(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-18
(45)【発行日】2022-03-01
(54)【発明の名称】埋込み電子機器を有するエラストマーアーティクルおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
B29C 43/18 20060101AFI20220221BHJP
A61M 5/172 20060101ALI20220221BHJP
A61M 5/315 20060101ALI20220221BHJP
B29C 43/36 20060101ALI20220221BHJP
B29L 31/00 20060101ALN20220221BHJP
【FI】
B29C43/18
A61M5/172
A61M5/315
B29C43/36
B29L31:00
(21)【出願番号】P 2019566867
(86)(22)【出願日】2018-06-06
(86)【国際出願番号】 US2018036191
(87)【国際公開番号】W WO2018226780
(87)【国際公開日】2018-12-13
【審査請求日】2020-01-30
(32)【優先日】2017-06-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2017-06-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】517229774
【氏名又は名称】ウエスト ファーマスーティカル サービシーズ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001357
【氏名又は名称】特許業務法人つばさ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ドレイク ケリー
(72)【発明者】
【氏名】グルーエン ハイケ
(72)【発明者】
【氏名】ローバック ジェフリー エム
(72)【発明者】
【氏名】マクギャリー マーティン
(72)【発明者】
【氏名】クリザン ジェイソン
(72)【発明者】
【氏名】ダウリング パトリック
(72)【発明者】
【氏名】ワーマン ジョエル
【審査官】田代 吉成
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-179829(JP,A)
【文献】特開昭55-66365(JP,A)
【文献】国際公開第2015/139962(WO,A1)
【文献】国際公開第2011/032956(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0240747(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0333492(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0217059(US,A1)
【文献】国際公開第2015/103563(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 43/18
A61M 5/172
A61M 5/315
B29C 43/36
B29L 31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療部品の製造方法であって、
エラストマー材料の第1シートを用意することと、
少なくとも一つの電子デバイスをエラストマー材料の前記第1シートに配置してエラストマープリフォームを得ることと、
前記エラストマープリフォームを型に配置し、その中で前記エラストマープリフォームを成形して前記エラストマー材料を硬化させ、前記少なくとも一つの電子デバイスが中に埋め込まれた前記医療部品を形成することと、
を含み、
前記型は、開放キャビティを有する上部半型および開放キャビティを有する下部半型を有し、前記下部半型の前記開放キャビティの底面は、前記エラストマープリフォームから離間するように凹んでおり、前記成形の間に前記エラストマープリフォームの前記エラストマー材料が、前記エラストマープリフォームと前記底面との間の空間に流入して前記少なくとも一つの電子デバイスを前記エラストマー材料によりカプセル化する
方法。
【請求項2】
エラストマー材料の前記第1シートの一の面に保護膜を施すことをさらに含む
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記保護膜は、フルオロポリマー膜である
請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記型と前記エラストマープリフォームの一方は、前記エラストマープリフォームの位置決めおよび/または前記成形の間の前記少なくとも一つの電子デバイスのセンタリングを促進する素子を含む
請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記エラストマープリフォームを少なくとも部分的に凍結させて部分凍結エラストマープリフォームを形成することと、
エラストマー材料の第2シートを用意することと、
前記部分凍結エラストマープリフォームおよびエラストマー材料の前記第2シートを型に位置決めし、前記第1シートは、前記下部半型に直接接触している、ことと、
前記部分凍結エラストマープリフォームおよびエラストマー材料の前記第2シートに熱および圧力を加えて、前記少なくとも一つの電子デバイスが中に埋め込まれた前記医療部品を形成することと、
をさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項6】
エラストマー材料の前記第1シートは、未硬化または部分的に硬化されたエラストマー材料の管の形であり、前記管は、第1端と、対向する第2端と、前記第1および第2端の間に延在する中空の内部とを有し、
前記少なくとも一つの電子デバイスは、前記中空の内部に配置されて前記エラストマープリフォームを形成する
請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記成形工程に先立ち前記管の前記第1端を圧着することおよび前記管の第2端を圧着することをさらに含む請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記管内に前記少なくとも一つの電子デバイスを配置したのち、前記管の前記第1および第2端の各々にプラグを挿入すること
をさらに含む請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記エラストマー材料の前記第1シートは、前記医療部品の第1部材であり、前記第1部材は、閉塞されたベース壁により規定された第1端と、開放端である対向する第2端と、前記第1および第2端の間に延在する側壁と、前記少なくとも一つの電子デバイスの一部を受容するよう構成された内側の凹部とを有し、
前記少なくとも一つの電子デバイスを前記第1部材の前記凹部に位置決めし、
前記第1部材を前記エラストマー材料でオーバーモールドして、前記少なくとも一つの電子デバイスが中に埋め込まれた前記医療部品を形成する、
請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記少なくとも一つの電子デバイスは、前記第1部材の前記内側の凹部内に、前記閉塞されたベース壁に近接して位置決めされる
請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記オーバーモールドされたエラストマー材料は、前記第1部材の前記エラストマー材料と同じである
請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記オーバーモールドされたエラストマー材料は、前記第1部材の前記エラストマー材料とは異なる
請求項9に記載の方法。
【請求項13】
前記エラストマー材料は、熱硬化性エラストマー、または熱可塑性エラストマーである
請求項1または9に記載の方法。
【請求項14】
前記エラストマー材料は、ブチルエラストマー、またはハロブチルエラストマーである
請求項1または9に記載の方法。
【請求項15】
前記成形は、約120~310℃の範囲の温度および約40~350kg/cm
2の範囲の圧力で、最長30分の期間にわたって、行われる
請求項1または9に記載の方法。
【請求項16】
前記成形は、約120~220℃の範囲の温度および約40~70kg/cm
2の範囲の圧力で、約30秒~30分の期間にわたって、行われる
請求項1または9に記載の方法。
【請求項17】
前記成形は、約140~220℃の範囲の温度および約40~70kg/cm
2の範囲の圧力で、約2~15分の期間にわたって、行われる
請求項1または9に記載の方法。
【請求項18】
前記成形は、約160~165℃の範囲の温度および約50kg/cm
2の範囲の圧力で、約15分の期間にわたって、行われる
請求項1または9に記載の方法。
【請求項19】
前記成形は、約160~175℃の範囲の温度および約40~70kg/cm
2の範囲の圧力で、約8分の期間にわたって、行われる
請求項1または9に記載の方法。
【請求項20】
薬剤が充填される容器の部品
の製造方法であって、
前記部品は、前記エラストマー材料で形成された一体状ボディと、前記一体状ボディに埋め込まれるとともに前記エラストマー材料によりカプセル化された前記少なくとも一つの電子デバイスとを備え、前記一体状ボディは、前記容器の内面に接するよう構成さ
れ、
前記部品を、請求項1、6、または10のいずれかの方法により製造
する、部品
の製造方法。
【請求項21】
前記部品は、前記一体状ボディに埋め込まれるとともに前記エラストマー材料によりカプセル化された少なくとも一つの磁性体を更に備えた
請求項20に記載の部品
の製造方法。
【請求項22】
インスリンまたはその誘導体、製剤または類似体を収容するとともに、部品を備えた容器
の製造方法であって、
前記部品
を、請求項1、6、または10のいずれかの方法により製造
する、
容器
の製造方法。
【請求項23】
前記インスリン類似体は、Gly(A21),Arg(B31),Arg(B32)ヒトインスリン;Lys(B3),Glu(B29)ヒトインスリン;Lys(B28),Pro(B29)ヒトインスリン;Asp(B28)ヒトインスリン;ヒトインスリンであって、B28位のプロリンがAsp,Lys,Leu,ValまたはAlaで置換されたものであって、B29位においてはLysがProで置換されていてもよい;Ala(B26)ヒトインスリン;Des(B28-B30)ヒトインスリン;Des(B27)ヒトインスリンおよびDes(B30)ヒトインスリンからなる群から選ばれる
請求項22に記載の容器
の製造方法。
【請求項24】
