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特許7027605人流解析プログラム、人流解析方法、および人流解析システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-18
(45)【発行日】2022-03-01
(54)【発明の名称】人流解析プログラム、人流解析方法、および人流解析システム
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/00 20060101AFI20220221BHJP
   H04M 11/00 20060101ALI20220221BHJP
   G06Q 50/10 20120101ALI20220221BHJP
【FI】
G08G1/00 A
H04M11/00 302
G06Q50/10
【請求項の数】 23
(21)【出願番号】P 2021131773
(22)【出願日】2021-08-12
【審査請求日】2021-08-13
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】592090555
【氏名又は名称】パシフィックコンサルタンツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002815
【氏名又は名称】IPTech特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】杉本 伸之
(72)【発明者】
【氏名】金木 大輔
(72)【発明者】
【氏名】上野 篤史
【審査官】佐々木 佳祐
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/168651(WO,A1)
【文献】特開2021-028590(JP,A)
【文献】特開2017-192058(JP,A)
【文献】特開2010-097348(JP,A)
【文献】特開2001-101563(JP,A)
【文献】特開2014-122841(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 21/00-25/00
G08G 1/00-99/00
G06Q 50/10
H04M 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
携帯端末からの位置情報を用いて、人流データを解析する人流解析システムが実行する人流解析プログラムであって、
コンピュータのプロセッサに、
複数の携帯端末が固定測位機器と通信を行うことにより推定される位置情報を、蓄積されたデータベースから時刻情報とともに読み込むステップと、
前記固定測位機器が受信した位置情報に対して、所定のルールに従って間引くクレンジング処理を実行するステップと、
クレンジングした位置情報に対して、前記携帯端末を携帯するユーザの移動経路を示すトリップデータを生成するステップと、
生成した前記トリップデータに対して、所定の領域ごとに区画したメッシュエリアのうち、前記トリップデータと対応するメッシュエリアの中心座標を基準として、交通拠点とのマッチングを行うことで、前記ユーザの交通手段を判定するステップと、
前記位置情報のサンプル数から推定エリアの人口への拡大推計として、前記携帯端末の使用端末数を推定エリアの人口に拡大するための拡大係数を算出するステップと、を実行させる、プログラム。
【請求項2】
携帯端末からの位置情報を用いて、人流データを解析する人流解析システムが実行する人流解析プログラムであって、
コンピュータのプロセッサに、
複数の携帯端末が固定測位機器と通信を行うことにより推定される位置情報を、蓄積されたデータベースから時刻情報とともに読み込むステップと、
前記固定測位機器が受信した位置情報に対して、所定のルールに従って間引くクレンジング処理を実行するステップと、
クレンジングした位置情報に対して、前記携帯端末を携帯するユーザの移動経路を示すトリップデータを生成するステップと、
生成した前記トリップデータに対して、前記ユーザの交通手段を判定するステップと、
前記位置情報のサンプル数から推定エリアの人口への拡大推計として、前記携帯端末の使用端末数を推定エリアの人口に拡大するための拡大係数を算出するステップと、を実行させ、
前記拡大係数を算出するステップでは、予め所定の大きさで設定された単位エリアを統合した統合エリアごと、および判定された交通手段ごとに、拡大係数を算出する、プログラム。
【請求項3】
携帯端末からの位置情報を用いて、人流データを解析する人流解析システムが実行する人流解析プログラムであって、
コンピュータのプロセッサに、
複数の携帯端末が固定測位機器と通信を行うことにより推定される位置情報を、蓄積されたデータベースから時刻情報とともに読み込むステップと、
前記固定測位機器が受信した位置情報に対して、所定のルールに従って間引くクレンジング処理を実行するステップと、
クレンジングした位置情報に対して、前記携帯端末を携帯するユーザの移動経路を示すトリップデータを生成するステップと、
生成した前記トリップデータに対して、前記ユーザの交通手段を判定するステップと、
前記位置情報のサンプル数から推定エリアの人口への拡大推計として、前記携帯端末の使用端末数を推定エリアの人口に拡大するための拡大係数を算出するステップと、を実行させ、
前記拡大係数を算出するステップでは、交通手段毎の利用者数と、前記利用者数と補正前の拡大率を乗じた人数と、に基づいて、統合された区画エリアごとに前記拡大係数を算出する、プログラム。
【請求項4】
携帯端末からの位置情報を用いて、人流データを解析する人流解析システムが実行する人流解析プログラムであって、
コンピュータのプロセッサに、
複数の携帯端末が固定測位機器と通信を行うことにより推定される位置情報を、蓄積されたデータベースから時刻情報とともに読み込むステップと、
前記固定測位機器が受信した位置情報に対して、所定のルールに従って間引くクレンジング処理を実行するステップと、
クレンジングした位置情報に対して、前記携帯端末を携帯するユーザの移動経路を示すトリップデータを生成するステップと、
生成した前記トリップデータに対して、前記ユーザの交通手段を判定するステップと、
前記位置情報のサンプル数から推定エリアの人口への拡大推計として、前記携帯端末の使用端末数を推定エリアの人口に拡大するための拡大係数を算出するステップと、を実行させ、
前記拡大係数を算出するステップでは、市区町村コード、高速道路交通区間、航空経路、改札通過鉄道施設に対して、移動手段が通過すると想定される境界それぞれに、当該境界を示すスクリーンラインを設定し、前記手段ごとに、前記スクリーンラインを通過する数を示すスクリーンライン通過数を計算する、プログラム。
【請求項5】
前記位置情報を読み込むステップでは、
取得した日時の基準となる時間帯と、評価日時の基準となる時間帯と、を異ならせる、請求項1から4のいずれか1項に記載のプログラム。
【請求項6】
前記クレンジング処理を実行するステップでは、
同一位置を示す位置情報を間引く処理を実行する、請求項1から5のいずれか1項に記載のプログラム。
【請求項7】
前記クレンジング処理を実行するステップでは、
前記位置情報の時系列に沿った地図上での変位角を確認し、所定の閾値未満の変位角を検出した際に、当該変位角の頂点を構成する位置情報を間引く処理を実行する、請求項1から6のいずれか1項に記載のプログラム。
【請求項8】
前記クレンジング処理を実行するステップでは、
所定のエリア内での滞在時間が所定の閾値未満の位置情報を間引く処理を実行する、請求項1から7のいずれか1項に記載のプログラム。
【請求項9】
前記クレンジング処理を実行するステップでは、
前記位置情報の時系列に沿った変位量から移動速度を算出し、所定の速度以上で変位する位置情報については、航空機を利用した可能性があると判断して、間引く処理の対象から除外する、請求項1から8のいずれか1項に記載のプログラム。
【請求項10】
前記トリップデータを生成するステップでは、
前記位置情報の時系列に沿った変位量を算出し、滞在と移動との分類を行う、請求項1から9のいずれか1項に記載のプログラム。
【請求項11】
前記トリップデータを生成するステップでは、前後の距離が閾値以下、かつ滞在と判断された複数の位置情報を、一つのトリップグループとして定義する、請求項1から10のいずれか1項に記載のプログラム。
