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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-21
(45)【発行日】2022-03-02
(54)【発明の名称】ゴルフクラブヘッド
(51)【国際特許分類】
   A63B 53/04 20150101AFI20220222BHJP
   A63B 102/32 20150101ALN20220222BHJP
【FI】
A63B53/04 A
A63B102:32
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2017135399
(22)【出願日】2017-07-11
(65)【公開番号】P2019017399
(43)【公開日】2019-02-07
【審査請求日】2020-05-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124039
【弁理士】
【氏名又は名称】立花 顕治
(74)【代理人】
【識別番号】100179213
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 未知子
(72)【発明者】
【氏名】加藤 雅敏
【審査官】赤坂 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-029576(JP,A)
【文献】特開2017-000458(JP,A)
【文献】特開2015-029628(JP,A)
【文献】特開2016-120126(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0277029(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63B 53/00-53/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フェース部と、
クラウン部と、
ソール部と、
を備え、
前記クラウン部は、
前記フェース部の少なくとも一部に沿ってトゥ-ヒール方向に延びる第1領域と、
前記第1領域よりもバック側に配置される第2領域と、
前記第1領域と第2領域との間で、トゥ-ヒール方向に延び、当該第1領域側から第2領域に向かって下方に延びる段差領域と、
を有し、
前記第2領域は、
トゥ-ヒール方向の中央付近に配置され、前記段差領域に接する第1部位と、
記第1部位のバック側、トゥ側、及びヒール側において、前記第1部位の周囲を囲む部位であって、当該部位の全体の肉厚が前記第1部位よりも薄い第2部位と、
を備えている、ゴルフクラブヘッド。
【請求項2】
前記第2部位は、
前記第1部位からバック側に放射状に延び、当該第2部位の他の領域よりも肉厚の薄い、複数の薄肉部を有している、請求項1に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項3】
前記第1部位のフェース-バック方向の長さは、前記第2領域のフェース-バック方向の長さの15~50%である、請求項1または2に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項4】
前記第1部位のトゥ-ヒール方向の長さは、前記第2領域のトゥ-ヒール方向の長さの20~75%である、請求項1から3のいずれかに記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項5】
前記第1部位は、フェースセンターからトゥ側に5~40mm離れた位置にトゥ側の端部を有し、フェースセンターからヒール側に5~30mm離れた位置にヒール側の端部を有するように形成されている、請求項4に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項6】
前記第1部位は、バック側にいくにしたがって、トゥ-ヒール方向の長さが短くなるように形成されている、請求項1から5のいずれかに記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項7】
