(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-21
(45)【発行日】2022-03-02
(54)【発明の名称】検証システム及び検証方法
(51)【国際特許分類】
G06F 11/36 20060101AFI20220222BHJP
B60R 21/0134 20060101ALI20220222BHJP
【FI】
G06F11/36 192
B60R21/0134 313
(21)【出願番号】P 2017152591
(22)【出願日】2017-08-07
【審査請求日】2020-04-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100175802
【氏名又は名称】寺本 光生
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100167553
【氏名又は名称】高橋 久典
(72)【発明者】
【氏名】前田 宗彦
【審査官】多賀 実
(56)【参考文献】
【文献】特開平02-297637(JP,A)
【文献】特開平03-189738(JP,A)
【文献】特開2015-108937(JP,A)
【文献】特開2015-114952(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0092252(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 11/36
B60R 21/0134
G06F 8/70-8/77
B60R 16/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
検出装置に実装されると共に
レーダ装置からの入力に基づいて処理を実行する
障害物検出プログラムと、前記入力に基づいて処理を実行すると共に前記
障害物検出プログラムから一部が変更された新プログラムとの比較を行う検証システムであって、
前記レーダ装置と、
レーダ装置出力及び前記
障害物検出プログラムによって得られる処理結果を出力する処理手段とを有する検出装置に組み込まれ、
前記新プログラムが記憶される記憶手段と、
前記新プログラムからの変更点に関わる処理結果を除いて、前記
障害物検出プログラムの処理結果と前記新プログラムの処理結果とが同一であるか判定する比較判定手段と
を有することを特徴とする検証システム。
【請求項2】
前記比較判定手段による判定結果を保存する判定記憶手段を有することを特徴とする請求項1記載の検証システム。
【請求項3】
前記判定記憶手段には、前記判定結果が、前記
障害物検出プログラムと前記新プログラムとで同一でない場合における、前記
障害物検出プログラムの処理結果及び前記新プログラムの処理結果が保存されることを特徴とする請求項2記載の検証システム。
【請求項4】
前記判定記憶手段には、前記判定結果が、前記
障害物検出プログラムと前記新プログラムとで同一でない場合における、前記
レーダ装置出力が保存されることを特徴とする請求項2または3に記載の検証システム。
【請求項5】
前記比較判定手段による判定結果を外部へと送信する通信手段を備えることを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の検証システム。
【請求項6】
検出装置に実装されると共に
レーダ装置からの入力に基づいて処理を実行する
障害物検出プログラムと、前記入力に基づいて処理を実行すると共に前記
障害物検出プログラムから一部が変更された新プログラムとの比較を行う検証方法であって、
前記検出装置内において、前記
障害物検出プログラムと前記新プログラムとによる処理を並行して行い、前記新プログラムからの変更点に関わる処理結果を除いて、前記
障害物検出プログラムの処理結果と前記新プログラムの処理結果とが同一であるか判定することを特徴とする検証方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検証システム及び検証方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ソフトウェアの改良や機能の追加等の改変を行う際には、改変箇所以外の部分が現行のソフトウェアと同様に機能するかを調べる回帰テストを行う必要がある。例えば、特許文献1には、プログラム修正前後の実行結果を比較して、プログラムの不具合を判定する回帰テスト支援システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような回帰テストを、多数のセンサまたは情報量の大きいセンサ等の入力を用いるソフトウェアに対して実行する場合、センサデータの組み合わせが多数となる。回帰テストにおいて、このような多数のセンサデータの組み合わせを入力として用いると、回帰テストに時間がかかり、回帰テストの手順が繁雑となる。
【0005】
本発明は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、回帰テストの実行を容易とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するための手段として、以下の構成を採用する。
【0007】
第1の手段として、検出装置に実装されると共にセンサからの入力に基づいて処理を実行する現行プログラムと、上記入力に基づいて処理を実行すると共に上記現行プログラムから一部が変更された新プログラムとの比較を行う検証システムであって、センサと、センサ出力及び上記現行プログラムによって得られる処理結果を出力する処理手段とを有する検出装置に組み込まれ、上記新プログラムが記憶される記憶手段と、上記新プログラムからの変更点に関わる処理結果を除いて、上記現行プログラムの処理結果と上記新プログラムの処理結果とが同一であるか判定する比較判定手段とを有する、という構成を採用する。
