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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-21
(45)【発行日】2022-03-02
(54)【発明の名称】電極の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/1395 20100101AFI20220222BHJP
【FI】
H01M4/1395
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2017223921
(22)【出願日】2017-11-21
(65)【公開番号】P2019096437
(43)【公開日】2019-06-20
【審査請求日】2020-08-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】濱口 陽平
(72)【発明者】
【氏名】山口 祐良
(72)【発明者】
【氏名】塩野 憲太朗
(72)【発明者】
【氏名】衣川 達哉
(72)【発明者】
【氏名】河端 栄克
(72)【発明者】
【氏名】木下 恭一
【審査官】鈴木 雅雄
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-050400(JP,A)
【文献】特開2016-103503(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/1395
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
集電体、及び前記集電体の片面又は両面に存在する活物質層を有する電極材料と、ベースフィルム、及び前記ベースフィルムの片面に存在するとともに前記活物質層よりも外形の大きいリチウム箔を有する層状シートとを、前記活物質層と前記リチウム箔とが対向し、かつ前記リチウム箔の外形を形成する縁部が前記活物質層の外形を形成する縁部の外側に位置するように重ねて配置する配置工程と、
弾性変形可能であり、前記活物質層よりも外形の大きい一対の加圧部材によって、前記層状シート及び前記電極材料を加圧する加圧工程と、
前記電極材料から前記ベースフィルムを剥離する剥離工程と、
を備え、
前記加圧工程において、前記一対の加圧部材の外形を形成する縁部は、前記リチウム箔の縁部よりも内側に位置する前記活物質層の縁部よりも外側に位置し、前記層状シート及び前記電極材料を加圧した状態で、前記一対の加圧部材に接続された超音波装置によって、前記電極材料及び前記層状シートが重ねられた方向に前記一対の加圧部材を振動させて、前記リチウム箔における前記活物質層と対向する側の面に前記活物質層の縁部に沿った切欠を形成することを特徴とする電極の製造方法。
【請求項2】
前記活物質層及び前記リチウム箔は矩形状であり、
前記加圧部材はそれぞれ、前記層状シート又は前記電極材料と対向し、かつ前記活物質層よりも外形の大きい矩形状の加圧面を備え、
前記配置工程において、前記リチウム箔の各縁部は、前記活物質層の各縁部よりも外側に位置し、
前記加圧工程において、前記加圧部材の加圧面の外形を形成する各縁部は、前記活物質層の各縁部よりも外側に位置する請求項1に記載の電極の製造方法。
【請求項3】
前記加圧部材はそれぞれ、弾性変形可能であり、回転する筒状の本体部と、前記本体部よりも硬質であり、前記本体部の外周面に前記本体部の周方向に間隔を空けて存在する複数の硬質部とを有するロール状であり、
前記本体部の軸方向において、前記複数の硬質部の少なくとも一部は、前記活物質層の縁部に沿うように配置される請求項1に記載の電極の製造方法。
【請求項4】
前記一対の加圧部材は、前記層状シート及び前記電極材料に加える圧力が大きくなるような互いに近付く方向への移動と、前記層状シート及び前記電極材料に加える圧力が小さくなるような互いに遠ざかる方向への移動を繰り返すように振動する請求項1に記載の電極の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、集電体と、集電体の両面又は片面に存在する活物質層と、活物質層の表面に存在するドープ層とを有する電極の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
蓄電装置としての二次電池に使用される電極は、集電体と、集電体の両面又は片面に存在する活物質層と、活物質層の表面に存在するドープ層とを有する。このような電極の製造方法は、集電体、及び集電体の両面又は片面に存在する活物質層を有する電極材料を製造する工程と、電極材料の活物質層の表面にリチウム箔を貼り付けてドープ層を形成する工程とを有する。
【0003】
特許文献1には、ドープ層を形成する方法が開示されている。ドープ層の形成には、シート状のベースフィルムと、ベースフィルムの片面に存在するリチウム箔とを有する層状シートが用いられる。ドープ層の形成方法は、電極材料と層状シートとを、リチウム箔と活物質層とが対向するように重ねて配置する配置工程と、層状シート及び電極材料を加圧し、リチウム箔と活物質層との密着性を向上させる加圧工程と、電極材料からベースフィルムを剥離する剥離工程とを備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平10-289708号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、リチウム箔の外形が活物質層の外形より大きい場合、リチウム箔は、厚さ方向から見たとき、活物質層と重なる重なり部と、活物質層の縁部からはみ出すはみ出し部とを有する。はみ出し部は、剥離工程においてベースフィルムとともに電極材料から除去される。このとき、はみ出し部は、活物質層の縁部に沿って重なり部から分断されないまま電極材料から除去されることがある。例えば、リチウム箔の重なり部の一部がはみ出し部とともに除去されると、活物質層の表面の一部にドープ層が形成されない部分が生じることになり好ましくない。