(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-18
(45)【発行日】2022-03-01
(54)【発明の名称】羽毛布団
(51)【国際特許分類】
A47G 9/02 20060101AFI20220221BHJP
【FI】
A47G9/02 C
(21)【出願番号】P 2019123465
(22)【出願日】2019-07-02
【審査請求日】2020-08-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000010032
【氏名又は名称】フランスベッド株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】特許業務法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山口 裕弘
【審査官】土屋 正志
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-070350(JP,A)
【文献】特開平11-332715(JP,A)
【文献】登録実用新案第3062911(JP,U)
【文献】実開昭60-022969(JP,U)
【文献】特表2017-532458(JP,A)
【文献】国際公開第2018/118764(WO,A1)
【文献】実開平01-170170(JP,U)
【文献】米国特許第05528781(US,A)
【文献】実開昭61-165671(JP,U)
【文献】特開平11-225863(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47G 9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
袋状に縫製された布団本体を有する羽毛布団であって、
前記布団本体は、
表側布地と、
前記表側布地の下面側に設けられ周辺部が前記表側布地の周辺部に縫合される裏側布地と、
所定の幅寸法を有する帯状であって、その幅方向の上端を前記表側布地に連結し下端を前記裏側布地に連結して設けられ羽毛が充填される複数の空間部を前記表側布地と前記裏側布地の間に区画形成した仕切り布とによって形成され、
前記空間部は、
前記布団本体の幅方向の中央部分に長手方向に沿って複数に分割形成された第1の空間部と、
前記第1の空間部の両側に長手方向に沿って複数に分割形成された第2の空間部と、
前記第2の空間部の両側に長手方向に沿って複数に分割形成された第3の空間部とによって構成され、
前記仕切り布は、前記表側布地の下面に縫合される
それぞれの上端の部分が凸曲線部に形成され、前記裏側布地の上面に縫合される
それぞれの下端の部分が凹曲線部
又は直線状に形成されていて、
前記第1乃至第3の空間部に羽毛が充填されることで、前記表側布地の前記第1乃至第3の空間部の上端開口を閉塞したそれぞれ部分が前記仕切り布の上端に形成された前記凸曲線部に沿って凸状曲面に膨張して前記布団本体の上面全体が幅方向及び長手方向の両方向において凸状曲面に湾曲し、この上面の湾曲に応じて下面全体が凹状曲面に湾曲する構成であることを特徴とする羽毛布団。
【請求項2】
前記第1の空間部には、前記第2、第3の空間部よりも単位体積当たりの羽毛の充填量が多くなるよう設定されていることを特徴とする請求項1記載の羽毛布団。
【請求項3】
前記布団本体の長手方向の一端部側と他端部側の少なくとも一方の幅寸法は、長手方向の端部に行くにつれて次第に狭くなるよう形成されていることを特徴とする
請求項1又は請求項2のいずれかに記載の羽毛布団。
【請求項4】
前記布団本体を被覆する布団カバーを有し、前記布団本体の周辺部にはループ状の取付け部材が設けられ、前記布団カバーには前記取付け部材に連結される連結部材が設けられていて、
前記布団本体の端部に形成された凸曲面に設けられた前記取付け部材には、前記布団カバーの前記連結部材が補助部材を介して連結されることを特徴とする
請求項3記載の羽毛布団。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は表側布地と裏側布地とが袋状に縫製された布団本体の内部に羽毛が充填される羽毛布団に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、掛け布団として利用される羽毛布団は、表側布地と裏側布地とを重ね合せてこれらの周辺部を縫合して袋状の布団本体とし、この布団本体内の空間部に充填物としての羽毛を充填して形成されている。
