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  • 特許-電磁波シールドフィルム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-18
(45)【発行日】2022-03-01
(54)【発明の名称】電磁波シールドフィルム
(51)【国際特許分類】
   H05K 9/00 20060101AFI20220221BHJP
   H05K 1/03 20060101ALI20220221BHJP
   B32B 15/08 20060101ALI20220221BHJP
   B32B 7/025 20190101ALI20220221BHJP
   C09J 7/29 20180101ALI20220221BHJP
   C09J 7/28 20180101ALI20220221BHJP
   C09J 9/02 20060101ALI20220221BHJP
   C09J 11/04 20060101ALI20220221BHJP
   C09J 201/00 20060101ALI20220221BHJP
【FI】
H05K9/00 V
H05K1/03 650
B32B15/08 J
B32B7/025
C09J7/29
C09J7/28
C09J9/02
C09J11/04
C09J201/00
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021532328
(86)(22)【出願日】2021-02-26
(86)【国際出願番号】 JP2021007245
(87)【国際公開番号】W WO2021172486
(87)【国際公開日】2021-09-02
【審査請求日】2021-06-22
(31)【優先権主張番号】P 2020030262
(32)【優先日】2020-02-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000108742
【氏名又は名称】タツタ電線株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002239
【氏名又は名称】特許業務法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】梅村 滋和
(72)【発明者】
【氏名】磯部 修
【審査官】五貫 昭一
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-35773(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 9/00
H05K 1/03
B32B 15/08
B32B 7/025
C09J 7/29
C09J 7/28
C09J 9/02
C09J 11/04
C09J 201/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1絶縁層、銀ナノワイヤ層、第2絶縁層、及び導電性接着剤層がこの順に積層されており、
前記第2絶縁層の厚さは50~500nmであり、
前記導電性接着剤層は、バインダー成分と、球状又は樹枝状の導電性粒子とを含み、
前記導電性粒子の含有割合は、前記導電性接着剤層100質量%に対し1~80質量%であり、
JIS K 7361-1に準拠した測定方法における全光線透過率が10%以上である、電磁波シールドフィルム。
【請求項2】
前記第2絶縁層と前記導電性接着剤層とは直接積層している請求項1に記載の電磁波シールドフィルム。
【請求項3】
前記第2絶縁層は、一方の面で前記導電性接着剤層と、他方の面で前記銀ナノワイヤ層とそれぞれ直接積層している請求項1に記載の電磁波シールドフィルム。
【請求項4】
前記導電性粒子の含有割合は、前記導電性接着剤層100質量%に対し30~80質量%である、請求項1~3のいずれか1項に記載の電磁波シールドフィルム。
【請求項5】
請求項1~のいずれか1項に記載の電磁波シールドフィルムを備えたシールドプリント配線板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁波シールドフィルムに関する。より詳細には、本発明は、プリント配線板に使用される電磁波シールドフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
