IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ヤマハ株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-増幅装置 図1
  • 特許-増幅装置 図2
  • 特許-増幅装置 図3
  • 特許-増幅装置 図4
  • 特許-増幅装置 図5
  • 特許-増幅装置 図6
  • 特許-増幅装置 図7
  • 特許-増幅装置 図8
  • 特許-増幅装置 図9
  • 特許-増幅装置 図10
  • 特許-増幅装置 図11
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-21
(45)【発行日】2022-03-02
(54)【発明の名称】増幅装置
(51)【国際特許分類】
   H03F 3/68 20060101AFI20220222BHJP
【FI】
H03F3/68 220
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2017240633
(22)【出願日】2017-12-15
(65)【公開番号】P2019110384
(43)【公開日】2019-07-04
【審査請求日】2020-10-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000004075
【氏名又は名称】ヤマハ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100125689
【弁理士】
【氏名又は名称】大林 章
(74)【代理人】
【識別番号】100128598
【弁理士】
【氏名又は名称】高田 聖一
(74)【代理人】
【識別番号】100121108
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 太朗
(72)【発明者】
【氏名】藤田 心一
【審査官】竹内 亨
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-119247(JP,A)
【文献】特開2008-112967(JP,A)
【文献】特開2002-016444(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03F 1/00-3/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
相互に対向する第1基板および第2基板を具備し、
前記第1基板における前記第2基板とは反対側の第1実装面には、
第1接地線と、
第1音響信号が入力される外部接続用の第1入力端子と、
前記第1音響信号を伝送する第1信号線と、
前記第1音響信号を増幅する第1増幅器と
前記第1増幅器による増幅後の信号が出力される外部接続用の第1出力端子とが設置され、
前記第2基板における前記第1基板とは反対側の第2実装面には、
第2接地線と、
第2音響信号が入力される外部接続用の第2入力端子と、
前記第2音響信号を伝送する第2信号線と、
前記第2音響信号を増幅する第2増幅器と
前記第2増幅器による増幅後の信号が出力される外部接続用の第2出力端子とが設置され、
前記第1接地線と前記第2接地線とは、相互に対応する位置および形状に設置されて平面視で重なり、
前記第1信号線と前記第2信号線とは、相互に対応する位置および形状に設置されて平面視で重なり、
前記第1入力端子と前記第2入力端子とは平面視で重なり、
前記第1出力端子と前記第2出力端子とは平面視で重な
増幅装置。
【請求項2】
前記第1増幅器と前記第2増幅器とは、平面視で重なる
請求項1の増幅装置。
【請求項3】
前記第1実装面に設置された要素と、前記第2実装面に設置された要素とは、相互に線対称である
請求項1または請求項2の増幅装置。
【請求項4】
前記第1基板と前記第2基板との間に設置された導電性の遮蔽部
を具備する請求項1から請求項の何れかの増幅装置。
【請求項5】
相互に対向する第1基板および第2基板と、
前記第1基板と前記第2基板との間に設置された導電性の遮蔽部とを具備し、
前記第1基板における前記第2基板とは反対側の第1実装面には、
第1接地線と、
第1音響信号を伝送する第1信号線と、
前記第1音響信号を増幅する第1増幅器とが設置され、
前記第2基板における前記第1基板とは反対側の第2実装面には、
第2接地線と、
第2音響信号を伝送する第2信号線と、
前記第2音響信号を増幅する第2増幅器とが設置され、
前記第1接地線と前記第2接地線とは、相互に対応する位置および形状に設置されて平面視で重なり、