【0003】
前記空間部に羽毛を単に充填すると、使用時に羽毛が布団本体の内部で偏ったり、押しつぶされてしまう。そのため、前記空間部を所定の高さ寸法を有する帯状の仕切り布(襠布)によって複数の空間部に区画することで、羽毛が大きく偏ったり、押し潰されるのを防止するようにしている。
【0004】
このような構成の羽毛布団は、綿を使用した従来の掛け布団に比べて大幅に軽量であるにも関わらず、保温性に優れているという点に着目され、多く人に利用されるようになってきている。
一方で、羽毛布団は需要の増大に伴って、良質な羽毛の供給が逼迫し、羽毛の価格が大幅に上昇し、それによって羽毛布団の価格も上昇してきている。
【0005】
ところで、前記羽毛布団の性能、とくに保温性を向上させるためには前記仕切り布によって区画された複数の空間部に充填される羽毛の量、つまり単位体積当たりの充填量を増大させることで達成することができる。
【0006】
さらに、前記羽毛布団の保温性を向上させるためには、利用者が羽毛布団を掛けたとき、利用者の頭部側を除く前記羽毛布団の周辺部が敷き布団の上面に隙間なく接触し易くすして隙間風の侵入を防ぐことで、保温性を向上させるということが考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特許第5264358号公報
【文献】特開2019-25194号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1や特許文献2には羽毛布団の布団本体に仕切り布によって複数の空間部を区画形成し、それら空間部に羽毛を充填して前記羽毛布団の保温性を得るようにすることが示されている。
【0009】
しかしながら、複数の前記空間部に単に所定量の羽毛を均一に充填するだけでは、羽毛の充填量に対して保温性が比例的に向上するだけである。つまり、羽毛布団の保温性は羽毛の充填量によって左右されることになる。
【0010】
したがって、羽毛布団の保温性を向上させるためには羽毛の使用量を大幅に増大させることになるから、保温性を向上させるためには羽毛布団の大幅なコスト上昇を招くということになる。
【0011】
利用者が羽毛布団を掛けて使用したとき、前記羽毛布団による保温性は、前記布団本体の周辺部が敷布団の上面に確実に接触し、前記周辺部と敷き布団との間から隙間風が入り難いようにすることで、向上させることができるということが知られている。
【0012】
ところで、従来の羽毛布団では、前記布団本体の周辺部と敷き布団の上面との間に隙間が生じないようにするためには、たとえば前記布団本体を前記敷き布団に比べて十分に大きくすることで、利用者が前記羽毛布団を掛けたとき、前記布団本体の周辺部と前記敷き布団の上面との間に隙間が生じるのを防止するということが行われていた。
【0013】
しかしながら、前記羽毛布団を単に大きくするだけでは、その羽毛布団に使用される羽毛の量を増大させることになるから、このことによってもコストの大幅な上昇を招くことになり、実用的でないということがある。
【0014】
しかも、前記羽毛布団を単に大きくすると、寝返りを打ったときに利用者に与える前記羽毛布団のまとわり感が増大するため、寝心地の低下を招くということもある。
【0015】
この発明は、羽毛の使用量を増大させずに、保温性の向上を図ることができるようにした羽毛布団を提供することにある。
【0016】
この発明は、布団本体を大きくしなくとも、その周辺部と敷き布団の上面との間に隙間が生じ難いようにした羽毛布団を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
この発明は、袋状に縫製された布団本体を有する羽毛布団であって、
前記布団本体は、
表側布地と、
前記表側布地の下面側に設けられ周辺部が前記表側布地の周辺部に縫合される裏側布地と、
所定の幅寸法を有する帯状であって、その幅方向の上端を前記表側布地に連結し下端を前記裏側布地に連結して設けられ羽毛が充填される複数の空間部を前記表側布地と前記裏側布地の間に区画形成した仕切り布とによって形成され、
前記空間部は、
前記布団本体の幅方向の中央部分に長手方向に沿って複数に分割形成された第1の空間部と、
前記第1の空間部の両側に長手方向に沿って複数に分割形成された第2の空間部と、
前記第2の空間部の両側に長手方向に沿って複数に分割形成された第3の空間部とによって構成され、