【請求項12】
前記ユーザの交通手段を判定するステップでは、
前記位置情報から、他の交通手段の判定に先行して、航空移動を判定する、請求項1から11のいずれか1項に記載のプログラム。
【請求項13】
前記ユーザの交通手段を判定するステップでは、
前記位置情報に、交通区間情報と、交通施設情報を追加したうえで、交通手段の判定を行う、請求項1から12のいずれか1項に記載のプログラム。
【請求項14】
前記ユーザの交通手段を判定するステップでは、
前記トリップデータを交通手段毎に分割したモードグループごとに、複数の移動手段それぞれに対して、スタートとゴールを設定し、
前記スタートと前記ゴールを前記移動手段における移動速度で移動できる複数の経路を特定し、
特定された複数の経路のうち、最もコストの低い経路との該当率に基づいて、交通手段を判断する、請求項1から13のいずれか1項に記載のプログラム。
【請求項15】
所定領域ごとに区画された区画エリアと、交通拠点と、を紐づけて記憶するマスタデータを用い、前記位置情報に対して、前記交通拠点に紐づいた区画エリアを検索することで、利用した前記交通拠点の候補を推定する、請求項1から14のいずれか1項に記載のプログラム。
【請求項16】
携帯端末からの位置情報を用いて、人流データを解析する人流解析システムが実行する人流解析方法であって、
コンピュータのプロセッサが、
複数の携帯端末が固定測位機器と通信を行うことにより推定される位置情報を、時刻情報とともに読み込むステップと、
前記固定測位機器が受信した位置情報に対して、所定のルールに従って間引くクレンジング処理を実行するステップと、
クレンジングした位置情報に対して、前記携帯端末を携帯するユーザの移動経路を示すトリップデータを生成するステップと、
生成した前記トリップデータに対して、所定の領域ごとに区画したメッシュエリアのうち、前記トリップデータと対応するメッシュエリアの中心座標を基準として、交通拠点とのマッチングを行うことで、前記ユーザの交通手段を判定するステップと、
前記位置情報のサンプル数から推定エリアの人口への拡大推計を行うために、前記携帯端末の使用端末数を推定エリアの人口に拡大するための拡大係数を算出するステップと、を実行する、方法。
【請求項17】
コンピュータのプロセッサを備え、携帯端末からの位置情報を用いて、人流データを解析する人流解析システムであって、
コンピュータのプロセッサは、
複数の携帯端末が固定測位機器と通信を行うことにより推定される位置情報を、時刻情報とともに読み込む第1モジュールと、
前記固定測位機器が受信した位置情報に対して、所定のルールに従って間引くクレンジング処理を実行する第2モジュールと、
クレンジングした位置情報に対して、前記携帯端末を携帯するユーザの移動経路を示すトリップデータを生成する第3モジュールと、
生成した前記トリップデータに対して、所定の領域ごとに区画したメッシュエリアのうち、前記トリップデータと対応するメッシュエリアの中心座標を基準として、交通拠点とのマッチングを行うことで、前記ユーザの交通手段を判定する第4モジュールと、
前記位置情報のサンプル数から推定エリアの人口への拡大推計を行うために、前記携帯端末の使用端末数を推定エリアの人口に拡大するための拡大係数を算出する第モジュールと、を備える、システム。
【請求項18】
携帯端末からの位置情報を用いて、人流データを解析する人流解析システムが実行する人流解析方法であって、
コンピュータのプロセッサが、
複数の携帯端末が固定測位機器と通信を行うことにより推定される位置情報を、時刻情報とともに読み込むステップと、
前記固定測位機器が受信した位置情報に対して、所定のルールに従って間引くクレンジング処理を実行するステップと、
クレンジングした位置情報に対して、前記携帯端末を携帯するユーザの移動経路を示すトリップデータを生成するステップと、
生成した前記トリップデータに対して、前記ユーザの交通手段を判定するステップと、
前記位置情報のサンプル数から推定エリアの人口への拡大推計を行うために、前記携帯端末の使用端末数を推定エリアの人口に拡大するための拡大係数を算出するステップと、を実行し、
前記拡大係数を算出するステップでは、予め所定の大きさで設定された単位エリアを統合した統合エリアごと、および判定された交通手段ごとに、拡大係数を算出する、方法。
【請求項19】
コンピュータのプロセッサを備え、携帯端末からの位置情報を用いて、人流データを解析する人流解析システムであって、
コンピュータのプロセッサは、
複数の携帯端末が固定測位機器と通信を行うことにより推定される位置情報を、時刻情報とともに読み込む第1モジュールと、
前記固定測位機器が受信した位置情報に対して、所定のルールに従って間引くクレンジング処理を実行する第2モジュールと、
クレンジングした位置情報に対して、前記携帯端末を携帯するユーザの移動経路を示すトリップデータを生成する第3モジュールと、
生成した前記トリップデータに対して、前記ユーザの交通手段を判定する第4モジュールと、
前記位置情報のサンプル数から推定エリアの人口への拡大推計を行うために、前記携帯端末の使用端末数を推定エリアの人口に拡大するための拡大係数を算出する第5モジュールと、を備え、
前記第5モジュールは、予め所定の大きさで設定された単位エリアを統合した統合エリアごと、および判定された交通手段ごとに、拡大係数を算出する、システム。
【請求項20】
携帯端末からの位置情報を用いて、人流データを解析する人流解析システムが実行する人流解析方法であって、
コンピュータのプロセッサが、
複数の携帯端末が固定測位機器と通信を行うことにより推定される位置情報を、時刻情報とともに読み込むステップと、
前記固定測位機器が受信した位置情報に対して、所定のルールに従って間引くクレンジング処理を実行するステップと、
クレンジングした位置情報に対して、前記携帯端末を携帯するユーザの移動経路を示すトリップデータを生成するステップと、
生成した前記トリップデータに対して、前記ユーザの交通手段を判定するステップと、
前記位置情報のサンプル数から推定エリアの人口への拡大推計を行うために、前記携帯端末の使用端末数を推定エリアの人口に拡大するための拡大係数を算出するステップと、を実行し、
前記拡大係数を算出するステップでは、交通手段毎の利用者数と、前記利用者数と補正前の拡大率を乗じた人数と、に基づいて、統合された区画エリアごとに前記拡大係数を算出する、方法。
【請求項21】
コンピュータのプロセッサを備え、携帯端末からの位置情報を用いて、人流データを解析する人流解析システムであって、
コンピュータのプロセッサは、
複数の携帯端末が固定測位機器と通信を行うことにより推定される位置情報を、時刻情報とともに読み込む第1モジュールと、
前記固定測位機器が受信した位置情報に対して、所定のルールに従って間引くクレンジング処理を実行する第2モジュールと、
クレンジングした位置情報に対して、前記携帯端末を携帯するユーザの移動経路を示すトリップデータを生成する第3モジュールと、
生成した前記トリップデータに対して、前記ユーザの交通手段を判定する第4モジュールと、
前記位置情報のサンプル数から推定エリアの人口への拡大推計を行うために、前記携帯端末の使用端末数を推定エリアの人口に拡大するための拡大係数を算出する第5モジュールと、を備え、
前記第5モジュールは、交通手段毎の利用者数と、前記利用者数と補正前の拡大率を乗じた人数と、に基づいて、統合された区画エリアごとに前記拡大係数を算出する、システム。
【請求項22】
携帯端末からの位置情報を用いて、人流データを解析する人流解析システムが実行する人流解析方法であって、
コンピュータのプロセッサが、
複数の携帯端末が固定測位機器と通信を行うことにより推定される位置情報を、時刻情報とともに読み込むステップと、
前記固定測位機器が受信した位置情報に対して、所定のルールに従って間引くクレンジング処理を実行するステップと、
クレンジングした位置情報に対して、前記携帯端末を携帯するユーザの移動経路を示すトリップデータを生成するステップと、
生成した前記トリップデータに対して、前記ユーザの交通手段を判定するステップと、
前記位置情報のサンプル数から推定エリアの人口への拡大推計を行うために、前記携帯端末の使用端末数を推定エリアの人口に拡大するための拡大係数を算出するステップと、を実行し、
前記拡大係数を算出するステップでは、市区町村コード、高速道路交通区間、航空経路、改札通過鉄道施設に対して、移動手段が通過すると想定される境界それぞれに、当該境界を示すスクリーンラインを設定し、前記手段ごとに、前記スクリーンラインを通過する数を示すスクリーンライン通過数を計算する、方法。
