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<図1a>
  • -発光性結晶及びその製造 図1a
  • -発光性結晶及びその製造 図1b
  • -発光性結晶及びその製造 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-18
(45)【発行日】2022-03-01
(54)【発明の名称】発光性結晶及びその製造
(51)【国際特許分類】
   C09K 11/66 20060101AFI20220221BHJP
   C09K 11/02 20060101ALI20220221BHJP
   C09K 11/76 20060101ALI20220221BHJP
   C09K 11/75 20060101ALI20220221BHJP
   C09K 11/74 20060101ALI20220221BHJP
   G02B 5/20 20060101ALI20220221BHJP
   H01L 27/32 20060101ALI20220221BHJP
   H05B 33/14 20060101ALI20220221BHJP
   H05B 33/10 20060101ALI20220221BHJP
   H05B 33/02 20060101ALI20220221BHJP
   G02F 1/13357 20060101ALI20220221BHJP
【FI】
C09K11/66
C09K11/02 Z
C09K11/76
C09K11/75
C09K11/74
G02B5/20
H01L27/32
H05B33/14 Z
H05B33/10
H05B33/02
G02F1/13357
【請求項の数】 16
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019207401
(22)【出願日】2019-11-15
(62)【分割の表示】P 2018502672の分割
【原出願日】2017-06-26
(65)【公開番号】P2020045490
(43)【公開日】2020-03-26
【審査請求日】2020-06-22
(31)【優先権主張番号】16183790.1
(32)【優先日】2016-08-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】514211884
【氏名又は名称】アファンタマ アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100173107
【弁理士】
【氏名又は名称】胡田 尚則
(74)【代理人】
【識別番号】100128495
【弁理士】
【氏名又は名称】出野 知
(74)【代理人】
【識別番号】100146466
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 正俊
(72)【発明者】
【氏名】ノルマン アルベルト リュッヒンガー
(72)【発明者】
【氏名】マレック オシャイチャ
(72)【発明者】
【氏名】パトリック キッセル
(72)【発明者】
【氏名】ロレダーナ プロテセシュ
(72)【発明者】
【氏名】マクシム コバレンコ
(72)【発明者】
【氏名】フランツィスカ クリーグ
【審査官】黒川 美陶
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-113361(JP,A)
【文献】特開2015-028139(JP,A)
【文献】特開2014-078392(JP,A)
【文献】国際公開第2016/124555(WO,A1)
【文献】Meltem F. Ayguler, et al.,The Journal of Physical Chemistry C,2015年,119,12047-12054,DOI: 10.1021/acs.jpcc.5b02959
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 11/00-11/89
H05B 33/50
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)式(I)の3~500nmのサイズの発光性結晶:
[M (I)、
式中:
は、アンモニウム、ホルムアミジニウム、グアニジニウム、イミダゾリウム、ピリジニウム、ピロリジニウム、プロトン化チオウレアから成る群より選択される1つ以上の有機カチオンを表し、
は、Cs、Rb、K,Na、Liから選択される1つ以上のアルカリ金属を表し、
は、Ge、Sn、Pb、Sb、及びBiから成る群より選択される1つ以上の金属を表し、
Xは、クロリド、ブロミド、ヨージド、シアニド、チオシアネート、イソチオシアネート、及びスルフィドから成る群より選択される1つ以上のアニオンを表し、
aは、1~4を表し、
bは、1~2を表し、
cは、3~9を表し、
前記式(I)の化合物において、M は存在してもしなくてもよいがA は存在するものである;並びに
(ii)両性イオン性界面活性剤の群より選択される、界面活性剤;並びに
(iii)脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、エーテル、エステル、アルコール、ケトンの群より好ましくは選択される、任意選択的な溶媒;並びに
(iv)アクリレート、エポキシ、ウレタン、スチレン、シリコーン、及び環状オレフィンコポリマーの群より好ましくは選択される、任意選択的なポリマー及び/又はプレポリマー、
を含む、懸濁液の形態の組成物。
【請求項2】
前記発光性結晶(i)が式(I-2):
(I-2)
式中:
は、ホルムアミジニウムを表し、
は、Pbを表し、
X、a、b、cは、請求項1において定義される通りである;
の純有機ペロブスカイトから選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記発光性結晶(i)が、
FA Pb
式中:
FAは、ホルムアミジニウムを表し、
Xは、クロリド、ブロミド、ヨージド、シアニド、チオシアネート、イソチオシアネート、及びスルフィドから成る群より選択される1つ以上のアニオンを表す;
から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記両性イオン性界面活性剤(ii)が、カチオン性部分として四級アンモニウムを含み、アニオン性部分としてカルボキシレート、スルホネート、又はホスホネートを含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記両性イオン性界面活性剤(ii)が、式(V-2.1):
【化1】
式中:
は、H又はメチルであり、
は、置換又は無置換の炭化水素から選択される無極性テールであり、
vは、1~8である;
に従うアンモニウムスルホネートを含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記プレポリマー(iv)がアクリレート及びエポキシから成る群より選択され、及び/又は前記ポリマー(iv)がアクリレートから選択される、請求項1から5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記プレポリマー(iv)が、式(III):
【化2】
式中:
は、H又はCH を表し、
10 は、環状C 5-25 アルキル基、又は環状C 5-25 アルケニル基又は置換アリール基を表し、
nは、0又は1を表し、並びに
Xは、1~40個の炭素原子及び1~10個の酸素原子を含むアルコキシレートの群からのスペーサーを表す;
の単位を含むか、又は式(III)の単位から成る、請求項1から6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
・発光性結晶(i):液体材料(ii)+(iii)+(iv)の重量比が、0.0001~0.5の範囲内であり;及び/又は
・界面活性剤(ii):発光性結晶(i)の重量比が、100~0.01の範囲内であり;及び/又は
・前記ポリマー若しくはプレポリマーの濃度(iv)が、前記組成物全体の0.1~30重量%の範囲内である、
請求項1から7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
・溶媒(iii)を含まないか、又は本質的に含まず、及び、LC/QD(i):液体材料(プレポリマー(iv)+界面活性剤(ii))の重量比が好ましくは0.0001~0.2の範囲内であり、又は
・界面活性剤(ii)が、液体界面活性剤であり、溶媒(iii)及びプレポリマー(iv)を含まず、及び、界面活性剤(ii):LC/QD(i)の重量比が、100~0.01の範囲内である、
請求項1から8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
(i)請求項1から3のいずれか一項において規定される式(I)の3~500nmのサイズの発光性結晶;並びに
(ii)請求項1、4又は5において規定される界面活性剤;
(iii)アクリレートポリマー、エポキシポリマー、ウレタンポリマー、スチレンポリマー、シリコーンポリマー、及び環状オレフィンコポリマーの群より好ましくは選択される固化/硬化されたポリマー、
を含む固体ポリマー組成物。
【請求項11】
・LC/QD:マトリックス(ポリマー+界面活性剤)の重量比が、0.00001~0.2の範囲内であり;及び/又は
・界面活性剤:LC/QDの重量比が、100~0.01の範囲内である、
請求項10に記載の固体ポリマー組成物。
【請求項12】
・前記発光性結晶(i)が、FA Pb の群より選択され、FAは、ホルムアミジニウムを表し、Xは、請求項1に定める通りであり;
・前記界面活性剤(ii)が、両性イオン性界面活性剤の群より選択され;及び
・前記ポリマー(iv)が、アクリレートの群より選択される、
請求項10又は11に記載の固体ポリマー組成物。
【請求項13】
1つ以上の層でコーティングされたシート状基材を含み、前記層の少なくとも1つは、機能性層であり、前記機能性層は、請求項10から12のいずれか一項に記載の固体ポリマー組成物を含む、コンポーネント。
【請求項14】
電子デバイス及び光学デバイスの群より、好ましくは、ディスプレイ(例えばLCD)、携帯用デバイス、発光デバイス(例えばQLED)、及びソーラーセルから成る群より選択されるデバイスであって、
前記デバイスは、基材及び機能性層を含み;並びに
前記機能性層は、請求項10から12のいずれか一項に記載の固体ポリマー組成物を含む、
デバイス。
【請求項15】
・請求項13に記載のコンポーネント;又は
・請求項14に記載のデバイス
の製造のための、請求項1から9のいずれか一項に記載の組成物の使用。
【請求項16】
特にQLED又はLCDにおいて、青色光を白色光に変換するための、請求項10から12のいずれか一項に記載の組成物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光性結晶(LC)の分野に、より詳細には、量子ドット(QD)に関する。本発明は、そのような発光性結晶の製造方法、発光性結晶を含む組成物、並びにLCを含む電子デバイス、装飾コーティング、及びコンポーネントを提供する。
【背景技術】
【0002】
発光性結晶、具体的には量子ドットは、公知の種類の材料である。そのようなQDには、発光ダイオード又はディスプレイなどの電子デバイスを含む工業的及び商業的製品における多くの用途が見出される。
【0003】
Protesescu et al.(Nano Lett., 2015, 15, 3692-3696)は、品質の高い新規な種類の発光性量子ドット(QD)を開示している。QDは、安価な化学物質を用い、非常に高いサイズ精度で合成され、QDのサイズは、温度及び反応時間などの合成パラメーターを調節することによって制御された。しかし、その方法は、制御が困難であり(この材料組成物の粒子成長速度が非常に速いことに起因して)、スケールアップが困難であることから、非常に少量しか合成されなかった。さらに、この反応は、非化学量論的であり、大量の副生物が発生する結果となる。さらに、この反応は、オクタデセンなどの高沸点溶媒中でしか行うことができず(高い反応温度のために)、このため、最終用途においてQDがトルエンなどの低沸点溶媒中に存在することが必要とされる場合、溶媒交換が必要となる。この合成経路は、「ホットインジェクション法」として知られ、標準的な実験設備が用いられる。これらの欠点のために、QDを合成するこの方法は、商業的に魅力的なものではなく、このことがQDを高価なものとしている。
【0004】
Ayguler et al(J. Phys. Chem. C 2015, 119, 12047-12054)は、ハイブリッドハロゲン化鉛ペロブスカイトナノ粒子をベースとする発光電気化学セルを開示している。この著者らは、そのような50~90nmサイズのナノ粒子の製造方法を開示しており、サイズ分布が均一ではないことも認識している。この文書は、これらの材料を得る困難さも指摘しており、それは、純粋な化合物を得るためには、反応体の滴下が極めて重要だからである。また、結晶成長の制御及び制限のために、キャッピング剤も必要である。
【0005】
