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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-21
(45)【発行日】2022-03-02
(54)【発明の名称】電池モジュール及び電池パック
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/289 20210101AFI20220222BHJP
   H01M 50/209 20210101ALI20220222BHJP
   H01M 50/204 20210101ALI20220222BHJP
   H01M 50/233 20210101ALI20220222BHJP
   H01M 50/264 20210101ALI20220222BHJP
   H01M 50/262 20210101ALI20220222BHJP
   H01M 10/613 20140101ALI20220222BHJP
   H01M 10/625 20140101ALI20220222BHJP
   H01M 10/647 20140101ALI20220222BHJP
   H01M 10/6554 20140101ALI20220222BHJP
【FI】
H01M50/289 101
H01M50/209
H01M50/204 401H
H01M50/233
H01M50/264
H01M50/262 E
H01M10/613
H01M10/625
H01M10/647
H01M10/6554
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2017129263
(22)【出願日】2017-06-30
(65)【公開番号】P2019012652
(43)【公開日】2019-01-24
【審査請求日】2020-03-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 敬史
(74)【代理人】
【識別番号】100148013
【弁理士】
【氏名又は名称】中山 浩光
(74)【代理人】
【識別番号】100180851
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼口 誠
(72)【発明者】
【氏名】石黒 文彦
(72)【発明者】
【氏名】秋山 泰有
(72)【発明者】
【氏名】植田 浩生
(72)【発明者】
【氏名】守作 直人
【審査官】森 透
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-171029(JP,A)
【文献】特開2010-104146(JP,A)
【文献】特開2014-192281(JP,A)
【文献】特開昭60-050461(JP,A)
【文献】特開2015-220218(JP,A)
【文献】特開2016-219243(JP,A)
【文献】特開2017-076581(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/20-50/298
H01M 10/613
H01M 10/625
H01M 10/647
H01M 10/6554
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セルホルダによって保持された複数の電池セルが所定の方向に配列された配列体を備え、筐体内の固定面に固定される電池モジュールであって、
前記セルホルダは、
前記電池セルにおける配列方向に直交する面を保持する隔壁と、
前記隔壁の一縁部に設けられ、前記固定面に対向すると共に前記電池セルの側面を保持する側壁と、を含んで構成される保持部を有し、
前記側壁は、前記電池セルの前記側面の一部を露出させる露出部を有し、
前記露出部において露出した前記側面の一部には、絶縁性を有し、前記側面と前記固定面との間で伝熱可能な伝熱部材が固着されており
記側壁の厚さは、JIS規格に定められた絶縁距離L以上且つ2mm以下であり、
前記セルホルダが前記固定面に固定された際に、前記露出部によって画成される前記側面と前記固定面との間の空間は、複数の前記電池セルごとに前記側面の一部を露出させるように、前記配列方向に複数配列されており、
前記伝熱部材は、複数の前記空間のそれぞれに配置され、複数の前記電池セルごとに設けられている、電池モジュール。
【請求項2】
前記側壁の厚さは1mm以上である、請求項1に記載の電池モジュール。
【請求項3】
各セルホルダの前記側壁には接続部が設けられ、
隣り合う前記側壁の前記接続部は互いに嵌合する、請求項1又は2に記載の電池モジュール。
【請求項4】
