IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 住友ゴム工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-制音体付き空気入りタイヤ 図1
  • 特許-制音体付き空気入りタイヤ 図2
  • 特許-制音体付き空気入りタイヤ 図3
  • 特許-制音体付き空気入りタイヤ 図4
  • 特許-制音体付き空気入りタイヤ 図5
  • 特許-制音体付き空気入りタイヤ 図6
  • 特許-制音体付き空気入りタイヤ 図7
  • 特許-制音体付き空気入りタイヤ 図8
  • 特許-制音体付き空気入りタイヤ 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-21
(45)【発行日】2022-03-02
(54)【発明の名称】制音体付き空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 5/00 20060101AFI20220222BHJP
   B60C 19/12 20060101ALI20220222BHJP
【FI】
B60C5/00 F
B60C19/12 A
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2017192903
(22)【出願日】2017-10-02
(65)【公開番号】P2019064487
(43)【公開日】2019-04-25
【審査請求日】2020-09-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104134
【弁理士】
【氏名又は名称】住友 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100156225
【弁理士】
【氏名又は名称】浦 重剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168549
【弁理士】
【氏名又は名称】苗村 潤
(74)【代理人】
【識別番号】100200403
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 幸信
(72)【発明者】
【氏名】湯川 直樹
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 俊昭
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 拓也
【審査官】松岡 美和
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-182280(JP,A)
【文献】特開2011-020479(JP,A)
【文献】特開2013-043643(JP,A)
【文献】特開2003-063208(JP,A)
【文献】特許第4281875(JP,B2)
【文献】特開2006-341629(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 5/00
B60C 19/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気入りタイヤと、この空気入りタイヤのトレッド内面上でタイヤ周方向にのびるスポンジ材からなる制音体とを具えた制音体付き空気入りタイヤであって、
前記制音体は、前記トレッド内面に半径方向外面が貼着される帯状のベース部と、このベース部の半径方向内面から突出する複数の凸部とを具え、
前記凸部は、前記ベース部の巾方向の一側縁から他側縁まで連続してのびるリブ状をなし、かつタイヤ周方向に間隔を隔てて配されるとともに、
タイヤ周方向断面において、
前記ベース部の半径方向内面は、前記トレッド内面と同心な円弧面部を含み、かつ前記凸部の半径方向内面は、タイヤ軸芯に正対する平らなフラット面部を含み、
前記ベース部の半径方向内面の一部に、小突起部が配されていることを特徴とする制音体付き空気入りタイヤ。
【請求項2】
空気入りタイヤと、この空気入りタイヤのトレッド内面上でタイヤ周方向にのびるスポンジ材からなる制音体とを具えた制音体付き空気入りタイヤであって、
前記制音体は、前記トレッド内面に半径方向外面が貼着される帯状のベース部と、このベース部の半径方向内面から突出する複数の凸部とを具え、
前記凸部は、前記ベース部の巾方向の一側縁から他側縁まで連続してのびるリブ状をなし、かつタイヤ周方向に間隔を隔てて配されるとともに、
