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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-21
(45)【発行日】2022-03-02
(54)【発明の名称】燃焼装置及びボイラ
(51)【国際特許分類】
   F23J 7/00 20060101AFI20220222BHJP
   F23C 1/12 20060101ALI20220222BHJP
   F23C 99/00 20060101ALI20220222BHJP
【FI】
F23C99/00 317
F23C1/12
F23C99/00 309
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2017213209
(22)【出願日】2017-11-02
(65)【公開番号】P2019086189
(43)【公開日】2019-06-06
【審査請求日】2020-07-08
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成29年度、国立研究開発法人科学技術振興機構、SIP(戦略的イノベーション創造プログラム)、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100175802
【弁理士】
【氏名又は名称】寺本 光生
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100167553
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 久典
(72)【発明者】
【氏名】石原 咲子
(72)【発明者】
【氏名】張 聚偉
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 隆政
【審査官】河野 俊二
(56)【参考文献】
【文献】実開昭53-079782(JP,U)
【文献】特表2009-543014(JP,A)
【文献】特開平01-095214(JP,A)
【文献】実開昭62-034622(JP,U)
【文献】特開平01-306718(JP,A)
【文献】特開昭60-71806(JP,A)
【文献】特開2015-117868(JP,A)
【文献】特開2003-172505(JP,A)
【文献】特開昭61-83817(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第1335163(EP,A1)
【文献】特開昭58-88520(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23J 7/00
F23C 1/12
F23C 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
火炉に設置されると共にアンモニアを燃料として燃焼可能な燃焼装置であって、
前記燃料の噴射方向から見て中心部に配置されると共に火炎形成空間において相対的に酸素濃度が低い酸素濃度低下領域に前記アンモニアを噴射するアンモニア噴射ノズルを備え、
前記アンモニア噴射ノズルは、前記アンモニア噴射ノズルの軸芯を中心とする径方向外側に前記アンモニアを分散して噴射する分散型噴射ノズルであり、
前記分散型噴射ノズルは、先端部に形成されると共に前記軸芯に中心を重ねて配置された第1の噴射開口と、前記軸芯を囲んで配列される複数の第2の噴射開口を有し、
各々の第2の前記噴射開口は、前記軸芯に対して傾斜しかつ前記火炎形成空間に向かう方向に前記アンモニアを噴射する
ことを特徴とする燃焼装置。
【請求項2】
アンモニアを燃料として燃焼可能な燃焼装置と、前記燃焼装置が取り付けられた火炉とを備えるボイラであって、
前記燃焼装置として、請求項1記載の燃焼装置を備えることを特徴とするボイラ。
【請求項3】
前記火炉の内部が理論空気量よりも低い空気雰囲気に設定されていることを特徴とする請求項2記載のボイラ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃焼装置及びボイラに関するものである。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、アンモニアを含む燃料を燃焼させる複合エネルギーシステムが開示されている。この複合エネルギーシステムは、二酸化炭素の排出量を削減することを目的として、主燃料である天然ガスにアンモニアを添加して燃焼させるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-032391号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、アンモニアを燃料の一部として燃焼させた場合には燃焼ガスに含まれる窒素酸化物(NOx)の増加が懸念される。上記背景技術は、専ら二酸化炭素の排出量の削減を目的としており、窒素酸化物(NOx)を低減さることについて何ら解決策を提示するものではない。天然ガスのような炭素燃料とアンモニアのような窒素含有燃料とを一緒に燃焼させる場合には、実用性の観点から窒素酸化物(NOx)の増加を抑制することが必要不可欠である。
