(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-18
(45)【発行日】2022-03-01
(54)【発明の名称】ずれた配置のロックおよび解除のためのラチェット機構およびラチェットクランプ
(51)【国際特許分類】
F16H 55/26 20060101AFI20220221BHJP
B25B 7/16 20060101ALI20220221BHJP
【FI】
F16H55/26
B25B7/16
(21)【出願番号】P 2019536503
(86)(22)【出願日】2017-01-04
(86)【国際出願番号】 CN2017070165
(87)【国際公開番号】W WO2018126360
(87)【国際公開日】2018-07-12
【審査請求日】2019-12-25
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】515196791
【氏名又は名称】杭州巨星工具有限公司
(73)【特許権者】
【識別番号】515196805
【氏名又は名称】杭州巨星科技股▲ふん▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】リー、ユェミン
【審査官】鷲巣 直哉
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/119223(WO,A1)
【文献】米国特許第06227081(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 55/26
B25B 7/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれが複数のラチェット歯を有する少なくとも2つのラックであって、異なるラックのラチェット歯は並設され、互いにずれているラックを備えるラチェット歯付きアセンブリと、
制御部材であって、前記制御部材はラッチ部とトリガー部とを有し、前記ラッチ部は、それぞれが少なくとも2つのラチェット歯を有する少なくとも2つの爪を有し、異なる爪のラチェット歯は並設され、互いにずれており、前記トリガー部は前記制御部材を切り替えるために使用され、前記ラッチ部の爪と前記ラチェット歯付きアセンブリの前記ラックは、係合位置と解放位置との間を移動する、制御部材と、
を備え、
前記ラッチ部が係合位置に移動したとき、前記ラックの一方のみのラチェット歯は対応する爪のラチェット歯に係合し、残りのラックは対応する爪のラチェット歯には係合せず、前記ラッチ部が解放位置に移動すると、すべてのラックおよび爪が同時に解放され
、
前記ラッチ部は複数のラッチ部材を備え、各爪は各ラッチ部材にそれぞれ設けられており、前記トリガー部は複数のレンチ部材を備え、
前記レンチ部材は突起を有し、
前記ラッチ部材は凹部を有し、
前記突起は、前記凹部にはめ込まれるために使用され、
前記レンチ部材が回転変位すると、前記突起は、前記凹部内で回転変位して前記ラッチ部材を切り替え、
前記レンチ部材は、
第1レンチ部材と、
トリガー部材であって、前記トリガー部材は、前記第1レンチ部材の側面に並設され、前記第1レンチ部材よりも小さく、前記第1レンチ部材および前記トリガー部材はそれぞれ第4シャフトを介してスイングアセンブリに旋回可能に接続され、前記第1レンチ部材および前記トリガー部材はそれぞれ、前記第4シャフトを回転中心として回転変位するよう駆動される、トリガー部材と、
を備え、
前記ラッチ部材は、
第1爪が設けられた第1ラッチ部材と、
第2ラッチ部材であって、前記第2ラッチ部材には第2爪が設けられ、前記第1ラッチ部材および前記第2ラッチ部材はそれぞれ、第5シャフトを介して前記スイングアセンブリに旋回可能に接続され、前記第1ラッチ部材および前記第2ラッチ部材はそれぞれ、前記第5シャフトを回転中心として回転変位するよう駆動される、第2ラッチ部材と、
を備える、ずれた配置のロックおよび解除のためのラチェット機構。
【請求項2】
前記制御部材は、ラッチ部材とレンチ部材とを含むアセンブリであり、
前記レンチ部材は突起を有し、
前記ラッチ部材は凹部を有し、
前記突起は、前記凹部にはめ込まれるために使用され、
前記レンチ部材が回転変位すると、前記突起は、前記凹部内で回転変位して前記ラッチ部材を切り替える、請求項1に記載のずれた配置のロックおよび解除のためのラチェット機構。
【請求項3】
第1クランプアームと、
第2クランプアームと、
ラチェット機構と、
を備え、
前記第1クランプアームおよび前記第2クランプアームは、互いに対して開閉されるように、連結軸を介して互いに旋回可能に連結され、
前記ラチェット機構は、前記第1クランプアームと前記第2クランプアームとの間に設けられ、
前記ラチェット機構は、
前記第1クランプアームに設けられたラチェット歯付きアセンブリであって、それぞれが複数のラチェット歯を有する少なくとも2つのラックであって、異なるラックのラチェット歯は並設され、互いにずれているラックを備えるラチェット歯付きアセンブリと、
前記第2クランプアームに設けられたスイングアセンブリであって、前記第1クランプアームおよび前記第2クランプアームはそれぞれ、前記連結軸を回転軸として互いから離れるようにまたは近づくように移動するように前記スイングアセンブリおよび前記ラチェット歯付きアセンブリを駆動する、スイングアセンブリと、
制御部材であって、前記制御部材はラッチ部とトリガー部とを有し、前記ラッチ部は、それぞれが少なくとの2つのラチェット歯を有する少なくとも2つの爪を有し、異なる爪のラチェット歯は並設され、互いにずれており、前記トリガー部は前記制御部材を切り替えるために使用され、前記ラッチ部の爪と前記ラチェット歯付きアセンブリの前記ラックは、係合位置と解放位置との間を移動する、制御部材と、
を備え、
前記ラッチ部が係合位置に移動したとき、前記ラックの一方のみのラチェット歯は対応する爪のラチェット歯に係合し、残りのラックは対応する爪のラチェット歯には係合せず、前記ラッチ部が解放位置に移動すると、すべてのラックおよび爪が同時に解放され、
第1ラチェット歯および第2ラチェット歯が係合状態に保持されるように、前記トリガー部と前記第2クランプアームとの間に弾性部材が設けられ
、
前記ラッチ部は複数のラッチ部材を備え、各爪は各ラッチ部材にそれぞれ設けられており、前記トリガー部は複数のレンチ部材を備え、
前記レンチ部材は突起を有し、
前記ラッチ部材は凹部を有し、
前記突起は、前記凹部にはめ込まれるために使用され、
前記レンチ部材が回転変位すると、前記突起は、前記凹部内で回転変位して前記ラッチ部材を切り替え、
前記レンチ部材は、
第1レンチ部材と、
少なくとも1つのトリガー部材であって、前記トリガー部材は、前記第1レンチ部材の側面に並設され、前記第1レンチ部材よりも小さく、前記第1レンチ部材および前記トリガー部材はそれぞれ第4シャフトを介して前記スイングアセンブリに旋回可能に接続され、前記第1レンチ部材および前記トリガー部材はそれぞれ、前記第4シャフトを回転中心として回転変位するよう駆動される、少なくとも1つのトリガー部材と、