前記伝熱部材の少なくとも一部は、前記側壁と離間している、請求項1~3の何れか一項に記載の電池モジュール。
【請求項5】
前記伝熱部材は、前記側面に直交する方向及び前記配列方向に交差する方向における前記露出部の両端にそれぞれ配置され、隣り合う前記側壁の接触部分と前記空間との間を埋めている、請求項1~4の何れか一項に記載の電池モジュール。
【請求項6】
前記露出部は、前記側面に直交する方向から見て前記側壁の中央部に設けられている、請求項1~4の何れか一項に記載の電池モジュール。
【請求項7】
前記配列体を挟むように配置され、前記配列方向に拘束荷重を付加する一対の拘束部材と、
前記拘束部材と前記配列体との間に配置され、前記配列体と共に拘束される弾性部材と、を更に備える、請求項1~6の何れか一項に記載の電池モジュール。
【請求項8】
請求項1~7の何れか一項に記載の電池モジュールと、
前記電池モジュールが固定される前記筐体と、
前記伝熱部材と前記筐体との間に配置され、前記伝熱部材と前記筐体との摩擦を低減する摩擦低減部材と、を備える、電池パック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池モジュール及び電池パックに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、例えば電気自動車等に搭載される電池モジュールが記載されている。この電池モジュールは、複数の電池セルを配列して組み付けた組電池と、組電池を冷却するための冷却プレートと、組電池と冷却プレートとの間に介在する熱伝導シートと、互いに隣接する電池セルを絶縁するセパレータと、を備えている。セパレータには、電池セルが露出する切り欠き部が形成されており、この切り欠き部を通じて伝熱シートが電池セルに当接されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2011-171029号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の電池モジュールは、電池セルの放熱性を高めるために、電池セルの切り欠き部から露出した部分に伝熱シートを接触させる構造を有している。しかしながら、このような構造においては、電池セルの切り欠き部から露出した部分の全面に伝熱シートを接触させることが困難である。故に、切り欠き部において、電池セルが伝熱シートに覆われずに露出する部分が形成される。このため、電池セルと電池セルを冷却する他の部品(例えば、電池モジュールを収容する筐体等)との間の絶縁の信頼性低下が懸念される。
【0005】
本発明は、電池セルの放熱性を確保しつつ、電池セルと筐体との絶縁の信頼性を高めることが可能な電池モジュール及び電池パックを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一形態に係る電池モジュールは、セルホルダによって保持された複数の電池セルが所定の方向に配列された配列体を備え、筐体内の固定面に固定される電池モジュールであって、セルホルダは、電池セルにおける配列方向に直交する面を保持する隔壁と、隔壁の一縁部に設けられ、固定面に対向すると共に電池セルの側面を保持する側壁と、を含んで構成される保持部を有し、側壁は、電池セルの側面の一部を露出させる露出部を有し、露出部において露出した側面の一部には、絶縁性を有し、前記側面と前記固定面との間で伝熱可能な伝熱部材が固着されており、セルホルダが固定面に固定された際に、露出部によって画成される側面と固定面との間の空間内の気体の汚損度に依存する係数をA、電池セルと筐体との間の電圧差に依存する係数をV、空間内の温度に依存する係数をT、空間内の気圧に依存する係数をPとしたとき、側壁の厚さは、A×V×T/Pにより算出される値に比例する絶縁距離L以上且つ2mm以下である。
【0007】
上記の電池モジュールでは、露出部において露出した側面の一部に、絶縁性を有し、側面と固定面との間で伝熱可能な伝熱部材が固着されている。これにより、電池セルで発生した熱が、伝熱部材を介して効率よく筐体に伝達されるので、電池セルの放熱性を確保することができる。また、上記の電池モジュールでは、セルホルダの側壁の厚さは絶縁距離L以上である。これにより、電池セルの側面と筐体の固定面との間に絶縁距離L以上の距離が確保されている。したがって、露出部から露出した一側面のうち、伝熱部材が接触していない部分においても、電池セルと筐体との絶縁の信頼性を高めることが可能である。さらに、側壁の厚さを2mm以下にすることにより、側壁の厚さを小さくすることができる。これにより、電池モジュールが固定面に固定された際に、側面と固定面との間に配置された伝熱部材の厚さも2mm以下となる。このように、伝熱部材の厚さが低減されるので、電池セルで発生した熱を効率よく筐体に伝達することができる。したがって、電池セルの放熱性を高めることが可能である。