Li et al(Chem. Mater., 2015, 284-292)は、(FA,Cs)PbI3固体アロイをバルク膜の形態で形成してペロブスカイト構造を安定化することについて述べており、ここで、FAは、ホルムアミジニウムを表す。この文書に開示される材料は、発光を示さない。膜の形成は、N,N-ジメチルホルムアミドの溶液を介して得られる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、本発明の目的は、現行技術のこれらの欠点の少なくともいくつかを軽減することである。特に、本発明の目的は、LC/QDの改善された製造方法を提供することである。さらなる目的は、電子デバイス、及び光学デバイス、及び装飾コーティングを含む広く様々な用途に適するLC/QDを含む新規な材料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
これらの目的は、請求項1に記載の方法、請求項9に記載のインク、請求項16に記載のコンポーネント、及び請求項17/18に記載のデバイス/物品によって達成される。本発明のさらなる態様は、本明細書及び独立請求項に開示され、好ましい実施形態は、本明細書及び従属請求項に開示される。本発明は、特に:
・発光性結晶、具体的には、量子ドットの製造方法(第一の態様);
・「インク」又は「プレポリマー分散体」とも称される懸濁液の形態の組成物、及びその使用(第二の態様);
・固体ポリマー組成物及びその使用(第三の態様);
・コンポーネント(第四の態様);
・デバイス(電子デバイス、光学デバイスを含む)、及びコーティング面を含む物品(第五の態様);
・ポリマー組成物の製造方法(第六の態様);
・コンポーネントの製造方法(第七の態様);並びに
・デバイスの製造方法(第八の態様)
を提供する。本発明を、以下で詳細に記載する。本明細書で提供/開示される様々な実施形態、好ましい態様、及び範囲が、任意に組み合わされてもよいことは理解される。さらに、特定の実施形態によっては、選択された定義、実施形態、又は範囲が適用されない場合もある。
【0008】
特に断りのない限り、以下の定義が、本明細書で適用されるものとする。
【0009】
本発明の文脈で用いられる「1つの(a)」、「1つの(an)」、「その(the)」の用語、及び類似の用語は、本明細書で特に断りのない限り、又は文脈によって明らかに矛盾することのない限りにおいて、単数及び複数の両方を含むものと解釈されるものとする。さらに、「含む(including)」、「含有する(containing)」、及び「含む(comprising)」の用語は、本明細書において、非限定的な制限されない意味で用いられる。「含有する(containing)」の用語は、「含む(comprising)」及び「から成る(consisting of)」の両方を含むものとする。
【0010】
パーセントは、本明細書で特に断りのない限り、又は文脈によって明らかに矛盾することのない限りにおいて、重量%として与えられる。
【0011】
「発光性結晶(luminescent crystals)」(LC)の用語は、本技術分野で公知であり、半導体材料から作られた3~500nmの結晶に関する。この用語は、典型的には3~15nmの範囲にある量子ドット、及び典型的には15nm超から100nmまで(好ましくは、50nmまで)の範囲にあるナノ結晶、及び典型的には100nm超から500nmの範囲にある結晶を含む。好ましくは、発光性結晶は、おおよそ等軸的である(球形状又は立方体形状など)。粒子は、3つすべての直交方向のアスペクト比(最長方向:最短方向)が1~2である場合、おおよそ等軸的であると見なされる。したがって、LCの集合体は、好ましくは、等軸ナノ結晶を、50~100%(n/n)、好ましくは、66~100%(n/n)、非常に好ましくは、75~100%(n/n)含有する。
【0012】
LCは、その用語が示すように、発光性である。本発明の文脈において、発光性結晶の用語は、単結晶を含み、又は多結晶粒子であってもよい。後者の場合、1つの粒子が、結晶相又はアモルファス相の粒界で接続された複数の結晶ドメイン(結晶粒)から構成されていてよい。発光性結晶は、界面活性剤の存在によって、他の粒子から空間的に分離されている。発光性結晶は、直接バンドギャップ(典型的には、1.1~3.8eV、より典型的には、1.4~3.5eV、さらにより典型的には、1.7~3.2eV)を示す半導体材料である。バンドギャップに等しいか又はそれよりも高い電磁放射線で照射されると、価電子帯電子が伝導帯に励起され、価電子帯に電子ホールが残される。形成された励起子(電子-電子ホール対)は、次に、LCバンドギャップ値を中心とする最大強度のフォトルミネッセンスの形態で放射再結合し、少なくとも1%のフォトルミネッセンス量子収率を示す。外部の電子及び電子ホール源と接触すると、LCは、エレクトロルミネッセンスを示し得る。本発明の文脈において、LCは、メカノルミネッセンス(例:ピエゾルミネッセンス)、ケミルミネッセンス、エレクトロケミルミネッセンス、又はサーモルミネッセンスを示さない。
【0013】
「量子ドット(quantum dot)」(QD)の用語は、公知であり、特に、典型的には3~15nmの直径を有する半導体ナノ結晶に関する。この範囲内では、QDの物理的直径は、バルク励起ボーア半径よりも小さく、量子閉じ込め効果が支配的となる。その結果、QDの電子状態、したがってバンドギャップは、QDの組成及び物理的サイズの関数となり、すなわち、吸収/発光の色は、QDのサイズと関連する。QDサンプルの光学的品質は、その均一性と直接関連している(単分散のQDであるほど、発光のFWHMが小さくなる)。QDがボーア半径よりも大きいサイズに達すると、量子閉じ込め効果は阻害され、サンプルは、励起子再結合の非放射経路が支配的となり得ることから、もはや発光性ではなくなり得る。したがって、QDは、特にそのサイズ及びサイズ分布によって定められるナノ結晶の特定のサブ群である。QDの特性は、これらのパラメーターと直接関連しており、それによって、QDはナノ結晶と区別される。
【0014】
「溶媒」の用語は、本技術分野にて公知であり、特に、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、エーテル(グリコールエーテルを含む)、エステル、アルコール、ケトン、アミン、アミド、スルホン、ホスフィン、アルキルカーボネートを含む。上記の有機物質は、無置換であっても、又は1つ以上の置換基によって置換されていてもよく、例えば、ハロゲン(フルオロなど)、ヒドロキシ、C1-4アルコキシ(メトキシ又はエトキシなど)、及びアルキル(メチル、エチル、イソプロポイルなど)による。上記の有機物質は、直鎖状、分岐鎖状、及び環状誘導体を含む。また、分子内に不飽和結合が存在してもよい。上記の化合物は、典型的には、4~24個の炭素原子、好ましくは、5~12個の炭素原子、最も好ましくは、6~10個の炭素原子を有する。
【0015】
「界面活性剤」、「リガンド」、「分散剤(dispersant)」、及び「分散剤(dispersing agent)」の用語は、本技術分野で公知であり、本質的に同じ意味を有する。本発明の文脈において、これらの用語は、粒子の分離を改善し、凝集又は沈降を防止するために懸濁液又はコロイド中で用いられる溶媒以外の有機物質を示す。理論に束縛されるものではないが、界面活性剤は、粒子を溶媒に添加する前又は後に、粒子表面上に物理的に又は化学的に付着され、それによって所望される効果を提供するものと考えられる。界面活性剤の用語は、ポリマー材料及び小分子を含み、界面活性剤は、典型的には、極性の末端官能基及び無極性の末端基を含有する。本発明の文脈において、溶媒(例:トルエン)は、界面活性剤と見なされない。
【0016】
「懸濁液」の用語は、公知であり、固体である内部相(internal phase)(i.p.)及び液体である外部相(external phase)(e.p.)の不均一流体に関する。外部相は、1つ以上の分散剤/界面活性剤を含み、任意選択で1つ以上の溶媒、及び任意選択で1つ以上のプレポリマーを含んでもよい。
【0017】
「ポリマー」の用語は、公知であり、有機及び無機合成材料を含む。「プレポリマー」の用語は、モノマー及びオリゴマーの両方を含むものとする。
【0018】
「溶液加工」の用語は、本技術分野で公知であり、溶液ベース(=液体)の出発材料を用いることによって基材にコーティング又は薄膜を適用することを示す。本発明の文脈において、溶液加工は、電子デバイス、光学デバイス、及び(装飾)コーティングを含む物品などの市販用製品の製造に関し、及びQDコンポジット又はQD層を含むコンポーネント/半製品の製造にも関する。典型的には、懸濁液の適用は、周囲条件で行われる。
【0019】
「QDコンポジット」の用語は、LC/QD、界面活性剤、及びマトリックスを含む固体無機/有機コンポジット材料を示す。QDコンポジットの形態は、膜、繊維、及びバルク材料を含む。QDコンポジットは、LC/QDが電子的にアドレス指定されない(not electronically addressed)ことから、LC/QDが光学的機能だけを有する用途に用いられる。
【0020】
QDコンポジットでは、LC/QDは、LC/QDを互いに空間的に分離する目的で、ポリマーマトリックス又は無機マトリックスなどのマトリックス中に埋め込まれる。用途に応じて、QDコンポジット膜の厚さは、広い範囲にわたって様々であってよいが、典型的には、1~1000ミクロン(μm)である。
【0021】
「QD層」の用語は、発光性結晶(具体的にはQD)及び界面活性剤を含む薄層を示し、マトリックス/バインダーなどの追加の成分を含まないか、又は本質的に含まない。QD層には、量子ドット発光ダイオード(QLED)又は量子ドットソーラーセルを含む様々な用途が見出され得る。これらの用途では、LC/QDは、電子的にアドレス指定され、電圧の印加によって、電流がQD層を通って流れる。用途に応じて、QD層の厚さは、広い範囲にわたって様々であってよいが、典型的には、3~200nm、好ましくは、5~100nm、最も好ましくは、6~30nmである。QD層は、LC/QDの単層から構成されていてよく、したがって、用いられるLC/QDのサイズに等しい厚さを有し、したがってこれが、厚さの下限を定める。
【0022】
本発明は、図面を参照することによってより良く理解される。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1a図1(a)及び(b)は、本発明の様々な態様の概要を示す。図1bでは、x軸は、粒子サイズ/nmを示し、y軸は、粒子数/任意単位を示す。左側は、工程(a)で提供される出発材料(バルク材料)であり、右側は、本発明の工程(b)で得られる本発明のLC/QDである。
図1b図1(a)及び(b)は、本発明の様々な態様の概要を示す。図1bでは、x軸は、粒子サイズ/nmを示し、y軸は、粒子数/任意単位を示す。左側は、工程(a)で提供される出発材料(バルク材料)であり、右側は、本発明の工程(b)で得られる本発明のLC/QDである。
図2図2は、本発明で述べる2つの異なる作製方法によって得られた出発材料FAPbBrのX線回折パターンを示す。x軸:2シータ(°);y軸:強度(任意単位);上:例1に従う溶液からのFAPbBr3;下:例2に従う乾式ミリングからのFAPbBr3。
図3図3は、本発明に従って合成されたFAPbBr LCのTEM画像を示し、結晶構造の立方晶の性質が示される。
図4図4は、本発明に従って合成されたFAPbBr LCのTEM画像を示す。
図5図5は、本発明に従って合成されたCs0.85FA0.15PbBr LCのTEM画像を示す。
図6図6は、本発明に従って合成されたCs0.5FA0.5PbBr LCのTEM画像を示す。
図7図7は、本発明に従う異なる析出されたLCのX線回折パターンを示す。x軸:2シータ(°);y軸:強度(任意単位);上:CsPbBr;中央:Cs0.5FA0.5PbBr;下:FAPbBr
【発明を実施するための形態】
【0024】
第一の態様では、本発明は、発光性結晶、詳細には、量子ドットの種類からの発光性結晶の製造方法に関する。より詳細には、本発明は、3~500nmのサイズ、好ましくは、3~100nmのサイズの発光性結晶の製造方法に関し、前記発光性結晶は、式(I)の化合物から選択され、
[M (I)、
式中
は、1つ以上の有機カチオンを表し、好ましくは、ホルムアミジニウム、アンモニウム、グアニジニウム、プロトン化チオウレア、イミダゾリウム、ピリジニウム、ピロリジニウムから成る群より選択され、
は、1つ以上のアルカリ金属を表し、好ましくは、Cs、Rb、K,Na、Liから選択され、
は、M以外の1つ以上の金属を表し、好ましくは、Ge、Sn、Pb、Sb、及びBiから成る群より選択され、
Xは、ハライド、及びシュードハライド、及びスルフィドから、好ましくは、クロリド、ブロミド、ヨージド、シアニド、チオシアネート、イソチオシアネート、及びスルフィドから成る群より選択される1つ以上のアニオンを表し、特に好ましくは、Cl、Br、及びIから成る群より選択される1つ以上のハライドを表し、
aは、1~4を表し、
bは、1~2を表し、
cは、3~9を表し;
前記方法は、(a)以下で定める固体材料を提供する工程;及び(b)前記材料を、以下で定める液体の存在下で分散させる工程を含む。
【0025】
本発明のこの態様については、以下でさらに詳細に説明するものとする。
【0026】
LC/QDが環境に対して感受性の高い材料であることは知られている。第一に、それらは、凝集して、非放射再結合経路を誘導するものとなる傾向にあり、発光量子収率の低下に繋がる。したがって、合成後、LC/QDを安定化させる対策を取る必要がある。本明細書で述べる方法は、安定な懸濁液の形態(「インク」)でLC/QDを提供する改善された製造方法を開示することにより、この要件を満たしている。