前記第1部位は、前記段差領域に接する端縁と、バック側の端縁とがトゥ-ヒール方向に略平行に延びるように形成されている、請求項1から6のいずれかに記載のゴルフクラブヘッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴルフクラブヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、例えば、特許文献1に開示されているように、クラウン部に隆起部を設け、隆起部とその後方部分との間の段差として傾斜面を形成したゴルフクラブヘッドが提案されている。この構成により、隆起部が高くなった分だけ、フェース部の高さを高くすることができる。そのため、フェース部における反発性能を向上することができる。また、クラウン部においては、隆起部のみが高く形成され、その後方部分は隆起部よりも低い位置に形成されているため、ヘッドの重心を低くすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第5882522号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のような構造のゴルフクラブヘッドにおいても、反発性能を向上するためには改良の余地があり、さらに飛距離を伸ばすことが要望されている。本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、クラウン部に隆起部が形成されているゴルフクラブヘッドにおいて、さらに反発性能を高めることができる、ゴルフクラブヘッドを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係るゴルフクラブヘッドは、フェース部と、クラウン部と、ソール部と、を備え、前記クラウン部は、前記フェース部の少なくとも一部に沿ってトゥ-ヒール方向に延びる第1領域と、前記第1領域よりもバック側に配置される第2領域と、前記第1領域と第2領域との間で、トゥ-ヒール方向に延び、当該第1領域側から第2領域に向かって下方に延びる段差領域と、を有し、前記第2領域は、トゥ-ヒール方向の中央付近に配置され、前記段差領域に接する第1部位と、前記第1部位よりも肉厚が薄く、前記第1部位のバック側、トゥ側、及びヒール側において、前記第1部位の周囲を囲むように配置される第2部位と、を備えている。
【0006】
なお、「トゥ-ヒール方向」とは、厳密なトゥ-ヒール方向でなくてもよく、多少傾斜していてもよい。
【0007】
上記ゴルフクラブヘッドにおいて、前記第2部位は、前記第1部位からバック側に放射状に延び、当該第2部位の他の領域よりも肉厚の薄い、複数の薄肉部を有することができる。
【0008】
上記各ゴルフクラブヘッドにおいて、前記第1部位のフェース-バック方向の長さは、前記第2領域のフェース-バック方向の長さの15~50%とすることができる。
【0009】
上記各ゴルフクラブヘッドにおいて、前記第1部位のトゥ-ヒール方向の長さは、前記第2領域のトゥ-ヒール方向の長さの20~75%とすることができる。
【0010】
上記ゴルフクラブヘッドにおいて、前記第1部位は、フェースセンターからトゥ側に5~40mm離れた位置にトゥ側の端部を有し、フェースセンターからヒール側に5~30mm離れた位置にヒール側の端部を有するように形成することができる。
【0011】
上記ゴルフクラブヘッドにおいて、前記第1部位は、バック側にいくにしたがって、トゥ-ヒール方向の長さが短くなるように形成することができる。
【0012】
上記各ゴルフクラブヘッドにおいて、前記第1部位は、前記段差領域に接する端縁と、バック側の端縁とがトゥ-ヒール方向に略平行に延びるように形成することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係るゴルフクラブヘッドによれば、クラウン部に隆起部が形成されているゴルフクラブヘッドにおいて、さらに反発性能を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本実施形態に係るゴルフクラブヘッドの斜視図である。
図2図1のゴルフクラブヘッドの基準状態での平面図である。
図3図2のA-A線断面図である。
図4A】フェース部の境界を説明する図である。
図4B】フェース部の境界を説明する図である。
図5図2においてクラウン部を透過して示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係るゴルフクラブヘッドの一実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0016】
<1.ゴルフクラブヘッドの概要>
図1は、このゴルフクラブヘッドの斜視図、図2は、ヘッドの基準状態での平面図、図3は、図2のA-A線断面図である。図1図3に示すように、このゴルフクラブヘッド(以下、単に「ヘッド」ということがある)100は、内部空間を有する中空構造であり、フェース部1、クラウン部2、ソール部3、及びホーゼル部4によって壁面が形成されたウッド型のゴルフクラブヘッドである。具体的には、ユーティリティ(ハイブリッド)、フェアウェイウッド、ドライバーといったゴルフクラブヘッドに適用することができる。
【0017】
