例えば、電子機器エリア1261は、
図3A及び
図3Bに示すように、ボタン又はスイッチ1211を具備し得る。ボタン又はスイッチ1211は、ポンプを動作させる(例えば、ポンプをオン/オフする)ために使用され得る。
【0042】
吸収エリア1260は、吸収材1212を具備し得、創傷部位の上に配置され得る。電子機器エリア1261は、吸収エリア1260から横にずらして配置することなどによって、創傷部位から離れて配置され得る。
図3A及び
図3Bに示すように、電子機器エリア1261は、吸収エリア1260に隣接し、且つ、その吸収エリア1260と流体連通して配置され得る。いくつかの実施形態では、電子機器エリア1261及び吸収エリア1260はそれぞれ、長方形状であってよく、互いに隣接して配置され得る。
【0043】
いくつかの実施形態では、被覆材材料の追加層は、電子機器エリア1261、吸収エリア1260、又はその両エリア内に具備され得る。いくつかの実施形態では、被覆材は、創傷接触層1310の上方、及び、被覆材のカバー層1213、1313の下方に配置された1つ又は複数のスペーサ層及び/又は1つ又は複数の吸収層を含み得る。
【0044】
図3Cは、いくつかの実施形態による、創傷被覆材システム1300の側面横断面図である。
図3Cに示すように、創傷被覆材システム1300は、1つ又は複数の埋込型(一体型とも称される)電子構成要素1350を有する創傷被覆材1302を具備し得る。創傷被覆材1302は、吸収エリア1360と、電子機器エリア1361とを具備し得る。いくつかの実施形態では、電子構成要素1350は、電子機器エリア1361の創傷被覆材1302内に配置され得るが、電子構成要素1350は任意の好適な配置(例えば、特に、創傷被覆材1302の上に配置される、及び/又は、その中に配置される)で創傷被覆材1302と一体化され得ることが理解されるべきである。電子構成要素1350は、ポンプ1304、電源、コントローラ、及び/又は、電子機器パッケージを選択的に具備し得るが、任意の好適な電子構成要素が考えられる。ポンプ1304は、例えば、被覆材の吸収エリア1360といった、創傷被覆材1302の1つ又は複数の領域と流体連通し得る。創傷被覆材1302の吸収エリア1360及び電子機器エリア1361は、任意の好適な配置を有し得る。例えば、
図3Cは、電子機器エリア1361が吸収エリア1360からずらされた創傷被覆材1302の実施形態を図示する。
【0045】
図3Cに示すように、創傷被覆材1302は、創傷接触層1310と、吸収エリア1360及び電子機器エリア1361のうちの一方又は両方を取り囲む透湿性フィルム、すなわちカバー層1313とを具備し得る。カバー層1313は、創傷接触層の周縁部にて創傷接触層1310に対してカバー層1319の周縁部で封止し得る。いくつかの実施形態では、被覆材は、カバー層1313の下方、及び、吸収エリアの層及び電子機器エリアの層の上方に配置された、スペーサ材の連続する層を具備する、上側スペーサ層、すなわち第1スペーサ層1317を選択的に具備し得る。スペーサ材の連続する層、すなわち上側スペーサ層1317は、被覆材の2つのエリアの間の空気通路を可能にし得る。
【0046】
被覆材の吸収エリア1360は、創傷接触層1310の上方に配置された、第2スペーサ層1311、すなわち下側スペーサ層、及び吸収層1322を具備し得る。第2スペーサ層1311は、創傷部位の上に、開口した空気経路を許可し得る。吸収層1322は、被覆材の吸収エリア1360内に配置された超吸収体を具備し得る。吸収層1322は、創傷流体を内部に保持し得、それによって、被覆材の電子機器エリア1361内への創傷滲出液の流体通路を防止する。創傷流体は、創傷接触層1310を通り、下側スペーサ層1311へ、及び吸収層1322内へ流れ得る。次いで、創傷流体は、
