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7027559超音波診断装置および超音波診断装置の制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-18
(45)【発行日】2022-03-01
(54)【発明の名称】超音波診断装置および超音波診断装置の制御方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 8/14 20060101AFI20220221BHJP
【FI】
A61B8/14
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020540108
(86)(22)【出願日】2019-07-01
(86)【国際出願番号】 JP2019026022
(87)【国際公開番号】W WO2020044770
(87)【国際公開日】2020-03-05
【審査請求日】2021-02-01
(31)【優先権主張番号】P 2018158383
(32)【優先日】2018-08-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100148080
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 史生
(72)【発明者】
【氏名】松本 剛
【審査官】三好 貴大
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-272025(JP,A)
【文献】特開2013-158348(JP,A)
【文献】狩野謙一,深部静脈血栓症(DVT)-みるのはたった2つ!-,治療,2018年05月,第100巻,第5号,第575-578頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 8/00-8/15
医中誌WEB
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】

被検体の膝窩静脈と総大腿静脈の少なくとも2点を圧迫検査する超音波診断装置であって、

超音波プローブと、

前記超音波プローブから前記被検体に向けて超音波ビームの送信を行って超音波画像を取得する画像取得部と、

前記画像取得部により取得された前記超音波画像に含まれる前記膝窩静脈を検出する静脈検出部と、

前記膝窩静脈の前記圧迫検査が行われる場合に、前記画像取得部により取得された前記超音波画像に前記膝窩静脈が1本のみ含まれる位置に前記超音波プローブを位置させるように、前記静脈検出部により検出された前記膝窩静脈の本数に基づいてユーザに前記超音波プローブの操作を案内する操作案内部と

を備えた超音波診断装置。
【請求項2】

前記操作案内部は、前記静脈検出部により前記膝窩静脈が1本のみ検出された場合に、前記超音波プローブの位置を固定するように前記ユーザに前記超音波プローブの操作を案内し、前記静脈検出部により複数本の前記膝窩静脈が検出された場合に、前記超音波プローブを前記被検体の膝裏の上方に移動させるように前記ユーザに案内する請求項1に記載の超音波診断装置。
【請求項3】

前記操作案内部により前記超音波プローブを前記被検体の膝裏の上方に移動するように案内された時点から、前記ユーザによる前記超音波プローブの移動範囲が、定められた範囲内であるか否かを判定するプローブ移動範囲判定部を備え、

前記操作案内部は、前記プローブ移動範囲判定部により前記超音波プローブの移動範囲が前記定められた移動範囲を超えたと判定された場合に、前記超音波プローブを前記被検体の膝裏に移動するように前記ユーザに案内する請求項1または2に記載の超音波診断装置。
【請求項4】

前記プローブ移動範囲判定部は、前記操作案内部により前記超音波プローブを前記膝裏の上方に移動するように前記超音波プローブの操作が案内された時点から、前記画像取得部により取得された複数の前記超音波画像のフレーム数が定められたフレーム数を超えた場合に、前記超音波プローブの移動範囲が前記定められた移動範囲を超えたと判定する請求項3に記載の超音波診断装置。
【請求項5】

前記プローブ移動範囲判定部は、前記操作案内部により前記超音波プローブを前記膝裏の上方に移動するように前記超音波プローブの操作が案内された時点からの経過時間が、定められた時間を超えた場合に、前記超音波プローブの移動範囲が前記定められた移動範囲を超えたと判定する請求項3に記載の超音波診断装置。
【請求項6】

前記超音波プローブは、加速度センサを有し、

前記加速度センサにより計測された前記超音波プローブの加速度に基づいて前記超音波プローブの移動距離を推定するプローブ移動距離推定部を備え、

前記プローブ移動範囲判定部は、前記操作案内部により前記超音波プローブを前記膝裏の上方に移動するように前記超音波プローブの操作が案内された時点から、前記プローブ移動距離推定部により推定された前記超音波プローブの移動距離が定められた距離を超えた場合に、前記超音波プローブの移動範囲が前記定められた移動範囲を超えたと判定する請求項3に記載の超音波診断装置。
【請求項7】

表示部を備え、

前記操作案内部は、前記ユーザに向けた前記超音波プローブの操作案内を前記表示部に表示する請求項1~6のいずれか一項に記載の超音波診断装置。
【請求項8】

被検体の膝窩静脈と総大腿静脈の少なくとも2点を圧迫検査する超音波診断装置の制御方法であって、

超音波プローブから前記被検体の膝裏に向けて超音波ビームの送信を行って超音波画像を取得し、

取得された前記超音波画像に含まれる前記膝窩静脈を検出し、

前記膝窩静脈の前記圧迫検査が行われる場合に、取得された前記超音波画像に前記膝窩静脈が1本のみ含まれる位置に前記超音波プローブを位置させるように、検出された前記膝窩静脈の本数に基づいてユーザに前記超音波プローブの操作を案内する超音波診断装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】

本発明は、超音波診断装置および超音波診断装置の制御方法に係り、特に、被検体の膝窩静脈の圧迫検査に用いられる超音波診断装置および超音波診断装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】

従来から、被検体の内部の画像を得る装置として、超音波診断装置が知られている。超音波診断装置は、一般的に、複数の素子が配列された振動子アレイが備えられた超音波プローブを備えている。この超音波プローブを被検体の体表に接触させた状態において、振動子アレイから被検体内に向けて超音波ビームが送信され、被検体からの超音波エコーを振動子アレイにおいて受信して素子データが取得される。さらに、超音波診断装置は、得られた素子データを電気的に処理して、被検体の当該部位に対する超音波画像を生成する。
【0003】

このような超音波診断装置を用いて被検体の血管を観察し、血管内における血栓の有無を検査することが、一般的に行われている。血管内の血栓に関する疾患として、例えば、DVT(Deep Vein Thrombosis:深部静脈血栓)と呼ばれる疾患が知られている。DVTは、深部静脈に血栓が生じる疾患であり、下腿部に発生することが多い。
【0004】

血栓が存在していない正常な深部静脈は、圧迫により容易に変形するが、血栓が生じた深部静脈は、圧迫により変形し難いため、超音波診断装置を用いて下腿部に発生したDVTを検査する方法としては、例えば、DVTが発生するおそれのある深部静脈を圧迫しながら、圧迫された深部静脈の横断面を観察する、いわゆる圧迫検査の方法が知られている。
【0005】

