(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-18
(45)【発行日】2022-03-01
(54)【発明の名称】排ガス浄化用触媒
(51)【国際特許分類】
B01J 35/04 20060101AFI20220221BHJP
B01J 23/63 20060101ALI20220221BHJP
B01D 53/94 20060101ALI20220221BHJP
F01N 3/24 20060101ALI20220221BHJP
F01N 3/035 20060101ALI20220221BHJP
F01N 3/10 20060101ALI20220221BHJP
F01N 3/022 20060101ALI20220221BHJP
【FI】
B01J35/04 301L
B01J35/04 301E
B01J23/63 A ZAB
B01D53/94 222
B01D53/94 245
B01D53/94 280
F01N3/24 E
F01N3/035 A
F01N3/10 A
F01N3/24 B
F01N3/022 C
(21)【出願番号】P 2021522549
(86)(22)【出願日】2020-12-17
(86)【国際出願番号】 JP2020047108
(87)【国際公開番号】W WO2021125256
(87)【国際公開日】2021-06-24
【審査請求日】2021-05-17
(31)【優先権主張番号】P 2019228405
(32)【優先日】2019-12-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006183
【氏名又は名称】三井金属鉱業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【氏名又は名称】浅野 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100126099
【氏名又は名称】反町 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100172557
【氏名又は名称】鈴木 啓靖
(72)【発明者】
【氏名】永井 祐喬
(72)【発明者】
【氏名】秋田 真吾
(72)【発明者】
【氏名】栗原 広樹
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 慶徳
【審査官】安齋 美佐子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/173557(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/188620(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/039650(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00-38/74
B01D 53/86-53/90,53/94-53/96
F01N 3/24
F01N 3/035
F01N 3/10
F01N 3/022
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
排ガス流通方向に延在する排ガス浄化用触媒であって、
前記排ガス浄化用触媒は、基材と、前記基材に設けられた第1触媒層と、前記基材に設けられた第2触媒層とを備え、
前記基材は、
前記排ガス流通方向に延在する流入側セルであって、排ガス流入側の端部が開口しており、排ガス流出側の端部が閉塞している前記流入側セルと、
前記排ガス流通方向に延在する流出側セルであって、排ガス流入側の端部が閉塞しており、排ガス流出側の端部が開口している前記流出側セルと、
前記流入側セルと前記流出側セルとを仕切る多孔質の隔壁部と、
を備え、
前記第1触媒層は、前記隔壁部の前記流入側セル側の表面上に、前記隔壁部の排ガス流入側の端部から前記排ガス流通方向に沿って形成されている部分を有し、
前記第2触媒層は、前記隔壁部の前記流出側セル側の表面上に、前記隔壁部の排ガス流出側の端部から前記排ガス流通方向とは反対の方向に沿って形成されている部分を有し、
前記第1触媒層及び前記第2触媒層は、それぞれ、貴金属元素から選択される少なくとも1種の触媒活性成分を含み、
前記第1触媒層及び前記第2触媒層は、下記式(1)~(
8):
1.1≦L2/L1≦2.3 ・・・(1)
1.1≦T2/T1≦3.5 ・・・(2)
1.05≦WC1/WC2≦3.5 ・・・(3)
1≦(L1+L2)/L≦1.5 ・・・(4)
15μm≦T1 ・・・(5)
T2≦100μm ・・・(6)
WC1≦90g/L ・・・(7)
40g/L≦WC2 ・・・(8)
[式中、L1は、前記第1触媒層の長さを表し、L2は、前記第2触媒層の長さを表し、
Lは、前記基材の長さを表し、T1は、前記第1触媒層の前記部分の厚みを表し、T2は、前記第2触媒層の前記部分の厚みを表し、WC1は、前記基材のうち前記第1触媒層が設けられている部分の単位体積当たりの前記第1触媒層の質量を表し、WC2は、前記基材のうち前記第2触媒層が設けられている部分の単位体積当たりの前記第2触媒層の質量を表す。]
を満たす、前記排ガス浄化用触媒。
【請求項2】
前記第1触媒層及び前記第2触媒層が、下記式(9)及び(10):
T1≦55μm ・・・(9)
WC2≦90g/L ・・・(10)
を満たす、請求項1に記載の排ガス浄化用触媒。
【請求項3】
前記第1触媒層及び前記第2触媒層が、下記式(11)及び(12):
20μm≦T2 ・・・(11)
50g/L≦WC1 ・・・(12)
を満たす、請求項1に記載の排ガス浄化用触媒。
【請求項4】
前記第1触媒層及び前記第2触媒層が、下記式(9)~(12):
T1≦55μm ・・・(9)
WC2≦90g/L ・・・(10)
20μm≦T2 ・・・(11)
50g/L≦WC1 ・・・(12)
を満たす、請求項1に記載の排ガス浄化用触媒。
【請求項5】
前記第1触媒層及び前記第2触媒層が、それぞれ独立して、白金(Pt)、パラジウム(Pd)
、ロジウム(Rh)
、ルテニウム元素(Ru)、イリジウム元素(Ir)及びオスミウム元素(Os)から選択される少なくとも1種の触媒活性成分を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の排ガス浄化用触媒。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排ガス浄化用触媒に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車、バイク等の内燃機関から排出される排ガス中には、炭化水素(HC)、一酸化炭素(CO)、窒素酸化物(NOx)等の有害成分が含まれている。これらの有害成分を浄化して無害化する目的で三元触媒が使用されている。三元触媒としては、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)等の貴金属触媒が使用されており、Pt及びPdは主としてHC及びCOの酸化浄化に関与し、Rhは主としてNOxの還元浄化に関与する。
【0003】
排ガス中には、HC、CO、NOx等の有害成分とともに、粒子状物質(PM:Particulate Matter)が含まれており、大気汚染の原因となることが知られている。
【0004】
一方、ガソリンエンジン搭載車両において、直噴エンジン(GDI:Gasoline Direct Injection engine)が採用されている。GDIは、低燃費かつ高出力であるが、従来のポート噴射式エンジンと比較して排ガス中のPMの排出量が大きいことが知られている。PMに関する環境規制に対応するため、GDI等のガソリンエンジン搭載車両においても、ディーゼルエンジン搭載車両と同様、PM捕集機能を有するフィルタ(GPF:Gasoline Particulate Filter)の設置が求められている。
【0005】
GPFとして、例えば、ウォールフロー型と呼ばれる構造を有する基材が使用されている。ウォールフロー型基材では、セル入口から流入した排ガスがセルを仕切る多孔質の隔壁部を通過してセル出口から流出する際、排ガス中のPMが隔壁部内部の細孔内に捕集される。
【0006】
一般に排ガス浄化用触媒の搭載スペースは限られているため、Pt、Pd、Rh等の貴金属触媒をGPFに担持させて、PMの捕集とともに、HC、CO、NOx等の有害成分の浄化を行うことが検討されている。
【0007】
例えば、特許文献1には、パラジウム含有層及びロジウム含有層の一方が隔壁部の内部に位置し、他方が隔壁部の表面に位置するように、パラジウム含有層及びロジウム含有層が積層された排ガス浄化用触媒が記載されている。
【0008】
また、特許文献2には、排ガス流入側の端部のみが開口した入側セルと、入側セルに隣接し排ガス流出側の端部のみが開口した出側セルと、入側セルと出側セルとを仕切る多孔質の隔壁部とを有するウォールフロー構造の基材と、隔壁部の内部に設けられた上流側触媒層と、隔壁部の内部に設けられた下流側触媒層とを備える排ガス浄化用触媒であって、上流側触媒層及び下流側触媒層が、それぞれ、担体と、担体に担持された白金(Pt)、パラジウム(Pd)及びロジウム(Rh)のうちの少なくとも1種の貴金属とを含有し、上流側触媒層に含まれる貴金属と、下流側触媒層に含まれる貴金属とが異なる、排ガス浄化用触媒が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2009-82915号公報
【文献】特開2016-78016号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、ウォールフロー型基材に触媒層を形成して、PMの捕集とともにHC、CO、NOx等の有害成分の浄化を行う場合、排ガス浄化性能が十分に発揮されない場合がある。特に、高速運転時には燃焼室内の温度上昇によるNOxの発生が著しいため、高速運転時におけるNOx浄化性能の向上が大きな課題となっている。
【0011】
そこで、本発明は、ウォールフロー型基材と触媒層とを備える排ガス浄化用触媒であって、向上した排ガス浄化性能を有する排ガス浄化用触媒を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明は、排ガス流通方向に延在する排ガス浄化用触媒であって、
前記排ガス浄化用触媒は、基材と、前記基材に設けられた第1触媒層と、前記基材に設けられた第2触媒層とを備え、
前記基材は、
前記排ガス流通方向に延在する流入側セルであって、排ガス流入側の端部が開口しており、排ガス流出側の端部が閉塞している前記流入側セルと、
前記排ガス流通方向に延在する流出側セルであって、排ガス流入側の端部が閉塞しており、排ガス流出側の端部が開口している前記流出側セルと、
前記流入側セルと前記流出側セルとを仕切る多孔質の隔壁部と、
を備え、
前記第1触媒層は、前記隔壁部の前記流入側セル側の表面上に、前記隔壁部の排ガス流入側の端部から前記排ガス流通方向に沿って形成されている部分を有し、
前記第2触媒層は、前記隔壁部の前記流出側セル側の表面上に、前記隔壁部の排ガス流出側の端部から前記排ガス流通方向とは反対の方向に沿って形成されている部分を有し、
前記第1触媒層及び前記第2触媒層は、下記式(1)~(3):
L1<L2 ・・・(1)
T1<T2 ・・・(2)
WC1>WC2 ・・・(3)
[式中、L1は、前記第1触媒層の長さを表し、L2は、前記第2触媒層の長さを表し、T1は、前記第1触媒層の前記部分の厚みを表し、T2は、前記第2触媒層の前記部分の厚みを表し、WC1は、前記基材のうち前記第1触媒層が設けられている部分の単位体積当たりの前記第1触媒層の質量を表し、WC2は、前記基材のうち前記第2触媒層が設けられている部分の単位体積当たりの前記第2触媒層の質量を表す。]
を満たす、前記排ガス浄化用触媒を提供する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、PMの捕集性能を有するとともに、向上した排ガス浄化性能を有する排ガス浄化用触媒を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係る排ガス浄化用触媒の断面斜視図である。