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、活物質層の縁部に沿ってリチウム箔のはみ出し部を除去できる電極の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記問題点を解決するための電極の製造方法は、集電体、及び前記集電体の片面又は両面に存在する活物質層を有する電極材料と、ベースフィルム、及び前記ベースフィルムの片面に存在するとともに前記活物質層よりも外形の大きいリチウム箔を有する層状シートとを、前記活物質層と前記リチウム箔とが対向し、かつ前記リチウム箔の外形を形成する縁部が前記活物質層の外形を形成する縁部の外側に位置するように重ねて配置する配置工程と、弾性変形可能であり、前記活物質層よりも外形の大きい一対の加圧部材によって、前記層状シート及び前記電極材料を加圧する加圧工程と、前記電極材料から前記ベースフィルムを剥離する剥離工程と、を備え、前記加圧工程において、前記一対の加圧部材の外形を形成する縁部は、前記リチウム箔の縁部よりも内側に位置する前記活物質層の縁部よりも外側に位置し、前記層状シート及び前記電極材料を加圧した状態で、前記電極材料及び前記層状シートが重ねられた方向に前記一対の加圧部材を振動させて、前記リチウム箔における前記活物質層と対向する側の面に前記活物質層の縁部に沿った切欠を形成することを要旨とする。
【0008】
これによれば、配置工程により、リチウム箔には、活物質層と重なる重なり部と、活物質層の縁部からはみ出したはみ出し部とが形成される。また、加圧工程において、一対の加圧部材には、活物質層の縁部からはみ出した余剰部が形成される。そして、層状シート及び電極材料を加圧した状態で一対の加圧部材を振動させると、加圧部材の余剰部とともにリチウム箔が撓むことで、リチウム箔における活物質層と対向する側の面には、活物質層の縁部に沿って応力が集中する。これにより、リチウム箔における活物質層と対向する側の面には、活物質層の縁部に沿った切欠が形成される。その後、電極材料からベースフィルムを剥離することで、リチウム箔のはみ出し部は、切欠に沿って重なり部から分断され、ベースフィルムとともに電極材料から除去される。よって、活物質層の縁部に沿ってリチウム箔のはみ出し部を除去できる。
【0009】
また、上記電極の製造方法について、前記活物質層及び前記リチウム箔は矩形状であり、前記加圧部材はそれぞれ、前記層状シート又は前記電極材料と対向し、かつ前記活物質層よりも外形の大きい矩形状の加圧面を備え、前記配置工程において、前記リチウム箔の各縁部は、前記活物質層の各縁部よりも外側に位置し、前記加圧工程において、前記加圧部材の加圧面の外形を形成する各縁部は、前記活物質層の各縁部よりも外側に位置するのが好ましい。
【0010】
これによれば、一度の加圧工程でリチウム箔に活物質層の各縁部に沿う4本の切欠を形成できる。
また、上記電極の製造方法について、前記配置工程において、前記電極材料は、2枚の前記層状シートによって挟まれ、前記加圧工程において、一方の前記層状シートのリチウム箔における前記活物質層と対向する側の面と他方の前記層状シートのリチウム箔における前記活物質層と対向する側の面との間に、前記活物質層の縁部に沿うように、円柱状の棒材を配置するのが好ましい。
【0011】
これによれば、層状シート及び電極材料を加圧した状態で一対の加圧部材を振動させると、加圧部材の余剰部とともにリチウム箔が撓むことで、リチウム箔における活物質層と対向する側の面には、電極材料及び層状シートが重ねられた方向における棒材の端部に沿って応力が集中する。これにより、リチウム箔における活物質層と対向する側の面には、活物質層の縁部に沿った切欠が形成される。この場合、棒材の端部に応力が集中するため、活物質層の角部のみに応力が集中することによる活物質層の脱落を抑制できる。
【0012】
また、上記電極の製造方法について、前記加圧部材はそれぞれ、弾性変形可能であり、回転する筒状の本体部と、前記本体部よりも硬質であり、前記本体部の外周面に前記本体部の周方向に間隔を空けて存在する複数の硬質部とを有するロール状であり、前記本体部の軸方向において、前記複数の硬質部の少なくとも一部は、前記活物質層の縁部に沿うように配置されるのが好ましい。
【0013】
これによれば、リチウム箔において加圧部材の硬質部と対向する部分に形成される切欠の深さは、加圧部材の本体部と対向する部分に形成される切欠の深さと比較して深くなる。このため、切欠の深さが深いところと浅いところとは、活物質層の縁部に沿って交互に存在する。この場合、深さが同じ切欠が活物質層の縁部に沿って形成される場合と比較して、リチウム箔のはみ出し部を切欠に沿って重なり部から分断することがより容易になる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、活物質層の縁部に沿ってリチウム箔のはみ出し部を除去できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】負極電極の斜視図。
図2】層状シートの斜視図。
図3】(a)は第1の実施形態の配置工程を示す斜視図、(b)は第1の実施形態の配置工程を示す側面図。
図4】(a)は第1の実施形態の加圧工程を示す平面図、(b)は第1の実施形態の加圧工程を示す底面図。
図5】(a),(c)は第1の実施形態の加圧工程を示す断面図、(b)は(a)の部分拡大図、(d)は(c)の部分拡大図。
図6】第1の実施形態の剥離工程を示す斜視図。
図7】第2の実施形態の加圧工程を示す断面図。
図8】(a)は第2の実施形態の加圧工程を示す断面図、(b)は(a)の部分拡大図。
図9】(a)は第2の実施形態の加圧工程を示す断面図、(b)は(a)の部分拡大図。
図10】第2の実施形態の加圧ロールを示す斜視図。
図11】加圧工程の別例を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(第1の実施形態)
以下、電極の製造方法を具体化した第1の実施形態を図1図6にしたがって説明する。
【0017】