超音波診断装置においては、このような圧迫検査を精確に行うために種々の工夫がなされている。例えば、特許文献1に、深部静脈の圧迫検査に際して、取得されたフレーム毎に深部静脈を認識して静脈径を算出し、静脈径が最大となるフレームの超音波画像と最小となるフレームの超音波画像とを並べて表示部に表示する超音波診断装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】

【文献】特開2008-272025号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】

ところで、被検体の下腿部に発生したDVTを素早く発見する方法として、膝窩静脈と総大腿静脈の2点のみを圧迫検査するいわゆる2点圧迫法が知られている。膝窩静脈は、通常、超音波プローブを被検体の膝裏に接触させた場合に1本の血管として観察されるが、被検体によっては膝裏よりも上方において膝窩静脈が分岐していることがあり、超音波プローブを被検体の膝裏に接触させた場合に例えば2本の細い血管として観察される。ここで、一般的に、太い静脈ほど大きい血栓が生じやすく、静脈の内壁から血栓が剥がれ、静脈の中枢側に流れると、肺塞栓症等が引き起こされるおそれが高くなるため、静脈の分岐部分よりも上方において圧迫検査することが望ましい。しかしながら、例えば、熟練度の低いユーザは、静脈が膝裏よりも上方において分岐している場合であっても、膝裏から超音波プローブの位置を移動することなく圧迫検査を行うおそれがあった。このような場合には、特許文献1に開示されている超音波診断装置でも、適切な検査結果が得られないという問題があった。
【0008】

本発明は、このような従来の問題点を解消するためになされ、ユーザの熟練度に関わらず適切な位置において圧迫検査を行うことができる超音波診断装置および超音波診断装置の制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】

上記目的を達成するために、本発明の超音波診断装置は、被検体の膝窩静脈と総大腿静脈の少なくとも2点を圧迫検査する超音波診断装置であって、超音波プローブと、超音波プローブから被検体に向けて超音波ビームの送信を行って超音波画像を取得する画像取得部と、画像取得部により取得された超音波画像に含まれる膝窩静脈を検出する静脈検出部と、膝窩静脈の圧迫検査が行われる場合に、画像取得部により取得された超音波画像に膝窩静脈が1本のみ含まれる位置に超音波プローブを位置させるように、静脈検出部により検出された膝窩静脈の本数に基づいてユーザに超音波プローブの操作を案内する操作案内部とを備えることを特徴とする。
【0010】

操作案内部は、静脈検出部により膝窩静脈が1本のみ検出された場合に、超音波プローブの位置を固定するようにユーザに超音波プローブの操作を案内し、静脈検出部により複数本の膝窩静脈が検出された場合に、超音波プローブを被検体の膝裏の上方に移動させるようにユーザに案内することが好ましい。

操作案内部により超音波プローブを被検体の膝裏の上方に移動するように案内された時点から、ユーザによる超音波プローブの移動範囲が、定められた範囲内であるか否かを判定するプローブ移動範囲判定部を備え、操作案内部は、プローブ移動範囲判定部により超音波プローブの移動範囲が定められた移動範囲を超えたと判定された場合に、超音波プローブを被検体の膝裏に移動するようにユーザに案内することが好ましい。
【0011】

この際に、プローブ移動範囲判定部は、操作案内部により超音波プローブを膝裏の上方に移動するように超音波プローブの操作が案内された時点から、画像取得部により取得された複数の超音波画像のフレーム数が定められたフレーム数を超えた場合に、超音波プローブの移動範囲が定められた移動範囲を超えたと判定することができる。

あるいは、プローブ移動範囲判定部は、操作案内部により超音波プローブを膝裏の上方に移動するように超音波プローブの操作が案内された時点からの経過時間が、定められた時間を超えた場合に、超音波プローブの移動範囲が定められた移動範囲を超えたと判定することもできる。
【0012】

また、超音波プローブは、加速度センサを有し、加速度センサにより計測された超音波プローブの加速度に基づいて超音波プローブの移動距離を推定するプローブ移動距離推定部を備え、プローブ移動範囲判定部は、操作案内部により超音波プローブを膝裏の上方に移動するように超音波プローブの操作が案内された時点から、プローブ移動距離推定部により推定された超音波プローブの移動距離が定められた距離を超えた場合に、超音波プローブの移動範囲が定められた移動範囲を超えたと判定することもできる。

また、表示部を備え、操作案内部は、ユーザに向けた超音波プローブの操作案内を表示部に表示することができる。
【0013】

本発明の超音波診断装置の制御方法は、被検体の膝窩静脈と総大腿静脈の少なくとも2点を圧迫検査する超音波診断装置の制御方法であって、超音波プローブから被検体の膝裏に向けて超音波ビームの送信を行って超音波画像を取得し、取得された超音波画像に含まれる膝窩静脈を検出し、膝窩静脈の圧迫検査が行われる場合に、取得された超音波画像に膝窩静脈が1本のみ含まれる位置に超音波プローブを位置させるように、検出された膝窩静脈の本数に基づいてユーザに超音波プローブの操作を案内することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】

本発明によれば、超音波診断装置は、画像取得部により取得された超音波画像に含まれる膝窩静脈を検出する静脈検出部と、膝窩静脈の圧迫検査が行われる場合に、画像取得部により取得された超音波画像に膝窩静脈が1本のみ含まれる位置に超音波プローブを位置させるように、静脈検出部により検出された膝窩静脈の本数に基づいてユーザに超音波プローブの操作を案内する操作案内部とを備えているため、ユーザの熟練度に関わらず適切な位置において圧迫検査を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】

図1】本発明の実施の形態1に係る超音波診断装置の構成を示すブロック図である。
図2】本発明の実施の形態1における受信部の内部構成を示すブロック図である。
図3】本発明の実施の形態1における画像生成部の内部構成を示すブロック図である。
図4】本発明の実施の形態1に係る超音波診断装置の動作を表すフローチャートである。
図5】本発明の実施の形態1における操作案内の例を示す図である。
図6】本発明の実施の形態1における操作案内の別の例を示す図である。
図7】本発明の実施の形態2に係る超音波診断装置の構成を示すブロック図である。
図8】本発明の実施の形態2に係る超音波診断装置の動作を表すフローチャートである。
図9】本発明の実施の形態2の変形例に係る超音波診断装置の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】