プリント配線板は、携帯電話、ビデオカメラ、ノートパソコンなどの電子機器において、機構の中に回路を組み込むために多用されている。また、プリンタヘッドのような可動部と制御部との接続にも利用されている。これらの電子機器では、電磁波シールド対策が必須となっており、装置内で使用されるプリント配線板においても、電磁波シールド対策を施したシールドプリント配線板が用いられている。
【0003】
シールドプリント配線板には、電磁波シールド対策を目的として、電磁波シールドフィルム(以下、単に「シールドフィルム」と称する場合がある)が使用される。例えば、プリント配線板に接着して使用されるシールドフィルムは、金属層などのシールド層と当該シールド層の表面に設けられた導電性接着シートとを有する。
【0004】
導電性接着シートを有するシールドフィルムとしては、例えば、特許文献1及び2に開示のものが知られている。上記シールドフィルムは、導電性接着シートが露出した表面が、プリント配線板表面、具体的にはプリント配線板の表面に設けられたカバーレイ表面と貼着するように貼り合わせて使用される。これらの導電性接着シートは、通常、高温・高圧条件下で熱圧着してプリント配線板に接着及び積層される。このようにしてプリント配線板上に配置されたシールドフィルムは、プリント配線板の外部からの電磁波を遮蔽する性能(シールド性能)を発揮する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2015-110769号公報
【文献】特開2012-28334号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、シールドフィルムには、プリント配線板に貼り付ける際、位置合わせをしやすいという性能が求められる場合がある。このため、シールドフィルムには、透明性が求められる傾向がある。透明性を向上させる方法として、シールドフィルムにおける導電層として、例えば層厚さが薄い透明導電層を用いることが考えられる。
【0007】
しかしながら、従来のシールドフィルムにおいては、導電性接着剤層中の導電性粒子の配合量が増加するほど導電性が向上するのに対し、透明導電層を用いたシールドフィルムにおいては、導電性接着剤層中に導電性粒子を多量配合した場合、電気的接続抵抗値が上昇し、導電性が低下するという問題があった。
【0008】
本発明は上記に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、導電性接着剤層に導電性粒子を多量に配合した場合であっても、透明性に優れ、且つ電気的接続抵抗値が低い電磁波シールドフィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討した結果、特定の層構成を有する電磁波シールドフィルムは、導電性接着剤層に導電性粒子を多量に配合した場合であっても、透明性に優れ、且つ電気的接続抵抗値が低いことを見出した。本発明はこれらの知見に基づいて完成させたものである。
【0010】
すなわち、本発明は、第1絶縁層、銀ナノワイヤ層、第2絶縁層、及び導電性接着剤層がこの順に積層されており、
上記第2絶縁層の厚さは50~500nmであり、
上記導電性接着剤層は、バインダー成分と、球状又は樹枝状の導電性粒子とを含み、
上記導電性粒子の含有割合は、上記導電性接着剤層100質量%に対し1~80質量%である、
電磁波シールドフィルムを提供する。
【0011】
上記第2絶縁層と上記導電性接着剤層とは直接積層していることが好ましい。
【0012】
上記第2絶縁層は、一方の面で上記導電性接着剤層と、他方の面で上記銀ナノワイヤ層とそれぞれ直接積層していることが好ましい。
【0013】
上記導電性粒子の含有割合は、上記導電性接着剤層100質量%に対し30~80質量%であることが好ましい。
【0014】
上記電磁波シールドフィルムは。JIS K 7361-1に準拠した測定方法における全光線透過率が10%以上であることが好ましい。
【0015】
また、本発明は、上記電磁波シールドフィルムを備えたシールドプリント配線板を提供する。
【発明の効果】
【0016】
本発明の電磁波シールドフィルムは、導電性接着剤層に導電性粒子を少量配合した場合及び多量配合した場合のいずれにおいても、透明性に優れ、且つ電気的接続抵抗値が低い。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の電磁波シールドフィルムの一実施形態を示す断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