前記インスリン誘導体は、B29-N-ミリストイル-des(B30)ヒトインスリン;B29-N-パルミトイル-des(B30)ヒトインスリン;B29-N-ミリストイル ヒトインスリン;B29-Nパルミトイル ヒトインスリン;B28-N-ミリストイル LysB28ProB29ヒトインスリン;B28-N-パルミトイル-LysB28ProB29ヒトインスリン;B30-N-ミリストイル-ThrB29LysB30ヒトインスリン;B30-N-パルミトイル-ThrB29LysB30ヒトインスリン;B29-N(N-パルミトイル-Y-グルタミル)-des(B30)ヒトインスリン;B29-N(N-リトコリル-Y-グルタミル)-des(B30)ヒトインスリン;B29-N-(w-カルボキシヘプタデカノイル)-des(B30)ヒトインスリンおよびB29-N-(w-カルボキシヘプタデカノイル)ヒトインスリンからなる群から選ばれる
請求項22に記載の容器
の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の表示】
【0001】
本願は、ともに2017年6月6日付けで出願された米国仮特許出願第62/515623号および第62/515694号の優先権を主張し、その内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
本発明は、広くは、電子機器が中に埋め込まれたエラストマーアーティクルに係り、より詳細には、一つ以上の埋込み電子デバイスを有する成形されたエラストマーアーティクルに関する。
【0003】
投薬装置において、当該装置の動作状態(例えば、使用前および/または投与完了といった諸条件)、識別情報、その他の諸条件(例えば、周囲の温度)等を通信可能とし、これにより患者のモニタリングまたは同様の目的を可能とすることが望ましい。そのような装置は、「スマート」デバイスとして知られている。
【0004】
従来の「スマート」デバイスは、少なくとも二つの異なる材料よりなる複数のパーツを有する傾向がある。例えば、ある公知のシリンジプランジャ装置は、二つのピースで形成されている。一方のピースは、エラストマー材料で形成され、他方のピースは、異なるプラスチックまたはエラストマー材料で形成され、この二つのプランジャピースの間の界面に電子回路が設けられている。他の従来の「スマート」デバイスは、プランジャ内に、センサ等の従来の電子部品を有する。この電子部品は、電子部品が耐えうる低温で形成可能な第1のエラストマー材料で形成された第1の部品内にカプセル化され、その後、形成された第1の部品が、第2のエラストマー材料内にカプセル化されて、プランジャを形成する。つまり、先行技術のスマートプランジャは、三ピースのプランジャである。
【0005】
本発明は、薬剤収容のための、埋込み電子機器を有するエラストマーアーティクルの、新規で改良された製造方法を提供する。例えば、本発明の方法の実施の形態は、高感度な電子機器への熱ダメージを回避するとともに、完全なカプセル化および動作環境の諸条件からの高感度な電子機器の保護を確実にする。本発明の方法はまた、電子機器が、どのように位置決めされ、電子機器の要求事項に対してどのようにより良く対処しうるかについての、より強い制御を可能にする。
【発明の概要】
【0006】
本発明は、カートリッジ、シリンジまたはバイアル等の医療装置の、ピストン、プランジャ、クロージャまたはストッパ等の部品の製造方法に係る。この部品は、成形されたエラストマー本体と、この部品のエラストマー材料内に埋め込まれて完全にカプセル化された少なくとも一つの電子機器とを有する。
【0007】
本発明の一つの好ましい実施の形態は、医療部品の製造方法を意図している。この方法は、エラストマー材料の第1シートを用意することと、少なくとも一つの電子デバイスをエラストマー材料の第1シートに配置してエラストマープリフォームを得ることと、エラストマープリフォームを型に配置し、その中でエラストマープリフォームを成形してエラストマー材料を硬化させ、少なくとも一つの電子デバイスが中に埋め込まれた医療部品を形成することと、を含む。型は、開放キャビティを有する上部半型および開放キャビティを有する下部半型を有する。下部半型の開放キャビティの底面は、エラストマープリフォームから離間するように凹んでいる。成形の間にエラストマープリフォームのエラストマー材料が、エラストマープリフォームと底面との間の空間に流入して少なくとも一つの電子デバイスをエラストマー材料によりカプセル化する。
【0008】
本発明のもう一つの好ましい実施の形態は、医療部品の製造方法を意図している。この方法は、未硬化または部分的に硬化されたエラストマー材料の管を用意することを含む。この管は、第1端と、対向する第2端と、第1および第2端の間に延在する中空の内部とを有する。この方法は、さらに、少なくとも一つの電子デバイスを中空の内部に配置してエラストマープリフォームを得ることと、このエラストマープリフォームを、圧縮成形、ブラダー成形および熱成形からなる群から選ばれた成形工程に供して、エラストマー材料を硬化させるとともに、その中に埋め込まれた少なくとも一つの電子デバイスを有する医療部品を形成することとを含む。
【0010】
本発明のもう一つの好ましい実施の形態は、医療部品の製造方法を意図しており、一つ以上の成形工程を用いてエラストマー材料から医療部品を成形することと、成形された医療部品のボディに少なくとも一つの電子デバイスを挿入することと、を含む。
【0011】
本発明のもう一つの好ましい実施の形態は、医療部品の製造方法を意図している。エラストマー材料の第1シートは、医療部品の第1部材である。第1部材は、閉塞されたベース壁により規定された第1端と、開放端である対向する第2端と、第1および第2端の間に延在する側壁と、少なくとも一つの電子デバイスの一部を受容するよう構成された内側の凹部とを有する。この方法では、少なくとも一つの電子デバイスを第1部材の凹部に位置決めし、第1部材をエラストマー材料でオーバーモールドして、少なくとも一つの電子デバイスが中に埋め込まれた医療部品を形成する。
【0012】
本発明のもう一つの好ましい実施の形態は、薬剤が充填される容器の部品の製造方法を意図している。この部品は、エラストマー材料で形成された一体状ボディと、この一体状ボディに埋め込まれるとともにエラストマー材料によりカプセル化された少なくとも一つの電子デバイスとを備え、一体状ボディは、容器の内面に接するよう構成されている。この部品は、上述した本発明の好ましい実施の形態の方法のいずれかにより製造されたものである。
【0013】
本発明のもう一つの好ましい実施の形態は、薬剤が充填される容器の部品の製造方法を意図している。この部品は、エラストマー材料で形成された一体状ボディと、この一体状ボディに埋め込まれるとともにエラストマー材料によりカプセル化された少なくとも一つの磁性体とを備え、一体状ボディは、容器の内面に接するよう構成されている。この部品は、上述した本発明の好ましい実施の形態の方法のいずれかにより製造されたものである。
【0014】
本発明のもう一つの好ましい実施の形態は、インスリンまたはその誘導体、製剤または類似体を収容する容器、および部品の製造方法を意図している。この部品は、上述した本発明の好ましい実施の形態の方法のいずれかにより製造されたものである。
【0015】
本発明の有利な改良は、従属項において特定されている。これらの改良は、単独で、あるいは互いに任意に組み合わせて実施されうる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
以上の概要は、本発明の好ましい実施の形態の、以下の詳細な説明と同じく、添付図面と併せて読むと、よりよく理解されるであろう。本発明を例示する目的のため、図面には、現在好ましい実施の形態が示されている。しかしながら、本発明は、図示された正確な配置および道具には限定されないものと理解されるべきである。図面において:
【
図1A】
図1Aは、本発明の好ましい実施の形態によるワンステップ成形工程の医療部品の製造方法を示す。
【
図1B】
図1Bは、本発明の好ましい実施の形態によるワンステップ成形工程の医療部品の製造方法を示す。
【
図2A】
図2Aは、本発明の他の好ましい実施の形態によるワンステップ成形工程の医療部品の製造方法を示す。
【
図2B】
図2Bは、本発明の他の好ましい実施の形態によるワンステップ成形工程の医療部品の製造方法を示す。
【
図2C】
図2Cは、本発明の他の好ましい実施の形態によるワンステップ成形工程の医療部品の製造方法を示す。
【
図2D】
図2Dは、本発明の他の好ましい実施の形態によるワンステップ成形工程の医療部品の製造方法を示す。
【
図2E】
図2Eは、本発明の他の好ましい実施の形態によるワンステップ成形工程の医療部品の製造方法を示す。
【
図3A】
図3Aは、本発明のもう一つの好ましい実施の形態によるワンステップ成形工程の医療部品の製造方法を概略的に示す。
【
図3B】
図3Bは、本発明のもう一つの好ましい実施の形態によるワンステップ成形工程の医療部品の製造方法を概略的に示す。
【
図3C】
図3Cは、本発明のもう一つの好ましい実施の形態によるワンステップ成形工程の医療部品の製造方法を概略的に示す。
【
図3D】
図3Dは、本発明のもう一つの好ましい実施の形態によるワンステップ成形工程の医療部品の製造方法を概略的に示す。
【
図3E】
図3Eは、本発明のもう一つの好ましい実施の形態によるワンステップ成形工程の医療部品の製造方法を概略的に示す。
【
図3F】
図3Fは、本発明のもう一つの好ましい実施の形態によるワンステップ成形工程の医療部品の製造方法を概略的に示す。
【
図3G】
図3Gは、本発明のもう一つの好ましい実施の形態によるワンステップ成形工程の医療部品の製造方法を概略的に示す。
【
図3H】
図3Hは、本発明のもう一つの好ましい実施の形態によるワンステップ成形工程の医療部品の製造方法を概略的に示す。
【
図4A】
図4Aは、本発明のもう一つの好ましい実施の形態によるワンステップ成形工程の医療部品の製造方法を概略的に示す。
【
図4B】
図4Bは、本発明のもう一つの好ましい実施の形態によるワンステップ成形工程の医療部品の製造方法を概略的に示す。
【
図4C】
図4Cは、本発明のもう一つの好ましい実施の形態によるワンステップ成形工程の医療部品の製造方法を概略的に示す。
【
図5A】
図5Aは、本発明のもう一つの好ましい実施の形態によるワンステップ成形工程の医療部品の製造方法を概略的に示す。
【
図5B】
図5Bは、本発明のもう一つの好ましい実施の形態によるワンステップ成形工程の医療部品の製造方法を概略的に示す。
【
図5C】
図5Cは、本発明のもう一つの好ましい実施の形態によるワンステップ成形工程の医療部品の製造方法を概略的に示す。
【
図6】
図6は、本発明のもう一つの好ましい実施の形態による、電子デバイスが中に埋め込まれた医療部品を示す。
【
図7】
図7は、本発明のもう一つの好ましい実施の形態による医療部品の製造方法を概略的に示す。
【
図8】
図8は、本発明のもう一つの好ましい実施の形態による医療部品の製造方法を概略的に示す。
【
図9A】
図9Aは、本発明のもう一つの好ましい実施の形態によるワンステップ成形工程の医療部品の製造方法を示す。
【
図9B】
図9Bは、本発明のもう一つの好ましい実施の形態によるワンステップ成形工程の医療部品の製造方法を示す。
【
図9C】
図9Cは、本発明のもう一つの好ましい実施の形態によるワンステップ成形工程の医療部品の製造方法を示す。
【
図10A】
図10Aは、本発明のさらに好ましい実施の形態によるワンステップ成形工程の医療部品の製造方法を概略的に示す。
【
図10B】
