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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-18
(45)【発行日】2022-03-01
(54)【発明の名称】表示装置
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/1345 20060101AFI20220221BHJP
   G02F 1/1333 20060101ALI20220221BHJP
   G02F 1/1368 20060101ALI20220221BHJP
【FI】
G02F1/1345
G02F1/1333
G02F1/1368
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020016024
(22)【出願日】2020-02-03
(62)【分割の表示】P 2016027838の分割
【原出願日】2016-02-17
(65)【公開番号】P2020098356
(43)【公開日】2020-06-25
【審査請求日】2020-02-03
(73)【特許権者】
【識別番号】502356528
【氏名又は名称】株式会社ジャパンディスプレイ
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】阿部 裕行
(72)【発明者】
【氏名】縣 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】村瀬 正樹
(72)【発明者】
【氏名】松村 和音
【審査官】磯崎 忠昭
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2010/061662(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0329171(US,A1)
【文献】特開平06-138488(JP,A)
【文献】特開2008-008944(JP,A)
【文献】特開2009-036794(JP,A)
【文献】特開平06-258660(JP,A)
【文献】国際公開第2015/178059(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/1345
G02F 1/1333
G02F 1/1368
G09F 9/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
TFT基板と、
前記TFT基板に重なる対向基板と、を備え、
前記TFT基板は、前記対向基板と重ならない領域において、有機パッシベーション膜と、前記有機パッシベーション膜上に形成された第1導電膜と、を備えたパッド部と、前記有機パッシベーション膜下に設けられた金属配線と、を備え、
前記金属配線は、前記有機パッシベーション膜で前記第1導電膜と絶縁されており、平面視において、前記金属配線は前記パッド部と重なり、
前記TFT基板の前記対向基板と重ならない前記領域において、
前記パッド部の前記有機パッシベーション膜は島状に形成されており、
前記島状の前記有機パッシベーション膜は、第1終端部と、前記第1終端部と反対側の第2終端部を有し、
前記金属配線は前記第1終端部及び前記第2終端部に交差することを特徴とする表示装置。
【請求項2】
前記金属配線は、前記第1導電膜に接続されない、請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
TFT基板と、
前記TFT基板に重なる対向基板と、を備え、
前記TFT基板は、前記対向基板と重ならない領域において、有機パッシベーション膜と、前記有機パッシベーション膜上に形成された第1導電膜と、を備えたパッド部と、前記有機パッシベーション膜下に設けられた金属配線と、を備え、
前記金属配線は、前記有機パッシベーション膜で前記第1導電膜と絶縁されており、平面視において、前記金属配線は前記パッド部と重なり、
前記TFT基板の前記対向基板と重ならない前記領域において、
前記パッド部はさらに前記第1導電膜に積層された第2導電膜を備え、
前記第1導電膜及び前記第2導電膜は、透明導電膜であることを特徴とする表示装置。
【請求項4】
前記TFT基板の前記対向基板と重ならない前記領域において、
前記パッド部はさらに前記第1導電膜に積層された第2導電膜と、無機絶縁膜を有し、
前記無機絶縁膜は、前記第1終端部を覆い、
前記第1導電膜及び前記第2導電膜は、透明導電膜である、請求項1に記載の表示装置。
