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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-18
(45)【発行日】2022-03-01
(54)【発明の名称】流動炉及びその冷却方法
(51)【国際特許分類】
   F23G 5/30 20060101AFI20220221BHJP
   F23G 5/50 20060101ALI20220221BHJP
【FI】
F23G5/30 G ZAB
F23G5/50 K
F23G5/50 M
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020149554
(22)【出願日】2020-09-07
(62)【分割の表示】P 2016172549の分割
【原出願日】2016-09-05
(65)【公開番号】P2020193804
(43)【公開日】2020-12-03
【審査請求日】2020-10-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000165273
【氏名又は名称】月島機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002321
【氏名又は名称】特許業務法人永井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】末永 卓哉
【審査官】藤原 弘
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第101178180(CN,A)
【文献】特開平05-052313(JP,A)
【文献】特開平04-309711(JP,A)
【文献】特開2003-176906(JP,A)
【文献】特開2014-037956(JP,A)
【文献】特開2003-294223(JP,A)
【文献】特開平08-133475(JP,A)
【文献】特開昭62-182513(JP,A)
【文献】特開平09-236233(JP,A)
【文献】特開平11-094224(JP,A)
【文献】特開昭62-182519(JP,A)
【文献】特開2005-274025(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23G 5/00-5/50
F23C 10/00-10/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
炉体の下部に砂層を設け、前記砂層中に燃焼空気を供給する燃焼空気供給手段を備え、炉体の側壁には、砂層の温度を測定する温度センサを挿設し、前記炉体の側壁に被処理物を供給する配管を接続した流動炉において、
前記被処理物に水を注入して前記被処理物の水分率を高める第1注水管の終端部を、前記配管に接続し、前記第1注水管には、始端部から順に、前記水の水圧を調整する減圧弁と、前記温度センサの測定結果に基づいて駆動する注水制御手段を設け、
前記減圧弁で、前記水の水圧を炉体内の内圧よりも所定の圧力高く設定し、
前記注水制御手段は、水の流量を調整する第1調整弁と水の供給開始および停止を行う開閉弁を含み、
前記炉体の側壁の上部にフリーボード部に噴霧する水を供給する第2注水管の終端部を接続し、前記第2注水管に水の流量を調整する第2調整弁を設け、
前記炉体の側壁の上端部に排出部に噴霧する水を供給する第3注水管の終端部を接続し、前記第3注水管に水の流量を調整する第3調整弁を設けたことを特徴とする流動炉。
【請求項2】
前記配管における終端部に、前記第1注水管の終端部を接続した請求項1記載の流動炉。
【請求項3】
前記側壁における上下方向の中間よりも下側に偏倚させた部位に、前記配管の終端部を接続した請求項1又は2記載の流動炉。
【請求項4】
炉体の下部に砂層を設け、前記砂層中に燃焼空気を供給する供給管を挿設し、前記砂層の上部に砂層の温度を測定する温度センサを挿設し、前記炉体の側壁に被処理物を供給する配管を接続した流動炉の冷却方法において、
前記配管に被処理物に水を供給する第1注水管の終端部を接続し、前記第1注水管に、始端部から順に、前記水の水圧を調整する減圧弁と、水の流量を調整する第1調整弁と、水の供給開始および停止を行う開閉弁を設け、