以下、この発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。

実施の形態1

図1に、本発明の実施の形態1に係る超音波診断装置1の構成を示す。図1に示すように、超音波診断装置1は、振動子アレイ2を備えており、振動子アレイ2に送信部3および受信部4がそれぞれ接続されている。受信部4には、画像生成部5、表示制御部6および表示部7が順次接続されている。ここで、送信部3、受信部4および画像生成部5により、画像取得部8が構成されている。また、画像生成部5に、静脈検出部9が接続され、静脈検出部9に操作案内部10が接続されている。また、操作案内部10は、表示制御部6に接続されている。
【0017】

さらに、表示制御部6、画像取得部8、静脈検出部9、操作案内部10に、装置制御部12が接続されており、装置制御部12に、入力部13および格納部14が接続されている。ここで、装置制御部12と格納部14とは、双方向に情報の受け渡しが可能に接続されている。

また、振動子アレイ2は、超音波プローブ15に含まれており、表示制御部6、画像取得部8、静脈検出部9、操作案内部10および装置制御部12により、プロセッサ16が構成されている。
【0018】

図1に示す超音波プローブ15の振動子アレイ2は、1次元または2次元に配列された複数の振動子を有している。これらの振動子は、それぞれ送信部3から供給される駆動信号に従って超音波を送信し、かつ、被検体からの超音波エコーを受信して受信信号を出力する。各振動子は、例えば、PZT(Lead Zirconate Titanate:チタン酸ジルコン酸鉛)に代表される圧電セラミック、PVDF(Poly Vinylidene Di Fluoride:ポリフッ化ビニリデン)に代表される高分子圧電素子およびPMN-PT(Lead Magnesium Niobate-Lead Titanate:マグネシウムニオブ酸鉛-チタン酸鉛固溶体)に代表される圧電単結晶等からなる圧電体の両端に電極を形成することにより構成される。
【0019】

画像取得部8の送信部3は、例えば、複数のパルス発生器を含んでおり、装置制御部12からの制御信号に応じて選択された送信遅延パターンに基づいて、振動子アレイ2の複数の振動子から送信される超音波が超音波ビームを形成するように、それぞれの駆動信号を、遅延量を調節して複数の振動子に供給する。このように、振動子アレイ2の複数の振動子の電極にパルス状または連続波状の電圧が印加されると、圧電体が伸縮し、それぞれの振動子からパルス状または連続波状の超音波が発生して、それらの超音波の合成波から、超音波ビームが形成される。
【0020】

送信された超音波ビームは、例えば、被検体の部位等の対象において反射され、超音波プローブ15の振動子アレイ2に向かって伝搬する。このように振動子アレイ2に向かって伝搬する超音波エコーは、振動子アレイ2を構成するそれぞれの振動子により受信される。この際に、振動子アレイ2を構成するそれぞれの振動子は、伝搬する超音波エコーを受信することにより伸縮して電気信号を発生させ、これらの電気信号を受信部4に出力する。
【0021】

画像取得部8の受信部4は、装置制御部12からの制御信号に従って、振動子アレイ2から出力される受信信号の処理を行う。図2に示すように、受信部4は、増幅部17およびAD(Analog Digital)変換部18が直列接続された構成を有している。増幅部17は、振動子アレイ2を構成するそれぞれの振動子から入力された受信信号を増幅し、増幅した受信信号をAD変換部18に送信する。AD変換部18は、増幅部17から送信された受信信号をデジタル化されたデータに変換し、これらのデータを画像取得部8の画像生成部5に送出する。
【0022】

画像取得部8の画像生成部5は、図3に示すように、信号処理部19、DSC(Digital Scan Converter:デジタルスキャンコンバータ)20および画像処理部21が直列接続された構成を有している。信号処理部19は、装置制御部12からの制御信号に応じて選択された受信遅延パターンに基づき、受信信号の各データにそれぞれの遅延を与えて加算(整相加算)を施す、受信フォーカス処理を行う。この受信フォーカス処理により、超音波エコーの焦点が1つの走査ラインに絞り込まれた音線信号が生成される。また、信号処理部19は、生成された音線信号に対して、超音波が反射した位置の深度に応じて伝搬距離に起因する減衰の補正を施した後、包絡線検波処理を施して、被検体内の組織を表すBモード画像信号を生成する。このように生成されたBモード画像信号は、DSC20に出力される。
【0023】

画像生成部5のDSC20は、Bモード画像信号を通常のテレビジョン信号の走査方式に従う画像信号にラスター変換して超音波画像を生成する。画像生成部5の画像処理部21は、DSC20において得られた画像データに対して、明るさ補正、諧調補正、シャープネス補正および色補正等の各種の必要な画像処理を施した後、超音波画像を表示制御部6および静脈検出部9に出力する。
【0024】

プロセッサ16の静脈検出部9は、画像取得部8により取得された超音波画像に対して画像解析を行って、膝窩静脈を検出し、検出された膝窩静脈の本数を算出する。この際に、静脈検出部9は、例えば、超音波画像に含まれる膝窩静脈の横断面を認識することにより、膝窩静脈を検出する。ここで、膝窩静脈の横断面とは、膝窩静脈の中心軸を横断するように切断した際の膝窩静脈の断面を表す。より具体的には、静脈検出部9は、例えば、典型的なパターンデータをテンプレートとして予め記憶しておき、画像内をテンプレートにおいてサーチしながらパターンデータに対する類似度を算出し、類似度が閾値以上かつ最大となった場所に膝窩静脈が存在するとみなすことにより、膝窩静脈の横断面を認識することができる。ここで、超音波画像に膝窩静脈の周辺に存在する動脈が含まれていることがあるが、静脈検出部9は、膝窩静脈と動脈との典型的な位置関係、動脈の典型的な直径に対する膝窩静脈の典型的な直径の相対値等に基づいて、テンプレート等を用いたパターン認識により、膝窩静脈を認識することができる。また、静脈検出部9は、パターン認識に加え、いわゆるドプラ信号を補助的に用いて膝窩静脈を認識することもできる。
【0025】