【0027】
本明細書で述べる方法は、材料がまず従来のように合成され、次にサイズ低下され、安定化されてLC/QDが得られることから、「トップダウン」手法と見なされ得る。この手法は、Protesescu and Ayguler(上記で考察)に記載される公知の「ボトムアップ」である手法とは逆である。本発明の方法を以下で提供される実験によってさらに説明するが、これらによって限定されるものではない。
【0028】
本明細書で述べる方法は、非常に優れた特性を有するLC/QDを提供する。第一に、小さいFWHM値(発光ピーク幅;例:522nmでの発光に対して26nm)が観察される。第二に、高い発光量子収率が観察される(約530nmでの発光に対して>80%)。これらの量子収率は、Ayguler(上記で引用)に報告される5~15%と比較すると高い。したがって、本発明の方法によって提供されるLC/QDは、電子及び光学デバイスにおける数多くの用途に適している。さらに、本発明の方法によって提供されるLC/QDは、装飾コーティングなどのコーティング(非電子/非光学)物品にも適している。
【0029】
本発明の方法は、公知の製造方法と比較してより優れている。第一に、それは、非常により堅固であり、容易にスケールアップすることができる。第二に、必要とされる出発材料が少なく、生成する副生物も少ない。第三に、合成を低沸点溶媒中で直接行うことができることから、LC/QDの合成後に低沸点溶媒(例:トルエン)への溶媒交換の必要がない。第四に、得られる生成物の狭いサイズ分布が観察される。結果として、製造コストが大きく低減され、LC/QDが数多くの用途に利用可能となる。
【0030】
式(I)の発光性結晶/量子ドット:本発明の方法は、3~500nm、特に、3~100nmの平均サイズを有するLC/QDを提供する。このLC/QDはさらに、発光ピークの低いFWHM値によって示されるように、狭いサイズ分布も有する。
【0031】
1つの実施形態では、本発明は、a=1、b=1、c=3である式(I)のLC/QDに関する。
【0032】
上記式(I)から分かるように、本発明に従う化合物は、2種類のカチオン、すなわち、有機カチオン及び金属カチオンを含有しているという点でハイブリッド材料である。カチオンAは、有機カチオンであるが、カチオンM(及び存在する場合はM)は、金属カチオンである。本発明によると、有機カチオンAは、式(I)の化合物中に存在するが、金属カチオンMは、存在しても、又は存在していなくてもよい(A≠0;M=0又はM≠0)。そのようなハイブリッド材料、特にペロブスカイトナノ粒子の形態のハイブリッド材料は、有益な特性を有している。有機カチオンAを含む広範囲のハイブリッド材料(I)が、本発明の製造方法に従って入手可能である。適切な有機カチオンは、ホルムアミジニウムカチオン(IV-1)、アンモニウムカチオン(IV-2)、グアニジニウムカチオン(IV-3)、プロトン化チオウレアカチオン(IV-4)、イミダゾリウムカチオン(IV-5)、ピリジニウムカチオン(IV-6)、ピロリジニウムカチオン(IV-7)から成る群より選択されてよく、
【0033】
【化1】
【0034】
ここで、置換基Rは、互いに独立して、水素、又はC1-4アルキル、又はフェニル、又はベンジルを表し、Rが炭素と結合している場合、それはさらに、互いに独立して、ハライド又はシュードハライドを表す。
【0035】
(IV-1)の場合、Rは、好ましくは、水素を表し、Rは、好ましくは、メチル、又は水素、又はハライド、又はシュードハライドを表す。好ましいカチオンは、アセタミジニウム、ホルムアミジニウム(FA)から成る群より選択される。FAが好ましいカチオンである。
【0036】
(IV-2)の場合、Rは、好ましくは、水素、及びメチル、エチル、n-プロピル、iso-プロピル、n-ブチル、iso-ブチル、tert-ブチル、フェニル、ベンジルを表す。好ましいカチオンは、ベンジルアンモニウム、iso-ブチルアンモニウム、n-ブチルアンモニウム、t-ブチルアンモニウム、ジエチルアンモニウム、ジメチルアンモニウム、エチルアンモニウム、メチルアンモニウム(MA)、フェネチルアンモニウム、iso-プロピルアンモニウム、n-プロピルアンモニウムから成る群より選択される。MAが好ましいカチオンである。
【0037】
(IV-3)の場合、Rは、好ましくは、水素を表し、親化合物のグアニジニウムカチオンが得られる。
【0038】
(IV-4)の場合、Rは、好ましくは、水素を表し、親化合物のプロトン化チオウレアカチオンが得られる。
【0039】
(IV-5)の場合、Rは、好ましくは、メチル又は水素を表す。イミダゾリウムが好ましいカチオンである。
【0040】
(IV-6)の場合、Rは、好ましくは、メチル又は水素を表す。ピリジニウムが好ましいカチオンである。
【0041】
(IV-7)の場合、Rは、好ましくは、メチル又は水素を表す。ピロリジニウムが好ましいカチオンである。
【0042】
本発明によると、Aの存在が必須であることは理解される。本発明に従う式(I)の化合物は、したがって、有機ペロブスカイトと称される。
【0043】
の量は、広い範囲にわたって様々であってよい。1つの実施形態では、本発明は、式(I)のLC/QDに関し、ここで、Mは存在しない。この実施形態では、本発明は、式(I-2)の化合物に関し、
(I-2)
式中、置換基は、本明細書で定める通りである。本明細書では、そのような式(I-2)の化合物は、Mが存在しないことから、純有機ペロブスカイトと称される。
【0044】
1つのさらなる実施形態では、本発明は、式(I)のLC/QDに関し、式中、Mは、M+Aに基づいて算出された場合、90mol%までで存在する。この実施形態では、M及びAは、統計的に分布しており、式(I-3)の化合物に関し、
[M a’ a’’ (I-3)
式中、
a’+a’’=1、及びa’/(a’+a’’)<0.9、及びa’>0であり、並びに、
式中、残りの置換基は、本明細書で定める通りである。本明細書では、そのような式(I-3)の化合物は、Mが存在することから、無機-有機ペロブスカイトと称される。
【0045】
1つの実施形態では、本発明は、式(I)のLC/QDに関し、式中、M=Csである。
【0046】
1つの実施形態では、本発明は、式(I)のLC/QDに関し、式中、A=FAである。
【0047】
1つの実施形態では、本発明は、式(I)のLC/QDに関し、式中、M=Pbである。
【0048】
1つの実施形態では、本発明は、式(I)のLC/QDに関し、式中、Xは、Cl、Br、Iのリストから選択される少なくとも2つの元素の組み合わせである。
【0049】
1つの実施形態では、本発明は、FAPbから、特に、FAPbBr、FAPbBrIから選択される式(I)のLC/QDに関する。この実施形態は、対応するFABr及びPbBr2のモル混合物又はFAI及びPbBr2の混合物も含む。
【0050】
1つのさらなる実施形態では、本発明は、ドープされた材料をさらに含む式(I)のLC/QDに関し、すなわち、Mの一部が、他のアルカリ金属に置き換えられているか、又はMの一部が、他の遷移金属若しくは希土類元素に置き換えられているか、又はXの一部が、他のハロゲン化物に置き換えられているか、又はAの一部が、本明細書で定める他のカチオンに置き換えられている。ドーパント(すなわち、置換するイオン)は、一般的に、それらに置換される側のイオンに対して1%未満の量で存在する。
【0051】
1つのさらなる実施形態では、本発明は、ASnX、A Bi、AGeXから選択される式(I-2)のLC/QDに関する。
【0052】
式(I)の化合物は、化学量論的化合物及び非化学量論的化合物を含む。式(I)の化合物は、a、b、及びcが自然数(すなわち、正の整数)を表す場合に化学量論的であり、a、b、及びcが自然数を除く有理数を表す場合に非化学量論的である。
【0053】
1つのさらなる実施形態では、本発明は、式(I)のLC/QDに関し、式中、Xの一部が、シアニド、チオシアネート、イソチオシアネート、及びスルフィドから成る群より選択される1つ以上のアニオンによって置き換えられている。好ましい実施形態としては、
c’ c’’ (I-1)
が識別され、
式中、
、M、a、bは、上記で識別される通りであり;
は、上記で識別されるハライドの群より選択される1つ以上のアニオンを表し;
は、上記で識別されるシュードハライド又はスルフィドの群より選択される、Xとは異なるアニオンを表し;
c’+c’’は、3から9の自然数を表し、c’/c’’>0.9である。スルフィドは、二価であるため、c’、c’’の算出時、2つ分にカウントされる。
【0054】
式(I-1)の好ましい実施形態は、FAPbCl2.9CN0.1、FASnBr(SCN)、FABiBr8.8(NCS)0.2、及びFAPbBr0.432.430.07を含む。
【0055】
工程(a):工程(a)で提供される適切な固体材料は、少なくとも100nmの平均粒子サイズ、及び典型的には50nm~100μm、より典型的には、100nm~50μmの多分散サイズ分布を有する。固体材料の粒子サイズは、SEM、TEM、BET、又は遠心沈降法によって特定されるものとする。
【0056】
さらに、そのような固体材料は、所望されるLC/QDの化学組成に対応する化学組成を有する。したがって、そのような固体材料は、aモルの(A+M)、bモルのM、及びcモルのXの化学量論的組成を有する。
【0057】
そのような材料は、以下で概説されるように、(a1)、(a2)、(a3)を例とする異なる手法によって本発明の方法に提供されてよい。この材料は、公知の方法によって、連続的に又は非連続的に工程(b)に提供されてよい。この材料は、固体材料として、又は懸濁液の形態で、工程(b)に提供されてよい。
【0058】
湿式合成プロセス(a1):式(I)に従う固体材料の製造自体は公知である。最も一般的な方法は、溶媒系相又は水相からの析出プロセスなどの湿式合成プロセスを含む。この材料は、公知の方法によって、連続的に又は非連続的に工程(b)に提供されてよい。
【0059】
ミリングによる乾式合成プロセス(a2):式(I)に従う固体材料を製造するためのさらなる手法は、前駆体材料の乾式ミリングを含む。この実施形態では、固体材料は、式aA 及びM (c-a)を有する2つ以上の乾燥前駆体の混合物であり、式中、置換基は、上記で定められる。例えば、FAPbBr、FAPbBrは、前駆体FABr及びPbBrの対応するモル混合物によって入手可能であり、又はFAPbBrIは、前駆体FAI及びPbBrの対応する混合物によって入手可能である。式(I)に従う乾燥結晶材料は、次に、乳棒とすり鉢とを用いること、又は攪拌ミリングボール(agitated milling balls)を含むプロセスを用いることを例とする乾式ミリングプロセスで得られる。このプロセスは、ミリングによって誘導される固体反応と見なされ得る。
【0060】
この手法は、「トップダウン」と見なされ得るものであり、乾式ミリングによって入手可能である固体出発材料は、平均粒子サイズ>500nmで典型的には1~50ミクロン(μm)(SEM又は遠心沈降法によって測定)の多分散粒子サイズ分布を示し、一方、合成された発光性結晶は、平均サイズ3~500nmの非常に狭いサイズ分布を示す。本明細書で述べる方法に従うことにより、3~500nmの狭いサイズ分布及び粒子サイズを得る目的で、出発材料の平均粒子サイズ及び多分散性が低下される。
【0061】
In situ形成(a3):式(I)に従う固体材料のためのさらなる別の選択肢は、分散プロセスの過程での固体反応などのin situ形成を含む。この実施形態では、固体材料は、式aA 及びM (c-a)を有する2つ以上の乾燥前駆体の混合物であり、式中、置換基は、上記で定められる。例えば、FAPbBr、FAPbBrは、前駆体FABr及びPbBrの対応するモル混合物によって入手可能であり、又はFAPbBrIは、前駆体FAI及びPbBr2の対応する混合物によって入手可能である。式(I)に従う結晶材料は、次に、固体材料の2つの前駆体の反応により、分散プロセスの過程で(すなわち、in situで)形成される。
【0062】
そして、上記前駆体は、湿式合成プロセス、乾式合成プロセスなどの公知の方法によって入手可能である。当業者であれば、式(I)の発光性結晶を得るための適切な前駆体を選択できる立場にある。ここでも、用いられる前駆体が得られるLC/QDよりも大きいことから、この手法も、「トップダウン」と見なされ得る。
【0063】
1つの実施形態では、固体材料の平均粒子サイズは、少なくとも100nm(BET、SEM、TEM、又は遠心沈降法によって特定される)、好ましくは、100nm~100μm、より好ましくは、500nm~50μmである。
【0064】
有利な実施形態では、固体材料は、式(I)の最終LC/QDと同じ化学量論を有する単一の組成から成る。
【0065】
工程(b):理論に束縛されるものではないが、液相中に出発材料を分散させると、いくつかの効果が、同時に又は順に発生するものと考えられる。
【0066】
第一に、固体材料は、液相中に均一に分散される。
【0067】
第二に、固体材料は、界面活性剤と接触される。それによって、材料はコーティングされ、液相中で安定化されるものと考えられる。
【0068】
第三に、固体材料の粒子サイズが、低下される。理論に束縛されるものではないが、単分散粒子サイズ分布は、発生する2つの機構:(1)最終LC/QDサイズよりも大きい粒子の機械的粉砕/劈開、(2)最終LC/QDサイズよりも小さい粒子のオストワルド熟成及び焼結、によって得られるものと考えられる。