前記減圧弁で、前記水の水圧を炉体内の内圧よりも所定の圧力高く設定し、
前記砂層の温度が所定の設定温度よりも高い場合は、前記開閉弁を駆動して第1注水管を開いた後に、前記第1調整弁を駆動して第1注水管を流れる水を所定の流量に調整し、
前記砂層の温度が所定の設定温度よりも低くなった場合には、前記第1調整弁を駆動して第1注水管を流れる水を止水した後に、前記開閉弁を駆動して第1注水管を閉じ、
前記炉体の側壁の上部にフリーボード部に噴霧する水を供給する第2注水管の終端部を接続し、前記第2注水管に水の流量を調整する第2調整弁を設け、
前記開閉弁を駆動して第1注水管を開いた後に、前記第2調整弁を駆動して第2注水管を流れる水を所定の流量に調整し、
前記炉体の側壁の上端部に排出部に噴霧する水を供給する第3注水管の終端部を接続し、前記第3注水管に水の流量を調整する第3調整弁を設け、
前記開閉弁を駆動して第1注水管を開いた後、又は、前記第2調整弁を駆動して第2注水管を流れる水を所定の流量に調整した後に、前記第3調整弁を駆動して第3注水管を流れる水を所定の流量に調整することを特徴とする流動炉の冷却方法。
【請求項5】
前記第1調整弁を駆動して砂層の温度に応じて第1注水管を流れる水の流量を増減させる請求項4記載の流動炉の冷却方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流動炉及びその冷却方法に関し、下水汚泥等の被処理物に流動媒体を冷却する水を注入する手段を備えた流動炉と、流動媒体の温度に応じて被処理物に注入する水の流量を調整する冷却方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の流動炉では、流動炉のフリーボード部の上部にウォーターガンを設け、流動炉のフリーボード部の温度が所定の温度よりも高くなった場合には、ウォーターガンを介してフリーボード部に水を噴霧する技術が知られている。(特許文献1参照)
また、流動炉の流動媒体の上部に近接してノズルを設け、流動炉の流動媒体の温度が所定の温度よりも高くなった場合には、ノズルを介して流動媒体に直接的に水を供給する技術が知られている。(特許文献2参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2005-274025号公報
【文献】特開平9-236233号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1の技術では、ウォーターガンからフリーボード部に噴霧された水は、流動炉の下部から上部に向いて流れる対流によって流動炉の下部に設けられた流動媒体の近傍まで到達することできないことから所定の温度よりも高くなった流動媒体を充分に冷却することができないという恐れがあった。
【0005】
また、特許文献2の技術では、ノズルから供給された水は、流動媒体に直接的に接触して所定の温度よりも高くなった流動媒体を急冷することから流動媒体に割れが生じ流動媒体の粒径が小さくなるため、燃焼排ガスに同伴されて流動炉から排出される流動媒体の量が増加する恐れがある。その結果、流動炉内の流動媒体量が減少するため、補給する流動媒体の増加や、同伴された流動媒体の回収や処理など、ランニングコストの増加が想定される。
【0006】
そこで、本発明は、流動炉の被処理物を供給する配管に流動媒体を冷却する水を注入する手段を備えた流動炉と、流動媒体を冷却する水の注入方法を提案する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決した本発明及び作用効果は次のとおりである。
第1発明は、炉体の下部に砂層を設け、前記砂層中に燃焼空気を供給する燃焼空気供給手段を備え、炉体の側壁には、砂層の温度を測定する温度センサを挿設し、前記炉体の側壁に被処理物を供給する配管を接続した流動炉において、
