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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-18
(45)【発行日】2022-03-01
(54)【発明の名称】リベットおよび異材接合方法
(51)【国際特許分類】
   B23K 11/11 20060101AFI20220221BHJP
   B23K 11/20 20060101ALI20220221BHJP
   B23K 11/24 20060101ALI20220221BHJP
【FI】
B23K11/11 540
B23K11/20
B23K11/24 315
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2021032311
(22)【出願日】2021-03-02
【審査請求日】2021-03-02
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】591214527
【氏名又は名称】株式会社ジーテクト
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 政樹
(72)【発明者】
【氏名】矢吹 勇司
(72)【発明者】
【氏名】外舘 洋
【審査官】岩見 勤
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-506583(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0133483(US,A1)
【文献】特表2007-521964(JP,A)
【文献】特開平07-214338(JP,A)
【文献】特開2019-063819(JP,A)
【文献】特開2020-069499(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 11/11
B23K 11/20
B23K 11/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1部材に重ねられた第2部材を貫通し、前記第1部材に抵抗溶接によって溶接される頭部と軸部とを備えるリベットであって、
前記頭部から突出して前記第2部材を貫通する前記軸部の外径は前記頭部の外径より小さく、
前記軸部は先端から前記頭部に向けて延びる穴を有し、
前記穴の開口側端部は、前記軸部の先端から前記頭部に向かうにしたがって次第に開口幅が小さくなるテーパー状に形成され、
前記穴の開口側端部の傾斜角となるテーパ角度は45°であり、
軸部の先端から頭部に向けて延びる穴の深さは、前記頭部の内部に予め定めた容積の空室が形成される深さであり、
前記空室の容積は、前記軸部が前記第2部材を貫通した状態で前記第2部材の中に入った前記軸部の体積に相当する容積であることを特徴とするリベット。
【請求項2】
第1部材に重ねられた第2部材を貫通し、前記第1部材に抵抗溶接によって溶接される頭部と軸部とを備えるリベットであって、
前記頭部から突出して前記第2部材を貫通する前記軸部の外径は前記頭部の外径より小さく、
前記軸部は先端から前記頭部に向けて延びる穴を有し、
前記穴の開口側端部は、前記軸部の先端から前記頭部に向かうにしたがって次第に開口幅が小さくなるテーパー状に形成され、
前記穴の開口側端部の傾斜角となるテーパ角度は45°であり、
前記頭部は、
前記軸部から径方向の外側に突出する円板部と
前記円板部の外周部分に前記軸部の突設方向へ突設された円筒からなる筒状壁部とによって形成されていることを特徴とするリベット。
【請求項3】
請求項1または請求項2記載のリベットにおいて、
前記軸部の穴は非貫通穴であることを特徴とするリベット。
【請求項4】
請求項1~請求項3の何れか一つに記載のリベットにおいて、
前記第2部材の前記第1部材とは反対側の表面と対向する平坦な対接面を有する板状の頭部を有するリベット。
【請求項5】
請求項1、請求項3または請求項4の何れか一つに記載のリベットにおいて、
前記頭部は、円板状に形成され、