本実施形態の製造方法によって製造される電極は、蓄電装置としての二次電池に使用される。二次電池は、図示しないが、外観が角型をなす角型電池であり、リチウムイオン二次電池である。この二次電池は、ケース内に電極組立体を備える。電極組立体は、複数の正極電極と複数の負極電極とを備える。電極組立体は、正極電極と負極電極とが両者の間をセパレータで絶縁した状態で交互に積層されて構成されている。以下、負極電極を例に説明する。
【0018】
図1に示すように、電極としての負極電極10は、矩形シート状の集電体11と、集電体11の両面に存在する矩形状の活物質層12と、活物質層12の表面全体を覆うドープ層15とを備える。集電体11は、例えば銅箔である。集電体11の一方の面に存在する活物質層12を第1活物質層12aとし、集電体11の他方の面に存在する活物質層12を第2活物質層12bとする。第1活物質層12aにおいて、集電体11の一方の面と対向する面を第1主面A1とし、第1活物質層12aの厚さ方向で第1主面A1と反対側の面を第2主面A2とし、第1活物質層12aの厚みを構成する面を側面Bとする。第1活物質層12aは、第2主面A2と側面Bとによって形成される角部12cを備える。同様に、第2活物質層12bにおいて、集電体11の他方の面と対向する面を第1主面A1とし、第2活物質層12bの厚さ方向で第1主面A1と反対側の面を第2主面A2とし、第2活物質層12bの厚みを構成する面を側面Bとする。第2活物質層12bは、第2主面A2と側面Bとによって形成される角部12cを備える。負極電極10は、その一辺に沿って活物質層12が存在せず、集電体11が露出した未塗工部13を有する。そして、負極電極10において、未塗工部13の一部には、負極タブ14が突出する状態に存在する。
【0019】
負極電極10の製造方法は、長尺帯状の集電体11の両面に活物質層12(第1及び第2活物質層12a,12b)を形成する工程を備える。活物質層12は、長尺帯状の集電体11に対し、活物質、導電剤、溶媒、及びバインダを混合したペースト状の活物質合剤を塗布して乾燥させた後、プレスすることで所定の活物質密度まで上げることで形成される。また、負極電極10の製造方法は、第1及び第2活物質層12a,12bが形成された集電体11を負極電極10の形状に切断し、図3(a)に示す電極材料16を形成する工程を備える。電極材料16において、第1及び第2活物質層12a,12bの外形を形成する縁部のうち、長手方向に沿う縁部を長縁部ELとし、短手方向に沿う縁部を短縁部ESとする。また、負極電極10の製造方法は、電極材料16の第1及び第2活物質層12a,12bの第2主面A2にリチウム箔を貼り付けてドープ層15を形成する工程を備える。ドープ層15を形成する工程には、層状シートが用いられる。
【0020】
図2に示すように、層状シート20は、矩形シート状のベースフィルム21と、ベースフィルム21の片面に存在する矩形シート状のリチウム箔22とを備える。本実施形態のリチウム箔22の厚みは5μmであり、第1及び第2活物質層12a,12bの第2主面A2に貼り付けられるリチウム箔22の厚みとして要求される1~20μmを満たす。リチウム箔22の長手方向及び短手方向は、ベースフィルム21の長手方向及び短手方向と一致する。リチウム箔22の長手方向の寸法は、電極材料16の活物質層12の長手方向の寸法よりも大きく、ベースフィルム21の長手方向の寸法よりも小さい。また、リチウム箔22の短手方向の寸法は、電極材料16の活物質層12の短手方向の寸法よりも大きく、ベースフィルム21の短手方向の寸法よりも小さい。つまり、リチウム箔22の外形は、電極材料16の活物質層12の外形よりも大きく、ベースフィルム21の外形よりも小さい。リチウム箔22の外形を形成する縁部のうち、長手方向に沿う一対の縁部を長縁部L1とし、短手方向に沿う一対の縁部を短縁部S1とする。
【0021】
ここで、層状シート20の製造方法について説明する。
まず、後にベースフィルム21となり得る矩形シート状の第1フィルムと、後にベースフィルム21となり得る矩形シート状の第2フィルムとによって、後にリチウム箔22となり得る矩形シート状のリチウム箔前駆体を挟む。リチウム箔前駆体の厚みは、例えば20μmである。次に、一対の加圧ロール間を、第1フィルム、第2フィルム、及びリチウム箔前駆体を通過させ、リチウム箔前駆体を圧延する。これにより、リチウム箔前駆体は、5μmまで圧延されてリチウム箔22となる。なお、本実施形態のリチウム箔22は、リチウム箔前駆体が長手方向に沿う方向に圧延されることで形成される。そして、リチウム箔及び第1フィルムから、第2フィルムを剥離する。これにより、第1フィルムがベースフィルム21になり、ベースフィルム21と、ベースフィルム21の片面に存在するリチウム箔22とを有する層状シート20が完成する。層状シート20のリチウム箔22において、ベースフィルム21と対向する面を第1面22aとし、リチウム箔22の厚さ方向において第1面22aと反対側の面を第2面22bとする。
【0022】
次に、層状シート20を用いて、電極材料16の活物質層12の第2主面A2にドープ層15を形成する工程について説明する。ドープ層15を形成する工程は、配置工程、加圧工程、及び剥離工程を含む。電極材料16の第1活物質層12aの第2主面A2にドープ層15を形成するのに用いられる層状シート20を第1層状シート20aとし、第2活物質層12bの第2主面A2にドープ層15を形成するのに用いられる層状シート20を第2層状シート20bとする。
【0023】
図3(a)及び図3(b)に示すように、電極材料配置工程は、第1層状シート20aと第2層状シート20bとの間に電極材料16を配置する工程である。なお、図3(a)では、第1層状シート20aのみを図示し、第2層状シート20bの図示を省略している。
【0024】
第1層状シート20aと電極材料16とは、リチウム箔22の第2面22bと第1活物質層12aの第2主面A2とが対向するように重ねて配置される。電極材料16の長手方向及び短手方向は、第1層状シート20aの長手方向及び短手方向と一致する。リチウム箔22の長縁部L1及び短縁部S1は、第1活物質層12aの長縁部EL及び短縁部ESよりも1~2mm程度外側に位置する。換言すると、第1活物質層12aの長縁部EL及び短縁部ESは、リチウム箔22の長縁部L1及び短縁部S1よりも内側に位置する。よって、リチウム箔22は、厚さ方向から見たとき、電極材料16の第1活物質層12aと重なる重なり部23と、電極材料16の第1活物質層12aの長縁部EL及び短縁部ESからはみ出したはみ出し部24とを備える。重なり部23の第2面22bは、第1活物質層12aの第2主面A2と対向し、はみ出し部24の第2面22bは、第2層状シート20bのリチウム箔22の第2面22bと対向する。