を備え、
前記ラッチ部材は、
第1爪が設けられた第1ラッチ部材と、
第2ラッチ部材であって、前記第2ラッチ部材には第2爪が設けられ、前記第1ラッチ部材および前記第2ラッチ部材はそれぞれ、第5シャフトを介して前記スイングアセンブリに旋回可能に接続され、前記第1ラッチ部材および前記第2ラッチ部材はそれぞれ、前記第5シャフトを回転中心として回転変位するよう駆動される、第2ラッチ部材と、
を備える、ラチェットクランプ。
【請求項4】
前記連結軸はトーションバネで軸支され、
前記トーションバネの両端は、それぞれ前記第1クランプアームおよび前記第2クランプアームに当接し、
前記第1クランプアームおよび前記第2クランプアームは、通常、前記トーションバネの弾性力によって開位置に保持され、
前記スイングアセンブリは、第1シャフトを介して前記第2クランプアームに旋回可能に接続され、前記スイングアセンブリは前記第1シャフトを介して制動されて前記第2クランプアームとともに移動し、
前記ラチェット歯付きアセンブリは、第2シャフトおよび第3シャフトを介して前記第1クランプアームに旋回可能に接続され、前記ラチェット歯付きアセンブリは、前記第2シャフトおよび前記第3シャフトを介して制動されて前記第1クランプアームとともに移動する、請求項3に記載のラチェットクランプ。
【請求項5】
前記スイングアセンブリは、
ガイド溝であって、前記ガイド溝は、前記ラチェット歯付きアセンブリがその中でスライドするために前記スイングアセンブリの一方側に形成され、前記ラチェット歯付きアセンブリは円弧帯状であり、前記ガイド溝の形状は前記ラチェット歯付きアセンブリの形状と一致し、そのため前記ラチェット歯付きアセンブリが弧状の経路で前記ガイド溝内でスライドする、ガイド溝と、
収容溝であって、前記制御
部材がその中に旋回可能に設けられるように前記スイングアセンブリの他方側に形成される、収容溝と、
開口部であって、前記開口部は、前記ガイド溝と前記収容溝とを連通するために前記ガイド溝と前記収容溝との間に設けられ、前記ラチェット歯付きアセンブリが前記ガイド溝に配置されると、前記複数のラチェット歯は、前記複数のラチェット歯が前記爪に対応するように、前記開口部を通って前記収容溝に延びる、開口部と、
を備える請求項3に記載のラチェットクランプ。
【請求項6】
前記
第1、第2ラッチ部材が係合位置に移動したとき、前記ラックと前記爪は1組のみが係合し、もう1組は係合せず、
前記
第1、第2ラッチ部材が解放位置に移動したとき、前記ラックと前記爪の2組が同時に解放される、請求項
5に記載のラチェットクランプ
【請求項7】
複数の第1ラチェット歯および複数の第2ラチェット歯は、前記ラチェット歯付きアセンブリが前記ガイド溝に配置されると、前記複数の第1ラチェット歯が前記第1爪に対応し、前記複数の第2ラチェット歯が前記第2爪に対応するように、前記開口部を通って前記収容溝に延びる、請求項
6に記載のラチェットクランプ。
【請求項8】
前記ラチェット歯付きアセンブリは、
複数の第1ラチェット歯が設けられた第1ラックと、
複数の第2ラチェット歯が設けられた、前記第1ラックと並設される第2ラックと、
を備え、
前記第1ラックおよび前記第2ラックは両方とも円弧帯状であり、前記第1ラックと前記第2ラックの円弧中心は前記連結軸の円中心と一致する、請求項
7に記載のラチェットクランプ。
【請求項9】
前記複数の第1ラチェット歯はそれぞれ、第1ラチェット歯先端部と第1ラチェット歯溝端部とを有し、
前記複数の第2ラチェット歯はそれぞれ、第2ラチェット歯先端部と第2ラチェット歯溝端部とを有し、
前記第1ラチェット歯先端部のそれぞれと、前記第2ラチェット歯溝端部のそれぞれが並設され、
前記第1ラチェット歯溝端部のそれぞれと、前記第2ラチェット歯先端部のそれぞれが並設される、請求項
7に記載のラチェットクランプ。
【請求項10】
前記ラチェット歯付きアセンブリは第1ラックを有し、
複数の第1ラチェット歯およ
び複数の第2ラチェット歯のそれぞれは、前記第1ラックと並設され、
前記第1ラックは円弧帯状であり、
前記第1ラックの円弧中心は前記連結軸の円中心と一致する、請求項
3に記載のラチェットクランプ。
【請求項11】
前記複数の第1ラチェット歯はそれぞれ、第1ラチェット歯先端部と、第1ラチェット歯溝端部とを有し、
前記複数の第2ラチェット歯はそれぞれ、第2ラチェット歯先端部と、第2ラチェット歯溝端部とを有し、
前記第1ラチェット歯先端部のそれぞれと前記第2ラチェット歯溝端部のそれぞれは並設され、
前記第1ラチェット歯溝端部のそれぞれと前記第2ラチェット歯先端部のそれぞれは並設される、請求項
10に記載のラチェットクランプ。
【請求項12】
前記第1レンチ部材は、前記第1ラッチ部材の第1凹部にはめ込まれるための第1突起を有し、
前記トリガー
部材は、前記第2ラッチ部材の第2凹部にはめ込まれるためのトリガー突起を有し、
前記第1レンチ部材および前記トリガー部材が回転変位すると、前記第1突起は、前記第1凹部内で回転変位して前記第1ラッチ部材を切り替え、前記トリガー突起は、前記第2凹部内で回転変位して前記第2ラッチ部材を切り替える、請求項
3に記載のラチェットクランプ。
【請求項13】
前記第1ラッチ部材は複数の第1爪をさらに備え、
前記第2ラッチ部材は複数の第2爪をさらに備え、
前記第1ラッチ部材および前記第2ラッチ部材は互いに並設され、
前記複数の第1爪および前記複数の第2爪は互いにずれて配置され、
前記複数の第1爪のそれぞれは第1爪先端部および第1爪溝端部を有し、
前記複数の第2爪のそれぞれは第2爪先端部および第2爪溝端部を有し、
前記第1爪先端部のそれぞれと前記第2爪溝端部のそれぞれは並設され、
前記第1爪溝端部のそれぞれと前記第2爪先端部のそれぞれは並設される、請求項
3に記載のラチェットクランプ。
【請求項14】
前記少なくとも1つのトリガー部材は、
第1トリガー部材であって、前記第1トリガー部材は前記第1レンチ部材の側面に並設され、前記第1レンチ部材よりも小さく、前記第1レンチ部材および前記第1トリガー部材はそれぞれ第4シャフトを介して前記スイングアセンブリに旋回可能に接続され、前記第1レンチ部材および前記第1トリガー部材はそれぞれ前記第4シャフトを回転中心として回転変位するよう駆動される、第1トリガー部材と、
第2トリガー部材であって、前記第2トリガー部材は前記第1レンチ部材の側面に並設され、前記第1レンチ部材よりも小さく、前記第1レンチ部材および前記第2トリガー
部材はそれぞれ
前記第4シャフトを介して前記スイングアセンブリに旋回可能に接続され、前記第1レンチ部材および前記第2トリガー部材はそれぞれ前記第4
シャフトを回転中心として回転変位するよう駆動され
る、第2トリガー部材と、
を備え、
前記ラッチ部材は、
