(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-18
(45)【発行日】2022-03-01
(54)【発明の名称】ドープニオブ酸チタンおよび電池
(51)【国際特許分類】
C01G 33/00 20060101AFI20220221BHJP
H01M 4/48 20100101ALI20220221BHJP
H01M 4/36 20060101ALI20220221BHJP
H01M 4/52 20100101ALI20220221BHJP
H01M 4/485 20100101ALI20220221BHJP
C01G 49/00 20060101ALI20220221BHJP
C01G 37/00 20060101ALI20220221BHJP
【FI】
C01G33/00 A
H01M4/48
H01M4/36 C
H01M4/52
H01M4/485
C01G49/00 A
C01G37/00
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019200560
(22)【出願日】2019-11-05
【審査請求日】2019-11-05
(32)【優先日】2018-11-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-09-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(73)【特許権者】
【識別番号】390023582
【氏名又は名称】財團法人工業技術研究院
【氏名又は名称原語表記】INDUSTRIAL TECHNOLOGY RESEARCH INSTITUTE
【住所又は居所原語表記】No.195,Sec.4,ChungHsingRd.,Chutung,Hsinchu,Taiwan 31040
(74)【代理人】
【識別番号】110001494
【氏名又は名称】前田・鈴木国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】柯 冠宇
(72)【発明者】
【氏名】洪 博揚
(72)【発明者】
【氏名】鄭 季汝
(72)【発明者】
【氏名】廖 世傑
(72)【発明者】
【氏名】范 詠▲亭▼
(72)【発明者】
【氏名】陳 金銘
【審査官】青木 千歌子
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-209445(JP,A)
【文献】特開2017-152217(JP,A)
【文献】特開2006-172991(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01G 33/00
H01M 4/48
H01M 4/485
H01M 4/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
化学構造Ti
(1-x)M1
xNb
(2-y)M2
yO
(7-z)Q
zまたはTi
(2
-x’)M1
x’Nb
(10-y’)M2
y’O
(29-z’)Q
z’を有するドープニオブ酸チタン。
(式中、M1はLi、Mg、またはこれらの組み合わせであり;
M2はFe、Mn、V、Ni、Cr、またはこれらの組み合わせであり;
Qは
Fであり;
0≦x≦0.15;
0≦y≦0.15;
0.01≦z≦2;
0≦x’≦0.3;
0≦y’≦0.9; かつ
0.01≦z’≦8である。)
【請求項2】
Ti
(1-x)M1
xNb
(2-y)M2
yO
(7-z)Q
zが単斜格子を有し、Ti
(2-x’)M1
x’Nb
(10-y’)M2
y’O
(29-z’)Q
z’がReO
3-型結晶構造を有する、請求項1に記載のドープニオブ酸チタン。
【請求項3】
複数の一次粒子からなる多孔質構造である請求項1または2に記載のドープニオブ酸チタン。
【請求項4】
前記多孔質構造のメジアン粒径が0.3マイクロメートルから60マイクロメートルであり、前記一次粒子のメジアン粒径が0.01マイクロメートルから5イクロメートルであり、前記多孔質構造の孔径が50ナノメートルから1マイクロメートルである、請求項3に記載のドープニオブ酸チタン。
【請求項5】
非多孔質構造である請求項1または2に記載のドープニオブ酸チタン。
【請求項6】
前記非多孔質構造のメジアン粒径が0.01マイクロメートルから10マイクロメートルである、請求項5に記載のドープニオブ酸チタン。
【請求項7】
さらにチタン酸リチウムと混合して複合材料を形成する請求項1から6のいずれか1項に記載のドープニオブ酸チタンであって、前記ドープニオブ酸チタンと前記チタン酸リチウムとの重量比が90:10から10:90である、ドープニオブ酸チタン。
【請求項8】
前記チタン酸リチウムの表面が、炭素、酸化物、またはフッ化物で被覆されており、前記炭素、酸化物、またはフッ化物と前記チタン酸リチウムとの重量比率が0よりも大きく、かつ5%以下である、請求項7に記載のドープニオブ酸チタン。
【請求項9】
前記複合材料の表面が炭素、酸化物、またはフッ化物で被覆されており、前記炭素、酸化物、またはフッ化物と前記複合材料との重量比率が0よりも大きく、かつ5%以下である、請求項7に記載のドープニオブ酸チタン。
【請求項10】
前記ドープニオブ酸チタンの表面が炭素、酸化物、またはフッ化物で被覆されており、前記炭素、酸化物、またはフッ化物と前記ドープニオブ酸チタンとの重量比率が0よりも大きく、かつ5%以下である、請求項1から7のいずれか1項に記載のドープニオブ酸チタン。