図10Bは、本発明のさらに好ましい実施の形態によるワンステップ成形工程の医療部品の製造方法を概略的に示す。
【
図10C】
図10Cは、本発明のさらに好ましい実施の形態によるワンステップ成形工程の医療部品の製造方法を概略的に示す。
【
図11A】
図11Aは、本発明のさらに好ましい実施の形態によるワンステップ成形工程の医療部品の製造方法を概略的に示す。
【
図11B】
図11Bは、本発明のさらに好ましい実施の形態によるワンステップ成形工程の医療部品の製造方法を概略的に示す。
【
図12A】
図12Aは、本発明のもう一つの好ましい実施の形態によるワンステップ成形工程の医療部品の製造方法を概略的に示す。
【
図12B】
図12Bは、本発明のもう一つの好ましい実施の形態によるワンステップ成形工程の医療部品の製造方法を概略的に示す。
【
図14】
図14は、本発明の好ましい実施の形態による
図13A~
図13Cに示したプッシュロッドまたは針を用いて医療部品に電子デバイスを埋め込む方法を概略的に示す。
【
図15】
図15は、本発明のもう一つの好ましい実施の形態によるワンステップ成形工程の医療部品の製造方法の概略である。
【
図16】
図16は、本発明のもう一つの好ましい実施の形態によるワンステップ成形工程の医療部品の製造方法の概略である。
【
図17A】
図17Aは、本発明のもう一つの好ましい実施の形態による様々な構成の切欠きを有する医療部品を示す。
【
図17B】
図17Bは、本発明のもう一つの好ましい実施の形態による様々な構成の切欠きを有する医療部品を示す。
【
図17C】
図17Cは、本発明のもう一つの好ましい実施の形態による様々な構成の切欠きを有する医療部品を示す。
【
図18A】
図18Aは、本発明のもう一つの好ましい実施の形態によるツーステップ成形工程の医療部品の製造方法を示す。
【
図18B】
図18Bは、本発明のもう一つの好ましい実施の形態によるツーステップ成形工程の医療部品の製造方法を示す。
【
図18C】
図18Cは、本発明のもう一つの好ましい実施の形態によるツーステップ成形工程の医療部品の製造方法を示す。
【
図19A】
図19Aは、本発明のもう一つの好ましい実施の形態によるツーステップ成形工程の医療部品の製造方法を示す。
【
図19B】
図19Bは、本発明のもう一つの好ましい実施の形態によるツーステップ成形工程の医療部品の製造方法を示す。
【
図19C】
図19Cは、本発明のもう一つの好ましい実施の形態によるツーステップ成形工程の医療部品の製造方法を示す。
【
図21A】
図21Aは、本発明のもう一つの好ましい実施の形態によるツーステップ成形工程の医療部品の製造方法を示す。
【
図21B】
図21Bは、本発明のもう一つの好ましい実施の形態によるツーステップ成形工程の医療部品の製造方法を示す。
【
図21C】
図21Cは、本発明のもう一つの好ましい実施の形態によるツーステップ成形工程の医療部品の製造方法を示す。
【
図21D】
図21Dは、本発明のもう一つの好ましい実施の形態によるツーステップ成形工程の医療部品の製造方法を示す。
【
図23A】
図23Aは、本発明のもう一つの好ましい実施の形態によるワンステップ成形工程の医療部品の製造方法を示す。
【
図23B】
図23Bは、本発明のもう一つの好ましい実施の形態によるワンステップ成形工程の医療部品の製造方法を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
ある用語法が、以下の説明において用いられているが、それは便宜のためだけで、限定するものではない。「近位」「遠位」「上方」「下方」「底」および「トップ」という単語は、言及されている図面における方向を示す。「内方」および「外方」という単語は、それぞれ、本発明による装置、およびその指定されたパーツの、幾何学的中心に向かう、およびそこから離れる方向をいう。本明細書において特に記載されない限り、「a」「an」および「the」という単語は、一つの要素に限られるのではなく、「少なくとも一つ」を意味するものとして読まれるべきである。この用語法は、上記に記載の単語、その派生語および同様の重要性をもつ単語を含む。
【0018】
詳細な図面を参照すると、
図1A~
図23Bは、電子デバイス12が中に埋め込まれた医療装置の部品10およびそのような医療装置部品10の製造方法の、好ましい実施の形態を表している。図面において、同じ符号は幾つかの図を通じて同じ要素を示している。医療装置部品10は、以下では、簡潔のため「医療部品」と称される。医療部品10は、いかなる公知の医療装置にも、より詳細には、物質で充填可能なキャビティまたはチャンバを有するいかなる容器にも、利用されてよいことが理解されるであろう。例えば、容器は、シリンジ、カートリッジ、バイアル等であってもよいが、それらに限定されない。より詳細には、医療装置は、カートリッジ、針を有するシリンジ、針無しシリンジ、吸入器、固体製剤ディスペンサ、ペン型注射器、自己注射器、携帯式注射器、バイアル等であってもよい。
【0019】
当業者であれば、ピストンという用語は、プランジャ、ストッパ、クロージャ等の用語と、本明細書において同義に用いられてよいことを理解するであろう。
【0020】
医療部品10は、好ましくはポリマー材料、より好ましくはエラストマー材料で作られている。好ましい一実施の形態では、エラストマー材料は、熱硬化性エラストマーまたは熱可塑性エラストマー(TPE)である。例えば、エラストマークロージャに使用されるエラストマー材料は、例えば、合成ゴムまたは天然ゴムであり、ブチルゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、ハロゲン化ブチルゴム(例えば、ブロモブチルゴム)、エチレンプロピレンテルポリマー、シリコンゴム、これらの組合せ等があげられる。好ましくは、エラストマー材料は、ブチルまたはハロブチルエラストマーである。
【0021】
医療部品10は、例えば、カートリッジピストン(プランジャ、ストッパまたはクロージャ)、シリンジピストン(プランジャ、ストッパまたはクロージャ)、バイアルピストン(プランジャ、ストッパまたはクロージャ)、シール、ガスケット、予め充填されたシリンジの部品、スリーブまたは容器ストッパ、フラッシュバックバルブ、キャップ、ライナ、ワッシャ、または薬学的に純粋な材料または薬品と接触しうる他の任意の部品/装置でありうる。好ましい一実施の形態において、医療部品10が併用されうる薬学的薬品は、インスリン(またはその任意の誘導体、製剤または類似体)である。例えば、本明細書において、用語「インスリン」とは、インスリン、インスリン類似体、インスリン誘導体またはそれらの混合物を意味し、ヒトインスリンまたはヒトインスリン類似体もしくは誘導体を含む。インスリン類似体の例は、限定されるものではないが、Gly(A21),Arg(B31),Arg(B32)ヒトインスリン;Lys(B3),Glu(B29)ヒトインスリン;Lys(B28),Pro(B29)ヒトインスリン;Asp(B28)ヒトインスリン;ヒトインスリンであって、B28位のプロリンがAsp,Lys,Leu,ValまたはAlaで置換されたものであって、B29位のLysがProで置換されていてもよい;Ala(B26)ヒトインスリン;Des(B28-B30)ヒトインスリン;Des(B27)ヒトインスリンまたはDes(B30)ヒトインスリンを含む。インスリン誘導体の例は、限定されるものではないが、B29-N-ミリストイル-des(B30)ヒトインスリン;B29-N-パルミトイル-des(B30)ヒトインスリン;B29-N-ミリストイル ヒトインスリン;B29-Nパルミトイル ヒトインスリン;B28-N-ミリストイル LysB28ProB29ヒトインスリン;B28-N-パルミトイル-LysB28ProB29ヒトインスリン;B30-N-ミリストイル-ThrB29LysB30ヒトインスリン;B30-N-パルミトイル-ThrB29LysB30ヒトインスリン;B29-N(N-パルミトイル-Y-グルタミル)-des(B30)ヒトインスリン;B29-N(N-リトコリル-Y-グルタミル)-des(B30)ヒトインスリン;B29-N-(w-カルボキシヘプタデカノイル)-des(B30)ヒトインスリンおよびB29-N-(w-カルボキシヘプタデカノイル)ヒトインスリンを含む。
【0022】
一部の糖尿病患者については、特に、食事、時間、処方に基づいて投薬量が頻繁に変化し、計算される必要がある。したがって、患者は、速効型(食事時)インスリンや長時間作用型(一日一回)インスリンなど、一日に複数回のインスリン注射を行わなければならないこともありうる。本発明のスマートデバイスは、投与量の計算、投与量の追跡(すなわち、どの薬剤、量および時間)、および過剰/過少投与の事故の防止を容易にする。よって、インスリン治療の統合を改善することは、糖尿病が患者に与える影響の最小化に明らかに役立ちうるとともに、ケア担当者が治療をより適切に管理するためのフィードバックを支援しうる。このような投与量計算/追跡という特徴はまた、例えば、限定されるものではないが、多発性硬化症および関節炎など、多くの他のタイプの薬学的薬品および多くの他のタイプの疾患または条件にも有用である。本発明のスマートデバイスは、例えば輸送条件のモニタリング(例えば、薬剤の有効性のためにコールドチェーンおよび/または暗所保存が維持されたことを確実にする)のための生物学的薬物/酵素に特に適している。なぜなら、これらのタイプの薬物は、多くの他の薬物よりも有意に安定性が低く、従って、一貫性および患者の安全性の確保のため「スマート」テクノロジーの恩恵を受けるであろうから。しかしながら、医療部品10は、公知または未だ開発中の薬学的薬品とともに使用可能であることは理解されるであろう。
【0023】
簡潔のため、本発明は、本明細書ではシリンジのピストンまたはプランジャの先端部に言及しつつ、広く説明される。
【0024】
電子デバイス12は、任意の公知の電子回路系、電子コーディング、マイクロプロセッサ、センサ等を有していてもよい。例えば、電子デバイス12は、一つ以上の、集積回路(または電子チップまたはマイクロチップ)、無線周波数識別(RFID)チップ/コイル/アンテナおよび補助部品、近距離通信(NFC)チップ、EEPROMチップ、固体メモリ、筋ワイヤ、圧電センサまたはアクチュエータ、熱センサ(例えば、サーミスタまたはPTCサーミスタ)、圧力センサ、レベルセンサ、線量センサ、機械センサ、電磁センサ、光センサ、空気圧センサ、液圧センサ、感光センサ、フローセンサ、電源(例えば、RF誘導コイル、小型コインバッテリ、スーパーキャパシタ)、触覚フィードバック装置(例えば、LEDまたは圧電装置)などを含んでいてもよい。電子デバイス12は、通信ユニットをさらに備えていてもよく、好ましくはワイヤレス通信ユニットを備え、保存されたデータの内容を要求に応じて検索できるようになっていてもよい。例えば、電子デバイス12は、対応する読み取り装置との無線方式の通信を可能とするRFID素子であってもよい。これにより、偽造された医療部品を容易に検出することができる。
【0025】
