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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-18
(45)【発行日】2022-03-01
(54)【発明の名称】ウエイトトレーニングマシン
(51)【国際特許分類】
   A63B 21/06 20060101AFI20220221BHJP
【FI】
A63B21/06
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021162644
(22)【出願日】2021-10-01
【審査請求日】2021-10-14
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】511302356
【氏名又は名称】株式会社杉原クラフト
(74)【代理人】
【識別番号】100135437
【弁理士】
【氏名又は名称】坂野 哲三
(72)【発明者】
【氏名】杉原 正治
【審査官】比嘉 翔一
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0197103(US,A1)
【文献】特表2013-512008(JP,A)
【文献】実開昭55-077264(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2014/0342878(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0274566(US,A1)
【文献】米国特許第04750738(US,A)
【文献】特開平07-241354(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63B 1/00-26/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも本体フレーム部と、この本体フレーム部の適宜位置に設けられた座席部と、この座席部の近傍に設けられたアーム部又は作動部と、前記本体フレーム部の適宜位置に配置されたウエイト部と、このウエイト部と前記アーム部又は作動部とを複数のプーリーを介して連結するワイヤー部とから成り、前記座席部に腰掛けた使用者がアーム部又は作動部を可動させることによって身体の各部の筋肉を鍛錬することができるウエイトトレーニングマシンにおいて、
前記ウエイト部をワイヤーを介して引き上げることができる自動引上げ手段を本体フレーム部の適宜位置に付加し、
前記ワイヤー部には前記ウエイト部との連結において遊び及び/又は伸縮部を設け、
使用者が身体の一部で前記アーム部又は作動部を可動させ、前記ワイヤー部を引き上げて前記ワイヤー部の遊びが無くなると及び/又は前記伸縮部の伸長により、遅れて前記自動引上げ手段が始動してウエイト部を引き上げ、
その後、使用者がアーム部又は作動部の可動を停止すると、前記自動引上げ手段も停止してウエイト部の自重がアーム部又は作動部に負荷され、使用者は当該ウエイト部の自重を身体の一部で保持しつつ元の位置に戻すことによって筋肉の鍛錬をすることができることを特徴とするウエイトトレーニングマシン。
【請求項2】
前記自動引上げ手段が圧縮空気の供給・排気を利用したエアーシリンダーからなることを特徴とする請求項1に記載のウエイトトレーニングマシン。
【請求項3】
前記ウエイト部に接続するワイヤー部の端部にスプリングを介在させ、前記アーム部又は作動部を可動させた際に前記スプリング部が伸長することによりリミットスイッチが開となって前記エアーシリンダーが始動し、当該エアーシリンダーのシリンダーロッドが収縮することにより前記ワイヤーを介してウエイト部が引き上げられることを特徴とする請求項2に記載のウエイトトレーニングマシン。
【請求項4】
前記エアーシリンダーにおける圧縮エアーの排気部において、当該エアーの排気量を調整できるようにしたことを特徴とする請求項2又は3に記載のウエイトトレーニングマシン。
【請求項5】
前記本体フレーム部の座席部に背凭れ部を設けたことを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載のウエイトトレーニングマシン。
【請求項6】