前記第1信号線と前記第2信号線とは、相互に対応する位置および形状に設置されて平面視で重なり、
前記遮蔽部は、
前記第1基板における前記第1実装面とは反対側に設置された第1遮蔽体と、
前記第2基板における前記第2実装面とは反対側に設置された第2遮蔽体とを含む
増幅装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、音響信号を増幅する増幅装置の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
左右2チャネルの音響信号を増幅する増幅装置において、右チャネルの増幅器が設置された配線基板と、左チャネルの増幅器が設置された配線基板とを個別に配置したツインモノラル構造が従来から提案されている(非特許文献1)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】“オーディオの足跡/Pioneer A-09”、[online]、[平成29年12月8日検索]、インターネット〈URL:http://audio-heritage.jp/PIONEER-EXCLUSIVE/amp/a-09.html〉
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ツインモノラル構造の増幅装置においては、左右チャネルの接地線と信号線とによりループが形成される。接地線と信号線とで形成されるループの近傍に磁界が発生すると電流が励起され、音響信号のS/N比を低下させる原因となり得る。以上の事情を考慮して、本発明は、ツインモノラル構造の増幅装置において配線のループに起因した雑音を低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以上の課題を解決するために、本発明の好適な態様に係る増幅装置は、相互に対向する第1基板および第2基板を具備し、前記第1基板における前記第2基板とは反対側の第1実装面には、第1接地線と、第1音響信号を伝送する第1信号線と、前記第1音響信号を増幅する第1増幅器とが設置され、前記第2基板における前記第1基板とは反対側の第2実装面には、第2接地線と、第2音響信号を伝送する第2信号線と、前記第2音響信号を増幅する第2増幅器とが設置され、前記第1接地線と前記第2接地線とは、相互に対応する位置および形状に設置されて平面視で重なり、前記第1信号線と前記第2信号線とは、相互に対応する位置および形状に設置されて平面視で重なる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】本発明の第1実施形態に係る増幅装置の背面図である。
図2】第1基板および第2基板の側面図である。
図3】第1基板上の要素と第2基板上の要素とを例示する平面図である。
図4】第1基板と第2基板とを同一平面内に併設した場合の平面図である。
図5】対比例1における第1基板および第2基板の側面図である。
図6】対比例1における第1基板および第2基板の平面図である。
図7】対比例2における第1基板および第2基板の側面図である。
図8】対比例2における第1基板および第2基板の平面図である。
図9】第2実施形態における第1基板および第2基板の平面図である。
図10】第3実施形態における第1基板および第2基板の平面図である。
図11】第4実施形態における第1基板および第2基板の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
<第1実施形態>
図1は、第1実施形態に係る増幅装置100の背面図である。第1実施形態の増幅装置100は、左右2チャネルの音響信号に対して増幅を含む各種の音響処理を実行する信号処理装置であり、略直方体状の筐体部10を具備する。図1に例示される通り、筐体部10の背面には、外部機器(図示略)に接続される複数の端子が設置される。具体的には、左チャネルに対応する複数の入力端子XL(XL1,XL2,XL3)および出力端子YLと、右チャネルに対応する複数の入力端子XR(XR1,XR2,XR3)および出力端子YRとが、筐体部10の背面に設置される。各入力端子XLと各入力端子XRとは共通の実装部品で構成され、出力端子YLと出力端子YRとは共通の実装部品で構成される。
【0008】
複数の入力端子XLの各々には外部機器から左チャネルの音響信号SLa(SLa1~SLa3)が供給され、複数の入力端子XRの各々には外部機器から右チャネルの音響信号SRa(SRa1~SRa3)が供給される。音響信号SLaに対する音響処理で生成された左チャネルの音響信号SLbが出力端子YLから出力され、音響信号SRaに対する音響処理で生成された右チャネルの音響信号SRbが出力端子YRから出力される。出力端子YLから出力された音響信号SLbは左チャネルの放音装置(図示略)に供給され、出力端子YRから出力された音響信号SRbは右チャネルの放音装置(図示略)に供給される。