【請求項5】
前記第1導電膜は、第1端部と前記第1端部と反対側の第2端部と、を有し、
前記金属配線は、前記第1端部及び前記第2端部に交差する、請求項1または3に記載の表示装置。
【請求項6】
前記対向基板は、前記TFT基板に対向する第1面と、前記第1面と反対側の第2面と、を有し、前記第2面には、透明導電膜から成る第3導電膜が形成されており、
前記第3導電膜は、導電体を介して前記第1導電膜に接続されている、請求項5に記載の表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は表示装置に係り、特に端子領域を小さくすることによって外形を小さくする液晶表示装置及びこれに用いられるTFT基板に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置では画素電極および薄膜トランジスタ(TFT)等を有する画素がマトリクス状に形成されたTFT基板と、TFT基板に対向して対向基板が配置され、TFT基板と対向基板の間に液晶が挟持されている。そして液晶分子による光の透過率を画素毎に制御することによって画像を形成している。
【0003】
液晶表示装置では、視野角が問題である。IPS(In Plane Switchin)方式は基板と平行方向の電界によって液晶分子を回転させることによって液晶層の透過率を変えるものであり、優れた視野角特性を有している。IPS方式では、基本的には、対向基板には対向電極を形成する必要がない。その分、構造を単純化することができるが、対向基板側から、外部からのノイズが入りやすい。
【0004】
これを防止するために、対向基板の外面にシールド導電層(シールド用ITO)を形成する。シールド用ITOの構成については、例えば、特許文献1に記載されている。特許文献1では、対向基板のシールド用ITOを、樹脂を用いてTFT基板に形成されたパッドに接続する構成が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2011-123231号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
対向基板の表面に形成されたシールド用ITOは、アースあるいは基準電位と接続しなければならない。この接続のために、TFT基板側にアースパッドを形成し、対向基板のシールド用ITOとアースパッドとを例えば導電テープで接続することが行われている。しかし、導電テープの接着力を維持するためには、アースパッドはある面積が必要である。アースパッドの面積は、例えば3mm×1.8mmである。
【0007】
液晶表示装置では、高精細化が進み、その結果、配線数も多くなっている。この配線を端子部に形成するために、端子部はある面積が必要である。一方、特に中小型の液晶表示装置では、液晶表示パネルの外形を小さくすることが求められている。そうすると、端子部の面積も縮小化することが求められる。しかし、アースパッドは所定の面積が必要であり、液晶表示パネルのサイズの縮小化には限界があった。
【0008】
本発明は、アースパッドの必要な面積を確保しつつ、端子部の面積を縮小し、液晶表示パネルの小型化が可能な構成を実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は上記課題を克服するものであり、主な具体的な手段は次のとおりである。
【0010】
(1)TFT基板と対向基板がシール材によって接着し、表示領域と前記TFT基板に形成された端子部を有する液晶表示装置であって、前記対向基板の外側にはシールド用透明導電膜が形成され、前記端子部には、有機パッシベーション膜の上に透明導電膜が形成されたアースパッドが形成され、前記シールド用透明導電膜と前記アースパッドは導電体によって接続し、前記端子部における有機パッシベーション膜の下には配線が形成されていることを特徴とする液晶表示装置。
【0011】
(2)TFT基板と対向基板がシール材によって接着し、表示領域と前記TFT基板に形成された端子部を有する液晶表示装置であって、
前記端子部には、第1の方向に延在する第1の配線と、第2の方向に延在する第2の配線が存在し、前記第1の配線と前記第2の配線の交差部においては、前記第2の配線は第1の部分と第2の部分に分断され、
前記交差部において、前記第1の配線および前記第2の配線を覆って有機パッシベーション膜が形成され、前記有機パッシベーション膜の上には透明導電膜が形成され、前記第2の配線は、前記有機パッシベーション膜に形成されたスルーホールを介して前記透明導電膜と接続しており、前記第2の配線と前記第1の部分と前記第2の部分は、前記透明導電膜によって接続していることを特徴とする液晶表示装置。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明が適用される液晶表示装置の平面図である。
