(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-21
(45)【発行日】2022-03-02
(54)【発明の名称】電磁調理のための方法および装置
(51)【国際特許分類】
H05B 6/68 20060101AFI20220222BHJP
H05B 6/70 20060101ALI20220222BHJP
【FI】
H05B6/68 320Z
H05B6/70 E
(21)【出願番号】P 2017562602
(86)(22)【出願日】2016-06-03
(86)【国際出願番号】 US2016035727
(87)【国際公開番号】W WO2016196939
(87)【国際公開日】2016-12-08
【審査請求日】2019-04-11
(32)【優先日】2015-06-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500013382
【氏名又は名称】ワールプール コーポレイション
(73)【特許権者】
【識別番号】000005821
【氏名又は名称】パナソニック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100132241
【氏名又は名称】岡部 博史
(72)【発明者】
【氏名】ダヴィデ・グアッタ
(72)【発明者】
【氏名】フランコ・ブリンダーニ
(72)【発明者】
【氏名】アドリアーノ・スカブッリ
【審査官】土屋 正志
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2009/050893(WO,A1)
【文献】特開2008-310969(JP,A)
【文献】特表2001-510898(JP,A)
【文献】特開昭59-207595(JP,A)
【文献】特開昭61-027093(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 6/68
H05B 6/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
密閉されたキャビティと、
食品を加熱し、調理するために電磁放射線を密閉されたキャビティに導入するように構成された複数の無線周波数フィードと、
前記複数の無線周波数フィードの各々に結合された複数の高出力無線周波数増幅器であって、各高出力無線周波数増幅器が入力無線周波数信号に対して電力に関して増幅された信号を出力するように構成された少なくとも1つの増幅段を備える、複数の高出力無線周波数増幅器と、
入力無線周波数信号を生成するために前記複数の高出力無線周波数増幅器に結合される、信号発生器と、
コントローラと、を備え、
前記コントローラは、
前記信号発生器および前記複数の高出力無線周波数増幅器のうちの選択された高出力無線周波数増幅器に対して、選択された周波数、選択された位相値、および選択された電力レベルの無線周波数信号を出力させるように構成され、前記コントローラに入力された信号に基づいて、前記選択された周波数が無線周波数電磁波の帯域幅における複数の周波数から選択され、前記選択された位相値が無線周波数電磁波の複数の位相値から選択され、そして前記選択された電力レベルが複数の電力レベルから選択されており、
前記周波数、位相値、および電力レベルの選択を通じて、前記コントローラが前記密閉されたキャビティ内で励起された共振モードを確認するように構成され、
前記コントローラが、さらに、確認された共振モードに基づいて、密閉されたキャビティ内の前記食料品の位置を決定するように構成され
、
選択された位相値が、密閉されたキャビティ内の偶対称の共振モードを活性化するように複数の位相値から選択され、および密閉されたキャビティ内の奇対称の共振モードを活性化するように複数の位相値から選択され、
前記コントローラが、さらに、偶対称の前記活性化された共振モードの少なくとも効率に基づいて前記密閉されたキャビティの中心に配置された食料品の存在を決定し、奇対称の前記活性化された共振モードの少なくとも効率に基づいて前記密閉されたキャビティの中心から遠くに配置された食料品の存在を決定するように構成された、
電磁調理器。
【請求項2】
前記複数の無線周波数フィードの各々が、一方の端部において前記高出力無線周波数増幅器のうちの1つに結合され、他方の端部において密閉されたキャビティに結合された導波管を含む、請求項1に記載の電磁調理器。
【請求項3】