類似度の算出には、単純なテンプレートマッチングの他に、例えば、Csurka et al.: Visual Categorization with Bags of Keypoints, Proc. of ECCV Workshop on Statistical Learning in Computer Vision, pp.59-74 (2004)に記載されている機械学習手法、あるいは、Krizhevsk et al.: ImageNet Classification with Deep Convolutional Neural Networks, Advances in Neural Information Processing Systems 25, pp.1106-1114 (2012)に記載されているディープラーニング(Deep leaning:深層学習)を用いた一般画像認識手法等を用いることができる。ここで、ディープラーニングを用いた一般画像認識手法としては、例えば、膝窩静脈を含む超音波画像を正、膝窩静脈を含んでいない超音波画像を負とした畳み込みニューラルネットワーク(CNN:Convolutional Neural Network)による画像分類、U-Net等のアップサンプリング層を備えるニューラルネットワークを用いた静脈領域および動脈領域のセマンティックセグメンテーション(Semantic Segmentation)、Mask-R-CNN等のバウンディングボックス検出モデルによる静脈検出等が挙げられる。
【0026】

また、一般に、深部静脈に血栓が生じる疾患であるDVTが知られており、DVTは、下腿部に発生することが多い。ここで、血栓が存在していない正常な深部静脈は、圧迫により容易に変形するが、血栓が生じた深部静脈は、圧迫により変形し難いため、DVTに対する検査として、例えば、DVTが発生するおそれのある深部静脈を圧迫しながら、圧迫された深部静脈の横断面を観察する、いわゆる圧迫検査が行われる。さらに、被検体の下腿部に発生したDVTを素早く発見する方法として、膝窩静脈と総大腿静脈の少なくとも2点のみを圧迫検査するいわゆる2点圧迫法が知られている。膝窩静脈は、通常、超音波プローブを被検体の膝裏に接触させた場合に1本の血管として観察されるが、被検体によっては、膝裏よりも上方において静脈が分岐していることがあり、超音波プローブを被検体の膝裏に接触させた場合に複数本の細い血管として観察される。一般的に、太い静脈ほど大きい血栓が生じやすく、静脈の内壁から血栓が剥がれ、静脈の中枢側に流れると、肺塞栓症等が引き起こされるおそれが高くなるため、静脈の分岐部分よりも上方、すなわち膝窩静脈が1本のみ観察される位置において圧迫検査がなされることが望ましい。
【0027】

プロセッサ16の操作案内部10は、膝窩静脈の圧迫検査が行われる際に、画像生成部5により取得された超音波画像に膝窩静脈が1本のみ含まれる位置に超音波プローブ15を位置させるように、静脈検出部9により検出された膝窩静脈の本数に応じて、ユーザに超音波プローブ15の操作を案内する。例えば、操作案内部10は、ユーザにより超音波プローブ15が被検体の膝裏に位置されており、静脈検出部9により膝窩静脈が1本のみ検出された場合に、超音波プローブ15の位置をその場で固定するようにユーザに案内し、静脈検出部9により2本の膝窩静脈が検出された場合に、超音波プローブ15を膝裏の上方に移動させるようにユーザに案内する。これにより、膝窩静脈が膝裏の上方において分岐している場合に、ユーザが膝裏において圧迫検査を行うことが防止される。
【0028】

また、この際に、操作案内部10は、例えば、ユーザへの案内を表すテキストおよび画像等を表示部7に表示させることにより、ユーザに超音波プローブ15の操作を案内することができる。また、例えば、図示しないが、音声を発する音声発生部を超音波診断装置1に設けることができ、操作案内部10は、音声発生部を介して、音声によりユーザへの案内を行うこともできる。
【0029】

プロセッサ16の装置制御部12は、格納部14等に予め記憶されているプログラムおよび入力部13を介したユーザの操作に基づいて、超音波診断装置1の各部の制御を行う。

プロセッサ16の表示制御部6は、装置制御部12の制御の下、画像取得部8の画像生成部5により生成された超音波画像に所定の処理を施して、表示部7に超音波画像を表示させる。
【0030】

超音波診断装置1の表示部7は、表示制御部6による制御の下、超音波画像を表示し、例えば、LCD(Liquid Crystal Display:液晶ディスプレイ)、有機ELディスプレイ(Organic Electroluminescence Display)等のディスプレイ装置を含む。

超音波診断装置1の入力部13は、ユーザが入力操作を行うための装置であり、キーボード、マウス、トラックボール、タッチパッドおよびタッチパネル等を備えて構成することができる。
【0031】

格納部14は、超音波診断装置1の動作プログラム等を格納し、HDD(Hard Disc Drive:ハードディスクドライブ)、SSD(Solid State Drive:ソリッドステートドライブ)、FD(Flexible Disc:フレキシブルディスク)、MOディスク(Magneto-Optical disc:光磁気ディスク)、MT(Magnetic Tape:磁気テープ)、RAM(Random Access Memory:ランダムアクセスメモリ)、CD(Compact Disc:コンパクトディスク)、DVD(Digital Versatile Disc:デジタルバーサタイルディスク)、SDカード(Secure Digital card:セキュアデジタルカード)、USBメモリ(Universal Serial Bus memory:ユニバーサルシリアルバスメモリ)等の記録メディア、またはサーバ等を用いることができる。
【0032】

なお、表示制御部6、画像取得部8、静脈検出部9、操作案内部10および装置制御部12を有するプロセッサ16は、CPU(Central Processing Unit:中央処理装置)、および、CPUに各種の処理を行わせるための制御プログラムから構成されるが、FGPA(Field Programmable Gate Array:フィードプログラマブルゲートアレイ)、DSP(Digital Signal Processor:デジタルシグナルプロセッサ)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit:アプリケーションスペシフィックインテグレイテッドサーキット)、その他のIC(Integrated Circuit:集積回路)を用いて構成されてもよく、もしくはそれらを組み合わせて構成されてもよい。
【0033】

また、プロセッサ16の表示制御部6、画像取得部8、静脈検出部9、操作案内部10および装置制御部12を部分的にあるいは全体的に1つのCPUに統合させて構成することもできる。
【0034】

