(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-21
(45)【発行日】2022-03-02
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
G03G 15/00 20060101AFI20220222BHJP
G01B 11/06 20060101ALI20220222BHJP
G03G 15/16 20060101ALI20220222BHJP
【FI】
G03G15/00 303
G01B11/06 101G
G03G15/16
(21)【出願番号】P 2017251255
(22)【出願日】2017-12-27
【審査請求日】2020-11-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】特許業務法人鷲田国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100155620
【氏名又は名称】木曽 孝
(72)【発明者】
【氏名】郡谷 尚知
(72)【発明者】
【氏名】木寺 弘成
(72)【発明者】
【氏名】山中 大樹
【審査官】市川 勝
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-282051(JP,A)
【文献】特開2007-132960(JP,A)
【文献】国際公開第2007/108060(WO,A1)
【文献】特開2007-333428(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/00
G01B 11/06
G03G 15/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材層に表面層が積層された積層構造を有し、トナー像が形成される像担持体の表面に対して、予め定められた検出条件に基づいて、検出光を照射するとともに、当該検出光が前記像担持体の表面で反射した反射光を受光する光センサーと、
前記反射光の中に明干渉と暗干渉とがそれぞれ含まれるように、前記検出条件のうち少なくとも前記光センサーの主波長を制御するとともに、前記光センサーの出力に基づいて前記像担持体へのトナー付着量を制御する制御部と、を備
え、
前記制御部は、式(1)を満たすように、前記主波長を制御する、
画像形成装置。
X>a*Δd(λp)・・・(1)
〔式(1)中、Xは、最表層の表面粗さに関するパラメータを表し、aは、1以上の任意の値を表し、λpは、主波長を表し、Δd(λp)は、主波長λpにおいて反射光の中に明干渉が含まれる場合の表面層の膜厚と暗干渉が含まれる場合の表面層の膜厚との間の差を表す〕
【請求項2】
前記制御部は、式(2)を満たすように、前記主波長を制御する、
請求項
1に記載の画像形成装置。
N-0.25≦a≦N+0.25・・・(2)
〔式(2)中、Nは、正の整数を表す〕
【請求項3】
前記制御部は、式(3)を満たすように、前記主波長を制御する、
請求項
2に記載の画像形成装置。
4≦N≦8・・・(3)
〔式(3)中、Nは、整数を表す〕
【請求項4】
基材層に表面層が積層された積層構造を有し、トナー像が形成される像担持体の表面に対して、予め定められた検出条件に基づいて、検出光を照射するとともに、当該検出光が前記像担持体の表面で反射した反射光を受光する光センサーと、
前記反射光の中に明干渉と暗干渉とがそれぞれ含まれるように、前記検出条件のうち少なくとも前記光センサーの主波長を制御するとともに、前記光センサーの出力に基づいて前記像担持体へのトナー付着量を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記検出条件としての前記光センサーの検出範囲を、
最表層の表面粗さの間隔より大きくするように制御する、
画像形成装置。
【請求項5】
白色光源からの光を分ける分光器をさらに備え、
前記制御部は、前記式(1)を満たす前記主波長の光を、前記分光器により分けられた光から選択する、
請求項
1に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記主波長が互いに異なる複数の光センサーを備え、
前記制御部は、前記複数の光センサーの中から、前記式(1)を満たす前記主波長を有する光センサーを選択する、
請求項
1に記載の画像形成装置。
【請求項7】
拡散強度が互いに異なる複数の拡散フィルターをさらに備え、
前記制御部は、前記複数の拡散フィルターの中から、前記表面粗さの間隔より大きい検出範囲を得る拡散フィルターを選択する、
請求項
4に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記検出範囲が互いに異なる複数の光センサーを備え、
前記制御部は、前記複数の光センサーの中から、前記表面粗さの間隔より大きい検出範囲を有する光センサーを選択する、
請求項
4に記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、電子写真プロセス技術を利用した画像形成装置(プリンター、複写機、ファクシミリ等)においては、画像データに基づくレーザー光が、一様に帯電した感光体(例えば感光体ドラム)に対して照射(露光)されることにより、感光体表面に静電潜像が形成される。そして、静電潜像が形成された感光体にトナーが供給されることにより、静電潜像が可視化されてトナー像が形成される。このトナー像が、中間転写ベルトを介して間接的に用紙に転写された後、定着装置で加熱、加圧されることにより、用紙に画像が形成される。
