(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-18
(45)【発行日】2022-03-01
(54)【発明の名称】塗工装置、制御方法及びコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
B05C 5/02 20060101AFI20220221BHJP
B05C 11/10 20060101ALI20220221BHJP
B05C 11/00 20060101ALI20220221BHJP
B05D 1/26 20060101ALI20220221BHJP
B05D 3/00 20060101ALI20220221BHJP
【FI】
B05C5/02
B05C11/10
B05C11/00
B05D1/26 Z
B05D3/00 B
B05D3/00 D
(21)【出願番号】P 2019180771
(22)【出願日】2019-09-30
【審査請求日】2020-07-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000119254
【氏名又は名称】株式会社テクノスマート
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】市川 太空美
(72)【発明者】
【氏名】西野 和秀
(72)【発明者】
【氏名】松崎 利樹
【審査官】塩屋 雅弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-008218(JP,A)
【文献】特開2014-188449(JP,A)
【文献】特開2015-062869(JP,A)
【文献】特開2014-079669(JP,A)
【文献】特開2019-130513(JP,A)
【文献】特開2011-083719(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0034380(US,A1)
【文献】特開2015-112520(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05B12/16-12/36
14/00-16/80
B05C 5/00-21/00
B05D 1/00-7/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
塗工面に対向配置された塗工ダイと、
塗工液を送給する給液源と、
該給液源からの塗工液の送給先を前記塗工ダイへの送出路と前記給液源への戻し路との間で選択的に切換える切換弁と、
前記塗工面に塗工された塗工液の厚さを検出する検出器と、
前記切換弁の切換を制御する制御部と
を備え、
前記切換弁は、
前記送出路に連なる送出室、前記戻し路に連なる還流室、並びに、前記送出室及び還流室に連通し前記給液源から塗工液が導入される導入室を備えるハウジングと、
前記還流室と前記導入室との第一連通部分に配されており、前記第一連通部分を開閉すべく開端位置と閉端位置との間で往復移動する第一シャトルと、
前記送出室と前記導入室との第二連通部分に配されており、前記第二連通部分を開閉すべく開端位置と閉端位置との間で往復移動する第二シャトルと
を有し、
前記制御部は、
前記検出器の検出結果に基づいて、前記塗工面に塗工された塗工液が、塗工開始時に塗工された部分の厚さが他の部分の厚さよりも大きい第一状態にあるか、塗工開始から塗工終了までの間に厚さが徐々に大きくなる第二状態にあるか、又は塗工開始から塗工終了までの間に厚さが徐々に小さくなる第三状態にあるかを判定する判定部を有し、
該判定部の判定結果に応じて、前記第一連通部分及び第二連通部分の開閉制御を実行する
塗工装置。
【請求項2】
前記判定部にて、前記塗工面に塗工された塗工液が前記第一状態にあると判定した場合、前記制御部は、前記第一連通部分を開いた後、前記第二連通部分を開き、前記第二連通部分を開いた後、所定時間経過するまで待機し、前記第一連通部分を閉じる
請求項
1に記載の塗工装置。
【請求項3】
前記判定部にて、前記塗工面に塗工された塗工液が前記第一状態にあると判定した場合、前記制御部は、前記第一連通部分の非連通状態を保ったまま、前記第一シャトルの閉端位置を前記導入室寄りに変更し、前記第二シャトルを開端位置に移動させる
請求項
1に記載の塗工装置。
【請求項4】
前記判定部にて、前記塗工面に塗工された塗工液が前記第二状態にあると判定した場合、前記制御部は、前記第一連通部分の開度を小さくする
請求項
1に記載の塗工装置。
【請求項5】
前記判定部にて、前記塗工面に塗工された塗工液が前記第三状態にあると判定した場合、前記制御部は、前記第一連通部分の開度を大きくする
請求項
1に記載の塗工装置。
【請求項6】
塗工面に対向配置された塗工ダイと、
塗工液を送給する給液源と、
該給液源からの塗工液の送給先を前記塗工ダイへの送出路と前記給液源への戻し路との間で選択的に切換える切換弁と、
前記塗工面に塗工された塗工液の厚さを検出する検出器と、
前記切換弁の切換を制御する制御部と
を備え、
前記切換弁は、
前記送出路に連なる送出室、前記戻し路に連なる還流室、並びに、前記送出室及び還流室に連通し前記給液源から塗工液が導入される導入室を備えるハウジングと、
前記還流室と前記導入室との第一連通部分に配されており、前記第一連通部分を開閉すべく開端位置と閉端位置との間で往復移動する第一シャトルと、
前記送出室と前記導入室との第二連通部分に配されており、前記第二連通部分を開閉すべく開端位置と閉端位置との間で往復移動する第二シャトルと
を有し、
前記制御部は、前記検出器の検出結果に基づいて、
前記第一シャトルが開端位置に配置され且つ前記第二シャトルが閉端位置に配置される戻し状態から前記第一シャトルが閉端位置に配置され且つ前記第二シャトルが開端位置に配置される送出状態に切り替える場合に、前記第一シャトルの開度を前記戻し状態における現在の開度に維持し且つ前記第二シャトルの開度を前記戻し状態における現在の開度から変更する工程を追加するか、又は前記戻し状態における前記第一シャトルの設定開度を現在の設定開度から変更して、前記第一連通部分及び第二連通部分の開閉制御を実行する