【0025】
同様に、第2層状シート20bと電極材料16とは、リチウム箔22の第2面22bと第2活物質層12bの第2主面A2とが対向するように重ねて配置される。電極材料16の長手方向及び短手方向は、第2層状シート20bの長手方向及び短手方向と一致する。リチウム箔22の長縁部L1及び短縁部S1は、第2活物質層12bの長縁部EL及び短縁部ESよりも1~2mm程度外側に位置する。換言すると、第2活物質層12bの長縁部EL及び短縁部ESは、リチウム箔22の長縁部L1及び短縁部S1よりも内側に位置する。よって、リチウム箔22は、厚さ方向から見たとき、電極材料16の第2活物質層12bと重なる重なり部23と、電極材料16の第2活物質層12bの長縁部EL及び短縁部ESからはみ出したはみ出し部24とを備える。重なり部23の第2面22bは、第2活物質層12bの第2主面A2と対向し、はみ出し部24の第2面22bは、第1層状シート20aのリチウム箔22の第2面22bと対向する。
【0026】
以下、第1層状シート20a、第1層状シート20aに重ねられた電極材料16、及び電極材料16に重ねられた第2層状シート20bをまとめて電極複合体Wとする。また、第1層状シート20a、電極材料16、及び第2層状シート20bが重ねられた方向を上下方向とする。電極複合体Wにおいて、第1層状シート20aが上側であり、第2層状シート20bが下側である。
【0027】
図5(a)及び図5(c)に示すように、加圧工程は、電極複合体Wを加圧する工程である。加圧工程には、電極複合体Wを加圧するプレス装置50が用いられる。
プレス装置50は、真空プレス装置である。プレス装置50は、上下方向に対をなす直方体状の第1加圧部材51及び第2加圧部材52を備える。第1加圧部材51及び第2加圧部材52はそれぞれ、デュロメータ硬さ60~90の硬質ゴム製であり、弾性変形可能である。デュロメータ硬さは、新JIS規格(JIS K6253-3:2012 加硫ゴム及び熱可塑性ゴム-硬さの求め方-第3部:デュロメータ硬さ)に基づく「デュロメータ」を計測器に用いた方法で計測される。
【0028】
図4(a)、図5(a)、及び図5(c)に示すように、第1加圧部材51は、電極複合体Wの上側に配置される。第1加圧部材51は、電極複合体Wを加圧する加圧面としての下面51aを備える。下面51aの長手方向及び短手方向の寸法は、第1活物質層12aの長手方向及び短手方向の寸法よりも大きい。つまり、第1加圧部材51の下面51aの外形は、第1活物質層12aの外形よりも大きい。下面51aの外形を形成する縁部のうち、長手方向に沿う一対の縁部を長縁部L2とし、短手方向に沿う一対の縁部を短縁部S2とする。
【0029】
図4(b)、図5(a)、及び図5(c)に示すように、第2加圧部材52は、電極複合体Wの下側に配置される。第2加圧部材52は、電極複合体Wを加圧する加圧面としての上面52aを備える。上面52aの長手方向及び短手方向の寸法は、第2活物質層12bの長手方向の寸法よりも大きい。つまり、第2加圧部材52の上面52aの外形は、第2活物質層12bの外形よりも大きい。上面52aの外形を形成する縁部のうち、長手方向に沿う縁部を長縁部L2とし、短手方向に沿う縁部を短縁部S2とする。
【0030】
プレス装置50は、第1加圧部材51及び第2加圧部材52に接続された超音波装置53を備える。第1加圧部材51及び第2加圧部材52は、電極複合体Wを加圧した状態で、超音波装置53により上下方向に振動する。すなわち、第1加圧部材51及び第2加圧部材52は、電極複合体Wを加圧した状態で、第1層状シート20a、電極材料16、及び第2層状シート20bが重ねられた方向に振動する。
【0031】
第1加圧部材51及び第2加圧部材52が電極複合体Wを加圧した状態で上下方向に振動することにより、第1加圧部材51及び第2加圧部材52が電極複合体Wに加える圧力は、1k~5000k[N]の範囲で変化する。
【0032】
第1加圧部材51が上下方向の上側から下側に向けて移動するとき、第2加圧部材52は上下方向の下側から上側に向けて移動する。すなわち、第1加圧部材51と第2加圧部材52とは互いに近付くように移動する。このとき、第1加圧部材51及び第2加圧部材52が電極複合体Wに加える圧力は大きくなる。一方、第1加圧部材51が上下方向の下側から上側に向けて移動するとき、第2加圧部材52は上下方向の上側から下側に向けて移動する。すなわち、第1加圧部材51と第2加圧部材52とは互いに遠ざかるように移動する。このとき、第1加圧部材51及び第2加圧部材52が電極複合体Wに加える圧力は小さくなる。
【0033】
なお、第1加圧部材51及び第2加圧部材52が電極複合体Wに加える最大圧力が5000kNを超えると、活物質層12の形成時の圧力よりも高くなることで活物質層12における活物質密度が高くなり、負極電極10の寿命が低下する虞がある。また、集電体11が引き延ばされ、負極電極10が破れる虞がある。一方、第1加圧部材51及び第2加圧部材52に加える最小圧力が1kN未満になると、電極複合体Wの加圧が十分でなくなることで、電極材料16の活物質層12に対して層状シート20のリチウム箔22が位置ずれする虞がある。
【0034】
加圧工程では、第1加圧部材51と第2加圧部材52との間に電極複合体Wを配置する。このとき、第1加圧部材51は、下面51aが第1層状シート20aのベースフィルム21と対向するように配置される。第2加圧部材52は、上面52aが第2層状シート20bのベースフィルム21と対向するように配置される。また、第1加圧部材51は、下面51aの長縁部L2及び短縁部S2が第1活物質層12aの長縁部EL及び短縁部ESよりも外側に位置するように配置される。第2加圧部材52は、上面52aの長縁部L2及び短縁部S2が第2活物質層12bの長縁部EL及び短縁部ESよりも外側に位置するように配置される。よって、第1加圧部材51は、電極材料16の第1活物質層12aの長縁部EL及び短縁部ESからはみ出した余剰部51bを備える。第2加圧部材52は、電極材料16の第2活物質層12bの長縁部EL及び短縁部ESからはみ出した余剰部52bを備える。
