(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-18
(45)【発行日】2022-03-01
(54)【発明の名称】リチウムイオン電池用カソードスラリー
(51)【国際特許分類】
H01M 4/139 20100101AFI20220221BHJP
H01M 4/505 20100101ALI20220221BHJP
H01M 4/525 20100101ALI20220221BHJP
H01M 4/58 20100101ALI20220221BHJP
H01M 4/62 20060101ALI20220221BHJP
H01M 4/36 20060101ALI20220221BHJP
【FI】
H01M4/139
H01M4/505
H01M4/525
H01M4/58
H01M4/62 Z
H01M4/36 D
(21)【出願番号】P 2019519236
(86)(22)【出願日】2017-09-29
(86)【国際出願番号】 CN2017104239
(87)【国際公開番号】W WO2018068662
(87)【国際公開日】2018-04-19
【審査請求日】2020-09-25
(32)【優先日】2016-10-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】518234977
【氏名又は名称】ジーアールエスティー・インターナショナル・リミテッド
【住所又は居所原語表記】Unit 9-10,12/F Technology Park,18 On Lai Street,Shatin,New Territories,Hong Kong,China
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】特許業務法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ホ、カム・ピウ
(72)【発明者】
【氏名】ワン、ランシ
(72)【発明者】
【氏名】シェン、ペイフア
【審査官】村岡 一磨
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/084364(WO,A1)
【文献】特開2015-207417(JP,A)
【文献】国際公開第2011/052607(WO,A1)
【文献】特開2015-191862(JP,A)
【文献】特開2011-192541(JP,A)
【文献】特開2013-065468(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/00-4/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カソード活物質、導電剤、バインダー材料、及び、溶媒を備えたリチウムイオン電池カソードスラリーであって、
前記カソード活物質は、
10μmから
50μmの範囲の粒度D50を有し
、
60℃での前記溶媒の蒸気圧は、少なくとも15kPaであり、
前記スラリーの粘度は、1,500mPa・sから
3,000mPa・sの範囲内である、
リチウムイオン電池カソードスラリー。
【請求項2】
前記カソード活物質は、少なくとも3μmのD10値を有する、
請求項1に記載のスラリー。
【請求項3】
前記カソード活物質は、80μm以下のD90値を有する、
請求項1に記載のスラリー。
【請求項4】
前記カソード活物質は、30重量%から65重量%の量で存在し、前記導電剤は、0.8重量%から5重量%の量で存在し、前記バインダー材料は、0.5重量%から6重量%の量で存在し、前記溶媒は、30重量%から60重量%の量で存在し、ここですべての重量%の値は、前記スラリーの総重量を基準にした、
請求項1に記載のスラリー。
【請求項5】
前記カソード活物質は、LiCoO
2、LiNiO
2、LiNi
xMn
yO
2、Li
1+zNi
xMn
yCo
1-x-yO
2、LiNi
xCo
yAl
zO
2、LiV
2O
5、LiTiS
2、LiMoS
2、LiMnO
2、LiCrO
2、LiMn
2O
4、LiFeO
2、LiFePO
4、LiNi
0.5Mn
1.5O
4、LiNi
0.4Mn
1.6O
4、これらの複合材料、および、これらの組合せからなるグループから選択され、各xは独立して0.3から0.8あり、各yは独立して0から0.45であり、各zは独立して0から0.2である、
請求項1に記載のスラリー。
【請求項6】
前記導電剤は、カーボン、カーボンブラック、グラファイト、膨張グラファイト、グラフェン、グラフェンナノプレートレット、カーボンファイバー、カーボンナノファイバー、グラファイト化カーボンフレーク、カーボンチューブ、カーボンナノチューブ、活性炭、メソポーラスカーボン、およびこれらの混合物からなるグループから選択される、
請求項1に記載のスラリー。
【請求項7】
前記バインダー材料は、スチレン-ブタジエンゴム、アクリル化スチレン-ブタジエンゴム、アクリロニトリルコポリマー、アクリロニトリル-ブタジエンゴム、ニトリルブタジエンゴム、アクリロニトリル-スチレン-ブタジエンコポリマー、アクリルゴム、ブチルゴム、フッ素ゴム、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン/プロピレンコポリマー、ポリブタジエン、ポリエチレンオキシド、クロロスルホン化ポリエチレン、ポリビニルピロリドン、ポリビニルピリジン、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリエピクロロヒドリン、ポリホスファゼン、ポリアクリロニトリル、ポリスチレン、ラテックス、アクリル樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネート、シアノエチルセルロース、シアノエチルスクロース、ポリエステル、ポリアミド、ポリエーテル、ポリイミド、ポリカルボキシレート、ポリカルボン酸、ポリアクリル酸、ポリアクリレート、ポリメタクリル酸、ポリメタクリレート、ポリアクリルアミド、ポリウレタン、フッ素化ポリマー、塩素化ポリマー、アルギン酸の塩、ポリフッ化ビニリデン、ポリ(フッ化ビニリデン)-ヘキサフルオロプロペン、およびこれらの組合せからなるグループから選択される、
請求項1に記載のスラリー。
【請求項8】
前記アルギン酸の塩は、Na、Li、K、Ca、NH
4、Mg、Al、またはこれらの組合せから選択されるカチオンを備える、
請求項7に記載のスラリー。
【請求項9】
前記溶媒は
、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、アセトニトリル、ブチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、臭化エチル、テトラヒドロフラン、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、メチルプロピルカーボネート、エチレンカーボネート、水、純水、脱イオン水、蒸留水、エタノール、イソプロパノール、メタノール、アセトン、n-プロパノール、t-ブタノール、およびこれらの組合せからなるグループから選択される、
請求項1に記載のスラリー。
【請求項10】
前記溶
媒は、
N-メチル-2-ピロリドンをさらに含む、
請求項
9に記載のスラリー。
【請求項11】
前記スラリーのpHは、
7から
11である、
請求項1に記載のスラリー。
【請求項12】
前記溶媒は、140℃未
満の沸点を有する、
請求項1に記載のスラリー。
【請求項13】
前記カソード活物質の比率D90/D10は、
3から
10である、
請求項1に記載のスラリー。
【請求項14】
前記カソード活物質の粒度分布は、
12μmに第1のピークおよび
30μmに第2のピークを有する二峰性である、
請求項1に記載のスラリー。
【発明の詳細な説明】
【発明の分野】
【0001】
本発明は、電極スラリーに関する。特に、本発明は、リチウムイオン電池に用いるカソードスラリーに関する。
【発明の背景】
【0002】
リチウムイオン電池(LIB)は、過去20年間に携帯電話やラップトップコンピュータなどのポータブル電子機器の幅広い用途で大きな注目を集めている。高性能で低コストのLIBは、現在、電気自動車(EV)の急速な市場発展とグリッドエネルギー貯蔵のために、大規模なエネルギー貯蔵装置の最も有望な選択肢の1つを提供している。
【0003】
一般に、リチウムイオン電池は、セパレータと、カソードと、アノードとを含む。現在、電極は、電池電極活物質、導電剤およびバインダー材料の微粉末を適切な溶媒に分散させることによって作製される。分散は、銅またはアルミニウムの金属箔のような集電体上にコーティングされ、その後、高温で乾燥させて溶媒を除去することができる。その後、カソードとアノードのシートを、カソードとアノードとを分離するセパレータと共に積み重ねるか、または巻いて電池を形成する。
【0004】
電極、特にカソードの特性は、容量および安定性を含む電池の性能のいくつかの面に著しく影響を及ぼす可能性がある。電池製造における重要なプロセス工程は、カソードのコーティングおよび乾燥作業である。そのため、カソードスラリーの生成は、良質の電池の製造に向けた必須の第一段階である。
【0005】
不完全な乾燥によるコーティング層中の残留溶媒は、最終的に電池の性能および品質に影響を与える付着問題の一因となり得る。電極から残留溶媒を除去するための1つの方法は、高温下で電極を長期間乾燥させることである。しかしながら、高温で長時間加熱すると、ポリマーバインダーの老朽化のためにコーティングが分解する可能性がある。電極特性の変化は、完成した電池の適切な機能にとって有害である。
【0006】
現在、電極スラリーに関して多くの研究開発が行われている。中国特許出願公開第105149186号は、電極コーティングを乾燥するための方法を記載している。コーティングされた電極は、誘導加熱コイルによって誘導加熱されて金属集電体を所望の温度に加熱する。しかしながら、コイル内の誘導電流密度の不均一な分布のために、コーティングされた電極は不均一に加熱される可能性がある。これは、均一な温度への急速な加熱を得ることに関して、問題を引き起こし、コーティングの品質に影響を及ぼす可能性がある。
【0007】
米国特許出願公開第2016/0087262号は、高エネルギー密度リチウムイオン電池用の2~8μmの平均粒度を有するカソード活物質を記載している。カソード活物質は、リチウムイオン電池の出力特性を向上させるために、粒度が小さく均一なリチウムニッケルマンガン複合酸化物を含む。150~200mAh/gの特定の放電容量が得られる。しかしながら、カソード活物質の特定の高比表面積のため、カソード活物質および導電材料をカソード集電体に結合するために10重量%の結合剤が必要である。電極コーティング内の大量の結合剤は、リチウムイオン電池のエネルギー密度を低下させることがある。さらに、得られたカソードを真空乾燥機内で12時間高温で乾燥させる必要がある。乾燥に要する長時間は、大規模生産には適さないと考えられる。
【0008】
米国特許第8900753号は、高い安全性と出力特性を確保するために大きい一次粒度を有するカソード活物質と小さい一次粒度を有する別のカソード活物質との混合物を含むカソード材料を記載している。しかしながら、コーティングされたカソードも120℃の温度で乾燥させる必要がある。これは、電池の大規模生産において、高いエネルギー消費および高い生産コストを引き起こすであろう。
【0009】
上述を考慮すると、電池性能および製造効率の理由から、均一な成分分散および早い乾燥能力を有するカソードスラリーの継続的な改良が必要とされている。
【発明の概要】
【0010】
上述の必要性は、本明細書に開示される様々な態様および実施形態によって満たされる。
【0011】
1つの態様では、本明細書で提供されるリチウムイオン電池カソードスラリーは、カソード活物質、導電剤、バインダー材料、および、溶媒を備え、前記カソード活物質は、約10μmから約50μmまでの範囲内の粒度D50を有し、約100μmの厚さのウェットフィルム(film)を有する集電体上にコーティングされた前記スラリーは、約60℃から90℃の温度、及び、約25%から約40%相対湿度の環境下で、約5分以下の乾燥時間を有している。
【0012】
いくつかの実施形態では、カソード活物質は、LiCoO2、LiNiO2、LiNixMnyO2、Li1+zNixMnyCo1-x-yO2、LiNixCoyAlzO2、LiV2O5、LiTiS2、LiMoS2、LiMnO2、LiCrO2、LiMn2O4、LiFeO2、LiFePO4、LiNi0.5Mn1.5O4、LiNi0.4Mn1.6O4、これらの複合材料、および、これらの組合せからなるグループから選択され、各xは独立して0.3から0.8あり、各yは独立して0から0.45であり、各zは独立して0から0.2である。
【0013】
