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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-21
(45)【発行日】2022-03-02
(54)【発明の名称】リチウムイオン二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/0583 20100101AFI20220222BHJP
   H01M 4/505 20100101ALI20220222BHJP
   H01M 4/525 20100101ALI20220222BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20220222BHJP
   H01M 10/0566 20100101ALI20220222BHJP
   H01M 50/172 20210101ALI20220222BHJP
   H01M 50/414 20210101ALI20220222BHJP
   H01M 50/434 20210101ALI20220222BHJP
   H01M 50/451 20210101ALI20220222BHJP
   H01M 50/466 20210101ALI20220222BHJP
【FI】
H01M10/0583
H01M4/505
H01M4/525
H01M10/052
H01M10/0566
H01M50/172
H01M50/414
H01M50/434
H01M50/451
H01M50/466
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020527295
(86)(22)【出願日】2019-05-27
(86)【国際出願番号】 JP2019020847
(87)【国際公開番号】W WO2020003846
(87)【国際公開日】2020-01-02
【審査請求日】2020-12-16
(31)【優先権主張番号】P 2018125016
(32)【優先日】2018-06-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】507357232
【氏名又は名称】株式会社エンビジョンAESCジャパン
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(74)【代理人】
【識別番号】100127236
【弁理士】
【氏名又は名称】天城 聡
(72)【発明者】
【氏名】柳澤 良太
【審査官】結城 佐織
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-282739(JP,A)
【文献】特開2009-218105(JP,A)
【文献】特開2016-143550(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/0583
H01M 4/505
H01M 4/525
H01M 10/052
H01M 10/0566
H01M 50/172
H01M 50/414
H01M 50/434
H01M 50/451
H01M 50/466
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも正極、電解液、セパレータおよび負極により構成された発電素子を1つ以上含む電池本体と、
前記電池本体を内部に封入するための外装体と、
前記電池本体と電気的に接続され、かつ、少なくとも一部が前記外装体の外側に露出した一対の電極端子と、
を備えるリチウムイオン二次電池であって、
前記電池本体は、つづら折りに折り曲げられた前記セパレータの間に前記正極および前記負極がそれぞれ配置された構造を有し、
前記電池本体における前記正極および前記負極からなる電極の中で最も外側に位置する最外負極の前記正極と対向していない側の表面の少なくとも周縁部に固体電解質界面(SEI)膜が形成されており、
前記最外負極上の前記SEI膜の長さLと、前記最外負極上の前記セパレータの長さLとが、L≧L>0の関係を満たすリチウムイオン二次電池。
(ここで、前記SEI膜の長さLは、当該リチウムイオン二次電池における前記電極端子が露出していない側の一辺の中心部における前記SEI膜の端部から、前記SEI膜の他方の端部までの長さであり、かつ、前記一辺に対して垂直方向の長さである。前記セパレータの長さLは、当該リチウムイオン二次電池における前記電極端子が露出していない側の一辺の中心部における前記最外負極上の前記セパレータの端部から、前記セパレータの他方の端部までの長さであり、かつ、前記一辺に対して垂直方向の長さである。)
【請求項2】
請求項1に記載のリチウムイオン二次電池において、
前記セパレータはポリエステル系樹脂を含むリチウムイオン二次電池。
【請求項3】
請求項1または2に記載のリチウムイオン二次電池において、
前記セパレータの長さLが15.0mm未満であるリチウムイオン二次電池。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載のリチウムイオン二次電池において、
前記最外負極上の前記SEI膜の平均長さLと、前記最外負極上の前記セパレータの平均長さLとが、L≧L>0の関係を満たすリチウムイオン二次電池。
(ここで、当該リチウムイオン二次電池における前記電極端子が露出していない側の一辺において、前記一辺に対して垂直方向の前記SEI膜の長さを10点測定し、得られた10点の長さの平均値を前記SEI膜の平均長さLとし、前記一辺に対して垂直方向の前記セパレータの長さを10点測定し、得られた10点の長さの平均値を前記セパレータの平均長さLとする。)
【請求項5】
請求項4に記載のリチウムイオン二次電池において、
前記セパレータの平均長さLが15.0mm未満であるリチウムイオン二次電池。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか一項に記載のリチウムイオン二次電池において、
前記外装体が少なくとも熱融着性樹脂層とバリア層とを有する積層フィルムであるリチウムイオン二次電池。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか一項に記載のリチウムイオン二次電池において、
前記正極が正極活物質としてリチウムニッケル含有複合酸化物を含むリチウムイオン二次電池。
【請求項8】
請求項7に記載のリチウムイオン二次電池において、
前記リチウムニッケル含有複合酸化物が下記式(1)で表されるリチウムイオン二次電池。
Li1+a(NiCoMe1Me21-b-c-d)O (1)
(式中、Me1はMn又はAlであり、Me2は、Mn、Al、Mg、Fe、Cr、Ti、Inからなる群から選択される少なくとも1種であり(Me1と同種の金属を除く)、-0.5≦a<0.1、0.1≦b<1、0<c<0.5、0<d<0.5)
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか一項に記載のリチウムイオン二次電池において、