【請求項11】
負極と;
正極と;
前記負極と前記正極との間に配置された電解質と;
を含む電池であって、
前記負極が、化学構造Ti
(1-x)M1
xNb
(2-y)M2
yO
(7-z)Q
zまたはTi
(2-x’)M1
x’Nb
(10-y’)M2
y’O
(29-z’)Q
z’を有するドープニオブ酸チタンを含む、電池。
(式中、M1はLi、Mg、またはこれらの組み合わせであり;
M2はFe、Mn、V、Ni、Cr、またはこれらの組み合わせであり;
Qは
Fであり;
0≦x≦0.15;
0≦y≦0.15;
0.01≦z≦2;
0≦x’≦0.3;
0≦y’≦0.9; かつ
0.01≦z’≦8である。)
【請求項12】
Ti
(1-x)M1
xNb
(2-y)M2
yO
(7-z)Q
zが単斜格子を有し、Ti
(2-x’)M1
x’Nb
(10-y’)M2
y’O
(29-z’)Q
z’がReO
3-型結晶構造を有する、請求項11に記載の電池。
【請求項13】
前記負極がチタン酸リチウムをさらに含み、前記チタン酸リチウムを前記ドープニオブ酸チタンと混合させて複合材料とし、前記ドープニオブ酸チタンと前記チタン酸リチウムとの重量比が90:10から10:90である、請求項11または12に記載の電池。
【請求項14】
前記チタン酸リチウムの表面が炭素、酸化物、またはフッ化物で被覆されており、前記炭素、酸化物、またはフッ化物と前記チタン酸リチウムとの重量比率が0よりも大きく、かつ5%以下である、請求項13に記載の電池。
【請求項15】
前記複合材料の表面が炭素、酸化物、またはフッ化物で被覆されており、前記炭素、酸化物、またはフッ化物と前記複合材料との重量比率が0よりも大きく、かつ5%以下である、請求項13に記載の電池。
【請求項16】
前記ドープニオブ酸チタンの表面が炭素、酸化物、またはフッ化物で被覆されており、前記炭素、酸化物、またはフッ化物と前記ドープニオブ酸チタンとの重量比率が0よりも大きく、かつ5%以下である、請求項11から13のいずれか1項に記載の電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術分野は電池および電池の負極組成に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の炭素負極に用いられている主な材料は、容量に優れる(~350mAh/g)ものの、サイクル寿命、安全性、急速充電などに関する課題が依然としてある。チタン酸リチウム(Li4Ti5O12)は急速充電可能な負極材料で、寿命も長く安全性も高いが、その容量は低い(~165mAh/g)。ニオブ酸チタン(TiNb2O7,TNO)は、そのより高い理論容量(~380mAh/g)、1.6Vの作動電位(リチウムのデンドライト成長を防止できる)、優れた安全性、サイクル寿命、およびより高いタップ密度のために、次世代の急速充電可能な負極として適している。従来のリチウム電池は、エネルギー密度が高いが、充電レート(<5C、充電50%)は比較的低い。チタン酸リチウム電池は、充電レート(>5C、充電80%以上)が高いものの、エネルギー密度が低い。ニオブ酸チタンはチタン酸リチウムよりも容量およびエネルギー密度が高いため、急速充電可能なリチウム電池のエネルギー密度を大幅に高めることが可能であり、よって、広く適用されて、電動車両の耐久性および充電レートを高め、そのエネルギー貯蔵システムのエネルギー貯蔵密度を高め、かつ家電製品の充電時間を短縮させることができる。さらに、ニオブ酸チタンは低温下で優れた特性を備えるため、様々な過酷な環境に適応させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】米国特許出願公開第2009/0253042号明細書
【文献】中国特許出願公開第107845805A号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ニオブ酸チタンは導電性に乏しい。ニオブ酸チタンをパワーリチウム電池に用いるにはさらなる改質が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一実施形態は、化学構造:Ti(1-x)M1xNb(2-y)M2yO(7-z)QzまたはTi(2-x’)M1x’Nb(10-y’)M2y’O(29-z’)Qz’を有するドープニオブ酸チタンを提供する(式中、M1はLi、Mg、またはこれらの組み合わせであり;M2はFe、Mn、V、Ni、Cr、またはこれらの組み合わせであり;QはF、Cl、Br、I、S、またはこれらの組み合わせであり;0≦x≦0.15;0≦y≦0.15;0.01≦z≦2;0≦x’≦0.3;0≦y’≦0.9;かつ0.01≦z’≦8である。)。
【0006】
一実施形態において、Ti(1-x)M1xNb(2-y)M2yO(7-z)Qzは単斜格子(monoclinic lattice)を有し、Ti(2-x’)M1x’Nb(10-y’)M2y’O(29-z’)Qz’はReO3-型結晶構造を有する。
【0007】
一実施形態において、ドープニオブ酸チタンは、複数の一次粒子から構成される多孔質構造である。
【0008】
一実施形態において、多孔質構造のメジアン粒径は0.3マイクロメートルから60マイクロメートルであり、一次粒子のメジアン粒径は0.01マイクロメートルから5マイクロメートルであり、多孔質構造の孔径は50ナノメートルから 1マイクロメートルである。
【0009】
一実施形態において、ドープニオブ酸チタンは非多孔質構造である。
【0010】
