(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-21
(45)【発行日】2022-03-02
(54)【発明の名称】車両前部構造
(51)【国際特許分類】
B62D 25/08 20060101AFI20220222BHJP
【FI】
B62D25/08 D
B62D25/08 E
(21)【出願番号】P 2017201433
(22)【出願日】2017-10-17
【審査請求日】2020-09-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124110
【氏名又は名称】鈴木 大介
(74)【代理人】
【識別番号】100120400
【氏名又は名称】飛田 高介
(74)【代理人】
【識別番号】110000349
【氏名又は名称】特許業務法人 アクア特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川田 淳悟
【審査官】久慈 純平
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-162948(JP,A)
【文献】特開2014-034218(JP,A)
【文献】特開2017-043276(JP,A)
【文献】特開2008-018833(JP,A)
【文献】特開2007-331452(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0090127(US,A1)
【文献】特開2012-096735(JP,A)
【文献】中国実用新案第208069826(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 17/00-25/08,25/14-29/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘッドランプを備える車両前部構造において、当該車両前部構造はさらに、
車両の前端から車両後方に延びるサイドメンバと、
前記サイドメンバの前端に接合され車両上方に延びる縦部材と、
前記サイドメンバの車幅方向外側にて車両前後方向に延びるフェンダーエプロンと、
前記縦部材と前記フェンダーエプロンとをつなぐ湾曲した補強部材であって、車幅方向に延び前記縦部材に取付けられる一端と、車両前後方向に延び前記フェンダーエプロンに取付けられる他端とを有する補強部材とを備え、
前記縦部材は、前記ヘッドランプが取付けられる取付部を有し、
前記補強部材は、前記ヘッドランプの下方に配置されてい
て、
当該車両前部構造はさらに、
パワーユニットルームと車室とを区画するダッシュパネルの車幅方向外側に取付けられていて前記ダッシュパネルを支持し前記フェンダーエプロンよりも車両後側に位置するダッシュサイドパネルと、
前記ダッシュサイドパネルから車両前側かつ車両上側に延びる第1ブラケットと、
前記第1ブラケットの先端に取付けられ前記ヘッドランプを片持ち支持する第2ブラケットとを備え、
前記第2ブラケットは、前記ヘッドランプの車幅方向の範囲内に位置し、
前記第2ブラケットに片持ち支持される前記ヘッドランプの後方であって下方には、該ヘッドランプを前記フェンダーエプロンから隔てる空間が存在していることを特徴とする車両前部構造。
【請求項2】
当該車両前部構造はさらに、前記縦部材から車両の反対側の側面に向かって車幅方向に延びる横部材を備え、
前記縦部材の取付部は、該縦部材の上端またはその近傍に位置し、
前記横部材は、前記縦部材のうち、前記取付部と前記補強部材の一端が取付けられた箇所との間で前記縦部材に接続されていることを特徴とする請求項
1に記載の車両前部構造。
【請求項3】
前記補強部材は、上壁と側壁とからなる断面略L字型の部材であり、
当該車両前部構造はさらに、前記補強部材の他端と前記フェンダーエプロンとの間に介在する第3ブラケットを備え、
前記第3ブラケットは、前記補強部材の他端の前記上壁または側壁に平行な第1片と、前記フェンダーエプロンの表面に平行な第2片とを有することを特徴とする請求項1
または2に記載の車両前部構造。
【請求項4】
前記縦部材は、
前記補強部材の一端に車両前側、車両後側からそれぞれ接する前側壁、後側壁と、
前記前側壁と後側壁とをつなぎ該前側壁および後側壁とともに前記補強部材の一端を車幅方向内側から囲う連結壁とを有することを特徴とする請求項1から
