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特許7027502チカグレロルに対する抗体および使用方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-18
(45)【発行日】2022-03-01
(54)【発明の名称】チカグレロルに対する抗体および使用方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/13 20060101AFI20220221BHJP
   C07K 16/18 20060101ALI20220221BHJP
   C07K 16/46 20060101ALI20220221BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20220221BHJP
   A61P 7/04 20060101ALI20220221BHJP
   C07K 16/44 20060101ALI20220221BHJP
   C07D 487/04 20060101ALN20220221BHJP
【FI】
C12N15/13 ZNA
C07K16/18
C07K16/46
A61K39/395 N
A61P7/04
C07K16/44
C07D487/04 146
【請求項の数】 14
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020157239
(22)【出願日】2020-09-18
(62)【分割の表示】P 2017517307の分割
【原出願日】2015-09-30
(65)【公開番号】P2021011485
(43)【公開日】2021-02-04
【審査請求日】2020-10-19
(31)【優先権主張番号】62/114,931
(32)【優先日】2015-02-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/058,458
(32)【優先日】2014-10-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】506042265
【氏名又は名称】メディミューン リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】特許業務法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ブキャナン,アンドリュー
(72)【発明者】
【氏名】ニランダー,スヴェン
(72)【発明者】
【氏名】ペニー,マーク
(72)【発明者】
【氏名】ニュートン,フィリップ
(72)【発明者】
【氏名】キイス,フィーナ
(72)【発明者】
【氏名】イングハート,トード
【審査官】山本 晋也
(56)【参考文献】
【文献】特許第6799530(JP,B2)
【文献】Thomas MEYER and Helmuth HILZ,Eur. J. Biochem.,1986年,Vol.155,p.157-165
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/09-15/90
C07K 16/00-16/46
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
UniProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号32に対し少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を有するVHおよび配列番号37に対し少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を有するVLを含む、チカグレロル((1S,2S,3R,5S)-3-[7-{[(1R,2S)-2-(3,4-ジフルオロフェニル)シクロプロピル]アミノ}-5-(プロピルチオ)-3H-[1,2,3]トリアゾロ[4,5-d]ピリミジン-3-イル]-5-(2-ヒドロキシエトキシ)シクロペンタン-1,2-ジオール)またはその代謝産物に結合する抗体またはそのフラグメント。
【請求項2】
モノクローナル抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体、Fab、およびF(ab’)2から選択される、請求項1に記載の抗体またはそのフラグメント。
【請求項3】
チカグレロルまたはその代謝産物が
【化1】
からなる群から選択される、請求項1に記載の抗体またはそのフラグメント。
【請求項4】
チカグレロルまたはその活性代謝産物の抗血小板作用を中和する、請求項1に記載の抗体またはそのフラグメント。
【請求項5】
患者への投与から60分以内にチカグレロルまたはその活性代謝産物の抗血小板作用を中和する、請求項に記載の抗体またはそのフラグメント。
【請求項6】
患者への投与から30分以内にチカグレロルまたはその活性代謝産物の抗血小板作用を中和する、請求項に記載の抗体またはそのフラグメント。
【請求項7】
チカグレロルまたはチカグレロルの活性代謝産物の存在下で、ADP誘導性血小板凝集を修復する、請求項1に記載の抗体またはそのフラグメント。
【請求項8】
P2Y12受容体に対する、チカグレロルまたはその活性代謝産物の影響を阻害する、請求項1に記載の抗体またはそのフラグメント。
【請求項9】
P2Y12受容体に対する、チカグレロルまたはその活性代謝産物の結合を阻害する、請求項1に記載の抗体またはそのフラグメント。
【請求項10】
抗体またはそのフラグメントの生体内半減期が、4~24時間、4~12時間、12時間、または7時間である、請求項1に記載の抗体またはそのフラグメント。
【請求項11】
チカグレロルを投与された患者の急な出血の治療に使用するための、請求項1~10のいずれか一項に記載の抗体またはそのフラグメント。
【請求項12】
患者が、チカグレロルが治療可能な、および/もしくは適応とされる適応症について、治療をされているか、または治療もしくは予防の必要がある、請求項11に記載の抗体またはそのフラグメント。
【請求項13】
適応症が、不安定狭心症、アテローム性動脈硬化症の主要な動脈血栓性合併症;血栓性又は塞栓性脳卒中;一過性脳虚血発作;末梢血管疾患;血栓溶解を伴うかまたは伴わない心筋梗塞;アテローム性動脈硬化症への介入に起因する動脈合併症(arterial complication);血管形成術;冠動脈血管形成術(PTCA);動脈内膜切除術;ステント留置術;冠動脈および他の血管移植手術;手術の損傷または機械的損傷の血栓性合併症;事故による外傷または手術による外傷の後の組織サルベージ;再建手術;びまん性血栓症/血小板消費構成要素を伴う病態;播種性血管内凝固;血栓性血小板減少性紫斑病;溶血性尿毒症症候群;敗血症の血栓性合併症;成人呼吸窮迫症候群;抗リン脂質抗体症候群;ヘパリン起因性血小板減少症;子癇前症/子癇;静脈血栓症;深部静脈血栓症;静脈閉塞性疾患;血液疾患;骨髄増殖性疾患;血小板血症;鎌状赤血球病;機械的に誘発されるインビボの血小板活性化の予防;心肺バイパス;体外式膜型人工肺;微小血栓の予防;機械的に誘発されるインビトロの血小板活性化;血管損傷/炎症に続発する血栓症;脈管炎;動脈炎;糸球体腎炎;炎症性腸疾患;臓器移植拒絶;および片頭痛からなる群から選択される、請求項12に記載の抗体またはそのフラグメント。
【請求項14】
請求項1~10のいずれか一項に記載の抗体またはそのフラグメントを含む、チカグレロルを投与された患者の急な出血の治療に使用するための、医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
電子的に提出された配列表の参照
本出願は、2014年10月1日に作成され、33,900バイトのサイズを有する「Ticagrelor_SeqList_ST25.TXT」という名称のテキストファイルとしての、コンピューター可読形式(CRF)で本出願と共に提出される配列表を援用するものとする。
【背景技術】
【0002】
チカグレロル(BRILINTA(商標)、BRILIQUE(商標))は、選択的かつ可逆的に結合するアデノシン二リン酸(ADP)受容体アンタゴニストである、経口で活性なシクロペンチルトリアゾロピリミジンである。急性冠症候群(ACS)の患者では、低用量アスピリンと併用してチカグレロル1日2回90mgが、主要心血管(CV)イベントを減少させることが認められている。チカグレロルは、抗血小板作用(P2Y12)および増大されたアデノシン応答(ENT-1)の両方を仲介する二重経路を介して作用する(Cattaneo M et al 2014.J Am Coll Cardiol.63(23):2503-9)。依然として承認適用されていないが、進行中の計画された研究が、心筋梗塞の既往、定着した末梢動脈疾患、および急性脳卒中を有する患者、ならびに糖尿病および確認された冠状動脈アテローム性動脈硬化症を有する患者における主要CVイベントの減少についてチカグレロルを評価している。
【0003】
チカグレロルは、2つの一次代謝産物、チカグレロル活性代謝産物(TAM)およびチカグレロル不活性代謝産物(TIM)を有する(Teng et al 2010 Drug Metab.and Dispos.38:1514-1521)。AR-C124910XXとしても知られているTAMは、チカグレロルの主要な血中代謝産物であり、P2Y12アンタゴニスト活性に同様に有効である。TAMは、典型的に、BRILINTA/BRILIQUEにおいて患者における親チカグレロル濃度の約30~40%で存在する。チカグレロルおよびTAMは、それぞれ8および12時間の血中半減期を有する。AR-C133913XXとしても知られているTIMは、P2Y12に対して不活性であり、親チカグレロルの10%未満を構成し、8時間後に検出できず、尿を介して排泄される主要代謝産物である。
【0004】
血小板阻害および患者の転帰(PLATO)試験は、管理戦略(医学的または侵襲的に管理される)にかかわらず、広いACS患者集団(UA、NSTEMI、STEMI)において、クロピドグレルと比較したときに、重度の出血の合計件数(total major bleeding)を増加させずに、チカグレロルのより高い有効性を実証した(Wallentin et al 2009 NEJM 361(11):1045-1057)。しかしながら、全ての抗血小板薬と同様に、チカグレロルを用いて、患者における出血の可能性が存在する。抗血小板薬2剤併用療法(DAPT)において患者に重度の出血が起こる場合、治療選択肢が限られる。DAPTにおいて患者に出血イベントが起こる場合、血小板輸血または凝固因子の投与が、止血を向上させるために使用され得る。しかしながら、チカグレロルに関する被験体の主要出血イベントの後またはその間の血小板輸血または組換え第VIIa因子の使用の止血効果を評価する臨床データは現在存在していない(Dalen M et al 2013 J Cardiothorac Vasc Anesth.27(5):e55-7)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【文献】Cattaneo M et al 2014.J Am Coll Cardiol.63(23):2503-9
【文献】Teng et al 2010 Drug Metab.and Dispos.38:1514-1521
【文献】Wallentin et al 2009 NEJM 361(11):1045-1057
【文献】Dalen M et al 2013 J Cardiothorac Vasc Anesth.27(5):e55-7
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、チカグレロルに特異的な中和抗体などの解毒剤の利用可能性は、出血の制御に対する所望の抗血栓作用のバランスのより良好な臨床管理を可能にするであろう。チカグレロルは、唯一の市販されている可逆的に結合する抗血小板薬であるため、抗体は、新たな血小板輸血の必要なく血小板阻害の拮抗(reversal)を提供し、それによって、血小板輸血に関連する危険を避けることができる。チカグレロルおよびTAMに関連するADP誘導性血小板凝集の阻害を克服する薬剤の利用可能性は、たとえば、重度の出血を経験し、または緊急手術を必要とする患者における、満たされていない重要な臨床的必要性を満たすであろう。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一態様では、本開示は、式(Ia):
【化1】
(式中、
1が、C1~C6アルコキシおよびC1~C6アルキルチオからなる群から選択され;
2が、H、C1~C6アルキル、置換C1~C6アルキル、C3~C6シクロアルキル、および置換C3~C6シクロアルキルからなる群から選択され;および
3が、H、C1~C6アルキル、C1~C6アルコキシ、およびC1~C6アルカノールからなる群から選択される)
のシクロペンチルトリアゾロピリミジン化合物に特異的に結合する抗体に関する。
【0008】
いくつかの実施形態では、抗体は、式(IIa)
【化2】
(式中、R1、R2、およびR3が、上記のように定義される)
として括弧で識別される化合物の部分内でエピトープに結合する。
【0009】
さらなる実施形態では、抗体は、式(IIIa)
【化3】
(式中、R2、およびR3が、上記のように定義され、R’1が、C1~C4アルキルからなる群から選択される)
として括弧で識別される化合物の部分内でエピトープに結合する。
【0010】
さらなる実施形態では、抗体は、
【化4】
からなる群から選択される化合物に結合する。
【0011】
上記の態様および実施形態のさらなる実施形態では、抗体またはそのフラグメントは、配列番号2、配列番号12、配列番号22、配列番号32、配列番号42、配列番号52、配列番号62、および配列番号72からなる群から選択される重鎖可変領域(VH)配列;ならびに配列番号7、配列番号17、配列番号27、配列番号37、配列番号47、配列番号57、配列番号67、および配列番号77からなる群から選択される軽鎖可変領域(VL)配列を含む。いくつかの実施形態では、抗体は、配列番号2および配列番号7;配列番号12および配列番号17;配列番号22および配列番号27;配列番号32および配列番号37;配列番号42および配列番号47;配列番号52および配列番号57;配列番号62および配列番号67;ならびに配列番号72および配列番号77からなる群から選択されるVHおよびVL配列の組み合わせを含む。さらなる実施形態では、抗体は、配列番号52および配列番号57;配列番号62および配列番号67;ならびに配列番号72および配列番号77からなる群から選択されるVHおよびVLの組み合わせを含む。
【0012】
上記の態様および実施形態のさらなる実施形態では、抗体またはそのフラグメントは、重鎖可変領域および軽鎖可変領域のフレームワーク領域(FR)および相補性決定領域(CDR)1、2、および3を含み、ここで、重鎖可変領域のCDR1、CDR2、およびCDR3配列は、配列番号3(CDR1)、配列番号4(CDR2)、および配列番号5(CDR3);配列番号13(CDR1)、配列番号14(CDR2)、および配列番号15(CDR3);配列番号23(CDR1)、配列番号24(CDR2)、および配列番号25(CDR3);配列番号33(CDR1)、配列番号34(CDR2)、および配列番号35(CDR3);配列番号43(CDR1)、配列番号44(CDR2)、および配列番号45(CDR3);配列番号53(CDR1)、配列番号54(CDR2)、および配列番号55(CDR3);配列番号63(CDR1)、配列番号64(CDR2)、および配列番号65(CDR3);または配列番号73(CDR1)、配列番号74(CDR2)、および配列番号75(CDR3)を含み;軽鎖可変領域のCDR1、CDR2、およびCDR3配列は、配列番号8(CDR1)、配列番号9(CDR2)、および配列番号10(CDR3);配列番号18(CDR1)、配列番号19(CDR2)、および配列番号20(CDR3);配列番号28(CDR1)、配列番号29(CDR2)、および配列番号30(CDR3);配列番号38(CDR1)、配列番号39(CDR2)、および配列番号40(CDR3);配列番号48(CDR1)、配列番号49(CDR2)、および配列番号50(CDR3);配列番号58(CDR1)、配列番号59(CDR2)、および配列番号60(CDR3);配列番号68(CDR1)、配列番号69(CDR2)、および配列番号70(CDR3);または配列番号78(CDR1)、配列番号79(CDR2)、および配列番号80(CDR3)を含む。さらなる実施形態では、抗体は、配列番号53(VH CDR1)、配列番号54(VH CDR2)、配列番号55(VH CDR3)、配列番号58(VL CDR1)、配列番号59(VL CDR2)、および配列番号60(VL CDR3);配列番号63(VH CDR1)、配列番号64(VH CDR2)、配列番号65(VH CDR3)、配列番号68(VL CDR1)、配列番号69(VL CDR2)、および配列番号70(VL CDR3);ならびに配列番号73(VH CDR1)、配列番号74(VH CDR2)、配列番号75(VH CDR3)、配列番号78(VL CDR1)、配列番号79(VL CDR2)、および配列番号80(VL CDR3)からなる群から選択されるCDR領域の組み合わせを含む。
【0013】
上記の態様および実施形態では、抗体は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体、一本鎖Fv(scFv)、単一ドメイン抗体、Fab、F(ab’)2、一本鎖ダイアボディ(diabody)、抗体模倣体、および抗体可変ドメインから選択される。いくつかの実施形態では、抗体はscFvを含む。いくつかの実施形態では、抗体はFabを含む。
【0014】
いくつかの実施形態では、上述される抗体は、チカグレロルまたはチカグレロル活性代謝産物(TAM)に結合する。
【0015】
さらなる実施形態では、抗体は、約200nM以下のIC50を有してチカグレロルまたはその代謝産物もしくは誘導体に結合する。さらに他の実施形態では、抗体は、約100nM~約1nMのIC50、または約10nM~約1nMのIC50を有してチカグレロルまたはその代謝産物もしくは誘導体に結合する。
【0016】
さらなる実施形態では、抗体は、約50nM以下のKdを有してチカグレロルまたはその代謝産物もしくは誘導体に結合する。さらに他の実施形態では、抗体は、約250pM~約1pMの範囲の、または約100pM~約1pMの範囲のKdを有してチカグレロルまたはその代謝産物もしくは誘導体に結合する。
【0017】
さらなる実施形態では、抗体は、チカグレロルまたはその代謝産物もしくは誘導体に結合し、フェノフィブラート、ニルバジピン、シロスタゾール、ブクラデシン、レガデノソン、シクロチアジド、シフルトリン、ロバスタチン、リネゾリド、シンバスタチン、カングレロル、パントプラゾール、アデノシン、アデノシン二リン酸、アデノシン三リン酸、2-MeSアデノシン二リン酸、および2-MeSアデノシン三リン酸からなる群から選択される化合物に結合しない。実施形態では、抗体は、フェノフィブラート、ニルバジピン、シロスタゾール、ブクラデシン、レガデノソン、シクロチアジド、シフルトリン、ロバスタチン、リネゾリド、シンバスタチン、カングレロル、パントプラゾール、アデノシン、アデノシン二リン酸、アデノシン三リン酸、2-MeSアデノシン二リン酸、および2-MeSアデノシン三リン酸からなる群から選択される化合物の活性を阻害しない。さらなる実施形態では、抗体は、フェノフィブラート、ニルバジピン、シロスタゾール、ブクラデシン、レガデノソン、シクロチアジド、シフルトリン、ロバスタチン、リネゾリド、シンバスタチン、カングレロル、パントプラゾール、アデノシン、アデノシン二リン酸、アデノシン三リン酸、2-MeSアデノシン二リン酸、および2-MeSアデノシン三リン酸からなる群から選択される化合物について少なくとも約1000μMのIC50を示す。
【0018】
いくつかの実施形態では、抗体は、約4~12時間の生体内半減期を有する。特定の実施形態では、抗体は、約12時間の生体内半減期を有する。
【0019】
いくつかの実施形態では、抗体は、チカグレロルまたはチカグレロルの活性代謝産物の抗血小板作用を中和する。さらなる実施形態では、抗体は、投与から約60分以内にチカグレロルまたはチカグレロルの活性代謝産物の抗血小板作用を中和する。
【0020】
いくつかの実施形態では、抗体は、チカグレロルを含む治療の開始の連続を可能にするチカグレロルまたはチカグレロルの活性代謝産物の解離速度(off-rate)を有する。
【0021】
他の態様では、本開示は、治療を必要とする患者の急な出血を治療する方法であって、有効量の本明細書に開示される抗体を患者に投与する工程を含む方法を提供する。本方法のいくつかの実施形態では、患者は、外科手術を受けたか、または受けており、かつチカグレロルを投与された。本方法のいくつかの実施形態では、患者は、応急手当ておよび/または救急外傷管理を必要としている。
【0022】
本開示の他の態様は、薬学的に許容できる担体と組み合わせて、前の態様および実施形態のいずれかの抗体を含む組成物を提供する。
【0023】
いくつかのさらなる態様は、前の請求項のいずれかに記載の抗体をコードするヌクレオチド配列を含む核酸分子を提供する。いくつかの実施形態では、核酸分子は、配列番号1、配列番号6、配列番号11、配列番号16、配列番号21、配列番号26、配列番号31、配列番号36、配列番号41、配列番号46、配列番号51、配列番号56、配列番号61、配列番号66、配列番号71、および配列番号76を含む。
【0024】
本開示のさらなる態様は、本明細書に開示される少なくとも1つの核酸分子を含み得る組成物、ベクター、および宿主細胞を提供する。いくつかの実施形態では、組成物、ベクター、および宿主細胞は、本明細書に開示されるタンパク質の1つまたは複数をコードする第1の核酸分子および第2の核酸分子を含む。
【0025】
他の態様は、以下に続く説明および例示的な説明を検討すると、当業者に明らかであろう。
【0026】
本開示を例示するために、本開示のある態様が図面中に示される。しかしながら、本開示は、図面中に示される態様の正確な配置および手段に限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】第III相PLATOデータに基づくチカグレロルが中和するFabのPK/PDモデリングを示す。チカグレロル180mgの初期投与および1日2回90mgの後、中和Fabが時間ゼロの時点で加えられる。患者は、1日目にチカグレロルを再開される。Fabは、チカグレロルおよびTAMを迅速に中和し、したがって、99%の患者において血小板凝集を修復することが予測される。0~1日目の「ヒル」は、チカグレロルがよりゆっくりと除去される1%の患者における他の組織からのチカグレロルの再分配を表す。
図2A】ハプタン(haptan)およびFab特異性。(A)チカグレロル、チカグレロル活性代謝産物(TAM)、チカグレロル不活性代謝産物(TIM)およびアデノシンの化学構造を提供する。固有のR基、ジ-フルオロフェニル-シクロプロピルおよびチオプロピル置換基が、点線で強調される。
図2B】ハプタン(haptan)およびFab特異性。(B)TICA0072の特異性プロファイル。特異性プロファイルは、チカグレロル、TAM、TIM、アデノシン、ADP、ATPおよび図4の12の関連化合物のうちの3つを含む(明確にするために、最大で0.1mMの濃度の12の化合物のいずれに対しても結合を検出しなかった)。データは、3つのトリプリケートの平均およびSEMである。
図2C】ハプタン(haptan)およびFab特異性。(C)TICA0212(MEDI 2452)の特異性プロファイル。特異性プロファイルは、チカグレロル、TAM、TIM、アデノシン、ADP、ATPおよび図4の12の関連化合物のうちの3つを含む(明確にするために、最大で0.1mMの濃度の12の化合物のいずれに対しても結合を検出しなかった)。データは、3つのトリプリケートの平均およびSEMである。
図3】ビオチン化リンカーチカグレロルに対するscFv結合(x軸)および50倍過剰の非修飾チカグレロル中のビオチン化リンカーチカグレロルに対する結合(y軸)の相関を示す。過剰な非修飾チカグレロルの存在下におけるscFv結合の阻害は、0%、50%、80%および90%の阻害についての線で示される。
図4】チカグレロルに対するある程度の2D、3Dまたは静電的類似性で同定される化合物を示す。
図5】TICA0049およびTICA0072 Fabについての選択性試験を提供する。a~c 列挙される化合物によるビオチン化チカグレロルに対するTICA0049 Fab結合の競合。d~f 列挙される化合物によるビオチン化チカグレロルに対するTICA0072 Fab結合の競合。データはDMSO正規化される。
図6】第二世代エピトープ競合アッセイにおける親TICA0072および最適化された変異体TICA0152、TICA0162およびTICA0212 Fabについての競合曲線を提供する。
図7】TICA0162およびTICA0212 Fabについての選択性試験の結果を示す。a~c 列挙される化合物によるビオチン化チカグレロルに対するTICA0162 Fab結合の競合。d~f 列挙される化合物によるビオチン化チカグレロルに対するTICA0212 Fab結合の競合。データはDMSO正規化される。
図8A】チカグレロルのTICA0212/MEDI2452またはTICA0072の濃度に依存する拮抗の結果を示す。(A)20μMのADP誘導性凝集のTICA0212/MEDI2452 1uMのチカグレロル(▲)または1uMのTAM(●)媒介性阻害。
図8B】チカグレロルのTICA0212/MEDI2452またはTICA0072の濃度に依存する拮抗の結果を示す。(B)TICA0212/MEDI2452は、1uMのチカグレロルの存在下における血漿中の遊離チカグレロル濃度の低下を示す。平均(n=5)±平均の標準誤差。
図8C】チカグレロルのTICA0212/MEDI2452またはTICA0072の濃度に依存する拮抗の結果を示す。(C)チカグレロルのTICA0072拮抗およびP2Y12シグナル伝達のTAM阻害。