図2】表示領域の画素の断面図である。
図3】実施例1におけるアースパッド付近の断面図である。
図4】導電テープが存在しない状態における液晶表示装置の平面図である。
図5】アースパッド付近の平面図である。
図6図5のB-B断面図である。
図7】実施例2の第1の形態を示す平面図である。
図8図7のC-C断面図である。
図9図7のD-D断面図である。
図10】実施例2の第2の形態を示す平面図である。
図11図10のE-E断面図である。
図12】実施例2の第3の形態を示す平面図である。
図13図12のF-F断面図である。
図14図12のG-G断面図である。
図15】実施例2の第4の形態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に実施例を用いて本発明の内容を詳細に説明する。
【実施例1】
【0014】
図1は、本発明が適用される液晶表示装置の平面図である。図1は、例えば、携帯電話等に使用される液晶表示装置である。図1において、TFT基板100には、走査線10が横方向に延在して縦方向に配列しており、映像信号線20が縦方向に延在して、横方向に配列している。走査線10と映像信号線20に囲まれた領域が画素30になっている。
【0015】
図1において、TFT基板100と対向基板200とはシール材150によって接着し、シール材150の内側に表示領域400が形成されている。TFT基板100は対向基板200よりも大きく形成され、TFT基板100が1枚になっている部分は端子部160となっている。端子部(端子領域)160には、液晶表示パネルを駆動するドライバIC161が載置され、液晶表示パネルに電源や信号を供給するためのフレキシブル配線基板162が接続している。
【0016】
図1はIPS方式の液晶表示パネルであり、対向基板200の表面にはシールド導電層(シールド用ITO)が形成されている。シールド用ITOをアース電位あるいは基準電位と接続するために、端子部にアースパッドを形成し、このアースパッドと対向基板のシールド用ITOとを例えば導電性テープ170で接続する。
【0017】
導電性テープ170は、例えば、Al、銅等の金属のテープの一方の面に、導電性微粒子が分散された粘着材が形成された構成となっている。すなわち、導電性テープ170は、粘着材によってシールド用ITO及びアースパッドと接着しているので、接着強度を維持するためには、アースパッドは所定の面積が必要である。このアースパッドの存在が、端子部の面積を縮小するうえで、問題となっていた。
【0018】
シールド用ITOとアースパッドの接続は、導電性テープの他にも導電性樹脂や金属ペースト等を用いておこなうことが出来る。しかし、この場合も、アースパッドは、ある面積が必要であることは同様である。以下では、シールド用ITOとアースパッドの接続は導電性テープを用いるとして説明しているが、本発明は、導電性樹脂や金属ペースト等を用いる場合にも同様にして適用することが出来る。
【0019】
図2はIPS方式の液晶表示装置の表示領域における画素の断面図である。IPS方式も種々存在するが、例えば、コモン電極を平面状に形成し、その上に、絶縁膜を挟んで櫛歯状の画素電極を配置し、画素電極とコモン電極の間に発生する電界によって液晶分子を回転させる方式が、比較的、透過率を大きくすることが出来るので、現在主流となっている。
【0020】
図2はこのようなIPS方式の液晶表示装置の断面図である。図2におけるTFTは、いわゆるトップゲートタイプのTFTであり、使用される半導体としては、LTPS(Low Temperature Poli-Si)が使用されている。一方、アモルファスシリコン(a-Si)半導体を使用した場合は、いわゆるボトムゲート方式のTFTが多く用いられる。以後の説明では、トップゲート方式のTFTを用いた場合を例にして説明するが、ボトムゲート方式のTFTを用いた場合についても、本発明を適用することが出来る。また、シリコンに替えて酸化物を用いることも可能である。
【0021】
図1において、ガラス基板100の上にシリコン窒化物(SiN)からなる第1下地膜101およびシリコン酸化物(SiO)からなる第2下地膜102がCVD(Chemical Vapor Deposition)によって形成される。第1下地膜101および第2下地膜102の役割はガラス基板100からの不純物が半導体層103を汚染することを防止することである。