前記頭部の前記軸部から径方向の外側に向けて突出する部分は、径方向の全域にわたって厚みが一定になるように形成されていることを特徴とするリベット。
【請求項6】
請求項1~請求項の何れか一つに記載のリベットにおいて、
前記軸部は、前記穴が軸心部に形成された円筒状に形成され、
前記軸部の外周部と内周部との少なくとも何れか一方は断面波形状に形成されていることを特徴とするリベット。
【請求項7】
請求項1~請求項の何れか一つに記載のリベットにおいて、
前記第2部材の厚みが0.6mm~2mmであるとき、
前記頭部の高さは2mm~5mmであり、
前記頭部の外径は6.6mm~10mmであり、
前記軸部の長さは2.5mm~5.5mmであり、
前記軸部の外径は4.6mm~8mmであり、
前記穴の深さは3.9mm~13.1mmであり、
前記穴の内径は2.4mm~5.8mmであることを特徴とするリベット。
【請求項8】
請求項1~請求項の何れか一つに記載のリベットにおいて、
前記頭部の外径は前記軸部の外径より大きく、
前記頭部の外径と前記軸部の外径との差は2mm~12mmであることを特徴とするリベット。
【請求項9】
請求項1~請求項の何れか一つに記載のリベットにおいて、
前記穴の内部は、前記軸部が前記第1部材に抵抗溶接によって溶接された状態において金属材料で満たされていることを特徴とするリベット。
【請求項10】
請求項1~請求項のいずれか一つに記載のリベットを用いて、異種金属部材を含む複数の金属部材を抵抗溶接により接合する異材接合方法であって、
前記リベットを準備する第1工程と、
鋼材からなる第1部材に鋼材とは異なる材料から構成された第2部材を重ねて、前記リベットの頭部、前記リベットの軸部および前記第2部材、前記第1部材の順で並ぶように、前記リベットおよび前記第1、第2部材を第1電極と第2電極の間に挟み込む第2工程と、
前記第1電極と前記第2電極との間で前記リベットから前記第1部材に至る通電経路を流れる電流が予め定めた第1電流となる状態で前記リベットの先端部を前記第2部材に表面側から押し込む第1加圧通電を行い、前記第2部材を形成する材料の一部が、前記リベットの前記軸部に形成された穴のテーパ角度が45°となるテーパー状の開口側端部からテーパー面に沿って前記穴内に溶融あるいは塑性流動によって入り込んで前記穴に収容されるように、前記軸部の先端部を前記第1部材に当接させる第3工程と、
前記軸部の先端部が前記第1部材に当接した状態で、前記第1電極と前記第2電極とを介して前記リベットと前記第1部材とに予め定めた第2電流で通電しながら前記リベットを前記第1部材に押し付ける第2加圧通電を行い、前記先端部と前記第1部材とを抵抗スポット溶接により溶接する第4工程
とを備える異材接合方法。
【請求項11】
請求項10記載の異材接合方法において、
前記第1電流は、前記第2電流より小さく、0を含むことを特徴とする異材接合方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、かしめによる締結と抵抗溶接による溶接とによって複数のワークを結合させるリベットおよびこのリベットを用いて行う異材接合方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の車体部品には高い強度が要求される。これに加え、近年ではこの種の車体部品は軽量であることが要求されている。このため、車体部品を構成する材料には、例えば、高張力鋼やアルミニウム材料が用いられるようになっている。また、高張力鋼とアルミニウム材料とを一体とした複合材料が用いられるようになっている。
【0003】
高張力鋼とアルミニウム材料とを一体化するにあたっては、例えば特許文献1に記載されているようなリベットが用いられる。このリベットは、円板状の頭部と、この頭部の軸心部に突設された円柱状の軸部とを有している。頭部には、軸部を囲むように環状の溝が形成されている。
