(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-21
(45)【発行日】2022-03-02
(54)【発明の名称】モータ装置
(51)【国際特許分類】
H02K 11/215 20160101AFI20220222BHJP
G01D 5/245 20060101ALI20220222BHJP
H02K 11/02 20160101ALI20220222BHJP
【FI】
H02K11/215
G01D5/245 110W
H02K11/02
(21)【出願番号】P 2017202774
(22)【出願日】2017-10-19
【審査請求日】2020-08-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】東出 智寛
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 裕人
【審査官】若林 治男
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-206606(JP,A)
【文献】特開2008-160909(JP,A)
【文献】国際公開第2006/080567(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/122069(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 11/215
G01D 5/245
H02K 11/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸を有するモータと、
前記モータが収容される有底筒状のモータハウジングと、
前記モータへの給電を制御する各種の電子部品を実装する
単一の基板と、
前記基板が収容され、前記モータハウジングの開口部分を覆うように設けられる有底筒状のモータカバーと、
前記回転軸における前記基板側の端部に設けられるセンサマグネットと、
前記基板における前記モータ側の面に前記センサマグネットに対向して設けられ、前記センサマグネットからの磁界に応じた電気信号を生成する磁気センサと、
前記各種の電子部品の1つとして、前記基板における前記モータと反対側
の面に設けられ、周囲に漏れ磁束が発生する電源フィルタと、を備え、
前記モータカバーには、前記電源フィルタにおける前記磁気センサ側の少なくとも一部分を取り囲む壁部が一体的に設けられて
おり、
前記壁部は、前記モータカバーの底部から前記モータと反対側に突出する収容部であって、前記電源フィルタの少なくとも一部分は、前記収容部に収容されており、
前記電源フィルタは、前記基板の周縁部に配置されており、前記収容部の一部は、前記モータカバーの側面の一部を構成し、
前記収容部の内面と電源フィルタの外面との間には隙間が設けられているモータ装置。
【請求項2】
請求項
1に記載のモータ装置において、
前記壁部は、前記モータカバーの底部から前記モータ側に向けて突出する部分を有しているモータ装置。
【請求項3】
請求項1
または請求項2に記載のモータ装置において、
前記電源フィルタは、電磁ノイズを低減するためのチョークコイルであるモータ装置。
【請求項4】
請求項
3に記載のモータ装置において、
前記モータの回転軸の軸方向において、前記壁部は、前記チョークコイルにおける導線部分まで延出して設けられているモータ装置。
【請求項5】
請求項1~
4のいずれか一項に記載のモータ装置において、
前記基板には、前記モータの駆動を制御する制御装置が設けられているモータ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に記載されるように、インバータおよびマイクロコンピュータ(マイコン)を含む制御装置が内蔵されたモータ装置がある。当該モータ装置は、ロータの回転角を検出するための構成として、ロータと一体的に回転する回転軸の先端部に設けられた磁石、および回転軸の軸線方向においてセンサマグネットと対向する磁気センサ(回転角センサ)を有している。磁気センサは、センサマグネットの回転に伴う磁界の変化に応じた電気信号を生成する。マイコンは、磁気センサにより生成される電気信号に基づいて、モータの回転軸の回転角を演算する。そして、マイコンは、当該回転角に基づいて、インバータのスイッチング素子を制御することによって、モータコイルに対する通電を制御する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、制御装置が内蔵されるモータにおいては、磁気センサの検出対象であるセンサマグネットの磁界以外にも磁束源が存在する。