【0035】
次に、第1加圧部材51を下降させるとともに第2加圧部材52を上昇させることによって電極複合体Wを加圧する。第1層状シート20aのリチウム箔22の重なり部23の第2面22bは、電極材料16の第1活物質層12aの第2主面A2に対して押圧される。これにより、リチウム箔22の重なり部23の第2面22bと、第1活物質層12aの第2主面A2との密着性が向上する。同様に、第2層状シート20bのリチウム箔22の重なり部23の第2面22bは、電極材料16の第2活物質層12bの第2主面A2に対して押圧される。これにより、リチウム箔22の重なり部23の第2面22bと、第2活物質層12bの第2主面A2との密着性が向上する。なお、第1及び第2層状シート20a,20bのリチウム箔22のはみ出し部24は、リチウム箔22同士の間に電極材料16が存在していないため、活物質層12の第2主面A2に対して押圧されない。
【0036】
また、加圧工程では、電極複合体Wを加圧した状態で第1加圧部材51及び第2加圧部材52を振動させる。すると、第1加圧部材51の余剰部51bとともに第1層状シート20aのリチウム箔22が撓み、リチウム箔22の第2面22bには、第1活物質層12aの角部12cに沿って応力が集中する。これにより、図5(b)及び図5(d)に示すように、第1層状シート20aのリチウム箔22の第2面22bには、第1活物質層12aの長縁部EL及び短縁部ESに沿った切欠25が形成される。切欠25は、リチウム箔22の重なり部23とはみ出し部24との境界と一致する。切欠25は、図5(d)に示すように第1活物質層12aの一対の長縁部ELに沿って形成される一対の長側切欠25aと、図5(b)に示すように第1活物質層12aの一対の短縁部ESに沿って形成される一対の短側切欠25bとを有する。
【0037】
また、第2加圧部材52の余剰部52bとともに第2層状シート20bのリチウム箔22が撓み、リチウム箔22の第2面22bには、第2活物質層12bの角部12cに沿って応力が集中する。これにより、図5(b)及び図5(d)に示すように、第2層状シート20bのリチウム箔22の第2面22bには、第2活物質層12bの長縁部EL及び短縁部ESに沿った切欠25が形成される。切欠25は、リチウム箔22の重なり部23とはみ出し部24との境界と一致する。切欠25は、図5(d)に示すように第2活物質層12bの一対の長縁部ELに沿って形成される一対の長側切欠25aと、図5(b)に示すように第2活物質層12bの一対の短縁部ESに沿って形成される一対の短側切欠25bとを有する。
【0038】
剥離工程は、電極材料16から層状シート20のベースフィルム21を剥離する工程である。第1層状シート20aのベースフィルム21の長手方向の一端部を把持し、長手方向の他端部側に折り返すように移動させる。同様に、第2層状シート20bのベースフィルム21の長手方向の一端部を把持し、長手方向の他端側に折り返すように移動させる。つまり、第1層状シート20a及び第2層状シート20bのベースフィルム21は、リチウム箔前駆体が圧延された方向に沿う方向に剥離される。
【0039】
図6に示すように、第1層状シート20a及び第2層状シート20bのベースフィルム21は、電極材料16から剥離される。なお、図6では、第1層状シート20aを図示し、第2層状シート20bの図示を省略している。このとき、リチウム箔22のはみ出し部24は、切欠25に沿って重なり部23から分断され、ベースフィルム21とともに電極材料16から除去される。一方、リチウム箔22の重なり部23は、電極材料16の第1及び第2活物質層12aの第2主面A2に貼り付けられている。これにより、第1及び第2活物質層12a,12bの第2主面A2にドープ層15が形成され、負極電極10が完成する。
【0040】
次に、第1の実施形態の効果について作用とともに記載する。
(1)第1層状シート20aのリチウム箔22は、第1活物質層12aよりも外形が大きい。このため、配置工程により、リチウム箔22には、厚さ方向から見たとき第1活物質層12aと重なる重なり部23と、第1活物質層12aの長縁部EL及び短縁部ESからはみ出したはみ出し部24とが形成される。また、加圧工程において、第1加圧部材51には、第1活物質層12aの長縁部EL及び短縁部ESからはみ出した余剰部51bが形成される。そして、電極複合体Wを加圧した状態で第1加圧部材51を振動させると、第1加圧部材51の余剰部51bとともにリチウム箔22が撓み、リチウム箔22の第2面22bには、第1活物質層12aの角部12cに沿って応力が集中する。これにより、リチウム箔22の第2面22bには、第1活物質層12aの長縁部EL及び短縁部ESに沿った切欠25が形成される。その後、電極材料16からベースフィルム21を剥離することで、リチウム箔22のはみ出し部24は、切欠25に沿って重なり部23から分断され、ベースフィルム21とともに電極材料16から除去される。よって、第1活物質層12aの長縁部EL及び短縁部ESに沿ってリチウム箔22のはみ出し部24を除去できる。第2層状シート20bのリチウム箔22についても同様に、第2活物質層12bの長縁部EL及び短縁部ESに沿ってリチウム箔22のはみ出し部24を除去できる。
【0041】
(2)第1層状シート20aのリチウム箔22の長縁部L1及び短縁部S1は、第1活物質層12aの長縁部EL及び短縁部ESよりも外側に位置する。また、第1加圧部材51の下面51aの長縁部L2及び短縁部S2は、第1活物質層12aの長縁部EL及び短縁部ESよりも外側に位置する。よって、一度の加圧工程でリチウム箔22の第2面22bに4本の切欠25(一対の長側切欠25a及び一対の短側切欠25b)を形成できる。第2層状シート20bのリチウム箔22についても同様である。
【0042】
(第2の実施形態)
以下、電極の製造方法を具体化した第2の実施形態を図7図10にしたがって説明する。なお、配置工程については、第1の実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0043】