前記リチウムイオン二次電池のセル定格容量が7Ah以上であるリチウムイオン二次電池。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれか一項に記載のリチウムイオン二次電池において、
前記リチウムイオン二次電池の中央部における前記正極の積層数または捲回数が10以上であるリチウムイオン二次電池。
【請求項11】
請求項1乃至10のいずれか一項に記載のリチウムイオン二次電池において、
前記セパレータは樹脂層およびセラミック層を有するリチウムイオン二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウムイオン二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン二次電池は高エネルギー密度という特徴を有しており、携帯電話やノート型パソコン、電気自動車等の電源として広く用いられている。リチウムイオン二次電池の構造の一例として、つづら折り構造のリチウムイオン二次電池が知られている。
【0003】
つづら折り構造のリチウムイオン二次電池に関する技術としては、例えば、特許文献1(特開2009-218105号公報)および特許文献2(特開2016-143550号公報)に記載のものが挙げられる。
【0004】
特許文献1には、平板状の正極、セパレータ、平板状の負極が積層された角形の電池要素を有し、該電池要素の一面は、上記正極および負極の各々に設けられた、板状の正極端子接続部および板状の負極端子接続部がともに引き出された端子接続部引出面であり、正極端子接続部と負極端子接続部のそれぞれを正極および負極の延長する面に垂直に投影した投影面は相互に交わらず、上記正極と負極は相互に対向する面の面積が異なり、上記面積が小さな側の電極を面積が大きな側の電極の対向面に投影した投影部は、すべて上記大きな側の電極面に位置するようにそれぞれの電極が配置されており、セパレータには、正極端面および負極端面が突き当たって正極および負極の移動を規制する突き当たり部が設けられており、上記突き当たり部は、各電極面に配置されたセパレータのうち隣接するセパレータ同士の折り目、あるいは接合部によって形成されるとともに、電極面に積層されたすべてのセパレータは、上記折り目あるいは接合部によって結合されたものであることを特徴とする積層型電池が記載されている。
【0005】
特許文献2には、正極活物質を含む複数の正極板と負極活物質を含む複数の負極板を、つづら折り状に折り返されたセパレータに、上記正極板及び上記負極板を挟み込んでなる二次電池のつづら折り積層体構造であって、上記セパレータは、上記正極板及び上記負極板から突出した複数の突出部を有し、上記突出部の少なくとも一部には、残部よりも引張破断強度が小さい応力破断部を有する二次電池のつづら折り積層体構造が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2009-218105号公報
【文献】特開2016-143550号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者の検討によれば、従来のつづら折り構造のリチウムイオン二次電池は最外層のセパレータが変質(変色や脆化等)してしまう場合があることが明らかになった。
【0008】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、最外層のセパレータの変質が抑制された、つづら折り構造のリチウムイオン二次電池を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は上記課題を解決するために鋭意検討したところ、最外負極においてSEI膜が形成されていない表面上に位置するセパレータが、電解液との反応によって分解しやすいことを知見した。本発明者は上記知見を元にさらに鋭意検討したところ、最外負極上のセパレータが最外負極の表面に形成されたSEI膜上に位置するように制御することにより、最外層のセパレータの変質(変色や脆化等)を抑制できることを見出し、本発明を完成させた。
【0010】
本発明はこのような知見に基づいて発案されたものである。
【0011】
本発明によれば、
少なくとも正極、電解液、セパレータおよび負極により構成された発電素子を1つ以上含む電池本体と、
上記電池本体を内部に封入するための外装体と、
上記電池本体と電気的に接続され、かつ、少なくとも一部が上記外装体の外側に露出した一対の電極端子と、
を備えるリチウムイオン二次電池であって、
上記電池本体は、つづら折りに折り曲げられた上記セパレータの間に上記正極および上記負極がそれぞれ配置された構造を有し、
上記電池本体における上記正極および上記負極からなる電極の中で最も外側に位置する最外負極の上記正極と対向していない側の表面の少なくとも周縁部に固体電解質界面(SEI)膜が形成されており、
上記最外負極上の上記SEI膜の長さLと、上記最外負極上の上記セパレータの長さLとが、L≧L>0の関係を満たすリチウムイオン二次電池が提供される。
(ここで、上記SEI膜の長さLは、当該リチウムイオン二次電池における上記電極端子が露出していない側の一辺の中心部における上記SEI膜の端部から、上記SEI膜の他方の端部までの長さであり、かつ、上記一辺に対して垂直方向の長さである。上記セパレータの長さLは、当該リチウムイオン二次電池における上記電極端子が露出していない側の一辺の中心部における上記最外負極上の上記セパレータの端部から、上記セパレータの他方の端部までの長さであり、かつ、上記一辺に対して垂直方向の長さである。)
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、最外層のセパレータの変質が抑制された、つづら折り構造のリチウムイオン二次電池を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
上述した目的、およびその他の目的、特徴および利点は、以下に述べる好適な実施の形態、およびそれに付随する以下の図面によってさらに明らかになる。
【0014】
図1】本発明に係る実施形態の電池本体の構造の一例を模式的に示した分解斜視図である。
図2】本発明に係る実施形態の電池本体の構造の一例を模式的に示した斜視図である。
図3】本発明に係る実施形態の電池本体の構造の一例を模式的に示した断面図であり、図2に示すA-A’方向の断面図である。
図4】本発明に係る実施形態の電池本体の構造の一例を模式的に示した平面図である。
図5】本発明に係る実施形態のリチウムイオン二次電池の構造の一例を模式的に示した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明の実施形態について、図面を用いて説明する。なお、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。また、図において各構成要素は本発明が理解できる程度の形状、大きさおよび配置関係を概略的に示したものであり、実寸とは異なっている。また、数値範囲の「~」は特に断りがなければ、以上から以下を表す。