この磁束源としては、たとえば電磁ノイズを低減するためのチョークコイルなどが挙げられる。チョークコイルには、大電流が流れるため、発生する磁界が大きくなりがちである。このため、チョークコイルの周囲に形成される磁界(磁気ノイズ)の影響によって、センサマグネットの周囲に形成される磁界が歪められることにより、磁気センサにより検出される磁界も本来と異なるものとなってしまうおそれがある。すなわち、センサマグネットからの理想的な磁界以外にチョークコイルからの磁界が磁気センサに印加される場合、磁気センサを通じて検出されるモータの回転軸の回転角と実際の回転角との間に誤差が生じることが懸念される。
【0005】
本発明の目的は、モータの回転角の検出精度を確保できるモータ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成しうるモータ装置は、回転軸を有するモータと、前記モータが収容される有底筒状のモータハウジングと、前記モータへの給電を制御する各種の電子部品を実装する基板と、前記基板が収容され、前記モータハウジングの開口部分を覆うように設けられる有底筒状のモータカバーと、前記回転軸における前記基板側の端部に設けられるセンサマグネットと、前記基板における前記モータ側の面に前記センサマグネットに対向して設けられ、前記センサマグネットからの磁界に応じた電気信号を生成する磁気センサと、前記各種の電子部品の1つとして、前記基板における前記モータと反対側に設けられ、周囲に漏れ磁束が発生する電源フィルタと、を備え、前記モータカバーには、前記電源フィルタにおける前記磁気センサ側の少なくとも一部分を取り囲む壁部が一体的に設けられている。
【0007】
この構成によれば、電源フィルタにおける磁気センサ側の少なくとも一部分が壁部によって取り囲まれていることにより、電源フィルタから発生する漏れ磁束が、センサマグネットからの磁束に干渉することが抑制される。これにより、センサマグネットの周囲に形成される磁界が歪みにくくなる。このため、磁気センサは、センサマグネットからの理想的な磁界に応じて、電気信号を生成することができる。これにより、磁気センサにより生成される電気信号に基づいて演算される回転軸の回転角と、実際の回転角との間に誤差が生じることが抑制され、モータの回転軸の回転角の検出精度を確保できる。
【0008】
上記のモータ装置において、前記壁部は、前記モータカバーの底部から前記モータと反対側に突出する収容部であって、前記電源フィルタの少なくとも一部分は、前記収容部に収容されていることが好ましい。
【0009】
この構成によれば、電源フィルタがモータカバーに設けられた収容部に収容されることにより、電源フィルタの周囲が収容部によって取り囲まれる。これにより、電源フィルタから発生する漏れ磁束が、センサマグネットからの磁束に干渉することが抑制される。
【0010】
上記のモータ装置において、前記壁部は、前記モータカバーの底部から前記モータ側に向けて突出する部分を有していることが好ましい。
この構成によれば、モータカバーの底部からモータ側へ向けて突出する部分によって、電源フィルタにおける磁気センサ側の少なくとも一部分が取り囲まれることにより、電源フィルタから発生する漏れ磁束が、センサマグネットからの磁束に干渉することが抑制される。
【0011】
上記のモータ装置において、前記電源フィルタは、前記基板の周縁部に配置されており、前記壁部の一部は、前記モータカバーの側面の一部を構成していることが好ましい。
この構成によれば、壁部がモータカバーの側面と共通していることにより、加工の手間を減らすことができる。また、基板の周縁部に電源フィルタが配置されることにより、磁気センサから離れた位置に電源フィルタを配置することができる。
【0012】
上記のモータ装置において、前記電源フィルタは、電磁ノイズを低減するためのチョークコイルであることが好ましい。
この構成によれば、チョークコイルには大電流が流れるため、チョークコイルにより発生する磁界も大きくなる。このため、磁気センサは、センサマグネットの周囲に形成される磁界の影響だけでなく、チョークコイルの周囲に形成される磁界の影響を受けるおそれがある。この点、チョークコイルにおける磁気センサ側の少なくとも一部分が壁部によって取り囲まれていることにより、チョークコイルから発生する漏れ磁束が、センサマグネットからの磁束に干渉することが抑制される。
【0013】
