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特許7027682ゴルフボール用樹脂組成物およびゴルフボール
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  • 特許-ゴルフボール用樹脂組成物およびゴルフボール 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-21
(45)【発行日】2022-03-02
(54)【発明の名称】ゴルフボール用樹脂組成物およびゴルフボール
(51)【国際特許分類】
   A63B 37/00 20060101AFI20220222BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20220222BHJP
   C08L 25/02 20060101ALI20220222BHJP
   C08K 5/09 20060101ALI20220222BHJP
【FI】
A63B37/00 412
A63B37/00 618
C08L101/00
C08L25/02
C08K5/09
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2016248155
(22)【出願日】2016-12-21
(65)【公開番号】P2018099435
(43)【公開日】2018-06-28
【審査請求日】2019-10-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100125184
【弁理士】
【氏名又は名称】二口 治
(74)【代理人】
【識別番号】100188488
【弁理士】
【氏名又は名称】原谷 英之
(72)【発明者】
【氏名】重光 貴裕
【審査官】赤坂 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-154969(JP,A)
【文献】特開2006-087949(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0048327(US,A1)
【文献】特表2011-526953(JP,A)
【文献】特開2014-069045(JP,A)
【文献】特開平04-109969(JP,A)
【文献】特開平03-047282(JP,A)
【文献】特開2016-083368(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63B 37/00-37/14
C08L 101/00
C08L 25/02
C08K 5/09
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コアと、前記コアを被覆する1層以上の中間層と、前記中間層を被覆するカバーとを有するゴルフボールであって、
前記中間層の少なくとも1層が、
(A)主鎖にアミド結合(-NH-CO-)を複数有する重合体であるポリアミド、および、エチレン-ビニルアルコール共重合体よりなる群から選択される少なくとも1種と、
(B)(b-1)オレフィンと炭素数3~8個のα,β-不飽和カルボン酸との二元共重合体、(b-2)オレフィンと炭素数3~8個のα,β-不飽和カルボン酸との二元共重合体の金属イオン中和物、(b-3)オレフィンと炭素数3~8個のα,β-不飽和カルボン酸とα,β-不飽和カルボン酸エステルとの三元共重合体、および、(b-4)オレフィンと炭素数3~8個のα,β-不飽和カルボン酸とα,β-不飽和カルボン酸エステルとの三元共重合体の金属イオン中和物より成る群から選択される少なくとも1種の樹脂成分と、
(C)炭素数が18以下の脂肪酸金属塩とを含有し、
樹脂成分として、前記(A)成分および(B)成分のみを含有するゴルフボール用樹脂組成物から形成されていることを特徴とするゴルフボール。
【請求項2】
前記(C)炭素数が18以下の脂肪酸金属塩は、ヒドロキシ基、ハロゲンおよびジアルキルアミノ基より成る群から選択される少なくとも1種の置換基を有する請求項1に記載のゴルフボール。
【請求項3】
(A)成分と(B)成分の合計100質量部に対して、(C)成分を0.1質量部以上、5質量部未満含有する請求項1または2に記載のゴルフボール。
【請求項4】
前記(C)炭素数が18以下の脂肪酸金属塩を構成する金属イオンは、アルミニウムイオン、ナトリウムイオン、亜鉛イオン、カルシウムイオンおよびマグネシウムイオンより成る群から選択される少なくとも1種である請求項1~3のいずれか一項に記載のゴルフボール。
【請求項5】
前記(A)成分と(B)成分との質量比率((A)/(B))が、5/95~95/5である請求項1~4のいずれか一項に記載のゴルフボール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴルフボール用樹脂組成物に関する技術であり、より詳細には、耐久性と反発性の改良に関する技術である。
【背景技術】
【0002】
従来から、ゴルフボールに対して、飛距離だけではなく、耐久性に優れることも求められている。このようなゴルフボールに使用される材料としては、アイオノマー樹脂に対して様々な改良が行われたゴルフボール用樹脂材料が提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、(A)酸素含有無機金属化合物、(B)多元共重合体ポリアミドよりなる群から選択された1種又は2種以上からなるポリマー、(C)オレフィン-不飽和カルボン酸二元共重合体,オレフィン-不飽和カルボン酸-不飽和カルボン酸エステル三元共重合体,不飽和カルボン酸無水物含有ポリマー,不飽和ジカルボン酸含有ポリマー及び不飽和ジカルボン酸ハーフエステル含有ポリマーよりなる群から選択された1種又は2種以上からなる酸含量0.5~30質量%を有する酸含有ポリマーを必須成分として配合してなることを特徴とするゴルフボール用材料が開示されている。
【0004】
特許文献2には、センターと前記センターを被覆する一以上の中間層とからなるコアと、前記コアを被覆するカバーとを有するゴルフボールであって、前記中間層の少なくとも1つまたは1層は、(A)曲げ弾性率700MPa~5000MPaを有する高弾性樹脂と、(B)曲げ弾性率150MPa~1000MPaを有するアイオノマー樹脂とを含有し、
前記(A)高弾性樹脂と(B)アイオノマー樹脂との含有比率(合計100質量%)が、(A)高弾性樹脂/(B)アイオノマー樹脂=20質量%~80質量%/80質量%~20質量%である高弾性中間層用組成物から形成されていることを特徴とするゴルフボールが開示されています。
【0005】
また、部材の薄肉化や生産性向上を図るために、ゴルフボール用樹脂材料に対して、良好な成形性(流動性)が求められている。ゴルフボール用樹脂材料の流動性を向上させる技術として、例えば、特許文献3、4のように、脂肪酸またはその金属塩を添加することが行われている。
【0006】
特許文献3には、(a)オレフィン-不飽和カルボン酸2元ランダム共重合体及び/又はオレフィン-不飽和カルボン酸2元ランダム共重合体の金属イオン中和物と、(b)オレフィン-不飽和カルボン酸-不飽和カルボン酸エステル3元ランダム共重合体及び/又はオレフィン-不飽和カルボン酸-不飽和カルボン酸エステル3元ランダム共重合体の金属イオン中和物とを質量比で100:0~25:75になるように配合したベース樹脂と、(e)非アイオノマー熱可塑性エラストマーとを質量比で100:0~50:50になるように配合した樹脂成分100質量部に対して、(c)分子量が280~1500の脂肪酸及び/又はその誘導体5~80質量部と、(d)上記ベース樹脂及び(c)成分中の未中和の酸基を中和できる塩基性無機金属化合物0.1~10質量部とを必須成分として配合してなる混合物であることを特徴とするゴルフボール用材料が開示されている。
【0007】
また、特許文献4には、コアと、コアを被覆する1層又は複数層のカバーとを備えたゴルフボールにおいて、上記カバーを構成する少なくとも1層が、(a)エチレン-アクリル酸共重合体の2価金属により中和されたアイオノマー樹脂と(b)オレフィン-不飽和カルボン酸共重合体又はオレフィン-不飽和カルボン酸-不飽和カルボン酸エステル共重合体とを(a)/(b)=100/0~80/20(重量比)の割合で含む成分と、(c)オレフィン系熱可塑性エラストマー、スチレン系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマーから選ばれる熱可塑性エラストマーとを、[(a)+(b)]/(c)=100/0~50/50(重量比)の割合で混合してなる成分に、更に(d)分子量280~1500の脂肪酸又はその誘導体、(e)塩基性金属化合物とをそれぞれ[(a)+(b)+(c)]/(d)=100/5~100/25(重量比)、[(a)+(b)+(c)]/(e)=100/0.1~100/10(重量比)となる割合で含有させた混合物を主成分として形成されたことを特徴とするゴルフボールが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2009-247891号公報
【文献】特開2009-261791号公報
【文献】特開2002-219195号公報
【文献】特開2003-339910号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1、2のように、アイオノマー樹脂にそのほかの樹脂成分を含有することで耐久性を向上することが検討されているが、得られた材料の耐久性が必ずしも十分であるとは言えず、まだ改善の余地がある。また、特許文献3、4のように、ゴルフボール用樹脂材料に脂肪酸またはその金属塩を添加することで流動性向上効果を図っているが、多量の脂肪酸またはその金属塩を使用しているので、得られたゴルフボールの反発性および耐久性が共に低下してしまう。