【請求項23】
コンピュータのプロセッサを備え、携帯端末からの位置情報を用いて、人流データを解析する人流解析システムであって、
コンピュータのプロセッサは、
複数の携帯端末が固定測位機器と通信を行うことにより推定される位置情報を、時刻情報とともに読み込む第1モジュールと、
前記固定測位機器が受信した位置情報に対して、所定のルールに従って間引くクレンジング処理を実行する第2モジュールと、
クレンジングした位置情報に対して、前記携帯端末を携帯するユーザの移動経路を示すトリップデータを生成する第3モジュールと、
生成した前記トリップデータに対して、前記ユーザの交通手段を判定する第4モジュールと、
前記位置情報のサンプル数から推定エリアの人口への拡大推計を行うために、前記携帯端末の使用端末数を推定エリアの人口に拡大するための拡大係数を算出する第5モジュールと、を備え、
前記第5モジュールは、市区町村コード、高速道路交通区間、航空経路、改札通過鉄道施設に対して、移動手段が通過すると想定される境界それぞれに、当該境界を示すスクリーンラインを設定し、前記手段ごとに、前記スクリーンラインを通過する数を示すスクリーンライン通過数を計算する、システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、人流解析プログラム、人流解析方法、および人流解析システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、GPSシステムを用いた人流データの解析システムが知られている。しかしながら、GPSシステムは、当該機能を備えた携帯端末からの情報しか扱えないため、標本数が少なく、集計結果を拡大する際に誤差が大きくなる懸念があった。
このため、一般に流通している携帯電話から基地局に向けて発信される電波から携帯電話の位置情報を取得し、人の流れを評価するシステムが知られている。
下記特許文献1には、このようなシステムとして、継続的に携帯電話からの電波を取得することで、人流データを取得することができる人流調査システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2002-334197号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、膨大な標本数の通信機器から継続的に位置情報を取得して広範囲にわたる人流データを統計的に評価するためには、膨大な位置情報を解析する必要がある。このため、人流データを解析するための処理の負荷が高くなりすぎるという課題があった。
【0005】
本発明は、人流データを解析するための処理の負荷が高くなりすぎるのを抑制しながら、人流データを解析することができる人流解析システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のプログラムは、携帯端末からの位置情報を用いて、人流データを解析する人流解析システムが実行する人流解析プログラムであって、コンピュータのプロセッサに、複数の携帯端末から固定測位機器への受信電波に含まれる位置情報を時刻情報とともに読み込むステップと、固定測位機器が受信した位置情報に対して、所定のルールに従って間引くクレンジング処理を実行するステップと、クレンジングした位置情報に対して、携帯端末を携帯するユーザの移動経路を示すトリップデータを生成するステップと、生成したトリップデータに対して、ユーザの交通手段を判定するステップと、位置情報のサンプル数から推定エリアの人口への拡大推計を行うために、ユーザ端末の使用端末数を推定エリアの人口に拡大するための拡大係数を算出するステップと、を実行させる。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、人流データを解析するための処理の負荷が高くなりすぎるのを抑制しながら、広範囲における人流データを解析することができる
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本実施形態の人流解析システム1の構成を示すブロック図である。
図2】本実施形態のユーザ端末10の構成を示すブロック図である。
図3】本実施形態の情報処理サーバ20の構成を示すブロック図である。
図4】本実施形態の概要を説明する図である
図5】クレンジング処理の概要を示す図である。
図6】トリップデータの生成について説明する図である。
図7】交通手段の判定の概要を説明する図である。
図8】交通手段の判定のうち、交通手段が航空機と判断された場合の処理を説明する図である。
図9】交通手段判定のうち、交通手段が電車又は高速道路と判断された場合の処理を説明する図である。
図10】拡大処理を説明する図である。
図11】人流解析システムの全体処理を示すフローである。
図12】位置情報の取得処理を示すフローである。
図13】クレンジング処理を示すフローである。
図14】トリップデータの処理を示すフローである。
図15】交通手段の判定処理を示すフローである。
図16】拡大係数の算出処理を示すフローである。
図17】拡大処理を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の一実施形態について、図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施形態を説明するための図面において、同一の構成要素には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0010】
(1)人流解析システム1の構成
人流解析システム1の構成について説明する。図1は、本実施形態の人流解析システム1の構成を示すブロック図である。
【0011】
図1に示すように、人流解析システム1は、ユーザ端末10と、情報処理サーバ20と、を備える。
ユーザ端末10および情報処理サーバ20は、ネットワーク(例えば、インターネットまたはイントラネット)80を介して接続されている。
ユーザ端末10および情報処理サーバ20は、ネットワーク80を介して、交通ネットワークデータベース30、および人口データベース40と接続されている。
【0012】
ユーザ端末10は、ユーザが携帯する携帯電話等の情報処理装置である。ユーザ端末10は、固定測位機器81と無線通信を行うように構成される。ユーザ端末10は、ユーザに携行されて移動する通信機器であり、移動端末と言い換えることもできる。このような移動端末としては、携帯電話のほかに、ユーザに携行されて使用されるwifiビーコン、レーダー測位に用いられる移動アンテナ、ITSスポット(DSRC)に対応する車載のカーナビゲーション端末、Bluetooth(登録商標)を利用した通信端末等が含まれる。なお、移動端末は、移動しながら通信を行うその他の機器であってもよい。
【0013】
固定測位機器81とは、定位置に固定されて通信機器との通信を行う機器を指し、携帯電話の基地局の他、例えばwifiビーコンとの通信を行う測位機器、レーダー測位を行う測位機器、ITSspotにおける測位機器等が含まれる。なお、固定測位機器81は、定位置に固定されて通信機器との通信を行う機器であれば、その他の機器であってもよい。
【0014】
ユーザ端末10は、固定測位機器との無線通信を行う機器として、例えば、スマートフォン、タブレット端末、ウェアラブルデバイス(例えば、スマートウォッチ、またはスマートグラス)、などの種々のコンピュータを含み得る。本実施形態では、ユーザ端末10は、携帯電話の無線通信に利用されるアンテナが設けられた固定測位機器81と無線通信を行うスマートフォンを例に挙げて説明する。
【0015】
情報処理サーバ20は、入力された情報に対して後述する各種の人流解析に関する処理を行う情報処理装置である。情報処理サーバ20は、ユーザ端末10が行う固定測位機器81との無線通信により取得したユーザ端末10の位置情報を解析する処理を実行する。
情報処理サーバ20は、パーソナルコンピュータ、サーバコンピュータ(例えば、Webサーバ、アプリケーションサーバ、データベースサーバ、またはそれらの組み合わせ)などの種々のコンピュータを含みえる。本実施形態では、情報処理サーバ20は、固定測位機器81から取得した位置情報を処理するパーソナルコンピュータを例に挙げて説明する。
【0016】