一実施形態において、非多孔質構造のメジアン粒径は0.01マイクロメートルから10マイクロメートルである。
【0011】
一実施形態において、ドープニオブ酸チタンをさらにチタン酸リチウムと混合して複合材料を形成する。ドープニオブ酸チタンとチタン酸リチウムとの重量比は90:10から10:90である。
【0012】
一実施形態において、チタン酸リチウムの表面は炭素、酸化物、またはフッ化物で被覆されており、炭素、酸化物、またはフッ化物とチタン酸リチウムとの重量比率が0よりも大きく、かつ5%以下である。
【0013】
一実施形態において、複合材料の表面は炭素、酸化物、またはフッ化物で被覆されており、炭素、酸化物、またはフッ化物と複合材料との重量比率が0よりも大きく、かつ5%以下である。
【0014】
一実施形態において、ドープニオブ酸チタンの表面は炭素、酸化物、またはフッ化物で被覆されており、炭素、酸化物、またはフッ化物とドープニオブ酸チタンとの重量比率が0よりも大きく、かつ5%以下である。
【0015】
一実施形態は、負極と;正極と;負極と正極との間に配置された電解質と;を含む電池であって、負極が、化学構造Ti(1-x)M1xNb(2-y)M2yO(7-z)QzまたはTi(2-x’)M1x’Nb(10-y’)M2y’O(29-z’)Qz’を有するドープニオブ酸チタンを有する電池を提供する。式中、M1はLi、Mg、またはこれらの組み合わせであり;M2はFe、Mn、V、Ni、Cr、またはこれらの組み合わせであり;QはF、Cl、Br、I、S、またはこれらの組み合わせであり;0≦x≦0.15; 0≦y≦0.15;0.01≦z≦2;0≦x’≦0.3;0≦y’≦0.9;かつ 0.01≦z’≦8である。
【0016】
一実施形態において、Ti(1-x)M1xNb(2-y)M2yO(7-z)Qzは単斜格子を有し、Ti(2-x’)M1x’Nb(10-y’)M2y’O(29-z’)Qz’はReO3-型結晶構造を有する。
【0017】
一実施形態において、負極がチタン酸リチウムをさらに含み、チタン酸リチウムをドープニオブ酸チタンと混合させて複合材料とし、ドープニオブ酸チタンとチタン酸リチウムとの重量比が90:10から10:90である。
【0018】
一実施形態において、チタン酸リチウムの表面が炭素、酸化物、またはフッ化物で被覆されており、炭素、酸化物、またはフッ化物とチタン酸リチウムとの重量比率が0よりも大きく、かつ5%以下である。
【0019】
一実施形態において、複合材料の表面が炭素、酸化物、またはフッ化物で被覆されており、炭素、酸化物、またはフッ化物と複合材料との重量比率が0よりも大きく、かつ5%以下である。
【0020】
一実施形態において、ドープニオブ酸チタンの表面が炭素、酸化物、またはフッ化物で被覆されており、炭素、酸化物、またはフッ化物とドープニオブ酸チタンとの重量比率が0よりも大きく、かつ5%以下である。
【発明の効果】
【0021】
電池の負極としてのフッ素ドープニオブ酸チタンは、電池の負極としてのニオブ酸チタンに比べて高い容量を提供することができる。
【0022】
添付の図面を参照にしながら以下の詳細な説明および実施例を読むことによって、本開示をより十分に理解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本開示の実施例1のドープニオブ酸チタン材料の一次粒子からなる多孔質構造の走査電子顕微鏡画像を示している。
【
図2】本開示の実施例1における異なる充放電レートでの電池の容量対電圧曲線を示している。
【
図3】本開示の比較例1における異なる充放電レートでの電池の容量対電圧曲線を示している。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下の詳細な記載においては、説明の目的で、開示される実施形態が十分に理解されるよう、多数の具体的な詳細が記載される。しかしながら、これら具体的な説明が無くとも1つまたはそれ以上の実施形態が実施可能であることは、明らかであろう。また、図を簡潔とするため、周知の構造および装置は概略的に示される。
【0025】
本開示の一実施形態は、化学構造:Ti(1-x)M1xNb(2-y)M2yO(7-z)QzまたはTi(2-x’)M1x’Nb(10-y’)M2y’O(29-z’)Qz’を有するドープニオブ酸チタンを提供する。式中、M1はLi、Mg、またはこれらの組み合わせであり;M2はFe、Mn、V、Ni、Cr、またはこれらの組み合わせであり;QはF、Cl、Br、I、S、またはこれらの組み合わせであり;0≦x≦0.15;0≦y≦0.15;0.01≦z≦2;0≦x’≦0.3;0≦y’≦0.9;かつ0.01≦z’≦8である。一実施形態において、0≦x≦0.05である。一実施形態において、0.05≦x≦0.15である。一実施形態において、0≦y≦0.03である。一実施形態において、0.03≦y≦0.1である。一実施形態において0.1≦y≦0.15である。一実施形態において、0≦y’≦0.25である。一実施形態において、0.25≦y’≦0.9である。x、y、x’、またはy’が大きすぎると、不純物相(不活性相)が形成されて、グラム当たりの容量および充放電レートのパフォーマンスが低下する可能性がある。一実施形態において、0.01≦z≦0.25である。一実施形態において、0.25≦z≦0.75である。一実施形態において、0.75≦z≦0.1である。一実施形態において、1≦z≦2である。一実施形態において、0.01≦z’≦4である。一実施形態において、4≦z’≦8である。zまたはz’が小さすぎると、ドープニオブ酸チタンが、未ドープニオブ酸チタンと同じような特性を持つことになり得る。zまたはz’が大きすぎると、不純物相(不活性相)が形成されて、グラム当たりの容量および充放電レートのパフォーマンスが低下する可能性がある。本実施形態のニオブ酸チタン本体がTiNb2O7またはTi2Nb10O29であることは明らかであり、このうちTiは任意でM1がドープされていてよく、Nbは任意でM2がドープされていてよく、かつOはQがドープされていなければならない。原子比が異なるドープニオブ酸チタンは、全く異なる格子および対応する特性を有し得るが、それらは容易に置換されるものと見なされてはならない。