上記のモータ装置において、前記モータの回転軸の軸方向において、前記壁部は、前記チョークコイルにおける導線部分まで延出して設けられていることが好ましい。
この構成によれば、より確実に電源フィルタから発生する磁束をモータカバーに引き付けることが可能である。
【0014】
上記のモータ装置は、前記基板に前記モータの駆動を制御する制御装置が設けられているものに好適である。
【発明の効果】
【0015】
本発明のモータ装置によれば、モータの回転角の検出精度を確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図4】本実施形態のチョークコイルの周辺構造を示すモータ装置の断面図。
【
図6】比較例におけるチョークコイルの周辺構造を示すモータ装置の断面図。
【
図7】他の実施形態のチョークコイルの周辺構造を示すモータ装置の断面図。
【
図8】他の実施形態のチョークコイルの周辺構造を示すモータ装置の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、モータ装置の一実施形態について説明する。
図1に示すように、モータ装置1は、モータハウジング10、ヒートシンク11、モータカバー12、モータ20、および基板30を有している。
【0018】
モータハウジング10は、有底円筒状をなしている。ヒートシンク11は、モータハウジング10の開口部分(
図1の上端部)を塞ぐように設けられている。ヒートシンク11は、モータ20の回転軸21が挿通される挿通孔11aを有している。モータハウジング10の内部には、モータ20が収容されている。
【0019】
モータ20は、モータハウジング10の内周面に嵌合されるステータ40と、ステータ40の内周に隙間を空けて配置されるロータ50と、ロータ50の内周に嵌合して固定される回転軸21とを有している。回転軸21は軸線mに沿って延び、モータハウジング10の底壁およびヒートシンク11を貫通している。回転軸21は、2つのベアリング13,14を介して、モータハウジング10およびヒートシンク11に対して回転可能に支持されている。回転軸21の第2の端部(
図1中の下端部)は、モータハウジング10の底部に設けられた収容孔10aを貫通して、外部に延出している。
【0020】
ステータ40は、円筒形状のステータコア41と、ステータコア41に巻回されたモータコイル42とを有している。
ロータ50は、回転軸21と一体回転可能に取り付けられた環状のロータコア51と、ロータコア51の外周に一体回転可能に取り付けられた筒状のマグネット52とを有している。マグネット52は、たとえば複数の磁石がロータコア51の周方向に並べて配置されている。これらの磁石は、その磁極がロータコア51の周方向において、N極およびS極が交互に入れ替わるように配置されている。
【0021】
回転軸21の第1の端部(
図1中の上端部)は、ヒートシンク11の挿通孔11aを介して、外部に突出している。回転軸21の第1の端部には、センサマグネット60が設けられている。センサマグネット60には、たとえば円柱状の2極磁石が採用されている。
【0022】
ヒートシンク11のモータ20と反対側の面(
図1中の上面)には、スペーサ70を介して基板30が支持されている。基板30およびスペーサ70は、ねじ71によってヒートシンク11に対して固定されている。基板30には、各種の電子部品が実装されている。電子部品としては、モータ20を制御するためのマイコン80(マイクロコンピュータ)のほか、電磁ノイズを低減するためのチョークコイル81(電源フィルタ)が挙げられる。基板30におけるモータ20と反対側の面には、マイコン80およびチョークコイル81が設けられている。チョークコイル81は、基板30において、軸線mから最も離れた位置に設けられている。軸線m方向において、チョークコイル81の基板30を基準とする高さは、マイコン80の高さよりも十分に高く設定されている。また、基板30におけるモータ20(ヒートシンク11)側の面には、モータ20の回転軸21の回転角度を検出するための回転角センサとして、磁気センサ90が設けられている。磁気センサ90は、回転軸21の第1の端部に設けられたセンサマグネット60に対して、回転軸21の軸方向(軸線m方向)において対向している。磁気センサ90としては、異方性磁気抵抗センサなどの磁気抵抗センサ(MRセンサ)が採用される。磁気センサ90は、センサマグネット60から付与される磁界の向きに応じた電気信号を生成する。マイコン80は、磁気センサ90により生成される電気信号に基づいて回転軸21の回転角を演算し、その演算した回転角に基づいて、モータコイル42への給電を制御する。