【0005】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、アンモニアを燃料として燃焼可能なボイラにおいて、窒素酸化物(NOx)の増加を抑制することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するための手段として、以下の構成を採用する。
【0007】
第1の発明は、火炉に設置されると共にアンモニアを燃料として燃焼可能な燃焼装置であって、上記燃料の噴射方向から見て中心部に配置されると共に火炎形成空間において相対的に酸素濃度が低い酸素濃度低下領域に上記アンモニアを噴射するアンモニア噴射ノズルを備えるという構成を採用する。
【0008】
第2の発明は、上記第1の発明において、上記アンモニア噴射ノズルが、供給された上記アンモニアの流速を増大させて上記アンモニア噴射ノズルの軸芯に沿って噴射する加速型噴射ノズルであるという構成を採用する。
【0009】
第3の発明は、上記第2の発明において、上記加速型噴射ノズルが、先端部に形成されると共に上記軸芯に中心を重ねて配置される単一の噴射開口と、上記加速型噴射ノズルの内部に形成されると共に上記噴射開口に接続された内部流路とを有し、上記噴射開口の直径が、上記内部流路の直径よりも小さく設定されているという構成を採用する。
【0010】
第4の発明は、上記第1の発明において、上記アンモニア噴射ノズルが、上記アンモニア噴射ノズルの軸芯を中心とする径方向外側に上記アンモニアを分散して噴射する分散型噴射ノズルであるという構成を採用する。
【0011】
第5の発明は、上記第4の発明において、上記分散型噴射ノズルが、上記軸芯を囲んで配列される複数の噴射開口を有するという構成を採用する。
【0012】
第6の発明は、アンモニアを燃料として燃焼可能な燃焼装置と、上記燃焼装置が取り付けられた火炉とを備えるボイラであって、上記燃焼装置として、上記第1~第5いずれかの発明である燃焼装置を備えるという構成を採用する。
【0013】
第7の発明は、上記第6の発明において、上記火炉の内部が理論空気量よりも低い空気雰囲気に設定されているという構成を採用する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、中心に配置されたアンモニア噴射ノズルによって、酸素濃度が低い酸素濃度低下領域にアンモニアが噴射される。酸素が豊富な領域でアンモニアが燃焼すると、アンモニアに含まれる窒素が酸素と結びついて窒素酸化物(NOx)が生成されやすい。一方で、酸素濃度低下領域にてアンモニアが燃焼されると、アンモニアに含まれる窒素同士が結びついて窒素ガス(N)となる。このため、本発明によれば、アンモニアを燃料として燃焼可能なボイラにおいて、窒素酸化物(NOx)の増加を抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の第1実施形態のボイラの要部構成を示す模式図である。
図2】本発明の第1実施形態のボイラが備えるバーナの概略構成を模式的に示す断面図である。
図3】本発明の第1実施形態のボイラが備えるバーナが形成する火炎を含む模式図である。
図4】本発明の第1実施形態のボイラが備えるバーナのアンモニア噴射ノズルの概略構成図である。
図5】本発明の第2実施形態のボイラが備えるバーナのアンモニア噴射ノズルの概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して、本発明に係る燃焼装置及びボイラの一実施形態について説明する。なお、以下の図面において、各部材を認識可能な大きさとするために、各部材の縮尺を適宜変更している。
【0017】
(第1実施形態)
図1は、本第1実施形態のボイラ1の要部構成を示す模式図である。図1に示すように、ボイラ1は、火炉2と、煙道3と、バーナ4(燃焼装置)と、二段燃焼空気供給部5と、アンモニア供給部6と、微粉炭供給部7とを備えている。
【0018】
火炉2は、垂直かつ筒状に設けられた炉壁によって構成され、アンモニアや微粉炭等の燃料を燃焼させて燃焼熱を発生させる炉体である。この火炉2では、燃料が燃焼することによって高温の燃焼ガスが発生する。また、火炉2の底部には、燃料の燃焼によって発生する灰分を外部に排出する排出口2aが設けられている。
【0019】