前記仕切り布は、前記表側布地の下面に縫合されるそれぞれの上端の部分が凸曲線部に形成され、前記裏側布地の上面に縫合されるそれぞれの下端の部分が凹曲線部又は直線状に形成されていて、
前記第1乃至第3の空間部に羽毛が充填されることで、前記表側布地の前記第1乃至第3の空間部の上端開口を閉塞したそれぞれ部分が前記仕切り布の上端に形成された前記凸曲線部に沿って凸状曲面に膨張して前記布団本体の上面全体が幅方向及び長手方向の両方向において凸状曲面に湾曲し、この上面の湾曲に応じて下面全体が凹状曲面に湾曲する構成であることを特徴とする羽毛布団にある。
【発明の効果】
【0023】
そのため、利用者に掛けられた前記羽毛布団は上面側が凸状で、下面側が凹状に湾曲して周辺部が敷き布団の上面に接触することで、前記布団本体の周辺部から外気が侵入し難くなるから、羽毛の使用量を増大させずに、保温効果を向上させることができる。
【0024】
前記布団本体の下面側が凹状になることで、その下面側に空間が生じ易くなるから、寝返りを打ったときなどに布団本体が利用者にまとわり難くなるから、利用者の身体に加わる圧力が低減されたり、寝返りが打ち易い、つまり寝心地が向上するということもある。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】この発明の第1の実施の形態を示す羽毛布団の平面図。
【
図2】
図1に示す羽毛布団を矢印Aで示す長手方向の一端側から見た側面図。
【
図3】
図1に示す羽毛布団を矢印Bで示す幅方向の一端側から見た側面図。
【
図4】
図1に示す羽毛布団の幅方向中央部の長手方向に沿う断面図。
【
図5】仕切り布の曲線部と直線部の長さの比を説明した図。
【
図7】羽毛布団に設けられた取付け部材と、布団カバーに設けられた連結部材を補助部材によって連結した図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、この発明の実施の形態を図面を参照しながら説明する。
図1は掛け布団として使用される羽毛布団1を上面側から見た平面図、
図2は前記羽毛布団1を幅方向一側から見た側面図、
図3は同じく利用者の頭側になる長手方向の一端側から見た端面図である。
【0027】
図4は前記羽毛布団1の幅方向中央部分を長手方向に沿って拡大断面した図であって、前記羽毛布団1は表側布地2、裏側布地3、及び所定の幅寸法(高さ寸法)を有する帯状の仕切り布4によって構成された布団本体5を有する。
【0028】
前記布団本体5は、前記裏側布地3の上面に前記仕切り布4の幅方向の下端が縫着され、前記表側布地2の下面に幅方向の上端が縫着されるとともに、前記表側布地2と前記裏側布地3との周辺部が全長にわたって縫着されて構成されている。
【0029】
図1に示すように、前記表側布地2と前記裏側布地3の、前記布団本体5の長手方向の一端側を形成する部分は凹曲面8に形成され、幅方向の両側は一端を前記凹曲面8の一端と他端にそれぞれ連続させた一対の第1の凸曲面9に形成されている。
【0030】
一対の前記第1の凸曲面9の他端である、前記表側布地2と前記裏側布地3の長手方向の他端、つまり前記布団本体5の他端側は、前記第1の凸曲面9よりも大きな曲率で湾曲した第2の凸曲面11に形成されている。
【0031】
前記表側布地2と前記裏側布地3との間に設けられた前記仕切り布4は、前記布団本体5の内部に複数の空間部を区画形成している。具体的には、前記布団本体5の幅方向中央部分には、
図1と
図4に示すように長手方向に分割された4つの第1の空間部13a~13dが前記仕切り布4によって区画形成されている。
【0032】
前記布団本体5の長手方向の一端側と他端側に位置する2つの前記第1の空間部13a,13dはそれぞれ平面形状が台形状であって、それらの間に位置する2つの前記第1の空間部13b,13cの平面形状はそれぞれ亀甲状、つまり六角形状に形成されている。
【0033】
前記第1の空間部13a~13dの前記布団本体5の幅方向の両側には、長手方向の全長にわたって4つの第2の空間部14a~14dが前記仕切り布4によって区画形成されている。
【0034】
前記布団本体5の長手方向の上端側に位置するそれぞれの前記第2の空間部14aはほぼ四角形状であって、2つの前記第2の空間部14aと、これらの間に位置する1つの第1の空間部13aとで前記布団本体5の長手方向の一端側の幅方向の全長を占めている。
【0035】