【0008】
第2の手段として、上記第1の手段において、上記比較判定手段による判定結果を保存する判定記憶手段を有する、という構成を採用する。
【0009】
第3の手段として、上記第2の手段において、上記判定記憶手段には、上記判定結果が、上記現行プログラムと上記新プログラムとで同一でない場合における、上記現行プログラムの処理結果及び上記新プログラムの処理結果が保存される、という構成を採用する。
【0010】
第4の手段として、上記第2または3の手段において、上記判定記憶手段には、上記判定結果が、上記現行プログラムと上記新プログラムとで同一でない場合における、上記センサ出力が保存される、という構成を採用する。
【0011】
第5の手段として、上記第1~4のいずれかの手段において、上記比較判定手段による判定結果を外部へと送信する通信手段を備える、という構成を採用する。
【0012】
第5の手段として、検出装置に実装されると共にセンサからの入力に基づいて処理を実行する現行プログラムと、上記入力に基づいて処理を実行すると共に上記現行プログラムから一部が変更された新プログラムとの比較を行う検証方法であって、上記検出装置内において、上記現行プログラムと上記新プログラムとによる処理を並行して行い、上記現行プログラムによる処理の処理結果と、上記新プログラムによる処理の処理結果とを比較する、という構成を採用する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、実際に現行プログラムが実装される検出装置に、新プログラムを記憶した検証システムが組み込まれており、センサからの入力を用いて現行プログラムと新プログラムとに並列処理させる。これにより得られる現行プログラム及び新プログラムの各々の処理結果から、新プログラムにおける変更点に関わる処理結果を除き、比較判定手段により比較する。したがって、実際に稼働している検出装置のセンサによるデータに基づいて回帰テストを実施することができ、入力データのパターンを用意する必要がないため、回帰テストの実行を容易とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施形態における障害物検出装置及び検証システムのブロック図である。
【
図2】本発明の一実施形態における検証システムの動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して、本発明に係る検証システム1の一実施形態について説明する。
なお、本実施形態における検証システム1は、コンピュータのCPU、メモリ等のハードウェアと、プログラムを含むソフトウェアとが協働することにより構成されている。
【0016】
本実施形態の検証システム1が障害物検出システム100と共に組み込まれる自動運転車両A(検出装置)は、周囲の障害物を検出しながら自律走行する自動車である。自動運転車両Aは、障害物検出システム100と、検証システム1とを有している。
【0017】
障害物検出システム100は、自動運転車両Aに搭載され、レーダ装置110(センサ)と、プログラム処理部120(処理手段)と、記憶部130とを有しており、自動運転車両Aの付近における障害物の有無を検出する装置である。また、障害物検出システム100は、レーダ装置110からの情報に基づいて障害物の有無を判定する障害物検出プログラムP1(現行プログラム)を記憶部130に記憶しており、障害物検出プログラムP1を実行することにより障害物を検出している。なお、障害物検出システム100は、回帰テストが実行される段階においては、障害物検出プログラムP1の処理結果を自動運転車両Aの制御システムに出力する。
【0018】
このような障害物検出システム100が複数の自動運転車両Aに搭載されており、そのそれぞれにおいて、検証システム1による回帰テストが実行される。なお、障害物検出システム100の障害物検出プログラムP1及び新プログラムP2は、自動運転車両Aに搭載された処理コンピュータにインストールされている。
【0019】
検証システム1は、障害物検出プログラムP1と、新プログラムP2との回帰テストを行うシステムであり、プログラム処理部2と、プログラム記憶部3(記憶手段)と、比較判定部4(比較判定手段)と、データ記憶部5(判定記憶手段)と、通信部6とを有している。プログラム処理部2は、レーダ装置110からレーダ情報を取得し、プログラム記憶部3に記憶された新プログラムP2に基づいて、処理を実行する。プログラム記憶部3には、回帰テストの対象となる新プログラムP2が記憶されている。新プログラムP2は、障害物検出プログラムP1の一部を改変したプログラムであり、レーダ装置110のデータ入力を用いる。
【0020】
比較判定部4は、プログラム処理部120及びプログラム処理部2よりレーダ情報を取得すると共に、障害物検出プログラムP1の処理結果と、新プログラムP2の処理結果とを比較し、改変箇所以外における処理結果が同一となっているかを検証し、検証結果をデータ記憶部5に保存する。
【0021】
データ記憶部5には、比較判定部4による比較結果が保存される。また、データ記憶部5には、障害物検出プログラムP1と新プログラムP2とで改変箇所以外における処理結果が異なる場合の、障害物検出プログラムP1の出力結果及び新プログラムP2の出力結果と、レーダ装置110のレーダ情報が保存される。通信部6は、データ記憶部5に保存されたデータを定期的に自動運転車両Aから車両外に設けられる外部システム200へと出力する無線通信手段である。
【0022】