【0008】
一形態において、側壁の厚さは1mm以上であってもよい。側壁の厚さを1mm以上とすることにより、電池セルの側面と筐体の固定面との間の距離を絶縁距離L以上とすることができる。したがって、露出部から露出した側面のうち、伝熱部材が接触していない部分においても、電池セルと筐体との絶縁の信頼性を高めることが可能である。
【0009】
一形態において、各セルホルダの側壁には接続部が設けられ、隣り合う側壁の接続部は互いに嵌合してもよい。この場合、隣り合う側壁の接続部が互いに嵌合することにより、隣り合う側壁の間の密閉性が高められている。故に、汚染の原因となる物質が、隣り合う側壁の間から露出部によって画成される側面と固定面との間の空間内に侵入することを抑制できる。したがって、汚損度の上昇により絶縁距離Lが大きくなることを抑制することができるので、電池セルと筐体との間の絶縁の信頼性を更に高めることが可能である。
【0010】
一形態において、伝熱部材の少なくとも一部は、側壁と離間していてもよい。この構成によれば、伝熱部材と側壁との間に隙間が形成されるので、電池モジュールを筐体に固定した際に、伝熱部材が押しつぶされて露出部から側壁と固定面との間にはみ出すことがより確実に抑制される。したがって、電池モジュールを筐体に固定した際に、電池モジュールに荷重が加わることを抑制することができる。
【0011】
一形態において、伝熱部材は、側面に直交する方向及び配列方向に交差する方向における露出部の両端にそれぞれ配置され、隣り合う側壁の接触部分と空間との間を埋めていてもよい。この場合、伝熱部材が隣り合う側壁の接触部分と空間との間を埋めることにより、隣り合う側壁の接触部分の密閉性が高められている。これにより、汚染の原因となる物質が、接触部分から露出部によって画成される側面と固定面との間の空間内に侵入することを抑制できる。したがって、電池セルと筐体との絶縁の信頼性を更に高めることが可能である。
【0012】
一形態において、露出部は、側面に直交する方向から見て側壁の中央部に設けられていてもよい。この構成によれば、露出部は隣り合う側壁の間から離間しているので、汚染の原因となる物質が、隣り合う側壁の間から露出部によって画成される側面と固定面との間の空間内に侵入することを抑制できる。したがって、電池セルと筐体との絶縁の信頼性を更に高めることが可能である。
【0013】
一形態において、電池モジュールは、配列体を挟むように配置され、配列方向に拘束荷重を付加する一対の拘束部材と、拘束部材と配列体との間に配置され、配列体と共に拘束される弾性部材と、を更に備えてもよい。この構成によれば、例えば電池セルが膨張した場合に、弾性部材によって電池セルの膨張を吸収することができる。したがって、電池セルが膨張した際に、電池モジュールに撓みが生じることを抑制することができる。
【0014】
本発明の一形態に係る電池パックは、上記の電池モジュールと、電池モジュールが固定される筐体と、伝熱部材と筐体との間に配置され、伝熱部材と筐体との摩擦を低減する摩擦低減部材と、を備えてもよい。この構成によれば、例えば電池セルが膨張した場合に、伝熱部材が筐体に対して配列方向に移動しやすくなる。したがって、電池セルが膨張した場合であっても、摩擦による伝熱部材の変形等が抑制されるので、伝熱部材と筐体との間で熱が伝達される面積を一定に保つことができる。よって、電池セルの放熱性を保つことが可能である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、電池セルの放熱性を確保しつつ、電池セルと筐体との絶縁の信頼性を高めることが可能な電池モジュール及び電池パックが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施形態に係る電池パックを示す斜視図である。
図2図1の電池モジュールを示す断面図である。
図3図1の電池モジュールを構成する配列体を示す斜視図である。
図4】セルホルダを示す斜視図である。
図5図4のセルホルダの接続部を示す一部拡大図である。
図6図2の伝熱部材の配置を示す図である。
図7図2の伝熱部材の配置の変形例を示す図である。
図8図4のセルホルダの変形例を示す斜視図である。
図9図4のセルホルダの更なる変形例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して種々の実施形態について詳細に説明する。なお、各図面において同一又は相当の部分に対しては同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0018】