煙道3は、火炉2の上部と接続され、火炉2で発生した燃焼ガスを排ガスとして外部に案内する。このような煙道3は、火炉2の上部から水平に延出する水平煙道3aと、水平煙道3aの端部から下方に延出する後部煙道3bとを備えている。
【0020】
なお、図1では省略しているが、ボイラ1は、火炉2の上部等に設置される過熱器を備えている。過熱器は、火炉2で発生した燃焼熱と水とを熱交換することによって水蒸気を生成する。また、図1では省略しているが、ボイラ1は、必要に応じて再熱器、節炭器、空気予熱器等を備える。
【0021】
バーナ4は、火炉2の下部の壁部に配置されている。このバーナ4は、火炉2の周方向に複数設置されている。また、図1では省略しているが、バーナ4は、火炉2の高さ方向にも複数設置されている。これらのバーナ4は、火炉2の下部に二次元状かつ対向配置されており、燃料を噴射して燃焼させる。これらのバーナ4は、何れもアンモニア及び微粉炭を燃料として火炉2内に噴射可能な複合バーナである。なお、図1では省略しているが、火炉2にはバーナ4から噴射された燃料(アンモニア及び微粉炭)を着火させる着火装置が設けられている。また、図1では省略しているが、ボイラ1は、バーナ4に対して燃焼空気を供給する燃焼空気供給部を有している。各バーナ4から火炉2内に燃焼空気と共に噴射された燃料(アンモニア及び微粉炭)は、上述の着火装置の働きによって着火して燃焼する。
【0022】
なお、ボイラ1に設置されるバーナ4は、全てが上述のような複合バーナである必要はない。例えば、石炭専焼のバーナやアンモニア専焼のバーナを備える構成を採用することもできる。
【0023】
ここで、アンモニアは、分子式(NH)によって示されるように水素(H)と窒素(N)との化合物であり、構成原子として炭素(C)を含まない。また、このアンモニア(低炭素燃料)は、難燃性の物質として知られるものの、メタン(CH)と同様に3つの水素原子を有する水素キャリア物質である。一方、微粉炭は、化石燃料である石炭を数マイクロメートル程度の大きさまで粉砕処理したものであり、ボイラ用の燃料として一般的に使用されている。すなわち、アンモニアは、微粉炭(炭素燃料)よりも炭素濃度が低い低炭素燃料である。
【0024】
図2は、バーナ4の概略構成を模式的に示す断面図である。バーナ4は、アンモニア噴射ノズル41と、微粉炭噴射ノズル42とを備えており、全体としてアンモニア噴射ノズル41の軸芯Lを中心とした略円筒状に形成されている。アンモニア噴射ノズル41は、後端部がアンモニア供給部6と接続されており、先端部から火炉2の内部にアンモニアを噴射する。微粉炭噴射ノズル42は、アンモニア噴射ノズル41を囲むように、アンモニア噴射ノズル41と同心円状に設けられた二重筒形状であり、内筒と外筒との間から火炉2の内部に微粉炭を噴射する。また、アンモニア噴射ノズル41と微粉炭噴射ノズル42との間には隙間が設けられており、この隙間から燃焼用の空気が火炉2の内部に供給される。
【0025】
また、バーナ4は、アンモニア噴射ノズル41及び微粉炭噴射ノズル42を囲うように配設される2次空気供給部43と、2次空気供給部43を囲うように配設される3次空気供給部44とを備えている。これらの2次空気供給部43及び3次空気供給部44は、火炎に対して径方向外側から燃焼用の空気を供給する。
【0026】
このようなバーナ4では、アンモニア噴射ノズル41からアンモニアが噴射され、微粉炭噴射ノズル42から微粉炭が噴射され、さらに燃焼用の空気が供給されることによって、図3に示すように、バーナ4の前方に対して火炎Fが形成される。このように火炎Fが形成されると、火炎Fの外縁領域R1(アンモニア噴射ノズル41の軸芯Lの径方向外側の領域)と、火炎Fの先端領域R2は、火炎Fが形成された他の領域に対して酸素濃度が低い酸素濃度低下領域となる。
【0027】
図4(a)は、アンモニア噴射ノズル41の軸芯Lを含む面での断面図であり、図4(b)は図4(a)のA-A断面図である。これらの図に示すように、アンモニア噴射ノズル41は、軸芯Lを中心とする円筒形状の直管型のノズルであり、アンモニアを噴射する噴射開口20を先端に1つのみ有している。噴射開口20は、アンモニア噴射ノズル41の軸芯Lと中心が重なるように形成されている。つまり、図2(b)に示すように、噴射開口20は、アンモニア噴射ノズル41の軸芯Lに沿った方向から見て、アンモニア噴射ノズル41の中央に形成されている。また、噴射開口20の直径D1は、アンモニア噴射ノズル41の内部流路の直径D2よりも小さく設定されている。このようなアンモニア噴射ノズル41は、アンモニア供給部6から内部流路に供給されたアンモニアを噴射開口20から外部に噴射する。このとき、アンモニア噴射ノズル41が、内部流路の直径D2よりも小さな直径D1を有する噴射開口20を1つのみ有しているため、内部流路に供給されたアンモニアは、噴射開口20を通過する際に加速される。このようにアンモニア噴射ノズル41は、内部流路に供給されたアンモニアを、流速を増大させて軸芯Lに沿って噴射する加速型噴射ノズルとされている。加速されて噴射されたアンモニアは、貫通力が増すことによって、火炎Fの先端領域R2(すなわち酸素濃度低下領域)に到達する。つまり、バーナ4は、燃料の噴射方向から見て中心部に配置されると共に火炎形成空間において相対的に酸素濃度が低い火炎Fの先端領域R2(酸素低下領域)にアンモニアを噴射するアンモニア噴射ノズル41を備えている。