前記ウエイト部の引上げ重量を変更できるようにしたことを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項に記載のウエイトトレーニングマシン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、錘(ウエイト)を昇降させて筋力トレーニングを行うことができるウエイトトレーニングマシンの改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図1は、本発明に係るトレーニングマシンの全体を図示する全体説明図であるが、本体フレーム部は従来のマシンを利用しているために、この図1に図示したマシンの本体フレーム部を従来例として説明する。
【0003】
従来の本体フレーム部30は、本体フレーム部30の手前側(図中右側)に使用者の腰掛部31と背凭れ部32を設け、これら腰掛部31及び背凭れ部32の近傍にはアーム部33、33を設け、更に、本体フレーム部30の前方(図中左側)には複数の錘35を重ね合わせたウエイト部36を設け、前記アーム部33とウエイト部36とは複数のプーリー37を介してワイヤー部38によって連結され、例えば、使用者が前方のウエイト部36に向かって腰掛部31に腰掛け、両側のアーム部33のグリップ33gを把持してこのアーム部33を手前側に引き寄せることによって、ワイヤー部38を介してウエイト部36が持ち上げられて上腕二頭筋等を収縮させて筋力トレーニングをすることができるウエイトトレーニングマシンが存在している。
【0004】
このウエイトトレーニングマシンにおいては、その使用の方法を変更すること、換言すると、上記アーム部33以外の作動部43、44、45を引き上げたり、引き寄せたり、又は押し上げたりすることにより身体の各部の筋力のトレーニングを行うことができるものである。
例えば、上記と異なり、手前側に身体の前面を向けて前記背凭れ32部を背中に当てて両側のアーム部33の端部のグリップ33hを把持して前方に押し出すようにすることにより背中側の筋力トレーニングを行うこともできる。
【0005】
また腰掛部31の下方に設けられた逆T字型の作動部43に両足の足首を引っ掛けて前方に下肢を持ち上げることにより腿の筋力トレーニングを行うこともできる。
更には、本体フレーム部の上端部に配設されている上端前後方向フレーム46の手前端部に設けた横棒から成る作動部44の両端グリップ部44gを両手で把持して下方又は斜め下方に引き寄せることにより上腕の外側筋肉等を鍛錬することもできる。
【0006】
このように、従来のウエイトトレーニングマシンでは、そのアーム部33やその他の作動部43、44、45の何れか一つを利用して、また適宜変更利用することにより身体の各部の筋肉を鍛錬し、心肺機能をも向上させることができる装置となっている。
【0007】
ところで、筋肉運動はその筋肉を収縮させる時よりも伸長させる時の方が効果が大きいという研究報告もある。
【0008】
他方、使用者によっては、心臓疾患等を抱えている人や体力的に各種の問題を抱えている人が存在する。
特に、心臓に持病を持った人で、その心臓のために有酸素運動及び筋肉運動を必要とする人々も存在する。
そして、実際には、錘を持ち上げて筋肉を収縮する時よりも、持ち上げた錘を元に戻すときのように筋肉を伸長する時の方がトレーニングとしては楽なのである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、本発明においては、心疾患等を抱えている人或いは何らかの持病等で激しいウエイトトレーニングができない人であって、有酸素運動や筋肉運動等を必要とする人々のためのトレーニングマシンを提供することをその課題としている。
その際に、本発明では、従来から存在するウエイトトレーニングマシンを改良することによってその課題を解決することを企図した。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明の第1のものは、少なくとも本体フレーム部と、この本体フレーム部の適宜位置に設けられた座席部と、この座席部の近傍に設けられたアーム部又は作動部と、前記本体フレーム部の適宜位置に配置されたウエイト部と、このウエイト部と前記アーム部又は作動部とを複数のプーリーを介して連結するワイヤー部とから成り、前記座席部に腰掛けた使用者がアーム部又は作動部を可動させることによって身体の各部の筋肉を鍛錬することができるウエイトトレーニングマシンにおいて、前記ウエイト部をワイヤーを介して引き上げることができる自動引上げ手段を本体フレーム部の適宜位置に付加し、前記ワイヤー部には前記ウエイト部との連結において遊び及び/又は伸縮部を設け、使用者が身体の一部で前記アーム部又は作動部を可動させ、前記ワイヤー部を引き上げて前記ワイヤー部の遊びが無くなると及び/又は前記伸縮部の伸長により、遅れて前記自動引上げ手段が始動してウエイト部を引き上げ、その後、使用者がアーム部又は作動部の可動を停止すると、前記自動引上げ手段も停止してウエイト部の自重がアーム部又は作動部に負荷され、使用者は当該ウエイト部の自重を身体の一部で保持しつつ元の位置に戻すことによって筋肉の鍛錬をすることができることを特徴とするウエイトトレーニングマシンである。