【0023】
モータハウジング10の開口部分は、有底筒状体のモータカバー12によって覆われている。モータカバー12の材質には、たとえば鉄等の磁性体が採用される。モータハウジング10の開口部分とモータカバー12の開口部分とを互いに突き合わせた状態で、モータカバー12がモータハウジング10に取り付けられている。一例としては、モータカバー12のスナップフィット爪が、モータハウジング10の開口端部のフランジに、軸方向において係合することにより、モータカバー12がモータハウジング10に固定される。ヒートシンク11は、モータハウジング10とモータカバー12との間に挟み込まれた状態で固定される。なお、モータハウジング10とモータカバー12との固定は、スナップフィットの嵌合に限らず、ボルト等によって行われてもよい。
【0024】
モータカバー12の内部には、センサマグネット60、磁気センサ90、基板30、マイコン80、およびチョークコイル81が収容されている。モータカバー12の底部において、チョークコイル81に対応する部分には、収容部100が設けられている。収容部100は、モータカバー12の底部に対して、モータ20と反対の方向に突出している。収容部100には、基板30に実装されたチョークコイル81の少なくとも先端部分が収容されている。なお、磁気センサ90とチョークコイル81とは、できる限り離れた位置に設けることが好ましい。
【0025】
図2に示すように、モータカバー12の収容部100は、略長方体状をなしている。収容部100の側面の一部(共通面102)は、モータカバー12の側面と共通である。また、収容部100の底壁と、モータカバー12の底部における収容部100の設けられていない部分との間には、傾斜部103が設けられている。また、モータカバー12の底部における収容部100の設けられていない部分には、基板30に実装される各種の電子部品を外部の機器と接続するためのコネクタ(図示略)を通すための孔104が設けられている。なお、鉄等の磁性体により構成されるモータカバー12は、モータ装置1の磁気ノイズ(漏れ磁束)を遮断する磁気シールドとして機能する。
【0026】
つぎに、チョークコイル81について説明する。
チョークコイル81には閉磁路型および開磁路型などの様々なタイプのコイルが存在する。閉磁路型のコイルとしては、たとえばリング状のコアを有するトロイダルコイルが知られている。また、開磁路型のコイルとしては、たとえば直線状(曲線状)のコアを有するソレノイドコイルが知られている。チョークコイル81としては、トロイダルコイルおよびソレノイドコイルのいずれも採用可能である。
【0027】
図3に示すように、本例では、チョークコイル81としては、たとえばリード線(導線)タイプのソレノイドコイル(1ターンコイル)が採用される。チョークコイル81は、U字状に1ターン巻いた導線部分82、および導線部分82を収容する筐体部分83を有している。一例としてはその導線部分82の径は、流れる電流量に応じて太く設定されている。なお、壁部101は、軸線m方向において、導線部分82にまで延びていることが好ましい。
【0028】
本実施形態の作用および効果について説明する。
(1)チョークコイル81には大電流が流れるため、チョークコイル81により発生する磁界(漏れ磁束)も大きくなる。このため、磁気センサ90は、センサマグネット60の周囲に形成される磁界の影響だけでなく、チョークコイル81の周囲に形成される磁界の影響を受けるおそれがある。たとえば、チョークコイル81からの磁束がセンサマグネット60からの磁束に干渉することによって、センサマグネット60の周囲に形成される磁界が歪められることが考えられる。また、磁気センサ90に、センサマグネット60からの理想的な磁束以外にも、チョークコイル81からの磁束が印加されることも考えられる。この場合、磁気センサ90を通じて検出される回転軸21の回転角と実際の回転角との間に誤差が生じることが懸念される。
【0029】
図4に比較例として示すように、モータカバー12に収容部100が設けられておらず、チョークコイル81の周囲が収容部100によって取り囲まれていない場合、チョークコイル81により発生する磁界は、磁気センサ90およびセンサマグネット60の周囲に形成される磁界に影響を与えてしまう。これは、チョークコイル81により発生する磁束におけるモータカバー12の底部側(
図4中の上面側)の磁束は、磁性体であるモータカバー12に引き付けられるものの、チョークコイル81により発生する磁束における基板30側の磁束は、特に磁性体に引き付けられることもなく、磁気センサ90の近傍を通ってしまうためである。この結果、磁気センサ90により検出される回転軸21の回転角にも誤差が生じてしまう。
