(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-21
(45)【発行日】2022-03-02
(54)【発明の名称】床面敷設陶板
(51)【国際特許分類】
A47K 17/02 20060101AFI20220222BHJP
【FI】
A47K17/02 Z
(21)【出願番号】P 2017189903
(22)【出願日】2017-09-29
【審査請求日】2020-07-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000010087
【氏名又は名称】TOTO株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094640
【氏名又は名称】紺野 昭男
(74)【代理人】
【識別番号】100103447
【氏名又は名称】井波 実
(74)【代理人】
【識別番号】100111730
【氏名又は名称】伊藤 武泰
(74)【代理人】
【識別番号】100187377
【氏名又は名称】芳野 理之
(74)【代理人】
【識別番号】100180873
【氏名又は名称】田村 慶政
(72)【発明者】
【氏名】井上 賢治
(72)【発明者】
【氏名】中公 雄介
【審査官】中村 百合子
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-048511(JP,A)
【文献】登録実用新案第3109775(JP,U)
【文献】特開2002-013111(JP,A)
【文献】米国特許第04285075(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47K 13/00-17/02
E03C 1/12- 1/33
E04F 15/00-15/22
E04D 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
便器下に床面に敷設され、前記床面に接する側に、縦横に複数の裏足が直交して形成されてなる陶板であって、
排水管を通すための貫通孔と、当該陶板および/または前記排水管に接続される連結部材を、前記床面に固定する固定具を通すための貫通孔とを有してなり、
前記裏足が、前記排水管用貫通孔の周辺部において、前記排水管用貫通孔周辺部以外の領域よりも、その間隔が狭く配置されてなることを特徴とする、陶板。
【請求項2】
固定具用貫通孔が、裏足が存在しない場所に設けられてなる、請求項1に記載の陶板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、便器下の床面に敷設される陶板に関し、さらに詳しくは、排水管用および固定具用の貫通孔が設けられ、かつ裏足が設けられた、便器下の床面に敷設される陶板に関する。
【背景技術】
【0002】
大便器、小便器の床面への設置にあたり、便器回りの意匠および汚れ防止のために、陶板を置くことが行われている。この陶板には、排水管用の貫通孔が設けられる。さらに、このような陶板の床面への固定は、モルタル、接着剤などにより行われるが、固定をより確実にするため、連結部材を固定するため、ビスなどの固定具用の貫通孔が設けられることがある。さらにこの貫通孔は、排水管と便器とを接続するソケット等と呼ばれる連結部材を固定するため固定具用の貫通孔を兼ねることがある。
【0003】
このような排水管用および固定具用の貫通孔は、陶板の製造工程の過程(好ましくは最終段階)で、便器の種類に応じて、あらかじめ設けられることが一般的である。これにより、現場での敷設作業が迅速に行える。
【0004】
また、このような陶板には、モルタル、接着剤による床面への固定を確実にするために、その裏面に凹凸が設けられることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者らの得た知見によれば、排水管用および固定具用の貫通孔が設けられた陶板を実際に敷設する際、固定具の締め付けにより陶板が欠けたり、割れたりすることが観察された。本発明は、このような欠損がし難い陶板を提供する。すなわち、本発明は、敷設の際に割れなどの欠損が生じにくい陶板の提供をその目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そして、本発明による陶板は、
便器下に床面に敷設され、前記床面に接する側に、縦横に複数の裏足が直交して形成されてなる陶板であって、
排水管を通すための貫通孔と、当該陶板および/または前記排水管に接続される連結部材を、前記床面に固定する固定具を通すための貫通孔とを有してなり、
前記裏足が、前記排水管用貫通孔の周辺部において、前記排水管用貫通孔周辺部以外の領域よりも、その間隔が狭く配置されてなることを特徴とするものである。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】陶板1を小便器下に敷設する態様の図である。
【
図4】
図3に示される陶板1の一部拡大図であり、凸部11、すなわち裏足が縦横に複数直交していており、その裏足に囲まれて形成されたマス目に閉じた凹部12を備える。
【
図5】陶板1を敷設しながら、小便器を設置する説明図である。
【
図6】排水ソケット7の固定用ビス穴73に、固定ビス8を貫通させて、床面2に打ち付け、陶板1と排水ソケット7を固定した状態を示す図である。
【
図7】裏足11が、排水管用貫通孔13の周辺部においても、排水管用貫通孔12の周辺部以外の領域においても同様の広い間隔で設けられた陶板の模式図である。
【
図8】
図7に示される陶板を、排水ソケット7の固定用ビス穴73に、固定ビス8を貫通させて、床面2に打ち付け、排水ソケット7とともに固定した状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明において「陶板」は、陶磁器からなるものであり、大便器または小便器下に床面に敷設されて使用される。
