(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-18
(45)【発行日】2022-03-01
(54)【発明の名称】ロウ付け構造、コールドプレート、およびロウ付け構造の製造方法
(51)【国際特許分類】
B23K 1/18 20060101AFI20220221BHJP
B23K 1/00 20060101ALI20220221BHJP
【FI】
B23K1/18 D
B23K1/00 330K
(21)【出願番号】P 2020002356
(22)【出願日】2020-01-09
【審査請求日】2020-09-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000005186
【氏名又は名称】株式会社フジクラ
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100126882
【氏名又は名称】五十嵐 光永
(74)【代理人】
【識別番号】100160093
【氏名又は名称】小室 敏雄
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】松田 将宗
(72)【発明者】
【氏名】高橋 真
(72)【発明者】
【氏名】益子 耕一
(72)【発明者】
【氏名】堀内 康洋
(72)【発明者】
【氏名】田原 裕一朗
【審査官】後藤 泰輔
(56)【参考文献】
【文献】実開昭59-121901(JP,U)
【文献】実開昭53-82817(JP,U)
【文献】特表2013-518725(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 1/18
B23K 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状の凸部および環状の凹部が長手方向に沿って交互に形成されたフレキシブル管と、
前記フレキシブル管が挿入された孔を有する接合対象物と、
前記フレキシブル管のうち前記孔から延出した部分に係止された係止部材と、を備え、
前記フレキシブル管の外面と前記孔の内面とがロウ材によって接合され
、
前記係止部材の外周面と前記接合対象物の表面との間に、前記ロウ材のフィレットが形成されている、ロウ付け構造。
【請求項2】
前記係止部材と前記接合対象物との間に前記ロウ材が充填されている、請求項1に記載のロウ付け構造。
【請求項3】
前記外周面の鉛直方向における上端部と、前記表面と、の間に前記フィレットが形成されている、請求項
1または2に記載のロウ付け構造。
【請求項4】
前記係止部材は、長手方向において前記凹部に位置し、前記凹部の底面と前記係止部材の内周面とが離れている、請求項1から
3のいずれか1項に記載のロウ付け構造。
【請求項5】
前記係止部材は、長手方向から見て開口部を有するC字状に形成され、前記開口部が鉛直方向における前記フレキシブル管の下側に位置している、請求項1から
4のいずれか1項に記載のロウ付け構造。
【請求項6】
ベースプレートと、
前記ベースプレートとの間に内部空間を形成するカバーと、
前記内部空間に並べて配置された複数のフィンと、
請求項1から
5のいずれか1項に記載のロウ付け構造と、を備え、
前記孔は、前記内部空間に冷媒を流入させる流入口または前記内部空間から冷媒を排出する排出口であり、
前記接合対象物は、前記カバーまたは前記ベースプレートであり、
前記係止部材は前記フレキシブル管のうち前記カバーまたは前記ベースプレートから外部に延出した部分に係止されている、コールドプレート。
【請求項7】
環状の凸部および環状の凹部が長手方向に沿って交互に形成されたフレキシブル管に係止部材を係止する係止工程と、
前記係止部材のうち接合対象物を向く面にロウ材を塗布する塗布工程と、
前記フレキシブル管の端部を前記接合対象物の孔に挿入する挿入工程と、
前記ロウ材を加熱して溶融させる加熱工程と、を有
し、
前記加熱工程において、前記係止部材の外周面と前記接合対象物の表面との間に、前記ロウ材のフィレットを形成する、ロウ付け構造の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロウ付け構造、コールドプレート、およびロウ付け構造の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、板状部材(接合対象物)の孔に棒状部材を挿通させ、棒状部材に装着したCリング状のロウ材を加熱溶融させるロウ付け方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の構成では、棒状部材としてフレキシブル管を用いると、フレキシブル管の凹部の内側に溶けたロウ材が流動し、フレキシブル管と接合対象物との間の隙間にロウ材を留めることが難しい。この結果、フレキシブル管と接合対象物との接合強度が低下する場合があった。