【0011】
本発明の第2のものは、上記第1の発明において、前記自動引上げ手段が圧縮空気の供給・排気を利用したエアーシリンダーからなることを特徴とするウエイトトレーニングマシンである。
【0012】
本発明の第3のものは、上記第2の発明において、前記ウエイト部に接続するワイヤー部の端部にスプリングを介在させ、前記アーム部又は作動部を可動させた際に前記スプリング部が伸長することによりリミットスイッチが開となって前記エアーシリンダーが始動し、当該エアーシリンダーのシリンダーロッドが収縮することにより前記ワイヤーを介してウエイト部が引き上げられることを特徴とするウエイトトレーニングマシンである。
【0013】
本発明の第4のものは、上記第2又は第3の発明において、前記エアーシリンダーにおける圧縮エアーの排気部において、当該エアーの排気量を調整できるようにしたことを特徴とするウエイトトレーニングマシンである。
【0014】
本発明の第5のものは、上記それぞれの発明において、前記本体フレーム部の座席部に背凭れ部を設けたことを特徴とするウエイトトレーニングマシンである。
【0015】
本発明の第6のものは、上記それぞれの発明において、前記ウエイト部の引上げ重量を変更できるようにしたことを特徴とするウエイトトレーニングマシンである。
【発明の効果】
【0016】
本発明の第1のものにおいては、従来からあるウエイトトレーニングマシンにおいて、身体の一部の筋肉の鍛錬を行う際に、当該筋肉の収縮のための動作(可動)を付加された自動引上げ手段が代わりに行うことが出来ることとなる。
即ち、使用者が腰掛部に腰掛けて例えばアーム部を両手で把持し、ワイヤー部を介してウエイト部を引き上げる動作を行うと、ワイヤー部には遊びがあって、このワイヤー部の遊び分だけ及び/又は伸縮部の伸長分可動した後に、遅れて前記自動引上げ手段が始動する。
【0017】
換言すれば、ワイヤー部には遊び等があるため、ワイヤー部が可動した最初の状態ではウエイト部は引き上げられず、使用者の身体の一部の筋肉の収縮運動は開始しない。
このワイヤー部の可動に遅れて前記自動引上げ手段が始動してウエイト部を上方に引き上げることとなるのである。
これによって使用者はその身体の一部でワイヤー部を可動させ、その後少し遅れて自動引上げ手段が始動することにより、使用者はその身体の一部の筋力を殆ど使用せずにウエイト部を上方に引き上げることができることとなるのである。
【0018】
その後、使用者がその身体の一部の可動を停止すると、前記自動引上げ手段が停止してウエイト部の自重がワイヤー部を介して使用者の身体の一部に負荷されることとなる。
この状態から使用者は、その身体の一部を徐々に元の位置に戻すことにより、ウエイト部の重量を直接当該身体の一部で保持して筋力の伸長運動トレーニング(ここでは「エキセントリックトレーニング」という。以下同じである。)を行うことができることとなる。
このようなエキセントリックトレーニングによって、持病を抱える人々であっても容易に有酸素運動や筋肉運動(筋力トレーニング)を容易に行うことができることとなるのである。
【0019】
本発明の第2のものにおいては、前記第1の発明において、前記自動引上げ手段を特定したものである。
即ち、当該自動引上げ手段が圧縮空気の供給・排気を利用したエアーシリンダーからなるものであることを特定したものであり、これにより使用者はウエイト部の引き上げに際して自己の筋力を殆ど必要とせずに行うことができ、上記第1の発明と同じ効果を発揮する。
【0020】
本発明の第3のものにおいては、上記第2の発明を更に具体化したものであり、前記ウエイト部に接続するワイヤー部の端部にスプリングを介在させ、前記アーム部又は作動部を可動させた際に前記スプリング部が伸長することによりリミットスイッチが開となって前記エアーシリンダーが始動し、当該エアーシリンダーのシリンダーロッドが収縮することにより前記ワイヤーを介してウエイト部が引き上げられるようにしたものである。
【0021】
この発明では、ワイヤー部のウエイト部側の端部にスプリングを介在させ、このスプリングの伸長によってエアーシリンダーが始動することを特定したものである。
即ち、使用者がワイヤー部を引き上げる際に、上記遊び分の引き上げ後に上記スプリングを伸長させる(多少力を加える)こととなり前記自動引上げ手段の始動の事前認識が可能となり、ウエイト部の引上げ動作を滑らかに更に良好にしたものである。
【0022】