2つの前記第2の空間部14aの下側(前記布団本体5の長手方向他端側)には、前記第2の空間部14aよりも幅寸法が小さな逆台形状をなした前記第2の空間部14bが形成されている。前記第2の空間部14bの下側には六角形状の前記第2の空間部14c、前記第2の空間部14cの下側には同じく六角形状の前記第2の空間部14dが順次隣接して区画形成されている。
【0036】
なお、
図4には前記空間部を区画形成する仕切り布4が示されているが、
図1には前記仕切り布4の幅方向の上端を前記表側布地2に逢着することで形成される縫合線4aが実線の指示線で、前記仕切り布4が破線の指示線で示されている。
【0037】
前記第1の空間部13a~13dの幅方向の一側と、前記第2の空間部14a~14dの、前記第1の空間部13a~13dに接する幅方向の一側の前記仕切り布4は共有されている。つまり、同じ仕切り布4によって形成されている。
【0038】
前記第2の空間部14a~14dよりも前記布団本体5の幅方向の両外側には、前記第2の空間部14aの下側から前記布団本体5の下端にわたって3つの空間部からなる第3の空間部15a~15cが前記仕切り布4によって区画形成されている。
【0039】
前記布団本体5の長手方向一端側に位置する前記第3の空間部15aは五角形状で、そのうちの2つの辺の一方は前記第2の空間部14bの一辺を形成する前記仕切り布4を共有し、他方は前記第2の空間部14cの一辺を形成する前記仕切り布4をそれぞれ共有している。
【0040】
前記第3の空間部15bも五角形状で、そのうちの2つの辺の一方は前記第2の空間部14cの一辺を形成する前記仕切り布4を共有し、他方は第2の空間部14dの一辺を形成する前記仕切り布4を共有している。
【0041】
前記第3の空間部15bに一辺を隣接させた前記第3の空間部15cは外側の一側が凸曲面をなしたほぼ三角形状であって、そのうちの一辺は前記第2の空間部14dの一辺を形成する前記仕切り布4を共有している。
【0042】
前記布団本体5の一端側に形成された前記凹曲面8は前記第1の空間部13aと、一対の前記第2の空間部14aとの上辺によって形成されている。一対の前記第1の凸曲面9は前記第2の空間部14aと、前記第3の空間部15a、15b及び15cの幅方向の一側の各側辺によって形成されている。
【0043】
前記第2の凸曲面11は、前記第1の空間部13dの下辺、一対の前記第2の空間部14dの下辺、及び一対の第3の空間部15cの前記第1の凸曲面9の側辺の一部によって形成されている。つまり、前記第3の空間部15cの側辺は、前記第1の凸曲面9と前記第2の凸曲面11の両方を形成している。
【0044】
前記仕切り布4は、
図5に示すように前記表側布地2に縫合される上端が上方に向かって凸状に湾曲したアーチ状の複数の凸曲線部18が順次形成され、下端は前記凸曲線部18に対応する部分がそれぞれ凹曲線部19に形成されている。前記凹曲線部19は前記凸曲線部18に比べて曲率半径が十分に大きく設定されている。なお、前記凹曲線部19は直線状であっても差し支えない。
【0045】
図5に示すように、1つの空間部の一辺を形成する前記仕切り布4の前記凹曲線部19の長さをL1をとし、1つの空間部の一辺を形成する前記仕切り布4の前記
凸曲線部18の長さをL2とすると、この実施の形態ではこれらの長さの比L1:L2はほぼ1:1.5に設定されている。
【0046】
前記表側布地2は、前記第1乃至第3の空間部を形成する前記仕切り布4の前記凸曲線部18に縫合され、前記裏側布地3は前記第1乃至第3の空間部を形成する前記仕切り布4の前記凹曲線部19に縫合される。
【0047】
したがって、前記凸曲線部18に沿って縫合される前記表側布地2の前記布団本体5の幅方向及び長手方向に沿う長さ寸法は、前記仕切り布4の前記凹曲線部19に沿って縫合される前記裏側布地3の前記布団本体5の幅方向及び長手方向の長さ寸法の1.5倍を必要とすることになる。
【0048】
つまり、前記布団本体5に前記仕切り布4によって区画形成されたそれぞれ複数の前記第1乃至第3の空間部13a~13d、14a~14d、15a~15cは、下端開口が前記裏側布地3によって平坦な状態で閉塞され、上端開口は前記表側布地2が前記仕切り布4の上端の前記凸曲線部18に沿って縫合されることで閉塞される。
【0049】
それによって、前記第1乃至第3のそれぞれの空間部13a~13d、14a~14d、15a~15cに羽毛Fが圧縮空気によって充填されると、これら空間部の上端開口を閉塞した前記表側布地2が前記仕切り布5の上端に形成された前記凸曲線部18に沿ってドーム状に膨張することになる。