図1は、本実施形態に係る電池パックを示す斜視図である。図1に示されるように、本実施時形態の電池パック100は、複数(例えば4つ)の電池モジュール1と、箱状の筐体50と、を備えている。電池モジュール1は、筐体50の内部に収容されている。電池モジュール1は、例えば複数のボルト44(図2参照)等の固定部材によって筐体50内の固定面50aに固定されている。筐体50は、例えば鉄又はアルミ等の金属によって形成されている。
【0019】
図2は、図1の電池モジュール1を示す断面図である。図3は、電池モジュール1を構成する配列体3を示す斜視図である。図3では、配列体3が部分的に分解された状態で示されている。図2及び図3に示されるように、電池モジュール1は、セルホルダ20によって保持された複数(例えば7つ)の電池セル10が所定の方向(配列方向D1)に配列された配列体3を備えている。
【0020】
電池セル10は、例えばリチウムイオン二次電池等の非水電解質二次電池である。電池セル10は、非水系の電解液が注入されたケース内に電極組立体を収容して構成されている。電極組立体は、正極、負極、及びセパレータを所定の順序で積層したものである。本実施形態では、例えば袋状のセパレータ内にシート状の正極が収容されており、正極が収容された袋状のセパレータとシート状の負極とが交互に積層されている。電池セル10は、略直方体形状をなしており、上面11aと、下面11bと、一対の側面11cと、配列方向D1に直交する一対の面11dとを有している。電池セル10の上面11aからは、正負一対の電極端子13が突出している。隣り合う電池セル10の電極端子13は、バスバーによって互いに電気的に接続され得る。これにより、隣り合う電池セル10は電気的に直列に接続される。
【0021】
配列体3は、拘束部材40によって拘束されている。拘束部材40は、電池セル10の配列方向D1において、配列体3を挟むように配置されており、電池セル10の配列方向D1に拘束荷重を付加する。本実施形態では、拘束部材40は、配列体3を配列方向D1から挟む一対のブラケット41と、一対のブラケット41同士を連結する複数(例えば4つ)の連結部材46と、を有している。
【0022】
ブラケット41は、例えば金属材料からなる板状部材が折り曲げられて形成されている。ブラケット41には、折曲部41aを挟んで挟持部42と固定部43とが形成されている。一方のブラケット41の挟持部42と配列体3との間には、弾性部材30が配置されている。弾性部材30は、例えば電池セル10が膨張した場合に、電池セル10の膨張を吸収するように圧縮される。弾性部材30は、例えばゴム等によって構成されている。
【0023】
挟持部42には、連結部材46が挿通される複数の挿通孔42aが設けられている。挟持部42は、配列体3及び弾性部材30を挟んだ状態で、連結部材46によって締結される。連結部材46は、例えば鉄等の金属により形成されたボルト46aである。各連結部材46は、一方のブラケット41の挿通孔42a、後述する各セルホルダ20の挿通孔23b,24b、及び他方のブラケット41の挿通孔42aに順次挿通され、一対のブラケット41の外側でナット46bにより締結されている。この締結によって配列体3及び弾性部材30に対して配列方向D1に拘束荷重が負荷されている。固定部43は、例えば筐体50内の固定面50aに対してボルト44によって固定される部分である。
【0024】
セルホルダ20は、セルホルダ20Aと、セルホルダ20Bとの2種類を含む。セルホルダ20Aは、配列方向D1に隣り合う電池セル10同士の間に配置されて、電池セル10を保持する。セルホルダ20Bは、配列された電池セル10のうちの両端部に配置された電池セル10とブラケット41との間に配置されて、電池セル10を保持する。図4は、セルホルダ20Aを示す斜視図である。セルホルダ20Aは、樹脂材料によって形成されており、隔壁21と、保持部22とを有している。隔壁21は、電池セル10の配列方向D1に直交(交差)する方向に延在する矩形の平板形状を有している。隔壁21は、電池セル10における配列方向D1に直交する面11dを保持し得る。保持部22は、隔壁21の周縁に形成された矩形の枠状をなしており、上壁23、下壁24、第1側壁(側壁)26、及び第2側壁27を有する。上壁23、下壁24、第1側壁26、及び第2側壁27は、何れも平板状を有している。
【0025】
上壁23は、電池セル10における電極端子13が形成された上面11aに対向し、当該上面11aを保持し得る。上壁23は、隔壁21の上端縁から電池セル10の配列方向D1に突出している。本実施形態では、上壁23は、配列方向D1において、隔壁21の一面側21a及び他面側21bにそれぞれ設けられている。また、配列方向D1における上壁23の幅は、例えば電池セル10の幅の半分よりも小さくなっている。上壁23の上部には、筒状部23aが設けられている。筒状部23aには、連結部材46が挿通される挿通孔23bが形成されている。筒状部23aは、例えば上壁23の両端部に形成されており、上側に突出している。
