(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-18
(45)【発行日】2022-03-01
(54)【発明の名称】電動油圧回路及び航空機
(51)【国際特許分類】
F15B 11/08 20060101AFI20220221BHJP
F16K 11/07 20060101ALI20220221BHJP
【FI】
F15B11/08 A
F16K11/07 M
(21)【出願番号】P 2020009471
(22)【出願日】2020-01-23
【審査請求日】2020-11-25
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成28年度、防衛装備庁、請負事業、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】503405689
【氏名又は名称】ナブテスコ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】竹内 基靖
(72)【発明者】
【氏名】阿部 利章
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 一行
(72)【発明者】
【氏名】丹羽 秀記
【審査官】北村 一
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-100727(JP,A)
【文献】実開昭51-039832(JP,U)
【文献】特開2013-036616(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F15B 11/00-11/22;21/14
F16K 11/00-11/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動モータの回転に応じて作動油を
2経路の供給油路に吐出可能な油圧ポンプを含み、前記2経路の供給油路を介して前記作動油を駆動部に供給
しかつ前記駆動部から前記作動油が戻される油供給装置と、
前記油供給装置から供給される前記作動油の油圧によって駆動する
前記駆動部と、
前記油供給装置と前記駆動部との間を接続する
前記2経路の供給油路と、
前記
2経路の供給油路に設けられ、前記駆動部へ供給される前記作動油の複数の切替油路を切り替える切替弁と、
一端が前記油供給装置と前記切替弁との間の前記2経路の供給油路のそれぞれに接続されるとともに他端が前記切替弁に接続され、前記切替弁の前記切替油路を切り替えるためのパイロット油圧となる前記作動油を供給するパイロット油圧路と、
前記パイロット油圧路に設けられる逆止弁と、
前記作動油の流通方向において、前記逆止弁よりも下流側の前記パイロット油圧路に設けられ、前記切替弁への前記作動油の供給状態を切り替える電磁弁と、
前記切替弁に設けられ、前記パイロット油圧となる前記作動油を封止する封止材と、
前記電磁弁に対して前記逆止弁とは反対側の前記パイロット油圧路に設けられ、前記パイロット油圧路の前記パイロット油圧を開放可能な開放弁と、を備えることを特徴とする電動油圧回路。
【請求項2】
前記切替弁は、
複数のポートが設けられるスリーブと、
前記スリーブの内部に設けられて、前記パイロット油圧によって軸方向に移動して、前記複数のポートを接続することで形成される作動油の流路である前記切替油路を切り替えるスプールと、
前記パイロット油圧に抗して前記スプールを付勢する付勢手段と、を備え、
前記封止材は、前記スリーブと前記スプールとの間に設けられ、前記切替油路を前記パイロット油圧路から封止することを特徴とする請求項1に記載の電動油圧回路。
【請求項3】
前記切替弁は、絞り要素を含み、
複数の前記切替油路は、前記切替弁において、
前記油供給装置と前記駆動部との間を接続する前記2経路の供給油路のうち、前記油供給装置と前記切替弁とを接続する
2つの供給油路と、前記切替弁と前記駆動部とを接続する
2つの供給油路と、を