【0028】
図1に戻り、二段燃焼空気供給部5は、バーナ4の上方にて火炉2と接続されており、火炉2の内部に二段燃焼用の空気を供給する。このような二段燃焼空気供給部5によって二段燃焼用の空気を供給することで、バーナ4で燃焼された燃料の未燃分が二段燃焼空気によって燃焼され、ボイラ1の収熱性能を高めると共に、排ガスに含まれる燃料の未燃分を減少させることができる。
【0029】
アンモニア供給部6は、アンモニア供給源6aと、燃料アンモニア供給部6bと、アンモニア供給制御装置6cとを備えている。アンモニア供給源6aは、アンモニアを貯蔵するタンク等からなる。なお、アンモニア供給源6aは、必ずしもアンモニア供給部6の構成要素である必要はない。つまり、アンモニア供給部6は、外部に設置されたアンモニア供給源6aからアンモニアを取り込むようにしても良い。
【0030】
燃料アンモニア供給部6bは、アンモニア供給源6aとバーナ4とを接続する燃料アンモニア供給配管6b1と、燃料アンモニア供給配管6b1の途中部位に設置される流量調節弁6b2とを備えている。燃料アンモニア供給配管6b1は、アンモニア供給源6aから供給されたアンモニアをバーナ4に案内する配管である。流量調節弁6b2は、アンモニア供給源6aから燃料アンモニア供給配管6b1に供給されるアンモニアの流量を調節するバルブである。
【0031】
アンモニア供給制御装置6cは、流量調節弁6b2を制御し、流量調節弁6b2の開度を調節する。アンモニア供給制御装置6cは、外部の指令等に基づいて、流量調節弁6b2の開度を調節することによってアンモニア供給源6aから取り込まれるアンモニアの流量を調節する。
【0032】
微粉炭供給部7は、バーナ4と接続されており、石炭を粉砕して微粉炭とすると共に微粉炭をバーナ4に対して供給する。この微粉炭供給部7は、例えば石炭を数マイクロメートル程度の粒径まで粉砕して微粉炭とするミルと、ミルによって生成された微粉炭をバーナ4に供給する給炭機とを備えている。なお、微粉炭供給部7は、給炭機を備えずにミルから直接的に微粉炭をバーナ4に供給する構成とすることもできる。
【0033】
このような本実施形態のボイラ1では、火炉2の内部が理論空気量よりも低い空気雰囲気に設定される。その後、アンモニア供給部6からバーナ4にアンモニアが供給され、微粉炭供給部7からバーナ4に微粉炭が供給され、アンモニア及び微粉炭を燃料としてバーナ4で火炎が形成される。このとき、バーナ4のアンモニア噴射ノズル41によってアンモニアの流速が増大されるため、アンモニア噴射ノズル41から噴射されたアンモニアは、火炎Fの先端領域R2に到達して燃焼される。この結果、アンモニアが熱分解されることによって生成された窒素原子が酸素原子と結びつくことを抑制し、窒素原子同士を結び付かせることができる。このため、アンモニアが燃焼された場合であっても、窒素酸化物(NOx)の発生が抑制される。さらに、本実施形態のボイラ1では、火炉2の内部が理論空気量よりも低い空気雰囲気に設定されているため、より窒素分子が酸素分子と結びつくことを抑制し、窒素酸化物(NOx)の発生を抑制することができる。
【0034】
また、二段燃焼空気供給部5によって二段燃焼用の空気が火炉2の内部に供給されることによって、燃焼ガスに含まれる未燃の燃料が燃焼される。燃料が燃焼されることで生成された燃焼ガスは、火炉2の下部から上部に移動し、煙道3を通じて外部に案内される。
【0035】
以上のような本実施形態のボイラ1が備えるバーナ4によれば、中心に配置されたアンモニア噴射ノズルによって、酸素濃度が低い酸素濃度低下領域にアンモニアが噴射される。酸素が豊富な領域でアンモニアが燃焼すると、アンモニアに含まれる窒素が酸素と結びついて窒素酸化物(NOx)が生成されやすい。一方で、酸素濃度低下領域にてアンモニアが燃焼されると、アンモニアに含まれる窒素同士が結びついて窒素ガス(N)となる。このため、本実施形態のボイラ1が備えるバーナ4によれば、アンモニアを燃料として燃焼可能なボイラにおいて、窒素酸化物(NOx)の増加を抑制することが可能となる。
【0036】
また、本実施形態のボイラ1が備えるバーナ4においては、アンモニア噴射ノズル41が、供給されたアンモニアの流速を増大させてアンモニア噴射ノズルの軸芯Lに沿って噴射する加速型噴射ノズルとされている。このため、本実施形態のボイラ1が備えるバーナ4によれば、簡易な構造にてアンモニアを酸素濃度低下領域である先端領域R2に到達させることができる。