【0026】
下壁24は、電池セル10における下面11bに対向し、当該下面11bを保持し得る。下壁24は、隔壁21の下端縁から電池セル10の配列方向D1に突出している。本実施形態では、下壁24は、配列方向D1において、隔壁21の一面側21a及び他面側21bにそれぞれ設けられている。また、配列方向D1における下壁24の幅は、例えば電池セル10の幅の略半分となっている。すなわち、一対のセルホルダ20の間に電池セル10が保持されている状態では、一方のセルホルダ20に形成された下壁24と、他方のセルホルダ20に形成された下壁24とによって、電池セル10の下面11bの全体が保持され得る。下壁24の下部には、連結部材46が挿通される挿通孔24bが形成された筒状部24aが設けられている。筒状部24aは、例えば下壁24の両端部に形成されており、下側に突出している。
【0027】
第1側壁26は、筐体50の固定面50aに対向し、電池セル10における一方の側面11cを保持し得る。第1側壁26は、隔壁21の固定面50a側の一縁部21cに設けられており、配列方向D1に突出している。本実施形態では、第1側壁26は、配列方向D1において、隔壁21の一面側21a及び他面側21bにそれぞれ設けられている。第1側壁26は、電池セル10における一方の側面11cの一部を露出させる露出部26aを有する。露出部26aは、例えば配列方向D1に交差する上下方向D2に延在する矩形の切り欠き状の部分である。本実施形態において、露出部26aは、配列方向D1における第1側壁26の両端側にそれぞれ設けられている。配列方向D1における第1側壁26の幅は、第1側壁26の上端及び下端において下壁24の幅と略同一であり、電池セル10の幅の略半分となっている。露出部26aが形成されている部分における第1側壁26の幅は、第1側壁26の上端及び下端における第1側壁26の幅よりも小さくなっている。
【0028】
第1側壁26の厚さ(配列方向D1及び上下方向D2に直交し、第1側壁26と固定面50aとが対向する方向D3における寸法)Nは、A×V×T/Pによって算出される値に比例する絶縁距離L以上、且つ、2mm以下である。
【0029】
式(1)において、Aは、セルホルダ20が固定面50aに固定された際に、露出部26aによって画成される一方の側面11cと固定面50aとの間の空間S内の気体の汚損度に依存する係数である。汚損度に依存する係数Aは、例えば公知の手法により算出され得る。なお、汚損度は、規格JIS60664-1(IEC60664-1)によって規定された汚損度1~汚損度4の4つの等級に分類することができる。汚損度1とは、どのような汚染も発生しないか又は乾燥状態で非導電性の汚染だけが発生する状態である。汚損度2とは、非導電性の汚染は発生するが、時には結露によって一時的に導電性が引き起こされることが予想される状態である。汚損度3とは、導電性の汚染が発生する、又は乾燥した非導電性の汚染だが予想される結露のために導電性となる汚染が発生する状態である。汚損度4とは、導電性のほこり、又は雨若しくはその他の湿潤状態によって連続的な導電性を発生させる状態である。空間S内の気体の汚染の原因になる物質としては、例えば塩分、水分、ほこり、及び錆等が挙げられる。一般的に、空間S内の汚損度の等級が高くなるほど絶縁距離Lは大きくなり、空間S内の汚損度の等級が低くなるほど絶縁距離Lは小さくなる。
【0030】
式(1)において、Vは電池セル10と筐体50との間の電圧差に依存する係数である。一般的に、電池セル10と筐体50との間の電圧差が大きくなるほど係数Vは大きくなり、電池セル10と筐体50との間の電圧差が小さくなるほど係数Vは小さくなる。したがって、電池セル10と筐体50との間の電圧差が大きくなるほど絶縁距離Lは大きくなり、電池セル10と筐体50との間の電圧差が小さくなるほど、絶縁距離Lは小さくなる。
【0031】
式(1)において、Tは空間S内の温度に依存する係数である。温度に依存する係数Tは、例えば公知の手法により算出され得る。一般的に、温度が高くなるほど係数Tは大きくなり、温度が低くなるほど係数Tは小さくなる。したがって、温度が高くなるほど絶縁距離Lは大きくなり、温度が低くなるほど絶縁距離Lは小さくなる。
【0032】
式(1)において、Pは空間S内の気圧に依存する係数である。気圧に依存する係数Pは、例えば公知の手法により算出され得る。一般的に、気圧が高くなるほど係数Pは大きくなり、気圧が低くなるほど係数Pは小さくなる。したがって、気圧が低くなるほど絶縁距離Lは大きくなり、気圧が高くなるほど絶縁距離Lは小さくなる。
【0033】