本明細書に開示される全ての実施の形態について、各成形ステップの時間、熱および圧力は、さまざまな要因に依存するであろう。例えば、使用されている特定のエラストマー材料、および所望の結果がエラストマー材料の部分硬化であるか、またはエラストマー材料の完全硬化であるかなど。このようなエラストマー材料および成形工程(例えば、圧縮成形、射出成形、オーバーモールディングなど)は当技術分野でよく知られており、各成形ステップの時間、温度および圧力の仕様の詳細な説明は、本発明の完全な理解のために必要ではない。例えば、本明細書に開示された実施の形態の各成形ステップは、好ましくは約120~310℃の温度および約40~350kg/cm2の圧力で数秒間(例えば、10秒未満)~30分間、より好ましくは約120~220℃および約40~70kg/cm2の圧力で約30秒間~30分間、最も好ましくは約140~220℃の温度および約40~70kg/cm2の圧力で約2~15分間実施される。
【0026】
当業者であれば、感熱性装置については、医療部品10は、部分的な硬化しかしないように成形されてもよいことを理解するであろう。続いて、部品10は、オーブン後硬化、マイクロ波硬化、eビーム硬化などの二次工程によって、必要に応じて後硬化させてもよい。例えば、後硬化工程は、約120~310℃の温度で、24時間まで実施してもよい。
【0027】
図1A~
図2Eを参照すると、ワンステップ成形工程において、より詳細にはワンステップ圧縮成形工程において、型14およびエラストマーシート16を利用する医療部品10の製造方法の様々な実施の形態が示されている。型14は、開放キャビティ15aを有する上部半型15と、開放キャビティ17aを有する下部半型17とを有する。各キャビティ15a,17aは、好ましくは、開放された、加熱された型キャビティ15である。好ましい一実施の形態では、型14は、複数の上部および下部半型15,17と、それぞれに設けられたアレイ配列のキャビティ15a,17aとを有する。
【0028】
エラストマーシート16は、好ましくは、部分的に硬化された段階で、一つ以上のエラストマー材料(すなわち、上述のエラストマー材料のうちの一つ以上)で形成されている。この成形ステップのプロセス条件は、120~310℃および約40~350kg/cm2で数秒~30分間、より好ましくは約120~220℃および約40~70kg/cm2で約30秒~30分間、最も好ましくは約140~220℃および約40~70kg/cm2で約2~15分間である。他の一実施の形態において、プロセス条件は160~165℃および約50kg/cm2で約15分間である。他の一実施の形態では、プロセス条件は、160~175℃および40~70kg/cm2で約8分間である。そうであるから、エラストマーシート16は、基本的にエラストマープリフォームである。エラストマーシート16は、第1面19と、対向する第2面21とを有する。
【0029】
図1A~
図1Bの実施の形態では、下部半型17の型キャビティ17aの底面は、平坦面23を規定している。平坦面23はまた、下部半型17の内部底面にも相当する。エラストマーシート16は、その中に配置され、または埋め込まれた少なくとも一つの電子デバイス12を有する。より詳細には、電子デバイス12は、エラストマーシート16内に位置しており、これにより、電子デバイス12の露出面または遠位面12aが第2面21と同一面となっている。好ましい一実施の形態では、エラストマーシート16は、型キャビティ15a,17aのアレイに対応するアレイに配置された複数の電子デバイス12を有する。
【0030】
図1A~
図1Bの実施の形態では、エラストマーシート16は、第2面21の側に、保護膜またはバリア膜24をさらに有する。保護膜24は、第1面26と、対向する第2面28とを有する。保護膜24は、各電子デバイス12の露出面12aを覆うように設けられ、これにより、保護膜24の第1面26が各電子デバイス12の露出面12aに直接接触している。保護膜24は、電子デバイス12の領域のみに設けられていてもよいし、あるいは、エラストマーシート16の第2面21全体を覆うように設けられていてもよいことは理解されるであろう。
【0031】
図1A~
図1Bの実施の形態による製造方法では、エラストマーシート16は、下部半型17の上方に位置し、これにより、各電子デバイス12の位置がそれぞれの開放された型キャビティ17aの位置に整合する。アセンブルされた位置では、保護膜24の第2面28が平坦面23と接触し、より詳細には、平坦面23と直接接触している。各電子デバイス12は、真空アシストにより、型キャビティ17a内の所定位置に保持されることが好ましい。その後、アセンブリは圧縮成形に供され、エラストマー材料を完全に硬化させる。より詳細には、型14が閉じられて、各上部半型15が対応する各下部半型17を覆う。熱と圧力が加えられることにより、エラストマーシート16のエラストマー材料が流動し、これにより、流動するエラストマー材料を各型キャビティ15a,17aの全領域に、エラストマー材料が硬化するまで強制的に接触させて、医療部品10を形成する。
【0032】
この成形ステップのプロセス条件は、120~310℃および約40~350kg/cm2で数秒~30分間、より好ましくは約120~220℃および約40~70kg/cm2で約30秒~30分間、最も好ましくは約140~220℃および約40~70kg/cm2で約2~15分間である。一実施の形態において、プロセス条件は、150~175℃および40~70kg/cm2で約10分間である。他の一実施の形態では、プロセス条件は、160~165℃および約50kg/cm2で約15分間である。他の一実施の形態では、プロセス条件は、160~175℃および40~70kg/cm2で約8分間である。
【0033】
得られた硬化したフォームは、型の各部につき一つの電子デバイス12を有する。得られた各医療部品10は、硬化したエラストマー材料30および保護膜24によって完全にカプセル化された電子デバイス12を有する。保護膜24は、電子デバイス12への電気的または光学的経路を可能にするであろう任意のポリマーまたはセラミック膜であってもよいが、依然として電子デバイス12のカプセル化のためのバリア性を提供してもよい。好ましい一実施の形態では、保護膜24は、フルオロポリマー膜である。好ましくは、フルオロポリマー膜24は、医療部品10の、医薬品と接触するよう構成された面(すなわち、界面または接触面)に設けられる。
【0034】
フルオロポリマーは当技術分野においてよく知られており、それらの詳細な説明は本発明の完全な理解のために必要ではない。例示的なフルオロポリマーには、限定されるものではないが、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE),テトラフルオロエチレン(TFE)のホモポリマーおよびコポリマー,ペルフルオロアルコキシポリマー樹脂(PFA),ヘキサフルオロプロピレンおよびテトラフルオロエチレンのコポリマー,ポリエチレンテトラフルオロエチレン(PETFE),ポリフッ化ビニル(PVF),フッ化エチレンプロピレンコポリマー(FEP),ポリエチレンクロロトリフルオロエチレン(PECTFE),ポリフッ化ビニリデン(PVDF),ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE),およびそれらの誘導体が含まれる。好ましくは、保護膜24は、FluoroTec(登録商標)で形成されている。
【0035】
図2A~
図2Eの実施の形態では、各下部半型17のキャビティ17aの底面23は凹んでおり、アセンブルされた位置でエラストマーシート16から離間するようになっている。このようにして、圧縮成形の間、エラストマーシート16のエラストマー材料は、シート16と底面23との間の空間に流れ込むことができ、その結果、電子デバイス12がエラストマー材料によって完全にカプセル化される。そのため、
図2A~
図2Eの実施の形態では、エラストマーシート16は保護膜24を有する必要はない。
【0036】
図2Aの実施の形態では、各下部半型17は、少なくとも一つの突出部32、より好ましくは複数の突出部32を有する。これは、圧縮成形工程の間、電子デバイス12を型キャビティ17a内の所定位置に保持し、例えば電子デバイス12をセンタリングされた状態に保つためである。より詳細には、複数の突出部32が台座18を形成する。台座18の上には、圧縮成形の間、エラストマーシート16、より詳細には電子デバイス12が載っており、電子デバイス12の露出面12aがキャビティ17aの底面23から離間するようになっている。このようにして、圧縮成型の間、電子デバイス12は確実に所定位置に保持され、エラストマー材料は、電子デバイス12と底面23との間の空間に流れ込みうる。これにより、電子デバイス12は、完成した医療部品10内に、エラストマー材料によって完全にカプセル化される。圧縮成形工程の間の台座18とエラストマーシート16との相互作用の結果、完成した医療部品10は、台座18の突出部32の遠位端の位置に対応する位置に複数のくぼみ、または空隙34を有していてもよい。
【0037】
図2Bの実施の形態では、複数の電子デバイス12がエラストマーシート16に埋め込まれており、その結果、デバイス12の対向する遠位面および近位面12a,12bの両方が露出する。半型15,17の開放キャビティ15a,17aは、半型15,17のそれぞれの壁に凹設されている。これにより、圧縮成型の間、エラストマー材料が電子デバイス12の全周にわたって流れ、それにより、電子デバイス12が完成した医療部品10内にエラストマー材料により完全にカプセル化されることを確実にするようになっている。
【0038】
図2Eに示した一変形例において、エラストマーシート16は、型14内に配置される前に凍結温度にさらされる(すなわち、凍結される)。このことは、シート16が、硬化サイクルの一部においてその形状をより良く保持することを可能とし、また、ワンステップ成形工程の間、カプセル化された電子デバイス12の配置における優れた制御を可能にする。そののち、凍結されたエラストマーシート16は、下部半型17の上方に配置され、これにより、各電子デバイス12の位置がそれぞれの開放された型キャビティ17aの位置と整合する。各下部半型17のキャビティ17aの底面は凹んでおり、アセンブルされた位置でエラストマーシート16から離間するようになっている。
【0039】
そののち、第2のエラストマーシート44が、凍結されたエラストマーシート16の上方に配置される。しかしながら、第2のエラストマーシート44は凍結されていない。したがって、成形工程(例えば、圧縮成形)の間、第2のシート44のエラストマー材料は、凍結されたシート16のそれよりも速く流れ、圧縮成形の間の電子デバイス12の位置合わせのより良い制御を可能にする。両エラストマーシート16,44のエラストマー材料は、各開放された型キャビティ15a,17aの空間に流入することができ、これにより、各電子デバイス12は、エラストマー材料により完全にカプセル化されるようになっている。第1および第2のシート16,44は、同じエラストマー材料で形成されていてもよく、あるいは、異なるエラストマー材料で形成されていてもよいことが理解されるであろう。
【0040】
この成形ステップのプロセス条件は、120~310℃および約40~350kg/cm2で数秒~30分間、より好ましくは約120~220℃および約40~70kg/cm2で約30秒~30分間、最も好ましくは約140~220℃および約40~70kg/cm2で約2~15分間である。一実施の形態において、プロセス条件は、150~175℃および40~70kg/cm2で約10分間である。他の一実施の形態では、プロセス条件は、160~165℃および約50kg/cm2で約15分間である。他の一実施の形態では、プロセス条件は、160~175℃および40~70kg/cm2で約8分間である。
