(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-18
(45)【発行日】2022-03-01
(54)【発明の名称】地質調査用ボーリング装置
(51)【国際特許分類】
E21B 25/00 20060101AFI20220221BHJP
E02D 1/04 20060101ALI20220221BHJP
【FI】
E21B25/00
E02D1/04
(21)【出願番号】P 2019223452
(22)【出願日】2019-12-11
【審査請求日】2020-03-12
(73)【特許権者】
【識別番号】592091529
【氏名又は名称】東光電気工事株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100119943
【氏名又は名称】南 敦
(74)【代理人】
【識別番号】110001092
【氏名又は名称】特許業務法人サクラ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 功
【審査官】彦田 克文
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3101398(JP,U)
【文献】登録実用新案第3011468(JP,U)
【文献】特開2004-092205(JP,A)
【文献】特開2017-122375(JP,A)
【文献】特開昭63-156110(JP,A)
【文献】特開2001-220987(JP,A)
【文献】特開2008-248553(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21B 25/00
E02D 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動コアドリルを用いて挿入先端にサンプラーを備えたボーリングロッドを回転しつつ地中に圧下させてコアの採取および標準貫入試験を行う地質調査用ボーリング装置であって、
地盤に固定される長方形状のベースと、
前記ベース上の長手方向一端側の端位置に垂直に分解可能に立設された昇降用ポストと、
前記昇降用ポストに昇降自在に取り付けられ前記ベースの前記長手方向一端側のさらに外方に張り出した昇降用ブロックと、
前記昇降用ブロックの張出端に回転部を下向きにして取り付けられた電動コアドリルと、
前記電動コアドリルの回転部に上端を分離可能に固定された挿入先端にサンプラーを備えたボーリングロッドと、
前記昇降用ブロックに設けられ、前記電動コアドリルを回転して前記ボーリングロッドを地中に圧下させる際に、前記昇降用ポストに係止して前記昇降用ブロックを下降させる加圧レバーと、
前記電動コアドリルの上方に位置するように配置される滑車を備えたベースを囲むように組み立てられたやぐらと、
前記ベース上の長手方向他端側に固定され、巻胴から繰り出されるワイヤーが斜めに前記やぐらの上部に吊り下げられた前記滑車に掛架された電動ウインチと、
前記ワイヤーの先端部に前記昇降用ブロックの上端部と連結する連結具と、
前
記ベースを地盤に固定するアンカーと、
を備えたことを特徴とする地質調査用ボーリング装置。
【請求項2】
前記ボーリングロッドは複数の分割子よりなる継ぎ足し構造である請求項1記載の地質調査用ボーリング装置。
【請求項3】
前記ボーリングロッドの上端部に脱着自在に取り付けられた標準貫入試験用の所定重量のハンマーを備えた請求項1-2いずれか記載の地質調査用ボーリング装置。
【請求項4】
前記ハンマーが複数に分割できる構造である請求項3記載の地質調査用ボーリング装置。
【請求項5】
前記電動コアドリルの前記回転部の給水口に接続されたホースを介してボーリングロッド内に泥水を給水するポンプを備えた請求項1-4いずれか記載の地質調査用ボーリング装置。
【請求項6】
電動コアドリルおよび電動ウインチに給電する分離独立した発電機を備えた請求項1-5いずれか記載の地質調査用ボーリング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、山岳地への搬入、組立・分解、搬出が容易で、掘進能力10-15mを有する地質調査用ボーリング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