通常の使用条件下(例えば、電池セル10と筐体50との間の電圧差が300V程度、温度が60℃~80℃程度、気圧が50kPa~100kPa程度の大気圧環境下である場合)における絶縁距離Lは、例えば1mmよりも小さい。したがって、第1側壁26の厚さを1mm以上とすることにより、電池セル10の一方の側面11cと固定面50aとの間に絶縁距離L以上の距離を確保することができる。
【0034】
図2に示されるように、一対のセルホルダ20によって1つの電池セル10が保持されている状態では、一方のセルホルダ20の、隔壁21の一面側21aの露出部26aと、他方のセルホルダ20の、隔壁21の他面側21bの露出部26aとが一体となっている。一体となった露出部26aからは、一対のセルホルダ20に保持された電池セル10の一方の側面11cの一部が露出している。電池セル10の側面11cのうち、露出部26aから露出していない部分は、第1側壁26に接触している。
【0035】
各セルホルダ20の第1側壁26には、接続部28が設けられている。隣り合う他の第1側壁26の接続部28は互いに嵌合する(図5参照)。接続部28は、配列方向D1における第1側壁26の両端部にそれぞれ設けられている。また、接続部28は、上下方向D2における第1側壁26の上端及び下端(すなわち、露出部26a以外の部分)に設けられている。本実施形態において、接続部28は、配列方向D1における第1側壁26の一端部に形成された凸部28aと、配列方向D1における第1側壁26の他端部に形成された凹部28bとを含む。一の第1側壁26に設けられた接続部28の凸部28aは、一端部側において隣り合う他の第1側壁26に設けられた接続部28の凹部28bに嵌合する。一方、一の第1側壁26に設けられた接続部28の凹部28bには、他端部側において隣り合う他の第1側壁26に設けられた接続部28の凸部28aが嵌合する。このように、接続部28は、いわゆるインロー構造となっている。
【0036】
第2側壁27は、方向D3において第1側壁26の反対側に位置しており、電池セル10における他方の側面11cを保持し得る。第2側壁27は、隔壁21の他縁部21dに設けられており、配列方向D1に突出している。本実施形態では、第2側壁27は、配列方向D1において、隔壁21の一面側21a及び他面側21bにそれぞれ設けられている。配列方向D1における第2側壁27の幅は、下壁24の幅と略同一であり、電池セル10の幅の略半分となっている。一対のセルホルダ20の間に電池セル10が保持されている状態では、一方のセルホルダ20の第2側壁27と、他方のセルホルダ20の第2側壁27とによって、電池セル10の他方の側面11cの全体が保持され得る。
【0037】
図2及び図6に示されるように、電池モジュール1は伝熱部材7として、TIM(Thermal Interface Material)を備えている。伝熱部材7は絶縁性を有し、一方の側面11cと固定面50aとの間で伝熱可能である。伝熱部材7は、一方の側面11cの一部に固着されている。電池モジュール1を固定面50aに固定した際に、伝熱部材7は電池セル10の一方の側面11cと固定面50aとの間に配置された状態となる。すなわち、電池セル10の一方の側面11cは、伝熱部材7を介して固定面50aに接触する。伝熱部材7は、露出部26aから露出した一方の側面11cの一部に接触している。本実施形態において、伝熱部材7は、露出部26aの縁部(すなわち、第1側壁26)と離間して配置されている。すなわち、伝熱部材7と第1側壁26との間には隙間(空間S)が形成されている。このように伝熱部材7が配置されることにより、露出部26aから露出し、且つ、伝熱部材7が接触していない非接触部11eが伝熱部材7を囲むように形成されている。このように伝熱部材7が配置されている場合、空間Sは、非接触部11eと固定面50aとの間に形成される空間である。伝熱部材7は、例えば弾性を有する長尺の弾性シートであり、シリコンゴム又はアクリルゴム等から構成される。
【0038】
伝熱部材7と筐体50の固定面50aとの間には、伝熱部材7と筐体50との摩擦を低減するスリップシート8(摩擦低減部材)が配置されている。スリップシート8は、例えば伝熱部材7に密着し、伝熱部材7を筐体50に対して配列方向D1に移動しやすくする。スリップシート8は、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)等の伝熱性を有し、且つ、摩擦係数が小さい樹脂材料によって構成されている。
【0039】