[シールドフィルム]
本発明のシールドフィルムは、第1絶縁層、銀ナノワイヤ層、第2絶縁層、及び導電性接着剤層がこの順に積層された層構成を有する。
【0019】
本発明のシールドフィルムの一実施形態について、以下に説明する。図1は、本発明のシールドフィルムの一実施形態を示す断面模式図である。図1に示す本発明のシールドフィルム1は、第1絶縁層11と、銀ナノワイヤ層12と、第2絶縁層13と、導電性接着剤層14とをこの順に有する。
【0020】
(第1絶縁層)
第1絶縁層は、本発明のシールドフィルムにおいて、銀ナノワイヤ層の保護及び銀ナノワイヤの支持体として機能する透明基材である。第1絶縁層としては、例えば、プラスチック基材(特にプラスチックフィルム)、ガラス板などが挙げられる。第1絶縁層は、単層であってもよいし、同種又は異種の積層体であってもよい。
【0021】
上記プラスチック基材を構成する樹脂としては、例えば、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、ランダム共重合ポリプロピレン、ブロック共重合ポリプロピレン、ホモポリプロレン、ポリブテン、ポリメチルペンテン、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、アイオノマー、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸エステル(ランダム、交互)共重合体、エチレン-ブテン共重合体、エチレン-ヘキセン共重合体等のポリオレフィン樹脂;ポリウレタン;ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等のポリエステル;ポリカーボネート(PC);ポリイミド(PI);ポリエーテルエーテルケトン(PEEK);ポリエーテルイミド;アラミド、全芳香族ポリアミド等のポリアミド;ポリフェニルスルフィド;ポリスルホン(PS);ポリエーテルスルホン(PES);ポリメチルメタクリレート(PMMA)等のアクリル樹脂;アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS);フッ素樹脂;ポリ塩化ビニル;ポリ塩化ビニリデン;トリアセチルセルロース(TAC)等のセルロース樹脂;シリコーン樹脂などが挙げられる。上記樹脂は、一種のみを使用してもよいし、二種以上を使用してもよい。上記樹脂としては、透明性により優れる観点から、中でも、ポリエステル、セルロース樹脂が好ましく、より好ましくはポリエチレンテレフタレート、トリアセチルセルロースである。
【0022】
第1絶縁層の表面(特に、銀ナノワイヤ層側表面)は、銀ナノワイヤ層などの隣接層との密着性、保持性等を高める目的で、例えば、コロナ放電処理、プラズマ処理、サンドマット加工処理、オゾン暴露処理、火炎暴露処理、高圧電撃暴露処理、イオン化放射線処理等の物理的処理;クロム酸処理等の化学的処理;コーティング剤(下塗り剤)による易接着処理等の表面処理が施されていてもよい。密着性を高めるための表面処理は、第1絶縁層における銀ナノワイヤ層側の表面全体に施されていることが好ましい。
【0023】
第1絶縁層の厚さは、特に限定されないが、1~15μmであることが好ましく、より好ましくは3~10μmである。上記厚さが1μm以上であると、より充分にシールドフィルムを支持及び銀ナノワイヤ層を保護することができる。上記厚さが15μm以下であると、透明性及び柔軟性に優れ、また経済的にも有利である。なお、第1絶縁層が複層構成である場合、上記第1絶縁層の厚さは、全ての層厚さの合計である。
【0024】
(銀ナノワイヤ層)
上記銀ナノワイヤ層は、本発明のシールドフィルムにおいてシールド層として機能する要素である。上記銀ナノワイヤ層は、単層であってもよいし、同種又は異種の積層体であってもよい。
【0025】
上記銀ナノワイヤ層の厚さは、20~500nmが好ましく、より好ましくは50~150nmである。上記厚さが20nm以上であると、シールド性能を高く維持することができる。上記厚さが500nm以下であると、シールドフィルムの透明性に優れる。なお、銀ナノワイヤ層が複層構成である場合、上記銀ナノワイヤ層の厚さは、全ての層厚さの合計である。