塗工装置。
【請求項7】
塗工面に対向配置された塗工ダイと、塗工液を送給する給液源と、該給液源からの塗工液の送給先を前記塗工ダイへの送出路と前記給液源への戻し路との間で選択的に切換える切換弁と、前記塗工面に塗工された塗工液の厚さを検出する検出器とを備え、前記切換弁は、前記送出路に連なる送出室、前記戻し路に連なる還流室、並びに、前記送出室及び還流室に連通し前記給液源から塗工液が導入される導入室を備えるハウジングと、前記還流室と前記導入室との第一連通部分に配されており、前記第一連通部分を開閉すべく開端位置と閉端位置との間で往復移動する第一シャトルと、前記送出室と前記導入室との第二連通部分に配されており、前記第二連通部分を開閉すべく開端位置と閉端位置との間で往復移動する第二シャトルとを有する塗工装置の制御方法であって、
前記検出器の検出結果に基づいて、前記塗工面に塗工された塗工液が、塗工開始時に塗工された部分の厚さが他の部分の厚さよりも大きい第一状態にあるか、塗工開始から塗工終了までの間に厚さが徐々に大きくなる第二状態にあるか、又は塗工開始から塗工終了までの間に厚さが徐々に小さくなる第三状態にあるかを判定し、判定結果に応じて、前記第一連通部分及び第二連通部分の開閉制御を実行する
制御方法。
【請求項8】
塗工面に対向配置された塗工ダイと、塗工液を送給する給液源と、該給液源からの塗工液の送給先を前記塗工ダイへの送出路と前記給液源への戻し路との間で選択的に切換える切換弁と、前記塗工面に塗工された塗工液の厚さを検出する検出器とを備え、前記切換弁は、前記送出路に連なる送出室、前記戻し路に連なる還流室、並びに、前記送出室及び還流室に連通し前記給液源から塗工液が導入される導入室を備えるハウジングと、前記還流室と前記導入室との第一連通部分に配されており、前記第一連通部分を開閉すべく開端位置と閉端位置との間で往復移動する第一シャトルと、前記送出室と前記導入室との第二連通部分に配されており、前記第二連通部分を開閉すべく開端位置と閉端位置との間で往復移動する第二シャトルとを有する塗工装置の制御方法であって、
前記検出器の検出結果に基づいて、
前記第一シャトルが開端位置に配置され且つ前記第二シャトルが閉端位置に配置される戻し状態から前記第一シャトルが閉端位置に配置され且つ前記第二シャトルが開端位置に配置される送出状態に切り替える場合に、前記第一シャトルの開度を前記戻し状態における現在の開度に維持し且つ前記第二シャトルの開度を前記戻し状態における現在の開度から変更する工程を追加するか、又は前記戻し状態における前記第一シャトルの設定開度を現在の設定開度から変更して、前記第一連通部分及び第二連通部分の開閉制御を実行する
制御方法。
【請求項9】
塗工面に対向配置された塗工ダイと、塗工液を送給する給液源と、該給液源からの塗工液の送給先を前記塗工ダイへの送出路と前記給液源への戻し路との間で選択的に切換える切換弁と、前記塗工面に塗工された塗工液の厚さを検出する検出器とを備え、前記切換弁は、前記送出路に連なる送出室、前記戻し路に連なる還流室、並びに、前記送出室及び還流室に連通し前記給液源から塗工液が導入される導入室を備えるハウジングと、前記還流室と前記導入室との第一連通部分に配されており、前記第一連通部分を開閉すべく開端位置と閉端位置との間で往復移動する第一シャトルと、前記送出室と前記導入室との第二連通部分に配されており、前記第二連通部分を開閉すべく開端位置と閉端位置との間で往復移動する第二シャトルとを有する塗工装置で実行可能なコンピュータプログラムであって、
前記塗工装置に、
前記検出器の検出結果に基づいて、前記塗工面に塗工された塗工液が、塗工開始時に塗工された部分の厚さが他の部分の厚さよりも大きい第一状態にあるか、塗工開始から塗工終了までの間に厚さが徐々に大きくなる第二状態にあるか、又は塗工開始から塗工終了までの間に厚さが徐々に小さくなる第三状態にあるかを判定し、判定結果に応じて、前記第一連通部分及び第二連通部分の開閉制御を実行する
処理を実行させるコンピュータプログラム。
【請求項10】
塗工面に対向配置された塗工ダイと、塗工液を送給する給液源と、該給液源からの塗工液の送給先を前記塗工ダイへの送出路と前記給液源への戻し路との間で選択的に切換える切換弁と、前記塗工面に塗工された塗工液の厚さを検出する検出器とを備え、前記切換弁は、前記送出路に連なる送出室、前記戻し路に連なる還流室、並びに、前記送出室及び還流室に連通し前記給液源から塗工液が導入される導入室を備えるハウジングと、前記還流室と前記導入室との第一連通部分に配されており、前記第一連通部分を開閉すべく開端位置と閉端位置との間で往復移動する第一シャトルと、前記送出室と前記導入室との第二連通部分に配されており、前記第二連通部分を開閉すべく開端位置と閉端位置との間で往復移動する第二シャトルとを有する塗工装置で実行可能なコンピュータプログラムであって、
前記塗工装置に、
前記検出器の検出結果に基づいて、
前記第一シャトルが開端位置に配置され且つ前記第二シャトルが閉端位置に配置される戻し状態から前記第一シャトルが閉端位置に配置され且つ前記第二シャトルが開端位置に配置される送出状態に切り替える場合に、前記第一シャトルの開度を前記戻し状態における現在の開度に維持し且つ前記第二シャトルの開度を前記戻し状態における現在の開度から変更する工程を追加するか、又は前記戻し状態における前記第一シャトルの設定開度を現在の設定開度から変更して、前記第一連通部分及び第二連通部分の開閉制御を実行する