1対1で連通させる第1切替油路と、前記切替弁と前記駆動部とを接続する2つの前記供給油路を絞り要素を介して連通させる第2切替油路と、を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の電動油圧回路。
【請求項4】
舵面を有する動翼と、
請求項1から3のいずれか1項に記載の電動油圧回路を用いて、前記舵面を動作させる前記駆動部としてのアクチュエータと、を備えることを特徴とする航空機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動油圧回路及び航空機に関する。
【背景技術】
【0002】
航空機の動翼の舵面等に搭載される電動油圧アクチュエータにおいて、状況に応じて、ノーマルモード、バイパスモード及びダンピングモード等の作動モードを切り替える電動油圧回路が知られている。電動油圧回路は、アクチュエータの作動モードに応じてアクチュエータに供給される作動油の油路を切り替える切替弁を有する。油路を切り替えることによって、アクチュエータの作動モードが切り替わる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、電動油圧回路では、弾性体による付勢力とこれに抗するソレノイドの電磁力とを用いて、切替弁の油路を切り替える電磁弁が一般的である。しかしながら、ソレノイドの出力が弾性体の付勢力より大きくする必要があるので、ソレノイドの消費電力及び重量が増加する。また、切替弁の油路を切り替える方法として、パイロット油圧による油圧力とこれに抗する弾性体の付勢力とを用いる方法がある。このような方法は、電磁弁を用いる方法に比べて、消費電力及び重量の増加を抑制できる。しかしながら、切替弁の油路を切り替えるためのパイロット油圧に発生する圧力変動により、意図せず油路が切り替わることがあるため、意図せずアクチュエータの作動モードが切り替わることを抑制する必要がある。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、軽量かつ低消費電力によって切替弁の切替油路を切り替えることができる電動油圧回路及び航空機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の電動油圧回路は、作動油を供給する油供給装置と、前記油供給装置から供給される前記作動油の油圧によって駆動する駆動部と、の間を接続する供給油路と、前記供給油路に設けられ、前記駆動部へ供給される前記作動油の複数の切替油路を切り替える切替弁と、前記切替弁に接続され、前記切替弁の前記切替油路を切り替えるためのパイロット油圧となる前記作動油を供給するパイロット油圧路と、前記パイロット油圧路に設けられる逆止弁と、前記作動油の流通方向において、前記逆止弁よりも下流側の前記パイロット油圧路に設けられ、前記切替弁への前記作動油の供給状態を切り替える電磁弁と、前記切替弁に設けられ、前記パイロット油圧となる前記作動油を封止する封止材と、前記流通方向において、前記逆止弁よりも下流側の前記パイロット油圧路に設けられ、前記パイロット油圧路の前記パイロット油圧を開放可能な開放弁と、を備えることを特徴とする。
【0007】
この構成によれば、切替弁の切り替えにパイロット油圧を用い、パイロット油圧の供給を電磁弁によって制御するので、切替弁の切り替えに直接電磁弁を用いるよりも電磁弁を小さくできる。したがって、電動油圧回路全体を軽量化し、消費電力を抑制することができる。また、逆止弁及び封止材によってパイロット油圧の漏洩を抑制することによって、供給油路の圧力低下により不意に切替油路が切り替わることを抑制することができる。さらに、開放弁がパイロット油圧路内の過加圧を抑制することによって、電動油圧回路の破損を抑制することができる。
【0008】
また、前記切替弁は、複数のポートが設けられるスリーブと、前記スリーブの内部に設けられて、前記パイロット油圧によって軸方向に移動して、前記複数のポートを接続することで形成される作動油の流路である前記切替油路を切り替えるスプールと、前記パイロット油圧に抗して前記スプールを付勢する付勢手段と、を備え、前記封止材は、前記スリーブと前記スプールとの間に設けられ、前記切替油路を前記パイロット油圧路から封止することが好ましい。