【0009】
図1に例示される通り、筐体部10の内部には第1基板21と第2基板22とが設置される。第1基板21には左チャネルに対応する要素が設置され、第2基板22には右チャネルに対応する要素が設置される。すなわち、第1実施形態の増幅装置100は、左チャネルに対応する第1基板21と右チャネルに対応する第2基板22とが別体で構成されたツインモノラル構造を採用する。なお、以下の説明では、左チャネルに関連する要素の符号に添字Lを付加し、右チャネルに関連する要素の符号に添字Rを付加する。
【0010】
第1基板21および第2基板22の各々は、複数の配線が形成された矩形状の絶縁基板である。図2は、第1基板21および第2基板22を筐体部10の背面側からみた側面図である。第1基板21と第2基板22とは、平面形状およびサイズが共通する。図2に例示される通り、第1基板21と第2基板22とは、相互に間隔をあけて対向した状態で筐体部10の内部に設置される。具体的には、第1基板21と第2基板22とは略平行に配置される。第1基板21と第2基板22とは、平面視で全体にわたり相互に重なる。第1実施形態では、第1基板21が第2基板22の上方に位置する構成を例示する。なお、以下の説明では、第1基板21または第2基板22の表面に垂直な方向をZ方向と表記する。第2基板22は、第1基板21からみてZ方向の正側に位置する。
【0011】
第1基板21は、実装面F1(第1実装面の例示)と対向面B1とを含む平板材であり、第2基板22は、実装面F2(第2実装面の例示)と対向面B2とを含む平板材である。実装面F1は、第2基板22とは反対側(Z方向の負側)の表面であり、対向面B1は、第2基板22(対向面B2)に対向する表面である。同様に、実装面F2は、第1基板21とは反対側(Z方向の正側)の表面であり、対向面B2は、第1基板21(対向面B1)に対向する表面である。
【0012】
図3は、第1基板21と第2基板22とを便宜的にずらして図示した平面図である。図3における奥行き方向がZ方向の正側に相当する。図3に例示される通り、第1基板21の実装面F1には、接地線GLと信号線WL(WLa,WLb)と信号処理回路CLとが設置される。信号処理回路CLは、左チャネルの音響信号SLaを処理する回路であり、実装面F1に実装された多数の実装部品(例えばICチップ,抵抗素子または容量素子)で構成される。第1実施形態の信号処理回路CLは、増幅器AL(第1増幅器の例示)と選択回路QLとを具備する。
【0013】
選択回路QLは、左チャネルの複数の入力端子XL(XL1~XL3)にそれぞれ供給される複数の音響信号SLa(SLa1~SLa3)の何れかを選択する。選択回路QLが選択した音響信号SLaは、信号線WLaを介して増幅器ALに供給される。増幅器ALは、音響信号SLaを増幅することで左チャネルの音響信号SLbを生成する。増幅器ALが生成した増幅後の音響信号SLbは、信号線WLbを介して左チャネルの出力端子YLに供給される。以上の説明から理解される通り、信号線WL(WLa,WLb)は、左チャネルの音響信号(SLa,SLb)を伝送する配線(第1信号線の例示)として機能する。接地線GL(第1接地線の例示)は、信号処理回路CLで使用される電圧の基準となる接地電位に維持される。
【0014】
第2基板22の実装面F2には、接地線GRと信号線WR(WRa,WRb)と信号処理回路CRとが設置される。すなわち、第1基板21と第2基板22とには共通の要素が設置される。なお、図3の例示のように第2基板22をZ方向の正側(対向面B2側)からみた状態では、図3において破線で図示される通り、接地線GRと信号線WRと信号処理回路CRとは第2基板22に対して図面奥側に位置する。
【0015】
信号処理回路CRは、右チャネルの音響信号SRaを処理する回路であり、実装面F2に実装された多数の実装部品(例えばICチップ,抵抗素子または容量素子)で構成される。第1実施形態の信号処理回路CRは、増幅器AR(第2増幅器の例示)と選択回路QRとを具備する。
【0016】
選択回路QRは、右チャネルの複数の入力端子XR(XR1~XR3)にそれぞれ供給される複数の音響信号SRa(SRa1~SRa3)の何れかを選択する。選択回路QRが選択した音響信号SRaは、信号線WRaを介して増幅器ARに供給される。増幅器ARは、音響信号SRaを増幅することで右チャネルの音響信号SRbを生成する。増幅器ARが生成した増幅後の音響信号SRbは、信号線WRbを介して右チャネルの出力端子YRに供給される。以上の説明から理解される通り、信号線WR(WRa,WRb)は、右チャネルの音響信号(SRa,SRb)を伝送する配線(第2信号線の例示)として機能する。接地線GR(第2接地線の例示)は、信号処理回路CRで使用される電圧の基準となる接地電位に維持される。