第3ラッチ部材であって、前記第3ラッチ部材には第3爪が設けられ、前記第1ラッチ部材、前記第2ラッチ部材および前記第3ラッチ部材はそれぞれ前記第5シャフトを介して前記スイングアセンブリに旋回可能に接続され、前記第1ラッチ部材、前記第2ラッチ部材および前記第3ラッチ部材はそれぞれ前記第5シャフトを回転中心として回転変位するよう駆動される、第3ラッチ部
材
を
さらに備える請求項
3に記載のラチェットクランプ
【請求項15】
前記第1トリガー部材は、前記第1ラッチ部材の第1凹部がはめ込まれるための第1突起を有し、
前記第2トリガー部材は、前記第2ラッチ部材の第2凹部がはめ込まれるための第2突起を有し、
前記第1レンチ部材は、前記第3ラッチ部材の第3凹部がはめ込まれるためのトリガー突起を有し、
前記第1レンチ部材、第1トリガー部材および第2トリガー部材が回転変位すると、前記第1突起は、前記第1凹部内で回転変位して前記第1ラッチ部材を切り替え、前記第2突起は、前記第2凹部内で回転変位して前記第2ラッチ部材を切り替え、前記トリガー突起は、前記第3凹部内で回転変位して前記第3ラッチ部材を切り替える、請求項
14に記載のラチェットクランプ。
【請求項16】
前記第1ラッチ部材は複数の第1爪をさらに備え、
前記第2ラッチ部材は複数の第2爪をさらに備え、
前記第3ラッチ部材は複数の第3爪をさらに備え、
前記第1ラッチ部材、前記第2ラッチ部材および前記第3ラッチ部材が並設されるとき、前記複数の第1爪、前記複数の第2爪および前記複数の第3爪は互いにずれて配置され、
前記複数の第1爪のそれぞれは第1爪先端部と第1爪溝端部を有し、
前記複数の第2爪のそれぞれは第2爪先端部と第2爪溝端部を有し、
前記複数の第3爪のそれぞれは第3爪先端部と第3爪溝端部を有し、
第1爪先端部のそれぞれと第2爪溝端部のそれぞれは並設され、
第1爪溝端部のそれぞれと第2爪先端部のそれぞれは並設される、請求項
14に記載のラチェットクランプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、手工具に関し、特に、ずれた配置のロックおよび解除のためのラチェット機構およびラチェットクランプに関する。
【背景技術】
【0002】
手工具は、手で握って、人の力または人が制御する他の力で物体に作用する小さな工具を指し、手動で切断したり、装飾を補助したりするのに使用され、通常、持ち運びに便利なハンドルが設けられている。プライヤは、機械加工されたワークピースのクランプや固定、または金属線のねじり、曲げ、切断に使用される一般的な手工具のクラスである。機械加工されたワークピースのクランプや固定のためのプライヤは、クランププライヤまたはクランプとも呼ばれます。
【0003】
クランププライヤまたはクランプは一般にV字型であり、通常、構造および構成が互いに対称であり、リベットによって部分的に重なり、固定されている2つのクランプボディで形成されている。クランプは、リベット接続点を支点として柔軟に開閉でき、その設計にはてこの原理が含まれており、したがって小さな外力(クランプアームに加えられる力)はジョーでより大きなクランプ力に変換されるため、クランプは効果的にクランプできる。
【0004】
従来技術では、クランプアームの位置をロックするための機構がクランプに設けられていないため、物体をクランプするとき、クランプタスクが完了するまで、人の手はクランプに比較的大きな力を維持しなければならない。これは、面倒で時間もかかり、クランプは信頼できない。これに関して、米国特許「Vise-Grip or Expanding Pliers」(特許番号US6708587B1)は、両方のクランプアームにラチェット歯付きの部材が設けられ、ラチェット歯によってクランプアームの位置がロックされるという技術的解決策を提供する。部材の1つは接続先のクランプアームに対して動かないため、1つの部材は接続先のクランプアームに対して回転可能で、両方の部材のラチェット歯は相互に噛み合い、2セットのラチェット歯の噛み合いは、2つのクランプアームが互いに向かって移動し、2つのクランプアームが互いから離れるのを妨げる。作動部材は、一方のクランプアームの外側(もう一方のクランプアームから離れた側)、具体的には自動リセットキーに設けられている。作動部材は、ロック部材を介して、接続されるクランプアームに対して回転可能なラチェット歯を有する部材に接続され、ラチェット歯を有する部材がラチェット歯を有する他の部材と係合するかどうかを制御する。
【0005】
クランプの使用時、ユーザが2つのクランプアームに一対の反対の力を加えると(つまり、一方のクランプアームが受ける力の方向が他方のクランプに向けられると)、ロック部材は2セットのラチェット歯を相互に噛み合った状態に保ち、当該2セットのラチェット歯は互いに対して移動でき、これにより、2つのクランプアームが互いに向かって移動でき、その結果、ジョーの2つの部分が互いに向かって移動し、クランプされるべき物体をクランプする。物体がクランプされると、ユーザは2つのクランプアームに加えられた反対の力をキャンセルし、ロック部材は2セットのラチェット歯を相互に噛み合った状態に保ち、2セットのラチェット歯は互いに対して移動できず、ジョーはクランプ状態を維持する。ユーザが作動部材を押して2つのクランプアームに一対の反対の力を加えると(つまり、一方のクランプアームが受ける力の方向が他方のクランプから離れる方向に向けられると)、ロック部材が開き、クランプ力が少なくとも部分的に解放され、2つのラチェット歯はもはや噛み合わなくなり、これにより、2つのクランプアームが互いに反対方向に移動できるようになり、ジョーの2つの部分が互いに反対方向に移動してクランプされた物体を解放する。
【0006】
しかしながら、先行技術のクランプの作動部品は、一方のクランプアームの外側にもうけられているため、ユーザはクランプされた物体を解放するときに作動部材を押す必要がある。ユーザは、作動部材を押すとき、他方のクランプアームに向けられた力を、作動部材が設けられたクランプアームに加える必要があり、その力の方向は、2つの作動中にクランプアームを握る手に加えられる力の方向と反対であることが分かる。そのような操作は、厄介で面倒である。
【0007】
したがって、当業者は、ユーザがスムーズかつ楽に操作できるように、自動ロック式ラチェットクランプの開発に取り組んでいる。
【発明の概要】
【0008】
従来技術の上述した欠点に鑑みて、本発明によって解決されるべき技術的課題は、既存のラチェットクランプはユーザにとって解放するのが厄介で面倒なことである。
【0009】
上述の目的を達成するために、本発明は、それぞれが複数のラチェット歯を有する1つ以上のラックであって、異なるラックのラチェット歯は並設され、互いにずれているラックを含むラチェット歯付きアセンブリと、制御部材であって、制御部材はラッチ部とトリガー部とを有し、ラッチ部は、それぞれが1つ以上のラチェット歯を有する1つ以上の爪を有し、異なる爪のラチェット歯は並設され、互いにずれており、トリガー部は制御部材を切り替えるために使用され、ラッチ部の爪とラチェット歯付きアセンブリのラックは、係合位置と解放位置との間を移動する、制御部材と、を含み、ラッチ部が係合位置に移動したとき、ラックの一方のみの1つ以上のラチェット歯は対応する1つ以上のラチェット歯に係合し、残りのラックは対応する爪のラチェット歯には係合せず、ラッチ部が解放位置に移動すると、すべてのラックおよび爪が同時に解放される、ずれた配置のロックおよび解除のためのラチェット機構を提供する。