処理を実行させるコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、塗工液を基材に塗工する塗工装置、制御方法及びコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、給液源から塗工ダイに塗工液を送給し、基材シートに塗工する塗工装置が提案されている。塗工装置は、塗工液の送給先を塗工ダイ及び給液源との間で選択的に切換える切換弁を備える。切換弁はハウジングを有し、ハウジングは、塗工ダイに塗工液を送る送出室、給液源に塗工液を戻す還流室、並びに前記送出室及び還流室に連通し、給液原から塗工液が導入される導入室を有する。ハウジング内において、還流室と導入室との連通部分、及び送出室と導入室との連通部分にそれぞれ、シャトルが設けられており、該シャトルの駆動によって、各連通部分の開閉が実行され、塗工された塗工液の厚さの均一化を図ることができる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
給液源は、例えばタンクに貯留した塗工液である。タンクの上部及び下部に貯留した塗工液は、それぞれ、粘性・密度などの特性が異なることがあり、また環境温度によっても異なることがある。各連通部分の開閉は作業者によって実行される。供給される塗工液の特性が変化した場合、均一な厚さでの塗工を実現すべく、各連通部分の開閉作業を作業者は変更する。しかし、適切な開閉作業を見つけるまでには、長時間、場合によっては半日を要する。
【0005】
本開示は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、塗工液の特性に応じて、塗工面に塗工された塗工液の厚さの均一化を迅速に行うことができる塗工装置、制御方法及びコンピュータプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る塗工装置は、塗工面に対向配置された塗工ダイと、塗工液を送給する給液源と、該給液源からの塗工液の送給先を前記塗工ダイへの送出路と前記給液源への戻し路との間で選択的に切換える切換弁と、前記塗工面に塗工された塗工液の厚さを検出する検出器と、前記切換弁の切換を制御する制御部とを備え、前記切換弁は、前記送出路に連なる送出室、前記戻し路に連なる還流室、並びに、前記送出室及び還流室に連通し前記給液源から塗工液が導入される導入室を備えるハウジングと、前記還流室と前記導入室との第一連通部分に配されており、前記第一連通部分を開閉すべく開端位置と閉端位置との間で往復移動する第一シャトルと、前記送出室と前記導入室との第二連通部分に配されており、前記第二連通部分を開閉すべく開端位置と閉端位置との間で往復移動する第二シャトルとを有し、前記制御部は、前記検出器の検出結果に応じて、前記第一連通部分及び第二連通部分の開閉制御を実行する。
【0007】
本開示においては、塗工面に塗工された塗工液の厚さを検出し、検出した厚さに基づいて、第一連通部分及び第二連通部分の開閉制御を実行する。
【0008】
本開示に係る塗工装置は、前記制御部は、前記検出器の検出結果に基づいて、前記塗工面に塗工された塗工液が、塗工開始時に塗工された部分の厚さが他の部分の厚さよりも大きい第一状態にあるか、塗工開始から塗工終了までの間に厚さが徐々に大きくなる第二状態にあるか、又は塗工開始から塗工終了までの間に厚さが徐々に小さくなる第三状態にあるかを判定する判定部を有し、該判定部の判定結果に応じて、前記第一連通部分及び第二連通部分の開閉制御を実行する。
【0009】
本開示においては、塗工面に塗工された塗工液が、第一状態、第二状態又は第三状態にあるかを判定し、各状態に応じた適切な開閉制御を実行する。
【0010】
本開示に係る塗工装置は、前記判定部にて、前記塗工面に塗工された塗工液が前記第一状態にあると判定した場合、前記制御部は、前記第一連通部分を開いた後、前記第二連通部分を開き、前記第二連通部分を開いた後、所定時間経過するまで待機し、前記第一連通部分を閉じる。
【0011】
本開示においては、塗工面に塗工された塗工液が第一状態にある場合、第一連通部分を開いた後、第二連通部分を開き、所定時間経過するまで待機する。第二連通部分を開いた時、第一連通部分は既に開いており、送出室及び送出路内の圧力の突発的な上昇が抑制され、塗工開始時に急激に塗工液の厚さが大きくなることを抑制することができる。また所定時間経過後、第一連通部分を閉じることによって、第一連通部分を閉じる時点を遅らせて、送出室及び送出路内の圧力を所望の圧力に保つことができる。
【0012】
本開示に係る塗工装置は、前記判定部にて、前記塗工面に塗工された塗工液が前記第一状態にあると判定した場合、前記制御部は、前記第一連通部分の非連通状態を保ったまま、前記第一シャトルの閉端位置を前記導入室寄りに変更し、前記第二シャトルを開端位置に移動させる。
【0013】
本開示においては、第一シャトルは還流室側に偏倚した位置に配されるので、導入室の圧力は低下し、送出室及び送出路内の圧力の突発的な上昇が抑制され、塗工開始時に急激に塗工液の厚さが大きくなることを抑制することができる。
【0014】
本開示に係る塗工装置は、前記判定部にて、前記塗工面に塗工された塗工液が前記第二状態にあると判定した場合、前記制御部は、前記第一連通部分の開度を小さくする。
【0015】
本開示においては、塗工面に塗工された塗工液が第二状態にある場合、第一連通部分の開度を小さくし、送出室及び送出路内の圧力を高くする。圧力上昇によって、塗工開始時において、塗工ダイから送出される塗工液の量が増加し、塗工された塗工液の厚さの均一化を実現することができる。
【0016】
本開示に係る塗工装置は、前記判定部にて、前記塗工面に塗工された塗工液が前記第三状態にあると判定した場合、前記制御部は、前記第一連通部分の開度を大きくする。
【0017】
本開示においては、塗工面に塗工された塗工液が第三状態にある場合、第一連通部分の開度を大きくし、送出室及び送出路内の圧力を低くする。圧力下降によって、塗工開始時において、塗工ダイから送出される塗工液の量が減少し、塗工された塗工液の厚さの均一化を実現することができる。
【0018】