【0005】
本発明はこのような事情を考慮してなされ、フレキシブル管と接合対象物との接合強度を高めることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の第1の態様に係るロウ付け構造は、環状の凸部および環状の凹部が長手方向に沿って交互に形成されたフレキシブル管と、前記フレキシブル管が挿入された孔を有する接合対象物と、前記フレキシブル管のうち前記孔から延出した部分に係止された係止部材と、を備え、前記フレキシブル管の外面と前記孔の内面とがロウ材によって接合されている。
【0007】
上記態様によれば、ロウ材が加熱され溶融したときに、接合対象物から離れる方向にロウ材が流動することが係止部材によって抑制される。このため、孔の内面とフレキシブル管との間の隙間に向けたロウ材の流動が相対的に促される。したがって、ロウ材のうち、接合に寄与する割合を増やすことが可能となり、フレキシブル管と接合対象物との接合強度を高めることができる。
【0008】
ここで、前記係止部材と前記接合対象物との間に前記ロウ材が充填されていてもよい。
【0009】
また、前記係止部材の外周面と前記接合対象物の表面との間に、前記ロウ材のフィレットが形成されていてもよい。
【0010】
また、前記外周面の鉛直方向における上端部と、前記表面と、の間に前記フィレットが形成されていてもよい。
【0011】
また、前記係止部材は、長手方向において前記凹部に位置し、前記凹部の底面と前記係止部材の内周面とが離れていてもよい。
【0012】
また、前記係止部材は、長手方向から見て開口部を有するC字状に形成され、前記開口部が鉛直方向における前記フレキシブル管の下側に位置していてもよい。
【0013】
また、本発明の第2の態様に係るコールドプレートは、ベースプレートと、前記ベースプレートとの間に内部空間を形成するカバーと、前記内部空間に並べて配置された複数のフィンと、上記第1の態様に係るロウ付け構造と、を備え、前記孔は、前記内部空間に冷媒を流入させる流入口または前記内部空間から冷媒を排出する排出口であり、前記接合対象物は、前記カバーまたは前記ベースプレートであり、前記係止部材は前記フレキシブル管のうち前記カバーまたは前記ベースプレートから外部に延出した部分に係止されている。
【0014】
また、本発明の第3の態様に係るロウ付け構造の製造方法は、環状の凸部および環状の凹部が長手方向に沿って交互に形成されたフレキシブル管に係止部材を係止する係止工程と、前記係止部材のうち接合対象物を向く面にロウ材を塗布する塗布工程と、前記フレキシブル管の端部を前記接合対象物の孔に挿入する挿入工程と、前記ロウ材を加熱して溶融させる加熱工程と、を有する。
【発明の効果】
【0015】
本発明の上記態様によれば、フレキシブル管と接合対象物との接合強度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本実施形態に係るコールドプレートの断面図である。
【
図2】
図1のコールドプレートの分解斜視図である。
【
図5】本実施形態に係るロウ付け構造の製造方法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本実施形態のロウ付け構造および当該ロウ付け構造を備えたコールドプレートについて図面に基づいて説明する。
図1に示すように、コールドプレート1は、ベースプレート10と、カバー20と、フレキシブル管30と、係止部材40と、接続部材50と、を備えている。フレキシブル管30は、後述のロウ付け構造2によって、カバー20に接続されている。
【0018】
本明細書では、フレキシブル管30が接続される対象物を「接続対象物」という。
図1の例では、カバー20が接続対象物である。ただし、接続対象物はベースプレート10であってもよい。あるいは、コールドプレート以外の物に本実施形態のロウ付け構造2を採用してもよい。本実施形態のロウ付け構造2は、液体を密封しつつ流動させることが求められる物に対して好適に用いることができる。
【0019】
(方向定義)
本実施形態では、XYZ直交座標系を用いて各構成の位置関係を説明する。Z軸方向はカバー20とベースプレート10とが向かい合う方向である。X軸方向は接続対象物との接続部分におけるフレキシブル管30の長手方向である。Y軸方向は、Z軸方向およびX軸方向の双方に直交する方向である。以下、X軸方向を長手方向Xといい、Y軸方向を直交方向Yといい、Z軸方向を上下方向Zという。また、上下方向Zにおけるカバー20側を上方といい、ベースプレート10側を下方という。