前記複数の無線周波数フィードの各々が、導波管内で搬送された前記無線周波数信号を示すデジタル信号を出力するように構成された測定システムを含む、請求項2に記載の電磁調理器。
【請求項4】
前記測定システムが、各導波管内に配置された少なくとも2つのプローブアンテナを含む、請求項3に記載の電磁調理器。
【請求項5】
前記測定システムが、各導波管内で搬送された順方向および逆方向の無線周波数電磁信号の位相を測定するように構成された反射率計を含む、請求項3または4に記載の電磁調理器。
【請求項6】
前記高出力無線周波数増幅器の各々が、さらに、
前記少なくとも1つの増幅段の前記出力を受信するように構成されたプリント回路基板の積層体上に配置されたマイクロストリップと、
前記プリント回路基板の積層体の下に配置された金属ベース板と、
前記金属ベース板内に形成されたポケット内に配置された第1のフェライト磁石と、
前記第1のフェライト磁石の上に配置され、それと位置合わせされた第2のフェライト磁石と、
前記第1のフェライト磁石の上に前記第2のフェライト磁石を固定するように構成された1つまたは複数のクリップと、
を備えた統合型サーキュレータを含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の電磁調理器。
【請求項7】
前記高出力無線周波数増幅器の各々が、前記高出力無線周波数増幅器の前記出力を終端とする第1の部分と、前記導波管内に配置される第2の部分とを有する導波管励振器を含み、前記導波管励振器が、前記高出力無線周波数増幅器内での伝送に適した第1の伝送モードから前記導波管内での伝送に適した第2の伝送モードに電磁エネルギーを変換するように構成された、請求項2から5のいずれか一項に記載の電磁調理器。
【請求項8】
前記高出力無線周波数増幅器の各々と対応する前記導波管との間の接続を固定し、前記高出力無線周波数増幅器と対応する前記導波管との間に配置された前記導波管励振器の一部を取り囲むように構成された電磁ガスケットをさらに含む、請求項7に記載の電磁調理器。
【請求項9】
無線周波放射線によって密閉されたキャビティを励起する方法であって、
複数の周波数のための選択された位相値で前記密閉されたキャビティを励起するステップと、
前記選択された位相値の順方向および逆方向の電力測定値を収集するステップと、
複数の周波数のそれぞれの前記順方向および逆方向の電力測定値を使用して効率を決定することにより、前記選択された位相値の効率スペクトルを決定するステップと、
計算された効率スペクトルに基づいて前記密閉されたキャビティの共振モードを確認するステップと、
前記確認された共振モードに基づいて前記密閉されたキャビティ内に配置された食料品を分類するステップと、
前記密閉されたキャビティを励起するステップが、前記密閉されたキャビティ内の偶対称の共振モードを活性化するように同相関係を有する位相値を選択するステップと、前記密閉されたキャビティ内の奇対称の共振モードを活性化するように逆相関係を有する位相値を選択するステップと、
を含む、方法。
【請求項10】
前記食料品を分類するステップが、前記食料品の構成物を確認するステップを含む、請求項
9に記載の方法。
【請求項11】
前記食料品を分類するステップが、前記キャビティ内の前記食料品の配置を決定するステップを含む、請求項
9または
10に記載の方法。
【請求項12】
前記共振モードを確認するステップが、前記密閉されたキャビティを通過帯域RLC回路としてモデリングするステップと、特定の対称性クラスに対して励起された前記共振モードの臨界周波数を決定するステップとを含む、請求項
9から
11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記臨界周波数を決定するステップが、ベクトルフィッティングのステップを含む、請求項
12に記載の方法。
【請求項14】
前記偶対称の活性化された共振モードの効率に基づいて前記密閉されたキャビティの中心に配置された食料品の存在を決定するステップ、または前記奇対称の活性化された共振モードの前記効率に基づいて前記密閉されたキャビティの中心から遠くに配置された食料品の存在を決定するステップをさらに含む、請求項
9に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、その全体が参照により本明細書に組み込まれている、2015年6月3日に出願された米国仮特許出願第62/170,416号の優先権の利益を主張するものである。