本発明の第4のものにおいては、前記エアーシリンダーにおける圧縮エアーの排気部において、当該エアーの排気量を調整できるようにしたものである。
これにより、ウエイト部が自重で下降する際に、使用者に負荷される加重を調整することが可能となる。
即ち、排気部を全開としてしまうと、ウエイト部の全自重が負荷されてしまうが、この排気部の排気量を適宜制限することにより使用者に負荷される加重を適宜軽重調整可能となるのである。
【0023】
本発明の第5のものにおいては、前記本体フレーム部の座席部に背凭れ部を設けたことを特徴とするものであり、これにより使用者は、この座席部と背凭れ部を利用して着席し、アーム部を押し出すような筋力トレーニングを行うことができることとなるのである。
即ち、身体各部の筋力トレーニングの種類を多くすることを意図したものである。
【0024】
本発明の第6のものにおいては、前記ウエイト部の引上げ重量を変更できるようにしたものであり、本発明に係るマシンの使用者の筋力トレーニングの利用の便宜を図ったものである。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明に係るトレーニングマシンの一実施形態を示す全体説明図である。
図2】上記実施形態に係るワイヤー部とウエイト部との連結部分を示す拡大説明図である。
図3(A)】上記実施形態の動作を示すフローチャートである。
図3(B)】同じく上記実施形態の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、添付の図面と共に本発明の実施形態について説明する。
図1は、本発明に係るトレーニングマシンの一実施形態を示す全体説明図である。
上記した通り、本発明に係る本体フレーム部30は、従来のウエイトトレーニングマシンと同様のものである。
【0027】
即ち、本体フレーム部30は、その下端に位置する基礎部10と、この基礎部10の中央やや手前側から上方に伸びる支柱部11と、支柱部11の上端で前後方向に延長する上端前後方向フレーム部46と、この上端前後方向フレーム部46の前端部と基礎部10とを連結する2本のウエイトガイド支柱47とから成る。
【0028】
上記基礎部10は、略H字形状の枠体を横に90度回転させた平面視形状を有し、手前側の横フレーム10yが前端側の横フレーム10xよりも長く形成されている。
この前端側の横フレーム10xと上端前後方向フレーム部46の前端の横フレーム46fとにウエイトガイド支柱47が2本掛け渡されている。
【0029】
このウエイトガイド支柱47の図中右側のものは、後に説明するエアーシリンダー5のシリンダーロッド6の陰に隠れており、図示煩雑化を避けるために図示省略している。
【0030】
ウエイト部36は、1個が5Kgの錘35を複数個重ね、その必要個数を選択して引上げ重量を選定して、上記ウエイトガイド支柱47にガイドされて上下に移動できる。
【0031】
ウエイト部36の引き上げは、本体フレーム部30の各部位に設けたアーム部33や各種作動部43、44、45を可動させることにより、これに連結したワイヤー部38、39が複数のプーリー37を介して行われる。
【0032】
例えば、略直角に下方に折曲した一対のアーム部33、33は、その基端部で枢着されて、手前側に回動させることができ、その両端部のグリップ33g、33gを引き寄せることによりワイヤー部38が引き寄せられて、複数のプーリー37を介して選択された個数の錘35が引き上げられる。
【0033】
アーム部33の両端部には上記グリップ33gの他に下方に延長するグリップ33hも設けられており、使用者が自由に選択することができる。
従って、使用者は前方を向いて腰掛け部31に腰掛けて、アーム部33のグリップ33g又は33hを把持して、アーム部33を手前側に引き寄せるように回動させてワイヤー部38を引き寄せ、ウエイト部36を引き上げて筋力トレーニングを行うことができる。
【0034】
同様にして、使用者は、腰掛け部31と背凭れ部32を利用して手前側を向いて腰掛けて、アーム部33を手前側に押し出すことによりウエイト部36を引き上げることができる。
【0035】
次に、上記と同じ姿勢で、手前側を向いて、略逆T字形状の作動部43の下端の横フレーム43yに両足首の上側を引っ掛けて上方に押し上げることによって、ワイヤー部39が引き寄せられてウエイト部36を上方に引き上げることができる。
【0036】
他方、使用者は、腰掛け部31に腰掛けずに立った姿勢で、横棒から成る作動部44の両端グリップ44gを両手で把持して下方又は斜め下方に引き寄せることによってワイヤー部38及び複数のプーリー37を介してウエイト部36を引き上げることができる。
【0037】