【0022】
第2下地膜102の上には半導体層103が形成される。この半導体層103は、第2下地膜102の上にCVDによってa-Si膜を形成し、これをレーザアニールすることによってpoly-Si膜に変換したものである。このpoly-Si膜をフォトリソグラフィによってパターニングする。
【0023】
半導体膜103の上にはゲート絶縁膜104が形成される。このゲート絶縁膜104はTEOS(テトラエトキシシラン)によるSiO膜である。この膜もCVDによって形成される。その上にゲート電極105が形成される。ゲート電極105は走査線10が兼ねている。ゲート電極105はMo合金、例えばMoW膜によって形成される。ゲート電極105あるいは走査線10の抵抗を小さくする必要があるときはAl合金またはAl合金とMo合金の積層体が使用される。
【0024】
その後、ゲート電極105を覆って層間絶縁膜106をSiOによって形成する。層間絶縁膜106は走査線10と映像信号線20とを絶縁するため、あるいは、ゲート電極105とコンタクト電極107とを絶縁するためである。層間絶縁膜106およびゲート絶縁膜104には、半導体層103をコンタクト電極107と接続するためのコンタクトホール120が形成される。
【0025】
層間絶縁膜106の上にコンタクト電極107が形成される。半導体層103は、図示しない部分において映像信号線20とコンタクトホールを介して接続している。
【0026】
コンタクト電極107および映像信号線20は、同層で、同時に形成される。コンタクト電極107および映像信号線20は、抵抗を小さくするために、Al合金、例えば、AlSi合金が使用される。AlSi合金はヒロックを発生したり、Alが他の層に拡散したりするので、例えば、MoWによるバリア層、およびキャップ層によってAlSiをサンドイッチする構造がとられている。但し、本明細書では、このような構成も単にAl合金配線という。
【0027】
映像信号線20あるいはコンタクト電極107を覆って有機パッシベーション膜(有機膜)108が形成される。有機パッシベーション膜108は感光性のアクリル樹脂で形成される。有機パッシベーション膜108は、アクリル樹脂の他、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂等でも形成することが出来る。有機パッシベーション膜108は平坦化膜としての役割を持っているので、厚く形成される。有機パッシベーション膜109の膜厚は多くの場合、2~4μmであるが、本実施例では3~4μm程度である。
【0028】
本発明では、後で説明するように、端子部160の一部に有機パッシベーション膜108を残し、この有機パッシベーション膜108の上にITO(Indium Tin Oxide)等の導電膜によるアースパッドを形成することによって、アースパッドの下側にも配線を形成することを可能として、端子部160の面積を縮小している。
【0029】
画素電極113とコンタクト電極107との導通を取るために、有機パッシベーション膜108にコンタクトホール130が形成される。有機パッシベーション膜108は感光性の樹脂を使用している。感光性の樹脂を塗付後、この樹脂を露光すると、光が当たった部分のみが特定の現像液に溶解する。すなわち、感光性樹脂を用いることによって、フォトレジストの形成を省略することが出来る。有機パッシベーション膜108にコンタクトホール130を形成したあと、230℃程度で有機パッシベーション膜を焼成することによって有機パッシベーション膜108が完成する。この時、端子部160に形成されるアースパッド用有機パッシベーション膜108も同時に形成される。
【0030】
その後コモン電極109となるITOをスパッタリングによって形成し、コンタクトホール130およびその周辺からITOを除去するようにパターニングする。コモン電極109は各画素共通に平面状に形成することが出来る。ITOは抵抗率が大きいので、コモン電極109における電圧降下を防止するために、コモン電極109と重複してコモン金属配線110が形成される。コモン金属配線110は画素の透過率を低下させないようにするために、平面で視て、映像信号線あるいは走査線と重複した部分に形成される。
【0031】
その後、容量絶縁膜111となるSiNをCVDによって全面に形成する。容量絶縁膜111は、画素電極とコモン電極の間で保持容量を形成する役割も有しているので、このように呼ばれる。その後、コンタクトホール130内において、コンタクト電極107と画素電極112の導通をとるためのコンタクトホールを容量絶縁膜111に形成する。