【0010】
さらに、制御部材は、ラッチ部材とレンチ部材とを含むアセンブリであり、レンチ部材は突起を有し、ラッチ部材は凹部を有し、突起は、凹部にはめ込まれるために使用され、レンチ部材が回転変位すると、突起は、凹部内で回転変位して前記ラッチ部材を切り替える。
【0011】
本発明はまた、第1クランプアームと、第2クランプアームと、ラチェット機構と、を含み、第1クランプアームおよび第2クランプアームは、互いに対して開閉されるように、連結軸を介して互いに旋回可能に連結され、ラチェット機構は、第1クランプアームと第2クランプアームとの間に設けられ、ラチェット機構は、第1クランプアームに設けられたラチェット歯付きアセンブリであって、複数の第1ラチェット歯および複数の第2ラチェット歯を有し、複数の第1ラチェット歯および複数の第2ラチェット歯は並設され、互いにずれており、第2クランプアームに設けられたスイングアセンブリであって、第1クランプアームおよび第2クランプアームはそれぞれ、連結軸を回転軸として互いから離れるようにまたは近づくように移動するようにスイングアセンブリおよびラチェット歯付きアセンブリを駆動する、スイングアセンブリと、制御アセンブリであって、制御アセンブリは少なくとも1つのラッチ部材と少なくとも1つのレンチ部材とを有し、ラッチ部材はスイングアセンブリに旋回可能に接続され、ラッチ部材は少なくとも1つの第1爪と少なくとも第2爪とを有し、レンチ部材はスイングアセンブリに旋回可能に接続され、レンチ部材は係合位置と解放位置との間を移動するようにラッチ部材を切り替えるために使用される、制御アセンブリと、を含み、ラッチ部材が係合位置に移動したとき、第1爪および第2爪はそれぞれ、対応する複数の第1ラチェット歯および複数の第2ラチェット歯に係合され、ラッチ部材が解放位置に移動したとき、第1爪および第2爪はそれぞれ、対応する複数の第1ラチェット歯および複数の第2ラチェット歯から離れるように移動する、ラチェットクランプを提供する。
【0012】
さらに、連結軸はトーションバネで軸支され、トーションバネの両端は、それぞれ第1クランプアームおよび第2クランプアームに当接し、第1クランプアームおよび第2クランプアームは、通常、トーションバネの弾性力によって開位置に保持され、スイングアセンブリは、第1シャフトを介して第2クランプアームに旋回可能に接続され、スイングアセンブリは第1シャフトを介して制動されて第2クランプアームとともに移動し、ラチェット歯付きアセンブリは、第2シャフトおよび第3シャフトを介して第1クランプアームに旋回可能に接続され、ラチェット歯付きアセンブリは、第2シャフトおよび第3シャフトを介して制動されて第1クランプアームとともに移動する。
【0013】
さらに、スイングアセンブリは、ガイド溝であって、ガイド溝は、ラチェット歯付きアセンブリがその中でスライドするためにスイングアセンブリの一方側に形成され、ラチェット歯付きアセンブリは円弧帯状であり、ガイド溝の形状はラチェット歯付きアセンブリの形状と一致し、そのためラチェット歯付きアセンブリが弧状の経路でガイド溝内でスライドする、ガイド溝と、収容溝であって、制御部材がその中に旋回可能に設けられるようにスイングアセンブリの他方側に形成される、収容溝と、開口部であって、開口部は、ガイド溝と収容溝とを連通するためにガイド溝と収容溝との間に設けられ、複数の第1ラチェット歯および複数の第2ラチェット歯は、複数の第1ラチェット歯が第1爪に対応し、複数の第2ラチェット歯が第2爪に対応するように、ラチェット歯付きアセンブリがガイド溝に配置されると、開口部を通って収容溝に延びる、開口部と、を含む。
【0014】
さらに、ラチェット歯付きアセンブリは、複数の第1ラチェット歯が設けられた第1ラックと、複数の第2ラチェット歯が設けられた、第1ラックと並設される第2ラックと、含み、第1ラックおよび第2ラックは両方とも円弧帯状であり、第1ラックと第2ラックの円弧中心は連結軸の円中心と一致する。
【0015】
さらに、複数の第1ラチェット歯はそれぞれ、第1ラチェット歯先端部と第1ラチェット歯溝端部とを有し、複数の第2ラチェット歯はそれぞれ、第2ラチェット歯先端部と第2ラチェット歯溝端部とを有し、第1ラチェット歯先端部のそれぞれと、第2ラチェット歯溝端部のそれぞれが並設され、第1ラチェット歯溝端部のそれぞれと、第2ラチェット歯先端部のそれぞれが並設される。
【0016】
さらに、制御アセンブリは、第1レンチ部材と、第2レンチ部材であって、第1レンチ部材と第2レンチ部材はそれぞれ、第4シャフトを介してスイングアセンブリに旋回可能に接続され、第1レンチ部材および第2レンチ部材はそれぞれ、第4シャフトを回転中心として回転変位するよう駆動される、第2レンチ部材と、第1爪が設けられる第1ラッチ部材と、第2ラッチ部材であって、第2ラッチ部材には第2爪が設けられ、第1ラッチ部材および第2ラッチ部材はそれぞれ、第5シャフトを介してスイングアセンブリに旋回可能に接続され、第1ラッチ部材および第2ラッチ部材はそれぞれ、第5シャフトを回転中心として回転変位するよう駆動される、第2ラッチ部材と、を含む。
【0017】
さらに、第1レンチ部材は、第1ラッチ部材の第1凹部にはめ込まれるための第1突起を有し、第2レンチ部材は、第2ラッチ部材の第2凹部にはめ込まれるための第2突起を有し、第1レンチ部材および第2レンチ部材が回転変位すると、第1突起は、第1凹部内で回転変位して第1ラッチ部材を切り替え、第2突起は、第2凹部内で回転変位して第2ラッチ部材を切り替える。
【0018】
さらに、第1ラッチ部材は複数の第1爪をさらに含み、第2ラッチ部材は複数の第2爪をさらに含み、第1ラッチ部材および第2ラッチ部材は、並設され、複数の第1爪および複数の第2爪は互いにずれて配置され、複数の第1爪のそれぞれは第1爪先端部と第1爪溝端部とを有し、複数の第2爪のそれぞれは第2爪先端部と第2爪溝端部とを有し、第1爪先端部のそれぞれと第2爪溝端部のそれぞれは並設され、第1爪溝端部のそれぞれと第2爪先端部のそれぞれは並設される。
【0019】
さらに、ラチェット歯付きアセンブリは第1ラックを有し、複数の第1ラチェット歯および複数の第2ラチェット歯のそれぞれは、第1ラックと並設され、第1ラックは円弧帯状であり、第1ラックの円弧中心は連結軸の円中心と一致する。
【0020】
さらに、複数の第1ラチェット歯はそれぞれ、第1ラチェット歯先端部と、第1ラチェット歯溝端部とを有し、複数の第2ラチェット歯はそれぞれ、第2ラチェット歯先端部と、第2ラチェット歯溝端部とを有し、第1ラチェット歯先端部のそれぞれと第2ラチェット歯溝端部のそれぞれは並設され、第1ラチェット歯溝端部のそれぞれと第2ラチェット歯先端部のそれぞれは並設される。