【0010】
本発明は、前記事情に鑑みてなされたものであり、ゴルフボールに優れた反発性と耐久性を付与するゴルフボール用樹脂組成物を提供することを目的とする。さらに、本発明は、反発性と耐久性に優れるゴルフボールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決することができた本発明のゴルフボール用樹脂組成物は、(A)ポリアミド、エチレン-ビニルアルコール共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体部分ケン化物、および、ポリビニルアルコールよりなる群から選択される少なくとも1種と、(B)(b-1)オレフィンと炭素数3~8個のα,β-不飽和カルボン酸との二元共重合体、(b-2)オレフィンと炭素数3~8個のα,β-不飽和カルボン酸との二元共重合体の金属イオン中和物、(b-3)オレフィンと炭素数3~8個のα,β-不飽和カルボン酸とα,β-不飽和カルボン酸エステルとの三元共重合体、および、(b-4)オレフィンと炭素数3~8個のα,β-不飽和カルボン酸とα,β-不飽和カルボン酸エステルとの三元共重合体の金属イオン中和物より成る群から選択される少なくとも1種の樹脂成分と、(C)炭素数が18以下の脂肪酸金属塩とを含有することを特徴とする。
【0012】
本発明のゴルフボールは、コアと、前記コアを被覆する1層以上の中間層と、前記中間層を被覆するカバーとを有し、前記中間層の少なくとも1層が、前記ゴルフボール用樹脂組成物から形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明のゴルフボール用樹脂組成物を用いれば、反発性と耐久性に優れたゴルフボールが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施態様に係るゴルフボールが示された一部切り欠き断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(1)ゴルフボール用樹脂組成物
本発明のゴルフボール用樹脂組成物は、(A)ポリアミド、エチレン-ビニルアルコール共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体部分ケン化物、および、ポリビニルアルコールよりなる群から選択される少なくとも1種と、(B)(b-1)オレフィンと炭素数3~8個のα,β-不飽和カルボン酸との二元共重合体、(b-2)オレフィンと炭素数3~8個のα,β-不飽和カルボン酸との二元共重合体の金属イオン中和物、(b-3)オレフィンと炭素数3~8個のα,β-不飽和カルボン酸とα,β-不飽和カルボン酸エステルとの三元共重合体、および、(b-4)オレフィンと炭素数3~8個のα,β-不飽和カルボン酸とα,β-不飽和カルボン酸エステルとの三元共重合体の金属イオン中和物より成る群から選択される少なくとも1種の樹脂成分と、(C)炭素数が18以下の脂肪酸金属塩とを含有することを特徴とする。
【0016】
まず、本発明で使用する(A)成分について説明する。
【0017】
前記(A)成分として使用されるポリアミドは、主鎖にアミド結合(-NH-CO-)を複数有する重合体であれば特に限定されない。前記ポリアミドとしては、例えば、ラクタムの開環重合、アミノ酸の縮合反応、ジアミン成分とジカルボン酸成分との縮合反応により、アミド結合が分子内に形成された生成物が挙げられる。
【0018】
前記ラクタムとしては、例えば、ε-カプロラクタム、ウンデカンラクタム、ラウリルラクタムなどが挙げられる。前記アミノ酸としては、6-アミノカプロン酸、11-アミノウンデカン酸、12-アミノドデカン酸、パラアミノメチル安息香酸などが挙げられる。
【0019】
前記ジアミン成分としては、脂肪族ジアン、芳香族ジアミン、脂環族ジアミンが挙げられる。前記脂肪族ジアンとしては、テトラメチレンジアミン、ヘキサメレンジアミン、2-メチルペンタメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジアミン、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジアミン、5-メチルノナメチレンジアミンなどが挙げられる。前記芳香族ジアミンとしては、メタキシリレンジアミン、パラキシリレンジアミンなどが挙げられる。前記脂環族ジアミンとしては、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1-アミノ-3-アミノメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキサン、ビス(4-アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(3-メチル-4-アミノシクロヘキシル)メタン、2,2-ビス(4-アミノシクロヘキシル)プロパン、ビス(アミノプロピル)ピペラジン、アミノエチルピペラジンなどが挙げられる。
【0020】
前記ジカルボン酸成分としては、脂肪族ジカルボン酸、芳香族ジカルボン酸、脂環族ジカルボン酸などが挙げられる。前記脂肪族ジカルボン酸としては、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸などが挙げられる。前記芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、2-クロロテレフタル酸、2-メチルテレフタル酸、5-メチルイソフタル酸、5-ナトリウムスルホイソフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸などが挙げられる。前記脂環族ジカルボン酸としては、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸などが挙げられる。
【0021】
前記ポリアミドとしては、例えば、脂肪族系ポリアミド、半芳香族系ポリアミド、芳香族系ポリアミドが挙げられる。前記脂肪族系ポリアミドとしては、ポリアミド6、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド66、ポリアミド610、ポリアミド612などが挙げられる。前記半芳香族系ポリアミドとしては、ポリアミド6T、ポリアミド6I、ポリアミド9T、ポリアミドM5Tなどが挙げられる。前記芳香族系ポリアミドとしては、ポリ-p-フェニレンテレフタルアミド、ポリ-m-フェニレンイソフタルアミドなどが挙げられる。これらは単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、加工性、耐久性の観点から、脂肪族系ポリアミドが好ましく、特にポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド610、ポリアミド11、ポリアミド12が好適である。
【0022】
前記ポリアミドとしては、例えば、アルケマ社から市販されている「リルサン(登録商標)A(例えば、AESN TL、AESN P20 TL、AESN P40 TL、MA3610、AMF O、AMN O、AMN O TLD、AMN AK TLD、AMN P20 D、AMN P40 Dなど)」、DSMエンジニアリングプラスチックス社から市販されている「ノバミッド(登録商標)(例えば、1010C2、1011CH5,1013C5,1010N2,1010N2-2、1010N2-1ES,1013G(H)10-1、1013G(H)15-1、1013G(H)20-1、1013G(H)30-1、1013(H)45-1、1015G33、1015GH35、1015GSTH、1010GN2-30、1015F2、ST220、ST145、3010SR、3010N5-SL4、3021G(H)30、3010GN30など)」、東レ社製「アミラン(登録商標)(例えば、CM1007、CM1017、CM1017XL3、CM1017K、CM1026、CM3007、CM3001-N、CM3006、CM3301Lなど)」などが挙げられる。
【0023】
前記ポリアミドの曲げ弾性率(ISO178)は、500MPa以上が好ましく、より好ましくは520MPa以上、さらに好ましくは550MPa以上、特に好ましくは2500MPa以上であり、4,000MPa以下が好ましく、より好ましくは3,500MPa以下、さらに好ましくは3,200MPa以下である。前記ポリアミドの曲げ弾性率が500MPa以上であれば、得られるゴルフボールの構成部材が高弾性化される。また、前記ポリアミドの曲げ弾性率が4,000MPa以下であれば、得られるゴルフボール構成部材が硬くなりすぎず、打球感が良好となる。
【0024】
前記ポリアミドのスラブ硬度は、ショアD硬度で、55以上が好ましく、より好ましくは60以上、さらに好ましくは65以上であり、90以下が好ましく、より好ましくは87以下、さらに好ましくは85以下である。スラブ硬度が55以上であれば樹脂組成物から形成される層の硬度が高められ、ゴルフボールの低スピン効果がより大きくなり、90以下であれば樹脂組成物から形成される層が硬くなり過ぎず、ゴルフボールの打球感が良好となる。
【0025】
前記ポリアミドのMFR(ISO113)(260℃×325g荷重)は、5g/min以上が好ましく、より好ましくは8g/min以上、さらに好ましくは20g/min以上であり、170g/min以下が好ましく、より好ましくは150g/10min以下、さらに好ましくは120g/10min以下である。前記ポリアミドのMFR(260℃×325g荷重)が5g/10min以上であれば、流動性が良好となり、ゴルフボールの構成部材への成形が容易になる。また、前記ポリアミドのMFR(260℃×325g荷重)が170g/10min以下であれば、得られるゴルフボールの耐久性がより良好となる。