次に、図4に示すフローチャートを用いて、実施の形態1における超音波診断装置1の動作を詳細に説明する。図4に示すフローチャートは、被検体の膝窩静脈を圧迫検査する際の超音波診断装置1の動作を表している。

まず、ステップS1において、操作案内部10は、被検体の膝裏に超音波プローブ15を位置させるように、ユーザに対して案内する。図示しないが、この際に、操作案内部10は、例えば、被検体の膝裏に超音波プローブ15を位置させる旨のテキストを表示部7に表示させることができる。このようにして、操作案内部10により、ユーザに対する案内がなされると、ユーザは、超音波プローブ15を操作して、被検体の膝裏に位置させる。
【0035】

次に、ステップS2において、超音波プローブ15の振動子アレイ2から被検体の膝裏に向けて超音波ビームが送信され、被検体の膝裏から振動子アレイ2に向かって伝搬された超音波エコーに基づいて、振動子アレイ2により受信信号が生成される。このようにして生成された受信信号は、画像取得部8の受信部4および画像生成部5により順次処理されることにより、被検体の膝裏の断面を表す超音波画像が取得される。
【0036】

ステップS3において、静脈検出部9は、ステップS2で取得された超音波画像に対して画像処理を行うことにより、超音波画像に含まれる膝窩静脈を検出し、検出された膝窩静脈の本数を算出する。この際に、静脈検出部9は、例えば、超音波画像に含まれる血管の横断面を認識し、認識された血管の直径、血管壁の厚み、血管の横断面の円形度等に基づいて認識された血管が静脈か動脈かを判断することにより、静脈を検出することができる。
【0037】

続くステップS4において、操作案内部10は、ステップS3で検出された膝窩静脈の本数を表す情報を静脈検出部9から受け取ることにより、ステップS3で検出された膝窩静脈の本数が1本であるか複数本であるかを判定する。さらに、操作案内部10は、ステップS3で検出された膝窩静脈が1本であるか複数本であるかに基づいて、ステップS2で取得された超音波画像に膝窩静脈を1本のみ含ませて、膝窩静脈の圧迫検査が行われる位置に超音波プローブ15を位置させるように、ユーザに超音波プローブ15の操作を案内する。
【0038】

ステップS4において、ステップS3で検出された膝窩静脈の本数が複数本であると判定された場合には、ステップS5に進む。ステップS5において、操作案内部10は、超音波プローブ15を被検体の膝裏の上方に平行移動する旨をユーザに対して案内する。この際に、操作案内部10は、例えば、図5に示すように、ユーザへの案内を表すテキストを含むガイドパネルG1を表示部7に表示させることにより、ユーザに超音波プローブ15の操作を案内することができる。図5に示す例では、2本の膝窩静脈V1およびV2と、1本の動脈A1を含む超音波画像U1に重畳して、「プローブを上に平行移動してください」というテキストを含むガイドパネルG1が表示されている。このようにして、超音波プローブ15の操作がユーザに対して案内されると、ユーザは、被検体の膝裏の上方に超音波プローブ15を平行移動する。これにより、膝窩静脈が膝裏の上方において分岐している場合に、ユーザが膝裏において圧迫検査を行うことが防止される。
【0039】

このようにして、ユーザにより超音波プローブ15が膝裏の上方に平行移動された状態において、ステップS2に戻り、画像取得部8により新たに超音波画像が取得される。

ステップS3において、静脈検出部9は、ステップS2で新たに取得された超音波画像に含まれる膝窩静脈を検出し、検出された膝窩静脈の本数を算出する。

続くステップS4において、操作案内部10は、ステップS3で検出された膝窩静脈の本数が1本のみであるか複数本であるかを判定し、膝窩静脈の本数が1本のみであるか複数本であるかに応じて、互いに異なる案内をユーザに対して行う。
【0040】

ステップS4で膝窩静脈の本数が複数本であると判定された場合には、ステップS5に進み、超音波プローブ15を膝裏の上方に平行移動する旨の案内が操作案内部10によりなされる。このようにして、ステップS4において膝窩静脈の本数が1本のみであると判定されるまで、ステップS2~ステップS5の処理が繰り返される。
【0041】

ステップS4で膝窩静脈の本数が1本であると判定された場合には、ステップS6に進む。ステップS6において、操作案内部10は、超音波プローブ15の位置をその場で固定し、圧迫検査を行う旨をユーザに対して案内する。この際に、操作案内部10は、例えば、図6に示すように、ユーザへの案内を表すテキストを含むガイドパネルG2を表示部7に表示させることにより、ユーザに超音波プローブ15の操作を案内することができる。図6に示す例では、膝窩静脈V3の横断面および動脈A2の横断面をそれぞれ1本のみ含む超音波画像U2に重畳して、「プローブの位置を固定して圧迫検査をしてください」というテキストを含むガイドパネルG2が表示されている。このようにして、超音波プローブ15の操作がユーザに対して案内されると、ユーザは、超音波プローブ15の位置を移動しないで、圧迫検査を行う。これにより、被検体の膝窩静脈を圧迫検査する際の超音波診断装置1の動作が終了する。
【0042】

以上により、実施の形態1に係る超音波診断装置1によれば、超音波画像に含まれる膝窩静脈を検出し、特に、複数の膝窩静脈が検出された場合に、膝窩静脈の圧迫検査に関して適切な位置に超音波プローブ15を位置させるように、ユーザに超音波プローブ15の操作を案内するため、ユーザの熟練度に関わらず適切な位置において圧迫検査を行うことができる。
【0043】

なお、実施の形態1では、画像取得部8の送信部3および受信部4はプロセッサ16に含まれているが、プロセッサ16に含まれる代わりに超音波プローブ15に含まれることもできる。
【0044】

また、実施の形態1において、静脈検出部9は、超音波画像に含まれる膝窩静脈を検出する際に、パターン認識等の手法を用いて膝窩静脈を検出しているが、動脈と静脈とを判別する手法を補助的に用いることにより、膝窩静脈の検出精度を向上させることができる。
【0045】