【0020】
なお、上下方向Zは必ずしも鉛直方向(重力が作用する方向)と一致していなくてもよい。本明細書では、特に鉛直方向における位置関係を表す場合、「鉛直方向における下側」等と表す。
図1は、コールドプレート1の、長手方向Xおよび上下方向Zに沿った断面図である。
【0021】
ベースプレート10およびカバー20は、銅などの熱伝導率の大きい金属により形成されている。
図2に示すように、ベースプレート10は、長手方向Xおよび直交方向Yに延びる板状に形成されている。ベースプレート10には、カバー20を位置合わせするための溝11が形成されている。溝11は、ベースプレート10の上面から下方に向けて窪んでおり、上方から見て四角形状に形成されている。
【0022】
カバー20は、上板部21と、周壁22と、を有している。上板部21は、長手方向Xおよび直交方向Yに延びる板状に形成され、ベースプレート10に対して上下方向Zに間隔を空けて対向している。上板部21には、接続部材50を挿入するための孔21aが形成されている。周壁22は、上板部21の外周縁から下方に向けて延びている。
図1に示すように、周壁22には、フレキシブル管30を挿入するための孔22aが形成されている。周壁22の下端は溝11内に位置している。溝11の内側で、周壁22はベースプレート10に対してロウ付けされている。
【0023】
ベースプレート10およびカバー20は、内部空間Sを形成している。内部空間Sには、複数のフィン13が、直交方向Yに並べて配置されている。
図2ではフィン13がベースプレート10の上面から上方に向けて突出している。ただし、フィン13はカバー20に形成されていてもよい。フィン13同士の間には、冷媒の流路となる隙間が形成されている。
【0024】
接続部材50およびフレキシブル管30は、内部空間Sと冷媒の循環装置(不図示)とを接続し、内部空間Sに冷媒を循環させる役割を有する。冷媒としては、例えば水やアルコールの他、公知の化合物などを適宜用いることができる。接続部材50と循環装置との間には、不図示の配管等が設けられていてもよい。コールドプレート1は、ベースプレート10またはカバー20が発熱体(コンピュータに搭載されるCPUなど)から受け取った熱を、フィン13を介して冷媒に受け渡すことで、発熱体を冷却するように構成されている。孔21aおよび孔22aのうち、一方は内部空間Sに冷媒を流入させる流入口であり、他方は内部空間Sから冷媒を排出する排出口である。
【0025】
フレキシブル管30は、銅などの金属により形成されている。フレキシブル管30は、環状の凸部31および環状の凹部32が、長手方向Xに沿って交互に形成されている。このため、フレキシブル管30は可撓性を有している。フレキシブル管30の一方の端部30aは孔22aに挿入されており、他方の端部(不図示)は冷媒の循環装置等に接続されている。
【0026】
フレキシブル管30のうち、端部30aと係止部材40との間に位置する部分(孔22a内に位置する部分)は、長手方向Xにおいて圧縮変形されている。このため、
図1等に示すように、孔22aに挿入された部分と、孔22aに挿入されていない部分とで、凸部31および凹部32の形状が異なっている。圧縮変形により、長手方向Xにおける単位長さ当たりの凸部31の数が増えるため、フレキシブル管30と孔22aの内面との間にロウ材60を保持しやすくなる。その一方で、フレキシブル管30のうち孔22aに挿入されていない部分は圧縮変形されないことで、可撓性を維持することができる。
【0027】
係止部材40は、ステンレス(例えばSU304A)などの金属により形成されている。係止部材40は、内部空間Sの外部において、フレキシブル管30に係止されている。係止部材40は、カバー20に対して当接または近接している。係止部材40とカバー20との間には、少なくとも一部分において、ロウ材60を保持するための隙間が設けられていることが好ましい。
【0028】
図3に示すように、本実施形態の係止部材40は、長手方向Xから見て、開口部43を有するC字状に形成されている。係止部材40は、円弧状の本体部41と、本体部41の両端部から内側に突出した一対の突起42と、を有している。突起42同士の間が、開口部43となっている。
図2に示すように、係止部材40の開口部43はフレキシブル管30の下方に位置している。詳細は後述するが、開口部43は鉛直方向においてもフレキシブル管30の下側に位置していることが、より好ましい。
【0029】
係止部材40の寸法の一例として、本体部41の内周面41aの内径が7.6mm、本体部41の外周面41bの外径が9.6mm、開口部43の幅(突起42同士の間隔)が6.0mm、長手方向Xにおける厚さが0.6mmである。フレキシブル管30の寸法の一例として、凸部31の外径が7.5mm、凹部32の外側の表面の直径が4.5mmである。この寸法例では、本体部41は全体として凹部32の外側に位置するが、突起42が凹部32の内側に位置することで、係止部材40のフレキシブル管30に対する長手方向Xにおける位置が定まる。また、この寸法例では、