ある実施形態では、カソード活物質は、30重量%から65重量%の量で存在し、導電剤は、0.8重量%から5重量%の量で存在し、バインダー材料は0.5重量%から6重量%の量で存在し、溶媒は30重量%から60重量%の量で存在し、ここで全成分の合計重量%値は100重量%を超えず、全ての重量%値はスラリーの総重量を基準にしている。他の実施形態では、カソード活物質は、35重量%から50重量%の量で存在し、導電剤は、1重量%から4重量%の量で存在し、バインダー材料は、0.8重量%から3.5重量%の量で存在し、溶媒は、40重量%から55重量%の量で存在し、ここで全成分の合計重量%値は100重量%を超えず、全ての重量%値はスラリーの総重量を基準にしている。
【0014】
いくつかの実施形態では、カソード活物質は、少なくとも3μmのD10値を有する。ある実施形態では、カソード活物質は、80μm以下のD90値を有する。いくつかの実施形態では、カソード活物質の比率D90/D10は、約3から約10、または、約5から約8である。
【0015】
ある実施形態では、カソード活物質の粒度分布は、約12μmでの第1ピークと約30μmでの第2ピークを有する二峰性である。
【0016】
いくつかの実施形態では、導電剤は、カーボン、カーボンブラック、グラファイト、膨張グラファイト、グラフェン、グラフェンナノプレートレット、カーボンファイバー、カーボンナノファイバー、グラファイト化カーボンフレーク、カーボンチューブ、カーボンナノチューブ、活性炭、メソポーラスカーボン、およびこれらの混合物からなるグループから選択される。
【0017】
ある実施形態では、バインダー材料は、スチレン-ブタジエンゴム、アクリル化スチレン-ブタジエンゴム、アクリロニトリルコポリマー、アクリロニトリル-ブタジエンゴム、ニトリルブタジエンゴム、アクリロニトリル-スチレン-ブタジエンコポリマー、アクリルゴム、ブチルゴム、フッ素ゴム、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン/プロピレンコポリマー、ポリブタジエン、ポリエチレンオキシド、クロロスルホン化ポリエチレン、ポリビニルピロリドン、ポリビニルピリジン、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリエピクロロヒドリン、ポリホスファゼン、ポリアクリロニトリル、ポリスチレン、ラテックス、アクリル樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネート、シアノエチルセルロース、シアノエチルスクロース、ポリエステル、ポリアミド、ポリエーテル、ポリイミド、ポリカルボキシレート、ポリカルボン酸、ポリアクリル酸、ポリアクリレート、ポリメタクリル酸、ポリメタクリレート、ポリアクリルアミド、ポリウレタン、フッ素化ポリマー、塩素化ポリマー、アルギン酸の塩、ポリフッ化ビニリデン、ポリ(フッ化ビニリデン)-ヘキサフルオロプロペン、およびこれらの組合せからなるグループから選択される。更なる実施形態では、アルギン酸の塩は、Na、Li、K、Ca、NH4、Mg、Al、またはこれらの組合せから選択されるカチオンを含む。
【0018】
いくつかの実施形態では、溶媒は、N-メチル-2-ピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、アセトニトリル、ブチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、臭化エチル、テトラヒドロフラン、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、メチルプロピルカーボネート、エチレンカーボネート、水、純水、脱イオン水、蒸留水、エタノール、イソプロパノール、メタノール、アセトン、n-プロパノール、t-ブタノール、およびこれらの組合せからなるグループから選択される。
【0019】
ある実施形態では、溶媒は、200℃未満、180℃未満、160℃未満、140℃未満、120℃未満、または100℃未満の沸点を有する。
【0020】
ある実施の形態において、スラリーの粘度は、約1,000mPa・sから約4,500mPa・sの範囲にある。
【0021】
いくつかの実施形態では、溶媒の蒸気圧は少なくとも15kPaである。
【0022】
ある実施形態では、スラリーのpHは、約7から約11である。
【0023】
いくつかの実施形態では、コーティングされたスラリーフィルムは、ボックスオーブン、コンベアオーブン、または、ホットプレートにより乾燥される。
【0024】
いくつかの実施形態では、フィルムの形態で集電体上にコーティングされたスラリーは、約5分以下の乾燥時間を有する。
【0025】
別の態様では、本明細書で提供されるリチウムイオン電池用の正極は、カソード集電体及び前記カソード集電体上に分散されたカソード電極層を備え、前記カソード電極層は、本明細書に開示される方法により作製されたカソードスラリーを用いて形成される。
【0026】
別の態様では、本明細書で提供されるリチウムイオン電池は、カソード、アノード、および、カソードとアノードとの間に挿入されたセパレータを備え、前記カソードの少なくとも1つは、本明細書で開示される方法により作製された正極である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
一般的な定義
用語「導電材」は、電極の導電性を高める化学物質または物質をいう。
【0028】
用語「バインダー材料」は、電池電極活物質および導電剤を所定の位置に保持するために使用することができる化学物質または物質をいう。
【0029】
用語「塗布された」または「塗布する」は、集電体の表面上にスラリーの層を置くまたは広げる行為をいう。
【0030】
用語「集電体」は、電池電極活物質をコーティングするための支持体および二次電池の放電または充電中に電極に流れる電流を維持するための化学的に不活性な高電子導電体をいう。
【0031】
用語「静かな空気」は、コーティングを囲む空気が実質的に静止していることをいう。 空気流がない場合、コーティング表面の上面から1cm上の位置で0.2m/s未満の風速が観察された。いくつかの実施形態では、風速は0.1m/s未満である。ある実施形態では、風速は0m/sである。
【0032】
組成物の用語「主成分」は、組成物の総重量または総体積を基準にして、50%を超える、55%を超える、60%を超える、65%を超える、70%を超える、75%を超える、80%を超える、85%を超える、90%を超える、または、95%を超える、重量%又は体積%をいう。
【0033】
組成物の用語「副成分」は、組成物の総重量または総体積を基準にして、50%未満、45%未満、40%未満、35%未満、30%未満、25%未満、20%未満、15%未満、10%未満、または、5%未満、の重量%又は体積%をいう。
【0034】
用語「ホモジナイザー」は、材料の均質化に使用することができる機器をいう。用語「均質化」、物質または材料を小さな粒子にし、それを流体全体に均一に散布するプロセスをいう。任意の従来のホモジナイザーは、本明細書に開示された方法に使用することができる。ホモジナイザーのいくつかの限定しない例には、撹拌ミキサー、ブレンダー、ミル(例えば、コロイドミルおよびサンドミル)、超音波処理装置、アトマイザー、ローターステーターホモジナイザー、および、高圧ホモジナイザーが含まれる。
【0035】
用語「Cレート」は、セルまたは電池の充電または放電レートを指し、その総蓄電容量をAhまたはmAhで表したものである。例えば、1Cの率は、1時間で蓄積されたエネルギーを全て利用することを意味し、0.1Cは、1時間で10%のエネルギー、及び、10時間で全エネルギーを利用することを意味し、5Cは、12分で全エネルギーを利用することを意味する。
【0036】
用語「アンペア・アワー(Ah)」は、電池の蓄電容量を特定するのに使用される単位をいう。例えば、容量1Ahの電池は、1時間で1アンペア、2時間で0.5Aなどの電流を供給することができる。したがって、1アンペア・アワー(Ah)は、3600クーロンの電荷に相当する。同様に、用語「ミリアンペア・アワー(mAh)」も、電池の蓄電容量の単位をいい、アンペア・アワーの1/1000である。
【0037】
用語「電池サイクル寿命」は、公称容量がその初期定格容量の80%を下回る前に、電池が実行することができる完全な充電/放電サイクルの回数をいう。
【0038】
用語「ドクターブレード」は、硬質またはフレキシブルの基材上に大面積フィルムを製作するためのプロセスをいう。コーティング厚さは、コーティングブレードとコーティング表面との間の調節可能なギャップ幅により制御することができ、それにより、可変ウェット層厚さの堆積が可能になる。
【0039】
用語「トランスファーコーティング」または「ロールコーティング」は、硬質またはフレキシブルの基材上に大面積フィルムを製作するためのプロセスをいう。スラリーは、コーティングローラーの表面から圧力でコーティングを転写することにより基材上に塗布される。コーティング厚さは、メータリングブレードとコーティングローラーの表面との間の調節可能なギャップ幅により制御することができ、それにより、可変ウェット層厚さの堆積が可能になる。メータリングロールシステムでは、コーティングの厚さは、メータリングローラーとコーティングローラーとの間のギャップを調節することにより制御される。
【0040】
用語「粒度D50」は、総体積が100%で、粒度分布が体積基準で得られるように累積曲線を描いたときの累積曲線上の50%の点での粒度(すなわち、粒子の体積の50パーセンタイル(中央値)での粒子の直径)である体積基準累積50%サイズ(D50)をいう。また、本発明のカソード活物質において、粒度D50とは、一次粒子同士が凝集して焼結することにより形成された二次粒子の体積平均粒度を意味し、一次粒子のみで構成された粒子の場合、それは、一次粒子の体積平均粒度を意味する。さらに、D10は、体積基準累積10%サイズ(すなわち、粒子の体積の10パーセンタイルの粒子の直径)を意味し、D90は、体積基準累積90%サイズ(すなわち、粒子の体積の90パーセンタイルの粒子の直径)を意味する。
【0041】
流体の用語「蒸気圧」は、閉鎖系におけるある温度で熱力学的平衡状態にある液相状態の流体の蒸気により与えられる圧力をいう。
【0042】
用語「固形分」は、蒸発後に残存する不揮発性材料の量をいう。
【0043】
以下の説明では、本明細書に開示される全ての数字は、「約」または「近似」という語がそれに関連して使用されるかどうかにかかわらず、おおよその値である。それらは、1パーセント、2パーセント、5パーセント、または場合によっては10パーセントから20パーセント、変化することがある。下限RLおよび上限RUを有する数値範囲が開示されるときは、いかなる場合も、範囲内の任意の数が具体的に開示される。特に、範囲内の次のような数値が具体的に開示される:R=RL+k*(RU-RL)。ここで、kは1パーセントから100パーセントの範囲の変数であって1パーセントずつ増加する、すなわち、kは1パーセント、2パーセント、3パーセント、4パーセント、5パーセント、…、50パーセント、51パーセント、52パーセント、…、95パーセント、96パーセント、97パーセント、98パーセント、99パーセント、または100パーセントである。さらに、上記で定義した2つのRの数によって定義される任意の数値範囲も、また具体的に開示される。
【0044】
本明細書で提供されるリチウムイオン電池カソードスラリーは、カソード活物質、導電剤、バインダー材料、および、溶媒を備え、カソード活物質は、約10μmから約50μmの範囲の粒度D50を有し、ウェットフィルム厚さが約100μmの集電体上にコーティングされたスラリーは、約60℃から約90℃の温度で、約25%から約40%の相対湿度の環境下で約5分以下の乾燥時間を有する。
【0045】
従来、カソードの高い充填密度を達成するには、小さい粒度を有するカソード活物質が好ましい。一般に、カソード活物質の平均粒度は、0.05μmから5μmの範囲内であることが好ましい。また、リチウム二次電池のカソードとして、粒子径の異なるカソード活物質を含む電極が用いられている。従って、大径粒子間の空間は小径粒子で満たされる。しかしながら、密度の高いコーティングは、コーティングの内部からの溶媒の蒸発を遅らせるであろう。現在のプロセスの硬化ステップは時間がかかる。乾燥時間は、高温にさらすことで短縮することができる。しかしながら、これはしばしば不均一な乾燥のために、劣る電極品質および著しく劣るセル性能を引き起こす。言い換えれば、比較的高い乾燥速度を可能にする特定範囲の粒度およびサイズ比の粒子を有するカソード活物質を含むスラリーは開発されておらず、高い処理性が可能なスラリーが望まれている。したがって、高品質で安定した性能を有するリチウムイオン電池を製造するために使用されるための、簡単で信頼性がありかつ費用効率の高い新しいカソードスラリーが常に必要とされている。
【0046】