特許文献1には、鉄板からなる第1部材とアルミニウム板からなる第2部材とを重ねてリベットで結合する異材接合方法が記載されている。この異材接合方法によれば、リベットは、軸部の先端が第1部材に接触するように第2部材に押し込まれ、第2部材の一部が軸部と置き換わった状態で溶接電流が流されて第1部材に抵抗溶接によって溶接される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2020-69499号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に示すリベットでは、接合強度を高くするにも限界があり、しかも、接合後の外観品質が損なわれるおそれがあった。
接合強度を高くすることができない理由は2つ考えられる。
第1の理由は、リベットが第2部材を貫通するときに第2の部材の一部がリベットの軸部と充分に置き換わらないことがあるからである。このため、リベットが第1部材に充分に接触することができず、抵抗溶接時に生じるナゲットが小さくなるから、接合強度を高くすることができない。
【0006】
第2の理由は、軸部が第2部材に押し込まれることにより押し出された金属材料(アルミニウム材料)が、リベットの環状溝内に偏って収容されることがあるからである。環状溝に収容された金属材料は、リベットの頭部と第2部材とを結合する機能を有しているために、環状溝の全域に均等に収容されることが望ましい。しかし、この金属材料が環状溝内に偏って収容されると、頭部と第2部材との結合が弱い部分が生じることになるから、接合強度が低くなってしまう。
【0007】
接合後の外観品質が損なわれる理由は、接合時に押し出された金属材料の全てが頭部の環状溝に収容されるとは限らないからである。押し出された金属材料は、環状溝に入らずに頭部の外に飛び出したり、環状溝に収まりきらずに外側に飛散する可能性がある。第2部材の表面側(リベットの外側)に飛散した金属材料が第2部材の表面に付着することにより、製品の外観品質が損なわれることになる。また、接合時に溶融した金属材料が第2部材の表面側に出ることもあり、このような場合には、溶融した金属材料が第2部材の表面に付着して固化し、アルミニウム塊となる。アルミニウム塊が第2部材の表面に固着していると、電着塗装の塗装性に悪影響を及ぼしかねない。
接合時に押し出された金属材料が大気中に飛ばされると、工場環境が汚染されることにもなる。
【0008】
本発明の目的は、第1部材に重ねられた第2部材を貫通し、第1部材に抵抗溶接によって溶接されるリベットにおいて、接合強度の向上と、接合後の外観品質の向上とを図ることである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的を達成するために、本発明に係るリベットは、第1部材に重ねられた第2部材を貫通し、前記第1部材に抵抗溶接によって溶接される頭部と軸部とを備えるリベットであって、前記頭部から突出して前記第2部材を貫通する前記軸部の外径は前記頭部の外径より小さく、前記軸部は先端から前記頭部に向けて延びる穴を有するものである。
【0010】
本発明は、前記リベットにおいて、前記第2部材の前記第1部材とは反対側の表面と対向する平坦な対接面を有する板状の頭部を有していてもよい。
【0011】
本発明は、前記リベットにおいて、軸部の先端から頭部に向けて延びる穴の深さは、前記頭部の内部に予め定めた容積の空室が形成される深さであり、前記空室の容積は、前記軸部が前記第2部材を貫通した状態で前記第2部材の中に入った前記軸部の体積に相当する容積であってもよい。
【0012】
本発明は、前記リベットにおいて、前記穴の開口側端部は、前記軸部の先端から前記頭部に向かうにしたがって次第に開口幅が小さくなるテーパー状に形成されていてもよい。
【0013】
本発明は、前記リベットにおいて、前記軸部の先端部は、先端に向かうにしたがって次第に形成幅が小さくなるテーパー状に形成され、前記穴は、前記テーパーの中心に開口していてもよい。
【0014】
本発明は、前記リベットにおいて、前記頭部は、円板状に形成され、前記頭部の前記軸部から径方向の外側に向けて突出する部分は、径方向の全域にわたって厚みが一定になるように形成されていてもよい。
【0015】
本発明は、前記リベットにおいて、前記頭部は、前記軸部から径方向の外側に突出する円板部と、前記円板部の外周部分に前記軸部の突設方向へ突設された円筒からなる筒状壁部とによって形成されていてもよい。
【0016】