前記被処理物に水を注入して前記被処理物の水分率を高める第1注水管の終端部を、前記配管に接続し、前記第1注水管には、始端部から順に、前記水の水圧を調整する減圧弁と、前記温度センサの測定結果に基づいて駆動する注水制御手段を設け、前記減圧弁で、前記水の水圧を炉体内の内圧よりも所定の圧力高く設定し、前記注水制御手段は、水の流量を調整する第1調整弁と水の供給開始および停止を行う開閉弁を含み、前記炉体の側壁の上部にフリーボード部に噴霧する水を供給する第2注水管の終端部を接続し、前記第2注水管に水の流量を調整する第2調整弁を設け、前記炉体の側壁の上端部に排出部に噴霧する水を供給する第3注水管の終端部を接続し、前記第3注水管に水の流量を調整する第3調整弁を設けたことを特徴とする。
【0008】
(作用効果)
配管に被処理物に水を供給する第1注水管の終端部を接続し、温度センサの測定結果に基づいて駆動する注水制御手段を設けたので、砂層温度に応じて、被処理物に水を供給し被処理物の水分率を高くして、蒸発潜熱で消費される熱量を多くすることで砂層を冷却して、流動炉を安定して稼働させることができる。
【0009】
また、注水制御手段は、水の流量を調整する第1調整弁と水の供給開始および停止を行う開閉弁を含むので、第1調整弁が作動不良になった場合でも開閉弁を駆動して炉体に不要な水が供給されるのを防止することができる。
第2注水管を介してフリーボード部に水が噴霧されフリーボード部の温度を冷却することができ、第3注水管を介して排出部に水が噴霧され排出部の温度を冷却することができる。
さらに、第1注水管を始端部から終端部に流れる水が逆流することを防止することができる。
【0010】
第2発明は、第1発明の構成において、前記配管における終端部に、前記第1注水管の終端部を接続したことを特徴とする。
【0011】
(作用効果)
配管における炉体の側壁に近接する部位に、第1注水管の終端部を接続したので、圧力損失による影響を低減して、炉体に高い水分率を有する被処理物を安定したペースで供給することができる。
【0012】
第3発明は、第1又は2発明の構成において、前記側壁における上下方向の中間よりも下側に偏倚させた部位に、前記配管の終端部を接続したことを特徴とする。
【0013】
(作用効果)
側壁における上下方向の中間よりも下側に偏倚させた部位に、第1注水管の終端部を接続したので、砂層の流動部の近傍で被処理物に含まれる多くの水が蒸発して、砂層の破損を防止することができる。
【0014】
第4発明は、炉体の下部に砂層を設け、前記砂層中に燃焼空気を供給する供給管を挿設し、前記砂層の上部に砂層の温度を測定する温度センサを挿設し、前記炉体の側壁に被処理物を供給する配管を接続した流動炉の冷却方法において、
前記配管に被処理物に水を供給する第1注水管の終端部を接続し、前記第1注水管に、始端部から順に、前記水の水圧を調整する減圧弁と、水の流量を調整する第1調整弁と、水の供給開始および停止を行う開閉弁を設け、前記減圧弁で、前記水の水圧を炉体内の内圧よりも所定の圧力高く設定し、前記砂層の温度が所定の設定温度よりも高い場合は、前記開閉弁を駆動して第1注水管を開いた後に、前記第1調整弁を駆動して第1注水管を流れる水を所定の流量に調整し、前記砂層の温度が所定の設定温度よりも低くなった場合には、前記第1調整弁を駆動して第1注水管を流れる水を止水した後に、前記開閉弁を駆動して第1注水管を閉じ、前記炉体の側壁の上部にフリーボード部に噴霧する水を供給する第2注水管の終端部を接続し、前記第2注水管に水の流量を調整する第2調整弁を設け、前記開閉弁を駆動して第1注水管を開いた後に、前記第2調整弁を駆動して第2注水管を流れる水を所定の流量に調整し、前記炉体の側壁の上端部に排出部に噴霧する水を供給する第3注水管の終端部を接続し、前記第3注水管に水の流量を調整する第3調整弁を設け、前記開閉弁を駆動して第1注水管を開いた後、又は、前記第2調整弁を駆動して第2注水管を流れる水を所定の流量に調整した後に、前記第3調整弁を駆動して第3注水管を流れる水を所定の流量に調整することを特徴とする。
【0015】
(作用効果)
配管に被処理物に水を供給する第1注水管の終端部を接続し、第1注水管に水の流量を調整する第1調整弁と、開閉弁を設け、砂層の温度が所定の設定温度よりも高い場合は、開閉弁を駆動して第1注水管を開いた後に、第1調整弁を駆動して第1注水管を流れる水を所定の流量に調整し、砂層の温度が所定の設定温度よりも低くなった場合には、第1調整弁を駆動して第1注水管を流れる水を止水した後に、開閉弁を駆動して第1注水管を閉じるので、砂層が所定の設定温度よりも高くなった場合には、被処理物に水を供給し被処理物の水分率を高くして、蒸発潜熱で消費される熱量を多くし砂層を冷却して、流動炉を安定して稼働させることができる。また、第1調整弁が作動不良になった場合でも開閉弁を駆動して炉体に不要な水が供給されるのを防止することができる。
