(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-18
(45)【発行日】2022-03-01
(54)【発明の名称】血液癌治療剤
(51)【国際特許分類】
C07H 21/04 20060101AFI20220221BHJP
A61K 31/712 20060101ALI20220221BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20220221BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20220221BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20220221BHJP
C12N 15/11 20060101ALI20220221BHJP
【FI】
C07H21/04 Z
A61K31/712 ZNA
A61K48/00
A61P35/00
A61P35/02
C12N15/11 Z
(21)【出願番号】P 2019558534
(86)(22)【出願日】2018-11-30
(86)【国際出願番号】 KR2018015054
(87)【国際公開番号】W WO2019108004
(87)【国際公開日】2019-06-06
【審査請求日】2019-10-24
(31)【優先権主張番号】10-2017-0164409
(32)【優先日】2017-12-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2018-0150255
(32)【優先日】2018-11-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】517423811
【氏名又は名称】アプタバイオ セラピューティクス インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】APTABIO THERAPEUTICS INC.
【住所又は居所原語表記】Tower-A0504,13,Heungdeok 1-ro,Giheung-gu,Yongin-si,Gyeonggi-do 16954,Republic of Korea
(73)【特許権者】
【識別番号】513217229
【氏名又は名称】サムジン ファーマシューティカル カンパニー,リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【氏名又は名称】服部 博信
(72)【発明者】
【氏名】ムン スン フワン
(72)【発明者】
【氏名】リー スー ジン
(72)【発明者】
【氏名】ジ ユ ミ
(72)【発明者】
【氏名】シン ヘ ジョン
(72)【発明者】
【氏名】キ ミン ヒョ
(72)【発明者】
【氏名】パク ヨン ビン
(72)【発明者】
【氏名】ウム ジ ヒュン
【審査官】中島 芳人
(56)【参考文献】
【文献】特表2012-532123(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07H 21/
A61K 31/
C12N 15/11
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
G-四重鎖構造を形成するオリゴヌクレオチド修飾核酸であって、前記オリゴヌクレオチド修飾核酸は、
下記配列
GaTbNc
[ここで、
Gはグアノシン又はグアノシン誘導体であり、
Tはチミン又はチミン誘導体であり、
Nは修飾核酸であって、1-β-D-アラビノフラノシルシトシン(1-β-D-Arabinofuranosylcytosine)であり、
G、T、及びNは順列によって無作為に配列され、並びに
aは
12~
13から選択される整数、bは
6~
7から選択される整数、
及びcは1~2
から選択される整数であり、ただし、a、b、
及びcの合計値は
20~
22から選択される
整数である。]
で表示されることを特徴とする、オリゴヌクレオチド修飾核酸。
【請求項2】
下記配列で表示されることを特徴とする、請求項1に記載のオリゴヌクレオチド修飾核酸:
配列1)GGTGGTGGTTNTGGTGGTGG;
配列2)GGTGGTGGTNNTGGTGGTGG;
配列3)NGGTGGTGGTTGTGGTGGTGG;又は
配列4)NNGGTGGTGGTTGTGGTGGTGG;
前記配列において、Gはグアノシン又はグアノシン誘導体
であり、Tはチミン又はチミン誘導体であり、及びNは修飾核酸であって、1-β-D-アラビノフラノシルシトシン(1-β-D-Arabinofuranosylcytosine)である。
【請求項3】
前記グアノシン又はグアノシン誘導体は、2’-デオキシグアノシン(2
’-deoxy-guanosine)、グアノシン(guanosine)、2’-O-メチル-グアノシン(2’-O-methyl-guanosine)、2’-フルオロ-グアノシン(2’-F-guanosine)、LNA(Locked Nucleic Acid)-グアノシン、D-デオキシグアノシン及びD-グアノシンの中から選ばれたいずれか一つ以上であることを特徴とする、請求項1に記載のオリゴヌクレオチド修飾核酸。
【請求項4】
請求項1~3のいずれかに記載のオリゴヌクレオチド修飾核酸又はその薬学的に許容可能な塩を有効成分として含有することを特徴とする、血液癌の予防、改善又は治療用組成物。
【請求項5】
前記血液癌は、非ホジキンリンパ腫、ホジキンリンパ腫、多発性骨髄腫、白血病、リンパ腫、骨髄異形性症候群(MDS)、急性リンパ芽球性白血病、急性骨髄性白血病、慢性リンパ球性白血病、慢性骨髄性白血病及び孤立性骨髄腫のいずれか一つ以上である、請求項4に記載の血液癌の予防、改善又は治療用組成物。
【請求項6】