【0016】
図1は、本発明に係る実施形態の電池本体10の構造の一例を模式的に示した分解斜視図である。図2は、本発明に係る実施形態の電池本体10の構造の一例を模式的に示した斜視図である。図3は、本発明に係る実施形態の電池本体10の構造の一例を模式的に示した断面図であり、図2に示すA-A’方向の断面図である。図4は、本発明に係る実施形態の電池本体10の構造の一例を模式的に示した平面図である。図5は、本発明に係る実施形態のリチウムイオン二次電池100の構造の一例を模式的に示した斜視図である。
【0017】
図1~5に示すように、本実施形態に係るリチウムイオン二次電池100は、少なくとも正極15、電解液、セパレータ18および負極20により構成された発電素子を1つ以上含む電池本体10と、電池本体10を内部に封入するための外装体40と、電池本体10と電気的に接続され、かつ、少なくとも一部が外装体40の外側に露出した一対の電極端子30と、を備える。電池本体10は、つづら折りに折り曲げられたセパレータ18の間に正極15および負極20がそれぞれ配置された構造を有し、電池本体10における正極15および負極20からなる電極の中で最も外側に位置する最外負極20Aの正極15と対向していない側の表面の少なくとも周縁部20Bに固体電解質界面(SEI)膜25が形成されており、最外負極20A上のSEI膜25の長さLと、最外負極20A上のセパレータ18の長さLとが、L≧L>0の関係を満たす。
ここで、SEI膜の長さLは、図4に示すように、リチウムイオン二次電池100における電極端子30が露出していない側の一辺28の中心部におけるSEI膜25の端部から、SEI膜25の他方の端部までの長さであり、かつ、一辺28に対して垂直方向の長さである。セパレータの長さLは、リチウムイオン二次電池100における電極端子30が露出していない側の一辺28の中心部における最外負極20A上のセパレータ18の端部から、セパレータ18の他方の端部までの長さであり、かつ、一辺28に対して垂直方向の長さである。
【0018】
本発明者の検討によれば、従来のつづら折り構造のリチウムイオン二次電池は最外層のセパレータが変質(変色や脆化等)してしまう場合があることが明らかになった。
本発明者は最外層のセパレータの変質が抑制された、つづら折り構造のリチウムイオン二次電池を実現するために鋭意検討した。その結果、最外負極においてSEI膜が形成されていない表面上に位置するセパレータが、電解液との反応によって分解しやすいことを知見した。本発明者は上記知見を元にさらに鋭意検討したところ、最外負極上のセパレータが最外負極の表面に形成されたSEI膜上に位置するように制御することにより、最外層のセパレータの変質(変色や脆化等)を抑制できることを初めて見出した。
すなわち、本実施形態によれば、電池本体10における正極15および負極20からなる電極の中で最も外側に位置する最外負極20Aの表面の少なくとも周縁部に固体電解質界面(SEI)膜25が形成されており、最外負極20A上のSEI膜25の長さLと、最外負極20A上のセパレータ18の長さLとが、L≧L>0の関係を満たすように構成することで、最外層のセパレータの変質が抑制された、つづら折り構造のリチウムイオン二次電池100を得ることができる。
【0019】
本実施形態に係るリチウムイオン二次電池100の最外層のセパレータ18の変質が抑制される理由は必ずしも明らかではないが、以下の理由が考えられる。
まず、最外負極上に位置するセパレータは、電解液との反応によって分解され、変質が起きやすい。特にエステル結合は電解液との反応によって分解されやすいため、セパレータがポリエステル系樹脂を含む場合に最外層のセパレータの変質が顕著になりやすい。
ここで、SEI膜が形成された部分の上に位置するセパレータは、最外負極と直接接しないため、分解反応が起きにくい。そのため、最外負極20A上のSEI膜25の長さLと、最外負極20A上のセパレータ18の長さLとが、L≧L>0の関係を満たすことにより、最外負極と直接接するセパレータの割合が低くなるため、セパレータの分解は抑制される。その結果、最外層のセパレータの変質が抑制された、つづら折り構造のリチウムイオン二次電池100を得ることができると考えられる。
【0020】
ここで、SEI膜は正極と対向する側の面に通常は形成されるが、SEI膜を形成するためのリチウムイオンは正極と対向していない側の面にも回り込むため、最外負極20Aの正極15と対向していない側の表面の少なくとも周縁部20BにもSEI膜25が形成されている。
また、最外負極20A上のSEI膜25の長さLは、例えば、XPS分析で測定することができる。具体的には、SEI膜が形成されている箇所はLiの比率が大きいため、Liの比率によってSEI膜の形成の有無を調べることができ、例えばXPS分析によって、セパレータの電池中心部側の端部におけるSEI膜の形成の有無を調べることによって、L≧L>0の関係を満たすか否かを判断することができる。
【0021】
本実施形態に係るリチウムイオン二次電池100において、セパレータ18の長さLは、最外層のセパレータの変質をより一層抑制する観点から、好ましくは15.0mm未満であり、より好ましくは10.0mm以下であり、さらに好ましくは8.0mm以下であり、さらにより好ましくは5.0mm以下であり、特に好ましくは4.0mm以下である。
また、セパレータ18の長さLの下限は特に限定されないが、好ましくは0.1mm以上であり、さらに好ましくは0.5mm以上である。
【0022】
本実施形態に係るリチウムイオン二次電池100において、最外層のセパレータの変質をより一層抑制する観点から、最外負極20A上のSEI膜25の平均長さLと、最外負極20A上のセパレータ18の平均長さLとが、L≧L>0の関係を満たすことが好ましい。
ここで、リチウムイオン二次電池100における電極端子30が露出していない側の一辺28において、一辺28に対して垂直方向のSEI膜25の長さを10点測定し、得られた10点の長さの平均値をSEI膜の平均長さLとし、一辺28に対して垂直方向のセパレータの長さを10点測定し、得られた10点の長さの平均値をセパレータ18の平均長さLとする。上記10点は、例えば、一辺28を等間隔に10個に分割し、それぞれの中心部分(合計10点)を選択することができる。
【0023】
本実施形態に係るリチウムイオン二次電池100において、最外層のセパレータの変質をより一層抑制する観点から、セパレータ18の平均長さLは、好ましくは15.0mm未満であり、より好ましくは10.0mm以下であり、さらに好ましくは8.0mm以下であり、さらにより好ましくは5.0mm以下であり、特に好ましくは4.0mm以下である。
また、セパレータ18の平均長さLの下限は特に限定されないが、好ましくは0.1mm以上であり、さらに好ましくは0.5mm以上である。
【0024】
また、本実施形態に係るリチウムイオン二次電池は、セル定格容量が好ましくは7Ah以上である。
また、本実施形態に係るリチウムイオン二次電池は、中央部における正極の積層数または捲回数が10以上であることが好ましく、15以上であることがより好ましく、20以上であることがさらに好ましい。