更には、本体フレーム部30の基礎部10の前方にチェーンで連結された作動部45を利用し、床に座った状態で又は立った姿勢で、この作動部45を引き寄せることにより腹筋、背筋等の他の部位の筋力トレーニングを行うことができるのである。
【0038】
以上の各種トレーニング方法は、従来のウエイトトレーニングマシンと同様である。
本発明にあっては、このウエイトトレーニングマシンにウエイト部36を自動的に引き上げる自動引上げ手段を付加したものである。
【0039】
この実施形態においては、この自動引上げ手段としてエアーシリンダーを利用した。
図中符号5で示したものがエアーシリンダーであり、このエアーシリンダー5は、本体フレーム部30の基礎部10の前方部位でウエイト部36の手前に立設されている。
そのエアーシリンダー5の上端部からシリンダーロッド6が上方に延長し、このシリンダーロッド6の上端部にはワイヤー7が連結し、横フレーム8に設けられたプーリー9を介し、下方に折り返してウエイト部36に連結されている。
【0040】
即ち、上記エアーシリンダー5が始動すると、上記シリンダーロッド6が収縮して、ワイヤー7がシリンダーロッド6側に引き寄せられ、ウエイト部36が上方に引き上げられる。
従って、本発明に係るウエイトトレーニングマシン(以下単に「マシン」とも言う。)の使用者は、ウエイト部36を引き上げる際に力を要しないこととなるのである。
【0041】
換言すると、アーム部33又は作動部43、44、45を使用者が可動させるとワイヤー部38、39が引き寄せられるが、ワイヤー部38、39とウエイト部36との連結には遊びが設けられており、又は、コイルスプリング等の伸縮部が設けられており、これらの遊び分又は伸長分を使用者が引き寄せると、上記自動引上げ手段であるエアーシリンダー5が始動するのである。
【0042】
従って、使用者がアーム部33又は作動部43、44、45を可動すると、少し後にエアーシリンダー5が始動してウエイト部36が上方に引き上げられるのである。
そして、使用者は、このウエイト部36の引上げ動作を停止して終了すると、ウエイト部36を引き上げるエアーシリンダー5の引上げ動作も停止して、ウエイト部36の自重が直接使用者の身体の一部の筋肉に負荷されることとなるのである。
【0043】
この状態がウエイト部36を使用者の身体の一部が直接保持する「自己保持状態」となるのであり、使用者は、この自己保持状態から最初の元の状態に復帰させる運動(エキセントリックトレーニング)において筋肉の伸長トレーニングを行うことができることとなるのである。
この間の各構成要素の動作及び機能については後の図3において詳説する。
【0044】
図2は、上記実施形態に係るワイヤー部とウエイト部との連結部分を示す拡大説明図である。
この図は、マシンの前方側の背面から見た図である。
【0045】
図中、一番下側には錘35が重ね合わされてウエイト部36が配置され、この錘35には縦方向に2つの貫通孔35hが形成され、これら2つの貫通孔35h、35hに上記ウエイトガイド支柱47、47が挿通している。
即ち、これら2本のウエイトガイド支柱47、47が上記錘35が上下に移動するためのガイドとなっている。
【0046】
錘35の略中央にもその縦方向に貫通孔が設けられており、この貫通孔内には、ワイヤー部38の端部に連結したパイプ(図には現れていない)が挿通され、このパイプの直径方向(マシンの前後方向)にも上下所定間隔で貫通孔が設けられ、これらの貫通孔は錘35に設けた前後方向の貫通孔又は溝部と合致し、これらパイプの貫通孔とウエイトの貫通孔又は溝部にピン等を挿通させてウエイト部36の重量を選択し、ウエイト部36の重量を決定することができる。
この構成は、従来のウエイトトレーニングマシンと同じである。
【0047】
本発明においては、マシンのアーム部又は作動部に連結したワイヤー部38の端部が上記パイプと連結し、ウエイト部36を引き上げることができるのであるが、このウエイト部36とワイヤー部38(パイプ)との連結には少しの遊びを設けている。この実施形態では、この遊びは約1cmから3cm程度の範囲で設けている。
【0048】
他方、エアーシリンダーから上方に延長するシリンダーロッド6の上端部にはワイヤー7が連結され、このワイヤー7は、上記した通り、上方の横フレーム8に設けられたプーリー9を介して下方に折り返してその先端部は錘35を貫通するパイプの上端部及びワイヤー部38の下端部に位置する連結部41に連結している。
そして、上記連結部材40と上記連結部41とは一対のコイルスプリング42、42によって連結されている。このコイルスプリング42、42が伸縮部となる。
【0049】