請求項1~3のいずれかに記載のオリゴヌクレオチド修飾核酸又はその薬学的に許容可能な塩を有効成分として含有することを特徴とする、DNA合成
酵素(DNA synthetase)又はDNAメチル転移酵素(DNA methyltransferase)阻害剤である
、シタラビン(Cytarabine)、デシタビン(Decitabine)及びアザシチジン(Azacitidine)のいずれか一つ以上に対する耐性血液癌の予防、改善又は治療用組成物。
【請求項7】
請求項1~3のいずれかに記載のオリゴヌクレオチド修飾核酸又はその薬学的に許容可能な塩を有効成分として含むことを特徴とする、再発性又は難治性急性白血病患者の骨髄単核細胞において高い細胞死滅誘導効果を
有する、急性骨髄性白血病の予防、改善又は治療用組成物。
【請求項8】
請求項1~3のいずれかに記載のオリゴヌクレオチド修飾核酸又はその薬学的に許容可能な塩を有効成分として含むことを特徴とする、正常細胞に比べて癌細胞においてより高い細胞死滅誘導効果を
有する、血液癌の改善又は治療用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、治療効能を持つ修飾核酸である1-β-D-アラビノフラノシルシトシン(1-β-D-Arabinofuranosylcytosine)が導入された新規なオリゴヌクレオチド修飾核酸体又はその薬学的に許容可能な塩を有効成分として含有する血液癌の予防、改善又は治療用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
血液癌は、様々な血液細胞が癌細胞に変わって発生するもので、血液、骨髄、及び/又はリンパ系を攻撃する癌の種類を指す。このような種類の癌には、白血病、リンパ腫及び多発性骨髄腫が含まれる。白血病は、血液細胞を作る造血幹細胞が癌細胞に変わって白血病細胞を過剰生産する一方で、正常血液細胞は十分に生産できないことから、感染、貧血、出血などを伴い得る血液癌である。リンパ腫は、リンパ系で発生する癌であり、非ホジキンリンパ腫とホジキンリンパ腫がある。多発性骨髄腫は、血液内白血球の一種である形質細胞が異常に分化及び増殖して発生する血液癌である。より具体的に、血液癌は、非ホジキンリンパ腫、ホジキンリンパ腫、多発性骨髄腫、白血病、リンパ腫、骨髄異形性症候群、急性リンパ芽球性白血病、急性骨髄性白血病、慢性リンパ球性白血病、慢性骨髄性白血病、孤立性骨髄腫、再生不良性貧血などがある。
毎年、白血病、ホジキン及び非ホジキンリンパ腫、及び骨髄腫の新しい事例が、診断される新しい癌の全事例の略10%を占めている。高齢化社会に入るにつれて血液癌を患う老人が大きく増えているが、彼らの生存率は非常に低く、特に65歳以上の生存率は9.4%に過ぎなく、80歳以上の生存率は0%と極端に低い(Blood,2012,120;1165-1174)。
【0003】
血液癌は、血液とリンパ系に生じた突然変異細胞が全身に流れながら癌細胞に変わって生じる疾患であり、その種類も多様であり、70余種に至る。したがって、血液癌の診断を受けた患者は、初めに突然変異異常細胞を殺すために、まず、身体中の免疫細胞を全てなくす寛解誘導抗癌治療を行う。その後、異常細胞にのみ毒性がある薬を注入する地固め抗癌治療を行う。寛解誘導抗癌治療は、細胞毒性が非常に強い抗癌剤を併用して高容量投与で行うが、毒性と副作用が非常に大きいため、高齢の患者には投与し難い。これが、高齢の血液癌患者の生存率が非常に低い理由である(Blood,2010,116:5818~5823)。
また、血液癌は、高容量の寛解誘導抗癌治療にも反応性がないため、治療効果がないか、或いは耐性発現率及び5年内再発率が非常に高いため、未充足の医学的要求が非常に高い。
現在、抗体及びキナーゼ抑制剤を使用する標的治療療法が開発されているが、依然として血液癌の治療は化学療法及び放射線治療療法に多く依存している(The new england journal of medicine,2014,371:1005~1015)。血液癌の化学療法剤として用いられる抗癌剤は、殆どが相当な毒性をもつ細胞毒性抗癌剤であり、低い生体利用率及び癌細胞への標的伝達の難しさによって非常に高い容量を投与する。このため、患者に深刻な副作用を招き、治療を難しくする。したがって、毒性が少ないとともに効果的な治療効能を持つ新しい治療剤が要求される。
【0004】
グアノシンが豊富なオリゴヌクレオチドは、広範囲な癌細胞に対して細胞成長阻害効果を有するものと知られており、癌細胞に処理する場合、細胞内の特定のタンパク質、例えば、eEF1A、JNK、Ki-ras、nucleolin、stat3、telomerase、topoisomeraseタンパク質などの細胞成長及び死滅に重要なタンパク質と結合して細胞周期を調節する役割を果たし、このようなタンパク質は正常細胞よりも癌細胞に過発現されていることが知られている(Christopher R.Ireson et al.Molecular cancer therapy,2006,2957-2962;Naijie Jing et al.Cancer research,2004,6603-6609;Christophe Marchand et al.The journal of biological chemistry,2002,8906-8911)。
かかるグアノシンが豊富なオリゴヌクレオチドは、シトシンとの三重の水素結合の他にも特別な構造的な特徴を有している。グアノシンが豊富なオリゴヌクレオチドは、分子内結合又は分子間結合によって4本鎖の構造を有することができる。一般的なアデノシンとチアミン、グアノシンとシチジンとの水素結合による二重らせん構造を形成する代わりに、4個のグアノシンが一つの平面に位置してフーグステン(hoogsteen)形態の水素結合をなすことによってG-四重鎖(G-quadruplex)を形成し、これが2本以上連続して構成されて四重らせん構造(tetrahelical structure)を有することになる。一般的にオリゴヌクレオチドは血液内安定性及び細胞透過率が非常に低いため、薬物として開発することには困難があったが、このようなG-四重鎖をなすオリゴヌクレオチドはその構造的な特徴によって安定した構造をなしており、比較的高い血液安定性及び細胞透過度を有すると知られている。