【0026】
前記ポリアミドの重合度には、特に限定がなく、ISO307に準拠する方法で測定した相対粘度が、1.5~5.0の範囲が好ましく、2.0~4.0の範囲がより好ましい。
【0027】
前記ポリアミドとしては、例えば、結晶と非晶の混在状態で構成されているものが好ましい。この場合、前記ポリアミドの結晶化度は、5%以上が好ましく、6%以上がより好ましく、6.5%以上がさらに好ましく、15%以下が好ましく、14%以下がより好ましく、13%以下がさらに好ましい。前記結晶化度Xは、次式で算出することができる。
X={dc(d-da)}/{d(dc-da)}
ここで、dc:結晶質の密度、da:非晶質の密度、d:試料の密度
【0028】
前記(A)成分として使用されるエチレン-ビニルアルコール共重合体は、繰り返し単位として、エチレンに由来する繰り返し単位とビニルアルコールに由来する繰り返し単位とを有するものであれば特に限定されない。前記エチレン-ビニルアルコール共重合体は、例えば、下記の式(1)で表される。
【化1】
[式中、kはエチレンに由来する繰り返し単位の数を表し、lはビニルアルコールに由来する繰り返し単位の数を表す。]
【0029】
前記エチレン-ビニルアルコール共重合体は、例えば、エチレンに由来する繰り返し単位と、ビニルアルコールに由来する繰り返し単位のみを有する態様、および、これらの繰り返し単位に加え、その他の繰り返し単位を含んでいる態様が挙げられる。その他の繰り返し単位を含んでいる場合、その他の繰り返し単位の含有率は、エチレン-ビニルアルコール共重合体の繰り返し単位全体において、20モル%以下であることが好ましく、より好ましくは10モル%以下、さらに好ましくは5モル%以下である。なお、本発明で使用するエチレン-ビニルアルコール共重合体は、エチレンに由来する繰り返し単位と、ビニルアルコールに由来する繰り返し単位のみからなることが好ましい。
【0030】
前記エチレン-ビニルアルコール共重合体中のエチレンに由来する繰り返し単位の含有率は、15モル%以上が好ましく、20モル%以上がより好ましく、25モル%以上がさらに好ましく、60モル%以下が好ましく、55モル%以下がより好ましく、50モル%以下がさらに好ましい。エチレンに由来する繰り返し単位の含有率が、上記範囲であれば、所望の熱可塑性を有し、アイオノマーとの溶融混練がしやすくなるからである。
【0031】
前記エチレン-ビニルアルコール共重合体としては、例えば、エチレンとビニルエステル(例えば、酢酸ビニル)との共重合体を完全ケン化して得られた完全ケン化物(ケン化度が100モル%のもの)が挙げられる。前記エチレン-ビニルアルコール共重合体の具体例としては、例えば、日本合成化学社製のソアライトTMが挙げられる。
【0032】
前記(A)成分として使用されるエチレン-酢酸ビニル共重合体部分ケン化物は、繰り返し単位として、エチレンに由来する単位と、酢酸ビニルに由来する単位と、ビニルアルコールに由来する単位とを有するものであれば特に限定されない。
【0033】
前記エチレン-酢酸ビニル共重合体部分ケン化物は、下記の式2で表すことができる。
【化2】
[式中、kは、エチレンに由来する繰り返し単位の数を表し、lは、ビニルアルコールに由来する繰り返し単位の数を表し、nは、酢酸ビニルに由来する繰り返し単位の数を表す。]
【0034】
前記エチレン-酢酸ビニル共重合体部分ケン化物としては、例えば、エチレンに由来する繰り返し単位と、酢酸ビニルに由来する繰り返し単位と、ビニルアルコールに由来する繰り返し単位のみを有する態様、および、これらの繰り返し単位に加え、その他の繰り返し単位を含んでいる態様が挙げられる。その他の繰り返し単位を含んでいる場合、その他の繰り返し単位の含有率が、エチレン-酢酸ビニル共重合体部分ケン化物の繰り返し単位全体において、20モル%以下であることが好ましく、より好ましくは10モル%以下、さらに好ましくは5モル%以下である。なお、本発明で使用するエチレン-酢酸ビニル共重合体部分ケン化物としては、エチレンに由来する繰り返し単位と、酢酸ビニルに由来する繰り返し単位と、ビニルアルコールに由来する繰り返し単位のみを有するものが好ましい。
【0035】
前記エチレン-酢酸ビニル共重合体部分ケン化物としては、例えば、エチレン-酢酸ビニル共重合体を部分ケン化して得られたケン化度が100モル%未満のものが挙げられる。ケン化することにより、酢酸ビニルに由来する繰り返し単位からビニルアルコール由来の繰り返し単位が生成する。
【0036】
前記エチレン-酢酸ビニル共重合体部分ケン化物は、ケン化前のエチレン-酢酸ビニル共重合体の酢酸ビニルの含有率が、1質量%以上が好ましく、2質量%以上がより好ましく、3質量%以上がさらに好ましく、50質量%以下が好ましく、45質量%以下がより好ましく、42質量%以下がさらに好ましい。また、ケン化度は、10モル%以上が好ましく、15モル%以上がより好ましく、20モル%以上がさらに好ましく、98モル%以下が好ましく、95モル%以下がより好ましく、90モル%以下がさらに好ましい。
【0037】
前記エチレン-ビニルアルコール共重合体またはエチレン-酢酸ビニル共重合体部分ケン化物の曲げ剛性率は、300MPa以上が好ましく、より好ましくは310MPa以上、さらに好ましくは400MPa以上、特に好ましくは600MPa以上であり、5000MPa以下が好ましく、より好ましくは4900MPa以下、さらに好ましくは4800MPa以下である。前記曲げ剛性率が300MPa以上であれば、樹脂組成物から形成される層の剛性が高められ、ゴルフボールの低スピン効果がより大きくなる。また、前記曲げ剛性率が5000MPa以下であれば、得られるゴルフボール構成部材が硬くなりすぎず、打球感が良好となる。
【0038】
前記エチレン-ビニルアルコール共重合体またはエチレン-酢酸ビニル共重合体部分ケン化物のスラブ硬度は、ショアD硬度で、55以上が好ましく、より好ましくは60以上、さらに好ましくは65以上であり、90以下が好ましく、より好ましくは88以下、さらに好ましくは85以下である。スラブ硬度が55以上であれば樹脂組成物から形成される層の硬度が高められ、ゴルフボールの低スピン効果がより大きくなり、90以下であれば樹脂組成物から形成される層が硬くなり過ぎず、ゴルフボールの打球感が良好となる。
【0039】
前記(A)成分として使用されるポリビニルアルコールは、下記式(3)または下記式(4)で表されるものが好ましい。
【0040】
【化3】
[式中、lはビニルアルコールに由来する繰り返し単位の数を表す。]
【0041】
【化4】
[式中、lはビニルアルコールに由来する繰り返し単位の数を表し、nは酢酸ビニルに由来する繰り返し単位の数を表す。]
【0042】
式(3)で表されるポリビニルアルコールとしては、例えば、ポリビニルエステル(例えば、ポリ酢酸ビニル)を完全ケン化して得られたものを挙げることができ、式(4)で表されるポリビニルアルコールは、ポリビニルエステル(例えば、ポリ酢酸ビニル)を部分ケン化して得られたもの(完全ケン化物、部分ケン化物)を挙げることができる。
【0043】
式(4)で表されるポリビニルアルコールのケン化度は、60モル%以上であることが好ましく、より好ましくは80モル%以上、さらに好ましくは90モル%以上、特に好ましくは95モル%以上である。式(4)で表されるポリビニルアルコールのケン化度は、100モル%未満である。
【0044】
なお、前記ケン化度は、JIS K 6726に準拠して測定することができる。
【0045】
前記ポリビニルアルコールの具体例としては、例えば、日本合成化学社製のゴーセノールTM(N型(完全ケン化型)、A型(準完全ケン化型)、G型(部分ケン化型)、K型(部分ケン化型)が挙げられる。
【0046】
前記(A)成分は、ポリアミド、エチレン-ビニルアルコール共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体部分ケン化物、および、ポリビニルアルコールよりなる群から選択される少なくとも1種であればよい。例えば、(A)成分として、ポリアミドまたはエチレン-ビニルアルコール共重合体をそれぞれ単独で使用してもよいし、ポリアミドと、エチレン-ビニルアルコール共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体部分ケン化物、ポリビニルアルコールよりなる群から選択される少なくとも1種とを併用してもよい。併用する場合、ポリアミドとエチレン-ビニルアルコール共重合体とを併用することが好ましい。ポリアミドとエチレン-ビニルアルコール共重合体とを併用することで、高い反発性が維持されながら、耐久性が一層向上したゴルフボール構成部材が得られる。
【0047】
前記(A)成分として、ポリアミドと、エチレン-ビニルアルコール共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体部分ケン化物、ポリビニルアルコールよりなる群から選択される少なくとも1種(特に、エチレン-ビニルアルコール共重合体)とを併用する場合、これらの質量比率(ポリアミド/エチレン-ビニルアルコール共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体部分ケン化物、ポリビニルアルコールから選択される少なくとも1種)は、2以上であることが好ましく、より好ましくは4以上、さらに好ましくは6以上、20以下であることが好ましく、より好ましくは15以下、さらに好ましくは10以下である。
【0048】