図9】チカグレロルで処理されたマウスへの投与後のADP誘導性の生体外全血凝集のTICA0212(250mg/kg)に媒介される拮抗の結果を示す。
図10】チカグレロルとの複合体におけるTICA0072(A)およびTICA0212/MEDI2452(B)の結晶構造の部分図を示す。Fabは、棒状物(stick)として示されるチカグレロルから7Åの範囲内のアミノ酸残基を含むリボン図で示される。いくつかの主鎖原子は、明確にするために省略された。軽鎖はベージュ色で示され、重鎖は薄青色で示される。両方の鎖からのCDR3は緑色である。VH CDR3は、TICA0072構造においてモデル化できず、一時的な位置は、破線として描かれる。オレンジ色の矢印は、TICA0072と比較して、TICA0212/MEDI2452において観察されるVL CDR3の変化を示す。残基は、kabatに従う番号であり、軽鎖または重鎖を示すためにLまたはHが前に付いている。
図11】ADP誘導性の生体外全血凝集の拮抗を示す。(A)チカグレロル注入の停止後の各処理群の個々のデータ。ビヒクル対照(■)、チカグレロル単独(●)、チカグレロル+TICA0212/MEDI2452(○)およびチカグレロル+アイソタイプ対照(△)。バーは、平均データ(n=4)を表す。AU=凝集単位。15分の時点で、チカグレロル+TICA0212/MEDI2452群のみのデータを収集した。(B)TICA0212/MEDI2452によって誘導される拮抗パーセンテージ、平均データ(n=4)±SEM。
図12】チカグレロル誘導性の出血の改善を示す。(A)全失血についての個々のデータおよび(B)全出血時間についての個々のデータ。ビヒクル対照(■)、チカグレロル単独(●)およびチカグレロル+TICA0212/MEDI2452(○)。バーは、平均データ(n=12)を表す。
【発明を実施するための形態】
【0028】
引き続き本開示をさらに詳細に記載する前に、本開示は、特定の組成物またはプロセスステップに限定されるものではなく、したがって異なってもよいことを理解されたい。本明細書および添付の特許請求の範囲に使用される場合、単数形「1つの(a)、「1つの(an)」および「前記(the)」は、文脈上明らかに他の意味に解すべき場合を除き、複数の意味を含むことに留意しなければならない。
【0029】
他に記載がない限り、本明細書で使用する技術用語および科学用語は全て、本発明が関連する技術分野の当業者が一般に理解しているのと同じ意味を持つ。たとえば、Concise Dictionary of Biomedicine and Molecular Biology,Juo,Pei-Show,2nd ed.,2002,CRC Press;The Dictionary of Cell and Molecular Biology,3rd ed.,1999,Academic Press;およびOxford Dictionary Of Biochemistry And Molecular Biology,Revised,2000,Oxford University Pressは、当業者にとって本発明に使用される多くの用語の一般的な辞書となる。
【0030】
本明細書においてアミノ酸は、その一般に知られる3文字記号またはIUPAC-IUB生化学命名委員会(Biochemical Nomenclature Commission)により推奨される1文字記号で示すことがある。ヌクレオチドも、同様に、その一般的に認められた1文字記号で示すことがある。
【0031】
抗体の可変ドメイン、相補性決定領域(CDR)およびフレームワーク領域(FR)のアミノ酸の番号付けは、他に記載がない限り、Kabat et al.Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,MD.(1991)に記載されるKabatの定義に従う。この番号付け体系を使用すると、実際の直鎖状アミノ酸配列は、可変ドメインのFRもしくはCDRの短縮またはFRもしくはCDRへの挿入に対応して、より少ないアミノ酸または追加のアミノ酸を含むことができる。たとえば、重鎖可変ドメインは、H2の残基52の後の1個のアミノ酸の挿入(Kabatによれば残基52a)、および重鎖FR残基82の後に挿入された残基(たとえば、Kabatによれば残基82a、82bおよび82cなど)を含むことができる。残基のKabatの番号付けは個々の抗体に対して、抗体の配列と「標準的な」Kabat番号が付けられた配列との相同性領域でアライメントを行うことにより決定することができる。フレームワーク残基の最大のアライメントには、Fv領域に使用される、この番号付け体系の「スペーサー」残基の挿入が必要とされることが多い。さらに、任意の特定のKabat部位番号における個々の特定の残基の種類は、種間の相違または対立遺伝子の相違のため抗体鎖によって異なることもある。
【0032】
本明細書で使用する場合、「抗体」という用語は、免疫グロブリンとも呼ばれ、モノクローナル抗体(全長モノクローナル抗体を含む)、ポリクローナル抗体、少なくとも2つの異なるエピトープ結合フラグメントから形成される多重特異性抗体(たとえば、多重特異性抗体、たとえば、その全体を本明細書に援用する国際公開第2009/018386号パンフレット、国際出願PCT/米国特許出願公開第2012/045229号明細書)、biMab、ヒト抗体、ヒト化抗体、ラクダ化抗体、一本鎖Fv(scFv)、一本鎖抗体、単一ドメイン抗体、ドメイン抗体、Fabフラグメント、F(ab’)2フラグメント、所望の生物活性を示す抗体フラグメント(たとえば抗原結合部分)、ジスルフィド結合Fv(dsFv)、および抗イディオタイプ(抗Id)抗体(たとえば、本発明の抗体に対する抗Id抗体など)、イントラボディ、ならびに上記のいずれかのエピトープ結合フラグメントを包含する。本明細書に提供される特定の実施形態では、抗体は、抗体の活性結合フラグメント、すなわち、たとえばscFvおよびFabなどの少なくとも1つの抗原結合部位を含有する分子に関する。抗体はまた、抗体またはその一部とのペプチド融合体、たとえばFcドメインとの融合タンパク質を含む。免疫グロブリン分子は、どのようなアイソタイプ(たとえば、IgG、IgE、IgM、IgD、IgAおよびIgY)、サブアイソタイプ(たとえば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1およびIgA2)またはアロタイプ(たとえば、Gm、たとえば、G1m(f、z、aまたはx)、G2m(n)、G3m(g、bまたはc)、Am、EmおよびKm(1、2または3))であってもよい。抗体は、任意の哺乳動物、以下に限定されるものではないが、ヒト、サル、ブタ、ウマ、ウサギ、イヌ、ネコ、マウスなど、または他の動物、たとえばトリ(たとえばニワトリ)に由来してもよい。
【0033】
本明細書で使用する場合、C1~C6アルキルは、1~6個の炭素原子を有する直鎖状および分枝鎖状アルキルを指し、メチル、エチル、プロピル、n-ブチル、イソ-ブチル、ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、およびヘキシルを含む。
【0034】
本明細書で使用する場合、C1~C6アルコキシは、基中に酸素を有する上記のアルキルを指す。いくつかの実施形態では、酸素原子は、置換基をコア構造(すなわち、環構造)に結合する位置に配置される。
【0035】
本明細書で使用する場合、C1~C6アルキルチオは、基中に硫黄を有する上記のアルキルを指す。いくつかの実施形態では、硫黄原子は、置換基をコア構造(すなわち、環構造)に結合する位置に配置される。
【0036】
本明細書で使用する場合、C1~C6アルカノールは、置換基構造の末端にヒドロキシル基を有する上記のアルキルを指す。
【0037】
本明細書で使用する場合、C3~C6シクロアルキルは、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、およびシクロヘキシルを指す。
【0038】
本明細書で使用する場合、「置換」C3~C6シクロアルキルおよびC1~C6アルキルは、少なくとも1個の炭素原子上で、1~3個のハロゲン原子でさらに置換されるアリール基で置換される上記のアルキルおよびシクロアルキル基を指す。
【0039】
本明細書で使用する場合、「チカグレロル」は、化学構造:
【化5】
を有する可逆的P2Y12阻害剤((1S,2S,3R,5S)-3-[7-{[(1R,2S)-2-(3,4-ジフルオロフェニル)シクロプロピル]アミノ}-5-(プロピルチオ)-3H-[1,2,3]トリアゾロ[4,5-d]ピリミジン-3-イル]-5-(2-ヒドロキシエトキシ)シクロペンタン-1,2-ジオール)を指す。
【0040】
本明細書で使用する場合、「チカグレロル活性代謝産物」または「TAM」は、化学構造:
【化6】
を有する可逆的P2Y12阻害剤である、AR-C124910XXとも呼ばれる、チカグレロルの主要活性代謝産物を指す。
【0041】
本明細書で使用する場合、「チカグレロル不活性代謝産物」または「TIM」は、化学構造:
【化7】
を有する、AR-C133913XXとも呼ばれる、チカグレロルの不活性代謝産物を指す。
【0042】
抗体
一般的な意味で、本開示は、式(Ia):
【化8】
(式中、
1が、C1~C6アルコキシおよびC1~C6アルキルチオからなる群から選択され;
2が、H、C1~C6アルキル、置換C1~C6アルキル、C3~C6シクロアルキル、および置換C3~C6シクロアルキルからなる群から選択され;および
3が、H、C1~C6アルキル、C1~C6アルコキシ、およびC1~C6アルカノールからなる群から選択される)
のシクロペンチルトリアゾロピリミジン化合物に結合する新規な抗体を提供する。
【0043】
特定の実施形態では、抗体は、
【化9】
からなる群から選択される化合物に特異的に結合する。
【0044】
特定の態様では、本開示は、高い結合特異性、高い結合親和性、迅速な発現時間(time to onset)、および迅速な消失時間(time to offset)(たとえば、チカグレロルを含む治療の任意選択の連続または同時投与を可能にする)を含む以下の特徴のいずれか1つまたは複数を有するチカグレロルおよびTAMに結合する抗体を提供する。
【0045】
いくつかの実施形態では、抗体は、チカグレロルに結合し、チカグレロルおよびTAMの抗血小板凝集活性を中和し、したがって、チカグレロルおよびTAMの存在下でADP誘導性血小板凝集を修復する。
【0046】
いくつかの実施形態では、被験体の抗体半減期は、チカグレロルおよびTAMの半減期とほぼ同じである。いくつかの実施形態では、抗体半減期は、約4~24時間(たとえば、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、または24時間)である。いくつかの実施形態では、抗体半減期は、約4~12時間(たとえば、4、5、6、7、8、9、10、11、または12時間)である。
【0047】
いくつかの実施形態では、抗体は、迅速な作用発現を提供する。たとえば、実施形態では、抗体が、チカグレロルおよびTAM媒介性血小板阻害を発現する時間または中和する時間は、約15~120分間、または約15~60分間である。いくつかの実施形態では、発現時間は、60分未満である。
【0048】
いくつかの実施形態では、抗体は、たとえば、抗体を投与された被験体が、所定のチカグレロル治療を再開し得るように、迅速な作用消失を提供するPK/PDプロファイルを有する。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される抗体を与えられた被験体(たとえば、静脈内(i.v.)注入による)は、抗体の投与後24時間以内にチカグレロル治療を受けるかまたは再開し得る。
【0049】
本明細書のある実施形態に説明され、例示されるように、抗体は、チカグレロルまたはその代謝産物に結合し、他の構造的に関連する化合物、または連携療法としてチカグレロルと共に投与され得る化合物に結合しない。たとえば、好適には、抗体は、フェノフィブラート、ニルバジピン、シロスタゾール、ブクラデシン、レガデノソン、シクロチアジド、シフルトリン、ロバスタチン、リネゾリド、シンバスタチン、カングレロル、パントプラゾール、アデノシン、アデノシン二リン酸、アデノシン三リン酸、2-MeSアデノシン二リン酸、および2-MeSアデノシン三リン酸からなる群から選択される化合物の活性を阻害しない。
【0050】
本明細書に記載の抗体は、Fab、F(ab’)2、Fab’、scFv、ジ-scFv、sdAbフラグメントなどの抗体分子の選択された部分のみを含有する抗原結合フラグメントを含んでもよく、診断用剤または治療剤として使用され得る。さらに、可変ドメイン中の特定の残基は、抗体および抗体フラグメントの結合特異性および/または安定性を向上させるように改変され得る。非ヒト抗体の領域を「ヒト化」し、抗体の免疫原性を減少させるために、抗原結合に直接関与しない他の残基が置換された。
【0051】
ある態様では、抗体は、Fabフラグメント、たとえば、抗体のFabフラグメントまたは可変軽鎖(VL)、定常軽鎖(CL)、可変重鎖(VH)、および定常重鎖部分(CH1)を含む組換えにより産生された抗原結合フラグメントである。任意に、Fabの軽鎖および重鎖は、1つまたは複数のジスルフィド結合を介して(たとえば、好適な抗体ヒンジ領域を介して)相互に連結され得る。本明細書に記載されるように、Fabは、経口活性薬剤のシクロペンチルトリアゾロピリミジンクラスの化合物のエピトープに結合する。いくつかの実施形態では、Fabは、チカグレロルまたはその代謝産物に結合する。
【0052】
ある態様では、Fabは、従来のマウス、ヒト化またはヒト抗体などの、抗体の配列に由来するかまたはそれに基づき得る。ある態様では、Fabは、ライブラリーからスクリーニングされるかまたは由来するscFvなどの1つまたは複数のscFvに由来するかまたはそれに基づき得る。このような実施形態では、従来の抗体またはscFvの配列に由来するかまたはそれに基づくFabは、従来の抗体の1つまたは複数の機能活性を保持する(たとえば、機能活性の少なくとも80%以上(80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%または100%)を保持する)。たとえば、ある態様では、Fabは、抗原(たとえば、チカグレロル)の親和性、阻害活性、および/または抗体またはscFvの選択性の1つまたは複数を保持する。
【0053】
Fabフラグメントが、シクロペンチルトリアゾロピリミジンのエピトープに結合する配列を含み得る一方、特定の実施形態では、Fabは、チカグレロルに結合する。いくつかの態様では、Fabは、チカグレロルの活性代謝産物に結合する。ある態様では、Fabは、チカグレロルおよびチカグレロルの活性代謝産物の両方に結合し得る。
【0054】
いくつかの実施形態では、Fabは、チカグレロルまたはその活性代謝産物に結合する異なる抗体からのCDR領域の組み合わせを含み得る。
【0055】
ある態様では、Fabは、配列番号7、配列番号17、配列番号27、配列番号37、配列番号47、配列番号57、配列番号67、および配列番号77のいずれかに記載のアミノ酸配列を含む軽鎖部分(VL)を含む。さらなる実施形態では、Fabは、配列番号57、配列番号67、および配列番号77のいずれかに記載されるアミノ酸配列を含む軽鎖部分を含む。ある態様では、Fabは、配列番号2、配列番号12、配列番号22、配列番号32、配列番号42、配列番号52、配列番号62、および配列番号72のいずれかに記載されるアミノ酸を含む重鎖部分(VH)を含む。さらなる実施形態では、Fabは、配列番号52、配列番号62、および配列番号72のいずれかに記載されるアミノ酸配列を含む重鎖部分を含む。ある態様では、Fabは、軽鎖部分(VL)をコードするヌクレオチド配列および重鎖部分(VH)をコードするヌクレオチド配列、たとえば、配列番号1、配列番号11、配列番号21、配列番号31、配列番号41、配列番号51、配列番号61、または配列番号71に記載される核酸配列を含むヌクレオチド配列;および配列番号6、配列番号16、配列番号16、配列番号16、配列番号16、配列番号16、配列番号16、または配列番号76に記載される核酸配列を含むヌクレオチド配列によってコードされる。
【0056】
ある態様では、抗体は、scFvであり得る。scFvが、フレキシブルポリペプチドリンカーを介して可変軽鎖ドメイン(VL)に連結された可変重鎖ドメイン(VH)を含むポリペプチド鎖を包含することが理解される。いくつかの態様では、VHとVLとの間のポリペプチドリンカーは、プロテアーゼ切断部位を含む。scFvのVHおよびVLドメインは、同一または異なる抗体に由来し得る。いくつかの態様では、scFvのVHまたはVLは、対象とする標的に結合する1つまたは複数のCDRを含み得る一方、VHまたはVLドメインの残りが、異なる抗体に由来するかまたは合成である。いくつかの態様では、scFvは、抗体、たとえば、チカグレロルまたはその代謝産物に対する結合活性を有する抗体の少なくとも1つのCDRを含む。いくつかの態様では、scFvは、所与の抗体の少なくとも2つのCDRを含む。いくつかの態様では、scFvは、所与の抗体の少なくとも3つのCDRを含む。いくつかの態様では、scFvは、所与の抗体の少なくとも4つのCDRを含む。いくつかの態様では、scFvは、所与の抗体の少なくとも5つのCDRを含む。いくつかの態様では、scFvは、所与の抗体の少なくとも6つのCDRを含む。
【0057】
いくつかの方法が、scFv分子の安定性を向上させるために、単独でまたは組み合わせて使用され得る。単独でまたは他の方法の1つまたは複数と組み合わせて使用され得る1つの方法は、scFv部分を安定させるために、scFvドメインを結合するリンカーの長さおよび/または組成を操作することである。
【0058】
単独あるいは本明細書に記載の他の方法1つまたは複数を組み合わせて使用できると考えられる別の方法は、ジスルフィド結合の形成を促進するようにscFvのVHドメインおよび/またはVLドメインに少なくとも2つのアミノ酸置換(修飾または突然変異ともいう)を導入することによる(たとえばBrinkmann et al.,1993,PNAS,90:7538-42;Zhu et al.,1997,Prot.Sci.6:781-8;Reiter et al.,1994,Biochem.33:5451-9;Reiter et al.,1996,Nature 14:1239-45;Luo et al.,1995,J.Biochem.118:825-31;Young et al.,1995,FEBS Let.377:135-9;Glockshuber et al.,1990,Biochem.29:1362-7を参照されたい)。
【0059】
ある態様では、scFvのVHドメインおよびVLドメインに1つの突然変異を導入して、scFvの発現時にVHドメインとVLドメインとの間の鎖間ジスルフィド結合の形成を促進する。別の態様では、鎖の同じドメインに2つの突然変異を導入する。ある態様では、異なる鎖に2つの突然変異を導入する。ある態様では、2つの突然変異の複数対を導入して、複数のジスルフィド結合の形成を促進する。ある態様では、システインを導入してジスルフィド結合の形成を促進する。システインに変異させてもよい例示的アミノ酸として、VH2のアミノ酸43、44、45、46、47、103、104、105および106、ならびにVL2のアミノ酸42、43、44、45、46、98、99、100および101が挙げられる。前述の番号付けは、scFvのVH2およびVL2のみに対する(抗体の全長配列におけるアミノ酸の位置に対するものではない)位置を特定するKabatの番号付けに基づく。システイン残基に変異させてもよいアミノ酸位置の例示的組み合わせとして、VH44-VL100、VH105-VL43、VH105-VL42、VH44-VL101、VH106-VL43、VH104-VL43、VH44-VL99、VH45-VL98、VH46-VL98、VH103-VL43、VH103-VL44およびVH103-VL45が挙げられる。いくつかの態様では、VHのアミノ酸44およびVLのアミノ酸100をシステインに変異させる。
【0060】
単独あるいは本明細書に記載の1つまたは複数の他の方法と組み合わせて使用してもよいとさらに考えられる方法は、scFvの順序を選択することである。ある態様では、VLドメインに対するVHドメインの配向を安定性のために最適化する。ある態様では、scFvは、VH-リンカー-VLの配向である。ある態様では、scFvは、VL-リンカー-VHの配向である。
【0061】
単独あるいは1つまたは複数の本明細書に記載の方法と組み合わせて使用してもよい別の方法は、scFvの1つまたは複数の表面残基を変異させて1つまたは複数の安定化突然変異を導入することによる。いくつかの態様では、scFvのVHドメインおよび/またはVLドメインの一方または両方の1、2、3、4、5、6または6を超える残基を変異させる。ある態様では、scFvのVHドメインのみの変更を行う。ある態様では、scFvのVLドメインのみの変更を行う。ある態様では、scFvのVHドメインおよびVLドメインの両方の変更を行う。各ドメインに同じ数の変更を行っても、あるいは各ドメインに異なる数の変更を行ってもよい。ある態様では、1つまたは複数の変更は、未修飾の親scFvに存在する残基の保存的アミノ酸置換である。他の態様では、1つまたは複数の変更は、未修飾の親scFvに存在する残基の非保存的アミノ酸置換である。scFvのVHドメインまたはVLドメインの一方あるいは両方に複数の置換を行う場合、置換は各々独立に保存的置換または非保存的置換である。ある態様では、置換は全て保存的置換である。ある態様では、置換は全て非保存的である。ある態様では、置換の少なくとも1つは保存的である。ある態様では、少なくとも1つまたは置換は非保存的である。
【0062】
単独あるいは1つまたは複数の本明細書に記載の他の方法と組み合わせて使用してもよいさらに別の方法は、scFvのVHドメインおよび/またはVLドメインの1つまたは複数の残基を変異させて1つまたは複数の置換を導入して、既知であり、スクリーニングされ、かつ/または識別された抗体のVHドメインおよび/またはVLドメインのコンセンサス配列の前記特定位置で最も頻度の高い残基にマッチさせることによる。ある態様では、scFvのVHドメインおよび/またはVLドメインの一方または両方に1、2、3、4、5、6または6を超える位置で置換を導入する。各ドメインに同じ数の変更を行ってもよく、あるいは各ドメインに異なる数の変更を行ってもよい。ある態様では、あるコンセンサス配列にマッチさせる配列の1つまたは複数の変更は、未修飾のVH配列および/またはVL配列に存在する残基の保存的アミノ酸置換である。他の態様では、1つまたは複数の変更は、未修飾のVH配列および/またはVL配列に存在する残基の非保存的アミノ酸置換である。scFvのVHドメインまたはVLドメインの一方あるいは両方に複数の置換を行う場合、置換は各々独立に保存的置換または非保存的置換である。ある態様では、置換は全て保存的置換である。ある態様では、置換は全て非保存的置換である。ある態様では、置換の少なくとも1つは保存的である。ある態様では、少なくとも1つまたは置換は非保存的である。
【0063】
scFv部分の修飾または安定化に有用であると記載された修飾のいずれも、Fab部分の修飾に適用できることに留意されたい。たとえば、Fabの可変ドメインを修飾して、安定性、抗原結合および同種のものを向上させることができる。さらに、Fab部分あるいはscFv部分を修飾して免疫原性を低下させることもできる。
【0064】
ある態様では、抗体は、配列番号7、配列番号17、配列番号27、配列番号37、配列番号47、配列番号57、配列番号67、および配列番号77のいずれかに記載のアミノ酸配列を含む可変軽鎖部分(VL)を含むscFvであり得る。さらなる実施形態では、scFvは、配列番号57、配列番号67、および配列番号77のいずれかに記載されるアミノ酸配列を含む軽鎖部分を含む。ある態様では、scFvは、配列番号2、配列番号12、配列番号22、配列番号32、配列番号42、配列番号52、配列番号62、および配列番号72のいずれかに記載されるアミノ酸を含む重鎖部分(VH)を含む。さらなる実施形態では、scFvは、配列番号52、配列番号62、および配列番号72のいずれかに記載されるアミノ酸配列を含む重鎖部分を含む。
【0065】
本明細書に開示される抗体は、1つまたは複数のリンカーポリペプチドをさらに含み得る。リンカーは、重鎖ドメインおよび軽鎖ドメイン(scFv)を相互に連結し、または抗体またはその抗原結合フラグメントを、標識、Fcドメインなどの別の作用因子に結合し得る。リンカーは、長さおよび配列が異なることがあり、概して当該技術分野において公知である。
【0066】
Fc領域を含む抗体の血清中半減期は、FcRnに対するFc領域の結合親和性を高めることにより延長することができる。「抗体半減期」という用語は、本明細書で使用する場合、投与後の抗体分子の平均生存時間の指標である抗体の薬物動態特性を意味する。抗体半減期は、既知量の免疫グロブリンの50パーセントを患者の体内(または他の哺乳動物)またはその特定のコンパートメントから除去するのに要する時間を、たとえば血清中で見て(すなわち、血中半減期)または他の組織で見て表すことができる。半減期は、免疫グロブリンまたは免疫グロブリンのクラスによって異なってもよい。一般に、抗体半減期を延長すると、投与された抗体の循環血中の平均滞留時間(MRT)が長くなる。
【0067】
半減期を延長すると、患者に投与される薬剤量の減少および投与頻度の低下を可能にし得る。抗体の血清半減期を延長するには、たとえば米国特許第5,739,277号明細書に記載されているようなサルベージ受容体結合エピトープを抗体(特に抗体フラグメント)に組み込んでもよい。本明細書で使用する場合、「サルベージ受容体結合エピトープ」という用語は、IgG分子のインビボでの血清中半減期に関わる、IgG分子(たとえばIgG1、IgG2、IgG3またはIgG4)のFc領域のエピトープをいう。あるいは、半減期の延長された本開示の抗体は、FcとFcRn受容体との間の相互作用に関与することが確認されたアミノ酸残基を修飾することにより作製してもよい(たとえば、米国特許第6,821,505号明細書および同第7,083,784号明細書;および国際公開第09/058492号パンフレットを参照されたい)。さらに、本開示の抗体の半減期は、当該技術分野において広く利用される技術によりPEGまたはアルブミンへのコンジュゲーションによって延長してもよい。