【0017】
図2および図3から理解される通り、第1基板21上の各要素と第2基板22上の各要素とは、位置および形状が相互に対応し、第1基板21および第2基板22をZ方向からみたときに相互に重なり合う。第1基板21上の各要素と第2基板22上の各要素との具体的な関係を以下に詳述する。
【0018】
図3から理解される通り、第1基板21上の接地線GLと第2基板22上の接地線GRとは、相互に対応する位置および形状に形成される。具体的には、第1基板21をZ方向の正側(実装面F1側)からみたときの接地線GLの形状と、第2基板22をZ方向の正側(対向面B2側)からみたときの接地線GRの形状とは共通する。したがって、第1基板21と第2基板22とが相互に対向する状態では、接地線GLと接地線GRとは平面視(すなわちZ方向からみて)で重なる。同様に、第1基板21上の信号線WLと第2基板22上の信号線WRとは、相互に対応する位置および形状に形成される。具体的には、第1基板21をZ方向の正側からみたときの信号線WLの形状と、第2基板22をZ方向の正側からみたときの信号線WRの形状とは共通する。したがって、第1基板21と第2基板22とが相互に対向する状態では、信号線WLと信号線WRとは平面視で重なる。
【0019】
また、図3から理解される通り、第1基板21と第2基板22とが相互に対向する状態では、信号処理回路CLと信号処理回路CRとが平面視で重なる。例えば、選択回路QLと選択回路QRとは平面視で重なり、増幅器ALと増幅器ARとは平面視で重なる。具体的には、第1基板21をZ方向の正側からみたときの信号処理回路CLの各実装部品の配置と、第2基板22をZ方向の正側からみたときの信号処理回路CRの各実装部品の配置とは共通する。すなわち、信号処理回路CLと信号処理回路CRとの間において機能が共通する実装部品は平面視で相互に重なる。
【0020】
さらに、図2および図3から理解される通り、左チャネルの各入力端子XL(第1入力端子の例示)と右チャネルの各入力端子XR(第2入力端子の例示)とは、相互に対応する位置に設置され、平面視で相互に重なる。具体的には、入力端子XL1と入力端子XR1とが平面視で重なり、入力端子XL2と入力端子XR2とが平面視で重なり、入力端子XL3と入力端子XR3とが平面視で重なる。同様に、左チャネルの出力端子YL(第1出力端子の例示)と右チャネルの出力端子YR(第2出力端子の例示)とは、相互に対応する位置に設置され、平面視で相互に重なる。
【0021】
図4は、第1基板21および第2基板22の1個の縁辺に沿う基準線Oを中心として、第1基板21と第2基板22とが略平行になるように第1基板21および第2基板22の一方を他方に対して回転させた状態の平面図である。図4に例示された状態は、第1基板21の実装面F1と第2基板22の実装面F2との双方がZ方向の負側を向くように第1基板21と第2基板22とを配置した状態とも換言され得る。
【0022】
図4に例示される通り、第1基板21の実装面F1に設置された要素と第2基板22の実装面F2に設置された要素とは、基準線Oを挟んで相互に線対称の関係にある。具体的には、接地線GLと接地線GRとは基準線Oに関して線対称であり、信号線WLと信号線WRとは基準線Oに関して線対称である。また、信号処理回路CLと信号処理回路CRとは基準線Oに関して線対称である。各入力端子XLと各入力端子XRとは基準線Oに関して線対称であり、出力端子YLと出力端子YRとは基準線Oに関して線対称である。図4の状態から、基準線Oを中心として第1基板21および第2基板22の一方を他方に対して回転させることで、第1基板21の対向面B1と第2基板22の対向面B2とが相互に対向する図3の状態となる。
【0023】
以上に説明した通り、第1実施形態では、第1基板21における第2基板22とは反対側の実装面F1に、接地線GLと信号線WLと信号処理回路CLとが設置され、第2基板22における第1基板21とは反対側の実装面F2に、接地線GRと信号線WRと信号処理回路CRとが設置される。そして、接地線GLと接地線GRとは平面視で相互に重なり、信号線WLと信号線WRとは平面視で相互に重なる。したがって、第1実施形態によれば、以下に詳述する通り、配線のループに起因した雑音を有効に低減できるという利点がある。
【0024】