これにより、本実施形態に係るリチウムイオン二次電池の高容量化を図ることができる。また、このような高容量であっても、本実施形態に係るリチウムイオン二次電池は、耐短絡性に優れ、電池の熱暴走を抑制することが可能となる。
【0025】
つづいて、本実施形態のリチウムイオン二次電池に用いられる各構成について説明する。
【0026】
<電池本体>
本実施形態に係る電池本体は、例えば、正極と負極とが、つづら折りに折り曲げられたセパレータを介して交互に積層された発電素子を1つ以上含む。これらの発電素子は電解液(図示せず)とともに外装体からなる容器に収納されている。発電素子には電極端子(正極端子および負極端子)が電気的に接続されており、電極端子の一部または全部が外装体の外部に引き出されている構成になっている。
【0027】
正極には正極集電体層の表裏に、正極活物質の塗布部(正極活物質層)と未塗布部がそれぞれ設けられており、負極には負極集電体層の表裏に、負極活物質の塗布部(負極活物質層)と未塗布部が設けられている。
【0028】
正極集電体層における正極活物質の未塗布部を正極端子と接続するための正極タブとし、負極集電体層における負極活物質の未塗布部を負極端子と接続するための負極タブとする。
正極タブ同士は正極端子上にまとめられ、正極端子とともに超音波溶接等で互いに接続され、負極タブ同士は負極端子上にまとめられ、負極端子とともに超音波溶接等で互いに接続される。そのうえで、正極端子の一端は外装体の外部に引き出され、負極端子の一端も外装体の外部に引き出されている。
本実施形態に係る電池本体は公知の方法に準じて作製することができる。
【0029】
(正極)
正極は、用途等に応じて、公知のリチウムイオン二次電池に使用することのできる正極の中から適宜選択することができる。正極に用いられる正極活物質としては、リチウムイオンを可逆に放出・吸蔵でき、電子輸送が容易に行えるように電子伝導度の高い材料が好ましい。
【0030】
正極に用いられる正極活物質としては、特に制限されるものではないが、例えば、層状岩塩型構造又はスピネル型構造を有するリチウム複合酸化物や、オリビン型構造を有するリン酸鉄リチウム等を用いることができる。リチウム複合酸化物としては、マンガン酸リチウム(LiMn);コバルト酸リチウム(LiCoO);ニッケル酸リチウム(LiNiO);これらのリチウム化合物のマンガン、コバルト、ニッケルの部分の少なくとも一部をアルミニウム、マグネシウム、チタン、亜鉛等の他の金属元素で置換したもの;マンガン酸リチウムのマンガンの一部を少なくともニッケルで置換したニッケル置換マンガン酸リチウム;ニッケル酸リチウムのニッケルの一部を少なくともコバルトで置換したコバルト置換ニッケル酸リチウム;ニッケル置換マンガン酸リチウムのマンガンの一部を他の金属(例えばアルミニウム、マグネシウム、チタン、亜鉛の少なくとも一種)で置換したもの;コバルト置換ニッケル酸リチウムのニッケルの一部を他の金属元素(例えばアルミニウム、マグネシウム、チタン、亜鉛、マンガンの少なくとも一種)で置換したものが挙げられる。
これらの正極活物質は、一種のみを単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0031】
層状結晶構造を有するリチウム含有複合酸化物として、リチウムニッケル含有複合酸化物が挙げられる。このリチウムニッケル含有複合酸化物は、ニッケルサイトのニッケルの一部が他の金属で置換されたものを用いることができる。ニッケルサイトを占めるNi以外の金属としては、例えば、Mn、Co、Al、Mg、Fe、Cr,Ti、Inから選ばれる少なくとも一種の金属が挙げられる。
【0032】
このリチウムニッケル含有複合酸化物は、ニッケルサイトを占めるNi以外の金属としてCoを含むことが好ましい。また、このリチウムニッケル含有複合酸化物は、Coに加えてMn又はAlを含むことがより好ましく、すなわち、層状結晶構造を有するリチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物(NCM)、層状結晶構造を有するリチウムニッケルコバルトアルミニウム複合酸化物(NCA)、又はこれらの混合物を好適に用いることができる。
【0033】
層状結晶構造を有するリチウムニッケル含有複合酸化物は、例えば、下記式(1)で示されるものを用いることができる。
Li1+a(NiCoMe1Me21-b-c-d)O (1)
(式中、Me1はMn又はAlであり、Me2は、Mn、Al、Mg、Fe、Cr、Ti、Inからなる群から選択される少なくとも1種であり(Me1と同種の金属を除く)、-0.5≦a<0.1、0.1≦b<1、0<c<0.5、0<d<0.5)
【0034】
正極活物質の平均粒径は、電解液との反応性やレート特性等の観点から、例えば0.1~50μmが好ましく、1~30μmがより好ましく、2~25μmがさらに好ましい。ここで、平均粒径は、レーザー回折散乱法による粒度分布(体積基準)における積算値50%での粒径(メジアン径:D50)を意味する。
【0035】
正極は、例えば、正極集電体層と、正極集電体層上の正極活物質層から構成されている。この正極は、正極活物質層がセパレータを介して、負極集電体層上の負極活物質層と対向するように配置される。
【0036】
また、本実施形態に係る正極は、公知の方法により製造することができる。例えば、正極活物質、バインダー樹脂、および導電助剤を有機溶媒中に分散させ正極スラリーを得た後、この正極スラリーを正極集電体層に塗布・乾燥し、必要に応じてプレスすることにより正極集電体層上に正極活物質層を形成する方法等を採用することができる。
正極作製時に用いるスラリー溶媒としては、例えば、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)を用いることができる。
【0037】
バインダー樹脂としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)等の正極用バインダー樹脂として一般的に用いられるものを使用できる。
【0038】
正極活物質層中のバインダー樹脂の含有量は、正極活物質層の全体を100質量部としたとき、0.1質量部以上10.0質量部以下であることが好ましく、0.5質量部以上5.0質量部以下であることがより好ましく、1.0質量部以上5.0質量部以下であることがさらに好ましい。バインダー樹脂の含有量が上記範囲内であると、正極スラリーの塗工性、バインダーの結着性および電池特性のバランスがより一層優れる。
また、バインダー樹脂の含有量が上記上限値以下であると、正極活物質の割合が大きくなり、正極質量当たりの容量が大きくなるため好ましい。バインダー樹脂の含有量が上記下限値以上であると、電極剥離が抑制されるため好ましい。
【0039】
正極活物質層は、正極活物質とバインダー樹脂の他に導電助剤を含むことができる。導電助剤としては正極の導電性を向上させるものであれば特に限定されないが、例えば、カーボンブラック、ケッチェンブラック、アセチレンブラック、天然黒鉛、人工黒鉛、炭素繊維等が挙げられる。これらの導電助剤は1種単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0040】