本発明は、前記リベットにおいて、前記軸部は、前記穴が軸心部に形成された円筒状に形成され、前記軸部の外周部と内周部との少なくとも何れか一方は断面波形状に形成されていてもよい。
【0017】
本発明に係る異材接合方法は、前記発明のリベットを用いて、異種金属部材を含む複数の金属部材を抵抗溶接により接合する異材接合方法であって、前記リベットを準備する第1工程と、鋼材からなる第1部材に鋼材とは異なる材料から構成された第2部材を重ねて、前記リベットの頭部、前記リベットの軸部および前記第2部材、前記第1部材の順で並ぶように、前記リベットおよび前記第1、第2部材を第1電極と第2電極の間に挟み込む第2工程と、前記第1電極と前記第2電極との間で前記リベットから前記第1部材に至る通電経路を流れる電流が予め定めた第1電流となる状態で前記リベットの先端部を前記第2部材に表面側から押し込む第1加圧通電を行い、前記軸部の先端部を前記第1部材に当接させる第3工程と、前記軸部の先端部が前記第1部材に当接した状態で、前記第1電極と前記第2電極とを介して前記リベットと前記第1部材とに予め定めた第2電流で通電しながら前記リベットを前記第1部材に押し付ける第2加圧通電を行い、前記先端部と前記第1部材とを抵抗スポット溶接により溶接する第4工程とを備える異材接合方法である。
【0018】
本発明は、前記異材接合方法において、前記第1電流は、前記第2電流より小さく、0を含んでいてもよい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、接合時に押し出される金属材料の全てを軸部の穴に収容することができるから、第2部材とリベットの軸部とが充分に置き換わり、接合強度を高くすることができる。また、接合時に第2部材の表面側に金属材料が飛散することがない。
本発明に係る異材接合方法によれば、第3工程でリベットから第1部材に至る通電経路に通電することにより第2部材を軟化させることができるから、軸部の穴に第2部材が入り易くなるとともにリベットを第2部材に容易に押し込むことができ、第4工程でリベットを第1部材に強固に押し付けることが可能になる。
したがって、接合強度の向上と、接合後の外観品質の向上とを図ることが可能なリベットおよび異材接合方法を提供することができる。また、本発明によるリベットを使用すれば、工場環境が汚染されることも防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は、本発明に係るリベットの断面図である。
図2図2は、リベットの平面図である。
図3図3は、リベットの各部の寸法を説明するための断面図である。
図4図4は、本発明に係る異材接合方法を説明するためのフローチャートである。
図5図5は、異材接合方法の第2工程を説明するための断面図である。
図6図6は、異材接合方法の第3工程を説明するための断面図である。
図7図7は、異材接合方法の第4工程を説明するための断面図である。
図8図8は、加圧電流の変化を示すグラフである。
図9図9は、第3工程の変形例を説明するための図である。
図10図10は、リベットと搬送用レールの一部の平面図である。
図11図11は、図10におけるXI-XI線断面図である。
図12図12は、リベットの変形例を示す断面図である。
図13図13は、リベットの変形例を示す断面図である。
図14図14は、リベットの変形例を示す断面図である。
図15図15は、リベットの変形例を示す断面図である。
図16図16は、リベットの変形例を示す断面図である。
図17図17は、リベットの変形例を示す断面図である。
図18図18は、リベットの変形例を示す断面図である。
図19図19は、リベットの変形例を示す断面図である。
図20図20は、リベットの変形例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係るリベットおよび異材接合方法の一実施の形態を図1図11を参照して詳細に説明する。