図3Cで創傷流体を指す方向矢印によって示すように、吸収層1322全体に広がり、吸収層1322で保持される。
【0047】
被覆材の電子機器エリア1361は、スペーサ材1351の複数の層を具備し得る。いくつかの実施形態では、電子構成要素1350は、スペーサ材1351の複数の層内に埋め込まれ得る。スペーサ材の層は、崩壊を防止するための構造をもたらしつつ、電子構成要素を内部に埋め込むための凹部又は切り欠き部を選択的に有し得る。上述の通り、電子構成要素1350は、ポンプ、電源、コントローラ、及び/又は、電子機器パッケージを選択的に具備し得るが、任意の好適な電子構成要素が考えられる。仕切り1362は、選択的に、吸収エリア1360と電子機器エリア1361との間に配置されてもよい。仕切り1362は、吸収層1322及び下側空気流スペーサ層1311を、電子機器エリアにおける被覆材の電子ハウジングセグメントから分離することができる。仕切り1362は、創傷流体(例えば、創傷滲出液)が被覆材の電子ハウジングセクションに進入するのを防止し得る。いくつかの実施形態では、仕切りは、非多孔質ダム又はその他の構造であり得る。非多孔質ダム1362は、シアノアクリレート接着剤ビード又は一片のシリコンを具備し得る。被覆材を通る空気通路は、方向矢印で
図3Cに示される。空気は、創傷接触層1310、下側スペーサ層1311、吸収層1322を通り、第1スペーサ層1317内へ流れる。空気は、第1スペーサ層1317を通り、仕切り1362を越えて周り、被覆材の電子機器エリア内へ、水平に移動し得る。
【0048】
図3Cに示すように、創傷被覆材システム1300は、ポンプ1304と流体連通した流体浸入阻止構成要素1510を具備し得る。構成要素1510は、ガス(例えば、空気)は通過させるが、液体(例えば、創傷滲出液)の通過は阻止することができる。いくつかの実施形態では、創傷被覆材層及び構成要素1510は、任意の仕切り1362と共に、又は任意の仕切り1362無しで使用され得る。構成要素1510は、ポンプ1304の(例えば、創傷滲出液からの)閉鎖が阻止されるように、創傷被覆材1302の内部とポンプ1304との間に複数の流路を設け得る。有利には、複数の流路のうちのいずれかが閉鎖されたら、複数のうちのその他の流路のうちの1つ又は複数が、創傷被覆材1302とポンプ1304との間で、途切れのない流路を維持することができることになる。そのような流路の冗長性(flow path redundancy)は有利には、創傷被覆材システム1300の動作をより安定させ、より信頼できるものにすることができる。このようにして、構成要素1510は、創傷被覆材1302とポンプ1304との間に開かれた流路があることを確実にすることによって、及び、阻止しなければ目標圧力がさらに様々になるであろう閉鎖を阻止することによって、より安定した目標圧力が創傷部位に伝達されることが可能となり得る。いくつかの実施形態では、構成要素1510の表面エリアは、ポンプ1304と創傷被覆材1302との間の接触エリアを有利に増加させることができ、それによって、同サイズの入口用のポンプ1304の入口により多くの流路をもたらす。いくつかの実施形態では、創傷被覆材システム1300は、2つ以上の構成要素1510を具備し得る。例えば、いくつかの実施形態では、創傷被覆材システム1300は、2から10の、又はそれ以上の構成要素1510を具備し得る。使用される正確な数は、創傷被覆材のスペース制約だけでなく、他の要素と同様に、創傷部位のサイズ及び創傷滲出液の排出量を含む、多くの要素によって変わり得る。
【0049】