交通ネットワークデータベース30は、鉄道、高速道路、航空機等の交通手段の情報を記憶するデータベースである。交通ネットワークデータベース30は、交通拠点の情報として、各交通拠点の施設名称、施設番号、位置、各交通拠点を結ぶ路線名、各拠点間で運行される運行時間に関する情報、費用に関する情報等を記憶している。交通拠点とは、空港、駅、高速道路のインターチェンジのように、各交通手段におけるスタートおよびゴールとして利用される施設を指す。
また、交通ネットワークデータベース30は、各交通手段の統計的な利用者数に関する情報を記憶している。
【0017】
人口データベース40は、地域ごとの居住者の数を記憶するデータベースである。人口データベース40は、例えば日本国土を所定の領域ごとに区画したメッシュエリア(区画エリア)毎の人口を記憶している。メッシュエリアには、エリアを識別するメッシュコードが付与されている。山間部等の過疎地では、居住者が少ないため、メッシュエリアを統合した広範なエリアを、統合メッシュとして定義し、統合メッシュを識別する統合メッシュコードが付与されている。
【0018】
(1-1)ユーザ端末10の構成
ユーザ端末10の構成について説明する。図2は、本実施形態のユーザ端末10の構成を示すブロック図である。
【0019】
図2に示すように、ユーザ端末10は、記憶装置11と、プロセッサ12と、入出力インタフェース13と、通信インタフェース14と、を備える。ユーザ端末10は、入力デバイス15および出力デバイス16の少なくとも1つと接続可能である。
【0020】
記憶装置11は、プログラムおよびデータを記憶するように構成される。記憶装置11は、例えば、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、および、ストレージ(例えば、フラッシュメモリまたはハードディスク)の組合せである。
【0021】
プログラムは、例えば、以下のプログラムを含む。
・OS(Operating System)のプログラム
・情報処理を実行するアプリケーション(例えば、ウェブブラウザ)のプログラム
【0022】
データは、例えば、以下のデータを含む。
・情報処理において参照されるデータベース
・情報処理を実行することによって得られるデータ(つまり、情報処理の実行結果)
【0023】
プロセッサ12は、記憶装置11に記憶されたプログラムを起動することによって、ユーザ端末10の機能を実現するように構成される。プロセッサ12は、コンピュータの一例である。
【0024】
入出力インタフェース13は、入力デバイス15から信号(例えば、ユーザの指示、センシング信号、またはそれらの組み合わせ)を取得し、かつ、出力デバイス16に信号(例えば、画像信号、音声信号、またはそれらの組み合わせ)を出力するように構成される。
【0025】
入力デバイス15は、例えば、キーボード、ポインティングデバイス、タッチパネル、物理ボタン、センサ(例えば、カメラ、バイタルセンサ、またはそれらの組み合わせ)、または、それらの組合せである。
【0026】
出力デバイス16は、例えば、ディスプレイ、スピーカ、印刷装置、またはそれらの組み合わせである。
【0027】
通信インタフェース14は、ユーザ端末10と外部装置との間の通信を制御するように構成される。
【0028】
(1-2)情報処理サーバ20の構成
情報処理サーバ20の構成について説明する。図3は、本実施形態の情報処理サーバ20の構成を示すブロック図である。
【0029】
図3に示すように、情報処理サーバ20は、記憶装置21と、プロセッサ22と、入出力インタフェース23と、通信インタフェース24とを備える。情報処理サーバ20は、入力デバイス25および出力デバイス26の少なくとも1つと接続可能である。
【0030】
記憶装置21は、プログラムおよびデータを記憶するように構成される。記憶装置21は、例えば、ROM、RAM、および、ストレージ(例えば、フラッシュメモリまたはハードディスク)の組合せである。
【0031】
プログラムは、例えば、以下のプログラムを含む。
・OSのプログラム
・情報処理を実行するアプリケーションのプログラム
【0032】
データは、例えば、以下のデータを含む。
・情報処理において参照されるデータベース
・情報処理の実行結果
【0033】
プロセッサ22は、記憶装置21に記憶されたプログラムを起動することによって、情報処理サーバ20の機能を実現するように構成される。プロセッサ22は、コンピュータの一例である。
【0034】
入出力インタフェース23は、入力デバイス25から信号(例えば、ユーザの指示、センシング信号、またはそれらの組み合わせ)を取得し、かつ、出力デバイス26に信号(例えば、画像信号、音声信号、またはそれらの組み合わせ)を出力するように構成される。
【0035】
入力デバイス25は、例えば、キーボード、ポインティングデバイス、タッチパネル、センサ、または、それらの組合せである。
【0036】
出力デバイス26は、例えば、ディスプレイ、スピーカ、またはそれらの組み合わせである。
【0037】
通信インタフェース24は、情報処理サーバ20と外部装置との間の通信を制御するように構成される。
【0038】
(2)実施形態の概要
本実施形態に係る人流解析システム1の概要について説明する。図4は、本実施形態の概要を説明する図である。このうち、図4Aは、人流解析システム1が実行する解析処理の概要を説明する図である。
【0039】
図4Aに示すように、人流解析システム1は、ユーザ端末10と固定測位機器81との無線通信を利用して、広範なエリアにおいて時系列に沿ってユーザ端末10の位置情報を推定取得し、人の流れの解析を行う。
図4Bは、固定測位機器81がユーザ端末10から取得する位置情報を示す図である。図4Bに示すように、固定測位機器81は、所定の通信エリアとの通信をカバーしている。固定測位機器81が通信可能な通信エリアにユーザ端末10が位置すると、固定測位機器81は、ユーザ端末10から受信した電波から推定される位置情報を、時刻情報とともに位置情報データベースに蓄積する。位置情報データベースは、携帯電話のキャリアが運用するデータベースであり、固定測位機器81が取得した位置情報を時刻情報とともに、使用端末毎に蓄積している。
【0040】
人流解析システム1は、位置情報データベースから読み込んだ、ユーザ端末10の位置情報を、取得したタイミングを示す時刻情報により時系列に沿って並べることで、ユーザ端末10の移動経路を生成し、移動経路における起終点と移動ルートを把握する。この際、人流解析システム1は、取得した位置情報の一部を除去する処理(クレンジング処理)を実行する。図5は、クレンジング処理の概要を示す図である。
【0041】
図5に示すように、固定測位機器81が取得するユーザ端末10の位置情報は、ノイズを含んでいる。位置情報にノイズが含まれる原因としては、ユーザ端末10が無線通信を行う際に、通信を行う固定測位機器81を選択していることが挙げられる。ユーザ端末10は、自機が位置するエリアをカバーする固定測位機器81を常に探し、最適な通信環境が得られる固定測位機器81を選択する。このため、通信エリアの境界となる位置、又は複数の通信エリアが重なり合う位置では、頻繁に固定測位機器81の変更が行われることで、位置情報にノイズが生じる可能性がある。また、前述のように、位置情報は推定された情報であるため、通信エリアの外側にユーザ端末10が位置している場合には、一定の誤差を含んでいることとなる。
【0042】
このため、クレンジング処理では、所定の手法に基づき、図5に示すように位置情報の一部であるノイズを間引く。これにより、位置情報に含まれるノイズが除去され、位置情報により示されるユーザ端末10の移動経路が正確な情報となる。クレンジング処理の具体的な手法については後述する。
【0043】
また、人流解析システム1は、クレンジングした位置情報に対して、移動経路を示すトリップデータを生成する。図6は、トリップデータの生成について説明する図である。
図6に示すように、トリップデータの生成では、一定時間以上、固定測位機器81が変わらない場合(すなわち、位置情報が同一の位置を示す場合)に、当該位置を滞在地候補とみなす。滞在地候補とは、実際に滞在したか否かに関わらず、滞在したとみなされる位置を指す。次に、滞在地候補と連続し、かつ所定距離以内に位置する位置情報を統合する。次に、トリップデータの生成では、統合した位置情報と時刻情報とを用いて、移動速度を算出する。この移動速度は、後述する交通手段の判定に利用される。