【0032】
その後、ITOをスパッタリングによって形成し、パターニングして画素電極112を形成する。画素電極112の上に配向膜材料をフレキソ印刷あるいはインクジェット等によって塗布し、焼成して配向膜113を形成する。配向膜113の配向処理にはラビング法のほか偏光紫外線による光配向が用いられる。
【0033】
画素電極112とコモン電極110の間に電圧が印加されると図2に示すような電気力線が発生する。この電界によって液晶分子301を回転させ、液晶層300を通過する光の量を画素毎に制御することによって画像を形成する。
【0034】
図2において、液晶層300を挟んで対向基板200が配置されている。対向基板200の内側には、カラーフィルタ201が形成されている。カラーフィルタ201は画素毎に、赤、緑、青のカラーフィルタが形成されており、これによってカラー画像が形成される。カラーフィルタ201とカラーフィルタ201との間にはブラックマトリクス202が形成され、画像のコントラストを向上させている。なお、ブラックマトリクス202はTFTの遮光膜としての役割も有し、TFTに光電流が流れることを防止している。
【0035】
カラーフィルタ201およびブラックマトリクス202を覆ってオーバーコート膜203が形成されている。カラーフィルタ201の材料が液晶層内に溶け込むことを防止するためである。オーバーコート膜の上には、液晶の初期配向を決めるための配向膜113が形成される。配向膜113の配向処理はTFT基板100側の配向膜113と同様、ラビング法あるいは光配向法が用いられる。
【0036】
以上で説明したように、IPS方式では、対向基板に対向電極を形成する必要がない。図2のような構成であると、対向基板側からのノイズをシールドすることができない。そこで、外部からのノイズをシールドするために、対向基板の表面にシールド用ITO210を形成している。シールド用ITOの厚さは200nmから300nm程度である。しかし、ノイズをシールドするためには、シールド用ITOをアースあるいは基準電位(以後アースという)と接続しなければならない。
【0037】
図1における導電性テープ170は、シールド用ITOをアース電位となるアースパッドと接続するためである。図3は、図1のA-A断面図であり、アースパッド部分の断面図である。図3において、TFT基板100と対向基板200がシール材150によって接着し、TFT基板100と対向基板200の間に液晶300が挟持されている。対向基板200の端部には、シール材ではなく、壁状スペーサ250が形成されている。対向基板200の一部をスクライビングによって端子側から除去するためである。
【0038】
図3において、TFT基板100側の層は有機パッシベーション膜108のみを記載している。有機パッシベーション膜108にはシール材150とオーバーラップした部分に溝1081が形成されている。外部から水分が有機パッシベーション膜108を通して侵入することを防止するためである。
【0039】
本発明の特徴は、有機パッシベーション膜108が端子部において、アースパッド70が形成される部分にまで延在していることである。そして、有機パッシベーション膜108の上に接続用ITO等の透明導電膜80が形成されることによってアースパッド70が形成されている。こうすることによって、アースパッド70の下も配線領域として使用することができ、端子部の面積をその分縮小することができる。
【0040】
アースパッド70と対向基板200のシールド用ITO210は導電テープ170によって接続している。なお、アースパッド70の接続ITO(接続用導電膜)80は、別途配線によってTFT基板の端部に設けられた端子に接続することができる。有機パッシベーション膜108は、図3においては、表示領域400の有機パッシベーション膜108と連続して形成されているが、表示領域400の有機パッシベーション膜108と端子部の有機パッシベーション膜108とは分離して、端子部の有機パッシベーション膜108を島状に形成しても良い。こうすれば、端子部の有機パッシベーション膜108を介して表示領域内の有機パッシベーション膜108に水分が侵入することを防止することができる。
【0041】
図4は、導電性テープによって、シールド用ITOとアースパッド70とを接続する前の状態を示す液晶表示パネルの平面図である。図4の端子部160において、対向基板200と隣接する部分において、アースパッド70が形成されている。アースパッド70は、有機パッシベーション膜108とその上に形成された接続用ITO80で構成される。その他の構成は、図1で説明したのと同様である。