いくつかの実施形態では、カソード活物質は、LiCoO2(LCO)、LiNiO2(LNO)、LiNixMnyO2、Li1+zNixMnyCo1-x-yO2、LiNixCoyAlzO2、LiV2O5、LiTiS2、LiMoS2、LiMnO2、LiCrO2、LiMn2O4(LMO)、LiFeO2、LiFePO4(LFP)、LiNi0.5Mn1.5O4、LiNi0.4Mn1.6O4、およびこれらの組合せからなるグループから選択され、各xは独立して0.3から0.8であり、各yは、独立して0.1から0.45であり、各zは独立して0から0.2である。ある実施形態では、カソード活物質は、LiCoO2、LiNiO2、LiNixMnyO2、Li1+zNixMnyCo1-x-yO2、LiNixCoyAlzO2、LiV2O5、LiTiS2、LiMoS2、LiMnO2、LiCrO2、LiMn2O4、LiFeO2、LiFePO4、LiNi0.5Mn1.5O4、LiNi0.4Mn1.6O4、およびこれらの組合せからなるグループから選択され、各xは独立して0.4から0.6であり、各yは、独立して0.2から0.4であり、各zは独立して0から0.1である。他の実施形態では、カソード活物質は、LiCoO2、LiNiO2、LiV2O5、LiTiS2、LiMoS2、LiMnO2、LiCrO2、LiMn2O4、LiFeO2、LiFePO4、LiNi0.5Mn1.5O4、または、LiNi0.4Mn1.6O4ではない。さらなる実施形態では、カソード活物質は、LiNixMnyO2、Li1+zNixMnyCo1-x-yO2、または、LiNixCoyAlzO2ではなく、各xは独立して0.3から0.8であり、各yは独立して0.1から0.45であり、各xは独立して0から0.2である。
いくつかの実施形態では、カソード活物質は、LiNi0.33Mn0.33Co0.33O2(NMC333)、LiNi0.5Mn0.3Co0.2O2(NMC532)、LiNi0.4Mn0.4Co0.2O2、LiNi0.6Mn0.2Co0.2O2(NMC622)、LiNi0.8Mn0.1Co0.1O2(NMC811)、または、LiNi0.8Co0.15Al0.05O2(NCA)である。
【0047】
ある実施形態では、カソード活物質は、Fe、Ni、Mn、Al、Mg、Zn、Ti、La、Ce、Sn、Zr、Ru、Si、Ge、およびこれらの組合せからなるグループから選択されるドーパントでドープされる。いくつかの実施形態では、ドーパントはFe、Ni、Mn、Mg、Zn、Ti、La、Ce、Ru、Si、または、Geではない。ある実施形態では、ドーパントは、Al、Sn、または、Zrではない。いくつかの実施形態では、カソード活物質は、ドーパントでドープされない。
【0048】
いくつかの実施形態では、カソード活物質は、リチウム遷移金属酸化物を含むコアと、コアの表面を遷移金属酸化物でコーティングすることにより形成されたシェルとを含むコア-シェル複合材料であるか、これを備える。ある実施形態では、リチウム遷移金属酸化物は、LiCoO2、LiNiO2、LiNixMnyO2、Li1+zNixMnyCo1-x-yO2、LiNixCoyAlzO2、LiV2O5、LiTiS2、LiMoS2、LiMnO2、LiCrO2、LiMn2O4、LiFeO2、LiFePO4、LiNi0.5Mn1.5O4、LiNi0.4Mn1.6O4、およびこれらの組合せからなるグループから選択され、各xは独立して0.3から0.8であり、各yは独立して0.1から0.45であり、各zは独立して0から0.2である。いくつかの実施形態では、遷移金属酸化物は、Fe2O3、MnO2、Al2O3、MgO、ZnO、TiO2、La2O3、CeO2、SnO2、ZrO2、RuO2、およびこれらの組合せからなるグループから選択される。
【0049】
ある実施形態では、カソード活物質は、コアとシェルの構造を有するコア-シェル複合材料であるか、これを備え、コアおよびシェルは、LiCoO2、LiNiO2、LiNixMnyO2、Li1+zNixMnyCo1-x-yO2、LiNixCoyAlzO2、LiV2O5、LiTiS2、LiMoS2、LiMnO2、LiCrO2、LiMn2O4、LiFeO2、LiFePO4、LiNi0.5Mn1.5O4、LiNi0.4Mn1.6O4、およびこれらの組合せからなるグループから選択されたリチウム遷移金属酸化物をそれぞれ独立して備え、各xは独立して0.3から0.8であり、各yは独立して0.1から0.45であり、各zは独立して0から0.2である。他の実施形態では、コアおよびシェルは、それぞれ独立して、2つ以上のリチウム遷移金属酸化物を備える。コアおよびシェル中の2つ以上のリチウム遷移金属酸化物は同じでもよく、または異なっていても部分的に異なっていてもよい。いくつかの実施形態では、2つ以上のリチウム遷移金属酸化物は、コア上に均一に分布している。ある実施形態では、2つ以上のリチウム遷移金属酸化物は、コア上に均一に分布していない。
【0050】
いくつかの実施形態では、コアおよびシェル中のリチウム遷移金属酸化物のそれぞれは、Fe、Ni、Mn、Al、Mg、Zn、Ti、La、Ce、Sn、Zr、Ru、Si、Ge、およびこれらの組合せからなるグループから選択されたドーパントで独立してドープされる。ある実施形態では、コアおよびシェルは、それぞれ独立して、2つ以上のドープされたリチウム遷移金属酸化物を備える。いくつかの実施形態では、2つ以上のドープされたリチウム遷移金属酸化物は、コア上に均一に分布している。ある実施形態では、2つ以上のドープされたリチウム遷移金属酸化物は、コア上に均一に分布していない。
【0051】
いくつかの実施形態では、コアの直径は、約5μmから約45μm、約5μmから約35μm、約5μmから約25μm、約10μmから約40μm、または、約10μmから約35μmである。ある実施形態では、シェルの厚さは、約15μmから約45μm、約15μmから約30μm、約15μmから約25μm、約20μmから約30μm、または、約20μmから約35μmである。
【0052】
いくつかの実施形態では、コアおよびシェルの直径または厚さの比率は、15:85から85:15、25:75から75:25、30:70から70:30、または、40:60から60:40の範囲にある。ある実施形態では、コアとシェルとの体積または重量比率は、80:20、70:30、60:40、50:50、40:60、または、30:70である。
【0053】
ある実施形態では、カソード活物質は、コア・シェル構造を備えない。いくつかの実施形態では、カソード活物質は、ドーパントFe、Ni、Mn、Al、Mg、Zn、Ti、La、Ce、Sn、Zr、Ru、Si、または、Geでドープされない。いくつかの実施形態では、コアおよびシェルは、LiCoO2、LiNiO2、LiNixMnyO2、Li1+zNixMnyCo1-x-yO2、LiNixCoyAlzO2、LiV2O5、LiTiS2、LiMoS2、LiMnO2、LiCrO2、LiMn2O4、LiFeO2、LiFePO4、LiNi0.5Mn1.5O4、または、LiNi0.4Mn1.6O4をそれぞれ独立して備えず、各xは独立して0.3から0.8であり、各yは独立して0.1から0.45であり、各zは独立して0から0.2である。
【0054】
カソード活物質の粒径D50が約10μmより大きいと、集電体上のコーティングされたフィルム中の大きい粒径粒子同士の間に隙間ができ、短時間でコーティングされたフィルムを効果的に乾燥させることができる。いくつかの実施形態では、本発明のカソード活物質は、約10μmから約50μm、約10μmから約45μm、約10μmから約40μm、約10μmから約35μm、約10μmから約30μm、約10μmから約25μm、約15μmから約45μm、約15μmから約30μm、約20μmから約50μm、約20μmから約40μm、約20μmから約30μm、約25μmから約45μm、約25μmから約40μm、約30μmから約40μm、または、約30μmから約50μmの範囲の粒度D50を有する。
【0055】
ある実施形態では、カソード活物質の粒径D50は、50μmより小さい、45μmより小さい、40μmより小さい、35μmより小さい、30μmより小さい、25μmより小さい、20μmより小さい、または、15μmより小さい。ある実施形態では、カソード活物質の粒径D50は、10μmより大きい、15μmより大きい、20μmより大きい、25μmより大きい、30μmより大きい、35μmより大きい、40μmより大きい、または、45μmより大きい。ある実施形態では、カソード活物質の粒径D50は、約10μm、約11μm、約12μm、約13μm、約14μm、約15μm、約16μm、約17μm、約18μm、約19μm、約20μm、約21μm、約22μm、約23μm、約24μm、約25μm、約26μm、約27μm、約28μm、約29μm、約30μm、約31μm、約32μm、約33μm、約34μm、約35μm、約36μm、約37μm、約38μm、約39μm、約40μm、約41μm、約42μm、約43μm、約44μm、約45μm、約46μm、約47μm、約48μm、約49μm、または、約50μmである。
【0056】
ある実施の形態では、カソード活物質は、約3μmから約20μm、約3μmから約10μm、約3μmから約8μm、約1μmから約10μm、約1μmから約8μm、約1μmから約5μm、約2μmから約10μm、約2μmから約5μm、または、約2μmから約8μmの粒度D10を有する。
【0057】
いくつかの実施形態では、カソード活物質は、約20μmから約80μm、約30μmから約80μm、約40μmから約80μm、約50μmから約80μm、約30μmから約70μm、約30μmから約60μm、約20μmから約50μm、約20μmから約60μm、または、約40μmから約60μmの粒度D90を有する。
【0058】
ある実施形態では、カソード活物質の比率D90/D10は、約3から約15、約3から約10、約3から約8、約5から約15、約5から約10、約5から約8、約7.5から約20、約10から約20、または、約10から約15である。
【0059】
いくつかの実施形態では、カソード活物質の量は、スラリーの総重量または総体積を基準にして、約10%から約80%、約10%から約70%、約10%から約60%、約10%から約50%、約10%から約40%、約10%から約30%、約10%から約20%、約30%から約70%、約30%から約60%、約30%から約50%、約30%から約40%、約40%から約70%、約40%から約60%、約40%から約50%、約45%から約50%、約25%から約60%、約25%から約50%、約25%から約40%、約35%から約65%、約35%から約50%、または、約35%から約45%の重量%または体積%である。ある実施形態では、カソード活物質の量は、スラリーの総重量または総体積を基準にして、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも27.5%、少なくとも30%、少なくとも32.5%、少なくとも35%、少なくとも37.5%、少なくとも40%、少なくとも42.5%、少なくとも45%、少なくとも47.5%、少なくとも50%、少なくとも52.5%、少なくとも55%、少なくとも57.5%、または、少なくとも60%の重量%または体積%である。ある実施形態では、カソード活物質の量は、スラリーの総重量または総体積を基準にして、最大25%、最大27.5%、最大30%、最大32.5%、最大35%、最大37.5%、最大40%、最大42.5%、最大45%、最大47.5%、最大50%、最大52.5%、最大55%、最大57.5%、または、最大60%の重量%または体積%である。いくつかの実施形態では、カソード活物質の量は、スラリーの総重量または総体積を基準にして、約40%、約41%、約42%、約43%、約44%、約45%、約46%、約47%、約48%、約49%、約50%、約51%、約52%、約53%、約54%、または、約55%の重量%または体積%である。
【0060】
スラリー内の導電剤は、カソードの導電性を高めるためのものである。いくつかの実施形態では、導電剤は、カーボン、カーボンブラック、グラファイト、膨張グラファイト、グラフェン、グラフェンナノプレートレット、カーボンファイバー、カーボンナノファイバー、グラファイト化カーボンフレーク、カーボンチューブ、カーボンナノチューブ、活性炭、メソポーラスカーボン、およびこれらの混合物からなるグループから選択される。ある実施形態では、導電剤は、カーボン、カーボンブラック、グラファイト、膨張グラファイト、グラフェン、グラフェンナノプレートレット、カーボンファイバー、カーボンナノファイバー、グラファイト化カーボンフレーク、カーボンチューブ、カーボンナノチューブ、活性炭、または、メソポーラスカーボンではない。
【0061】
いくつかの実施形態では、導電剤の粒度は、約10nmから約100nm、約10nmから約50nm、約10nmから約45nm、約10nmから約40nm、約10nmから約35nm、約10nmから約30nm、約10nmから約25nm、約10nmから約20nm、約10nmから約15nm、約20nmから約n50m、約20nmから約40nm、約25nmから約50nm、約30nmから約50nm、または、約30nmから約40nmである。
【0062】