いくつかの実施形態では、構成要素1510は、創傷滲出液を弾く疎水性材から成り得、それによって構成要素1510内に、最終的にはポンプ1304内に、流体が浸入するのを阻止する。いくつかの実施形態では、構成要素1510は、疎水性コーティングされた材料であり得る。いくつかの実施形態では、構成要素1510は、多孔質材から成り得る。孔は、毛細管現象(すなわち、構成要素1510に対する創傷滲出液の表面張力)によって、及び、外気と創傷被覆材との間の圧力差異によって、構成要素1510を通って流体が浸入するのを阻止するほど十分小さく成り得るが、空気の通路を許可するほど十分大きくなり得る。例えば、いくつかの実施形態では、構成要素1510は、約20ミクロンから約100ミクロンの範囲の孔サイズを有する材料から成り得る。例えば、いくつかの実施形態では、構成要素1510の材料は、約30ミクロンの孔サイズを有し得る。いくつかの実施形態では、構成要素1510の材料は、約10ミクロンの孔サイズを有し得る。しかしながら、任意の好適な孔サイズが考えられることが理解されるだろう。いくつかの実施形態では、構成要素は泡又は泡状の材料であってもよい。構成要素1510の材料の疎水性及び/又はその孔サイズは、創傷被覆材1302からポンプ1304へ創傷滲出液が流れるのを阻止するよう機能し得る。それによって、構成要素1510は、創傷被覆材システム1300内のポンプ1304が、創傷被覆材1302から創傷滲出液を排出するのを阻止する。
【0050】
上述の通り、構成要素1510の材料は多孔質であり得る。いくつかの実施形態では、構成要素1510を通る複数の流路は、構成要素1510の材料内に形成される、連続して接続された一連の孔によって画定され得、その孔は、創傷被覆材1302の内部と流体連通し、構成要素1510の外部上に配置された孔で始まり、ポンプ1304と流体連通し、構成要素1510の内部に配置された孔で終わる。孔は、その格子配列と、相互に接続された構造により、流路の冗長性を有利にもたらす。創傷被覆材1302の内部と流体連通した最初の孔を、ポンプ1304と流体連通した最後の孔に接続する、構成要素1510を通る複数の流路は、直線及び/又は曲がりくねっていてもよい。一群の開孔は、構成要素1510の内側及び/又は外側で1つ又は複数の閉鎖が実現するようにサイズ調整し得る、構成要素1510を通る1つ又は複数の、より大きなフローチャネルを効果的に生成し得る。いくつかの実施形態では、1つ又は複数の孔は、1つ又は複数の、重なり合った流路を画定し得る。例えば、ある開孔に隣接する及び/又は隣り合う、1つ又は複数の孔が、創傷滲出液によって閉鎖されると、その開孔は、1つ又は複数の閉鎖された孔周りの1つ又は複数の流路を再画定する一助となることによって、創傷被覆材1302からポンプ1304までの開路を維持することができる。構成要素を通る複数の流路が、任意の好適な構造で形成され得ることが理解されるだろう。例えば、孔に加え、又は孔の代わりに、複数の流路が、構成要素1510を通って延在する1つ又は複数のチャネルによって形成され得る。
【0051】
いくつかの実施形態では、構成要素1510は、多孔質ポリマ構成要素であってもよい。多孔質ポリマ構成要素は、任意の好適な形状に機械加工されるか、及び/又は、成型(例えば、射出成型)され得る。例えば、
図4Aから
図4Cは、ポンプ1304と流体連通した、3つの異なる形状の多孔質ポリマ構成要素1510を図示する。
図4Aは、三日月形状の構成要素1510を図示する。
図4Bは、円筒形本体と丸みを帯びた端部を有する指貫形状の構成要素1510を図示する。
図4Cは、円筒形本体と平らな端部を有する、指貫形状の2つの構成要素1510を図示する。構成要素1510はそれぞれ、複数の流路のうちの1つ又は複数を通して、創傷被覆材内の様々な点(図示なし)からポンプ1304内へのガス(例えば、空気)の通過を可能にし得る。多孔質ポリマ構成要素はPOREX(商標)、PORVAIR(商標)又はとりわけ、例えばポリエチレン及び/又はポリプロピレンといったその他の任意の好適な疎水性材から形成され得る。いくつかの実施形態では、多孔質ポリマ構成要素は、PORVAIR Vyon(商標)の多孔質ポリマから形成され得る。上述の通り、構成要素1510の材料は、約5ミクロンから約100ミクロンの範囲にある孔サイズ(例えば、5ミクロン、100ミクロン)を有する材料から成り得る。例えば、いくつかの実施形態では、構成要素1510の材料は、約30ミクロンの孔サイズ(例えば、約30ミクロン)を有し得る。いくつかの実施形態では、構成要素1510の材料は、約10ミクロンの孔サイズ(例えば、約10ミクロン)を有し得る。しかしながら、任意の好適な孔サイズが考えられることが理解されるだろう。