【0042】
図5は、図4におけるアースパッド70付近の平面図である。図5において、対向基板200と隣接してアースパッド70が形成されている。アースパッド70は、有機パッシベーション膜108の上に接続ITO80が形成されたものである。有機パッシベーション膜108の下には、種々の配線が形成されている。図5における幅が広い配線は配線領域を示すものであり、この部分には、細い映像信号線の引出し線が多数形成されていてもよい。
【0043】
図6は、図5のB-B断面図である。図6において、引出し線40は、走査線と同層で形成された引出し線42と映像信号線と同層で形成された引出し線41とが積層して形成されている。引出し線41は例えばAl合金であり、引出し線42は例えばMo合金である。図6において、引出し線40を覆って有機パッシベーション膜108が形成され、その上に接続ITO80が形成されている。接続ITO80と有機パッシベーション膜108でアースパッド70を形成している。
【0044】
接続ITO80はコモン電極と同時に形成される第1接続ITO81と画素電極と同時に形成される第2接続ITO82とで形成されている。第1接続ITO81か第2接続ITO82のいずれか一方のみでもよいが、コモン電極も画素電極も100nm以下と薄いので、2層として、信頼性を向上させている。
【0045】
図6において、有機パッシベーション膜108の終端部は、SiNで形成された容量絶縁膜111によって覆われている。有機パッシベーション膜108に水分が侵入することを防止するためである。また、有機パッシベーション膜108の終端部には、Alで形成された引出し線41は存在していない。ITO81をパターニングするさい、ITO81の残渣が、引出し線40間をショートする危険を防止するためである。
【0046】
つまり、図6における有機パッシベーション膜108の終端部には、層間絶縁膜106が形成されている。そして、有機パッシベーション膜108の終端部においては、引出し線40は、走査線と同層で形成されたMo合金42のみで接続されている。しかし、有機パッシベーション膜108の終端部を過ぎた部分においては、引き出し線40は再び、Al合金41とMo合金42の2層構成となっている。したがって、引出し線40の抵抗の増加はほとんどない。
【0047】
図6において、Mo合金による引出し線42はゲート絶縁膜104の上に形成されている。図6では第1下地膜、第2下地膜は省略されている。最終的には、接続ITO80に導電性テープが接続して、シールド用ITOとアースパッド70が接続される。
【0048】
このように、アースパッド70の下にも引出し線等の配線を形成することができるので、端子部の面積を縮小することができる。また、端子部の有機パッシベーション膜108は、表示領域における有機パッシベーション膜と同時に形成することができるので、プロセス負荷が増加することは無い。
【実施例2】
【0049】
実施例1で説明した、有機パッシベーション膜と接続ITOを用いて端子部の面積を縮小する構成は、アースパッドのみでなく、端子部の他の部分においても適用することができる。図7は端子部160に形成される検査用配線50と引出し線41を、有機パッシベーション膜108を用いて立体交差させることによって、端子部の面積を縮小させる例である。
【0050】
図7において、横方向に延在する検査用配線50の上に有機パッシベーション膜108が島状に形成され、その上に接続ITO80が形成されている。信号線40は、上下方向に延在しているが、有機パッシベーション膜108によって検査用配線50と立体交差が可能になっている。図7の検査用配線50も信号線40もAl合金41、すなわち、映像信号線と同層で形成されている。図7における接続ITO80は、有機パッシベーション膜108の上下に形成された信号線40をブリッジする役割を有している。
【0051】
図8は、図7のC-C断面図である。図8において、Al合金41で形成された検査用配線50がゲート絶縁膜104、層間絶縁膜106の上に、横方向に延在して形成されている。検査用配線50の上には、有機パッシベーション膜108が形成され、有機パッシベーション膜108の上に接続ITO80が形成されている。接続ITO80は第1接続ITO81と第2接続ITO82との2層構造となっている。理由は、図6で説明したのと同様である。また、有機パッシベーション膜108の端部と有機パッシベーション膜108によって覆われていないAl合金41の上には、SiNで形成された容量絶縁膜111が形成されている。Al合金41が腐食することを防止するためである。
【0052】