【0041】
図2Cの実施の形態では、下部半型17は、突出部36を有する。突出部36は、電子デバイス12に形成された対応するくぼみ38に嵌合することにより、圧縮成形の間、電子デバイス12を所定位置に保持する。突出部36は、このように、位置合わせピンである。他の一実施の形態では、突出部36およびくぼみ38には、嵌合ねじが設けられていてもよい。繰り返しになるが、半型15,17の開放キャビティ15a,17aは、半型15,17のそれぞれの壁に凹設されており、これにより、圧縮成形の間、エラストマー材料が電子デバイス12の全周にわたって流れ、それにより、完成した医療部品10内に電子デバイス12がエラストマー材料により完全にカプセル化されていることが確実になる。
【0042】
図2Dは、電子デバイス12が突出部40を有する実施の形態を示す。突出部40は、下部半型17の壁に形成された対応するくぼみ42に嵌合する。電子デバイス12の本体は、
図2Bと同様に、エラストマーシート16内に埋め込まれているが、突出部40はシート16から外方に伸びている。他の一実施の形態では、突出部40およびくぼみ42には、嵌合ねじが設けられていてもよい。繰り返しになるが、半型15,17の開放キャビティ15a,17aは、半型15,17のそれぞれの壁に凹設されており、これにより、圧縮成形の間、エラストマー材料が電子デバイス12の全周にわたって流れ、それにより、完成した医療部品10内に電子デバイス12がエラストマー材料により完全にカプセル化されていることが確実になる。
【0043】
図3A~
図3Hを参照すると、エラストマー管116を利用したワンステップ成形工程の医療部品10の製造方法の一実施の形態が示されている。成形工程は、公知の成形工程(例えば、圧縮成形、射出成形など)のいずれであってもよい。エラストマー管116は、未硬化または部分的に硬化された(すなわち、半硬化)状態の一つ以上のエラストマー材料(すなわち、上述のエラストマー材料のうちの一つ以上)で形成されていることが好ましい。この成形ステップのプロセス条件は、120~310℃および約40~350kg/cm
2で数秒~30分間、より好ましくは約120~220℃および約40~70kg/cm
2で約30秒~30分間、最も好ましくは約140~220℃および約40~70kg/cm
2で約2~15分間である。一実施の形態において、プロセス条件は、150~175℃および40~70kg/cm
2で約10分間である。他の一実施の形態では、プロセス条件は、160~165℃および約50kg/cm
2で約15分間である。他の一実施の形態では、プロセス条件は、160~175℃および40~70kg/cm
2であり、約8分間である。
【0044】
エラストマー管116は、基本的にエラストマープリフォームである。エラストマー管116は、全体として円筒形であって中空の内部123を有し、第1端119と、対向する第2端121とを有する。管116の第1端119を含む部分を、以下では管116の第1半分と称し、管116の第2端121を含む部分を、以下では管116の第2半分と称する。
【0045】
未硬化または半硬化エラストマー管116が形成されたのち、一つ以上の電子デバイス12が管116の中空の内部123内に配置される。次いで、様々な工程のうちの一つを行って、電子デバイス12を所定位置に固定するようにしてもよい。例えば、
図3Cに示したように、管116の第1半分と第2半分の両方を、エラストマー材料がまだ柔らかく柔軟で粘着性がある間に、クリンプまたはピンチで繋ぎ合わせて、電子デバイス12を所定位置に保持するようにしてもよい。あるいは、
図3Dに示したように、押し出されたエラストマーロッドまたはプラグ124を、第1半分および第2半分の中空の内部123に(すなわち、電子デバイス12の両側に)配置して、電子デバイス12を所定位置に固定するようにしてもよい。あるいは、
図3Eに示したように、予め形成されたエラストマーシート126、その各々は一つ以上の突起128を有しているのだが、予め形成されたエラストマーシート126が、管116の両端119,121に配置され、これにより、突起128が管116の中空の内部123内に受容され、それによって電子デバイス12を所定位置に固定するようにしてもよい。あるいは、
図3Fに示したように、電子デバイス12が既に中空の内部123内に(例えば、そのサイズゆえに)十分に納まっている場合、さらなる工程は不要である。当業者は、
図3C~
図3Fの上記工程の組合せを行ってもよいことを理解するであろう。例えば、
図3Cの工程を管116の第1半分に使用し、一方、
図3Dの工程を管116の第2半分に使用してもよい。
【0046】
最後に、
図3G~
図3Hに示したように、電子デバイス12が中に固定された未硬化または半硬化エラストマー管116は、型114内に配置され、熱および圧力が加えられて、エラストマー管116のエラストマー材料が流動する。流動するエラストマー材料は、電子デバイス12の中心を維持しながら、あらゆる空隙(すなわち、中空の内部123内)を満たす(
図3H参照)。成形工程は、所定の時間、熱および圧力条件下で、エラストマー材料が硬化して医療部品10を形成するまで行われる。
【0047】
型114は、開放キャビティ115aを有する上部半型115と、開放キャビティ117aを有する下部半型117とを有する。各キャビティ115a,117aは、好ましくは、開放された、加熱された型キャビティ115である。好ましい一実施の形態では、型114は、複数の上部および下部半型115,117と、それぞれに設けられたアレイ配列のキャビティ115a,117aとを有する。このように、電子デバイス12がその中に固定された複数の半硬化エラストマー管116は、同時に圧縮成形されて医療部品10を形成してもよい。
【0048】
この成形ステップのプロセス条件は、120~310℃および約40~350kg/cm2で数秒~30分間、より好ましくは約120~220℃および約40~70kg/cm2で約30秒~30分間、最も好ましくは約140~220℃および約40~70kg/cm2で約2~15分間である。一実施の形態において、プロセス条件は、150~175℃および40~70kg/cm2で約10分間である。他の一実施の形態では、プロセス条件は160~165℃および約50kg/cm2で約15分間である。他の一実施の形態では、プロセス条件は、160~175℃および40~70kg/cm2で約8分間である。
【0049】
図4A~
図4Cを参照すると、未硬化または半硬化エラストマー管116および電子デバイス12のアセンブリを用意するための代替の実施の形態が示されている。具体的には、
図4Aを参照すると、所定の時間、熱および圧力条件下で、成形ステップ/工程において、未硬化または半硬化エラストマーシート130が形成されてもよい。この成形ステップのプロセス条件は、120~310℃および約40~350kg/cm
2で数秒~30分間、より好ましくは約120~220℃および約40~70kg/cm
2で約30秒~30分間、最も好ましくは約140~220℃および約40~70kg/cm
2で約2~15分間である。一実施の形態において、プロセス条件は、150~175℃および40~70kg/cm
2で約10分間である。他の一実施の形態では、プロセス条件は、160~165℃および約50kg/cm
2で約15分間である。他の一実施の形態では、プロセス条件は、160~175℃および40~70kg/cm
2で約8分間である。
【0050】
シート130は、第1端132と、対向する第2端134とを有する、全体的に平坦で平らなシートである。電子デバイス12は、第1端132に近接して、より詳細には第1端132の幾何学的中心に近接して、シート130の平坦面に載置される。そののち、シート130の第1端132は、電子デバイス12をくるみ、引き続き第2端134に向かって巻かれていく。そのようにして、シート130は、電子デバイス12の周囲に巻回され、それにより、
図4B~
図4Cに示したように、管116の中空の内部123の中心内に位置決めされた電子デバイス12を有する未硬化または半硬化エラストマー管116を形成する。次いで、管116および電子デバイス12は、医療部品10を形成するために、
図3A~
図3Hに関して上述した固定および成形工程に供される。
【0051】
この成形ステップのプロセス条件は、120~310℃および約40~350kg/cm2で数秒~30分間、より好ましくは約120~220℃および約40~70kg/cm2で約30秒~30分間、最も好ましくは約140~220℃および約40~70kg/cm2で約2~15分間である。一実施の形態では、プロセス条件は、150~175℃および40~70kg/cm2で約10分間である。他の一実施の形態では、プロセス条件は、160~165℃および約50kg/cm2で約15分間である。他の一実施の形態では、プロセス条件は、160~175℃および40~70kg/cm2で約8分間である。
【0052】
あるいは、
図5A~
図5Cに示したように、複数の管116を同時に形成してもよい。具体的には、複数の電子デバイス12が、離間した間隔で第1端132に近接して半硬化エラストマーシート130の表面に載置されている(
図5A参照)。次いで、シート130は、
図4Aに関して本明細書に記載されているのと同じようにして、電子デバイス12をくるみ、電子デバイス12に巻回される。次いで、
図5B~
図5Cを参照して、シート130は、電子デバイス12を隔てる間隔で切断され、それにより、複数の半硬化エラストマー管116を形成する。各管116は、その中空の内部123の中心内に位置する電子デバイス12を有する。最後に、各管116および電子デバイス12は、複数の医療部品10を形成するために、上述した時間、熱および圧力条件下で、
図3A~
図3Hに関して上述した固定および成形工程に供される。
【0053】
図6~
図8を参照すると、ワンステップ成形プロセス(例えば、圧縮成形、射出成形、オーバーモールディングなど)の医療部品10の製造方法のさらなる実施の形態が示されている。具体的には、電子デバイス12は、まず、温度抵抗性で弾力性のある材料で形成されたフォームまたはレセプタクル86内に埋め込まれる。より具体的には、フォーム86は、好ましくは、熱的に安定な材料で形成されている。例えば、フォーム86は、以下の材料で形成されているがそれに限定されるものではない。アルミナまたはケイ酸塩(例えば、石英、磁器、またはガラス)を含むがこれらに限定されないセラミック材料;ステンレス鋼、チタン、アルミニウムおよび/または陽極酸化アルミニウムを含むがこれらに限定されない金属材料;またはポリアミド、フルオロポリマー、もしくはポリアリールエーテルケトン(PAEK)を含むがそれらに限定されないポリマー材料。フルオロポリマーは、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)またはガラス充填PTFEを含むがこれらに限定されない。ポリアリールエーテルケトン(PAEK)は、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテルケトンエーテルケトンケトン(PEKEKK)およびポリエーテルエーテルケトン(PEEK)を含むがこれらに限定されない。一実施の形態において、フォーム86は、熱絶縁用のフォームまたはエアロゲル、または電子デバイス12の電気的隔離用の高温耐性ポリマーなどの絶縁材料を含んでいてもよい。このような材料は、様々な利点を有するであろう。例えば、熱絶縁を提供する場合、電子デバイス12が高温にさらされる時間を最小化するために、低温保存を使用することができる。また、微小電気機械システムまたはショック/加速度センサのような、特に脆弱または感受性の高い電気デバイス12が使用されうるようにするため、機械的に堅牢なフォーム86が好ましい。