【0068】
本開示の範囲内に含まれる抗体は、本明細書において特定される構造的および/または機能的特性のいずれかによって特定され得る。たとえば、抗体は、本明細書に示されるかまたは当該技術分野において公知の技術のいずれかを用いて、特定の結合特徴(たとえば、Koff、Kd、IC50、チカグレロルおよびチカグレロル代謝産物に対する特異性/選択性)のためにスクリーニングされ得る。
【0069】
標識、コンジュゲートおよび部分
本開示の抗体は、診断および他のアッセイを目的として標識にコンジュゲートしてもよく、抗体および/またはその標的を検出することができる。標識には、以下に限定されるものではないが、発色団、フルオロフォア、蛍光タンパク質、リン光色素、タンデム色素、粒子、ハプテン、酵素および放射性同位元素がある。
【0070】
ある態様では、抗体をフルオロフォアにコンジュゲートする。抗体に結合するフルオロフォアの選択により、コンジュゲートした抗体の吸収および蛍光発光特性が決定される。抗体および抗体結合リガンドに使用することができるフルオロフォア標識の物理的性質には、スペクトル特性(吸収、発光およびストークスシフト)、蛍光強度、寿命、偏光および光退色速度またはこれらの組み合わせがあるが、これに限定されるものではない。これらの物理的性質は全て、あるフルオロフォアを別のフルオロフォアと区別するのに使用することができ、したがって多重解析が可能になる。蛍光標識の他の望ましい特性として、たとえば細胞またはモデル生体(たとえば、生きている動物)において抗体の標識を行った場合の細胞透過性および低毒性を挙げることができる。
【0071】
ある態様では、酵素が標識であり、抗体にコンジュゲートされる。酵素は、検出可能なシグナルの増幅を行い、アッセイ感度を高められるため望ましい標識である。酵素自体は検出可能な反応を起こさないが、適切な基質に接触すると基質を分解する働きをし、変質した基質が蛍光シグナル、比色シグナルまたは発光シグナルを発するようになる。標識試薬上の1つの酵素が複数の基質を検出可能なシグナルに変換できるため、酵素により検出可能なシグナルが増幅される。酵素基質は、測定可能な好ましい結果、たとえば比色、蛍光または化学発光が得られるように選択する。こうした基質は当該技術分野において広く使用され、当業者に公知であり、たとえば、オキシドレダクターゼ、たとえば西洋わさびペルオキシダーゼおよび基質、たとえば3,3’-ジアミノベンジジン(DAB);ホスファターゼ酵素、たとえば酸性ホスファターゼ、アルカリ性および基質、たとえば5-ブロモ-6-クロロ-3-インドリルホスフェート(BCIP);グリコシダーゼ、たとえばβ-ガラクトシダーゼ、β-グルクロニダーゼまたはβ-グルコシダーゼおよび基質、たとえば5-ブロモ-4-クロロ-3-インドリルβ-D-ガラクトピラノシド(X-gal)が挙げられ、別の酵素として、加水分解酵素、たとえばコリンエステラーゼおよびペプチダーゼ、オキシダーゼ、たとえばグルコースオキシダーゼおよびシトクロムオキシダーゼ、ならびに好適な基質が公知であるレダクーゼが挙げられる。
【0072】
酵素および化学発光を示すその適切な基質は、いくつかのアッセイに好適である。そうしたものとして、天然および組換え形態のルシフェラーゼおよびエクオリンがあるが、これに限定されるものではない。加えて、ホスファターゼ、グリコシダーゼおよびオキシダーゼの化学発光性基質、たとえば安定なジオキセタン、ルミノール、イソルミノールおよびアクリジニウムエステルを含むものも有用である。
【0073】
また、別の態様では、ビオチンなどのハプテンを標識として利用してもよい。ビオチンは、酵素系で検出可能なシグナルをさらに増幅する働きをすることができ、さらに単離を目的としてアフィニティークロマトグラフィーに使用されるタグとしても機能できるため有用である。検出には、ビオチンに対して親和性を有する酵素コンジュゲート、たとえばアビジン-HRPを使用する。その後ペルオキシダーゼ基質を加えて検出可能なシグナルを発生させる。
【0074】
ハプテンはさらに、ホルモン、天然および合成薬剤、汚染物質、アレルゲン、アフェクター分子、増殖因子、ケモカイン、サイトカイン、リンホカイン、アミノ酸、ペプチド、化学中間体、ヌクレオチドおよび同種のものも含む。
【0075】
ある態様では、標識として蛍光タンパク質を抗体にコンジュゲートしてもよい。蛍光タンパク質の例としては、緑色蛍光タンパク質(GFP)およびフィコビリンタンパク質ならびにこれらの誘導体が挙げられる。蛍光タンパク質、特にフィコビリンタンパク質は、タンデム色素標識した標識試薬を作製するのに特に有用である。こうしたタンデム色素には、より大きなストークスシフトを得ることを目的とした蛍光タンパク質およびフルオロフォアがあり、発光スペクトルが蛍光タンパク質の吸収スペクトルの波長からさらにシフトする。
【0076】
ある態様では、標識は放射性同位元素である。好適な放射性物質として、ヨウ素(121I、123I、125I、131I)、炭素(14C)、硫黄(35S)、トリチウム(3H)、インジウム(111In、112In、113mIn、115mIn)、テクネチウム(99Tc、99mTc)、タリウム(201Ti)、ガリウム(68Ga、67Ga)、パラジウム(103Pd)、モリブデン(99Mo)、キセノン(135Xe)、フッ素(18F)、153SM、177Lu、159Gd、149Pm、140La、175Yb、166Ho、90Y、47Sc、186Re、188Re、142Pr、105Rhおよび97Ruがあるが、これに限定されるものではない。
【0077】
いくつかの態様では、薬剤を抗体にコンジュゲートしてもよい。たとえば、scFvを含む抗体は、心血管疾患および/または急性冠症候群の治療のための薬剤にコンジュゲートしてもよい。
【0078】
ある特徴では、薬剤および他の分子が、部位特異的なコンジュゲーションにより抗体を標的としてもよい。たとえば、抗体は、コンジュゲーション反応のための遊離チオール基が得られるシステイン操作ドメイン(結合ユニットおよび/またはFcドメインに導入されたシステインを含む)を含んでもよい。ある態様では、特異的なコンジュゲーション部位を組み込むように抗体が操作される。
【0079】
抗体をコードする核酸分子
本開示は、抗体またはその抗原結合フラグメントをコードする核酸分子を提供する。本開示の一態様は、本明細書に具体的に記載される抗体のいずれかをコードする核酸分子を提供する。核酸分子は、抗体の重鎖および/または軽鎖の可変領域をコードし得る。
【0080】
いくつかの態様では、抗体は、FabまたはscFvであり、ここで、FabまたはscFvをコードする核酸部分は、VLドメインをコードするヌクレオチド配列およびVHをコードするヌクレオチド配列を含み、VLドメインをコードするヌクレオチド配列は、フレキシブルポリペプチドリンカーをコードするヌクレオチド配列によりVHドメインをコードするヌクレオチド配列に任意に連結される。
【0081】
さらなる態様は、本明細書に記載の核酸分子のいずれかで形質転換された宿主細胞を提供する。本開示の別の態様では、本明細書に記載の核酸分子を含むベクターを含む宿主細胞が提供される。一態様では、宿主細胞は、2つ以上のベクターを含み得る。
【0082】
本開示は、本開示のいずれかの抗体、ならびに抗体の軽鎖または重鎖のいずれかをコードする核酸分子を想定している。たとえば、本開示は、配列番号2、配列番号12、配列番号22、配列番号32、配列番号42、配列番号52、配列番号62、配列番号72、配列番号7、配列番号17、配列番号27、配列番号37、配列番号47、配列番号57、配列番号67、および配列番号77の1つまたは複数をコードするヌクレオチド配列を含む核酸分子を想定している。本開示は、さらなる領域(たとえば、Fcまたは修飾Fc)をさらに含む本開示のいずれかの抗体をコードする核酸分子をさらに想定している。いくつかの実施形態では、核酸分子は、配列番号1、配列番号6、配列番号11、配列番号16、配列番号21、配列番号26、配列番号31、配列番号36、配列番号41、配列番号46、配列番号51、配列番号56、配列番号61、配列番号66、配列番号71、または配列番号76の1つまたは複数から選択され得る。さらなる実施形態では、本開示は、配列番号1、配列番号6、配列番号11、配列番号16、配列番号21、配列番号26、配列番号31、配列番号36、配列番号41、配列番号46、配列番号51、配列番号56、配列番号61、配列番号66、配列番号71、または配列番号76の1つまたは複数から選択される核酸分子を含むベクターを提供する。
【0083】
抗体、Fab、およびscFvを産生するための方法
本開示は、本明細書に記載の抗体およびそのフラグメントを産生するための方法を提供する。いくつかの態様では、チカグレロルならびに本明細書に開示されるチカグレロルおよび/またはTAMの特定のエピトープを認識する抗体の抗原結合フラグメントは、当業者に公知の任意の技術によって生成され得る。たとえば、FabおよびF(ab’)2フラグメントは、パパインなどの酵素(Fabフラグメントを産生するため)またはペプシン(F(ab’)2フラグメントを産生するため)を用いて、免疫グロブリン分子のタンパク質分解的切断によって抗体から産生され得る。さらに、本明細書に記載のscFvおよびFabを含む抗体は、当該技術分野において公知の様々なファージディスプレイ方法を用いて生成され得る。
【0084】
概して、ファージディスプレイ方法では、機能的抗体ドメインが、それらをコードするポリヌクレオチド配列を保有するファージ粒子の表面上に提示される。特に、VHおよびVLドメインをコードするDNA配列は、動物cDNAライブラリー(たとえば、リンパ系組織のヒトまたはマウスcDNAライブラリー)から増幅される。VHおよびVLドメインをコードするDNAは、PCRによってscFvリンカーと一緒に組み換えられ、ファージミドベクター中にクローニングされる。ベクターは、大腸菌(E.coli)中にエレクトロポレーションされ、大腸菌(E.coli)は、ヘルパーファージに感染する。これらの方法に使用されるファージは、fdを含む繊維状ファージであってもよく、M13およびVHおよびVLドメインは、ファージ遺伝子IIIまたは遺伝子VIIIのいずれかに組み換えにより融合され得る。チカグレロルおよび/またはTAMに結合する抗原結合ドメインを発現するファージは、抗原を用いて、たとえば、標識された抗原あるいは固体表面またはビーズに結合または捕捉された抗原を用いて選択または同定され得る。同様に、チカグレロルおよび/またはTAMに加えてまたはそれ以外に抗原/ハプテンに結合する結合ドメインが、除外(deselection)のために同定され得る。本発明の抗体を作製するのに使用され得るファージディスプレイ方法の例としては、Brinkman et al.,1995,J.Immunol.Methods 182:41-50;Ames et al.,1995,J.Immunol.Methods 184:177-186;Kettleborough et al.,1994,Eur.J.Immunol.24:952-958;Persic et al.,1997,Gene 187:9-18;Burton et al.,1994,Advances in Immunology 57:191-280;PCT出願番号PCT/GB91/O1 134号明細書;PCT公開番号国際公開第90/02809号パンフレット、国際公開第91/10737号パンフレット、国際公開第92/01047号パンフレット、国際公開第92/18619号パンフレット、国際公開第93/11236号パンフレット、国際公開第95/15982号パンフレット、国際公開第95/20401号パンフレット、および国際公開第97/13844号パンフレット;および米国特許第5,698,426号明細書、同第5,223,409号明細書、同第5,403,484号明細書、同第5,580,717号明細書、同第5,427,908号明細書、同第5,750,753号明細書、同第5,821,047号明細書、同第5,571,698号明細書、同第5,427,908号明細書、同第5,516,637号明細書、同第5,780,225号明細書、同第5,658,727号明細書、同第5,733,743号明細書および同第5,969,108号明細書に開示されるものが挙げられ;これらの文献はそれぞれ、全体が参照により本明細書に援用される。
【0085】
上記の参照文献に記載されるように、ファージの選択後、ファージに由来する領域をコードする抗体は、ヒト抗体を含む全抗体、または任意の他の所望の抗原結合フラグメント(scFvおよびFab)を生成するために、単離され、使用され、たとえば、後述されるような、哺乳類細胞、昆虫細胞、植物細胞、酵母、および細菌を含む任意の所望の宿主において発現され得る。Fab、Fab’およびF(ab’)2フラグメントを組み換えにより生成するための技術はまた、PCT公開番号国際公開第92/22324号パンフレット;Mullinax et al.,1992,BioTechniques 12(6):864-869;Sawai et al.,1995,AJRI 34:26-34;およびBetter et al.,1988,Science 240:1041-1043(前記参照文献は、全体が参照により援用される)に開示されるものなど、当該技術分野において公知の方法を用いて利用され得る。
【0086】
ある態様では、本明細書に開示される核酸を発現コンストラクトの1つまたは複数の調節ヌクレオチド配列に作動可能に連結してもよい。抗体の軽鎖および重鎖をコードする核酸配列は、任意の配向(たとえば、軽鎖が重鎖の前またはその逆)で同じ発現ベクターにクローニングしてもよく、あるいは2つの異なるベクターにクローニングしてもよい。1つのベクターを用いて発現を行う場合、2つのコーディング遺伝子は、それ自体の遺伝子エレメント(たとえば、プロモーター、RBS、リーダー、停止、ポリAなど)を有していてもよく、あるいは1セットの遺伝子エレメントでクローニングしてもよいが、シストロンエレメントに連結する。調節ヌクレオチド配列は一般に、発現に使用される宿主細胞に適切なものとする。種々の宿主細胞に適切な発現ベクターおよび好適な調節配列の多くの種類が当該技術分野において公知である。典型的には、前記1つまたは複数の調節ヌクレオチド配列として、プロモーター配列、リーダー配列またはシグナル配列、リボソーム結合部位、転写開始および終結配列、翻訳開始配列および終結配列、ならびにエンハンサーまたはアクチベーター配列を挙げることができるが、これに限定されるものではない。本開示は、当該技術分野において公知の構成的プロモーターまたは誘導性プロモーターを意図している。プロモーターは、天然プロモーターでも、あるいは2つ以上のプロモーターのエレメントを組み合わせたハイブリッドプロモーターでもよい。発現コンストラクトは細胞のエピソーム、たとえばプラスミド上に存在してもよく、あるいは発現コンストラクトを染色体に挿入してもよい。
【0087】
ある態様では、発現ベクターは、形質転換された宿主細胞の選択を可能にする選択可能なマーカー遺伝子を含む。選択可能なマーカー遺伝子は当該技術分野において周知であり、使用する宿主細胞によって異なる。ある態様では、本開示は、ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含み、かつ少なくとも1つの調節配列に作動可能に連結された発現ベクターに関する。調節配列は当該技術分野で知られており、コードされたポリペプチドの発現を誘導するように選択される。したがって、調節配列という用語は、プロモーター、エンハンサーおよび他の発現制御エレメントを含む。例示的かつ非限定的な調節配列については、Goeddel;Gene Expression Technology:Methods in Enzymology,Academic Press,San Diego,CA(1990)に記載される。発現ベクターの設計は、形質転換される宿主細胞の選択および/または発現が望まれるタンパク質の種類のような要因によって異なることがあることを理解すべきである。さらに、ベクターのコピー数、コピー数を制御する能力、およびベクターによりコードされた他の任意のタンパク質、たとえば抗生物質マーカーの発現も考慮すべきである。
【0088】
本開示の抗体を産生するための方法は、たとえば、抗体をコードする1つまたは2つ以上の発現ベクター(たとえば、重鎖および軽鎖またはその可変領域をコードする単一のベクター、または1つが重鎖をコードし、1つが軽鎖またはその可変領域をコードする2つのベクター)をトランスフェクトした宿主細胞を適切な条件下で培養して抗体の発現が起こるようにし得ることを含み得る。抗体を分泌させ、抗体を含有する細胞と培地との混合物から単離してもよい。あるいは、抗体を細胞質または膜画分に保持し、細胞を採取、溶解してタンパク質を単離してもよい。細胞培養物は、宿主細胞、培地および他の副産物を含む。細胞培養に好適な培地は当該技術分野において周知である。イオン交換クロマトグラフィー、ゲル濾過クロマトグラフィー、限外濾過、電気泳動、およびイムノアフィニティ精製を含む、タンパク質、抗体、およびその抗原結合抗体フラグメントを精製するための当該技術分野において公知の技術を用いて、抗体を細胞培養基、宿主細胞、または両方から単離してもよい。ある態様では、抗体は、溶解度を高め、精製を容易にし得る重鎖および軽鎖可変領域を含む抗体の抗原結合フラグメントとして作製される。
【0089】
クローン化遺伝子またはその一部を、原核細胞、真核細胞(酵母、トリ、昆虫または哺乳動物)あるいは両方の発現に好適なベクターにライゲートして組換え核酸を作製してもよい。組換えポリペプチドを産生する発現媒体には、プラスミドおよび他のベクターがある。たとえば、好適なベクターとして、原核細胞、たとえばE.コリ(E.coli)での発現用の下記の種類のプラスミド:pBR322由来のプラスミド、pEMBL由来のプラスミド、pEX由来のプラスミド、pBTac由来のプラスミドおよびpUC由来のプラスミドが挙げられる。ある態様では、哺乳動物発現ベクターは、細菌においてベクターを伝播しやすくする原核生物配列および真核細胞に発現する1つまたは複数の真核生物転写ユニットの両方を含む。pcDNAI/amp由来、pcDNAI/neo由来、pRc/CMV由来、pSV2gpt由来、pSV2neo由来、pSV2-dhfr由来、pTk2由来、pRSVneo由来、pMSG由来、pSVT7由来、pko-neo由来およびpHyg由来のベクターは、真核細胞のトランスフェクションに好適な哺乳動物発現ベクターの例である。これらのベクターの一部は、細菌プラスミド、たとえばpBR322由来の配列で修飾して、原核生物細胞および真核細胞の両方において複製および薬剤耐性選択を行いやすくする。あるいは、真核細胞におけるタンパク質の一過性発現には、ウイルス、たとえばウシパピローマウイルス(BPV-1)またはエプスタインバーウイルス(pHEBo、pREP由来およびp205)の誘導体を使用してもよい。プラスミドの調製および宿主生物の形質転換に使用される様々な方法は、当該技術分野において周知である。原核細胞および真核細胞の両方に好適な他の発現系の他、一般的な組換え手順については、Molecular Cloning A Laboratory Manual,2nd Ed.,ed.by Sambrook,Fritsch and Maniatis(Cold Spring Harbor Laboratory Press,1989)Chapters 16 and 17を参照されたい。場合によっては、組換えポリペプチドを、バキュロウイルス発現系の使用により発現させると望ましい場合がある。そうしたバキュロウイルス発現系の例として、pVL由来のベクター(pVL1392、pVL1393およびpVL941など)、pAcUW由来のベクター(pAcUW1など)、およびpBlueBac由来のベクター(β-galを含むpBlueBac III)が挙げられる。
【0090】
融合遺伝子を作製するための技術はよく知られている。基本的に、異なるポリペプチド/抗体配列をコードする様々な核酸フラグメントの連結は、ライゲーションのための平滑末端または付着末端、適切な末端を与える制限酵素消化、必要に応じて付着末端の平滑化、望ましくない連結を回避するためのアルカリホスファターゼ処理、および酵素的ライゲーションを利用して従来の技術により行われる。別の態様では、融合遺伝子は、自動DNA合成装置を含む従来の技術により合成してもよい。あるいは、アンカープライマーを用いて遺伝子フラグメントのPCR増幅を行ってもよく、2つの連続した核酸フラグメント間に相補的オーバーハングを形成し、その後これをアニールしてキメラ遺伝子配列を得てもよい(たとえば、Current Protocols in Molecular Biology,eds.Ausubel et al.,John Wiley&Sons:1992を参照されたい)。
【0091】
いくつかの態様では、本明細書に記載される核酸のいずれかを発現する発現ベクターを使用して宿主細胞に抗体を発現させてもよい。たとえば、抗体は、細菌細胞、たとえばE.コリ(E.coli)、昆虫細胞(たとえば、バキュロウイルス発現系を使用)、酵母または哺乳動物細胞に発現させてもよい。他の好適な宿主細胞も当業者に知られている。
【0092】
従来の技術により発現ベクターを宿主細胞に移動したら、次いで従来の技術によりトランスフェクト細胞を培養して抗体を産生させる。このため、本開示は、抗体またはそのフラグメントをコードし、異種プロモーターに作動可能に連結されたポリヌクレオチドを含む宿主細胞を含む。ある態様では、全抗体の発現のため、重鎖および軽鎖および/または重鎖および軽鎖可変領域の両方を宿主細胞に(同一または異なるベクターから)共発現させてもよい。ある態様では、抗体の重鎖および軽鎖の両方を単一のプロモーターから発現させる。ある態様では、抗体の重鎖および軽鎖を複数のプロモーターから発現させる。ある態様では、抗体の重鎖および軽鎖は単一のベクターにコードされる。ある態様では、抗体の重鎖および軽鎖は複数のベクターにコードされる。
【0093】
組換え抗体の発現用の宿主として利用可能な哺乳動物細胞株は当該技術分野において周知であり、アメリカンタイプカルチャーコレクション(ATCC)から入手できる多くの不死化細胞株、以下に限定されるものではないが、チャイニーズハムスターの卵巣(CHO)細胞、HeLa細胞、ベビーハムスター腎臓(BHK)細胞、サル腎細胞(COS)、ヒト肝細胞癌細胞(たとえば、Hep G2)、ヒト腎臓上皮293細胞、およびいくつかの他の細胞株がある。各宿主細胞は、タンパク質および遺伝子産物の翻訳後プロセシングおよび修飾に特徴的かつ特異的なメカニズムを有する。適切な細胞株または宿主系を選択すれば、発現される抗体またはその一部の正しい修飾およびプロセシングを確実なものにすることができる。この目的のため、一次転写物の適切なプロセシング、遺伝子産物のグリコシル化およびリン酸化のための細胞機構を有する真核宿主細胞を使用してもよい。こうした哺乳動物宿主細胞としては、CHO細胞、VERY細胞、BHK細胞、Hela細胞、COS細胞、MDCK細胞、293細胞、3T3細胞、W138細胞、BT483細胞、Hs578T細胞、HTB2細胞、BT2O細胞およびT47D細胞、NS0細胞(機能的免疫グロブリン鎖を内因性にまったく産生しないマウス骨髄腫細胞株)、SP20細胞、CRL7O3O細胞およびHsS78Bst細胞があるが、これに限定されるものではない。一態様では、ヒトリンパ球の不死化により開発されたヒト細胞株を使用して組換え技術によりモノクローナル抗体を産生させてもよい。一態様では、ヒト細胞株PER.C6.(Crucell,Netherlands)を使用して組換え技術によりモノクローナル抗体を産生してもよい。
【0094】
組換え抗体の発現用の宿主として使用してもよい別の細胞株には、昆虫細胞(たとえばSf21/Sf9、トリコプルシア・ニ(Trichoplusia ni)Bti-Tn5b1-4)または酵母細胞(たとえばS.セレビシエ(S.cerevisiae)、ピキア(Pichia)、米国特許第7,326,681号明細書;など)、植物細胞(米国特許出願公開第20080066200号明細書);およびニワトリ細胞(国際公開第2008142124号パンフレット)があるが、これに限定されるものではない。
【0095】
ある態様では、本開示の抗体は細胞株に安定発現させる。安定発現は、組換えタンパク質、抗体およびその抗原結合フラグメントを長期間高い収率で産生するために使用してもよい。たとえば、抗体分子を安定発現する細胞株を作製してもよい。発現制御エレメント(たとえば、プロモーター、エンハンサー、転写ターミネーター、ポリアデニル化部位など)および選択可能なマーカー遺伝子を含む適切に設計されたベクターで宿主細胞を形質転換してもよい。外来DNAの導入後、細胞を濃縮培地で1~2日間増殖させてから、選択培地に切り換えてもよい。組換えプラスミドの選択可能なマーカーは、選択に対する耐性を付与し、染色体にプラスミドを安定に組み込んだ細胞を増殖させて細胞増殖巣を形成させ、次にこれをクローニングにし、細胞株として増殖させてもよい。高収率で安定な細胞株を作製するための方法は当該技術分野において周知であり、試薬は一般に市販されている。
【0096】
ある態様では、本開示の抗体を細胞株に一過性に発現させる。一過性トランスフェクションは、細胞に導入された核酸がその細胞のゲノムまたは染色体DNAに組み込まれないプロセスである。実際、核酸は細胞内に染色体外エレメント、たとえばエピソームとして維持される。エピソームの核酸の転写プロセスは影響を受けず、エピソームの核酸によりコードされたタンパク質が産生される。
【0097】