フェース部1は、ボールを打球する面であるフェース面を有しており、クラウン部2はフェース部1と隣接し、ヘッド100の上面を構成する。ソール部3は、主としてヘッド100の底面を構成し、フェース部1とクラウン部2以外のヘッド100の外周面を構成する。すなわち、ヘッド100の底面のほか、フェース部1のトウ側からヘッドのバック側を通りフェース部1のヒール側へと延びる部位もソール部3の一部である。さらに、ホーゼル部4は、クラウン部2のヒール側に隣接して設けられる部位であり、ゴルフクラブのシャフト(図示省略)が挿入される挿入孔41を有している。そして、この挿入孔41の中心軸線Zは、シャフトの軸線に一致している。
【0018】
ここで、ゴルフクラブヘッド100を地面に設置するときの基準状態について説明する。まず、図2に示すように、上記中心軸線Zが地面に対して垂直な平面P1に含まれ、且つ所定のライ角及びリアルロフト角で地面上にヘッドが載置された状態を基準状態と規定する。そして、上記平面P1を基準垂直面と称する。また、図2に示すように、上記基準垂直面P1と地面との交線の方向をトゥ-ヒール方向と称し、このトゥ-ヒール方向に対して垂直であり且つ地面に対して平行な方向をフェース-バック方向と称することとする。また、トゥ-ヒール方向及びフェース-バック方向に直交する方向を上下方向と称することがある。
【0019】
本実施形態において、フェース部1とクラウン部2、及びフェース部1とソール部3との境界は、次のように定義することができる。すなわち、両者の間に稜線が形成されている場合には、これが境界となる。一方、明確な稜線が形成されていない場合には、図4Aに示されるように、ヘッド重心GとスイートスポットSSとを結ぶ直線Nを含む各断面E1、E2、E3…において、図4Bに示されるように、フェース外面輪郭線Lfの曲率半径rがスイートスポット側からフェース外側に向かって初めて200mmとなる位置Peがフェース部1の周縁となり、これがクラウン部2またはソール部3との境界として定義される。なお、スイートスポットSSとは、ヘッド重心Gを通るフェース面の法線(直線N)とこのフェース面との交点である。
【0020】
また、本実施形態において、クラウン部2とソール部3との境界は次のように定義することができる。すなわち、クラウン部2とソール部3との間に稜線が形成されている場合には、これが境界となる。一方、これらの間に明確な稜線が形成されていない場合には、ヘッドを基準状態に設置し、これをヘッド100の重心の真上から見たときの輪郭が境界となる。
【0021】
また、ヘッド100は、例えば、比重がほぼ4.3~4.5程度のチタン合金(Ti-6Al-4V、Ti-8Al-1Mo-1V等)で形成することができる。また、チタン合金以外にも、例えばステンレス鋼、マレージング鋼、アルミニウム合金、マグネシウム合金、またはアモルファス合金などの中から1種または2種以上を用いて形成することもできる。
【0022】
また、このゴルフクラブヘッド100の体積は、例えば、90cm3以上、470cm3以下が望ましい。
【0023】
<2.ゴルフクラブヘッドの組立構造>
本実施形態に係るゴルフクラブヘッド100は、図3に示すように、クラウン部2及びソール部3を有するヘッド本体101と、フェース部1及びその周縁から延びる周縁部15を有するカップ状に形成されたフェース用部材102と、を組み立てることで構成される。このヘッド本体101は、クラウン部2及びソール部3で囲まれた開口18を有し、この開口18を塞ぐようにフェース用部材102が取り付けられる。すなわち、フェース用部材102の周縁部15の端面が、ヘッド本体101の開口18の端面と突き合わされ、これらが、溶接によって接合される(いわゆるカップフェース構造)。そして、フェース用部材102は、ヘッド本体101の開口18の縁部に取付けられることで、ヘッド本体101と一体化され、これによって、フェース用部材102の周縁部15は、ヘッド100のクラウン部2及びソール部3の一部として機能する。
【0024】
したがって、フェース用部材102の周縁部15がヘッド本体101に取付けられることで一体的に形成される面が、ヘッド100のクラウン部2及びソール部3を構成する。そのため、厳密には、ヘッド本体101のクラウン部2及びソール部3は、ヘッド100のクラウン部2及びソール部3の一部ではあるが、本明細書では、これらを区別することなく、ヘッド本体101の各部も、単にクラウン部2、ソール部3と称することがある。
【0025】
<3.クラウン部の構造>