【0026】
(第2絶縁層)
第2絶縁層は、銀ナノワイヤ層を保護する透明層である。第2絶縁層が銀ナノワイヤ層と導電性接着剤層との間に介在することにより、透明性及び接続安定性の低下を抑制することができる。上記透明性及び接続安定性の低下は、導電性接着剤層中の導電性粒子との摩擦により銀ナノワイヤ層が損傷することに起因するものと推測される。第2絶縁層は、単層、複層のいずれであってもよい。
【0027】
第2絶縁層は、バインダー成分を含むことが好ましい。上記バインダー成分としては、熱可塑性樹脂、熱硬化型樹脂、活性エネルギー線硬化型化合物などが挙げられる。上記熱可塑性樹脂、熱硬化型樹脂、及び活性エネルギー線硬化型化合物としては、それぞれ、後述の導電性接着剤層が含み得るバインダー成分として例示されたものが挙げられる。上記バインダー成分は、一種のみを使用してもよいし、二種以上を使用してもよい。
【0028】
第2絶縁層中の上記バインダー成分の含有量は、特に限定されないが、第2絶縁層100質量%に対して、70質量%以上が好ましく、より好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上である。上記含有量が70質量%以上であると、柔軟性により優れ、小径のホールへの埋め込み性に優れ、接続安定性により優れる。
【0029】
第2絶縁層は、本発明の効果を損なわない範囲内において、上記バインダー成分以外のその他の成分を含有していてもよい。上記その他の成分としては、例えば、硬化剤、硬化促進剤、可塑剤、難燃剤、消泡剤、粘度調整剤、酸化防止剤、希釈剤、沈降防止剤、充填剤、レベリング剤、カップリング剤、紫外線吸収剤、粘着付与樹脂、ブロッキング防止剤などが挙げられる。上記その他の成分は、一種のみを使用してもよいし、二種以上を使用してもよい。
【0030】
第2絶縁層の厚さは、50~500nmであり、好ましくは100~300nmである。上記厚さが50nm以上であることにより、シールド性能及び接続安定性に優れる。上記厚さが500nm以下であることにより、透明性及び接続安定性に優れる。なお、第2絶縁層が複層構成である場合、上記第2絶縁層の厚さは、全ての層厚さの合計である。
【0031】
第2絶縁層は、上記銀ナノワイヤ層を保護する観点から、上記導電性接着剤層と直接積層していることが好ましく、一方の面で上記導電性接着剤層と、他方の面で上記銀ナノワイヤ層とそれぞれ直接積層していることが特に好ましい。
【0032】
(導電性接着剤層)
上記導電性接着剤層は、例えば本発明のシールドフィルムをプリント配線板に接着するための接着性と、上記銀ナノワイヤ層と電気的接続するための導電性を有する。また、上記銀ナノワイヤ層とともにシールド性能を発揮するシールド層としても機能する。上記導電性接着剤層は、単層、複層のいずれであってもよい。
【0033】
上記導電性接着剤層は、バインダー成分と、球状又は樹枝状(デンドライト状)の導電性粒子とを含有する。
【0034】
上記バインダー成分としては、熱可塑性樹脂、熱硬化型樹脂、活性エネルギー線硬化型化合物などが挙げられる。上記バインダー成分は、一種のみを使用してもよいし、二種以上を使用してもよい。
【0035】
上記熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリスチレン系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂(例えば、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂組成物等)、ポリイミド系樹脂、アクリル系樹脂などが挙げられる。上記熱可塑性樹脂は、一種のみを使用してもよいし、二種以上を使用してもよい。
【0036】
上記熱硬化型樹脂としては、熱硬化性を有する樹脂(熱硬化性樹脂)および上記熱硬化性樹脂を硬化して得られる樹脂の両方が挙げられる。上記熱硬化性樹脂としては、例えば、フェノール系樹脂、エポキシ系樹脂、ウレタン系樹脂、ウレタンウレア系樹脂、メラミン系樹脂、アルキド系樹脂などが挙げられる。上記熱硬化型樹脂は、一種のみを使用してもよいし、二種以上を使用してもよい。
【0037】
上記エポキシ系樹脂としては、例えば、ビスフェノール型エポキシ系樹脂、スピロ環型エポキシ系樹脂、ナフタレン型エポキシ系樹脂、ビフェニル型エポキシ系樹脂、テルペン型エポキシ系樹脂、グリシジルエーテル型エポキシ系樹脂、グリシジルアミン型エポキシ系樹脂、ノボラック型エポキシ系樹脂などが挙げられる。