図7図8(a)、及び図9(a)に示すように、加圧工程を行うプレス装置60は、上下方向に対をなす加圧部材としての円筒状の第1加圧ロール61及び第2加圧ロール62を備える。第1加圧ロール61は、電極複合体Wの上側に配置され、第2加圧ロール62は、電極複合体Wの下側に配置される。第1加圧ロール61及び第2加圧ロール62の軸方向は、電極複合体Wの短手方向と一致する。第1加圧ロール61の軸方向の寸法は、第1活物質層12aの短手方向の寸法よりも大きく、第2加圧ロール62の軸方向の寸法は、第2活物質層12bの短手方向の寸法よりも大きい。
【0044】
第1加圧ロール61及び第2加圧ロール62は、回転軸63によって回転可能に支持され、図示しないモータによって回転する。第1加圧ロール61の回転方向は、第2加圧ロール62の回転方向と逆方向である。第1加圧ロール61及び第2加圧ロール62は、回転することで電極複合体Wを長手方向に搬送する。
【0045】
プレス装置60は、第1加圧ロール61及び第2加圧ロール62に接続された超音波装置64を備える。第1加圧ロール61及び第2加圧ロール62は、電極複合体Wを加圧した状態で、超音波装置64により上下方向に振動する。すなわち、第1加圧ロール61及び第2加圧ロール62は、電極複合体Wを加圧した状態で、第1層状シート20a、電極材料16、及び第2層状シート20bが重ねられた方向に振動する。
【0046】
第1加圧ロール61及び第2加圧ロール62が電極複合体Wを加圧した状態で上下方向に振動することにより、第1加圧ロール61及び第2加圧ロール62が電極複合体Wに加える圧力は、100~16000[N/cm]の範囲で変化する。
【0047】
第1加圧ロール61が上下方向の上側から下側に向けて移動するとき、第2加圧ロール62は上下方向の下側から上側に向けて移動する。すなわち、第1加圧ロール61と第2加圧ロール62とは互いに近付くように移動する。このとき、第1加圧ロール61及び第2加圧ロール62が電極複合体Wに加える圧力は大きくなる。一方、第1加圧ロール61が上下方向の下側から上側に向けて移動するとき、第2加圧ロール62は上下方向の上側から下側に向けて移動する。すなわち、第1加圧ロール61と第2加圧ロール62とは互いに遠ざかるように移動する。このとき、第1加圧ロール61及び第2加圧ロール62が電極複合体Wに加える圧力は小さくなる。
【0048】
なお、第1加圧ロール61及び第2加圧ロール62が電極複合体Wに加える最大圧力が16000[N/cm]を超えると、活物質層12の形成時の圧力よりも高くなることで活物質層12における活物質密度が高くなり、負極電極10の寿命が低下する虞がある。また、集電体11が引き延ばされ、負極電極10が破れる虞がある。一方、第1加圧ロール61及び第2加圧ロール62に加える最小圧力が100[N/cm]未満になると、電極複合体Wの加圧が十分でなくなることで、電極材料16の活物質層12に対して層状シート20のリチウム箔22が位置ずれする虞がある。
【0049】
図10に示すように、第1加圧ロール61及び第2加圧ロール62はそれぞれ、筒状の本体部65と、本体部65の外周面に存在する複数の硬質部66とを備える。本体部65は、デュロメータ硬さ20~50の軟質ゴム製である。一方、硬質部66は、デュロメータ硬さ60~90の硬質ゴム製である。よって、硬質部66は、本体部65よりも硬質である。複数の硬質部66は、本体部65の周方向に間隔を空けて、本体部65の周方向全体に亘って直線状に配列されている。すなわち、第1加圧ロール61及び第2加圧ロール62の外周面には、本体部65の外周面と硬質部66とが周方向で交互に存在する。各硬質部66は、本体部65の外周面から径方向内側に向けて形成された孔部65aに円柱状の硬質ゴムを圧入することで形成される。第1及び第2加圧ロール61,62の周方向に沿った硬質部66の断面形状は円形状である。
【0050】
また、本実施形態の硬質部66は、第1及び第2加圧ロール61,62の軸方向、すなわち電極複合体Wの短手方向に5つ配置されている。第1及び第2加圧ロール61,62の軸方向に並ぶ5つの硬質部66のうち、最外に位置する硬質部66の中心同士の距離は、活物質層12の短手方向の寸法と同じである。
【0051】
加圧工程では、回転する第1加圧ロール61と第2加圧ロール62との間に電極複合体Wを通過させることで、電極複合体Wを搬送しながら加圧する。このとき、第1加圧ロール61及び第2加圧ロール62は、軸方向の最外に位置する硬質部66が活物質層12の長縁部ELに沿うように配置される。第1加圧ロール61の外周面は、第1層状シート20aのベースフィルム21と対向し、第2加圧ロール62の外周面は、第2層状シート20bのベースフィルム21と対向する。また、第1加圧ロール61及び第2加圧ロール62を上下方向から見たとき、第1加圧ロール61及び第2加圧ロール62は、軸方向に対をなす縁部が活物質層12の長縁部ELよりも外側に位置する。よって、第1加圧ロール61の軸方向の両端部は、電極材料16の第1活物質層12aの長縁部ELからはみ出した余剰部61aであり、第2加圧ロール62の両端部は、電極材料16の第2活物質層12bの長縁部ELからはみ出した余剰部62aである。
【0052】
第1層状シート20aのリチウム箔22の重なり部23の第2面22bは、電極材料16の第1活物質層12aの第2主面A2に対して押圧される。これにより、リチウム箔22の重なり部23の第2面22bと、第1活物質層12aの第2主面A2との密着性が向上する。同様に、第2層状シート20bのリチウム箔22の重なり部23の第2面22bは、電極材料16の第2活物質層12bの第2主面A2に対して押圧される。これにより、リチウム箔22の重なり部23の第2面22bと、第2活物質層12bの第2主面A2との密着性が向上する。なお、第1及び第2層状シート20a,20bのリチウム箔22のはみ出し部24は、リチウム箔22同士の間に電極材料16が存在していないため、活物質層12の第2主面A2に対して押圧されない。
【0053】