【
図6】
図6は、
図1に示す排ガス浄化用触媒における排ガスの流れを説明するための断面図である。
【
図7】
図7は、実施例1で製造した排ガス浄化用触媒を基材の軸方向と垂直な平面で切断し、走査型電子顕微鏡(SEM)を使用して切断面に存在する第1触媒層の観察を行うことにより得られたSEM観察像である。
【
図8】
図8は、実施例1で製造した排ガス浄化用触媒を基材の軸方向と垂直な平面で切断し、走査型電子顕微鏡(SEM)を使用して切断面に存在する第2触媒層の観察を行うことにより得られたSEM観察像である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面に基づいて、本発明の排ガス浄化用触媒の実施形態を説明する。
【0016】
図1~
図6に示すように、本発明の一実施形態に係る排ガス浄化用触媒10は、基材20と、基材20に設けられた第1触媒層30と、基材20に設けられた第2触媒層40とを備える。
【0017】
排ガス浄化用触媒10は、内燃機関の排気経路に配置されている。排ガス浄化用触媒10は、例えば、ガソリンエンジン(例えば、GDIエンジン等)の排気経路に配置されており、ガソリン・パティキュレート・フィルター(GPF)として使用されている。各図面において、内燃機関の排気経路の排ガス流通方向は、符号Xで示されている。本明細書において、排ガス流通方向Xの上流側(例えば、
図2の左側)を「排ガス流入側」、排ガス流通方向Xの下流側(例えば、
図2の右側)を「排ガス流出側」という場合がある。
【0018】
排ガス浄化用触媒10は、基材20の軸方向が排ガス流通方向Xと略一致するように、内燃機関の排気経路に配置されており、排ガス浄化用触媒10は、排ガス流通方向Xに延在している。本明細書において、「長さ」は、別段規定される場合を除き、基材20の軸方向の寸法を意味し、「厚み」は、別段規定される場合を除き、基材20の軸方向に垂直な方向の寸法を意味する。
【0019】
≪基材≫
以下、基材20について説明する。
【0020】
基材20を構成する材料は、排ガス浄化用触媒の基材の材料として一般的に使用されている材料から適宜選択することができる。基材20を構成する材料は、基材20が高温(例えば400℃以上)の排ガスに曝露された場合にも基材20が安定した形状を有し得る材料であることが好ましい。このような材料としては、例えば、コージェライト、炭化ケイ素(SiC)、チタン酸アルミニウム等のセラミックス、ステンレス鋼等の合金等が挙げられる。
【0021】
図1及び
図2に示すように、基材20は、筒状部21と、筒状部21内に形成された多孔質の隔壁部22とを有する。
【0022】
基材20の軸方向は、筒状部21の軸方向と一致する。本実施形態において、筒状部21は、円筒状であるが、その他の筒状であってもよい。その他の筒状としては、例えば、楕円筒状、多角筒状等が挙げられる。
【0023】
図1及び
図2に示すように、基材20は、ウォールフロー構造を有する。具体的には、基材20は、流入側セルC1と、流出側セルC2とを有し、流入側セルC1と流出側セルC2とは、多孔質の隔壁部22によって仕切られている。
【0024】
図1及び
図2に示すように、基材20には、排ガス流入側が開口する凹部(穴部)及び排ガス流出側が開口する凹部(穴部)が形成されており、排ガス流入側が開口する凹部内の空間が流入側セルC1であり、排ガス流出側が開口する凹部内の空間が流出側セルC2である。
【0025】
図1及び
図2に示すように、流入側セルC1は、排ガス流通方向Xに延在しており、排ガス流入側の端部及び排ガス流出側の端部を有する。
図1及び
図2に示すように、流入側セルC1の排ガス流入側の端部は開口しており、流入側セルC1の排ガス流出側の端部は閉塞している。なお、以下、流入側セルC1の排ガス流入側の端部を「流入側セルC1の開口部」という場合がある。
【0026】
図1及び
図2に示すように、基材20には、流入側セルC1の排ガス流出側の端部を封止する第1封止部24が設けられており、流入側セルC1の排ガス流出側の端部は、第1封止部24によって閉塞している。
【0027】
図1に示すように、流入側セルC1の開口部の平面視形状(基材20を排ガス流通方向Xから平面視した時の形状)は、正方形状であるが、流入側セルC1の開口部の平面視形状は、その他の形状であってもよい。その他の形状としては、例えば、平行四辺形、長方形、台形等の矩形、三角形、六角形、八角形等の多角形、円形、楕円形等の種々の幾何学形状が挙げられる。
【0028】
図1及び
図2に示すように、流出側セルC2は、排ガス流通方向Xに延在しており、排ガス流入側の端部及び排ガス流出側の端部を有する。
図1及び
図2に示すように、流出側セルC2の排ガス流入側の端部は閉塞しており、流出側セルC2の排ガス流出側の端部は開口している。なお、以下、流出側セルC2の排ガス流出側の端部を「流出側セルC2の開口部」という場合がある。
【0029】
図1及び
図2に示すように、基材20には、流出側セルC2の排ガス流入側の端部を封止する第2封止部25が設けられており、流出側セルC2の排ガス流入側の端部は、第2封止部25によって閉塞している。
【0030】
図1に示すように、流出側セルC2の開口部の平面視形状(基材20を排ガス流通方向Xとは反対の方向から平面視した時の形状)は、正方形状であるが、流出側セルC2の開口部の平面視形状は、その他の形状であってもよい。その他の形状としては、例えば、平行四辺形、長方形、台形等の矩形、三角形、六角形、八角形等の多角形、円形、楕円形等の種々の幾何学形状が挙げられる。
【0031】
流入側セルC1の開口部の平面視形状の面積と、流出側セルC2の開口部の平面視形状の面積とは、同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0032】
流入側セルC1及び流出側セルC2は、1個の流入側セルC1の周りに複数個(本実施形態では4個)の流出側セルC2が隣接するように配置されており、流入側セルC1と、該流入側セルC1に隣接する流出側セルC2とは、多孔質の隔壁部22によって仕切られている。
【0033】
隔壁部22は、排ガスが通過可能な多孔質構造を有する。隔壁部22の厚みは、例えば、150μm以上400μm以下である。なお、隔壁部22の厚みは、後述する触媒層の厚みの算出方法と同様の算出方法により求められる。
【0034】
図2に示すように、基材20は、長さLを有する。基材20の長さLは、特に限定されず、適宜調整することができる。
【0035】
基材20の1平方インチあたりのセルの個数は、特に限定されないが、例えば、200セル/インチ2以上900セル/インチ2以下である。基材20の1平方インチあたりのセルの個数は、基材20を排ガス流通方向Xと垂直な平面で切断して得られる切断面における1平方インチあたりの流入側セルC1及び流出側セルC2の合計個数である。
【0036】
≪触媒層≫
以下、第1触媒層30及び第2触媒層40について説明する。
【0037】
図3及び
図4に示すように、第1触媒層30は、隔壁部22の流入側セルC1側に形成されている。
【0038】
図3及び
図4に示すように、第1触媒層30は、隔壁部22の流入側セルC1側の表面上に、隔壁部22の排ガス流入側の端部から排ガス流通方向Xに沿って形成されている部分31を有する。「隔壁部22の流入側セルC1側の表面」は、隔壁部22の外形を規定する流入側セルC1側の外表面を意味し、「隔壁部22の流入側セルC1側の表面上に形成されている部分」は、隔壁部22の流入側セルC1側の外表面から流入側セルC1側に隆起している部分を意味する。
【0039】
図3及び
図4に示すように、第1触媒層30は、部分31とともに、隔壁部22の内部に存在する部分32を有する。隔壁部22は多孔質であるため、第1触媒層30を形成する際、通常、部分31とともに部分32が形成される。部分31が存在する領域は、隔壁部22が存在する領域と重ならないが、部分32が存在する領域は、隔壁部22が存在する領域と重なる。したがって、排ガス浄化用触媒10を基材20の軸方向と垂直な平面で切断し、走査型電子顕微鏡(SEM)、電子線マイクロアナライザー(EPMA)等を使用して切断面に存在する第1触媒層30を観察し、第1触媒層30と基材20の隔壁部22との間の形態の相違に基づいて、部分31及び部分32を特定することができる。切断面の観察を行う際、切断面の元素マッピングを行ってもよい。元素マッピングは、例えば、SEMによる切断面の観察と、切断面の組成分析とを併用して行うことができる。元素マッピングは、例えば、走査型電子顕微鏡-エネルギー分散型X線分析装置(SEM-EDX)、電子線マイクロアナライザー(EPMA)、透過型X線検査装置等を使用して行うことができる。切断面の元素マッピングにより、第1触媒層30と基材20の隔壁部22との間の形態及び組成の相違に基づいて、部分31及び部分32を特定することができる。
【0040】
図3及び
図5に示すように、第2触媒層40は、隔壁部22の流出側セルC2側に形成されている。
【0041】
図3及び
図5に示すように、第2触媒層40は、隔壁部22の流出側セルC2側の表面上に、隔壁部22の排ガス流出側の端部から排ガス流通方向Xとは反対の方向に沿って形成されている部分41を有する。「隔壁部22の流出側セルC2側の表面」とは、隔壁部22の外形を規定する流出側セルC2側の外表面を意味し、「隔壁部22の流出側セルC2側の表面に形成されている部分」とは、隔壁部22の流出側セルC2側の外表面から流出側セルC2側に隆起している部分を意味する。
【0042】
図3及び
図5に示すように、第2触媒層40は、部分41とともに、隔壁部22の内部に存在する部分42を有する。隔壁部22は多孔質であるため、第2触媒層40を形成する際、通常、部分41とともに部分42が形成される。部分41が存在する領域は、隔壁部22が存在する領域と重ならないが、部分42が存在する領域は、隔壁部22が存在する領域と重なる。したがって、排ガス浄化用触媒10を基材20の軸方向と垂直な平面で切断し、走査型電子顕微鏡(SEM)、電子線マイクロアナライザー(EPMA)等を使用して切断面に存在する第2触媒層40を観察し、第2触媒層40と基材20の隔壁部22との間の形態の相違に基づいて、部分41及び部分42を特定することができる。切断面の観察を行う際、切断面の元素マッピングを行ってもよい。元素マッピングは、上記と同様に行うことができる。切断面の元素マッピングにより、第2触媒層40と基材20の隔壁部22との間の形態及び組成の相違に基づいて、部分41及び部分42を特定することができる。
【0043】
排ガス浄化用触媒10において、第1触媒層30及び第2触媒層40は、下記式(1):
L1<L2 ・・・(1)
を満たす。
【0044】
上記式(1)において、L1は、第1触媒層30の長さを表し(
図2参照)、L2は、第2触媒層40の長さを表す(
図2参照)。
【0045】
第1触媒層30の長さL1及び第2触媒層40の長さL2は、上記式(1)を満たす限り特に限定されないが、後述する所望の排ガスの流れをより効果的に実現する観点及び後述する所望の排ガス浄化性能をより効果的に実現する観点から、第2触媒層40の長さL2の第1触媒層30の長さL1に対する比(L2/L1)は、好ましくは1.0より大きく2.3以下、さらに好ましくは1.1以上2.2以下、さらに一層好ましくは1.2以上2.1以下、さらに一層好ましくは1.3以上2.0以下、さらに一層好ましくは1.4以上1.9以下、さらに一層好ましくは1.5以上1.8以下である。
【0046】
第1触媒層30の長さL1は、上記式(1)を満たす限り特に限定されないが、後述する所望の排ガスの流れをより効果的に実現する観点及び後述する所望の排ガス浄化性能をより効果的に実現する観点から、第1触媒層30の長さL1の基材20の長さLに対する百分率(L1/L×100)は、好ましくは10%以上80%以下、さらに好ましくは20%以上70%以下、さらに一層好ましくは30%以上60%以下、さらに一層好ましくは40%以上50%以下である。
【0047】