【0038】
上記ビスフェノール型エポキシ系樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ系樹脂、ビスフェノールF型エポキシ系樹脂、ビスフェノールS型エポキシ系樹脂、テトラブロムビスフェノールA型エポキシ系樹脂などが挙げられる。上記グリシジルエーテル型エポキシ系樹脂としては、例えば、トリス(グリシジルオキシフェニル)メタン、テトラキス(グリシジルオキシフェニル)エタンなどが挙げられる。上記グリシジルアミン型エポキシ系樹脂としては、例えばテトラグリシジルジアミノジフェニルメタンなどが挙げられる。上記ノボラック型エポキシ系樹脂としては、例えば、クレゾールノボラック型エポキ系シ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ系樹脂、α-ナフトールノボラック型エポキシ系樹脂、臭素化フェノールノボラック型エポキシ系樹脂などが挙げられる。
【0039】
上記活性エネルギー線硬化型化合物は、活性エネルギー線照射により硬化し得る化合物(活性エネルギー線硬化性化合物)および上記活性エネルギー線硬化性化合物を硬化して得られる化合物の両方が挙げられる。活性エネルギー線硬化性化合物としては、特に限定されないが、例えば、分子中に少なくとも2個のラジカル反応性基(例えば、(メタ)アクリロイル基)を有する重合性化合物などが挙げられる。上記活性エネルギー線硬化型化合物は、一種のみを使用してもよいし、二種以上を使用してもよい。
【0040】
上記バインダー成分としては、中でも、熱硬化型樹脂が好ましい。この場合、プリント配線板に接着するために本発明のシールドフィルムをプリント配線板上に配置した後、加圧及び加熱によりバインダー成分を硬化させることができ、プリント配線板との接着性が良好となる。
【0041】
上記バインダー成分が熱硬化型樹脂を含む場合、上記バインダー成分を構成する成分として、熱硬化反応を促進するための硬化剤を含んでいてもよい。上記硬化剤は、上記熱硬化性樹脂の種類に応じて適宜選択することができる。上記硬化剤は、一種のみを使用してもよいし、二種以上を使用してもよい。
【0042】
上記導電性接着剤層におけるバインダー成分の含有割合は、特に限定されないが、導電性接着剤層の総量100質量%に対して、20~99質量%が好ましく、より好ましくは30~80質量%、さらに好ましくは40~70質量%である。上記含有割合が20質量%以上であると、プリント配線板に対する密着性により優れる。上記含有割合が99質量%以下であると、導電性粒子を充分に含有させることができる。
【0043】
上記導電性粒子として、球状導電性粒子及び/又は樹枝状導電性粒子を用いる。上記球状又は樹枝状の導電性粒子を用いることにより、多量に配合した場合であっても、透明性に優れ、且つ接続安定性に優れる。上記導電性粒子としては、中でも、接続安定性により優れる観点から、上記導電性粒子は樹枝状導電性粒子であることが好ましい。また、シールドフィルムの透明性に優れる観点からは、上記導電性粒子は球状導電性粒子であることが好ましい。
【0044】
上記導電性粒子としては、例えば、金属粒子、金属被覆樹脂粒子、カーボンフィラーなどが挙げられる。上記導電性粒子は、一種のみを使用してもよいし、二種以上を使用してもよい。
【0045】
上記金属粒子及び上記金属被覆樹脂粒子の被覆部を構成する金属としては、例えば、金、銀、銅、ニッケル、亜鉛などが挙げられる。上記金属は一種のみを使用してもよいし、二種以上を使用してもよい。
【0046】
上記金属粒子としては、具体的には、例えば、銅粒子、銀粒子、ニッケル粒子、銀被覆銅粒子、金被覆銅粒子、銀被覆ニッケル粒子、金被覆ニッケル粒子、銀被覆合金粒子などが挙げられる。上記銀被覆合金粒子としては、例えば、銅を含む合金粒子(例えば、銅とニッケルと亜鉛との合金からなる銅合金粒子)が銀により被覆された銀被覆銅合金粒子などが挙げられる。上記金属粒子は、電解法、アトマイズ法、還元法などにより作製することができる。
【0047】
上記金属粒子としては、中でも、銀粒子、銀被覆銅粒子、銀被覆銅合金粒子が好ましい。導電性に優れ、金属粒子の酸化及び凝集を抑制し、且つ金属粒子のコストを下げることができる観点から、特に、銀被覆銅粒子、銀被覆銅合金粒子が好ましい。
【0048】