【0005】
このようなG-四重鎖を形成するオリゴヌクレオチドは、米国特許第7314926、米国特許公開第2007-105805号に開示されているように、癌細胞表面に多く発現してある特定のタンパク質と結合し、エンドサイトシスで癌細胞に浸透した後、細胞死滅に関連しているタンパク質に結合して細胞成長を阻害するものと知られており、細胞毒性効果(cytotoxic effect)よりは細胞成長静止効果(cytostatic effect)によって細胞死滅を誘導すると報告されている(Paula J.Bates et al.The journal of biological chemistry,1999,26369-26377;Bruna et al.FEBS journal,2006,1350-1361)。
また、G-四重鎖を形成するオリゴヌクレオチドは、癌細胞の成長を阻害する効果の他にも、米国特許第5567604号では抵ウイルス、米国特許第6994959号では免疫調節作用、米国特許公開第2007-105805号ではハンティントン疾患に治療効果があるものと発表され、生体内で様々な機能及び調節作用をすることが知られた(Cheryl A.Stoddart et al.Antimicrobial agents and chemotherapy,1998,2113-2115;Michael Skogen et al.BMC neuroscience,2006,7:65)。
このようなG-四重鎖を形成するオリゴヌクレオチドは、細胞成長静止効果(cytostatic effect)による細胞死滅を誘導するので、細胞死滅率が比較的高くない。このため、強い毒性の化学療法剤と併用投与しなければならないという不具合がある(Paula J.Bates et al.Experimental and molecular pathology,2009,151-164;Christopher R.Ireson et al.Molecular cancer therapy,2006,2957-2962)。
【0006】
韓国特許第10-0998365号には、G-四重鎖を形成するオリゴヌクレオチドに細胞死滅効果を与える治療用修飾核酸を導入して細胞死滅効果を増大した例が報告されている。しかし、本発明のオリゴヌクレオチド修飾核酸体は開示されておらず、それらの血液癌に対する治療効果及び薬物抵抗性血液癌細胞の細胞死滅効果も開示されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】大韓民国登録特許10-0998365号公報
【文献】米国特許US7314926号公報
【文献】米国公開特許US2007-105805号公報
【文献】米国特許US5567604号公報
【文献】米国特許US6994959号公報
【文献】米国公開特許US2007-105805号公報
【非特許文献】
【0008】
【文献】Christopher R.Ireson et al.Molecular cancer therapy,2006,2957-2962;Naijie Jing et al.Cancer research,2004,6603-6609;Christophe Marchand et al.The journal of biological chemistry,2002,8906?8911.
【文献】Paula J.Bates et al.The journal of biological chemistry,1999,26369?26377;Bruna et al.FEBS journal20061350-1361]
【文献】Cheryl A.Stoddart et al.Antimicrobial agents and chemotherapy,1998,2113-2115;Michael Skogen et al.BMC neuroscience,2006,7:65.
【文献】Paula J.Bates et al.Experimental and molecular pathology,2009,151-164;Christopher R.Ireson et al.Molecular cancer therapy,2006,2957-2962.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、本発明者らは、細胞成長静止効果(cytostatic effect)を有するグアノシンが豊富なためG-四重鎖を形成するオリゴヌクレオチドに、細胞毒性効果(cytotoxic effect)によって細胞死滅を誘導する治療効能を持つ修飾核酸体として1-β-D-アラビノフラノシルシトシン(1-β-D-Arabinofuranosylcytosine)を1個以上導入し、血液安定性及び細胞透過性を増大させると同時に、より効果的に血液癌細胞の成長を抑制し死滅に至らせようとした。このような構造の新規なオリゴヌクレオチドを合成して細胞毒性を比較してみた結果、血液癌細胞死滅効果が画期的に増大し、特に既存の血液癌治療剤に反応しないので治療が難しい薬物抵抗性血液癌細胞においてもnMレベルの優れた抗癌効果を示し、血液癌動物モデルにおいても優れた血液癌治療効能を表すことを確認し、本発明を完成するに至った。
したがって、本発明は、治療効能を持つ修飾核酸として1-β-D-アラビノフラノシルシトシンが1個以上導入され、且つ豊富なグアノシンが含まれた新規なオリゴヌクレオチド修飾核酸体を提供することにその目的がある。