例えば、静脈検出部9は、超音波画像に対して画像解析を行うことにより、静脈と動脈とを判別することができる。ここで、一般的に、静脈の血管壁は動脈の血管壁よりも薄く、静脈の内圧は動脈の内圧よりも低く、静脈の横断面の円形度は動脈の横断面の円形度よりも低いため、静脈検出部9は、例えば、超音波画像に含まれる血管の横断面の直径、血管壁の厚み、血管の横断面の円形度に基づいて静脈と動脈とを判別することができる。例えば、静脈検出部9は、静脈と動脈における横断面の直径の差、血管壁の厚みの差、横断面の円形度の差等をテンプレートおよび機械学習手法における特徴量ベクトルに反映させることにより、超音波画像に含まれる静脈および動脈を認識することができる。また、例えば、静脈検出部9は、U-Net等のディープラーニングにより、静脈と動脈における横断面の直径の差、血管壁の厚みの差、横断面の円形度の差等を用いて、静脈と動脈とを分類することもできる。
【0046】

また、動脈は心臓の拍動に対応して拍動するが、静脈は拍動しないため、例えば、静脈検出部9は、超音波画像に含まれる血管が拍動しているか否かを判定することにより、静脈と動脈とを判別することができる。より具体的には、例えば、静脈検出部9は、超音波プローブ15の位置が固定された状態において画像取得部8により順次取得される超音波画像に対して、超音波画像に含まれる血管の直径を算出し、直径が周期的に変動している血管を動脈と判断し、直径が周期的に変動しない血管を静脈と判断することができる。
【0047】

また、拍動に伴う血管壁の動きをいわゆるドプラ信号により取得することにより、静脈と動脈を判別することもできる。より具体的には、例えば、図示しないが、受信部4により生成されたデータを周波数解析することによりいわゆるドプラ信号を生成するドプラ処理部を超音波診断装置1に設けることができ、静脈検出部9は、ドプラ処理部により得られたドプラ信号の信号強度が周期的に変化する血管を動脈と判断し、ドプラ信号の信号強度の変化がより少ない血管を静脈と判断することができる。

また、例えば、静脈検出部9は、これらの複数の判別方法を任意に組み合わせることにより、静脈と動脈を判別することもできる。また、静脈検出部9は、例えば、ディープラーニング等の一般画像認識手法により、これらの複数の判別手法を学習することにより、膝窩静脈を検出することもできる。より具体的には、静脈検出部9は、例えば、ドプラ信号に基づくドプラ画像を用いてディープラーニングにより静脈と動脈の分類、検出等を行うことができる。また、静脈検出部9は、例えば、血管であると分類された領域毎に血管の直径および面積等の変化率を算出し、複数フレームの超音波画像を用いて静脈と動脈を判断することもできる。
【0048】

また、実施の形態1では、ステップS4において超音波画像に含まれる膝窩静脈が1本のみであると判断されるまでステップS2~ステップS5の処理が繰り返される。この際に、例えば、ステップS3の静脈検出処理の代わりに、画像取得部8により順次取得される超音波画像において膝窩静脈の位置を追従させることにより、複数本の膝窩静脈が1本の膝窩静脈に合流する分岐点を検出し、超音波画像に含まれる膝窩静脈の本数が1本のみであるか否かを表す情報を得ることができる。例えば、このような処理を行うために、図示しないが、画像取得部8により順次取得される超音波画像に対して、互いに隣接するフレーム間のパターンマッチング等を行うことにより超音波画像に含まれる膝窩静脈の位置を追従し、複数本の膝窩静脈が1本の膝窩静脈に合流する分岐点を検出する分岐点検出部を、超音波診断装置1に設けることができる。これにより、新たに超音波画像が取得される毎に静脈検出処理を行う必要がないため、超音波診断装置1の計算負荷を軽減することができる。
【0049】

また、ステップS4において超音波画像に複数の膝窩静脈が含まれていると判別された際に、例えば、画像取得部8により順次取得された超音波画像に対して行われた静脈検出処理の結果に基づいて、膝窩静脈の3次元的な構造を表す3次元データを生成する図示しない3次元データ生成部を超音波診断装置1に設けることもできる。この場合に、操作案内部10は、3次元データ生成部により生成された3次元データに基づいて、膝窩静脈の圧迫検査を行うための適切な位置に超音波プローブ15を位置させるように、ユーザに対する案内を行うことができる。
【0050】

また、2点圧迫法を用いるDVTの検査においては、被検体の膝窩静脈に対する圧迫検査の他に、総大腿静脈に対する圧迫検査も行われるため、例えば、操作案内部10は、超音波プローブ15を、被検体の膝裏および鼠径部に位置させるように、ユーザに対する案内を行うこともできる。この際に、例えば、図示しないが、画像取得部8により取得された超音波画像に含まれる被検体の部位を認識し、超音波プローブ15が膝裏に位置しているか、あるいは鼠径部に位置しているかを判別するプローブ位置判別部を超音波診断装置1に設けることができ、操作案内部10は、プローブ位置判別部による判別結果に基づいて、超音波プローブ15を膝裏および鼠径部に位置させるようにユーザに案内することができる。
【0051】

また、一般に、膝裏と鼠径部とでは硬さが異なるため、例えば、いわゆるエラストグラフィ画像を生成し、生成されたエラストグラフィ画像から、超音波画像に含まれる部位の硬さを検出する硬さ検出部を超音波診断装置1に設けることができ、プローブ位置判別部は、硬さ検出部により検出された部位の硬さに基づいて、超音波プローブ15が膝裏に位置しているか、あるいは鼠径部に位置しているかを判別することができる。
【0052】

実施の形態2

実施の形態1では、静脈検出部9により複数本の膝窩静脈が検出された場合に、膝窩静脈が1本のみ検出されるまで、超音波プローブ15を膝裏の上方に移動させながら超音波画像が取得されているが、超音波プローブ15が上方に移動しすぎないように、超音波プローブ15の移動範囲を定めることができる。

図7に、実施の形態2に係る超音波診断装置1Aの構成を示す。実施の形態2の超音波診断装置1Aは、図1に示す実施の形態1の超音波診断装置1において、装置制御部12の代わりに装置制御部12Aが備えられ、プローブ移動範囲判定部22が追加されている。
【0053】