【0044】
また、人流解析システム1は、生成したトリップデータに対して、移動経路において使用された交通手段を判定する。図7は、交通手段の判定の概要を説明する図である。図7に示すように、位置情報に対して交通拠点の候補を検索する。この際、各メッシュの中心座標を基準として、交通拠点とのマッチングを行う。マッチングされた交通拠点は、メッシュコードと紐づけられてマスタデータとして記憶される。すなわち、位置情報の各座標から交通拠点を検索するのではなく、位置情報と対応するメッシュコードから交通拠点が検索される。これにより、交通拠点の検索に要する処理の負荷を削減することができる。そして、交通拠点の候補から、交通手段を推定する。
【0045】
図8は、交通手段の判定のうち、交通手段が航空機と判断された場合の処理を説明する図である。図8に示すように、移動速度から航空機の判定が行われると、空港の位置情報とユーザ端末10の位置情報とをマッチングする。そして、位置情報の時刻から、航空機の就航データを照合し、確認が取れた場合には、航空機利用であることを確定する。
【0046】
図9は、交通手段判定のうち、交通手段が鉄道又は高速道路と判断された場合の処理を説明する図である。図9に示すように、この処理では、トリップデータに含まれる交通拠点間のルートを検索して、利用路線(又は利用道路)を確定させる。利用路線および利用道路に関する情報については、交通ネットワークデータベース30に記憶されている。この図では、A駅からB駅に至る経路として2つの経路が交通ネットワークとして、交通ネットワークデータベース30に記憶されている。
人流解析システム1は、交通手段判定を行うことで、位置情報の推移から、選択された交通手段を推定する。
【0047】
また、人流解析システム1は、統計的手法を用いて、ユーザ端末10の普及率から拡大推定を行い、サンプル数(位置情報を取得したユーザ端末10の数)を、推定エリアの人口に拡大することで、対象エリアの人口における人の流れを推定する処理を行う。図10は、拡大処理を説明する図である。図10に示すように、それぞれの交通区間および交通拠点において設定された拡大率を、サンプル数に乗じることで、該当するエリアにおける人の流れを推定する。これらの処理の具体的な流れについて以下に説明する。
(3)全体処理
【0048】
図11は、人流解析システムの全体処理を示すフローである。
図11に示すように、人流解析システム1では、ユーザ端末10が固定測位機器81と無線通信を行う(ステップS10)。
【0049】
ステップS10の後に、情報処理サーバ20は、ユーザ端末10と通信を行った固定測位機器81が位置情報データベースに蓄積した位置情報を読み込む。(ステップS20)。この際、取得した時刻を示す時刻情報を合わせて読み込む。位置情報の取得方法の詳細は後述する。
【0050】
ステップS20の後に、情報処理サーバ20は、位置情報に対してクレンジング処理を行う(ステップS21)。クレンジング処理の詳細は後述する。
【0051】
ステップS21の後に、情報処理サーバ20は、トリップデータを生成する(ステップS22)。トリップデータの生成方法の詳細は後述する。
【0052】
ステップS22の後に、情報処理サーバ20は、トリップデータに含まれる交通手段を判定する(ステップS23)。交通手段の判定方法の詳細は後述する。
【0053】
ステップS23の後に、情報処理サーバ20は、拡大係数を算出する(ステップS24)。拡大係数の算出方法の詳細は後述する。拡大係数の算出処理は、定期的に行われる処理であり、省略することができる。
【0054】
ステップS24の後に、情報処理サーバ20は、拡大係数を用いて拡大処理を行う(ステップS25)。拡大処理の詳細については後述する。
【0055】
ステップS25の後に、情報処理サーバ20は、解析結果の出力を行う(ステップS26)、解析結果の出力方法については後述する。
以上により、人流解析システムの全体処理が終了する。次に、各処理の詳細について説明する。
【0056】
(3-1)位置情報の取得処理
図12は、位置情報の取得処理を示すフローである。図12に示すように、まず、情報処理サーバ20は、位置情報データベースから、ユーザ端末10の位置情報を2日分読み込む(ステップS201)。この際、情報処理サーバ20は、午前0時を基準として、2日分の位置情報を読み込む。
【0057】
ステップS201の後に、情報処理サーバ20は、基準日時の補正を行う(ステップS202)。具体的には、午前3時から翌日となる27時までの24時間が1日となるように、基準日時の補正を行う。このように情報処理サーバ20は、取得した日時の基準となる時間帯と、評価日時の基準となる時間帯と、を異ならせている。これにより、午前0時をまたいで活動する人の流れを、1日の流れとして含ませることができる。
ステップS202の後に、情報処理サーバ20は、ユーザ端末10の使用端末ごとに、ステップS202の処理を繰り返す。
これにより、位置情報の取得処理が終了する。
【0058】
(3-2)クレンジング処理
図13は、クレンジング処理を示すフローである。図13に示すように、まず、情報処理サーバ20は、航空機の利用可能性の有無を判定する(ステップS211)。この処理では、移動距離、移動速度などから、移動経路途中で航空機を利用しているかどうかを判定する。
【0059】
ステップS211において、情報処理サーバ20は、航空機を利用した可能性があると判断された場合(ステップS212のYes)には、クレンジング処理の対象外とする。
【0060】
ステップS211において、情報処理サーバ20は、航空機を利用した可能性がないと判断された場合(ステップS212のNo)には、クレンジング処理を実行する。
【0061】
ステップS212の後に、情報処理サーバ20は、跳び点補正を行う(ステップS213)。跳び点補正とは、滞在時間が閾値未満の位置情報を、ノイズとして除去する処理である。
【0062】
ステップS213の後に、情報処理サーバ20は、同一点補正を行う(ステップS214)。同一点補正とは、位置情報に含まれる位置の誤差が生じ得る水平距離を指す水平精度と緯度経度が同一の位置情報については重複データと判断し、ノイズとして除去する処理である。
【0063】
ステップS214の後に、情報処理サーバ20は、0時補正を行う(ステップS215)。0時補正とは、時刻情報が0時であり、かつ緯度経度が同じ位置情報については、重複データと判断し、ノイズとして除去する処理である。
【0064】
ステップS215の後に、情報処理サーバ20は、鋭角補正を行う。(ステップS216)。鋭角補正とは、位置情報の時系列に沿った地図上での変位角を確認し、所定の閾値未満の変位角を検出した際に、当該変位角の頂点を構成する位置情報をノイズとして除去する処理である。
【0065】
ステップS216の後に、情報処理サーバ20は、位置情報ごとに上記のステップS211からステップS216を繰り返す。以上により、クレンジング処理が終了する。
【0066】
(3-3)トリップデータの生成処理
図14は、トリップデータの処理を示すフローである。図14に示すように、トリップデータの生成では、情報処理サーバ20は、クレンジングされた位置情報を、移動情報と滞在情報と、に分離する判定を行う(ステップS221)。
具体的には、クレンジング処理の結果を読み込み、前後(n、n+1)の関係になる位置情報を取得して、2点間の距離を求める。次に、2点間の距離が閾値未満の場合には、2点をnと同じグループnに分類する。2点間の距離が閾値未満でない場合には、2点を同じグループにはしない。この処理を位置情報ごとに繰り返す。
【0067】
次に、グループnの滞在時間の合計を求め、滞在時間が閾値未満である場合には、当該グループnに含まれる位置情報を移動と判定する。
一方、グループ毎の滞在時間が閾値未満でない場合には、当該グループに含まれる位置情報のうち、最大の滞在時間を算出する。
【0068】
次に、算出した最大の滞在時間が閾値未満の場合には、当該グループn内の最初と最後の位置情報の距離を求める。算出した距離が閾値未満の場合には、グループnを移動と判定する。
一方、算出した距離が閾値未満ではない場合には、グループnを滞在と判定する。
【0069】
また、最大の滞在時間が閾値未満ではない場合には、グループnを滞在と判定する。
その後、グループnの滞在時間の合計の算出から、判定までの処理を分類したグループ毎に繰り返す。
【0070】