【0026】
一実施形態において、Ti(1-x)M1xNb(2-y)M2yO(7-z)Qzは単斜格子を有し、Ti(2-x’)M1x’Nb(10-y’)M2y’O(29-z’)Qz’はReO3-型結晶構造を有する。他の格子または非晶質構造のドープニオブ酸チタンは、リチウム電池の負極材として適さないと思われる。
【0027】
いくつかの実施形態において、ドープニオブ酸チタンは、複数の一次粒子から構成される多孔質構造である。例えば、多孔質構造のメジアン粒径(d50)は0.3マイクロメートルから60マイクロメートルであり、一次粒子のメジアン粒径(d50)は0.01マイクロメートルから5マイクロメートルであり、多孔質構造の孔径は50ナノメートルから1マイクロメートルである。多孔質構造の粒径が大きすぎるか、または小さすぎると、電極板の密度が低下する可能性がある。一次粒子のサイズが大きすぎると、リチウムイオンおよび電子の導電経路が増大し、これにより導電時間が増加すると共に充放電レートパフォーマンスが低下する可能性がある。一次粒子が小さすぎると、材料の比表面積が増大して、スラリーが混合および分散しにくくなってしまい、このため電極板の密度および均一性が低下する可能性がある。多孔質構造の孔径が大きすぎると、電極板の密度が低下する可能性がある。多孔質構造の孔径が小さすぎると、過度に緻密な多孔質構造となってしまい、電解液が多孔質構造中に進入しにくくなり、これにより電気化学反応の面積が小さくなる可能性がある。
【0028】
あるいは、ドープニオブ酸チタンは、メジアン粒径が0.01マイクロメートルから10マイクロメートルの非多孔質構造である。非多孔質構造の粒径が過度に大きいと、電極板の密度が低下し、リチウムイオンと電子の導電経路が増大し、導電時間が増加して、充放電レートパフォーマンスが低下する可能性がある。非多孔質構造の粒径が過度に小さいと、材料の比表面積が増大して、スラリーが混合および分散しにくくなってしまい、このため電極板の密度および均一性が低下する可能性がある。
【0029】
多孔質構造または非多孔質構造のモルフォロジーは主に、製造プロセスの違いに左右される。例えば、酸化ニオブ、酸化チタン、任意でM1ソース、任意でM2ソース、およびQソースを、分散剤を含有する溶媒中に加え、8から24時間かけて完全に混合し、均一に分散されたスラリーを得ることができる。次いで、そのスラリーを噴霧乾燥によりペレット化して前駆体粉末を得る。一実施形態において、適した分散剤はポリビニルアルコールまたは市販のBYK190であってよい。一実施形態において、適した溶媒は脱イオン水であってよい。前駆体粉末を900℃から1200℃で8時間から15時間焼結して、Qドープニオブ酸チタン(任意でM1および/またはM2ドープ)の多孔質構造を得る。
【0030】
また、酸化ニオブ、酸化チタン、任意でM1ソース、任意でM2ソース、およびQソースを、分散剤を含有する溶媒中に加えてから、8時間から24時間ボールミルにかけて分散させ、前駆体粉末を得ることができる。その前駆体粉末を900℃から1200℃で8時間から15時間焼結し、Qドープニオブ酸チタンの非多孔質構造(任意でM1および/またはM2ドープ)を得る。
【0031】
さらに、酸化ニオブ、酸化チタン、任意でM1ソースおよび任意でM2ソースを、分散剤を含有する溶媒中に加え、8から24時間かけて完全に混合し、均一に分散されたスラリーを得ることができる。次いで、そのスラリーを噴霧乾燥によりペレット化して前駆体粉末を得る。その前駆体粉末を900℃から1200℃で8時間から15時間焼結しニオブ酸チタン(任意でM1および/またはM2ドープ)を形成する。続いて、そのニオブ酸チタンをQソースと均一に混合してから、350℃から750℃で2時間から5時間焼結し、Qドープニオブ酸チタンの多孔質構造(任意でM1および/またはM2ドープ)を得る。
【0032】
また、酸化ニオブ、酸化チタン、任意でM1ソース、および任意でM2ソースを、分散剤を含有する溶媒中に加えてから、8時間から24時間ボールミルにかけて分散させ、前駆体粉末を得ることができる。その前駆体粉末を900℃から1200℃で8時間から15時間焼結し、ニオブ酸チタン(任意でM1および/またはM2ドープ)を形成する。続いて、そのニオブ酸チタンをQソースと均一に混合してから、350℃から750℃で2時間から5時間焼結して、Qドープニオブ酸チタンの非多孔質構造(任意でM1および/またはM2ドープ)を得る。
【0033】
いくつかの実施形態において、ドープニオブ酸チタンの表面に炭素、酸化物またはフッ化物をさらに塗布して、ガス発生反応を抑制することができる。例えば、酸化物は酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、または酸化亜鉛であってよく、フッ化物はフッ化アルミニウムであってよい。いくつかの実施形態において、“炭素、酸化物、またはフッ化物”と“ドープニオブ酸チタン”との重量比率は、0より大きく、かつ5%以下である。炭素、酸化物、またはフッ化物の割合が高すぎると、 過度に厚い被包層が形成されてしまい、これによりリチウムイオンの挿入および脱離が妨害されてしまう可能性がある。