【0050】
各空間部の上端開口を閉塞した前記表側布地2のそれぞれの部分がドーム状に膨張すると、その膨張によって前記布団本体5は
図2に示す長手方向及び
図3に示す幅方向の両方向において、上面側全体が凸状曲面20で、下面側全体が凹状曲面21に湾曲する。
【0051】
このように幅方向及び長手方向に湾曲した前記布団本体5を利用者が掛けて使用すると、幅方向においては、凹状曲面21となって下方に湾曲した幅方向の両端部が図示しない敷き布団の上面に当たることになる。
それによって、前記布団本体5の幅方向の両端部と前記敷き布団の上面との間に隙間が生じ難くなるから、幅方向の保温性が向上することになる。
一方、長手方向においては凹状曲面21の長手方向の一端側(上端側)が利用者の襟元を確実に覆い、他端側(下端側)が足元を覆うことになる。
【0052】
そのため、これらのことにより、幅方向と同様、前記布団本体5の長手方向の一端部と利用者の襟元の間、及び他端側と前記敷き布団の上面との間に隙間が生じ難くなるから、保温性が向上することになる。
【0053】
前記布団本体5の前記第1乃至第3の空間部13a~13d、14a~14d、及び15a~15cに羽毛Fを充填する際、それぞれの空間部毎に羽毛の単位体積当たりの充填量が設定される。
【0054】
この実施の形態では、第1乃至第3の空間部のうち、第1の空間部13a~13dに単位体積当たりで最も多い量の羽毛が充填され、ついで第2の空間部13a~13d、ついで第3の空間部15a~15cの順に羽毛Fの充填量が設定される。
【0055】
つまり、前記布団本体5の幅方向の中央部分の前記第1の空間部13a~13dに最もの多くの羽毛Fが充填され、ついで第2の空間部14a~14d、第3の空間部15a~15cの順になっている。
【0056】
通常、敷布団に仰臥して就寝する利用者の身体に対し、前記布団本体5はその幅方向の中央部分が掛けられる。そのため、前記布団本体5の保温性はその幅方向の中央部分である、前記第1の空間部13a~13dに充填された羽毛Fの量によって大きく左右されることになる。
【0057】
その結果、前記第1の空間部13a~13dに充填される羽毛の単位体積当たりの量を他の空間部よりも多くしたことで、利用者が体感する保温性を向上させることができる。
【0058】
たとえば、前記第1の空間部13a~13dに充填される羽毛Fの単位体積当たりの量を通常の充填量とし、前記第2の空間部14a~14dと前記第3の空間部15a~15cに充填される羽毛Fの量を減少させても、その羽毛布団1によって通常の保温効果を得ることが可能となる。換言すれば、全体として羽毛の使用量を減少させても、良好な保温性を得ることが可能となる。
【0059】
前記布団本体5の幅方向の両側は前記第1の凸曲面9に形成されている。そのため、利用者が前記布団本体5を掛けた状態で寝返りを打ったとき、前記布団本体5の幅方向の寝返り方向となる一端部側は敷き布団の上面に沿ってスライドし易い。
【0060】
それによって、前記布団本体5が利用者の身体にまとわりついて巻き込まれということが生じ難くなるから、就寝中の寝返りが打ち易くなり、寝心地の向上を図ることができる。
【0061】
前記布団本体5は幅方向の両側が前記第1の凸曲面9に形成され、長手方向の他端側が第2の凸曲面11に形成されていて、全体として亀甲状をなしている。
【0062】
そのため、前記布団本体5は矩形状に形成した場合に比べて全体の平面形状を小さくできるから、その分、羽毛Fの使用量を減少させることができる。つまり、上述したように保温性の低下を招くことなく、羽毛Fの使用量を減少させることができる。
【0063】
前記布団本体5には
図1に鎖線で示すように、平面形状が前記布団本体5とほぼ同じ形状で、内部に前記布団本体5を収容できる矩形袋状に形成された布団カバー22が装着される。
図1に示すように、前記布団本体5の周辺部には複数のループ状の取付け部材23が周方向に所定間隔で設けられ、さらに前記第1の空間部13aと13bの境界部にも取付け部材23が設けられている。
【0064】
前記布団本体5に装着される前記布団カバー22の内周部には、
図6に示す複数の前記連結部材24が周方向に所定間隔で設けられている。前記連結部材24は基端が前記布団カバー22に縫着され、先端が2つに分割されていて、その先端部はホック25によって分解可能に連結できるようになっている。