図1に示すリベット1は、異種金属部材を含む複数の金属部材を抵抗溶接により接合するためのものである。複数の金属部材は、この実施の形態においては互いに重ねられた第1部材2と第2部材3である。図1に示すリベット1は第1部材2に重ねられた第2部材3を貫通し、第1部材2に抵抗スポット溶接によって溶接されるものである。図1の破断位置は、図2中にI-I線によって示す位置である。第1部材2は鋼材からなる板である。第2部材3はアルミニウム材料からなる板である。これらの第1部材2と第2部材3は、リベット1によって互いに結合されることにより、図示してはいないが、自動車の車体部品となるように構成されている。すなわち、第1部材2と第2部材3は、これら両者を重ねた状態で車体部品となるような厚みのものが用いられている。
【0022】
リベット1は、頭部11と、この頭部11に突設された軸部12とによって構成されている。このリベット1を形成する材料は、例えば冷間圧造用炭素鋼などの鋼を挙げることができる。
頭部11は、円板状に形成されている。頭部11の軸部12から径方向の外側に向けて突出する突出部11aは、径方向の全域にわたって厚みが一定になるように形成されている。このため、突出部11aの第2部材3と対向する環状の対接面13は、第2部材3の第1部材2とは反対側の表面3aと平行になるように平坦に形成されている。
【0023】
軸部12の軸心部には、軸部12の先端から頭部11の内部まで延びる非貫通穴からなる穴14が形成されている。穴14の深さは、頭部11の内部に予め定めた容積の空室15が形成される深さである。空室15の容積は、図3に示すように、軸部12が第2部材3を貫通した状態で第2部材3の中に入った軸部12の体積に相当する容積である。図3においては、軸部12における第2部材3の中に入った部分を図3中に左下がりに傾斜したハッチングよって示している。
【0024】
この実施の形態によるリベット1においては、穴14の開口側端部14aがテーパー状に形成されている。このテーパーは、軸部12の先端から頭部11に向かうにしたがって次第に開口幅が小さくなるようなテーパーである。開口側端部14aの外周縁となる先端は、軸部12の外周面に接続されている。開口側端部14aと軸部12の外周面とが交わる部分は、鋭角に尖る角になっている。
【0025】
ここで、リベット1および第2部材3の寸法について説明する。
・頭部11の外径D1は、6.6mm~16mmである。頭部11は第2部材3を抱える役割を果たすので、大きいほどよいが、軽量化を考慮すると小さい方がよい。頭部11の好ましい外径D1は、6.6mm~10mmである。
・頭部11の高さHは、1.1mm~32mmである。頭部11が薄過ぎると強度が不足し、厚過ぎると他部品に干渉するおそれがある。頭部11の好ましい高さHは、2mm~5mmである。
【0026】
・軸部12の外径D2は、4.6mm~8.6mmである。軸部12の軸径が小さいと溶接強度が不足するおそれがある。軸部12の好ましい外径D2は、4.6mm~8mmである。
・頭部11の外径D1と軸部12の外径D2の差は、最低2mmは必要である。この差が小さ過ぎると、第2部材3を押さえる力が弱くなり、大き過ぎると、頭部11が他部品と干渉するおそれがある。外径D1と外径D2の好ましい差は、2mm~12mmである。
【0027】
・軸部12の長さLは2mm~6.5mmである。軸部12の長さLは、第2部材3の厚みによって適宜設置する必要がある。軸部12の好ましい長さLは、2.5mm~5.5mmである。
・穴14の内径D3は、2.4mm~6.4mmである。穴14の内径は、小さ過ぎると、貫通した第2部材3の材料(アルミニウム材)を収容するために穴14の深さを深くする必要が生じ、内径が大き過ぎると軸足(軸部12)の強度が不足するおそれがある。穴14の好ましい内径D3は、2.4mm~5.8mmである。
【0028】
・穴14の深さdは、2.9mm~36.8mmである。穴14の深さは、浅過ぎると、第2部材3に軸部12が貫通することにより排除された第2部材3の一部を収容することができなくなる。また、穴14の深さが深過ぎると、頭部11の高さを高くする必要があり、他部品との干渉のおそれがある。穴14の好ましい深さdは、3.9mm~13.1mmである。
・開口側端部14aの傾斜角αは10°~80°の範囲であれば実施可能であるが、傾斜角αは45°とすることが好ましい。
・第2部材3の厚みtは0.5mm~4mmが好ましい。この理由は、自動車に用いられ、市場に流通している多くの材料の厚みが0.5mm~4mmだからである。第2部材3のさらに好ましい厚みは、0.6mm~2mmである。