【0009】
この構成によれば、より好適に、スリーブ及びスプールを密封することができ、パイロット油圧の漏洩を抑制することができる。
【0010】
また、前記切替弁は、絞り要素を含み、複数の前記切替油路は、前記切替弁において、前記油供給装置と前記切替弁とを接続する前記供給油路と、前記切替弁と前記駆動部とを接続する前記供給油路と、を連通させる第1切替油路と、前記切替弁と前記駆動部とを接続する2つの前記供給油路を絞り要素を介して連通させる第2切替油路と、を含むことが好ましい。
【0011】
この構成によれば、油供給装置から供給される油圧が失陥する等の故障時においても、駆動部の不安定作動を抑制することができる。
【0012】
また、本発明の航空機は、舵面を有する動翼と、前記電動油圧回路を用いて、前記舵面を動作させる前記駆動部としてのアクチュエータと、を備えることを特徴とする。
【0013】
この構成によれば、切替弁の切り替えにパイロット油圧を用い、パイロット油圧の供給を電磁弁によって制御するので、切替弁の切り替えに直接電磁弁を用いるよりも電磁弁を小さくできる。したがって、電動油圧回路全体を軽量化し、消費電力を抑制することができる。また、逆止弁及び封止材によってパイロット油圧の漏洩を抑制することによって、供給油路の圧力低下により不意に切替油路が切り替わることを抑制することができる。さらに、開放弁がパイロット油圧路内の過加圧を抑制することによって、電動油圧回路の破損を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、実施形態の電動油圧回路を示す図である。
【
図3】
図3は、電動油圧回路の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明に係る電動油圧回路の実施形態について図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。なお、以下の実施形態の説明において、同一構成には同一符号を付し、異なる構成には異なる符号を付すものとする。
【0016】
まず、
図1を用いて、実施形態の電動油圧回路1の構成について説明する。
図1は、実施形態の電動油圧回路を示す模式図である。電動油圧回路1は、油供給装置10から供給される作動油の油圧によって駆動部20を駆動する。油供給装置10と駆動部20との間は、切替弁30を介して、供給油路90及び補助供給油路92によって接続される。供給油路90は、第1供給油路90aと、第2供給油路90bと、第3供給油路90cと、第4供給油路90dと、を含む。
【0017】
第1供給油路90aは、油供給装置10と切替弁30とを接続する。第1供給油路90aは、パイロット油圧路94に分岐する。第1供給油路90aは、さらに、第1開放油路96aに分岐する。第1開放油路96aは、第1開放弁70を介して補助供給油路92に接続する。第1開放弁70は、第1供給油路90aの油圧が所定の値を超えた場合に開放されて、作動油を補助供給油路92に排出する。
【0018】
第2供給油路90bは、油供給装置10と切替弁30とを接続する。第2供給油路90bは、パイロット油圧路94に分岐する。第2供給油路90bは、さらに、第2開放油路96bに分岐する。第2開放油路96bは、第2開放弁72を介して補助供給油路92に接続する。第2開放弁72は、第2供給油路90bの油圧が所定の値を超えた場合に開放されて、作動油を補助供給油路92に排出する。
【0019】
第3供給油路90cは、切替弁30と駆動部20とを接続する。第4供給油路90dは、切替弁30と駆動部20とを接続する。
【0020】
補助供給油路92は、切替弁30において、後述する第1付勢手段36(
図2参照)が設けられる内部空間36aを通過する。補助供給油路92は、第3供給油路90c及び第4供給油路90dに接続してもよい。この場合、補助供給油路92から第3供給油路90c及び第4供給油路90dへの作動油の流通を許容する。また、第3供給油路90c及び第4供給油路90dから補助供給油路92への作動油の流通を遮断する。