タイヤ周方向断面において、
前記ベース部の半径方向内面は、前記トレッド内面と同心な円弧面部を含み、かつ前記凸部の半径方向内面は、タイヤ軸芯に正対する平らなフラット面部を含み、
前記凸部の半径方向内面の一部に、小凹部が配されることを特徴とする制音体付き空気入りタイヤ。
【請求項3】
空気入りタイヤと、この空気入りタイヤのトレッド内面上でタイヤ周方向にのびるスポンジ材からなる制音体とを具えた制音体付き空気入りタイヤであって、
前記制音体は、前記トレッド内面に半径方向外面が貼着される帯状のベース部と、このベース部の半径方向内面から突出する複数の凸部とを具え、
前記凸部は、前記ベース部の巾方向の一側縁から他側縁まで連続してのびるリブ状をなし、かつタイヤ周方向に間隔を隔てて配されるとともに、
タイヤ周方向断面において、
前記ベース部の半径方向内面は、前記トレッド内面と同心な円弧面部を含み、かつ前記凸部の半径方向内面は、タイヤ軸芯に正対する平らなフラット面部を含み、
前記凸部は、前記一側縁から他側縁まで円弧状に湾曲してのびることを特徴とする制音体付き空気入りタイヤ。
【請求項4】
前記凸部の半径方向外端において、タイヤ周方向で隣り合う凸部間のタイヤ周方向の間隔は、20~80mmである請求項1~3の何れかに記載の制音体付き空気入りタイヤ。
【請求項5】
前記凸部は、長さ方向と直角な断面形状が矩形状をなす請求項3記載の制音体付き空気入りタイヤ。
【請求項6】
前記凸部は、前記一側縁から他側縁までタイヤ周方向に対して20~90°の角度θで直線状にのびる請求項1~3の何れかに記載の制音体付き空気入りタイヤ。
【請求項7】
前記凸部の前記ベース部からの突出高さは、5~26mmである請求項1~3の何れかに記載の制音体付き空気入りタイヤ。
【請求項8】
前記ベース部の厚さは、2~15mmである請求項1~7の何れかに記載の制音体付き空気入りタイヤ。
【請求項9】
前記制音体は、パンク防止用のシーラント層を介して前記トレッド内面に貼着される請求項1~8の何れかに記載の制音体付き空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロードノイズ低減効果を高めた制音体付き空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
下記の特許文献1には、トレッド内面に、スポンジ材からなる制音体をタイヤ周方向に貼着した制音体付き空気入りタイヤが提案されている。この提案のタイヤでは、制音体の半径方向内面を、凹部と凸部とが繰り返される凹凸面としている。
【0003】
この凹凸面は、音の反射を和らげること、及び音と接触するスポンジ材の表面積を増やすことにより空洞共鳴の抑制効果を高めている。
【0004】
しかし、空洞共鳴の抑制効果の観点から、凹凸面の形状に対してさらに検討の余地が残されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第3622957号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、制音体の凹凸面を改良することによりロードノイズ低減効果を高めた制音体付き空気入りタイヤを提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、空気入りタイヤと、この空気入りタイヤのトレッド内面上でタイヤ周方向にのびるスポンジ材からなる制音体とを具えた制音体付き空気入りタイヤであって、
前記制音体は、前記トレッド内面に半径方向外面が貼着される帯状のベース部と、このベース部の半径方向内面から突出する複数の凸部とを具え、
前記凸部は、前記ベース部の巾方向の一側縁から他側縁まで連続してのびるリブ状をなし、かつタイヤ周方向に間隔を隔てて配されるとともに、
タイヤ周方向断面において、
前記ベース部の半径方向内面は、前記トレッド内面と同心な円弧面部を含み、かつ前記凸部の半径方向内面は、タイヤ軸芯に正対する平らなフラット面部を含む。
【0008】
本発明に係る制音体付き空気入りタイヤでは、前記凸部の半径方向外端において、タイヤ周方向で隣り合う凸部間のタイヤ周方向の間隔は、20~80mmであるのが好ましい。
【0009】
本発明に係る制音体付き空気入りタイヤでは、前記凸部は、長さ方向と直角な断面形状が矩形状をなすのが好ましい。
【0010】
本発明に係る制音体付き空気入りタイヤでは、前記凸部は、前記一側縁から他側縁までタイヤ周方向に対して20~90°の角度θで直線状にのびる、或いは一側縁から他側縁まで円弧状に湾曲してのびるのが好ましい。