【0029】
次に、リベット1を使用して第1部材2と第2部材3とを結合する異材接合方法を図4に示すフローチャートと、図5図7に示す工程毎の状態を示す断面図および図8に示す電流変化グラフとを参照して説明する。
この実施の形態による異材接合方法は、図4のフローチャートに示すように、第1工程S1~第4工程S4によって行う。
【0030】
第1工程S1においては、リベット1を準備する。
第2工程においては、図5に示すように、加圧装置21の支持台22の上に第1部材2と第2部材3とをこの順序で重ね、第2部材3の目標締結位置にリベット1の軸部12を重ねる。このとき、リベット1は、加圧装置21の押圧子23に図示していないクランプによって支持された状態で第2部材3に当接する。支持台22と押圧子23は、抵抗スポット溶接機24の第1電極24aと第2電極24bとして機能するように構成されている。
すなわち、第2工程においては、第1部材2に第2部材3を重ねて、リベット1の頭部11、リベット1の軸部12および第2部材3、第1部材2の順で並ぶように、リベット11および第1、第2部材2,3を第1電極24aと第2電極24bとの間に挟み込む。第1工程においては、第1電極24aと第2電極24bとの間に電流を流すことはない。
【0031】
第3工程S3においては、第1電極24aと第2電極24bとの間でリベット1から第1部材2に至る通電経路を流れる電流が予め定めた第1電流A(図8参照)となる状態とするとともに加圧装置21の押圧子23を第2部材3に向けて移動させ、リベット1の軸部12の先端部を第2部材3に表面側から押し込む第1加圧通電を行う。
【0032】
このリベット1を押し込む工程においては、第2部材3に第1電流Aが流れることにより第2部材3が発熱して軟化する。このため、図6に示すように、第2部材3を形成する材料であるアルミニウム材の一部24が穴14の開口側端部14aのテーパー面に沿って穴14の内部に溶融あるいは塑性流動によって入り込む。このようにアルミニウム材の一部25が穴14に収容されるために、リベット1の押し込み時に軸部12が確実に第2部材3の内部に挿入され、第2部材3の一部がリベット1の軸部12に置き換わる。第3工程S3においては、このリベット1の押し込みを行うことによって軸部12の先端部を第1部材2に当接させる。
【0033】
第4工程S4においては、リベット1の軸部12の先端部が第1部材2に当接した状態で、第1電極24aと第2電極24bとを介してリベット1と第1部材2とに予め定めた第2電流Bで通電しながらリベット1を第1部材2に押し付ける第2加圧通電を行う。第2電流Bは、図8に示すように、第3工程の第1電流Aより大きい。このように第2加圧通電が行われることにより、軸部12の先端部と第1部材2とが抵抗スポット溶接により溶接される。このとき、リベット1の軸部12の先端部が溶融することにより、頭部11が第2部材3の表面3aに当接するまで軸部12が送り込まれる。この軸部12の溶融に伴って第1部材2の一部と第2部材3の一部とが溶融し、軸部12の先端部を中心としてナゲット26が生じる。
このように抵抗スポット溶接が行われることにより、第1部材2と第2部材3とがリベット1を介して結合される。
【0034】
この異材接合方法において、第3工程S3は、図9(A),(B)に示すように第1電流を0として行ってもよい。図9(A)は第3工程を説明するための断面図、図9(B)は加圧電流の変化を示すグラフである。すなわち、第3工程S3は、第1電極24aと第2電極24bとに給電することなくリベット1の軸部12を第2部材3に押し込んで実施することができる。
【0035】
この実施の形態によるリベット1によれば、軸部12を第2部材3に押し込む第3工程で押し出された金属材料(第2部材3の一部25)が一箇所に集まるように軸部12の穴14に収容される。このため、第2部材3を構成する金属材料が軸部12の外面と穴14の穴壁面とに密着し、軸部12が第2部材3に強固に結合されるようになる。また、第3工程で第2部材3の一部とリベット1の軸部12とが充分に置き換わるようになるから、軸部12の先端が第1部材2に充分に押し付けられた状態で第4工程において抵抗スポット溶接が行われる。