【0030】
図5に示すように、たとえば回転軸21が図中の位置から矢印Aで示される方向へ向けて回転角θだけ回転したとき、本来であれば磁気センサ90に付与されるセンサマグネット60の磁界の向きは実線の矢印A1で示される方向から、軸線mを中心として回転角θだけ回転した一点鎖線の矢印A2で示される方向に変化する。しかし、センサマグネット60からの理想的な磁界が、チョークコイル81からの磁束の影響を受ける場合、磁気センサ90に付与される磁界の向きは、矢印A2で示される本来の方向ではなく、たとえば2点鎖線の矢印A3で示される方向となる。この矢印A3で示される方向は、
図4に実線の矢印Aで示される方向から回転角θよりも大きな回転角θ1だけ回転した方向になることもあるし、回転角θよりも小さな回転角θ2だけ回転した方向になることもある。このため、磁気センサ90は、本来の回転角θではなく、回転角θ1または回転角θ2に応じた電気信号を生成してしまう。これにより、磁気センサ90を通じて検出される回転軸21の回転角と実際の回転角との間に誤差が生じてしまう。
【0031】
これに対し、本実施形態では、
図6に示すように、モータカバー12の収容部100によってチョークコイル81の周囲が取り囲まれている。これにより、少なくともチョークコイル81における磁気センサ90側の部分は、収容部100(壁部101)によって取り囲まれている。すなわち、回転軸21の軸方向と直交する方向(
図6中の左右方向)において、チョークコイル81に隣り合うように壁部101が設けられていることにより、チョークコイル81により発生する磁束は壁部101(モータカバー12)に引き付けられる。なお、チョークコイル81により発生する磁束は、空気中よりも磁性体であるモータカバー12の方が流れやすい。空気よりも磁性体の方が、透磁率が高いためである。このため、チョークコイル81を収容部100によって取り囲むことにより、チョークコイル81により発生する磁束を壁部101に誘導して、磁気センサ90およびセンサマグネット60の周囲にチョークコイル81により発生する磁束が通りにくくしている。
【0032】
このように、チョークコイル81の周囲が収容部100によって取り囲まれていることにより、チョークコイル81からの磁束がセンサマグネット60からの磁束に干渉することが抑制されるので、センサマグネット60の周囲に形成される磁界が歪みにくくなる。これにより、磁気センサ90は、センサマグネット60からの理想的な磁界に応じた電気信号を生成できる。また、磁気センサ90に、センサマグネット60からの理想的な磁束以外に、チョークコイル81からの磁束が印加されることが抑制される。これにより、磁気センサ90は、回転軸21の本来の回転角θに応じた電気信号を生成できる。そのため、磁気センサ90を通じて検出される回転軸21の回転角と実際の回転角との間に誤差が生じることが抑制され、モータ20の回転軸21の回転角の検出精度を確保できる。
【0033】
(2)共通面102は、モータカバー12の側面としても、収容部100の一部分としても機能させることにより、加工の手間を減らすことができる。
(3)チョークコイル81が基板30の周縁部分に実装されることにより、チョークコイル81はセンサマグネット60および磁気センサ90から最も離れた端の部分に設けられる。チョークコイル81から発生する磁界は、距離の2乗に反比例して低減するので、チョークコイル81と、センサマグネット60および磁気センサ90との間をできる限り離すことにより、磁気センサ90およびセンサマグネット60の周囲にチョークコイル81により発生する磁束が通りにくくなる。これにより、磁気センサ90を通じて検出される回転軸21の回転角と実際の回転角との間に誤差が生じることが抑制され、モータ20の回転軸21の回転角の検出精度を確保できる。
【0034】
(4)収容部100の底部からモータ20側へ向けて延びる壁部101は、軸線m方向において、チョークコイル81の導線部分82にまで延びていることが好ましい。
図3に示されるチョークコイル81でいうと、少なくともU字状の導線の頂点部分にかかるように壁部101が設けられることにより、より確実にチョークコイル81から発生する磁束を引き付けることが可能である。
【0035】
なお、本実施形態は次のように変更してもよい。また、以下の他の実施形態は、技術的に矛盾しない範囲において、互いに組み合わせることができる。