また、炉体の側壁の上部にフリーボード部に噴霧する水を供給する第2注水管の終端部を接続し、第2注水管に水の流量を調整する第2調整弁を設け、開閉弁を駆動して第1注水管を開いた後に、第2調整弁を駆動して第2注水管を流れる水を所定の流量に調整するので、炉体のフリーボード部を冷却して、流動炉をより安定して稼働させることができる。
さらに、炉体の側壁の上端部に排出部に噴霧する水を供給する第3注水管の終端部を接続し、第3注水管に水の流量を調整する第3調整弁を設け、開閉弁を駆動して第1注水管を開いた後、又は、第2調整弁を駆動して第2注水管を流れる水を所定の流量に調整した後に、第3調整弁を駆動して第3注水管を流れる水を所定の流量に調整するので、炉体の排出部を冷却して、流動炉をさらに安定して稼働させることができる。
また、第1注水管を始端部から終端部に流れる水が逆流することを防止することができる。
【0016】
第5発明は、第4発明の構成において、前記第1調整弁を駆動して砂層の温度に応じて第1注水管を流れる水の流量を増減させることを特徴とする。
【0017】
(作用効果)
第1調整弁を駆動して砂層の温度に応じて第1注水管を流れる水の流量を増減させるので、被処理物に含まれる水の水分率を増減し蒸発潜熱で費やされる熱量を増減して、砂層を速やかに冷却して、流動炉を安定して稼働させることができる。
【0018】
【0019】
【0020】
【0021】
【発明の効果】
【0022】
被処理物に含まれる水の水分率を高くし蒸発潜熱で費やされる熱量を多くして、所定の設定温度よりも高くなった砂層を冷却して、流動炉を安定して稼働させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】流動炉の説明図である。
図2】コントローラの接続図である。
図3】流動媒体の冷却方法の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1に示すように、流動炉の炉体10は、円筒状に形成された側壁11と、下側に向けて突出して形成された下壁12と、上側に向けて突出して形成された上壁13から形成されている。
【0025】
炉体10の下部には、一定以上の粒径を有する砂等から形成された流動媒体となる砂層20が設けられている。砂層20内には、燃焼空気供給手段Aとして燃焼空気を供給する多数の排出口が形成された分散管21が配設されている。これにより、流動炉の稼働時、すなわち、炉体10に被処理物となる所定量の脱水ケーキを供給して、炉体10で脱水ケーキを燃焼させている場合には、分散管21から砂層20に供給された燃焼空気によって、砂層20の上部に位置する砂等は、上側に向かって流動される。本明細書では、流動炉の稼働時に、上側に向けて流動している部位を流動部20Aと言い、それ以外の部位を非流動部20Bと言い、両者を合わせて砂層20と言う。
炉体10の側壁11には砂層20の温度を測定する温度センサ64を炉内に挿入する温度センサ取り付け座(図示省略)が設けられており、温度センサ64が取り付けられている。なお、温度センサ64は、複数でもよく、その場合、炉体10の上下方向に異なる位置に設置することで、砂層20の炉体10の上下方向における温度分布を測定することができる。
【0026】
分散管21の始端部は、炉体10の側壁11の下部に形成された燃焼空気供給口30に接続されている。また、炉体10の燃焼空気供給口30と熱回収装置70は、配管80で接続されている。熱回収装置70では、炉体10から外部に排気された燃焼排ガスによって燃焼空気を加熱し、配管80を流れる燃焼空気の温度を一定以上に維持している。これにより、砂層20に一定以上の温度を有する燃焼空気を供給して炉体10で効率よく脱水ケーキを燃焼させることができる。また、炉体10から外部に排気される燃焼排ガスの潜熱を効率よく利用することもできる。
【0027】