【0003】
感光体ドラムや中間転写ベルトなどの像担持体へのトナー付着量や画像濃度は、IDC(Image Density Control)センサーで検出される。センサー出力は、画像形成条件にフィードバックされる。これにより、画像安定化制御が行われる。
【0004】
2層以上(例えば、基材層および表面層)の積層構造を有する中間転写ベルト上に形成されるトナー像をIDCセンサーで検出する場合、表面層の最表層の表面粗さや、表面層の膜厚のばらつき(以下、表面層状態)により、光の干渉強度が変化する。その結果、センサー出力が変動するため、画像安定化制御の精度が低下する。
【0005】
以下、センサー出力が変動するメカニズムについて
図1を参照して説明する。特定波長の単色光が空気中から表面層に入射する。この場合、表面層の上面で反射する光と、表面層の上面で屈折し、表面層の下面で反射する光とは、強め合う(明干渉)または、弱め合う(暗干渉)。なお、nは、表面層の屈折率を表し、dは、表面層の膜厚を表し、θ2は、表面層の下面で反射する光の反射角度を表し、λは、光の波長を表し、mは、0以上の整数を表す。
【0006】
明干渉の条件は、次の式(1)で表される。
2ndcosθ2=mλ・・・(1)
また、暗干渉の条件は、次の式(2)で表される。
2ndcosθ2=(m+1/2)λ・・・(2)
上記の式(1)、(2)は、膜厚dに応じて光の干渉強度が変化して、センサー出力が変動することを示している。
【0007】
なお、干渉縞が中間転写ベルトに発生しないように構成された画像形成装置が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、
図2に示すように、中間転写ベルトの最表層には、nmからμmオーダーの粗さ(微小領域での膜厚のばらつき)が存在する。また、中間転写ベルト面内には、表面層の塗布ムラ等による膜厚のばらつきが存在する。これにより、
図3に示すように、中間転写ベルトを検出する位置によって、光の干渉強度が異なるため、センサー出力が変動する。
【0010】
中間転写ベルト上に形成されたトナー像を検出する場合、中間転写ベルトの表面層状態(最表層の表面粗さや、表面層の膜厚のばらつき)の影響によってセンサー出力が変動して、中間転写ベルトへのトナー付着量を誤検知、誤補正してしまう。特に、中間調やハイライトのトナー像を検出する場合ほど、表面層状態の影響を受け易いため、センサー出力の変動が大きくなるという問題点があった。
【0011】
本発明は、センサー出力の変動を抑制することが可能な画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の目的を達成するため、本発明における画像形成装置は、
基材層に表面層が積層された積層構造を有し、トナー像が形成される像担持体の表面に対して、予め定められた検出条件に基づいて、検出光を照射するとともに、当該検出光が前記像担持体の表面で反射した反射光を受光する光センサーと、
前記反射光の中に明干渉と暗干渉とがそれぞれ含まれるように、前記検出条件のうち少なくとも前記光センサーの主波長を制御するとともに、前記光センサーの出力に基づいて前記像担持体へのトナー付着量を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、式(1)を満たすように、前記主波長を制御する、
画像形成装置。
X>a*Δd(λp)・・・(1)
〔式(1)中、Xは、最表層の表面粗さに関するパラメータを表し、aは、1以上の任意の値を表し、λpは、主波長を表し、Δd(λp)は、主波長λpにおいて反射光の中に明干渉が含まれる場合の表面層の膜厚と暗干渉が含まれる場合の表面層の膜厚との間の差を表す〕
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、センサー出力の変動を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】センサー出力が変動するメカニズムを説明するための図
【
図2】中間転写ベルトの最面層状態を説明するための図
【
図3】ベルト走行距離とセンサー出力との関係を表す図
【
図4】本発明の実施の形態に係る画像形成装置を概略的に示す図
【
図5】本実施の形態に係る画像形成装置の制御系の主要部を示す図
【
図6A】中間転写ベルトの表面層の最表層の表面粗さが大きい場合を表す図
【
図6B】中間転写ベルトの表面層の膜厚と干渉縞との関係を表し、また、光センサーから観察される干渉縞を表す図
【
図7A】中間転写ベルトの表面層の最表層の表面粗さが大きい場合を表す図
【
図7B】中間転写ベルトの表面層の膜厚と干渉縞との関係を表し、また、光センサーから観察される干渉縞を表す図
【
図11】表面粗さに対する光センサーの出力のばらつきの評価結果を表す図
【
図12】表面粗さに対する光センサーの出力のばらつきの評価結果を表す図
【
図13A】特定の主波長を有する光センサーの出力のばらつきを示す図
【
図13B】特定の主波長を有する光センサーの出力のばらつきを示す図
【
図15】分光部としての透過型回折格子を概略的に示す図
【
図16】中間転写ベルトの軸方向に配置された複数種類の光センサーを概略的に示す図
【
図17】中間転写ベルトの表面層に沿って配置された複数種類の拡散フィルターを概略的に示す図
【
図18】中間転写ベルトの軸方向に沿って配置された複数種類の光センサーを概略的に示す図