3のいずれか1項に記載の車両前部構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両前部構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車などの車両の前部には、ヘッドランプが設置されている。ヘッドランプは、ランプサポートメンバによって支持される。ランプサポートメンバは、例えばヘッドランプの上側に配置されている。このような場合、歩行者の頭部がフロントフードに衝突すると、歩行者の頭部は、フロントフードを介してランプサポートメンバに干渉することになる。
【0003】
そこで、ヘッドランプの上側に配置されたランプサポートメンバに代えて、ヘッドランプの車幅方向内側で車両上下方向に延びるランプサポートブレースを採用する構造が考えられる。すなわち、この構造では、ヘッドランプの車幅方向内側端部が取付けられる取付部をランプサポートブレースに設定すればよい。
【0004】
しかしこの構造では、ランプサポートブレースのみでヘッドランプを支持し、さらにはラジエータも支持する場合があるため、高い剛性が要求される。その結果、ランプサポートブレースは、その板厚を厚くしたり、他の部品で補強したりしなければならず、重量や部品点数が増加してしまう。
【0005】
特許文献1には、ヘッドランプを備えた車体前部構造として、車体の長手方向に延びる左右一対のサイドメンバと、左右一対のフロントピラーと、エプロンメンバと、ラジエータサポートと、結合部材とを備えた構造が記載されている。エプロンメンバは、各フロントピラーの長手方向の中途部に結合され、この中途部から前方に向かって突出している。ラジエータサポートは、サイドメンバの前端部に結合され、この前端部から上方に向かって突出している。
【0006】
結合部材は、一端部がエプロンメンバの突出端部に結合され、他端部がラジエータサポートの側部に結合されている。ヘッドランプは、結合部材の上方に配置されている。そしてヘッドランプは、エプロンメンバとラジエータサポートの上部とに支持具を介して支持されている。つまり、ラジエータサポートは、ヘッドランプを支持する縦部材である。
【0007】
特許文献1では、ヘッドランプの下方を通ってラジエータサポートとエプロンメンバとをつなぐ結合部材により、車体前部を補強している。そのため、特許文献1の車体前部構造では、歩行者の頭部がフロントフードに衝突しても、ヘッドランプの下方に位置する結合部材に干渉し難くなる。またラジエータサポートは、結合部材を介して剛性の高いフェンダーエプロンにつながっているため、十分な剛性を確保できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし特許文献1では、ラジエータサポートとエプロンメンバとを結合部材で直線的につなぐことで、ラジエータサポートすなわちヘッドランプを取付ける縦部材の剛性を高めているに過ぎない。つまり、特許文献1には、結合部材の形状については直線的であることが示されているに過ぎず、ヘッドランプを取付ける縦部材の剛性を高めることに関し改善の余地があった。
【0010】
本発明は、このような課題に鑑み、ヘッドランプを取付ける縦部材の剛性を確保しつつ、歩行者頭部保護性能を向上できる車両前部構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明にかかる車両前部構造の代表的な構成は、ヘッドランプを備える車両前部構造において、車両前部構造はさらに、車両の前端から車両後方に延びるサイドメンバと、サイドメンバの前端に接合され車両上方に延びる縦部材と、サイドメンバの車幅方向外側にて車両前後方向に延びるフェンダーエプロンと、縦部材とフェンダーエプロンとをつなぐ湾曲した補強部材であって、車幅方向に延び縦部材に取付けられる一端と、車両前後方向に延びフェンダーエプロンに取付けられる他端とを有する補強部材とを備え、縦部材は、ヘッドランプが取付けられる取付部を有し、補強部材は、ヘッドランプの下方に配置されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ヘッドランプを取付ける縦部材の剛性を確保しつつ、歩行者頭部保護性能を向上できる車両前部構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施例に係る車両前部構造を示す図である。