正極活物質層中の導電助剤の含有量は、正極活物質層の全体を100質量部としたとき、1.0質量部以上4.0質量部以下であることが好ましく、1.2質量部以上3.5質量部以下であることがより好ましく、1.5質量部以上3.5質量部以下であることがさらに好ましく、2.0質量部以上3.5質量部以下であることが特に好ましい。導電助剤の含有量が上記範囲内であると、正極スラリーの塗工性、バインダー樹脂の結着性および電池特性のバランスがより一層優れる。
また、導電助剤の含有量が上記上限値以下であると、正極活物質の割合が大きくなり、正極質量当たりの容量が大きくなるため好ましい。導電助剤の含有量が上記下限値以上であると、正極の導電性がより良好になり、リチウムイオン二次電池の電池特性が向上するため好ましい。
【0041】
正極集電体層としては、アルミニウム、ステンレス鋼、ニッケル、チタンまたはこれらの合金等を用いることができる。その形状としては、例えば、箔、平板状、メッシュ状等が挙げられる。特にアルミニウム箔を好適に用いることができる。
正極集電体層の厚みは特に限定されないが、例えば1μm以上30μm以下である。
【0042】
正極活物質層の密度は特に限定されないが、例えば、2.0g/cm以上4.0g/cm以下であることが好ましく、2.4g/cm以上3.8g/cm以下であることがより好ましく、2.8g/cm以上3.6g/cm以下であることがさらに好ましい。
【0043】
正極活物質層の厚み(両面の厚みの合計)は特に限定されるものではなく、所望の特性に応じて適宜設定することができる。例えば、エネルギー密度の観点からは厚く設定することができ、また出力特性の観点からは薄く設定することができる。正極活物質層の厚み(両面の厚みの合計)は、例えば20μm以上500μm以下の範囲で適宜設定でき、40μm以上400μm以下が好ましく、60μm以上300μm以下がより好ましい。
また、正極活物質層の厚み(片面の厚み)は特に限定されるものではなく、所望の特性に応じて適宜設定することができる。例えば、エネルギー密度の観点からは厚く設定することができ、また出力特性の観点からは薄く設定することができる。正極活物質層の厚み(片面の厚み)は、例えば、10μm以上250μm以下の範囲で適宜設定でき、20μm以上200μm以下が好ましく、30μm以上150μm以下がより好ましい。
【0044】
(負極)
負極は、用途等に応じて、公知のリチウムイオン二次電池に使用することのできる負極の中から適宜選択することができる。負極に用いられる負極活物質についても負極に使用可能なものであれば用途等に応じて適宜設定することができる。
負極は、例えば、負極集電体層と、負極集電体層上に形成された負極活物質層から構成されている。負極活物質層は、例えば、負極活物質およびバインダー樹脂を含み、導電性を高める点から導電助剤をさらに含むことが好ましい。
【0045】
負極活物質としては、リチウムイオンを吸蔵、放出可能な負極用の活物質材料であれば特に限定されないが、炭素質材料を用いることができる。炭素質材料としては、黒鉛、非晶質炭素(例えば易黒鉛化性炭素、難黒鉛化性炭素)、ダイヤモンド状炭素、フラーレン、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン等が挙げられる。黒鉛としては、天然黒鉛、人造黒鉛を用いることができ、材料コストの観点から安価な天然黒鉛が好ましい。非晶質炭素としては、例えば、石炭ピッチコークス、石油ピッチコークス、アセチレンピッチコークス等を熱処理して得られるものが挙げられる。その他の負極活物質として、リチウム金属材料、シリコンやスズ等の合金系材料、NbやTiO等の酸化物系材料、あるいはこれらの複合物を用いることができる。
負極活物質は、一種のみを単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0046】
負極活物質の平均粒径は、充放電時の副反応を抑えて充放電効率の低下を抑える点から、2μm以上が好ましく、5μm以上がより好ましく、入出力特性の観点や負極作製上の観点(負極表面の平滑性等)から、40μm以下が好ましく、30μm以下がより好ましい。ここで平均粒径は、レーザー回折散乱法による粒度分布(体積基準)における積算値50%での粒子径(メジアン径:D50)を意味する。
【0047】
また、本実施形態における負極は、公知の方法により製造することができる。例えば負極活物質とバインダー樹脂とを溶媒中に分散させスラリーを得た後、このスラリーを負極集電体層に塗布・乾燥し、必要に応じてプレスして負極活物質層を形成する方法等を採用することができる。
負極スラリーの塗布方法としては、ドクターブレード法、ダイコーター法、ディップコーティング法が挙げられる。スラリーには、必要に応じて、消泡剤や界面活性剤等の添加剤を加えてもよい。
【0048】
負極活物質層中のバインダー樹脂の含有量は、負極活物質層の全体を100質量部としたとき、0.1質量部以上10.0質量部以下であることが好ましく、0.5質量部以上8.0質量部以下であることがより好ましく、1.0質量部以上5.0質量部以下であることがさらに好ましく、1.0質量部以上3.0質量部以下であることが特に好ましい。バインダー樹脂の含有量が上記範囲内であると、負極スラリーの塗工性、バインダー樹脂の結着性および電池特性のバランスがより一層優れる。
また、バインダー樹脂の含有量が上記上限値以下であると、負極活物質の割合が大きくなり、負極質量当たりの容量が大きくなるため好ましい。バインダー樹脂の含有量が上記下限値以上であると、電極剥離が抑制されるため好ましい。
【0049】
溶媒としては、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)等の有機溶媒や、水を用いることができる。溶媒として有機溶媒を用いた場合は、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)等の有機溶媒用のバインダー樹脂を用いることができる。溶媒として水を用いた場合は、ゴム系バインダー(例えばSBR(スチレン・ブタジエンゴム))やアクリル系バインダー樹脂を用いることができる。このような水系バインダー樹脂はエマルジョンの形態のものを用いることができる。溶媒として水を用いる場合は、水系バインダーとCMC(カルボキシメチルセルロース)等の増粘剤とを併用することが好ましい。
【0050】
負極活物質層は、必要に応じて導電助剤を含有してもよい。この導電助剤としては、カーボンブラック、ケッチェンブラック、アセチレンブラック等の炭素質材料等の一般的に負極の導電助剤として使用されている導電性材料を用いることができる。
負極活物質層中の導電助剤の含有量は、負極活物質層の全体を100質量部としたとき、0.1質量部以上3.0質量部以下であることが好ましく、0.1質量部以上2.0質量部以下であることがより好ましく、0.2質量部以上1.0質量部以下であることが特に好ましい。導電助剤の含有量が上記範囲内であると、負極スラリーの塗工性、バインダー樹脂の結着性および電池特性のバランスがより一層優れる。