【0034】
あるいは、ドープニオブ酸チタンをチタン酸リチウム(ドープまたは未ドープ)と混合して複合材料を形成することで、負極の充放電レートパフォーマンスを改善し、かつコストを下げることができる。いくつかの実施形態において、ドープニオブ酸チタンとチタン酸リチウムとの重量比は90:10から10:90である。チタン酸リチウムの量が少なすぎると、その効果がチタン酸リチウムを用いないときの効果と同じようなものとなってしまう。チタン酸リチウムの量が多すぎると、複合材料のグラム当たりの容量が過度に減少してしまう可能性がある。例えば、未ドープチタン酸リチウムは化学構造Li4Ti5Oaを有する(8≦a≦12)。
【0035】
いくつかの実施形態において、チタン酸リチウムの表面を炭素、酸化物またはフッ化物でさらに被覆して、ガス発生反応を抑制することができる。例えば、酸化物は酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、または酸化亜鉛であってよく、フッ化物はフッ化アルミニウムであってよい。いくつかの実施形態において、“炭素、酸化物、またはフッ化物”と“チタン酸リチウム”との重量比率は、0より大きく、かつ5%以下である。炭素、酸化物、またはフッ化物の割合が高すぎると、 過度に厚い被包層が形成されてしまい、これによりリチウムイオンの挿入および脱離が妨害されてしまう可能性がある。
【0036】
いくつかの実施形態において、複合材料の表面を炭素、酸化物またはフッ化物でさらに被覆し、ガス発生反応を抑制することができる。例えば、酸化物は酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、または酸化亜鉛であってよく、フッ化物はフッ化アルミニウムであってよい。いくつかの実施形態において、“炭素、酸化物、またはフッ化物”と“複合材料”との重量比率は、0より大きく、かつ5%以下である。炭素、酸化物、またはフッ化物の割合が高すぎると、過度に厚い被包層が形成されてしまい、これによりリチウムイオンの挿入および脱離が妨害されてしまう可能性がある。
【0037】
ドープニオブ酸チタン、チタン酸リチウム、または複合材料の表面を炭素、酸化物、またはフッ化物で被包する方法については、「Journal of Power Sources, Vol. 196, Issue 18, 2011, P.7763-7766」を参照することができる。複合材料の実施形態では、ドープニオブ酸チタンの表面、チタン酸リチウムの表面、または両方の表面を炭素、酸化物、またはフッ化物で被覆してから混合して複合材料を形成することができる。また、ドープニオブ酸チタンおよびチタン酸リチウムを混合して複合材料を形成してから、その複合材料の表面を炭素、酸化物、またはフッ化物で被覆することもできる。
【0038】
一実施形態において、ドープニオブ酸チタンまたは複合材料を電池の負極に用いることができる。例えば、電池は負極、正極、負極と正極との間に配置される電解質を含んでいてよく、このうちの負極が上述したドープニオブ酸チタンまたは複合材料を含む。加えて、負極は、導電性カーボンブラック、バインダーまたは他の適した組成物をさらに含んでいてもよい。いくつかの実施形態において、正極は、コバルト酸リチウム、 ニッケル酸リチウム、マンガン酸リチウム、三元正極材料、リン酸鉄リチウム、リン酸鉄マンガンリチウム(lithium iron manganese phosphate)、またはこれらの組み合わせを含み得る。いくつかの実施形態において、電解質は液体状、ゲル状および固体状に分類することができる。液体状の電解質はリチウム塩および溶媒(またはイオン性液体)からなる。よく用いられるリチウム塩として、LiPF6、LiAsF6、LiClO4、LiBF4、LiTFSI、LiCF3SO3などが挙げられる。よく用いられる溶媒としては、環状カーボネート(例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート)、鎖状カーボネート(例えば、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート)、またはエーテル化合物(例えば、ジメチルエーテル、1,3-ジオキソラン)等が挙げられる。固体状の電解質はポリマー、ガラス、セラミックなどに分けられる。また、負極をリチウム金属正極およびよく用いられる電解液と組み合わせてハーフセルを作り、ドープニオブ酸チタンを含む負極のパフォーマンスを測定することができる。
【0039】
以下に当業者が容易に理解できるよう、添付の図面を参照にしながら例示的な実施例を詳細に説明する。本発明概念は、ここに記載される例示的な実施例に限定されることなく、様々な形態で具体化され得る。明確とするため、周知の部分についての説明は省く。全体を通し、類似する参照番号は類似する構成要素を指すものとする。
【実施例】
【0040】
実施例1
【0041】
酸化ニオブ、酸化チタン、およびフッ素ソース(NH
4F)を化学量論比で分散剤PVA BP-05を含有する脱イオン水中に加えてから、18時間かけて完全に混合し、均一に分散したスラリーを得た。その均一に分散したスラリーを噴霧乾燥によりペレット化して前駆体粉末を得た。その前駆体粉末をるつぼに入れ、1150℃で12時間焼結して、フッ素ドープニオブ酸チタン材料TiNb
2O
6.75F