いくつかの実施形態では、バインダー材料は、スチレン-ブタジエンゴム、アクリル化スチレン-ブタジエンゴム、アクリロニトリルコポリマー、アクリロニトリル-ブタジエンゴム、ニトリルブタジエンゴム、アクリロニトリル-スチレン-ブタジエンコポリマー、アクリルゴム、ブチルゴム、フッ素ゴム、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン/プロピレンコポリマー、ポリブタジエン、ポリエチレンオキシド、クロロスルホン化ポリエチレン、ポリビニルピロリドン、ポリビニルピリジン、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリエピクロロヒドリン、ポリホスファゼン、ポリアクリロニトリル、ポリスチレン、ラテックス、アクリル樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネート、シアノエチルセルロース、シアノエチルスクロース、ポリエステル、ポリアミド、ポリエーテル、ポリイミド、ポリカルボキシレート、ポリカルボン酸、ポリアクリル酸、ポリアクリレート、ポリメタクリル酸、ポリメタクリレート、ポリアクリルアミド、ポリウレタン、フッ素化ポリマー、塩素化ポリマー、アルギン酸の塩、ポリフッ化ビニリデン、ポリ(フッ化ビニリデン)-ヘキサフルオロプロペン、およびこれらの組合せからなるグループから選択される。更なる実施形態では、アルギン酸の塩は、Na、Li、K、Ca、NH4、Mg、Al、またはこれらの組合せから選択されるカチオンを含む。
【0063】
ある実施形態では、バインダー材料は、スチレン-ブタジエンゴム、カルボキシメチルセルロース、ポリフッ化ビニリデン、アクリロニトリルコポリマー、ポリアクリル酸、ポリアクリロニトリル、ポリ(フッ化ビニリデン)-ヘキサフルオロプロペン、ラテックス、アルギン酸の塩、およびこれらの組合せからなるグループから選択される。
【0064】
いくつかの実施形態では、バインダー材料は、SBR、CMC、PAA、アルギン酸の塩、またはこれらの組合せから選択される。ある実施形態では、バインダー材料は、アクリロニトリルコポリマーである。いくつかの実施形態では、バインダー材料は、ポリアクリロニトリルである。ある実施形態では、バインダー材料は、スチレン-ブタジエンゴム、カルボキシメチルセルロース、ポリフッ化ビニリデン、アクリロニトリルコポリマー、ポリアクリル酸、ポリアクリロニトリル、ポリ(フッ化ビニリデン)-ヘキサフルオロプロペン、ラテックス、または、アルギン酸の塩を含まない。
【0065】
ある実施形態では、導電剤およびバインダー材料のそれぞれの量は、スラリーの総重量または総体積を基準に、独立して、少なくとも0.1%、少なくとも0.25%、少なくとも0.5%、少なくとも0.75%、少なくとも1%、少なくとも1.25%、少なくとも1.5%、少なくとも1.75%、少なくとも2%、少なくとも2.25%、少なくとも2.5%、少なくとも2.75%、少なくとも3%、少なくとも4%、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、または、少なくとも50%の重量%または体積%である。いくつかの実施形態では、導電剤およびバインダー材料のそれぞれの量は、スラリーの総重量または総体積を基準に、独立して、最大0.1%、最大0.25%、最大0.5%、最大0.75%、最大1%、最大1.25%、最大1.5%、最大1.75%、最大2%、最大2.25%、最大2.5%、最大2.75%、最大3%、最大4%、最大5%、最大10%、最大15%、最大20%、最大25%、最大30%、最大35%、最大40%、最大45%、または、最大50%の重量%または体積%である。
【0066】
いくつかの実施形態では、導電剤の量は、スラリーの総重量または総体積を基準にして、約0.02%から約1%、約0.02%から約0.5%、約0.02%から約0.25%、約0.05%から約1%、約0.05%から約0.5%、約0.12%から約1.25%、約0.12%から約1%、約0.25%から約2.5%、約0.5%から約2.5%、約0.5%から約2%、約1%から約3%、約1%から約2.5%、約1%から約2%、約1%から約1.5%、約1.5%から約3%、約1%から約2.5%、約1.5%から約3.5%、または、約2.5%から約5%の重量%または体積%である。ある実施形態では、導電剤の量は、スラリーの総重量または総体積を基準にして、約0.5%、約0.75%、約1%、約1.25%、約1.5%、約1.75%、約2%、約2.25%、約2.5%、約2.75%、または、約3%の重量%または体積%である。
【0067】
ある実施形態では、バインダー材料の量は、スラリーの総重量または総体積を基準にして、約0.5%から約5%、約0.5%から約2.5%、約1%から約5%、約1%から約4%、約1%から約3%、約1%から約2%、約1.5%から約3%、約1.5%から約2%、約2.5%から約5%、約2.5%から約4%、約2.5%から約3%、約3.5%から約8%、約3.5%から約7%、約3.5%から約6%、約3.5%から約5%、約3.7%から約7.5%、約5%から約10%、約7.5%から約12.5%、約10%から約20%、または、約17.5%から約25%の重量%または体積%である。いくつかの実施形態では、バインダー材料の量は、スラリーの総重量または総体積を基準にして、約0.5%、約0.75%、約1%、約1.25%、約1.5%、約1.75%、約2%、約2.25%、約2.5%、約2.75%、約3%、約3.5%、約4%、約4.5%、または、約5%の重量%または体積%である。
【0068】
スラリーは、溶媒中で、カソード活物質を導電剤およびバインダー材料などの補助材料と混合することにより作製される。混合プロセスは、溶媒中で、カソード活物質、導電剤およびバインダー材料の粒子の均一な分散を達成することを目的とする。
【0069】
スラリーに使用される溶媒は、任意の極性有機溶媒にすることができる。極性有機溶媒は、15より大きい、20より大きい、25より大きい、30より大きい、35より大きい、40より大きい、または、45より大きい誘電率を有する任意の極性プロトン性または極性非プロトン性の有機溶媒にすることができる。極性プロトン性有機溶媒のいくつかの限定しない例には、ベンジルアルコ-ル、エチレングリコール、n-ブタノール、イソプロパノール、n-プロパノール、エタノール、および、メタノールなどのアルコールが含まれる。極性非プロトン性有機溶媒のいくつかの限定しない例には、ケトン溶媒、アセテート溶媒、プロピオン酸エステルなどのエステル溶媒、および、カーボネート溶媒が含まれる。ケトン溶媒のいくつかの限定しない例には、メチルプロピルケトン、メチルイソブチルケトン、エチルプロピルケトン、ジイソブチルケトン、アセトフェノン、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、アセトンなどが含まれる。アセテート溶媒のいくつかの限定しない例には、エチルアセテート、ブチルアセテート、イソブチルアセテートなどが含まれる。n-ブチルプロピオネート、n-ペンチルプロピオネートおよびエチレングリコールモノエチルエーテルプロピオネートのようなプロピオン酸エステルのいくつかの限定しない例もまた適切である。カーボネート溶媒のいくつかの限定しない例には、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、エチルメチルカーボネート、メチルプロピルカーボネートなどが含まれる。極性非プロトン性有機溶媒の他の限定しない例には、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、および、ジメチルスルホキシドが含まれる。いくつかの実施形態では、スラリーに使用される溶媒は、極性プロトン性溶媒、極性非プロトン性溶媒、またはこれらの組合せを含む。
【0070】
スラリーを製造するために水性溶媒を使用することもできる。水性ベースプロセスへの移行は、揮発性有機化合物の放出を減らし、処理効率を高めるために望ましいかもしれない。ある実施形態では、スラリーに使用される溶媒は、主成分として水を含み、水に加えて副成分として、アルコール、低級脂肪族ケトン、低級アルキルアセテートなどのような揮発性溶媒を含む溶液である。いくつかの実施形態では、水の量は、水および水以外の溶媒の総量に対して、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、または、少なくとも95%の量である。ある実施形態では、水の量は、水および水以外の溶媒の総量に対して、最大55%、最大60%、最大65%、最大70%、最大75%、最大80%、最大85%、最大90%、または、最大95%である。いくつかの実施形態では、溶媒は水のみからなり、すなわち、溶媒中の水の割合は100体積%である。
【0071】
任意の水混和性溶媒を副成分として使用することができる。副成分(すなわち、水以外の溶媒)のいくつかの限定しない例には、アルコール、低級脂肪族ケトン、低級アルキルアセテートおよびこれらの組合せが含まれる。アルコールのいくつかの限定しない例には、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n-プロパノール、ブタノール、およびこれらの組合せなどのC1-C4アルコールが含まれる。低級脂肪族ケトンのいくつかの限定しない例には、アセトン、ジメチルケトン、および、メチルエチルケトンが含まれる。低級アルキルアセテートのいくつかの限定しない例には、エチルアセテート、イソプロピルアセテート、および、プロピルアセテートが含まれる。
【0072】
いくつかの実施形態では、揮発性溶媒または副成分は、メチルエチルケトン、エタノール、エチルアセテートまたはこれらの組合せである。
【0073】
ある実施形態では、溶媒は、水と1種以上の水混和性副成分との混合物である。いくつかの実施形態では、溶媒は、水と、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n-プロパノール、t-ブタノール、n-ブタノール、およびこれらの組合せから選択される副成分との混合物である。ある実施形態では、水と副成分の体積比は、約51:49から約100:1である。
【0074】
いくつかの実施形態では、溶媒は水である。スラリーの組成は有機溶媒を全く含有しないので、スラリーの製造中に、有機溶媒の高価で制限的で複雑な取り扱いが避けられる。水のいくつかの限定しない例には、水道水、ボトル入り水、精製水、純水、蒸留水、脱イオン水、D2O、またはこれらの組合せが含まれる。いくつかの実施形態では、溶媒は、脱イオン水である。
【0075】
ある実施形態では、溶媒は、揮発性溶媒、不揮発性溶媒、またはこれらの組合せを含む。いくつかの実施形態では、溶媒は、n-ブタノール、イソプロパノール、n-プロパノール、エタノール、および、メタノールからなるグループから選択された少なくとも1種のアルコール溶媒とNMPの混合物を含む。さらなる実施形態では、溶媒は、NMPとエタノールの混合物、または、NMPとイソプロパノールの混合物を含む。いくつかの実施形態では、溶媒は、メチルプロピルケトン、メチルイソブチルケトン、エチルプロピルケトン、ジイソブチルケトン、アセトフェノン、および、アセトンからなるグループから選択される少なくとも1種のケトン溶媒とNMPの混合物を含む。さらなる実施形態では、溶媒は、NMPとアセトンの混合物を含む。ある実施形態では、溶媒は、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、エチルメチルカーボネート、および、メチルプロピルカーボネートからなるグループから選択される少なくとも1種のカーボネート溶媒とNMPの混合物を含む。さらなる実施形態では、溶媒は、NMPとジメチルカーボネートの混合物を含む。他の実施形態では、溶媒は、NMPと水、水とエタノール、または、水とジメチルカーボネートの混合物を含む。ある実施形態では、揮発性溶媒は、スラリーに速乾性を与える主成分である。いくつかの実施形態では、揮発性溶媒と不揮発性溶媒の体積比は、約51:49から約100:1である。
【0076】
蒸気圧の高い溶媒を有するスラリーは、より速い速度で乾燥させることができる。いくつかの実施形態において、約65℃から90℃の温度での溶媒の蒸気圧は、独立して、約0.01kPaから約200kPa、約0.01kPaから約150kPa、約0.01kPaから約100kPa、約0.1kPaから約200kPa、約0.1kPaから約150kPa、約0.1kPaから約100kPa、約0.3kPaから約200kPa、約0.3kPaから約150kPa、約0.3kPaから約100kPa、約0.3kPaから約80kPa、約0.3kPaから約60kPa、約0.3kPaから約40kPa、約0.3kPaから約20kPa、約10kPaから約200kPa、約10kPaから約150kPa、約10kPaから約100kPa、約10kPaから約80kPa、約10kPaから約60kPa、または、約10kPaから約40kPaである。
【0077】
ある実施の形態では、約60℃から90℃の温度での溶媒の蒸気圧は、独立して、200kPa未満、150kPa未満、100kPa未満、90kPa未満、80kPa未満、70kPa未満、60kPa未満、50kPa未満、40kPa未満、30kPa未満、20kPa未満、10kPa未満、5kPa未満、1kPa未満、0.5kPa未満、0.3kPa未満、または、0.1kPa未満である。いくつかの実施形態では、約60℃から90℃の温度での溶媒の蒸気圧は、独立して、少なくとも0.01kPa、少なくとも0.05kPa、少なくとも0.1kPa、少なくとも0.5kPa、少なくとも1kPa、少なくとも5kPa、少なくとも10kPa、少なくとも20kPa、少なくとも30kPa、少なくとも40kPa、少なくとも50kPa、少なくとも60kPa、少なくとも70kPa、少なくとも80kPa、少なくとも90kPa、少なくとも100kPa、少なくとも150kPa、または、少なくとも200kPaである。