第2触媒層40の長さL2は、上記式(1)を満たす限り特に限定されないが、後述する所望の排ガスの流れをより効果的に実現する観点及び後述する所望の排ガス浄化性能をより効果的に実現する観点から、第2触媒層40の長さL2の基材20の長さLに対する百分率(L2/L×100)は、好ましくは30%以上90%以下、さらに好ましくは40%以上85%以下、さらに一層好ましくは50%以上80%以下、さらに一層好ましくは65%以上75%以下である。
【0048】
第1触媒層30の長さL1と第2触媒層40の長さL2との合計の、基材20の長さLに対する百分率((L1+L2)/L×100)は、上記式(1)を満たす限り特に限定されないが、後述する所望の排ガスの流れをより効果的に実現する観点及び後述する所望の排ガス浄化性能をより効果的に実現する観点から、好ましくは100%以上150%以下、さらに好ましくは101%以上145%以下、さらに一層好ましくは102%以上140%以下、さらに一層好ましくは103%以上135%以下、さらに一層好ましくは104%以上130%以下である。
【0049】
第1触媒層30の長さL1及び第2触媒層40の長さL2の算出方法の一例は、以下の通りである。
【0050】
排ガス浄化用触媒10から、基材20の軸方向に延在し、基材20の長さLと同一の長さを有するサンプルを切り出す。サンプルは、例えば、直径25.4mmの円柱状である。なお、サンプルの直径の値は必要に応じて変更することができる。サンプルを基材20の軸方向と垂直な平面によって5mm間隔で切断し、サンプルの排ガス流入側の端部側から順に、第1切断片、第2切断片、・・・、第n切断片を得る。切断片の長さは5mmである。切断片の組成を、蛍光X線分析装置(XRF)(例えば、エネルギー分散型X線分析装置(EDX)、波長分散型X線分析装置(WDX)等)、誘導結合プラズマ発光分光分析装置(ICP-AES)等を使用して分析し、切断片の組成に基づいて、切断片が第1触媒層30を含むか否かを確認する。
【0051】
第1触媒層30を含むことが明らかである切断片に関しては、必ずしも組成分析を行う必要はない。例えば、走査型電子顕微鏡(SEM)、電子線マイクロアナライザー(EPMA)等を使用して切断面を観察し、切断片が第1触媒層30を含むか否かを確認することができる。切断面の観察を行う際、切断面の元素マッピングを行ってもよい。元素マッピングは、上記と同様に行うことができる。
【0052】
切断片が第1触媒層30を含むか否かを確認した後、下記式に基づいて、サンプルに含まれる第1触媒層30の長さを算出する。
サンプルに含まれる第1触媒層30の長さ=5mm×(第1触媒層30を含む切断片の数)
【0053】
例えば、第1切断片~第k切断片は第1触媒層30を含むが、第(k+1)~第n切断片は第1触媒層30を含まない場合、サンプルに含まれる第1触媒層30の長さは、(5×k)mmである。
【0054】
第1触媒層30の長さをより詳細に測定する場合には、次のように算出する。
第k切断片(すなわち、第1触媒層30を含む切断片のうち、サンプルの最も排ガス流出側から得られた切断片)を基材20の軸方向で切断して、走査型電子顕微鏡(SEM)、電子線マイクロアナライザー(EPMA)等を使用して切断面に存在する第1触媒層30を観察することにより、第k切断片における第1触媒層30の長さを測定する。そして、下記式に基づいて、サンプルに含まれる第1触媒層30の長さを算出する。
サンプルに含まれる第1触媒層30の長さ=(5mm×(k-1))+(第k切断片における第1触媒層30の長さ)
【0055】
排ガス浄化用触媒10から任意に切り出された8~16個のサンプルに関して、各サンプルに含まれる第1触媒層30の長さを算出し、それらの平均値を第1触媒層30の長さL1とする。
【0056】
第2触媒層40の長さL2の算出方法の一例も、第1触媒層30の長さL1の算出方法の一例と同様である。なお、第2触媒層40の長さL2の算出方法の一例では、サンプルを基材20の軸方向と垂直な平面によって5mm間隔で切断し、サンプルの排ガス流出側の端部側から順に、第1切断片、第2切断片、・・・、第n切断片を得る。
【0057】
排ガス浄化用触媒10において、第1触媒層30及び第2触媒層40は、下記式(2):
T1<T2 ・・・(2)
を満たす。
【0058】
上記式(2)において、T1は、第1触媒層30の部分31の厚みT1を表し(
図4参照)、T2は、第2触媒層40の部分41の厚みを表す(
図5参照)。
【0059】
第1触媒層30の部分31の厚みT1及び第2触媒層40の部分41の厚みT2は、上記式(2)を満たす限り特に限定されないが、後述する所望の排ガスの流れをより効果的に実現する観点及び後述する所望の排ガス浄化性能をより効果的に実現する観点から、第2触媒層40の部分41の厚みT2の第1触媒層30の部分31の厚みT1に対する比(T2/T1)は、好ましくは1.0より大きく3.5以下、さらに好ましくは1.1以上3.0以下、さらに一層好ましくは1.2以上2.5以下、さらに一層好ましくは1.3以上2.1以下である。
【0060】
第1触媒層30の部分31の厚みT1は、上記式(2)を満たす限り特に限定されないが、後述する所望の排ガスの流れをより効果的に実現する観点及び後述する所望の排ガス浄化性能をより効果的に実現する観点から、好ましくは15μm以上55μm以下、さらに好ましくは20μm以上50μm以下、さらに一層好ましくは25μm以上45μm以下、さらに一層好ましくは30μm以上40μm以下である。
【0061】
第2触媒層40の部分41の厚みT2は、上記式(2)を満たす限り特に限定されないが、後述する所望の排ガスの流れをより効果的に実現する観点及び後述する所望の排ガス浄化性能をより効果的に実現する観点から、好ましくは20μm以上100μm以下、さらに好ましくは30μm以上90μm以下、さらに一層好ましくは40μm以上80μm以下、さらに一層好ましくは45μm以上65μm以下である。
【0062】
第1触媒層30の部分31の厚みT1及び第2触媒層40の部分41の厚みT2の算出方法の一例は、以下の通りである。
【0063】
排ガス浄化用触媒10(例えば、基材20の排ガス流入側の端部から排ガス流通方向Xに10mm離れた箇所)を、基材20の軸方向と垂直な平面で切断し、走査型電子顕微鏡(SEM)を使用して、切断面から任意に選択された1個の流入側セルC1に存在する第1触媒層30の観察を行い、基材20の隔壁部22が存在する領域及び第1触媒層30が存在する領域を特定する。SEMによる切断面の観察において、視野倍率は、例えば300倍であり、視野幅(長さ)は、例えば500~600μmである。SEMによって観察する領域は、流入側セルC1の角部が含まれないように設定される。流入側セルC1の角部では、排ガス透過性が低く、後述する所望の排ガスの流れの実現に対する寄与度が小さいからである。基材20の隔壁部22が存在する領域及び第1触媒層30が存在する領域は、第1触媒層30と基材20の隔壁部22との間の形態の相違に基づいて特定することができる。この際、切断面の元素マッピングを行ってもよい。元素マッピングは、上記と同様にして行うことができる。切断面の元素マッピングにより、第1触媒層30と基材20の隔壁部22との間の形態及び組成の相違に基づいて、基材20の隔壁部22が存在する領域及び第1触媒層30が存在する領域を特定することができる。
【0064】
SEM観察像において、左端側又は右端側から順に、基材20の隔壁部22の厚み方向と平行な第1~第Nのグリッド線を15μm間隔で描き、基材20の隔壁部22が存在する領域の輪郭線と各グリッド線との交点同士を直線で結び、基材20の隔壁部22の表面の位置を特定する。Nは、例えば、30~50の整数である。同様に、第1触媒層30が存在する領域の輪郭線と各グリッド線との交点同士を直線で結び、第1触媒層30の表面の位置を特定する。ある交点P1から該交点P1に隣接する交点P2への厚み方向の変化量がグリッド線の間隔(15μm)を超える場合、交点P2を表面の位置の特定に使用しないこと(すなわち、直線で結ぶ交点から、交点P2を除くこと)が好ましい。ある交点P1から該交点P1に隣接する交点P2への厚み方向の変化量は、交点P1を通り、基材20の隔壁部22の厚み方向と垂直な直線と、交点P2を通り、基材20の隔壁部22の厚み方向と垂直な直線との距離を意味する。交点P1から交点P1に隣接する交点P2への厚み方向の変化量がグリッド線の間隔(15μm)を超えるとともに、交点P1から、交点P2に隣接する交点P3への厚み方向の変化量もグリッド線の間隔(15μm)を超える場合、交点P2に加えて交点P3も表面の位置の特定に使用しないこと(すなわち、直線で結ぶ交点から、交点P2及び交点P3を除くこと)が好ましい。このように直線で結ぶ交点から連続して5つの交点を除く場合、当該SEM画像に対しては厚みの測定を行わないことが好ましい。
【0065】
基材20の隔壁部22の表面の位置及び第1触媒層30の表面の位置を特定した後、画像解析ソフトウェアを使用して、第2のグリッド線と、第(N-1)のグリッド線と、基材20の隔壁部22の表面と、第1触媒層30の表面とで囲まれた領域の面積を求める。画像解析ソフトウェアとしては、例えば、AreaQ(エステック株式会社製)、ImageJ(パブリックドメイン)、Photoshop(Adobe Systems株式会社)等を使用することができる。なお、画像の両端部は不鮮明になり易く、隔壁部22の表面の位置及び第1触媒層30の表面の位置を特定し難いため、第1のグリッド線及び第Nのグリッド線は使用しない。
【0066】
上記領域の面積を求めた後、下記式に基づいて、上記領域の厚みを算出する。
上記領域の厚み=上記領域の面積/(グリッド線の間隔×グリッド線の間隔の数)
なお、グリッド線の間隔は15μmであり、グリッド線の間隔の数は(N-3)である。
【0067】
切断面から任意に選択された20個の流入側セルC1に関して、上記領域の厚みを算出し、それらの平均値を第1触媒層30の部分31の厚みT1とする。
【0068】
第2触媒層40の部分41の厚みT2の算出方法の一例も、第1触媒層30の部分31の厚みT1の算出方法の一例と同様である。なお、第2触媒層40の部分41の厚みT2の算出方法の一例では、排ガス浄化用触媒10(例えば、基材20の排ガス流出側の端部から排ガス流通方向Xとは反対の方向に10mm離れた箇所)を基材20の軸方向と垂直な平面で切断し、走査型電子顕微鏡(SEM)を使用して、切断面から任意に選択された流出側セルC2に存在する第2触媒層の観察を行う。
【0069】
排ガス浄化用触媒10において、第1触媒層30及び第2触媒層40は、下記式(3):
WC1>WC2 ・・・(3)
を満たす。
【0070】
上記式(3)において、WC1は、基材20のうち第1触媒層30が設けられている部分の単位体積当たりの第1触媒層30の質量を表し、WC2は、基材20のうち第2触媒層40が設けられている部分の単位体積当たりの第2触媒層40の質量を表す。
【0071】
基材20のうち第1触媒層30が設けられている部分の単位体積当たりの第1触媒層30の質量WC1、及び、基材20のうち第2触媒層40が設けられている部分の単位体積当たりの第2触媒層40の質量WC2は、上記式(3)を満たす限り特に限定されないが、後述する所望の排ガスの流れをより効果的に実現する観点及び後述する所望の排ガス浄化性能をより効果的に実現する観点から、WC1のWC2に対する比(WC1/WC2)は、好ましくは1.0より大きく3.5以下、さらに好ましくは1.05以上2.5以下、さらに好ましくは1.10以上2.0以下、さらに好ましくは1.11以上2.0以下、さらに一層好ましくは1.12以上1.5以下である。
【0072】
基材20のうち第1触媒層30が設けられている部分の単位体積当たりの第1触媒層30の質量WC1は、上記式(3)を満たす限り特に限定されないが、後述する所望の排ガスの流れをより効果的に実現する観点及び後述する所望の排ガス浄化性能をより効果的に実現する観点から、好ましくは50g/L以上90g/L以下、さらに好ましくは55g/L以上80g/L以下、さらに一層好ましくは60g/L以上70g/L以下である。
【0073】
基材20のうち第2触媒層40が設けられている部分の単位体積当たりの第2触媒層40の質量WC2は、上記式(3)を満たす限り特に限定されないが、後述する所望の排ガスの流れをより効果的に実現する観点及び後述する所望の排ガス浄化性能をより効果的に実現する観点から、好ましくは40g/L以上90g/L以下、さらに好ましくは50g/L以上80g/L以下、さらに一層好ましくは55g/L以上70g/L以下である。