続いて、クラウン部2について説明する。図1図3に示すように、クラウン部2は、フェース部側に配置される隆起部(第1領域)21と、隆起部21よりもバック側に配置される基部(第2領域)22とを備えている。隆起部21は、主として、フェース部1に沿ってトゥ-ヒール方向に延びる帯状の領域である。一方、基部22は、隆起部21よりも低い位置でクラウン部2の大半を占める領域であり、その周縁はソール部3と接している。そして、隆起部21と基部22との境界には段差を構成する傾斜面(段差領域)23が形成されている。これにより、隆起部21と基部22との段差の分だけ、フェース部1の上下方向の高さが高くなっている。
【0026】
この傾斜面23は、バック側ににいくにしたがって、下方に延びるように構成されている。これにより、ゴルフクラブヘッド100を基準状態で設置したとき、上方から傾斜面23を視認することができる。すなわち、アドレスに入ったゴルファーから視認可能となっている。そして、傾斜面23は、隆起部21に沿って形成されているため、隆起部21と同様に、平面視において帯状に形成されている。
【0027】
図3に示すように、隆起部21のフェース-バック方向の幅Dは、例えば、平面視において、5~25mmとすることが好ましく、7~20mmとすることがさらに好ましい。
【0028】
また、傾斜面23の平面視におけるフェース-バック方向の幅Wは、例えば、1~9mmとすることが好ましく、2~7mmであることがさらに好ましい。さらに、傾斜面23の高さHは、例えば、0.5~8mmとすることが好ましく、0.5~6mmとすることがさらに好ましく、0.5~5mmとすることが特に好ましい。
【0029】
基部22は、上方に向かって凸となるように湾曲している。例えば、図3に示す断面上での曲率半径が、120~200mmとなるように形成することができる。曲率半径は、例えば、上記断面に係る線上での3点を規定したとき、前方の点ほど曲率半径が大きくなるように形成することができる。
【0030】
なお、図3の断面は、フェースセンターを通るフェース-バック方向の断面である。フェースセンターとは、以下のように定義することができる。まず、フェース部1(フェース面)上において、トゥ-ヒール方向および上下方向の概ね中央付近で任意の点Poを決定する。この点Poを通りトゥ-ヒール方向に延びる線xを引き、この線xの中点Pxを決定する。続いて、フェース部1上において、点Pxを通り上下方向に延びる線yを引き、この線の中点Pyを決定する。そして、こうして決定された点Pyを通りトゥ-ヒール方向に延びる線を線xとして引き直し、その後上記と同様にして点Pyを決定し直す工程を繰り返す。この工程の繰り返しの中で、前回の点Pyと新たな点Pyとの間の距離が0.5mm以下となったときの当該新たな点Pyが、フェースセンターと定義される。なお、より詳細には、上記の点Poを通る線xは、この点Poを通るフェース面の法線を含みかつトゥ-ヒール方向に平行な平面と、フェース面(フェース部1の表面)との交線である。また、より詳細には、上記の点Pxを通る線yは、この点Pxを通るフェース面の法線を含みかつ上下方向に平行な平面と、フェース面との交線である。また、より詳細には、上記の点Pyを通る線xは、この点Pyを通るフェース面の法線を含みかつトゥ-ヒール方向に平行な平面と、フェース面との交線である。なお、上記線xおよび線yの長さの測定は、フェース面に沿って測定される。
【0031】
<4.クラウン部の内壁面の構造>
次に、クラウン部2の内壁面の構造について、図5を参照しつつ説明する。図5は、図2において、クラウン部2を透過し肉厚の変化を視認できるようにした平面図である。図5に示すように、クラウン部2の基部22の内壁面には凹凸が形成されており、これによってクラウン部2には肉厚の異なる複数の領域が形成されている。まず、トゥ-ヒール方向の中心付近には、傾斜面23と接し、バック側に延びる第1部位221が形成されている。第1部位221は概ね台形状に形成されており、バック側にトゥ-ヒール方向に延びる直線状の後端縁2211を有し、この後端縁2211のトゥ-ヒール方向の両側に、フェース-バック方向へ傾斜しながら延びる一対の円弧状の側端縁2212、2213を有している。そして、フェース側の端縁、つまり傾斜面23と接する部分のトゥ-ヒール方向の長さD1が、後端縁2211のトゥ-ヒール方向の長さよりも長くなっている。
【0032】
より詳細に説明すると、第1部位221のトゥ-ヒール方向の長さD1は、基部22のトゥ-ヒール方向の長さD2の20~75%であることが好ましい。この長さD2は、平面視において、クラウン部2のトゥ側の端縁と、ホーゼル部4の挿入孔41の中心Xとの間の長さである。また、第1部位221のトゥ側の端部は、フェース-バック方向においてフェースセンターCから5~40mm離れた位置(フェースセンターからの長さがD3)とすることができる。一方、第1部位221のヒール側の端部は、フェース-バック方向において、フェースセンターから5~30mm離れた位置(フェースセンターからの長さがD4)とすることができる。また、第1部位221のフェース-バック方向の長さD5は、基部22のフェース-バック方向の長さD6の15~50%とすることができる。なお、これらの長さD5,D6は、フェースセンターCを通過しフェース-バック方向に延びる線と傾斜面23のバック側の端縁とが交差する点Fからの長さとする。