また、導電助剤の含有量が上記上限値以下であると、負極活物質の割合が大きくなり、負極質量当たりの容量が大きくなるため好ましい。導電助剤の含有量が上記下限値以上であると、負極の導電性がより良好になるため好ましい。
【0051】
正極活物質層や負極活物質層に用いられる導電助剤の平均粒子径(一次粒子径)は10~100nmの範囲にあることが好ましい。導電助剤の平均粒子径(一次粒子径)は、導電助剤の過度な凝集を抑えて負極中に均一に分散させる観点から10nm以上が好ましく、30nm以上がより好ましく、十分な数の接触点が形成でき、良好な導電経路を形成する観点から100nm以下が好ましく、80nm以下がより好ましい。導電助剤が繊維状の場合は、平均直径が2~200nm、平均繊維長が0.1~20μmのものが挙げられる。
ここで、導電助剤の平均粒子径は、メジアン径(D50)であり、レーザー回折散乱法による粒度分布(体積基準)における積算値50%での粒子径を意味する。
【0052】
負極活物質層の厚み(両面の厚みの合計)は特に限定されるものではなく、所望の特性に応じて適宜設定することができる。例えば、エネルギー密度の観点からは厚く設定することができ、また出力特性の観点からは薄く設定することができる。負極活物質層の厚み(両面の厚みの合計)は、例えば40μm以上1000μm以下の範囲で適宜設定でき、80μm以上800μm以下が好ましく、120μm以上600μm以下がより好ましい。
また、負極活物質層の厚み(片面の厚み)は特に限定されるものではなく、所望の特性に応じて適宜設定することができる。例えば、エネルギー密度の観点からは厚く設定することができ、また出力特性の観点からは薄く設定することができる。負極活物質層の厚み(片面の厚み)は、例えば、20μm以上500μm以下の範囲で適宜設定でき、40μm以上400μm以下が好ましく、60μm以上300μm以下がより好ましい。
【0053】
負極活物質層の密度は特に限定されないが、例えば、1.2g/cm以上2.0g/cm以下であることが好ましく、1.3g/cm以上1.9g/cm以下であることがより好ましく、1.4g/cm以上1.8g/cm以下であることがさらに好ましい。
【0054】
負極集電体層としては、銅、ステンレス鋼、ニッケル、チタンまたはこれらの合金を用いることができる。その形状としては、箔、平板状、メッシュ状が挙げられる。
負極集電体層の厚みは特に限定されないが、例えば1μm以上20μm以下である。
【0055】
(電解液)
本実施形態に係る電解液は電解質を溶媒に溶解させたものである。
本実施形態に用いる電解液は、例えば、リチウム塩を含有する非水電解液であり、電極活物質の種類やリチウムイオン二次電池の用途等に応じて公知のものの中から適宜選択することができる。
【0056】
具体的なリチウム塩の例としては、例えば、LiClO、LiBF、LiPF、LiCFSO、LiCFCO、LiAsF、LiSbF、LiB10Cl10、LiAlCl、LiCl、LiBr、LiB(C、CFSOLi、CHSOLi、LiCSO、Li(CFSON、低級脂肪酸カルボン酸リチウム等を挙げることができる。
【0057】
リチウム塩を溶解する溶媒としては、電解質を溶解させる液体として通常用いられるものであれば特に限定されるものではなく、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート(BC)、ジメチルカーボネート(DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC),ジエチルカーボネート(DEC)、メチルエチルカーボネート(MEC)、ビニレンカーボネート(VC)等のカーボネート類;γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン等のラクトン類;トリメトキシメタン、1,2-ジメトキシエタン、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン等のエーテル類;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類;1,3-ジオキソラン、4-メチル-1,3-ジオキソラン等のオキソラン類;アセトニトリル、ニトロメタン、ホルムアミド、ジメチルホルムアミド等の含窒素溶媒;ギ酸メチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル等の有機酸エステル類;リン酸トリエステルやジグライム類;トリグライム類;スルホラン、メチルスルホラン等のスルホラン類;3-メチル-2-オキサゾリジノン等のオキサゾリジノン類;1,3-プロパンスルトン、1,4-ブタンスルトン、ナフタスルトン等のスルトン類等が挙げられる。これらは、一種単独で使用してもよいし、二種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0058】
(セパレータ)
本実施形態に係るセパレータは、正極と負極を電気的に絶縁させ、リチウムイオンを透過する機能を有するものであれば特に限定されないが、例えば、多孔性セパレータを用いることができる。
【0059】
本実施形態に係るセパレータは、耐熱性樹脂を主成分として含む樹脂層を備えることが好ましい。
ここで、上記樹脂層は主成分である耐熱性樹脂により形成されている。ここで、「主成分」とは、樹脂層中における割合が50質量%以上であることをいい、好ましくは70質量%以上であり、さらに好ましくは90質量%以上であり、100質量%であってもよいことを意味する。
本実施形態に係るセパレータを構成する樹脂層は、単層であっても、二種以上の層であってもよい。
【0060】
上記樹脂層を形成する耐熱性樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリ-m-フェニレンテレフタレート、ポリ-p-フェニレンイソフタレート、ポリカーボネート、ポリエステルカーボネート、脂肪族ポリアミド、全芳香族ポリアミド、半芳香族ポリアミド、全芳香族ポリエステル、ポリフェニレンサルファイド、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール、ポリイミド、ポリアリレート、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミド、ポリアセタール、ポリエーテルエーテルケトン、ポリサルホン、ポリエーテルサルホン、フッ素系樹脂、ポリエーテルニトリル、変性ポリフェニレンエーテル等から選択される一種または二種以上を挙げることができる。
【0061】
これらの中でも、耐熱性や機械的強度、伸縮性、価格等のバランスに優れる観点から、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、全芳香族ポリエステル等のポリエステル系樹脂、脂肪族ポリアミド、全芳香族ポリアミド、半芳香族ポリアミド等のポリアミド系樹脂から選択される一種または二種以上が好ましく、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートおよび全芳香族ポリエステルから選択される一種または二種以上のポリエステル系樹脂がより好ましく、ポリエチレンテレフタレートがさらに好ましい。