【
図2】
図1の車両前部構造から各部材を省略して示す図である。
【
図3】
図2の補強部材をそのやや後方の車両右側から見下ろした斜視図である。
【
図4】
図2の車両前部構造にヘッドランプを取付けた状態を示す図である。
【
図5】
図4の車両前部構造を別の方向から見た状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の一実施の形態に係る車両前部構造の代表的な構成は、ヘッドランプを備える車両前部構造において、車両前部構造はさらに、車両の前端から車両後方に延びるサイドメンバと、サイドメンバの前端に接合され車両上方に延びる縦部材と、サイドメンバの車幅方向外側にて車両前後方向に延びるフェンダーエプロンと、縦部材とフェンダーエプロンとをつなぐ湾曲した補強部材であって、車幅方向に延び縦部材に取付けられる一端と、車両前後方向に延びフェンダーエプロンに取付けられる他端とを有する補強部材とを備え、縦部材は、ヘッドランプが取付けられる取付部を有し、補強部材は、ヘッドランプの下方に配置されていることを特徴とする。
【0015】
上記構成によれば、補強部材は、ヘッドランプの下方を通って縦部材とフェンダーエプロンとをつなぐように湾曲している。補強部材がヘッドランプの下方を通ることで、フロントフードから補強部材までの距離を確保できる。このため、歩行者の頭部がフロントフードに衝突しても補強部材に干渉しないため、歩行者頭部保護性能を向上できる。
【0016】
また縦部材は、ヘッドランプを取付部で取付けるため高い剛性が要求される。しかし縦部材は、補強部材を介して剛性の高いフェンダーエプロンにつながっていて、結果的に十分な剛性を確保できる。このため、縦部材がヘッドランプに限らず、ラジエータなどを支持する場合であっても、縦部材の板厚を厚くしたり他の部品で補強したりする必要がない。ここで縦部材に支持されたラジエータは、通常走行時に車両前後に振動する場合がある。この場合、縦部材では、車幅方向に延びて縦部材に取付けられる補強部材の一端が、ラジエータの振動に伴う荷重を受けるため、ラジエータの動きを抑制できる。
【0017】
上記の車両前部構造はさらに、パワーユニットルームと車室とを区画するダッシュパネルの車幅方向外側に取付けられていてダッシュパネルを支持しフェンダーエプロンよりも車両後側に位置するダッシュサイドパネルと、ダッシュサイドパネルから車両前側かつ車両上側に延びる第1ブラケットと、第1ブラケットの先端に取付けられヘッドランプを片持ち支持する第2ブラケットとを備え、第2ブラケットは、ヘッドランプの車幅方向の範囲内に位置し、第2ブラケットに片持ち支持されるヘッドランプの後方であって下方には、ヘッドランプをフェンダーエプロンから隔てる空間が存在しているとよい。
【0018】
このように、ヘッドランプの後方かつ下方に空間が存在するため、ヘッドランプは、車両前側から衝撃を受けると、第2ブラケットにより片持ち支持された箇所を起点として車両後側かつ車両下側に向かって移動する。このようなヘッドランプの移動により、車両前側からの衝撃を吸収し易くなり、乗員保護性能を向上できる。
【0019】
上記の車両前部構造はさらに、縦部材から車両の反対側の側面に向かって車幅方向に延びる横部材を備え、縦部材の取付部は、縦部材の上端またはその近傍に位置し、横部材は、縦部材のうち、取付部と補強部材の一端が取付けられた箇所との間で縦部材に接続されているとよい。
【0020】
これにより、フロントフードから車両下方への荷重を横部材が受けた場合、この荷重は、横部材から縦部材を介して補強部材に伝達される。ここで横部材は、縦部材のうち取付部の位置よりも下方で、補強部材の一端が取付けられた箇所よりも上方に配置される。このため縦部材において、横部材が接続された箇所と補強部材の一端が取付けられた箇所との距離は、取付部の位置と補強部材の一端が取付けられた箇所との距離よりも小さい。よって、横部材から縦部材に伝達された荷重は、縦部材のうち横部材の接続された箇所から補強部材の一端が取付けられた箇所まで迅速に伝達される。つまり上記構成によれば、フロントフードから受けた車両下方への荷重を、横部材、縦部材さらに補強部材を介してフェンダーエプロンにまで迅速に分散できる。したがって、横部材、縦部材および補強部材自体の剛性を、板厚を厚くするなどして高める必要がない。