地質調査する際に用いられるボーリングの手法としては、主としてロータリーボーリングと簡易ボーリングとがある。
【0003】
ロータリーボーリングは、ロータリー式のボーリングマシンを用い、チャックでボーリングロッドを固定し給圧を加えつつ回転させ、コアチューブで地盤を採取する方法である。簡易ボーリングは、エンジンの動力および人力によって地盤に打ち込むかまたは回転させてコアを採取する方法である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ロータリーボーリングは、ボーリングマシンを用いるので掘削能力が大きいから、あらゆる土・岩の掘進が可能でコアが精度良く採取でき、様々な孔内試験を行うこともできる。しかし、ロータリーボーリングは、装置の総重量は1.5-2tもあり、ボーリングマシンだけでも350kg以上あり、山岳地への搬入出は非常に困難である。
【0006】
簡易ボーリングは、重量が軽くて容易に搬入出できるが、掘進能力が劣るとともにエンジンの騒音問題があり、標準貫入試験ができないものであった。
【0007】
本発明は、上述した点に鑑み案出されたもので、装置の総重量、装置本体の重量を山岳地への搬入出が容易な重量としかつ装置の大きさを狭小・低地上高用地内での調査を可能であるよう小型化を実現し、掘進能力も10-15m有し、標準貫入試験も行うことができる地質調査用ボーリング装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の態様は、電動コアドリルを用いて挿入先端にサンプラーを備えたボーリングロッドを回転しつつ地中に圧下させてコアの採取および標準貫入試験を行う地質調査用ボーリング装置であって、地盤に固定される長方形状のベースと、前記ベース上の長手方向一端側の端位置に垂直に分解可能に立設された昇降用ポストと、前記昇降用ポストに昇降自在に取り付けられ前記ベースの前記長手方向一端側のさらに外方に張り出した昇降用ブロックと、前記昇降用ブロックの張出端に回転部を下向きにして取り付けられた電動コアドリルと、前記電動コアドリルの回転部に上端を分離可能に固定された挿入先端にサンプラーを備えたボーリングロッドと、前記昇降用ブロックに設けられ、前記電動コアドリルを回転して前記ボーリングロッドを地中に圧下させる際に、前記昇降用ポストに係止して前記昇降用ブロックを下降させる加圧レバーと、前記電動コアドリルの上方に位置するように配置される滑車を備えたベースを囲むように組み立てられたやぐらと、前記ベース上の長手方向他端側に固定され、巻胴から繰り出されるワイヤーが斜めに前記やぐらの上部に吊り下げられた前記滑車に掛架された電動ウインチと、前記ワイヤーの先端部に前記昇降用ブロックの上端部と連結する連結具と、前記ベースを地盤に固定するアンカーと、を備えたことを特徴とする。
【0009】
本発明の第2の態様は、上記第1の態様の地質調査用ボーリング装置において、前記ボーリングロッドが複数の分割子よりなる継ぎ足し構造とすることができる。
【0011】
本発明の第4の態様は、上記第1-第3のいずれかの態様の地質調査用ボーリング装置において、前記ボーリングロッドの上端部に脱着自在に取り付けられた標準貫入試験用の所定重量のハンマーを備えたものとすることができる。
【0012】
本発明の第5の態様は、上記第4の態様の地質調査用ボーリング装置において、前記ハンマーが複数に分割できる構造とすることができる。
【0013】
本発明の第6の態様は、上記第1-第5のいずれかの態様の地質調査用ボーリング装置において、前記電動コアドリルの前記回転部の給水口に接続されたホースを介してボーリングロッド内に泥水を給水するポンプを備えたものとすることができる。
【0014】
本発明の第7の態様は、上記第1-第6のいずれかの態様の地質調査用ボーリング装置において、電動コアドリルおよび電動ウインチに給電する分離独立した発電機を備えたものとすることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、装置の総重量、装置本体の重量を山岳地への搬入出が容易な重量としかつ装置の大きさを狭小・低地上高用地内での調査を可能であるよう小型化を実現し、掘進能力も10-15m有し、標準貫入試験も行うことができる地質調査用ボーリング装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の実施の形態に係るボーリング装置の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る地質調査用ボーリング装置の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0018】