【0052】
図4Aから
図4Cにおいて、ポンプ1304の入口1304aに直接又は間接結合した構成要素1510が示される。例えば、
図4Aは、ポンプ入口1304aに直接結合した構成要素1510を図示する。
図4B及び
図4Cは、中間管状材1512を介してポンプ入口1304aに間接結合した構成要素1510を図示する。
図4Cはまた、2つの構成要素1510を中間管状材1512に接続する、Y形状のスプリッタ1514を図示する。いくつかの実施形態では、
図4Cの中間管状材1512及びY形状スプリッタ1514が、単片であってもよい。中間管状材1512及びY形状スプリッタ1514の内径は、例えば2mmといった、約1mmから約3mmの範囲であってもよい。もちろん、任意の好適な配置及び構造が考えられることが理解されるだろう。
【0053】
図4Aから
図4Cには示されていないが、逆止弁及び/又は排出システムが、ポンプ出口1304bに結合され得る。排出システム及び逆止弁に関するさらなる開示は、2017年3月6日に出願された、「WOUND TREATMENT APPARATUSES AND METHODS WITH NEGATIVE PRESSURE SOURCE INTEGRATED INTO WOUND DRESSING,」と題する国際出願番号PCT/EP2017/055225に記載され得、それは、その全体が参照によってここに組み込まれ、その開示は、本出願の一部として見なされる。有利には、構成要素1510は、創傷滲出液が創傷部位からポンプを通り、逆止弁及び/又は排出システム内へ吸い込まれるのを阻止し得る。
【0054】
図5Aから
図5Cはそれぞれ、
図4Aから
図4Cに示される、対応する構成要素1510の横断面図を図示する。例えば、
図5Aは、ポンプ入口1304aの一部を受容するポート1511を有する
図4Aの構成要素1510を図示する。
図5B及び
図5Cは、ポート1511を有する構成要素1510を同様に図示する。いくつかの実施形態では、構成要素1510は、それが接続する部材(例えば、ポンプ入口)の一部を受容し得るか、及び/又は、それが接続する部材(例えば、ポンプ入口)に結合され得る。例えば、いくつかの実施形態では、
図5Aの構成要素1510は、ポンプ入口1304aに結合(例えば、接着又は熱溶接)され得る。いくつかの実施形態では、
図5Aの構成要素1510は、ポンプ入口1304aの上で自在に摺動し得る。創傷被覆材システム1300の、1つ又は複数の周辺特徴は、構成要素を所定の位置(例えば、
図3Cに示す、カバー層1313と創傷接触層1310との間の圧縮)で保持する一助となり得る。
【0055】
図6A及び
図6Bは、創傷被覆材パッド又はその他の創傷被覆材層の上に置かれた、
図5Cのシステムと同様の流体浸入阻止システムを図示する。
図6Aは、カバー層1313が取り除かれた状態の、被覆材の層の上に置かれた2つの構成要素1510を図示する。
図6Bは、様々な内部構成要素の上に下ろされたカバー層1313又はその他の被覆材層を有する
図6Aを示し、2つの構成要素1510を具備する。
【0056】