【0069】
特定の実施形態では、固体出発材料の平均粒子サイズは、対応する合成後のLC/QDの平均粒子サイズよりも少なくとも1.5倍(好ましくは、少なくとも2倍、最も好ましくは、少なくとも5倍)大きい。
【0070】
液体:上記で概説したように、工程(b)は、液相中で行われる。適切な液体は、(i)液体界面活性剤、(ii)(液体又は固体)界面活性剤と溶媒との組み合わせ、(iii)(液体又は固体)界面活性剤、溶媒、及び(液体又は固体)プレポリマー又はポリマーの組み合わせ、並びに(iv)(液体又は固体)界面活性剤と液体プレポリマーとの組み合わせから選択されてよい。
【0071】
実施形態(i)では、液相は、液体界面活性剤から成る(又は本質的に成る)。この実施形態は、溶媒を用いない単純な系であることから、有利である。
【0072】
実施形態(ii)では、液相は、(液体又は固体)界面活性剤と溶媒との組み合わせから成る(又は本質的に成る)。この実施形態は、固体界面活性剤の使用が可能であることから、有利である。
【0073】
実施形態(iii)では、液相は、(液体又は固体)界面活性剤、溶媒、及び(液体又は固体)プレポリマー又はポリマーの組み合わせから成る(又は本質的に成る)。この実施形態は、以下で定めるコンポーネント/中間製品を製造するために直接用いられ得る組成物を提供することから、有利である。
【0074】
実施形態(iv)では、液相は、液体プレポリマーから成る(又は本質的に成る)。この実施形態は、溶媒を含まず、以下で定めるコンポーネント/中間製品を製造するために直接用いられ得る組成物を提供することから、有利である。
【0075】
溶媒:溶媒の用語は、上記で定められる。誤解を避けるために、溶媒の用語は、界面活性剤もプレポリマーも含まない。
【0076】
有利には、溶媒は、炭化水素(直鎖状、分岐鎖状、及び環状炭化水素を含む)、芳香族炭化水素、エーテル(グリコールエーテルを含む)、エステル、アルコール、ケトンの群より選択される。好ましくは、溶媒は、C5-8シクロアルカン、直鎖状及び分岐鎖状C5-24アルカンの群より選択され、前記アルカンは、無置換であるか、又はフェニル若しくはナフチルによって置換されている。最も好ましくは、溶媒は、直鎖状C5-15アルカン、トルエン、及びシクロヘキサンの群より選択される。
【0077】
さらなる実施形態では、溶媒は、140℃未満、好ましくは、120℃未満の沸点を示す。本発明の方法の有利な態様として、Protesescu(上記で考察、140~200℃の合成方法を使用)などのこれまでの方法と比較した場合、非常により低い温度でLC/QDを得ることがここで可能である。
【0078】
プレポリマー:プレポリマーの用語は、上記で定められる。有利には、プレポリマーは、アクリレート、カーボネート、スルホン、エポキシ、ビニル、ウレタン、イミド、エステル、フラン、メラミン、スチレン、及びシリコーンの群より選択される。好ましくは、プレポリマーは、アクリレート、ウレタン、スチレン、エポキシの群より選択される。特に好ましくは、プレポリマーは、アクリレート及びエポキシから成る群より選択される。
【0079】
アクレートプレポリマーは、好ましくは、式(III)の単位を含むか、又は式(III)の単位から成り、
【0080】
【化2】
【0081】
式中:
は、H又はCHを表し、
10は、環状、直鎖状、若しくは分岐鎖状C1-25アルキル、又は環状、直鎖状、若しくは分岐鎖状C2-25アルケニル基、又はC6-26アリール基を表し、各々は、任意選択で、1つ以上の環状、直鎖状、若しくは分岐鎖状C1-20アルキル、フェニル、又はフェノキシで置換されていてもよく、
nは、0又は1を表し、並びに
Xは、1~40個の炭素原子及び1~10個の酸素原子を含むアルコキシレートの群からのスペーサーを表す。
【0082】
Xは、好ましくは、式(IIIa)のスペーサーを表し、
【0083】
【化3】
【0084】
式中:
xは、1~10、好ましくは、1、2、3、又は4を表し、
yは、0、1、2、3、又は4、好ましくは、2を表す。
【0085】
したがって、式(III)の化合物は、RがHである式(III-1)及び(III-2)のアクリレートプレポリマー、並びにRがメチルである式(III-3)及び(III-4)のメタクリレートプレポリマーを含み、これらはまとめて、(メタ)アクリレートプレポリマーとも称される。
【0086】
さらに、式(III)の化合物は、nが0であり、xが存在しない単純な(メタ)アクリレートプレポリマー(式(III-1)及び(III-3)、並びにアルコキシル化(メタ)アクリレートプレポリマー(式(III-2)及び(III-4))も含む。
【0087】
【化4】
【0088】
Rは、環状、直鎖状、若しくは直鎖分岐鎖状分子の群より選択される飽和若しくは不飽和脂肪族基を表すか、又は芳香族基を表す。
【0089】
アクリレートプレポリマーは、モノマー、及び式(III)の部分的に反応したオリゴマーを含む。
【0090】
10は、好ましくは、環状、直鎖状、又は分岐鎖状のC1-25アルキルを表す。環状アルキルとしては、単環式及び多環式基を含み、C1-4アルキルの群からの1~6つの置換基を含む、任意選択で置換されていてもよい基も含む。R10は、特に好ましくは、メチル、エチル、プロピル、ブチル、オクチル、ラウリル、セチル、ステアリル、2-エチルヘキシル、イソオクチル、イソデシル、シクロヘキシル、トリメチルシクロヘキシル、イソボルニル、ジシクロペンテニルを表す。
【0091】
10はさらに、好ましくは、環状、直鎖状、又は分岐鎖状のC2-25アルケニル基を表す。R10は、特に好ましくは、アリル及びオレイルを表す。
【0092】
10はさらに、好ましくは、1つ以上の環状、直鎖状、又は分岐鎖状のC1-20アルキルで任意選択で置換されていてもよいC6-26アリール基を表す。アリールは、1~4つの置換基によって任意選択で置換されていてもよい単環式及び多環式アリールを含み、前記置換基は、C1-4アルキル、フェニル、及びフェノキシの群より選択される。R10は、特に好ましくは、フェニル、ベンジル、2-ナフチル、1-ナフチル、9-フルオレニルを表す。
【0093】
式(III-1)のアクリレートプレポリマーの具体例としては、イソボルニルアクリレート及びジシクロペンタジエニルアクリレート(CAS 33791-58-1)が挙げられる。
【0094】
式(III-2)及び(III-4)のアクリレートプレポリマーの具体例としては:ポリ(エチレングリコール)フェニルエーテルアクリレート(具体的には、2-フェノキシエチルアクリレート)、O-フェニルフェノキシエチルアクリレート、ポリエチレングリコールo-フェニルフェニルエーテルアクリレート(CAS 72009-86-0)、ポリ(エチレングリコール)エチルエーテルメタクリレート、ジ(エチレングリコール)エチルエーテルアクリレート、ポリ(エチレンオキシド)ノニルフェニルエーテルアクリレート、ポリ(プロピレングリコール)4-ノニルフェニルエーテルアクリレート、エチレングリコールジシクロペンテニルエーテルアクリレート、エチレングリコールジシクロペンテニルエーテルメタクリレートが挙げられる。
【0095】
10の定義により、式(III)の(メタ)アクリレートプレポリマーは、単官能性である。
【0096】
さらなる実施形態では、(メタ)アクリレートプレポリマーは、多官能性(メタ)アクリレートプレポリマーである。そのような多官能性(メタ)アクリレートプレポリマーは、(メタ)アクリル酸がポリオールと反応することによって、二-、三-、四-、五-、及び六官能性(メタ)アクリレートプレポリマーが得られる場合に得ることができる。多官能性(メタ)アクリレートプレポリマーを形成するのに適するポリオールとしては、任意選択で1つ以上のC1-4アルコキシ基で置換されていてもよい脂肪族又は芳香族C1-30ポリオールが挙げられ、ここで、アルコキシ基の数は、好ましくは、≦10、より好ましくは、≦5である。ポリオールの例としては、グリコール、ヘキサンジオール、デカンジオール、ビスフェノール、フルオレン-9-ビスフェノール、2~6つの、例えば4つのエトキシ基を含むエトキシル化ビスフェノール、及び2~6つの、例えば4つのエトキシ基を含むエトキシル化フルオレン-9-ビスフェノールが挙げられる。
【0097】
二官能性(メタ)アクリレートプレポリマーの具体例としては、1,10-デカンジオールジアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、ビスフェノールAエトキシレートジアクリレート(CAS 64401-02-1を含む)、ビスフェノールAエトキシレートジメタクリレート、変性フルオレン-9-ビスフェノールジアクリレート、変性フルオリン-9-ビスフェノールジメタクリレート(modified fluorine-9-bisphenol dimethacrylate)、1,3-ブチレングリコールジメタクリレートが挙げられる。
【0098】
三官能性(メタ)アクリレートプレポリマーの具体例としては、エトキシル化トリメチロールプロパントリアクリレート(CAS 28961-43-5)、トリメチロールプロパントリアクリレート(CAS 15625-89-5)、トリメチロールプロパントリメタクリレート(CAS 3290-92-4)が挙げられる。
【0099】
四官能性(メタ)アクリレートプレポリマーの具体例としては、ジ(トリメチロールプロパン)テトラアクリレート(CAS 94108-97-1)、ペンタエリスリトールテトラアクリレート(CAS 4986-89-4)が挙げられる。
【0100】
六官能性(メタ)アクリレートプレポリマーの具体例としては、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(CAS 29570-58-9)が挙げられる。
【0101】
上記で考察した単官能性又は多官能性(メタ)アクリレートプレポリマーの中でも:
10が、環状C5-25アルキル基を表す場合、又は
10が、環状C5-25アルケニル基を表す場合、又は
10が、置換アリール基を表す場合
が特に好ましい。
【0102】
上記で考察した単官能性又は多官能性(メタ)アクリレートプレポリマーの中でも、非常に特に好ましい化合物は、R10が、イソボルニル、ジシクロペンテニル、ビスフェノール、又はフルオレン-9-ビスフェノールを表す場合である。
【0103】
ポリマー:ポリマーの用語は、上記で定められる。有利には、ポリマーは、アクリレートポリマー、カーボネートポリマー、スルホンポリマー、エポキシポリマー、ビニルポリマー、ウレタンポリマー、イミドポリマー、エステルポリマー、フランポリマー、メラミンポリマー、スチレンポリマー、及びシリコーンポリマー、並びに環状オレフィンコポリマーの群より選択される。
【0104】
アクリレートポリマーの用語は、上記で述べた繰り返し単位を含むか、又は上記で述べた繰り返し単位から成るポリマーに関する。
【0105】
アクリレートポリマーは、ホモポリマー及びコポリマーを含む。アクリレートコポリマーは、好ましくは、50~100重量%の、特に好ましくは、90~100重量%の式(III)に従う繰り返し単位を含む。アクリレートホモポリマーは、1つ以上の、好ましくは、1つの式(III)の繰り返し単位を含む。
【0106】
界面活性剤:広範な様々な界面活性剤が、本発明の状況で用いられてよい。適切な界面活性剤は、通常の手順の実験で決定されてよく、その選択は、主として、次の工程で用いられるポリマー及び固体材料の性質に依存する。界面活性剤は、非イオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性イオン性界面活性剤、及びアニオン性界面活性剤の種類から選択されてよい。
【0107】
1つの実施形態では、界面活性剤は、式(II)を有するアルキルエーテルの群より選択される1つ以上の化学部分を有するアニオン性、カチオン性、非イオン性、及び両性イオン性界面活性剤の群より選択され、
RO-(CO)(CO)- (II)
式中、
m及びnは、独立して、0~10であるが、m+n>2であり、及び
Rは、C1-5-アルキルを表す。
【0108】
本技術分野において、2つ以上の界面活性剤を組み合わせて、良い特性を向上させることは公知であり、界面活性剤のそのような組み合わせも、本発明の主題である。
【0109】
さらなる実施形態では、界面活性剤は、両性イオン性界面活性剤、及び非イオン性界面活性剤、好ましくは飽和又は不飽和の脂肪族アミンの混合物を含む。
【0110】
非イオン性界面活性剤としては、ポリ(無水マレイン酸-alt-1-オクタデセン)などのマレイン酸系ポリマー、ポリアミン、アルキルアミン(例:N-アルキル-1,3-プロピレン-ジアミン、N-アルキルジプロピレン-トリアミン、N-アルキルトリプロピレン-テトラミン、N-アルキルポリプロピレン-ポリアミン)、ポリ(エチレンイミン)、ポリエステル、アルキルエステル(例:セチルパルミテート)、アルキルポリグリコールエーテル(3~25個のエトキシ単位(EO)を有する脂肪族アルコールポリグリコールエーテルなど、例:Dehypon E124)、及びオキソアルコールポリグリコールエーテル)、混合アルキル/アリールポリグリコールエーテル、アルキルポリグリコシド(APG)、ステアリルアルコール(例:Lorol C18TM)などの脂肪族アルコール、N-アシルアミド(例:N-オレオイル-ガンマ-アミノ酪酸)が挙げられる。