【0011】
本発明に係る制音体付き空気入りタイヤでは、前記凸部の前記ベース部からの突出高さは、5~26mmであるのが好ましい。
【0012】
本発明に係る制音体付き空気入りタイヤでは、前記ベース部の厚さは、2~15mmであるのが好ましい。
【0013】
本発明に係る制音体付き空気入りタイヤでは、前記制音体は、パンク防止用のシーラント層を介して前記トレッド内面に貼着されるのが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明に用いられる制音体では、叙上の如く、巾方向に連続してのびるリブ状の凸部が、タイヤ周方向に間隔を有して配される。これにより周方向で隣り合う凸部間に凹部が形成される。そして、タイヤ内腔内の空気が周方向に流れるとき、その空気の一部が、前記凹部内に入り込むとともに渦状の流れとなって凹部から出で行く。このとき、周方向に流れる前記空気を攪乱する。
【0015】
又凸部の半径方向内面が、タイヤ軸芯に正対するフラット面部を含む。このフラット面部は、周方向に流れる空気の一部を前記凹部内に誘導し凹部内に入り込みやすくする。これにより、前記空気の攪乱効果をさらに高め、空洞共鳴を抑えてロードノイズ低減効果をより向上させうる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の制音体付き空気入りタイヤの一実施例を示す子午断面図である。
図2】その一部を拡大して示すタイヤ周方向断面である。
図3】(A)、(B)は、貼り付け前の制音体を示す斜視図、及びタイヤ周方向断面である。
図4】(A)、(B)は、貼り付け前の制音体の他の実施例を示す斜視図、及びタイヤ周方向断面である。
図5】(A)、(B)は、貼り付け前の制音体のさらに他の実施例を示す斜視図、及びタイヤ周方向断面である。
図6】(A)、(B)は、貼り付け前の制音体における凸部の配列状態の他の実施例を示す平面図である。
図7】制音体付き空気入りタイヤの他の実施例を示す子午断面図である。
図8】(A)、(B)は、凸部の効果を誇張して示す断面図である。
図9】(A)、(B)は、表1の比較例の制音体の貼り付け前のタイヤ周方向断面である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
図1に示すように、本実施形態の制音体付き空気入りタイヤTは、空気入りタイヤ1と、そのトレッド内面2S上でタイヤ周方向にのびる制音体20とを具える。
【0018】
空気入りタイヤ1は、チューブレスタイヤであって、周知構造のものが採用できる。本例の空気入りタイヤ1は、トレッド部2からサイドウォール部3をへてビード部4のビードコア5に至るカーカス6と、このカーカス6の半径方向外側かつトレッド部2の内部に配されるベルト層7とを具える。
【0019】
カーカス6は、タイヤ周方向に対して例えば75~90°の角度で配列するカーカスコードを有する1枚以上(本例では1枚)のカーカスプライ6Aから形成される。カーカスプライ6Aは、ビードコア5、5間を跨る本体部6aの両端に、ビードコア5の廻りで折り返された折返し部6bを具える。本体部6aと折返し部6bとの間には、ビードコア5からタイヤ半径方向外方に先細状にのびるビード補強用のビードエーペックスゴム8が配される。
【0020】
ベルト層7は、タイヤ周方向に対して例えば10~40°の角度で配列するベルトコードを有する複数枚(例えば2枚)のベルトプライ7A、7Bから形成される。各ベルトプライ7A、7Bは、ベルトコードの傾斜の向きを互いに違えて積層される。高速耐久性を高める等の目的で、ベルト層7の半径方向外側に、バンドコードを周方向に対して螺旋状に巻回させたバンド層(図示省略)を設けても良い。
【0021】
前記カーカス6の内側には、タイヤ内腔面Tsをなすインナーライナゴム層9が配される。このインナーライナゴム層9は、ブチルゴム等の空気非透過性を有するゴムからなり、タイヤ内圧を気密に保持する。
【0022】
そして、トレッド内面2Sに制音体20が貼着される。トレッド内面2Sとは、トレッド部2の半径方向内面であって、タイヤ内腔面Tsの一部を構成する。
【0023】
制音体20は、トレッド内面2Sに半径方向外面So1が貼着される帯状のベース部21と、このベース部21の半径方向内面Siから突出する複数の凸部22(図2、3に示す)とを具える。
【0024】