【0074】
基材20のうち第1触媒層30が設けられている部分の単位体積当たりの第1触媒層30の質量WC1、及び、基材20のうち第2触媒層40が設けられている部分の単位体積当たりの第2触媒層40の質量WC2の算出方法の一例は、以下の通りである。
【0075】
以下、基材20のうち第2触媒層40が設けられている部分の単位体積当たりの第2触媒層40の質量WC2の算出方法の一例について説明する。
【0076】
排ガス浄化用触媒10から、基材20の軸方向に延在し、基材20の長さLと同一の長さを有するサンプルを切り出し、サンプルを基材20の軸方向と垂直な平面で切断し、第2触媒層40は含むが、第1触媒層30は含まない排ガス浄化用触媒10の切断片S2を準備する。切断片S2は、例えば、直径25.4mm、長さ10mmの円柱状である。なお、切断片S2の直径及び長さの値は必要に応じて変更することができる。第1触媒層30の長さL1は、第2触媒層40の長さL2よりも小さいので、排ガス浄化用触媒10の排ガス流出側の端部近傍において、第2触媒層40は存在するが、第1触媒層30は存在しない。したがって、排ガス浄化用触媒10の排ガス流出側の端部近傍から、切断片S2を得ることができる。切断片S2に含まれる第2触媒層40の長さは、切断片S2の長さと等しい。
【0077】
切断片S2と同一のサイズを有する基材20の切断片を準備する。基材20の切断片は、第1触媒層30及び第2触媒層40をともに含まない。
【0078】
切断片S2の質量及び基材20の切断片の質量を測定し、下記式に基づいて、切断片S2の単位体積当たりの第2触媒層40の質量を算出する。
切断片S2の単位体積当たりの第2触媒層40の質量=((切断片S2の質量)-(基材20の切断片の質量))/(切断片S2の体積)
【0079】
なお、切断片S2の体積は、切断片S2のみかけの体積である。例えば、切断片S2が、直径25.4mm、長さ10mmの円柱状である場合、切断片S2の体積は、π×(12.7mm)2×10mmである。その他の切断片(後述する切断片S1及びS3)の体積も同様である。
【0080】
排ガス浄化用触媒10の任意の箇所から作製された3個の切断片S2に関して、切断片S2の単位体積当たりの第2触媒層40の質量を算出し、それらの平均値を、基材20のうち第2触媒層40が設けられている部分の単位体積当たりの第2触媒層40の質量WC2とする。
【0081】
なお、WC2を算出する際、基材20の切断片を使用することなく、切断片S2の単位体積当たりの第2触媒層40の質量を算出してもよい。そのような算出方法の一例は以下の通りである。切断片S2の質量及び体積を測定する。切断片S2に含まれる基材20の組成を、切断片S2の切断面の元素マッピング等により特定する。切断片S2の組成を、誘導結合プラズマ発光分光分析装置等で分析することにより特定する。特定した基材20及び切断片S2の組成に基づいて、切断片S2の質量のうち第2触媒層40の質量が占める割合を算出する。下記式に基づいて、切断片S2の単位体積当たりの第2触媒層40の質量を算出する。
切断片S2の単位体積当たりの第2触媒層40の質量=(切断片S2の質量)×(切断片S2の質量のうち第2触媒層40の質量が占める割合)/(切断片S2の体積)
【0082】
以下、基材20のうち第1触媒層30が設けられている部分の単位体積当たりの第1触媒層30の質量WC1の算出方法の一例について説明する。
【0083】
第2触媒層40が隔壁部22の排ガス流入側の端部まで延在していない場合、排ガス浄化用触媒10から、基材20の軸方向に延在し、基材20の長さLと同一の長さを有するサンプルを切り出し、サンプルを基材20の軸方向と垂直な平面で切断し、第1触媒層30は含むが、第2触媒層40は含まない排ガス浄化用触媒10の切断片S1を準備する。切断片S1は、例えば、直径25.4mm、長さ10mmの円柱状である。なお、切断片S1の直径及び長さの値は必要に応じて変更することができる。第2触媒層40が隔壁部22の排ガス流入側の端部まで延在していない場合、排ガス浄化用触媒10の排ガス流入側の端部近傍において、第1触媒層30は存在するが、第2触媒層40は存在しない。したがって、排ガス浄化用触媒10の排ガス流入側の端部近傍から、切断片S1を得ることができる。切断片S1に含まれる第1触媒層30の長さは、切断片S1の長さと等しい。
【0084】
切断片S1と同一のサイズを有する基材20の切断片を準備する。基材20の切断片は、第1触媒層30及び第2触媒層40をともに含まない。
【0085】
切断片S1の質量及び基材20の切断片の質量を測定し、下記式に基づいて、切断片S1の単位体積当たりの第1触媒層30の質量を算出する。
切断片S1の単位体積当たりの第1触媒層30の質量=((切断片S1の質量)-(基材20の切断片の質量))/(切断片S1の体積)
【0086】
排ガス浄化用触媒10の任意の箇所から作製された3個の切断片S1に関して、切断片S1の単位体積当たりの第1触媒層30の質量を算出し、それらの平均値を、基材20のうち第1触媒層30が設けられている部分の単位体積当たりの第1触媒層30の質量WC1とする。
【0087】
なお、WC1を算出する際、基材20の切断片を使用することなく、切断片S1の単位体積当たりの第1触媒層30の質量を算出することもできる。そのような算出方法の一例は、基材20の切断片を使用することなく、切断片S2の単位体積当たりの第2触媒層40の質量を算出する方法の一例と同様である。
【0088】
第2触媒層40が隔壁部22の排ガス流入側の端部まで延在している場合、排ガス浄化用触媒10から、基材20の軸方向に延在し、基材20の長さLと同一の長さを有するサンプルを切り出し、サンプルを基材20の軸方向と垂直な平面で切断し、第1触媒層30及び第2触媒層40をともに含む排ガス浄化用触媒10の切断片S3を準備する。切断片S3は、例えば、直径25.4mm、長さ10mmの円柱状である。なお、切断片S3の直径及び長さの値は必要に応じて変更することができる。第2触媒層40が隔壁部22の排ガス流入側の端部まで延在している場合、排ガス浄化用触媒10の排ガス流入側の端部近傍において、第1触媒層30及び第2触媒層40が存在する。したがって、排ガス浄化用触媒10の排ガス流入側の端部近傍から、切断片S3を得ることができる。切断片S3に含まれる第1触媒層30及び第2触媒層40の長さはともに、切断片S3の長さと等しい。
【0089】
切断片S3と同一のサイズを有する基材20の切断片を準備する。基材20の切断片は、第1触媒層30及び第2触媒層40をともに含まない。
【0090】
切断片S3の質量及び基材20の切断片の質量を測定し、下記式に基づいて、切断片S3の単位体積当たりの第1触媒層30及び第2触媒層40の合計質量を算出する。
切断片S3の単位体積当たりの第1触媒層30及び第2触媒層40の合計質量=((切断片S3の質量)-(基材20の切断片の質量))/(切断片S3の体積)
【0091】
排ガス浄化用触媒10の任意の箇所から作製された3個の切断片S3に関して、切断片S3の単位体積当たりの第1触媒層30及び第2触媒層40の合計質量を算出し、それらの平均値から、基材20のうち第2触媒層40が設けられている部分の単位体積当たりの第2触媒層40の質量WC2を差し引くこと(すなわち、切断片S3に含まれる第1触媒層30及び第2触媒層40の合計質量の平均値-基材20のうち第2触媒層40が設けられている部分の単位体積当たりの第2触媒層40の質量WC2)により得られる値を、基材20のうち第1触媒層30が設けられている部分の単位体積当たりの第1触媒層30の質量WC1とする。
【0092】
なお、WC1を算出する際、基材20の切断片を使用することなく、切断片S3の単位体積当たりの第1触媒層30及び第2触媒層40の合計質量を算出することもできる。そのような算出方法の一例は、基材20の切断片を使用することなく、切断片S2の単位体積当たりの第2触媒層40の質量を算出する方法の一例と同様である。
【0093】
第1触媒層30及び第2触媒層40は、それぞれ、触媒活性成分を含む。第1触媒層30及び第2触媒層40は、それぞれ、1種の触媒活性成分を含んでいてもよいし、2種以上の触媒活性成分を含んでいてもよい。排ガス浄化性能を高める観点から、第2触媒層40は、第1触媒層30に含まれる触媒活性成分とは異なる触媒活性成分を含むことが好ましい。触媒活性成分としては、例えば、白金元素(Pt)、パラジウム元素(Pd)、ロジウム元素(Rh)、ルテニウム元素(Ru)、イリジウム元素(Ir)、オスミウム元素(Os)等の貴金属元素が挙げられる。貴金属元素は、触媒活性成分として機能し得る形態、例えば、貴金属、貴金属元素を含む合金、貴金属元素を含む化合物(例えば、貴金属元素の酸化物)等の形態で第1触媒層30及び第2触媒層40に含まれる。触媒活性成分は、排ガス浄化性能を高める観点から、粒子状であることが好ましい。排ガス浄化性能を高める観点から、第1触媒層30及び第2触媒層40は、それぞれ独立して、白金元素(Pt)、パラジウム元素(Pd)及びロジウム元素(Rh)から選択される少なくとも1種の触媒活性成分を含むことが好ましい。排ガス浄化性能のうち特にNOx浄化性能を高める観点から、第1触媒層30及び第2触媒層40の少なくとも一方が、ロジウム元素(Rh)を含むことが好ましく、第1触媒層30及び第2触媒層40の両方が、ロジウム元素(Rh)を含むことがさらに好ましい。
【0094】
第1触媒層30及び第2触媒層40は、それぞれ、単層構造を有していてもよいし、積層構造を有していてもよい。積層構造は、例えば、下層及び上層からなる二層構造である。なお、下層は、上層よりも隔壁部22側に位置する層である。
【0095】
第1触媒層30が積層構造を有する場合、第1触媒層30の部分31は、1つの層の全体又は一部で形成されていてもよいし、1つ以上の層の全体と別の1つの層の全体又は一部とで形成されていてもよい。例えば、第1触媒層30が二層構造を有する場合、第1触媒層30の部分31は、上層の全体又はその一部で形成されていてもよいし、上層の全体と下層の一部とで形成されていてもよい。
【0096】
第2触媒層40が積層構造を有する場合、第2触媒層40の部分41は、1つの層の全体又は一部で形成されていてもよいし、1つ以上の層の全体と別の1つの層の全体又は一部とで形成されていてもよい。例えば、第2触媒層40が二層構造を有する場合、第2触媒層40の部分41は、上層の全体又はその一部で形成されていてもよいし、上層の全体と下層の一部とで形成されていてもよい。
【0097】
積層構造において、ある層に含まれる触媒活性成分と、別の層に含まれる触媒活性成分とは、同一であってもよいし、異なっていてもよい。積層構造において、ある層に含まれる触媒活性成分と、別の層に含まれる触媒活性成分とが異なる場合、複数の触媒活性成分が単層に含まれることにより生じる触媒性能の低下を防止することができる。
【0098】
一実施形態において、第1触媒層30が単層構造を有し、第2触媒層40が二層構造(下層及び上層)を有する。なお、下層は、上層よりも隔壁部22側に位置する層である。この実施形態において、第1触媒層30が、ロジウム元素(Rh)を含み、第2触媒層40の下層が、ロジウム元素(Rh)以外の貴金属元素(例えば、パラジウム元素(Pd))を含み、第2触媒層40の上層が、ロジウム元素(Rh)を含むことが好ましい。これにより、NOx浄化性能、特に高速運転時のNOx浄化性能を高めることができ、NOx排出量を低減させることができる。
【0099】
排ガス浄化性能を高める観点から、第1触媒層30及び第2触媒層40のそれぞれに含まれる触媒活性成分の量は、第1触媒層30及び第2触媒層40のそれぞれの総質量を基準として、好ましくは0.001質量%以上、さらに好ましくは0.01質量%以上、さらに一層好ましくは0.05質量以上%である。一方、排ガス浄化性能とコストとのバランスを考慮して、第1触媒層30及び第2触媒層40のそれぞれに含まれる触媒活性成分の量は、第1触媒層30及び第2触媒層40のそれぞれの総質量を基準として、好ましくは25質量%以下、さらに好ましくは20質量%以下、さらに一層好ましくは15質量%以下である。触媒活性成分の量は、誘導結合プラズマ発光分光分析法(ICP-AES)等の常法を使用して測定することができる。なお、貴金属元素の質量は、金属換算の質量である。