【0111】
非イオン性界面活性剤としては、さらに、脂肪族アルコールアルコキシレート、アルコールEO/POアダクト(脂肪族アルコールEO/POアダクト、オキソアルコールEO/POアダクトを含む)、EO/POブロックコポリマー、エチレンジアミンエチレンオキシド-プロピレンオキシド(EO/PO)ブロックコポリマー、末端封止(脂肪族)アルコールEOアダクト及びEO/POアダクト(例:ブチル末端封止)、カルボン酸のエステル、特にEO/POアダクト、及びソルビタンエステル(例:SPANの群より)などのポリマーエトキシレート及び/又はプロポキシレート(EO/PO)アダクト界面活性剤が挙げられる。
【0112】
非イオン性界面活性剤としてはさらに、アルコキシシラン及びその加水分解生成物が挙げられる。
【0113】
非イオン性界面活性剤としてはさらに、アルキルホスフィン、アルキルホスフィンオキシド(例:トリオクチルホスフィンオキシド-TOPO)、及びアルキルチオールが挙げられる。
【0114】
非イオン性界面活性剤としてはさらに、脂肪酸のアルキルエステル(例:セチルパルミテート、ラウリン酸、カプリン酸)が挙げられる。
【0115】
非イオン性界面活性剤の好ましい種類は、アルキルイミン、アルキルアミンであり、例えば、ジオクチルアミン、オレイルアミン、オクタデシルアミン、ヘキサデシルアミンである。
【0116】
カチオン性界面活性剤としては、アルキルアンモニウムハライド、例えば、オレイルアンモニウムブロミド、アルキルトリメチルアンモニウムハライド、例えば、セチルトリメチルアンモニウムブロミド、ジアルキルジメチルアンモニウムハライド、例えば、ジステアリルジメチルアンモニウムクロリドなど、トリアルキルメチルアンモニウムハライド、例えば、トリオクチルメチルアンモニウムクロリド、ジ四級ポリジメチルシロキサンが挙げられる。
【0117】
両性イオン性界面活性剤は、両性界面活性剤とも称され、公知の種類の化合物である。これらは、カチオン性部分、好ましくは、アミン塩、四級アンモニウム基、スルホニウム、又はホスホニウムと、アニオン性部分、好ましくは、カルボキシレート、スルホネート、サルファイト、サルフェート、ホスフィネート、ホスホネート、ホスファイト、又はホスフェート基とから成る。両性イオン性界面活性剤は、最も好ましくは、カチオン性部分として四級アンモニウムを、アニオン性部分として、カルボキシレート、スルホネート、又はホスホネートを含む。両性イオン性界面活性剤の例としては、カプリル酸グリシネート、コカミドプロピルベタイン、及びココアンホジ酢酸二ナトリウムなどのベタイン、3-(N,N-ジメチルアルキルアンモニオ)プロパンスルホネート、アルキルホスポアザニウムウム(alkylphospoazanium)両性イオンが挙げられる。
【0118】
両性イオン性界面活性剤の具体的な群としては:
・式(V-1)に従うアンモニウムカルボキシレート、
・式(V-2)に従うアンモニウム誘導体、
・式(V-3)に従うホスホコリン、
・式(V-4)の1-アンモニウム-2-プロパノール誘導体、
・式(V-5)のアミドアルキルアンモニウムカルボキシレート、
・式(V-6)のアミドアルキルアンモニウム誘導体、及び
・式(V-7)の1-(アミドアルキル-アンモニウム)-2-ヒドロキシ-プロピル誘導体
が挙げられる。
【0119】
式(V-1)に従うアンモニウムカルボキシレート、
【0120】
【化5】
【0121】
式中:
は、H又はメチルであり、
vは、1~8であり、及び
は、置換又は無置換の炭化水素から選択される無極性テール(tail)である。
【0122】
は、好ましくは、アルキル、アルコキシ-アルキル、アリール-アルキル、アリールオキシ-アルキル、及びアルケニルの群より選択される。
【0123】
は、特に好ましくは、直鎖状又は分岐鎖状のアルキルから、より好ましくは、直鎖状又は分岐鎖状のC8-30アルキルから、最も好ましくは、C10-20アルキルから選択される。
【0124】
vは、好ましくは、1~4の整数を表す。
【0125】
(V-1)に従うアンモニウムカルボキシレートの具体的サブ群としては、RがHであり、vが1である場合のグリシネート、RがCHであり、vが1である場合のジメチルアンモニウムベタイン、及びRがHであり、vが2である場合のアンモニウムプロピオネートが挙げられる。
【0126】
式(V-2)に従うアンモニウム誘導体、
【0127】
【化6】
【0128】
式中:
、R、及びvは、式(V-1)で定める通りであり、FGは、負に帯電した官能基を表す。
【0129】
FGは、好ましくは、スルホネート(末端基-SO )、サルファイト(末端基O-SO )、サルフェート(末端基-O-SO )、ホスホネート(末端基-P(OR)O )、ホスフィネート(末端基-PR )、ホスフェート(末端基-O-P(OH)O )、及びホスファイト(末端基-O-P(H)O )から成る群より選択される。
【0130】
は、好ましくは、アルキル、アルコキシ-アルキル、アリール-アルキル-、アリールオキシ-アルキル-、及びアルケニルの群より選択される。
【0131】
は、特に好ましくは、直鎖状又は分岐鎖状のアルキルから、より好ましくは、直鎖状又は分岐鎖状のC8-30アルキルから、最も好ましくは、C10-20アルキルから選択される。
【0132】
好ましいサブ群は、式(V-2.1)に従うアンモニウムスルホネートであり、
【0133】
【化7】
【0134】
式中:
、R、及びvは、式(V-2)で定める通りである。
【0135】
式(V-2.1)に従うアンモニウムスルホネートの具体的サブ群としては、RがCHである場合のスルホベタインが挙げられる。
【0136】
さらなる好ましいサブ群は、式(V-2.2)に従うアンモニウムサルファイトであり、
【0137】
【化8】
【0138】
式中:
、R、及びvは、式(V-2)で定める通りである。
【0139】
式(V-2.2)に従うアンモニウムサルファイトの具体的サブ群としては、RがCHである場合のサルファイトベタインが挙げられる。
【0140】
さらなる好ましいサブ群は、式(V-2.3)に従うアンモニウムサルフェートであり、
【0141】
【化9】
【0142】
式中:
、R、及びvは、式(V-2)で定める通りである。
【0143】
式(V-2.3)のアンモニウムサルフェートの具体的サブ群としては、R=CHである場合のサルフェートベタインが挙げられる。
【0144】
さらなる好ましいサブ群は、式(V-2.4)に従うアンモニウムホスホネートであり、
【0145】
【化10】
【0146】
式中:
、R、R、及びvは、式(V-2)で定める通りであり、及び。
【0147】
式(V-2.4)に従うアンモニウムホスホネートの具体的サブ群としては、RがCHである場合のホスホネートベタインが挙げられる。
【0148】
さらなる好ましいサブ群は、式(V-2.5)に従うアンモニウムホスフィネートであり、
【0149】
【化11】
【0150】
式中:
、R、R、及びvは、式(V-2)で定める通りである。
【0151】
式(V-2.5)に従うアンモニウムホスフィネートの具体的サブ群としては、R=CHである場合のホスフィネートベタインが挙げられる。
【0152】
さらなる好ましいサブ群は、式(V-2.6)に従うアンモニウムホスフェートであり、
【0153】
【化12】
【0154】
式中:
、R、及びvは、式(V-2)で定める通りである。
【0155】
式(V-2.6)に従うアンモニウムホスフェートの具体的サブ群としては、R=CHである場合のホスフェートベタインが挙げられる。
【0156】
さらなる好ましいサブ群は、式(V-2.7)に従うアンモニウムホスファイトであり、
【0157】
【化13】
【0158】
式中:
、R、及びvは、式(V-2)で定める通りである。
【0159】
式(V-2.7)に従うアンモニウムホスファイトの具体的サブ群としては、R=CHである場合のホスファイトベタインが挙げられる。
【0160】
式(V-3)に従うホスホコリン誘導体、
【0161】
【化14】
【0162】
式中:
vは、1~8、好ましくは、1~4、特に好ましくは、2であり、
は、式(V-1)で定める通りであり、
は、水素又はメチルであり、及び
は、置換又は無置換の炭化水素から選択される無極性テールである。
【0163】
は、好ましくは、アルキル、アルコキシ-アルキル、アリール-アルキル-、アリールオキシ-アルキル-、及びアルケニルの群より選択される。
【0164】
は、特に好ましくは、直鎖状又は分岐鎖状のアルキルから、より好ましくは、直鎖状又は分岐鎖状のC8-30アルキルから、最も好ましくは、C10-20アルキルから選択される。
【0165】
式(V-3)に従うホスホコリンの具体的サブ群としては、R及びRがCHである場合のホスファイトベタインが挙げられる。具体例は、ミルテホシンである。
【0166】
式(V-4)の1-アンモニウム-2-プロパノール誘導体、
【0167】
【化15】
【0168】
式中:
及びRは、式(V-1)で定める通りであり、並びに
FGは、負に帯電した官能基を表す。
【0169】
FGは、好ましくは、スルホネート(末端基-SO )、サルファイト(末端基O-SO )、サルフェート(末端基-O-SO )、ホスホネート(末端基-P(OR)O )、ホスフィネート(末端基-PR )、ホスフェート(末端基-O-P(OH)O )、及びホスファイト(末端基-O-P(H)O )から成る群より選択され、Rは、上記で定められる。
【0170】
FGは、特に好ましくは、スルホネートを表す。式(V-4)の化合物の具体的サブ群としては、R及びRがCHであり、FGが-SO である場合のヒドロキシルスルホベタインが挙げられる。
【0171】
式(V-5)のアミドアルキルアンモニウムカルボキシレート、
【0172】
【化16】
【0173】
式中:
、R、及びvは、式(V-1)で定める通りであり、並びに
wは、2~5、好ましくは2である。
【0174】
式(V-6)のアミドアルキルアンモニウム誘導体、
【0175】
【化17】
【0176】
式中:
、R、及びvは、式(V-1)で定める通りであり、
wは、2~5、好ましくは2であり、並びに
FGは、負に帯電した官能基を表す。
【0177】
FGは、好ましくは、スルホネート(末端基-SO )、サルファイト(末端基O-SO )、及びサルフェート(末端基-O-SO )、ホスホネート(末端基-P(OR)O )、ホスフィネート(末端基-PR )、ホスフェート(末端基-O-P(OH)O )、及びホスファイト(末端基-O-P(H)O )を表し、Rは、上記で定められる。
【0178】
FGは、特に好ましくは、スルホネートを表す。アミドアルキルアンモニウムスルホネートの具体的サブ群としては、RがCHであり、FGが-SO である場合のアミドアルキルスルホベタインが挙げられる。
【0179】
式(V-7)に従う1-(アミドアルキル-アンモニウム)-2-ヒドロキシ-プロピル誘導体、
【0180】
【化18】
【0181】
式中:
及びRは、式(V-1)で定める通りであり、並びに
FGは、負に帯電した官能基を表す。
【0182】
FGは、特に好ましくは、スルホネートを表す。アミドアルキルヒドロキシアンモニウムスルホネートの具体的サブ群としては、RがCHであり、FGが-SO である場合のアミドアルキルヒドロキシルスルホベタインが挙げられる。
【0183】
イミダゾリン誘導両性界面活性剤:この群は、アンホアセテート(amphoacetates)(モノ又はジアセテート)及びアンホプロピオネート(amphopropionates)を含む。
【0184】
アニオン性界面活性剤としては、サルフェート、スルホネート、ホスフェート、及びカルボキシレートが挙げられる。具体例としては、アルキルエーテルのホスフェートエステル、アンモニウムラウリルサルフェート、アルカリラウリルサルフェート、及び関連するアルキル-エーテルサルフェート、例えば、アルカリラウレスサルフェートが挙げられる。
【0185】
アニオン性界面活性剤の好ましい種類は、オレイン酸、ステアリン酸、パルミチン酸などの脂肪酸の種類からのカルボキシレートである。
【0186】
好ましい実施形態では、界面活性剤は、以下のリストから選択される:SP 13300、SP 20000、SP 24000SC、SP 41000、SP540、BYK9077、Hypermer KD1-SO-(AP)、Span65、Span80、Span85、メトキシ-エトキシ-エトキシ-酢酸、オレイルアミン、オレイン酸、ステアリン酸、ポリ(無水マレイン酸-alt-1-オクタデセン)、オレイルアンモニウムブロミド、3-(N,N-ジメチル-オクタデシル-アンモニオ)プロパンスルホネート、ミルテホシン、及びTOPO。
【0187】
さらなる実施形態では、界面活性剤は、4~30個、好ましくは、6~24個、最も好ましくは、8~20個の炭素原子を有するアルキル又はアルキル-エーテル鎖の群より選択される無極性末端基を含むアニオン性、カチオン性、非イオン性、及び両性イオン性界面活性剤の群より選択される。
【0188】
さらなる実施形態では、アニオン性界面活性剤は、式(II)に従うポリエーテルテールを含むモノカルボン酸から選択され、
R(OC2nOCHC(O)OH (II-1)
式中、Rは、C1-5-アルキルであり、qは、0から5の整数であり、nは、1から3の整数である。この種類の5つの特に好ましい化合物は:
【0189】
【化19】
【0190】
であり、式中、qは、0~4である。これは、式(II)の化合物に相当し、式中、R=メチル、n=2、及びqは、0~4の整数である。この種類の特に好ましい化合物は、式(II-1b)の化合物である。