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図4は、本発明の実施の形態に係る画像形成装置1の全体構成を概略的に示す図である。
図5は、本実施の形態に係る画像形成装置1の制御系の主要部を示す図である。
図4、5に示す画像形成装置1は、電子写真プロセス技術を利用した中間転写方式のカラー画像形成装置である。すなわち、画像形成装置1は、感光体ドラム413上に形成されたY(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)、K(ブラック)の各色トナー像を中間転写ベルト421に一次転写し、中間転写ベルト421上で4色のトナー像を重ね合わせた後、用紙S(記録媒体)に二次転写することにより、画像を形成する。
【0016】
また、画像形成装置1には、YMCKの4色に対応する感光体ドラム413を中間転写ベルト421の走行方向に直列配置し、中間転写ベルト421に一回の手順で各色トナー像を順次転写させるタンデム方式が採用されている。
【0017】
図5に示すように、画像形成装置1は、画像読取部10、操作表示部20、画像処理部30、画像形成部40、用紙搬送部50、定着部60、光センサー80および制御部100を備える。
【0018】
制御部100は、CPU(Central Processing Unit)101、ROM(Read Only Memory)102、RAM(Random Access Memory)103等を備える。CPU101は、ROM102から処理内容に応じたプログラムを読み出してRAM103に展開し、展開したプログラムと協働して画像形成装置1の各ブロックの動作を集中制御する。このとき、記憶部72に格納されている各種データが参照される。記憶部72は、例えば不揮発性の半導体メモリ(いわゆるフラッシュメモリ)やハードディスクドライブで構成される。
【0019】
制御部100は、通信部71を介して、LAN(Local Area Network)、WAN(Wide Area Network)等の通信ネットワークに接続された外部の装置(例えばパーソナルコンピューター)との間で各種データの送受信を行う。制御部100は、例えば、外部の装置から送信された画像データ(入力画像データ)を受信し、この画像データに基づいて用紙Sに画像を形成させる。通信部71は、例えばLANカード等の通信制御カードで構成される。
【0020】
画像読取部10は、ADF(Auto Document Feeder)と称される自動原稿給紙装置11および原稿画像走査装置12(スキャナー)等を備えて構成される。
【0021】
自動原稿給紙装置11は、原稿トレイに載置された原稿Dを搬送機構により搬送して原稿画像走査装置12へ送り出す。自動原稿給紙装置11により、原稿トレイに載置された多数枚の原稿Dの画像(両面を含む)を連続して一挙に読み取ることが可能となる。
【0022】
原稿画像走査装置12は、自動原稿給紙装置11からコンタクトガラス上に搬送された原稿又はコンタクトガラス上に載置された原稿を光学的に走査し、原稿からの反射光をCCD(Charge Coupled Device)センサー12aの受光面上に結像させ、原稿画像を読み取る。画像読取部10は、原稿画像走査装置12による読取結果に基づいて入力画像データを生成する。この入力画像データには、画像処理部30において所定の画像処理が施される。
【0023】
操作表示部20は、例えばタッチパネル付の液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)で構成され、表示部21及び操作部22として機能する。表示部21は、制御部100から入力される表示制御信号に従って、各種操作画面、画像の状態表示、各機能の動作状況等の表示を行う。操作部22は、テンキー、スタートキー等の各種操作キーを備え、ユーザーによる各種入力操作を受け付けて、操作信号を制御部100に出力する。
【0024】
画像処理部30は、入力画像データに対して、初期設定又はユーザー設定に応じたデジタル画像処理を行う回路等を備える。例えば、画像処理部30は、制御部100の制御下で、階調補正データ(階調補正テーブル)に基づいて階調補正を行う。また、画像処理部30は、入力画像データに対して、階調補正の他、色補正、シェーディング補正等の各種補正処理や、圧縮処理等を施す。これらの処理が施された画像データに基づいて、画像形成部40が制御される。
【0025】
画像形成部40は、入力画像データに基づいて、Y成分、M成分、C成分、K成分の各有色トナーによる画像を形成するための画像形成ユニット41Y、41M、41C、41K、中間転写ユニット42等を備える。
【0026】
Y成分、M成分、C成分、K成分用の画像形成ユニット41Y、41M、41C、41Kは、同様の構成を有する。図示および説明の便宜上、共通する構成要素は同一の符号で示し、それぞれを区別する場合には符号にY、M、C、又はKを添えて示す。
図4では、Y成分用の画像形成ユニット41Yの構成要素についてのみ符号が付され、その他の画像形成ユニット41M、41C、41Kの構成要素については符号が省略されている。
【0027】
画像形成ユニット41は、露光装置411、現像装置412、感光体ドラム413、帯電装置414、およびドラムクリーニング装置415等を備える。
【0028】