【0021】
さらに、制御アセンブリは、第1レンチ部材であって、第1レンチ部材は、第4シャフトを介してスイングアセンブリに旋回可能に接続され、第1レンチ部材および第2レンチ部材はそれぞれ第4シャフトを回転中心として回転変位するよう駆動される、第1レンチ部材と、第1ラッチ部材であって、第1ラッチ部材には、第1爪と第2爪とがそれぞれ設けられ、第1ラッチ部材は第5シャフトを介してスイングアセンブリに旋回可能に接続され、第1ラッチ部材は第5シャフトを回転中心として回転変位するよう駆動される、第1ラッチ部材と、を含み、第1レンチ部材は第1ラッチ部材の第1凹部にはめ込まれるための第1突起を有し、第1レンチ部材が回転変位すると、第1突起は、第1凹部内で回転変位して第1ラッチ部材を切り替える。
【0022】
第1ラッチ部材は複数の第1爪および複数の第2爪をさらに含み、複数の第1爪および複数の第2爪は、互いにずれて配置され、複数の第1爪のそれぞれは第1爪先端部と第1爪溝端部とを有し、複数の第2爪のそれぞれは第2爪先端部と第2爪溝端部とを有し、第1爪先端部のそれぞれと第2爪溝端部のそれぞれは並設され、第1爪溝端部のそれぞれと第2爪先端部のそれぞれは並設される。
【0023】
さらに、制御アセンブリは、第1レンチ部材と、トリガー部材であって、トリガー部材は、第1レンチ部材の側面に並設され、第1レンチ部材よりも小さく、第1レンチ部材およびトリガー部材はそれぞれ第4シャフトを介してスイングアセンブリに旋回可能に接続され、第1レンチ部材およびトリガー部材はそれぞれ、第4シャフトを回転中心として回転変位するよう駆動される、トリガー部材と、第1爪が設けられた第1ラッチ部材と、第2ラッチ部材であって、第2ラッチ部材には第2爪が設けられ、第1ラッチ部材および第2ラッチ部材はそれぞれ、第5シャフトを介してスイングアセンブリに旋回可能に接続され、第1ラッチ部材および第2ラッチ部材はそれぞれ、第5シャフトを回転中心として回転変位するよう駆動される、第2ラッチ部材と、を含む。
【0024】
さらに、第1レンチ部材は、第1ラッチ部材の第1凹部にはめ込まれるための第1突起を有し、前記トリガーは、第2ラッチ部材の第2凹部にはめ込まれるためのトリガー突起を有し、第1レンチ部材およびトリガー部材が回転変位すると、第1突起は、第1凹部内で回転変位して第1ラッチ部材を切り替え、トリガー突起は、第2凹部内で回転変位して第2ラッチ部材を切り替える。
【0025】
さらに、第1ラッチ部材は複数の第1爪をさらに備え、第2ラッチ部材は複数の第2爪をさらに含み、第1ラッチ部材および第2ラッチ部材は互いに並設され、複数の第1爪および複数の第2爪は互いにずれて配置され、複数の第1爪のそれぞれは第1爪先端部および第1爪溝端部を有し、複数の第2爪のそれぞれは第2爪先端部および第2爪溝端部を有し、第1爪先端部のそれぞれと第2爪溝端部のそれぞれは並設され、第1爪溝端部のそれぞれと第2爪先端部のそれぞれは並設される。
【0026】
本発明によるラチェットクランプは互いに並設され、互いにずれて配置された2列のラチェット歯の配置により、2列のラチェット歯は歯形を減少させることなく元の構造強度を維持することを可能にし、また、2列のずれたラチェット歯の配置においてラチェット歯の数を増やし、それにより、係合時のバックラッシが減少し、全体的な係合面積が増え、ラチェット歯に加わる力を分散する。ラチェット歯および爪は、クランプ力のデフォルト値に達したときに正常にスキップでき、それにより正確なクランプ機構によって加えられるクランプ力の程度を制御し、スムーズにスキップできなかったり、簡単に逸脱したり、クランプ力がデフォルト値に達したときに摩耗によって歯が破損したりするなどの問題を回避する。
【0027】
本発明の技術的概念および好ましい実施形態を、添付の図面と併せて以下でさらに詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】本発明の第1の実施形態によるラチェットクランプの正面図である。
【
図2】本発明の第1の実施形態によるラチェットクランプの断面図である。
【
図3】本発明の第1の実施形態によるラチェットクランプの分解図である。
【
図4】本発明の第1の実施形態によるラチェット歯付きアセンブリおよび制御アセンブリの分解図である。
【
図5】本発明の第1の実施形態によるラチェット歯付きアセンブリおよび制御アセンブリの係合概略図である。
【
図6】本発明の第1の実施形態によるラチェットクランプの動作概略図である。
【
図7】本発明の第1の実施形態によるラチェットクランプの動作概略図である。
【
図8】本発明の第2の実施形態によるラチェット歯付きアセンブリおよび制御アセンブリの分解図である。
【
図9】本発明の第2の実施形態によるラチェット歯付きアセンブリおよび制御アセンブリの係合概略図である。
【
図10】、本発明の第3の実施形態によるラチェット歯付きアセンブリおよび制御アセンブリの分解図である。
【
図11】本発明の第3の実施形態によるラチェット歯付きアセンブリおよび制御アセンブリの係合概略図である。
【
図12】本発明の第4の実施形態によるラチェット歯付きアセンブリおよび制御アセンブリの分解図である。
【
図13】本発明の第4の実施形態によるラチェット歯付きアセンブリおよび制御アセンブリの係合概略図である。
【
図14】本発明のずれた配置のロック機構の係合側の概略図である。
【
図15】本発明のずれた配置のロック機構の解放側の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
10 クランプ機構
11 第1クランプアーム
12 第2クランプアーム
13 連結軸
131 トーションバネ
14 ジョー
15 第1シャフト
16 第2シャフト
17 第3シャフト
18 第4シャフト
19 第5シャフト
20 スイングアセンブリ
21 ガイド溝
22 収容溝
23 開口部
30 ラチェット歯付きアセンブリ
31 第1ラック
311 第1ラチェット歯
311a 第1ラチェット歯先端部
311b 第1ラチェット歯溝端部
312 第2ラチェット歯
312a 第2ラチェット歯先端部
312b 第2ラチェット歯溝端部
32 第2ラック
321 第2ラチェット歯
321a 第2ラチェット歯先端部
321b 第2ラチェット歯溝端部
33 第3ラック
331 第3ラチェット歯
40 制御アセンブリ
41 第1レンチ部材
411 第1突起
412 第1レンチ部材トリガー端部
42 第2レンチ部材
421 第2突起
43 第1ラッチ部材
431 第1凹部
432 第1爪
432a 第1爪先端部
432b 第1爪溝端部
433 第2爪
433a 第2爪先端部
433b 第2爪溝端部
44 第2ラッチ部材
441 第2凹部
442 第2爪
442a 第2爪先端部
442b 第2爪溝端部