【0021】
パイロット油圧路94は、逆止弁50及び電磁弁60を介して、切替弁30に接続される。パイロット油圧路94は、実施形態において、第1供給油路90a及び第2供給油路90bから分岐し、合流部94aにおいて合流して、切替弁30に接続される。
【0022】
油供給装置10は、第1供給油路90a、第2供給油路90b及び補助供給油路92に作動油を供給する。油供給装置10は、例えば、電動モータと、電動モータの回転に応じて作動油を2経路(第1供給油路90a及び第2供給油路90b)に吐出可能な可変容積型の油圧ポンプと、を含む。油供給装置10は、例えば、供給油路90を流通する作動油の流量が不足した場合に、補助供給油路92を介して供給油路90に作動油を供給するアキュムレータを含む。
【0023】
駆動部20は、第3供給油路90c及び第4供給油路90dから作動油が供給されることによって駆動する。駆動部20は、例えば、航空機の動翼の舵面を動作させるアクチュエータが適用される。アクチュエータは、シリンダと、シリンダの内部に設けられるピストンと、ピストンに連結されたロッドと、を含む。アクチュエータは、シリンダ及びピストンによって、第3供給油路90cに接続する第1油室と、第4供給油路90dに接続する第2油室と、を形成する。ロッドは、舵面に接続される。舵面は、アクチュエータによって搖動可能に構成される。
【0024】
駆動部20は、複数の作動モードを含む。作動モードは、実施形態において、ノーマルモードと、ダンピングモードと、を含む。駆動部20は、ノーマルモードにおいて、供給油路90を介して油供給装置10から作動油が供給されることによって駆動する。駆動部20は、ダンピングモードにおいて、供給油路90を介する油供給装置10からの作動油の供給が遮断される。この際、補助供給油路92を介して第3供給油路90c及び第4供給油路90dに作動油が供給される。すなわち、アクチュエータは、ダンピングモードにおいて、第1油室と第2油室とが、第3供給油路90c、切替弁30及び第4供給油路90dを介して連通する。この際、舵面による空気負荷等の外力によって第1油室と第2油室との間を作動油が移動するとともに、必要に応じて補助供給油路92を介して第3供給油路90c及び第4供給油路90dに作動油が供給される。
【0025】
切替弁30は、供給油路90に設けられる。切替弁30は、駆動部20に供給される作動油の複数の切替油路を切り替える。切替弁30は、パイロット油圧路94から供給される作動油のパイロット油圧によって、複数の切替油路を切り替える。切替弁30の切替油路は、実施形態において、第1切替油路と、第2切替油路と、を含む。第1切替油路は、油供給装置10と駆動部20とを接続する供給油路90を連通させる。すなわち、第1切替油路は、第1供給油路90aと第3供給油路90cとを連通させる。第1切替油路は、第2供給油路90bと第4供給油路90dとを連通させる。第2切替油路は、第1供給油路90aと第3供給油路90cとを遮断させる。第2切替油路は、第2供給油路90bと第4供給油路90dとを遮断させる。第2切替油路は、第3供給油路90cと第4供給油路90dとを後述する絞り要素30b(
図2参照)を介して連通させる。
【0026】
逆止弁50は、パイロット油圧路94に設けられる。逆止弁50は、実施形態において、第1供給油路90aと合流部94aとの間に設けられる。逆止弁50は、第1供給油路90aから電磁弁60への作動油の流通を許容する。逆止弁50は、電磁弁60から第1供給油路90aへの作動油の流通を遮断する。逆止弁50は、実施形態において、第2供給油路90bと合流部94aとの間に設けられる。逆止弁50は、第2供給油路90bから電磁弁60への作動油の流通を許容する。逆止弁50は、電磁弁60から第2供給油路90bへの作動油の流通を遮断する。
【0027】
電磁弁60は、パイロット油圧となる作動油の流通方向において、2つの逆止弁50よりも下流側のパイロット油圧路94に設けられる。電磁弁60は、切替弁30への作動油の供給状態を切り替える。電磁弁60は、弁体62と、付勢手段64と、電磁駆動部66と、を含む。