【0191】
【化20】
【0192】
分散プロセス:適切な分散プロセスは、本分野で公知であり、ミリングボールを含む分散方法、超音波処理による分散プロセス、高せん断混合による分散、及び高圧力分散が挙げられる。
【0193】
ボールミリング:好ましい実施形態では、分散方法はボールミリングであり、好ましくは攪拌ボールミル(agitator ball mill)を用いたボールミリングである。好ましい実施形態では、ボールサイズは、5mm未満であり、好ましくは、500ミクロン(μm)未満である。さらなる実施形態では、分散方法は、10~1000μm、好ましくは、20~500μmのボールサイズによるボールミリングである。さらなる実施形態では、分散方法は、懸濁液の単位重量あたり、少なくとも10W/kg、好ましくは、100W/kg、最も好ましくは、1000W/kgの比エネルギー入力(specific power input)によるボールミリングである。1つのさらなる実施形態では、分散プロセスの間の懸濁液温度は、140℃未満、好ましくは、120℃未満、最も好ましくは、70℃未満である。驚くべきことに、攪拌ミリングボールを用いることにより、上記で定める固体材料を、非常に優れた光学特性を有するLC/QD(高い量子収率、小さいFWHM)に変換することができ、非常に優れた特性を有するLC/QDが、低い反応温度で提供されることが見出された。このことは、公知の方法と比較した場合に顕著な利点であると考えられる。
【0194】
超音波処理:さらなる好ましい実施形態では、分散方法は超音波処理を含み、これは超音波ホーンを用いることが好ましい。特に好ましくは、分散方法は、10~100kHz、好ましくは、20~30kHzでの超音波処理である。さらなる実施形態では、分散方法は、懸濁液の単位重量あたり、少なくとも10W/kg、好ましくは、100W/kg、最も好ましくは、1000W/kgの比エネルギー入力による超音波処理である。1つのさらなる実施形態では、超音波処理の間の懸濁液温度は、140℃未満、好ましくは、120℃未満、最も好ましくは、70℃未満である。驚くべきことに、超音波処理を用いることにより、上記で定める固体材料を、非常に優れた光学特性を有するLC/QD(高い量子収率、小さいFWHM)に変換することができ、非常に優れた特性を有するLC/QDが、低い反応温度で提供されることが見出された。このことは、公知の方法と比較した場合に顕著な利点であると考えられる。
【0195】
高せん断混合:さらなる好ましい実施形態では、分散方法は、例えばステーター/ローター構成によって得られる高せん断混合を含む。特に好ましくは、分散方法は、20000~100000 1/秒、好ましくは、50000~100000 1/秒のせん断速度での高せん断混合である。1つのさらなる実施形態では、高せん断混合の間の懸濁液温度は、140℃未満、好ましくは、120℃未満、最も好ましくは、70℃未満である。このことは、公知の方法と比較した場合に顕著な利点であると考えられる。
【0196】
高圧力分散:さらなる好ましい実施形態では、分散方法は、高圧力ホモジナイゼーションとも称される高圧力分散を含み、この場合、衝撃力、せん断力、及びキャビティが、分散の推進力として作用する。特に好ましくは、分散方法は、150~400MPa、好ましくは、200~400MPaの圧力による高圧力分散である。1つのさらなる実施形態では、高圧力分散の間の懸濁液温度は、140℃未満、好ましくは、120℃未満、最も好ましくは、70℃未満である。このことは、公知の方法と比較した場合に顕著な利点であると考えられる。
【0197】
工程(b)で提供される固体材料の濃度は、広い範囲にわたって様々であってよいが、典型的には、100ppm以上である。本発明の方法のさらなる実施形態では、固体材料:液体材料(溶媒+界面活性剤+プレポリマー(存在する場合)+ポリマー(存在する場合))の重量比は、0.0001~0.5、好ましくは、0.0001~0.3、最も好ましくは、0.0001~0.1の範囲内である。
【0198】
工程(b)で提供される界面活性剤の濃度は、その性質に応じて、広い範囲にわたって様々であってよい。本発明の方法のさらなる実施形態では、界面活性剤:固体材料の重量比は、100~0.01、好ましくは、50~0.015、最も好ましくは、3~0.02の範囲内である。
【0199】
工程(c):さらなる実施形態では、合成されたままの状態のLC/QDは、以下の工程(c-1)、(c-2)、(c-3)、及び(c-4)で概説されるものなどの後処理を受けてもよい。
【0200】
そのような後処理の1つの実施形態では、合成されたLC/QDのハライド原子Xは、アニオン交換によって、完全に又は部分的に他のハライド原子で置き換えられてもよい。特に、CsI、RbI、NaI、KI、LiIなどのアルカリハライド、及びPbIなどの鉛ハライド、及びFAIなどの有機ハライドが、アニオン交換(c-1)のために用いられてよい。これによって、発光ピークの微調整が可能となる。
【0201】
そのような後処理のさらなる実施形態では、2種類以上の式(I)の発光性結晶が混合される。異なる種類の発光性結晶を、例えばそのようなLCを含む2つの懸濁液を1つにまとめることによって混合することにより、組成物の発光ピークが調整される(c-4)。
【0202】
さらなる実施形態では、本発明の組成物は、合成された組成物の透析ろ過によって、過剰の界面活性剤から精製されてよい(c-2)。
【0203】
さらなる実施形態では、本発明の組成物のLC/QD固形分は、合成された組成物の透析ろ過又は溶媒蒸発によって高められてよい(c-3)。
【0204】
第二の態様では、本発明は、「インク」とも称される懸濁液の形態の組成物、及びその使用に関する。本発明のこの態様について、以下でさらに詳細に説明する。
【0205】
したがって、本発明はまた、(i)本明細書に記載された式(I)の発光性結晶;(ii)本明細書で記載された界面活性剤であるが、ただしオクチルアンモニウムブロミド、オレイン酸は除く、界面活性剤;及び(iii)任意選択で含まれていてよい本明細書で記載された溶媒;及び(iv)任意選択で含まれていてよい本明細書で記載されたポリマー又はプレポリマー、を含む懸濁液の形態の組成物も提供する。そのような組成物は、新規であり、本発明の第一の態様で述べるように、本発明の方法によって得ることができる。
【0206】
1つの実施形態では、本発明は、量子収率が>20%、好ましくは、>50%、最も好ましくは、>70%である懸濁液を提供する。
【0207】
さらなる実施形態では、本発明は、可視発光に対するLC/QDのFWHMが、<50nm、好ましくは、<40nm、最も好ましくは、<30nmである懸濁液を提供する。
【0208】
さらなる実施形態では、本発明は、480~550nm又は600~680nmに発光ピークを有するLC/QDのFWHMが、<50nm、好ましくは、<40nm、最も好ましくは、<30nmである懸濁液を提供する。
【0209】
さらなる実施形態では、本発明は、480~550nmに発光ピークを有するLC/QDのFWHMが、<40nm、好ましくは、<30nm、最も好ましくは、<20nmである懸濁液を提供する。
【0210】
本発明のインク中の成分(i)、(ii)、(iii)、及び(iv)の量は、広い範囲にわたって様々であってよく、とりわけ、その意図する用途及び界面活性剤の性質に依存する。典型的には、LC/QDの量は、100ppm以上である。
【0211】
1つの実施形態では、発光性結晶(i):液体材料(ii)+(iii)+(iv)の重量比は、0.0001~0.5、好ましくは、0.0001~0.3、最も好ましくは、0.0001~0.1の範囲内である。
【0212】
1つのさらなる実施形態では、界面活性剤(ii):発光性結晶(i)の重量比は、100~0.01、好ましくは50~0.015、最も好ましくは、3~0.02の範囲内である。
【0213】
1つのさらなる実施形態では、ポリマー又はプレポリマーの濃度は、組成物全体の0.1~30重量%、好ましくは、0.5~20重量%、最も好ましくは、1~10重量%の範囲内である。
【0214】
上記で概説したように、成分(i)及び(ii)は、必須であり、一方成分(iii)及び(iv)は、必須ではない。したがって、本発明は、以下を含有する(すなわち、以下を含む又は以下から成る)インクに関する:
・成分(i)と液体である(ii)、(iii)及び(iv)は存在しない;
・成分(i)と(ii)と(iii)、(iv)は存在しない;
・成分(i)と(ii)と(iv)、(iii)は存在しない(無溶媒インク);
・成分(i)と(ii)と(iii)と(iv)
・成分(i)と液体(ii)、(iii)及び(iv)は存在しない(濃縮物)。
【0215】
1つのさらなる実施形態では、組成物は、成分(i)、(ii)、(iii)、及び(iv)を含み、ここで、成分(ii)は、芳香族炭化水素、好ましくは、トルエン、又はシクロアルカン、好ましくは、シクロヘキサンを含み、成分(iv)は、環状オレフィンコポリマーを含む。
【0216】
1つのさらなる実施形態では、組成物は、成分(i)、(ii)、(iii)、及び(iv)を含み、ここで、成分(ii)は、直鎖状アルカン及び/又は芳香族炭化水素及び/又はシクロアルカンを含み、成分(iv)は、スチレンコポリマー及び/又はスチレンブロックコポリマーを含む。
【0217】
好ましい実施形態では、組成物は、FAPbの群より選択される式(I)の発光性結晶を含む。この実施形態では、界面活性剤(ii)は、好ましくは、両性イオン性界面活性剤を含み、及び/又はポリマー/プレポリマー(iv)は、アクリレートの群より選択される。
【0218】
無溶媒インク:本発明は、成分(i)、(ii)、及び(iv)を含むが、溶媒(iii)を含まないか、又は本質的に含まない本明細書で述べる懸濁液の形態の組成物を提供する。この実施形態では、LC/QD(i):液体材料(プレポリマー(iv)+界面活性剤(ii))の重量比は、0.0001~0.2、好ましくは、0.0001~0.1、最も好ましくは、0.0001~0.01の範囲内である。そのような組成物は、無溶媒インクと称される場合があり、以下で考察するコンポーネント又はデバイスの製造業者にそれを供給するのに特に適している。
【0219】
無溶媒インクに特に適しているプレポリマーとしては、アクリレート、エポキシ、ウレタン、シリコーン、スチレンが挙げられる。ここでも、プレポリマーの用語は、モノマー、及びそのオリゴマーを含む。好ましくは、無溶媒インクは、アクリレートを含む。
【0220】
インクは、含有する溶媒が10重量%未満、好ましくは、含有する溶媒が1重量%未満である場合、無溶媒と見なされる。
【0221】
さらなる実施形態では、無溶媒インクは、さらに、ラジカル光開始剤又は感温性ラジカル開始剤などの重合開始剤を含む。
【0222】
濃縮物:本発明は、溶媒(iii)を含まないか、又は本質的に含まず、プレポリマー(iv)を含まないか、又は本質的に含まず、及び界面活性剤(ii)が液体界面活性剤である本明細書で述べる懸濁液の形態の組成物を提供する。この実施形態では、界面活性剤(ii):LC/QD(i)の重量比は、好ましくは、100~0.01、好ましくは、50~0.015、最も好ましくは、3~0.02の範囲内である。
【0223】
本明細書で述べるインクには、多くの用途が見出され、特に、それらは、特に発光ダイオード(LED)の使用と合わせて、青色光を白色光に変換するのに有用である。
【0224】
第三の態様では、本発明は、固体ポリマー組成物及びその使用に関する。固体ポリマー組成物の用語は、本明細書で述べるLC/QDを含む有機又は無機ポリマーマトリックスを示す。本発明のこの態様について、以下でさらに詳細に説明する。
【0225】
1つの実施形態では、本発明は、(i)本明細書で述べるLC/QD、(ii)本明細書で述べる界面活性剤、及び(iii)固化/硬化されたポリマーであって有機ポリマーから選択されることが好ましいポリマー、を含む固体ポリマー組成物を提供する。
【0226】
さらなる実施形態では、有機ポリマーは、好ましくは、アクリレートポリマー、カーボネートポリマー、スルホンポリマー、エポキシポリマー、ビニルポリマー、ウレタンポリマー、イミドポリマー、エステルポリマー、フランポリマー、メラミンポリマー、スチレンポリマー、及びシリコーンポリマーのリストから選択される。したがって、前記ポリマーは、好ましくは、本明細書で述べるプレポリマーの繰り返し単位を含有する。さらに、ポリマーは、直鎖状であっても、又は架橋されていてもよい。
【0227】
さらなる実施形態では、有機ポリマーは、好ましくは、アクリレートポリマー、エポキシポリマー、ウレタンポリマー、スチレンポリマー、シリコーンポリマー、及び環状オレフィンコポリマーのリストから選択される。したがって、前記ポリマーは、好ましくは、本明細書で述べるプレポリマーの繰り返し単位を含有する。さらに、ポリマーは、直鎖状であっても、又は架橋されていてもよい。
【0228】
1つの実施形態では、有機ポリマーは、スチレンコポリマー及び/又はスチレンブロックコポリマー、好ましくは、スチレン及びイソプレンのブロックコポリマー、並びにスチレン、エチレン、及びブテンのブロックコポリマーを含む。
【0229】