45 トリガー部材
451 トリガー突起
46 第3ラッチ部材
47 第2トリガー部材
50 弾性部材
【0030】
図1および
図2は、クランプ機構およびラチェット機構を含む本発明によるラチェットクランプの第1の実施形態の構成を示す。クランプ機構10は、連結軸13を介して互いに連結された第1クランプアーム11および第2クランプアーム12から形成されている。連結軸は、トーションバネ131で軸支されている。トーションバネ131の両端は、それぞれ第1クランプアーム11および第2クランプアーム12に当接する。第1クランプアーム11および第2クランプアーム12は、連結軸13を回転中心としてジョー14の開閉を制御する。具体的には、第1クランプアーム11および第2クランプアーム12が互いに近づくように操作されると、ジョー14の距離は徐々に縮まり、トーションバネ131は力を受けて弾性変形し、ジョー14の位置はラチェット機構によって固定される。その結果、第1クランプアーム11および第2クランプアーム12は、所望のクランプ力を発生させ、それによりワークピースなどの物品をクランプする。第1クランプアーム11と第2クランプアーム12とが互いに離れるように操作されるとき、ラチェット機構は最初に解除される必要があり、トーションバネ131の弾性復元力によってジョー14の距離は徐々に拡がる。このようにして、クランプされたワークピースが解放される。
【0031】
図3に示すように、ラチェット機構は、スイングアセンブリ20、ラチェット歯付きアセンブリ30、および制御アセンブリ40を含む。スイングアセンブリ20は、第1シャフト15を介して第2クランプアーム12に旋回可能に接続される。第2クランプアーム12が第1クランプアーム11に対して往復運動するとき、スイングアセンブリ20は、第1シャフト15を介して制動され、第2のクランプアーム12とともに変位することができる。
【0032】
スイングアセンブリ20は、ガイド溝21、収容溝22および開口部23を有する。ガイド溝21は、ラチェット歯付きアセンブリ30がその中でスライドするために、スイングアセンブリ20の一方側に形成されている。収容溝22は、制御アセンブリ40がその中に旋回可能に設けられるように、スイングアセンブリ20の他方側に形成されている。また、開口部23は、ガイド溝21と収容溝22とを連通するために、ガイド溝21と収容溝22との間に設けられている。
【0033】
図4および
図5に示すように、ラチェット歯付きアセンブリ30は、互いに並設される第1ラック31および第2ラック32を有する。第1ラック31および第2ラック32は、両方とも円弧帯状であり、2つのラック31,32の円弧中心点は、連結軸13の円中心と一致する。スイングアセンブリ20のガイド溝21もまた、2つの円弧帯状のラック31,32の形状と一致する。そのため、ガイド溝21もまた、円弧状である。これにより、第1ラック31および第2ラック32の両方は、ガイド溝21に沿ってその中でスライドできる。
【0034】
第1ラック31の外側円弧面は、複数の第1ラチェット歯311を有し、第2ラック32もまた、その外側円弧面に複数の第2ラチェット歯321を有する。第1ラック31と第2ラック32が並設されているとき、第1ラチェット歯311のそれぞれと、第2ラチェット歯321のそれぞれは互いにずれている。具体的には、複数の第1ラチェット歯311はそれぞれ、第1ラチェット歯先端部311aおよび第1ラチェット歯溝端部311bを有し、複数の第2ラチェット歯321もそれぞれ、第2ラチェット歯先端部321aおよび第2ラチェット歯溝端部321bを有する。第1ラチェット歯先端部311aは第2ラチェット歯溝端部321bと並設され、第1ラチェット歯溝端部311bは第2ラチェット歯先端部321aと並設され、互い違いの構造配置により、並設された2つラック31,32のラチェット歯311,321は互いにずれて配置される。
【0035】
2つのラック31,32のラチェット歯311,321は、ラチェット歯付きアセンブリ30の第1ラック31および第2ラック32がガイド溝21に共に配置されると、開口部23を通して収容溝22に露出する。第1ラック31および第2ラック32がそれぞれ第2シャフト16および第3シャフト17を介して第1クランプアーム11に旋回可能に接続されると、ラチェット歯付きアセンブリ30は、第2シャフト16および第3シャフト17を介して制動され、第1クランプアーム11とともに変位し、スイングアセンブリ20のガイド溝21内を往復スライドする。その結果、2つのラック31,32のラチェット歯311,321はそれぞれ、収容溝22内を共に往復することができる。
【0036】
制御アセンブリ40は、第1レンチ部材41、第2レンチ部材42、第1ラッチ部材43および第2ラッチ部材44を有する。第1レンチ部材41および第2レンチ部材42はそれぞれ、スイングアセンブリ20の収容溝22に配置される。第1レンチ部材41および第2レンチ部材42はそれぞれ、第4シャフト18を介してスイングアセンブリ20に旋回可能に接続される。第1レンチ部材41および第2レンチ部材42はそれぞれ、第4シャフト18を回転中心として変位するよう駆動される。また、第1レンチ部材41の前端には第1突起411が設けられ、第2レンチ部材42の前端にも第2突起421が設けられる。
【0037】
第1ラッチ部材43および第2ラッチ部材44はそれぞれ、スイングアセンブリ20の収容溝22に配置される。第1ラッチ部材43および第2ラッチ部材44はそれぞれ、第5シャフト19を介してスイングアセンブリ20に旋回可能に接続される。第1ラッチ部材43および第2ラッチ部材44はそれぞれ、第5シャフト19を回転中心として回転するよう駆動される。第1ラッチ部材43は、第1凹部431および複数の第1爪432を有する。第1凹部431は、第1レンチ部材41の第1突起411がそこにはめ込まれるために使用される。第1爪432のそれぞれは、第1ラック31の第1ラチェット歯311のそれぞれに係合することができる。
【0038】
第2ラッチ部材44もまた、第2凹部441および複数の第2爪442を有する。第2凹部441は、第2レンチ部材42の第2突起421がそこにはめ込まれるために使用される。第2爪442のそれぞれは、第2ラック32の第2ラチェット歯321のそれぞれに係合することができる。
【0039】
なお、第1ラッチ部材43および第2ラッチ部材44が互いに並設されているとき、第1爪432のそれぞれおよび第2爪442のそれぞれは、互いにずれていることに留意されたい。具体的には、複数の第1爪432はそれぞれ、第1爪先端部432aおよび第1爪溝端部432bを有し、複数の第2爪442もそれぞれ、第2爪先端部442aおよび第2爪溝端部442bを有する。第1爪先端部432aは第2爪溝端部442bと並設され、第1爪溝端部432bは第2爪先端部442aと並設され、互い違いの構造配置により、並設された2つのラッチ部材43,44の複数の爪432,442は、互いにずれて配置される。
【0040】