図2に示すように、本例の制音体20は、そのタイヤ周方向の両端Eが互いに突き合わされ、これによりタイヤ周方向に連続する環状体として形成される。なお制音体20では、その両端E間が離間してもよい。この場合、両端E間のタイヤ周方向の離間距離は80mm以下であるのが、重量バランスの観点から好ましい。制音体20の前記両端Eが、凸部22で途切れる場合、制音体20の貼着面かつ途切れ端に作用する応力(走行時の加速度によって生じる応力。)が増すため、制音体20の両端Eに、クラック等の損傷が生じる傾向となる。これを抑制するため、制音体20の両端Eは、ベース部21で途切れるのが好ましい。
【0025】
制音体20をなすスポンジ材として、ゴム及び合成樹脂を発泡させた発泡体が好適に採用される。例えばゴム発泡体として、クロロプレンゴムスポンジ、エチレンプロピレンゴムスポンジ、ニトリルゴムスポンジなどが挙げられる。又合成樹脂発泡体として、ポリウレタン系スポンジ(例えばエーテル系ポリウレタンスポンジ、エステル系ポリウレタンスポンジ、及びポリエーテル/エステル系ポリウレタンスポンジ等)、及びポリエチレン系スポンジ(例えばポリエチレンスポンジ等)などが挙げられる。とりわけ、ポリエーテル/エステル系ポリウレタンスポンジは、耐久性及び品質安定性等の観点から好適である。
【0026】
このような制音体20は、その表面や内部の気泡が、タイヤ内腔内で振動する空気の振動エネルギーを熱エネルギーに変換して消費させる。これにより空洞共鳴エネルギーを減じ、即ち、空洞共鳴音を吸音してロードノイズを低減させうる。
【0027】
前記スポンジ材としては、その密度が10~60kg/mのものが好ましい。密度が10kg/mを下回ると、スポンジ内部の吸音効果が低下し、逆に60kg/mを越えると、スポンジ表面で音が反射し易くなってスポンジ表面での吸音効果が低下する。何れもロードノイズの低減効果を減じる。従って、密度の下限は20kg/m以上が好ましく、上限は40kg/m以下が好ましい。
【0028】
図2、3に示すように、制音体20の前記ベース部21は、一定厚さの帯状をなす。そしてベース部21の半径方向外面So1が、トレッド内面2Sに貼着されることにより、タイヤ周方向断面(図2に示す)において、ベース部21の半径方向内面Siは、トレッド内面2Sと同心な円弧面部23として湾曲する。
【0029】
凸部22は、ベース部21の巾方向の一側縁e1から他側縁e2まで連続してのびるリブ状をなし、タイヤ周方向に等間隔を隔てて配される。この凸部22の半径方向内面Siは、タイヤ周方向断面(図2に示す)において、タイヤ軸芯に正対する平らなフラット面部24として形成される。
【0030】
「タイヤ軸芯に正対する」とは、前記フラット面部24の垂直二等分線Xが、タイヤ軸芯を通ることを意味する。
【0031】
本例では、図6(A)に示すように、凸部22が、タイヤ周方向に対して90°の角度θで直線状にのびる場合が示される。しかし、図6(B)に示すように、凸部22は、タイヤ周方向に対して90°より小の角度θで傾斜してもよい。
【0032】
図2、3に示すように、各凸部22とも、その長さ方向と直角な断面形状は同一である。本例では、凸部22の前記断面形状が矩形形状をなす。この場合、凸部22の半径方向内面Si全体が、フラット面部24を構成している。
【0033】
このような、制音体20は、スポンジ材による上記の効果に加え、下記の効果をさらに発揮しうる。制音体20のリブ状の凸部22が、タイヤ周方向に間隔を有して配されるため、周方向で隣り合う凸部22、22間に、凹部25が形成される。図8(A)に示すように、タイヤ内腔内の空気が周方向に流れるとき、空気の一部が、前記凹部25内に入り込むとともに渦状の流れとなって凹部25から出で行く。このとき、周方向に流れる空気を攪乱し、空洞共鳴を抑える。
【0034】
図8(B)に示すように、凸部22は、そのフラット面部24により、周方向に流れる空気の一部を前記凹部25内に誘導し、凹部25内に入り込みやすくする。これにより、空気の攪乱効果をさらに高め、空洞共鳴を抑えてロードノイズ低減効果をより向上させうる。
【0035】
図2に示すように、凸部22の断面形状が矩形形状をなす場合、タイヤ周方向で隣り合う凸部22の半径方向外端間におけるタイヤ周方向の間隔Goは、半径方向内端間におけるタイヤ周方向の間隔Giよりも大となる。これにより凹部25内で渦状の流れがより起こりやすくなる。なお間隔Goが間隔Giに比して小さいほど、渦状の流れができにくくなる。
【0036】