【0054】
好ましくは、フォーム86は、形成されるべき医療部品10の所望の大きさおよび形状に対応する大きさおよび形状である。
【0055】
次いで、一実施の形態では、
図6に示したように、電子
デバイス12を備えたフォーム86を型に載置し、所定の時間、熱および圧力条件下で、エラストマー材料30をフォーム86上にオーバーモールドして、エラストマー材料30を含む医療部品10を形成する。この成形ステップのプロセス条件は、120~310℃および約40~350kg/cm
2で数秒~30分間、より好ましくは約120~220℃および約40~70kg/cm
2で約30秒~30分間、最も好ましくは約140~220℃および約40~70kg/cm
2で約2~15分間である。一実施の形態において、プロセス条件は、150~175℃および40~70kg/cm
2で約10分間である。他の一実施の形態では、プロセス条件は、160~165℃および約50kg/cm
2で約15分間である。他の一実施の形態では、プロセス条件は、160~175℃および40~70kg/cm
2で約8分間である。
【0056】
一変形例では、例えば、フォーム86が金属材料で形成されている場合、型は、成形の間のフォーム86の正確な位置決めおよび載置を容易にするために、磁性体(図示せず)を備えていてもよい。
【0057】
他の一実施の形態では、
図7に示したように、未硬化または半硬化エラストマー管116、より詳細には、上述のように未硬化または半硬化モノリシックエラストマー管116が形成される。電子
デバイス12を備えたフォーム86が、管116の中空の内部123に挿入される。より詳細には、管116は、フォーム86の外面上に伸張され、フォーム86上に機械的に形成される。続いて、アセンブリは、加熱および加圧され、これにより、管116のエラストマー材料をフォーム86上で硬化させ、フォーム86を収縮包装する。例えば、ブラダータイプの成形工程を用いて、フォーム86の固い本体の周囲に管116のエラストマー材料を熱成形するとともに、密封性のために十分に滑らかな表面を提供してもよい。
【0058】
この成形ステップのプロセス条件は、120~310℃および約40~350kg/cm2で数秒~30分間、より好ましくは約120~220℃および約40~70kg/cm2で約30秒~30分間、最も好ましくは約140~220℃および約40~70kg/cm2で約2~15分間である。一実施の形態において、プロセス条件は、150~175℃および40~70kg/cm2で約10分間である。他の一実施の形態では、プロセス条件は、160~165℃および約50kg/cm2で約15分間である。他の一実施の形態では、プロセス条件は、160~175℃および40~70kg/cm2で約8分間である。
【0059】
あるいは、以下のような工程を用いてもよい。この工程では、未硬化または半硬化エラストマー管116のエラストマー材料は、圧縮され、同時に滑らかな面または車輪に巻きつけられ、これにより特定の表面特性を付与する。
【0060】
図7の実施の形態の一変形例において、加熱ステップの間、Oリングなどの密封要素(図示せず)が利用されてもよい。これにより、未硬化または半硬化エラストマー管116のエラストマー材料が、フォーム86上に完全に封着されるようにする。一実施の形態では、管116のエラストマー材料は、フォーム86上に気密に封着される。こうして、電子デバイス12が埋め込まれたフォーム86を形成するために使用された材料に関連する不純物を完全に閉じ込めることにより、追加のバリア性を提供する。
【0061】
一実施の形態では、
図8に示したように、エラストマー材料30または未硬化もしくは半硬化エラストマー管116を使用せずに、Oリングなどの複数の密封要素152が利用される。フォーム86は、
図6~
図7のものとほぼ同じである。しかしながら、フォーム86の周囲に配置されているのは、軸方向にほぼ等間隔を空けて、放射状に伸びる円周リング152であり、本発明の前述の実施の形態のエラストマー材料30または未硬化もしくは半硬化エラストマー管116ではない。そののち、アセンブリは、圧縮成形工程に供され、医療部品10を形成する。接合のため必要に応じて圧縮成形が行われる。この成形ステップのプロセス条件は、120~310℃および約40~350kg/cm
2で数秒~30分間、より好ましくは約120~220℃および約40~70kg/cm
2で約30秒~30分間、最も好ましくは約140~220℃および約40~70kg/cm
2で約2~15分間である。一実施の形態において、プロセス条件は、150~175℃および40~70kg/cm
2で約10分間である。他の一実施の形態では、プロセス条件は、160~165℃および約50kg/cm
2で約15分間である。他の一実施の形態では、プロセス条件は、160~175℃および40~70kg/cm
2で約8分間である。
【0062】
他の一実施の形態(図示せず)では、フォーム86の周囲に配置されているのは、軸方向にほぼ等間隔を空けて、放射状に伸びる複数の円周リング152に囲まれた薄い耐薬品性の被覆である。被覆は、別途成形され、フォーム86に施されてもよいし、あるいは、フォーム86の成形時にフォーム86に直接施され、フォーム86とともに成形されることにより、製剤との接触との親和性を可能としてもよい。被覆は、任意の耐薬品性または不浸透性材料で形成されていてもよい。例えば、フルオロポリマー(上述の例を参照)または封止に必要なエラストマー性を欠く他の不活性プラスチック材料があげられるが、これらに限定されない。例えば、エチレンテトラフルオロエチレン(ETFE),PTFE,ペルフルオロアルコキシアルカン(PFA),ポリフッ化ビニリデン(PVDF)などがあげられるが、これらに限定されない。そののち、アセンブリは、上記の圧縮成形工程に供され、この工程において、Oリング152および被覆は、フォーム86とともに完全に硬化されうる。
【0063】
図9A~
図9Cを参照すると、所定の時間、熱および圧力条件下におけるワンステップ成形工程の医療部品10の製造方法の他の実施の形態が示されている。まず、エラストマー材料を含むエラストマーシート16が形成される。エラストマーシート16は、完全に硬化した状態でもよく、あるいは部分的または半硬化状態でもよい。次いで、エラストマーシート16は、所定の時間、熱および圧力条件下で、任意の公知の成形工程(例えば、圧縮成形、射出成形など)によって、反転形状88(すなわち、裏返し)に成形される。より詳細には、エラストマー材料は、形成されるべき医療部品10の形状と逆の形状に成形される。この成形ステップのプロセス条件は、120~310℃および約40~350kg/cm
2で数秒~30分間、より好ましくは約120~220℃および約40~70kg/cm
2で約30秒~30分間、最も好ましくは約140~220℃および約40~70kg/cm
2で約2~15分間である。一実施の形態において、プロセス条件は、150~175℃および40~70kg/cm
2で約10分間である。他の一実施の形態では、プロセス条件は、160~165℃および約50kg/cm
2で約15分間である。他の一実施の形態では、プロセス条件は、160~175℃および40~70kg/cm
2で約8分間である。
【0064】
そののち、
図9Bに示したように、反転成形アーティクル88は電子デバイス12と接触し、電子デバイス12の本体上で反転され、電子デバイス12の本体をくるみ、これにより電子デバイス12をカプセル化する。そののち、アーティクル88は、必要に応じて形づくられ、伸張されて、医療部品10の所望の形状および形態を達成する。より詳細には、反転成形アーティクル88は、医療部品10の形状に熱成形される。また、
図9Cに示したように、最終部品10において、エラストマーのトリムエッジ90は封止され、これにより、従来の成形工程の結果である外部トリムエッジは除去される。この熱成形工程のための時間、熱および圧力は、使用されている特定のエラストマー材料などの様々な要因に依存するであろう。
【0065】
図10A~
図11Bを参照すると、所定の時間、熱、および圧力条件下におけるブラダー成形工程の医療部品10の製造方法の他の実施の形態が示されている。型14は、
図2Eの工程に関して上述したものと同様である。
【0066】
この成形ステップのプロセス条件は、120~310℃および約40~350kg/cm2で数秒~30分間、より好ましくは約120~220℃および約40~70kg/cm2で約30秒~30分間、最も好ましくは約140~220℃および約40~70kg/cm2で約2~15分間である。一実施の形態において、プロセス条件は、150~175℃および40~70kg/cm2で約10分間である。他の一実施の形態では、プロセス条件は、160~165℃および約50kg/cm2で約15分間である。他の一実施の形態では、プロセス条件は、160~175℃および40~70kg/cm2で約8分間である。
【0067】
具体的には、
図10A~
図10Cを参照すると、本実施の形態の方法では、未硬化または部分的に硬化されたエラストマーシート130は、一つ以上のディンプルまたは凹部146を含む。各ディンプル146は、電子デバイス12を受容するように構成されている。このようにして、未硬化または部分的に硬化したエラストマーシート130の各ディンプル146に電子デバイス12を挿入することによってプリフォームが形成される。そののち、プリフォームは、型14内に配置される。続いて、空気圧が、型14の片側から空気弁148によって加えられ、エラストマーシート130および電子デバイス12を対向する型キャビティ15aに押し込む(
図10A~
図10B参照)。エラストマー材料は、(例えば、熱成形によって)医療部品10の最終的な形状および寸法に伸張され、そののち、熱を加えることにより固まり、または硬化される。最後に、追加のエラストマー材料150が型14に注入され、医療部品10内の任意の空隙を埋めるようにしてもよい(
図10C参照)。後に注入されたエラストマー材料150は、エラストマーシート130の材料と同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0068】
図11A~
図11Bを参照すると、他の一実施の形態では、外圧が加えられ、これによりエラストマーシート130を圧縮して医療部品10に形づくる。具体的には、各ディンプル146に配置された電子デバイス12を備えたエラストマーシート130のプリフォームは、型14内に配置され、これにより、