細胞株は、安定なトランスフェクションあるいは一過性トランスフェクションを問わず、細胞培養基にモノクローナル抗体の発現および産生につながる当該技術分野において周知の条件で維持される。ある態様では、哺乳動物細胞培養基は、たとえば、DMEMまたはHam’s F12を含む市販されている培地(media formulation)に基づく。他の態様では、細胞増殖および生物学的タンパク質発現の両方の増加を支援するように細胞培養基を改変する。本明細書で使用する場合、「細胞培養基」、「培養基」および「培地(medium formulation)」という用語は、多細胞生物または組織の外側の人工的なインビトロ環境で細胞を維持、成長、伝播または増殖するための栄養液をいう。細胞培養基は、たとえば、細胞増殖を促進するように処方された細胞培養増殖培地、または組換えタンパク質の産生を促進するように処方された細胞培養産生培地を含む特定の細胞培養用途に最適化してもよい。栄養素、成分および要素という用語は、本明細書において同義で使われ、細胞培養基を構成する成分をいう。
【0098】
分子が産生されたら、分子を免疫グロブリン分子またはそのフラグメントを精製するための当該技術分野において公知の任意の方法により、たとえば、クロマトグラフィー(たとえば、イオン交換クロマトグラフィー、親和性クロマトグラフィー(特に特異的な抗原プロテインAまたはプロテインGに対する親和性による)、およびサイズカラムクロマトグラフィー)、遠心分離、溶解度差、またはタンパク質、抗体、および/または抗体フラグメントの精製のための他の任意の標準的技術により精製してもよい。さらに、本開示の分子またはそのフラグメントは、上述あるいはそれ以外の当該技術分野において公知の異種ポリペプチド配列(本明細書で、ヒスチジンタグなどの「タグ」という)と融合して精製しやすくしてもよい。
【0099】
組換え技術を用いる場合、分子は、細胞内のペリプラズムに産生させても、あるいは培地に直接分泌させてもよい。分子を細胞内に産生させる場合、第1のステップとして、たとえば、遠心分離または限外濾過により、宿主細胞または溶解フラグメントを問わず、微粒子状の破片を除去する。Carter et al.,Bio/Technology,10:163-167(1992)には、E.コリ(E.coli)のペリプラズムに分泌される抗体を単離するための手順が記載されている。分子を培地に分泌させる場合、市販されているタンパク質濃縮フィルター、たとえば、AmiconまたはMillipore Pellicon限外濾過装置を用いて、そうした発現系の上清を最初に濃縮するのが一般的である。プロテアーゼ阻害剤、たとえばPMSFを前述のステップのいずれかに含めてタンパク質分解を阻害してもよく、抗生物質を含めて外来汚染物質の増殖を防止してもよい。
【0100】
細胞から調製された組成物は、たとえば、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析および/またはアフィニティークロマトグラフィーを単独あるいは他の精製ステップと組み合わせて精製してもよい。プロテインAの親和性リガンドとしての適合性は、分子に任意の免疫グロブリンFcドメインが存在する場合、その種およびアイソタイプに依存し、その適合性は当業者に理解されるであろう。親和性リガンドが結合するマトリックスは、ほとんどの場合、アガロースであるが、他のマトリックスも利用できる。機械的に安定なマトリックス、たとえばコントロールドポアガラスまたはポリ(スチレンジビニル)ベンゼンを用いると、アガロースで達成できるよりも流速を速くし処理時間を短縮することができる。回収される分子に応じてタンパク質精製の他の技術、たとえばイオン交換カラムによる分画、エタノール沈殿、逆相HPLC、シリカクロマトグラフィー、ヘパリンクロマトグラフィー、アニオンまたはカチオン交換樹脂(ポリアスパラギン酸カラムなど)を用いたセファロースクロマトグラフィー、クロマトフォーカシング、SDS-PAGEおよび硫酸アンモニウム沈殿も利用することができる。
【0101】
任意の予備精製ステップ後、目的の分子および汚染物質を含む混合物は、pH約2.5~4.5の溶出緩衝液を用いて低pH疎水性相互作用クロマトグラフィーに付し、低塩濃度(たとえば、約0~0.25M塩)で行ってもよい。
【0102】
抗体は、たとえば、上記および/または実施例に記載の技術の任意の1つまたは組み合わせを用いて作製および精製してもよい。どのように抗体を精製するかにかかわらず、本開示の抗体の機能的結合を確認するため、結合アッセイ(精製の前および/または後)を行ってもよい。たとえば、二重ELISAアッセイを使用してもよい。いくつかの態様では、第1の抗原(たとえば、チカグレロルまたはその競合品)をウェルにコートし、この抗原に結合すると、検出に備えて抗体が固定化される。
【0103】
医薬製剤
ある態様では、本開示は医薬組成物を提供する。こうした医薬組成物は、抗体をコードする核酸分子を含む組成物であってもよい。また、こうした医薬組成物は、抗体または抗体の組み合わせと、薬学的に許容される賦形剤とを含む組成物であってもよい。ある態様では、本開示の医薬組成物は薬物として使用される。
【0104】
ある態様では、抗体または抗体の組み合わせ(または抗体または抗体の組み合わせをコードする核酸分子)を薬学的に許容されるキャリア、賦形剤または安定剤と共に医薬組成物として製剤化してもよい。ある態様では、こうした医薬組成物は、当該技術分野において公知の方法を用いて任意の1つまたは複数の投与経路を介してヒトまたは非ヒト動物に投与するのに好適である。当業者であれば理解するように、経路および/または投与モードは所望の結果によって異なる。「薬学的に許容されるキャリア」という用語は、活性成分の生物活性の有効性を阻害しない1種または複数種の無毒性材料を意味する。こうした調製物は通常、塩、緩衝剤、防腐剤、相性のよいキャリアおよび任意に他の治療薬を含んでもよい。こうした薬学的に許容される調製物は、相性のよい固体もしくは液体充填剤、希釈液またはヒトへの投与に好適なカプセル化材料をさらに含んでもよい。本明細書に記載の製剤に利用してもよい他の意図しているキャリア、賦形剤および/または添加剤には、たとえば、着香剤、抗菌剤、甘味料、酸化防止剤、帯電防止剤、脂質、タンパク質賦形剤、たとえば血清アルブミン、ゼラチン、カゼイン、塩形成対イオン、たとえばナトリウムおよび同種のものがある。これらおよび本明細書に記載の製剤に使用するのに好適な別の公知の薬学的キャリア、賦形剤および/または添加剤については、たとえば、「Remington:The Science&Practice of Pharmacy」、21st ed.,Lippincott Williams&Wilkins,(2005)、および「Physician’s Desk Reference」、60th ed.,Medical Economics,Montvale,N.J.(2005)に記載されているように当該技術分野において公知である。所望または要求される投与モード、溶解性および/または安定性に好適な薬学的に許容されるキャリアを選択すればよい。
【0105】
本明細書に記載の製剤は、所望の投与に適切なw/vが得られる濃度で有効剤(たとえば、FabまたはscFvなどの抗体または抗体フラグメント)を含む。ある態様では、有効剤は、約1mg/ml~約200mg/ml、約1mg/ml~約100mg/ml、約1mg/ml~約50mg/mlまたは約1mg/ml~約25mg/mlの濃度で製剤に存在する。ある態様では、有効剤は約25mg/mlの濃度で存在する。ある態様では、製剤における有効剤の濃度は、約0.1~約100重量%の範囲であってもよい。ある態様では、有効剤の濃度は、0.003~1.0モルの範囲である。
【0106】
一態様では、本開示の製剤は、エンドトキシンおよび/または関連する発熱性物質を実質的に含まないパイロジェンフリー製剤である。エンドトキシンには、微生物内部に閉じ込められているトキシンがあり、微生物が破壊されるかまたは死んだときにのみ放出される。発熱性物質には、細菌および他の微生物の外膜由来の、発熱を引き起こす耐熱性物質(糖タンパク質)がある。これらの物質はどちらも、ヒトに投与される場合、発熱、低血圧およびショックを引き起こす恐れがある。有害作用の可能性があるため、少量のエンドトキシンでも静脈内投与される医薬品溶液から除去しなければならない。食品医薬品局(「FDA」)は、静脈内薬剤投与の場合、1回につき体重1キログラム当たり1回1時間以内に5エンドトキシン単位(EU)の上限を設定している(The United States Pharmacopeial Convention,Pharmacopeial Forum 26(1):223(2000))。ある特定の態様では、組成物におけるエンドトキシンおよび発熱性物質のレベルは10EU/mg未満、または5EU/mg未満、または1EU/mg未満、または0.1EU/mg未満、または0.01EU/mg未満、または0.001EU/mg未満である。
【0107】
本開示の製剤は、インビボ投与に使用する場合、無菌にすべきである。本開示の製剤は、無菌化濾過、放射線などを含む様々な滅菌方法により滅菌することができる。一態様では、滅菌済0.22ミクロンフィルターで製剤を濾過滅菌する。注射用無菌組成物は、「Remington:The Science&Practice of Pharmacy」、21st ed.,Lippincott Williams&Wilkins,(2005)に記載されているような従来の医療慣行に従い、製剤化してもよい。
【0108】
本開示の治療用組成物は、経口投与、経鼻投与、経肺投与、局所(頬粘膜および舌下など)投与、直腸投与、経膣投与および/または非経口投与など特定の投与経路用に製剤化してもよい。「非経口投与」および「非経口投与する」という語句は、本明細書で使用する場合、経腸投与および局所投与以外の通常注射による投与モードをいい、以下に限定されるものではないが、静脈内、筋肉内、動脈内、髄膜内、嚢内、眼窩内、心臓内、皮内、腹腔内、経気管、皮下、表皮下、関節内、嚢下、くも膜下、髄腔内、硬膜外および胸骨内の注射および注入がある。局所投与または経皮投与に好適な本開示の製剤には、散剤、スプレー剤、軟膏剤、ペースト剤、クリーム剤、ローション剤、ゲル剤、溶液剤、パッチ剤および吸入剤がある。抗体は、滅菌条件下で薬学的に許容されるキャリア、および必要とされる場合がある任意の防腐剤、緩衝液または噴霧剤と混合してもよい(米国特許第7,378,110号明細書;同第7,258,873号明細書;同第7,135,180号明細書;米国特許出願公開第2004-0042972号明細書;および同第2004-0042971号明細書)。
【0109】
製剤は、単位剤形で提供すると都合がよいことがあり、薬学の技術分野において公知の任意の方法により調製することができる。本開示の医薬組成物中の活性成分の実際の投薬量レベルは、個々の患者に毒性がなく、患者、組成物および投与モードに求められる治療反応を達成するのに効果的な活性成分の量(たとえば、「治療有効量」)を得られるように変化させてもよい。選択される投与量レベルは、利用する特定の組成物の活性、投与経路、投与時間、利用している特定の化合物の排泄速度、処置の期間、他の薬剤、利用する特定の組成物と組み合わせて使用される化合物および/または材料、処置されている患者の年齢、性別、体重、状態、一般的な健康状態および既往歴、および医療技術分野でよく知られている同様の因子など種々の薬物動態学的因子によって異なる。好適な投与量は、約0.0001~約100mg/kg体重以上、たとえば約0.1mg/kg体重、1mg/kg体重、10mg/kg体重または50mg/kg体重の範囲であってもよく、約1~約10mg/kg体重が好適である。
【0110】
本開示は同様に、診断および研究用途に好適な製剤を製造することも意図していることに留意されたい。こうした製剤の有効剤の濃度の他、賦形剤および/または発熱性物質の有無は、個々の用途および使用目的に基づき選択することができる。
【0111】
使用
本明細書に開示される抗体は、血小板活性化、凝集および脱顆粒の阻害剤、血小板脱凝集の促進剤、および抗血栓剤の活性を中和するための、併用療法を含む治療方法に有用である。このため、本明細書に記載の抗体は、チカグレロルの投与(併用方法(companion method)を含む)に関連するいくつかの用途があり、チカグレロルおよび/またはチカグレロルの1つまたは複数の代謝産物の効果を中和するのに好適に有用である。このような方法では、抗体は、任意に可逆的に、チカグレロルの活性を低下させ、中和し、なくし、または阻害し、チカグレロル投与に関連し、および/またはチカグレロルを含む治療から生じるいくつもの作用、障害および/または症状を治療または予防することができる。
【0112】
抗体は、たとえば、不安定狭心症、血栓性脳卒中または塞栓性脳卒中などの、アテローム性動脈硬化症の主要な動脈血栓性合併症、一過性脳虚血発作、末梢血管疾患、血栓溶解を伴うかまたは伴わない心筋梗塞、冠動脈血管形成術(PTCA)、動脈内膜切除術、ステント留置術、冠動脈および他の血管移植手術を含む、血管形成などのアテローム性動脈硬化症への介入に起因する動脈合併症(arterial complication)、事故による外傷または手術による外傷、皮膚および筋肉弁を含む再建手術の後の組織サルベージなどの手術の損傷または機械的損傷の血栓性合併症、播種性血管内凝固などのびまん性血栓症/血小板消費構成要素を伴う病態、血栓性血小板減少性紫斑病、溶血性尿毒症症候群、敗血症の血栓性合併症、成人呼吸窮迫症候群、抗リン脂質抗体症候群、ヘパリン起因性血小板減少症および子癇前症/子癇、または深部静脈血栓症、静脈閉塞性疾患などの静脈血栓症、血小板血症を含む骨髄増殖性疾患、鎌状赤血球病などの血液疾患を含む、チカグレロル(BRILINTA)が治療可能な、および/または適応とされる(treatable and/or indicated for ticagrelor)適応症について、治療をされているか、または治療または予防の必要がある患者;あるいは心肺バイパスおよび膜型人工肺などのインビボで機械的に誘発される血小板活性化の予防(微小血栓の予防)、血液製剤、たとえば濃縮血小板の保存時の使用、または腎臓透析および血漿交換などにおけるシャント閉塞などの機械的に誘発されるインビトロの血小板活性化、脈管炎、動脈炎、糸球体腎炎、炎症性腸疾患および臓器移植拒絶などの、血管損傷/炎症に続発する血栓症、片頭痛などの病態の予防中の患者に投与され得る。
【0113】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される抗体は、チカグレロルを含む治療を受けているかまたは受けた患者、および冠状動脈バイパス移植(CABG)、心臓胸郭部手術、縦隔再検査(mediastinal re-exploration)、術後脳卒中、機械的人工換気、集中治療室での長期入院、緊急の心臓以外の手術、たとえば、神経学的または眼科的手術、脊髄手術、頭蓋内手術、眼窩手術、整形外科手術、腎摘出術、半結腸切除術などに関連する出血または潜在的出血の治療の必要がある患者、または今後治療が必要になる患者に投与され得る。したがって、本明細書に提供される方法は、チカグレロルとの併用治療として(同時に)、またはチカグレロル投与の(たとえば、数分、数時間、または数日)後の所定の期間内の抗体の投与を包含し得る。たとえば、いくつかの実施形態では、本方法は、チカグレロル投与の10~120分以内の、チカグレロルを投与された患者への抗体の投与を含み得る。いくつかの実施形態では、本方法は、チカグレロル投与の1~48時間以内の、チカグレロルを投与された患者への抗体の投与を含み得る。いくつかの実施形態では、抗体は、被験体からのチカグレロルおよび/またはその代謝産物の代謝および除去を可能にしないであろう時間内に、チカグレロルを投与された被験体に投与される。
【0114】
いくつかの実施形態では、本開示は、患者における(P2Y12)受容体に対する、チカグレロル、またはその活性代謝産物の影響を阻害する方法を提供する。
【0115】
いくつかの実施形態では、本開示は、患者におけるP2Y12受容体に対する、チカグレロル、またはその活性代謝産物の結合を阻害する方法を提供する。
【0116】
いくつかの実施形態では、本開示は、チカグレロルを投与された患者におけるADP誘導性血小板凝集を活性化する方法を提供する。
【0117】
実施例に例示されるものなどの、本開示の抗体はまた診断を目的として使用してもよい。たとえば、被検体におけるチカグレロルの血中量を決定またはスクリーニングするため、被検体の組織または細胞において1つまたは複数の標的剤(チカグレロルまたはその代謝産物)を検出してもよい。診断キットは、1つまたは複数の抗体、および抗体とチカグレロルまたはその代謝産物との反応がある場合にそれを知らせる検出系を含んでもよい。
【0118】
したがって、本開示は、治療用途、診断用途および研究用途を含む抗体の多くの用途を意図している。診断用途および研究用途はインビボでも、あるいはエキソビボでもよい。
【0119】
キット
本開示の別の態様はキットである。一態様では、キットは、上述の核酸、抗体、発現ベクターまたは宿主細胞の組成物または医薬組成物のいずれか、および適切な使用または投与を指示する説明書またはラベルを含む。任意に、キットは、1つまたは複数の容器および/もしくはシリンジ、または送達もしくは使用を容易にする他の装置をさらに含んでもよい。本開示は、研究アッセイ、診断アッセイを行うための、および/または治療有効量の投与を行うための要素の全サブセットまたは任意のサブセットがキットに入れられていてもよいことを意図している。同様に、キットは、たとえば本開示の抗体をコードする核酸を好適な条件下で発現する宿主細胞を培養して、抗体を作製するための説明書を含んでもよい。別の例として、本開示の抗体の治療投与用のキットは、抗体の医薬製剤を含む溶液または抗体の凍結乾燥調製物と、組成物の投与を必要とする患者に組成物を投与するための説明書および/または凍結乾燥物を再溶解するための説明書とを含んでもよい。特定の実施形態では、キットは、被検体への投与に適した製剤(たとえば、BRILINTA(商標)、BRILIQUE(商標))中でチカグレロルをさらに含む。このような実施形態では、キットは、抗体、チカグレロル、または抗体およびチカグレロルの両方による治療を必要とする患者への、抗体およびチカグレロル製剤の両方の投与についての説明書をさらに含み得る。
【0120】
本開示はまた、パッケージ化され、ラベルが付けられた最終医薬製品を包含する。この製品は、適切な入れ物または容器、たとえばガラスバイアルまたは密封された他の容器に適切な単位剤形を含む。非経口投与に好適な剤形の場合、活性成分、たとえば、上述の抗体、および/またはチカグレロル製剤は無菌であり、粒子を含まない溶液としての投与に好適である。ある態様では、製剤は注射可能な投与経路に好適である。いくつかの実施形態では、投与は皮下投与である。いくつかの実施形態では、投与は静脈内投与である。このため、ヒトまたは動物への注入または点滴を含む投与経路が考えられる。
【0121】
特定の態様では、本開示の製剤は滅菌液として単回投与バイアルに処方される。例示的容器には、バイアル、ビン、プレフィルドシリンジ、IVバッグ、ブリスターパック(1種または複数種の丸剤を含む)があるが、これに限定されるものではない。任意に、こうした容器には、医薬品または生物学的製剤の製造、使用または販売を規制する政府機関により定められた形式の注意書が添付されていてもよく、注意書は、ヒトの診断および/または投与のための製造、使用または販売に関する政府機関による承認を反映する。
【0122】
どのような医薬製品であっても、包装材料および容器は、保管および輸送中の製品の安定性を保護するように設計される。さらに、本開示の製品は、使用説明書、または対象の疾患または障害を適切に予防または処置する方法について医師、技術者または患者に助言する他の情報資料を含む。言い換えれば、製品は、投与レジメン、以下に限定されるものではないが、実際の用量、モニタリング手順など、および他のモニタリング情報を指示または推奨する指示手段を含む。
【0123】
診断アッセイ用のキットは、本開示の抗体を含む溶液または抗体の凍結乾燥調製物を含んでもよく、抗体はチカグレロルおよび/またはその代謝産物の他、そうした抗体を検出するための試薬に特異的に結合する。抗体は、当該技術分野において公知であり、本明細書に記載の方法により標識してもよく、以下に限定されるものではないが、小分子蛍光タグなどの標識、ビオチン、GFPもしくは他の蛍光タンパク質などのタンパク質、またはhisもしくはmycなどのエピトープ配列がある。同様に、キットには、抗体の検出に使用される一次抗体を含めてもよい。一次抗体は、抗体上の配列または抗体を標識した標識、タグ、もしくはエピトープを標的としてもよい。一次抗体は検出のために標識されていてもよく、あるいは一次抗体は、さらなるシグナルの増幅が求められる場合、やはりキットに含まれていてもよい二次抗体により検出されてもよい。
【0124】
また、研究用途のキットも考慮されている。このようなキットは、たとえば、診断用途または治療用途向けのキットに類似していてもよいが、キットおよびその用途が研究目的のみに限定されることを明記するラベルをさらに含む。
【実施例
【0125】
略語のリスト
略語 説明
ACN アセトニトリル
br ブロード
BSA ウシ血清アルブミン
CV カラム体積
d 二重項
dd 二重項の二重項
DCM ジクロロメタン
DMF N,N-ジメチルホルムアミド
DMSO ジメチルスルホキシド
DPBS ダルベッコリン酸緩衝生理食塩水
EDC 1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド)EtOAc 酢酸エチル
FA ギ酸
HOAc 酢酸
HPLC 高速液体クロマトグラフィー
HRMS 高分解能質量分析法
HTS ハイスループットスクリーニング
HTRF(登録商標) 均一性時間分解蛍光法
HYFLO(登録商標) 炭酸ナトリウムで処理され、フラックス焼成された濾過助剤
Hz ヘルツ
J 結合定数
LC 液体クロマトグラフィー
m 多重項
MS 質量スペクトル
NMR 核磁気共鳴
OAc アセテート
Pd/C パラジウム炭素
pM ピコモル
PK/PD 薬物動態/薬力学
KF フッ化カリウム
q 四重項
r.t. 室温
s 一重項
sat. 飽和
scFv 単鎖可変フラグメント
t 三重項
TFA トリフルオロ酢酸
TEA トリエチルアミン
TBME tert-ブチルメチルエーテル
THF テトラヒドロフラン
TIM チカグレロル不活性代謝産物
TLC 薄層クロマトグラフィー
TR-FRET 時間分解蛍光共鳴エネルギー移動
【0126】
実施例1:ハプテンの調製および特性評価
この実施例は、本明細書に記載の例示的な抗体を生成するのに使用したいくつかのハプテンの合成、最適化、単離、および特性評価の方法を記載する。ハプテンは、チカグレロル、チカグレロル代謝産物(TAMおよびTIM)、ビオチン化チカグレロル、およびビオチン化アデノシンを含む(たとえば、非ビオチン化形態の化学的ハプテン構造については図2を参照されたい)。チカグレロルを、国際特許公報国際公開第2000/034283号パンフレット(Guile,et al.,2000)に記載されるように合成し、TAMを、国際特許公報国際公開第1999/005143号パンフレット(Guile,et al.,1999)に記載されるように合成し、これらの文献はそれぞれ、全体が参照により援用される。
【0127】
順相クロマトグラフィーを、Biotageシリカゲル40S、40M、12iまたはMerckシリカゲル60(0.063~0.200mm)を用いて行った。フラッシュ-クロマトグラフィーを、標準的なガラス-またはプラスチック-カラムのいずれかを用いてまたはBiotage Horizonシステムにおいて行った。化学シフトが、内部標準として溶媒を用いてppmで示される。NHおよびOHプロトンなどのヘテロ原子上のプロトンは、NMRで検出されたときのみ報告されるため、記載がない場合がある。
【0128】
実施例1.1:ビオチン化チカグレロル
N-(2-(((1S,2S,3S,4R)-4-(7-(((1R,2S)-2-(3,4-ジフルオロフェニル)シクロプロピル)アミノ)-5-(プロピルチオ)-3H-[1,2,3]トリアゾロ[4,5-d]ピリミジン-3-イル)-2,3-ジヒドロキシシクロペンチル)オキシ)エチル)-6-(6-(5-((3aS,4S,6aR)-2-オキソヘキサヒドロ-1H-チエノ[3,4-d]イミダゾール-4-イル)ペンタンアミド)ヘキサンアミド)ヘキサンアミド(1.1)
【化10】
(i)2-(((3aR,4S,6R,6aS)-6-(7-(((1R,2S)-2-(3,4-ジフルオロフェニル)シクロプロピル)アミノ)-5-(プロピルチオ)-3H-[1,2,3]トリアゾロ[4,5-d]ピリミジン-3-イル)-2,2-ジメチルテトラヒドロ-3aH-シクロペンタ[d][1,3]ジオキソール-4-イル)オキシ)エチルメタンスルホネート(1.a)の調製
【化11】
【0129】
メタンスルホニルクロリド(0.086mL、1.10mmol)を、0℃でDCM(5mL)中の2-(((3aR,4S,6R,6aS)-6-(7-(((1R,2S)-2-(3,4-ジフルオロフェニル)シクロプロピル)アミノ)-5-(プロピルチオ)-3H-[1,2,3]トリアゾロ[4,5-d]ピリミジン-3-イル)-2,2-ジメチルテトラヒドロ-3aH-シクロペンタ[d][1,3]ジオキソール-4-イル)オキシ)エタノール(Springthorpe,B.et.al.Bioorg.Med.Chem.Lett.,2007,17,6013-6018を参照されたい)(0.563g、1.0mmol)およびTEA(0.209mL、1.50mmol)の溶液に滴下して加えた。混合物を3時間にわたって0℃~約5℃で撹拌した。反応混合物をDCM(30mL)で希釈し、水(5mL)で洗浄した。混合物を、相分離器に通すことによって乾燥させた。溶媒の蒸発およびトルエンからの同時蒸発により、表題化合物(1.a)(714mg、111%)が黄色の高粘度の油として得られ、それをさらに精製せずに使用した。
【0130】
1H NMR(400MHz、CDCl3)δ 1.02(dd,3H)、1.3-1.47(m,5H)、1.55(s,3H)、1.72(d,2H)、2.20(d,1H)、2.6-2.71(m,2H)、2.97(s,3H)、3-3.19(m,3H)、3.57-3.68(m,1H)、3.69-3.79(m,1H)、4.02(td,1H)、4.13-4.24(m,2H)、4.78(dd,1H)、5.13(td,1H)、5.57(s,1H)、6.50(s,1H)、7.03(s,1H)、7.07-7.16(m,2H).