図6および
図7に示すように、ユーザが第1クランプアーム11および第2クランプアーム12が互いに向かって移動するよう操作し、クランプされるべき物体をクランプすると、トーションバネ131は2つのクランプアーム11,12による押圧を受けて弾性変形し、第1ラッチ部材43の第1爪432は、徐々にスキップされ、第1ラック31の対応する第1ラチェット歯311にしっかりと係合し、同様に、第2ラッチ部材44の第2爪442もまた、徐々にスキップされ、第2ラック32の対応する第2ラチェット歯321にしっかりと係合する。一方、弾性部材50によって提供される弾性力により、第1レンチ部材41の第1突起411は第1凹部431内にあり、第1ラッチ部材43は、通常は係合位置に保持される。第2レンチ部材42の第2突起421もまた、第2凹部441内にあり、第2ラッチ部材44は、通常は係合位置に保持される。2つのクランプアーム11,12のクランプ力は、2つのラッチ部材43,44と2つのラック31,32との間の密な係合によって維持されうる。
【0041】
ラチェット機構を、安定性および信頼性がより高いものにするために、第1ラチェット歯311および第2ラチェット歯321は、互いにずれて配置され、同じくずれて配置された第1爪432および第2爪442が係合する。
図14および
図15に示すように、ラチェット歯と爪は1組のみが係合し、もう1組は係合していません。同じジョープロセスの前提の下で、ラチェット歯の配置がずれていると、歯の形状を減少せずに、構造強度を高めることができる。また、2列のずれたラチェット歯の配置は、歯の数をさらに増やしてスキップ角度を小さくすることができ、それによってバックラッシュが減少し、構造強度が高まるため、全体的なクランプ力が大幅に向上する。
【0042】
さらに、ラチェット歯の配置がずれていると、2つのラッチ部材43,44の爪432,442はそれぞれ、2つのラック31,32のラチェット歯311,321に確実に係合される。ラチェット歯311,321および爪432,442はクランプ力のデフォルト値に達すると正常にスキップでき、それにより正確なクランプ機構10によって加えられるクランプ力の程度を制御し、スムーズにスキップしなかったり、簡単に逸脱したり、クランプ力がデフォルト値に達したときに摩耗によって歯が破損したりするなどの問題を回避する。
【0043】
ユーザが第1クランプアーム11および第2クランプアーム12が互いから離れるように操作し、クランプされた物品を解放するとき、第1レンチ部材41の第1突起411が第1凹部431内に収まるように、第1レンチ部材41を最初に回転変位させるように操作することができ、第1ラッチ部材43の第1爪432のそれぞれが対応する第1ラチェット歯311から離れるように移動するように、第1ラッチ部材43は係合位置から解放位置に切り替えられる。同様に、第2レンチ部材42は、第2レンチ部材42の第2突起421が第2凹部441内に収まるように、第1ラック31は回転変位するよう操作され、第2ラッチ部材44の第2爪442のそれぞれが対応する第2ラチェット歯321から離れるように移動するように、第2ラッチ部材44は係合位置から解放位置に切り替えられる。しかしながら、上述の操作シーケンスに限定されない。ユーザは、第2レンチ部材42を操作し、次に第1レンチ部材41を操作して、クランプ力を徐々に解放するように外すこともでき、第1レンチ部材41および第2レンチ部材42を同時に操作して、クランプ力を一度に解放することもできる。上述の操作シーケンスは、特許請求の範囲を限定することを意図していない。2つのラッチ部材41,42がそれぞれ解放位置に移動すると、2つのクランプアーム11,12はトーションバネ131の弾性復元力によって開位置にもとり、次のクランプ操作を実行する。
【0044】
図8および
図9は、本発明の第2の実施形態によるラチェット歯付きアセンブリおよび制御アセンブリの分解図および係合概略図であり、その具体的な実装は、上述の第1の実施形態のそれらと概ね同じであり、相違点のみを以下で説明し、同じ点は説明を省略する。
【0045】
本実施形態では、ラチェット歯付きアセンブリ30は第1ラック31を有し、第1ラック31も円弧帯状であり、その第1ラック31の円中心点は連結軸13の円中心と一致する。スイングアセンブリ20のガイド溝21もまた、円弧帯状の第1ラック31の形状と一致する。そのため、ガイド溝21もまた、円弧状である。これにより、第1ラック31は、ガイド溝21に沿ってその中でスライドできる。
【0046】
第1ラック31の外側円弧面は、並設される複数の第1ラチェット歯311および複数の第2ラチェット歯312を有し、第1ラチェット歯311のそれぞれと、第2ラチェット歯312のそれぞれは、互いにずれている。具体的には、複数の第1ラチェット歯311はそれぞれ、第1ラチェット歯先端部311aおよび第1ラチェット歯溝端部311aを有し、複数の第2ラチェット歯312もそれぞれ、第2ラチェット歯先端部312aおよび第2ラチェット歯溝端部312bを有する。第1ラチェット歯先端部311aは第2ラチェット歯溝端部312bと並設され、第1ラチェット歯先端部311aは第2ラチェット歯先端部312aと並設され、互い違いの構造配置により、並設された2つのラチェット歯は互いにずれて配置される。
【0047】
制御アセンブリ40は、第1レンチ部材41および第1ラッチ部材43を有する。第1レンチ部材41は、スイングアセンブリ20の収容溝22に配置される。第1レンチ部材41は、第4シャフト18を介してスイングアセンブリ20に旋回可能に接続される。第1レンチ部材41は、第4シャフト18を回転中心として変位するよう駆動される。また、第1レンチ部材41の前端部に第1突起411が設けられる。
【0048】
第1ラッチ部材43はスイングアセンブリ20の収容溝22に配置される。第1ラッチ部材43は、第5シャフト19を介してスイングアセンブリ20に旋回可能に接続される。第1ラッチ部材43は、第5シャフト19を回転中心として回転するよう駆動される。第1ラッチ部材43は、第1凹部431、複数の第1爪432および複数の第2爪433を有する。第1凹部431は、第1レンチ部材41の第1突起411がそこにはめ込まれるために使用される。第1爪432のそれぞれは、第1ラック31の第1ラチェット歯311のそれぞれに係合することができ、第2爪433のそれぞれは第2ラック32の第2ラチェット歯321のそれぞれに係合することができる。
【0049】
なお、第1ラッチ部材43の第1爪432のそれぞれおよび第2爪433のそれぞれが互いにずれていることに留意されたい。具体的には、複数の第1爪432はそれぞれ、第1爪先端部432aおよび第1爪溝端部432bを有し、複数の第2爪433もそれぞれ、第2爪先端部433aおよび第2爪溝端部433bを有する。第1爪先端部432aは第2爪溝端部433bと並設され、第1爪溝端部432bは第2爪先端部433aと並設され、互い違いの構造配置により、第1ラッチ部材43の複数の爪432,433の2列は、互いにずれて配置される。