前記ゴルフボール用樹脂組成物の樹脂成分中の(A)成分の含有率は、5質量%以上が好ましく、より好ましくは10質量%以上、さらに好ましくは20質量%以上であり、95質量%以下が好ましく、より好ましくは85質量%以下、さらに好ましくは75質量%以下、最も好ましくは65質量%以下である。(A)成分の含有率が5質量%以上であれば(A)成分による高弾性化や高剛性化の効果がより発揮され、95質量%以下であれば得られる層の耐久性が良好となる。
【0049】
次に、本発明で使用する(B)成分について説明する。前記(B)成分は、(b-1)オレフィンと炭素数3~8個のα,β-不飽和カルボン酸との二元共重合体(以下、「(b-1)二元共重合体」と称する場合がある。)、(b-2)オレフィンと炭素数3~8個のα,β-不飽和カルボン酸との二元共重合体の金属イオン中和物(以下、「(b-2)二元系アイオノマー樹脂」と称する場合がある。)、(b-3)オレフィンと炭素数3~8個のα,β-不飽和カルボン酸とα,β-不飽和カルボン酸エステルとの三元共重合体(以下、「(b-3)三元共重合体」と称する場合がある。)、および、(b-4)オレフィンと炭素数3~8個のα,β-不飽和カルボン酸とα,β-不飽和カルボン酸エステルとの三元共重合体の金属イオン中和物(以下、「(b-4)三元系アイオノマー樹脂」と称する場合がある。)より成る群から選択される少なくとも1種を含有する。なお、前記(b-1)二元共重合体、(b-2)二元系アイオノマー樹脂、(b-3)三元共重合体、および、(b-4)三元系アイオノマー樹脂は、それぞれ単独または二種以上を組み合わせて使用しても良い。
【0050】
前記(b-1)成分および前記(b-3)成分は、共重合体が有するカルボキシル基が中和されていない非イオン性のものである。
【0051】
前記(b-1)二元共重合体または(b-3)三元共重合体中の炭素数3~8個のα,β-不飽和カルボン酸成分の含有率は、4質量%以上が好ましく、より好ましくは5質量%以上であり、高剛性化を図る点からは、16質量%以上がさらに好ましく、18質量%以上が最も好ましい。また、含有率の上限は特に限定されないが、30質量%が好ましく、より好ましくは25質量%である。
【0052】
前記(b-1)二元共重合体または(b-3)三元共重合体のメルトフローレイト(以下、「MFR」と称する場合がある。)(190℃、2.16kg荷重)は、5g/10min以上が好ましく、より好ましくは10g/10min以上、さらに好ましくは15g/10min以上であり、1700g/10min以下が好ましく、より好ましくは1500g/10min以下、さらに好ましくは1300g/10min以下である。前記(b-1)二元共重合体または(b-3)三元共重合体のMFR(190℃、2.16kg荷重)が5g/10min以上であれば、ゴルフボール用樹脂組成物の流動性が良好となり、薄い構成部材を成形しやすくなる。また、前記(b-1)二元共重合体または(b-3)三元共重合体のMFR(190℃、2.16kg荷重)が1700g/10min以下であれば、得られるゴルフボールの耐久性がより良好となる。
【0053】
前記(b-2)成分および前記(b-4)成分は、共重合体が有するカルボキシル基の少なくとも一部が金属イオンで中和されたアイオノマー樹脂である。
【0054】
前記(b-2)二元系アイオノマー樹脂、および、(b-4)三元系アイオノマー樹脂は、予め中和されたアイオノマー樹脂を用いてもよいし、オレフィンと、炭素数3~8個のα,β-不飽和カルボン酸との二元共重合体、および/または、オレフィンと炭素数3~8個のα,β-不飽和カルボン酸とα,β-不飽和カルボン酸エステルとの三元共重合体と金属化合物とを混合して用いてもよい。成形時に、オレフィンと、炭素数3~8個のα,β-不飽和カルボン酸との二元共重合体、および/または、オレフィンと炭素数3~8個のα,β-不飽和カルボン酸とα,β-不飽和カルボン酸エステルとの三元共重合体のカルボキシル基が金属化合物で中和されて、アイオノマー樹脂を形成するからである。二元共重合体および/または三元共重合体のカルボキシル基を中和するための金属化合物としては、例えば、水酸化マグネシウム、水酸化亜鉛、水酸化カルシウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化カリウム、水酸化銅などの金属水酸化物;酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化亜鉛、酸化銅などの金属酸化物;炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、炭酸リチウム、炭酸カリウムなどの金属炭酸化物が挙げられる。
【0055】
前記(b-2)二元系アイオノマー樹脂または前記(b-4)三元系アイオノマー樹脂中の炭素数3~8個のα,β-不飽和カルボン酸成分の含有率は、2質量%以上が好ましく、より好ましくは3質量%以上であり、高剛性化を図る点からは、16質量%以上がさらに好ましく、17質量%以上が最も好ましい。また、含有率の上限は特に限定されないが、30質量%が好ましく、より好ましくは25質量%である。
【0056】
前記(b-2)成分および(b-4)成分のカルボキシル基の少なくとも一部を中和する金属イオンとしては、ナトリウム、カリウム、リチウムなどの1価の金属イオン;マグネシウム、カルシウム、亜鉛、バリウム、カドミウムなどの2価の金属イオン;アルミニウムなどの3価の金属イオン;錫、ジルコニウムなどのその他のイオンが挙げられる。
【0057】
前記(b-2)二元系アイオノマー樹脂の中和度は、15モル%以上が好ましく、20モル%以上が好ましく、90モル%以下が好ましく、85モル%以下がより好ましい。中和度が15モル%以上であれば、得られるゴルフボールの反発性および耐久性がより良好になる。一方、中和度が90モル%以下であれば、ゴルフボール用樹脂組成物の流動性が良好になる(成形性が良い)。
【0058】
前記(b-4)三元系アイオノマー樹脂の中和度は、20モル%以上が好ましく、より好ましくは30モル%以上であり、90モル%以下が好ましく、より好ましくは85モル%以下である。中和度が20モル%以上であれば、ゴルフボール用樹脂組成物を用いて得られるゴルフボールの反発性および耐久性がより良好になり、90モル%以下であれば、ゴルフボール用樹脂組成物の流動性が良好になる(成形性が良い)。
【0059】
なお、アイオノマー樹脂の中和度は、下記式で求めることができる。
アイオノマー樹脂の中和度(モル%)=100×アイオノマー樹脂中の中和されているカルボキシル基のモル数/アイオノマー樹脂中のカルボキシル基の総モル数
【0060】
前記(b-2)二元系アイオノマー樹脂の曲げ弾性率は、140MPa以上が好ましく、より好ましくは150MPa以上、さらに好ましくは160MPa以上、特に好ましくは200MPa以上であり、550MPa以下が好ましく、より好ましくは500MPa以下、さらに好ましくは450MPa以下である。曲げ弾性率が上記範囲内であれば、ゴルフボールの飛行性能が優れるとともに、耐久性も良好となる。
【0061】
前記(b-2)二元系アイオノマー樹脂のスラブ硬度は、ショアD硬度で50以上が好ましく、より好ましくは55以上、さらに好ましくは60以上であり、75以下が好ましく、より好ましくは73以下、さらに好ましくは70以下である。前記スラブ硬度が、ショアD硬度で50以上であれば、得られる構成部材が高硬度となる。また、前記スラブ硬度が、ショアD硬度で75以下であれば、得られる構成部材が硬くなりすぎず、ゴルフボールの耐久性がより良好となる。
【0062】
前記(b-2)二元系アイオノマー樹脂のMFR(190℃、2.16kg荷重)は、0.1g/10min以上が好ましく、より好ましくは0.5g/10min以上、さらに好ましくは1.0g/10min以上であり、30g/10min以下が好ましく、より好ましくは20g/10min以下、さらに好ましくは15g/10min以下である。前記(b-2)二元系アイオノマー樹脂のMFR(190℃、2.16kg荷重)が0.1g/10min以上であれば、ゴルフボール用樹脂組成物の流動性が良好となり、例えば、得られる構成部材の薄肉化が可能となる。また、前記(b-2)二元系アイオノマー樹脂のMFR(190℃、2.16kg荷重)が30g/10min以下であれば、得られるゴルフボールの耐久性がより良好となる。
【0063】
前記(b-4)三元系アイオノマー樹脂の曲げ弾性率は、10MPa以上が好ましく、より好ましくは11MPa以上、さらに好ましくは12MPa以上であり、100MPa以下が好ましく、より好ましくは97MPa以下、さらに好ましくは95MPa以下である。曲げ弾性率が上記範囲内であれば、ゴルフボールの飛行性能に優れるとともに、耐久性も良好となる。
【0064】
前記(b-4)三元系アイオノマー樹脂のスラブ硬度は、ショアD硬度で20以上が好ましく、より好ましくは25以上、さらに好ましくは30以上であり、70以下が好ましく、より好ましくは65以下、さらに好ましくは60以下である。前記スラブ硬度が、ショアD硬度で20以上であれば、得られる構成部材が柔らかく成り過ぎず、ゴルフボールの反発性が良好になる。また、前記スラブ硬度が、ショアD硬度で70以下であれば、得られる構成部材が硬くなりすぎず、ゴルフボールの耐久性がより良好となる。
【0065】
前記(b-4)三元系アイオノマー樹脂のMFR(190℃、2.16kg荷重)は、0.1g/10min以上が好ましく、より好ましくは0.3g/10min以上、さらに好ましくは0.5g/10min以上であり、20g/10min以下が好ましく、より好ましくは15g/10min以下、さらに好ましくは10g/10min以下である。前記(b-4)三元系アイオノマー樹脂のMFR(190℃、2.16kg荷重)が0.1g/10min以上であれば、ゴルフボール用樹脂組成物の流動性が良好となり、薄い構成部材の成形が可能となる。また、前記(b-4)三元系アイオノマー樹脂のMFR(190℃、2.16kg荷重)が20g/10min以下であれば、得られるゴルフボールの耐久性がより良好となる。