【0100】
排ガス浄化性能を高める観点から、第1触媒層30及び第2触媒層40のそれぞれに含まれる触媒活性成分の量は、基材20の体積1L当たり、好ましくは0.01g以上、さらに好ましくは0.05g以上である。一方、排ガス浄化性能とコストとのバランスを考慮して、第1触媒層30及び第2触媒層40のそれぞれに含まれる触媒活性成分の量は、基材20の体積1L当たり、好ましくは10g以下であり、場合により、5g以下又は3g以下とすることができる。基材20の体積は、基材20の見かけの体積である。筒状部21の外径を2rとすると、基材20の体積は、式:基材20の体積=π×r2×(基材20の長さL)で表される。
【0101】
基材20の体積1L当たりの、第2触媒層40に含まれる触媒活性成分の量の算出方法の一例は、以下の通りである。
【0102】
上記と同様にして切断片S2を作製し、切断片S2に含まれる触媒活性成分の量を誘導結合プラズマ発光分光分析法(ICP-AES)等の常法を使用して測定し、切断片S2の単位体積当たりの触媒活性成分の量を算出する。排ガス浄化用触媒10の任意の箇所から作製された3個の切断片S2に関して、切断片S2の単位体積当たりの触媒活性成分の量を算出し、それらの平均値を算出する。下記式に基づいて、基材20の体積1L当たりの、第2触媒層40に含まれる触媒活性成分の量を算出する。
基材20の体積1L当たりの、第2触媒層40に含まれる触媒活性成分の量=(切断片S2の単位体積当たりの触媒活性成分の量の平均値)×(第2触媒層40の長さL2/基材20の長さL)
【0103】
基材20の体積1L当たりの、第1触媒層30に含まれる触媒活性成分の量の算出方法の一例は、以下の通りである。
【0104】
第2触媒層40が隔壁部22の排ガス流入側の端部まで延在していない場合、上記と同様にして切断片S1を作製し、切断片S1に含まれる触媒活性成分の量を誘導結合プラズマ発光分光分析法(ICP-AES)等の常法を使用して測定し、切断片S1の単位体積当たりの触媒活性成分の量を算出する。排ガス浄化用触媒10の任意の箇所から作製された3個の切断片S1に関して、切断片S1の単位体積当たりの触媒活性成分の量を算出し、それらの平均値を算出する。下記式に基づいて、基材20の体積1L当たりの、第1触媒層30に含まれる触媒活性成分の量を算出する。
基材20の体積1L当たりの、第1触媒層30に含まれる触媒活性成分の量=(切断片S1の単位体積当たりの触媒活性成分の量の平均値)×(第1触媒層30の長さL1/基材20の長さL)
【0105】
第2触媒層40が隔壁部22の排ガス流入側の端部まで延在している場合、上記と同様にして切断片S3を作製し、切断片S3に含まれる触媒活性成分の量を誘導結合プラズマ発光分光分析法(ICP-AES)等の常法を使用して測定し、切断片S3の単位体積当たりの触媒活性成分の量を算出する。排ガス浄化用触媒10の任意の箇所から作製された3個の切断片S3に関して、切断片S3の単位体積当たりの触媒活性成分の量を算出し、それらの平均値を算出する。下記式に基づいて、基材20の体積1L当たりの、第1触媒層30に含まれる触媒活性成分の量を算出する。
基材20の体積1L当たりの、第1触媒層30に含まれる触媒活性成分の量=((切断片S3の単位体積当たりの触媒活性成分の量の平均値)-(切断片S2の単位体積当たりの触媒活性成分の量の平均値))×(第1触媒層30の長さL1/基材20の長さL)
【0106】
触媒活性成分による排ガス浄化性能を効率よく発揮させる観点から、第1触媒層30及び第2触媒層40は、それぞれ、触媒活性成分を担持する担体成分をさらに含むことが好ましい。担体成分としては、例えば、無機酸化物粒子が挙げられ、無機酸化物粒子を構成する無機酸化物としては、例えば、酸素貯蔵成分(OSC材料とも呼ばれる)、酸素貯蔵成分以外の無機酸化物等が挙げられる。空燃比の変動に対して安定して高い排ガス浄化性能を発揮させる観点から、第1触媒層30及び第2触媒層40は、それぞれ、担体成分として酸素貯蔵成分を含むことが好ましく、酸素貯蔵成分と酸素貯蔵成分以外の無機酸化物とを含むことがさらに好ましい。
【0107】
「無機酸化物粒子が触媒活性成分を担持する」とは、無機酸化物粒子の外表面又は細孔内表面に、触媒活性成分が物理的又は化学的に吸着又は保持されている状態をいう。例えば、排ガス浄化用触媒10の断面をEDS(エネルギー分散型分光器)で分析して得られた元素マッピングにおいて、無機酸化物粒子と触媒活性成分とが同じ領域に存在している場合、無機酸化物粒子が触媒活性成分を担持していると判断することができる。また、走査型電子顕微鏡(SEM)を使用した粒径の測定により、無機酸化物粒子が触媒活性成分を担持していることを確認することができる。無機酸化物粒子の表面上に存在している触媒活性成分の平均粒径は、無機酸化物粒子の平均粒径に対して、10%以下であることが好ましく、3%以下であることがさらに好ましく、1%以下であることがさらに一層好ましい。ここでいう平均粒径は、SEMで観察した時の30個以上の粒子のフェレ径の平均値である。
【0108】
酸素貯蔵成分としては、排ガス浄化用触媒の作動条件で構成元素の価数変化が生じる金属酸化物であって酸素を貯蔵する能力を有するものであれば特に限定されない。酸素貯蔵成分としては、セリウム元素(Ce)を含む金属酸化物等が挙げられ、Ceを含む金属酸化物としては、例えば、CeO2、CeO2-ZrO2(例えば、Ce及びZrを含有するセリア-ジルコニア複合酸化物、CeO2及びZrO2の固溶体等)等が挙げられる。CeO2及びZrO2が固溶体となっていることは、X線回折装置(XRD)を使用して、CeO2-ZrO2に由来する単相が形成されていることにより確認することができる。触媒活性成分を担持させやすい観点から、酸素貯蔵成分は、多孔質体であることが好ましい。
【0109】
第1触媒層30に含まれ得るセリウム元素(Ce)の酸化物(CeO2)換算の量は、第1触媒層30の総質量を基準として、好ましくは5質量%以上40質量%以下、さらに好ましくは10質量%以上30質量%以下である。第1触媒層30に含まれ得るジルコニウム元素(Zr)の酸化物(ZrO2)換算の量は、第1触媒層30の総質量を基準として、好ましくは10質量%以上80質量%以下、さらに好ましくは25質量%以上60質量%以下である。セリウム元素(Ce)の酸化物(CeO2)換算の量及びジルコニウム元素(Zr)の酸化物(ZrO2)換算の量は、誘導結合プラズマ発光分光分析法(ICP-AES)等の常法を使用して測定することができる。
【0110】
第2触媒層40に含まれ得るセリウム元素(Ce)の酸化物(CeO2)換算の量は、第2触媒層40の総質量を基準として、好ましくは5質量%以上40質量%以下、さらに好ましくは10質量%以上30質量%以下である。第2触媒層40に含まれ得るジルコニウム元素(Zr)の酸化物(ZrO2)換算の量は、第2触媒層40の総質量を基準として、好ましくは10質量%以上70質量%以下、さらに好ましくは30質量%以上50質量%以下である。セリウム元素(Ce)の酸化物(CeO2)換算の量及びジルコニウム元素(Zr)の酸化物(ZrO2)換算の量は、誘導結合プラズマ発光分光分析法(ICP-AES)等の常法を使用して測定することができる。
【0111】
酸素貯蔵成分は、セリウム元素(Ce)以外の希土類元素を含んでいてもよい。Ce以外の希土類元素としては、例えば、スカンジウム元素(Sc)、イットリウム元素(Y)、ランタン元素(La)、プラセオジム元素(Pr)、ネオジム元素(Nd)、サマリウム元素(Sm)、ユーロピウム元素(Eu)、ガドリニウム元素(Gd)、テルビウム元素(Tb)、ジスプロシウム元素(Dy)、ホルミウム元素(Ho)、エルビウム元素(Er)、ツリウム元素(Tm)、イッテルビウム元素(Yb)、ルテチウム元素(Lu)等が挙げられる。これらの希土類元素は、例えば、酸化物として酸素貯蔵成分に添加される。希土類元素の酸化物は、プラセオジム元素(Pr)、テルビウム元素(Tb)を除いてLn2O3(Lnは希土類元素を表す)で表され、プラセオジム元素の酸化物は、通常Pr6O11で表され、テルビウム元素の酸化物は、通常Tb4O7で表される。希土類元素の酸化物は、CeO2-ZrO2と固溶体を形成していてもよいし、形成していなくてもよい。希土類元素の酸化物がCeO2-ZrO2と固溶体を形成していることは、上記と同様にX線回折装置(XRD)により確認することができる。
【0112】
その他の酸素貯蔵成分としては、触媒の使用条件で価数状態変化が生じやすい元素(例えば、Mn、Fe、Cu等)の酸化物、これらの元素を含む複合酸化物等が挙げられる。
【0113】
酸素貯蔵成分以外の無機酸化物としては、例えば、アルミナ、シリカ、シリカ-アルミナ、チタニア、アルミノシリケート類等が挙げられる。これらのうち、耐熱性の観点から、アルミナが好ましい。触媒活性成分を担持させやすい観点から、酸素貯蔵成分以外の無機酸化物は、多孔質体であることが好ましい。
【0114】
第1触媒層30に含まれ得る酸素貯蔵成分以外の無機酸化物の量は、第1触媒層30の総質量を基準として、好ましくは4質量%以上50質量%以下、さらに好ましくは7質量%以上30質量%以下である。酸素貯蔵成分以外の無機酸化物の量は、誘導結合プラズマ発光分光分析法(ICP-AES)等の常法を使用して測定することができる。
【0115】
第2触媒層40に含まれ得る酸素貯蔵成分以外の無機酸化物の量は、第2触媒層40の総質量を基準として、好ましくは5質量%以上50質量%以下、さらに好ましくは10質量%以上30質量%以下である。酸素貯蔵成分以外の無機酸化物の量は、誘導結合プラズマ発光分光分析法(ICP-AES)等の常法を使用して測定することができる。
【0116】
酸素貯蔵成分以外の無機酸化物は、酸素貯蔵成分により修飾されていてもよく、又は酸素貯蔵成分を担持していてもよい。例えば、アルミナ等の孔部の内表面又は外表面が、酸素貯蔵成分により修飾されていてもよい。また、アルミナ等の孔部の内表面又は外表面に、酸素貯蔵成分が分散した状態で担持されていてもよい。
【0117】
リン被毒による触媒活性の低下の抑制、耐熱性の向上等の観点から、第1触媒層30及び第2触媒層40は、それぞれ、アルカリ土類金属化合物を含んでいてもよい。アルカリ土類金属元素としては、例えば、バリウム元素(Ba)、ストロンチウム元素(Sr)、カルシウム元素(Ca)等が挙げられ、アルカリ土類金属化合物としては、硝酸塩、炭酸塩、硫酸塩、酸化物等が挙げられる。
【0118】
≪排ガスの流れ≫
第1触媒層30及び第2触媒層40が上記式(1)~(3)を満たすことにより、排ガス浄化用触媒10は、向上した排ガス浄化性能(特に、内燃機関の高速運転時における排ガス浄化性能)を有する。この作用効果には、排ガス浄化用触媒10における排ガスの流れが関係すると考えられる。以下、
図6に基づいて、排ガス浄化用触媒10における排ガスの流れについて説明する。
【0119】
図6に示すように、排ガス浄化用触媒10における排ガスの流れには、経路F1及び経路F2があり得る。経路F1では、排ガス流通方向Xに流通する排ガスが、流入側セルC1の排ガス流入側の端部C11から排ガス浄化用触媒10内に流入し、隔壁部22及び第2触媒層40を順に通過し、流出側セルC2に到達し、流出側セルC2の排ガス流出側の端部C21から排ガス浄化用触媒10外に流出する。経路F2では、排ガス流通方向Xに流通する排ガスが、流入側セルC1の排ガス流入側の端部C11から排ガス浄化用触媒10内に流入し、第1触媒層30及び隔壁部22を順に通過し、流出側セルC2に到達し、流出側セルC2の排ガス流出側の端部C21から排ガス浄化用触媒10外に流出する。
【0120】
第1触媒層30及び第2触媒層40が上記式(1)~(3)を満たすことにより、排ガス浄化用触媒10における排ガスの流れは、経路F1が支配的になると考えられる。そのメカニズムとして、次のようなメカニズムが推測される。第1触媒層30の部分31の厚みT1は第2触媒層40の部分41の厚みT2よりも小さい一方、基材20のうち第1触媒層30が設けられている部分の単位体積当たりの第1触媒層30の質量WC1は、基材20のうち第2触媒層40が設けられている部分の単位体積当たりの第2触媒層40の質量WC2よりも大きいため、第1触媒層30の密度は第2触媒層40の密度よりも大きい。したがって、流入側セルC1の排ガス流入側の端部C11から排ガス浄化用触媒10内に流入した排ガスは、第1触媒層30よりも、第2触媒層30を通過しやすい。そして、通過しやすい第2触媒層40の長さL2は、通過しにくい第1触媒層30の長さL1よりも大きい。このため、排ガス浄化用触媒10における排ガスの流れは、経路F1が支配的になると考えられる。