【0033】
基部22において、第1部位221の周囲には、第1部位221よりも肉厚の薄い第2部位222が形成されている。すなわち、第2部位222は、第1部位221のトゥ側、バック側、及びヒール側に配置されて第1部位221の周囲を連続的に囲んでいる。第1部位221の肉厚は、例えば、0.6~1.2mmとすることができる。第2部位222の肉厚は、第1部位221よりも薄いが、詳細は次に説明する。
【0034】
図5に示すように、第2部位222には、さらに肉厚の薄い領域である、複数の薄肉部201~203が形成されている。但し、これら薄肉部201~203の肉厚は、例えば、0.3~0.6mmとすることができ、また、第2部位222において、薄肉部201~203以外の部分(以下、厚肉部223と称することとする)の肉厚は、薄肉部201~203よりも厚く、例えば0.45~0.8mmとすることができる。
【0035】
本実施形態では、3つの薄肉部201~203が形成されているが、以下では、これらをトゥ側からヒール側に向かって第1薄肉部201、第2薄肉部202、及び第3薄肉部203と称することとする。これら3つの薄肉部201~203は、いずれも矩形状に形成され、バック側に向かって放射状に延びている。
【0036】
第1薄肉部201は、第1部位221のトゥ側の側端縁2212に連結されており、バック側へいくにしたがって、トゥ側へ延びるように形成されている。第2薄肉部202は、第1部位221の後端縁2211に連結されており、概ね台形状に形成されている。すなわち、第2薄肉部202は、フェース側の端縁及びバック側の端縁がともに、概ねトゥ-ヒール方向に延びており、フェース側の端縁の長さが、バック側の端縁の長さよりも短くなっている。そして、第3薄肉部203は、第1部位221のヒール側の側端縁2213に連結されており、バック側へいくにしたがって、ヒール側へ延びるように形成されている。
【0037】
いずれの薄肉部201~203も、クラウン部2のバック側の周縁まで延びている。また、これら薄肉部201~203は、隙間(厚肉部223)をあけて形成されており、これらの隙間もバック側にいくにしたがって放射状に延びている。さらに、これら薄肉部201~203と厚肉部223との境界、及び薄肉部201~203と第1部位221との境界は、肉厚がなだらかに変化するように傾斜面225により構成されている。図5では、この傾斜面225の端縁を破線で示している。
【0038】
<5.ゴルフクラブヘッドの製造方法>
次に、上記のゴルフクラブヘッドの製造方法の一例について説明する。まず、上述したヘッド本体101とフェース用部材102とを準備する。このようなヘッド本体101及びフェース用部材102は、種々の方法で作製することができる。例えば、ヘッド本体101は、公知のロストワックス精密鋳造法などの鋳造によって製造することができる。また、フェース用部材102は、例えば、鍛造製法や、平板のプレス加工、鋳造等により製造することができる。また、このとき用いるフェース用部材102の加工前の平板は、圧延方向が、フェース部1のトゥ側の上部からヒール側の下部に向かう方向とほぼ一致するように加工される。
【0039】
そして、これらを、例えば、溶接(TIG(タングステン-不活性ガス)溶接、プラズマ溶接、レーザー溶接、ロウ付けなど)により接合した後、所定の塗装を施すと、ゴルフクラブヘッドが完成する。
【0040】
<6.特徴>
以上の実施形態によれば、次の効果を得ることができる。
【0041】
(1) クラウン部2において、隆起部21が基部22よりも、傾斜面23を介して高く形成されているため、隆起部21が高くなった分だけ、フェース部1の高さを高くすることができる。そのため、フェース部1における反発性能を向上することができる。また、クラウン部2においては、隆起部21のみが高く形成され、クラウン部2の大半を占める基部22は隆起部21よりも低い位置に形成されているため、ヘッドの重心を低くすることができる。
【0042】
(2) 本実施形態においては、基部22のトゥ-ヒール方向の中央付近において、傾斜面23と接するように厚肉の第1部位221が設けられている。これにより、次の効果を得ることができる。すなわち、第1部位221により、ボールによる衝撃が大きいトゥ-ヒール方向の中央付近の肉厚が厚くなるため、剛性が高くなり、基部22の座屈変形を抑制することができる。また、座屈変形に伴う基部22の上下方向の振動も抑制することができる。これにより、座屈変形と振動に起因するエネルギーロスを小さくし、フェース部1の変形をより大きくすることができる。すなわち、フェース部1をより撓みやすくすることができ、ボールの打撃時にボールに与えるエネルギーを増大できるため、ヘッドの反発性能を向上することができる。