炉体10の側壁11の上下方向の中間よりも下側に偏倚し、且つ、砂層20の流動部位20Aよりも上側に位置する部位には、炉体10に被処理物の一例である脱水ケーキを供給する被処理物供給口31が形成されている。脱水ケーキは、有機物を含有する水分率が97~98質量%の下水汚泥やし尿等を脱水処理して水分率を72~80質量%に調整した有機性廃棄物である。
【0028】
被処理物供給口31から炉体10に供給された脱水ケーキは、砂層20の流動部20Aの上端部と非流動部20Bの上端部の間に落下し、脱水ケーキに含まれている水は蒸発して、蒸発時に流動部20Aの熱量を奪い取り、流動部20Aの温度を下げる方向に作用し、脱水ケーキに含まれている有機物は燃焼して炉体10のフリーボード部の温度を上げる方向に作用する。これにより、炉体10に脱水ケーキを供給した場合に、砂層20の温度とフリーボード部の温度を設定温度に維持して流動炉を安定して稼働することができる。
【0029】
図1に示した炉体10は、高さ12000mmで内径500~9000mmであり、非流動時の砂層20の高さは3500mmであり、被処理物供給口31は、炉体10の高さ5000mmで非流動時の砂層20から高さ1500mmの位置に形成されている。なお、被処理物供給口31の位置は、分散管21から供給される燃焼排ガスの流量によって異なるが、非流動時の砂層20の高さの30~50%高さに位置する。これにより、炉体10の変動を抑えて流動炉を安定して稼働することができる。
【0030】
脱水ケーキは、貯留タンク40に貯留されている。貯留タンク40の排出口41と炉体10の供給口31は、配管42で接続されている。配管42は、貯留タンク40の排出口41から炉体10に向かって延在する水平部43と、水平部43の終端部から上側に向けて延在する垂直部44と、垂直部44の終端部から炉体10の被処理物供給口31に向かって延在する水平部45から形成されている。また、貯留タンク40の下部には、一軸ネジ式ポンプ、ピストンポンプ等から選ばれるポンプ(図示省略)が設けられている。これにより、炉体10に配管42を介して一定量の脱水ケーキを供給して、炉体10で脱水ケーキを安定して燃焼させることができる。
【0031】
配管42には、脱水ケーキに水を供給する注水管(請求項における「第1注水管」)54の終端部が接続されている。水平部43、垂直部44のいずれにも注水管54の終端部を接続することもできるが、圧力損失の影響を少なくするために水平部45に注水管54の終端部を接続するのが好ましい。また、水平部45においても圧力損失の影響をより少なくするために、水平部45における被処理物供給口31に近接する部位に注水管54の終端部を接続するのがより好ましい。これにより、砂層20の温度が設定温度以上に上昇した場合には、脱水ケーキに注水管54を介して水を供給して脱水ケーキの水分率を高くして、砂層20の流動部20Aの近傍で蒸発する水を多くし蒸発潜熱に費やされる熱量を多くさせることによって砂層20を冷却することができる。なお、本実施形態では、水平部45における被処理物供給口31から外側に0.2~3m隔てた部位に、注水管54の終端部が接続されている。
【0032】
注水管54を介して脱水ケーキに供給される水は、タンク50に貯留されている。タンク50に貯留された水は、遠心ポンプ、軸流ポンプ等のポンプ51によって注水管52に揚水される。注水管52の終端部には、下側から順に注水管54の始端部と、注水管(請求項における「第2注水管」)55の始端部と、注水管(請求項における「第3注水管」)56の始端部が接続されている。
【0033】
注水管54には、始端部から順に、注水管54を流れる水の水圧を調整する減圧弁60と、注水管54を流れる水の流量を表示する流量計61と、注水制御手段Bが設けられている。注水制御手段Bは、注水管54を流れる水の流量を調整する調整弁(請求項における「第1調整弁」)62と、注水管54を開閉する開閉弁63とから構成される。調整弁62よりも下流側に開閉弁63を設けることにより、調整弁62が作動不良になった場合に、開閉弁63を操作して炉体10に必要以上の水が供給されるのを防止することができる。
【0034】
注水管54を流れる水の水圧は、減圧弁60によって炉体10の稼働時の内圧よりも0.05~0.3MPaに調整されている。これにより、注水管54を始端部から終端部に流れる水が逆流することを防止することができる。