【0131】
19F NMR(376MHz、CDCl3)δ -141.37(J=21.3)、-138.10(J=21.3).
【0132】
(ii)3-((3aS,4R,6S,6aR)-6-(2-アジドエトキシ)-2,2-ジメチルテトラヒドロ-3aH-シクロペンタ[d][1,3]ジオキソール-4-イル)-N-((1R,2S)-2-(3,4-ジフルオロフェニル)シクロプロピル)-5-(プロピルチオ)-3H-[1,2,3]トリアゾロ[4,5-d]ピリミジン-7-アミン(1.b)の調製
【化12】
DMF(7mL)中の、2-(((3aR,4S,6R,6aS)-6-(7-(((1R,2S)-2-(3,4-ジフルオロフェニル)シクロプロピル)アミノ)-5-(プロピルチオ)-3H-[1,2,3]トリアゾロ[4,5-d]ピリミジン-3-イル)-2,2-ジメチルテトラヒドロ-3aH-シクロペンタ[d][1,3]ジオキソール-4-イル)オキシ)エチルメタンスルホネート(1.a)(0.641g、1mmol)と、アジ化ナトリウム(0.070mL、2.00mmol)との混合物を、窒素雰囲気下で15.5時間にわたって60℃に加熱した。白色の沈殿物が形成された。水を加え(20mL)、生成物をTBME(100+40mL)で2回抽出した。有機相をNa2SO4上で乾燥させた。有機相を濾過し、溶媒を減圧下で除去した。残渣を、溶離剤としてヘプタン/EtOAc 1/1を用いた2×8cmのシリカカラムにおけるフラッシュクロマトグラフィー(ヘプタン/EtOAc 1/1を用いたTLC(Rf生成物=0.5))によって精製した。関連する画分の収集および溶媒の蒸発により、表題化合物(1.b)(514mg、87%)が透明の高粘度の油として得られた。
【0133】
1H NMR(400MHz、CDCl3)δ 1.00(s,3H)、1.33-1.42(m,5H)、1.59(s,3H)、1.73(d,2H)、2.17(s,1H)、2.68(t,2H)、2.96-3.17(m,3H)、3.19-3.33(m,2H)、3.52-3.63(m,1H)、3.72(ddd,1H)、4.03(td,1H)、4.79(dd,1H)、5.13(td,1H)、5.54(dd,1H)、6.43(s,1H)、6.96-7.23(m,3H).
【0134】
(iii)中間体3-((3aS,4R,6S,6aR)-6-(2-アミノエトキシ)-2,2-ジメチルテトラヒドロ-3aH-シクロペンタ[d][1,3]ジオキソール-4-イル)-N-((1R,2S)-2-(3,4-ジフルオロフェニル)シクロプロピル)-5-(プロピルチオ)-3H-[1,2,3]トリアゾロ[4,5-d]ピリミジン-7-アミン(1.c)の調製
【化13】
EtOH(99.5%)(2mL)中の3-((3aS,4R,6S,6aR)-6-(2-アジドエトキシ)-2,2-ジメチルテトラヒドロ-3aH-シクロペンタ[d][1,3]ジオキソール-4-イル)-N-((1R,2S)-2-(3,4-ジフルオロフェニル)シクロプロピル)-5-(プロピルチオ)-3H-[1,2,3]トリアゾロ[4,5-d]ピリミジン-7-アミン(1.b)(62.0mg、0.11mmol)を、Pd/C(5%のPd、50重量%のPd/C、22.46mg、5.28μmol)に加え、混合物を2時間にわたって大気圧で水素化した。反応混合物をHYFLO(登録商標)に通して濾過し、プラグをEtOH(99.5%)でさらにすすいだ。溶媒を減圧下で除去し、残渣をDCM(2×2mL)に再溶解させ、溶媒を減圧下で除去した。残渣を、溶離剤としてMeOH 95/5中のDCM/NH3(飽和)を用いた2×8cmのシリカカラムにおけるフラッシュクロマトグラフィーによって精製した。関連する画分の収集により、表題化合物(1.c)(41mg、69%)が得られた。
【0135】
1H NMR(400MHz、CDCl3)δ 0.98(m,3H)、1.28-1.46(m,7H)、1.54(s,3H)、1.62-1.81(m,2H)、2.15(s,1H)、2.48-2.81(m,4H)、3.07(tt、3H)、3.34-3.47(m,1H)、3.53(ddd,1H)、3.99(td,1H)、4.79(dd,1H)、5.12(td,1H)、5.52(dd,1H)、7.02(s,1H)、7.09(dt,2H)、7.23(s,1H).
【0136】
19F NMR(376MHz、CDCl3)δ -141.43(J=21.3)、-138.13(J=21.3).
【0137】
(iv)中間体(1S,2S,3S,5R)-3-(2-アミノエトキシ)-5-(7-(((1R,2S)-2-(3,4-ジフルオロフェニル)シクロプロピル)アミノ)-5-(プロピルチオ)-3H-[1,2,3]トリアゾロ[4,5-d]ピリミジン-3-イル)シクロペンタン-1,2-ジオール(1.d)の調製
【化14】
予め冷却された、氷/水浴温度で、TFA(8mL、103.84mmol)と水(0.88mL、48.85mmol)との混合物を、3-((3aS,4R,6S,6aR)-6-(2-アミノエトキシ)-2,2-ジメチルテトラヒドロ-3aH-シクロペンタ[d][1,3]ジオキソール-4-イル)-N-((1R,2S)-2-(3,4-ジフルオロフェニル)シクロプロピル)-5-(プロピルチオ)-3H-[1,2,3]トリアゾロ[4,5-d]ピリミジン-7-アミン(1.c)(340mg、0.61mmol)を含む予め冷却されたフラスコに加えた。反応混合物を0~5℃で1時間撹拌した。溶媒を減圧下で除去し、残渣をDCM(100mL)に溶解させ、NaHCO3(飽和、10mL)で洗浄した。塩水(5mL)を水相に加え、これをEtOAc(30mL)で抽出した。組み合わされた有機相をNa2SO4上で乾燥させた。濾過、続いて溶媒による蒸発により、粗生成物がオフホワイトの固体として得られた。化合物を、100mL/分の流量で20分間にわたって、H2O/ACN/NH3 95/5/0.2緩衝液中35~75%のACNの勾配を用いて、XBridge C18カラム(10μm 250×50 ID mm)における分取HPLCによって精製した。化合物を、298nmでUVによって検出した。ピーク画分を減圧下で蒸発乾固させた。残渣をDCMに溶解させ、相分離器に通して濾過した。減圧下における溶媒の除去により、表題化合物(1.d)(213mg、67.5%)が得られた。LC-MS m/z 522.3(M+H)+
【0138】
(v)化合物N-(2-(((1S,2S,3S,4R)-4-(7-(((1R,2S)-2-(3,4-ジフルオロフェニル)シクロプロピル)アミノ)-5-(プロピルチオ)-3H-[1,2,3]トリアゾロ[4,5-d]ピリミジン-3-イル)-2,3-ジヒドロキシシクロペンチル)オキシ)エチル)-6-(6-(5-((3aS,4S,6aR)-2-オキソヘキサヒドロ-1H-チエノ[3,4-d]イミダゾール-4-イル)ペンタンアミド)ヘキサンアミド)ヘキサンアミド.(1.1)の調製
2,5-ジオキソピロリジン-1-イル6-(6-(5-((3aS,4S,6aR)-2-オキソヘキサヒドロ-1H-チエノ[3,4-d]イミダゾール-4-イル)ペンタンアミド)ヘキサンアミド)ヘキサノエート(21.77mg、0.04mmol)を、乾燥DMF(1.0mL)中の(1S,2S,3S,5R)-3-(2-アミノエトキシ)-5-(7-(((1R,2S)-2-(3,4-ジフルオロフェニル)シクロプロピル)アミノ)-5-(プロピルチオ)-3H-[1,2,3]トリアゾロ[4,5-d]ピリミジン-3-イル)シクロペンタン-1,2-ジオール(20mg、0.04mmol)の溶液に加え、混合物を窒素雰囲気下に置き、室温で6時間撹拌した。溶媒を、40℃で、減圧下で除去した。化合物を、19mL/分の流量で20分間にわたって、H2O/ACN/FA 95/5/0.2緩衝液中20~60%のACNの勾配を用いたKromasil C18カラム(10μm 250×20 ID mm)における分取HPLCによって精製した。化合物を298nmでUVによって検出した。ピーク画分を収集し、濃縮し、凍結乾燥させたところ、表題化合物(1.1)(21.4mg、57.3%)が得られた。
【0139】
1H NMR(600MHz、DMSO):2つの回転異性体が存在する(比率5:1)、δ 0.81(t,3H)、1.15-1.64(m,20H)、2.03(ddd,7H)、2.12(ddd,1H)、2.57(d,1H)、2.59-2.67(m,1H)、2.77-2.89(m,2H)、2.93(dd,1H)、2.96-3.01(m,4H)、3.05-3.12(m,1H)、3.15(td,1H)、3.18-3.25(m,2H)、3.39-3.46(m,1H)、3.48(tt、1H)、3.7-3.76(m,1H)、3.92(s,1H)、4.08-4.14(m,1H)、4.30(dd,1H)、4.54(dd,1H)、4.95(q,1H)、5.06(s,1H)、5.13(d,1H)、6.35(s,1H)、6.42(s,1H)、7.07(d,1H)、7.31(ddt,2H)、7.71(dt,2H)、7.82(t,1H)、9.36(d,1H)における主回転異性体からのシグナル。δ 0.98(CH3)、8.95(ArNH)における副回転異性体からの選択されたシグナル。
【0140】
[C45H65F2N11O7S2]+についてのHRMS計算値:974.4556;実測値:974.4585(M+H)+
【0141】
実施例1.2:ビオチン化アデノシン
N-(((2R,3S,4R,5R)-5-(6-アミノ-9H-プリン-9-イル)-3,4-ジヒドロキシテトラヒドロフラン-2-イル)メチル)-6-(6-(5-((3aS,4S,6aR)-2-オキソヘキサヒドロ-1H-チエノ[3,4-d]イミダゾール-4-イル)ペンタンアミド)ヘキサンアミド)ヘキサンアミド(1.2)
【化15】
(i)N-(((3aR,4R,6R,6aR)-6-(6-アミノ-9H-プリン-9-イル)-2,2-ジメチルテトラヒドロフロ[3,4-d][1,3]ジオキソール-4-イル)メチル)-6-(6-(5-((3aS,4S,6aR)-2-オキソヘキサヒドロ-1H-チエノ[3,4-d]イミダゾール-4-イル)ペンタンアミド)ヘキサンアミド)ヘキサンアミド(1.e)の調製
【化16】
DMF(2mL)を、2,5-ジオキソピロリジン-1-イル6-(6-(5-((3aS,4S,6aR)-2-オキソヘキサヒドロ-1H-チエノ[3,4-d]イミダゾール-4-イル)ペンタンアミド)ヘキサンアミド)ヘキサノエート(55.6mg、0.10mmol)および9-((3aR,4R,6R,6aR)-6-(アミノメチル)-2,2-ジメチルテトラヒドロフロ[3,4-d][1,3]ジオキソール-4-イル)-9H-プリン-6-アミン(30mg、0.10mmol)に室温で加え(Austin,D.J.and Liu,F.,Tetrahedr.Lett.,2001,3153-3154を参照されたい)、反応混合物を窒素雰囲気下に置き、1時間45分間にわたって撹拌して、(1.e)を得た。その後、溶媒を減圧下で除去した。粗生成物をさらに精製せずに使用した。LC-MS m/z 759(M+H)+、757(M-H)-
【0142】
(ii)最終化合物N-(((2R,3S,4R,5R)-5-(6-アミノ-9H-プリン-9-イル)-3,4-ジヒドロキシテトラヒドロフラン-2-イル)メチル)-6-(6-(5-((3aS,4S,6aR)-2-オキソヘキサヒドロ-1H-チエノ[3,4-d]イミダゾール-4-イル)ペンタンアミド)ヘキサンアミド)ヘキサンアミド(1.2)の調製
TFA(1.8ml、23.36mmol)と水(0.2mL、11.10mmol)との混合物を、粗N-(((3aR,4R,6R,6aR)-6-(6-アミノ-9H-プリン-9-イル)-2,2-ジメチルテトラヒドロフロ[3,4-d][1,3]ジオキソール-4-イル)メチル)-6-(6-(5-((3aS,4S,6aR)-2-オキソヘキサヒドロ-1H-チエノ[3,4-d]イミダゾール-4-イル)ペンタンアミド)ヘキサンアミド)ヘキサンアミド(1.e)(76mg、0.1mmol)に加え、反応混合物を0℃で1時間25分間にわたって撹拌した。溶媒を減圧下で除去し、残渣をDMSOに溶解させた。化合物を、19mL/分の流量で20分間にわたってH2O/ACN/NH3 95/5/0.2緩衝液中5~45%のACNの勾配を用いたXBridge C18カラム(10μm 250×19 ID mm)における分取HPLCによって精製した。化合物を259nmでUVによって検出した。ピーク画分を濃縮し、凍結乾燥させたところ、表題化合物(1.2)(50mg、69.6%)が白色のふんわりした固体として得られた。
【0143】
1H NMR(600MHz、DMSO、40℃)δ 1.17-1.26(m,4H)、1.27-1.4(m,6H)、1.43-1.54(m,7H)、1.62(ddt,1H)、1.99-2.06(m,4H)、2.12(t,2H)、2.58(d,1H)、2.82(dt,1H)、2.96-3.05(m,4H)、3.05-3.14(m,1H)、3.36(dt,1H)、3.44(dt,1H)、3.96(dd,1H)、4.04(dd,1H)、4.11-4.15(m,1H)、4.29-4.33(m,1H)、4.67(dd,1H)、5.16(d,1H)、5.38(d,1H)、5.84(d,1H)、6.29(s,1H)、6.33(d,1H)、7.25(s,2H)、7.64(dt,2H)、8.11(t,1H)、8.16(s,1H)、8.31(s,1H).[C32H50N10O7S]+についてのHRMS計算値:719.3657;実測値:719.3667(M+H)+
【0144】
実施例2:抗チカグレロル/TAM抗体の単離および同定
この実施例は、チカグレロルおよびその代謝産物に対する抗体、ATPに対する構造的類似性を有し、アデノシンのようなコアを含む化合物の産生に使用され得る手法および技術を例示する(Springthorpe et al 2007 Bioorg Med Chem Lett.17:6013-6018)。チカグレロル、チカグレロル活性代謝産物(TAM)およびチカグレロル不活性代謝産物(TIM)の化学構造が、図2に示される。上述されるように、本明細書において開示され、生成される抗体は、チカグレロルおよびTAMに結合し、それを中和することができ、TIMに結合し得るが、アデノシンなどの他の構造的に関連する化合物に結合せず、または実質的に阻害しない。TIMに対する結合活性が、本明細書に開示される抗体の任意選択の特徴である一方、TIMが、典型的に、チカグレロル代謝産物の少ないまたはわずかな画分であるため、TIMに対する結合活性を示す抗体は、必要とされる抗体/解毒剤の用量に影響を与えることが予測されていない。
【0145】
共通のエピトープ、すなわち、チカグレロルおよびTAMの固有のR基(ジ-フルオロフェニル-シクロプロピルおよびチオプロピル置換基)を、それらの化合物に抗体結合特異性および選択性を与えるために標的化した。対象とするエピトープが、図2において破線で囲まれる。実施例1に記載されるハプテンを用いて、抗体エピトープに、ジ-フルオロフェニル-シクロプロピルおよびチオプロピル置換基を標的とさせた。実施例1に記載されるように、ビオチン化ハプテン(ビオチン化チカグレロルおよびビオチン化アデノシン)のためのリンカーをグリコール基に配置した。この手法は、非修飾ジ-フルオロフェニル-シクロプロピルおよびチオプロピル基、ビオチン化チカグレロル/TAMに対する結合特異性を有する抗体の産生を可能にし、また、アデノシンに結合する抗体ライブラリーのスクリーニングおよび除外を可能にした。
【0146】
公知の技術を用いて、ヒトscFvファージディスプレイライブラリーを用いて、scFv抗体を生成し、特に、参照により本明細書に援用されるLloyd et al 2009 PEDS 22:159-168に記載されるように、ビオチン化アデノシンに対する除外を伴うビオチン化チカグレロルに対する一連の反復する選択サイクルにおいて、特異的なscFvをライブラリーから単離した。ラウンド2およびラウンド3選択アウトプットからのいくつかの個々のクローンを選択し、scFvを細菌ペリプラズムにおいて発現し、3つの並行する生化学的アッセイにおいて特異性についてスクリーニングした。アッセイを、i)ビオチン化チカグレロルに対する結合(アッセイ1)、ii)ビオチン化アデノシンに対する結合(アッセイ2)およびiii)50倍過剰の非修飾チカグレロルの存在下におけるビオチン化チカグレロルに対する結合(アッセイ3)についてスクリーニングして、ビオチン化リンカーではなくチカグレロルに対する特異性を確認した。アッセイ1、2、および3を、同じ一般的な技術および手法を用いて行った。簡潔には、ビオチン化チカグレロルまたはビオチン化アデノシンに対する結合についての粗ペリプラズムscFvサンプルのHTSを、HTRF(登録商標)アッセイ技術を用いて行った。HTRF(登録商標)(均一性時間分解蛍光法)は、TR-FRET(時間分解蛍光共鳴エネルギー移動)の原理に基づいている。簡潔には、TR-FRETは、ドナーフルオロフォア(この場合、ユウロピウムクリプテート)からアクセプターフルオロフォア(この場合、XL665)へのエネルギーの移動を用いる。ドナーおよびアクセプターフルオロフォアが十分に近接(約10nm未満)である場合、ユウロピウムクリプテートドナー(337nm)の励起により、665nmで蛍光シグナルを発するXL665アクセプターへのエネルギーの移動が生じる。この技術を用いて、ドナーおよびアクセプターフルオロフォアを(直接または間接的に)特定の相互作用において各結合パートナーに結合することによって、生体分子の相互作用を感度良く(sensitively)測定することができる。ビオチン化チカグレロルに対するscFv結合(アッセイ1)のHTSフォーマットが、以下に表され、これは、ビオチン化チカグレロルおよびhisタグ化ペリプラズムscFvの両方に対する化学的タグの存在に依存する。
ユウロピウムクリプテートストレプトアビジン:ビオチン化チカグレロル:scFv-His:抗His-XL665
【0147】
黒色シャローウェル384ウェルアッセイプレート(Corning/Costar 3676)を用いて、10ulのアッセイ体積中にDPBS pH7.4(Gibco 14190-086)、KF(VWR 103444T)(0.4M)およびTween 20(Sigma P9416)(0.05%)を含む緩衝液中でアッセイを行った。5ulのビオチン化チカグレロル(30nMの最終濃度を得るために60nM)、2ulのペリプラズムscFvサンプル(20%の最終濃度)およびユウロピウムクリプテート標識ストレプトアビジン(CisBio 610SAKLB)(1.26nMの最終濃度を得るために4.2nM)およびXL665標識抗His抗体(CisBio 61HISXLB)(12nMの最終濃度を得るために40nM)の両方を含有する3ulの溶液の添加によって、アッセイを設定した。2ulのアッセイ緩衝液をペリプラズムscFvの代わりに加えたことを除いて上記のアッセイ構成要素の全てを含有する陰性結合対照ウェルを設定した。アッセイプレートを室温で4時間インキュベートしてから、サンプルが337nmで励起される標準的なHTRF読み取りプロトコルを用いて、Envisionプレートリーダーにおいて読み取り、時間分解蛍光発光を、620nmおよび665nMの両方で測定する。
【0148】
未加工の665nmおよび620nmカウントを、まず、665nm/620nmの比率値に換算し、その後、結果をデルタF(%)値で表した。デルタFを、下式に従って計算した。
デルタF(%)={((サンプル665/620比)-(陰性665/620比))/(陰性665/620比)}×100
【0149】
(陰性比(Negative ratio)を陰性結合対照ウェルから取得した)。100%を超えるデルタF値を与えるscFvを、このアッセイにおいてヒット(hit)として定義した。
【0150】
上記と同じプロトコルを用いて、ビオチン化アデノシンに対する結合についての粗ペリプラズムscFvサンプルのHTSを行った(最終アッセイ濃度30nM)。アッセイ2のフォーマットは、以下に記載されるように示され得る。
ユウロピウムクリプテートストレプトアビジン:ビオチン化アデノシン:scFv-His:抗His-XL665
【0151】
アッセイ3は、上記と同じプロトコルを用いて、HTSを行い、HTSは、過剰な遊離非修飾チカグレロルの存在下におけるビオチン化チカグレロルに対する減少した結合を示す粗ペリプラズムscFvサンプルを同定した。このプロトコルは、アッセイ3を50倍モル過剰の遊離非修飾チカグレロル(1500nM)の存在下で行った点でアッセイ1から変更された。
【0152】
ヒットを、ビオチン化チカグレロルに対する結合(アッセイ1においてデルタF>100%)、ビオチン化アデノシンに対する結合なし(アッセイ2においてデルタF<25%)および過剰な遊離非修飾チカグレロルの存在下におけるビオチン化チカグレロルに対する50%超減少した結合として定義した。アッセイ1および3からのデータの相関の例が、図3に示される。いくつかのscFvは、過剰な遊離非修飾チカグレロルの存在下における限られた阻害を示し、これは、それらが、チカグレロルおよびリンカーのいくつかの構成要素との結合相互作用を有していたことを示す。ビオチン化チカグレロルに対する結合が過剰な遊離非修飾チカグレロルの存在下で(>50%)阻害されたscFvのサブセットを同定した。scFvを、アッセイ1に対してアッセイ3において観察された結合の阻害%(50~80%、80~90%、>90%)に基づいて順位付け、ここで、90%超の阻害を示すscFv(TICA0072を含む)を、さらなる特性評価のために優先した。配列に固有のscFvヒットをFabに変換し、標準的な技術を用いてCHO細胞中で発現させた。
【0153】
Fab発現および精製