なお前記間隔Goは20~80mmの範囲が好ましい。間隔Goが20mmを下回ると、渦状の流れができにくく空気の攪乱効果が減じる。又間隔Goが80mmを越えても渦状の流れができにくく、又凸部22及び凹部25の形成数も少なくなるため、空気の攪乱効果が減じる。
【0037】
凸部22の半径方向外端におけるタイヤ周方向巾Wは間隔Goの0.8~1.2倍の範囲、さらには0.9~1.1倍の範囲が好ましい。
【0038】
凸部22のベース部21からの突出高さhは、5~26mmの範囲が好ましい。
突出高さhが5mmを下回ると、渦状の流れができにくく空気の攪乱効果が減じる。逆に突出高さhが26mmを越えると、凸部22の強度が不足し、倒れや損傷を招く傾向がある。そのため、突出高さhの下限は10mm以上がより好ましく、上限は20mm以下がより好ましい。
【0039】
ベース部21の厚さtは、2~15mmの範囲が好ましい。厚さtが2mmを下回ると、ベース部21の強度が不足し、制音体20の貼付け作業性を低下する。逆に厚さtが15mmを越えると、制音体20全体の質量が増し、燃費性に不利となる。或いは制音体20全体の質量を同じとした場合には、凸部22の突出高さhが十分確保できず空気の攪乱効果が減じる。そのため、厚さtの下限は5mm以上がより好ましく、上限は10mm以下がより好ましい。
【0040】
ここで、前記間隔Go、間隔Gi、周方向巾W、突出高さh、厚さtは、それぞれ制音体20が空気入りタイヤ1に貼着された状態における値である。便宜上、上記寸法に相当する貼り付け前の制音体20(図3、4、5に示される)における寸法は、間隔Go’、間隔Gi’、周方向巾W’、突出高さh’、厚さt’として表記される。間隔GoとGo’、タイヤ周方向巾WとW’、突出高さhとh’、厚さtとt’は実質的に等しい。又間隔GiとGi’とは相違する。
【0041】
図6(B)に示すように、凸部22がタイヤ周方向に対して90°より小の角度θで傾斜する場合、角度θの下限値は20°以上さらには45°以上が好ましい。前記角度θが20°を下回ると、空気の攪乱効果の減少を招く。又図6(C)に示すように、凸部22は、前記一側縁e1から他側縁e2まで円弧状に湾曲してのびても良い。この場合、湾曲の円弧中心が、ベース部21の巾方向中心線21j上に位置する(即ち、巾方向中心線21jに対して線対称に形成する)のが好ましい。
【0042】
図4(A)、(B)に、制音体20の他の実施例を示す。本例では、ベース部21の半径方向内面Siの一部に、小突起部28が配される。この場合、ベース部21の半径方向内面Siのうちの、小突起部28以外の面が円弧面部23を構成する。又凸部22の半径方向内面Siの一部に、小凹部29が配される。この場合、凸部22の半径方向内面Siのうちの、小凹部29以外の面がフラット面部24を構成する。なお小突起部28の高さha、小凹部29の深さhbは、ベース部21の厚さtの1.0以下、さらには0.5倍以下が好ましい。
【0043】
図5(A)、(B)に、制音体20のさらに他の実施例を示す。本例では、凸部22の断面形状が、台形状をなす場合が示される。この場合、凸部22の側面30は、フラット面部24を構成する半径方向内面Siから円弧面部23を構成する半径方向内面Siまで傾斜してのびる。なお半径方向内面Siと側面30との間、及び側面30と半径方向内面Siとの間を滑らかな円弧面部で連結することもできる。この場合、前記間隔Giは、半径方向内面Siの仮想延長線と、側面30の仮想延長線との交点に基づいて設定される。又間隔Goは側面30の仮想延長線と、半径方向内面Siの仮想延長線との交点に基づいて設定される。
【0044】
なお図3(A)、(B)、 図4(A)、(B)、 及び図5(A)、(B)において、制音体20は、凸部22と凹部25とは、実質的に同じ断面形状を有することが好ましい。
【0045】
図7に、制音体付き空気入りタイヤTの他の実施例を示す。図7に示すように、制音体20は、パンク防止用のシーラント層35を介してトレッド内面2Sに貼着される。この場合、ロードノイズ低減効果を損ねることなく、パンクシール性を発揮することができる。シーラント層35は少なくともトレッド内面2Sを含むタイヤ内腔面Tsに配される。
【0046】
シーラント層35をなすシーラント材として、ゴム成分と、液状ポリマーと、架橋剤等とを含有する。ゴム成分として、ブチルゴム及びハロゲン化ブチルゴム等のブチル系ゴムが採用される。なおゴム成分として、前記ブチル系ゴムと、ジエン系ゴムとを混用しうるが、流動性等の観点から、ゴム成分100質量%中のブチル系ゴムの含有量は、90質量%以上とするのが好ましい。
【0047】