【0036】
さらに、接合時に金属材料が第2部材3の表面側に出るようなことはないから、第2部材3の表面を接合前と同じ状態に保つことができる。
したがって、接合強度の向上と、接合後の外観品質の向上とを図ることが可能なリベットおよび異材接合方法を提供することができる。この実施の形態によるリベット1を使用すれば、工場環境が汚染されることも防ぐことができる。
さらにまた、この実施の形態に示すリベット1の軸部12には穴14が形成されているから、従来のリベットと較べると軽量化を図ることができる。
【0037】
この実施の形態によるリベット1の穴14の開口側端部14aは、軸部12の先端から頭部11に向かうにしたがって次第に開口幅が小さくなるテーパー状に形成されている。このため、リベット1が第2部材3に押し込まれるときにアルミニウム材を塑性流動により穴14に導くことができるから、第2部材3に軸部12を容易に押し込むことができるし、押し込む過程で軸部12の進む方向を第2部材3の厚み方向に規制することができる。したがって、軸部12の先端が第1部材2に正しく接触するから、抵抗スポット溶接の信頼性を高くすることができる。
【0038】
この実施の形態によるリベット1の頭部11は、径方向の全域にわたって厚みが一定になるように形成されている。この実施の形態による頭部11は、従来のリベットの頭部、すなわち環状溝を有する頭部とは異なり、頭部11の外周面が軸部12の外周面から径方向に突出する長さが短くなるように形成することができる。
このため、このリベット1は、図10および図11に示すように、頭部11の裏(軸部12が突設されている一側)を通る一対の搬送用レール31を使用して容易に搬送することができる。
【0039】
これらの搬送用レール31は、軸部12を径方向の両側から挟むように並び、頭部11の外周面の一部と裏面の一部とに接触して頭部11を移動自在に支える搬送路31aを有している。搬送用レール31に載せられたリベット1は、傾斜した搬送用レール31に沿って自重で滑って送られたり、図示していないプッシャによって押されて送られる。従来の環状溝が頭部に形成されたリベットでは、頭部と搬送用レール31との接触部分の面積が大きくなるために、移動時の摩擦抵抗が大きくなる。このため、従来のリベットを搬送用レール31で搬送することは容易ではなかった。
【0040】
また、この実施の形態で示すように頭部11の外周面が軸部12の外周面から径方向に突出する長さが短いと、マスの集中化を図ることができるから、搬送を含めてリベット1を例えばロボットハンド(図示せず)で把持する操作など、リベット1を取り扱う操作を容易に行うことができる。
【0041】
(軸部の変形例)
リベットの軸部は図12図15に示すように形成することができる。これらの図において、図1図11によって説明したものと同一もしくは同等の部材については、同一符号を付し詳細な説明を適宜省略する。
図12に示す軸部41の先端部は、先端に向かうにしたがって次第に形成幅が小さくなるテーパー状に形成されている。
軸部41をこのように形成することにより、軸部41を第2部材3に押し込む際の抵抗が小さくなるから、押し込み時のリベット1に加える押圧力を小さくすることができる。
【0042】
図13に示す軸部42の先端部は、先端に向かうにしたがって次第に形成幅が小さくなるテーパー状のテーパー部42aと、テーパー部42aの先端部分に形成された平坦部42bとを有している。
軸部42をこのように形成することにより、軸部42を第2部材3に押し込む際の抵抗を小さくすることができるとともに、軸部42と第1部材2との接触部分の面積を充分に確保することができる。このため、押し込み時の押圧力を低減できるとともに抵抗スポット溶接の信頼性を向上させることができる。
【0043】
図14図15に示す軸部43,44は、頭部11側の基端から先端に向かうにしたがって次第に細くなる円筒状に形成されている。この円筒状の軸部43,44の穴14は、軸部43,44の先端から頭部11に向けて延びる穴径が一定の円筒面45と、この円筒面45に接続されて軸部43,44の先端から離れるにしたがって穴径が漸次小さくなるテーパー面46とを有する形状に形成されている。