【0035】
注水管54を流れる水の流量、すなわち、脱水ケーキに供給され脱水ケーキの水分率を高くする水の流量は、調整弁62によって脱水ケーキの供給量に対して2~10重量%に調整されている。また、稼働時の炉体10の砂層20の温度は、700~750℃に設定され、砂層20の温度は、砂層20内に設けられた熱電対等の温度センサ64によって測定されている。これにより、稼働時の炉体10の砂層20の温度が、700℃よりも5℃高い705℃に上昇した場合には、調整弁62を操作して脱水ケーキに対して2重量%の水を供給して蒸発潜熱に費やされる熱量を多くして砂層20を700℃に冷却、より具体的には690℃に冷却でき、稼働時の炉体10の砂層20の温度が、750℃よりも5℃高い755℃に上昇した場合には、調整弁62を操作して脱水ケーキに対して10重量%の水を供給して蒸発潜熱に費やされる熱量を多くして砂層20を750℃に冷却、より具体的には740℃に冷却することができる。
【0036】
炉体10の側壁11の上部には、炉体10のフリーボード部に噴霧する水を供給する第一噴霧水供給口32が形成されている。また、注水管52と第一噴霧水供給口32は、注水管55で接続され、注水管55には、注水管55を流れる水の流量を調整する調整弁(請求項における「第2調整弁」)65が設けられている。
【0037】
稼働時の炉体10のフリーボード部の温度は、850~880℃に設定され、フリーボードの温度は、第一噴霧水供給口32の下側の近傍に設けられた温度センサ66によって測定されている。この温度センサ66は、炉体10の側壁11に設けられた温度センサ取り付け座(図示省略)に取り付けられる。なお、温度センサ64は、第一噴霧水供給口32の下側の近傍以外の箇所に複数設置してもよく、その場合、炉体10の上下方向に異なる位置に設置することで、フリーボードの炉体10の上下方向における温度分布を測定することができる。
【0038】
炉体10の側壁11の上端部には、炉体10の排出部に噴霧する水を供給する第二噴霧水供給口33が形成されている。また、注水管52と第二噴霧水供給口33は、注水管56で接続され、注水管56には、注水管56を流れる水の流量を調整する調整弁(請求項における「第3調整弁」)67が設けられている。
【0039】
炉体10の上壁13には、脱水ケーキの燃焼時に生成される燃焼排ガスを外部に排出する排出口34が形成されている。炉体10の排出部の温度は、排出口34の近傍に設けられた温度センサ68によって測定されている。
【0040】
炉体10の側壁11の下端部には、炉体10の始動時に砂層20を加熱するガスガン、オイルガン等の補助燃料供給装置36が設けられている。また、補助燃料供給装置36には、外部から都市ガス、重油等の補助燃料が供給されている。
【0041】
炉体10から排出される燃焼排ガスの排出方向の下流側には、熱回収装置70が設けられ、熱回収装置70の下流側には、排ガス処理装置71が設けられ、排ガス処理装置71の下流側には、煙突72が設けられている。
【0042】
熱回収装置70は、燃焼排ガスと燃焼空気の熱交換を行なう空気予熱器である。その他に、熱回収装置に燃焼空気を供給する燃料空気供給手段が設けられる。具体的には流動ブロワ、空気予熱器や流動炉から排出された燃焼排ガスを利用してタービンを駆動させ燃焼空気を生成する過給機等を適宜選択することができる。また、始動時に補助燃料供給装置36に燃焼空気を供給するブロア等も備えられる。排ガス処理装置71は、燃焼排ガスに含まれる燃焼灰や粉塵等を捕集する集塵機や、燃焼排ガスに含まれる不純物を捕集する排煙処理塔等から構成されている。
【0043】
炉体10の排出口34と熱回収装置70は、配管81で接続され、熱回収装置70と排ガス処理装置71は、配管82で接続され、排ガス処理装置71と煙突72は配管83で接続されている。これにより、炉体10から排出された高温の燃焼排ガスは、熱回収装置70において燃焼空気を加熱等に有効に使用され、また、排ガス処理装置71で不純物が捕獲された後に、煙突72から外部に排出される。
【0044】
<コントローラ>