液状ポリマーとして、液状ポリブテン、液状ポリイソブテン、液状ポリイソプレン、液状ポリブタジエン、液状ポリα-オレフィン、液状イソブチレン、液状エチレンα-オレフィン共重合体、液状エチレンプロピレン共重合体、液状エチレンブチレン共重合体等が挙げられる。なかでも、粘着性付与等の観点から、液状ポリブテンが好ましい。
【0048】
液状ポリマーの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、50質量部以上、さらには100質量部以上が好ましい。50質量部未満では、粘着性が低下するおそれがある。該含有量の上限は、400質量部以下、さらには300質量部以下が好ましい。400質量部を超えると、走行時、シーラント材が流動する恐れを招く。
【0049】
架橋剤として、周知の化合物を使用できるが、有機過酸化物が好ましい。有機過酸化物架橋系において、ブチル系ゴムや液状ポリマーを用いることで、粘着性、シール性、流動性、加工性が改善される。
【0050】
有機過酸化物としては、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、ジベンゾイルパーオキサイド、p-クロロベンゾイルパーオキサイド等のアシルパーオキサイド類、1-ブチルパーオキシアセテート、t-ブチルパーオキシベンゾエート、t-ブチルパーオキシフタレートなどのパーオキシエステル類、メチルエチルケトンパーオキサイドなどのケトンパーオキサイド類、ジ-t-ブチルパーオキシベンゾエート、1,3-ビス(1-ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼンなどのアルキルパーオキサイド類、t-ブチルハイドロパーオキサイドなどのハイドロパーオキサイド類、ジクミルパーオキサイド、t-ブチルクミルパーオキサイド等が挙げられる。なかでも、粘着性、流動性の観点から、アシルパーオキサイド類が好ましく、ジベンゾイルパーオキサイドが特に好ましい。
【0051】
有機過酸化物(架橋剤)の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、0.5質量部以上、さらには1.0質量部以上が好ましい。0.5質量部未満では、架橋密度が低くなり、シーラント材の流動が生じるおそれがある。該含有量の上限は、40質量部以下、さらには20質量部以下が好ましい。40質量部を超えると、架橋密度が高くなり、シール性が低下するおそれがある。
【0052】
以上、本発明の特に好ましい実施形態について詳述したが、本発明は図示の実施形態に限定されることなく、種々の態様に変形して実施しうる。
【実施例
【0053】
図1に示す基本構造を有し、かつ表1の仕様の制音体が貼着された制音体付き空気入りタイヤ(タイヤサイズ:215/55R17)を試作し、各試作タイヤのロードノイズ性能が評価された。制音体として、それぞれ、ポリエーテル/エステル系ポリウレタンスポンジ(密度31kg/m)を使用。各制音体とも、巾は100mm、制音体の全体積を前記巾で割った平均断面積は、比較例3以外は、全て15cmで同じである。比較例3の平均断面積は、21cmである。
【0054】
<ロードノイズ性>
タイヤを、リム(17×7.5J)、内圧(240kPa)、荷重(4.6kN)、速度(60km/h)の条件にて、レプリカドラム上で走行させた。その時の、205Hz近傍の空洞共鳴音のピーク値を測定し、比較例1を基準とする増減値で評価した。マイナス(-)表示は、空洞共鳴音のピーク値が低く、ロードノイズが低減していることを意味する。
【0055】
<耐久性>
タイヤを、リム(17×7.5J)、内圧(240kPa)、荷重(4.6kN)、速度(100km/h)の条件にて、ドラム上で走行させた。走行距離4000km毎にチェックし、制音体のクラックの発生を目視で確認した。20000km完走で合格とした。
【0056】
【表1】
【0057】
表に示されるように、実施例は空洞共鳴音のピーク値が低く、ロードノイズ低減効果が高いことが確認できる。
【符号の説明】
【0058】
1 空気入りタイヤ
2S トレッド内面
20 制音体
21 ベース部
21j 巾方向中心線
22 凸部
23 円弧面部
24 フラット面部
25 凹部
35 シーラント層
e1 一側縁
e2 他側縁
Si 半径方向内面
Si 半径方向内面
So 半径方向外面
T 制音体付き空気入りタイヤ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9