ステップS221の後に、情報処理サーバ20は、採番処理を行う(ステップS222)。採番処理とは、位置情報を分類したグループ毎に、番号を割り振る処理である。具体的には、グループnとグループn+1に含まれる位置情報を取得する。次に、各グループ内の最も滞在時間の長い位置情報を代表点とする。次に、あるグループnと次のグループn+1の代表点間の距離を算出する。次に、算出した距離が、閾値以下かつ当該グループが滞在と判定されている場合には、グループnとグループn+1を一つのトリップグループとして定義する。
一方、算出した距離が、閾値以下かつ当該グループが滞在と判定されている場合に該当しない場合には、グループnとグループn+1を異なるトリップグループとして定義する。
次に、定義したトリップグループにトリップ番号および、合算した滞在時間を設定する。
その後、グループnとグループn+1に含まれる位置情報を取得する処理から、定義したトリップグループにトリップ番号および、合算した滞在時間を設定する処理までを、分類したグループ毎に繰り返す。
【0071】
ステップS222の後に、情報処理サーバ20は、ユーザ端末10の使用端末ごとに、ステップS221からステップS222を繰り返す。
以上により、トリップデータの生成処理が終了する。
【0072】
(3-4)交通手段の判定処理
図15は、交通手段の判定処理を示すフローである。図15に示すように、交通手段の判定では、情報処理サーバ20は生成されたトリップデータを読み込む(ステップS2301)。
【0073】
ステップS2301の後に、情報処理サーバ20は、航空移動判定を行う(ステップS2303)。航空移動判定は、トリップデータに航空機による移動が含まれるかどうかの判定である。航空移動判定は、他の交通手段の判定に先行して行われる。これは、飛行機の動きは速度や経路がわかりやすいので、先に判別するのが容易であるためである。具体的には、トリップデータに含まれる位置情報が含まれるメッシュエリアから、出発空港の候補となる拠点が検出されるかを判断する。出発空港の候補となる拠点が検出された場合には、トリップデータに含まれる位置情報が含まれるメッシュエリアから、到着空港の候補となる拠点が検出されるかを判断する。到着空港の候補となる拠点が検出された場合には、出発空港と到着空港の候補を結ぶ航空経路が存在するかどうかを確認する。この際、就航情報と位置情報に含まれる時刻情報との照会を行う。航空経路が存在する場合には、トリップデータが航空移動であることを判定する。
【0074】
ステップS2303の後に、情報処理サーバ20は、鉄道・高速マッチングを行う(ステップS2304)。鉄道・高速マッチングは、トリップデータに鉄道又は高速道路による経路を適合させる処理である。具体的には、位置情報が位置するメッシュエリア間における交通区間情報と、交通施設情報とを追加する。次に、位置情報が位置するメッシュエリアのメッシュコードと水平精度から、交通施設の候補を検索して追加する。次に、交通区間候補と交通施設候補の情報を追加した結果を出力する。
【0075】
ステップS2304の後に、情報処理サーバ20は、トリップデータを結合する(ステップS2306)。具体的には、鉄道・高速マッチング処理後のデータを取得し、次のトリップデータの起点情報を、前のトリップデータの末尾に追加する。そして、マッチング処理結果に対して、トリップデータを結合した結果を出力する。
【0076】
ステップS2306の後に、情報処理サーバ20は、特定区間の判定を行う(ステップS2307)。特定区間とは、予め設定された所定の条件を満たす区間を指す。具体的には、トリップデータに含まれる位置情報が、特定区間に含まれる場合には、特定区間を含むものと判定する。特定区間とは、例えば地下鉄やトンネル等の通信の円滑な通信環境が確保しにくい区間を指す。
【0077】
ステップS2307の後に、情報処理サーバ20は、交通手段を分割する(ステップS2308)。交通手段の分割では、トリップデータの位置情報に移動手段を設定し、移動手段が切り替わるごとに、移動手段を区別するためのモードグループ番号を設定する。これにより、トリップデータを分割する。
【0078】
ステップS2308の後に、情報処理サーバ20は、鉄道判定を行う(ステップS2310)。鉄道判定は、分割されたトリップデータ(モードグループ)のうち、交通手段が鉄道と判定されたものに対して行われる。鉄道判定では、複数の鉄道経路の候補を作成する。次に、判定対象となるモードグループに対して、鉄道区間外の部分を示す位置情報を削除する。次に、複数の鉄道経路の候補のうち、コストが最も低いものを選定し、通過リンクとして設定する。次に、モードグループの移動時間と、通過リンクとして選定した鉄道経路を利用している位置情報の滞在時間から、マッチング率を計算し、位置情報に設定する。最後に、通過リンクとマッチング率を設定した結果を出力する。
【0079】
ステップS2308の後に、情報処理サーバ20は、高速道路判定を行う(ステップS2311)。高速道路判定では、分割されたモードグループのうち、交通手段が高速道路と判定されたものに対して行われる。高速道路判定では、複数の高速道路の経路の候補を作成する。次に、判定対象となるモードグループに対して、高速道路区間外の部分を示す位置情報を削除する。次に、複数の鉄道経路の候補のうち、コストが最も低いものを選定し、通過リンクとして設定する。次に、モードグループの移動時間と、通過リンクとして選定した高速道路経路を利用している位置情報の滞在時間から、マッチング率を計算し、位置情報に設定する。最後に、通過リンクとマッチング率を設定した結果を出力する。
【0080】
ステップS2308の後に、情報処理サーバ20は、その他の交通手段の処理を行う。(ステップS2312)。その他の交通手段の処理では、手段分割処理(ステップS2308)において、その他の交通手段となったモードグループに対して、出発施設、到着施設、マッチング率、経路を設定する。具体的には、まず、その他の交通手段となったモードグループを取得し、滞在代表点の位置情報以外の滞在時間を合計して、その他交通手段の移動にかかった時間の情報を設定する。次に、その他の交通手段に判定された位置情報を1つのレコードにまとめる。次に、出発施設、到着施設、マッチング率、経路なし、移動時間の情報を付与した結果を出力する。
【0081】
航空移動判定(ステップS2303)、鉄道判定(ステップS2310)、高速道路判定(ステップS2311)、およびその他の手段判定(ステップS2312)の処理の後に、情報処理サーバ20は、4つの結果を統合する(ステップS2313)。
【0082】
ステップS2313の後に、情報処理サーバ20は、交通施設の追加を行う(ステップS2314)。具体的には、交通施設の追加処理では、統合された出力結果を取得する。次に、交通区間の起点側および終点側の施設情報を付加する。そして、交通施設を追加した結果を出力する。
【0083】
ステップS2314の後に、情報処理サーバ20は、マッチング率に基づいて交通手段を変更する(ステップS2315)。交通手段の変更処理では、マッチングが条件を満たさないときに、交通手段を変更する。具体的には、モードグループのうち、通過リンクが取得できなかったもの、マッチング率が取得できなかったもの、およびマッチング率が閾値以下のものに対して、交通手段を変更する。また、交通手段の変更処理では、手段が鉄道、および高速道路と判定されたもののうち、マッチング率が閾値未満のものを、交通手段が判定不能として削除する。最後に、交通手段の変更処理では、変更した結果を出力する。
その後、ステップS2309に戻り、鉄道判定(ステップS2310)、高速道路判定(ステップS2311)、その他の手段判定(ステップS2312)から手段変更(ステップS2315)までの処理をモードグループごとに繰り返す。
【0084】
ステップS2315の後に、情報処理サーバ20は、モードグループ番号を再設定する(ステップS2316)。モードグループ番号の再設定では、その他の交通手段と判定されたモードグループを統合し、モードグループ番号を振りなおす。具体的には、交通手段の変更後のデータを取得し、トリップ内でその他の手段が連続するかどうかを確認する。その他の交通手段が連続する場合には、モードグループを統合して、モードグループ番号を小さい値に統一する。そして、時系列順にモードグループ番号を新たに振りなおす。
【0085】