いくつかの実施形態では、構成要素1510は、ポンプ流量を50mL/分より多くは低減させない。例えば、いくつかの実施形態では、構成要素1510は、15mL/分から35mL/分の範囲において(例えば、21mL/分から31mL/分)ポンプ流量を低減させ得る。いくつかの実施形態では、構成要素1510は、10%より多くはポンプの自在性能を低下させない。例えば、いくつかの実施形態では、構成要素1510は、4%から6%の範囲においてポンプの自在性能を低下させ得る。
【0057】
いくつかの実施形態では、構成要素1510は、ポンプ入口に取り付けられたマイクロ多孔質膜であってもよい。いくつかの実施形態では、膜がポーチの形状に形成され、ポンプ入口に嵌合し、取り付き得る。3Dスペーサ(例えば、繊維)が、膜が崩壊するのを阻止するよう、ポーチ内に配置され得る。いくつかの実施形態では、ポーチは細長い形態であってもよいが、ポーチは任意の好適な形態をとり得ることが理解されるだろう。膜は、流体(例えば、創傷滲出液)を弾く疎水性であり得、毛細管現象によって流体がポンプ入口内への浸入するのを阻止する多孔性を有し得る。例えば、いくつかの実施形態では、マイクロ多孔質膜は、0.2μmの孔サイズを有するヴェルサポー(Versapore)(Pall社)から成り得る。
【0058】
いくつかの実施形態では、構成要素1510は、細ボア管材の1つ又は複数の長さであってもよく、その長さに沿って配置された複数の穴を有する。細ボア管材のうちの1つ又は複数の長さは、ポンプ入口と創傷被覆材との間に1つ又は複数のループを形成し得る。別例として、
図6A及び
図6Bの2つの構成要素1510が創傷被覆材内の2つの異なる点に配置される方法と同様に、細ボア管材のうちの1つ又は複数の長さが、ポンプ入口から、創傷被覆材内の1つ又は複数の異なる点まで延在し得る。管材におけるボアのサイズは、低減された圧力下で管材が崩壊に抵抗するような内径を有し得る。
【0059】
いくつかの実施形態では、構成要素1510は、その使用によって有意な圧力降下が回避されるように設計される。このようにして、構成要素1510は、ポンプ1304がさらなる負荷で作動しなければならないのを防止し、創傷被覆材からポンプ1304を通って外気へ流れる流路に追加し得る、任意の追加抵抗からより多くの動力を消費し得る。
【0060】
図7A及び
図7Bは、ポンプ1704とポンプ入口1704aに直接結合する構成要素1710とを具備する、電子ユニット1700の実施形態を図示する。
図7Aは、電子ユニットの頂面図を図示する。
図7Bは、電子ユニットの底面又は創傷に対向する表面を図示する。電子ユニット1700は、ポンプと、電源、センサ、コネクタ、回路板、ユーザインターフェース構成要素(ボタン、スイッチ、スピーカ、スクリーン、等)等といった、その他の電子構成要素とを具備し得る。いくつかの実施形態では、
図7A及び
図7Bの電子ユニットは、1つのユニットとして創傷被覆材の電子機器エリア1361内に埋め込まれ得る。
【0061】
いくつかの実施形態では、構成要素1710は、ポンプ入口上で押され得る。これは、摩擦嵌合であってもよい。ポンプ入口の一部を受容する構成要素1710のポートは、ポンプ入口周りで補完嵌合するサイズ及び形状であってよい。いくつかの実施形態では、構成要素1710は、シリコン封止剤又はその他の任意の封止剤、又は封止技術を使用して、ポンプ入口上に結合され得る。いくつかの実施形態では、電子ユニットは、電子機器エリア1361内の被覆材の層内に埋め込まれ得る。いくつかの実施形態では、電子機器エリア1361内の被覆材の層は、電子ユニット1700が配置され得る切り欠き部及び凹部を具備し得る。
【0062】
図8は、電子ユニットを埋め込んだ、又は取り込んだ創傷被覆材層を図示する。
図8に図示されるように、被覆材は、創傷に接触して配置するための創傷接触層1310を具備し得る。下側スペーサ層1311及び1311’は、創傷接触層1310の上方に設けられる。いくつかの実施形態では、