別個のHCおよびLC発現プラスミドを、Persic et al.1997によって記載される発現ベクターに基づいて、一過性トランスフェクションに使用した。ベクターを、EBV複製起点(OriP)を含むように修飾した。Fab(HC)ベクターは、定常領域1(CH1)およびヒンジ領域のみを含み、CH2およびCH3を除去した。HCおよびLC DNAを、製造業者の推奨に従って、150mMのNaClおよび25-kDaの線形PEIに加えた(Polysciences Europe,Germany 23966)。次に、DNA-PEI複合体を、懸濁培養に適合されたCHOK1細胞株(ECACC No:85051005)に由来するチャイニーズハムスターの卵巣野生型(CHO wt)細胞に加えた(Daramola O,et al 2014)。7日後、細胞を遠心分離によって収集し、上清を濾過した。Fabタンパク質を含有する細胞培養上清を、Aekta Purifier(GE Healthcare)を用いて5mL/分の流量で5mlのCaptureSelect IgG-CH1(Life Technologies,Carlsbad,USA)を備えたクロマトグラフィーカラムに直接充填した。カラムを平衡化し、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)pH7.2で洗浄し、樹脂製造業者の説明書に従って、20mMのクエン酸ナトリウム、150mMの塩化ナトリウム、pH3.5(CaptureSelect IgG-CH1)で溶離した。溶離されたFabをpH5.5に調整し、分析前に濾過した(0.22μm Steriflip,Millipore EMD,Bethdesa,USA)。タンパク質濃度を、DU520 UV/vis分光光度計(Beckman Coulter,Brea,USA)を用いて280nmにおける吸光度によって決定した。サンプル純度を、TSKgel G3000SWxlカラム(Tosoh Bioscience,Tokyo,Japan)および1.0ml/分で動作する1100 HPLCシステム(Agilent Technologies,Santa Clara,USA)を用いて決定した。
【0154】
実施例3:抗チカグレロル/TAM Fab
チカグレロルに対するいくらかの構造類似性を有する分子を同定するために、市販の薬剤を含有する構造データベース(「DrugsDB」、参照により本明細書に援用されるOprea T.I et al 2011 Mol.Inform.30(2-3),100-111)を調べた。同定されたら、これらの構造的に類似した分子を用いて、アデノシンおよびそのリン酸化形態(たとえば、ADPおよびATP)を超えるFabの結合特異性を試験した。データベースを、チカグレロルx線およびNMR構造に基づいて、チカグレロルに対する2Dフィンガープリント類似性、3D形状、および静電的類似性を有する分子について調べた。このインシリコ分析から、6つの潜在的なコメディケーション(co-medication)を含む12の化合物のパネルを選択した。これらの化合物の構造が、図4に示される。
【0155】
特異性を、競合結合アッセイフォーマットにおいて調べ、ここで、各試験化合物が、関連するFabとのビオチン化チカグレロルの相互作用を競合的に阻害する能力等を試験した。HTRF(登録商標)競合アッセイフォーマットを、以下に記載されるように使用し、ここで、目的は、試験化合物のパネルによる各His-Fabに対するビオチン化チカグレロル結合の競合を測定することであった。
ユウロピウムクリプテート抗His抗体:試験His-Fab:ビオチン化チカグレロル:XL665標識ストレプトアビジン。
【0156】
この基本的なアッセイフォーマットを用いて、リード単離およびリード最適化段階の両方の終了からのリードFabの選択性プロファイルを評価し、これらの試験のために、His-Fab発現ベクターを用いてFabを生成した。
【0157】
黒色シャローウェル384ウェルアッセイプレート(Corning/Costar 3676)中で、20ulのアッセイ体積中にDPBS pH7.4(Gibco 14190-086)、KF(VWR 103444T)(0.4M)およびBSA(PAA K05-013)(0.1%)を含む緩衝液中でアッセイを行った。アッセイの設定は、5ulのビオチン化チカグレロル、各試験選択性化合物の5ulの滴定、5ulの関連するHis-Fabおよびユウロピウムクリプテート標識抗His抗体(CisBio 61HISKLB)(1.33nMの最終濃度を得るために5.33nM)およびXL665標識ストレプトアビジン(CisBio 611SAXLB)(10nMの最終濃度を得るために40nM)の両方を含有する5ulの組み合わされた溶液の添加を含んでいた。5ulのアッセイ緩衝液を試験選択性化合物添加の代わりに加えたことを除いて上記のアッセイ構成要素の全てを含有する全結合対照ウェルを設定した。5ulのアッセイ緩衝液をHis-Fab添加の代わりに加えたことを除いて全結合対照ウェルに含まれるアッセイ構成要素の全てを含有する陰性結合対照ウェルを設定した。試験化合物の連続滴定は、具体的な実験に応じて1/2または1/3のいずれかであり、最高最終アッセイ化合物濃度を、化合物に特異的に最適化した。ビオチン化チカグレロルおよびHis-Fabの濃度を、別個の実験においてFabに特異的に最適化した。リード単離段階の終了時に調べられた4つのFab(TICA0010、TICA0049、TICA0053およびTICA0072)について、使用される最終アッセイ試薬濃度が、以下の表1に記載される。
【0158】
【表1】
【0159】
リード最適化段階の終了時に調べられた2つのFab(TICA0162およびTICA0212)について、使用された最終アッセイ試薬濃度は、いずれの場合も5nMのビオチン化チカグレロルおよび1nMのHis Fabであった。これらの実験に使用される試験選択性化合物のいくつかを100%のDMSOに溶解させ、アッセイシグナルのビヒクルに関連する減少が、約1%超のDMSOの濃度で起こり始めることがある。任意のこのようなビヒクルに関連する影響を補正するためにデータのその後の正規化を可能にするために、DMSO単独の並行滴定がほとんどの実験に含まれ、ここで、最終アッセイDMSO濃度は、試験化合物連続希釈の濃度を反映していた。設定手順の終了時に、そのアッセイを室温で3時間インキュベートしてから、標準的な読み取りプロトコルを用いてEnvisionプレートリーダーにおいて読み取った。
【0160】
その後のデータ分析では、未加工の665nmおよび620nMカウントを、まず、665nm/620nm比率値に換算し、それを用いて、アッセイ1に記載される式に従って%デルタF値を計算した。%デルタFの計算に使用される陰性比値を、陰性結合対照ウェルから導き出した。次に、%デルタF値を用いて、下式に従って%特異的結合値を計算した。
特異的結合(%)={(サンプルデルタF-陰性結合デルタF)/(全結合デルタF-陰性結合デルタF)}×100
【0161】
%特異的結合の標準的な計算の場合、アッセイの上記の構成要素の全てを含有するが、競合する試験化合物を含まない全結合対照ウェルから全結合デルタFを取得した。
【0162】
DMSO正規化が適用された実験では、この場合、全結合対照ウェル中の構成要素の全てならびに関連するサンプルウェル中の濃度と同等の濃度のDMSOを含有するウェルから全結合デルタFを取得したことを除いて、実質的に上記の式に従って、DMSO正規化された%特異的結合を計算した。
【0163】
このタイプの初期実験からの結果が、表2にまとめられている。調べられた4つの初期Fab(TICA0010、TICA0049およびTICA0053)のうちの3つにおいて、化合物カングレロルは、ビオチン化チカグレロルに対するFab結合の競合的阻害を示した。TICA0049の場合、パントプラゾールおよびリネゾリドの両方が、部分的な競合的阻害を示した。表2に示されるように、TICA0072 Fabは、12の化合物のうちの11で阻害を示さず、ここで、パントプラゾールは、弱い部分的な阻害を示す。
【0164】
非修飾チカグレロルおよびTAMによる阻害が、0.1μM~0.5μMの範囲に含まれるIC50値で、この第1の一連の実験で試験された全ての4つのFabについて観察された。競合的阻害はまた、4つのFabのうちの2つ(TICA0049およびTICA0072)についてTIMにより検出されたが、IC50値は50μM超であり、これは、非修飾チカグレロルおよびTAMと比べてTIMに対する大幅に低下した親和性を示唆している。表2中の結果に基づいて、TICA0072は、最も好ましい選択性プロファイルを有するものとして同定された。TICA0049は、このFabが残りの3つのFab内でカングレロルに対する最も少ない結合を示したという基準に基づいて、潜在的なバックアップとして同定された。
【0165】
【表2】
【0166】
第2の一連の実験では、さらなる選択性データを、TICA0049およびTICA0072 Fabについて生成し、ここで、図4に列挙される12の化合物のうちの4つのサブセットを、チカグレロル、TAMおよびTIMおよびいくつかのアデノシンに関連する化合物と共に再試験した。ここで、表2中の前の研究への精密化において、DMSOによる任意の非特異的ビヒクルに関連する影響を補正するためにパーセント特異的結合値の正規化を可能にするために実験を設計した。この第2の一連の実験からの実施例のプロットされたデータが、表3中の一覧にしたIC50値と共に図5に示される。
【0167】
【表3】
【0168】
前の実験と同様に、TICA0072は、試験される4つの化合物内で最も好ましい選択性プロファイルを示し、パントプラゾールのみが弱い部分的な阻害(IC50>1500μM)を示した。TICA0049の場合、有意な阻害がカングレロルおよびパントプラゾールで観察され、弱い阻害がリネゾリドおよびブクラデシンについて観察された。特定の試験化合物についての第1および第2の一連の実験の間の絶対IC50値のわずかな差が、全体的な結論を基本的に変化させないことに留意されたい。このような差は、いくつかの場合、非常に弱い阻害を測定しようとしたことと共に、DMSO正規化が第2の一連の実験に組み込まれたことに起因し得る。
【0169】
TICA0049およびTICA0072の両方の場合、チカグレロルおよびTAMについて測定されたIC50値は、0.3μM~0.5μMの範囲であり、2を超えるlog値でTIMについてのIC50値は、それぞれ74.8μMおよび119.5μMでより高い。わずかな阻害が、TICA0049およびTICA0072 Fabの両方に対して、アデノシン、ADP、ATPおよび後者の2つの化合物のメチル-チオ誘導体で観察されたが、これは、試験される最も高い化合物濃度でのみ検出され、有意であるとみなされなかった。
【0170】
TICA0072は、チカグレロルおよびTAMに特異的であるとみなされる唯一のFabであったと結論付けられる。
【0171】
実施例4:抗チカグレロル/TAM Fabの親和性測定
上で生成された抗チカグレロルFabの親和性を、Octet Red384においてBiolayer Interferometryを用いて決定した。親和性測定のために、抗チカグレロルFab抗体を、アッセイ緩衝液(PBS、Tween20 0.05%、BSA 0.02%)、たとえば200nM中の2×最終アッセイ濃度の濃度になるまで希釈した。チカグレロルの10.2倍連続希釈を、Greinerポリプロピレン96-ウェルプレートにおいて調製した。次に、等体積(たとえば70μLおよび70μL)の希釈された抗体および遊離チカグレロルを、第2のGreinerポリプロピレンプレートに移した。サンプルをピペット操作によって混合し、プレートシールで被覆し、室温で3~5日間にわたって平衡化した。平衡化後、60μLの抗体/チカグレロル滴定を、デュプリケートで、384ウェル黒色傾斜底ポリプロピレンプレートに移した。ビオチン化チカグレロルを、アッセイ緩衝液中で250nMに希釈し、384ウェルアッセイプレートの最初の2つのカラムの別のウェルに加え、残りのウェルは、アッセイ緩衝液のみを含有していた。ストレプトアビジンバイオセンサを、少なくとも10分間にわたってアッセイ緩衝液に予め浸漬させた。次に、サンプルプレートおよびバイオセンサを、OctetRed384の段に充填した。
【0172】
全てのアッセイを室温で行った。アッセイ緩衝液中での60秒間にわたるベースライン平衡化後、ビオチン化チカグレロルを、300秒間にわたってストレプトアビジンバイオセンサに充填した後、アッセイ緩衝液を600秒間にわたって充填して、新たなベースラインを確立した。次に、抗体/チカグレロル混合物を、使用される抗体の濃度に応じて、30~600秒間にわたってビオチン化チカグレロルセンサ表面に結合させた。得られた結合相(association phase)データを、OctetRed Data Analysisソフトウェアを用いて分析した。シグナルをベースラインに合わせ、基準センサシグナル(抗体対照なし)を各サンプルについて減算し、次に、データを、KinExA n-Curve Analysisソフトウェアを用いて分析のためにエクスポートした。Constant Partner分析を用いて、抗チカグレロルFab抗体の平衡KDを決定した。データは、FabTICA0072およびTICA0049が、それぞれ7.4nMおよび11.6nMのチカグレロルに対する親和性を有していたことを示した(表4)。
【0173】
【表4】
【0174】
実施例5:抗チカグレロル/TAM抗体TICA0072の最適化
抗体TICA0072を、親和性に基づくファージ選択を用いて最適化した。リードscFv配列に由来する大きいscFvライブラリーを、記載される標準的な分子生物学技術を用いて、可変重鎖(VH)相補性決定領域(CDR)1、2または3または可変軽(VL)鎖CDR1、2または3のオリゴヌクレオチド特異的突然変異によって作成した(Clackson and Lowman 2004 Practical Approach Series 266)。チカグレロルおよびTAMに対してより高い親和性を有する変異体を選択するために、ライブラリーを、親和性に基づくファージディスプレイの選択に供した。簡潔には、scFv-ファージ粒子を、実質的に以前に記載されているように(Thompson et al 1996 J Mol Biol.256(1):77-88)、ビオチン化チカグレロルの減少する濃度(典型例は、4回の選択にわたって20nM~20pMであり得る)の溶液中でインキュベートした。粗scFv含有ペリプラズム抽出物を、CDR標的化選択アウトプットからの代表的な数の個々のscFvのために調製し、TICA072と比べた親和性の向上のためのスクリーニングするように設計されたHTRF(登録商標)エピトープ競合アッセイフォーマットにおいてスクリーニングした。
【0175】
簡潔には、向上した親和性のscFvおよびFab変異体をスクリーニングするために、HTRF(登録商標)エピトープ競合アッセイを、親TICA0072IgGとビオチン化チカグレロルとの間の相互作用の、試験scFv変異体による競合に基づいて実施した。このアッセイを、粗ペリプラズム抽出物scFvサンプルをスクリーニングするための一次単一点HTS、ならびに親TICA0072に対して精製されたscFvおよびFab変異体の両方のIC50値の向上を測定するための多点二次プロファイリングアッセイとして使用した。本明細書に記載のものなどのエピトープ競合アッセイは概して、絶対親和性値を決定するのに使用されないが、このようなアッセイは、親和性に基づくHTSの基準として使用され得る。さらに、(親scFv/Fabに対する)精製されたscFv/Fab変異体のIC50の向上の倍数(fold improvement)は、親和性の全体的な倍増の優れた指標となり得、リード最適化キャンペーンにおけるscFv/Fab変異体の親和性順位付けのための有効な方法であり得る。本明細書に記載のTICA0072親IgGに基づくエピトープ競合アッセイのフォーマットが以下に記載される。ユウロピウム標識ストレプトアビジン:ビオチン化チカグレロル:TICA0072 IgG:XL665標識抗ヒト-Fc抗体
【0176】
黒色シャローウェル384ウェルアッセイプレート(Corning/Costar 3676)中で、DPBS pH7.4(Gibco 14190-086)、KF(VWR 103444T)(0.4M)およびTween 20(Sigma P9416)(0.05%)を含む緩衝液中でアッセイを行った。粗ペリプラズムscFv変異体の単一点試験のために、10ulのアッセイ体積を使用したが、多点二次IC50プロファイリングアッセイにおいて精製されたscFvおよびFabを試験するとき、20ulのアッセイ体積を使用した。
【0177】
単一点HTSのために、3ulのTICA0072 IgG(16nMの最終濃度を得るために53.3nM)、2ulの粗ペリプラズム抽出物scFvサンプル、2.5ulのビオチン化チカグレロル(2nMの最終濃度を得るために8nM)およびユウロピウム標識ストレプトアビジン(CisBio 610SAKLB)(0.75nMの最終アッセイ濃度のための3nM)およびXL665標識抗ヒト-Fc抗体(CisBio 61HFCXLB)(7.5nMの最終アッセイ濃度を得るために30nM)を含有する2.5ulの組み合わされた溶液を加えることによって、アッセイを設定した。親TICA0072粗ペリプラズムscFvをベンチマークとして使用し、HTSを、親と比べて向上した阻害を示す変異体を同定するように構成した。全結合対照ウェルは、2ulのアッセイ緩衝液をscFvサンプルの代わりに加えたことを除いて全てのアッセイ構成要素を含有していた。陰性結合対照ウェルは、3ulのアッセイ緩衝液をTICA0072 IgGの代わりに加えたことを除いて全結合対照ウェルの構成要素の全てを含有していた。
【0178】
精製されたscFv/Fab変異体の多点IC50試験のために、5ulのTICA0072 IgG(16nMの最終濃度を得るために53.3nM)、精製された試験scFvまたはFab変異体の5ulの1/3滴定、5ulのビオチン化チカグレロル(2nMの最終濃度を得るために8nM(scFvプロファイリング)、1nMの最終アッセイ濃度を得るために4nM(Fabプロファイリング))およびユウロピウム標識ストレプトアビジン(CisBio 610SAKLB)(0.75nMの最終アッセイ濃度のために3nM)およびXL665標識抗ヒト-Fc抗体(CisBio 61HFCXLB)(7.5nMの最終アッセイ濃度を得るために30nM)を含有する5ulの組み合わされた溶液を加えることによって、アッセイを設定した。精製された親TICA0072(scFvまたはFab)を、全ての実験においてベンチマークとして使用して、最適化された変異体(scFvまたはFab)で測定されたIC50の向上が、親TICA0072に対する向上の倍数として表されるようにした。全結合対照ウェルは、5ulのアッセイ緩衝液を精製されたscFvまたはFabサンプルの代わりに加えたことを除いて全てのアッセイ構成要素を含有していた。陰性結合対照ウェルは、5ulのアッセイ緩衝液をTICA0072 IgGの代わりに加えたことを除いて全結合対照ウェルの構成要素の全てを含有していた。
【0179】
アッセイの単一点HTSおよび多点IC50プロファイリングバージョンの両方において、プレートを室温で3時間インキュベートしてから、サンプルが337nmで励起される標準的なHTRF読み取りプロトコルを用いてEnvisionプレートリーダーにおいて読み取り、時間分解蛍光発光を620nmおよび665nMの両方で測定した。
【0180】
未加工の665nmおよび620nmカウントを用いて、デルタF(%)を計算し、それぞれアッセイ1および4において上述される式に従って、%特異的結合を計算した。多点二次プロファイリング実験のために、S字状用量反応(可変スロープ)曲線当てはめ(4パラメータロジスティック方程式)を用いて、Graphpad Prismソフトウェアを用いて、IC50値を決定した。
【0181】
スクリーニングにおいて同定されるヒット、すなわち、親TICA0072 scFvと比較した際に有意に向上した阻害効果を示したscFv変異体を、DNAシークエンシングに供し、次に、可変重鎖CDR1、CDR2またはCDR3および可変軽鎖ライブラリーCDR1、CDR2またはCDR3アウトプットからの固有の変異体を、精製されたscFvとして産生し、濃度応答IC50曲線を決定するために同じアッセイにおいて再試験した。次に、最も向上したIC50値を示すscFv変異体をFabとして産生し、後述される第二世代エピトープ競合アッセイにおいて試験した。
【0182】
最も高い親和性Fabのスクリーニング/順位付けのための第二世代エピトープ競合アッセイ
リード最適化キャンペーンの終了時に非常に高い親和性の精製されたFabを有効に区別するために、さらなるHTRF(登録商標)エピトープ競合アッセイを実施したが、この場合、アッセイは、親TICA0072 IgGではなくビオチン化チカグレロルに結合する中親和性最適化TICA0072系統IgG(TICA0159)の競合的阻害に基づくものであった。このアッセイを、(HTSフォーマットではなく)多点IC50プロファイリングフォーマットのみで使用し、親TICA0072 IgGに基づくエピトープ競合アッセイにおける精製されたFab変異体の多点IC50プロファイリングのためのアッセイ5(上記)において示される方法と実質的に同じように行った。TICA0159 IgG(唯一の相違である)を、アッセイ設定の適切な時点で、ただし同じ16nMの最終アッセイ濃度で、TICA0072 IgGの代わりに使用した。全ての他の点で、このアッセイを、精製されたFabの多点二次プロファイリングバージョンにおいてまさに上述されるとおりに行った。
【0183】
第二世代アッセイは、より有効な区別を可能にするために、TICA0072の代わりに、部分的に最適化された抗体TICA0159を用い、最も高い親和性Fabの順位付けが、TICA0072に基づくエピトープ競合アッセイにおいて可能であった。
【0184】
最も向上したVHを、CDR3変異体TICA0162として同定した。最も向上したVLを、CDR3変異体TICA0152として同定した。さらなる親和性向上を生じるために、向上した抗体からの異なるCDRを、標準的な分子生物学技術を用いて新たなFabに組み合わせた。この組換え作業から、TICA0162とTICA0152との組み合わせが、さらに向上したエピトープ競合プロファイルを有する新たなFab TICA0212を生成した。第二世代エピトープ競合アッセイにおけるTICA0072、TICA0152、TICA0162およびTICA0212 Fabについてのプロットされた競合曲線が、表5中の測定されたIC50値と共に、図6に示される。TICA0212は、親TICA0072 Fabと比べてIC50の約2logの向上を示す。
【0185】
【表5】
【0186】
実施例6:最適化された抗チカグレロル/TAM Fabの親和性測定