また、本発明は、前記オリゴヌクレオチド修飾核酸体又はその薬学的に許容可能な塩を有効成分として含有する血液癌の予防、改善又は治療用組成物を提供することに他の目的がある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するために、本発明の一側面は、下記化学式2で表示される化合物を含有してG-四重鎖(G-quadruplex)構造を形成することを特徴とするオリゴヌクレオチド修飾核酸体を提供する。
【0011】
【0012】
また、前記オリゴヌクレオチド修飾核酸体は下記配列で表示されることを特徴とする;
配列1)GGTGGTGGTTNTGGTGGTGG
配列2)GGTGGTGGTNNTGGTGGTGG
配列3)NGGTGGTGGTTGTGGTGGTGG
配列4)NNGGTGGTGGTTGTGGTGGTGG
前記配列おいて、Gはグアノシン又はグアノシン誘導体、Tはチミン又はチミン誘導体、Nは1-β-D-アラビノフラノシルシトシンである。
また、本発明の他の側面は、前記オリゴヌクレオチド修飾核酸体又はその薬学的に許容可能な塩を有効成分として含有する血液癌の予防、改善又は治療用組成物を提供する。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る新規なオリゴヌクレオチド修飾核酸体は、1個以上の1-β-D-アラビノフラノシルシトシンとグアノシンが含まれてG-四重鎖を形成できる新規構造の化合物であり、血液癌細胞及び薬物抵抗性血液癌細胞に対して優れた細胞死滅活性及び抗癌治療効能を持つので、血液癌予防及び治療剤として活用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】オリゴヌクレオチド修飾核酸体のシタラビン(血液癌1次治療剤)に薬物抵抗性を持つ血液癌細胞(Cytarabine-resistant MOLM13)における細胞死滅効果を示すグラフである。
【
図2】オリゴヌクレオチド修飾核酸体のシタラビンに対する薬物抵抗性を持つ血液癌細胞(Cytarabine-resistant MV-4-11)に対する細胞成長阻害効果を比較したグラフである。
【
図3】オリゴヌクレオチド修飾核酸体の血液癌動物モデル(Luc-MOLM13AML)において血液癌細胞死滅効能を示すグラフである。
【
図4】オリゴヌクレオチド修飾核酸体の血液癌動物モデル(Luc-MOLM13AML)において血液癌細胞死滅効能を示す映像写真である。
【
図5】オリゴヌクレオチド修飾核酸体の血液癌動物モデル(Luc-MOLM13AML)において抗癌効能及び生存率を示す図である。
【
図6】血液癌同種移植モデル(C1498)においてオリゴヌクレオチド修飾核酸体の生存率及び抗癌効果を示す図である。
【
図7】血液癌同種移植モデル(WEHI-3)においてオリゴヌクレオチド修飾核酸体の生存率及び抗癌効果を示す図である。
【
図8】再発性/難治性患者から由来した骨髄単核細胞においてオリゴヌクレオチド修飾核酸体の増殖抑制作用を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本明細書において、範囲が変数に対して記載される場合、該変数は前記範囲の記載された終了点を含む、記載された範囲内における全ての値を含むと理解できよう。例えば、“5~10”の範囲は、5、6、7、8、9、及び10の値だけでなく、6~10、7~10、6~9、7~9などの任意の下位範囲を含み、5.5、6.5、7.5、5.5~8.5及び6.5~9などのような、記載された範囲の範ちゅうに妥当な整数の間の任意の値も含むと理解できよう。また、例えば、“10%~30%”の範囲は、10%、11%、12%、13%などの値から30%までを含む全ての整数だけでなく、10%~15%、12%~18%、20%~30%などの任意の下位範囲を含み、10.5%、15.5%、25.5%などのような、記載された範囲の範ちゅう内の妥当な整数の間の任意の値も含むと理解できよう。
【0016】
以下、本発明について詳しく説明する。
本発明の一側面は、下記化学式1で表示される化合物を含有してG-四重鎖構造を形成することを特徴とするオリゴヌクレオチド修飾核酸体を提供する:
【0017】
【0018】
前記化学式1において、R1は、水素、又は他の核酸のうちホスフェート残基のリン原子であり、R2は、水素、又は他の核酸のうちホスフェート残基のリン原子である。
【0019】
本発明の一側面において、前記化合物は、下記化学式2で表示される化合物であることを特徴とする、オリゴヌクレオチド修飾核酸体であり得る;
【0020】
【0021】
本発明の一側面において、前記オリゴヌクレオチド修飾核酸体は、‘GaTbNc’配列[ここで、Gはグアノシン又はグアノシン誘導体、Tはチミン又はチミン誘導体であり、Nは修飾核酸であって、1-β-D-アラビノフラノシルシトシン又はその誘導体の修飾核酸であり、G、T、Nは順列によって無作為に配列され、aは1~30の整数、bは0~30の整数、cは1~30の整数であり、ただし、a、b、cの合計値は60を超えない。]で表示されることを特徴とするオリゴヌクレオチド修飾核酸体であり得る。
【0022】
本発明の一側面において、下記配列で表示されることを特徴とするオリゴヌクレオチド修飾核酸体であり得る:
配列1)GGTGGTGGTTNTGGTGGTGG;
配列2)GGTGGTGGTNNTGGTGGTGG;
配列3)NGGTGGTGGTTGTGGTGGTGG;又は
配列4)NNGGTGGTGGTTGTGGTGGTGG;
前記配列において、Gはグアノシン又はグアノシン誘導体、Tはチミン又はチミン誘導体であり、Nは修飾核酸であって、1-β-D-アラビノフラノシルシトシンである。
【0023】