【0021】
上記の補強部材は、上壁と側壁とからなる断面略L字型の部材であり、上記の車両前部構造はさらに、補強部材の他端とフェンダーエプロンとの間に介在する第3ブラケットを備え、第3ブラケットは、補強部材の他端の上壁または側壁に平行な第1片と、フェンダーエプロンの表面に平行な第2片とを有するとよい。これにより、補強部材の他端とフェンダーエプロンとが共通する面方向の存在しない形状であっても、第3ブラケットの第1片を補強部材の他端の上壁または側壁に接合し、第2片をフェンダーエプロンの表面に接合できる。したがって、補強部材の他端とフェンダーエプロンとを取付ける場合に、第3ブラケットを介在させることで、補強部材の他端およびフェンダーエプロンの寸法誤差の調整が可能となり、厳密な寸法管理が不要となる。
【0022】
上記の縦部材は、補強部材の一端に車両前側、車両後側からそれぞれ接する前側壁、後側壁と、前側壁と後側壁とをつなぎ前側壁および後側壁とともに補強部材の一端を車幅方向内側から囲う連結壁とを有するとよい。このように、縦部材は、車幅方向外側から縦部材に向かって車幅方向内側に延びる補強部材の一端を前側壁、後側壁および連結壁で囲うことで、補強部材によって確実に補強される。このため、縦部材に支持されたラジエータが通常走行時に車両前後に振動する場合であっても、縦部材は、補強部材とともにラジエータの振動に伴う荷重を受けてラジエータの動きを抑制できる。
【実施例】
【0023】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施例について詳細に説明する。かかる実施例に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0024】
図1は、本発明の実施例に係る車両前部構造100を示す図である。図中では、車両前部構造100のうち車両の右側面付近を斜め前方から見た状態を示している。以下では、車両前部構造100の右側面付近の構造を説明するが、左側面付近に位置する構造も同様の構成および機能などを有している。なお各図に示す矢印X、Yは車両前方、車幅方向外側をそれぞれ示している。
【0025】
車両前部構造100は、ヘッドランプ102を備える。ヘッドランプ102は、図示のように車両外側から見て、フロントフード104、フロントフェンダ106さらにフロントバンパ108に隣接するように配置されている。
【0026】
図2は、
図1の車両前部構造100から各部材を省略して示す図である。図中では、ヘッドランプ102、フロントフード104、フロントフェンダ106およびフロントバンパ108を省略することで、車両前部構造100の要部である
図1の領域Aの内部を例示している。
【0027】
車両前部構造100の車体骨格は、
図2に示すように、複数の車体構造部材が接合されることにより形成されている。ただし以下に詳述する車両前部構造100の骨格については、理解を容易にするための例示にすぎず、これに限定するものではない。
【0028】
車両前部構造100は、
図2に示すようにサイドメンバ110、縦部材112および横部材114を備える。サイドメンバ110は、車両の前端から車両後方に延びている。縦部材112は、例えばサイドメンバ110の前端に接合され車両上方に延びている。横部材114は、縦部材112に接合されていて、車両の反対側の側面に向かって車幅方向に延びている。
【0029】
また車両前部構造100は、フェンダーエプロン116と、ダッシュパネル118と、ダッシュサイドパネル120と、第1ブラケット122と、第2ブラケット124とを備える。フェンダーエプロン116は、サイドメンバ110の車幅方向外側にて車両前後方向に延びている。ダッシュパネル118は、パワーユニットルーム126と不図示の車室とを区画する。ダッシュサイドパネル120は、ダッシュパネル118の車幅方向外側に取付けられていて、ダッシュパネル118を支持し、さらにフェンダーエプロン116よりも車両後側に位置している。
【0030】
第1ブラケット122は、ダッシュサイドパネル120から車両前側かつ車両上側に延びている(
図5(b)参照)。第2ブラケット124は、第1ブラケット122の先端に取付けられていて、ヘッドランプ102の上部128(
図5参照)を片持ち支持する。
【0031】
図3は、
図2の補強部材130をそのやや後方の車両右側から見下ろした斜視図である。車両前部構造100はさらに、補強部材130を備える。補強部材130は、