本開示に係る塗工装置の制御方法は、塗工面に対向配置された塗工ダイと、塗工液を送給する給液源と、該給液源からの塗工液の送給先を前記塗工ダイへの送出路と前記給液源への戻し路との間で選択的に切換える切換弁と、前記塗工面に塗工された塗工液の厚さを検出する検出器とを備え、前記切換弁は、前記送出路に連なる送出室、前記戻し路に連なる還流室、並びに、前記送出室及び還流室に連通し前記給液源から塗工液が導入される導入室を備えるハウジングと、前記還流室と前記導入室との第一連通部分に配されており、前記第一連通部分を開閉すべく開端位置と閉端位置との間で往復移動する第一シャトルと、前記送出室と前記導入室との第二連通部分に配されており、前記第二連通部分を開閉すべく開端位置と閉端位置との間で往復移動する第二シャトルとを有する塗工装置の制御方法であって、前記検出器の検出結果に応じて、前記第一連通部分及び第二連通部分の開閉を制御する。
【0019】
本開示においては、塗工面に塗工された塗工液の厚さを検出し、検出した厚さに基づいて、第一連通部分及び第二連通部分の開閉制御を実行し、ハウジング内の圧力又は塗工ダイからの送液速度などを自動制御する。
【0020】
本開示に係る塗工装置で実行可能なコンピュータプログラムは、塗工面に対向配置された塗工ダイと、塗工液を送給する給液源と、該給液源からの塗工液の送給先を前記塗工ダイへの送出路と前記給液源への戻し路との間で選択的に切換える切換弁と、前記塗工面に塗工された塗工液の厚さを検出する検出器とを備え、前記切換弁は、前記送出路に連なる送出室、前記戻し路に連なる還流室、並びに、前記送出室及び還流室に連通し前記給液源から塗工液が導入される導入室を備えるハウジングと、前記還流室と前記導入室との第一連通部分に配されており、前記第一連通部分を開閉すべく開端位置と閉端位置との間で往復移動する第一シャトルと、前記送出室と前記導入室との第二連通部分に配されており、前記第二連通部分を開閉すべく開端位置と閉端位置との間で往復移動する第二シャトルとを有する塗工装置で実行可能なコンピュータプログラムであって、前記検出器の検出結果に応じて、前記第一連通部分及び第二連通部分の開閉を制御する。
【0021】
本開示においては、塗工面に塗工された塗工液の厚さを検出し、検出した厚さに基づいて、第一連通部分及び第二連通部分の開閉制御を実行し、ハウジング内の圧力又は塗工ダイからの送液速度などを自動制御する。
【発明の効果】
【0022】
本開示に係る塗工装置、制御方法及びコンピュータプログラムにあっては、塗工面に塗工された塗工液の厚さを検出し、検出した厚さに基づいて、第一連通部分及び第二連通部分の開閉制御を実行し、ハウジング内の圧力又は塗工ダイからの送液速度などを自動制御する。そのため、塗工された塗工液の厚さを迅速に均一化させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】実施の形態1に係る塗工装置の概略構成を示す模式図である。
【
図5】塗工装置における制御装置のブロック図である。
【
図6】基材シートの塗工面に塗工された塗工液を例示する模式的断面図である。
【
図7】基材シートの塗工面に塗工された塗工液を例示する模式的断面図である。
【
図8】基材シートの塗工面に塗工された塗工液を例示する模式的断面図である。
【
図10】制御装置による膜厚制御処理を説明するフローチャートである。
【
図11】膜厚制御処理後に、基材シートの塗工面に塗工された塗工液を例示する模式的断面図である。
【
図12】構成を一部変更した第一シャトル及び第二シャトルを示す模式図である。
【
図13】実施の形態2に係る切換弁の動作説明図である。
【
図14】制御装置による膜厚制御処理を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
(実施の形態1)
以下、本発明を実施の形態1に係る塗工装置を示す図面に基づいて説明する。
図1は、実施の形態に係る塗工装置の概略構成を示す模式図である。図示の如く塗工装置は、長さ方向に搬送される帯状をなす基材シート1の一面(塗工面)に塗工処理を施すように構成され、塗工ダイ2、給液源3及び切換弁4を備えている。
【0025】
基材シート1は、例えば、PET(ポリエチレンテレフタレート)等の樹脂製シート、又は銅箔、アルミ箔、チタン箔、ステンレス箔等の金属箔であり、一対のガイドロール11、12、及びこれらの間のバックアップロール10により案内され、図中に矢符に示す向きに搬送される。
【0026】
ガイドロール11、12及びバックアップロール10は、互いに平行をなす軸周りに回転可能に支持された円筒形のロールであり、基材シート1は、塗工面を外向きとしてバックアップロール10の外周に巻き掛けられている。
【0027】
塗工ダイ2は、バックアップロール10に巻き掛けられた基材シート1の塗工面に対向配置されており、液溜め部20、及び液溜め部20に連通し、塗工面に近接対向するスリット状の吐出口21を備えている。
【0028】
給液源3は、塗工液タンク30及び定量ポンプ31を備えている。塗工液タンク30の内部には、基材シート1に塗工される塗工液6が貯留されている。定量ポンプ31は、塗工液タンク30の底部に一端を接続された送液管32の中途に設けてある。送液管32の他端は、切換弁4に接続されており、塗工液タンク30内の塗工液6は、定量ポンプ31の動作により、送液管32を経て切換弁4に送り込まれる。
【0029】
切換弁4は、ハウジング40と、該ハウジング40の内部で往復動作する第一シャトル41a及び第二シャトル41bとを備えている。
図2~
図4は、切換弁4の動作説明図であり、切換弁4の要部の構成が略示されている。これらの図に示す如く、ハウジング40の内部には、導入室40a、送出室40b及び還流室40cが設けてある。導入室40aの一側は、送液管32に接続されており、送液管32を経て送り込まれる塗工液6は、導入室40aに導入される。
【0030】