本発明の一側面において、前記グアノシン又はグアノシン誘導体は、2’-デオキシグアノシン(2-deoxy-guanosine)、グアノシン(guanosine)、2’-O-メチル-グアノシン(2’-O-methyl-guanosine)、2’-フルオロ-グアノシン(2’-F-guanosine)、LNA(Locked Nucleic Acid)-グアノシン、D-デオキシグアノシン及びD-グアノシンの中から選ばれたいずれか一つ以上であることを特徴とするオリゴヌクレオチド修飾核酸体であり得る。
【0024】
本発明の他の側面は、前記選ばれたいずれか一つのオリゴヌクレオチド修飾核酸体又はその薬学的に許容可能な塩を有効成分として含有することを特徴とする血液癌の予防、改善又は治療用組成物を提供する。
【0025】
本発明の他の側面において、前記血液癌は、非ホジキンリンパ腫、ホジキンリンパ腫、多発性骨髄腫、白血病、リンパ腫、骨髄異形性症候群(MDS)、急性リンパ芽球性白血病、急性骨髄性白血病、慢性リンパ球性白血病、慢性骨髄性白血病及び孤立性骨髄腫のいずれか一つ以上の血液癌の予防、改善又は治療用組成物を提供する。
【0026】
以下、本発明の具現例について詳しく説明する。
本発明の一側面は、治療効能を持つ修飾核酸として1個以上の1-β-D-アラビノフラノシルシトシンと豊富なグアノシンが含まれた新規オリゴヌクレオチド修飾核酸体を提供することにその目的がある。
【0027】
また、本発明の一側面は、前記オリゴヌクレオチド修飾核酸体又はその薬学的に許容可能な塩を有効成分として含有する血液癌の予防、改善又は治療用組成物を提供することに他の目的がある。
【0028】
本発明で用いられるG-四重鎖は、グアノシン(G)で代表される2’-デオキシグアノシン(2-deoxy-guanosine)、グアノシン(guanosine)、2’-O-メチル-グアノシン(2’-O-methyl-guanosine)、2’-フルオロ-グアノシン(2’-F-guanosine)、LNA(Locked Nucleic Acid)-グアノシン、D-デオキシグアノシン及びD-グアノシンの中から選ばれる1種又は2種以上[
図1参照]などが豊富なため、特定配列において4個のグアノシンが一つの平面に位置してフーグステン(hoogsteen)形態の水素結合をなして四重らせん構造を有することになるオリゴヌクレオチドを指し、ここに治療的効果を持つ修飾核酸を導入するように合成される。
【0029】
グアノシンが豊富なためG-四重鎖構造を形成するオリゴヌクレオチドは、癌細胞にさらに選択的に結合し、細胞内で様々な機作によって癌細胞の成長を阻害することが知られている。
【0030】
このようなG-四重鎖を形成するオリゴヌクレオチドに修飾核酸を1個以上含めて癌細胞内に伝達すると、G-四重鎖自体の細胞成長阻害効果の他にも、ヌクレアーゼ(Nuclease)によって分解される場合に治療効果を持つ修飾核酸が直接的に細胞成長を阻害させ、複合的に癌細胞が死滅した。G-四重鎖を形成するオリゴヌクレオチドは、単独使用時には細胞成長阻止効果しかないため、細胞死滅率が比較的低く、また一定時間以上連続した処理が必要である。しかし、本発明では、血液癌治療効果を持つ修飾核酸が含まれると細胞死滅効果が直接的に増大し、細胞死滅率が急増することを確認した。
【0031】
本発明の一側面において、治療効能を持つ修飾核酸は1-β-D-アラビノフラノシルシトシンであり得る。
【0032】
具体的な態様として、本発明で用いられたシチジン由来治療用修飾核酸(N)は、次の化学式1のシチジン誘導体であり、前記ヌクレオチドを通常の方法[Oligonucleotides and Analogues:A Practical Approach1991Fritz Eckstein et al.IRL Press:Oxford]によってホスホロアミダイトの形態に作るか、或いはヌクレオチドホスホロアミダイトをグレンリサーチ(glenresearch)社、ベリー(Berry and Associates)社、オキノス(Okeanos Tech)社、ケムジーンズ(Chemgene)社、プロリゴ(Proligo)社などから購入し、既存に報告された方法であるDNA合成機を用いた固定相合成法によって、グアノシンが豊富なオリゴヌクレオチドに含まれるように生産可能である。
【0033】
【0034】
前記修飾核酸がホスホロアミダイトの形態に作られたものを使用し、固定相合成機で通常の方法によってオリゴヌクレオチド修飾核酸体を製造することができる。
【0035】
すなわち、前記修飾核酸ホスホロアミダイトを無水アセトニトリルに溶かしてDNA合成機に装着して合成し、グレンリサーチ(glenresearch)社から提供するマニュアル、及び米国特許第5457187号と第5614505号を参考にして通常の合成及び精製方法を用いてオリゴヌクレオチド修飾核酸体を合成する。
【0036】
また、上記のように修飾核酸を用いて合成可能なオリゴヌクレオチド修飾核酸体の代表的な配列は、次の通りである。
配列1)GGTGGTGGTTNTGGTGGTGG
配列2)GGTGGTGGTNNTGGTGGTGG
配列3)NGGTGGTGGTTGTGGTGGTGG
配列4)NNGGTGGTGGTTGTGGTGGTGG
【0037】
適切な位置に修飾核酸を導入した前記配列の化合物は、正常細胞にはほとんど影響を及ぼさない一方で、血液癌細胞及び薬物抵抗性血液癌細胞に対して優れた細胞死滅効果を示すことが確認された。また、血液癌に対する治療効能も非常に優れていることを動物実験から確認した。
したがって、G-四重鎖を形成しながら生理活性を有するオリゴヌクレオチドの配列に本発明のシチジン修飾核酸を置換して導入することによって新規なヌクレオチド修飾核酸体を完成することができる。
【0038】
前記治療的効能を持つ修飾核酸(N)は下記化学式1で表示される化合物としてオリゴヌクレオチド修飾核酸体内に存在するようになる。
【0039】
【0040】