図3に示すように、上壁132と側壁134とからなる断面略L字型の部材であり、縦部材112とフェンダーエプロン116とをつなぐように湾曲している。
【0032】
補強部材130の一端136は、車幅方向外側から車幅方向内側に向かって延びて、縦部材112に取付けられる。縦部材112は、前側壁138、後側壁140および連結壁142を有する。前側壁138、後側壁140は、補強部材130の一端136に車両前側、車両後側からそれぞれ接する。連結壁142は、前側壁138と後側壁140とをつないでいて、前側壁138および後側壁140とともに補強部材130の一端136を車幅方向内側から囲う。このように、縦部材112は、補強部材130の一端136を前側壁138、後側壁140および連結壁142で囲うことで、補強部材130によって確実に補強される。
【0033】
補強部材130の他端144は、
図3に示すように車両前後方向に延びていて、第3ブラケット146を介してフェンダーエプロン116に取付けられている。第3ブラケット146は、第1片148と第2片150とを有する。第1片148は、補強部材130の他端144の上壁132または側壁134に平行な形状を有する。第2片150は、フェンダーエプロン116の表面に平行な形状を有する。
【0034】
このため、補強部材130の他端144とフェンダーエプロン116とが共通する面方向の存在しない形状であっても、第3ブラケット146の第1片148を補強部材130の他端144の上壁132または側壁134に接合できる。さらには、第3ブラケット146の第2片150をフェンダーエプロン116の表面に接合できる。
【0035】
このように、補強部材130の他端144とフェンダーエプロン116とを取付ける際、第3ブラケット146を介在させることで、補強部材130の他端144およびフェンダーエプロン116の寸法誤差の調整が可能となり、厳密な寸法管理が不要となる。
【0036】
図4は、
図2の車両前部構造100にヘッドランプ102を取付けた状態を示す図である。なお図中では、フロントフェンダ106を示している。
【0037】
縦部材112は、
図4に示すようにヘッドランプ102の車幅方向内側端部152が取付けられる取付部154を有する。また縦部材112の取付部154は、縦部材112の上端156の近傍すなわち上端156よりも下方に位置している。なお取付部154は、これに限られず、縦部材112の上端156に位置するように設けてもよい。
【0038】
さらに縦部材112では、取付箇所158にて補強部材130の一端136が取付けられ、取付箇所160にて横部材114が接続されている。横部材114の取付箇所160は、
図4に示すように、縦部材112のうち取付部154と補強部材130の取付箇所158との間に位置する。このため、縦部材112においては、横部材114が接続された取付箇所160と補強部材130の取付箇所158との距離は、取付部154の位置と取付箇所158との距離よりも小さくなっている。
【0039】
また補強部材130は、
図4に示すようにヘッドランプ102の下方に配置されている。さらに補強部材130は、ヘッドランプ102の下方を通っていて、一端136が縦部材112に取付けられ、他端144が第3ブラケット146を介してフェンダーエプロン116に取付けられている。このようにして補強部材130は、縦部材112とフェンダーエプロン116とをつないでいる。
【0040】
図5は、
図4の車両前部構造100を別の方向から見た状態を示す図である。
図5(a)は、
図4のB矢視図である。
図5(b)は、
図5(a)のC矢視図である。ただし
図5(b)ではフロントフード104を示している。
【0041】
第2ブラケット124は、
図5(a)に示すようにヘッドランプ102の車幅方向の範囲内に位置し、ヘッドランプ102の上部128を支持している。また車両前部構造100では、
図5(b)に示すように第2ブラケット124に片持ち支持されるヘッドランプ102の後方であって下方に空間162が存在している。空間162は、ヘッドランプ102をフェンダーエプロン116から隔てている。
【0042】
ここで車両前部構造100では、歩行者がフロントバンパ104に衝突すると、ヘッドランプ102が車両前方からの衝撃を受け、さらには歩行者の頭部がフロントフード104に衝突してフロントフード104が車両下方への衝撃を受ける場合がある。以下、このような場合での車両前部構造100の挙動について説明する。