【0002】
本装置は、一般に、電磁調理のための方法および装置に関し、より具体的には、電子レンジ内の共振モードを決定し、制御するための方法および装置に関する。
【背景技術】
【0003】
従来の電子レンジは、密閉されたキャビティ全体にわたって高周波交番電磁場が分布される誘電加熱処理によって食品を調理する。無線周波数スペクトルのサブバンド、2.45GHzまたはその付近のマイクロ波周波数は、主に水のエネルギーの吸収によって誘電加熱を引き起こす。
【0004】
従来のマイクロ波においてマイクロ波周波数放射を生成するために、高電圧トランスに印加される電圧は、マイクロ波周波数放射を生成するマグネトロンに印加される高電圧電力をもたらす。次いで、マイクロ波は、導波管を通して食品を収容する密閉されたキャビティに伝送される。マグネトロンのような単一の非コヒーレントソースによって密閉されたキャビティ内で食品を調理すると、食品の不均一な加熱になる場合もある。食品をより均一に加熱するために、電子レンジは、とりわけ、マイクロ波スタラーおよび食品を回転させるためのターンテーブルなどの機械的解決法を含む。共通のマグネトロン系マイクロ波ソースは、狭帯域でなく、調整可能でない(すなわち、時間とともに変化し、選択可能でない周波数でマイクロ波を放射する)。この種の共通のマグネトロン系マイクロ波ソースの代替として、固体ソースを調整可能でありコヒーレントな電子レンジに含むことができる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
一態様においては、電磁調理器は、密閉されたキャビティと、食品を加熱し、調理するために電磁放射線を密閉されたキャビティに導入するように構成される一組の無線周波数フィードと、前記一組の無線周波数フィードに結合される一組の高出力無線周波数増幅器であって、各高出力無線周波数増幅器が入力無線周波数信号に対して電力に関して増幅される信号を出力するように構成される少なくとも1つの増幅段を備える高出力無線周波数増幅器と、入力無線周波数信号を生成するために前記一組の高出力無線周波数増幅器に結合される信号発生器と、コントローラと、を備える。コントローラは、前記信号発生器および前記一組の高出力増幅器のうちの選択されたものに、選択された周波数、選択された位相値、および選択された電力レベルの無線周波数信号を出力させるように構成され、前記選択された周波数が無線周波数電磁波の帯域幅における一組の周波数から選択され、前記選択された位相値が無線周波数電磁波の一組の位相値から選択され、そして前記選択された電力レベルが一組の電力レベルから選択されており、前記密閉されたキャビティ内で励起された共振モードを確認するよう構成されている。
【0006】
他の態様においては、無線周波放射線によって密閉されたキャビティを励起する方法は、一組の周波数に対して選択された一組のフェーザで前記密閉されたキャビティを励起するステップと、前記選択された一組のフェーザの順方向および反射電力測定値を収集するステップと、前記選択された一組のフェーザの効率スペクトルを決定するステップと、前記計算された効率スペクトルに基づいて前記密閉されたキャビティの共振モードを確認するステップと、前記確認された共振モードに基づいて前記密閉されたキャビティ内で捜し出された食料品を分類するステップと、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、本明細書において説明されるさまざまな態様による、複数のコヒーレント無線周波数フィードを有する電磁調理器のブロック図である。
【
図2】
図2は、
図1の無線周波数信号発生器のブロック図である。
【
図3】
図3は、本明細書において説明されるさまざまな態様による、導波管に結合される高出力無線周波数増幅器を示す概略図である。
【
図4】
図4は、本明細書において説明されるさまざまな態様による、高出力無線周波数増幅器に使用するための統合型サーキュレータを示す断面図である。
【
図6】
図6は、本明細書において説明されるさまざまな態様による、一体化された測定システムを有する導波管に結合される高出力無線周波数増幅器を示す概略図である。
【
図7】
図7は、本明細書において説明されるさまざまな態様による、反射率計を含む一体化された測定システムを有する導波管に結合される高出力無線周波数増幅器を示す概略図である。
【
図8】
図8は、本明細書において説明されるさまざまな態様による、2つの無線周波数導波管に結合される共振キャビティを示す概略図である。