図9図7のD-D断面図であり、信号線41と接続ITO80を接続するためのスルーホール60の断面図を示している。図9において、ゲート絶縁膜104、層間絶縁膜106の上に、Al合金41で形成されたコモン配線等の引出し線40が形成されている。引出し線40は、有機パッシベーション膜108で覆われており、有機パッシベーション膜108に形成されたスルーホール60によって接続ITO80と接続している。接続ITO80は第1接続ITO81と第2接続ITO82が積層されている構成である。
【0053】
図7乃至図9で説明したように、引出し線40と検査用配線40を有機パッシベーション膜108を形成することによって、重複して形成することができるので、端子部における配線面積を小さくすることができる。このような構成は、特に、コモン配線のように、配線幅が大きい配線に対して特に効果がある。
【0054】
ブリッジ用に使用される接続ITO80は抵抗率が大きいので、配線抵抗が問題になる場合がある。図10および図11は、本実施例の第2の実施形態を示す、接続ITO80にコモン金属配線110を積層することによって、ブリッジにおける配線抵抗を小さくする構成である。
【0055】
図10において、横方向にAl合金41で形成された検査用配線50が延在し、検査用配線50を覆って有機パッシベーション膜108が形成されている。そして、Al合金41で形成された信号引出し線40が縦方向に延在し、有機パッシベーション膜108の上に形成された接続ITO80によってブリッジされていることは図7乃至図9で説明したのと同様である。
【0056】
図10では、接続ITO80と重複して、両側にコモン金属配線110が形成されている。コモン金属配線110は、Al合金等で形成されているので、ブリッジ部分のおける抵抗を大幅に下げることができる。スルーホール60の部分の断面である、図10におけるD-D断面は、図9と同じである。なお、コモン金属配線110が形成された部分のスルーホールの断面は、図9の第1接続ITO81と第2接続ITO82の間にコモン金属配線110が形成されている構成となっている。
【0057】
図11は、図10のE-E断面図である。図11において、ゲート絶縁膜104、層間絶縁膜106の上に、Al合金で形成された検査配線50が横方向に延在している。検査用配線50を覆って有機パッシベーション膜108が島状に形成されている。有機パッシベーション膜108の上には第1接続ITO81が形成され、第1接続ITO81の両側において、コモン金属配線110が積層されている。コモン金属配線110もAl合金で形成されている。第1接続ITO81およびコモン金属配線110を覆って第2接続ITO82が形成されている。有機パッシベーション膜108の側部および検査配線50を覆って、SiNで形成された容量絶縁膜111が形成されている。
【0058】
図11に示すように、第1接続ITO81の上にコモン金属配線110を積層することによってブリッジ配線の抵抗を大幅に低下させることができる。なお、図11では、コモン金属配線110は第1接続ITO81の上に形成されているが、第1接続ITO81の下に形成される場合もある。効果は同じである。いずれにせよ、表示領域におけるプロセス順序に従うことになる。
【0059】
図12乃至図14は、島状の有機パッシベーション膜108部分に形成されたブリッジ接続の抵抗を下げるための他の構成である、本実施例の第3の実施形態を示す図である。図12図10と異なる点は、ブリッジ接続の抵抗を小さくするために、Al合金41よりも下側に形成されている、走査線と同じ層で形成されたMo合金42を使用している点である。
【0060】
図13図12のF-F断面図である。図13において、Mo合金42で形成されたブリッジ配線がゲート絶縁膜104の上に形成されている。Mo合金42の上に形成された層間絶縁膜106の上に、Al合金で形成された検査配線50が横方向に延在している。検査配線50の上に有機パッシベーション膜108が島状に形成され、その上に第1接続ITO81と第2接続ITO82が形成されている。
【0061】
図14は、本実施形態におけるスルーホール65の断面を示す、図12のG-G断面図である。図14において、ブリッジ電極として使用されるMo合金42がゲート絶縁膜104の上に形成されている。Mo合金42の上に層間絶縁膜106が形成され、その上に配線40のためのAl合金41が形成されている。Mo合金42とAl合金41はスルーホール65によって接続している。Al合金41で形成された引出し線40を覆って有機パッシベーション膜108が形成され、その上にブリッジ配線としての、第1接続ITO81と第2接続ITO82が積層して形成されている。