感光体ドラム413は、例えばドラム径が80[mm]のアルミニウム製の導電性円筒体(アルミ素管)の周面に、アンダーコート層(UCL:Under Coat Layer)、電荷発生層(CGL:Charge Generation Layer)、電荷輸送層(CTL:Charge Transport Layer)を順次積層した負帯電型の有機感光体(OPC:Organic Photo-conductor)である。電荷発生層は、電荷発生材料(例えばフタロシアニン顔料)を樹脂バインダー(例えばポリカーボネイト)に分散させた有機半導体からなり、露光装置411による露光により一対の正電荷と負電荷を発生する。電荷輸送層は、正孔輸送性材料(電子供与性含窒素化合物)を樹脂バインダー(例えばポリカーボネイト樹脂)に分散させたものからなり、電荷発生層で発生した正電荷を電荷輸送層の表面まで輸送する。
【0029】
制御部100は、感光体ドラム413を回転させる駆動モーター(図示略)に供給される駆動電流を制御することにより、感光体ドラム413を一定の周速度で回転させる。
【0030】
帯電装置414は、光導電性を有する感光体ドラム413の表面を一様に負極性に帯電させる。露光装置411は、例えば半導体レーザーで構成され、感光体ドラム413に対して各色成分の画像に対応するレーザー光を照射する。感光体ドラム413の電荷発生層で正電荷が発生し、電荷輸送層の表面まで輸送されることにより、感光体ドラム413の表面電荷(負電荷)が中和される。感光体ドラム413の表面には、周囲との電位差により各色成分の静電潜像が形成される。
【0031】
帯電装置414として、コロナ放電によって感光体ドラム413の表面を一様に負極性に帯電させるコロナ放電器が利用されている。帯電装置414は、帯電ワイヤーおよびシールド電極を有している。帯電ワイヤーは感光体ドラム413の幅方向(長手方向)に沿って配置されている。帯電ワイヤーに高電圧を供給することによって、帯電ワイヤーと当該帯電ワイヤーを囲むシールド電極との間でコロナ放電を生じさせて、シールド電極に対向して配置されている感光体ドラム413の表面を均一に帯電させる。
【0032】
現像装置412は、二成分現像方式の現像装置であり、感光体ドラム413の表面に各色成分のトナーを付着させることにより静電潜像を可視化してトナー像を形成する。
【0033】
ドラムクリーニング装置415は、感光体ドラム413の表面に摺接されるドラムクリーニングブレード等を有し、一次転写後に感光体ドラム413の表面に残存する転写残トナーを除去する。
【0034】
中間転写ユニット42は、中間転写ベルト421、一次転写ローラー422、複数の支持ローラー423、二次転写ローラー424およびベルトクリーニング装置426等を備える。
【0035】
中間転写ベルト421は無端状ベルトで構成され、複数の支持ローラー423にループ状に張架される。複数の支持ローラー423のうちの少なくとも1つは駆動ローラーで構成され、その他は従動ローラーで構成される。例えば、K成分用の一次転写ローラー422よりもベルト走行方向下流側に配置されるローラー423Aが駆動ローラーであることが好ましい。これにより、一次転写部におけるベルトの走行速度を一定に保持しやすくなる。駆動ローラー423Aが回転することにより、中間転写ベルト421は矢印A方向に一定速度で走行する。
【0036】
中間転写ベルト421は、導電性および弾性を有するベルトであり、表面に体積抵抗率が8~11[logΩ・cm]である高抵抗層を有する。中間転写ベルト421は、制御部100からの制御信号によって回転駆動される。なお、中間転写ベルト421については、導電性および弾性を有するものであれば、材質、厚さおよび硬度を限定しない。
【0037】
中間転写ベルト421は、具体的には、基材層および表面層からなる積層構造を有している。基材層は、導電材等を分散させた合成樹脂からなる。基材層は、単層構成であっても2層以上の複数層構造であってもよい。合成樹脂としては、例えば、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリフェニレンサルファンド、ポリアミドなど、又は、これらの混合物等が例示される。表面層は、アルキル基を含む酸化ケイ素として、例えば、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシランなどのシロキサン化合物が例示される。シロキサン化合物としては、シランカップリング剤や、その他従来公知の材料でもよい。
【0038】
一次転写ローラー422は、各色成分の感光体ドラム413に対向して、中間転写ベルト421の内周面側に配置される。中間転写ベルト421を挟んで、一次転写ローラー422が感光体ドラム413に圧接されることにより、感光体ドラム413から中間転写ベルト421へトナー像を転写するための一次転写ニップが形成される。
【0039】
二次転写ローラー424は、駆動ローラー423Aのベルト走行方向下流側に配置されるバックアップローラー423Bに対向して、中間転写ベルト421の外周面側に配置される。中間転写ベルト421を挟んで、二次転写ローラー424がバックアップローラー423Bに圧接されることにより、中間転写ベルト421から用紙Sへトナー像を転写するための二次転写ニップが形成される。二次転写ローラー424を含む複数の支持ローラーには、二次転写ベルトがループ状に張架されている。
【0040】
一次転写ニップを中間転写ベルト421が通過する際、感光体ドラム413上のトナー像が中間転写ベルト421に順次重ねて一次転写される。具体的には、一次転写ローラー422に一次転写バイアスを印加し、中間転写ベルト421の裏面側(一次転写ローラー422と当接する側)にトナーと逆極性の電荷を付与することにより、トナー像は中間転写ベルト421に静電的に転写される。
【0041】