【0066】
前記(b-1)、(b-2)、(b-3)および(b-4)成分を構成するオレフィンとしては、炭素数が2~8個のオレフィンが好ましく、例えば、エチレン、プロピレン、ブテン、ペンテン、ヘキセン、ヘプテン、オクテン等を挙げることができ、特にエチレンであることが好ましい。
【0067】
前記(b-1)、(b-2)、(b-3)および(b-4)成分を構成する炭素数3~8個のα,β-不飽和カルボン酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、マレイン酸、クロトン酸等が挙げられ、特にアクリル酸またはメタクリル酸が好ましい。
【0068】
前記(b-3)および(b-4)成分を構成するα,β-不飽和カルボン酸エステルとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、マレイン酸等のメチル、エチル、プロピル、n-ブチル、イソブチルエステル等が用いられ、特にアクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステルが好ましい。
【0069】
前記(b-1)二元共重合体としては、エチレンと(メタ)アクリル酸との二元共重合体が好ましい。前記(b-2)二元系アイオノマー樹脂としては、エチレン-(メタ)アクリル酸二元共重合体の金属イオン中和物が好ましい。前記(b-3)三元共重合体としては、エチレンと(メタ)アクリル酸と(メタ)アクリル酸エステルとの三元共重合体が好ましい。前記(b-4)三元系アイオノマー樹脂としては、エチレンと(メタ)アクリル酸と(メタ)アクリル酸エステルとの三元共重合体の金属イオン中和物が好ましい。ここで、(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸および/またはメタクリル酸を意味する。
【0070】
前記(b-1)二元共重合体としては、例えば、ニュクレル(NUCREL)(登録商標)N1050H、N2050H、AN4318、N1110H、N0200H(三井・デュポン・ポリケミカル社製);プライマコア(PRIMACOR)(登録商標)5980I(ダウケミカル社製)などが挙げられる。前記(b-3)三元共重合体としては、ニュクレル(NUCREL)AN4318、AN4319(三井・デュポン・ポリケミカル社製);ニュクレルAE(デュポン社製);プリマコール(PRIMACOR)(登録商標)AT310、AT320(ダウケミカル社製)などが挙げられる。
【0071】
前記(b-2)二元系アイオノマー樹脂としては、ハイミラン(登録商標)1555(Na)、1557(Zn)、1605(Na)、1706(Zn)、1707(Na)、AM7311(Mg)、AM7329(Zn)、AM7337(Na)(三井・デュポン・ポリケミカル社製);サーリン(登録商標)8945(Na)、9945(Zn)、8140(Na)、8150(Na)、9120(Zn)、9150(Zn)、6910(Mg)、6120(Mg)、7930(Li)、7940(Li)、AD8546(Li)(デュポン社製);アイオテック(登録商標)8000(Na)、8030(Na)、7010(Zn)、7030(Zn)(エクソンモービル化学社製)などが挙げられる。前記商品名の後の括弧内に記載したNa、Zn、Li、Mgなどは、これらの中和金属イオンの金属種を示している。
【0072】
前記(b-4)三元系アイオノマー樹脂としては、ハイミランAM7327(Zn)、1855(Zn)、1856(Na)、AM7331(Na)(三井・デュポン・ポリケミカル社製);サーリン6320(Mg)、8120(Na)、8320(Na)、9320(Zn)、9320W(Zn)、HPF1000(Mg)、HPF2000(Mg)(デュポン社製);アイオテック7510(Zn)、7520(Zn)(エクソンモービル化学社製)などが挙げられる。
【0073】
前記ゴルフボール用樹脂組成物は、(B)成分として、(b-2)二元系アイオノマー樹脂および/または(b-4)三元系アイオノマー樹脂を含有することが好ましく、(b-2)二元系アイオノマー樹脂を含有することがより好ましい。前記(b-2)二元系アイオノマー樹脂としては、ナトリウムで中和された二元系アイオノマー樹脂と、亜鉛で中和された二元系アイオノマー樹脂との混合物を使用することが好ましい。これらの混合物を使用することにより、反発性と耐久性とを一層両立しやすくなる。
【0074】
前記ゴルフボール用樹脂組成物の樹脂成分中の(B)成分の含有率は、5質量%以上が好ましく、より好ましくは15質量%以上、さらに好ましくは25質量%以上、最も好ましくは35質量%以上であり、95質量%以下が好ましく、より好ましくは90質量%以下、さらに好ましくは80質量%以下、最も好ましくは70質量%以下である。(B)成分の含有率が5質量%以上であれば樹脂組成物の反発弾性がより良好となり、95質量%以下であればその他の樹脂成分((A)成分など)による添加効果がより発揮される。
【0075】
前記(A)成分と(B)成分との質量比((A)/(B))は、5/95以上が好ましく、より好ましくは10/90以上、さらに好ましくは15/85以上、最も好ましくは20/80以上であり、95/5以下が好ましく、より好ましくは80/20以下、さらに好ましくは70/30以下、最も好ましくは45/55以下である。(A)成分と(B)成分との質量比が前記範囲内であれば、ゴルフボールの反発性が良好であると共に、耐久性も良好となる。
【0076】
本発明のゴルフボール用樹脂組成物は、樹脂成分として、前記(A)成分、(B)成分に加え、その他の樹脂成分を、本発明の効果を損なわない範囲で含有してもよいが、その他の樹脂成分の含有量が、ゴルフボール用樹脂組成物の樹脂成分全体において、20質量%以下が好ましく、より好ましくは15質量%以下、さらに好ましくは10質量%以下、最も好ましくは5質量%以下である。なお、本発明では、樹脂成分として、(A)成分および(B)成分のみを含有することも好ましい態様である。
【0077】
次に、本発明で使用する(C)炭素数が18以下の脂肪酸金属塩について説明する。前記(C)炭素数が18以下の脂肪酸金属塩は、脂肪族カルボン酸の金属塩であることが好ましい。脂肪酸金属塩の脂肪酸成分は、飽和脂肪酸および不飽和脂肪酸のいずれであっても良い。また、前記脂肪酸成分は、直鎖脂肪酸、分岐脂肪酸および脂環式脂肪酸のいずれであっても良い。また、前記脂肪酸成分が、1分子内に持つカルボキシル基の数は、特に限定されないが、2以下であることが好ましく、より好ましくは1つである。
【0078】
前記(C)成分を構成する脂肪酸成分の炭素数は、18以下であれば、特に限定されないが、4以上であることが好ましい。炭素数が低くなりすぎると、毒性や臭気などの問題が生じるからである。また、ゴルフボールへの耐久性向上効果がより大きい点で、脂肪酸成分の炭素数は、8以上であることがより好ましく、12以上であることがさらに好ましく、15以上であることが最も好ましい。
【0079】
前記飽和脂肪酸成分の具体例(IUPAC名)としては、ブタン酸(C4)、ペンタン酸(C5)、ヘキサン酸(C6)、ヘプタン酸(C7)、オクタン酸(C8)、ノナン酸(C9)、デカン酸(C10)、ウンデカン酸(C11)、ドデカン酸(C12)、トリデカン酸(C13)、テトラデカン酸(C14)、ペンタデカン酸(C15)、ヘキサデカン酸(C16)、ヘプタデカン酸(C17)、オクタデカン酸(C18)を挙げることができる。
【0080】
前記飽和脂肪酸成分の具体例(慣用名)としては、酪酸(C4)、吉草酸(C5)、カプロン酸(C6)、エナント酸(C7)、カプリル酸(C8)、ペラルゴン酸(C9)、カプリン酸(C10)、ウンデシル酸(C11)、ラウリン酸(C12)、トリデシル酸(C13)、ミリスチン酸(C14)、ペンタデシル酸(C15)、パルミチン酸(C16)、マルガリン酸(C17)、ステアリン酸(C18)を挙げることができる。
【0081】
前記不飽和脂肪酸成分の具体例(IUPAC名)としては、ブテン酸(C4)、ペンテン酸(C5)、ヘキセン酸(C6)、ヘプテン酸(C7)、オクテン酸(C8)、ノネン酸(C9)、デセン酸(C10)、ウンデセン酸(C11)、ドデセン酸(C12)、トリデセン酸(C13)、テトラデセン酸(C14)、ペンタデセン酸(C15)、ヘキサデセン酸(C16)、ヘプタデセン酸(C17)、オクタデセン酸(C18)を挙げることができる。
【0082】
前記不飽和脂肪酸成分の具体例(慣用名)としては、例えば、ミリストレイン酸(C14、モノ不飽和脂肪酸)、パルミトレイン酸(C16、モノ不飽和脂肪酸)、ステアリドン酸(C18、テトラ不飽和脂肪酸)、バクセン酸(C18、モノ不飽和脂肪酸)、オレイン酸(C18、モノ不飽和脂肪酸)、エライジン酸(C18、モノ不飽和脂肪酸)、リノール酸(C18、ジ不飽和脂肪酸)、α-リノレン酸(C18、トリ不飽和脂肪酸)、γ-リノレン酸(C18、トリ不飽和脂肪酸)、ピノレン酸(C18、トリ不飽和脂肪酸)、α-エレオステアリン酸(C18、トリ不飽和脂肪酸)、β-エレオステアリン酸(C18、トリ不飽和脂肪酸)などを挙げることができる。
【0083】