上記導電性粒子のメディアン径(D50)は、特に限定されないが、5~15μmであることが好ましく、より好ましくは5~10μmである。上記メディアン径は、上記導電性接着剤層中の全ての球状導電性粒子及び/又は樹枝状導電性粒子のメディアン径であり、レーザー回折・散乱法により求めた粒度分布における積算値50%での粒径をいうものとする。上記メディアン径が上記範囲内であることにより、導電性粒子を用いた本発明において接続安定性により優れる。上記メディアン径は、例えば、レーザー回折式粒子径分布測定装置(商品名「SALD-2200」、株式会社島津製作所製)により測定することができる。
【0049】
上記導電性接着剤層における上記導電性粒子の含有割合は、導電性接着剤層100質量%に対して、1~80質量%であり、好ましくは20~70質量%、より好ましくは30~60質量%である。本発明のシールドフィルムでは、導電性接着剤層が上記導電性粒子を1質量%程度の少量含む場合から、80質量%もの多量に含む場合であっても、接続抵抗値が低く、接続安定性に優れる。
【0050】
上記導電性接着剤層は、本発明の効果を損なわない範囲内において、上述の各成分以外のその他の成分を含有していてもよい。上記その他の成分としては、公知乃至慣用の接着剤層に含まれる成分が挙げられる。上記その他の成分としては、例えば、硬化促進剤、可塑剤、難燃剤、消泡剤、粘度調整剤、酸化防止剤、希釈剤、沈降防止剤、充填剤、レベリング剤、カップリング剤、紫外線吸収剤、粘着付与樹脂、ブロッキング防止剤などが挙げられる。上記その他の成分は、一種のみを使用してもよいし、二種以上を使用してもよい。なお、球状導電性粒子及び樹枝状導電性粒子以外の導電性粒子の含有量は、球状導電性粒子及び/又は樹枝状導電性粒子100質量部に対して、例えば10質量部未満、好ましくは5質量部未満、より好ましくは1質量部未満である。
【0051】
上記導電性接着剤層の厚さは、特に限定されないが、3~20μmであることが好ましく、より好ましくは5~15μmである。上記厚さが3μm以上であると、シールド性能がより優れる。上記厚さが20μm以下であると、導電性粒子の表面が層表面により近く或いは表面から露出する傾向にあり、接続安定性により優れる。
【0052】
上記導電性接着剤層厚さと導電性粒子のD50の比[接着剤層厚さ/D50]は、特に限定されないが、0.2~1.5であることが好ましく、より好ましくは0.5~1.0である。上記比が0.2以上であると、プリント配線板等の被着体に対する接着性がより良好となる。上記比が1.5以下であると、導電性接着剤層表面から露出する導電性粒子の量が多くなり、接続安定性により優れる。
【0053】
本発明のシールドフィルムは、導電性接着剤層側にセパレータ(剥離フィルム)を有していてもよい。セパレータは、本発明のシールドフィルムから剥離可能なように積層される。セパレータは、導電性接着剤層を被覆して保護するための要素であり、本発明のシールドフィルムを使用する際には剥がされる。
【0054】
上記セパレータとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、フッ素系剥離剤や長鎖アルキルアクリレート系剥離剤等の剥離剤により表面コートされたプラスチックフィルムや紙類などが挙げられる。
【0055】
上記セパレータの厚さは、10~200μmであることが好ましく、より好ましくは15~150μmである。上記厚さが10μm以上であると、保護性能により優れる。上記厚さが200μm以下であると、使用時にセパレータを剥離しやすい。
【0056】
本発明のシールドフィルムは、第1絶縁層、銀ナノワイヤ層、第2絶縁層、及び導電性接着剤層以外のその他の層を有していてもよい。上記その他の層としては、例えば、その他の絶縁層、反射防止層、防眩層、防汚層、ハードコート層、紫外線吸収層、アンチニュートンリング層などが挙げられる。
【0057】
本発明のシールドフィルムは透明性に優れる。本発明のシールドフィルムのJIS K 7361-1に準拠した測定方法における全光線透過率は、10%以上が好ましく、より好ましくは20%以上、さらに好ましくは50%以上、特に好ましくは65%以上である。上記全光線透過率は、公知の分光光度計を用いて測定することができる。なお、上記全光線透過率は、第1絶縁層と上記導電性接着剤層とを両端層とする積層体について測定される。
【0058】