【0065】
前記布団本体5に装着された前記布団カバー22は、前記布団本体5の周辺部に設けられた複数のループ状の前記取付け部材23に、前記布団カバー22の内部周辺部に設けられた連結部材24を係着させて保持されるようになっている。前記連結部材24は基端が前記布団カバー22に縫着され、先端が2つに分割されていて、その先端部はホック25によって分解可能に連結できるようになっている。
【0066】
それによって、前記連結部材24を前記ホック25によって前記取付け部材23に連結すれば、前記布団カバー22を前記布団本体5にずれ動くことがないよう装着保持できるようになっている。
【0067】
上述したように、前記取付け部材23は、前記布団本体5の外面の、幅方向中央に形成された前記第1の空間部の13aと13bの境界部、及び前記第2の凸曲面11の端部にも設けられている。
【0068】
前記境界部及び前記第2の凸曲面11の端部に設けられた前記取付け部材23と、前記布団本体5の内部に設けられた前記連結部材24の間隔は大きく、直接連結することができないため、これらを連結する際には補助部材27が用いられる。
【0069】
前記補助部材27は、
図6に示すように紐部材の両端に着脱可能なホック26が設けられ、これらホック26を連結することで、ループ状となる構造であって、中途部を前記取付け部材23に通し、端部の一方をホック25によって連結されてループ状となった前記連結部材24に通すことで、前記取付け部材23と前記連結部材24を連結できるようになっている。
【0070】
なお、この実施の形態では布団カバー22としては、市販されている矩形袋状のものを用いた場合について説明したが、布団カバー22を前記布団本体5の平面形状と同様の形状、つまり亀甲形状とすれば、前記補助部材27を用いずに、前記布団本体5の周辺部に設けられた複数の前記取付け部材23を、亀甲状の布団カバー内に設けられた複数の前記取付け部材23に連結することができる。
【0071】
ただし、この場合も、前記布団本体5の周辺部以外の箇所に取付け部材23が設けられている場合には、その部分の取付け部材23を前記連結部材24に連結するために前記補助部材を用いるようにすればよい。
【0072】
上述した構成の前記羽毛布団1によれば、前記布団本体5の内部を前記仕切り布4によって前記第1乃至第3の空間部13a~13d、14a~14d、15a~15cに分割し、前記布団本体5の幅方向中央部に形成された前記第1の空間部13a~13dに充填される羽毛Fを、前記第1の空間部13a~13dの両側に順次形成された前記第2、第3の空間部14a~14d、15a~15cに充填される羽毛Fの量よりも、単位体積当たりの量で多くするようにした。
【0073】
そのような構成の前記羽毛布団1を敷き布団上に仰臥した利用者の身体に掛けると、前記第1の空間部13a~13dが利用者の身体を覆うことになる。そのため、前記第2、第3の空間部14a~14d、15a~15cよりも羽毛Fが多く充填された前記第1の空間部13a~13dによって利用者に良好な保温効果を与えることができる。
【0074】
換言すると、利用者に与える保温性に大きな影響のない、前記第2、第3の空間部14a~14d、15a~15cに充填される羽毛Fの単位体積当たりの量を減少させることができるから、羽毛布団1全体に用いられる羽毛の量を減少させても、良好な保温性を得ることができる。
【0075】
前記第2、第3の空間部14a~14d、15a~15cに充填される羽毛Fの量を減少させることで、前記羽毛布団1の前記第2、第3の空間部14a~14d、15a~15cの部分が軽量化されるから、利用者が寝返りを打ったとき、軽量化された分だけ寝返りがし易くなるということがある。
【0076】
前記羽毛布団1は、前記表側布地2の面積を前記裏側布地3の面積よりも大きく設定し、前記表側布地2は前記仕切り布4のアーチ状の凸曲線部18に形成された上端に縫合し、前記裏側布地3は前記曲線部18よりも長さ寸法が短い、下端の前記凹曲線部19に縫合するようにした。
【0077】
そのため、前記表側布地2と前記裏側布地3の周辺部を縫合し、前記第1乃至第3の空間部13a~13d、14a~14d、15a~15cに羽毛Fを充填すると、前記布団本体5の上面側は前記各空間部を形成する各辺が前記仕切り布4のアーチ状の凸曲線部18に沿って変形し、それぞれの空間部の上面が凸曲面状に湾曲する。
【0078】