本発明の固体ポリマー組成物中のLC/QDの量は、広い範囲にわたって様々であってよいが、典型的には、10ppm以上である。1つの実施形態では、前記固体ポリマー組成物中のLC/QD:マトリックス(ポリマー+界面活性剤)の重量比は、0.00001~0.2、好ましくは、0.00005~0.15、最も好ましくは、0.0001~0.1の範囲内である。1つの実施形態では、本発明の固体ポリマー組成物は、顆粒の形態で存在し、前記顆粒は、好ましくは、1~10重量%の本明細書で述べるLC/QDを含む。1つのさらなる実施形態では、本発明の固体ポリマー組成物は、膜の形態で存在し、前記膜は、好ましくは、0.01~0.5重量%の本明細書で述べるLC/QDを含む。
【0230】
1つの実施形態では、前記固体ポリマー組成物中の界面活性剤:LC/QDの重量比は、100~0.01、好ましくは、50~0.015、最も好ましくは、3~0.02の範囲内である。
【0231】
さらなる実施形態では、本発明の固体ポリマー組成物の量子収率は、>20%、好ましくは、>50%、最も好ましくは、>70%である。
【0232】
さらなる実施形態では、本発明の固体ポリマー組成物の可視発光に対するFWHMは、<50nm、好ましくは、<40nm、最も好ましくは、<30nmである。
【0233】
第四の態様では、本発明は、1つ以上の層でコーティングされたシート状基材を含むコンポーネント(中間製品とも称される)に関し、ここで、前記層の少なくとも1つは、機能性層であり、ここで、前記機能性層は、本明細書で述べる固体ポリマー組成物を含む。本発明のこの態様について、以下でさらに詳細に説明する。
【0234】
有利な実施形態では、機能性層は、青色光を白色光に変換する。本発明は、したがって、特に、発光ダイオード(LED)の使用と合わせた、又は液晶ディスプレイにおける、青色光を白色光に変換するための固体ポリマー組成物の使用を提供する。
【0235】
第五の態様では、本発明は、本明細書で述べる固体ポリマー組成物を含む新規なデバイス/物品に関する。本発明のこの態様について、以下でさらに詳細に説明する。
【0236】
1つの実施形態では、本発明は、電子デバイス及び光学デバイスの群より選択されるデバイスを提供し、ここで、前記デバイスは、基材、及び本明細書で述べる機能性層(本発明の第四の態様)を含む。そのようなデバイスは、ディスプレイ、携帯用デバイス、発光デバイス、及びソーラーセルから成る群より選択されてよく、特に、デバイスは、液晶ディスプレイ(LCD)又は量子ドットLED(QLED)である。
【0237】
1つの実施形態では、本発明は、基材、及びコーティング、特に装飾コーティングを含む物品を提供し、前記コーティングは、本明細書で述べる式(I)のLC/QD、及び本明細書で述べる界面活性剤を含む。
【0238】
第六の態様では、本発明は、本明細書で述べるポリマー組成物の製造方法に関する。この方法は、1つの、又は唯一の出発材料として、本明細書で述べるインク(第二の態様)を用いることによる以外は、本技術分野で公知の工程を含む。
【0239】
第七の態様では、本発明は、本明細書で述べるコンポーネント/中間製品の製造方法に関する。本発明のこの態様について、以下でさらに詳細に説明する。
【0240】
本発明に従うコンポーネント/中間製品は、溶液プロセスによって得られてよい。これは、大面積及び連続加工に適用可能である単純な技術によってすべての層の製造が可能となることから、顕著な利点であると考えられる。したがって、本発明は、本明細書で述べるコンポーネントの製造方法も提供し、前記方法は、(e)基材を提供する工程、並びに(f)好ましくは本明細書で述べるインクのコーティング又は印刷、それに続く乾燥及び/又は硬化によって、本明細書で述べる固体ポリマー組成物を前記基材上に堆積させる工程を含む。
【0241】
第八の態様では、本発明は、本明細書で述べる電子デバイスの製造方法に関する。本発明のこの態様について、以下でさらに詳細に説明する。
【0242】
上述したコンポーネントから開始するデバイスの製造自体は公知であるが、本発明の特定のコンポーネントに適用することはまだ行われていない。
【0243】
本発明をさらに説明するために、以下の例が提供される。これらの例は、本発明の範囲を限定する意図で提供されるものではない。特に断りのない限り、化学薬品は、すべてAldrichから購入した。
【実施例
【0244】
例1:析出法によって得られる固体材料からの合成(溶液からの固体材料)
工程(a):PbBr及びFABrを、N,N-ジメチルホルムアミジニウム(DMF、>99.8%、puriss.、Sigma Aldrich):ガンマ-ブチロラクトン(GBL、>99% Sigma Aldrich)の体積比1:1混合物中に溶解することによって、ホルムアミジニウム三臭化鉛(FAPbBr)を合成した。すなわち、4mmolのPbBr(1.468g、98+% Alfa Aesar)及び4mmolのFABr(0.500g、Dyesol)を、4mlのDMF/GBL中に、激しく撹拌しながら25℃で溶解した。この溶液を80℃に24時間加熱することによって、約1~5mmのサイズの橙色のFAPBBr結晶子が成長した。これらをさらにろ過し、室温でさらに24時間真空乾燥した。結晶相(立方晶)及び組成は、XRD(図2、上部のスペクトル)によって確認した。この材料は、まったく発光を示さない。
【0245】
工程(b):乾燥したFAPbBr結晶子を、乳棒とすり鉢で粉砕して粉末とし、オレイルアミン(80~90%、Acros)(FAPbBr:オレイルアミン=2:1)及びトルエン(>99.7%、Fluka)に添加した。FAPbBrの最終濃度は、1重量%であった。次に、この混合物を、50ミクロン(μm)サイズのイットリウム安定化ジルコニアビーズを用いたボールミリングによって、周囲条件下で1時間にわたって分散させ、緑色発光のインクを得た。
【0246】
分析:インクの得られた光学特性を、10mmの石英セル(3μlのインクを3mlのトルエンで希釈)中、積分球を備えた分光蛍光計(Quantaurus Absolute PL量子収率測定システムC1134711、浜松ホトニクス)を用いて測定した。上記のインクのフォトルミネッセンス量子収率は、83%であり、発光ピークの中心は511nmであった。発光のFWHMは、29nmとして特定された。
【0247】
インクのTEM分析により(図3)、立方体形状の粒子が非常に狭い粒子サイズ分布で存在することが示された。
【0248】
結論:この例は、本発明の方法の有効性を示している。
【0249】
例2:乾式ミリング法によって得られる固体材料からの合成
工程(a):PbBr及びFABrをミリングすることによって、ホルムアミジニウム三臭化鉛(FAPbBr)を合成した。すなわち、16mmolのPbBr(5.87g、98% ABCR)及び16mmolのFABr(2.00g、Dyesol)を、イットリウム安定化ジルコニアビーズ(5mm径)を用いて6時間ミリングすることにより、純粋な立方晶FAPbBrが得られ、XRD(図2、下部のスペクトル)によって確認した。この材料は、まったく発光を示さなかった。流体力学的粒子サイズ分布(体積加重)は、12mgの粉末を10mlのS20粘度オイル標準(psl rheotek)と混合し、2mmのポリアミドセルを用いる遠心沈降法(LUMiSizer、LUM GmbH)によって得た。その結果、平均粒子サイズ(D50)は、7ミクロン(μm)であり、サイズ範囲(D10~D90)は、1~12ミクロン(μm)であった。
【0250】
工程(b):橙色のFAPbBr粉末を、オレイン酸(90%、Sigma Aldrich)、オレイルアミン(80~90、Acros)(FAPbBr:オレイン酸:オレイルアミン=2:1:1)、及びシクロヘキサン(>99.5%、puriss、Sigma Aldrich)に添加した。FAPbBrの最終濃度は、1重量%であった。次に、この混合物を、200ミクロン(μm)サイズのイットリウム安定化ジルコニアビーズを用いたボールミリングによって、周囲条件下で1時間にわたって分散させ、緑色発光のインクを得た。
【0251】
分析:インクの発光特性を、例1に示すようにして記録した。上記のインクのフォトルミネッセンス量子収率(PLQY)は、97%であり、発光ピークの中心は522nmであった(=ピーク位置、PP)。発光のFWHMは、42nmとして特定された。
【0252】
膜形成:次に、この緑色発光インクを、トルエン中10%の環状オレフィンコポリマー(COC、TOPAS Advanced Polymers)溶液と混合し、ガラス基材上にコーティングし、60℃で15分間乾燥させた。乾燥後、膜の得られた光学特性を、積分球を備えた分光蛍光計(Quantaurus Absolute PL量子収率測定システムC1134711、浜松ホトニクス)を用いて測定した。
【0253】
分析:膜のフォトルミネッセンス量子収率は、90%であり、発光ピークの中心は528nmであった。発光のFWHMは、30nmとして特定された。得られた膜を、温度を上昇させた乾燥オーブン(80℃、周囲湿度)を用いた2時間の劣化試験に掛けた。劣化試験後の膜のフォトルミネッセンス量子収率は、79%であり、発光ピークの中心は527nmであった。FWHMは、30nmとして特定された。
【0254】
結論:この例は、乾式ミリングから得られた固体材料を用いた本発明の方法の有効性、及び本発明で述べる固体ポリマー組成物の作製及び劣化安定性を示している。
【0255】
例3~8:別の選択肢としての界面活性剤及び溶媒を用いた合成
工程(a):ホルムアミジニウム三臭化鉛(FAPbBr)を、例2に記載の通りに合成した。
【0256】
工程(b):以下のさらなる例は、すべて、類似のプロセスパラメーターを用いたボールミリングによって行った(LC/QD:全界面活性剤比=2:1、ミリングビーズサイズ=200ミクロン(μm)、ミリング時間=60分間、インク中のLC/QD濃度=1%、光学特性決定用には、0.45um PTFEシリンジフィルターによってろ過、光学特性決定は、例1と同一とした)。
【0257】
【表1】
【0258】
結論:これらの例は、異なる界面活性剤の種類及び溶媒を用いた本発明の方法の有効性を示している。
【0259】
例9:2つの異なる前駆体の混合物から構成される固体材料からの合成
工程(a):市販のFABr(Dyesol)及びPbBr(98%、ABCR)の粉末を、等モル比で混合し、FAPbBrの正味の化学量論組成とした。
【0260】
工程(b):この塩混合物を、オレイルアミン(80~90%、Acros)及びオレイン酸(90%、Sigma Aldrich)(FAPbBr:オレイルアミン:オレイン酸:=2:1:1)、及びシクロヘキサン(>99.5%、puriss、Sigma Aldrich)に添加した。FAPbBrの最終濃度は、1重量%であった。次に、この混合物を、200ミクロン(μm)サイズのイットリウム安定化ジルコニアビーズを用いたボールミリングによって、周囲条件下で60分間にわたって分散させ、緑色発光のインクを得た。
【0261】
分析:インクの発光特性を、例1に示すようにして記録した。上記のインクのフォトルミネッセンス量子収率は、48%であり、発光ピークの中心は503nmであった。発光のFWHMは、37nmとして特定された。
【0262】
結論:この例は、本発明で述べるin situ形成を用いた本発明の方法の有効性を示している。
【0263】
例10:有機、無機、及び有機-無機LCの熱安定性比較
合成:以下の組成の材料を、例2で述べたものと同じ乾式ミリング法によって得た:CsPbBr、Cs0.85FA0.15PbBr、Cs0.5FA0.5PbBr、Cs0.15FA0.85PbBr。発光インク及び膜を、例2で述べた手順と同様にして作製した。
【0264】
分析:XRDでは、固体材料(乾式ミリングした出発材料)CsBr、FABr、又はPbBrのいずれのピークも見られず、結晶格子中に混合されたカチオンの単一相が形成されたことが裏付けられた。
【0265】
遠心沈降法(LUMiSizer、LUM GmbH)により、すべての材料について、類似する流体力学的サイズ分布が示され、0.8~2ミクロン(μm)のD10、1~12ミクロン(μm)のD50、及び4~35ミクロン(μm)のD90であった。
【0266】
FAPbBr図4)、Cs0.85FA0.15PbBr図5)、及びCs0.5FA0.5PbBr図6)からのインクのTEM画像は、LCのサイズが5~50nmの範囲であることを示している。
【0267】
表2は、得られた初期のインク及び膜の光学特性を示す。表3は、80℃及び周囲湿度(すなわち、およそ5%の相対湿度)で2時間の劣化試験後、並びに60℃、相対湿度90%で2時間の劣化試験後の膜の特性を示す。
【0268】
【表2】

測定結果は、インクの希釈効果のために、偏りが存在する可能性がある。
【0269】
【表3】
【0270】
結果:これらのデータは、インク及び膜の両方において高いPLQYを明らかに示している。膜の場合、この高いPLQYは、過酷な条件下でのストレス試験後であっても維持されている。
【0271】
例11:乾式ミリング法によって得られた固体材料からの赤色発光LCの合成
工程(a):市販のホルムアミジニウムヨージド(>99%、Dyesol)及びPbI(98.5%、Alfa Aesar)を、等モル比で混合し、FAPbIの正味の化学量論組成とした。この粉末混合物を、5ミリメートルのサイズのイットリウム安定化ジルコニアビーズを用い、周囲条件下で400分間にわたって乾式ミリングし、続いて80℃で乾燥した。
【0272】