本発明のシールドフィルムのJIS K 7361-1に準拠した測定方法におけるヘイズ値は、95%以下が好ましく、より好ましくは92%以下、さらに好ましくは90%以下である。上記ヘイズ値は、公知の分光光度計を用いて測定することができる。なお、上記ヘイズ値は、第1絶縁層と上記導電性接着剤層とを両端層とする積層体について測定される。
【0059】
本発明のシールドフィルムは、プリント配線板用途であることが好ましく、フレキシブルプリント配線板(FPC)用途であることが特に好ましい。本発明のシールドフィルムは、導電性接着剤層に導電性粒子を少量配合した場合及び多量配合した場合のいずれにおいても電気的接続抵抗値が低い。また、透明性に優れ、プリント配線板上での位置合わせが容易である。従って、本発明のシールドフィルムは、フレキシブルプリント配線板用の電磁波シールドフィルムとして好ましく使用することができる。
【0060】
(電磁波シールドフィルムの製造方法)
本発明のシールドフィルムの製造方法について説明する。
【0061】
図1に示す本発明のシールドフィルム1の作製においては、まず、第1絶縁層11上に銀ナノワイヤ層12を形成する。銀ナノワイヤ層12は、銀ナノワイヤ層12を第1絶縁層11表面にラミネートすることで形成できる。
【0062】
次に、形成された銀ナノワイヤ層12表面に、例えば、第2絶縁層13形成用の樹脂組成物を塗布(塗工)し、必要に応じて、脱溶媒及び/又は一部硬化させて形成することができる。
【0063】
上記樹脂組成物は、例えば、上述の第2絶縁層に含まれる各成分に加え、溶剤(溶媒)を含む。溶剤としては、例えば、トルエン、アセトン、メチルエチルケトン、メタノール、エタノール、プロパノール、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、ジメチルホルムアミドなどが挙げられる。上記樹脂組成物の固形分濃度は、形成する第2絶縁層の厚さなどに応じて適宜設定される。
【0064】
上記樹脂組成物の塗布には、公知のコーティング法が用いられてもよい。例えば、グラビアロールコーター、リバースロールコーター、キスロールコーター、リップコーターディップロールコーター、バーコーター、ナイフコーター、スプレーコーター、コンマコーター、ダイレクトコーター、スロットダイコーターなどのコーターが用いられてもよい。
【0065】
次に、形成された第2絶縁層表面に、導電性接着剤層14形成用の接着剤組成物を塗布(塗工)し、必要に応じて、脱溶媒及び/又は一部硬化させて形成することができる。
【0066】
上記接着剤組成物は、例えば、上述の導電性接着剤層に含まれる各成分に加え、溶剤(溶媒)を含む。溶剤としては、上述の樹脂組成物が含み得る溶剤として例示されたものが挙げられる。上記接着剤組成物の固形分濃度は、形成する導電性接着剤層の厚さなどに応じて適宜設定される。
【0067】
上記接着剤組成物の塗布には、公知のコーティング法が用いられてもよい。例えば、上述の樹脂組成物の塗布に用いられるコーターとして例示されたものが挙げられる。
【0068】
なお、上述した製造方法では、各層を順次形成して作製する方法(ダイレクトコート法)について説明したが、このような方法に限定されず、例えば、セパレートフィルムなどの仮基材又は基材上に個別に形成した各層をラミネートして順次貼り合わせる方法(ラミネート法)により作製してもよい。
【0069】
本発明のシールドフィルムを用いてプリント配線板を作製することができる。例えば、本発明のシールドフィルムの導電性接着剤層をプリント配線板(例えば、カバーレイ)に貼り合わせることで、プリント配線板に本発明のシールドフィルムが貼り合わされたシールドプリント配線板を得ることができる。上記シールドプリント配線板において、上記導電性接着剤層は、熱硬化していてもよい。
【実施例
【0070】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例にのみ限定されるものではない。なお、表中の導電性粒子の含有割合は、導電性接着剤層中の割合を示す。
【0071】
比較例1
PETフィルム(厚さ6μm)の表面に、銀ナノワイヤ層(ワイヤー径30nm、ワイヤー長さ20μm、厚さ約70nm)をラミネートして積層した。そして、エポキシ樹脂溶液及び導電性粒子Aを配合し混合して得られた接着剤組成物を、上記銀ナノワイヤ層表面に、ワイヤーバーを用いて塗布し、120℃で1分加熱することで導電性接着剤層(厚さ5μm)を形成した。以上のようにして、比較例1のシールドフィルムを作製した。なお、エポキシ樹脂溶液及び導電性粒子Aの配合量は、導電性接着剤層中のエポキシ樹脂の割合が70質量%、導電性粒子Aの割合が30質量%となる量とした。