【0062】
このように、本実施形態では、検査用配線の上側に有機パッシベーション膜108を挟んで接続ITO80を形成し、検査用配線の下側に層間絶縁膜106を挟んでMo合金42による電極を形成することによって、ブリッジ部分の抵抗を小さくしている。
【0063】
以上の説明では、例えば走査線を構成する下層の配線がMo合金で形成され、映像信号線を構成する上層の配線がAl合金であるとして説明したが、本発明はこれに限らず、下層がAl合金で上層がMo合金である場合にも適用することができる。さらには、上層、下層ともAl合金である場合、上層、下層ともMo合金である場合にも適用することができる。
【0064】
ところで、配線を立体交差させる場合の問題点の一つは、下層配線と上層配線との間に形成される浮遊容量である。本発明では、端子部において、有機パッシベーション膜を使用しているので、下層配線と上層配線の距離を大きくとることができ、浮遊容量を小さく抑えることができる。有機パッシベーション膜は、本発明では2乃至4μmであるが、より好ましくは3乃至4μmである。
【0065】
また、以上の説明では、有機パッシベーション膜の上に形成されるパッド電極あるいはブリッジ電極はITOの場合を例にとって説明した。これは、画素電極あるいはコモン電極として使用される透明導電膜がITOから形成されている場合の例である。画素電極あるいはコモン電極が、他の透明導電膜、例えば、AZO、IZO等で形成される場合は、パッド電極あるいはブリッジ電極は、これらと同じ材料で形成することができる。
【0066】
また、実施例2において、端子部における信号配線は、有機パッシベーション膜を介して検査用配線と立体交差するという構成を例にとって説明したが、下層の配線は、検査用配線に限らず、他の配線でもよい。下層を何かしらの信号配線とし、有機パッシベーション膜を介して検査用配線が立体交差する構成であってもよい。いずれの場合であっても、ブリッジ電極に検査用のプローブを接触させる等、ブリッジ電極を端子として使用することも可能である。また以上の実施形態では、接続ITO80に合わせて有機パッシベーション膜を島状に形成しているが、図15のように、有機パッシベーション膜を島状に形成せず、広く平面状に形成するものであってもよい。同様に、図11図13についても、有機パッシベーション膜を島状でなく、平面状に形成してもよい。図6の実施形態についても同様である。その場合、図6のように、引き出し線40のAl合金41を有機パッシベーション膜の端部で分断させる必要が無い。逆に、パッド部分に限らず、有機パッシベーション膜を島状に設け、その下に配線を設ける場合は、透明導電膜による配線間の短絡を防止するため、有機パッシベーション膜の端部において、有機パッシベーション膜とその下の配線との間には、層間絶縁膜106を設けることが好ましい。
【0067】
本発明は、IPS方式の液晶表示装置においては、プロセス負荷を増加させずに実施できるので適している。しかし、他の方式、例えば、TN(Twisted Nematic)あるいはVA(Vertical Alginment)等の方式の液晶表示装置についても本発明を適用することができる。また、液晶表示装置以外、有機EL型の表示装置等、表示装置全般に適用可能である。
【符号の説明】
【0068】
10…走査線10、 20…映像信号線、 30…画素、 40…引出し線、 41…Al合金、 42…Mo合金、 50…検査配線、 60…スルーホール、 65…スルーホール、 70…アースパッド、 80…接続ITO、 81…第1接続ITO、 82…第2接続ITO、 90…ブリッジ電極、 100…TFT基板、 101…第1下地膜、 102…第2下地膜、 103…半導体層、 104…ゲート絶縁膜、 105…ゲート電極、 106…層間絶縁膜、 107…コンタクト電極、 108…有機パッシベーション膜、 109…コモン電極、 110…コモン金属配線、 111…容量絶縁膜、 112…画素電極、 113…配向膜、 120…コンタクトホール、 130…コンタクトホール、 150…シール材、 160…端子部、 161…ドライバIC、 162…フレキシブル配線基板、 170…導電テープ、 200…対向基板、 201…カラーフィルタ、 202…ブラックマトリクス、 203…オーバーコート膜、 210…シールド用ITO、 250…土手状スペーサ、 300…液晶層、 301…液晶分子、 1081…有機パッシベーション膜溝
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15