また、加圧工程では、電極複合体Wを加圧した状態で第1加圧ロール61及び第2加圧ロール62を振動させる。すると、第1加圧ロール61の余剰部61aとともに第1層状シート20aのリチウム箔22が撓み、リチウム箔22の第2面22bには、第1活物質層12aの長縁部ELに沿う角部12cに沿って応力が集中する。これにより、図8(b)及び図9(b)に示すように、第1層状シート20aのリチウム箔22の第2面22bには、第1活物質層12aの長縁部ELに沿った切欠としての長側切欠26が形成される。長側切欠26は、重なり部23とはみ出し部24との境界のうち、リチウム箔22の長縁部L1に沿う境界と一致する。
【0054】
また、第2加圧ロール62の余剰部62aとともに第2層状シート20bのリチウム箔22が撓み、リチウム箔22の第2面22bには、第2活物質層12bの長縁部ELに沿う角部12cに沿って応力が集中する。これにより、図8(b)及び図9(b)に示すように、第2層状シート20bのリチウム箔22の第2面22bには、第2活物質層12bの長縁部ELに沿った長側切欠26が形成される。長側切欠26は、重なり部23とはみ出し部24との境界のうち、リチウム箔22の長縁部L1に沿う境界と一致する。
【0055】
リチウム箔22の第2面22bに形成される長側切欠26は、図9(b)に示すようにリチウム箔22の第2面22bの表面から第1面22aに向かう切り欠き深さが深い深部26aと、図8(b)に示すように深部26aよりも切り欠き深さが浅い浅部26bとを有する。リチウム箔22の第2面22bにおいて、第1加圧ロール61の硬質部66が対向した部分に深部26aが形成され、第1加圧ロール61の本体部65が対向した部分に浅部26bが形成される。深部26aと浅部26bは、第1及び第2活物質層12a,12bの長縁部ELに沿って交互に存在する。
【0056】
剥離工程では、電極材料16から第1層状シート20a及び第2層状シート20bのベースフィルム21を剥離する。このとき、リチウム箔22のはみ出し部24は、長側切欠26に沿って重なり部23から分断され、ベースフィルム21とともに電極材料16から除去される。
【0057】
第2の実施形態では、第1の実施形態の効果(1)と同様の効果に加えて、以下の効果を得ることができる。
(3)第1加圧ロール61及び第2加圧ロール62は、本体部65と、本体部65の外周面に本体部65の周方向に間隔を空けて存在する複数の硬質部66とを有する。第1及び第2加圧ロール61,62の軸方向の最外に位置する硬質部66は、第1活物質層12aの長縁部ELに沿って配置される。このため、第1層状シート20aのリチウム箔22の第2面22bには、長側切欠26の深部26aと浅部26bとが第1活物質層12aの長縁部ELに沿って交互に形成される。この場合、深さが同じ切欠が第1活物質層12aの長縁部ELに沿って形成される場合と比較して、リチウム箔22のはみ出し部24を長側切欠26に沿って重なり部23から分断することがより容易になる。第2層状シート20bについても同様である。
【0058】
なお、上記実施形態は、以下のように変更してもよい。
○ 活物質層12及びドープ層15は、集電体11の片面に設けられていてもよい。
○ 未塗工部13は、負極タブ14のみから構成されていてもよい。
【0059】
○ 集電体11の両面又は片面に存在する活物質層12の第2主面A2にドープ層15を形成した後で、負極電極10の形状に切断してもよい。この場合、長尺帯状の層状シート20を用いる。
【0060】
○ 上記実施形態の層状シート20は、1枚のベースフィルム21と1枚のリチウム箔22とから構成されていたが、1枚のベースフィルム21と複数枚のリチウム箔22とから構成されていてもよい。この場合、ベースフィルム21の片面に全てのリチウム箔22が存在する。
【0061】
○ 上記実施形態では、1枚の層状シート20を用いて1枚の負極電極10の片面にドープ層15を形成したが、1枚の層状シート20を用いて2枚以上の負極電極10の片面にドープ層15を形成してもよい。この場合、リチウム箔22の長手方向の寸法は、電極材料16の枚数分の長手方向の寸法よりも大きいものとする。
【0062】
○ リチウム箔前駆体は、短手方向に沿う方向に圧延されてもよい。
○ 第2の実施形態において、電極複合体Wが加圧される方向は、電極複合体Wの短手方向に沿う方向でもよい。
【0063】
○ ベースフィルム21が電極材料16から剥離される方向は、電極材料16の短手方向に沿う方向でもよい。切欠25は、ベースフィルム21が電極材料16から剥離される方向に沿って形成されるのが好ましい。
【0064】
○ 第1活物質層12aの第2主面A2にドープ層15を形成した後で、第2活物質層12bの第2主面A2にドープ層15を形成してもよい。つまり、第1層状シート20a及び電極材料16を加圧し、電極材料16から第1層状シート20aのベースフィルム21を剥離した後で、第2層状シート20b及び電極材料16を加圧し、電極材料16から第2層状シート20bのベースフィルム21を剥離してもよい。
【0065】
○ 第1及び第2の実施形態において、プレス装置50,60は、複数の電極複合体Wをまとめて加圧してもよい。
○ 第1の実施形態のプレス装置50は、真空プレス装置に限定されない。例えば、プレス装置50は、水圧プレス装置や油圧プレス装置であってもよい。
【0066】
○ 上記の第1の実施形態では、プレス装置50は、一度の加圧工程で1枚のリチウム箔22に4本の切欠25(一対の長側切欠25a及び一対の短側切欠25b)を形成したが、一度の加圧工程で1本~3本の切欠25を形成してもよい。
【0067】
例として、長手方向の寸法が活物質層12の長手方向の寸法と同じであり、短手方向の寸法が活物質層12の短手方向の寸法より長いリチウム箔22に、2本の切欠25(一対の長側切欠25a)を形成する場合の配置工程及び加圧工程について説明する。
【0068】
配置工程では、リチウム箔22の一対の長縁部L1が活物質層12の一対の長縁部ELよりも外側に位置し、かつリチウム箔22の一対の短縁部S1が活物質層12の一対の短縁部ESと一致するように、層状シート20と電極材料16とを重ねて配置する。換言すると、活物質層12の一対の長縁部ELがリチウム箔22の長縁部L1よりも内側に位置し、かつリチウム箔22の一対の短縁部S1が活物質層12の一対の短縁部ESと一致するように、層状シート20と電極材料16とを重ねて配置する。