【0062】
本実施形態に係るセパレータの融点は、リチウムイオン二次電池の安全性を向上させる観点から、220℃以上であることが好ましく、230℃以上であることがより好ましく、240℃以上であることがさらに好ましい。あるいは、本実施形態に係るセパレータは、リチウムイオン二次電池の安全性を向上させる観点から、融点を示さないものであることが好ましく、分解温度が220℃以上であることが好ましく、230℃以上であることがより好ましく、240℃以上であることがさらに好ましく、250℃以上であることが特に好ましい。
本実施形態に係るセパレータの融点または分解温度を上記下限値以上とすることにより、電池が発熱し、高温になったとしてもセパレータの熱収縮を抑制することができ、その結果、正極と負極との接触面積を抑制することができる。これにより、リチウムイオン二次電池の熱暴走等を抑制でき、安全性をより向上させることができる。
本実施形態に係るセパレータの融点の上限は特に限定されないが、例えば500℃以下であり、伸縮性の観点から、好ましくは400℃以下である。あるいは、本実施形態に係るセパレータの分解温度の上限は特に限定されないが、例えば500℃以下であり、伸縮性の観点から、好ましくは400℃以下である。
【0063】
本実施形態に係るセパレータを構成する樹脂層は多孔性樹脂層であることが好ましい。これにより、リチウムイオン二次電池に異常電流が発生し、電池の温度が上昇した場合等に多孔性樹脂層の微細孔が閉塞して電流の流れを遮断することができ、電池の熱暴走を回避することができる。
【0064】
上記多孔性樹脂層の空孔率は、機械的強度およびリチウムイオン伝導性のバランスの観点から、20%以上80%以下が好ましく、30%以上70%以下がより好ましく、40%以上60%以下が特に好ましい。
空孔率は、下記式から求めることができる。
ε={1-Ws/(ds・t)}×100
ここで、ε:空孔率(%)、Ws:目付(g/m)、ds:真密度(g/cm)、t:膜厚(μm)である。
【0065】
本実施形態に係るセパレータの平面形状は、特に限定されず、電極や集電体の形状に合わせて適宜選択することが可能であり、例えば、矩形とすることができる。
【0066】
本実施形態に係るセパレータの厚みは、機械的強度およびリチウムイオン伝導性のバランスの観点から、好ましくは5μm以上50μm以下であり、より好ましくは10μm以上40μm以下であり、さらに好ましくは10μm以上30μm以下である。
【0067】
本実施形態に係るセパレータは、耐熱性をさらに向上させる観点から、上記樹脂層の少なくとも一方の面にセラミック層をさらに備えることが好ましい。ここで、セラミックス層は、本実施形態に係るセパレータの取り扱い性や、生産性等の観点から、樹脂層の一方の面のみに設けられていることが好ましいが、セパレータの耐熱性をより一層向上させる観点から、樹脂層の両面に設けられていてもよい。
本実施形態に係るセパレータは、上記セラミック層をさらに備えることにより、セパレータの熱収縮をより小さくすることができ、電極間の短絡をより一層防止することができる。
【0068】
上記セラミック層は、例えば、上記樹脂層上に、セラミック層形成材料を塗布して乾燥させることにより形成することができる。セラミック層形成材料としては、例えば、無機フィラーとバインダー樹脂とを適当な溶媒に溶解または分散させたものを用いることができる。
このセラミック層に用いられる無機フィラーは、リチウムイオン二次電池のセパレータに使用される公知の材料の中から適宜選択することができる。例えば、絶縁性の高い酸化物、窒化物、硫化物、炭化物等が好ましく、酸化アルミニウム、ベーマイト、酸化チタン、酸化ケイ素、酸化マグネシウム、酸化バリウム、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛および酸化鉄等から選択される一種または二種以上のセラミックスを粒子状に調整したものがより好ましい。これらの中でも、酸化アルミニウム、ベーマイトおよび酸化チタンが好ましい。
【0069】
上記バインダー樹脂は特に限定されず、例えば、カルボキシメチルセルロース(CMC)等のセルロース系樹脂;アクリル系樹脂;ポリビニリデンフロライド(PVDF)等のフッ素系樹脂;等が挙げられる。バインダー樹脂は、一種のみを単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0070】
これら成分を溶解または分散させる溶媒は特に限定されず、例えば、水、エタノール等のアルコール類、N-メチルピロリドン(NMP)、トルエン、ジメチルカーボネート(DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC)等から適宜選択して用いることができる。
【0071】
セラミックス層の厚みは、耐熱性、機械的強度、取扱い性およびリチウムイオン伝導性のバランスの観点から、好ましくは0.1μm以上50μm以下であり、より好ましくは0.5μm以上30μm以下であり、さらに好ましくは1μm以上15μm以下である。
【0072】
(電解質層)
電解質層は、正極と負極との間に介在するように配置される層である。電解質層はセパレータおよび電解液を含み、例えば、多孔性セパレータに非水電解液を含浸させたものが挙げられる。
【0073】
<外装体>
本実施形態に係る外装体は、例えば、略四角形の平面形状を有する。そして、本実施形態に係る外装体は、例えば、電池本体を収容する収容部と、収容部の周縁部に位置する熱融着性樹脂層同士が直接または電極端子を介して接合した接合部と、を有する。
【0074】
本実施形態に係る外装体は少なくとも熱融着性樹脂層とバリア層とを有し、かつ、電池本体を内部に封入できるものが好ましい。
電池の軽量化の観点からは少なくとも熱融着性樹脂層とバリア層とを有する積層フィルムを用いることが好ましい。バリア層は電解液の漏出や外部からの水分の侵入を防止する等のバリア性を有するものを選択することができ、例えば、ステンレス(SUS)箔、アルミニウム箔、アルミニウム合金箔、銅箔、チタン箔等の金属により構成されたバリア層を用いることができる。バリア層の厚みは、例えば、10μm以上100μm以下であり、好ましくは20μm以上80μm以下、より好ましくは30μm以上50μm以下である。
熱融着性樹脂層を構成する樹脂材料は、特に限定されないが、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン、ポリエチレンテレフタレート(PET)等を用いることができる。熱融着性樹脂層の厚みは、例えば、20μm以上200μm以下であり、好ましくは30μm以上150μm以下、より好ましくは50μm以上100μm以下である。
また、本実施形態に係る積層フィルムの熱融着性樹脂層やバリア層は、それぞれ1層に限定されるものではなく、2層以上であってもよい。