送出室40b及び還流室40cは、導入室40aの他側に夫々連通する円形断面の室であり、軸長方向を平行として並設されている。送出室40bは、送出路33により塗工ダイ2の液溜め部20に接続され、また還流室40cは、戻し路34により給液源3の塗工液タンク30に接続されている。
【0031】
第一シャトル41a及び第二シャトル41bは共に円筒形をなす。第一シャトル41aは支軸42により、還流室40c及び導入室40aの連通部分(第一連通部分)に、同軸をなして支持されている。第二シャトル41bは支軸42により、送出室40b及び導入室40aの連通部分(第二連通部分)に同軸をなして支持されている。支軸42、42は、ハウジング40の外部に延長され、各別の駆動装置43a、43b(
図1参照)に連結されている。駆動装置43a、43bは、例えば、駆動源としてのモータと、該モータの回転を直線運動に変換して支軸42、42に伝える伝動機構とを備えており、第一及び第二シャトル41a、41bは、支軸42、42を介して伝えられる駆動装置43a、43bの動作に応じて軸長方向(図中に矢符により示す方向)に移動する。
【0032】
送出室40b及び還流室40cの内周面には、内向きに張り出すシール環44、44が周設されており、これらのシール環44、44は、第一及び第二シャトル41a、41bの外周に弾接させてある。第一及び第二シャトル41a、41bの外周には、一端部から軸長方向の略半長に亘って延びる凹溝45が周方向に複数並設されている。
【0033】
図5は、塗工装置における制御装置50のブロック図である。制御装置50は、CPU50a、RAM50b及び記憶部50cを備える。CPU50aはタイマを備える。記憶部50cは、例えば書き換え可能な記憶部であり、EPROM、EEPROM、フラッシュメモリ、ハードディスクなどである。記憶部50cには制御プログラムが記憶されている。CPU50aはネットワーク(図示略)を介して、記憶部50cに記憶された制御プログラムを更新してもよい。なお記憶部50cは書き換え不可能な記憶部、例えばROMでもよい。
【0034】
塗工装置はスイッチ、ボタン、キーボード、又はタッチパネルなどの操作部51を備え、操作部51は作業者の操作を受け付ける。作業者は操作部51を介して、塗工液6の粘度、濃度若しくは比重、塗工液6に関する液情報、基材シート1の搬送速度、又は運転の開始若しくは終了などを入力する。制御装置50には、操作部51から信号が入力される。
【0035】
塗工装置は膜厚センサ52を備える。
図1に示す如く、膜厚センサ52は、基材シート1の搬送方向において、塗工ダイ2よりも下流側に配置され、且つ基材シート1の一面に対向する。膜厚センサ52は、例えばレーザセンサを含む光センサ又は超音波センサを有し、基材シート1の一面に塗工された膜状の塗工液6の厚さを検出する。制御装置50には、膜厚センサ52から検出結果が入力される。
【0036】
制御装置50は、各駆動装置43a、43b及び定量ポンプ31に駆動又は停止信号を出力する。駆動装置43aは第一シャトル41aを駆動し、駆動装置43bは第二シャトル41bを駆動する。CPU50aは、記憶部50cから制御プログラムをRAM50bに読み出して、制御プログラムに基づき、各駆動装置43a、43b及び定量ポンプ31の駆動を制御する。
【0037】
図2には、初期位置にある第一及び第二シャトル41a、41bが示されている。このとき、シール環44、44は、第一及び第二シャトル41a、41bそれぞれの凹溝45の形成域の端部で弾接しており、送出室40b及び還流室40cは、シール環44、44、第一シャトル41a、及び第二シャトル41bにより導入室40aとの連通を遮断された状態にある。
【0038】
第一及び第二シャトル41a、41bは、
図2に示す初期位置から互いに逆向きに移動する。
図3には、第二シャトル41bが上向きに移動して開端位置に達し、第一シャトル41aが下向きに移動して閉端位置に達した状態(送出状態)が示してあり、
図4には、逆に、第二シャトル41bが下向きに移動して閉端位置に達し、第一シャトル41aが上向きに移動して開端位置に達した状態(戻し状態)が示してある。
【0039】
図3に示す送出状態において、第二シャトル41bは、複数の凹溝45の形成域の途中でシール環44に弾接しており、各凹溝45は、シール環44の弾接部の上側で送出室40b内に開口し、送出室40bは、複数の凹溝45の開口部を介して導入室40aに連通する。
【0040】
一方、第一シャトル41aは、複数の凹溝45の非形成域でシール環44に弾接しており、各凹溝45は、シール環44の弾接部の下側で導入室40a内に位置し、還流室40cは、導入室40aとの連通を遮断された閉状態を保つ。従って、導入室40aに導入される塗工液は、図中に破線の矢符により示す如く、送出室40bに送り込まれ、送出路33を経て塗工ダイ2に送出される。
【0041】
図4に示す戻し状態においては、第一シャトル41aは、凹溝45の形成域の途中でシール環44に弾接して開となり、第二シャトル41bは、凹溝45の非形成域でシール環44に弾接して閉となる。従って、還流室40cは導入室40aに連通し、送出室40bは導入室40aとの非連通状態を保ち、導入室40aに導入される塗工液は、図中に破線の矢符により示す如く、還流室40cに送り込まれ、戻し路34を経て給液源3の塗工液タンク30に還流される。
【0042】
切換弁4は、以上の如き送出状態及び戻し状態を交互に実現するように動作し、給液源3から送り出される塗工液6は、送出状態への切換え時に塗工ダイ2に送出され、戻し状態への切換え時に塗工液タンク30に戻される。
【0043】
塗工ダイ2に送出される塗工液6は、液溜め部20を経て吐出口21から吐出され、該吐出口21に対向する基材シート1の塗工面に塗工される、この塗工は、切換弁4が送出状態にある間に連続してなされ、戻し状態への切換えにより停止されるから、基材シート1には、
図1に示す如く、塗工液6の塗工部と非塗工部とが交互に形成され、間欠塗工が実現される。