【0028】
弁体62は、供給ポート60a及び排出ポート60bのうちいずれか一方を選択的に切替弁側ポート60cに接続する。供給ポート60aは、パイロット油圧路94を介して逆止弁50に連通する。排出ポート60bは、排出油路98に連通する。排出油路98は、補助供給油路92等に連通する。切替弁側ポート60cは、パイロット油圧路94を介して切替弁30に連通する。
【0029】
弁体62は、供給ポート60aと切替弁側ポート60cとを接続させる供給位置62aと、排出ポート60bと切替弁側ポート60cとを接続させる排出位置62bと、の間を移動する。付勢手段64は、弁体62を供給位置62aに付勢する。付勢手段64は、実施形態において、圧縮バネである。電磁駆動部66は、例えば、外部の制御装置から通電可能に構成される。電磁駆動部66は、通電時において、付勢手段64の付勢力に抗して、弁体62を排出位置62bに移動させる。弁体62が供給位置62aにある場合、切替弁30にパイロット油圧となる作動油が供給される。弁体62が排出位置62bにある場合、排出ポート60bから作動油が排出可能となる。
【0030】
次に、
図2を用いて、切替弁30の詳細な構成について説明する。
図2は、実施形態の切替弁を示す模式図である。切替弁30は、実施形態において、スリーブ32と、スプール34と、第1付勢手段36と、封止材38と、第3開放弁40と、を備える。
【0031】
スリーブ32は、切替弁30の外形となる筒形状である。スリーブ32には、複数のポートが設けられる。スリーブ32は、第1供給側ポート32aと、第2供給側ポート32bと、第1駆動部側ポート32cと、第2駆動部側ポート32dと、を有する。第1供給側ポート32aは、第1供給油路90aを介して油供給装置10に連通する。第2供給側ポート32bは、第2供給油路90bを介して油供給装置10に連通する。第1駆動部側ポート32cは、第3供給油路90cを介して駆動部20に連通する。第2駆動部側ポート32dは、第4供給油路90dを介して駆動部20に連通する。複数のポートを接続することによって、作動油の流路30aが形成される。流路30aは、複数の切替油路を含む。
【0032】
スプール34は、複数の凹部を有する棒形状である。凹部は、切替弁30における作動油の流路30aである。スプール34は、スリーブ32の内部に設けられる。スプール34は、スリーブ32の内部において、軸方向ADに移動可能である。スプール34の一方の端部34aは、パイロット油圧路94に連通する。スプール34は、パイロット油圧路94を流通する作動油のパイロット油圧によって、他方の端部34b側に付勢される。
【0033】
第1付勢手段36は、スプール34の端部34b側に設けられる。第1付勢手段36は、切替弁30の内部空間36aに設けられる。内部空間36aは、補助供給油路92が通過する。第1付勢手段36は、パイロット油圧に抗してスプール34を端部34a側に付勢する。第1付勢手段36は、実施形態において、圧縮バネである。
【0034】
切替弁30は、スプール34がスリーブ32の内部において軸方向DAに移動することによって、作動油の切替油路を切り替える。パイロット油圧が第1付勢手段36の付勢力に抗してスプール34を端部34b側に移動させる場合、第1供給側ポート32aと第1駆動部側ポート32cとが連通し、第2供給側ポート32bと第2駆動部側ポート32dとが連通する。すなわち、第1供給油路90aと第3供給油路90cとを連通させ、第2供給油路90bと第4供給油路90dとを連通させる第1切替油路が開放される。第1付勢手段36の付勢力がパイロット油圧に抗してスプール34を端部34a側に移動させる場合、第1供給側ポート32a及び第2供給側ポート32bが閉塞し、第1駆動部側ポート32cと第2駆動部側ポート32dとが連通する。すなわち、第1供給油路90aと第3供給油路90cとを遮断させ、第2供給油路90bと第4供給油路90dとを遮断させ、第3供給油路90cと第4供給油路90dとを連通させる第2切替油路が開放される。実施形態において、第2切替油路において連通する第1駆動部側ポート32cと第2駆動部側ポート32dとの間の流路30aには、絞り要素30bが設けられる。