【0069】
リチウム箔22の加圧工程では、第1加圧部材51の下面51aの長縁部L2及び第2加圧部材52の上面52aの長縁部L2が、活物質層12の一対の長縁部ELよりも外側に位置するように、第1及び第2加圧部材51,52を配置する。そして、第1及び第2加圧部材51,52を振動させることで、リチウム箔22の第2面22bには、活物質層12の一対の長縁部ELに沿った一対の長側切欠25aが形成される。
【0070】
○ 上記の第2の実施形態では、プレス装置60は、一度の加圧工程で一対の長側切欠26を形成したが、一方の長側切欠26を形成してもよい。
○ 第1の実施形態のプレス装置50と第2の実施形態のプレス装置60を組み合わせてもよい。例えば、第2の実施形態のプレス装置60によって、リチウム箔22に一対の長側切欠25aを形成した後で、第1の実施形態のプレス装置50によって、リチウム箔22に一対の短側切欠25bを形成してもよい。
【0071】
○ 第1の実施形態において、第1加圧部材51及び第2加圧部材52が電極複合体Wに加える最大圧力は、二次電池のエネルギー密度及び寿命の観点から設定された活物質層12における活物質密度が維持される範囲で適宜変更してよい。
【0072】
○ 第1の実施形態において、第1加圧部材51及び第2加圧部材52が電極複合体Wに加える最小圧力は、電極材料16の活物質層12に対して層状シート20のリチウム箔22が位置ずれせず、かつリチウム箔22の重なり部23の第2面22bと活物質層12の第2主面A2との密着性を向上させられる範囲で適宜変更してよい。
【0073】
○ 第2の実施形態において、第1加圧ロール61及び第2加圧ロール62が電極複合体Wに加える最大圧力は、二次電池のエネルギー密度及び寿命の観点から設定された活物質層12における活物質密度が維持される範囲で適宜変更してよい。
【0074】
○ 第2の実施形態において、第1加圧ロール61及び第2加圧ロール62が電極複合体Wに加える最小圧力は、電極材料16の活物質層12に対して層状シート20のリチウム箔22が位置ずれせず、かつリチウム箔22の重なり部23の第2面22bと活物質層12の第2主面A2との密着性を向上させられる範囲で適宜変更してよい。
【0075】
○ 第1の実施形態において、第1加圧部材51及び第2加圧部材52を上下方向に振動させる装置は、超音波装置53に限定されない。同様に、第2の実施形態において、第1加圧ロール61及び第2加圧ロール62を上下方向に振動させる装置は、超音波装置64に限定されない。
【0076】
○ 第1加圧ロール61の硬質部66を省略してもよい。この場合、長側切欠26の深さは、活物質層12の長縁部ELに沿って同じ深さになる。
○ 硬質部66の材料は、硬質ゴムに限定されない。硬質部66の材料は、弾性変形しない材料(例えば竹)であってもよい。
【0077】
○ 第1及び第2加圧ロール61,62の軸方向、すなわち活物質層12の短手方向に配置される硬質部66の個数は、適宜変更してよい。
○ 第1及び第2加圧ロール61,62における硬質部66の配置態様は、適宜変更してよい。例えば、軸方向の最外に位置する硬質部66以外の硬質部66は、軸方向に蛇行しながら周方向全体に亘って配列されてもよい。ただし、軸方向の最外に位置する硬質部66は、活物質層12の長縁部ELに沿うように直線状に配列されるものとする。
【0078】
○ 第1の実施形態において、加圧工程は、例えば図11に示すように行ってもよい。
第1層状シート20aのリチウム箔22の第2面22bと第2層状シート20bのリチウム箔22の第2面22bとの間には、円柱状の棒材30が配置されている。棒材30の直径は、電極材料16の厚みとほぼ同じである。棒材30は、電極材料16の第1及び第2活物質層12a,12bの短縁部ESに沿って配置される。
【0079】
電極複合体Wを加圧した状態で第1加圧部材51及び第2加圧部材52を振動させると、第1及び第2層状シート20a,20bのリチウム箔22の第2面22bには、第1及び第2活物質層12a,12bの長縁部ELに沿う長側切欠が形成される。長側切欠は、重なり部23とはみ出し部24との境界のうち、リチウム箔22の長縁部L1に沿う境界と一致する。
【0080】
また、第1及び第2加圧部材51,52の余剰部51b,52bとともに第1及び第2層状シート20a,20bのリチウム箔22が撓むことで、リチウム箔22の第2面22bには、棒材30の端部30aに沿って応力が集中する。これにより、リチウム箔22の第2面22bには、第1及び第2活物質層12a,12bの短縁部ESに沿った短側切欠25bが形成される。短側切欠25bは、重なり部23とはみ出し部24との境界のうち、リチウム箔22の短縁部S1に沿う境界よりも僅かに外側に位置する。
【0081】
この場合、棒材30の端部30aに応力が集中するため、第1及び第2活物質層12a,12bの短縁部ESに沿う角部12cのみに応力が集中することによる第1及び第2活物質層12a,12bの脱落を抑制できる。なお、棒材30は、第1及び第2活物質層12a,12bの長縁部ELに沿って配置されてもよい。
【0082】
○ 二次電池は、リチウムイオン二次電池以外の他の二次電池であってもよい。
○ 層状シート20は、二次電池以外の蓄電装置(例えばキャパシタ)が備える電極の製造に使用されてもよい。
【符号の説明】
【0083】
10…電極としての負極電極、11…集電体、12…活物質層、EL…縁部としての長縁部、ES…縁部としての短縁部、16…電極材料、20…層状シート、21…ベースフィルム、22…リチウム箔、22b…面としての第2面、L1…縁部としての長縁部、S1…縁部としての短縁部、25…切欠、26…切欠としての長側切欠、30…棒材、51…加圧部材としての第1加圧部材、51a…加圧面としての下面、52…加圧部材としての第2加圧部材、52a…加圧面としての上面、L2…縁部としての長縁部、S2…縁部としての短縁部、61…加圧部材としての第1加圧ロール、62…加圧部材としての第2加圧ロール、65…本体部、66…硬質部。
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