図8に示すように、スペーサ層1311は、スペーサ層1311’とは別の層であってもよい。その他の実施形態では、下側スペーサ層1311及び/又は1311’は、電子機器エリア及び吸収エリアの両方の下にある、連続した層のスペーサ材であってもよい。下側スペーサ層1311及び/又は1311’は、創傷表面に圧力を均等に分配し、及び/又は、流体を創傷から逃がすことを支援し得る。吸収層1322は、下側スペーサ層1311及び/又は1311’の上方に配置され得る。被覆材層1351は、電子構成要素1350を層1351内に埋め込むための切り欠き部又は凹部1328を具備し得る。いくつかの実施形態では、層1351は吸収材であってもよい。いくつかの実施形態では、創傷材層1351及び吸収層1322は、1つの連続する片の吸収材であってもよい。あるいは、いくつかの実施形態では、層1351は、スペーサ層又は伝達材であってもよい。いくつかの実施形態では、切り欠き部又は凹部1328は、ポンプ1327、電源1326、及び/又は、電子ユニットのその他の電子構成要素を埋め込むようなサイズ又は形状とされ得る。いくつかの実施形態では、ポンプ1327、電源1326、及び/又は、その他の電子構成要素は、
図7A及び
図7Bに示すような個別構成要素として、又は電子アセンブリとして、切り欠き部又は凹部1328内に組み込まれ得る。上側層1317は、吸収層1322、層1351、及び/又は、電子構成要素1350の上方に選択的に設けられ得る。カバー層又はバッキング層1313は、上側スペーサ層の上に配置され得る。いくつかの実施形態では、上側層1317が使用されないときは、カバー層、すなわちバッキング層1313が、吸収層1322、層1351、及び/又は、電子構成要素1350の上方に設けられ得る。バッキング層1313は、スペーサ層1311、1311’、及び1317、吸収層1322、層1351、電子構成要素1350を取り囲む周縁領域において、創傷接触層1310に対して封止を形成し得る。いくつかの実施形態では、バッキング層1313は、被覆材構成要素が創傷に適用されるとき、その被覆材構成要素周りで形成及び成型する、柔軟性のある材料のシートであり得る。その他の実施形態では、バッキング層1313は、
図8に示すような、被覆材構成要素周りに嵌合するようあらかじめ形成され、又は、あらかじめ成型された材料であり得る。
【0063】
構成要素1710は、ポンプ1327の入口に設けられ得る。いくつかの実施形態では、構成要素1710の疎水性により、ポンプの入口に滲出液が無い状態を維持し得る。いくつかの実施形態では、構成要素1710は、超吸収及び/又は吸収材と接触する、及び/又は、流体連通し得る。この構成では、構成要素1710は、陰圧が印加されるとき、液体がポンプの入口へ引きつけられるのを防止し得る。構成要素1710は、従来の疎水性フィルタの孔サイズより大きい孔サイズを有する材料から成り得、構成要素の材料がそれ自体によって水分と接触した場合に液体が通過し得る。しかし、本明細書に記載されるような孔サイズを有する疎水性構成要素1710の疎水性は、超吸収及び/又は吸収材に接触し得、陰圧が印加されると、滲出液がポンプの入口を通って引き付けられるのを防止し得る。
【0064】
図9A及び
図9Bは、ポンプ入口に結合させるためのポート1715を有する構成要素1710の実施形態を図示する。ポート1715は、
図5Aから
図5Cのポート1511と類似しており、ポンプ入口1304aの一部を受容する形状である。いくつかの実施形態では、ポンプ入口1304aの形状は、
図5Aのポンプ入口1304aの横断面に示すように、管状又は円筒状であってもよい。いくつかの実施形態では、構成要素1710は、それが接続する部材(例えば、ポンプ入口)の一部を受容し得るか、及び/又は、それが接続する部材(例えば、ポンプ入口)に結合され得る。例えば、いくつかの実施形態では、構成要素1710は、ポンプ入口1304aに結合(例えば、接着又は熱溶接)され得る。いくつかの実施形態では、構成要素1710は、ポンプ入口1304aの上で自在に摺動し得る。創傷被覆材システムの、1つ又は複数の周辺特徴は、構成要素を所定の位置(例えば、カバー層と創傷接触層との間の圧縮)で保持する一助となり得る。