次に、流動炉の炉体10の温度を制御するコントローラ25について説明する。図2に示すように、コントローラ25の入力側には、炉体10の砂層20の温度を測定する温度センサ64と、炉体10のフリーボード部の温度を測定する温度センサ66と、炉体10の排出口34の近傍の温度を測定する温度センサ68が所定の入力インターフェース回路を介して接続されている。
【0045】
一方、コントローラ25の出力側には、注水管54を流れる水の流量を調整する調整弁62と、注水管54の開閉を行う開閉弁63と、注水管55を流れる水の流量を調整する調整弁65と、注水管56を流れる水の流量を調整する調整弁67が所定の出力インターフェース回路を介して接続されている。
【0046】
<砂層の冷却方法>
次に、流動炉の炉体10の砂層20の温度が設定温度700~750℃よりも5℃高くなった場合の冷却方法について説明する。なお、理解を容易にするために、設定温度700℃の場合を例にとって説明する。
【0047】
図3に示すように、ステップS1において、コントローラ25は、温度センサ64で測定された温度(以下、便宜的に「第1温度」と言う)を判断する。第1温度が、705℃よりも高い温度と判断した場合は、ステップS2に進む。一方、第1温度が、695~705℃と判断した場合には、ステップS1を繰り返す。
【0048】
ステップS2において、コントローラ25は、開閉弁63を開方向に操作し、ステップS3に進む。
【0049】
ステップS3において、コントローラ25は、調整弁62を開方向に操作して調整弁62を初期開度にまで開いてステップS4に進む。なお、調整弁62は、開度0~100%の範囲で調整でき、開度0%の場合は、調整弁62は閉鎖され、開度100%の場合には、調整弁62は全開され、本実施形態においては、初期開度は開度20%に設定されている。
【0050】
脱水ケーキに注水される注水量は、脱水ケーキの一時間当たりの供給量(kg/h)に対して1~4重量%に相当する量にするのが好ましい。注水量が、1重量%よりも少ない場合は、制御に時間を要することが想定される。一方、4重量%よりも多い場合には、冷却効果は優れるものの、急激な温度低下を招く恐れがある。これにより、配管42を流れる脱水ケーキに注水して脱水ケーキの水分率を高めて、砂層20の流動部20Aの近傍で蒸発する水を多くして蒸発潜熱に費やされる熱量を高めて砂層20の温度を冷却することができる。なお、脱水ケーキに含まれる有機物は砂層20の流動部20Aの近傍で燃焼する。
【0051】
調整弁62の開度と注水量とは相関関係にあり、調整弁62の開度10~100%に調整すると注水量は1~4重量%に調整される。これにより、第1温度に応じて、調整弁62の開度を調整して注水量を1~4重量%に調整して砂層20の温度を迅速に冷却することができる。
【0052】
ステップS4において、コントローラ25は、調整弁65を操作して注水管55を流れる水の流量を所定の流量に調整して、ステップS5に進む。これにより、炉体10の供給口32に接続されたウオータガン(図示省略)からフリーボード部に水が噴霧されフリーボード部の温度を冷却することができる。
【0053】
ステップS5において、コントローラ25は、調整弁67を操作して注水管56を流れる水の流量を所定の流量に調整して、ステップS6に進む。これにより、炉体10の供給口33に接続されたウオータガン(図示省略)から炉体10の上部に位置する排出部に水が噴霧され排出部の温度を冷却することができる。
【0054】
ステップS6において、コントローラ25は、所定時間である10~3000秒間に亘って上述したステップS3~S5の状態を維持して、ステップS7に進む。これにより、脱水ケーキに注水する注水量の冷却効果を効率良く把握することができる。
【0055】
ステップS7において、コントローラ25は、脱水ケーキに注水される注水量によって砂層20の温度が冷却されているか否か判断する。本実施形態においては、第1温度に対と、ステップS7において温度センサ64で測定された温度(以下、便宜的に「第2温度」と言う)を比較する。
【0056】