以上説明したように、電池モジュール1では、露出した一方の側面11cの一部に、一方の側面11cと固定面50aとの間で伝熱可能な伝熱部材7が固着されている(図2参照)。これにより、電池セル10で発生した熱を効率よく筐体50に伝達することができるので、電池セル10の放熱性を確保することができる。また、上記の電池モジュール1では、セルホルダ20の第1側壁26の厚さNは、A×V×T/Pにより算出される値に比例する絶縁距離L以上である。これにより、電池セル10の一方の側面11cと筐体50の固定面50aとの間に絶縁距離L以上の距離が確保されている。したがって、露出部26aから露出した一方の側面11cのうち、伝熱部材7が接触していない部分(非接触部11e(図6参照))においても、電池セル10と筐体50との絶縁の信頼性を高めることが可能である。さらに、第1側壁26の厚さを2mm以下にすることにより、第1側壁26の厚さを小さくすることができる。これにより、電池モジュール1が固定面50aに固定された際に、一方の側面11cと固定面50aとの間に配置された伝熱部材7の厚さも2mm以下となる。このように、伝熱部材7の厚さが低減されるので、電池セル10で発生した熱を効率よく筐体50に伝達することができる。さらに、第1側壁26の露出部26a以外の部分においても、第1側壁26を介して電池セル10で発生した熱を効率よく筐体50に伝達することができる。したがって、電池セル10の放熱性を高めることができる。
【0040】
また、電池モジュール1を筐体50に固定した際には、空間Sが伝熱部材7の逃げ場となる隙間として機能する。したがって、伝熱部材7が押しつぶされて露出部26aから第1側壁26と固定面50aとの間にはみ出すことを抑制することができる。
【0041】
また、第1側壁26の厚さは1mm以上である。このように第1側壁26の厚さを1mm以上とすることにより、電池セル10の一方の側面11cと筐体50の固定面50aとの間の距離を絶縁距離L以上とすることができる。したがって、露出部26aから露出した一方の側面11cのうち、伝熱部材7が接触していない非接触部11eにおいても、電池セル10と筐体50との絶縁の信頼性を高めることが可能である。
【0042】
また、図6に示されるように、伝熱部材7の少なくとも一部は、第1側壁26と離間している。これにより、伝熱部材7と第1側壁26との間に隙間が形成されるので、電池モジュール1を筐体50に固定した際に、伝熱部材7が押しつぶされて露出部26aから第1側壁26と固定面50aとの間にはみ出すことがより確実に抑制される。したがって、電池モジュール1を筐体50に固定した際に、電池モジュール1に荷重が加わることを抑制することができる。
【0043】
また、図5に示されるように、各セルホルダ20の第1側壁26には接続部28が設けられ、隣り合う第1側壁26の接続部28は互いに嵌合する。これにより、隣り合う第1側壁26の接続部28が互いに嵌合することにより、隣り合う第1側壁26の間の密閉性が高められている。故に、汚染の原因となる物質が、隣り合う第1側壁26の間から露出部26aによって画成される一方の側面11cと固定面50aとの間の空間S内に侵入することを抑制できる。したがって、汚損度の上昇により絶縁距離Lが大きくなることを抑制することができるので、電池セル10と筐体50との絶縁の信頼性を更に高めることが可能である。
【0044】
また、図2に示されるように、電池モジュール1は、配列体3を挟むように配置され、配列方向D1に拘束荷重を付加する一対の拘束部材40と、拘束部材40と配列体3との間に配置され、配列体3と共に拘束される弾性部材30と、を備えている。これにより、例えば電池セル10が膨張した場合に、弾性部材30によって電池セル10の膨張を吸収することができる。したがって、電池セル10が膨張した際に、電池モジュール1に撓みが生じることを抑制することができる。
【0045】
また、図1に示されるように、電池パック100は、上記の電池モジュール1と、電池モジュール1が固定される筐体50と、伝熱部材7と筐体50との間に配置され、伝熱部材7と筐体50との摩擦を低減するスリップシート8と、を備えている。これにより、例えば電池セル10が膨張した場合に、伝熱部材7が筐体50に対して配列方向D1に移動しやすくなる。したがって、電池セル10が膨張した場合であっても、摩擦による伝熱部材7の変形等が抑制されるので、伝熱部材7と筐体50との間で熱が伝達される面積を一定に保つことができる。よって、電池セル10の放熱性を保つことが可能である。
【0046】
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明は上記の実施形態に限定されず、種々の変更を行うことができる。
【0047】
例えば、上記の実施形態では、伝熱部材7は露出部26aの縁部と離間して配置されていたが、伝熱部材7の配置は適宜変更可能である。図7は、伝熱部材7の配置の変形例を示す図である。図7に示されるように、伝熱部材7の少なくとも一部は、第1側壁26と離間している。伝熱部材7は、上下方向D2における露出部26aの両端にそれぞれ配置され、隣り合う第1側壁26の接触部分と空間Sとの間を埋めている。非接触部11e及び空間Sは、上下方向D2における露出部26aの中央部に形成される。この場合、伝熱部材7が隣り合う第1側壁26の接触部分と空間Sとの間を埋めることにより、隣り合う第1側壁26の接触部分の密閉性が高められている。これにより、汚染の原因となる物質が、接触部分から露出部26aによって画成される一方の側面11cと固定面50aとの間の空間S内に、汚染の原因となる物質が侵入することを抑制できる。したがって、電池セル10と筐体50との絶縁の信頼性を更に高めることが可能である。