【0078】
低沸点の溶媒を有するスラリーは、より速い速度で乾燥させることができる。いくつかの実施形態では、溶媒の沸点は、約40℃から約250℃、約40℃から約200℃、約40℃から約150℃、約40℃から約100℃、約40℃から約90℃、約40℃から約80℃、約40℃から約70℃、約40℃から約60℃、約60℃から約100℃、約60℃から約90℃、約60℃から約80℃、または、約60℃から約70℃である。ある実施形態では、溶媒の沸点は、250℃未満、200℃未満、150℃未満、100℃未満、90℃未満、80℃未満、70℃未満、60℃未満、または、50℃未満である。いくつかの実施形態では、溶媒の沸点は、少なくとも40℃、少なくとも50℃、少なくとも60℃、少なくとも70℃、少なくとも80℃、少なくとも90℃、少なくとも100℃、少なくとも150℃、または、少なくとも200℃である。
【0079】
いくつかの実施形態では、溶媒は、スラリーの総重量または総体積を基準にして、約20%から約80%、約20%から約70%、約20%から約60%、約20%から約50%、約20%から約40%、約30%から約50%、約30%から約40%、約40%から約70%、約40%から約60%、約40%から約50%、約50%から約80%、約50%から約70%、約50%から約60%、約25%から約60%、約25%から約50%、約25%から約45%、約45%から約60%、約45%から約55%、または、約45%から約50%の重量%または体積%の量で存在する。
【0080】
ある実施形態では、溶媒は、スラリーの総重量または総体積を基準にして、80%未満、70%未満、60%未満、55%未満、50%未満、45%未満、40%未満、35%未満、30%未満、25%未満、または、20%未満の重量%または体積%の量で存在する。いくつかの実施形態では、溶媒は、スラリーの総重量または総体積を基準にして、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、 少なくとも70%、または、少なくとも80%の重量%または体積%の量で存在する。ある実施形態では、溶媒の量は、スラリーの総重量または総体積を基準にして、約40%、約41%、約42%、約43%、約44%、約45%、約46%、約47%、約48%、約49%、約50%、約51%、約52%、約53%、約54%、約55%、約56%、約57%、約58%、約59%、または、約60%の重量%または体積%である。
【0081】
いくつかの実施形態では、溶媒の重量パーセントは、カソード活物質、導電剤およびバインダー材料の合計重量パーセントより多い。ある実施形態では、溶媒の重量パーセントは、カソード活物質、導電剤およびバインダー材料の合計重量パーセントより少ない。いくつかの実施形態では、溶媒の重量パーセントは、カソード活物質、導電剤およびバインダー材料の合計重量パーセントに等しい。
【0082】
ある実施形態では、カソード活物質の重量パーセントは、導電剤の重量パーセントより多い。いくつかの実施形態では、スラリー中の導電剤の重量パーセントに対するカソード活物質の重量パーセントの比率は、約1から約100、約1から約80、約1から約60、約1から約50、約10から約50、約10から約40、約10から約35、約10から約30、約10から約25、約10から約20、約20から約60、約20から約50、約20から約45、約20から約40、約30から約50、約30から約40、約40から約60、約40から約50、約20から約30、または、約20から約25である。いくつかの実施形態では、スラリー中の導電剤の重量パーセントに対するカソード活物質の重量パーセントの比率は、100未満、80未満、60未満、50未満、45未満、40未満、35未満、30未満、25未満、20未満、または、10未満である。ある実施形態では、スラリー中の導電剤の重量パーセントに対するカソード活物質の重量パーセントの比率は、少なくとも1、少なくとも10、少なくとも20、少なくとも25、少なくとも30、少なくとも35、少なくとも40、少なくとも45、少なくとも50、少なくとも55、少なくとも60、または、少なくとも80である。いくつかの実施形態では、スラリー中の導電剤の重量パーセントに対するカソード活物質の重量パーセントの比率は、約15、約16、約17、約18、約19、約20、約21、約22、約23、約24、約25、約26、約27、約28、約29、または、約30である。
【0083】
ある実施形態では、カソード活物質の重量パーセントは、バインダー材料の重量パーセントより多い。いくつかの実施形態では、スラリー中のバインダー材料の重量パーセントに対するカソード活物質の重量パーセントの比率は、約1から約100、約1から約80、約1から約60、約1から約50、約5から約50、約5から45約、約5から約40、約5から約35、約5から約30、約5から約25、約5から約20、約5から約15、約15から約50、約15から約40、約15から約35、約15から約30、約15から約25、または、約15から約20である。ある実施形態では、スラリー中のバインダー材料の重量パーセントに対するカソード活物質の重量パーセントの比は、100未満、80未満、60未満、50未満、45未満、40未満、35未満、30未満、25未満、20未満、15未満、または、10未満である。いくつかの実施形態では、スラリー中のバインダー材料の重量パーセントに対するカソード活物質の重量パーセントの比率は、少なくとも5、少なくとも10、少なくとも15、少なくとも20、少なくとも25、少なくとも30、少なくとも35、少なくとも40、少なくとも45、少なくとも50、少なくとも60、少なくとも70、または、少なくとも80である。ある実施形態では、スラリー中のバインダー材料の重量パーセントに対するカソード活物質の重量パーセントの比率は、約15、約16、約17、約18、約19、約20、約21、約22、約23、約24、約25、約26、約27、約28、約29、約30、約31、約32、約33、約34、約35、約36、約37、約38、約39、または、約40である。
【0084】
いくつかの実施形態では、バインダー材料の重量パーセントは、導電剤の重量パーセントよりも多い。ある実施形態では、バインダー材料の重量パーセントは、導電剤の重量パーセントよりも少ない。いくつかの実施形態では、バインダー材料の重量パーセントは、導電剤の重量パーセントに等しい。ある実施形態では、導電剤の重量パーセントに対するバインダー材料の重量パーセントの比率は、約0.1から約5、約0.5から約4.5、約0.5から約4、約0.5から約3.5、約0.5から約3、約0.5から約2.5、約0.5から約2、約0.5から約1.5、約0.5から約1、約1から約5、約1から約4、約1から約3、約1から約2、または、約1から約1.5である。いくつかの実施形態では、導電剤の重量パーセントに対するバインダー材料の重量パーセントの比率は、5未満、4.5未満、4未満、3.5未満、3未満、2.5未満、2未満、1.5未満、1未満、または、0.5未満である。ある実施形態では、導電剤の重量パーセントに対するバインダー材料の重量パーセントの比率は、少なくとも0.5、少なくとも1、少なくとも1.5、少なくとも2、少なくとも2.5、少なくとも3、少なくとも3.5、少なくとも4、または、少なくとも4.5である。
【0085】
電極コーティング層は、通常は、カソード活物質、導電剤およびバインダー材料を含む粒子の懸濁液を支持体上にコーティングして、懸濁液を乾燥させて薄膜にすることにより作製される。カソードスラリーは、一般に、できるだけ早く乾燥できることが望ましい。これにより、コーティングシステムの生産性が向上し、したがって全体の処理時間が短縮される。通常、カソードスラリーは、メイン成分としてカソード活物質を備える。速乾性スラリーを作製する1つの方法は、大きな粒度を有するカソード活物質を用いることである。粒度分布は、カソード活性材料の比表面積を決定する際に決定的な役割を果たす。より大きな表面積は、溶媒とのより大きな相互作用を可能にし、それは、より遅い乾燥をもたらす。
【0086】
二峰性粒子分布は、充填効率を高めることができる。いくつかの実施形態では、カソード活物質は、2つのサイズ分布の粒子の混合物を含み、第2の分布のピークの粒度は第1の分布のピークの粒度より大きい。ある実施形態では、二峰性分布の第1のピークは、約5μmから約20μmの間でもよいし、二峰性分布の第2のピークは、約20μmから約40μmの間でもよい。いくつかの実施形態では、カソード活物質の粒度分布は、約10μmに第1のピークと約25μmに第2のピークを有する二峰性である。小さい粒子が大きい粒子間の隙間を埋めると充填密度は増加する。
【0087】
ある実施形態では、分布の2つのピークでの直径の差は、80%以下、60%以下、50%以下、または、35%以下である。
【0088】
いくつかの実施形態では、第1の分布のピークの粒度を有するカソード活物質に対する第2の分布のピークの粒度を有するカソード活物質の重量比は、3:1から5:1である。ある実施形態では、第1の分布のピークの粒度を有するカソード活物質に対する第2の分布のピークの粒度を有するカソード活物質の重量比は、5:1、4:1または3:1である。
【0089】
コーティング作業の前に、カソード活物質、バインダー材料、および、導電剤を均一に混合することが非常に重要である。NMPなどの使用していた従来の溶媒から水に変更する場合、スラリー成分の粒子の凝集が起こり得る。すべての成分間の表面張力は、相溶性を高めるためにできるだけ低くしなくてはならない。例えば、スラリーの表面張力を低下させるために分散剤を加えることによってなど、この問題に取り組むために様々な方法が提案されている。
【0090】
ある実施形態では、分散剤は、非イオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤、またはこれらの組合せである。
【0091】
適切な非イオン性界面活性剤のいくつかの限定しない例には、アルコキシル化アルコール、カルボン酸エステル、ポリエチレングリコールエステル、およびこれらの組合せが含まれる。適切なアルコキシル化アルコールのいくつかの限定しない例には、エトキシル化アルコールおよびプロポキシル化アルコールが含まれる。ある実施形態では、非イオン性界面活性剤は、ノニルフェノールエトキシレートである。
【0092】
適切なアニオン性界面活性剤のいくつかの限定しない例には、アルキル硫酸塩、アルキルポリエトキシレートエーテル硫酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルエーテル硫酸塩、スルホン酸塩、スルホコハク酸塩、サルコシネート、およびこれらの組合せが含まれる。いくつかの実施形態では、アニオン性界面活性剤は、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、およびこれらの組合せからなるグループから選択されるカチオンを含む。ある実施形態では、アニオン性界面活性剤は、ドデシル硫酸リチウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、または、ステアリン酸ナトリウムである。
【0093】
適切なカチオン性界面活性剤のいくつかの限定しない例には、アンモニウム塩、ホスホニウム塩、イミダゾリウム塩、スルホニウム塩、およびこれらの組合せが含まれる。適切なアンモニウム塩のいくつかの限定しない例には、ステアリルトリメチルアンモニウムブロマイド(STAB)、セチルトリメチルアンモニウムブロマイド(CTAB)、ミリスチルトリメチルアンモニウムブロマイド(MTAB)、塩化トリメチルヘキサデシルアンモニウム、およびこれらの組合せが含まれる。
【0094】
適切な両性界面活性剤のいくつかの限定しない例には、カチオン基とアニオン基の両方を含む界面活性剤である。カチオン基は、アンモニウム、ホスホニウム、イミダゾリウム、スルホニウム、またはこれらの組合せである。アニオン親水基は、カルボキシレート、スルホネート、サルフェート、ホスホネート、またはこれらの組合せである。
【0095】
ある実施形態では、分散剤は、ドデシル硫酸リチウム、塩化トリメチルヘキサデシルアンモニウム、アルコールエトキシレート、ノニルフェノールエトキシレート、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、およびこれらの組合せからなるグループから選択される。
【0096】
本発明の利点の1つは、本発明のスラリーの製法は、界面活性剤を使用せずに水中での粒子の凝集を防ぎ、集電体上にコーティングされた場合にスラリーの急速な乾燥を可能にすることである。いくつかの実施形態では、スラリーは界面活性剤を含まない。ある実施形態では、スラリーは、非イオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、または、両性界面活性剤を含まない。