第2温度が第1温度よりも低く、脱水ケーキに注水される注水量によって砂層20の温度が冷却されていると判断される場合は、ステップS8に進む。一方、第2温度が第1温度よりも高く、脱水ケーキに注水される注水量によって砂層20の温度が冷却されていないと判断された場合には、第2温度に応じて調整弁62の開度をさらに開いてステップS3に進む。例えば、第2温度が、705~710℃の場合は、調整弁62を初期開度20%から開度60%を開いて注水量を1.6重量%から3重量%にし、第2温度が、710~715℃の場合には、調整弁62を初期開度20%から開度100%を開いて注水量を1.6重量%から4重量%にする。これにより、第2温度に応じて、注水量を調整して砂層20の温度を迅速に冷却することができる。なお、調整弁62の開度の調整は、第2温度に応じて初期開度20%から開度100%に連続的に開いたり、開度5%ごと段階的に開いたりすることができる。これにより、第2温度に応じて、調整弁62の開度を調整して注水量を増加させて砂層20の温度を効率良く冷却することができる。
【0057】
脱水ケーキに注水される注水量によって砂層20の温度が冷却されているか否か判断する方法としては、第1温度と第2温度とを比較するのに方法に替えて、設定温度700℃と第2温度と温度差の変化、時間経過における第2温度の変化、すなわち、第2温度が時間経過と共に高くなるか等を利用することができる。
【0058】
ステップS8において、コントローラ25は、温度センサ64で測定された温度(以下、便宜的に第3温度と言う)が冷却完了温度である690~700℃内である判断した場合には、ステップ9に進む。一方、第3温度が、冷却未完了温度である700~705℃内であると判断した場合は、第3温度に応じて調整弁62の開度を閉じてステップS3に進む。この場合、調整弁62の開度を初期開度20%から10%に向かって第3温度に応じて連続的に開いたり、第3温度に応じて5%ごと段階的に開いたりすることができ、例えば、第3温度が、705℃の場合は、調整弁62を初期開度20%に維持して注水量を1.6重量%にし、第3温度が、700℃の場合には、調整弁62を初期開度20%から開度10%に閉じて注水量を1.6重量%から1.3重量%にする。これにより、第3温度に応じて、注水量を減少させて砂層20の温度を緩やかに冷却することができる。
【0059】
ステップS9において、コントローラ25は、調整弁67を操作して注水管56を流れる水の流量を止水(0重量%)に調整して、ステップS10に進む。なお、ステップS9は、必須のステップではなく省略することもできる。
【0060】
ステップS10において、コントローラ25は、調整弁65を操作して注水管55を流れる水の流量を止水(0重量%)に調整して、ステップS11に進む。なお、ステップS10は、必須のステップではなく省略することもできる。
【0061】
ステップS11において、コントローラ25は、調整弁62を操作して注水管54を流れる水の流量を止水(0重量%)に調整して、ステップS12に進む。
【0062】
ステップS12において、コントローラ25は、開閉弁63を操作して、調整弁62よりも下流側に設けられた開閉弁63を閉じる。これにより、調整弁62等の故障によって不要な水の流れが有った場合でも開閉弁63によって水の流れを遮断することができる。
【0063】
本実施形態においては、注水制御手段Bは、調整弁62と開閉弁63とから構成されているが、調整弁62の水の流量を調整する機能と、開閉弁63の水の供給の開始及び停止を行う機能を有する1つの弁を使用することも可能である。1つの弁を使用した場合には、図3のステップS2、S12を省略することができ、コントローラ25によって簡易な制御で砂層20の冷却を行うことができる。
【0064】
また、本実施形態においては、燃焼空気供給手段Aとして流動炉下部に燃焼空気を供給する分散管21を設けたが、流動炉下部を水平方向に分割する多数の開孔を有する分散板を設置し、分散板の下方から燃焼空気を供給する構成を採用することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明は、加圧流動炉に用いられる流動炉や常圧流動炉に用いられる流動炉に適用することができる。
【符号の説明】
【0066】
10 炉体
11 側壁
20 砂層
21 分散管
42 配管
54 注水管(第1注水管)
55 注水管(第2注水管)
56 注水管(第3注水管)
62 調整弁(第1調整弁)
63 開閉弁
64 温度センサ
65 調整弁(第2調整弁)
67 調整弁(第3調整弁)
A 燃焼空気供給手段
B 注水制御手段
図1
図2
図3