0.25を得た。そのフッ素ドープニオブ酸チタン材料TiNb
2O
6.75F
0.25は単斜格子を有しており(X線回折で確認する)、かつ複数の一次粒子からなる多孔質構造であった。そのSEM画像が
図1に示されている。一次粒子のメジアン粒径は0.01マイクロメートルから5マイクロメートル
の範囲にあり、多孔質構造のメジアン粒径は0.3マイクロメートルから60マイクロメートル
の範囲にあった。多孔質構造の孔径は50ナノメートルから1マイクロメートルであった。
【0042】
フッ素ドープニオブ酸チタン85重量部、KS4(TIMCAL TIMREXより購入)6重量部、Super P(TIMCAL TIMREXより購入)4重量部、およびPVDF(Solefより購入)5重量部を均一に混合してペーストに調製してから、アルミニウム箔上に塗布し、厚さ150マイクロメートル未満の塗布層を形成した。その塗布層を圧延機で元の厚さの65%となるまで圧延し、負極板を得た。その負極板を、直径12mmの円形にカットした。その円形負極板、リチウム金属正極板、および電解質を組み合わせてCR2032ハーフセルを作り、その電気化学特性をテストした。電解質組成物は1M LiPF
6溶液であり、溶媒はエチレンカーボネート(EC)およびジメチルカーボネート(DMC)(EC:DMC=1:2,v/v)であった。
図2は、異なる充放電レートでの電池の容量対電圧曲線を示している。表1は異なる充放電レートでの電池の容量を示している。
【0043】
実施例2
【0044】
酸化ニオブおよび酸化チタンを化学量論比で分散剤PVA BP-05を含有する脱イオン水中に加えてから、18時間かけて完全に混合し、均一に分散したスラリーを得た。その均一に分散したスラリーを噴霧乾燥によりペレット化して前駆体粉末を得た。その前駆体粉末をるつぼに入れ、1150℃で12時間焼結して、ニオブ酸チタンを得た。そのニオブ酸チタンおよびフッ素ソース(NH4F)を化学量論比で均一に混合してから、450℃で5時間焼結してフッ素ドープニオブ酸チタン材料TiNb2O6.75F0.25を得た。そのフッ素ドープニオブ酸チタン材料TiNb2O6.75F0.25は単斜格子を有しており(XRDで確認する)、かつ複数の一次粒子からなる多孔質構造であった。一次粒子のメジアン粒径は0.01マイクロメートルから5マイクロメートルの範囲にあり、多孔質構造のメジアン粒径は0.3マイクロメートルから60マイクロメートルの範囲にあった。多孔質構造の孔径は50ナノメートルから1マイクロメートルであった。
【0045】
続いて、実施例1で記載したのと同じ方法でCR2032ハーフセルを作製した。実施例1のフッ素ドープニオブ酸チタン材料ではなく、実施例2のフッ素ドープニオブ酸チタン材料を負極板に用いた点が、実施例2では異なっている。表1は異なる充放電レートでの電池の容量を示している。
【0046】
実施例3
【0047】
酸化ニオブ、酸化チタン、酸化鉄、およびフッ素ソース(NH4F)を化学量論比で分散剤PVA BP-05を含有する脱イオン水中に加えてから、18時間かけて完全に混合し、均一に分散したスラリーを得た。その均一に分散したスラリーを噴霧乾燥によりペレット化して前駆体粉末を得た。その前駆体粉末をるつぼに入れ、1150℃で12時間焼結して、フッ素および鉄ドープニオブ酸チタン材料TiNb1.9Fe0.1O6.25F0.75を得た。そのフッ素および鉄ドープニオブ酸チタン材料TiNb1.9Fe0.1O6.25F0.75は単斜格子を有しており(XRDで確認する)、かつ複数の一次粒子からなる多孔質構造であった。一次粒子のメジアン粒径は0.01マイクロメートルから5マイクロメートルの範囲にあり、多孔質構造のメジアン粒径は0.3マイクロメートルから60マイクロメートルの範囲にあった。多孔質構造の孔径は50ナノメートルから1マイクロメートルであった。
【0048】
続いて、実施例1で記載したのと同じ方法でCR2032ハーフセルを作製した。実施例1のフッ素ドープニオブ酸チタン材料ではなく、実施例3のフッ素および鉄ドープニオブ酸チタン材料を負極板に用いた点が、実施例3では異なっている。表1は異なる充放電レートでの電池の容量を示している。
【0049】
実施例4
【0050】
酸化ニオブ、酸化チタン、およびフッ素ソース(NH4F)を化学量論比でエタノールに加え、ボールミルに24時間かけ、次いで篩に通して前駆体粉末を得た。その前駆体粉末をるつぼに入れて1000℃で18時間焼結し、フッ素ドープニオブ酸チタン材料TiNb2O6Fを得た。そのフッ素ドープニオブ酸チタン材料TiNb2O6Fは単斜格子を有しており(XRDで確認)、メジアン粒径が0.01マイクロメートルから10マイクロメートルの範囲にある非多孔質構造であった。
【0051】
続いて、実施例1で記載したのと同じ方法でCR2032ハーフセルを作製した。実施例1のフッ素ドープニオブ酸チタン材料ではなく、実施例4のフッ素ドープニオブ酸チタン材料を負極板に用いた点が、実施例4では異なっている。表1は異なる充放電レートでの電池の容量を示している。
【0052】
実施例5
【0053】
酸化ニオブ、酸化チタン、およびフッ素ソース(NH4F)を化学量論比でエタノールに加え、ボールミルに24時間かけ、次いで篩に通して前駆体粉末を得た。その前駆体粉末をるつぼに入れて1000℃で18時間焼結し、フッ素ドープニオブ酸チタン材料TiNb2O6Fを得た。そのフッ素ドープニオブ酸チタン材料TiNb2O6Fは単斜格子を有しており(XRDで確認する)、メジアン粒径が0.01マイクロメートルから10マイクロメートルの範囲にある非多孔質構造であった。その焼結フッ素ドープニオブ酸チタン材料20gおよびグルコース0.6gを脱イオン水50gに加え、24時間攪拌してから、加熱乾燥し、るつぼに入れて窒素下にて6時間700℃で焼結して、フッ素ドープニオブ酸チタン材料TiNb2O6Fの非多孔質構造を被包する炭素膜を形成した。