図4等に示すように、内周面41aと凹部32の底面32aとが離れている。内周面41aと底面32aとの間にも、ロウ材60が充填されていてもよい。なお、係止部材40の形状および寸法は適宜変更可能であり、例えば本体部41の一部が凹部32の内側に位置してもよい。
【0030】
図4に示すように、フレキシブル管30はロウ材60によってカバー20にロウ付けされている。ロウ材60は、孔22aの内面とフレキシブル管30との間の部分(符号61)、および係止部材40とカバー20との間の部分(符号62)に位置している。また、ロウ材60の一部は、係止部材40の外周面41bとカバー20の表面(長手方向Xを向く側面)との間において、フィレット63を形成している。フィレット63は、外周面41bの全周のいずれかの部分に形成されていればよい。フィレット63は外周面41bの全周に沿って形成されていてもよい。あるいは、フィレット63は外周面41bのうち鉛直方向における上端部にのみ形成されていてもよい。
【0031】
ロウ材60の材質は、適宜変更可能であるが、例えばニッケルおよび銅を含んだ合金であってもよい。ロウ材60がニッケルもしくは銀を主とした合金で、かつ係止部材40およびフレキシブル管30がステンレス材である場合、ロウ付けの濡れ性を高めるため、係止部材40の表面およびフレキシブル管30の表面にニッケルめっきを施すとよい。
【0032】
次に、上記のようなロウ付け構造2の製造方法の一例について説明する。
【0033】
まず、フレキシブル管30に係止部材40を係止する(係止工程)。具体的には、開口部43を下方に向けた状態で、係止部材40をフレキシブル管30に対して上方から近づけ、突起42を凹部32内に位置させる。
次に、
図5に示すように、係止部材40のうちカバー20を向く面40aに、ペースト状のロウ材60を塗布する(塗布工程)。塗布工程において、フレキシブル管30のうち端部30aと係止部材40との間の部分の表面にも、ペースト状のロウ材60を塗布してもよい。
【0034】
次に、
図6に示すように、フレキシブル管30の端部30aをカバー20の孔22a内に挿入する(挿入工程)。このとき、係止部材40がカバー20に当接することで、フレキシブル管30が所定量を超えて孔22aに挿入されてしまうことを規制できる。このように、係止部材40は、フレキシブル管30を孔22aに挿入する際の挿入量を決める役割も有する。
【0035】
次に、カバー20、フレキシブル管30、係止部材40等を、不活性ガス(例えば窒素)の雰囲気の炉に入れて加熱する(加熱工程)。これにより、ロウ材60が溶け出し、毛細管力によって、ロウ材60の一部がフレキシブル管30と孔22aの内面との間の隙間に流動する。このとき、係止部材40がロウ材60を堰き止めることで、溶けたロウ材60が長手方向Xにおいてカバー20から離れる方向に流動することを抑制できる。したがって、フレキシブル管30と孔22aとの間の隙間に向けて流動するロウ材60の割合を大きくすることができる。また、加熱工程では、ロウ材60の一部が係止部材40とカバー20との間の隙間からはみ出し、係止部材40の外周面41bとカバー20の表面との間にフィレット63を形成する。
【0036】
次に、溶けたロウ材60を冷却して固化させることで、フレキシブル管30とカバー20とが固定され、ロウ付け構造2が得られる(冷却工程)。
なお、加熱工程を行う前に、周壁22または溝11にロウ材を塗布し、周壁22を溝11に位置合わせしておいてもよい。この場合、上記の加熱工程およびその後の冷却工程により、ベースプレート10とカバー20とをロウ付けにより固定することができる。
【0037】
以上説明したように、本実施形態のロウ付け構造2は、環状の凸部31および環状の凹部32が長手方向に沿って交互に形成されたフレキシブル管30と、フレキシブル管30が挿入された孔22aを有する接合対象物(カバー20)と、フレキシブル管30のうち孔22aから延出した部分に係止された係止部材40と、を備え、フレキシブル管30の外面と孔22aの内面とがロウ材60によって接合されている。この構成により、ロウ材60が加熱され溶融したときに、接合対象物から離れる方向にロウ材60が流動することが係止部材40によって抑制される。このため、孔22aの内面とフレキシブル管30との間の隙間に向けたロウ材60の流動が相対的に促される。したがって、ロウ材60のうち接合に寄与する割合を増やすことが可能となり、フレキシブル管30と接合対象物との接合強度を高めることができる。