【0050】
ユーザが第1クランプアーム11および第2クランプアーム12が互いに向かって移動するよう操作し、クランプされるべき物品をクランプすると、トーションバネ131は2つのクランプアーム11,12による押圧を受けて弾性変形し、第1ラッチ部材43の第1爪432は、徐々にスキップされ、第1ラック31の対応する第1ラチェット歯311にしっかりと係合し、同様に、第1ラッチ部材43の第2爪433もまた、徐々にスキップされ、第2ラック32の対応する第2ラチェット歯321にしっかりと係合する。一方、弾性部材50による弾性復元力により、第1レンチ部材41の第1突起411は第1凹部431内にあり、第1ラッチ部材43は、通常は係合位置に保持される。これにより、クランプアーム11,12のクランプ力は維持されうる。
【0051】
ユーザが第1クランプアーム11および第2クランプアーム12が互いから離れるように操作し、クランプされた物品を解放するとき、第1レンチ部材41の第1突起411が第1凹部431内に収まるように、第1レンチ部材41を最初に回転変位させるように操作することができ、第1ラッチ部材43の第1爪432のそれぞれが対応する第1ラチェット歯311から離れるように移動し、同時に、第1ラッチ部材43の第2爪433のそれぞれが対応する第2ラチェット歯312から離れるように移動するように、第1ラッチ部材43は係合位置から解放位置に切り替えられる。第1ラッチ部材43が解放位置に移動すると、2つのクランプアーム11,12はトーションバネ131の弾性復元力によって開位置に戻り、次のクランプ操作を実行する。
【0052】
図10および
図11は、本発明の第3の実施形態によるラチェット歯付きアセンブリおよび制御アセンブリの分解図および係合概略図であり、その実装は、上述の第1の実施形態のそれらと概ね同じであり、相違点のみを以下で説明し、同じ点は説明を省略する。本実施形態では、制御アセンブリ40は、第1レンチ部材41およびトリガー部材45を有する。トリガー部材45は、第1レンチ部材41の側面に並設される。組み立てられると、第1レンチ部材41およびトリガー部材45はスイングアセンブリ20の収容溝22にそれぞれ取り付けられ、第1レンチ部材41およびトリガー部材45はそれぞれ第4シャフト18を介してスイングアセンブリ20に旋回可能に接続され、第1レンチ部材41およびトリガー部材45はそれぞれ第4シャフト18を回転中心として変位するよう駆動される。また、第1レンチ部材41の前端には第1突起411が設けられ、トリガー部材45の前端にもトリガー突起451が設けられる。
【0053】
トリガー部材45の構造配置により、ユーザがラチェット機構を操作して係合を解除したいとき、ユーザはまず、第1レンチ部材41の第1突起411が第1凹部431に収まるように、第1レンチ部材41を回転変位させるように操作することができ、第1ラッチ部材43の第1爪432のそれぞれが対応する第1ラチェット歯311から離れるように移動するように、第1ラッチ部材43は係合位置から解放位置に切り替えられる。その後、トリガー部材45のトリガー突起451が第2凹部441に収まるように、トリガーを引くのに似た動作で、トリガー部材45は人差し指によって押され、第2ラッチ部材44は、第2ラッチ部材44の第2爪442のそれぞれが対応する第2ラチェット歯321から離れるように移動するように、係合位置から解放位置に切り替えられる。それにより、クランプ機構10のクランプ力が徐々に解放される。
【0054】
図12および
図13は、本発明の第4の実施形態によるラチェット歯付きアセンブリおよび制御アセンブリの分解図および係合概略図であり、その具体的な実装は、上述の第3の実施形態のそれらと概ね同じであり、相違点のみを以下で説明し、同じ点は説明を省略する。本実施形態では、制御アセンブリ40は、第1レンチ部材41、トリガー部材45および第2トリガー部材47を有する。トリガー部材45および第2トリガー部材47は、第1レンチ部材41の側面に並設される。組み立てられると、第1レンチ部材41、トリガー部材45および第2トリガー部材47は、スイングアセンブリ20の収容溝22にそれぞれ取り付けられ、第1レンチ部材41、トリガー部材45および第2トリガー部材47はそれぞれ第4シャフト18を介してスイングアセンブリ20に旋回可能に接続され、第1レンチ部材41、トリガー部材45および第2トリガー部材47はそれぞれ、第4シャフト18を回転中心として変位するよう駆動される。また、第1突起411および第1レンチ部材トリガー端部412は、トリガー部材45および第2トリガー部材47と同じ形状を有し、第1レンチ部材41の前端部に設けられる。トリガー部材45の前端にも、トリガー突起451が設けられる。
【0055】
トリガー部材45の構造配置により、ユーザがラチェット機構を操作して係合を解除したいとき、ユーザはまず、第1レンチ部材41の第1突起411が第1凹部431に収まるように、第1レンチ部材41を回転変位させるように操作することができ、第1ラッチ部材43の第1爪432のそれぞれが対応する第1ラチェット歯311から離れるように移動するように、第1ラッチ部材43は係合位置から解放位置に切り替えられる。その後、トリガー部材45のトリガー突起451が第2凹部441に収まるように、トリガーを引くのに似た動作で、トリガー部材45は人差し指によって押され、第2ラッチ部材44は、第2ラッチ部材44の第2爪442のそれぞれが対応する第2ラチェット歯321から離れるように移動するように、係合位置から解放位置に切り替えられる。それにより、クランプ機構10のクランプ力が徐々に解放される。
【0056】
上記に鑑みて、上記の本発明の実施形態のすべてに従って開示されたラチェットクランプは、並設され、かつ、互いにずれた2列のラチェット歯の配置により、そのずれた2列のラチェット歯が歯形を縮小することなく元の構造強度を維持することを可能にし、また、2列のずれたラチェット歯の配置においてラチェット歯の数を増やし、それにより、係合時のバックラッシが減少し、全体的な係合面積が増え、ラチェット歯に加わる力を分散する。ラチェット歯および爪は、クランプ力のデフォルト値に達したときに正常にスキップでき、それにより正確なクランプ機構によって加えられるクランプ力の程度を制御し、スムーズにスキップできなかったり、簡単に逸脱したり、クランプ力がデフォルト値に達したときに摩耗によって歯が破損したりするなどの問題を回避する。
【0057】
本発明の特定の実施形態について詳しく説明してきた。上記の技術的概念、特定の実施形態および本発明の効果が理解されると、本発明の技術的概念にしたがって、本発明が属する技術分野の当業者によって多くの変更および変更を行うことができることを理解されたい。したがって、論理分析、推論、および制限された実験を通じて従来技術に基づいて本発明の技術的概念に従って当業者が導き出すことができる技術的解決策は、特許請求の範囲によって定義される保護の範囲内にある。