【0054】
続いて、実施例1で記載したのと同じ方法でCR2032ハーフセルを作製した。実施例1のフッ素ドープニオブ酸チタン材料ではなく、実施例5の炭素膜で覆われたフッ素ドープニオブ酸チタン材料を負極板に用いた点が、実施例5では異なっている。表1は異なる充放電レートでの電池の容量を示している。上述の処理(炭素膜)は、リチウム電池のガス発生反応を抑制することができる。
【0055】
実施例6
【0056】
酸化ニオブ、酸化チタン、およびフッ化マグネシウムを化学量論比でエタノールに加え、ボールミルに24時間かけ、次いで篩に通して前駆体粉末を得た。その前駆体粉末をるつぼに入れて1150℃で12時間焼結し、フッ素およびマグネシウムドープニオブ酸チタン材料Ti0.95Mg0.05Nb2O6.9F0.1を得た。そのフッ素およびマグネシウムドープニオブ酸チタン材料Ti0.95Mg0.05Nb2O6.9F0.1は単斜格子を有しており(XRDで確認する)、メジアン粒径が0.01マイクロメートルから10マイクロメートルの範囲にある非多孔質構造であった。
【0057】
続いて、実施例1で記載したのと同じ方法でCR2032ハーフセルを作製した。実施例1のフッ素ドープニオブ酸チタン材料ではなく、実施例6のフッ素およびマグネシウムドープニオブ酸チタン材料を負極板に用いた点が、実施例6では異なっている。表1は異なる充放電レートでの電池の容量を示している。
【0058】
実施例7
【0059】
酸化ニオブ、酸化チタン、酸化クロムおよびフッ素ソース(NH4F)を化学量論比で分散剤PVA BP-05を含む脱イオン水に加え、ボールミルに24時間かけてから、篩に通して前駆体粉末を得た。その前駆体粉末をるつぼに入れて1150℃で12時間焼結し、フッ素およびクロムドープニオブ酸チタン材料 TiNb1.97Cr0.03O6.9F0.1を得た。そのフッ素およびクロムドープニオブ酸チタン材料 TiNb1.97Cr0.03O6.9F0.1は単斜格子を有しており(XRDで確認する)、メジアン粒径が0.01マイクロメートルから10マイクロメートルの範囲にある非多孔質構造であった。
【0060】
続いて、実施例1で記載したのと同じ方法でCR2032ハーフセルを作製した。実施例1のフッ素ドープニオブ酸チタン材料ではなく、実施例7のフッ素およびクロムドープニオブ酸チタン材料を負極板に用いた点が、実施例7では異なっている。表1は異なる充放電レートでの電池の容量を示している。
【0061】
比較例1
【0062】
酸化ニオブおよび酸化チタンを化学量論比で分散剤PVA BP-05を含有する脱イオン水中に加えてから、18時間かけて完全に混合し、均一に分散したスラリーを得た。その均一に分散したスラリーを噴霧乾燥によりペレット化して前駆体粉末を得た。その前駆体粉末をるつぼに入れ、1150℃で12時間焼結して、ニオブ酸チタン材料TiNb2O7を得た。そのニオブ酸チタン材料は、複数の一次粒子からなる多孔質構造であった。一次粒子のメジアン粒径は0.01マイクロメートルから5マイクロメートルの範囲にあり、多孔質構造のメジアン粒径は0.3マイクロメートルから60マイクロメートルの範囲にあった。多孔質構造の孔径は50ナノメートルから1マイクロメートルであった。
【0063】
続いて、実施例1で記載したのと同じ方法でCR2032ハーフセルを作製した。実施例1のフッ素ドープニオブ酸チタン材料ではなく、比較例1のニオブ酸チタン材料を負極板に用いた点が、比較例1では異なっている。
図3は、異なる充放電レートでの電池の容量対電圧曲線を示している。表1は異なる充放電レートでの電池の容量を示している。
【0064】
比較例2
【0065】
酸化ニオブおよび酸化チタンを化学量論比で分散剤PVA BP-05を含有する脱イオン水中に加えてから、18時間かけて完全に混合し、均一に分散したスラリーを得た。その均一に分散したスラリーを噴霧乾燥によりペレット化して前駆体粉末を得た。その前駆体粉末をるつぼに入れ、1150℃で12時間焼結してから、450℃で5時間焼結して、ニオブ酸チタン材料TiNb2O7を得た。そのニオブ酸チタン材料は、複数の一次粒子からなる多孔質構造であった。一次粒子のメジアン粒径は0.01マイクロメートルから5マイクロメートルの範囲にあり、多孔質構造のメジアン粒径は0.3マイクロメートルから60マイクロメートルの範囲にあった。多孔質構造の孔径は50ナノメートルから1マイクロメートルであった。
【0066】
続いて、実施例1で記載したのと同じ方法でCR2032ハーフセルを作製した。実施例1のフッ素ドープニオブ酸チタン材料ではなく、比較例2のニオブ酸チタン材料を負極板に用いた点が、比較例2では異なっている。表1は異なる充放電レートでの電池の容量を示している。
【0067】
比較例3
【0068】
酸化ニオブ、酸化チタン、および酸化鉄を化学量論比で分散剤PVA BP-05を含有する脱イオン水中に加えてから、18時間かけて完全に混合し、均一に分散したスラリーを得た。その均一に分散したスラリーを噴霧乾燥によりペレット化して前駆体粉末を得た。その前駆体粉末をるつぼに入れ、1150℃で12時間焼結して、鉄ドープニオブ酸チタン材料TiNb1.9Fe0.1O7を得た。その鉄ドープニオブ酸チタン材料は、複数の一次粒子からなる多孔質構造であった。一次粒子のメジアン粒径は0.01マイクロメートルから5マイクロメートルの範囲にあり、多孔質構造のメジアン粒径は0.3マイクロメートルから60マイクロメートルの範囲にあった。多孔質構造の孔径は50ナノメートルから1マイクロメートルであった。