【0043】
車両前部構造100では、補強部材130がヘッドランプ102の下方を通って縦部材112とフェンダーエプロン116とをつなぐように湾曲している。補強部材130がヘッドランプ102の下方を通ることで、
図5(b)に示すように、フロントフード104から補強部材130までの距離を十分に確保できる。したがって、車両前部構造100によれば、歩行者の頭部がフロントフード104に衝突しても補強部材130に干渉しないため、歩行者頭部保護性能を向上できる。
【0044】
また横部材114は、歩行者の頭部がフロントフード104に衝突すると、フロントフード104から車両下方への荷重を受ける。この荷重は、横部材114から縦部材112を介して補強部材130に伝達される。縦部材112においては、
図4に示すように横部材114の取付箇所160と補強部材130の取付箇所158との距離が、取付部154の位置と取付箇所158との距離よりも小さい。よって、横部材114から縦部材112に伝達された荷重は、縦部材112のうち取付箇所160から補強部材130の取付箇所158まで迅速に伝達される。
【0045】
したがって車両前部構造100では、フロントフード104から受けた車両下方への荷重を、横部材114、縦部材112さらに補強部材130を介して、剛性の高いフェンダーエプロン116にまで迅速に分散できる。このため、縦部材112、横部材114および補強部材130については、必要以上に板厚を厚くしたり、他の部品で補強したりするなどして剛性を高める必要がない。
【0046】
特に縦部材112は、ヘッドランプ102を取付部154で取付けるため高い剛性が要求される。しかし縦部材112は、補強部材130を介して剛性の高いフェンダーエプロン116につながっているため、結果的に十分な剛性を確保できる。したがって、縦部材112がヘッドランプ102に限らず、不図示のラジエータなどを支持する場合であっても、縦部材112の板厚を厚くしたり他の部品で補強したりする必要がない。
【0047】
また縦部材112は、
図3に示すように前側壁138、後側壁140および連結壁142によって、車幅方向に延びる補強部材130の一端136を囲んでいる。このため、縦部材112は、補強部材130によって補強される。したがって、縦部材112に支持されたラジエータが通常走行時に車両前後に振動する場合であっても、縦部材112は、補強部材130とともにラジエータの振動に伴う荷重を受けて、ラジエータの動きを抑制できる。
【0048】
さらに車両前部構造100では、
図5(b)に示すようにヘッドランプ102の後方かつ下方に空間162が存在する。このため、ヘッドランプ102は、車両前側から衝撃を受けると、第2ブラケット124により片持ち支持された上部128を起点として車両後側かつ車両下側に向かって移動する。したがって車両前部構造100では、このようなヘッドランプ102の移動により、車両前側からの衝撃を吸収し易くなり、乗員保護性能を向上できる。
【0049】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施例について説明したが、本発明はかかる例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明は、車両前部構造に利用することができる。
【符号の説明】
【0051】
100…車両前部構造、102…ヘッドランプ、104…フロントフード、106…フロントフェンダ、108…フロントバンパ、110…サイドメンバ、112…縦部材、114…横部材、116…フェンダーエプロン、118…ダッシュパネル、120…ダッシュサイドパネル、122…第1ブラケット、124…第2ブラケット、126…パワーユニットルーム、128…ヘッドランプの上部、130…補強部材、132…補強部材の上壁、134…補強部材の側壁、136…補強部材の一端、138…縦部材の前側壁、140…縦部材の後側壁、142…縦部材の連結壁、144…補強部材の他端、146…第3ブラケット、148…第3ブラケットの第1片、150…第3ブラケットの第2片、152…ヘッドランプの車幅方向内側端部、154…縦部材の取付部、156…縦部材の上端、158、160…縦部材の取付箇所、162…空間