【0035】
封止材38は、切替弁30に設けられる。封止材38は、パイロット油圧となる作動油を封止する。封止材38は、実施形態において、スリーブ32と、スプール34との間に設けられる。封止材38は、切替弁30内部の流路30aを、パイロット油圧路94から封止する。すなわち、封止材38は、切替弁30の切替油路をパイロット油圧路94から封止する。封止材38は、流路30aを流通する作動油と、パイロット油圧となる作動油とが、互いに漏出しないように設けられる。封止材38は、スプール34の端部34a側近傍に設けられることが好ましい。
【0036】
スプール34は、実施形態において、細孔34cと、逃がし孔34dと、を有する。細孔34cは、端部34a側の中心から端部34b側に向かって、スプール34の軸方向ADに沿って形成される。細孔34cは、端部34aにおいて、パイロット油圧路94に連通する。逃がし孔34dは、端部34b側の中心から端部34a側に向かって、スプール34の軸方向ADに沿って形成される。逃がし孔34dは細孔34cに連通する。逃がし孔34dの径は、細孔34cの径より小さい。逃がし孔34dは、パイロット油圧路94及び細孔34cを流通するパイロット油圧となる作動油を、スプール34の外部に排出する。逃がし孔34dは、実施形態において、切替弁30の内部空間36aを介して、補助供給油路92に作動油を排出する。
【0037】
第3開放弁40は、流通方向において、2つの逆止弁50よりも下流側のパイロット油圧路94に設けられる。第3開放弁40は、パイロット油圧路94のパイロット油圧が所定の値を超えた場合、パイロット油圧路94から作動油を排出して、パイロット油圧を開放する。第3開放弁40は、実施形態において、切替弁30に設けられるが、作動油の流通方向において、逆止弁50よりも下流側であれば、どこに設けられてもよい。
【0038】
第3開放弁40は、実施形態において、第1付勢手段36の内側に設けられる。第3開放弁40は、実施形態において、弁体42と、第2付勢手段44と、を含む。弁体42は、スプール34の端部34b側に設けられる。弁体42は、逃がし孔34dを閉塞する。弁体42は、スプール34の逃がし孔34dとメタルタッチする。第2付勢手段44は、弁体42に対して、スプール34の端部34b側とは反対側に設けられる。第2付勢手段44は、弁体42をスプール34の逃がし孔34dに付勢する。第2付勢手段44は、実施形態において、圧縮バネである。弁体42及び第2付勢手段44の移動方向は、実施形態において、軸方向ADと同じ方向である。
【0039】
次に、切替弁30の動作について説明する。逃がし孔34dにおけるパイロット油圧が所定の値以下の場合、弁体42は、パイロット油圧に抗して逃がし孔34dを閉塞する。逃がし孔34dにおけるパイロット油圧が所定の値を超えた場合、弁体42は、第2付勢手段44の付勢力に抗して逃がし孔34dを開放する。弁体42が逃がし孔34dを開放することによって、パイロット油圧路94、細孔34c及び逃がし孔34dを流通するパイロット油圧となる作動油は、切替弁30の内部空間36aを介して、補助供給油路92に排出される。
【0040】
次に、電動油圧回路1の作動について説明する。電動油圧回路1は、電磁弁60における作動油の供給状態を切り替えることによって、駆動部20の作動モードを切り替えることが可能である。電磁弁60における作動油の供給状態は、弁体62を供給位置62a又は排出位置62bに移動させることによって切り替えることができる。
【0041】