実施例5において生成された抗チカグレロル/TAM Fabの親和性を、KinExA3200を用いて決定した。KinExA親和性測定のために、ビーズ(600mgのアズラクトンビーズ)を、それらを50mMのNaHCO3中の1mgのストレプトアビジンと一晩反応させることによってまず調製した。トリス緩衝液(1MのトリスpH8.7、10mg/mLのBSA)の2回の交換でブロッキングした後、ストレプトアビジンで被覆されたビーズを、8mLの総体積中で再懸濁させた。ビーズ(1.33mL、100mgの元の乾燥アズラクトンビーズに相当する)を、PBSで完全に洗浄し、次に、時折撹拌しながら10分間にわたって、1mLのPBS中の約2.5μgのビオチン-チカグレロルに結合させた。得られたビオチン-チカグレロルで被覆されたビーズをPBSで洗浄し、次に、0.1%のBSAおよび0.02%のNaN3を含有する50mLのPBS中で再懸濁させ、KinExAビーズバイアルに移すまで室温で貯蔵した。
【0187】
抗体/チカグレロルサンプルの調製を、以前の方法に実質的に記載されるように行った。抗チカグレロルFab抗体を、アッセイ緩衝液(PBS、Tween20 0.05%、BSA 0.02%、0.02%のNaN3)、たとえば200nM中の最終アッセイ濃度の2倍の濃度に希釈した。チカグレロルの10.2倍連続希釈を、Falcon 50mLのポリプロピレンチューブ中で調製した。次に、等体積、たとえば5mLおよび5mLの希釈された抗体および遊離チカグレロルを、第2のFalconポリプロピレンチューブに移した。サンプルをピペット操作によって混合し、室温で3~5日間にわたって平衡化した。平衡化後、サンプルチューブを分析のためにKinExA 3200に移した。
【0188】
全てのアッセイを室温で行った。抗体/チカグレロル混合物を採取し、バイオ-チカグレロルビーズと混合させた一方、非結合遊離チカグレロルを洗い流した。次に、結合抗体を、DyLight649標識マウス抗ヒト重鎖および軽鎖抗体を用いて検出した。サンプル体積(300~1300μL)および注入時間(90~120秒間)は、濃度によって変化し、2~3つの読み取りがサンプルごとに変化された。データを、KinExA n-Curve Analysisソフトウェアを用いて分析した。Constant Partner分析を用いて、抗チカグレロルFab抗体の平衡KDを決定した。
【0189】
前の実施例と同様に、Fabを、20倍過剰からの濃度で、非修飾チカグレロルまたはTAMのいずれかの存在下で、室温で平衡化した。ビオチン化チカグレロルを、ストレプトアビジンで被覆された表面上に充填した。平衡化後、残りの遊離抗体をビオチン化チカグレロルに結合させた。次に、結合抗体を、DyLight649標識マウス抗ヒト重鎖および軽鎖検出抗体を用いて検出した。遊離チカグレロルまたはTAMの滴定を、抗体の少なくとも3つの異なる一定の濃度で調製して、見かけのKDの少なくとも10倍の変化を有する別個の滴定プロファイルを生成した。データを、KinExA Pro n-Curve分析ソフトウェアを用いて分析して、遊離チカグレロルまたはTAMの平衡KDを決定した。Fab TICA0212は、約20pMの非修飾チカグレロルおよびTAMに対する親和性を有していた(表6)。平衡データから、TICA0212は、チカグレロルおよびTAMに結合する同等の高い親和性(約20pM)を示す。
【0190】
【表6】
【0191】
実施例7:抗チカグレロル/TAM Fab TICA0162およびTICA0212の特異性
Fab、TICA0162およびTICA0212の特異性を、実施例3において試験し、DMSOに対して正規化した。TICA0162およびTICA0212のための全ての利用可能な選択性データの概要の表が、表7に含まれる。さらに、図4に列挙される12の化合物のうちの5つがチカグレロル、TAM、TIMおよびいくつかのアデノシンファミリー化合物と並行して試験される実験からの実施例のプロットされたデータが図7に示される。
【0192】
【表7】
【0193】
データによって示されるように、TICA0212(MEDI2452)は、チカグレロルおよびTAMに対する実質的に等しい結合特異性、およびTIMに対するより弱い結合を有する。さらに、MEDI2452/TICA0212は、他の構造的に関連する薬剤またはアデノシンに関連する化合物に対する有意な結合を示さなかった。
【0194】
実施例8:タンパク質結晶学
C末端his-タグを有するTICA0072を、PBS中で9mg/mlに濃縮した。複合体形成を、DMSOに溶解された1mMのチカグレロルの添加によって行った。複合体を室温で2時間インキュベートしてから、結晶化試験を、シッティングドロップによる蒸気拡散方法を用いて設定した。広範なスクリーニングを、3つの市販のスクリーニングを用いて行い、いくつかのヒットが得られた。最良の回折結晶が、Morpheus(登録商標)(Molecular Dimensions,UK)ヒットのグリッド最適化(grid optimization)から得られた。等体積のTICA0072-チカグレロル複合体および12.8%のPEG 3350、12.8%のPEG 1000、12.8%のMPD、1.7%の1,6-ヘキサンジオール、1.7%の1-ブタノール、1.7%の1,2-プロパンジオール、1.7%の2-プロパノール、1.7%の1,4ブタンジオール、1.7%の1,3-プロパンジオール、25mMのイミダゾール、25mMのカコジル酸ナトリウム、25mMのMESおよび25mMのビス-トリスpH6.5のリザーバ溶液(reservoir solution)を混合することによって、構造決定に使用される結晶を、20℃で成長させた。抗凍結剤を添加せずに、結晶を液体窒素中で急速冷凍した。
【0195】
約15mg/mlの濃度でPBS中のTICA0212/MEDI2452を、1mMの濃度になるまでチカグレロルと混合し、室温で2時間インキュベートしてから、広範なスクリーニングを行った。自発的な(spontaneous)ヒットは得られなかった。TICA0072-チカグレロル結晶からのシードを、いくつかの結晶を30ulのウェル溶液中で破砕することによって調製し、広範な市販のスクリーニングへのMMS(マイクロシードマトリックススクリーニング)に使用した。いくつかのヒットが得られたが、構造決定に使用される結晶を、20%のグリセロール、20%のPEG 4000、10%の2-プロパノール、0.1MのNaClおよび0.5MのNaAcetate pH4.6の条件から20℃で成長させた。滴を、0.2ulのタンパク質、0.18ulのウェル溶液および0.02ulのシードストックを用いて設定した。抗凍結剤を添加せずに、結晶を液体窒素中で急速冷凍した。
【0196】
データを、European Synchrotron Radiation Facility(Grenoble,France)で、ビームラインID23-1で収集した。データを処理し、スケーリングし、AutoProc workflow[Vonrhein,C.,et al.,Acta Cryst.2011;D67:293-302]を用いてさらに縮小させた。統計については、表8を参照されたい。TICA0072の場合、初期フェージング(initial phasing)を、出発モデルとして高分解能Fab構造(PDB id code 1aqk[Faber C.,et al.,Immunotechnology.1998;3:253-70])を用いた分子置換によって行った。TICA0212/MEDI2452の場合、TICA0072の構造を出発モデルとして使用した。モデル再構築を、Coot[Bricogne G.,et al.,(2011).BUSTER version 2.11.4.Cambridge,United Kingdom:Global Phasing Ltd]を用いて行い、精密化を、autobuster[Emsley,P.,et al.,Acta Crystallogr.,Sect.D:Biol.Crystallogr.2004,D60,2126-2132]を用いて行った。最終モデルの統計については、表8を参照されたい。
【0197】
【表8】
【0198】
チカグレロルとの複合体中のTICA0072の構造を、1.7Åの分解能まで決定した(図10)。CDRが、非常に窪んだ表面を形成し、チカグレロルが、VHとVLドメインとの境界に深く挿入される。このタイプの結合は、小さいハプテンについて一般的に観察される。VL CDR2以外の全てのCDRは、チカグレロル結合に直接寄与しており、大部分のVH CDR3が不規則である。チカグレロルのジフルオロフェニル基は、残基VH Trp47、VL Phe98およびVH CDR3残基Leu100Lを含む疎水性残基で囲まれたキャビティに配置される。チカグレロルとの相互作用における主な残基は、VL Trp91であり、これは、アデノシンのようなコアに対するπスタッキングおよびシクロペンチル部分におけるリボースヒドロキシル基の1つへの水素結合の両方に関与する。アデノシンのようなコアとのさらなる相互作用が、VH CDR1 His35およびVH CDR3 Tyr99によって提供される。チオプロピル置換基は、VH CDR2ループの主鎖に対して積み重なる。シクロペンチル部分上のヒドロキシエチル置換基は、溶媒中に突出しており、Fabとの相互作用を生じない。
【0199】
親和性が向上されたFab、TICA0212/MEDI2452の構造において、チカグレロル結合は、TICA0072のものと類似しており、ここで、上記の全ての相互作用は、いくらかの重要な相違を除いて保持された(図10B)。VL CDR3突然変異Asp92LeuとSer94Aspとの組み合わせが、VL CDR3ループ内の水素結合を破断して、より「弛緩した(relaxed)」構造を形成する。新たな配座が、シクロプロピル-ジフルオロフェニル置換基の結合の周りのピリミジン環の15°の傾きと相関している。ピリミジン環の新たな位置は、それを、Fab 72と比較してTICA0212/MEDI2452中のVH CDR3 Tyr99に近い約0.2Åにする。さらに、VL Ile93Tyrが、水素結合供与体を導入し、水素結合供与体は、VH CDR3ループとの相互作用を生じるため、結合部位をさらに画定する。
【0200】
TICA0212/MEDI2452の結晶構造は、VHおよびVL境界の間の深い隙間に結合されたチカグレロルを示す。結晶構造は、ヒドロキシエチル基がTICA0212/MEDI2452との相互作用に関与しないことを示すため、ヒドロキシエチル基に対するトリアミドリンカーを介して、チカグレロルをビオチンで標識する設計手法が実証される。これは、Fabが、ヒドロキシエチル基を欠く、同一の親和性を有するTAMにも結合することによってさらに裏付けられる。TICA0212/MEDI2452は、シクロプロピル-ジフルオロフェニル基を欠くTIMに対する弱い結合を示す。TICA0212/MEDI2452-チカグレロル複合体において、シクロプロピル-ジフルオロフェニル基は、疎水性ポケットの底に埋められ、チカグレロルのアデノシンのようなコアを、VL CDR3残基Trp L91と位置合わせする主な構造的役割を果たすはずである。チカグレロルの化学的出発点がATPであり、アデノシンのようなコアを保持するため、解毒剤特異性の重大な属性は、アデノシンの結合がないことを実証することであった。リード単離手法が、高スループットおよび詳細な特異性分析の両方に関与し、アデノシンの結合がないことが、競合または直接結合分析のいずれかによって検出された。構造分析から、アデノシンのプリン環およびリボース基が、チカグレロルのアデノシンのようなコアの相互作用を模倣することが予測され得る。しかしながら、結合の欠如は、相対形状相補性および結合相互作用の疎水性の両方を著しく低下させる2つの疎水性R基(シクロプロピル-ジフルオロフェニルおよびチオプロピル)の非存在によって説明され得る。
【0201】
親TICA0072およびTICA0212/MEDI2452の構造の分析は、親和性成熟中に挿入される変化のいくつかの有意性を示す。VL CDR3中の突然変異は、特に大きい影響を有するようであり、TICA0212/MEDI2452中の異なるループ配座およびさらなる水素結合を生じて、結合キャビティを画定する。対照的に、VH CDR3中の突然変異からの寄与は、構造的にあまり明らかでない。構造からのこれらの観察は、TICA0072よりそれぞれ200倍および50倍の向上をもたらしたVL CDR3(TICA0152)またはVH CDR3(TICA0162)のみに修飾を含有する修飾抗体についてのデータによって部分的に確認される。しかしながら、VL CDR3の変化は、より大きい影響を有するようであるが、両方の組の突然変異は、有意な向上を加える。結晶構造は複合体中の静止画像であり、結合に関与するタンパク質およびリガンド動態のいずれも捕捉することができないことに留意されたい。
【0202】
実施例9:インビトロでの、チカグレロルまたはTAMの存在下における、TICA0212/MEDI2452濃度に依存して修復される血小板凝集
ADP誘導性血小板凝集のチカグレロルまたはTAM媒介性阻害を拮抗するTICA0212/MEDI2452の程度および有効性を、光透過凝集測定を用いて、ヒト多血小板血漿(PRP)中で決定した。
【0203】
インビトロのヒトPRPアッセイのために、血液を、橈側皮静脈の静脈穿刺によって絶食した健常なボランティアから採取した。最初の2mLの血液を廃棄してから、0.109Mのクエン酸ナトリウム、1+9(クエン酸塩+血液)を含むチューブに、最終濃度10.9mMになるまでアリコートを収集した。抗凝固処理されたヒト血液を、15分間にわたって240×gで遠心分離した。PRPを注意深く除去し、透明のバイアルに移した。乏血小板血漿(PPP)を、15分間にわたる2000×gにおけるPRPの遠心分離によって調製した。光透過凝集測定(LTA)を、Platelet Aggregation Profiler(PAP-8E,Bio/Data Corporation,PA,USA.)によってPRPにおいて評価した。0%の凝集を、PRPの光透過として定義し、100%の凝集をPPPの光透過として定義した。
【0204】
PRPを、1時間にわたって1μMのチカグレロルまたはTAMと共に予めインキュベートしてから、30分間にわたって異なる濃度のTICA0212またはアイソタイプ対照Fabと共に共インキュベートした。血小板凝集を、20μMのADPの添加によって開始し、6分間にわたって連続して記録した。6分間の時点での最終凝集(FA)程度のデータを分析した。
【0205】
最大半量の(half-maximum)拮抗(IC50)を示したTICA0212/MEDI2452の濃度を計算した。TICA0212/MEDI2452は、それぞれ0.64および0.78μMの計算された平均(n=5)IC50値で、1μMのチカグレロルの濃度依存的拮抗および20μMのADPに誘導される血小板凝集の1μMのTAMに媒介される阻害をもたらした(図8)。1:1の条件(1μMのTICA0212/MEDI2452:1μMのチカグレロルまたはTAM)で評価されるとき、拮抗の平均程度は、それぞれ78%および62%であった。アイソタイプ対照Fabは、チカグレロルの有意な拮抗およびTAM ADP誘導性血小板凝集を引き起こさなかった。たとえば、30分間のインキュベーション後、アイソタイプ対照Fabは、チカグレロルおよびTAMのそれぞれの-3%および2%の拮抗をもたらした。
【0206】
このことから、データは、TICA0212/MEDI2452が、濃度依存的にインビトロでADP誘導性血小板凝集のチカグレロルおよびTAM媒介性阻害の両方に拮抗し得ることを示す。最大およびほぼ完全な拮抗作用は、1:1の実験設定で評価されるときに達成され、これは、TICA0212/MEDI2452が1:1の化学量論でチカグレロルまたはTAMに結合するときに予測され得る。
【0207】
実施例10:TICA0212/MEDI2452は、インビトロで、チカグレロルまたはTAMの存在下で血小板凝集を有効にかつ迅速に修復する
TICA0212/MEDI2452がチカグレロルまたはTAMに拮抗する発現時間を、実施例8と同様に光透過凝集測定を用いてヒト多血小板血漿(PRP)において決定した。PRPを、1時間にわたって1μMのチカグレロルまたはTAMと共に予めインキュベートしてから、1μMのTICA0212/MEDI2452を加え、5、10、15、30および60分間にわたって共インキュベートし、または30分間にわたってアイソタイプ対照Fabを加えた。血小板凝集を、20μMのADPの添加によって開始し、6分間にわたって連続して記録した。6分間の時点での最終凝集(FA)程度のデータを分析した。
【0208】
拮抗の平均(n=3)程度は、5、10、15、30および60分後にそれぞれ85%、69%、74%、80%および81%であったため、TICA0212/MEDI2452は、共インキュベーション時間にかかわらずチカグレロル媒介性阻害の拮抗の同様の程度をもたらした。同様に、TICA0212/MEDI2452によって誘導されるTAM拮抗の平均(n=3)程度は、5、10、15、30および60分後にそれぞれ53%、56%、58%、69%、74%であった。TICA0212/MEDI2452は、ADP誘導性血小板凝集のチカグレロルおよび媒介性阻害を迅速にかつ有効に拮抗した。拮抗なし、平均(n=3)-2%は、アイソタイプ対照Fabとの共インキュベーションの30分後に存在した。このデータから、TICA0212/MEDI2452は、1:1の実験の設定で評価されるとき、ADP誘導性凝集のチカグレロルおよびTAM媒介性阻害の両方を迅速にかつ有効に拮抗することが示された。
【0209】
実施例11:TICA0212/MEDI2452は、インビボで、チカグレロルで処理されたマウスに投与した後、血小板凝集を有効にかつ迅速に修復した
全血中のADP誘導性血小板凝集のチカグレロル媒介性阻害のTICA0212/MEDI2452に媒介される拮抗の発現速度および程度(インピーダンス凝集測定)を、マウスへのチカグレロルの静脈内(i.v.)投与後に生体外で決定した。5分間にわたる1200μg/kgのボーラス投与、続いて30μg/kg/分の15分間の持続注入として、マウスにチカグレロルを静脈内で与えた。チカグレロル注入の停止後、チカグレロルの血漿中曝露量が、平均1.4μMであると測定されたとき、マウスに、250mg/kgのTICA0212/MEDI2452の静脈内ボーラス投与を与えた。TICA0212/MEDI2452投与の5、30、および60分後の時点で、マウスを殺処分し、血液サンプルを収集した。この試験において、ADP誘導性凝集応答を、6分間測定し、データを、時間の経過と共に記録される凝集単位(AU)(AU*分)の曲線下の平均面積として表した。
【0210】
インピーダンス凝集測定アッセイを行う際、マウスを殺処分し、血液サンプルを7μMのヒルジン中に収集した。血液(175μL)を、Multiplate mini試験細胞中の予め加熱されたNaCl2(37℃、175μL)に加え、3分間混合してから、6.5μMの最終濃度になるまでADP、12μLを加えた。使い捨てのMultiplate mini試験細胞は、撹拌子を含み、血液サンプルに浸漬される電極の2つの別個の対を有する。
【0211】
アゴニスト(ADP)が加えられ、せん断が撹拌によって引き起こされるとき、血小板が、電極に付着し、凝集することになる。これは、電極にわたるインピーダンスの増加をもたらし、これは、Multiplateインピーダンス血小板凝集計(DynaByte,Munchen,Germany)によって時間と共に連続して記録される。
【0212】
凝集応答が、チカグレロル注入およびPBSボーラス投与の5、30、および60分後にそれぞれ、432から2、474から6および494から14 AU*分に減少した(図9)ため、チカグレロル処理は、平均(n=4)としてADP誘導性凝集のほぼ完全な阻害を誘導した。平均(n=4)凝集応答としてのインビボのチカグレロル媒介性阻害のTICA0212/MEDI2452媒介性拮抗は、チカグレロル注入およびTICA0212ボーラス投与の5、30、および60分後の時点でそれぞれ、2から147、6から448および14から413 AU*分に増加した(図9)。凝集応答が6~4 AU*分で変化しないままであったため、平均(n=4)としてのアイソタイプ対照の投与の30分後に拮抗は存在しなかった。
【0213】
このデータは、TICA0212/MEDI2452が、ADP誘導性凝集の完全な阻害を提供する1.4μMのチカグレロル血漿濃度になるまで投与されるマウスへの静脈内ボーラス投与として与えられるとき、ADP誘導性血小板凝集を迅速にかつ有効に修復し得ることを示す。
【0214】
実施例12:チカグレロルで処理されたマウスにおけるマウス出血
TICA0212/MEDI2452の意図される適応の1つが、緊急手術を必要とする患者へのチカグレロルの解毒剤としての適応であるため、TICA0212/MEDI2452を、完全な拮抗が手術の開始前に達成されるべきである臨床状況を模倣するように設計されたマウス出血実験において評価した。
【0215】
マウスを、チカグレロル、300μg/kg/分または20分間にわたるビヒクルの持続注入で前処理した。注入の停止後(t=0)、TICA0212/MEDI2452(600mg/kg)またはビヒクル(ヒスチジンスクロース緩衝液)のボーラス投与を、45秒間にわたって与え、t=30分の時点で、尾の先端から5mmを切断することによって出血を引き起こした。尾の先端を水(2mL/分)ですすぎ、血液と水との混合物を小さいチャンバに収集し、ここで、撹拌器が流体を混合して、溶血を促進し、均一な溶液を形成した。終末血液サンプルを血小板凝集のために腹部大動脈から採取したとき、525nmにおける光透過を、30分間記録した。光透過を、吸光度に換算し、それを用いて、吸光度曲線下の面積(AUC、吸光度*秒)および時間の経過と共に吸光度をプロットすることによる全出血時間(BT、秒)として失血を計算した。95%未満の全ての透過を出血として定義した。また、血小板凝集のためのサンプルならびに全血漿および遊離血漿中曝露量を、チカグレロル注入の終了時(t=0)および尾切断時(t=30分)に収集した。
【0216】
試験は、ヨーテボリ大学(University of Goeteborg)(Sweden)において動物研究のための倫理委員会によって承認された。マウスにイソフルランガス(Forene(登録商標)、Abbot Scandinavia AB,Sweden)で麻酔をかけた。カテーテルをビヒクルまたは薬剤の投与のために左頸静脈に挿入した。体温を外部加熱によって38℃に維持した。
【0217】