その後、用紙Sが二次転写ニップを通過する際、中間転写ベルト421上のトナー像が用紙Sに二次転写される。具体的には、二次転写ローラー424に二次転写バイアスを印加し、用紙Sの裏面側(二次転写ローラー424と当接する側)にトナーと逆極性の電荷を付与することにより、トナー像は用紙Sに静電的に転写される。トナー像が転写された用紙Sは定着部60に向けて搬送される。
【0042】
光センサー80は、中間転写ベルト421の表層面に対向して配置されている。光センサー80は、例えば、画像安定化のために中間転写ベルト421上に形成されるテストパターン(パッチ画像)の濃度を検出するための濃度センサー(IDCセンサー)である。光センサー80は、中間転写ベルト421の表面層に検出光を照射するとともに、検出光が中間転写ベルト421の表面層で反射した反射光を受光する。光センサー80の詳細については後述する。
【0043】
ベルトクリーニング装置426は、中間転写ベルト421の表面に摺接するベルトクリーニングブレード等を有し、二次転写後に中間転写ベルト421の表面に残留する転写残トナーを除去する。
【0044】
定着部60は、定着ベルト61、加熱ローラー62、用紙Sの定着面(トナー像が形成されている面)側に配置される上加圧ローラー63、用紙Sの裏面(定着面の反対の面)側に配置される下加圧ローラー65、及び加熱源60C等を備える。加熱ローラー62は、定着ベルト61を加熱する加熱源60Cを内蔵している。上加圧ローラー63に下加圧ローラー65が圧接されることにより、用紙Sを狭持して搬送する定着ニップが形成される。
【0045】
定着部60は、トナー像が二次転写され、搬送されてきた用紙Sを定着ニップで加熱、加圧することにより、用紙Sにトナー像を定着させる。定着部60は、定着器F内にユニットとして配置される。
【0046】
用紙搬送部50は、給紙部51、排紙部52、及び搬送経路部53等を備える。給紙部51を構成する3つの給紙トレイユニット51a~51cには、坪量やサイズ等に基づいて識別された用紙S(規格用紙、特殊用紙)が予め設定された種類毎に収容される。搬送経路部53は、レジストローラー対53aを含む複数の搬送ローラー対を有する。
【0047】
給紙トレイユニット51a~51cに収容されている用紙Sは、最上部から一枚ずつ送出され、搬送経路部53により画像形成部40に搬送される。このとき、レジストローラー対53aが配設されたレジストローラー部により、給紙された用紙Sの傾きが補正されるとともに搬送タイミングが調整される。そして、画像形成部40において、中間転写ベルト421のトナー像が用紙Sの一方の面に一括して二次転写され、定着部60において定着工程が施される。画像形成された用紙Sは、排紙ローラー52aを備えた排紙部52により機外に排紙される。
【0048】
ところで、画像形成装置1において、中間転写ベルト421の表面層には、最表層の表面粗さや、表面層の膜厚のばらつきが存在する。これにより、検出光が表面層で反射する反射光の中に含まれる干渉縞が変化する。このため、反射光量(光センサー80の出力)が変動する。その結果、画像安定化制御の精度が低下するおそれがある。以下の説明において、中間転写ベルト421の表面層の最表層の表面粗さを、単に「表面粗さ」という場合がある。また、中間転写ベルト421の表面層の膜厚を、単に「膜厚」という場合がある。
【0049】
図6Aは、表面粗さが小さい場合を表す図、
図6Bは、膜厚と干渉縞との関係を表し、また、光センサー80から観察される干渉縞を表す図である。
図6Aにおいて、横軸を光センサー80の検出範囲(検出スポット)の位置、縦軸を表面粗さ及び中心膜厚とする。
図6Bにおいて、横軸を、拡大された検出範囲の位置、縦軸を膜厚差Δdとする。なお、光センサー80の主波長λPが870nmであり、中間転写ベルト421の表面層に照射される検出光の入射角が0度(垂直)であることを前提条件した場合、反射光の中に明干渉が含まれる場合の膜厚と反射光の中に暗干渉が含まれる場合の膜厚との膜厚差Δdは、0.15μmである。
【0050】
図6Bに示すように、膜厚差Δdが0.15μm未満の場合、検出範囲の位置間における反射光量(干渉縞)の変化は大きい。具体的には、反射光の中に明干渉が含まれ、暗干渉が含まれない検出範囲(膜厚1.50μmの検出範囲)と、反射光の中に明干渉が含まれず、暗干渉が含まれる検出範囲(膜厚1.65μmの検出範囲)とが存在する。反射光の中に明干渉が含まれ、暗干渉が含まれない場合の反射光量は多い。反射光の中に暗干渉が含まれ、明干渉が含まれない場合の反射光量は少ない。つまり、検出範囲の位置間における反射光量の変化が大きい。このように、検出範囲の位置間における反射光量の変化が大きい場合に、光センサー80の出力に基づいて行われる画像安定化制御の精度が低下するおそれがある。
【0051】
図7Aは、表面粗さが大きい場合を表す図、
図7Bは、膜厚と干渉縞との関係を表し、また、光センサー80から観察される干渉縞を表す図である。
図7Aにおいて、横軸を光センサー80の検出範囲(検出スポット)の位置、縦軸を表面粗さ及び中心膜厚とする。
図7Bにおいて、横軸を、拡大された検出範囲の位置、縦軸を膜厚差Δdとする。なお、上記する表面粗さが小さい場合の前提条件と表面粗さが大きい場合の前提条件とは、同じである。
【0052】