【0065】
いくつかの実施形態では、構成要素1710は三次元形状を有し、ポンプ入口を円周方向に取り囲み得る。三次元形状の構成要素1710は、ポンプ入口1304aの幅、高さ、及び/又は長さよりも大きい幅、高さ、及び/又は長さ寸法を有し得る。いくつかの実施形態では、構成要素1710は、
図9A及び
図9Bに示すような直方体又は略直方体形状であってもよい。例えば、構成要素1710は、ポート1715が延在する、平らな、ポンプが対向する表面を有し得、1つ又は複数の傾斜した縁部及び/又は角部を有する。いくつかの実施形態では、三次元構成要素は、ポンプ入口が構成要素1710のポート1715内に挿入されると、ポンプ入口を円周方向に取り囲み得る。ポンプ入口を円周方向に取り囲むことによって、三次元構成要素は、ポンプ入口1304aで利用可能となる表面エリアよりも大きな表面エリアをもたらすことができる。より大きな表面エリアにより、構成要素1710内に複数の流路をもたらすことができる。これにより、構成要素1710の別部分が流体によって取り囲まれるか、あるいは阻止される場合でも、構成要素1710の一部分を通して空気を吸い込むことができる。
【0066】
(あらゆる添付資料、特許請求の範囲、要約書、及び図面を含む)本明細書において開示されるすべての特徴、及び/又はそのように開示されるあらゆる方法もしくはプロセスのすべてのステップは、そのような特徴及び/又はステップのうち少なくともいくつかが相互に排他的である組み合わせを除いて、任意の組み合わせで組み合わされてよい。本開示は、あらゆる前述の実施形態の詳細に限定されない。本開示は、(あらゆる添付の特許請求の範囲、要約書、及び図面を含む)本明細書において開示される特徴のうち任意の新規の特徴もしくは任意の新規の組み合わせ、又はそのように開示されるあらゆる方法又はプロセスのステップのうち任意の新規のステップもしくは任意の新規の組み合わせに拡張される。
【0067】
本開示に記載された実装に対する様々な変形が、当業者には容易に明らかとなり得、本明細書で定義される一般原理は、本発明の精神又は範囲を逸脱することなく、その他の実装に適用され得る。よって、本開示は、本明細書に示される実装に制限されることは意図しておらず、本明細書に開示された原理及び特徴と一致する最も広い範囲が与えられるべきである。本開示の特定の実施形態は、下記に挙げられた特許請求の範囲一式に包含されるか、又は、将来示される。
[付記項1]
創傷被覆材装置であって、
創傷部位の上に配置されるよう構成された創傷被覆材であって、
創傷に接触して配置されるよう構成された創傷接触層と、
第1エリアと、前記第1エリアに隣接して配置された第2エリアであって、前記第1エリアが吸収材を含み、前記第2エリアが陰圧源を受容するよう構成された第1エリア及び第2エリアと、
前記創傷接触層と、前記第1エリアと、前記第2エリアとを覆い、その上で封止を形成するよう構成されたカバー層と、を含む創傷被覆材と、
前記創傷被覆材の前記第2エリアの上に配置された、又は、その中に配置された陰圧源であって、入口と出口とを備え、前記創傷部位に陰圧を印加するよう動作可能である陰圧源と、
前記入口と流体連通する構成要素であって、前記入口の閉鎖が阻止されるよう、前記創傷被覆材の内部と前記入口との間に複数の流路を画定する構成要素と、を備え、
前記構成要素が前記吸収材と流体連通し、創傷滲出液が前記創傷部位から前記入口へ流れるのを阻止するよう構成された創傷被覆材装置。
[付記項2]
前記構成要素が、創傷滲出液を弾くよう構成された疎水性材を備える、付記項1に記載の創傷被覆材装置。
[付記項3]