【0044】
基材シート1の搬送速度、塗工ダイ2から送出される塗工液6の速度などの塗工条件が一定であっても、塗工ダイ2から基材シート1に送出される塗工液の特性(例えば、粘性・密度など)が変化した場合、基材シート1の塗工面に塗工された塗工液6の厚さも変化する。
【0045】
図6~
図8は、基材シート1の塗工面に塗工された塗工液6を例示する模式的断面図である。
図6に示す塗工液6の厚さについて説明する。
図6において、基材シート1の搬送方向における塗工液6の最も下流側(
図6の左側)の位置を始端6aとし、塗工液6の最も上流側(
図6の右側)における塗工液6の位置を終端6bとする。また始端6a及び終端6bの間であって、始端6a付近の位置をP、Q、Rとする。位置Pは位置Qよりも下流側に位置し、位置Rは位置Qよりも上流側に位置する。
【0046】
搬送方向における始端6aと終端6bとの間の距離をd0とし、始端6aと位置Pとの間の距離をd1とし、始端6aと位置Qとの間の距離をd2とし、始端6aと位置Rとの間の距離をd3とした場合、d0:d1:d2:d3は、例えば、100:1:2:97である。なお、d0:d1:d2:d3は塗工長や搬送速度に基づいて決定され、前述の比率に限定されない。
【0047】
図6に示す如く、始端6aから位置Pまでの間において、基材シート1の移動量に対する塗工液6の厚さの増加量、即ち、厚さの傾きは極端に大きい。位置Pにおいて、塗工液6の厚さは最大となる。位置Pから上流に向かうに従って、塗工液6の厚さは全体的に徐々に小さくなる。位置Qよりも上流側、例えば位置Rにおいては、塗工液6の厚さは許容範囲内に収まる。位置Pにおける厚さは許容範囲を超えている。
図6に示す状態(第一状態)においては、塗工開始時に、送出室40b及び送出路33内の圧力が突発的に上昇していると考えられる。
【0048】
膜厚センサ52の検出結果に基づいて、第一状態にあると判断した場合、制御装置50は、戻し状態(
図4参照)から送出状態(
図3参照)に切り換えるときに、以下のように、第一及び第二シャトル41a、41bの駆動を制御する。
【0049】
図9は、切換弁の動作説明図である。前述したように、戻し状態(
図4参照)において、第一シャトル41aは開端位置に配され、第二シャトル41bは閉端位置に配されている。制御装置50は、第二シャトル41bを閉端位置から開端位置に移動させ、所定時間経過するまで待機する(
図9参照)。その後、第一シャトル41aを閉端位置に移動させる(
図3参照)。第一シャトル41aを閉端位置に移動させる前に、第一及び第二シャトル41a、41bを開端位置に移動させているので、送出室40b及び送出路33内の圧力の突発的な上昇が抑制され、塗工開始時に急激に塗工液6の厚さが大きくなることを抑制することができる。
【0050】
前記所定時間(第二シャトル41bを閉端位置から開端位置に移動させた後の待機時間)は適切に設定する必要がある。前記所定時間が不要に長い場合、基材シート1に塗工された塗工液6に、厚さが許容範囲よりも小さい薄い部分が表れる。更に、塗工液6には、第一シャトル41aの閉によって、厚さが許容範囲よりも大きい厚い部分が表れる。即ち、塗工液6には、許容範囲から逸脱した塗工液6の薄い部分と厚い部分とが表れる。一方、前記所定時間が不要に短い場合、塗工開始時に急激に塗工液6の厚さが大きくなることを抑制することができない。
【0051】
図7に示す塗工液6の厚さについて説明する。
図7において、始端6a及び終端6bの間における三つの位置をそれぞれ、A、B、Cとする。位置Aは位置Bよりも下流側に位置し、位置Cは位置Bよりも上流側に位置する。
【0052】
図7に示す如く、始端6aから終端6bに向かうに従って、塗工液6の厚さは全体的に徐々に増加する。即ち、位置AB間、位置BC間の傾きは、略同じである。塗工液の厚さは、塗工開始時よりも塗工終了時の方が安定する傾向にある。従って、塗工終了時の厚さは、より目標厚さに近いと考えられる。
図7に示す状態(第二状態)においては、塗工開始時に、送出室40b及び送出路33内の圧力が必要な圧力よりも小さいと考えられる。
【0053】
膜厚センサ52の検出結果に基づいて、第二状態にあると判断した場合、制御装置50は、戻し状態(
図4参照)において、第一シャトル41aの開度を小さくする。具体的には、第一シャトル41aの開端位置を、現在の位置よりも下げて、導入室40aの圧力を高く保ち、塗工開始時(送出状態、
図3参照)における送出室40b及び送出路33内の圧力を高くし、塗工開始時に、送出室40b及び送出路33内の圧力が必要な圧力よりも小さくなることを抑制する。
【0054】
図8に示す塗工液6の厚さについて説明する。
図8において、始端6a及び終端6bの間における三つの位置をそれぞれ、D、E、Fとする。位置Dは位置Eよりも下流側に位置し、位置Fは位置Eよりも上流側に位置する。
【0055】
図8に示す如く、始端6aから終端6bに向かうに従って、塗工液6の厚さは全体的に徐々に減少する。即ち、位置DE間、位置EF間の傾きは、略同じである。
図8に示す状態(第三状態)においては、塗工開始時に、送出室40b及び送出路33内の圧力が必要な圧力よりも大きいと考えられる。
【0056】
膜厚センサ52の検出結果に基づいて、第三状態にあると判断した場合、制御装置50は、戻し状態(
図4参照)において、第一シャトル41aの開度を大きくする。具体的には、第一シャトル41aの開端位置を、現在の位置よりも上げて、導入室40aの圧力を低く保ち、塗工開始時(送出状態、
図3参照)における送出室40b及び送出路33内の圧力を低くし、塗工開始時に、送出室40b及び送出路33内の圧力が必要な圧力よりも大きくなることを抑制する。
【0057】
図10は、制御装置50による膜厚制御処理を説明するフローチャート、