【0097】
スラリー中の凝集した粒子または成分の不均一分布が、コーティングおよび乾燥作業、そして最終的には電池の性能および品質に影響を与えるので、スラリーの徹底した混合は、重要である。スラリーは、ホモジナイザーにより均質化することができる。均質化工程は、カソード活物質と導電剤との潜在的な凝集を低減または排除し、スラリー中の各原料の分散を向上させる。スラリーを均質化することができる任意の装置を使用することができる。いくつかの実施形態では、ホモジナイザーは、撹拌ミキサー、ブレンダー、ミル、超音波処理装置、ローターステーターホモジナイザー、または、高圧ホモジナイザーである。
【0098】
いくつかの実施形態では、ホモジナイザーは超音波処理装置である。本明細書では、超音波エネルギーを適用して標本中の粒子をかき混ぜて分散させることができる任意の超音波処理装置を使用することができる。いくつかの実施形態では、超音波処理装置はプローブ型超音波処理装置または超音波フローセルである。
【0099】
均質化後、均一なスラリーが得られる。スラリーの粘度は、最終コーティングの品質に影響を与える。スラリーの粘度が高すぎると、不均一なコーティングが形成される可能性がある。また、スラリーの粘度が低すぎると、満足のいくフィルムが得られにくい。
【0100】
溶媒が凝集塊内に捕らえられ、それによって溶媒の蒸発をより困難にすることがあるので、粒子の凝集は、スラリーの乾燥時間を増加させる。より大きいカソード材料粒子を使用すると、粒子の凝集の発生が減少する。また、スラリーのpHもスラリー中の粒子の安定性に影響を与える。スラリーのpHが所望の範囲から外れると、バインダー材料をスラリー中に均一に分散させることがより困難になる。これは、コーティングされたフィルムの乾燥ムラ及び収縮の原因となりうる。ニッケルリッチ材料は水と反応してpHを上昇させることがあるので、スラリーのpHは、水性溶媒中にニッケルリッチカソード活物質を分散させることにより影響を受ける可能性がある。カソード活物質の大きいサイズの粒子は、比表面積が小さい。このため、カソード活物質と水との反応によるpHの変動が抑制される。
【0101】
いくつかの実施形態では、カソードスラリーのpHは、約7から約11、約7から約10.5、約7から約10、約7から約9.5、約7から約9、約7から約8.5、約7から約8、約7から約7.5、約7.5から約11、約7.5から約10、約7.5から約9、約7.5から約8、約8から約11、約8から約10.5、約8から約10、約8から約9.5、約8から約9、約8から約8.5、約9から約11、または、約9から約10である。ある実施形態では、カソードスラリーのpHは、12未満、11.5未満、11未満、10.5未満、10未満、9.5未満、9未満、8.5未満、8未満、7.5未満、または、7未満である。いくつかの実施形態では、カソードスラリーのpHは、少なくとも7、少なくとも7.5、少なくとも8、少なくとも8.5、少なくとも9、少なくとも9.5、少なくとも10、少なくとも10.5、または、少なくとも11である。ある実施形態では、カソードスラリーのpHは、約7、約7.5、約8、約8.5、約9、約9.5、約10、約10.5、または、約11である。
【0102】
いくつかの実施形態では、カソードスラリーは、約500mPa・sから約6,000mPa・s、約500mPa.sから約5,500mPa.s、約500mPa.sから約5,000mPa.s、約500mPa.sから約4,500mPa.s、約500mPa・sから約4,000mPa・s、約500mPa・sから約3,500mPa・s、約500mPa・sから約3,000mPa・s、約1,000mPa・sから約6,000mPa・s、約1,000mPa・sから約5,500mPa・s、約1,000mPa・sから約5,000mPa・s、約1,000mPa・sから約4,500mPa・s、約1,000mPa・sから約4,000mPa・s、約1,000mPa・sから約3,500mPa・s、約1,000mPa・sから約3,000mPa・s、約1,000mPa・sから約2,500mPa・s、約1,000mPa・sから約2,000mPa・s、約1,500mPa.sから約4,000mPa.s、約1,500mPa.sから約3,500mPa.s、約1,500mPa.sから約3,000mPa.s、約2,000mPa.sから約4,000mPa.s、約2,000mPa・sから約3,500mPa・s、または、約2,000mPa・sから約3,000mPa・sの粘度を有する。
【0103】
ある実施形態では、カソードスラリーは、6,000mPa.s未満、5,500mPa.s未満、5,000mPa.s未満、4,500mPa.s未満、4,000mPa.s未満、3,500mPa・s未満、3,000mPa・s未満、2,500mPa・s未満、2,000mPa・s未満、または、1,000mPa・s未満の粘度を有する。いくつかの実施形態では、カソードスラリーは、1,000mPa.sより大きい、1,500mPa.sより大きい、2,000mPa.sより大きい、2,500mPa.sより大きい、3,000mPa.sより大きい、3,500mPa.sより大きい、4,000mPa・sより大きい、4,500mPa・sより大きい、5,000mPa・sより大きい、または、5,500mPa・sより大きい粘度を有する。
【0104】
スラリー中の固形分の量が少ないと、スラリー中の溶媒の量が多いために、乾燥時間が長くなる。いくつかの実施形態では、カソードスラリーの固形分は、カソードスラリーの総重量を基準にして、約20%から約80%、約20%から約70%、約20%から約60%、約20%から約50%、約20%から約40%、約30%から約70%、約30%から約60%、約30%から約50%、約30%から約40%、約40%から約70%、約40%から約60%、約40%から約50%、約25%から約60%、約35%から約60%、または、約45%から約60%の重量%である。
【0105】
ある実施形態では、カソードスラリーの固形分は、カソードスラリーの総重量を基準にして、80%未満、70%未満、60%未満、55%未満、50%未満、45%未満、40%未満、35%未満、30%未満、または、25%未満の重量%である。いくつかの実施形態では、カソードスラリーの固形分は、カソードスラリーの総重量を基準にして、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、または、少なくとも60%の重量%である。ある実施形態では、カソードスラリーの固形分は、カソードスラリーの総重量を基準にして、約40%、約41%、約42%、約43%、約44%、約45%、約46%、約47%、約48%、約49%、約50%、約51%、約52%、約53%、約54%、約55%、約56%、約57%、約58%、約59%、または、約60%の重量%である。
【0106】
集電体上にコーティングされたフィルムを形成するために、均質化されたスラリーは、集電体上に塗布することができる。集電体は、電池電極活物質の電気化学反応により生成された電子を集め、または、電気化学反応に必要な電子を供給するように作用する。いくつかの実施形態では、正極および負極の集電体のそれぞれは、箔、シートまたはフィルムの形態でもよく、独立して、ステンレス鋼、チタン、ニッケル、アルミニウム、銅、または、導電性樹脂である。ある実施形態では、正極の集電体はアルミニウム薄膜である。いくつかの実施形態では、負極の集電体は銅薄膜である。ある実施形態では、集電体の表面は前処理されない。
【0107】
いくつかの実施形態では、厚さは、電池内の集電体と電池電極活物質の量により占める体積したがって電池内の容量に、影響を及ぼすので、集電体は、約6μmから約100μmの厚さを有する。
【0108】
ある実施形態では、コーティング処理は、ドクターブレードコーター、スロットダイコーター、トランスファーコーター、スプレーコーター、ロールコーター、ディップコーター、または、カーテンコーターを用いて行われる。いくつかの実施形態では、集電体上のコーティングされたフィルムの厚さは、約10μmから約300μm、または、約20μmから約100μmである。
【0109】
均質化したスラリーを集電体上に塗布した後、集電体上のコーティングされたフィルムを乾燥機で乾燥させて電池電極を得ることができる。本明細書では、集電体上のコーティングされたフィルムを乾燥させることができる任意の乾燥機を使用することができる。乾燥機のいくつかの限定しない例は、バッチ乾燥オーブン、ボックス型乾燥オーブン、ホットプレート、コンベア乾燥オーブン、および、マイクロ波乾燥オーブンである。コンベア乾燥オーブンのいくつかの限定しない例には、コンベア熱風乾燥オーブン、コンベア抵抗乾燥オーブン、コンベア誘導乾燥オーブン、および、コンベアマイクロ波乾燥オーブンが含まれる。
【0110】
いくつかの実施形態では、集電体上のコーティングされたフィルムを乾燥するためのコンベア乾燥オーブンは、1つ以上の加熱セクションを含み、加熱セクションのそれぞれは、個別に温度制御され、かつ、加熱セクションのそれぞれは、独立して制御される加熱ゾーンを含めてもよい。
【0111】
ある実施形態では、コンベア乾燥オーブンは、コンベアの一方の側に配置された第1の加熱セクションと、第1の加熱セクションからコンベアの反対側に配置された第2の加熱セクションとを備え、第1および第2の加熱セクションのそれぞれは、独立して、1以上の加熱要素、及び、各加熱セクションの温度を監視し選択的に制御するように、第1の加熱セクションおよび第2の加熱セクションの加熱要素に接続された温度制御システムを備える。
【0112】
いくつかの実施形態では、カソードスラリーは、150℃未満の沸点を有する少なくとも1つの溶媒を備える。溶媒の選択と量は、硬化条件に影響する。より低い沸点を有する溶媒の選択は、より低い温度でのより速い乾燥を可能にする。より低い温度は、カソード電極層の亀裂または脆化を避けることができる。いくつかの実施形態では、集電体上のコーティングされたフィルムを、約45℃から約100℃、約50℃から約100℃、約55℃から約100℃、約50℃から約90℃、約50℃から約80℃、約55℃から約80℃、約55℃から約75℃、約55℃から約70℃、約50℃から約80℃、約50℃から約70℃、約60℃から約100℃、約60℃から約90℃、約60℃から約80℃、約45℃から約90℃、約45℃から約80℃、または、約45℃から約70℃の温度で乾燥させることができる。ある実施形態では、集電体上のコーティングされたフィルムを、100℃未満、95℃未満、90℃未満、85℃未満、80℃未満、75℃未満、70℃未満、65℃未満、60℃未満、55℃未満、50℃未満、45℃未満、または、40℃未満の温度で乾燥させることができる。いくつかの実施形態では、集電体上のコーティングされたフィルムを、40℃を超える、45℃を超える、50℃を超える、55℃を超える、60℃を超える、65℃を超える、70℃を超える、75℃を超える、80℃を超える、85℃を超える、または、90℃を超える温度で乾燥させることができる。
【0113】
コーティングされたフィルムは、不均一なスラリー分布を引き起こし、次にコーティングされた電極の品質に影響を及ぼし得る風の強い条件下で、乾燥されるべきではない。いくつかの実施形態では、集電体上のコーティングされたフィルムは、静かな空気条件下で乾燥させることができる。ある実施形態では、集電体上のコーティングされたフィルムは、0.2m/sから1m/s、または、0.2m/sから0.7m/sの風速を有する環境下で乾燥させることができる。さらなる実施形態では、風速は、0.7m/s未満、0.5m/s未満、0.4m/s未満、0.3m/s未満、0.2m/s未満、または、0.1m/s未満である。ある実施形態では、風速は、0m/sである。
【0114】
低いまたは中程度の湿度で乾燥する間、溶媒は、コーティングをより急速に残し、それにより、より低い温度でより速い乾燥を可能にする。いくつかの実施形態では、集電体上のコーティングされたフィルムは、約0%から約60%、約10%から約50%、約20%から約50%、約20%から約40%、約25%から約40%、約15%から約50%、約15%から約40%、約15%から約30%、約15%から約25%、または、約20%から約30%の相対湿度を有する環境下で乾燥させることができる。ある実施形態では、相対湿度は、50%未満、45%未満、40%未満、35%未満、30%未満、25%未満、20%未満、15%未満、または、10%未満である。
【0115】
本明細書に開示されたカソードスラリーは、短時間で乾燥させることができる。いくつかの実施形態では、コーティングされたフィルムは、約1分から約15分、約1分から約10分、約1分から約8分、約1分から約5分、約1分から約4分、約1分から約3分、約1分から約2分、約1.5分から約5分、約1.5分から約4分、約1.5分から約3分、約2分から約10分、約2分から約5分、 約2分から約4分、約2分から約3分、約3分から約5分、約3分から約4分、約4分から約5分、約2.5分から約5分、約2.5分から約4分、または、約3.5分から約5分の時間で乾燥させることができる。ある実施形態では、コーティングされたフィルムは、12時間未満、8時間未満、4時間未満、2時間未満、1時間未満、45分未満、30分未満、15分未満、13分未満、10分未満、9分未満、8分未満、7分未満、6分未満、5分未満、4.5分未満、4分未満、3.5分未満、3分未満、2.5分未満、2分未満、または、1.5分未満の時間で乾燥させることができる。乾燥速度が遅すぎると、製造効率が悪くなる。