図1は実施の形態の地質調査用ボーリング装置の正面図である。地質調査用ボーリング装置100は、ベース1と、昇降用ポスト2と、昇降用ブロック3と、電動コアドリル5と、サンプラー7を備えたボーリングロッド6と、加圧レバー4と、やぐら13と、電動ウインチ9と、連結具12とを備え、電動コアドリル5を用いて挿入先端にサンプラー7を備えたボーリングロッド6を回転しつつ地中に圧下させて削孔Sを設け、コアの採取および標準貫入試験を行う。
【0019】
ベース1は、掘進時の反力不足でズレないよう四隅にアンカー17を備え、水平な地盤Gに固定される。ベース1は例えば1.3m×0.3mの寸法である。
【0020】
昇降用ポスト2は、ベース1上に端位置に垂直に分解可能に立設されている。昇降用ブロック3は、昇降用ポスト2に昇降自在に取り付けられ、かつ昇降用ポスト2を押圧するねじ締め付け式の加圧部材18を備え加圧部材18で適宜の高さに締め付け固定できる。
昇降用ブロック3は、ベース1の外方に張り出している。昇降用ポスト2には、縦方向にラック2aが刻設されており、加圧部材18を緩めて加圧レバー4の回転で図示しないギヤがラック2aと歯合しながら昇降用ブロック3を昇降できる。
【0021】
電動コアドリル5は、昇降用ブロック3の張出端(ベース1から外れた位置)に回転部5aを下向きにして取り付けられている。電動コアドリル5は150/200rpmおよび450/950rpmの切換式で回転部5にポンプ8から給水するホース15を接続している。
【0022】
ボーリングロッド6は、電動コアドリル5の回転部5aに上端を分離可能に固定された挿入先端にサンプラー7を備えている。ボーリングロッド6は運搬し易いよう複数の分割子よりなる継ぎ足し構造である。
【0023】
加圧レバー4は、昇降用ブロック3に設けられている。昇降用ポスト2には、縦方向に図示しないラックが刻設されており、電動コアドリル5を回転してボーリングロッド6を地中に圧下させ、昇降用ポスト2に係止して昇降用ブロック3を下降させる際に、加圧レバー4の回転で図示しないギヤが図示しないラックと歯合しながら昇降できる。
【0024】
やぐら13は、滑車10を備えたベース1を囲むように組み立てられている。やぐら13は分割可能な三脚パイプを束ねた頂部から吊下した滑車10にウインチ9の巻取部からのワイヤー11を巻架して構成され、サンプラー7の引き上げ時および標準貫入試験時に用いられる。
【0025】
電動ウインチ9は、ベース1上に固定され、巻胴9aから繰り出されるワイヤー11がやぐら13の上部に吊り下げられた滑車10に掛架されている。
【0026】
連結具12は、ワイヤー11の先端部に昇降用ブロック3の上端部と連結する。連結具12とワイヤー11の先端部との間に、標準貫入試験用の所定重量のハンマー14を備えている。ハンマー14が複数に分割できる構造である。標準貫入試験に用いるハンマー14は重量が63.5kgあり、例えば輪切り上の3分割とするのがよい。ボーリングロッド6は例えば50cmおよび100cmに複数分割できる構造である。
【0027】
電動コアドリル5の回転部4bの給水口に接続されたホース15を介してボーリングロッド6内に泥水を給水するポンプ8を備えている。
【0028】
電動コアドリル5および電動ウインチ9に給電する分離独立した発電機16a,16bを備えている。電動コアドリルや電動ウインチへ給電する発電機は大型を1機用いるより小型を2機並設して用いるのが効率的でよい。
【0029】
上記構成のボーリング装置100によれば、電動コアドリル5を用いてサンプラー7を備えたボーリングロッド6を地中に圧下させてコアの採取および標準貫入試験を行う。作業範囲はコアを採取する作業性を考慮して2.0m×2.0mとする。
【0030】