ステップS2316の後に、振りなおしたモードグループ番号を再設定した判定結果を出力する(ステップS2317)。すなわち、再採番したモードグループごとに、時刻、モードグループ毎の起点施設、終点施設、メッシュコード、滞在時間を設定して、手段判定後の結果として出力する。具体的には、再採番結果を取得し、モードグループごとに時系列に並べた最も古い時刻の情報を設定する。次に、モードグループごとに、起点と終点の施設番号と、対応するメッシュコードを取得して情報を追加する。
次に、モードグループ頃に滞在時間を合計してその情報を追加する。これらの情報を示すレコードを生成して、その結果を出力する。この処理は、モードグループごとに繰り返し行う。
【0086】
その後、ステップS2305に戻り、トリップデータ結合(ステップS2306)から判定結果の集計(ステップS2317)、までの処理をトリップグループごとに繰り返す。
その後、ステップS2302に戻り、航空移動判定(ステップS2303)から判定結果の集計(ステップS2317)、までの処理をユーザ端末10の使用端末ごとに繰り返す。
これにより、交通手段の判定処理が終了する。
【0087】
(3-5)拡大係数の算出処理
図16は、拡大係数の算出処理を示すフローである。拡大係数の算出処理では、手段判定後の結果から、居住地の統合メッシュごとに、拡大係数を計算して出力する。拡大係数の算出処理は、所定期間に1度行い、所定期間中は同じ拡大係数をマスタデータとして使用する。なお、拡大係数の更新期間は、任意に設定可能である。
【0088】
拡大係数の算出処理では、情報処理サーバ20は、まず、ユーザ端末10を利用するユーザの居住地情報を読み込む(ステップS2401)。
【0089】
ステップS2401の後に、情報処理サーバ20は、スクリーンラインの集計を行う(ステップS2402)。市区町村におけるスクリーンラインとは、人流解析の対象となる人の居住地エリア(市区町村)を示す情報である。具体的には、携帯端末の使用端末のユーザの居住地を指す。市区町村に対するスクリーンラインの集計では、市区町村コードをスクリーンラインとして設定し、スクリーンラインに居住する携帯端末の使用者の人数を計算して出力する。次に、居住地のメッシュコードから、統合メッシュコードと人口拡大率をスクリーンラインに追加する。人口拡大率は、統合メッシュ毎の人口を、当該統合メッシュにおける使用端末数で除した値である。
次に、位置情報から、スクリーンライン、統合メッシュコードごとに、当該エリアを居住地として登録された携帯電話の使用端末の数を集計する。次に、集計結果が閾値以上のものを出力する。スクリーンラインの集計は、市区町村ごとに繰り返す。その後、拡大係数の収斂計算を行う(ステップS2409)。
【0090】
また、情報処理サーバ20は、1日分の手段判定後の位置情報を読み込む(ステップS2403)。次に、情報処理サーバ20は、交通手段によって、処理を分ける(ステップS2404)。まず、交通手段が高速道路であるトリップデータに対してスクリーンラインの集計を行う(ステップS2405)。高速手段におけるスクリーンラインとは、人流解析の対象となる交通手段を示す情報である。具体的には、トリップデータに含まれる交通手段を指す。交通手段に対するスクリーンラインの集計では、高速道路の交通区間、航空経路、鉄道における改札を通過した鉄道施設を、それぞれスクリーンラインとして設定し、スクリーンラインを通過したユーザ端末10の数を計算して出力する。この処理を交通区間ごとに繰り返す。その後、拡大係数の収斂計算を行う(ステップS2409)。
【0091】
次に、交通手段が航空機であるトリップデータに対して、スクリーンラインの集計を行う(ステップS2406)。この処理を航空経路ごとに繰り返す。その後、拡大係数の収斂計算を行う(ステップS2409)。
【0092】
次に、交通手段が鉄道である場合には、駅の改札を通過した乗降者数を集計する(ステップS2407)。この処理は鉄道区間ごとに繰り返す。交通手段が鉄道である場合には、高速道路や航空経路とは異なり、区間内での交通量(人数)の集計が困難であるため、改札通過人数から、スクリーンライン集計を行う。この場合には、トリップデータに含まれる交通区間から、利用した経路の先頭となる駅の改札を特定し、新幹線か在来線かの判定を行ったうえで、モードグループ毎に改札通過数を集計する。
【0093】
そして、交通手段が鉄道であるトリップデータに対して、スクリーンラインを集計する。この処理を鉄道施設ごとに繰り返す。その後、拡大係数の収斂計算を行う(ステップS2409)。
【0094】
収斂計算では、初期値としての人口拡大率を、交通手段毎の利用者数、および市区町村毎の居住者数を用いて補正した、統合メッシュ毎の補正拡大率(拡大係数)を算出する。
【0095】
交通手段および市区町村には、スクリーンラインとしての要求される精度に応じた優先順位が付与されている。
次に、各スクリーンラインについて、利用者数又は居住者数に、統合メッシュ毎の補正前の拡大率を乗じた人数を統合メッシュ毎に算出し、この値を全て加える。これにより、スクリーンライン毎の拡大された利用者数又は居住者数が算出される。この値をスクリーンライン毎の統計値で除することで、スクリーンライン毎の補正率が算出される。
【0096】
次に、付与された優先順位に従って、同じ優先順位に該当するスクリーンラインにおける利用者数又は居住者数と、スクリーンライン毎の補正率と、の例えば加重平均のような、居住者数と補正率とを組み合わせた値を算出し、算出された補正拡大率を、予め設定された閾値としての占有率と比較する。補正拡大率が占有率を超えた場合には、この値が補正拡大率として確定する。
【0097】
一方、算出された補正拡大率が、占有率を超えない場合には、スクリーンライン毎の補正率を、新たに算出された補正拡大率を用いて再度算出し、次の優先順位に該当するスクリーンラインにおける利用者数又は居住者数と、スクリーンライン毎の新たな補正率と、の加重平均を算出する。そして、新たに算出された補正拡大率が、占有率を超える場合には、新たに算出された補正拡大率を補正拡大率として確定する。
新たに算出された補正拡大率が、占有率を超えない場合には、再度、統合メッシュごとの補正拡大率の計算を繰り返す。全ての統合メッシュコードに対して補正拡大率が確定することで、拡大係数の収斂計算(ステップS2409)が終了する。
【0098】
ステップS2409の後に、情報処理サーバ20は、性別と5歳刻みの年齢の値を付与して、統合メッシュごとに拡大係数を出力する(ステップS2410)。拡大係数の出力は、統合メッシュごとに繰り返す。
以上により、拡大係数の生成処理が終了する。
なお、拡大係数の生成処理では、居住地に関するスクリーンラインの集計を行わずに、各交通手段に関するスクリーンラインの集計結果のみに基づいて、拡大係数の収斂計算を行ってもよい。
【0099】
(3-5)拡大処理
図17は、拡大処理を示すフロー図である。図17に示すように、拡大処理では、情報処理サーバ20は、手段判定処理後のトリップデータを読み込む(ステップS251)。
ステップS251の後に、情報処理サーバ20は、トリップデータに航空移動が含まれるかどうかを判定する(ステップS252)。
【0100】
トリップデータに航空移動が含まれる場合(ステップS252のYes)には、前後のトリップを同じトリップ番号にまとめる(ステップS253)。
トリップデータに航空移動が含まれない場合(ステップS252のNo)には、トリップ番号は変更しない。ステップS252およびステップS253までの処理は、トリップデータごとに繰り返す。
【0101】
ステップS252およびステップS253の後に、情報処理サーバ20は、居住地のメッシュコードと、性別、年齢から、該当する拡大率を追加する(ステップS254)。ステップS252からステップS254までの処理は、使用端末ごとに繰り返す。
【0102】
ステップS254の後に、情報処理サーバ20は、拡大率を追加した結果を出力する。
以上により、拡大処理が終了する。
その後、交通手段の判定結果に対して、算出された拡大係数を乗じることで、拡大推計された統計的な人流データを生成することができる。
【0103】
(4)効果
以上説明したように、人流解析システム1によれば、取得したユーザ端末10の位置情報に対してクレンジング処理を行う。このため、位置の精度に一定の誤差を含む位置情報を扱う場合であっても、所定のルールに従ってノイズとなる位置情報を除去することで、位置の精度を確保することができる。
また、クレンジング処理により位置情報の一部を間引くことにより、人流データを解析するための処理の負荷が高くなりすぎるのを抑制しながら、人流データを解析することができる。