図7Bに示すように、膜厚差Δdが0.15μm以上の場合、検出範囲の位置間における反射光量(干渉縞)の変化は小さい。具体的には、反射光の中に3つの明干渉が含まれ、2つの暗干渉が含まれる検出範囲(膜厚1.50μmの検出範囲)と、反射光の中に2つの明干渉が含まれ、3つの暗干渉が含まれる検出範囲(膜厚1.65μmの検出範囲)とが存在する。両方の検出範囲における反射光量は、明干渉と暗干渉とを含んだ平均化された光量になる。つまり、検出範囲の位置間における反射光量の変化が小さい。このように、検出範囲の位置間における反射光量の変化が小さい場合に、光センサー80の出力に基づいて行われる画像安定化制御の精度が向上する。
【0053】
そこで、本実施の形態では、検出範囲の位置間における反射光量の変化を抑えるために、積極的に光学的干渉を発生させ、検出範囲の中に明干渉と暗干渉とが含まれるようにして、反射光量を平均化させることで、反射光量の変化を抑制する。
【0054】
図8は、光センサー80を概略的に示す図である。光センサー80は、予め定められた検出条件に基づいて、中間転写ベルト421の表面層に検出光を照射するとともに、検出光が中間転写ベルト421の表面層で反射した反射光を受光する。具体的には、光センサー80は、中間転写ベルト421の表面層上に形成されたテストパターン(パッチ画像)の反射強度を検出する。
【0055】
図8に示すように、光センサー80は、例えば発光ダイオード(LED)などの発光素子と、フォトダイオード(PD)などの受光素子とを有する。発光素子は、中間転写ベルト421の表面層における検出範囲に検出光を照射する。受光素子は、検出光が表面層で反射した反射光を受光する。
【0056】
制御部100は、光センサー80が受光する反射光の中に明干渉と暗干渉とが含まれるように、検出条件を制御する。具体的には、制御部100は、表面粗さに応じて、光センサー80の主波長λpを制御するとともに、検出範囲のスポット径Zが表面粗さの間隔(ここでは、平均粗さ間隔RSm[mm])より大きくなるように制御する。なお、表面粗さは、例えば、中間転写ベルト421の製造時や出荷時の検査データや、汎用の表面粗さ測定器で測定したデータが用いられる。
【0057】
図9は、膜厚と正規化反射率との関係を表す図である。
図9において、横軸を膜厚、縦軸を正規化反射率とする。以下の説明では、中間転写ベルト421の表面層に照射される検出光の入射角は、20°(垂直が0°)であり、表面層の屈折率は、主成分である酸化ケイ素SiO
2の屈折率1.46(波長550nm時)であるとする。
【0058】
図9に示すように、光センサー80の主波長λpが900nmの場合、明干渉を示すときの膜厚(明干渉膜厚)は、1.275μmであり、暗干渉を示すとき膜厚(暗干渉膜厚)は、1.120μmである。これにより、明干渉膜厚と暗干渉膜厚との膜厚差Δdは、0.155μm(=1.275-1.120)になる。
【0059】
また、主波長λpが750nmの場合、明干渉膜厚は、1.330μmであり、暗干渉膜厚は、1.195μmである。これにより、膜厚差Δdは、0.135μm(=1.330-1.195)になる。
【0060】
また、主波長λpが600nmの場合、明干渉膜厚は、1.265μmであり、暗干渉膜厚は、1.158μmである。これにより、膜厚差Δdは、0.107μm(=1.265-1.158)になる。
【0061】
また、主波長λpが450nmの場合、明干渉膜厚は、1.270μmであり、暗干渉膜厚は、1.188μmである。これにより、膜厚差Δdは、0.082μm(=1.270-1.188)になる。
【0062】
以上により、膜厚差Δdは、主波長λpによって異なる。膜厚差Δdは、主波長λpが短波長であるほど小さくなる。
【0063】
図10は、主波長λpと膜厚差Δdとの関係を表す図である。
図10において、横軸xを主波長λp[nm]、縦軸yを膜厚差Δd[μm]とする。
図10に、xy座標上にプロットされた上記の4点のデータ(例えば、主波長λp=900nm、膜厚差Δd=0.155μm等)を示す。4点のデータを最小二乗法等により直線近似することにより、主波長λpと膜厚差Δdとの関係式が求められる。関係式は、以下の式(3)で表される。
y=0.000177x・・・(3)
【0064】
主波長λpと膜厚差Δdとが式(3)を満たすことは、光センサー80が受光する反射光の中に明干渉と暗干渉とが一つずつ含まれること意味する。
【0065】
反射光の中に、明干渉と暗干渉とを一つ以上ずつ含ませるためには、以下の式(4)を満たす光センサー80の主波長λpに設定すればよい。
X>a*Δd(λp)・・・(4)
ここで、Xは、表面粗さである。aは、1以上の任意の値である。Δd(λp)は、上記の式(3)を満たす膜厚差である。
【0066】
表面粗さに関するパラメータは、十点平均粗さ(Rz)、最大高さ粗さ、粗さ曲線の最大山高さ(Rp)、粗さ曲線の最大谷深さ(Rv)、粗さ曲線要素の平均高さ(Rc)、粗さ曲線の最大断面高さ(Rt)、算術平均粗さ(Ra)、二乗平均平方根粗さ(Rq)、等が例示される。なお、本実施の形態では、パラメータを十点平均粗さ(Rz)で説明する。
【0067】
例えば、a=1(明干渉と暗干渉とが一つずつ)、十点平均粗さRz=0.12μmとした場合、膜厚差Δdが0.12μmとなる主波長λpは、式(3)から678nmと求まる。主波長λpを678nm以下に設定すれば、X(Rz)>Δd(λp)を満たす。
【0068】
主波長λpの範囲は、400nmから1000nmが好ましく、400nmから678nmがさらに好ましい。なお、主波長λpの範囲は、コスト面などの理由から設定されるが、将来、安価になれば、これ以外の波長であってもよい。
【0069】
上記実施の形態における画像形成装置1によれば、制御部100は、光センサー80が受光する反射光の中に明干渉と暗干渉とを含ませるように、光センサー80の主波長を制御する。これにより、反射光量が平均化するため、光センサー80の出力の変動を抑制することができる。