【0048】
また、セルホルダ20は、露出部26aを有していればよく、他の形状を有していてもよい。図8は、セルホルダ20の変形例を示す図である。図8に示されるように、セルホルダ120は、隔壁121と、上壁123と、下壁124と、第1側壁126と、第2側壁127と、第1側壁126形成された露出部126aとを有している。第1側壁126の厚さNは、絶縁距離L以上(又は1mm以上)且つ2mm以下である。セルホルダ120は、上壁123、下壁124、第1側壁126、及び第2側壁127が、配列方向D1において隔壁121の一面側121aのみに突出している点で、上記実施形態のセルホルダ20と相違している。この場合、配列方向D1における上壁123、下壁124、第1側壁126、及び第2側壁127のそれぞれの幅は、電池セル10の幅と略同一である。また、露出部126aは、隔壁121の一面側121aのみに形成されている。このようなセルホルダ120を有する電池モジュールにおいても、第1側壁126の厚さが絶縁距離L以上(又は1mm以上)且つ2mm以下であるため、上記実施形態の電池モジュール1と同様の効果を得ることができる。
【0049】
図9は、セルホルダ20の更なる変形例を示す図である。図9に示されるように、セルホルダ220は、隔壁221と、上壁223と、下壁224と、第1側壁226と、第2側壁227と、第1側壁226形成された露出部226aとを有している。第1側壁226の厚さNは、絶縁距離L以上(又は1mm以上)且つ2mm以下である。上壁223、下壁224、第1側壁226、及び第2側壁227は、セルホルダ120と同様に、配列方向D1において隔壁121の一面側121aのみに突出している。セルホルダ220がセルホルダ120と相違する点は、露出部226aが、方向D3から見て第1側壁226の中央部において窓状に設けられている点である。この構成によれば、露出部226aは隣り合う第1側壁226の間から離間しているので、汚染の原因となる物質が、隣り合う第1側壁226の間から露出部226aによって形成される一方の側面11cと筐体50との間の空間S内に侵入することを抑制できる。したがって、電池セル10と筐体50との絶縁の信頼性を更に高めることが可能である。
【0050】
また、隔壁21、上壁23、下壁24、及び第2側壁27の厚さは任意に設定することができる。例えば、隔壁21、上壁23、下壁24、及び第2側壁27の厚さは、第1側壁26の厚さNと略同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0051】
また、上記実施形態では、第1側壁26のみに接続部28が設けられていたが、上壁23、下壁24、及び第2側壁27にも接続部28が設けられていてもよい。また、接続部28の構成は上記実施形態に限定されず、適宜変更可能である。なお、第1側壁26には、接続部28が設けられていなくてもよい。
【0052】
また、上記実施形態では、配列体3と拘束部材40との間に弾性部材30が配置されている例について説明したが、電池モジュール1は弾性部材30を有していなくてもよい。
【0053】
また、上記の実施形態では、伝熱部材7と筐体50との間にスリップシート8が配置されている例について説明したが、電池パック100はスリップシート8を有していなくてもよい。また、スリップシート8は、第1側壁26と筐体50との間にも配置されていてもよい。この場合、伝熱部材7と筐体50との間のスリップシート8と、第1側壁26と筐体50との間のスリップシート8とは一体であってもよい。すなわち、筐体50に対向する電池モジュール1の一面の全体を覆うように、1枚のスリップシート8を電池モジュール1と筐体50との間に配置してもよい。
【符号の説明】
【0054】
1…電池モジュール、3…配列体、7…伝熱部材、8…スリップシート(摩擦低減部材)、10…電池セル、11c…側面、20,120,220…セルホルダ、21…隔壁、21c…一縁部、22…保持部、26,126,226…第1側壁(側壁)、26a,126a,226a…露出部、28…接続部、30…弾性部材、40…拘束部材、50…筐体、50a…固定面、100…電池パック、D1…配列方向、D2…上下方向、D3…方向、L…絶縁距離、N…厚さ、S…空間。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9