前記化学式1において、R1は、水素、又は他の核酸のうちホスフェート残基のリン原子であり、R2は、水素、又は他の核酸のうちホスフェート残基のリン原子である。
前記配列において、Gはグアノシンであり、好ましくは、2’-デオキシグアノシン(2-deoxy-guanosine)、グアノシン(guanosine)、2’-O-メチル-グアノシン(2’-O-methyl-guanosine)、2’-フルオロ-グアノシン(2’-F-guanosine)、LNA(Locked Nucleic Acid)-グアノシン、D-デオキシグアノシン、D-グアノシンの中から選ばれる1種又は2種以上でよく、Nはシチジン由来の修飾核酸であって、1-β-D-アラビノフラノシルシトシン(1-β-D-Arabinofuranosylcytosine)である。
【0041】
既存の治療効果を持つヌクレオシド含有治療剤の場合、全身毒性、薬剤耐性などの副作用が現れることがあり、多くの癌細胞がこのような治療用ヌクレオシド抗癌剤に耐性を有することになり、他の薬剤を選択しなければならない場合も発生する。このような治療効果を持つヌクレオシドが、癌細胞に対してより大きく選択性を有するG-四重鎖オリゴヌクレオチドに含まれる場合、生体内で正常細胞に及ぼす影響を最小化でき、また薬物抵抗性を持つ癌細胞種においても複合的に死滅率を増大させることができる。
【0042】
このようなG-四重鎖(Quadruplex)構造は、ポタシウムイオン(K+)などが存在する場合、より安定した形態をなすので、血液中のような一般的な生理条件においても非常に長期間安定した構造を有するようになる。したがって、本発明では、一定濃度(30~70mM)のKCl溶液などを用いて、治療効果を持つ修飾核酸が含まれたG-四重鎖オリゴヌクレオチドを安定化させた後に使用する。
【0043】
本発明に係る新規オリゴヌクレオチド修飾核酸体は、血液癌細胞及び薬物抵抗性血液癌細胞で既存の治療効果を持つヌクレオシド含有治療剤に比べて著しく向上した細胞死滅効果を示し、動物モデルを用いた抗癌効能評価においても優れた抗癌治療効能を示した。
【0044】
したがって、本発明は、前記オリゴヌクレオチド修飾核酸体又はその薬学的に許容可能な塩を有効成分として含む癌の予防、改善又は治療用組成物を含む。前記薬学的に許容可能な塩は、例えば、金属塩、有機塩基との塩、無機酸との塩、有機酸との塩、塩基性又は酸性アミノ酸との塩などがある。適合な金属塩として、ナトリウム塩、カリウム塩などのようなアルカリ金属塩;カルシウム塩、マグネシウム塩、バリウム塩などのようなアルカリ土金属塩;アルミニウム塩などがある。有機塩基との塩の適合な例として、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ピリジン、ピコリン、2,6-ルチジン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、シクロヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミン、N,N-ジベンジルエチレンジアミンなどの塩がある。無機酸との塩の適合な例として、例えば、塩酸、ブロム化水素酸、窒酸、硫酸、リン酸などとの塩がある。有機酸との塩の適合な例には、ギ酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、フタル酸、フマル酸、シュウ酸、酒石酸、マレイン酸、クエン酸、コハク酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸などの塩がある。
【0045】
塩基性アミノ酸との塩の適合な例として、例えば、アルギニン、リシン、オルニチンなどの塩がある。酸性アミノ酸との塩の適合な例として、例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸などの塩がある。特に、好ましい塩には、化合物が酸性官能基を有する場合、アルカリ金属塩(例えば、ナトリウム塩、カリウム塩など)、アルカリ土金属塩(例えば、カルシウム塩、マグネシウム塩、バリウム塩など)などのような無機塩、及びアンモニウム塩のような有機塩があり、化合物が塩基性官能基を有する場合、塩酸、ブロム化水素酸、窒酸、硫酸、リン酸などのような無機酸との塩、酢酸、フタル酸、フマル酸、シュウ酸、酒石酸、マレイン酸、クエン酸、コハク酸、メタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸などのような有機酸との塩がある。
【0046】
本発明のオリゴヌクレオチド修飾核酸体を含む癌の予防、改善又は治療用組成物は有効成分の他に、薬学的に許容可能な担体を含むことができる。前記薬学的に許容される担体は、注射剤の場合には、保存剤、等張化剤、無痛化剤、可溶化剤、緩衝剤、及び安定化剤などを混合して使用することができ、経口投与時には、可溶化剤、結合剤、賦形剤、分散剤、安定化剤、懸濁化剤、色素、崩壊剤、滑沢剤及び香料などを使用することができ、局所投与用の場合には、基剤、賦形剤、潤滑剤及び保存剤などを使用することができる。
【0047】
本発明の組成物剤形は、薬学的に許容される担体と混合して様々に製造することができる。また、組成物の剤形は、注射剤の場合には、単位投薬アンプル又は多数回投薬の形態に製造でき、経口投与時には、錠剤、エリキシル剤、カプセル、サスペンション、トローチ、ウエハー及びシロップなどの形態に製造でき、懸濁液、錠剤、丸薬、カプセル及び徐放性製剤などに剤形化できる。
【0048】
一方、製剤化に適合する担体、賦形剤及び希釈剤の例には、微晶質セルロース、キシリトール、エリスリトール、メチルセルロース、ポリビニルピロリドン、澱粉、アカシア、アルギネート、ゼラチン、ラクトース、デキストロース、スクロース、ヒドロキシ安息香酸プロピル、セルロース、水、ヒドロキシ安息香酸メチル、ステアリン酸マグネシウム、タルク、ソルビトール、マンニトール、マルチトール、リン酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、又は鉱物油などを用いることができる。