【0070】
また、上記実施の形態によれば、制御部100は、光センサー80の検出範囲のスポット径Zが平均粗さ間隔RSmより大きくなるように制御する。これにより、反射光の中に明干渉と暗干渉とを含ませることができるため、光センサー80の出力を安定させることができる。具体的には、中間転写ベルト421の表面層の平均粗さ間隔RSmが約0.04mmから0.20mmである場合、スポット径Zがφ3.0mmの光センサー80、および、スポット径Zがφ2.5mmの光センサー80においては、共に、膜厚のばらつきが生じても安定した反射光を検出することが可能である。
【0071】
(変形例1)
次に、変形例1について説明する。反射光量をより平均化するためには、反射光の中に明干渉と暗干渉とを均等に含ませることが好ましい。
【0072】
上記(4)式における任意の数aが正の整数Nの場合、明干渉と暗干渉とは同数・同比率となる(状態A)、aが整数Nから半値(0.5)ずれた場合、明干渉又は暗干渉のいずれかが多い状態、偏った状態(状態B)となる。そこで、aを状態Aと状態Bとの中間よりも状態Aに近い状態、すなわち、aを、整数Nから0.25(=0.5/2)ずれた範囲に設定する。これを、式(5)で表す。
N-0.25≦a≦N+0.25・・・(5)
【0073】
以上により、変形例1における制御部100は、上記の式(4)および(5)を満たすように、光センサー80の主波長λpを制御する。これにより、反射光量をより平均化することができる。その結果、光センサー80の出力の変動をさらに抑えることができる。
【0074】
(変形例2)
次に、変形例2について、
図11、
図12、
図13、
図13A及び
図13Bを参照して説明する。実験により、表面粗さに対する光センサー80の出力を求める。ここでは、表面粗さと任意の値aとを、上記の式(4)を満たすように設定した。また、式(4)におけるΔd(λp)を、0.15μmとした。
【0075】
次の評価結果が得られた。
図11は、表面粗さ(十点平均粗さRz)に対する光センサー80の出力のばらつきの評価結果を表す図である。なお、光センサー80の出力のばらつきは、中間転写ベルト421の1周長を検出した時のVmax-Vminで評価した。なお、評価基準として、ばらつきがある程度の範囲に抑えられた場合を“△”とした。また、ばらつきが許容範囲内に抑えられた場合を“〇”とした。ばらつきが十分に抑えられた場合を“◎”とした。
【0076】
図11に示す評価結果から次のことがわかった。光センサー80の出力のばらつきが許容されるためには、表面粗さは、0.2μm以上、任意の値aは、1.3以上、整数Nは、2以上とする必要である。また、表面粗さは、0.6μm以上、任意の値aは、3.8以上、整数Nは、4以上とすることが好ましい。
【0077】
なお、主波長λpは、上述するようにコストの面などの理由から、400nmから1000nmまでの中で設定される。このため、整数Nの上限は、8となる。これにより、整数Nは、式(6)を満たすことが好ましい。
4≦N≦8・・・(6)
【0078】
図11に示す評価結果が得られた実験においては、Δd(λP)を一定(=0.15μm)とした上で、複数種類の表面粗さを設定した。また、その表面粗さに応じた任意の値aを設定した。
【0079】
以下の実験においては、表面粗さ(十点平均粗さRz)を一定(=0.6μm)とした上で、複数種類の主波長λpを設定した。また、その主波長λpに応じた任意の値aを設定した。
【0080】
次の評価結果が得られた。
図12は、表面粗さRzが0.6μmの中間転写ベルト421において光センサー80の出力のばらつきの評価結果を表す図である。
図12に、表面粗さRzに対して、式(7)を満たす主波長λpを示す。
0.6>a*Δd(λp)・・・(7)
なお、任意の値aは、式(8)を満たす。
N-0.25≦a≦N+0.25(Nは、1から8の整数)・・・(8)
【0081】
図12に示す評価結果から次のことがわかった。なお、評価基準として、ばらつきがある程度の範囲に抑えられた場合を“△”とした。また、ばらつきが許容範囲内に抑えられた場合を“〇”とした。ばらつきが十分に抑えられた場合を“◎”とした。表面粗さが0.6μmの場合、光センサー80の出力のばらつきが許容されるためには、任意の値aは、1.75以上、整数Nは、2以上とする必要である。また、任意の値aは、3.75以上、整数Nは、4以上とすることが好ましい。
【0082】
具体的に、主波長λp及び任意の値aを設定した光センサー80の出力のばらつきを測定した。
図13Aは、940nm(a=3.5)の主波長λpを有する光センサー80の出力のばらつきを示す図である。
図13Aにおいて、横軸をベルト走行距離[mm]、縦軸をセンサー出力[V]とする。
図13Aに示すように、ばらつきの範囲は、2.65[V]から2.95[V]であって、大きかった。その結果、表面層の膜厚のばらつきがある場合、光センサー80が安定した反射光を検出できなかった。
【0083】
図13Bは、635nm(a=5.2)の主波長λpを有する光センサー80の出力のばらつきを示す図である。
図13Bにおいて、横軸をベルト走行距離[mm]、縦軸をセンサー出力[V]とする。
図13Bに示すように、ばらつきの範囲は、2.85[V]から2.95[V]であって、小さかった。その結果、表面層の膜厚のばらつきがある場合、光センサー80が安定した反射光を検出できた。なお、図示しないが、870nm(a=3.8)の主波長λpを有する光センサー80の出力のばらつきも測定した。この場合も、ばらつきの範囲は、小さかった。その結果、表面層の膜厚のばらつきがある場合、光センサー80が安定した反射光を検出できた。