【0043】
特に、本実施形態に係るヘッドは、クラウン部2に隆起部21と基部22との段差として傾斜面23が形成されているため、傾斜面23の周囲が変形しやすく、これによって基部22の座屈変形も生じやすい。したがって、傾斜面23を有するヘッドに上記のような第1部位221を設けると、特に有利である。
【0044】
なお、第1部位221の周囲、つまり第1部位221のトゥ側、ヒール側、及びバック側を囲む第2部位222には、ボールのインパクト時に及ぶ力が、第1部位221よりは小さいため、第2部位222におけるエネルギーロスも小さい。したがって、第2部位222には第1部位221ほどの剛性は必要ではない。そのため、本実施形態においては、第2部位222の肉厚を薄くし、これによってクラウン部2の重量を小さくしている。その結果、ヘッドの重心が高くなるのを抑制している。
【0045】
例えば、ボールのインパクト時に及ぶ力は、バック側にいくにしたがって小さくなるため、これを考慮して、第1部位221の形状を決定している。すなわち、第1部位221は、バック側にいくにしたがってトゥ-ヒール方向の長さが短くなっているが、これは、ボールのインパクト時に及ぶ力を考慮したものであり、バック側にいくにしたがって、この力が小さくなるからである。したがって、このような形状により、第1部位221の大きさを小さくすることができるため、クラウン部2の重量が大きくなるのを抑制している。このように、本実施形態では、インパクト時に基部22に作用する力を考慮して、第1部位221の大きさ(トゥ-ヒール方向及びフェース-バック方向の長さ)や形状を決定している。
【0046】
(3) 第2部位222には複数の薄肉部201~203を設けているため、これによってクラウン部2の重量を低減することができ、ヘッド100の重心を下げることができる。但し、薄肉部201~203の周囲は、厚肉部223で囲まれているため、第2部位222の剛性が低下するのを防止している。
【0047】
<7.変形例>
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて、種々の変更が可能である。また、以下の変形例は、適宜組み合わせることができる。例えば、以下の変更が可能である。
【0048】
<7-1>
上記実施形態における第1部位221の形状は一例であり、この形状に限定されるものではない。すなわち、フェース側の端縁が傾斜面23に接していれば、台形以外の形状でもよく、例えば、三角形状、矩形状、多角形状、半円状など、種々の形状にすることができる。但し、角を有していると、応力が集中するため、第1部位221の輪郭は、曲線または直線で構成されることが好ましい。また、第1部位221は、トゥ-ヒール方向の中心付近に配置されているが、中心付近とは、少なくともフェースセンターをカバーするような領域である。
【0049】
<7-2>
第2部位222の形態は特には限定されず、第2部位222に形成される薄肉部201~203の形状、数も適宜変更可能である。また、薄肉部201~203を設けず、肉厚が概ね一定となるようにすることもできる。
【0050】
<7-3>
隆起部21及び傾斜面23の形状は特には限定されず、概ねトゥ-ヒール方向に延びるものであればよい。例えば、トゥ-ヒール方向の両端部がバック側に延びるようなU字型に形成されていてもよい。また、傾斜面23は、必ずしも平面でなくてもよい。例えば、傾斜面を曲面状に形成することもできる。さらに、隆起部21と基部22との間は、必ずしも傾斜してなくてもよく、上下方向に延びるような段差であってもよい。
【0051】
<7-4>
上記実施形態に係るヘッドは、カップフェース構造を有しているが、その他の態様であってもよい。例えば、フェース部1及びソール部3を備え、クラウン部2用の開口が形成されたヘッド本体に対し、クラウン部を開口に嵌め込んでヘッドを構成することができる。また、カップフェース構造でなくてもよく、フェース部1に形成された開口に平板状のフェース用部材を嵌め込み、ヘッド本体に溶接することでヘッドを構成することもできる。
【0052】
<7-5>
ソール部3の形状は特には限定されず、デザイン上、構造上の観点から、例えば、適宜、凹部や溝を設けることができる。
【符号の説明】
【0053】
1 フェース部
2 クラウン部
21 隆起部(第1領域)
22 基部(第2領域)
221 第1部位
222 第2部位
201~203 薄肉部
23 傾斜面(段差領域)
3 ソール部
4 ホーゼル部
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5