【0049】
本発明において「投与」とは、ある適切な方法で患者に所定の物質を導入することを意味し、前記有効成分の投与経路は、薬物が目的組織に到達可能ないかなる一般的な経路で投与されてもよい。静脈内投与、皮下投与、経口投与、筋肉内投与、腹腔内投与、肺内投与及び直腸内投与、局所投与、鼻内投与、血内投与などが可能であり、これらに制限されない。しかし、経口投与のとき、オリゴヌクレオチドは消化されるため、経口用組成物は、胃や腸管で分解及び吸収しやすく製造される必要があり、好ましくは注射剤の形態及び鼻腔内投与の形態が可能である。
【0050】
本発明に係る有効成分の製剤内含有量は、体内における活性成分の吸収度、不活性化率、排泄速度、ユーザの年齢、性別及び状態などによって適宜選択することができる。本発明の有効成分の場合、1~1000mg/kgであり、好ましくは3~100mg/kgであり、一日1~3回投与又は一定期間持続的(infusion)投与が可能である。
【0051】
以下、本発明を次の実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明がそれらに限定されるものではない。
【0052】
実施例1:新規なオリゴヌクレオチド修飾核酸体の合成
DNA合成は、一般のDNA固定相合成機を用いて1μmoleスケールで合成を行った。合成に用いられるホスホロアミダイトは、グレンリサーチ(Glen research)社から購入したデオキシグアノシン、チミジン、1-β-D-アラビノフラノシルシトシンホスホロアミダイトを乾燥したアセトニトリルを用いて0.067M濃度に溶かしてポリジン(Polygene)社のDNA固定相合成機に装着した。次の表1に提示された配列によって合成され、一般的に3’→5’の方向に進行されるが、初めのヌクレオチドの3’水酸基を樹脂に付けておき、一つの塩基が添加される間に、大きく4段階の化学反応、すなわち、5’-末端の脱トリチル反応(detritylation)、新しい塩基の付加反応(coupling)、付加反応されなかったDNA鎖のキャッピング(capping)反応、リン酸基の酸化反応(oxidation)を反復した。反応が終結すると保護基を除去し、合成されたCPGレジンをアンモニア水に入れて55℃で5時間放置後にアンモニア水を乾燥させ、白色パウダーを得た。ウォーターズ(Waters)陰イオン交換HPLCカラムを用いてHPLCシステムにおいて1M NaCl溶液を5~70%に増加させて精製を行った。メインピークを収集し、ここに100%エタノールを入れてオリゴヌクレオチドを沈殿させて乾燥した。結果的に、HPLCを用いた測定結果による純度85%以上のオリゴヌクレオチドを得、ESI-LC-MS(Q-TRAP2000ESI-MS)を用いて分子量を測定して合成に成功したか否かを把握した。
【0053】
次の表1の配列の他に、既存に治療を目的に報告されたオリゴヌクレオチド配列、又はG-四重鎖を形成しながら生理的活性を表す様々な配列に対して、前記と同じ方法でオリゴヌクレオチド修飾核酸体を製造することができる。
【0054】
【0055】
実施例2:新規なオリゴヌクレオチド修飾核酸体製剤の製造
それぞれのオリゴヌクレオチド修飾核酸体を、10mM Tris-HCl(pH7.4)溶液に希釈し、最終濃度が100μMとなるように作った。希釈された溶液を94℃で5分間放置した後、氷にチューブを放置した。2M KCl溶液を添加して最終濃度が50mMのKCl溶液となるようにした後、3時間60℃で放置した後、温度を常温まで徐々に下げた。それぞれのオリゴヌクレオチドを10mM Tris-HCl(pH7.4)溶液に希釈して10μM濃度にした後、94℃で5分間放置した後、氷にチューブを放置した溶液と2M KCl溶液を添加して最終濃度50mMのKCl溶液にした後、3時間60℃で放置した後、温度を常温まで徐々に下げた溶液を使用した。
【0056】
実験例1:血液癌細胞及び耐性発現血液癌細胞における細胞死滅率の測定
実験前日に96ウェルプレートに、ml当たり104~105個の血液癌細胞としてHL60、MV-4-11、CCRF-CEM、MOLT-4及びMOLM-13細胞株、薬物抵抗性血液癌細胞としてazacitidine(AZA-1)-resistant MOLM13、decitabine(Dec-5)-resistant MOLM13及びcytarabine(AraC-1)-resistant MOLM13細胞株、正常細胞としてWI38、CCD-18co及びFa2N4が懸濁されている培養液190μlを接種した後、翌日、前記実施例2で製造したオリゴヌクレオチド修飾核酸体溶液10μlを添加して5日間培養した。
接種5日後に、一般のMTT方法で細胞死滅を測定した[JBC1999,26369参考]。
【0057】
本発明の新規オリゴヌクレオチド修飾核酸体に対する細胞死滅率測定の結果、表1に示した通り、本発明の新規オリゴヌクレオチド修飾核酸体である化合物1、2、3、4のIC50は、様々な血液癌細胞に対して優れた細胞死滅効果を示すことを確認した[表2]。
また、本発明の新規オリゴヌクレオチド修飾核酸体は、様々な薬物抵抗性血液癌細胞に対しても優れた細胞死滅効果を示すことを確認した[表3]。
また、血液癌細胞又は薬物抵抗性血液癌細胞対しては優れた細胞死滅効果を示すのに対し、正常細胞にはほとんど影響を及ぼさないことを確認した[表4]。
【0058】
前記細胞死滅効果を確認した結果を下記表2~表4に示す。また、本発明のオリゴヌクレオチド修飾核酸体の薬物抵抗性血液癌細胞に対する細胞死滅効果を確認し、
図1及び
図2にそれぞれ示した。
【0059】
【0060】
【0061】
【0062】