【0084】
(変形例3)
次に、変形例3について
図14および
図15を参照して説明する。制御部100は、表面粗さに応じて、光センサー80の主波長λpを選択する。
【0085】
変形例3における画像形成装置1は、発光ダイオード(LED)から照射された白色光を複数の単色光に分光する分光部を備えている。
図14に、分光部としてプリズム82を示している。プリズム82は、分光した複数の単色光をフォトダイオード(PD)が選択的に受光するように回転する。制御部100は、表面粗さに応じた主波長λpを求め、フォトダイオード(PD)が所望の主波長の光を受光するように、プリズム82を回転させる。なお、分光部としては、プリズム82に限らず、例えば、
図15に示すように、透過型回折格子84であってもよい。また、制御部100は、表面粗さに応じた主波長λpをまとめた表であるテーブルに基づいて、主波長λpを求めてもよい。
【0086】
変形例3によれば、一つの光センサー80であっても、分光部を備えることで、表面粗さに応じた主波長λpを、複数種類の主波長λpの中から選択することが可能となる。
【0087】
(変形例4)
次に、変形例4について
図16を参照して説明する。なお、
図16における上方向を中間転写ベルト421の回転方向(副走査方向)とし、左右方向を中間転写ベルト421の軸方向(走査方向)とする。
【0088】
複数種類の光センサー80は、
図16に示すように、軸方向に配置されている。ここで、それぞれの光センサー80の主波長λpは、850nm、700nm、550nm、400nmである。なお、光センサー80を副走査方向に配置してもよい。制御部100は、表面粗さに応じた主波長λpを求め、その主波長λpを有する光センサー80を選択する。なお、制御部100は、表面粗さに応じた主波長λpをまとめた表であるテーブルに基づいて、主波長λpを求めてもよい。
【0089】
変形例4によれば、主波長λpが互いに異なる複数種類の光センサー80を備えることで、表面粗さに応じた主波長λpを有する光センサー80を、複数種類の光センサー80のから選択することが可能となる。
【0090】
(変形例5)
次に、変形例5について
図17を参照して説明する。上記実施の形態では、制御部100は、表面粗さに応じて、検出範囲のスポット径Zが表面粗さの間隔(例えば、平均粗さ間隔RSm)より大きくなるように、例えば、絞り(図示略)を制御する。
【0091】
これに対して、変形例5では、
図17に示すように、中間転写ベルト421の表面層に沿って拡散強度が互いに異なる複数種類の拡散フィルター86が配置される。拡散フィルター86のそれぞれの拡散倍率は、例えば、1.0倍、1.5倍、2.0倍、3.0倍である。複数種類の拡散フィルター86は、センサーの防塵シャッター88の板金に保持されている。制御部100は、表面粗さの間隔に応じたスポット径Z(表面粗さの間隔より大きなスポット径Z)を求め、スポット径Zに応じた所望の拡散フィルター86が光路上に配置されるように、防塵シャッター88を表面層に沿って移動させる。なお、制御部100は、表面粗さの間隔に応じたスポット径Zをまとめた表であるテーブルに基づいて、スポット径Zを求めてもよい。
【0092】
変形例5によれば、一つの光センサー80であっても、複数種類の拡散フィルター86を備えることで、表面粗さの間隔に応じたスポット径Zが得られる拡散フィルター86を、複数種類の拡散フィルター86の中から選択することが可能となる。
【0093】
(変形例6)
次に、変形例6について
図18を参照して説明する。上記の変形例5では、
図17に示すように複数種類の拡散フィルター86を備え、表面粗さの間隔に応じたスポット径Zを選択するようにした。これに対して、変形例6では、
図18に示すように、スポット径Zが互いに異なる複数種類の光センサー80が備えられている。
【0094】
図18における上方向を中間転写ベルト421の回転方向(副走査方向)とし、左右方向を中間転写ベルト421の軸方向(走査方向)とする。複数種類の光センサー80は、
図18に示すように、軸方向に配置されている。ここで、それぞれの光センサー80の主波長λpは、850nm、700nm、550nm、400nmである。光センサー80は、主波長λpに応じたスポット径Zを有している。制御部100は、表面粗さの間隔に応じたスポット径Z(表面粗さの間隔より大きなスポット径Z)を求め、そのスポット径Zを有する光センサー80を選択する。なお、制御部100は、表面粗さに応じたスポット径Zをまとめた表であるテーブルに基づいて、スポット径Zを求めてもよい。
【0095】
変形例6によれば、スポット径Zが異なる複数種類の光センサー80を備えることで、表面粗さの間隔に応じたスポット径Zを有する光センサー80を、複数種類の光センサー80の中から選択することが可能となる。
【0096】
その他、上記実施の形態は、何れも本発明の実施するにあたっての具体化の一例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその要旨、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【符号の説明】
【0097】
1 画像形成装置
80 光センサー
82 プリズム
84 透過型回折格子
86 拡散フィルター
88 防塵シャッター
100 制御部
421 中間転写ベルト