図1は、小便器下に敷設される陶板の説明図である。図において、本発明による陶板1は、排水口21のある床面2と、給水口31のある壁面3との間に小便器4を設置するにあたり、床面2と小便器4の間に置かれる。なお、図にあるように、壁面3と小便器4との間にパネル5が設置されることがあるが任意である。
図2は、陶板1の床面2への固定の態様を示す図であり、床面2にモルタル、接着剤等により固着される。
図2が示すように、陶板1の便器と接する側の面は平坦であり、場合により化粧が施される、あるいは防汚のための加工、処理がなされていてよい。
【0010】
他方、陶板1の床面2と接する側の面には、凹凸が設けられ、凹部にモルタル、接着剤などが入り込み、床面への固定をより確実にするよう機能する。
図3は、陶板1の床面2と接する面の模式図であり、縦横に複数直交している部分が凸部11、すなわち裏足であり、マス目に閉じた部分が凹部12および15である。
図4は、
図3に示される陶板1の一部拡大図であり、凸部11、すなわち裏足が縦横に複数直交していており、その裏足に囲まれて形成されたマス目に閉じた凹部12を備える。さらに、
図3に示されるように、陶板1の中央には、排水管を通すための貫通孔13と、この態様にあっては、この貫通孔13と連続した孔としての、固定具を通すための貫通孔14が設けられてなる。この図の態様にあっては、貫通孔14は二か所に設けられてなる。
【0011】
本発明にあっては、
図3に示されるように、この裏足11が、排水管用貫通孔13の周辺部において、排水管用貫通孔13の周辺部以外の領域よりも、その間隔が狭く配置されてなる。すなわち、図が示すように、排水管用貫通孔13の周辺部における凹部15は、排水管用貫通孔12の周辺部以外の領域の凹部12よりも小さいものとなる。
【0012】
本発明の好ましい態様によれば、貫通孔14は、本来、裏足11が存在する箇所に設けられず、裏足が存在しない凹部15の箇所に設けられる。
図3は、貫通孔14は、裏足11が存在しない凹部15の箇所に設けられた態様を示す
【0013】
図5は、本発明による陶板を敷設しながら、小便器を設置する際の説明図である。
図5に示されるように、陶板1を、床面2に設けられた排水口21に、貫通孔13を合わせて固定する。続いて、排水口21と小便器の排水口(図示せず)とを、シール材6を介して、排水ソケット7により接続する。排水ソケット7は、小便器の排水口に接続する小便器側接続口71と、リム部72とを備え、リム部72には、この排水ソケット7と陶板1とを床面2に固定するビスが通る、固定用ビス穴73が設けられてなる。
【0014】
図6は、排水ソケット7の固定用ビス穴73に、固定ビス8を貫通させて、床面2に打ち付け、陶板1と排水ソケット7を固定した状態を示す図である。本発明による陶板にあっては、上記のとおり、裏足11が、排水管用貫通孔13の周辺部において間隔が狭く配置されてなる。その結果、固定ビス8を打ち付けて、力が加わっても陶板1の変形は小さい。本発明によるこの効果は、間隔が狭く配置された複数の裏足11が取り囲む凹部15の位置に固定具用貫通孔14が存在するよう構成されることで奏される。この効果は、凹部15を取り囲む裏足11の少なくとも一部が存在しない場合であっても期待でき、例えば
図3に記載の態様にあっては、排水管用貫通孔13と固定具用貫通孔14は連続、連結して一体となっており、この連結部分の裏足11が存在しない状態にあるが、少なくとも対向する一対の裏足11が(
図6の断面視方向に)存在するため、固定ビス8を打ち付け力が加わっても陶板1の変形は小さい。
【0015】
他方、
図7は、本発明による陶板と異なり、裏足11が、排水管用貫通孔13の周辺部においても、排水管用貫通孔13の周辺部以外の領域においても同様の広い間隔で設けられた、従来知られた陶板の模式図である。さらにこの態様にあっては、固定具を通すための貫通孔14が、本来裏足が存在する位置にある。そのため、
図6と同様に、固定ビス8を貫通させて、床面2に打ち付け、陶板1と排水ソケット7を固定すると、
図8に示されるように、固定ビス8からの応力により陶板1がたわみ(図中の点線は、たわみを強調したものである)、場合よって割れにつながるおそれがある。
図6に示されるように、本発明による陶板にあっては、固定ビス8からの応力は、裏足の間隔が狭いため、陶板1のたわみが小さく(図中の点線は、同様にたわみを強調したものである)、その割れにつながるおそれが小さい。
【0016】
本発明の一つの態様によれば、陶板には複数の排水管用貫通孔と、固定具用貫通孔とを備え、その結果、1枚で複数の便器の下に敷設できる大型または長尺の形状としてもよい。また、
図3にあっては排水管用貫通孔と固定具用貫通孔とが一体化されて設けられた態様を示したが、これら排水管用貫通孔と固定具用貫通孔とは別々に独立ものとして設けられてもよい。
【0017】
本発明による陶板は、金型を使用したプレス成形により一般的には製造される。本発明による陶板にあっては、排水管用貫通孔の周辺部において、排水管用貫通孔周辺部以外の領域よりも、裏足同士の間隔が狭く配置された構造を有する。排水管用貫通孔および固定具用貫通孔は、陶板の成形後の加工により設けられることが好ましい。従って、陶板の成形にあたっては、排水管用貫通孔および固定具用貫通孔が設けられるであろう一定の領域において、裏足の間隔を狭くした構造とする。このような一定の領域において裏足の間隔を狭くしておくことで、多様な形状、構造の便器に、裏足の配置を変更させること無く対応でき、また陶板の軽量化と強度とを両立できる。
【符号の説明】
【0018】
1…陶板、11…裏足、12…排水管用貫通孔13の周辺部以外の領域の凹部、13…排水管を通すための貫通孔、14…固定具を通すための貫通孔、15…排水管用貫通孔13の周辺部の領域の凹部、2…床面、21…排水口、3…壁面、4…小便器、5…パネル、6…シール材、7…排水ソケット、71…小便器側接続口、72…リム部、73…固定用ビス穴