本発明で使用する脂肪酸金属塩の脂肪酸成分は、さらに、ヒドロキシ基、ハロゲン(例えば、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素)、ジアルキルアミノ基よりなる群から選択される少なくとも1種の置換基を有することが好ましい。前記置換基を有する脂肪酸金属塩を使用することにより、反発性と耐久性とをより一層両立しやすくなるからである。これらの中でも、前記置換基としては、ゴルフボールへの耐久性向上効果がより大きい点から、ヒドロキシ基が好ましい。前記脂肪酸金属塩は、これらの置換基を少なくとも1個有していることが好ましく、複数個有してもよい。また、置換基を複数種有してもよい。なお、前記置換基が、炭素を有する場合(例えば、ジアルキルアミノ基)、かかる炭素は、(C)成分の炭素数に計上されない。
【0084】
斯かる置換基を有する脂肪酸成分の好適な例としては、9-ヒドロキシステアリン酸(9-ヒドロキシオクタデカン酸)、10-ヒドロキシステアリン酸(10-ヒドロキシオクタデカン酸)、12-ヒドロキシステアリン酸(12-ヒドロキシオクタデカン酸)、18-ヒドロキシステアリン酸(18-ヒドロキシオクタデカン酸)、ヤラピノール酸(11-ヒドロキシヘキサデカン酸)、9,10-ジヒドロキシオクタデカン酸、10,12-ジヒドロキシオクタデカン酸、イプロール酸(3,11-ジヒドロキシテトラデカン酸)、アリューリット酸(9,10,16-トリヒドロキシヘキサデカン酸)、ウスチル酸(2,15,16-トリヒドロキシヘキサデカン酸)、リシノール酸(12-ヒドロキシ-シス-9-オクタデセン酸)、リシノエライジン酸(12-ヒドロキシ-トランス-9-オクタデセン酸)、10-ヒドロキシ-シス-12-オクタデセン酸、10-ヒドロキシ-シス-15-オクタデセン酸、10-ヒドロキシ-シス-6-オクタデセン酸、アンブレットール酸(16-ヒドロキシ-7-ヘキサデセン酸)、10-ヒドロキシ-トランス-11-オクタデセン酸、10-ヒドロキシ-シス-12,シス-15-オクタデカジエン酸、10-ヒドロキシ-シス-6,シス-12-オクタデカジエン酸、10-ヒドロキシ-シス-6,シス-15-オクタデカジエン酸、10-ヒドロキシ-トランス-11,シス-15-オクタデカジエン酸、コリオール酸(13-ヒドロキシ-9,11-オクタデカジエン酸)、10-ヒドロキシ-シス-6,トランス-11-オクタデカジエン酸、10-ヒドロキシ-シス-6,トランス-11,シス-15-オクタデカトリエン酸、カムロレン酸(18-ヒドロキシ-9,11,13-オクタデカトリエン酸)、10-ヒドロキシ-シス-6,シス-12,シス-15-オクタデカトリエン酸、キシメニノール酸(8-ヒドロキシ-トランス-11-オクタデセン-9-イン酸)、イサノール酸(8-ヒドロキシ-17-オクタデセン-9,11-ジイン酸)などが挙げられる。これらの中でも、ゴルフボールへの耐久性向上効果がより大きい点から、好ましくは12-ヒドロキシステアリン酸、リシノール酸である。
【0085】
前記脂肪酸成分は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0086】
前記(C)脂肪酸金属塩を構成する金属イオン成分としては、例えば、ナトリウム、カリウム、リチウム、銀などの1価の金属イオン;マグネシウム、カルシウム、亜鉛、バリウム、カドミウム、銅、コバルト、ニッケル、マンガンなどの2価の金属イオン;アルミニウム、鉄などの3価の金属イオン;錫、ジルコニウム、チタンなどのその他の金属イオンが挙げられる。これらの中でも、アルミニウム、ナトリウム、亜鉛、マグネシウム、カルシウムが好ましい。前記金属イオン成分は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0087】
本発明では、(C)脂肪酸金属塩として、12-ヒドロキシステアリン酸アルミニウム、12-ヒドロキシステアリン酸ナトリウム、12-ヒドロキシステアリン酸亜鉛、リシノール酸亜鉛よりなる群から選択される少なくとも一種を使用することが好ましい。
【0088】
前記(C)成分の含有量は、ゴルフボール用樹脂組成物の(A)成分と(B)成分との合計100質量部に対して、0.1質量部以上であることが好ましく、0.2質量部以上であることがより好ましく、0.5質量部以上であることがさらに好ましく、5質量部未満であることが好ましく、4.5質量部以下であることがより好ましく、4.0質量部以下であることがさらに好ましい。(C)成分の含有量が、0.1質量部以上であれば、ゴルフボールへの耐久性向上効果がより大きくなり、またゴルフボール用樹脂組成物の流動性も向上しゴルフボールの構成部材への成形が容易になる。また、(C)成分の含有量が5質量部未満であれば、耐久性がより一層向上する。
【0089】
前記ゴルフボール用樹脂組成物は、さらに、白色顔料(例えば、酸化チタン)、青色顔料などの顔料成分、重量調整剤、分散剤、老化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、蛍光材料または蛍光増白剤などの添加剤を含有することができる。前記重量調整剤としては、例えば、酸化亜鉛、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、酸化マグネシウム、タングステン粉末、モリブデン粉末などの無機充填剤を挙げることができる。
【0090】
本発明のゴルフボール用樹脂組成物は、例えば、表面が有機処理された金属フィラー、あるいは、有機化層状珪酸塩などを含まないことが好ましい。ゴルフボール用樹脂組成物がこれらのフィラーを含有すると、流動性が低下する場合があるからである。
【0091】
本発明のゴルフボール用樹脂組成物は、例えば、(A)成分、(B)成分、および、(C)成分をドライブレンドすることにより得られる。また、ドライブレンドした混合物を、押出してペレット化してもよい。ドライブレンドには、例えば、ペレット状の原料を配合できる混合機を用いるのが好ましく、より好ましくはタンブラー型混合機を用いる。押出は、一軸押出機、二軸押出機、二軸一軸押出機など公知の押出機を使用することができる。
【0092】
本発明のゴルフボール用樹脂組成物のMFR(240℃×2.16kg荷重)は、5g/10min以上が好ましく、10g/10min以上がより好ましく、15g/10min以上がさらに好ましく、100g/10min以下が好ましく、80g/10min以下がより好ましく、60g/10min以下がさらに好ましく、40g/10min以下が特に好ましい。ゴルフボール用樹脂組成物のMFRが、上記範囲内であれば、成形性が良好であると共に、得られるゴルフボールの耐久性も一層向上する。
【0093】
本発明のゴルフボール用樹脂組成物のスラブ硬度は、ショアD硬度で50以上が好ましく、55以上がより好ましく、60以上がさらに好ましく、80以下が好ましく、78以下がより好ましく、75以下がさらに好ましい。スラブ硬度がショアD硬度で50以上のゴルフボール用樹脂組成物を用いることにより、反発性が高く、ドライバーショットの飛距離が大きいゴルフボールが得られる。一方、スラブ硬度がショアD硬度で80以下のゴルフボール用樹脂組成物を用いることにより、打球感が良好であると共に、耐久性にも優れるゴルフボールが得られる。ここで、ゴルフボール用樹脂組成物のスラブ硬度とは、ゴルフボール用樹脂組成物をシート状に成形して測定した硬度である。
【0094】
[ゴルフボール]
本発明のゴルフボールの構造は、特に限定されず、例えば、ワンピースゴルフボール、コアと前記コアを被覆する単層カバーを有するツーピースゴルフボール、コアと前記コアを被覆する一以上の中間層と、前記中間層を被覆するカバーを有するマルチピースゴルフボール(スリーピースゴルフボール、フォーピースゴルフボール、ファイブピースゴルフボールなど)などが挙げられる。
【0095】
前記ゴルフボール用樹脂組成物から形成される部材としては、コア、中間層、カバーのいずれでもよいが、中間層が好ましい。なお、前記ゴルフボールは、前記ゴルフボール用樹脂組成物から成形された構成部材以外の部分は、従来公知の材料を用いることができる。
【0096】
以下、本発明のゴルフボールを、コアと、前記コアを被覆する一層以上の中間層と、前記中間層を被覆するカバーとを有するゴルフボールであって、前記中間層の少なくとも一層が、本発明のゴルフボール用樹脂組成物から形成されている好ましい態様に基づいて詳述する。
【0097】
(コア)
前記コアには、公知のゴム組成物(以下、単に「コア用ゴム組成物」という場合がある)を用いることができ、例えば、基材ゴム、共架橋剤および架橋開始剤を含むゴム組成物を加熱プレスして成形することができる。
【0098】
前記基材ゴムとしては、特に、反発に有利なシス結合が40質量%以上、好ましくは70質量%以上、より好ましくは90質量%以上のハイシスポリブタジエンを用いることが好ましい。前記共架橋剤としては、炭素数が3~8個のα,β-不飽和カルボン酸またはその金属塩が好ましく、アクリル酸の金属塩またはメタクリル酸の金属塩がより好ましい。金属塩の金属としては、亜鉛、マグネシウム、カルシウム、アルミニウム、ナトリウムが好ましく、より好ましくは亜鉛である。共架橋剤の使用量は、基材ゴム100質量部に対して20質量部以上50質量部以下が好ましい。前記共架橋剤として炭素数が3~8個のα,β-不飽和カルボン酸を使用する場合、金属化合物(例えば、酸化マグネシウム)を配合することが好ましい。架橋開始剤としては、有機過酸化物が好ましく用いられる。具体的には、ジクミルパーオキサイド、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t―ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジ-t-ブチルパーオキサイドなどの有機過酸化物が挙げられ、これらのうちジクミルパーオキサイドが好ましく用いられる。架橋開始剤の配合量は、基材ゴム100質量部に対して、0.2質量部以上が好ましく、より好ましくは0.3質量部以上であって、5質量部以下が好ましく、より好ましくは3質量部以下である。