【0121】
経路F2が支配的である場合、排ガス流通方向Xに流通する排ガスは、流入側セルC1の排ガス流入側の端部C11から排ガス浄化用触媒10内に流入し、第1触媒層30及び隔壁部22を順に通過し、流出側セルC2に到達し、流出側セルC2の排ガス流出側の端部C21から排ガス浄化用触媒10外に流出する。この場合、排ガス中の粒子状物質(PM)は、第1触媒層30に蓄積されやすい。第1触媒層30に蓄積されたPMは、第1触媒層30に含まれる触媒活性成分と、排ガス中の炭化水素(HC)、一酸化炭素(CO)、窒素酸化物(NOx)等の有害成分との接触を阻害し、第1触媒層30の排ガス浄化性能を低下させる。特に、内燃機関が高速運転に至るまでに排出された排ガス中のPMが第1触媒層30に蓄積されると、内燃機関の高速運転時における排ガス浄化性能の低下が顕著となる。
【0122】
これに対して、経路F1が支配的である場合、排ガス流通方向Xに流通する排ガスは、流入側セルC1の排ガス流入側の端部C11から排ガス浄化用触媒10内に流入し、隔壁部22及び第2触媒層40を順に通過し、流出側セルC2に到達し、流出側セルC2の排ガス流出側の端部C21から排ガス浄化用触媒10外に流出する。この場合、排ガス中の粒子状物質(PM)は、隔壁部22に蓄積されやすく、第1触媒層30及び第2触媒層40に蓄積されにくい。したがって、第1触媒層30及び第2触媒層40に含まれる触媒活性成分と、排ガス中の炭化水素(HC)、一酸化炭素(CO)、窒素酸化物(NOx)等の有害成分との接触がPMによって阻害されにくく、第1触媒層30及び第2触媒層40の排ガス浄化性能が十分に発揮される。このため、経路F1が支配的である場合の排ガス浄化性能は、経路F2が支配的である場合の排ガス浄化性能よりも向上する。特に、内燃機関の高速運転時における排ガス浄化性能が顕著に向上する。
【0123】
排ガス浄化性能のうち、NOx浄化性能(特に、内燃機関の高速運転時におけるNOx浄化性能)を向上させることを目的とする場合、第1触媒層30及び第2触媒層40の少なくとも一方が、ロジウム元素(Rh)を含むことが好ましい。
【0124】
経路F1が支配的である場合、排ガス中の粒子状物質(PM)は、隔壁部22に蓄積されやすく、第1触媒層30及び第2触媒層40に蓄積されにくい。したがって、第1触媒層30及び/又は第2触媒層40に含まれるロジウム元素(Rh)と、排ガス中のNOxとの接触がPMによって阻害されにくく、第1触媒層30及び/又は第2触媒層40のNOx浄化性能が十分に発揮される。このため、経路F1が支配的である場合のNOx浄化性能は、経路F2が支配的である場合のNOx浄化性能よりも向上する。特に、内燃機関の高速運転時におけるNOx浄化性能が顕著に向上する。
【0125】
経路F1が支配的である場合と経路F2が支配的である場合とを比較すると、第1触媒層30に含まれるロジウム元素(Rh)のNOx浄化性能に顕著な差が生じる。したがって、経路F1が支配的である場合の作用効果は、第1触媒層30及び第2触媒層40のうち少なくとも第1触媒層30がロジウム元素(Rh)を含む場合に顕著である。
【0126】
第2触媒層40がロジウム元素(Rh)を含む場合、第2触媒層40に含まれるロジウム元素(Rh)のNOx浄化性能をより効果的に発揮させる観点から、第2触媒層40が二層構造(下層及び上層)を有し、第2触媒層40の下層が、ロジウム元素(Rh)以外の貴金属元素(例えば、パラジウム元素(Pd)等)を含み、第2触媒層40の上層が、ロジウム元素(Rh)を含むことが好ましい。なお、下層は、上層よりも隔壁部22側に位置する層である。経路F1が支配的である場合、排ガスは、隔壁部22及び第2触媒層40を順に通過するが、この際、排ガス中のPMは、第2触媒層40の下層に蓄積されやすく、第2触媒層40の上層に蓄積されにくい。したがって、第2触媒層40の上層に含まれるロジウム元素(Rh)のNOx浄化性能は、PMによる影響を受けにくい。このため、第2触媒層40が二層構造(下層及び上層)を有し、第2触媒層40の下層が、ロジウム元素(Rh)以外の貴金属(例えば、パラジウム元素(Pd)等)を含み、第2触媒層40の上層が、ロジウム元素(Rh)を含む場合、第2触媒層40のNOx浄化性能がより効果的に発揮される。
【0127】
≪製造方法≫
以下、排ガス浄化用触媒10の製造方法について説明する。
基材20と、第1触媒層30を形成するためのスラリーと、第2触媒層40を形成するためのスラリーとを準備する。第1触媒層30が積層構造を有する場合、第1触媒層30を形成するためのスラリーとして、2種以上のスラリーを準備する。第2触媒層40が積層構造を有する場合、第2触媒層40を形成するためのスラリーとして、2種以上のスラリーを準備する。
【0128】
第1触媒層30を形成するためのスラリーの組成は、第1触媒層30の組成に応じて調整する。第2触媒層40を形成するためのスラリーの組成は、第2触媒層40の組成に応じて調整する。スラリーは、例えば、貴金属元素の供給源、無機酸化物粒子、バインダー、造孔剤、溶媒等を含む。貴金属元素の供給源としては、例えば、貴金属元素の塩が挙げられ、貴金属元素の塩としては、例えば、硝酸塩、アンミン錯体塩、酢酸塩、塩化物等が挙げられる。無機酸化物粒子としては、例えば、酸素貯蔵成分、酸素貯蔵成分以外の無機酸化物等が挙げられる。酸素貯蔵成分及び酸素貯蔵成分以外の無機酸化物に関する説明は上記と同様である。バインダーとしては、例えば、アルミナゾル、ジルコニアゾル、チタニアゾル、シリカゾル等が挙げられる。造孔剤としては、例えば、架橋ポリ(メタ)アクリル酸メチル粒子、架橋ポリ(メタ)アクリル酸ブチル粒子、架橋ポリスチレン粒子、架橋ポリアクリル酸エステル粒子、メラミン系樹脂等が挙げられる。溶媒としては、例えば、水、有機溶媒等が挙げられる。有機溶媒としては、例えば、アルコール、アセトン、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド等が挙げられる。溶媒は、1種の溶媒であってもよいし、2種以上の溶媒の混合物であってもよい。2種以上の溶媒の混合物としては、例えば、水と1種又は2種以上の有機溶媒との混合物、2種以上の有機溶媒の混合物等が挙げられる。
【0129】
基材20の排ガス流入側の端部を、第1触媒層30を形成するためのスラリー中に浸漬し、反対側からスラリーを吸引した後、乾燥させる。第1触媒層30が積層構造を有する場合、この操作を繰り返す。これにより、第1触媒層30の前駆層が形成される。スラリーの固形分濃度、粘度等を調整することにより、第1触媒層30の前駆層の長さ(ひいては、第1触媒層30の長さL1)を調整することができる。また、スラリーのコート量、スラリーを構成する材料の種類、スラリーに含まれる造孔剤の粒径等を調整することにより、第1触媒層30の前駆層の厚み(ひいては、第1触媒層30の部分31の厚みT1)及び基材20のうち第1触媒層30の前駆層が設けられている部分の単位体積当たりの第1触媒層30の前駆層の質量(ひいては、基材20のうち第1触媒層30が設けられている部分の単位体積当たりの第1触媒層30の質量WC1)を調整することができる。乾燥温度は、通常40℃以上120℃以下である。乾燥時間は、乾燥温度に応じて適宜調整する。
【0130】
基材20の排ガス流出側の端部を、第2触媒層40を形成するためのスラリー中に浸漬し、反対側からスラリーを吸引した後、乾燥させる。第2触媒層40が積層構造を有する場合、この操作を繰り返す。これにより、第2触媒層40の前駆層が形成される。スラリーの固形分濃度、粘度等を調整することにより、第2触媒層40の前駆層の長さ(ひいては、第2触媒層40の長さL2)を調整することができる。また、スラリーのコート量、スラリーを構成する材料の種類、スラリーに含まれる造孔剤の粒径等を調整することにより、第2触媒層40の前駆層の厚み(ひいては、第2触媒層40の部分41の厚みT2)及び基材20のうち第2触媒層40の前駆層が設けられている部分の単位体積当たりの第2触媒層40の前駆層の質量(ひいては、基材20のうち第2触媒層40が設けられている部分の単位体積当たりの第2触媒層40の質量WC2)を調整することができる。乾燥温度は、通常40℃以上120℃以下である。乾燥時間は、乾燥温度に応じて適宜調整する。
【0131】
造孔剤の粒径は、適宜調整することができるが、造孔剤のメジアンD50は、剥離抑制や圧損上昇抑制、PMの捕集性能等の観点から通常5μm以上50μm以下、好ましくは5μm以上40μm以下、さらに好ましくは10μm以上30μm以下である。造孔剤の粒径が大きいほど、第1触媒層30の厚み(ひいては、第1触媒層30の部分31の厚みT1)及び第2触媒層40の厚み(第2触媒層40の部分41の厚みT2)が大きくなる。D50は、レーザー回折散乱式粒度分布測定法によって測定される体積基準の粒度分布において、累積体積が50%となる粒径である。D50の測定は、レーザー回折散乱式粒度分布測定装置自動試料供給機(マイクロトラック・ベル社製「Microtorac SDC」)を使用して、造孔剤を水性分散媒に投入し、26mL/secの流速中、40Wの超音波を360秒間照射した後、レーザー回折散乱式粒度分布測定装置(マイクロトラック・ベル社製「マイクロトラックMT3300EXII」)を使用して行う。測定は、粒子屈折率を1.5、粒子形状を真球形、溶媒屈折率を1.3、セットゼロを30秒、測定時間を30秒の条件で、2回行い、得られた測定値の平均値をD50とする。水性分散媒としては純水を使用する。
【0132】
無機酸化物粒子の粒径は、適宜調整することができるが、無機酸化物粒子のD90は、剥離抑制や圧損上昇抑制、PM捕集性能の向上等の観点から、好ましくは10μm以上40μm以下、さらに好ましくは15μm以上35μm以下、さらに一層好ましくは20μm以上30μm以下である。D90は、レーザー回折散乱式粒度分布測定法によって測定される体積基準の粒度分布において、累積体積が90%となる粒径である。D90の測定は、レーザー回折散乱式粒度分布測定装置自動試料供給機(マイクロトラック・ベル社製「Microtorac SDC」)を使用して、無機酸化物粒子を水性分散媒に投入し、26mL/secの流速中、40Wの超音波を360秒間照射した後、レーザー回折散乱式粒度分布測定装置(マイクロトラック・ベル社製「マイクロトラックMT3300EXII」)を使用して行う。測定は、粒子屈折率を1.5、粒子形状を真球形、溶媒屈折率を1.3、セットゼロを30秒、測定時間を30秒の条件で、2回行い、得られた測定値の平均値をD90とする。水性分散媒としては純水を使用する。
【0133】
第1触媒層30の前駆層及び第2触媒層40の前駆層の形成後、焼成する。これにより、第1触媒層30及び第2触媒層40が形成される。焼成温度は、通常350℃以上550℃以下である。焼成時間は、通常2時間以上5時間以下である。焼成時の雰囲気は、通常、大気雰囲気である。
【実施例】
【0134】
以下、実施例に基づいて、本発明を具体的に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0135】
<実施例1>
(1)第1スラリーの調製
CeO2-ZrO2固溶体粉末及びアルミナ粉末を準備した。CeO2-ZrO2固溶体粉末として、CeO2を15質量%、ZrO2を70質量%、Ce以外の希土類元素の酸化物を15質量%含有するCeO2-ZrO2固溶体粉末を使用した。
【0136】
CeO2-ZrO2固溶体粉末及びアルミナ粉末を混合し、混合粉末を調製した。混合粉末におけるCeO2-ZrO2固溶体粉末及びアルミナ粉末の質量比(CeO2-ZrO2固溶体粉末の質量:アルミナ粉末の質量)は、84:8に調整した。混合粉末のD90は25μmであった。
【0137】
混合粉末を硝酸ロジウム水溶液中に添加し、混合液を得た。得られた混合液と、造孔剤(メジアン径D50が20μmである架橋ポリ(メタ)アクリル酸メチル粒子)と、アルミナゾルと、ジルコニアゾルと、溶媒として水と、を混合して、第1スラリーを調製した。