実施の形態2の超音波診断装置1Aにおいて、操作案内部10にプローブ移動範囲判定部22が接続されている。また、表示制御部6、画像取得部8、静脈検出部9、操作案内部10、入力部13、格納部14およびプローブ移動範囲判定部22に、装置制御部12Aが接続されている。さらに、表示制御部6、画像取得部8、静脈検出部9、操作案内部10、プローブ移動範囲判定部22および装置制御部12Aにより、プロセッサ16Aが構成されている。
【0054】

プロセッサ16Aのプローブ移動範囲判定部22は、静脈検出部9により複数の膝窩静脈が検出され、操作案内部10により超音波プローブ15を被検体の膝裏の上方に移動する旨の案内がなされた時点から、ユーザによる超音波プローブ15の移動範囲が定められた範囲内であるか否かを判定する。例えば、プローブ移動範囲判定部22は、操作案内部10により超音波プローブ15を膝裏の上方に移動する旨の案内がなされた時点から、定められたフレーム数よりも多数の超音波画像が画像取得部8により取得された場合、あるいは、定められた時間が経過した場合に、超音波プローブ15の移動範囲が定められた範囲を超えたと判断することができる。

なお、超音波プローブ15の定められた移動範囲を表す定められたフレーム数、定められた時間等は、プローブ移動範囲判定部22および格納部14等に予め記憶されていることができる。
【0055】

次に、図8に示すフローチャートを用いて実施の形態2に係る超音波診断装置1Aの動作を説明する。このフローチャートは、膝裏の圧迫検査をする際の超音波診断装置1Aの操作を表しており、図4に示す実施の形態1のフローチャートにおいて、ステップS7およびステップS8が追加されている。

まず、ステップS1において、操作案内部10は、被検体の膝裏に超音波プローブ15を位置させる旨の案内をユーザに対して行う。この際に、操作案内部10は、図5に示すように、ユーザに向けた案内を表すテキストを含むガイドパネルG1を表示部7に表示させることができる。また、このような操作案内部10による案内に従って、ユーザは、超音波プローブ15を被検体の膝裏に位置させる。
【0056】

ステップS2において、画像取得部8により超音波画像が取得されるとステップS3に進み、静脈検出部9により、取得された超音波画像に含まれる膝窩静脈が検出され、さらに、検出された膝窩静脈の本数が算出される。

続くステップS4において、操作案内部10は、ステップS3で検出された膝窩静脈が1本のみであるか、あるいは複数本であるかを判定する。ステップS4において、膝窩静脈の本数が複数本であると判定された場合には、ステップS5に進み、操作案内部10により、超音波プローブ15を膝裏の上方に平行移動する旨の案内がなされる。これにより、ユーザは、超音波プローブ15を膝裏の上方に平行移動させる。
【0057】

ステップS5で超音波プローブ15を膝裏の上方に平行移動する旨の案内がなされると、ステップS7において、プローブ移動範囲判定部22は、ユーザにより移動された超音波プローブ15の移動範囲が定められた範囲内であるか否かを判定する。この際に、プローブ移動範囲判定部22は、例えば、操作案内部10により超音波プローブ15を膝裏の上方に移動する旨の案内がなされた時点から、定められたフレーム数よりも多数の超音波画像が画像取得部8により取得された場合、あるいは、定められた時間が経過した場合に、超音波プローブ15の移動範囲が定められた範囲を超えたと判断することができる。
【0058】

ステップS7において超音波プローブ15の移動範囲が定められた範囲内であると判定された場合には、ステップS2に戻る。ステップS2では、画像取得部8により超音波画像が新たに取得され、ステップS3において、新たに取得された超音波画像に含まれる膝窩静脈が検出される。続くステップS4において、ステップS3で検出された膝窩静脈が1本のみであるか複数本であるかが判定される。ステップS4において、検出された膝窩静脈が複数本であると判定された場合には、ステップS5に進み、操作案内部10により、超音波プローブ15を膝裏の上方に平行移動する旨の案内がなされる。
【0059】

さらに、ステップS7において、プローブ移動範囲判定部22により、ユーザにより移動された超音波プローブ15の移動範囲が定められた範囲内であるか否かが判定される。

ステップS7において、超音波プローブ15の移動範囲が定められた範囲内であると判定された場合には、ステップS2に戻る。このように、ステップS4で、検出された膝窩静脈の本数が複数本であると判定されている状態で、且つ、ステップS7で、超音波プローブ15の移動範囲が定められた範囲外であると判定されるまで、ステップS2~ステップS5およびステップS7の処理が繰り返される。
【0060】

ステップS2~ステップS5およびステップS7の処理が繰り返されることにより、ユーザにより超音波プローブ15が被検体の膝裏の上方に平行移動された結果、ステップS7において、超音波プローブ15の移動範囲が定められた範囲外であると判定された場合には、ステップS8に進む。ステップS8において、操作案内部10は、超音波プローブ15の位置を膝裏に戻す旨の案内をユーザに対して行う。これにより、ユーザは、超音波プローブ15を膝裏に位置させる。
【0061】

さらに、ステップS8の処理が完了すると、ステップS6に進み、操作案内部10により、超音波プローブ15の位置をその場で固定して、膝窩静脈の圧迫検査を行う旨がユーザに案内される。この際に、操作案内部10は、例えば図6に示すように、ユーザに向けた案内を表すテキストを含むガイドパネルG2を表示部7に表示させることができる。これにより、超音波診断装置1Aの動作が終了する。

また、ステップS4において、検出された膝窩静脈の本数が1本のみであると判定された場合には、ステップS6に進み、操作案内部10により、超音波プローブ15の位置をその場で固定して、膝窩静脈の圧迫検査を行う旨がユーザに案内され、超音波診断装置1Aの動作が終了する。
【0062】

以上により、実施の形態2の超音波診断装置1Aによれば、プローブ移動範囲判定部22により超音波プローブ15の移動範囲が定められた範囲内であると判定された場合には、操作案内部10により、超音波プローブ15を膝裏の上方に平行移動させる旨の案内がなされ、プローブ移動範囲判定部22により超音波プローブ15の移動範囲が定められた範囲外であると判定された場合には、操作案内部10により、超音波プローブ15を膝裏に位置させる旨の案内がなされるため、静脈検出部9により複数本の膝窩静脈が検出され、超音波プローブ15がユーザにより膝裏の上方に移動される際に、膝窩静脈の圧迫検査に適さない位置にまで超音波プローブ15が移動されてしまうことを防止することができる。
【0063】