図5および図6は、第1基板21と第2基板22とを同一平面内に並設した構成(以下「対比例1」という)の説明図である。対比例1では、第1基板21上の各要素と第2基板22上の各要素とが線対称に配置される。
【0025】
図6から理解される通り、対比例1の構成では、接地線GLと接地線GRとを含む配線によりループが形成される。以上に説明したループの近傍に磁界が発生すると電流が励起され、音響信号のS/N比を低下させる原因となる。対比例1では特に、第1基板21と第2基板22とが同一平面内に並設されるから、配線のループで包囲された領域の面積(以下「配線ループ内面積」という)が大きい。したがって、ループに起因した雑音の問題は顕著である。
【0026】
図7および図8は、第1基板21と第2基板22とを相互に対向させた構成(以下「対比例2」という)の説明図である。第2基板22の実装面F2が第1基板21の対向面B2に対向するように、第1基板21と第2基板22とが相互に間隔をあけて配置される。対比例2の構成では、第1基板21と第2基板22とが重なるから、接地線GLと接地線GRとを含む配線による配線ループ内面積が対比例1と比較して削減される。したがって、ループに起因した雑音は、対比例1と比較して低減される。
【0027】
しかし、対比例2の構成では、第2基板22のうち第1基板21側の実装面F2に右チャネルの要素(例えば信号処理回路CR,入力端子XR,出力端子YR)が設置されるから、右チャネルの要素の高さの最大値を上回る間隔を第1基板21と第2基板22との間に確保する必要がある。したがって、配線ループ内面積の削減(ひいては雑音の低減)には限界がある。
【0028】
他方、第1実施形態では、第1基板21と第2基板22とが相互に対向するから、対比例1と比較して配線ループ内面積が削減される。したがって、対比例1と比較して、ループに起因した雑音を低減できるという利点がある。また、第1実施形態では、第1基板21のうち第2基板22とは反対側の実装面F1に左チャネルの要素が設置され、第2基板22のうち第1基板21とは反対側の実装面F2に右チャネルの要素が設置される。以上の構成では、右チャネルの要素を設置するための間隔を第1基板21と第2基板22との間に確保する必要がない。したがって、第1基板21と第2基板22とを充分に接近させることが可能である。以上の通り、第1実施形態によれば、対比例2と比較して配線ループ内面積が削減されるから、ループに起因した雑音を対比例2よりも充分に低減できるという利点がある。
【0029】
第1実施形態では、各入力端子XLと各入力端子XRとが平面視で重なり、出力端子YLと出力端子YRとが平面視で重なる。したがって、配線ループ内面積を削減できるという前述の効果は特に顕著である。また、第1実施形態では特に、第1基板21の実装面F1に設置された要素と第2基板22の実装面F2に設置された要素とが線対称であるから、第1基板21上の要素と第2基板22上の要素とが非対称である構成と比較して、配線ループ内面積の面積が有効に削減される。したがって、配線のループに起因した雑音を低減できるという前述の効果は格別に顕著である。
【0030】
<第2実施形態>
本発明の第2実施形態を説明する。なお、以下の各例示において機能が第1実施形態と同様である要素については、第1実施形態の説明で使用した符号を流用して各々の詳細な説明を適宜に省略する。
【0031】
図9は、第2実施形態の増幅装置100における第1基板21および第2基板22の側面図である。図9に例示される通り、第2実施形態の増幅装置100は、第1実施形態と同様の要素に遮蔽部25を追加した構成である。遮蔽部25は、例えば銅(Cu)またはアルミニウム(Al)等の導電材料で形成された導電性の平板材である。遮蔽部25は、第1基板21と第2基板22との間に設置される。具体的には、遮蔽部25は、第1基板21および第2基板22に対して略平行に設置される。以上の説明から理解される通り、遮蔽部25は、第1基板21上の要素と第2基板22上の要素との相互間における電気的な干渉を低減するためのシールドとして機能する。
【0032】
第2実施形態においても第1実施形態と同様の効果が実現される。なお、配線ループ内面積の削減という観点からは、第1基板21と第2基板22とを充分に接近させた構成が好適であるが、第1基板21と第2基板22とを過度に接近させた構成では、第1基板21上の要素と第2基板22上の要素との相互間で電気的な干渉が発生する可能性がある。第2実施形態では、第1基板21と第2基板22との間に導電性の遮蔽部25が設置される。したがって、第1基板21と第2基板22とを充分に接近させた構成にも関わらず、第1基板21上の要素と第2基板22上の要素との相互間における電気的な干渉を低減できるという利点がある。
【0033】
<第3実施形態>