サンプラー7としては、シングルコアチューブ・ダブルコアチューブを使用し、主にダイヤビットを使用する(回転が速いため、きれいに礫を切る能力に優れている)。基本的には送水掘りで綺麗なコアを採取し、この際、掘進能力を向上するよう、送水はスライム排除・孔壁保護という面から泥水(界面活性剤)を使用する。また、量水計・圧力計を取り付け、地層にあった水量で掘進を行う。孔壁の崩壊が激しい場合は、口径83mmのチューブをケーシング材として使用する。
【0031】
本実施の形態の地質調査用ボーリング装置100の組み立ては、ベース1の四隅をアンカー17で地盤Gに固定し、ベース1上に垂直の昇降用ポスト2をベース1に設けた孔に嵌合しかつ昇降用ポスト2に設けたフランジ2aをボルトでベース1に固定し、昇降用ポスト2に昇降用ブロック3に昇降自在に取り付け、昇降用ブロック3に電動コアドリル5を取り付け、電動コアドリル5の下側に回転部5aにサンプラー7を備えたボーリングロッド6の上端を接続支持し、電動コアドリル5を回転してボーリングロッド6を地中に加圧する加圧レバー4を昇降用ブロック3に設け、ベース1を囲むように滑車10を備えたやぐら13を配設し、やぐら13の滑車10にベース1上に設けた電動ウインチ9のワイヤー11を斜めに掛架し、ワイヤー11の先端部にハンマー14を取り付けさらにボーリングロッド6の上端部と連結する連結具12を取り付け、ポンプ16と電動コアドリル5の回転部4bの給水口とにホース15を接続してボーリングロッド5内に泥水を給水できるようにし、発電機16a,16bを電動コアドリル5および電動ウインチ9に給電できるようにした。
【0032】
本実施の形態の地質調査用ボーリング装置によれば、ベース1を広い面積の剛性板で構成できて地盤Gにしっかり固着することができ、削孔Sを設ける位置はベース1を貫通する真下ではないので、ボーリングロッド6の繋ぎ足しが容易になるとともに、やぐら13の滑車10にベース1上に設けた電動ウインチ9のワイヤー11を斜めに掛架するので、ワイヤー11の巻揚げ時にベース1の浮揚力がちいさくなる。さらに、昇降用ポスト2と昇降用ブロック3を簡素な形状に形成することができて、かつ昇降用ポスト2と昇降用ブロック3をベース1に十分な合成を有して容易に組み立てることができる。
【0033】
これらの主な部品の製作例の重量は、ベース1が10kg、昇降用ポスト2が18kg、昇降用ブロック3を含む電動コアドリル5が20.0kg、ボーリングロッド6が2.5-5kg、ウインチ9は13kg、やぐら13は15kg、発電機16a,16bは合計で20kg前後である。
【0034】
これらは全て脱着自在または分割自在の部品で構成されているから、総重量は300kg程になるものの単体の重量が最大でも20kg以下で人肩運搬が可能となり、山岳地への搬入出が容易である。
【0035】
すなわち、本発明の地質調査用ボーリング装置は、装置の総重量、装置本体の重量を山岳地への搬入出が容易な重量としかつ装置の大きさを狭小・低地上高用地内での調査を可能であるよう小型化を実現し、掘進能力も10-15m有し、標準貫入試験も行うことができる。本発明によれば、装置を構成する部品を現場で組み立てることで、部品単体が人肩運搬が可能な重量となり、山岳地への搬入出が容易となる。また、装置本体から分離独立した発電機を使用することに加え、電動コアドリルの採用,ベース固定用のアンカーを使用することにより、最小幅2.0m×2.0m,全高3.0m程度の狭小・低地上高用地での作業が可能となる。また、標準貫入試験も可能となる。特に、本発明によれば、ベース1に対してラック2aの向きを任意に変えて昇降用ポスト2を立設することができるから、ベース1と削孔Sとの位置および角度関係の自由度が増し、山岳地での狭小な場所での設置が容易になる。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明の地質調査用ボーリング装置は、山岳地だけでなく、その他人肩運搬でないと搬入出し難い地域の地質調査に好ましく利用できる。
【符号の説明】
【0037】
1…ベース、2…昇降用ポスト、2a…フランジ、3…昇降用ブロック、4…加圧レバー、5…電動コアドリル、5a…回転部、6…ボーリングロッド、7…サンプラー、8…ポンプ、9…電動ウインチ、9a…巻胴、10…滑車、11…ワイヤー、12…連結具、13…やぐら、14…ハンマー、15…ホース、16a,16b…発電機、17…アンカー、18…加圧部材。