【0138】
第1スラリー中に含まれる水分(硝酸ロジウム水溶液に含まれる水分、溶媒としての水分、アルミナゾルとジルコニアゾルに含まれる水分等)の量は、第1スラリーの質量を基準(100質量%)として、78質量%になるように調整した。
【0139】
第1スラリー中に含まれる造孔剤、アルミナゾル、ジルコニアゾル及びロジウムの量は、第1スラリーの乾燥及び焼成によって形成される触媒層の質量を基準(100質量%)として、造孔剤が10質量%、アルミナゾルの固形分が3質量%、ジルコニアゾルの固形分が5質量%、ロジウムが金属換算で0.3質量%となるように、調整した。
【0140】
なお、第1スラリーの乾燥及び焼成によって形成される触媒層の質量は、第1スラリーの質量から、第1スラリーの乾燥及び焼成によって消失する成分(例えば、溶媒、造孔剤等)の質量を差し引くことにより求められる。
【0141】
(2)第2スラリーの調製
CeO2-ZrO2固溶体粉末及びアルミナ粉末を準備した。CeO2-ZrO2固溶体粉末として、CeO2を40質量%、ZrO2を50質量%、Ce以外の希土類元素の酸化物を10質量%含有するCeO2-ZrO2固溶体粉末を使用した。
【0142】
CeO2-ZrO2固溶体粉末及びアルミナ粉末を混合し、混合粉末を調製した。混合粉末におけるCeO2-ZrO2固溶体粉末及びアルミナ粉末の質量比(CeO2-ZrO2固溶体粉末の質量:アルミナ粉末の質量)は、60:22に調整した。混合粉末のD90は30μmであった。
【0143】
混合粉末を硝酸パラジウム水溶液中に添加し、混合液を得た。得られた混合液と、造孔剤(メジアン径D50が20μmである架橋ポリ(メタ)アクリル酸メチル粒子)と、水酸化バリウムと、アルミナゾルと、ジルコニアゾルと、溶媒として水と、を混合して、第2スラリーを調製した。
【0144】
第2スラリー中に含まれる水分(硝酸パラジウム水溶液に含まれる水分、溶媒としての水分、アルミナゾルとジルコニアゾルに含まれる水分等)の量は、第2スラリーの質量を基準(100質量%)として、85質量%になるように調整した。
【0145】
第2スラリー中に含まれる造孔剤、水酸化バリウム、アルミナゾル、ジルコニアゾル及びパラジウムの量は、第2スラリーの乾燥及び焼成によって形成される触媒層の質量を基準(100質量%)として、造孔剤が25質量%、水酸化バリウムが炭酸バリウム換算で8.6質量%、アルミナゾルの固形分が3質量%、ジルコニアゾルの固形分が3質量%、パラジウムが金属換算で3.8質量%となるように、調整した。
【0146】
なお、第2スラリーの乾燥及び焼成によって形成される触媒層の質量は、第2スラリーの質量から、第2スラリーの乾燥及び焼成によって消失する成分(例えば、溶媒、造孔剤等)の質量を差し引くことにより求められる。
【0147】
(3)排ガス浄化用触媒の製造
図1に示す構造を有する基材、すなわち、基材の軸方向に延びる流入側セルと、基材の軸方向に延びる流出側セルと、流入側セルと流出側セルとを仕切る多孔質の隔壁部とを備える基材を準備した。隔壁部の厚みは254μmであり、基材の軸方向に対して垂直な断面における流入側セル及び流出側セルの合計数は、1平方インチあたり300セルであり、基材の体積は1.4Lである。基材の流入側端面における流入側セルの開口部の面積と、基材の流出側端面における流出側セルの開口部の面積とは概ね同じである。
【0148】
基材の排ガス流入側の端部を、第1スラリー中に浸漬し、反対側から第1スラリーを吸引した後、70℃で10分乾燥させた。こうして、基材の隔壁部の流入側セル側に、第1スラリーの固形分からなる前駆層(焼成前の第1触媒層)を形成した。形成された層は、基材の排ガス流入側の端部から排ガス流通方向に沿って延在する。
【0149】
乾燥後、基材の排ガス流出側の端部を、第2スラリー中に浸漬し、反対側から第2スラリーを吸引した後、70℃で10分乾燥させた。こうして、基材の隔壁部の流出側セル側に、第2スラリーの固形分からなる前駆層を形成した。形成された層は、基材の排ガス流出側の端部から排ガス流通方向とは反対の方向に沿って延在する。乾燥後、基材の排ガス流出側の端部を、第1スラリー中に浸漬し、反対側から第1スラリーを吸引した後、70℃で10分乾燥させた。こうして、基材の隔壁部の流出側セル側に、第2スラリーの固形分からなる下層と、第1スラリーの固形分からなる上層とを有する層(焼成前の第2触媒層)を形成した。形成された層は、基材の排ガス流出側の端部から排ガス流通方向とは反対の方向に沿って延在する。
【0150】
その後、基材を、450℃で1時間、焼成し、基材上に第1触媒層及び第2触媒層を形成した。こうして、実施例1の排ガス浄化用触媒を得た。第1触媒層は、単層構造を有し、第2触媒層は、二層構造を有する。
【0151】
基材の排ガス流入側の端部を、第1スラリー中に浸漬する際、第1触媒層の長さL1の基材の長さLに対する百分率の目標値が45%となり、基材のうち第1触媒層が設けられている部分の単位体積当たりの第1触媒層の質量WC1の目標値が55.6g/Lとなるように、浸漬条件を調整した。
【0152】
第1触媒層の長さL1の基材の長さLに対する百分率の実測値は、43.3%であった。
【0153】
下記式に基づいて算出したWC1の実測値は、57.2g/Lであった。
WC1の実測値=((第1触媒層の形成後の基材の質量)-(第1触媒層の形成前の基材の質量))/((基材の体積)×(第1触媒層の長さL1の基材の長さLに対する百分率の実測値))
なお、基材に形成された第1触媒層の数は、基材が有する流入側セルの数と等しい。
【0154】
基材の排ガス流出側の端部を、第2スラリー及び第1スラリーに浸漬する際、第2触媒層の長さL2の基材の長さLに対する百分率の目標値が70%となり、基材のうち第2触媒層が設けられている部分の単位体積当たりの第2触媒層の質量WC2の目標値が50.0g/Lとなるように、浸漬条件を調整した。
【0155】
第2触媒層の長さL2の基材の長さLに対する百分率の実測値は、72.4%であった。
【0156】
下記式に基づいて算出したWC2の実測値は、48.0g/Lであった。
WC2の実測値=((第2触媒層の形成後の基材の質量)-(第2触媒層の形成前の基材の質量))/((基材の体積)×(第2触媒層の長さL2の基材の長さLに対する百分率の実測値))
なお、基材に形成された第2触媒層の数は、基材が有する流出側セルの数と等しい。
【0157】
実施例1の排ガス浄化用触媒を基材の軸方向と垂直な平面で切断し、走査型電子顕微鏡(SEM)を使用して切断面に存在する第1触媒層及び第2触媒層の観察を行い、第1触媒層及び第2触媒層の形態を特定した。第1触媒層の観察では、排ガス浄化用触媒を、基材の排ガス流入側の端部から基材の軸方向に10mm離れた箇所で切断し、第2触媒層の観察では、排ガス浄化用触媒を、基材の排ガス流出側の端部から基材の軸方向に10mm離れた箇所で切断した。
【0158】
SEMによる切断面の観察において、視野倍率は300倍とし、視野全幅(基材の軸方向と垂直な方向の長さ)は500~600μmとした。SEMによって観察する領域は、セルの角部が含まれないように設定した。
【0159】
SEM観察像を
図7及び
図8に示す。
図7に示すように、基材の隔壁部が存在する領域及び第1触媒層が存在する領域は、第1触媒層と基材の隔壁部との間の形態の相違に基づいて特定することができた。
図8に示すように、基材の隔壁部が存在する領域及び第2触媒層が存在する領域も同様に、第2触媒層と基材の隔壁部との間の形態の相違に基づいて特定することができた。
【0160】
第1触媒層は、隔壁部の流入側セル側の表面上に、隔壁部の排ガス流入側の端部から排ガス流通方向に沿って形成されている部分を有していた。なお、隔壁部の流入側セル側の表面は、隔壁部の外形を構成する流入側セル側の外表面である。隔壁部の流入側セル側の表面上に形成されている部分は、隔壁部の流入側セル側の外表面から流入側セル側に隆起している部分であり、以下「第1触媒層の隆起部分」という場合がある。
【0161】
第2触媒層は、隔壁部の流出側セル側の表面上に、隔壁部の排ガス流出側の端部から排ガス流通方向とは反対の方向に沿って形成されている部分を有していた。なお、隔壁部の流出側セル側の表面は、隔壁部の外形を構成する流出側セル側の外表面である。隔壁部の流出側セル側の表面上に形成されている部分は、隔壁部の流出側セル側の外表面から流出側セル側に隆起している部分であり、以下「第2触媒層の隆起部分」という場合がある。
【0162】
図7に示すように、SEM観察像において、左端側から順に、基材の軸方向に垂直な第1~第38のグリッド線を15μm間隔で描き、基材の隔壁部が存在する領域の輪郭線と各グリッド線との交点同士を直線で結び、基材の隔壁部の表面の位置を特定した。同様に、第1触媒層が存在する領域の輪郭線と各グリッド線との交点同士を直線で結び、第1触媒層の表面の位置を特定した。ある交点P1から該交点P1に隣接する交点P2への厚み方向の変化量がグリッド線の間隔(15μm)を超える場合、交点P2を表面の位置の特定に使用しなかった(すなわち、直線で結ぶ交点から、交点P2を除いた)。また、交点P1から交点P1に隣接する交点P2への厚み方向の変化量がグリッド線の間隔(15μm)を超えるとともに、交点P1から、交点P2に隣接する交点P3への厚み方向の変化量もグリッド線の間隔(15μm)を超える場合、交点P2に加えて交点P3も表面の位置の特定に使用しなかった(すなわち、直線で結ぶ交点から、交点P2及び交点P3を除いた)。このように直線で結ぶ交点から連続して5つの交点を除く場合、当該SEM画像は、厚みの測定に使用しなかった。
【0163】
基材の隔壁部の表面の位置及び第1触媒層の表面の位置を特定した後、画像解析ソフトウェアを使用して、第2のグリッド線と、第37のグリッド線と、基材の隔壁部の表面と、第1触媒層の表面とで囲まれた領域の面積を求めた。画像解析ソフトウェアとしては、AreaQ(エステック株式会社製)を使用した。なお、画像の両端部は不鮮明になり易く、隔壁部の表面の位置及び第1触媒層の表面の位置を特定し難いため、第1のグリッド線及び第38のグリッド線は使用しなかった。
【0164】
上記領域の面積を求めた後、下記式に基づいて、上記領域の厚みを算出した。
上記領域の厚み=上記領域の面積/(グリッド線の間隔×グリッド線の間隔の数)
なお、グリッド線の間隔は15μmであり、グリッド線の間隔の数は35である。
【0165】
切断面から任意に選択された20個の第1触媒層に関して、上記領域の厚みを算出し、得られた算出値の平均値を求めたところ、30.2μmであった。この平均値を、第1触媒層の隆起部分の厚みT1とした。第2触媒層の隆起部分の厚みT2も同様に算出したところ、46.6μmであった。
【0166】
実施例1の排ガス浄化用触媒の特徴を表1に示す。
【0167】
(4)排ガス浄化性能の評価
実施例1の排ガス浄化用触媒について、10~20万キロ走行を想定した劣化処理として、以下の耐久条件を課した。
<耐久条件>
・耐久用エンジン:乗用NA 2L ガソリンエンジン
・使用ガソリン:市販レギュラーガソリン
・処理温度:900℃
・処理時間:100時間
【0168】
実施例1の排ガス浄化用触媒をエンジンの排気経路に配置し、上記条件にて耐久試験を行った。耐久試験後の排ガス浄化用触媒を車両(1.5L直噴ターボエンジン搭載乗用車)に設置し、該車両を、国際調和排ガス試験モード(WLTC)の運転条件に従って運転した。運転開始から589秒までの低温運転時、運転開始589秒から1022秒までの中速運転時、運転開始1022秒から1477秒までの高速運転時、運転開始1477秒から1800秒までの超高速運転時において、排ガス浄化用触媒を通過した排ガス中の窒素酸化物(NOx)の排出量を測定し、単位走行距離当たりの排出量(mg/km)を求めた。ガソリンとして、認証試験用燃料を使用し、排ガス測定装置として、堀場製作所社製の排ガス測定装置を使用した。結果を表2に示す。表2には、単位走行距離当たりのWLTC排出量(Total排出量)及び単位走行距離当たりの超高速運転時の排出量が示される。
【0169】
<実施例2>
第1スラリー及び第2スラリーにおける造孔剤(架橋ポリ(メタ)アクリル酸メチル粒子)のメジアン径D50を5μmに変更した点を除き、実施例1と同様にして、排ガス浄化用触媒を製造した。