図11Aに示したように、各ディンプル146がキャビティ(例えば、キャビティ15a)の一つの中に位置するようにする。次いで、
図11Bに示したように、ブラダー型14を膨張させて、エラストマーシート130に外圧および熱を加え、エラストマー材料を医療部品10の形状および寸法に形づくる。
【0069】
図12A~
図14を参照すると、所定の時間、熱および圧力条件下における、ワンステップ成形工程の医療部品10の製造方法のもう一つの実施の形態が示されている。具体的には、医療部品10は、任意の所望の形状で、好ましくは従来のワンステップ圧縮成形プロセスによって成形される。しかしながら、任意の公知の成形工程(例えば、インサート成形、射出成形など)を利用してもよいことは理解されるであろう。
図12A~
図12Bでは、医療部品10は、シリンジ、カートリッジまたはバイアル用のピストンとして示されている。
【0070】
この成形ステップのプロセス条件は、120~310℃および約40~350kg/cm2で数秒~30分間、より好ましくは約120~220℃および約40~70kg/cm2で約30秒~30分間、最も好ましくは約140~220℃および約40~70kg/cm2で約2~15分間である。一実施の形態において、プロセス条件は、150~175℃および40~70kg/cm2で約10分間である。他の一実施の形態では、プロセス条件は、160~165℃および約50kg/cm2で約15分間である。他の一実施の形態では、プロセス条件は、160~175℃および40~70kg/cm2で約8分間である。
【0071】
次いで、一つ以上の電子デバイス12が、成形された医療部品10内に、任意の公知の技法により挿入または注入されてもよい。これにより、一つ以上の電子デバイス12が医療部品10内に、(幾つかの)所望の位置に埋め込まれる。例えば、
図14に示したように、内部に電子デバイス12が配置されたプッシングロッドまたは針13(
図13A~
図13Cに示される構成のいずれかを含むが、これらに限定されない)を用いて、電子デバイス12を医療機器10内に注入してもよい。例えば、(幾つかの)電子デバイス12は、医療部品10に、その遠位面の直下(例えば、光および/または温度測定のために医療機器を介して患者に送達される薬品に接触するように構成された面)またはその横方向の面付近(例えば、外部センサとの容易な通信のため)に埋め込まれてもよい。この方法により、(幾つかの)電子デバイス
12の位置を、任意の所望の場所に容易に調整することができる。電子デバイス12は、エラストマー自体の弾性によって所定位置に保持される。
【0072】
あるいは、
図15に示したように、一つ以上のパイロット穴78が、成形された医療部品10に形成されてもよい。そののち、電子デバイス12は、パイロット穴78を通って医療部品10の本体内に挿入される。
【0073】
他の一実施の形態では、
図17A~
図17Cに示したように、前記のプロセス条件下で、医療部品10が、既に一つ以上のキャビティ80を含むように成形されてもよい。一つ以上のキャビティ80の各々は、一つ以上の電子デバイス12を受容するように構成されている。各キャビティ80の入口、特に成形された部品の表面には、電子デバイス12のキャビティ80への挿入を容易にするために、切欠き82が設けられることが好ましい。切欠き82は、任意の公知の形を有していてよい。例えば、切欠き82は、両凸の開口、Bite Valve(商標)、複数のスリット等であってもよい。電子デバイス12がキャビティ80に挿入された後、ピストンロッドも同じ切欠き82を通ってキャビティ80内に挿入されてもよい。
【0074】
あるいは、キャビティ80および切欠き82は、エラストマーが部分的に硬化したフォームでしかないうちに形成されてもよい。そののち、電子デバイス12は、部分的に硬化した本体のキャビティ80内に配置される。そののち、部分的に硬化した本体は、圧縮成形されることにより、エラストマーを硬化させて医療部品10を形成し、切欠き82は圧縮により閉鎖される。この成形ステップのプロセス条件は、120~310℃および約40~350kg/cm2で数秒~30分間、より好ましくは約120~220℃および約40~70kg/cm2で約30秒~30分間、最も好ましくは約140~220℃および約40~70kg/cm2で約2~15分間である。一実施の形態において、プロセス条件は、150~175℃および40~70kg/cm2で約10分間である。他の一実施の形態では、プロセス条件は、160~165℃および約50kg/cm2で約15分間である。他の一実施の形態では、プロセス条件は、160~175℃および40~70kg/cm2で約8分間である。
【0075】
もう一つの実施の形態では、
図16に示したように、ピストン10が、上述のプロセス条件のいずれかの下で成形されたのち、電子デバイス12が、ピストンロッド84を介してその中に挿入され、または埋め込まれてもよい。より詳細には、ピストンロッド84は、棘として形成された第1端84aと、対向する第2端84bとを有する。棘つきの第1端84aは、埋め込まれ、または確実にもしくは永久的に取り付けられた電子デバイス12を有している。そののち、ピストンロッド84は、棘つきの第1端84aから始まって、成形された部品10に挿入される。
図17A~
図17Cを参照して、成形された部品10は、任意的に、上述のようにキャビティ80および切欠き82を有してもよい。
【0076】
そののち、差し込まれている棘84aは、電力伝送および/または電子デバイス12との通信のため、作動ロッド84に取り付けられたままにしておくことができる。無線通信を無くすことは、干渉の可能性を防ぎ、より低損失でより大きな電力伝送を可能にし、信号の改ざん/スプーフィングをより困難にする。刺し込まれている棘は、ステンレススチールまたは射出成形プラスチックなどの公知の材料で作られていてもよい。
【0077】
【0078】
図18A~
図18Cを参照すると、本方法は、エラストマー材料(例えば、熱硬化エラストマーまたは熱可塑性エラストマー)を成形することにより、第1部材すなわちベース部材50を形成することを含む。第1部材50は、形成されるべき医療部品10の形状に対応する任意の適切な形状を有していてもよいことが理解されるであろう。しかしながら、
図18A~
図18Cはピストン10に関するものであるから、第1部材50は概ね円筒形状を有している。好ましくは、第1部材50は、ピストン10の薬剤接触端を規定する。
【0079】
第1部材50は、好ましくは、閉塞されたベース壁52、開放されたトップ端54、およびその間に延びる側壁56を有する。閉鎖されたベース壁52、開放されたトップ端54、および外側の側壁56は、第1部材50の内部58を規定する。内部58は、好ましくは、凹部62を取り囲む内側の側壁60を有する。凹部62は、電子デバイス12の一部分を受容するようなサイズおよび形状とされている。
【0080】
図18A~
図18Cの実施の形態による医療部品10を製造するために、第1部材50は、まず、任意の公知の成形方法(例えば、圧縮成形、インサート成形、射出成形など)によって、部分的に硬化した状態で形成される。この成形ステップのプロセス条件は、120~310℃以上および約40~350kg/cm
2で数秒~30分間、より好ましくは約120~220℃および約40~70kg/cm
2で約30秒~30分間、最も好ましくは約140~220℃および約40~70kg/cm
2で約2~15分間である。一実施の形態において、プロセス条件は、150~175℃および40~70kg/cm
2で約10分間である。他の一実施の形態では、プロセス条件は、160~165℃および約50kg/cm
2で約15分間である。他の一実施の形態では、プロセス条件は、160~175℃および40~70kg/cm
2で約8分間である。
【0081】
そののち、
図18Bに示したように、電子デバイス12は、第1部材50の凹部62内に入れ子になる。これにより、電子デバイス12は、閉鎖されたベース壁52に載り、または近接する。任意の公知の位置決め機構または本明細書に記載された幾つかの位置決め機構のいずれかを利用して、電子デバイス12を凹部62内の所定位置に固定してもよいことが理解されるであろう。例えば、電子デバイス12および閉鎖されたベース壁52は、電子デバイス12のより強固な設置および位置決めを可能にする目的で、対応する(すなわち、嵌合する)突起(例えば、ねじ付きまたは滑らかなピン)および凹部またはくぼみを有していてもよい。
【0082】
最後に、第2の成形ステップにおいて、
図18Cに示したように、さらなるエラストマー材料が、アセンブルされた電子デバイス12および第1部材50上にオーバーモールドされ、硬化して、完成した医療部品10を形成する。医療部品10には、電子デバイス12がエラストマー材料によって完全にカプセル化されている。この成形ステップのプロセス条件は、120~310℃および約40~350kg/cm
2で数秒~30分間、より好ましくは約120~220℃および約40~70kg/cm
2で約30秒~30分間、最も好ましくは約140~220℃および約40~70kg/cm
2で約2~15分間である。一実施の形態において、プロセス条件は、150~175℃および40~70kg/cm
2で約10分間である。他の一実施の形態では、プロセス条件は、160~165℃および約50kg/cm
2で約15分間である。他の一実施の形態では、プロセス条件は、160~175℃および40~70kg/cm
2で約8分間である。
【0083】
好ましくは、オーバーモールドされたエラストマー材料は、第1部材50を形成するために使用されたエラストマー材料と同じである。しかし、異なるエラストマー材料を使用してもよいことは理解されるであろう。
【0084】
他の一実施の形態では、
図19A~
図19Cおよび
図20A~
図20Bに示したように、オーバーモールド工程に代えて、第2部材66が形成され(例えば、本明細書で説明した所定の時間、熱および圧力条件下で成形され)、第1部材50とアセンブルされて、医療部品10を形成する。より詳細には、第2部材66は、第1部材50を形成するために使用された同じエラストマー材料から成形されることが好ましい。しかし、異なるエラストマー材料を使用してもよいことは理解されるであろう。第2部材66は、好ましくは、閉鎖されたベース壁68、対向する開放された端70、およびそれらの間に延びる側壁72を有する。閉鎖されたベース壁68、開放されたトップ端70、および外側の側壁72は、第2部材66の内側凹部74を規定する。内側凹部74は、好ましくは、電子デバイス12の残りの部分をその中に受容するサイズおよび形状とされている。第2部材66は、医療部品10の所望の形状およびサイズを達成するため、必要に応じて第1部材50の形状およびサイズと相補的な形状およびサイズを有することが好ましい。
【0085】
図19A~
図20Bの実施の形態による医療部品10を製造するために、まず、第1部材50および第2部材66が、任意の公知の成形方法により、本明細書に記載された予め定められた時間、熱および圧力条件下で、部分的に硬化した状態で、別々に形成される。これらの成形ステップのプロセス条件は、120~310℃および約40~350kg/cm
2で数秒~30分間、より好ましくは約120~
220℃および約40~
70kg/cm