【0104】
また、人流解析システム1によれば、生成したトリップデータに対して交通手段の判定を行う。このため、移動経路のみではなく、移動手段を把握することができ、どのような交通手段がどのように使用されているかという情報を得ることができる。
【0105】
また、人流解析システム1によれば、拡大係数を算出し、推定エリアの人口への拡大推計を行う。このため、ユーザ端末10の使用端末数に限られず、推定エリアの人口における統計的な人の流れを近似的に得ることができる。
【0106】
以上、本開示の好ましい実施形態について説明したが、本開示は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、本開示には、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲が含まれる。また、上記実施形態および変形例で説明した装置の構成は、技術的な矛盾が生じない限り、適宜組み合わせ可能である。
また、本発明のプログラムは、複数のソースコードにより表現されてもよいし、本発明のシステム1は、複数のハードウェア資源により実現されてもよい。
【0107】
(付記)
本発明の実施形態について、以下に付記を示す。
【0108】
(付記1)
携帯端末からの位置情報を用いて、人流データを解析する人流解析システムが実行する人流解析プログラムであって、
コンピュータのプロセッサに、
複数の携帯端末が固定測位機器と通信を行うことにより推定される位置情報を、時刻情報とともに読み込むステップと、
固定測位機器が受信した位置情報に対して、所定のルールに従って間引くクレンジング処理を実行するステップと、
クレンジングした位置情報に対して、携帯端末を携帯するユーザの移動経路を示すトリップデータを生成するステップと、
生成したトリップデータに対して、ユーザの交通手段を判定するステップと、
位置情報のサンプル数から推定エリアの人口への拡大推計を行うために、ユーザ端末の使用端末数を推定エリアの人口に拡大するための拡大係数を算出するステップと、
を実行させる、プログラム。
【0109】
(付記2)
位置情報を読み込むステップでは、
取得した日時の基準となる時間帯と、評価日時の基準となる時間帯と、を異ならせる、付記1に記載のプログラム。
【0110】
(付記3)
クレンジング処理を実行するステップでは、
同一位置を示す位置情報を間引く処理を実行する、付記1又は2に記載のプログラム。
【0111】
(付記4)
クレンジング処理を実行するステップでは、
位置情報の時系列に沿った地図上での変位角を確認し、所定の閾値を超える角度での変位角を検出した際に、当該変位角の頂点を構成する位置情報を間引く処理を実行する、付記1から3のいずれか1つに記載のプログラム。
【0112】
(付記5)
クレンジング処理を実行するステップでは、
所定のエリア内での滞在時間が所定の閾値以下の位置情報を間引く処理を実行する、付記1から4のいずれか1つに記載のプログラム。
【0113】
(付記6)
クレンジング処理を実行するステップでは、
位置情報の時系列に沿った変位量から移動速度を算出し、所定の速度以上で変位する位置情報については、間引く処理の対象から除外する、付記1から5のいずれか1つに記載のプログラム。
【0114】
(付記7)
トリップデータを生成するステップでは、
位置情報の時系列に沿った変位量を算出し、滞在と移動との分類を行う、付記1から6に記載のプログラム。
【0115】
(付記8)
トリップデータを生成するステップでは、滞在と判断された位置情報の一部を、トリップデータから除外する、付記1から7に記載のプログラム。
【0116】
(付記9)
ユーザの交通手段を判定するステップでは、
位置情報から、航空移動を判定する、付記1から8のいずれか1つに記載のプログラム。
【0117】
(付記10)
ユーザの交通手段を判定するステップでは、
位置情報に、交通区間情報と、交通施設情報を追加したうえで、交通手段の判定を行う、付記1から9のいずれか1つに記載のプログラム。
【0118】
(付記11)
ユーザの交通手段を判定するステップでは、
複数の移動手段それぞれに対して、トリップデータごとにスタートとゴールを設定し、
スタートとゴールをトリップデータにおける移動速度で移動できる複数の経路を特定し、
特定された複数の経路のうち、最もコストの低い経路との該当率(マッチング率)に基づいて、交通手段を判断する、付記1から10のいずれか1つに記載のプログラム。
【0119】
(付記12)
拡大係数を算出するステップでは、予め所定の大きさで設定された単位エリアを統合した統合エリアごと、および判定された交通手段ごとに、拡大係数を算出する、付記1から11のいずれか1つに記載のプログラム。
【0120】
(付記13)
拡大係数を算出するステップでは、交通機関利用者数と、補正利用者数と、に基づいて補正係数を算出する、付記1から12のいずれか1つに記載のプログラム。
【0121】
(付記14)
拡大係数を算出するステップでは、市区町村コード、高速道路交通区間、航空経路、改札通過鉄道施設に対して、移動手段が通過すると想定される境界それぞれに、当該境界を示すスクリーンラインを設定し、手段ごとに、スクリーンラインを通過する数を示すスクリーンライン通過数を計算する、付記1から13に記載のプログラム。
【0122】
(付記15)
携帯端末からの位置情報を用いて、人流データを解析する人流解析システムが実行する人流解析方法であって、
コンピュータのプロセッサが、
複数の携帯端末が固定測位機器と通信を行うことにより推定される位置情報を、時刻情報とともに読み込むステップと、
固定測位機器が受信した位置情報に対して、所定のルールに従って間引くクレンジング処理を実行するステップと、
クレンジングした位置情報に対して、携帯端末を携帯するユーザの移動経路を示すトリップデータを生成するステップと、
生成したトリップデータに対して、ユーザの交通手段を判定するステップと、
位置情報のサンプル数から推定エリアの人口への拡大推計を行うために、ユーザ端末の使用端末数を推定エリアの人口に拡大するための拡大係数を算出するステップと、を実行する、方法。
【0123】
(付記16)
コンピュータのプロセッサを備え、携帯端末からの位置情報を用いて、人流データを解析する人流解析システムであって、
コンピュータのプロセッサは、
複数の携帯端末が固定測位機器と通信を行うことにより推定される位置情報を、時刻情報とともに取得する第1モジュールと、
固定測位機器が受信した位置情報に対して、所定のルールに従って間引くクレンジング処理を実行する第2モジュールと、
クレンジングした位置情報に対して、携帯端末を携帯するユーザの移動経路を示すトリップデータを生成する第3モジュールと、
生成したトリップデータに対して、ユーザの交通手段を判定するステップと、
位置情報のサンプル数から推定エリアの人口への拡大推計を行うために、ユーザ端末の使用端末数を推定エリアの人口に拡大するための拡大係数を算出する第4モジュールと、
を備える、システム。
【符号の説明】
【0124】
1 人流解析システム
10 ユーザ端末
20 情報処理サーバ20
21 記憶装置
22 プロセッサ
23 入出力インタフェース
24 通信インタフェース
25 入力デバイス
26 出力デバイス
30 交通ネットワークデータベース
40 人口データベース
80 ネットワーク
81 固定測位機器

【要約】
【課題】人流データを解析するための処理の負荷が高くなりすぎるのを抑制しながら、人流データを解析することができる人流解析システムを提供する。
【解決手段】本発明のプログラムは、コンピュータのプロセッサに、複数の携帯端末から固定測位機器への受信電波に含まれる位置情報を時刻情報とともに読み込むステップと、固定測位機器が受信した位置情報に対して、所定のルールに従って間引くクレンジング処理を実行するステップと、クレンジングした位置情報に対して、携帯端末を携帯するユーザの移動経路を示すトリップデータを生成するステップと、生成したトリップデータに対して、ユーザの交通手段を判定するステップと、位置情報のサンプル数から推定エリアの人口への拡大推計を行うために、ユーザ端末の使用端末数を推定エリアの人口に拡大するための拡大係数を算出するステップと、を実行させる。
【選択図】図4

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17