血小板凝集に対するTICA0212/MEDI2452の影響を、出血に対する潜在的影響に変換するために、予防的なマウス尾出血試験を行った。チカグレロルをそれぞれ7.6および0.3μMの平均全チカグレロルおよびTAM血漿濃度になるまで注入して、有意な薬剤依存的出血ウインドウを得た。チカグレロル注入を停止した直後に、TICA0212/MEDI2452を、30秒間にわたる600mg/kgの単回ボーラス投与として投与した。30分後、ADP誘導性凝集を完全に正規化し、チカグレロルの平均遊離血漿濃度は、4.7nMから0.03nM(定量化の下限)未満に減少した。出血を、尾切断によって開始させ、30分間監視した。ビヒクルで処理されたマウスでは、尾切断の時点での平均全チカグレロルおよびTAM血漿濃度は、2.4および0.6μMであった。30分間にわたる全失血および出血時間は、それぞれ約3.8倍および1.6倍だけチカグレロルによって有意に(p<0.05)向上された。TICA0212/MEDI2452は、チカグレロル単独と比べて失血および出血時間を有意に(p<0.05)改善し、チカグレロルで処理されていないマウスとそれほど異ならないレベルに戻した(図12)。この予防的な設定では、TICA0212/MEDI2452は、チカグレロル依存的な出血を正規化した。エキソビボモデルからTICA0212/MEDI2452を実証するこのインビボモデルに変換される30分間の発現時間は、失血および出血時間の両方を、チカグレロルで処理されていないマウスの失血および出血時間に対して正規化することができる。
【0218】
実施例13:チカグレロルおよびTAMの全血漿濃度
血液サンプルを、EDTA抗凝固剤を含むチューブに収集し、室温で、10000×gで5分間遠心分離して、血漿を調製した。チカグレロルおよびTAMの血漿濃度を、以下の差異を含む、公開された方法に記載されるタンデム質量分析法(LC-MS/MS)[Sillen H.,et al.,J Chromatogr B Analyt Technol Biomed Life Sci 2010;878:2299-306]を用いて、タンパク質沈殿および液体クロマトグラフィーによって決定した。血漿、50μLは、アセトニトリル中の180μlの内部標準(D7-ZD6140)を用いて沈殿されたタンパク質であった。液体クロマトグラフシステムおよび質量分析計は、Waters製のXevo TQ-S質量分析計に結合されたAcquity Ultra Performance LCであった。クロマトグラフ分離を、Aquity UPLC(登録商標)BEH C18カラム(2.1×50mm、粒度1.7μm)において行った。陰性エレクトロスプレーイオン化を用いた。溶離剤Aは、10mmol/Lの酢酸アンモニウム、pH5を含む水であり、溶離剤Bは、10mmol/Lの酢酸アンモニウムを含むアセトニトリルであった。注入量は1~5μLであり、分析勾配は4%のBから開始し、1.5分で95%に増加し、2.3分まで保持してから、2.4分以内に初期条件に戻した後、0.3分の再平衡化が続いた。品質管理(quality control)サンプルを分析に使用しなかった。定量化の下限(LLOQ)は0.005μmol/Lであり、較正範囲は、0.005~15.0μMであった。
【0219】
TICA0212/MEDI2452の存在下におけるチカグレロルおよびTAMの全血漿濃度を、上述されるように、1%のギ酸(FA:サンプル、1:5)の添加、続いてタンパク質の沈殿およびLC-MS/MSによって決定した。ギ酸をサンプルに加えて、チカグレロルおよびTICA0212/MEDI2452の解離を促進した。
【0220】
実施例14:チカグレロル遊離血漿濃度
本方法を、以前に公開された方法[Sillen H.,et al.,J Chromatogr B Analyt Technol Biomed Life Sci.2011 Aug 1;879(23):2315-22]に基づいて最適化した。6~8kDa未満の質量の分子を通過させる透析膜(Spectrum Laboratories,Inc)を、10~15分間にわたってELGA水に浸漬させ、透析プレート半部(社内で作製された)の間に入れた。血漿、130μLを、透析プレートの片側に加え、130μLのリン酸緩衝液、pH7.0を、反対側に加えた。ウェルの両側を蓋で密封し、アルミニウム板をプレートの各側の上に置いて、漏れを防いだ。次に、プレートを、24時間にわたって37℃で、100rpm/分でオービタルシェーカーに垂直に置いた。血漿側からの50μLの濃縮液(retentate)および緩衝液側からの75μLの透析液を、150μLの、アセトニトリル中のそれぞれの75μLの内部標準(D7-ZD6140)を含むタンパク質LoBind PCR透明96ディープ-ウェルプレートに移すことによって、透析を終了した。プレートを1分間混合し、次に、4℃で、1500×gで20分間にわたって遠心分離した。遠心分離後、沈殿された濃縮液から50μLの上清を移し、LC-MS/MS(Xevo TQ-S質量分析計に結合されたAcquity Ultra Performance LC(Waters))分析の前に50μLのELGA H2Oで希釈した。品質管理サンプルを分析に使用しなかった。濃縮液の較正範囲は、0.4~1000nmol/Lであり、透析液の較正範囲は、0.003~50nmol/Lであった。透析液中のチカグレロルのLLOQは、0.03nmol/Lであった。
【0221】
以下の表9は、上記の実施例に記載され、本明細書に開示される技術の特定の実施形態を例示するのに使用される例示的な抗体の概要を提供する。
【0222】
【表9-1】
【0223】
【表9-2】
【0224】
【表9-3】
【0225】
【表9-4】
【0226】
【表9-5】
【0227】
【表9-6】
【0228】
【表9-7】
【0229】
【表9-8】
【0230】
【表9-9】
【0231】
参照文献および援用
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3.Amsterdam EA,Wenger NK,Brindis RG,et al.2014 ACC/AHA guideline for the management of patients with non-ST-elevation acute coronary syndromes:a report of the American College of Cardiology/American Heart Association Task Force on Practice Guidelines.Circulation.2014;000:000-000 4.Storey RF,Angiolillo DJ,Patil SB,et al.Inhibitory effects of ticagrelor compared with clopidogrel on platelet function in patients with acute coronary syndromes:the PLATO(PLATelet inhibition and patient Outcomes)PLATELET substudy.J Am Coll Cardiol.2010;56(18):1456-1462.
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【0232】
本明細書に言及した刊行物および特許は全て、各個別の刊行物または特許を援用するために具体的に個々に示してかのようにその全体を本明細書に援用する。
【0233】
本開示の具体的な態様について考察してきたが、上記の記載は例示であり、限定するものではない。本明細書および下記の特許請求の範囲を検討すると、本開示の多くの変更形態が当業者には明らかになるであろう。本開示の全範囲は、特許請求の範囲をその均等物の全範囲と共に、および本明細書をその変更形態と共に参照して決定されるべきである。本発明は以下の態様も提供する。
[1] 式(Ia):
【化17】
(式中、
1 が、C 1 ~C 6 アルコキシおよびC 1 ~C 6 アルキルチオからなる群から選択され;
2 が、H、C 1 ~C 6 アルキル、置換C 1 ~C 6 アルキル、C 3 ~C 6 シクロアルキル、および置換C 3 ~C 6 シクロアルキルからなる群から選択され;および
3 が、H、C 1 ~C 6 アルキル、C 1 ~C 6 アルコキシ、およびC 1 ~C 6 アルカノールからなる群から選択される)
のシクロペンチルトリアゾロピリミジン化合物に特異的に結合する抗体。
[2] 式(IIa)
【化18】
として括弧で識別される前記化合物の部分内でエピトープにおいて前記式(Ia)の前記シクロペンチルトリアゾロピリミジン化合物に結合する、[1]に記載の抗体。
[3] 式(IIIa)
【化19】
(式中、R’ 1 が、C 1 ~C 4 アルキルからなる群から選択される)
として括弧で識別される前記化合物の部分内でエピトープにおいて前記式(Ia)の前記シクロペンチルトリアゾロピリミジン化合物に結合する、[1]に記載の抗体。
[4] 式(Ib):
【化20】
のシクロペンチルトリアゾロピリミジン化合物に特異的に結合する抗体。
[5] R 1 がC 1 ~C 6 アルキルチオである、[4]に記載の抗体。
[6] 式(Ib)の前記化合物が、チカグレロル((1S,2S,3R,5S)-3-[7-{[(1R,2S)-2-(3,4-ジフルオロフェニル)シクロプロピル]アミノ}-5-(プロピルチオ)-3H-[1,2,3]トリアゾロ[4,5-d]ピリミジン-3-イル]-5-(2-ヒドロキシエトキシ)シクロペンタン-1,2-ジオール)またはその代謝産物もしくは誘導体である、[4]に記載の抗体。
[7] 式(Ib)の前記化合物が、
【化21】
からなる群から選択される、[4]に記載の抗体。
[8] ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体、一本鎖Fv(scFv)、単一ドメイン抗体、Fab、F(ab’) 2 、一本鎖ダイアボディ、抗体模倣体、および抗体可変ドメインから選択される、[1]~[7]のいずれか一に記載の抗体。
[9] scFvを含む、[8]に記載の抗体。
[10] Fabを含む、[8]に記載の抗体。
[11] 約200nM以下のIC 50 を有してチカグレロルまたはその代謝産物もしくは誘導体に結合する、[1]~[10]のいずれか一に記載の抗体。
[12] 約100nM~約1nMの範囲のIC 50 を有してチカグレロルまたはその代謝産物もしくは誘導体に結合する、[1]~[10]のいずれか一に記載の抗体。
[13] 約10nM~約1nMの範囲のIC 50 を有してチカグレロルまたはチカグレロルの活性代謝産物に結合する、[1]~[10]のいずれか一に記載の抗体。
[14] 約50nM以下のKdを有してチカグレロルまたはその代謝産物もしくは誘導体に結合する、[1]~[10]のいずれか一に記載の抗体。
[15] 約250pM~約1pMの範囲のKdを有してチカグレロルまたはその代謝産物もしくは誘導体に結合する、[1]~[10]のいずれか一に記載の抗体。
[16] 約100pM~約1pMの範囲のKdを有してチカグレロルまたはチカグレロルの活性代謝産物に結合する、[1]~[10]のいずれか一に記載の抗体。
[17] フェノフィブラート、ニルバジピン、シロスタゾール、ブクラデシン、レガデノソン、シクロチアジド、シフルトリン、ロバスタチン、リネゾリド、シンバスタチン、カングレロル、パントプラゾール、アデノシン、アデノシン二リン酸、アデノシン三リン酸、2-MeSアデノシン二リン酸、および2-MeSアデノシン三リン酸からなる群から選択される化合物について約50μM以下のIC 50 を示す、[1]~[10]のいずれか一に記載の抗体。
[18] 約12時間の生体内半減期を有する、[1]~[10]のいずれか一に記載の抗体。
[19] チカグレロルまたはチカグレロルの活性代謝産物の抗血小板作用を中和する、[1]~[10]のいずれか一に記載の抗体。
[20] 投与から約30分以内にチカグレロルまたはチカグレロルの活性代謝産物の抗血小板作用を中和する、[1]~[10]のいずれか一に記載の抗体。
[21] チカグレロルまたはチカグレロルの活性代謝産物の存在下で、ADP誘導性血小板凝集を修復する、[1]~[10]のいずれか一に記載の抗体。
[22] 式(Ia):
【化22】
(式中、
1 が、C 1 ~C 6 アルコキシおよびC 1 ~C 6 アルキルチオからなる群から選択され;
2 が、H、C 1 ~C 6 アルキル、置換C 1 ~C 6 アルキル、C 3 ~C 6 シクロアルキル、および置換C 3 ~C 6 シクロアルキルからなる群から選択され;および
3 が、H、C 1 ~C 6 アルキル、C 1 ~C 6 アルコキシ、およびC 1 ~C 6 アルカノールからなる群から選択される)
のシクロペンチルトリアゾロピリミジン化合物に特異的に結合する抗体またはそのフラグメントであって、
配列番号2、配列番号12、配列番号22、配列番号32、配列番号42、配列番号52、配列番号62、および配列番号72からなる群から選択される重鎖可変領域(VH)配列;ならびに
配列番号7、配列番号17、配列番号27、配列番号37、配列番号47、配列番号57、配列番号67、および配列番号77からなる群から選択される軽鎖可変領域(VL)配列
を含む抗体またはそのフラグメント。
[23] 配列番号2および配列番号7;配列番号12および配列番号17;配列番号22および配列番号27;配列番号32および配列番号37;配列番号42および配列番号47;配列番号52および配列番号57;配列番号62および配列番号67;ならびに配列番号72および配列番号77からなる群から選択されるVHおよびVL配列の組み合わせを含む、[22]に記載の抗体。
[24] 配列番号52および配列番号57;配列番号62および配列番号67;ならびに配列番号72および配列番号77からなる群から選択されるVHおよびVLの組み合わせを含む、[23]に記載の抗体。
[25] 式(Ia):
【化23】
(式中、
1 が、C 1 ~C 6 アルコキシおよびC 1 ~C 6 アルキルチオからなる群から選択され;
2 が、H、C 1 ~C 6 アルキル、置換C 1 ~C 6 アルキル、C 3 ~C 6 シクロアルキル、および置換C 3 ~C 6 シクロアルキルからなる群から選択され;および
3 が、H、C 1 ~C 6 アルキル、C 1 ~C 6 アルコキシ、およびC 1 ~C 6 アルカノールからなる群から選択される)
のシクロペンチルトリアゾロピリミジン化合物に特異的に結合する抗体またはそのフラグメントであって、
重鎖可変領域および軽鎖可変領域のフレームワーク領域(FR)および相補性決定領域(CDR)1、2、および3を含み、ここで、前記重鎖可変領域のCDR1、CDR2、およびCDR3配列が、
配列番号3(CDR1)、配列番号4(CDR2)、および配列番号5(CDR3); 配列番号13(CDR1)、配列番号14(CDR2)、および配列番号15(CDR3);
配列番号23(CDR1)、配列番号24(CDR2)、および配列番号25(CDR3);
配列番号33(CDR1)、配列番号34(CDR2)、および配列番号35(CDR3);
配列番号43(CDR1)、配列番号44(CDR2)、および配列番号45(CDR3);
配列番号53(CDR1)、配列番号54(CDR2)、および配列番号55(CDR3);
配列番号63(CDR1)、配列番号64(CDR2)、および配列番号65(CDR3);または
配列番号73(CDR1)、配列番号74(CDR2)、および配列番号75(CDR3)
を含み;
前記軽鎖可変領域のCDR1、CDR2、およびCDR3配列が、
配列番号8(CDR1)、配列番号9(CDR2)、および配列番号10(CDR3);
配列番号18(CDR1)、配列番号19(CDR2)、および配列番号20(CDR3);
配列番号28(CDR1)、配列番号29(CDR2)、および配列番号30(CDR3);
配列番号38(CDR1)、配列番号39(CDR2)、および配列番号40(CDR3);
配列番号48(CDR1)、配列番号49(CDR2)、および配列番号50(CDR3);
配列番号58(CDR1)、配列番号59(CDR2)、および配列番号60(CDR3);
配列番号68(CDR1)、配列番号69(CDR2)、および配列番号70(CDR3);または
配列番号78(CDR1)、配列番号79(CDR2)、および配列番号80(CDR3)
を含む、抗体またはそのフラグメント。
[26] 配列番号53(VH CDR1)、配列番号54(VH CDR2)、配列番号55(VH CDR3)、配列番号58(VL CDR1)、配列番号59(VL CDR2)、および配列番号60(VL CDR3);
配列番号63(VH CDR1)、配列番号64(VH CDR2)、配列番号65(VH CDR3)、配列番号68(VL CDR1)、配列番号69(VL CDR2)、および配列番号70(VL CDR3);ならびに
配列番号73(VH CDR1)、配列番号74(VH CDR2)、配列番号75(VH CDR3)、配列番号78(VL CDR1)、配列番号79(VL CDR2)、および配列番号80(VL CDR3)
からなる群から選択されるCDR領域の組み合わせを含む、[25]に記載の抗体。
[27] ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体、一本鎖Fv(scFv)、単一ドメイン抗体、Fab、F(ab’) 2 、一本鎖ダイアボディ、抗体模倣体、および抗体可変ドメインから選択される、[22]~[26]のいずれか一に記載の抗体。
[28] scFvを含む、[27]に記載の抗体。
[29] Fabを含む、[27]に記載の抗体。
[30] 約100nM以下のIC 50 を有してチカグレロルまたはその代謝産物もしくは誘導体に結合する、[22]~[29]のいずれか一に記載の抗体。
[31] 約100nM~約1nMの範囲のIC 50 を有してチカグレロルまたはその代謝産物もしくは誘導体に結合する、[22]~[29]のいずれか一に記載の抗体。
[32] 約100nM~約1nMの範囲のIC 50 を有してチカグレロルまたはチカグレロルの活性代謝産物に結合する、[22]~[29]のいずれか一に記載の抗体。
[33] 約50nM以下のKdを有してチカグレロルまたはその代謝産物もしくは誘導体に結合する、[22]~[29]のいずれか一に記載の抗体。
[34] 約250pM~約1pMの範囲のKdを有してチカグレロルまたはその代謝産物もしくは誘導体に結合する、[22]~[29]のいずれか一に記載の抗体。
[35] 約100pM~約1pMの範囲のKdを有してチカグレロルまたはチカグレロルの活性代謝産物に結合する、[22]~[29]のいずれか一に記載の抗体。
[36] フェノフィブラート、ニルバジピン、シロスタゾール、ブクラデシン、レガデノソン、シクロチアジド、シフルトリン、ロバスタチン、リネゾリド、シンバスタチン、カングレロル、パントプラゾール、アデノシン、アデノシン二リン酸、アデノシン三リン酸、2-MeSアデノシン二リン酸、および2-MeSアデノシン三リン酸からなる群から選択される化合物について約50μM以下のIC 50 を示す、[22]~[29]のいずれか一に記載の抗体。
[37] 約12時間の生体内半減期を有する、[22]~[29]のいずれか一に記載の抗体。
[38] チカグレロルまたはチカグレロルの活性代謝産物の抗血小板作用を中和する、[22]~[29]のいずれか一に記載の抗体。
[39] 投与から約30分以内にチカグレロルまたはチカグレロルの活性代謝産物の抗血小板作用を中和する、[22]~[29]のいずれか一に記載の抗体。
[40] チカグレロルまたはチカグレロルの活性代謝産物の存在下で、ADP誘導性血小板凝集を修復する、[22]~[29]のいずれか一に記載の抗体。
[41] チカグレロルを投与された患者の急な出血を治療する方法であって、有効量の[1]~[40]のいずれか一に記載の抗体を前記患者に投与する工程を含む方法。
[42] 外科手術を受けたか、または受けており、かつチカグレロルを投与された患者の重度の出血を治療する方法であって、有効量の[1]~[40]のいずれか一に記載の抗体を前記患者に投与する工程を含む方法。
[43] チカグレロルを投与された患者の出血を予防する方法であって、有効量の[1]~[40]のいずれか一に記載の抗体を前記患者に投与する工程を含む方法。
[44] 患者における(P2Y 12 )受容体に対する、チカグレロルまたはその活性代謝産物の影響を阻害する方法であって、有効量の[1]~[40]のいずれか一に記載の抗体を前記患者に投与する工程を含む方法。
[45] 患者におけるP2Y 12 受容体に対する、チカグレロルまたはその活性代謝産物の結合を阻害する方法であって、有効量の[1]~[40]のいずれか一に記載の抗体を前記患者に投与する工程を含む方法。
[46] チカグレロルを投与された患者におけるADP誘導性血小板凝集を活性化する方法であって、有効量の[1]~[40]のいずれか一に記載の抗体を前記患者に投与する工程を含む方法。
[47] 前記患者が外科手術を受ける予定である、[43]~[46]のいずれか一に記載の方法。
[48] [22]~[26]のいずれか一に記載の抗体をコードする配列を含む核酸分子を含む組成物。
[49] 前記核酸分子が、配列番号1、配列番号6、配列番号11、配列番号16、配列番号21、配列番号26、配列番号31、配列番号36、配列番号41、配列番号46、配列番号51、配列番号56、配列番号61、配列番号66、配列番号71、または配列番号76を含む、[48]に記載の組成物。
[50] 配列番号1、配列番号6、配列番号11、配列番号16、配列番号21、配列番号26、配列番号31、配列番号36、配列番号41、配列番号46、配列番号51、配列番号56、配列番号61、配列番号66、配列番号71、または配列番号76を含む核酸分子を含むベクター。
[51] [50]に記載のベクターを含む宿主細胞。
[52] チカグレロルのシクロペンチル環上のヒドロキシエチル基を含むエピトープに結合しない、[1]~[10]または[22]~[29]のいずれか一に記載の抗体。
[53] チカグレロルのシクロプロピル-ジフルオロフェニル基を含むエピトープに結合する、[1]~[10]または[22]~[29]のいずれか一に記載の抗体。
[54] チカグレロルのシクロプロピル-ジフルオロフェニル基を含むエピトープに結合するが、チカグレロルのシクロペンチル環上のヒドロキシエチル基を含むエピトープに結合しない、[1]~[10]または[22]~[29]のいずれか一に記載の抗体。
図1
図2A
図2B
図2C
図3
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
図8C
図9
図10
図11
図12
【配列表】
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