換言すれば、ワイヤー部38の端部には、連結部材40と連結部41とが連結し、これら連結部材40と連結部41とは別体で、一対のコイルスプリング42、42により連結されており、エアーシリンダー5のシリンダーロッド6に連結しているワイヤー7の端部は上記連結部41にのみ連結しているのである。
【0050】
また、後に説明するが、エアーシリンダーの作動に関わるリミットスイッチ1、2は、上記連結部41の側に設けられている。リミットスイッチ3は、エアーシリンダー上部に固定され、その接点を押す部分は上記連結部材41から出ている。
リミットスイッチ3は本体の適宜位置に設けるのが適切なため、錘が最下位に到着したことを認識できるようリミットスイッチ3を取り付けている。
リミットスイッチ1、2、3の動作等に関しては後の図3にて説明する。
【0051】
従って、この部分の動作は概略以下のようになる。
マシンのアーム部又は作動部を使用者が可動させると、ワイヤー部38が図2において上方に引き上げられる。
ワイヤー部38の遊び分だけ上方に引き上げられると、次に伸縮部としての一対のコイルスプリング42、42が上方に伸長する。
【0052】
コイルスプリング42、42が上方に伸長すると、ワイヤー部38の端部の連結部材40が少し上方に移動してリミットスイッチ1、2が開の状態となり、エアーシリンダーが始動する。
【0053】
エアーシリンダーが始動するとワイヤー7が上方に引き上げられ、ワイヤー7の端部の連結部41が上方に引き上げられ、使用者によるワイヤー部38の引上げ動作を補助して、ウエイト部36が上方に引き上げられる。
【0054】
使用者の引上げ動作が終了し停止すると、ワイヤー7の端部の連結部41が連結部材40に追いついてリミットスイッチ1、2が閉となり、エアーシリンダーの引上げ動作が停止し、ウエイト部36の自重がワイヤー部38に負荷され、使用者はウエイト部36の自重を直に保持せねばならなくなる。これが自己保持状態である。
【0055】
尚、ウエイト部36の降下中にリミットスイッチ1、2が開になっても電磁リレーの自己保持回路(自己保持回路とは、電磁リレーを用いた電気的回路である。以下同じ。)が働き、圧縮エアーが給気されることはない。
【0056】
その後、この自己保持状態を維持しつつ、ウエイト部36を保持しつつウエイト部36を下方に移動させて最初の元の状態へと徐々に引き降ろすことによってエキセントリックトレーニングを行うことができることとなるのである。
【0057】
図3は、上記実施形態に係るマシンの動作を示すフローチャートであって、(B)は(A)の続きを示している。
上記実施形態において、自動引上げ手段としてはエアーシリンダーを使用しているが、エアーシリンダーは圧縮空気の給気と排気によって動作するものであり、従って、エアーコンプレッサーを使用する。
従って、このエアーシリンダーとマシンのウエイト部との関係について時系列的に表示したものが図3となる。
【0058】
以下、図3に基づき説明する。下記の文中の番号は図1及び図2に記載したものである。
(1)「アーム部を引っ張る」
これは、マシンのアーム部33、作動部43、44、45を可動させる意味である。
(2)「ワイヤー部が引っ張られる」
上記アーム部33等が引っ張られると、ワイヤー部38の端部が引き上げられるという意味である。
(3)「ワイヤー部の先のバネが引っ張られる」
ウエイト部36に連結するワイヤー部38の端部の連結部材40が引っ張られ、ワイヤー部38の端部の遊びが無くなり、コイルスプリング42が上方に引っ張られる(引き伸ばされる)意味である。
(4)「リミットスイッチ1/リミットスイッチ2が開」
上記(3)によってワイヤー部の先のコイルスプリング42が引っ張られ、伸長すると、リミットスイッチ1、2が開となる。
この時点で、リミットスイッチ1、2は開になるが、リミットスイッチ3は少しだけ遅れて(実際には錘が持ち上がらないとリミットスイッチ3は動作しない。およそ0.1秒から0.3秒の後に)開となる。
(5)「給気バルブ・開/排気バルブ・閉」
上記(4)でリミットスイッチ1、2が開となると、エアーシリンダー5の給気バルブは開となり、排気バルブは閉となり、シリンダーロッド6が収縮する。
この際に、給気バルブの給気量をニードル弁等により制御することによってウエイト部36の引上げ速度を調整することができる。即ち、使用者の筋力に合わせて引上げ速度を調整することができる。つまり、必要に応じて引上げ速度を遅くすることができることとなる。
(6)「エアーシリンダー収縮」
上記(5)によるリミットスイッチの動作(電磁バルブの開閉)によりエアーシリンダー5のシリンダーロッド6が収縮することとなる。
(7)「錘が軽く持ち上がる」
上記(6)によって、エアーシリンダー5のシリンダーロッド6が収縮するとウエイト部36が軽く持ち上がることとなる。