図10は、第3実施形態における第1基板21および第2基板22の側面図である。図10に例示される通り、第3実施形態の遮蔽部25は、第1遮蔽体251と第2遮蔽体252とを含んで構成される。第1遮蔽体251は、第1基板21における第2基板22側の対向面B1に設置された導電体である。具体的には、第1基板21は、導電層と絶縁層とを交互に積層した複層基板で構成され、複層基板のうち第2基板22側の最表層を構成する導電層が第1遮蔽体251として利用される。同様に、第2遮蔽体252は、第2基板22における第1基板21側の対向面B2に設置された導電体である。具体的には、第2遮蔽体252は、導電層と絶縁層とを交互に積層した複層基板で構成され、複層基板のうち第1基板21側の最表層を構成する導電層が第2遮蔽体252として利用される。
【0034】
第3実施形態においても第1実施形態および第2実施形態と同様の効果が実現される。また、第3実施形態では、第1基板21の対向面B1に第1遮蔽体251が設置され、第2基板22の対向面B2に第2遮蔽体252が設置されるから、遮蔽部25が単層で形成された構成と比較して、第1基板21上の要素と第2基板22上の要素との相互間における電気的な干渉を低減できるという効果は格別に顕著である。
【0035】
<第4実施形態>
図11は、第4実施形態における第1基板21および第2基板22の側面図である。図11に例示される通り、第4実施形態では、第1基板21と第2基板22と遮蔽部25とが隙間なく一体的に積層される。具体的には、第1基板21と第2基板22と遮蔽部25とは、導電層と絶縁層とを交互に積層した複層基板(特に多層基板)で構成される。例えば、複層基板を構成するひとつの導電層が遮蔽部25として利用される。複層基板のうち遮蔽部25からみてZ方向の負側に位置する板状部分が第1基板21に相当し、複層基板のうち遮蔽部25からみてZ方向の正側に位置する板状部分が第2基板22に相当する。
【0036】
第4実施形態においても第1実施形態および第2実施形態と同様の効果が実現される。また、第4実施形態では、第1基板21と第2基板22と遮蔽部25とが隙間なく積層されるから、配線ループ内面積の面積は有効に削減(理想的には最小化)される。したがって、配線のループに起因した雑音を低減できるという前述の効果は格別に顕著である。
【0037】
<変形例>
以上に例示した各態様に付加される具体的な変形の態様を以下に例示する。以下の例示から任意に選択された2個以上の態様を、相互に矛盾しない範囲で適宜に併合してもよい。
【0038】
(1)前述の各形態では、選択回路QLと増幅器ALとを具備する信号処理回路CLを例示したが、信号処理回路CLの構成は以上の例示に限定されない。例えば、選択回路QL(さらには入力端子XL2および入力端子XL3)を省略し、外部機器から入力端子XL1に入力された音響信号SLaを増幅器ALに供給してもよい。また、音響信号SLaに特定の周波数特性を付与する音響処理回路、または、信号処理回路CLで使用される電圧を生成する電源回路を、信号処理回路CLに含めてもよい。信号処理回路CRについても同様であり、音響処理回路または電源回路を信号処理回路CRに設置してもよい。選択回路QR(さらには入力端子XR2および入力端子XR3)を省略し、外部機器から入力端子XR1に入力された音響信号SRaを増幅器ARに供給してもよい。
【0039】
(2)前述の各形態では、信号処理回路CLの要素を第1基板21の実装面F1に設置した構成を例示したが、信号処理回路CLを構成する一部の要素を第1基板21の対向面B1に設置してもよい。同様に、信号処理回路CRを構成する一部の要素を第2基板22の対向面B2に設置してもよい。なお、配線ループ内面積を削減するという観点から第1基板21と第2基板22とを充分に接近させるためには、例えばチップコンデンサ等の高さが小さい実装部品を対向面B1または対向面B2に設置した構成が好適である。すなわち、信号処理回路CLのうち対向面B1に設置された実装部品の高さが、実装面F1に設置された実装部品の高さを下回る構成が好適である。同様に、信号処理回路CRのうち対向面B2に設置された実装部品の高さが、実装面F2に設置された実装部品の高さを下回る構成が好適である。
【0040】
(3)前述の各形態では、第1基板21の実装面F1に設置された要素と第2基板22の実装面F2に設置された要素とが線対称の関係にある構成を例示したが、第1基板21上の要素と第2基板22上の要素との関係は以上の例示に限定されない。具体的には、第1基板21と第2基板22とに複数の実装部品を非対称に設置してもよい。以上の説明から理解される通り、第1基板21と第2基板22とを相互に対向させた構成において、第1基板21のうち第2基板22とは反対側の実装面F1に左チャネルの要素を設置し、第2基板22のうち第1基板21とは反対側の実装面F2に右チャネルの要素を設置すれば、前述の対比例1および対比例2と比較して配線ループ内面積を低減できる(ひいてはループに起因した雑音を低減できる)という効果は実現される。