なお、実施の形態2では、プローブ移動範囲判定部22は、操作案内部10により超音波プローブ15を被検体の膝裏の上方に平行移動させる旨の案内がなされた時点から、定められたフレーム数よりも多数の超音波画像が画像取得部8により取得された場合、あるいは、定められた時間が経過した場合に、超音波プローブ15の移動距離が定められた範囲外であると判定することが説明されているが、プローブ移動範囲判定部22による判断方法は、これらに限定されない。
【0064】

例えば、プローブ移動範囲判定部22は、直接推定された超音波プローブ15の移動距離に基づいて、超音波プローブ15の移動範囲が定められた範囲内であるが否かを判定することができる。図9に、実施の形態2の変形例に係る超音波診断装置1Bの構成を示す。この超音波診断装置1Bは、図7に示す実施の形態2の超音波診断装置1Aにおいて、装置制御部12Aの代わりに装置制御部12Bを備え、加速度センサ23とプローブ移動距離推定部24とが追加されている。
【0065】

超音波診断装置1Bにおいて、超音波プローブ15に加速度センサ23が取り付けられ、加速度センサ23に、プローブ移動距離推定部24が接続されている。また、プローブ移動距離推定部24に、プローブ移動範囲判定部22が接続されている。また、表示制御部6、画像取得部8、静脈検出部9、操作案内部10、入力部13、格納部14、プローブ移動範囲判定部22およびプローブ移動距離推定部24に、装置制御部12Bが接続されている。さらに、表示制御部6、画像取得部8、静脈検出部9、操作案内部10、装置制御部12B、プローブ移動範囲判定部22およびプローブ移動距離推定部24により、プロセッサ16Bが構成されている。
【0066】

超音波プローブ15に取り付けられた加速度センサ23は、ユーザにより移動された超音波プローブ15の加速度を検出する。

プロセッサ16Bのプローブ移動距離推定部24は、加速度センサ23により検出された超音波プローブ15の加速度に基づいて、超音波プローブ15の移動距離を推定する。

プローブ移動範囲判定部22は、プローブ移動距離推定部24により推定された超音波プローブ15の移動距離に基づいて、操作案内部10により、超音波プローブ15を膝裏の上方に平行移動させる旨の案内がなされた時点からの超音波プローブ15の移動距離が、定められた距離内であるか否かを判定する。これにより、プローブ移動範囲判定部22は、超音波プローブ15の移動範囲が定められた範囲内であるか否かをより精確に判定することができる。
【0067】

上記記載から、以下の付記項1~7に記載の超音波診断装置を把握することができる。

[付記項1]

被検体の膝窩静脈と総大腿静脈の少なくとも2点を圧迫検査する超音波診断装置であって、

超音波プローブと、

プロセッサと、を備え、

前記プロセッサは、

前記超音波プローブから前記被検体に向けて超音波ビームの送信を行って超音波画像を取得し、

取得された前記超音波画像に含まれる前記膝窩静脈を検出し、

前記膝窩静脈の前記圧迫検査が行われる場合に、取得された前記超音波画像に前記膝窩静脈が1本のみ含まれる位置に前記超音波プローブを位置させるように、検出された前記膝窩静脈の本数に基づいてユーザに前記超音波プローブの操作を案内する超音波診断装置。

[付記項2]

前記プロセッサは、前記膝窩静脈が1本のみ検出された場合に、前記超音波プローブの位置を固定するように前記ユーザに前記超音波プローブの操作を案内し、複数本の前記膝窩静脈が検出された場合に、前記超音波プローブを前記被検体の膝裏の上方に移動させるように前記ユーザに案内する付記項1に記載の超音波診断装置。

[付記項3]

前記プロセッサは、

前記超音波プローブを前記被検体の膝裏の上方に移動するように案内された時点から、前記ユーザによる前記超音波プローブの移動範囲が、定められた範囲内であるか否かを判定し、

前記超音波プローブの移動範囲が前記定められた移動範囲を超えたと判定された場合に、前記超音波プローブを前記被検体の膝裏に移動するように前記ユーザに案内する付記項1または2に記載の超音波診断装置。

[付記項4]

前記プロセッサは、前記超音波プローブを前記膝裏の上方に移動するように前記超音波プローブの操作が案内された時点から、取得された複数の前記超音波画像のフレーム数が定められたフレーム数を超えた場合に、前記超音波プローブの移動範囲が前記定められた移動範囲を超えたと判定する付記項3に記載の超音波診断装置。

[付記項5]

前記プロセッサは、前記超音波プローブを前記膝裏の上方に移動するように前記超音波プローブの操作が案内された時点からの経過時間が、定められた時間を超えた場合に、前記超音波プローブの移動範囲が前記定められた移動範囲を超えたと判定する付記項3に記載の超音波診断装置。

[付記項6]

前記超音波プローブは、加速度センサを有し、

前記プロセッサは、

前記加速度センサにより計測された前記超音波プローブの加速度に基づいて前記超音波プローブの移動距離を推定し、

前記超音波プローブを前記膝裏の上方に移動するように前記超音波プローブの操作が案内された時点から、推定された前記超音波プローブの移動距離が定められた距離を超えた場合に、前記超音波プローブの移動範囲が前記定められた移動範囲を超えたと判定する付記項3に記載の超音波診断装置。

[付記項7]

ディスプレイ装置を備え、

前記プロセッサは、前記ユーザに向けた前記超音波プローブの操作案内を前記ディスプレイ装置に表示する付記項1~6のいずれか一つに記載の超音波診断装置。
【符号の説明】
【0068】

1,1A,1B 超音波診断装置、2 振動子アレイ、3 送信部、4 受信部、5 画像生成部、6 表示制御部、7 表示部、8 画像取得部、9 静脈検出部、10 操作案内部、12,12A,12B 装置制御部、13 入力部、14 格納部、15 超音波プローブ、16,16A,16B プロセッサ、17 増幅部、18 AD変換部、19 信号処理部、20 DSC、21 画像処理部、22 プローブ移動範囲判定部、23 加速度センサ、A1,A2 動脈、G1,G2 ガイドパネル、U1,U2 超音波画像、V1,V2,V3 膝窩静脈。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9