【0038】
また、係止部材40と接合対象物との間の隙間にロウ材60を充填させることで、さらに接合強度を高めることも可能である。
また、係止部材40の外周面41bと接合対象物の表面(カバー20の周壁22の側面)との間に、フィレット63を形成することで、密封性をより高めることができる。したがって、冷媒の漏れを抑制したコールドプレート1を提供することができる。
【0039】
なお、ロウ材60は重力に従って鉛直方向下側に流動しやすいため、係止部材40の鉛直方向における上端部のロウ材60は不足しやすい傾向がある。ロウ材60が不足すると、冷媒の密封性が低下する。そこで、外周面41bのうち、特に鉛直方向における上端に位置する部分にフィレット63を形成すれば、ロウ材60が不足しやすい部分においても密封性を確保できることになる。すなわち、係止部材40の外周面41bの鉛直方向における上端部と、接合対象物の表面と、の間にフィレット63を形成することが、より好ましい。
【0040】
また、本実施形態では係止部材40が長手方向Xにおいてフレキシブル管30の凹部32に位置し、凹部32の底面32aと係止部材40の内周面41aとが離れている。これにより、係止部材40がフレキシブル管30を締め付けることで、フレキシブル管30に局所的な応力が作用することを抑制できる。
【0041】
また、係止部材40は、長手方向Xから見て開口部43を有するC字状に形成され、開口部43が鉛直方向におけるフレキシブル管30の下側に位置していてもよい。係止部材40がC字状であることで、係止部材40をフレキシブル管30に係止する作業が行いやすくなり、製造効率を高めることができる。また、開口部43では係止部材40と接合対象物との間にロウ材60を保持できないため、密封性が低下しやすいが、溶けたロウ材60は重力に従って鉛直方向の下側に溜まりやすい。したがって、開口部43があることによる密封性の低下を、重力に従って鉛直方向下側に溜まるロウ材60によって補うことができる。
【0042】
また、本実施形態のコールドプレート1は、ベースプレート10と、ベースプレート10との間に内部空間Sを形成するカバー20と、内部空間Sに並べて配置された複数のフィン13と、上記したロウ付け構造2と、を備え、孔22aは内部空間Sに冷媒を流入させる流出口または内部空間Sから冷媒を排出する排出口であり、接合対象物はカバー20またはベースプレート10であり、係止部材40はフレキシブル管30のうちカバー20またはベースプレート10から外部に延出した部分に係止されている。このような構成により、冷媒の漏れを抑制したコールドプレート1を提供することができる。
【0043】
また、本実施形態のロウ付け構造の製造方法は、フレキシブル管30に係止部材40を係止する係止工程と、係止部材40のうち接合対象物を向く面40aにロウ材60を塗布する塗布工程と、端部30aを接合対象物の孔22aに挿入する挿入工程と、ロウ材60を加熱して溶融させる加熱工程と、を有する。このような製造方法を採用することで、面40aに塗布されたロウ材60が、加熱工程において孔22aの内面とフレキシブル管30との間の隙間に供給されて、ロウ付けの強度を向上させることができる。
【0044】
なお、本発明の技術的範囲は前記実施形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0045】
例えば、前記実施形態では係止部材40がC字状であったが、係止部材40は環状であってもよい。すなわち、係止部材40は開口部43を有していなくてもよい。この場合も、例えば係止部材40が弾性変形可能な材質または形状であれば、係止部材40をフレキシブル管30に係止させて、凹部32に位置させることができる。
【0046】
また、前記実施形態では1つの接続対象物(カバー20)に対して1つのフレキシブル管30をロウ付けしたが、1つの接続対象物に対して2つ以上のフレキシブル管30をロウ付け構造2によってロウ付けしてもよい。例えば、接続部材50をフレキシブル管30に置き換えて、当該フレキシブル管30をロウ付け構造2によってロウ付けしてもよい。
【0047】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上記した実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、上記した実施形態や変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0048】
1…コールドプレート 2…ロウ付け構造 10…ベースプレート 13…フィン 20…カバー(接合対象物) 30…フレキシブル管 31…凸部 32…凹部 40…係止部材 43…開口部 S…内部空間