工程(b):この塩混合物を、シクロヘキサン(≧99%、Sigma Aldrich)中のオレイルアミン(80~90%、Acros Organics)及びオレイン酸(90%、Sigma Aldrich)(CsPbBr:オレイルアミン:オレイン酸:=2:1:1)に添加した。FAPbIの最終濃度は、1重量%であった。次に、この混合物を、200ミクロン(μm)サイズのイットリウム安定化ジルコニアビーズを用いたボールミリングによって、周囲条件下で60分間にわたって分散させ、赤色発光のインクを得た。膜サンプルを、例2の手順と同様にして作製した。
【0273】
分析:上記のポリマー膜のフォトルミネッセンス量子収率は、71%であり、発光ピークの中心は758nmであった。発光のFWHMは、89nmとして特定された。
【0274】
結論:この結果は、FAPbIから構成される赤色発光LCを本発明の方法で得ることができることを明らかに示している。
【0275】
例12:緑色発光LCの合成、並びにそのプレポリマー/ポリマー含有懸濁液及び固体ポリマー組成物への転換
工程(a):例2で述べるようにしてFAPbBrを得た。
【0276】
工程(b):橙色のFAPbBr粉末を、(ラウリルジメチルアンモニオ)アセテート(>95%、Sigma Aldrich)、オレイルアミン(80~90%、Acros)(FAPbBr:(ラウリルジメチルアンモニオ)アセテート:オレイルアミン=1:0.1:0.3)、及びトルエン(>99.7%、Fluka)に添加した。FAPbBrの最終濃度は、1重量%であった。次に、この混合物を、200ミクロン(μm)サイズのイットリウム安定化ジルコニアビーズを用いたボールミリングによって、周囲条件下で1時間にわたって分散させ、緑色発光のインクを得た。
【0277】
分析:インクの発光特性を、例1に示すようにして記録した。上記のインクのフォトルミネッセンス量子収率(PLQY)は、88%であり、発光ピークの中心は528nmであった(=ピーク位置、PP)。発光のFWHMは、24nmとして特定された。
【0278】
膜形成:次に、この緑色発光インクを、異なるポリマー/プレポリマーと混合した。アクリレートの場合、1重量%のIrgacure 184を開始剤としてアクリレートと混合した。トルエンを、アクリレート/インク混合物から室温で真空蒸発させ(10-2mbar)、この混合物を、2つのガラス基材の間に100μmの厚さでコーティングし、UVで硬化した(Hoenle UVAcube 100、石英フィルター付きHgランプ、1分間)。環状オレフィンコポリマー、ポリカーボネート(Makrolon OD2015)、及びポリスチレン(Mw=35000、Sigma Aldrich)の場合、例2と同様にして膜を得た。
【0279】
分析:表4は、積分球を備えた分光蛍光計(Quantaurus Absolute PL量子収率測定システムC1134711、浜松ホトニクス)を用いて測定した膜の光学特性を示す。
【0280】
【表4】

:Sartomer SR506D:Sartomer SR595(95重量%:5重量%);**:Makrolon OD2015
【0281】
結論:この例は、異なるポリマーを用いた懸濁液及び固体ポリマー組成物の作製において、本発明の方法の有効性を示している。
【0282】
例13:超音波処理による懸濁液の合成
工程(a):例2で述べるようにしてFAPbBrを得た。
【0283】
工程(b):橙色のFAPbBr粉末を、(ラウリルジメチルアンモニオ)アセテート(>95%、Sigma Aldrich)、オレイルアミン(80~90%、Acros)(FAPbBr:(N,N-ジメチル-オクタデシルアンモニオ)プロパンスルホネート:オレイルアミン=3:0.1:0.2)、及びトルエン(>99.7%、Fluka)に添加した。次に、この混合物の10gを、50%振幅の50W超音波発生器及び5mm径の超音波ホーン(Dr.Hilscher、UP50H)を用いた超音波処理によって分散させた。処理時間は30分間とし、温度は72℃であった。この手順により、緑色発光のインクを得た。
【0284】
分析:インクの発光特性を、例1に示すようにして記録した。上記のインクのフォトルミネッセンス量子収率(PLQY)は、53%であり、発光ピークの中心は528nmであった(=ピーク位置、PP)。発光のFWHMは、30nmとして特定された。
以下に、本開示に関連する発明の実施形態について例示する。
[実施形態1]
3~500nmのサイズの発光性結晶の製造方法であって;
前記発光性結晶は、式(I)の化合物から選択され、
[M (I)、
式中:
は、アンモニウム、ホルムアミジニウム、グアニジニウム、イミダゾリウム、ピリジニウム、ピロリジニウム、プロトン化チオウレアから成る群より選択される1つ以上の有機カチオンを表し、
は、Cs、Rb、K,Na、Liから選択される1つ以上のアルカリ金属を表し、
は、Ge、Sn、Pb、Sb、及びBiから成る群より選択される1つ以上の金属を表し、
Xは、クロリド、ブロミド、ヨージド、シアニド、チオシアネート、イソチオシアネート、及びスルフィドから成る群より選択される1つ以上のアニオンを表し、
aは、1~4を表し、
bは、1~2を表し、
cは、3~9を表し;
前記方法は;
(a)(i)aモルの(A +M )、bモルのM 、及びcモルのXの化学量論的組成を有し、(ii)少なくとも100nmの平均粒子サイズ、及び典型的には50nm~100μmである多分散サイズ分布を有する固体材料を提供する工程;
(b)前記材料を、(i)液体界面活性剤、(ii)界面活性剤と溶媒との組み合わせ、(iii)界面活性剤、溶媒、及びプレポリマー又はポリマーの組み合わせ、並びに(iv)界面活性剤と液体プレポリマーとの組み合わせから選択される液体の存在下、攪拌ミリングボール、超音波、高せん断混合、又は高圧力分散によって分散させる工程、
を含む、製造方法。
[実施形態2]
工程(b)の分散が、攪拌ミリングボールによって行われる、実施形態1に記載の方法。
[実施形態3]
工程(b)の分散が、
・10~1000μmのボールサイズの攪拌ミリングボールによって行われ;及び/又は
・懸濁液の単位重量あたり、少なくとも10W/kgの比エネルギー入力で行われ;及び/又は
・120℃未満の温度で行われる、
実施形態1又は2に記載の方法。
[実施形態4]
前記発光性結晶が、FA Pb の群より選択され、FAは、ホルムアミジニウムを表し、Xは、実施形態1に定める通りである、実施形態1から3のいずれか一項に記載の方法。
[実施形態5]
前記溶媒が、脂肪族炭化水素(直鎖状、分岐鎖状、及び環状炭化水素を含む)、芳香族炭化水素、エーテル(グリコールエーテルを含む)、エステル、アルコール、ケトンの群より選択され;及び/又は
前記界面活性剤が、非イオン性、アニオン性、カチオン性、及び両性イオン性界面活性剤の群より選択され;及び/又は
前記プレポリマーが、アクリレート、カーボネート、スルホン、エポキシ、ビニル、ウレタン、イミド、エステル、フラン、メラミン、スチレン、及びシリコーンの群より、特に、アクリレート、ウレタン、スチレン、及びシリコーンの群より選択され;及び/又は
前記ポリマーが、アクリレートポリマー、カーボネートポリマー、スルホンポリマー、エポキシポリマー、ビニルポリマー、ウレタンポリマー、イミドポリマー、エステルポリマー、フランポリマー、メラミンポリマー、スチレンポリマー、及びシリコーンポリマー、並びに環状オレフィンコポリマーの群より選択される、
実施形態1から4のいずれか一項に記載の方法。
[実施形態6]
工程(a)において、前記固体材料が:
・乾式合成プロセスによって得られるか;又は
・湿式合成プロセスによって得られるか;又は
・式(I)の正味の化学量論組成を満たす2つ以上の前駆体の化学量論的反応によってin situで形成される、
実施形態1から5のいずれか一項に記載の方法。
[実施形態7]
・前記乾式合成プロセスが、乾式ミリングプロセスであり;
・前記湿式合成プロセスが、溶媒相又は水相からの析出プロセスであり;
・前記in situ形成が、界面活性剤、及び任意選択的な溶媒、及び/又は液体プレポリマー、及び/又は溶解した固体ポリマーの存在下で、前記出発材料をボールミリングする際に行われる、
実施形態6に記載の方法。
[実施形態8]
・固体材料:液体材料(溶媒+界面活性剤+プレポリマー+ポリマー)の重量比が、0.0001~0.5の範囲内であり;及び/又は
・界面活性剤:固体材料の重量比が、100~0.01の範囲内である、
実施形態1から7のいずれか一項に記載の方法。
[実施形態9]
合成された発光性結晶(I)の1つ以上の原子Xを、アニオン交換によって別の原子Xに置き換える工程;及び/又は
2つ以上の種類の式(I)の発光性結晶を組み合わせる工程、
をさらに含む、実施形態1から8のいずれか一項に記載の方法。
[実施形態10]
(i)実施形態1又は3のいずれか一項に記載の式(I)の3~500nmのサイズの発光性結晶;並びに
(ii)非イオン性、アニオン性、カチオン性、及び両性イオン性界面活性剤の群より選択されるが、オクチルアンモニウムブロミド及びオレイン酸は除く、界面活性剤;並びに
(iii)脂肪族炭化水素(直鎖状、分岐鎖状、及び環状炭化水素を含む)、芳香族炭化水素、エーテル(グリコールエーテルを含む)、エステル、アルコール、ケトンの群より好ましくは選択される、任意選択的な溶媒;
(iv)アクリレート、エポキシ、ウレタン、スチレン、シリコーン、及び環状オレフィンコポリマーの群より好ましくは選択される、任意選択的なポリマー及び/又はプレポリマー、
を含む、懸濁液の形態の組成物。
[実施形態11]
・発光性結晶(i):液体材料(ii)+(iii)+(iv)の重量比が、0.0001~0.5の範囲内であり;及び/又は
・界面活性剤(ii):発光性結晶(i)の重量比が、100~0.01の範囲内、好ましくは、3~0.02の範囲内であり;及び/又は
・前記ポリマー若しくはプレポリマーの濃度が、前記組成物全体の0.1~30重量%の範囲内である、
実施形態10に記載の組成物。
[実施形態12]
前記界面活性剤が:
・アニオン性、カチオン性、非イオン性、及び両性イオン性界面活性剤の群より選択され;並びに
・4~30個の炭素原子を有するアルキル又はアルキル-エーテル鎖の群より選択される無極性末端基を含む、
実施形態10から11のいずれか一項に記載の組成物。
[実施形態13]
・溶媒(iii)を含まないか、又は本質的に含まず、及び
・LC/QD(i):液体材料(プレポリマー(iv)+界面活性剤(ii))の重量比が、0.0001~0.2の範囲内である、
実施形態10から12のいずれか一項に記載の組成物。
[実施形態14]
・界面活性剤(ii)が、液体界面活性剤であり、溶媒(iii)及びプレポリマー(iv)を含まず、並びに
・界面活性剤(ii):LC/QD(i)の重量比が、100~0.01の範囲内である、
実施形態10から13のいずれか一項に記載の組成物。
[実施形態15]
・前記発光性結晶(i)が、FA Pb の群より選択され、FAは、ホルムアミジニウムを表し、Xは、実施形態1に定める通りであり;
・前記界面活性剤(ii)が、両性イオン性界面活性剤の群より選択され;及び
・前記プレポリマー/ポリマー(iv)が、アクリレートの群より選択される、
実施形態10から14のいずれか一項に記載の組成物。
[実施形態16]
(i)実施形態1又は3のいずれか一項に記載の式(I)の3~500nmのサイズの発光性結晶;並びに
(ii)非イオン性、アニオン性、カチオン性、及び両性イオン性界面活性剤の群より選択される界面活性剤;
(iii)アクリレートポリマー、エポキシポリマー、ウレタンポリマー、スチレンポリマー、シリコーンポリマー、及び環状オレフィンコポリマーの群より好ましくは選択される固化/硬化されたポリマー、
を含む固体ポリマー組成物。
[実施形態17]
・LC/QD:マトリックス(ポリマー+界面活性剤)の重量比が、0.00001~0.2の範囲内であり;及び/又は
・界面活性剤:LC/QDの重量比が、100~0.01の範囲内である、
実施形態16に記載の固体ポリマー組成物。
[実施形態18]
・前記発光性結晶(i)が、FA Pb の群より選択され、FAは、ホルムアミジニウムを表し、Xは、実施形態1に定める通りであり;
・前記界面活性剤(ii)が、両性イオン性界面活性剤の群より選択され;及び
・前記ポリマー(iv)が、アクリレートの群より選択される、
実施形態16から17のいずれか一項に記載の固体ポリマー組成物。
[実施形態19]
1つ以上の層でコーティングされたシート状基材を含み、前記層の少なくとも1つは、機能性層であり、前記機能性層は、実施形態16から18のいずれか一項に記載の固体ポリマー組成物を含む、コンポーネント。
[実施形態20]
電子デバイス及び光学デバイスの群より、好ましくは、ディスプレイ(例えばLCD)、携帯用デバイス、発光デバイス(例えばQLED)、及びソーラーセルから成る群より選択されるデバイスであって、
前記デバイスは、基材及び機能性層を含み;並びに
前記機能性層は、実施形態16から18のいずれか一項に記載の固体ポリマー組成物を含む、
デバイス。
[実施形態21]
基材及びコーティングを含み、
前記コーティングは、実施形態16から18のいずれか一項に記載の固体ポリマー組成物を含む、
物品、特には、装飾コーティング。
[実施形態22]
・実施形態19に記載のコンポーネント;又は
・実施形態20に記載のデバイス;又は
・実施形態21に記載の物品
の製造のための、実施形態10から15のいずれか一項に記載の組成物の使用。
[実施形態23]
特にQLED又はLCDにおいて、青色光を白色光に変換するための、実施形態16から18のいずれか一項に記載の組成物の使用。
図1a
図1b
図2
図3
図4
図5
図6
図7