【0099】
また、前記コア用ゴム組成物は、さらに、有機硫黄化合物を含有してもよい。前記有機硫黄化合物としては、ジフェニルジスルフィド類、チオフェノール類、チオナフトール類を好適に使用することができる。有機硫黄化合物の配合量は、基材ゴム100質量部に対して、0.1質量部以上が好ましく、より好ましくは0.3質量部以上であって、5.0質量部以下が好ましく、より好ましくは3.0質量部以下である。前記コア用ゴム組成物は、さらにカルボン酸および/またはその塩を含有してもよい。カルボン酸および/またはその塩としては、炭素数が1~30のカルボン酸および/またはその塩が好ましい。前記カルボン酸としては、脂肪族カルボン酸、芳香族カルボン酸(安息香酸など)のいずれも使用できる。カルボン酸および/またはその塩の配合量は、基材ゴム100質量部に対して、1質量部以上、40質量部以下である。
【0100】
前記コア用ゴム組成物には、基材ゴム、共架橋剤、架橋開始剤、有機硫黄化合物に加えて、さらに、酸化亜鉛や硫酸バリウムなどの重量調整剤、老化防止剤、色粉などを適宜配合することができる。
【0101】
前記コア用ゴム組成物の加熱プレス成型条件は、ゴム組成に応じて適宜設定すればよいが、通常、130℃~200℃で10分間~60分間加熱するか、あるいは130℃~150℃で20分間~40分間加熱した後、160℃~180℃で5分間~15分間と2段階加熱することが好ましい。
【0102】
前記コアの形状は、球状であることが好ましい。球状コアの直径は、34.8mm以上が好ましく、より好ましくは35.0mm以上、さらに好ましくは35.2mm以上であり、41.2mm以下が好ましく、より好ましくは41.0mm以下、さらに好ましくは40.8mm以下である。前記球状コアの直径が34.8mm以上であれば、中間層またはカバー層の厚みが厚くなり過ぎず、その結果、反発性がより良好となる。一方、コアの直径が41.2mm以下であれば、中間層またはカバー層が薄くなり過ぎず、中間層またはカバー層の機能がより発揮される。
【0103】
前記球状コアは、直径34.8mm~41.2mmの場合、初期荷重98Nを負荷した状態から終荷重1275Nを負荷したときまでの圧縮変形量(圧縮方向にコアが縮む量)が、1.90mm以上が好ましく、より好ましくは2.00mm以上、さらに好ましくは2.10mm以上であり、4.00mm以下が好ましく、より好ましくは3.90mm以下、さらに好ましくは3.80mm以下である。前記圧縮変形量が、1.90mm以上であれば打球感がより良好となり、4.00mm以下であれば、反発性がより良好となる。
【0104】
前記球状コアの表面硬度は、ショアD硬度で45以上が好ましく、より好ましくは50以上、さらに好ましくは55以上であり、65以下が好ましく、より好ましくは62以下、さらに好ましくは60以下である。前記コアの表面硬度を、ショアD硬度で45以上とすることにより、コアが軟らかくなり過ぎることがなく、良好な反発性が得られる。また、前記コアの表面硬度をショアD硬度で65以下とすることにより、コアが硬くなり過ぎず、良好な打球感が得られる。
【0105】
前記球状コアの中心硬度は、ショアD硬度で30以上であることが好ましく、より好ましくは32以上であり、さらに好ましくは35以上である。コアの中心硬度がショアD硬度で30未満であると、軟らかくなりすぎて反発性が低下する場合がある。また、コアの中心硬度は、ショアD硬度で50以下であることが好ましく、より好ましくは48以下であり、さらに好ましくは46以下である。前記中心硬度がショアD硬度で50を超えると、硬くなり過ぎて、打球感が低下する傾向があるからである。本発明において、球状コアの中心硬度とは、コアを2等分に切断して、その切断面の中心点についてスプリング式硬度計ショアD型で測定した硬度を意味する。
【0106】
また、球状コア表面硬度を球状コア中心硬度より大きくすることも好ましい。球状コア表面硬度を球状コア中心硬度より大きくすることによって、ドライバーショットに対して高打出角、低スピンのゴルフボールが得られる。高打出角および低スピンのゴルフボールは、飛距離が大きい。球状コア表面硬度と球状コア中心硬度との硬度差(表面硬度-中心硬度)は、ショアD硬度で、4以上とすることが好ましく、より好ましくは7以上である。また、前記硬度差(表面硬度-中心硬度)は、ショアD硬度で、40以下とすることが好ましく、より好ましくは30以下、さらに好ましくは25以下である。硬度差が大きくなりすぎると、耐久性が低下するおそれがあるからである。
【0107】
(中間層)
本発明のゴルフボールが、少なくとも二層以上の中間層を有する場合、中間層のうちの少なくとも一層が、本発明のゴルフボール用樹脂組成物から形成されていることが好ましい。この場合には、最外側の中間層を、本発明のゴルフボール用樹脂組成物から形成された中間層とすることが好ましい。また、中間層のすべてが、本発明のゴルフボール用樹脂組成物から形成されていることも好ましい態様である。
【0108】
中間層を複数層有する場合、本発明のゴルフボール用樹脂組成物から形成された層以外の中間層に使用し得る中間層材料(以下、「そのほかの中間層材料」という場合がある。)としては、例えば、ポリウレタン樹脂、アイオノマー樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエチレンなどの熱可塑性樹脂;スチレンエラストマー、ポリオレフィンエラストマー、ポリウレタンエラストマー、ポリエステルエラストマーなどの熱可塑性エラストマー;ゴム組成物の硬化物などが挙げられる。ここで、アイオノマー樹脂としては、前述した(b-2)成分、(b-4)成分を挙げることができる。前記中間層材料には、さらに、硫酸バリウム、タングステンなどの比重調整剤、老化防止剤、顔料などが配合されていてもよい。
【0109】
前記中間層を形成する方法としては、特に限定されないが、例えば、中間層材料(上述したゴルフボール用樹脂組成物またはそのほかの中間層材料)を予め半球殻状のハーフシェルに成形し、それを2枚用いて球体を包み、加圧成形する方法、または、中間層材料を直接球状コア上に射出成形して球状コアを包み込む方法などを挙げることができる。
【0110】
前記中間層の厚みは、0.3mm以上が好ましく、より好ましくは0.4mm以上、さらに好ましくは0.5mm以上であり、4.0mm以下が好ましく、より好ましくは3.0mm以下、さらに好ましくは2.5mm以下、最も好ましくは2.0mm以下である。中間層の厚みが0.3mm以上であれば、中間層の成形がより容易となり、また得られるゴルフボールの耐久性がより向上する。また、中間層の厚みが4.0mm以下であれば、得られるゴルフボールの反発性や打球感がより良好となる。なお、複数の中間層の場合は、複数の中間層の合計厚みが上記範囲であることが好ましい。
【0111】
(カバー)
本発明のゴルフボールのカバーは、樹脂成分を含有するカバー組成物から形成される。樹脂成分としては、特に限定されるものではなく、例えば、アイオノマー樹脂、ポリウレタン、ポリアミド、ポリエステル、ポリスチレンなどが挙げられ、ポリウレタン、アイオノマー樹脂が好ましい。
【0112】
前記樹脂成分の具体例を商品名で例示すると、三井・デュポンポリケミカル(株)から商品名「ハイミラン(Himilan)(登録商標)」で市販されている」アイオノマー樹脂、BASFジャパン(株)から商品名「エラストラン(登録商標)」で市販されている熱可塑性ポリウレタンエラストマー、アルケマ(株)から商品名「ペバックス(登録商標)」で市販されている熱可塑性ポリアミドエラストマー、東レ・デュポン(株)から商品名「ハイトレル(登録商標)」で市販されている熱可塑性ポリエステルエラストマー、三菱化学(株)から商品名「ラバロン(登録商標)」で市販されている熱可塑性スチレンエラストマーまたは商品名「プリマロイ」で市販されている熱可塑性ポリエステルエラストマーなどを挙げることができる。
【0113】
前記カバーは、上述した樹脂成分のほか、白色顔料(例えば、酸化チタン)、青色顔料、赤色顔料などの顔料成分、炭酸カルシウムや硫酸バリウムなどの比重調整剤、分散剤、老化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、蛍光材料または蛍光増白剤などを、カバーの性能を損なわない範囲で含有してもよい。
【0114】
前記カバー用組成物のスラブ硬度は、ショアD硬度で20以上が好ましく、より好ましくは25以上、さらに好ましくは30以上であり、65以下が好ましく、より好ましくは60以下、さらに好ましくは55以下である。カバー用組成物のスラブ硬度がショアD硬度で20以上であれば、ゴルフボールの耐久性がより良好になる。また、カバー用組成物のスラブ硬度がショアD硬度で65以下であれば、ゴルフボールの打球感がより良好となる。ここで、カバー用組成物のスラブ硬度とは、カバー用組成物をシート状に成形して測定した硬度である。
【0115】
前記カバーを成形する方法としては、例えば、カバー用組成物から中空殻状のシェルを成形し、コアと中間層とからなる球体を複数のシェルで被覆して圧縮成形する方法(好ましくは、カバー用組成物から中空殻状のハーフシェルを成形し、コアと中間層とからなる球体を2枚のハーフシェルで被覆して圧縮成形する方法)、或いは、カバー用組成物をコアと中間層とからなる球体上に直接射出成形する方法を挙げることができる。
【0116】
前記カバーの厚みは、4.0mm以下が好ましく、より好ましくは3.0mm以下、さらに好ましくは2.0mm以下である。カバーの厚みが4.0mm以下であれば、得られるゴルフボールの反発性や打球感がより良好となる。前記カバーの厚みは、0.3mm以上が好ましく、0.5mm以上がより好ましく、さらに好ましくは0.8mm以上、特に好ましくは1.0mm以上である。カバーの厚みが0.3mm未満では、カバーの耐久性や耐摩耗性が低下する場合がある。