【0072】
比較例2,3
導電性粒子の種類及び含有割合を表1に示すように変更したこと以外は比較例1と同様にして各シールドフィルムを作製した。
【0073】
実施例1
PETフィルム(厚さ6μm)の表面に、銀ナノワイヤ層(ワイヤー径30nm、ワイヤー長さ20μm、厚さ約70nm)をラミネートして積層した。次に、銀ナノワイヤ層表面に、ポリエステル系樹脂組成物を、ワイヤーバーを用いて塗布し、100℃で1分加熱することで樹脂層(厚さ50nm)を形成した。そして、エポキシ樹脂溶液及び導電性粒子Aを配合し混合して得られた接着剤組成物を、上記樹脂層表面に、ワイヤーバーを用いて塗布し、120℃で1分加熱することで導電性接着剤層(厚さ5μm)を形成した。以上のようにして、実施例1のシールドフィルムを作製した。なお、エポキシ樹脂溶液及び導電性粒子Aの配合量は、導電性接着剤層中のエポキシ樹脂の割合が70質量%、導電性粒子Aの割合が30質量%となる量とした。
【0074】
実施例2,3及び比較例4
樹脂層の厚さを表1に示すように変更したこと以外は実施例1と同様にして各シールドフィルムを作製した。
【0075】
実施例4
導電性粒子の含有割合を表1に示すように変更したこと以外は実施例11と同様にしてシールドフィルムを作製した。
【0076】
実施例5,6及び比較例5
樹脂層の厚さを表1に示すように変更したこと以外は実施例4と同様にして各シールドフィルムを作製した。
【0077】
実施例7
導電性粒子の種類を表1に示すように変更したこと以外は実施例1と同様にしてシールドフィルムを作製した。
【0078】
実施例8,9及び比較例6
樹脂層の厚さを表1に示すように変更したこと以外は実施例4と同様にして各シールドフィルムを作製した。
【0079】
(評価)
実施例及び比較例で得られた各シールドフィルムについて以下の通り評価した。評価結果は表に記載した。なお、PETフィルム(厚さ6μm)のみを参考例1の評価対象として用いた。また、表中の「OL」は、オーバーロードにより測定限界である100Ωを超える値であったことを示す。
【0080】
(1)接続抵抗値
ポリイミドフィルムからなるベース部材の上に、グランドパターンを疑似した2本の銅箔パターン(4mm幅、1mmピッチ)が形成され、その上に絶縁性の接着剤層及びポリイミドフィルムからなるカバーレイ(絶縁フィルム)が形成されたプリント配線基板を準備した。銅箔パターンの表面には表面層として金めっき層を設けた。なお、カバーレイには、直径0.8mmのグランド接続部を模擬した円形開口部を形成した。各実施例及び比較例において作製したシールドフィルムとプリント配線基板とを、プレス機を用いて温度:170℃、時間:30分、圧力:2~3MPaの条件で接着した。シールドフィルムを接着した後、2本の銅箔パターン間の電気抵抗値を抵抗計で測定し、銅箔パターンと導電性接着シートとの接続性を評価し、接続抵抗値とした。
【0081】
(2)全光線透過率
実施例及び比較例で得られたシールドフィルムについて、ヘーズメーター装置(商品名「NDH4000」、日本電色工業株式会社製)を用いて、JIS K7361-1に準拠して、PETフィルム面が積分球側となるように測定光を照射して測定した。
【0082】
【表1】
【0083】
透明導電層として銀ナノワイヤ層を用いた場合において、本発明のシールドフィルムは、導電性粒子を30~50質量%もの多量配合した場合であっても、全光線透過率が高く透明性に優れ、接続抵抗値が低く接続安定性が優れていた(実施例1~9)。また、球状導電性粒子を用いた場合(実施例1~6)、樹枝状導電性粒子を用いた場合(実施例7~9)に対して、全光線透過率が高く透明性に優れる傾向があった。一方、樹枝状導電性粒子を用いた場合(実施例7~9)、球状導電性粒子を用いた場合(実施例1~6)に対して、接続抵抗値が低く接続安定性に優れる傾向があった。なお、銀ナノワイヤ層と導電性接着剤層の間に樹脂層を有しない場合(比較例1~3)、30質量%以上の多量配合条件下では、同種の導電性粒子を同割合で用いた場合(実施例1~9)に対して、接続抵抗値が高い結果となった。
【符号の説明】
【0084】
1 シールドフィルム
11 第1絶縁層
12 銀ナノワイヤ層
13 第2絶縁層
14 導電性接着剤層
図1