2で約30秒~30分間、最も好ましくは約140~220℃および約40~70kg/cm
2で約2~15分間である。一実施の形態において、プロセス条件は、150~175℃および40~70kg/cm
2で約10分間である。他の一実施の形態では、プロセス条件は、160~165℃および約50kg/cm
2で約15分間である。他の一実施の形態では、プロセス条件は、160~175℃および40~70kg/cm
2で約8分間である。
【0086】
そののち、電子デバイス12は、第1部材50の凹部62内に入れ子になる。これにより、電子デバイス12は、閉鎖されたベース壁52に載り、または近接する。任意の公知の位置決め機構または本明細書に記載された幾つかの位置決め機構のいずれかを利用して、電子デバイス12を凹部62内の所定位置に固定してもよいことは理解されるであろう。次いで、第2部材66は、型内で第1部材50とアセンブルされる。これにより、開放されたトップ端54,70が、界面76で互いに接触し、電子デバイス12が第1および第2部材50,66の凹部62,74内に受容される。
【0087】
次いで、一実施の形態では、アセンブルされた第1および第2の部材50,66は、所定の時間、熱および圧力条件下で型内のアセンブリ全体を加熱してエラストマー材料を完全に硬化させることによって、互いに接着または溶着される。この成形ステップのプロセス条件は、120~310℃および約40~350kg/cm2で数秒~30分間、より好ましくは約120~220℃および約40~70kg/cm2で約30秒~30分間、最も好ましくは約140~220℃および約40~70kg/cm2で約2~15分間である。一実施の形態において、プロセス条件は、150~175℃および40~70kg/cm2で約10分間である。他の一実施の形態では、プロセス条件は、160~165℃および約50kg/cm2で約15分間である。他の一実施の形態では、プロセス条件は、160~175℃および40~70kg/cm2で約8分間である。
【0088】
任意的に、
図20A~
図20Bに示したように、第1および第2部材50,66の接合を容易にするために、加熱前に硬化性ガム92の層を界面76に配置してもよい。このようなプロセス、つまり、予め成形された第1および第2部材50,66を利用することは、例えばワンステップオーバーモールド工程で生じうる、エラストマーの粘性流が電子デバイス12を損傷する可能性を回避する。
【0089】
あるいは、他の一実施の形態では、局所硬化プロセスを実施してもよい。より詳細には、第1および第2の部材50,66は、最初に、完全に硬化した状態で成形されてもよい。これらの成形ステップのプロセス条件は、120~310℃および約40~350kg/cm2で数秒~30分間、より好ましくは約120~220℃および約40~70kg/cm2で約30秒~30分間、最も好ましくは約140~220℃および約40~70kg/cm2で約2~15分間である。一実施の形態において、プロセス条件は、150~175℃および40~70kg/cm2で約10分間である。他の一実施の形態では、プロセス条件は、160~165℃および約50kg/cm2で約15分間である。他の一実施の形態では、プロセス条件は、160~175℃および40~70kg/cm2で約8分間である。
【0090】
次いで、電子デバイス12並びに第1および第2の部材50,66は、上述したようにアセンブルされ、界面76において接着または溶着される。任意的には、界面76にはガム層92が設けられていてもよい。接着または溶着は、界面76においてエラストマー材料およびガムの局所的な硬化を起こさせる指向性エネルギー源によって行われる。指向性エネルギー源としては、例えば、超音波溶接、マイクロ波加熱/硬化、およびレーザ加熱/硬化が挙げられるが、これらに限定されない。局所的な硬化工程は、カプセル化された電子デバイス12が極端な条件にさらされることから保護する。この局所的な硬化ステップのプロセス条件は、120~310℃および約40~350kg/cm2で数秒~30分間、より好ましくは約120~220℃および約40~70kg/cm2で約30秒~30分間、最も好ましくは約140~220℃および約40~70kg/cm2で約2~15分間である。一実施の形態において、プロセス条件は、150~175℃および40~70kg/cm2で約10分間である。他の一実施の形態では、プロセス条件は、160~165℃および約50kg/cm2で約15分間である。他の一実施の形態では、プロセス条件は、160~175℃および40~70kg/cm2で約8分間である。
【0091】
図21A~
図21Dを参照すると、ツーステップ成形工程の医療部品10の製造方法の他の実施の形態が示されている。まず、第1部材50は、
図18A~
図20Bに関して本明細書に記載されたように成形される。次いで、第2部材66の本体が、第1部材50上にオーバーモールドされるか(
図18A~
図18Cの工程と同様)、あるいは、第1部材50とは別々に形成されて溶着される(
図19A~
図20Bの工程と同様)。第2部材66の本体は、好ましくは、電子デバイス12を受容するように構成されたポケットまたはキャビティ94と、開口96とを有する。開口96は、例えば第1
部材50の薬物接触面に対向する面または横方向の面にある。電子デバイス12は、開口96を通って挿入され、医療部品10内のキャビティ94に埋め込まれる。
【0092】
図22A~
図22Dは、電子デバイス12を備えた医療部品10の構造および配置の様々な実施の形態を示す。
【0093】
本明細書に開示される実施の形態のいずれにおいても、
図23A~
図23Bに示したように、収縮可能な保持ピンまたは突起98を用いて、成形工程(例えば、圧縮成形、射出成形など、好ましくは射出成形)の間、電子デバイス12を所定位置に固定してもよい。具体的には、電子デバイス12が型14内に設置されると、まず、複数の保持ピン98が電子デバイス12をセンタリングするために使用される。次いで、成形工程が始まり、エラストマー材料30が調心された電子デバイス12を取り囲み始める。エラストマー材料30が、調心された電子デバイス12を十分に取り囲むと(すなわち、電子デバイス12がその中心から容易に外れない程度)、保持ピン98は、型14の方に引き込まれて電子デバイス12から離れる。これにより、エラストマー材料30が電子デバイス12を完全にカプセル化することが可能となる。
【0094】
本明細書に記載された方法のいずれによっても達成されるように、完全にカプセル化された電子デバイス12は、その環境から完全に保護されるという利点を有し、蒸気滅菌可能でありうる。
【0095】
本明細書に記載された実施の形態のいずれかによれば、電子デバイスまたはパッケージ12は、センサ等のセンシング技術を組み込み、これにより、医療機器/部品自体または周辺環境の温度、医療機器内の圧力、医療部品10(例えば、ピストン)を横断する方向の差圧を測定/検出するようにしてもよい。差圧は、例えば、薬物の分解による容器内のガス発生、液体レベルまたはピストン位置のための容量、または感光性薬物のための光曝露によって生じうる。本明細書に記載された幾つかの実施の形態のいずれかによれば、電子デバイスまたはパッケージ12は、EEPROMまたはNFCチップに符号化された情報を識別するための電子機器などの追跡技術を組み込んでもよい。デバイス12は、製造番号または使用期限を含んでいてもよく、例えば、薬物が回収中であるか否かを判断するために追跡可能であってもよい。デバイス12はまた、医療部品10が、第三者のグレーマーケットの複製品または他の偽造品ではなく、公式製品であることを確認するために使用されてもよい。デバイス12はまた、例えば、RFIDチェックによって、医療部品10が、調剤される薬物のための適切な送達装置であることを確認するために使用されてもよい。デバイス12はまた、医療部品10からの薬物の分注を制御し、在庫レベルを自動的に更新するために使用されてもよい。
【0096】
本明細書に記載された幾つかの実施の形態のいずれかによれば、電子デバイスまたはパッケージ12はまた、測定技術を組み込んでもよい。測定技術は、例えば、使用中のピストンの位置および/または薬物の送達速度を測定または検出するため(例えば、ピストンの移動速度をモニタリングすることによって)、またはピストンが予め設定された用量点に達したときに関するフィードバックを提供するため(例えば、電子デバイス12を用いて医療部品10内の触覚フィードバックを駆動してもよい)のものである。ピストン10が交換可能な部品である場合、電子デバイス12を使用して、交換がいつになりそうか、または薬物曝露が制限されるべきかを判断してもよい。電子デバイス12はまた、異物混入を検出するために使用してもよい。例えば、デバイス12は、針によって穿刺された場合にその値が変化する抵抗性ホイルを有していてもよい。
【0097】
本明細書に記載された幾つかの実施の形態のいずれかによれば、電子デバイスまたはパッケージ12は、様々な他のタイプの技術を組み込んでもよい。例えば、デバイス12は、電子デバイス12に接続されたゴム医療部品10内のコイルの形状の筋ワイヤ(フレキシノールまたは形状記憶アクチュエータワイヤ)技術を組み込んでもよい。電流が筋ワイヤを流れると、筋ワイヤは収縮する。このような機能性を用いて、例えば、ピストン10を締めて/緩めて、動きやすくしたり、動きにくくしたりすることができる。デバイス12はまた、ピエゾ技術(例えば、限定されないが、圧電材料であるPVDFまたは圧電デバイス)を組み込んで、使用前に医療部品10に含まれる薬物を攪拌してもよい。電子デバイス12のもう一つの可能な用途としては、誘導加熱を作動させて、使用前に医療部品10に収容されている薬剤を加熱すること、または、改ざんまたは誤用アラームがトリガーされた場合、もしくは患者が使用期限後に薬剤を分注しようとしている場合に、薬物の意図的な劣化を起こすことである。電子デバイス12はまた、ピストン10と作動ロッドとの間の電気的接触を可能にして、ピストン電子機器に電源を供給し、医療機器に収容されている薬剤が正しいかどうかを確認し、日時をモニタリングすること等を可能にしてもよい。
【0098】
本発明はまた、電子デバイス12のほかに、他の材料を医療部品10内にカプセル化するために実施されてもよい。例えば、本明細書に記載された方法のいずれも、医療部品10のエラストマーボディに、圧縮不可能な材料をカプセル化または埋め込んで、医療部品10の機械的性質を変えるために用いられてもよい。あるいは、本明細書に記載された方法のいずれも、医療部品10のエラストマーボディに高密度な材料をカプセル化または埋め込んで、例えば重力または加速により誘起される医療部品10の動作を目的として、医療部品10の重量を変えるために用いられてもよい。あるいは、本明細書に記載された方法のいずれも、医療部品10のエラストマーボディに磁石または磁性体をカプセル化または埋め込んで、磁石または磁性体が外部センサまたは磁気パッケージングと相互作用するように構成するために用いられてもよい。
【0099】
当業者であれば、上記の実施の形態は、その広い発明概念から離れることなく変更をなしえることを了解するであろう。ゆえに、この発明は、開示された特定の実施の形態に限定されず、添付の請求の範囲に記載された本発明の範囲内の変形を含むことを意図するものであることが理解される。