軸部43,44がこのように形成されていることにより、第2部材3に押し込まれる軸部43,44の体積が上述した各例の軸部12,41,42と較べて少なくなるから、押し込みを容易に行うことができる。
図14に示す頭部11の対接面13は、軸部43と同様に傾斜したテーパー面となるように形成されている。すなわち、図14に示す頭部11は、第2部材3の表面3aと対向する平坦な対接面13を有している。
【0044】
図16に示す軸部47は、外周部と内周部とが断面波形状に形成されている。詳述すると、この軸部47の外周部は、大径部47aと小径部47bとが軸線方向に交互に並ぶように形成されている。また、内周部は、大径部47cと小径部47dとが軸線方向に交互に並ぶように形成されている。
図17に示す軸部48は、外周部が断面波形状に形成されている。この軸部48の外周部は、大径部48aと小径部48bとが軸線方向に交互に並ぶように形成されている。
図18に示す軸部49は、内周部が断面波形状に形成されている。この軸部49の内周部は、大径部49aと小径部49bとが軸線方向に交互に並ぶように形成されている。
軸部47~49をこのように形成することにより、外周部と内周部とに形成されている凹凸が第2部材3に係合するようになるから、より一層強固に第1部材2と第2部材3とを締結することができる。
【0045】
(リベットの頭部の変形例)
リベットの頭部は図19および図20に示すように形成することができる。これらの図において、図1図18によって説明したものと同一もしくは同等の部材については、同一符号を付し詳細な説明を適宜省略する。
図19および図20に示す頭部51は、軸部41,42から径方向の外側に突出する円板部51aと、この円板部51aの外周部分に軸部41,42の突設方向へ突設された円筒からなる筒状壁部51bとによって形成されている。このように筒状壁部51bが頭部51に設けられることにより、筒状壁部51bと軸部41,42との間に環状の溝52が形成される。
【0046】
図19に示すリベット1の軸部41の先端部は、先端に向かうにしたがって次第に形成幅が小さくなるテーパー状に形成されている。穴14は、テーパーの中心に開口している。
図20に示すリベット1の軸部42の先端部は、先端に向かうにしたがって次第に形成幅が小さくなるテーパー状のテーパー部42aと、テーパー部42aの先端部分に形成された平坦部42bとを有している。
【0047】
図19および図20に示すリベット1においては、軸部41,42を第2部材3に押し込むときにアルミニウム材が塑性流動により環状の溝52と軸部41,42の穴14とに入るようになる。このため、この実施の形態によれば、アルミニウム材をリベット1の2箇所で保持できるようになるから、更に接合強度が高いリベットを得ることができる。
【0048】
上述した実施の形態によるリベット1は、頭部11,51が円板状で軸部12,41~44,47~49が円筒状に形成されている。しかし、本発明は、このような限定にとらわれることはない。すなわち、頭部11,51と軸部12,41~44,47~49の軸線方向から見た形状は、円形でなくてもよく、三角形、四角形など多角形でもよい。
【符号の説明】
【0049】
1…リベット、11,51…頭部、2…第1部材2、3…第2部材、12,41~44,47~49…軸部、14…穴、14a…開口側端部、15…空室、51a…円板部、51b…筒状壁部、S1…第1工程、S2…第2工程、S3…第3工程、S4…第4工程。
【要約】
【課題】第1部材に重ねられた第2部材を貫通し、第1部材に抵抗溶接によって溶接されるリベットにおいて、接合強度の向上と、接合後の外観品質の向上とを図る。
【解決手段】第1部材2に重ねられた第2部材3を貫通し、第1部材2に抵抗溶接によって溶接される、頭部11と軸部12とを備えるリベット1である。頭部11から突出して第2部材3を貫通する軸部12の外径は頭部11の外径より小さい。軸部12は先端から頭部11に向けて延びる穴14を有する。
【選択図】 図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
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図18
図19
図20