外部システム200は、自動運転車両Aの外部に設けられるコンピュータに実装され、複数の通信部6から取得したデータに基づいて、新プログラムP2の開発及び修正等を行うシステムである。
【0023】
障害物検出システム100が搭載された複数の自動運転車両Aは、それぞれ、通常と同様に運転が実行される。これにより、各自動運転車両Aの障害物検出プログラムP1及び新プログラムP2には、レーダ装置110により取得された周囲のレーダ情報が入力される。各自動運転車両Aがそれぞれ異なるルートまたは状況で運転されるため、各自動運転車両Aの障害物検出プログラムP1及び新プログラムP2には、それぞれ異なるレーダ情報が入力されることとなる。
【0024】
次に、検証システム1による検証方法を
図2のフローチャートを参照して説明する。
初めに、レーダ装置110から取得したレーダ受信データを用いたプログラム処理部120と、プログラム処理部2とによる並行処理が完了すると、比較判定部4は、障害物検出プログラムP1及び新プログラムP2の処理結果を取得する(ステップS1)。そして、比較判定部4は、予め記憶している新プログラムP2の改変箇所の情報に基づいて、改変箇所に関わるデータを比較対象となる処理結果から除外する(ステップS2)。
【0025】
次に、比較判定部4は、改変箇所(変更点)に関わるデータが除外された処理結果を比較し、全て同一となっているかを検証する(ステップS3)。ステップS3において、処理結果が同一である場合、すなわち判断がYESの場合には、「処理結果が同一である」という情報のみをデータ記憶部5へと保存する(ステップS4)。また、処理結果が同一でない場合、すなわち判断がNOの場合には、比較判定部4は、「処理結果が同一でない」という情報と、障害物検出プログラムP1及び新プログラムP2のそれぞれの処理結果と、処理に用いられたレーダ情報とをデータ記憶部5へと保存する(ステップS5)。
【0026】
検証システム1は、このようなフローを繰り返し実行することにより、データ記憶部5に複数回の回帰テスト(検証)の結果を蓄積する。さらに、検証システム1は、例えば、自動運転車両Aのメンテナンス時等の任意のタイミングでデータ記憶部5に記憶された、判定結果、処理結果及びレーダ情報を含むデータを通信部6により外部システム200へと送信する。
【0027】
このような本実施形態における検証システム1は、自動運転車両Aに実装されているため、実際の自動運転車両Aの運行に伴って取得される障害物検出システム100のレーダ情報を用いて、随時、障害物検出プログラムP1と、新プログラムP2との並行処理による処理結果を比較、検証することができる。したがって、検証システム1は、様々なパターンのレーダ情報を入力として用いた回帰テストを実施することができ、回帰テストの実施が容易である。
【0028】
また、本実施形態における検証システム1は、「処理結果が同一でない」という情報と、障害物検出プログラムP1及び新プログラムP2のそれぞれの処理結果をデータ記憶部5へと保存する。これにより、データ記憶部5には、「処理結果が同一でない」場合の処理結果を蓄積することができ、どのような状況で障害物検出プログラムP1と新プログラムP2とで処理結果が異なるのかを確認することができ、新プログラムP2の修正を行うことが容易となる。
【0029】
また、本実施形態における検証システム1は、判定結果を外部システム200へと無線通信にて送信する通信部6を有している。これにより、自動運転車両Aのように移動可能な装置や、取り外すことの難しい装置等に障害物検出プログラムP1が実装されている場合においても、検証システム1の検証結果を回収することが容易である。
【0030】
以上、図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。上述した実施形態において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の趣旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0031】
上記実施形態においては、検証システム1は、障害物検出プログラムP1と新プログラムP2との処理結果を比較しているが、本発明はこれに限定されない。検証システム1の比較検証の対象となるプログラムは、各種センサからの入力を用いて処理を行うものであれば、その種類を限定されるものではない。また、検証システム1が実装される装置は、自動運転車両Aに限定されず、例えば踏切装置や、道路状況を監視するシステム等としても良い。
【0032】
また、検証システム1は、比較判定部4による判定結果のみをデータ記憶部5に記憶し、適宜、通信部6による無線通信で送信しても良い。この場合、通信部6によるデータ通信量を上記実施形態よりも減少させることができるため、外部システム200と素早く通信することができる。
【0033】
また、上記実施形態では、障害物検出プログラムP1の処理結果と、新プログラムP2の処理結果とが同一でない場合に、障害物検出プログラムP1及び新プログラムP2のそれぞれの処理結果と、処理に用いられたレーダ情報とをデータ記憶部5に記憶するものとしたが、本発明はこれに限定されない。データ記憶部5には、処理結果が同一でない場合に、障害物検出プログラムP1及び新プログラムP2のそれぞれの処理結果のみを記憶するものとしてもよい。また、データ記憶部5には、処理結果が同一でない場合に、レーダ情報のみを記憶するものとしてもよい。
【符号の説明】
【0034】
1 検証システム
2 プログラム処理部
3 プログラム記憶部
4 比較判定部
5 データ記憶部
6 通信部
100 障害物検出システム
110 レーダ装置
120 プログラム処理部
130 記憶部
200 外部システム
A 自動運転車両
P1 障害物検出プログラム
P2 新プログラム