・磁気センサ90は、MRセンサに代えてホールセンサを用いたものであってもよい。
【0036】
・モータカバー12の材質は、鉄に限らず、磁性体であればよい。
・本実施形態では、チョークコイル81の周囲を収容部100によって取り囲むことにより、チョークコイル81からの磁束がセンサマグネット60からの磁束に干渉することを抑制したが、これに限らない。
【0037】
たとえば、
図7に示すように、モータカバー12の底部にモータ側へ向けて延びる壁部105を一体的に設けることにより、チョークコイル81からの磁束がセンサマグネット60からの磁束に干渉することを抑制してもよい。すなわち、チョークコイル81における少なくともセンサマグネット側の部分に壁部105が配置されていればよい。
【0038】
・本実施形態では、基板30のモータ20側の面に磁気センサ90が実装され、基板30のモータ20と反対側の面にチョークコイル81が実装されたが、これに限らない。すなわち、チョークコイル81は、基板30のモータ20と反対側の部分に設けられればよく、たとえば基板30と直交する他の基板に実装されていてもよい。
【0039】
図8に一例として示すように、基板30と直交して設けられる基板31にチョークコイル81が配置されていてもよい。基板30と基板31とは、たとえば中継回路32によって電気的に接続されている。また、基板31は、たとえば図示を省略したヒートシンクに固定されている。モータカバー12には壁部106が一体的に設けられる。壁部106は、チョークコイル81における磁気センサ90側の部分(
図8におけるチョークコイル81の下方)に設けられている。すなわち、壁部106は、モータ20の回転軸21の軸方向において、チョークコイル81と基板30(磁気センサ90)との間に設けられる。これにより、チョークコイル81からの磁束がセンサマグネット60からの磁束に干渉することを抑制する。
【0040】
・本実施形態では、収容部100は、略長方体状をなしていたが、これに限らない。
たとえば、
図9に示すように、モータカバー12に略長円柱状の収容部107を設けてもよい。この場合も、収容部107によってチョークコイル81の周囲が取り囲まれる。長円柱状のチョークコイル81を採用する場合、収容部107とチョークコイルとの間に無駄なスペースを取ることなく、チョークコイル81を収容部107に収容できる。このように、収容部107の形状は、チョークコイル81の外形形状に応じた形状であればよい。たとえばチョークコイル81が立方体状の場合、モータカバー12に立方体状の収容部を設けてもよい。
【0041】
・本実施形態では、基板30にマイコン80が設けられたが、設けられなくてもよい。すなわち、モータ装置の外部にマイコン80を設けるようにしてもよい。モータハウジング10およびモータカバー12内にチョークコイル81やインバータ回路が配置されるモータ装置であれば同様の課題が生じる。
【0042】
・本実施形態では、基板30にチョークコイル81が実装されたが、これに限らない。たとえば、電磁ノイズを低減するためのコンデンサやコイルであってもよい。すなわち、基板30に周囲の電磁ノイズを低減するための電源フィルタが実装されればよい。
【0043】
つぎに、上記実施形態および別例から把握できる技術的思想について以下に追記する。
(イ)前記基板は、前記回転軸の軸方向に延びる部分を有しており、前記コイルは、前記基板における軸方向に延びる部分において、軸方向に直交する方向に実装され、前記モータカバーには、前記コイルにおける前記磁気センサ側の少なくとも一部分を取り囲むように、軸方向に直交する方向に延びる前記壁部が設けられている。上記構成によれば、コイルにおける磁気センサ側の少なくとも一部分が壁部によって取り囲まれることにより、コイルからの磁束がセンサマグネットからの磁束に干渉することを抑制できる。
【符号の説明】
【0044】
1…モータ装置、10…モータハウジング、10a…収容孔、11…ヒートシンク、11a…挿通孔、12…モータカバー、13,14…ベアリング、20…モータ、21…回転軸、30,30a,31…基板、32…中継回路、40…ステータ、41…ステータコア、42…モータコイル、50…ロータ、51…ロータコア、52…マグネット、60…センサマグネット、70…スペーサ、71…ねじ、80…マイコン、81…チョークコイル(電源フィルタ)、82…導線部分、83…筐体部分、90…磁気センサ、100…収容部、101…壁部、102…共通面、103…傾斜部、104…孔、105…壁部、106…壁部、107…収容部、m…軸線、θ,θ1,θ2…回転角、A,A1,A2,A3…矢印。