前記構成要素が、毛細管現象による創傷滲出液の浸入に抵抗するよう構成された孔サイズを有する材料を備える、付記項1又は2のいずれかに記載の創傷被覆材装置。
[付記項4]
前記構成要素が、1つ又は複数の多孔質ポリマ成型構成要素を備える、付記項1から3のいずれかに記載の創傷被覆材装置。
[付記項5]
前記1つ又は複数の多孔質ポリマ成型構成要素を含む前記ポリマが疎水性であり、約20ミクロンから約40ミクロンまでの範囲の孔サイズを有する、付記項4に記載の創傷被覆材装置。
[付記項6]
前記孔サイズが約30ミクロンである、付記項5に記載の創傷被覆材装置。
[付記項7]
前記1つ又は複数の多孔質ポリマ成型構成要素を含む前記ポリマが疎水性であり、約5ミクロンから約40ミクロンまでの範囲の孔サイズを有する、付記項4に記載の創傷被覆材装置。
[付記項8]
前記孔サイズが約10ミクロンである、付記項7に記載の創傷被覆材装置。
[付記項9]
前記ポリマがPOREX(商標)又はPORVAIR(商標)である、付記項4から8に記載の創傷被覆材装置。
[付記項10]
前記ポリマが、疎水性ポリエチレン又は疎水性ポリプロピレンのうちの1つである、付記項4から8に記載の創傷被覆材装置。
[付記項11]
前記1つ又は複数の多孔質ポリマ成型構成要素がそれぞれ、前記ポンプ入口と、前記創傷被覆材の前記内部との間の前記接触エリアを増加させるよう構成された、付記項4から10のいずれかに記載の創傷被覆材装置。
[付記項12]
前記1つ又は複数の多孔質ポリマ構成要素が、三日月形状、指貫形状、もしくは、直方
体又は略直方体形状のうちの1つである、付記項4から11のいずれかに記載の創傷被覆材装置。
[付記項13]
前記1つ又は複数の多孔質構成要素が、湾曲しているか又は傾斜した角部及び/又は縁部を備える、付記項4から12のいずれかに記載の創傷被覆材装置。
[付記項14]
前記1つ又は複数の多孔質ポリマ構成要素が、前記入口と、前記入口及び前記創傷被覆材の前記内部と流体連通した管状延長部の端部のうちの少なくとも1つに取り付くよう構成された、付記項4から13のいずれかに記載の創傷被覆材装置。
[付記項15]
前記構成要素が、前記入口に取り付けられた1つ又は複数のマイクロ多孔質膜を備える、付記項1から3のいずれかに記載の創傷被覆材装置。
[付記項16]
前記膜内に配置されたスペーサ材であって、前記膜が崩壊するのを阻止するよう構成されたスペーサ材をさらに備える、付記項15に記載の創傷被覆材装置。
[付記項17]
前記マイクロ多孔質膜が、孔サイズが0.2ミクロンであるヴェルサポー(Versapore)(Pall社)を備える、付記項15又は16に記載の創傷被覆材装置。
[付記項18]
前記構成要素が、その長さに沿って複数の穴を画定する、細ボア管材のうちの1つ又は複数の長さを備える、付記項1から3のいずれかに記載の創傷被覆材装置。
[付記項19]
前記細ボア管材のうちの1つ又は複数の長さが、前記入口と前記創傷被覆材との間に1つ又は複数のループを形成する、付記項18に記載の創傷被覆材装置。
[付記項20]
前記細ボア管材のうちの1つ又は複数の長さが、前記入口から前記創傷被覆材内の1つ又は複数の異なる点まで延在する、付記項18に記載の創傷被覆材装置。
[付記項21]
前記陰圧源がマイクロポンプである、付記項1から20のいずれかに記載の創傷被覆材装置。
[付記項22]
陰圧を前記創傷部位に印加する前記マイクロポンプの前記動作を制御するよう構成されたコントローラをさらに備える、付記項21に記載の創傷被覆材装置。
[付記項23]
前記吸収材が、創傷滲出液を吸収するよう構成された、付記項1から22に記載の創傷被覆材装置。
[付記項24]
前記構成要素が前記入口に取り付けられた、付記項1から17、及び、付記項21から23に記載の創傷被覆材装置。
[付記項25]
前記構成要素が前記入口に嵌合された、付記項1から17、及び、付記項21から24に記載の創傷被覆材装置。