【0041】
(4)以上に例示した形態から、例えば以下の構成が把握される。
【0042】
本発明の好適な態様(第1態様)に係る増幅装置は、相互に対向する第1基板および第2基板を具備し、前記第1基板における前記第2基板とは反対側の第1実装面には、第1接地線と、第1音響信号を伝送する第1信号線と、前記第1音響信号を増幅する第1増幅器とが設置され、前記第2基板における前記第1基板とは反対側の第2実装面には、第2接地線と、第2音響信号を伝送する第2信号線と、前記第2音響信号を増幅する第2増幅器とが設置され、前記第1接地線と前記第2接地線とは、相互に対応する位置および形状に設置されて平面視で重なり、前記第1信号線と前記第2信号線とは、相互に対応する位置および形状に設置されて平面視で重なる。以上の態様では、第1基板における第2基板とは反対側の第1実装面に第1接地線と第1信号線と第1増幅器とが設置され、第2基板における第1基板とは反対側の第2実装面に第2接地線と第2信号線と第2増幅器とが設置される。また、第1接地線と第2接地線とが平面視で重なり、第1信号線と第2信号線とが平面視で重なる。以上の構成によれば、配線のループ(例えば第1接地線と第2接地線とを含む配線のループ)の内側の面積が削減される。したがって、配線のループに起因した雑音を低減できる。
【0043】
第1態様の好適例(第2態様)において、前記第1増幅器と前記第2増幅器とは、平面視で重なる。以上の態様では、第1増幅器と第2増幅器とが平面視で重なるから、配線のループに起因した雑音を低減できるという前述の効果は特に顕著である。
【0044】
第1態様または第2態様の好適例(第3態様)において、前記第1実装面には、前記第1音響信号が入力される第1入力端子と、前記第1増幅器による増幅後の信号が出力される第1出力端子とが設置され、前記第2実装面には、前記第2音響信号が入力される第2入力端子と、前記第2増幅器による増幅後の信号が出力される第2出力端子とが設置され、前記第1入力端子と前記第2入力端子とは平面視で重なり、前記第1出力端子と前記第2出力端子とは平面視で重なる。以上の態様では、第1入力端子と第2入力端子とが平面視で重なり、第1出力端子と第2出力端子とが平面視で重なる。したがって、配線のループに起因した雑音を低減できるという前述の効果は特に顕著である。
【0045】
第1態様から第3態様の何れかの好適例(第4態様)において、前記第1実装面に設置された要素と、前記第2実装面に設置された要素とは、相互に線対称である。以上の態様では、第1実装面に設置された要素と第2実装面に設置された要素とが相互に線対称であるから、配線のループの内側の面積が有効に削減される。したがって、配線のループに起因した雑音を低減できるという前述の効果は特に顕著である。
【0046】
第1態様から第4態様の何れかの好適例(第5態様)に係る増幅装置は、前記第1基板と前記第2基板との間に設置された導電性の遮蔽部を具備する。以上の態様では、第1基板と第2基板との間に導電性の遮蔽部が設置されるから、第1基板上の要素と第2基板上の要素との相互間における電気的な干渉を抑制できるという利点がある。
【0047】
第5態様の好適例(第6態様)において、前記遮蔽部は、前記第1基板における前記第1実装面とは反対側に設置された第1遮蔽体と、前記第2基板における前記第2実装面とは反対側に設置された第2遮蔽体とを含む。以上の態様では、第1基板に第1遮蔽体が設置され、第2基板に第2遮蔽体が設置されるから、第1基板上の要素と第2基板上の要素との相互間における電気的な干渉を抑制できるという効果は格別に顕著である。
【符号の説明】
【0048】
100…増幅装置、10…筐体部、21…第1基板、22…第2基板、XL(XL1,XL2,XL3),XR(XR1,XR2,XR3)…入力端子、YL,YR…出力端子、F1,F2…実装面、B1,B2…対向面、CL,CR…信号処理回路、QL,QR…選択回路、AL,AR…増幅器、GL,GR…接地線、WLa,WLb,WRa,WRb…信号線、O…基準線、SLa(SLa1,SLa2,SLa3),SLb…音響信号(左チャネル)、SRa(SRa1,SRa2,SRa3),SLb…音響信号(右チャネル)、25…遮蔽部、251…第1遮蔽体、252…第2遮蔽体。


図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11