【0170】
第1触媒層の長さL1の基材の長さLに対する百分率の実測値は44.1%であり、第2触媒層の長さL2の基材の長さLに対する百分率の実測値は68.2%であった。
【0171】
WC1の実測値は56.4g/Lであり、WC2の実測値は50.0g/Lであった。
【0172】
第1触媒層の隆起部分の厚みT1は25.3μmであり、第2触媒層の隆起部分の厚みT2は40.9μmであった。
【0173】
実施例2の排ガス浄化用触媒の特徴を表1に示し、実施例1と同様にして評価した実施例2の排ガス浄化用触媒の排ガス浄化性能を表2に示す。
【0174】
<実施例3>
第1触媒層の長さL1の基材の長さLに対する百分率の目標値を40%に変更した点、WC1の目標値を78.0g/Lに変更した点、及び、WC2の目標値を70g/Lに変更した点を除き、実施例1と同様にして、排ガス浄化用触媒を製造した。
【0175】
第1触媒層の長さL1の基材の長さLに対する百分率の実測値は40.9%であり、第2触媒層の長さL2の基材の長さLに対する百分率の実測値は71.2%であった。
【0176】
WC1の実測値は77.4g/Lであり、WC2の実測値は69.4g/Lであった。
【0177】
第1触媒層の隆起部分の厚みT1は38.2μmであり、第2触媒層の隆起部分の厚みT2は75.6μmであった。
【0178】
実施例3の排ガス浄化用触媒の特徴を表1に示し、実施例1と同様にして評価した実施例3の排ガス浄化用触媒の排ガス浄化性能を表2に示す。
【0179】
<実施例4>
第1触媒層の長さL1の基材の長さLに対する百分率の目標値を35%に変更した点、及び、WC1の目標値を71.4g/Lに変更した点を除き、実施例1と同様にして、排ガス浄化用触媒を製造した。
【0180】
第1触媒層の長さL1の基材の長さLに対する百分率の実測値は32.0%であり、第2触媒層の長さL2の基材の長さLに対する百分率の実測値は72.0%であった。
【0181】
WC1の実測値は78.1g/Lであり、WC2の実測値は48.6g/Lであった。
【0182】
第1触媒層の隆起部分の厚みT1は40.2μmであり、第2触媒層の隆起部分の厚みT2は47.4μmであった。
【0183】
実施例4の排ガス浄化用触媒の特徴を表1に示し、実施例1と同様にして評価した実施例4の排ガス浄化用触媒の排ガス浄化性能を表2に示す。
【0184】
<実施例5>
第2触媒層の長さL2の基材の長さLに対する百分率の目標値を80%に変更した点を除き、実施例1と同様にして、排ガス浄化用触媒を製造した。
【0185】
第1触媒層の長さL1の基材の長さLに対する百分率の実測値は42.5%であり、第2触媒層の長さL2の基材の長さLに対する百分率の実測値は82.0%であった。
【0186】
WC1の実測値は59.9g/Lであり、WC2の実測値は44.3g/Lであった。
【0187】
第1触媒層の隆起部分の厚みT1は31.6μmであり、第2触媒層の隆起部分の厚みT2は39.0μmであった。
【0188】
実施例5の排ガス浄化用触媒の特徴を表1に示し、実施例1と同様にして評価した実施例5の排ガス浄化用触媒の排ガス浄化性能を表2に示す。
【0189】
<実施例6>
WC1の目標値を20%減少させた点、及び、WC2の目標値を20%減少させた点を除き、実施例1と同様にして、排ガス浄化用触媒を製造した。
【0190】
第1触媒層の長さL1の基材の長さLに対する百分率の実測値は44.1%であり、第2触媒層の長さL2の基材の長さLに対する百分率の実測値は69.3%であった。
【0191】
WC1の実測値は45.4g/Lであり、WC2の実測値は40.4g/Lであった。
【0192】
第1触媒層の隆起部分の厚みT1は24.9μmであり、第2触媒層の隆起部分の厚みT2は37.2μmであった。
【0193】
実施例6の排ガス浄化用触媒の特徴を表1に示し、実施例1と同様にして評価した実施例6の排ガス浄化用触媒の排ガス浄化性能を表2に示す。
【0194】
<実施例7>
第1スラリーにおける混合粉末(CeO2-ZrO2固溶体粉末及びアルミナ粉末の混合物)のD90を15μmに変更した点を除き、実施例1と同様にして、排ガス浄化用触媒を製造した。
【0195】
第1触媒層の長さL1の基材の長さLに対する百分率の実測値は45.7%であり、第2触媒層の長さL2の基材の長さLに対する百分率の実測値は72.4%であった。
【0196】
WC1の実測値は54.5g/Lであり、WC2の実測値は49.7g/Lであった。
【0197】
第1触媒層の隆起部分の厚みT1は12.9μmであり、第2触媒層の隆起部分の厚みT2は43.0μmであった。
【0198】
実施例7の排ガス浄化用触媒の特徴を表1に示し、実施例1と同様にして評価した実施例7の排ガス浄化用触媒の排ガス浄化性能を表2に示す。
【0199】
<実施例8>
WC1の目標値を60%増加させた点、及び、WC2の目標値を43%減少させた点を除き、実施例1と同様にして、排ガス浄化用触媒を製造した。
【0200】
第1触媒層の長さL1の基材の長さLに対する百分率の実測値は46.5%であり、第2触媒層の長さL2の基材の長さLに対する百分率の実測値は72.4%であった。
【0201】
WC1の実測値は86.9g/Lであり、WC2の実測値は28.6g/Lであった。
【0202】
第1触媒層の隆起部分の厚みT1は22.2μmであり、第2触媒層の隆起部分の厚みT2は24.5μmであった。
【0203】
実施例8の排ガス浄化用触媒の特徴を表1に示し、実施例1と同様にして評価した実施例8の排ガス浄化用触媒の排ガス浄化性能を表2に示す。
【0204】
<比較例1>
第1触媒層を第2触媒層と同様の二層構造とし、第2触媒層を第1触媒層と同様の単層構造とした点を除き、実施例1と同様にして、排ガス浄化用触媒を製造した。
【0205】
第1触媒層の長さL1の基材の長さLに対する百分率の実測値は42.5%であり、第2触媒層の長さL2の基材の長さLに対する百分率の実測値は69.3%であった。
【0206】
WC1の実測値は57.3g/Lであり、WC2の実測値は49.6g/Lであった。
【0207】
第1触媒層の隆起部分の厚みT1は52.8μmであり、第2触媒層の隆起部分の厚みT2は25.7μmであった。
【0208】
比較例1の排ガス浄化用触媒の特徴を表1に示し、実施例1と同様にして評価した比較例1の排ガス浄化用触媒の排ガス浄化性能を表2に示す。
【0209】
<比較例2>
第1スラリー及び第2スラリーのいずれにも造孔剤を添加しなかった点、第2スラリーを使用して単層構造を有する第1触媒層を形成した点、第1スラリーを使用して単層構造を有する第2触媒層を形成した点、第1触媒層の長さL1の基材の長さLに対する百分率の目標値を40%に変更した点、WC1の目標値を62.5g/Lに変更した点、並びに、WC2の目標値を64.3g/Lに変更した点を除き、実施例1と同様にして、排ガス浄化用触媒を製造した。
【0210】
第1触媒層の長さL1の基材の長さLに対する百分率の実測値は42.2%であり、第2触媒層の長さL2の基材の長さLに対する百分率の実測値は66.0%であった。
【0211】
WC1の実測値は66.7g/Lであり、WC2の実測値は68.2g/Lであった。
【0212】
第1触媒層の隆起部分の厚みT1は55.2μmであり、第2触媒層の隆起部分T2の厚みは30.2μmであった。
【0213】
比較例2の排ガス浄化用触媒の特徴を表1に示し、実施例1と同様にして評価した比較例2の排ガス浄化用触媒の排ガス浄化性能を表2に示す。
【0214】
<比較例3>
第1スラリー及び第2スラリーのいずれにも造孔剤を添加しなかった点を除き、実施例1と同様にして、排ガス浄化用触媒を製造した。
【0215】
第1触媒層の長さL1の基材の長さLに対する百分率の実測値は43.3%であり、第2触媒層の長さL2の基材の長さLに対する百分率の実測値は71.3%であった。
【0216】
WC1の実測値は58.0g/Lであり、WC2の実測値は49.5g/Lであった。
【0217】
第1触媒層の隆起部分T1は39.8μmであり、第2触媒層の隆起部分の厚みT2は39.8μmであった。
【0218】
比較例3の排ガス浄化用触媒の特徴を表1に示し、実施例1と同様にして評価した比較例3の排ガス浄化用触媒の排ガス浄化性能を表2に示す。
【0219】
<比較例4>
第1触媒層を第2触媒層と同様の二層構造とし、第2触媒層を第1触媒層と同様の単層構造とした点、第1触媒層の長さL1の基材の長さLに対する百分率の目標値を70%に変更した点、WC1の目標値を64.3g/Lに変更した点、第1触媒層の長さL2の基材の長さLに対する百分率の目標値を40%に変更した点、並びに、WC2の目標値を62.5g/Lに変更した点を除き、実施例1と同様にして、排ガス浄化用触媒を製造した。
【0220】
第1触媒層の長さL1の基材の長さLに対する百分率の実測値は71.2%であり、第2触媒層の長さL2の基材の長さLに対する百分率の実測値は41.1%であった。
【0221】
WC1の実測値は65.2g/Lであり、WC2の実測値は61.3g/Lであった。
【0222】
第1触媒層の隆起部分の厚みT1は48.0μmであり、第2触媒層の隆起部分の厚みT2は35.0μmであった。
【0223】
比較例4の排ガス浄化用触媒の特徴を表1に示し、実施例1と同様にして評価した比較例4の排ガス浄化用触媒の排ガス浄化性能を表2に示す。
【0224】
<比較例5>
第1スラリーの平均粒径を小さくし(D90≦0.5μm)、第1触媒層を基材の隔壁内部のみに形成した点を除き、実施例1と同様にして、排ガス浄化用触媒を製造した。なお、D90は、レーザー回折散乱式粒度分布測定法によって測定される体積基準の粒度分布において、累積体積が90%となる粒径である。
【0225】
第1触媒層の長さL1の基材の長さLに対する百分率の実測値は44.5%であり、第2触媒層の長さL2の基材の長さLに対する百分率の実測値は70.5%であった。
【0226】
WC1の実測値は56.2g/Lであり、WC2の実測値は49.6g/Lであった。
【0227】
第1触媒層は、隔壁部の流入側セル側の表面上に、隔壁部の排ガス流入側の端部から排ガス流通方向に沿って形成されている部分を有していなかった(T1=0)。第2触媒層の隆起部分の厚みT2は45.2μmであった。
【0228】
比較例5の排ガス浄化用触媒の特徴を表1に示し、実施例1と同様にして評価した比較例5の排ガス浄化用触媒の排ガス浄化性能を表2に示す。
【0229】
<比較例6>
第1スラリー及び第2スラリーの平均粒径を小さくし(D90≦0.5μm)、第1触媒層及び第2触媒層をともに基材の隔壁内部のみに形成した点を除き、実施例1と同様にして、排ガス浄化用触媒を製造した。
【0230】
第1触媒層の長さL1の基材の長さLに対する百分率の実測値は46.1%であり、第2触媒層の長さL2の基材の長さLに対する百分率の実測値は72.1%であった。
【0231】
WC1の実測値は54.2g/Lであり、WC2の実測値は48.5g/Lであった。
【0232】
第1触媒層は、隔壁部の流入側セル側の表面上に、隔壁部の排ガス流入側の端部から排ガス流通方向に沿って形成されている部分を有していなかった(T1=0)。第2触媒層は、隔壁部の流出側セル側の表面上に、隔壁部の排ガス流出側の端部から排ガス流通方向とは反対の方向に沿って形成されている部分を有していなかった(T2=0)。
【0233】
比較例6の排ガス浄化用触媒の特徴を表1に示し、実施例1と同様にして評価した比較例6の排ガス浄化用触媒の排ガス浄化性能を表2に示す。
【0234】
【0235】
【0236】
表1及び表2に示すように、上記式(1)~(3)の全てを満たす実施例1~8は、上記式(1)~(3)のいずれか1以上を満たさない比較例1~6よりも、NOx排出量(特に、超高速運転時のNOx排出量)が有意に低減していた。このことから、上記式(1)~(3)の全てを満たすことにより、向上した排ガス浄化性能(特に、超高速運転時の排ガス浄化性能)が発揮されていることが確認された。
【符号の説明】
【0237】
10 排ガス浄化用触媒
20 基材
21 筒状部
22 隔壁部
24 第1封止部
25 第2封止部
C1 流入側セル
C2 流出側セル
30 第1触媒層
40 第2触媒層