一方、前記布団本体5の下面は前記仕切り布4の下端が前記凹曲線部19であるから、各空間部毎にはほとんど変形しないが、上面側が凸曲面状に湾曲することで、下面側は幅方向と長手方向に沿って凹状に湾曲する。
【0079】
前記布団本体5の上面側が凸状に湾曲し、下面側が凹状に湾曲すると、前記布団本体5を敷き布団上に横臥した利用者に掛けたとき、前記布団本体5の凹状に湾曲した下面側で覆われた空間部が外部から遮蔽され易い状態となる。
それによって、前記布団本体5の内部に外気が入り込み難いから、保温性の高い状態で使用することができる。
【0080】
前記布団本体5は上面側が凸状に湾曲し、下面側が凹状に湾曲した立体形状である。そのため、前記布団本体5が利用者の身体にまとわり難いため、利用者に対して軽量感を与え、しかも寝返りが打ち易くなるから、これらのことによって寝心地の向上を図ることができる。
【0081】
上述した実施の形態では、前記布団本体5の上面と下面を、それぞれ幅方向と長手方向の両方向に対して湾曲するように構成したが、たとえば前記空間部を形成する仕切り布4の、前記布団本体5の幅方向に沿う上端の凸曲線部18と、長手方向に沿う上端の曲線部18との曲率半径を変え、前記表側布地2の前記布団本体5の長手方向と幅方向に沿う長さ寸法を変えるようにする。
【0082】
それによって、前記布団本体5の各空間部に羽毛Fを充填したとき、前記布団本体5を幅方向だけ或いは長手方向よりも幅方向に大きく湾曲させるなど、長手方向と幅方向の湾曲度合いを変えるようにしてもよい。
【0083】
つまり、前記布団本体5は少なくとも幅方向に湾曲する構造であれば、保温性の向上を図ることができるから、羽毛Fを充填したときにそのような立体形状となる構造であればよい。
【0084】
前記仕切り布4は、前記第1乃至第3の空間部13a~13d、14a~14d、15a~15cを形成する部分のそれぞれの下端が前記凹曲線部19で、上端がアーチ状の前記曲線部18に形成されている。
【0085】
そのため、各々複数の空間部からなる前記第1乃至第3の空間部13a~13d、14a~14d、15a~15cは、羽毛Fが充填されることで、それぞれ独立してドーム状に膨張するから、そのことによっても保温性の向上、全体のボリュウームアップ、さらには外観の向上などを図ることができる。
【0086】
前記布団本体5の長手方向の一端部側と他端部側の幅寸法は、それぞれ長手方向の端部に行くにつれて次第に狭くなるように形成されている。
【0087】
この実施の形態では、前記布団本体5の幅方向の両側面に第1の凸曲面9を形成し、利用者の足側に位置する長手方向の他端部に第2の凸曲面11を形成することで、前記布団本体5の一端部側と他端部の幅寸法を長手方向の端部に行くにつれて次第に狭くなるようにした。
【0088】
それによって、前記布団本体5の全体の平面形状を亀甲状としているから、平面形状が矩形状の従来の掛け布団に比べ、利用者の身体を覆う幅方向中央部分の長手方向に沿う面積をほぼ同等とすることができる。
【0089】
つまり、布団本体5の全体の大きさを従来の矩形状のものに比べて小さくしても、ほぼ同等の保温効果を有する羽毛布団1とすることができるから、布団本体5を小さくできる分だけ、羽毛Fの使用量を減少させ、コストの低減を図ることができる。
【0090】
前記布団本体5の両側が第1の凸曲面9で、長手方向の他端部が第2の凸曲面11に形成されていると、利用者が寝返りを打ったときに布団本体5の周辺部が利用者にまとわり難くなり、寝返りを楽に打つことができるから、寝心地を向上させることができる。
【0091】
なお、前記布団本体5の長手方向の一端部側と他端部の両方の端部の幅寸法を、長手方向の端部に行くにつれて次第に狭くなるように形成したが、長手方向のどちらか一方の端部だけを、長手方向の端部に行くにつれて次第に狭くなるように形成してもよい。
【0092】
上述した実施の形態では、布団本体5の表側布地2と裏側布地3の間に仕切り布4によって形成される空間部の平面形状を、主に六角形状(亀甲状)としたが、前記空間部の平面形状は四角形状や五角形状など他の多角形状であってもよい。
【符号の説明】
【0093】
1…掛け布団(羽毛布団)、2…表側布地、3…裏側布地、4…仕切り布、5…布団本体、8…凹曲面、9…第1の凸曲面、11…第2の凸曲面、13a~13d…第1の空間部、14a~14d…第2の空間部、15a~15c…第3の空間部、18…凸曲線部、19…凹曲線部、22…布団カバー、23…取付け部材、24…連結部材、27…補助部材。