【0075】
本実施形態において、熱融着性樹脂層同士を電池本体を介して対向させ、電池本体を収納する部分の周囲を熱融着することで外装体を形成することができる。熱融着性樹脂層が形成された面と反対側の面となる外装体の外表面にはナイロンフィルム、ポリエステルフィルム等の樹脂層を設けることができる。
【0076】
熱融着性樹脂層同士の熱融着をおこなう際の加熱温度は熱融着性樹脂層を構成する樹脂材料の融点によって異なるが、例えば、熱融着性樹脂層を構成する樹脂材料がポリプロピレンの場合、好ましくは140℃~185℃であり、より好ましくは150℃~180℃である。
また、熱融着性樹脂層同士の熱融着をおこなう際の熱シール時間は、例えば、10秒~50秒、好ましくは12秒~30秒である。
【0077】
(電極端子)
本実施形態において、一対の電極端子30(正極端子および負極端子)には公知の部材を用いることができる。正極端子には、例えば、アルミニウムやアルミニウム合金で構成されたもの、負極端子には、例えば、銅や銅合金あるいはそれらにニッケルメッキを施したもの等を用いることができる。それぞれの端子は容器の外部に引き出されるが、それぞれの端子における外装体の周囲を熱溶着する部分に位置する箇所には熱融着性樹脂層をあらかじめ設ける。
【0078】
なお、図1においては、正極端子および負極端子は、外装体の同一辺から引き出されているが、正極端子および負極端子は外装体の異なる辺から引き出されていてもよい。
【0079】
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
なお、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
【0080】
(実施例1)
<正極の作製>
正極活物質としてリチウムニッケル含有複合酸化物(化学式:LiNi0.8Co0.15Al0.05、平均粒径:6μm)を93.9質量部、導電助剤としてカーボンブラックを3.0質量部、バインダー樹脂としてポリフッ化ビニリデン(PVDF)を3.0質量部、添加剤として無水蓚酸を0.1質量部用いた。これらを有機溶媒に分散させ、正極スラリーを調製した。この正極スラリーを、正極集電体である厚さ15μmのアルミニウム箔(引張伸度:6%)に連続的に塗布・乾燥し、次いで、プレスすることによって、正極集電体の塗布部(正極活物質層:片面の厚み60μm、密度:3.35g/cm)と塗布しない未塗布部とを備える正極ロールを作製した。
この正極ロールを、正極端子と接続するためのタブとなる未塗布部が残るように打ち抜いて、正極とした。
【0081】
<負極の作製>
負極活物質として天然黒鉛(平均粒径:16μm)を96.7質量部、導電助剤としてカーボンブラックを0.3質量部、バインダー樹脂としてスチレン・ブタジエンゴムを2.0質量部、増粘剤としてカルボキシメチルセルロースを1.0質量部用いた。これらを水に分散させ、負極スラリーを調製した。この負極スラリーを、負極集電体である厚さ8μmの銅箔(引張伸度:4%)に連続的に塗布・乾燥し、次いで、プレスすることによって、負極集電体の塗布部(負極活物質層:片面の厚み90μm、密度:1.55g/cm)と塗布しない未塗布部とを備える負極ロールを作製した。
この負極ロールを、負極端子と接続するためのタブとなる未塗布部が残るように打ち抜いて負極とした。
【0082】
<リチウムイオン二次電池の作製>
正極と負極とをセパレータを介してつづら折り構造で積層し、これに負極端子や正極端子を設け、積層体を得た。次いで、エチレンカーボネートとジエチルカーボネートとエチルメチルカーボネートとからなる溶媒に、1MのLiPFを溶かした電解液と、得られた積層体を可撓性フィルムに収容することで、積層型のラミネート電池を得た。この積層型のラミネート電池の定格容量を9.2Ah、正極を28層、負極を29層とした。
セパレータとしては、ポリエチレンテレフタレート(PET)からなる多孔性樹脂層と、ベーマイト粒子からなるセラミックス層とを備えるセパレータ1(厚さ:25μm、空孔率56%、樹脂層融点:250℃)を用いた。
また、最外負極上のセパレータの長さLと平均長さLを表1に記載の値に調整した。
【0083】
<評価>
(1)多孔性樹脂層の空孔率
下記式から求めた。
ε={1-Ws/(ds・t)}×100
ここで、ε:空孔率(%)、Ws:目付(g/m)、ds:真密度(g/cm)、t:膜厚(μm)である。
【0084】
(2)SEI膜の長さの測定
電極端子が露出していない側の一辺の中心部におけるセパレータの電池中心部側の端部の直下において、SEI膜の形成の有無をXPS分析により調べた。SEI膜が形成されている場合はL≧L>0の関係およびL≧L>0の関係を満たすとした。表1において、上記式を満足する場合をそれぞれ○とし、満足しない場合をそれぞれ×とした。
また、SEI膜の形成の有無は、XPS分析で調べた。具体的にはSEI膜が形成されている箇所はLiの比率が大きいため、Liの比率によってSEI膜の形成の有無を調べることができる。
【0085】
(3)最外層のセパレータの変質評価
得られたリチウムイオン二次電池に対して、定電流定電圧(CC-CV)法を用いて、25℃で、0.2Cの定電流で電圧4.2Vまで定電流充電し、次いで、4.2Vの定電圧で充電終止電流0.015Cまで定電圧充電し、次いで、放電レート0.2C、放電終止電圧2.5VでCC放電をおこなった。
次いで、初回の充放電が終わったリチウムイオン二次電池に対して、45℃で168時間静置し、エージング処理をおこなった。
得られたリチウムイオン二次電池を解体し、最外層のセパレータの変質を目視で観察し、以下の基準でそれぞれ評価した。
◎◎:最外層のセパレータ表面には変色部位が観察されない
◎:直径が1~5mm程度の変色部位が1~2個観察されるが、セパレータ全体としては変質が抑制されている
○:長さ5mm~20mm、幅1~5mm程度の薄褐色の変色部位が1~2個観察されるが、セパレータ全体としては変質が抑制されている
△:最外層のセパレータ表面の全体にわたって薄い褐色の変色部位が観察されるが、セパレータ全体としては変質が抑制されている
×:最外層のセパレータ表面の全体にわたって濃い褐色の変色部位が観察され、セパレータ全体が変質している
得られた評価結果を表1に示す。
【0086】
(実施例2~4および比較例1)
およびLを表1に示す値に変えた以外は実施例1と同様にしてリチウムイオン二次電池をそれぞれ作製し、実施例1と同様の評価をそれぞれおこなった。
得られた評価結果を表1にそれぞれ示す。
【0087】
【表1】
【0088】
表1から、L≧L>0の関係を満たす実施例のリチウムイオン二次電池は最外層のセパレータの変質が抑制されていた。これに対し、L≧L>0の関係を満たさない比較例のリチウムイオン二次電池は最外層のセパレータ表面が変質していた。
【0089】
この出願は、2018年6月29日に出願された日本出願特願2018-125016号を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。
図1
図2
図3
図4
図5