【0116】
乾燥後、溶媒は、コーティングされたフィルムから除去される。予め決められた時間乾燥させたコーティングされた電極と長時間乾燥させたコーティングされた電極との質量の比較が、乾燥の延長の測定に用いられる。長時間の乾燥中、予め決められた時間乾燥させたコーティングされた電極から除去することができる溶媒の量は、予め決められた時間乾燥させたことを含むコーティングされた電極の総重量を基準として、2重量%未満である。
【0117】
集電体上のコーティングされたフィルムを乾燥させた後、電池電極が形成される。いくつかの実施形態では、電池電極は、電極の密度を高めるために機械的に圧縮される。
【0118】
別の態様では、カソード、アノード、および、カソードとアノードとの間に挿入されたセパレータを含むリチウムイオン電池が本明細書に提供され、少なくとも1つのカソードは、本明細書に開示された方法により作製される正極である。
【0119】
以下の実施例は、本発明の実施形態を例示するために提示されるが、記載された特定の実施形態に本発明を限定するものではない。反対の指示がない限り、全ての部及びパーセンテージは重量による。すべての数値は近似値である。数値範囲が示されている場合、記載された範囲外の実施形態はなお本発明の範疇に含まれると理解すべきである。各実施例に記載された特定の詳細は、本発明の必要な特徴と解釈すべきではない。
例
【0120】
風速は、市販の風速計を用いてコーティングされたフィルムの上面から1cm上の位置で風速を測定することにより決定した。
【0121】
粒度は、MicroBrook2000LD粒度分析計(ブルックヘブン・インスツルメンツ・コーポレーション(Brookhaven Instruments Cooperation)、米国から入手)を使用して分析した。
【0122】
スラリー粘度は、NDJ-5S粘度計(上海・ホンピン・サイエンティフィック・インスツルメント社(Shanghai Hengping Scientific Instrument Co.)、中国から入手)を用いて決定した。
例1
A)カソード活物質の作製
【0123】
粒子状カソード活物質Li1.02Ni0.35Mn0.34Co0.31O2(NMC333)は、共沈法とそれに続く850℃での焼成により得られた。約42μmの粒度D50を有するカソード活物質を得るために、焼成された生成物をジェットミル(LNJ-6A、メンヨウ・リウネン・パウダー・イクイップメント社(Mianyang Liuneng Powder Equipment Co., Ltd.)、中国四川省から入手)で約1時間粉砕した後、270メッシュのこしきを通過させた。
B)正極スラリーの作製
【0124】
上述の方法により作製された92重量%のカソード活物質と、導電剤として4重量%のカーボンブラック(SuperP;ティンカル社(Timcal Ltd)スイス・ボディオから入手)と、バインダー材料として4重量%のポリフッ化ビニリデン(PVDF;Solef(登録商標)5130、ソルベイS.A.(Solvay S.A.)、ベルギーから入手)とを混合し、これらを50重量%のN-メチル-2-ピロリドン(NMP;純度≧99%、シグマ-アルドリッチ(Sigma-Aldrich)、米国)と50重量%のアセトン(純度≧99%、シグマ-アルドリッチ(Sigma-Aldrich)、米国)を含有する混合された溶媒中に分散させて、固形分50重量%を有するスラリーを形成することにより、正極スラリーが作製された。スラリーを遊星型撹拌ミキサーで均質化した。正極スラリーの粘度は、1,850mPa・sであった。
C)正極の作製
【0125】
均質化されたスラリーは、ギャップ幅100μmのドクターブレードコーター(MSK-AFA-III、シンセン・ケイジン・スター・テクノロジー社(Shenzhen Kejing Star Technology Ltd.)、中国から入手)を使用して、集電体として厚さ20μmのアルミニウム箔の片面にコーティングされた。アルミニウム箔上のコーティングされたフィルムを、風速0.1m/sから0.2m/sの静かな空気条件下の65℃で、ボックス型抵抗オーブン(DZF-6020、シンセン・ケイジン・スター・テクノロジー社(Shenzhen Kejing Star Technology Ltd.)、中国から入手)の中で乾燥させた。オーブン内の相対湿度は25~35%であった。乾燥時間は約3分であった。
D)負極の作製
【0126】
90重量%のハードカーボン(HC;純度99.5%、ルイフート・テクノロジー社(Ruifute Technology Ltd.)、中国広東省深センから入手。)と、バインダー材料として1.5重量%のカルボキシメチルセルロース(CMC、BSH-12、DKS社、日本)及び3.5重量%のSBR(AL-2001、日本A&L社、日本)と、導電材として5重量%のカーボンブラックとを混合し、これらを脱イオン水に分散させて、固形分50重量%を有する他方のスラリーを形成することにより、負極スラリーが作製された。スラリーを、ドクターブレードコーター(MSK-AFA-III、シンセン・ケイジン・スター・テクノロジー社(Shenzhen Kejing Star Technology Ltd.)、中国)を使用して、ギャップ幅120μmで、厚さ9μmの銅箔の両面にコーティングした。銅箔上のコーティングされたフィルムを電気加熱式コンベアオーブンにより80℃で10分間乾燥させることにより負極を得た。
E)パウチセルの組立て
【0127】
アルミニウム-プラスチックのラミネートフィルムで作られたケース内に乾燥された電極組立品をパッケージすることにより、パウチセルが組立てられた。カソード電極板とアノード電極板をセパレータにより離して保持し、ケースを予備成形した。次いで、1ppm未満の水分および酸素含有量の高純度アルゴン雰囲気中で、パックされた電極を保持するケースに電解液を充填した。電解液は、エチレンカーボネート(EC)、エチルメチルカーボネート(EMC)およびジメチルカーボネート(DMC)の1:1:1の体積比の混合物中のLiPF6(1M)の溶液であった。電解質充填の後、パウチセルを真空シールし、標準的な四角形のパンチツールを用いて機械的にプレスした。
F)電気化学的測定
【0128】
パウチセルのサイクル性能は、3.0Vから4.2Vの間の1Cの定電流レートで充電および放電することにより試験された。電気化学試験は、広範囲の電位における電池の良好な電気化学的安定性ならびに優れたサイクル性能を示す。
【0129】
例1のカソードスラリーの配合を以下の表1に示す。例1のコーティングされたカソードフィルムの乾燥条件を以下の表2に示す。例1のパウチセルの電気化学的性能を以下の表3に示す。
例2
A)カソード活物質の作製
【0130】
粒子状カソード活物質Li0.98Mn2.1O4(LMO)は、共沈法とそれに続く900℃での焼成により得られた。約15μmの粒度D50を有するカソード活物質を得るために、焼成された生成物をジェットミルで約1時間粉砕した後、400メッシュのこしきを通過させた。
B)正極スラリーの作製
【0131】
上述の方法により作製された92重量%のカソード活物質と、導電剤として3重量%のカーボンブラック(SuperP;ティンカル社(Timcal Ltd)スイス・ボディオから入手)と、バインダー材料として、1重量%のCMC(BSH-12、DKS社(DKS Co. Ltd.)、日本)、2重量%のSBR(AL-2001、日本A&L社(NIPPON A&L INC.)、日本)及び2重量%のポリフッ化ビニリデン(PVDF;Solef(登録商標)5130、ソルベイS.A.(Solvay S.A.)、ベルギーから入手)とを混合し、これらを50重量%の脱イオン水と50重量%のエタノールを含有する混合された溶媒中に分散させて、固形分50重量%を有するスラリーを形成することにより、正極スラリーが作製された。スラリーを遊星型撹拌ミキサーで均質化した。 正極スラリーの粘度は、1,650mPa・sであった。
C)正極の作製
【0132】
均質化されたスラリーは、ギャップ幅100μmのドクターブレードコーターを使用して、集電体として厚さ20μmのアルミニウム箔の片面にコーティングされた。アルミニウム箔上のコーティングされたフィルムを、60℃で約5メートル/分のコンベア速度で、電気加熱式コンベアオーブン(TH-1A、南京・トンハオ・ドライイング・イクイップメント社、中国から入手)により乾燥させた。オーブンは、実質的に風の無い環境に配置された。オーブン内で0.3m/sから0.5m/sの風速が検出された。オーブン内の相対湿度は25~40%であった。乾燥時間は約4.5分であった。
例3
A)カソード活物質の作製
【0133】
粒子状カソード活物質Li1.05Mn1.94O4(LMO)は、共沈法とそれに続く900℃での焼成により得られた。約28μmの粒度D50を有するカソード活物質を得るために、焼成された生成物をボールミリングで約1.5時間粉砕した後、325メッシュのこしきを通過させた。
B)正極スラリーの作製
【0134】
上述の方法により作製された94重量%のカソード活物質と、導電剤として3重量%のカーボンブラック(SuperP;ティンカル社(Timcal Ltd)スイス・ボディオから入手)と、バインダー材料として、1.5重量%のポリアクリル酸(PAA、#181285、シグマ-アルドリッチ(Sigma-Aldrich)、米国から入手)及び1.5重量%のポリアクリロニトリル(LA132、成都インディゴ・パワーソース社(Chengdu Indigo Power Sources Co., Ltd.)、中国)とを混合し、これらを脱イオン水に分散させて、固形分50重量%を有するスラリーを形成することにより、正極スラリーが作製された。スラリーを遊星型撹拌ミキサーで均質化した。 正極スラリーの粘度は、2,300mPa・sであった。
C)正極の作製
【0135】
均質化されたスラリーは、ギャップ幅100μmのドクターブレードコーターを使用して、集電体として厚さ20μmのアルミニウム箔の片面にコーティングされた。アルミニウム箔上のコーティングされたフィルムを、75℃で約8メートル/分のコンベア速度で、電気加熱式コンベアオーブンにより乾燥させた。オーブンは、実質的に風の無い環境に配置された。オーブン内で0.1m/sから0.3m/sの風速が検出された。オーブン内の相対湿度は25~40%であった。乾燥時間は約3分であった。
D)コインセルの組立て
【0136】
CR2032コイン型Liセルは、アルゴン充填グローブボックス中で組立てられた。例1に記載された方法により作製されたコーティングされたカソードシートおよびアノードシートは、コインセル組立品用の円板状の正極および負極に切断された。電解質は、エチレンカーボネート(EC)、エチルメチルカーボネート(EMC)およびジメチルカーボネート(DMC)の体積比が1:1:1の混合物中のLiPF6(1M)の溶液であった。
E)電気化学的測定
【0137】
コインセルは、マルチチャネル電池テスター(BTS-4008-5V10mA、ネウェア・エレクトロニクス社(Neware Electronics Co. Ltd)、中国から入手)を用いて定電流モードで分析された。C/20で1サイクルが完了した後、それらはC/2のレートで充電と放電がされた。セルの充電/放電サイクルテストは、放電容量を得るように、25℃でC/2の電流密度で3.0から4.2Vの間で行われた。放電容量は、126mAh/gであった。
【0138】
非常に速い乾燥速度は、コーティング層の収縮をもたらさず、したがって、コーティング層およびその電気化学的性能を損なわなかった。また、カソード活物質、導電剤およびバインダーを含むカソード電極層は、均一性が高く、作製された正極は、導電性、容量および安定性が高い。
例4
A)カソード活物質の作製
【0139】
粒子状カソード活物質Li1.01Ni0.53Mn0.30Co0.17O2(NMC532)は、共沈法とそれに続く900℃での焼成により得られた。約33μmの粒度D50を有するカソード活物質を得るために、焼成された生成物をボールミリングで約1.5時間粉砕した後、270メッシュのこしきを通過させた。
B)正極スラリーの作製
【0140】
上述の方法により作製された94重量%のカソード活物質と、導電剤として3重量%のカーボンブラック(SuperP;ティンカル社(Timcal Ltd)スイス・ボディオから入手)と、バインダー材料として、0.8重量%のポリアクリル酸(PAA、#181285、シグマ-アルドリッチ(Sigma-Aldrich)、米国から入手)、1.5重量%のスチレンブタジエンゴム(SBR、AL-2001、日本A&L社(NIPPON A&L INC.)、日本から入手)及び0.7重量%のポリフッ化ビニリデン(PVDF;Solef(登録商標)5130、ソルベイS.A.(Solvay S.A.)、ベルギーから入手)とを混合し、これらをアセトン(純度≧99%、シグマ-アルドリッチ(Sigma-Aldrich)、米国)に分散させて、固形分50重量%を有するスラリーを形成することにより、正極スラリーが作製された。スラリーを遊星型撹拌ミキサーで均質化した。正極スラリーの粘度は、2,550mPa・sであった。