【0117】
カバーを成形する際には、通常、表面にディンプルと呼ばれるくぼみが形成される。カバーに形成されるディンプルの総数は、200個以上500個以下が好ましい。ディンプルの総数が200個未満では、ディンプルの効果が得られにくい。また、ディンプルの総数が500個を超えると、個々のディンプルのサイズが小さくなり、ディンプルの効果が得られにくい。形成されるディンプルの形状(平面視形状)は、特に限定されるものではなく、円形;略三角形、略四角形、略五角形、略六角形などの多角形;その他不定形状;を単独で使用してもよいし、2種以上を組合せて使用してもよい。
【0118】
カバーが成形されたゴルフボール本体は、金型から取り出し、必要に応じて、バリ取り、洗浄、サンドブラストなどの表面処理を行うことが好ましい。また、所望により、塗膜やマークを形成することもできる。前記塗膜の膜厚は、特に限定されないが5μm以上が好ましく、7μm以上がより好ましく、50μm以下が好ましく、25μm以下がより好ましく、18μm以下がさらに好ましい。膜厚が5μm未満になると継続的な使用により塗膜が摩耗消失しやすくなり、膜厚が50μmを超えるとディンプルの効果が低下してゴルフボールの飛行性能が低下するからである。
【0119】
本発明のゴルフボールの直径は、40mmから45mmが好ましい。米国ゴルフ協会(USGA)の規格が満たされるとの観点から、直径は42.67mm以上が特に好ましい。空気抵抗抑制の観点から、直径は44mm以下がより好ましく、42.80mm以下が特に好ましい。また、ゴルフボールの質量は、40g以上50g以下が好ましい。大きな慣性が得られるとの観点から、質量は44g以上がより好ましく、45.00g以上が特に好ましい。USGAの規格が満たされるとの観点から、質量は45.93g以下が特に好ましい。
【0120】
本発明のゴルフボールは、直径40mm~45mmの場合、初期荷重98Nを負荷した状態から終荷重1275Nを負荷したときの圧縮変形量(圧縮方向にゴルフボールの縮む量)は、2.0mm以上であることが好ましく、より好ましくは2.4mm以上であり、さらに好ましくは2.5mm以上であり、最も好ましくは2.8mm以上であり、5.0mm以下であることが好ましく、より好ましくは4.5mm以下である。前記圧縮変形量が2.0mm以上のゴルフボールは、硬くなり過ぎず、打球感が良い。一方、圧縮変形量を5.0mm以下にすることにより、反発性が高くなる。
【0121】
図1は、本発明の一実施形態に係るゴルフボール1が示された一部切り欠き断面図である。ゴルフボール1は、球状コア2と、この球状コア2の外側に配設された中間層3と、この中間層3の外側に配設されたカバー4とを有する。前記カバー4の表面には、多数のディンプル41が形成されている。このカバー4の表面のうち、ディンプル41以外の部分は、ランド42である。そして、前記中間層3が前記ゴルフボール用樹脂組成物から形成されている。
【実施例
【0122】
以下、本発明を実施例によって詳細に説明するが、本発明は、下記実施例によって限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲の変更、実施の態様は、いずれも本発明の範囲内に含まれる。
【0123】
[評価方法]
【0124】
(1)メルトフローレイト(MFR)(g/10min)
MFRは、フローテスター(島津製作所社製、島津フローテスターCFT-100C)を用いて、JIS K7210に準じて測定した。なお、測定は、測定温度240℃×荷重2.16kgの条件で行った。
【0125】
(2)耐久性
ゴルフラボラトリー社製のスイングロボットM/Cに、メタルヘッド製W#1ドライバー(ダンロップスポーツ社製、XXIO S ロフト11°)を取り付け、各ゴルフボールをヘッドスピード45m/秒で打撃して、ゴルフボールが壊れるまでの繰返し打撃回数を測定した。なお、外見上は壊れていなくとも、中間層に割れが生じている場合もあるが、このような場合には、ゴルフボールの変形や打球音の違いから、壊れているかどうかを判断した。各ゴルフボールの耐久性は、ゴルフボールNo.17の打撃回数を100として、各ゴルフボールについての打撃回数を指数化した値で示した。指数化された値が大きいほど、ゴルフボールが耐久性に優れていることを示す。
【0126】
(3)反発性
各ゴルフボールに198.4gの金属製円筒物を45m/秒の速度で衝突させ、衝突前後の前記円筒物およびゴルフボールの速度を測定し、それぞれの速度および質量から各ゴルフボールの反発係数を算出した。測定は各ゴルフボールについて12個ずつ行って、その平均値をそのゴルフボールの反発係数とした。なお、反発係数は、ゴルフボールNo.17の反発係数を100として、各ゴルフボールの反発係数を指数化した値で示した。
【0127】
(4)スラブ硬度(ショアD硬度)
カバー用組成物およびゴルフボール用樹脂組成物を用いて、射出成形により、厚み約2mmのシートを作製し、23℃で2週間保存した。このシートを、測定基板などの影響が出ないように、3枚以上重ねた状態で、自動硬度計(H.バーレイス社製、デジテストII)を用いて硬度を測定した。検出器は、「Shore D」を用いた。
【0128】
(5)コア硬度(ショアD硬度)
ASTM-D2240に規定するスプリング式硬度計ショアD型を備えた高分子計器社製自動ゴム硬度計P1型を用いて、コアの表面部において測定したショアD硬度をコア表面硬度とした。また、コアを半球状に切断し、切断面の中心において測定したショアD硬度をコア中心硬度とした。
【0129】
(6)圧縮変形量(mm)
コアに初期荷重98Nを負荷した状態から終荷重1275Nを負荷したときまでの圧縮方向の変形量(圧縮方向にコアが縮む量)を測定した。
【0130】
[ゴルフボール用樹脂組成物の調製]
表1、表2に示した配合材料を、二軸混練型押出機により押し出して、ペレット状のゴルフボール用樹脂組成物を調製した。押出は、スクリュー径30mm、スクリュー回転数200rpm、スクリューL/D35で行った。配合物は、押出機のダイの位置で220~235℃に加熱された。
【0131】
【表1】
【0132】
【表2】
【0133】
表1、2で使用した原料の詳細は、以下の通りである。
ポリアミド610:東レ社製アミランCM2001
ポリアミド6:東レ社製アミランCM1017K
アイオノマー樹脂A:デュポン社製サーリン8150とサーリン9150の混合物(質量比率:50/50)
アイオノマー樹脂B:三井デュポン・ポリケミカル社製ハイミラン1605とハイミランAM7329の混合物(質量比率:50/50)
EVOH(エチレン-ビニルアルコール共重合体):日本合成化学社製ソアライトTM(曲げ剛性率:2371MPa、ショアD硬度87)
12-ヒドロキシ(OH)ステアリン酸アルミニウム:日東化成工業社製AS-6
12-ヒドロキシ(OH)ステアリン酸ナトリウム:日東化成工業社製NS-6
12-ヒドロキシ(OH)ステアリン酸亜鉛:日東化成工業社製ZS-6
リシノール酸亜鉛(C18):日東化成工業社製
べへン酸ナトリウム(C22):日東化成工業社製NS-7
べへン酸亜鉛(C22):日東化成工業社製ZS-7
モンタン酸亜鉛(C28):日東化成工業社製ZS-8
ステアリン酸亜鉛(C18):日東化成工業社製Zn-st
【0134】
[ゴルフボールの作製]
(1)コアの作製
表3に示す配合のゴム組成物を混練し、半球状キャビティを有する上下金型内で、170℃で30分間加熱プレスすることによりコアを得た。
【0135】
【表3】
【0136】
ポリブタジエンゴム:JSR社製、「BR-730(ハイシスポリブタジエン)」
アクリル酸亜鉛:日本蒸溜工業社製、「ZNDA-90S」
酸化亜鉛:東邦亜鉛社製、「銀嶺R」
硫酸バリウム:堺化学社製、「硫酸バリウムBD」
ジクミルパーオキサイド:日油社製、「パークミル(登録商標)D(ジクミルパーオキサイド)」
ジフェニルジスルフィド:住友精化社製ジフェニルジスルフィド
【0137】
(2)中間層の作製
前記ゴルフボール用樹脂組成物を上述のようにして得られたコア上に射出成形して、中間層(厚み1mm)を成形した。
【0138】
(3)カバーの成形
表4に示したポリウレタンエラストマー100質量部に対して酸化チタン4質量部をドライブレンドし、二軸混練型押出機によりミキシングして、ペレット状のカバー用組成物を得た。押出は、スクリュー径45mm、スクリュー回転数200rpm、スクリューL/D=35で行った。配合物は、押出機のダイの位置で150~230℃に加熱された。得られたペレット状のカバー用組成物をハーフシェル成形用金型の下型の凹部ごとに1つずつ投入し、加圧してハーフシェルを成形した。ハーフシェルの圧縮成形は、成形温度170℃、成形時間5分、成形圧力2.94MPaの条件で行った。球状コアを中間層で被覆した球体を、2枚のハーフシェルで同心円状に被覆して、圧縮成形によりカバー(厚み0.5mm)を成形した。圧縮成形は、成形温度145℃、成形時間2分、成形圧力9.8MPaの条件で行った。
【0139】
【表4】
エラストランXNY85A:BASF社製、熱可塑性ポリウレタンエラストマー
【0140】
得られたゴルフボール本体の表面をサンドブラスト処理して、マーキングを施した後、クリアーペイントを塗布し、40℃のオーブンで塗料を乾燥させ、ゴルフボールを得た。得られたゴルフボールついて評価した結果を表1、2に示した。
【0141】
表1、2の結果から、(A)成分~(C)成分を含有する本発明のゴルフボール用樹脂組成物から形成した中間層を有するゴルフボールは、いずれも反発性および耐久性に優れている。
【符号の説明】
【0142】
1:ゴルフボール、2:球状コア、3:中間層、4:カバー、41:ディンプル、42:ランド
図1