【0037】
また、本実施形態のボイラ1が備えるバーナ4においては、アンモニア噴射ノズル41は、先端部に形成されると共に軸芯Lに中心を重ねて配置される単一の噴射開口20と、アンモニア噴射ノズル41の内部に形成されると共に噴射開口に接続された内部流路とを有し、噴射開口20の直径D1が内部流路の直径D2よりも小さく設定されている。このため、簡易な構造にて、アンモニア噴射ノズル41の内部流路に供給されたアンモニアを加速させることが可能となる。
【0038】
また、本実施形態のボイラ1においては、火炉2の内部が理論空気量よりも低い空気雰囲気に設定されている。このため、より窒素分子が酸素分子と結びつくことを抑制し、窒素酸化物(NOx)の発生を抑制することができる。
【0039】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について説明する。なお、本第2実施形態の説明において、上記第1実施形態と同様の部分については、その説明を省略あるいは簡略化する。
【0040】
図5は、本実施形態のボイラが備えるバーナのアンモニア噴射ノズル45の概略構成を示す図である。図5(a)は、アンモニア噴射ノズル45の軸芯Lを含む面での断面図であり、図5(b)はアンモニア噴射ノズル45の正面図である。これらの図に示すように、アンモニア噴射ノズル45の先端部には、アンモニアを噴射する複数の噴射開口21が設けられている。これらの噴射開口21は、図5(b)に示すように、アンモニア噴射ノズル45の軸芯Lを囲むように環状に配列されている。また、各々の噴射開口21は、火炎Fの外縁領域R1に向けてアンモニアを噴射するように、軸芯Lを中心とする径方向外側に向けて開口されている。
【0041】
このようなアンモニア噴射ノズル45は、先端部に設けられた複数の噴射開口21から軸芯Lを中心とする径方向外側にアンモニアを分散して噴出する。つまり、本実施形態においては、アンモニア噴射ノズル45は、軸芯Lを中心とする径方向外側にアンモニアを分散して噴射する分散型噴射ノズルとされている。
【0042】
アンモニア噴射ノズル45から噴射されたアンモニアは、軸芯Lを中心とする径方向外側に広がりながら前方に移動し、火炎Fの外縁領域R1に到達する。つまり、アンモニア噴射ノズル45は、燃料の噴射方向から見て中心部に配置されると共に火炎形成空間において相対的に酸素濃度が低い酸素濃度低下領域(外縁領域R1)にアンモニアを噴射する。この結果、アンモニアが熱分解されることによって生成された窒素原子が酸素原子と結びつくことを抑制し、窒素原子同士を結び付かせることができ、窒素酸化物(NOx)の発生を抑制することができる。
【0043】
また、本実施形態によれば、アンモニア噴射ノズル45が軸芯Lを囲んで配列される複数の噴射開口21を有する簡易な構造にて、アンモニアを酸素濃度低下領域(外縁領域R1)に供給することが可能となる。
【0044】
なお、本実施形態のアンモニア噴射ノズル45に対して、上記第1実施形態の噴射開口20を加える構成を採用することも可能である。このような場合には、火炎Fの外縁領域R1及び先端領域R2にアンモニアを供給することができる。
【0045】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されないことは言うまでもない。上述した実施形態において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の趣旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0046】
例えば、上記実施形態においては、微粉炭とアンモニアとを燃料として混焼させるボイラについて説明した。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、天然ガスとアンモニアを燃料として混焼させる構成、重油や軽油とアンモニアを燃料として混焼させる構成、あるいは、アンモニアのみを燃料として燃焼させる構成等を採用することが可能である。
【符号の説明】
【0047】
1……ボイラ
2……火炉
2a……排出口
3……煙道
3……次空気供給部
3a……水平煙道
3b……後部煙道
4……バーナ(燃焼装置)
5……二段燃焼空気供給部
6……アンモニア供給部
6a……アンモニア供給源
6b……燃料アンモニア供給部
6b1……燃料アンモニア供給配管
6b2……流量調節弁
6c……アンモニア供給制御装置
7……微粉炭供給部
20……噴射開口
21……噴射開口
41……アンモニア噴射ノズル
42……微粉炭噴射ノズル
43……2次空気供給部
44……3次空気供給部
45……アンモニア噴射ノズル
F……火炎
L……軸芯
R1……外縁領域
R2……先端領域
図1
図2
図3
図4
図5