この際に、上記した通り少し遅れてリミットスイッチ3が開の状態となる(図中(7a))。
即ち、エアーシリンダー5が収縮して錘が上昇するとリミットスイッチ3が開となり、リミットスイッチ3が開となると、リミットスイッチ1、2が閉になり、自己保持回路が働き給気バルブが閉じ排気バルブが開いても、自己保持回路が働いているので、リミットスイッチ1、2が開になっても吸気バルブが開になったり、排気バルブが閉になったりしないように設定している。
(8)「アーム部の動きが停止」
使用者がアーム部33等を停止させる意味である。この時点でウエイト部36の負荷が掛かっていない筋肉の収縮運動も停止する。
(9)「錘がワイヤー部の先に追いついてバネが収縮」
上記(8)でアーム部33の可動を停止させると、シリンダーロッド6の収縮による錘36の上昇によってコイルスプリング42が元の状態に収縮する。(以上が図3(A)の説明である。)
【0059】
以下が図3(B)の説明である。
(10)「リミットスイッチ1、2が閉」
上記(9)によってコイルスプリング42が収縮すると、リミットスイッチ1、2が閉となる。
(11)「給気バルブ・閉/排気バルブ・開」
上記(10)でリミットスイッチ1、2が閉となると、エアーシリンダー5の給気バルブは閉となり、排気バルブは開となり、エアーシリンダー5は開放状態となる。
(12)「エアーシリンダーが開放状態」
上記(11)によりエアーシリンダー5は、開放状態となり、ウエイト部36の自重は全て直接使用者の身体の一部に負荷されることとなるのである。この状態が自己保持状態である。
即ち、ウエイト部36の重量がアーム部33等に直に伝わることとなり、この状態が自己保持状態であって、ここでエキセントリックトレーニングが行われることとなる((13)の状態)。
(13)「エキセントリックトレーニング」
(14)「錘が下に到着」
ウエイト部36が下に到着して元の位置に戻ると、リミットスイッチ1、2が閉((15)の状態)となり、給気バルブが閉、排気バルブが開((16)の状態)となる。
即ち、ウエイト部36が下に到着して元の位置に戻ると、リミットスイッチ3が閉、少し遅れて(およそ0.1秒から0.5秒の間)リミットスイッチ1、2が閉となる。そのためリミットスイッチ3にはタイマーリレーを取り付けて自己保持回路を切断する時間に余裕を与えている。タイマーリレーの時間は下降する速度によって選択することができるが、本実施形態では0.3秒程度にしている。
以下、上記手順を繰り返してエキセントリックトレーニングを繰り返し行うことができることとなるのである。
【0060】
ここで、リミットスイッチ3と、リミットスイッチ1、2との関係について再度説明すると、リミットスイッチ1は給気バルブを開くためのスイッチであり、排気バルブは同じ電磁リレーの逆相である。リミットスイッチ2は錘が追いついた時に作動するもので、リミットスイッチ3が開の状態でリミットスイッチ2が閉になると自己保持回路が働き給気バルブは閉になる。自己保持回路が働いている間はリミットスイッチ1が開になっても給気バルブは閉じたままとなる。
リミットスイッチ3は、錘が最下位に到着した時点で閉になり、自己保持回路を切断して初期状態に戻ることとなる。
【0061】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明においては以下の通り種々設計変更することができる。
まず、本発明に係るトレーニングマシンにおいては、少なくとも、本体フレーム部、座席部、アーム部又は作動部、ウエイト部、及び、複数のプーリーとワイヤー部を備えるマシンにおいて、前記本体フレーム部の適宜位置に自動引上げ手段を設けたものから成る。
【0062】
このマシンでは、アーム部のみ、一つの作動部のみのものであっても実施可能である。
アーム部及び作動部を複数設けたものにおいても、複数のプーリーと複数のワイヤー部を設けることによって何れのアーム部又は作動部からの作動力をもウエイト部に連結することができるのである。この構成は、従来のウエイトトレーニングマシンの構成と同じである。
【0063】
本発明では、このマシンに自動引上げ手段を付加したことを特徴とする。
この自動引上げ手段として本発明ではエアーシリンダーを利用した。
勿論、このエアーシリンダー以外に電動モーター等の各種自動駆動機械を利用してウエイト部を自動的に引き上げるようにすることもできる。
【0064】
或いは、クラッチ付きウインチ等も使用することができる。
上記実施形態において、給気用電磁バルブの電源でクラッチ結合、排気用電磁バルブの電源でクラッチ離脱となるように設計すればよい。
【0065】