【0069】
続いて、実施例1で記載したのと同じ方法でCR2032ハーフセルを作製した。実施例1のフッ素ドープニオブ酸チタン材料ではなく、比較例3の鉄ドープニオブ酸チタン材料を負極板に用いた点が、比較例3では異なっている。表1は異なる充放電レートでの電池の容量を示している。
【0070】
比較例4
【0071】
酸化ニオブおよび酸化チタンを化学量論比でエタノールに加え、ボールミルに24時間かけてから、篩に通し、前駆体粉末を得た。その前駆体粉末をるつぼに入れ、1150℃で12時間焼結し、ニオブ酸チタン材料TiNb2O7を得た。そのニオブ酸チタン材料は、メジアン粒径が0.01マイクロメートルから10マイクロメートルの範囲にある非多孔質構造であった。
【0072】
続いて、実施例1で記載したのと同じ方法でCR2032ハーフセルを作製した。実施例1のフッ素ドープニオブ酸チタン材料ではなく、比較例4のニオブ酸チタン材料を負極板に用いた点が、比較例4では異なっている。表1は異なる充放電レートでの電池の容量を示している。
【0073】
【0074】
このように、電池の負極として用いられるフッ素ドープニオブ酸チタンは、電池の負極として用いられるニオブ酸チタンに比べ、より高い容量を提供できる。
【0075】
比較例5
【0076】
酸化ニオブおよび酸化チタンを化学量論比でエタノールに加え、ボールミルに24時間かけてから、篩に通し、前駆体粉末を得た。その前駆体粉末をるつぼに入れ、1100℃で16時間焼結し、ニオブ酸チタン材料Ti2Nb10O29を得た。そのニオブ酸チタン材料は、メジアン粒径が0.1マイクロメートルから10マイクロメートルの範囲にある非多孔質構造であった。
【0077】
続いて、実施例1で記載したのと同じ方法でCR2032ハーフセルを作製した。実施例1のフッ素ドープニオブ酸チタン材料ではなく、比較例5のニオブ酸チタン材料を負極板に用いた点が、比較例5では異なっている。表2は異なる充放電レートでの電池の容量を示している。
【0078】
実施例8
【0079】
酸化ニオブ、酸化チタン、およびフッ素ソース(NH4F)を化学量論比でエタノールに加え、ボールミルに24時間かけてから、篩に通し、前駆体粉末を得た。その前駆体粉末をるつぼに入れ、1000℃で12時間焼結し、フッ素ドープニオブ酸チタン材料Ti2Nb10O25F4を得た。そのフッ素ドープニオブ酸チタン材料Ti2Nb10O25F4は、ReO3-型結晶構造を有しており(XRDで確認する)、メジアン粒径が0.1マイクロメートルから10マイクロメートルの範囲にある非多孔質構造であった。
【0080】
続いて、実施例1で記載したのと同じ方法でCR2032ハーフセルを作製した。実施例1のフッ素ドープニオブ酸チタン材料ではなく、実施例8のフッ素ドープニオブ酸チタン材料を負極板に用いた点が、実施例8は異なっている。表2は異なる充放電レートでの電池の容量を示している。
【0081】
実施例9
【0082】
酸化クロム、酸化ニオブ、酸化チタン、およびフッ素ソース(NH4F)を化学量論比で酢酸に加え、ボールミルに24時間かけてから、篩に通し、前駆体粉末を得た。その前駆体粉末をるつぼに入れ、1200℃で10時間焼結し、フッ素およびクロムドープニオブ酸チタン材料 Ti2Nb9.75Cr0.25O25F4を得た。そのフッ素およびクロムドープニオブ酸チタン材料Ti2Nb9.75Cr0.25O25F4は、ReO3-型結晶構造を有しており(XRDで確認する)、メジアン粒径が0.1マイクロメートルから10マイクロメートルの範囲にある非多孔質構造であった。
【0083】
続いて、実施例1で記載したのと同じ方法でCR2032ハーフセルを作製した。実施例1のフッ素ドープニオブ酸チタン材料ではなく、実施例9のフッ素およびクロムドープニオブ酸チタン材料を負極板に用いた点が、実施例9は異なっている。表2は異なる充放電レートでの電池の容量を示している。
【0084】
実施例10
【0085】
酸化鉄、酸化ニオブ、酸化チタン、およびフッ素ソース(NH4F)を化学量論比で酢酸に加え、ボールミルに24時間かけてから、篩に通し、前駆体粉末を得た。その前駆体粉末をるつぼに入れ、1200℃で10時間焼結し、フッ素および鉄ドープニオブ酸チタン材料Ti2Nb9.75Fe0.25O25F4を得た。そのフッ素および鉄ドープニオブ酸チタン材料Ti2Nb9.75Fe0.25O25F4は、ReO3-型結晶構造を有しており(XRDで確認する)、メジアン粒径が0.1マイクロメートルから10マイクロメートルの範囲にある非多孔質構造であった。
【0086】
続いて、実施例1で記載したのと同じ方法でCR2032ハーフセルを作製した。実施例1のフッ素ドープニオブ酸チタン材料ではなく、実施例10のフッ素および鉄ドープニオブ酸チタン材料を負極板に用いた点が、実施例10では異なっている。表2は異なる充放電レートでの電池の容量を示している。
【0087】
【0088】
このように、電池の負極として用いられるフッ素ドープニオブ酸チタンは、電池の負極として用いられるニオブ酸チタンに比べ、より高い容量を提供できる。
【0089】
開示した方法および物質に様々な変化および変更を加え得ることが、当業者には明らかであろう。明細書および実施例は例示と見なされることが意図されており、本開示の真の範囲は、以下の特許請求の範囲およびそれらの均等物により示される。