図11は、膜厚制御処理後に、基材シート1の塗工面に塗工された塗工液6を例示する模式的断面図である。制御装置50のCPU50aは、塗工を開始する指令が入力されたか否か判定する(S1)。例えば、作業者は操作部51を操作し、開始指令を入力する。開始指令が入力されていない場合(S1:NO)、CPU50aはS1に処理を戻す。開始指令が入力された場合(S1:YES)、CPU50aは塗工を開始する(S2)。CPU50aは膜厚センサ52から検出結果を取得し(S3)、基材シート1に塗工された塗工液6が第一状態にあるか否か判定する(S4)。
【0058】
第一状態にあるか否かの判定は、例えば以下のように行う。CPU50aは、取得した検出結果に基づいて、最大厚さの位置Pが始端6aから所定距離内、例えば、始端6aから位置Rまでの間にあるか否か判定する。所定距離内にあると判定した場合、位置Pの上流側の位置Qを決定する(
図6参照)。例えば、位置Pから所定距離上流側に離れた位置を位置Qに決定する。CPU50aは、位置PQ間の傾きを求め、傾きが、予め定めた所定範囲の値であるか否か判定する。所定範囲の値である場合、第一状態にあると判定し、所定範囲の値でない場合、又は位置Pが始端6aから所定距離内にない場合、第一状態にないと判定する。前記所定距離は塗工開始時の塗工範囲であり、例えば、全体の長さd0の約10~20%である。
【0059】
第一状態にあるか否かの判定は、以下のようにして行ってもよい。CPU50aは、最大厚さの位置Pが始端6aから所定距離内にあるか否か判定する。所定距離内にあると判定した場合、最大厚さ(位置Pの厚さ)と予め定めた目標値との差分を求め、該差分が予め定めた所定範囲の値であるか否か判定する。所定範囲の値である場合、第一状態にあると判定し、所定範囲の値でない場合、又は位置Pが始端6aから所定距離内にない場合、第一状態にないと判定する。
【0060】
塗工液6が第一状態にない場合(S4:NO)、CPU50aは、塗工液6が第二状態にあるか否か判定する(S5)。塗工液6が第二状態にあるか否かの判定は、例えば以下のように行う。CPU50aは、取得した検出結果に基づいて、位置AB間の傾きと、位置BC間の傾きとを求め(
図7参照)、両傾きの差分を求め、該差分が予め定めた所定範囲の値であるか否か判定する。所定範囲の値である場合、第二状態にあると判定し、所定範囲の値でない場合、第二状態にないと判定する。
【0061】
塗工液6が第二状態にない場合(S5:NO)、CPU50aは、塗工液6が第三状態にあるか否か判定する(S6)。塗工液6が第三状態にあるか否かの判定は、例えば以下のように行う。CPU50aは、取得した検出結果に基づいて、位置DE間の傾きと、位置EF間の傾きとを求め(
図8参照)、両傾きの差分を求め、該差分が予め定めた所定範囲の値であるか否か判定する。所定範囲の値である場合、第三状態にあると判定し、所定範囲の値でない場合、第三状態にないと判定する。
【0062】
塗工液6が第三状態にない場合(S6:NO)、CPU50aは、塗工を終了する指令が入力されたか否か判定する(S7)。終了指令が入力されていない場合(S7:NO)、CPU50aはステップS3に処理を戻す。終了指令が入力されている場合(S7:YES)、CPU50aは塗工を終了し(S8)、膜厚制御処理を終了する。
【0063】
基材シート1に塗工された塗工液6が第一状態~第三状態のいずれでもない場合(S4:NO、S5:NO、且つS6:NO)、
図11に示すように、塗工液6全体の厚さは許容範囲内に収まり、現状を維持して基材シート1への塗工を継続する。
【0064】
ステップS5において、塗工液6が第二状態にある場合(S5:YES)、CPU50aは、戻し状態(
図4参照)における第一シャトル41aの開度を現開度よりも小さく設定し(S9)、ステップS7に処理を戻す。
【0065】
ステップS6において、塗工液6が第三状態にある場合(S6:YES)、CPU50aは、戻し状態(
図4参照)において、第一シャトル41aの開度を現開度よりも大きく設定し(S10)、ステップS7に処理を戻す。
【0066】
ステップS4において、塗工液6が第一状態にある場合(S4:YES)、CPU50aは、後述する第二シャトル開工程及び所定時間待機工程(S12、S13参照)を追加済みであるか否か判定する(S11)。
【0067】
前記工程を追加済みでない場合(S11:NO)、CPU50aは、戻し状態(
図4参照)から送出状態(
図3参照)に切り換える場合に、第二シャトル41bを開端位置に移動させる工程を追加し(S11)、第二シャトル41bを開端位置に移動させる工程を追加し(S12)、その後、所定時間待機する工程を追加して(S13)、ステップS3に処理を戻す。
【0068】
前記工程を追加済みである場合(S11:YES)、CPU50aは、S12にて追加した第二シャトル41bの開工程において、第二シャトル41bの開度を現開度よりも大きくするか、または、S13において追加した工程において、所定時間を現所定時間よりも長くし(S14)、ステップS3に処理を戻す。
【0069】
なお、第一シャトル41a及び第二シャトル41bの構成は以下のような構成でもよい。
図12は、構成を一部変更した第一シャトル41a及び第二シャトル41bを示す模式図である。
図12に示すように、第一シャトル41a及び第二シャトル41bは、円柱部41cと、円錐台部41dとを備える。円柱部41cの軸方向は上下方向である。円錐台部41dは、小径部分が下を向くように配置され、大径部分は円柱部41cの下端に連なっている。円錐台部41dの大径部分の直径は、円柱部41cの直径に略等しい。
【0070】
シール環44に円柱部41cが挿入された場合、円柱部41cの外周面にシール環44は当接し、第一連通部分又は第二連通部分は閉じられる。シール環44に円錐台部41dが挿入された場合、シール環44と円錐台部41dとの間に隙間が設けられ、第一連通部分又は第二連通部分は開く。円錐台部41dの軸方向位置を調整することによって、前記隙間の開口面積が調整され、第一連通部分又は第二連通部分の開度が調整される。
【0071】