電磁弁60の弁体62が供給位置62aにある場合、作動油は、第1供給油路90aからパイロット油圧路94に導入され、逆止弁50、電磁弁60の供給ポート60a及び切替弁側ポート60cを介して、切替弁30側に供給される。これにより、パイロット油圧路94内部の作動油は、パイロット油圧が上昇する。パイロット油圧路94内部の作動油のパイロット油圧が上昇すると、作動油は、切替弁30のスプール34を端部34b側に付勢する。作動油のパイロット油圧が第1付勢手段36の付勢力に抗してスプール34を端部34b側に移動させると、切替弁30は、第1切替油路が開放される。第1切替油路は、第1供給油路90aと第3供給油路90cとが連通し、第2供給油路90bと第4供給油路90dとが連通する。したがって、油供給装置10から供給油路90に供給された作動油は、切替弁30を介して駆動部20に供給される。これにより、駆動部20は、ノーマルモードによって駆動する。
【0042】
電磁弁60の弁体62が排出位置62bにある場合、パイロット油圧路94における電磁弁60と切替弁30との間に流通する作動油は、パイロット油圧路94から、切替弁側ポート60c及び排出ポート60bを介して、排出油路98に排出される。これにより、パイロット油圧路94内部の作動油は、パイロット油圧が低下する。パイロット油圧路94内部の作動油のパイロット油圧が低下すると、作動油が切替弁30のスプール34を端部34b側に付勢する付勢力が低下する。第1付勢手段36が作動油のパイロット油圧の付勢力に抗してスプール34を端部34a側に移動させると、切替弁30は、第2切替油路が開放される。第2切替油路は、第1供給油路90aと第3供給油路90cとが遮断し、第2供給油路90bと第4供給油路90dとが遮断する。また、第2切替油路は、第3供給油路90cと第4供給油路90dとが絞り要素30bを介して連通する。これにより、駆動部20は、ダンピングモードとなる。
【0043】
以上のように、実施形態の電動油圧回路1によれば、切替弁30の切り替えにパイロット油圧を用い、パイロット油圧の供給を電磁弁60によって制御するので、切替弁30の切り替えに直接電磁弁を用いるよりも電磁弁60を小さくできる。したがって、電動油圧回路1は、電動油圧回路1全体を軽量化し、消費電力を抑制することができる。また、電動油圧回路1は、逆止弁50及び封止材38によってパイロット油圧の漏洩を抑制することによって、供給油路90の圧力低下により不意に切替油路が切り替わることを抑制することができる。さらに、電動油圧回路1は、第3開放弁40がパイロット油圧路94内の過加圧を抑制することによって、電動油圧回路1の破損を抑制することができる。
【0044】
また、実施形態の電動油圧回路1は、切替弁30が、複数のポートが設けられるスリーブ32と、スリーブ32の内部に設けられて、パイロット油圧によって軸方向ADに移動して、複数のポートを接続することで形成される作動油の流路30aである切替油路を切り替えるスプール34と、パイロット油圧に抗してスプール34を付勢する付勢手段(第1付勢手段36)と、を備える。電動油圧回路1は、封止材38が、スリーブ32とスプール34との間に設けられ、切替油路(流路30a)をパイロット油圧路94から封止することによって、より好適に、スリーブ32及びスプール34を密封することができ、パイロット油圧の漏洩を抑制することができる。
【0045】
また、実施形態の電動油圧回路1は、切替弁30が、絞り要素30bを含む。電動油圧回路1は、複数の切替油路が、切替弁30において、油供給装置10と切替弁30とを接続する供給油路90(第1供給油路90a及び第2供給油路90b)と、切替弁30と駆動部20とを接続する供給油路90(第3供給油路90c及び第4供給油路90d)と、を連通させる第1切替油路と、切替弁30と駆動部20とを接続する2つの供給油路90(第3供給油路90c及び第4供給油路90d)を絞り要素30bを介して連通させる第2切替油路と、を含む。これにより、電動油圧回路1は、油供給装置10から供給される油圧が失陥する等の故障時においても、駆動部20の不安定作動を抑制することができる。
【0046】