上記実施形態において使用したエアーシリンダーにおいては、シリンダーロッドによる引上げ式のものを使用したが、押し上げ式のものであってもよい。
或いは、ロッドの先にワイヤーでなくシャフトを取り付けた引上げ式のものであってもよい。
【0066】
更に、本発明の特徴部分は、アーム部等によりワイヤー部を引き上げるに際して、ウエイト部とワイヤー部との連結に遊びを持たせ又はコイルスプリング等の伸縮部を設け、若しくはこれら遊びと伸縮部の両者を共に設け、これらの遊び分及び/又は伸縮分のワイヤー部の引き上げ分に遅れて自動引上げ手段が始動するように構成したことを特徴とするものである。
【0067】
このように、本発明の実施に際しては、上記遊び又は伸縮部の何れか一方又は両方を採用することにより、エキセントリックウエイトトレーニングができることとなるのである。
【0068】
尚、リミットスイッチの機能について再度説明すると、リミットスイッチ1は、ワイヤー部38が引っ張られたことにより開になって給気が始まる。ワイヤー部38を引っ張ることを止めると、いずれ錘は追いつきリミットスイッチ1および2が閉になる。リミットスイッチ2が閉になると自己保持回路が働き給気バルブが閉となり、排気バルブが開になる。
【0069】
自己保持回路が働いているためにウエイト部36をゆっくり下降させるためにリミットスイッチ1が開になっても給気されることがないのである。最後に錘は最初の位置まで下降することになり、ここまで降りると自己保持回路を切らないと再度上げることはできなくなる。
そこで最後まで着いたことを確認するのがリミットスイッチ3となる。リミットスイッチ3が閉になると自己保持回路が切断される。これによって初期化されることとなる。
【0070】
リミットスイッチ3の取付位置は、磁石内蔵型でエアーシリンダー5が一番伸長した位置を感知するよう取り付けられている。リミットスイッチ3は構造上錘が最下位に到着した時に閉になるが、リミットスイッチ1、2が閉になるのはワイヤーの遊び等が無くなったときであり、自己保持回路が切れる時の方が一瞬早くなる。
【0071】
そのため最下位に到着すると一瞬給気してから到着してしまう。
そこで本実施形態ではリミットスイッチ3によって作動するタイマーリレーを取り付ており、リミットスイッチ3が閉になっても0.3秒後(秒数は下げる速度によって変更可能)に自己保持回路が切れるように設定している。
【0072】
以上の通り、本発明においては、引上げ手段としてエアーシリンダーを利用したが、その動作設定も種々設計変更をして実施することができる。
或いは、その他の引上げ手段を適宜選択して採用することができる。
要は、使用者がウエイト部を引き上げる際に、その可動に少し遅れて自動引上げ手段が始動し、その可動が停止すると、この自動引上げ手段も停止してウエイト部の自重が直に使用者の身体の一部に負荷されるように構成されていればよいのである。
【0073】
以上、本発明においては、従来のウエイトトレーニングマシンにおいて、自動引上げ手段を付加して、身体の筋肉の収縮運動をこの自動引上げ手段に任せ、その後筋肉を伸長させるエキセントリックトレーニングを行うことのできるトレーニングマシンを提供することができたものである。
【符号の説明】
【0074】
1、2、3 リミットスイッチ
5 エアーシリンダー
6 シリンダーロッド
7 ワイヤー
8 横フレーム
9 プーリー
10 基礎部(本体フレーム部の)
11 支柱部(本体フレーム部の)
30 本体フレーム部
31 腰掛け部
32 背凭れ部
33 アーム部
35 錘(ウエイト)
36 フレーム部
37 プーリー
38、39 ワイヤー部
43、44、45 作動部
46 上端前後方向フレーム部(本体フレーム部の)
47 ウエイトガイド支柱(本体フレーム部の)
【要約】
【課題】筋肉を伸長する際に負荷が掛かるマシンを提供すること。
【解決手段】少なくとも本体フレーム部と座席部とアーム部とウエイト部と複数のプーリーを介して連結するワイヤー部とから成る。座席部に腰掛けた使用者がアーム部を可動して身体の各部の筋肉を鍛錬できる。ウエイト部をワイヤーを介して引き上げることができるエアーシリンダーを本体フレーム部に付加する。ワイヤー部とウエイト部との連結には遊び及び/又は伸縮部を設ける。使用者が身体の一部でアーム部を可動させ、ワイヤー部を引き上げてワイヤー部の遊びが無くなると及び/又は伸縮部の伸長により遅れて自動引上げ手段が始動してウエイト部を引き上げる。使用者がアーム部の可動を停止すると、自動引上げ手段も停止してウエイト部の自重がアーム部に直に負荷され、使用者はウエイト部の自重を身体の一部で保持しつつ元の位置に戻すことにより筋肉の伸長運動ができる。
【選択図】図2
図1
図2
図3(A)】
図3(B)】