C)正極の作製
【0141】
均質化されたスラリーは、ギャップ幅100μmのドクターブレードコーターを使用して、集電体として厚さ20μmのアルミニウム箔の片面にコーティングされた。アルミニウム箔上のコーティングされたフィルムを、65℃で約7メートル/分のコンベア速度で、電気加熱式コンベアオーブンにより乾燥させた。オーブンは、実質的に風の無い環境に配置された。オーブン内で0.3m/sから0.5m/sの風速が検出された。オーブン内の相対湿度は20~40%であった。乾燥時間は約3.5分であった。
D)コインセルの組立て
【0142】
例3に記載された方法により、CR2032コイン型Liセルが作製された。
E)電気化学的測定
【0143】
例4のコイン型セルの電気化学的測定は、例3に記載された方法により行われた。放電容量は、152mAh/gであった。
【0144】
非常に速い乾燥速度は、コーティング層の収縮をもたらさず、したがって、コーティング層およびその電気化学的性能を損なわなかった。また、カソード活物質、導電剤およびバインダーを含むカソード電極層は、均一性が高く、作製された正極は、導電性、容量および安定性が高い。
【0145】
例5-7
例5および例6のカソード活物質は、中国のアモイ・タングステン社(Xiamen Tungsten Co. Ltd)から入手した。例5-7のカソードスラリーは、下記の表1に記載された異なるパラメーターが使用されたことを除いて、例1に記載された方法により作製された。例5-7のコーティングされたカソードフィルムは、下記の表2に記載された異なる乾燥条件が使用されたことを除いて、例1に記載された方法により乾燥させた。
アノードスラリーの作製
【0146】
例2-7のアノードスラリーは、例1に記載された方法により作製された。
例2-7についてのパウチセルの組立て
【0147】
例2-7のパウチセルは、例1に記載された方法により組立てられた。
例2-7についてのパウチセルの電気化学的測定
【0148】
例2-7のパウチセルの電気化学的性能は、例1に記載された方法により行われた。
【0149】
例2-7のカソードスラリーの配合を下記の表1に示す。例2-7のコーティングされたカソードフィルムの乾燥条件を下記の表2に示す。例2-7のパウチセルの電気化学的性能を下記の表3に示す。
比較例1
A)カソード活物質の作製
【0150】
粒子状カソード活物質Li1.02Ni0.33Mn0.35Co0.32O2(NMC333)は、共沈法とそれに続く850℃での焼成により得られた。約6.5μmの粒度D50を有するカソード活物質を得るために、焼成された生成物をジェットミル(LNJ-6A、メンヨウ・リウネン・パウダー・イクイップメント社(Mianyang Liuneng Powder Equipment Co., Ltd.)、中国四川省から入手)で約2.5時間粉砕した後、1250メッシュのこしきを通過させた。
B)正極スラリーの作製
【0151】
比較例1に記載された方法で得られた小さい粒度を有するカソード活物質を用いたこと以外は、例1と同様に、正極スラリーを作製した。正極スラリーの粘度は、2,550mPa・sであった。
C)正極の作製
【0152】
比較例1に記載された方法により得られたカソード活物質を備える正極は、アルミニウム箔上のコーティングされたフィルムを85℃で乾燥させ、乾燥時間を約10分としたこと以外は、例1と同様に作成された。
【0153】
例1の正極スラリーは、比較例1の正極スラリーよりも早く乾燥することが明らかである。カソード活物質の粒度は、粒子が小さくなるにつれて表面積対体積の比率が増加するため、乾燥速度に影響を与える。表面積が大きくなると、溶媒との相互作用が大きくなり、乾燥が遅くなる。したがって、本発明のカソードスラリーは、より効率的な乾燥プロセスおよび改善された生産性をもたらし得る。
比較例2
A)カソード活物質の作製
【0154】
粒子状カソード活物質LiMn2O4(LMO)は、固相反応法とそれに続く900℃での焼成により得られた。約7.5μmの粒度D50を有するカソード活物質を得るために、焼成された生成物をジェットミル(LNJ-6A、メンヨウ・リウネン・パウダー・イクイップメント社(Mianyang Liuneng Powder Equipment Co., Ltd.)、中国四川省から入手)で約2時間粉砕した後、625メッシュのこしきを通過させた。
B)正極スラリーの作製
【0155】
比較例2に記載された方法で得られた小さい粒度を有するカソード活物質を用いたこと以外は、例2と同様に、正極スラリーを作製した。正極スラリーの粘度は、2,150mPa・sであった。
C)正極の作製
【0156】
比較例2に記載された方法により得られたカソード活物質を備える正極は、アルミニウム箔上のコーティングされたフィルムを75℃で乾燥させ、乾燥時間を約9.5分としたこと以外は、例2と同様に作製された。
【0157】
例2の正極スラリーは、比較例2の正極スラリーよりも早く乾燥することが明らかである。カソード活物質の粒度は、乾燥速度に影響を与える。本発明のカソードスラリーは、より効率的な乾燥プロセスおよび改善された生産性をもたらし得る。
アノードスラリーの作製
【0158】
比較例1-2のアノードスラリーは、例1に記載された方法により作製された。
比較例3-7
【0159】
比較例5および比較例6のカソード活物質は、それぞれ、中国長沙の湖南瑞翔ニューマテリアル社(Hunan Rui Xiang New Material Co. Ltd)及び中国青島のフアグワン・ハンユエン・リテック社(HuaGuan HengYuan LiTech Co. Ltd.)から入手した。比較例3-7のカソードスラリーは、下記の表1に記載された異なるパラメーターが使用されたことを除いて、例1に記載された方法により作製された。比較例3-7のコーティングされたカソードフィルムは、下記の表2に記載された異なる乾燥条件が使用されたことを除いて、例1に記載された方法により乾燥させた。比較例3-7のアノードスラリーは、例1に記載の方法で作製された。
比較例1-7についてのパウチセルの組立て
【0160】
比較例1-7のパウチセルは、例1に記載された方法で組立てられた。
比較例1-7についてのパウチセルの電気化学的測定
【0161】
比較例1-7のパウチセルの電気化学的性能は、例1に記載された方法で行われた。
【表1】
【表2】
【表3】
【0162】
本発明を限られた数の実施形態に関して説明したが、一実施形態の特定の特徴は、本発
明の他の実施形態に起因するものではない。記載された実施形態からの変形および変更が
存在する。添付の特許請求の範囲は、本発明の範囲内に含まれる全ての変更および変形を
包含するものとする。
以下に、本願の当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[1]
カソード活物質、導電剤、バインダー材料、及び、溶媒を備えたリチウムイオン電池カソードスラリーであって、
前記カソード活物質は、約10μmから約50μmの範囲の粒度D50を有し、
厚さが約100μmのウェットフィルムを有する集電体上にコーティングされた前記スラリーは、約60℃から約90℃の温度及び約25%から約40%の相対湿度を有する環境下で約5分以下の乾燥時間を有する、
リチウムイオン電池カソードスラリー。
[2]
前記カソード活物質は、少なくとも3μmのD10値を有する、
[1]に記載のスラリー。
[3]
前記カソード活物質は、80μm以下のD90値を有する、
[1]に記載のスラリー。
[4]
前記カソード活物質は、30重量%から65重量%の量で存在し、前記導電剤は、0.8重量%から5重量%の量で存在し、前記バインダー材料は、0.5重量%から6重量%の量で存在し、前記溶媒は、30重量%から60重量%の量で存在し、ここですべての重量%の値は、前記スラリーの総重量を基準にした、
[1]に記載のスラリー。
[5]
前記カソード活物質は、LiCoO
2
、LiNiO
2
、LiNi
x
Mn
y
O
2
、Li
1+z
Ni
x
Mn
y
Co
1-x-y
O
2
、LiNi
x
Co
y
Al
z
O
2
、LiV
2
O
5
、LiTiS
2
、LiMoS
2
、LiMnO
2
、LiCrO
2
、LiMn
2
O
4
、LiFeO
2
、LiFePO
4
、LiNi
0.5
Mn
1.5
O
4
、LiNi
0.4
Mn
1.6
O
4
、これらの複合材料、および、これらの組合せからなるグループから選択され、各xは独立して0.3から0.8あり、各yは独立して0から0.45であり、各zは独立して0から0.2である、
[1]に記載のスラリー。
[6]
前記導電剤は、カーボン、カーボンブラック、グラファイト、膨張グラファイト、グラフェン、グラフェンナノプレートレット、カーボンファイバー、カーボンナノファイバー、グラファイト化カーボンフレーク、カーボンチューブ、カーボンナノチューブ、活性炭、メソポーラスカーボン、およびこれらの混合物からなるグループから選択される、
[1]に記載のスラリー。
[7]
前記バインダー材料は、スチレン-ブタジエンゴム、アクリル化スチレン-ブタジエンゴム、アクリロニトリルコポリマー、アクリロニトリル-ブタジエンゴム、ニトリルブタジエンゴム、アクリロニトリル-スチレン-ブタジエンコポリマー、アクリルゴム、ブチルゴム、フッ素ゴム、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン/プロピレンコポリマー、ポリブタジエン、ポリエチレンオキシド、クロロスルホン化ポリエチレン、ポリビニルピロリドン、ポリビニルピリジン、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリエピクロロヒドリン、ポリホスファゼン、ポリアクリロニトリル、ポリスチレン、ラテックス、アクリル樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネート、シアノエチルセルロース、シアノエチルスクロース、ポリエステル、ポリアミド、ポリエーテル、ポリイミド、ポリカルボキシレート、ポリカルボン酸、ポリアクリル酸、ポリアクリレート、ポリメタクリル酸、ポリメタクリレート、ポリアクリルアミド、ポリウレタン、フッ素化ポリマー、塩素化ポリマー、アルギン酸の塩、ポリフッ化ビニリデン、ポリ(フッ化ビニリデン)-ヘキサフルオロプロペン、およびこれらの組合せからなるグループから選択される、
[1]に記載のスラリー。
[8]
前記アルギン酸の塩は、Na、Li、K、Ca、NH
4
、Mg、Al、またはこれらの組合せから選択されるカチオンを備える、
[7]に記載のスラリー。
[9]
前記溶媒は、N-メチル-2-ピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、アセトニトリル、ブチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、臭化エチル、テトラヒドロフラン、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、メチルプロピルカーボネート、エチレンカーボネート、水、純水、脱イオン水、蒸留水、エタノール、イソプロパノール、メタノール、アセトン、n-プロパノール、t-ブタノール、およびこれらの組合せからなるグループから選択される、
[1]に記載のスラリー。
[10]
前記溶媒の蒸気圧は、少なくとも15kPaである、
[1]に記載のスラリー。
[11]
前記スラリーのpHは、約7から約11である、
[1]に記載のスラリー。
[12]
前記コーティングされたスラリーフィルムは、ボックスオーブン、コンベアオーブン、または、ホットプレートにより乾燥された、
[1]に記載のスラリー。
[13]
前記スラリーの粘度は、約1,000mPa・sから約4,500mPa・sの範囲内である、
[1]に記載のスラリー。
[14]
前記溶媒は、140℃未満、120℃未満、または、100℃未満の沸点を有する、
[1]に記載のスラリー。
[15]
前記カソード活物質の比率D90/D10は、約3から約10、または、約5から約8である、
[1]に記載のスラリー。
[16]
フィルムの形態で前記集電体上にコーティングされた前記スラリーは、約3分以下の乾燥時間を有する、
[1]に記載のスラリー。
[17]
前記カソード活物質の粒度分布は、約12μmに第1のピークおよび約30μmに第2のピークを有する二峰性である、
[1]に記載のスラリー。
[18]
リチウムイオン電池用の正極であって、前記正極は、カソード集電体、及び、前記カソード集電体上に分散されたカソード電極層を備え、前記カソード電極層は、[1]に記載のカソードスラリーを用いて形成された、
リチウムイオン電池用の正極。
[19]
カソード、アノード、及び、カソードとアノードとの間に挿入されたセパレータを備え、少なくとも1つの前記カソードは、[18]に記載の正極である、
リチウムイオン電池。