実験例2:ヒト由来血液癌細胞(Luc-MOLM13)異種移植マウスモデルの生体内抗癌効能
ヒト由来血液癌細胞に対する動物における効能を確認するために、NOD-SCIDマウスに血液癌を誘導し、生体内における血液癌細胞死滅効果とマウスの生存率を評価した。
まず、血液癌の誘導は具体的に次のように行った。実験群は、ビークル群(8匹)と薬物群(9匹)で構成した。
8週齢のNOD-SCIDマウスにLuc-MOML-13細胞(human MDS/AML cell line)を1匹当たり10
7細胞を静脈注射した。投与薬物は、ポタシウムバッファに化合物2を2mM濃度に溶かし、94℃で5分間放置した後、3時間徐々に温度を室温に下げた後に使用した。
薬物投与は、細胞接種して2日目から1週に5回ずつ2週間に毎日静脈注射(150mg/kg)した後、生存率を測定し、その結果を
図5に示した。また、薬物投与して10日目に血液癌細胞の細胞死滅効能を生体映像で撮影してビークル群と比較し、その結果を
図3及び表4に示した。
図3及び表4に示すように、ビークル群に比べて薬物投与群の血液癌細胞が著しく減少することを確認した。
また、
図5に示すように、ビークル群に比べて薬物投与群の生存率が著しく優れることを確認した。
【0063】
実験例3:AML(C1498)同種移植マウスモデルの生体内抗癌効能
免疫体系のある環境における血液癌細胞に対する生体内効能を確認するために、C57BL/6マウスにマウス由来血液癌細胞(C1498)を移植し、マウスの生存率を評価した。
まず、血液癌の誘導は具体的に次のように行った。実験群は、ビークル群(8匹)と薬物群(9匹)、対照群(8匹)で構成した。薬物投与群は、化合物2を300mg/kg注射し、対照群は、シタラビンを30mg/kg(化合物2 300mg/kgと同等量のシタラビン)注射した。
8週齢のC57BL/6マウスにC1498細胞(mouse AML cell line)を1匹当たり5X10
5細胞を静脈注射した。投与薬物は、ポタシウムバッファに化合物2を2mM濃度に溶かし、4℃で6時間以上放置後に使用した。
薬物投与は、細胞接種して2日目から一日に2回ずつ2週間に毎日皮下注射し、その生存率を測定した。その結果を
図6に示した。
図6に示すように、ビークル群に比べて薬物投与群の生存率が著しく優れることを確認し、且つ対照群に比べても著しく優れた生存率を確認した。
【0064】
実験例4:AML(WEHI-3)同種移植マウスモデルの生体内抗癌効能
免疫体系のある環境におけるALM細胞に対する生体内効能を確認するために、Balb/cマウスにマウス由来血液癌細胞(WEHI-3)を移植し、マウスの生存率を評価した。
まず、血液癌の誘導は具体的に次のように行った。実験群は、ビークル群(7匹)と薬物群(7匹)、対照群(7匹)で構成した。薬物投与群は、化合物2を300mg/kg注射し、対照群は、シタラビンを30mg/kg(化合物2 300mg/kgと同等量のシタラビン)注射した。
8週齢のBalb/cマウスにWEHI-3細胞(mouse AML cell line)を1匹当たり5X10
5細胞を静脈注射した。投与薬物は、ポタシウムバッファに化合物2を2mM濃度に溶かし、4℃で6時間以上放置後に使用した。
薬物投与は、細胞接種して2日目から一日に2回ずつ2週間に毎日皮下注射し、生存率を測定した。その結果を
図7に示した。
図7に示すように、ビークル群に比べて薬物投与群の生存率が著しく優れることを確認し、対照群に比べても著しく優れた生存率を確認した。
【0065】
実験例5:再発性/難治性患者由来骨髄単核細胞における抗癌効能
実際の患者血液癌細胞における抗癌効能を確認するために、ソウルアサン病院のIRB審査後に供与された再発性/難治性急性骨髄性白血病患者の骨髄単核細胞を用いて、化合物2と対照薬物(シタラビン,AS1411)に対するコロニー形成能を比較した。骨髄単核細胞をコロニー形成培地に分注した後、それぞれの薬物を0.25μM、0.5μM、1μMを処理して16日間培養した後、コロニー個数を測定した。
図8にみられるように、再発性/難治性血液癌細胞において同一濃度の対照薬物は治療効力が不十分だったが、化合物2の抗癌効果は著しく優れていることを確認した。
【0066】
実験例6:毒性試験
本発明の有効成分に対して毒性実験を次のように行った。
化合物2をポタシウムバッファ溶液に溶解した後、それをマウス(群当たりに10匹)にそれぞれ1g/kgを投与して7日間観察したが、死亡するマウスがなくて半数致死量(LD50)は最小1g/kg以上と確認された。
また、血液癌を誘発しなかった一般マウスにおいて、実験例4と同じ条件で薬物を投与したとき、対照群では正常白血球が急減したが、化合物2を投与した薬物投与群では白血球数値を相対的に高く維持し、優れた安全性を示した(ビークル群平均値6.29、ビークル群範囲4.70~8.97、薬物投与群平均値4.07、薬物投与群範囲3.36~4.77、対照群平均値2.34、対照群範囲0.95~4.31)。実験例3~5の結果から、化合物2が血液癌細胞を特異的に死滅させて生存率を高め、正常血液細胞の死滅を最小化することによって血液癌標的治療剤として優れた特性を示すことを確認した。
【0067】
製造例1:注射液剤の製造
化合物2を10mg含有する注射液剤を次のような方法で製造した。
化合物2 1g、塩化ナトリウム0.6g及びアスコルビン酸0.1gを蒸留水に溶解させて100mlを作った。この溶液を瓶に入れて20℃で30分間加熱して滅菌させた。
前記注射液剤の構成成分は、次の通りである。
有効成分1g
塩化ナトリウム0.6g
アスコルビン酸0.1g
蒸留水適量
【配列表フリーテキスト】
【0068】
配列1:GGTGGTGGTTNTGGTGGTGG
配列2:GGTGGTGGTNNTGGTGGTGG
配列3:NGGTGGTGGTTGTGGTGGTGG
配列4:NNGGTGGTGGTTGTGGTGGTGG
【配列表】