また、舵面を有する動翼と、実施形態の電動油圧回路1を用いて、舵面を動作させる駆動部20としてのアクチュエータと、を備える航空機は、電動油圧回路1の切替弁30の切り替えにパイロット油圧を用い、パイロット油圧の供給を電磁弁60によって制御する。これにより、航空機は、電動油圧回路1の切替弁30の切り替えに直接電磁弁を用いるよりも電磁弁60を小さくできる。したがって、航空機は、電動油圧回路1全体を軽量化し、消費電力を抑制することができる。また、航空機は、電動油圧回路1の逆止弁50及び封止材38によってパイロット油圧の漏洩を抑制することによって、供給油路90の圧力低下により不意に切替油路が切り替わることを抑制することができる。さらに、航空機は、電動油圧回路1の第3開放弁40がパイロット油圧路94内の過加圧を抑制することによって、電動油圧回路1の破損を抑制することができる。
【0047】
[変形例]
図3は、電動油圧回路の変形例を示す図である。
図3に示す電動油圧回路2において、
図1に示す電動油圧回路1と同一の構成については同一の参照符号を付して説明を省略し、異なる構成について説明する。電動油圧回路2は、
図1における電動油圧回路1における切替弁30及び第3開放弁40の代わりに、切替弁130及び第3開放弁140を備える。電動油圧回路2は、さらに、第3開放油路96cを備える。
【0048】
切替弁130は、
図2に示す切替弁30に対して、第3開放弁40と、細孔34cと、逃がし孔34dと、を設けない点において異なる。切替弁130は、スプール34がスリーブ32の内部において移動することによって、作動油の切替油路を切り替える。パイロット油圧路94を流通する作動油によるパイロット油圧が第1付勢手段36の付勢力に抗してスプール34を第1付勢手段36側に移動させる場合、第1供給側ポート32aと第1駆動部側ポート32cとが連通し、第2供給側ポート32bと第2駆動部側ポート32dとが連通する。すなわち、第1供給油路90aと第3供給油路90cとを連通させ、第2供給油路90bと第4供給油路90dとを連通させる第1切替油路が開放される。第1付勢手段36の付勢力がパイロット油圧に抗してスプール34をパイロット油圧路94側に移動させる場合、第1供給側ポート32a及び第2供給側ポート32bが閉塞し、第1駆動部側ポート32cと第2駆動部側ポート32dとが連通する。すなわち、第1供給油路90aと第3供給油路90cとを遮断させ、第2供給油路90bと第4供給油路90dとを遮断させ、第3供給油路90cと第4供給油路90dとを連通させる第2切替油路が開放される。実施形態において、第2切替油路において連通する第1駆動部側ポート32cと第2駆動部側ポート32dとの間の流路30aには、絞り要素30bが設けられる。
【0049】
第3開放弁140は、第3開放油路96cに設けられる。第3開放油路96cは、パイロット油圧路94から分岐する。第3開放油路96cは、流通方向において、2つの逆止弁50よりも下流側のパイロット油圧路94から分岐する。第3開放油路96cは、第3開放弁140を介して補助供給油路92に接続する。第3開放弁140は、パイロット油圧路94のパイロット油圧が所定の値を超えた場合、第3開放油路96cから作動油を補助供給油路92に排出して、パイロット油圧を開放する。第3開放油路96cは、実施形態において、電磁弁60よりも下流側から分岐するが、作動油の流通方向において、逆止弁50よりも下流側であれば、どこから分岐してもよい。
【符号の説明】
【0050】
1、2 電動油圧回路
10 油供給装置
20 駆動部
30、130 切替弁
30a 流路
30b 絞り要素
32 スリーブ
32a 第1供給側ポート
32b 第2供給側ポート
32c 第1駆動部側ポート
32d 第2駆動部側ポート
34 スプール
34a、34b 端部
34c 細孔
34d 逃がし孔
36 第1付勢手段
36a 内部空間
38 封止材
40、140 第3開放弁
42 弁体
44 第2付勢手段
50 逆止弁
60 電磁弁
60a 供給ポート
60b 排出ポート
60c 切替弁側ポート
62 弁体
62a 供給位置
62b 排出位置
64 付勢手段
66 電磁駆動部
70 第1開放弁
72 第2開放弁
90 供給油路
90a 第1供給油路
90b 第2供給油路
90c 第3供給油路
90d 第4供給油路
92 補助供給油路
94 パイロット油圧路
94a 合流部
96a 第1開放油路
96b 第2開放油路
96c 第3開放油路
98 排出油路
AD 軸方向