実施の形態1に係る塗工装置、制御方法及びコンピュータプログラムにあっては、基材シート1の塗工面に塗工された塗工液6の厚さを検出し、検出した厚さに基づいて、第一連通部分及び第二連通部分の開閉制御を実行し、ハウジング40内の圧力又は塗工ダイ2からの送液速度などを自動制御する。従来、作業者は経験に基づいて、塗工された塗工液6の厚さを手動によって調整していたが、自動制御にすることによって、作業者の技量に依拠することなく、塗工液6の厚さを迅速に均一化させることができる。
【0072】
導入室40a及び送出室40bは還流室40cを介して連通する。第一及び第二シャトル41a、41bの開閉タイミングを制御することによって、導入室40a及び送出室40bの圧力を変更させることができる。換言すれば、導入室40a及び送出室40bの間において、圧力変化が相互に影響し合うように、塗工装置は構成されている。このような構成を前提として、上述のように塗工装置を自動制御することによって、塗工液6の厚さを迅速に均一化させることができる。
【0073】
また塗工面に塗工された塗工液6が、第一状態、第二状態又は第三状態にあるかを判定し、各状態に応じた適切な開閉制御を実行する。
【0074】
また塗工面に塗工された塗工液6が第一状態にある場合、第一連通部分を開いた後、第二連通部分を開き、所定時間経過するまで待機する。第二連通部分を開いた時、第一連通部分は既に開いており、送出室40b及び送出路33内の圧力の突発的な上昇が抑制され、塗工開始時に急激に塗工液の厚さが大きくなることを抑制することができる。また所定時間経過後、第一連通部分を閉じることによって、送出室40b及び送出路33内の圧力を所望の圧力に保つことができる。
【0075】
また塗工面に塗工された塗工液6が第二状態にある場合、第一連通部分の開度を小さくし、送出室40b及び送出路33内の圧力を高くする。圧力上昇によって、塗工開始時において、塗工ダイ2から送出される塗工液6の量が増加し、塗工された塗工液6の厚さの均一化を実現することができる。
【0076】
また塗工面に塗工された塗工液6が第三状態にある場合、第一連通部分の開度を大きくし、送出室40b及び送出路33内の圧力を低くする。圧力下降によって、塗工開始時において、塗工ダイ2から送出される塗工液6の量が減少し、塗工された塗工液6の厚さの均一化を実現することができる。
【0077】
(実施の形態2)
以下本発明を実施の形態2に係る塗工装置を示す図面に基づいて説明する。実施の形態2に係る構成の内、実施の形態1と同様な構成については同じ符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0078】
実施の形態1においては、基材シート1に塗工された塗工液6が第一状態にある場合(S4:YES)、第二シャトル41bを開端位置に移動させ、その後、所定時間待機させる(S12~S14)が、ステップS12~S14に代えて、CPU50aは以下の膜厚制御処理を実行してもよい。
【0079】
図13は、切換弁の動作説明図、
図14は、制御装置による膜厚制御処理を説明するフローチャートである。なお、
図14において、ステップS1~S10は実施の形態1と同様な処理であるため、その説明は省略し、ここではステップS21~S23についてのみ説明する。
【0080】
基材シート1に塗工された塗工液6が第一状態にある場合(S4:YES)、CPU50aは、送出時における第一シャトル41aの閉端位置を変更済みであるか否か判定する(S21)。前記閉端位置を変更済みでない場合(S21:NO)、CPU50aは、戻し状態(
図4参照)から送出状態(
図3参照)に切り換える場合における前記閉端位置を変更し(S22)、ステップS3に処理を戻す。
【0081】
S22においては、還流室40cのシール環44と第一シャトル41aとの相対位置が変更され、
図13に示すように、シール環44の位置は、
図3に示す位置よりも、凹溝45寄りに変更される。換言すれば、第一シャトル41aは、
図3の位置に比べて、還流室40c側に所定距離偏倚した位置に配される。第一シャトル41aが還流室40c寄りに配置されることによって、導入室40aの内側の容積は、
図3の場合に比べて、大きくなり、導入室40aの圧力は低下する。なおシール環44と第一シャトル41aとの相対位置が変更されても、第一シャトル41aはシール環44に接触し、還流室40cと導入室40aとの連通は遮断されている。
【0082】
第一シャトル41aは還流室40c側に所定距離偏倚した位置に配されるので、導入室40aの圧力は低下し、送出室40b及び送出路33内の圧力の突発的な上昇が抑制され、塗工開始時に急激に塗工液6の厚さが大きくなることを抑制することができる。
【0083】
前記閉端位置を変更済みである場合(S21:YES)、CPU50aは、第一シャトル41aの現閉端位置を更に還流室40c側に所定距離偏倚させた位置に再変更する(S23)。閉端位置の再変更後も、還流室40cと導入室40aとの連通は遮断される。なお、閉端位置を更に還流室40c側に所定距離偏倚させると、還流室40cと導入室40aとの連通を遮断できない場合、CPU50aは現状を維持し、表示部(図示略)にエラーを表示させる。
【0084】
今回開示した実施の形態は、全ての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。各実施例にて記載されている技術的特徴は互いに組み合わせることができ、本発明の範囲は、特許請求の範囲内での全ての変更及び特許請求の範囲と均等の範囲が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0085】
1 基材シート
2 塗工ダイ
3 給液源
6 塗工液
33 送出路
34 戻し路
4 切換弁
40b 送出室
40c 還流室
40a 導入室
40 ハウジング
41a 第一シャトル
41b 第二シャトル
50 制御装置(制御部)
52 膜厚センサ(検出器)