【
図9】
図9は、
図8の共振キャビティの同相および逆相励起の周波数に対する効率を示すグラフ図である。
【
図10】
図10は、本明細書において説明されるさまざまな態様による、キャビティの共振モードを決定するための解析方法の特徴を示す図である。
【
図11】
図11は、本明細書において説明されるさまざまな態様による、キャビティの共振モードを特徴付ける方法の特徴を示す図である。
【
図12】
図12は、本明細書において説明されるさまざまな態様による、共振キャビティ内に配置された食料品を探し出し、分類する方法の特徴を示す概略図である。
【
図13】
図13は、本明細書において説明されるさまざまな態様による、共振モードを確認し、共振キャビティ内に配置された食料品を分類する方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
添付の図面に示され、以下の明細書に説明される特定の装置およびプロセスは、添付の特許請求の範囲に定義される発明概念の単なる例示的な実施形態であることを理解されたい。したがって、本明細書において開示される実施形態に関する他の物理的特性は、特許請求の範囲が明示的に別段の定めを行った場合を除き、限定的であるとみなされるべきではない。
【0009】
ソリッドステート無線周波数(RF)調理機器は、密閉されたキャビティに電磁放射線を導入することによって食品を加熱し、調理する。密閉されたキャビティ内の異なる位置での複数のRFフィード(給電)は、それらが放射する際に動的電磁波パターンを作り出す。密閉されたキャビティ内で波パターンを制御し、形成するために、複数のRFフィードは、密閉されたキャビティ内のコヒーレンス(すなわち、静止した干渉パターン)を維持するように、別々に制御される電磁特性を有する波を放射することができる。例えば、各RFフィードは、他のフィードに対して異なる周波数、位相および/または振幅を伝送することができる。他の電磁特性は、RFフィード間で共通であり得る。例えば、各RFフィードは、共通であるが可変の周波数で伝送することができる。以下の実施形態は、RFフィードが密閉されたキャビティ内の物体を加熱するように電磁放射線を方向付ける調理器具を目的としているが、本明細書において説明される方法およびここから得られる発明概念はこれに限定されるものではないことが理解されよう。包含される概念および方法は、電磁放射線がキャビティ内の物体に作用するように密閉されたキャビティに方向付けられる任意のRF装置に適用可能である。例示的な装置には、オーブン、ドライヤー、蒸し器等がある。
【0010】
図1は、一実施形態による複数のコヒーレントRFフィード26A-Dを有する電磁調理器10のブロック図を示している。
図1に示されるように、電磁調理器10は、電源12、コントローラ14、RF信号発生器16、ヒューマンマシンインターフェース28、および、複数のRFフィード26A-Dに結合される複数の高出力RF増幅器18A-Dを含む。複数のRFフィード26A-Dはそれぞれ、複数の高出力RF増幅器18A-Dのうちの1つから密閉されたキャビティ20にRF電力を結合する。
【0011】
電源12は、商用電源から得られた電力をコントローラ14、RF信号発生器16、ヒューマンマシンインターフェース28、および複数の高出力RF増幅器18A-18Dに供給する。電源12は、これが電力を供給する装置の各々の必要な電力レベルに商用電源を変換する。電源12は、可変の出力電圧レベルを供給することができる。例えば、電源12は、0.5ボルトステップで選択的に制御される電圧レベルを出力することができる。このように、電源12は、典型的には、高出力RF増幅器18A-Dの各々に28ボルトの直流を供給するように構成されることができるが、所望のレベルだけRF出力電力レベルを減少させるように、15ボルトの直流などのより低い電圧を供給することができる。
【0012】
コントローラ14は、電磁調理器10に含むことができるが、これは、調理サイクルを実施するように電磁調理器10のさまざまな構成要素と動作可能に結合され得る。コントローラ14はまた、ユーザ選択入力を受信し、ユーザに情報を伝達するために、制御パネルまたはヒューマンマシンインターフェース28と動作可能に結合され得る。ヒューマンマシンインターフェース28は、ユーザが調理サイクルなどのコマンドをコントローラ14に入力し、情報を受け取ることができるようにするダイヤル、ライト、スイッチ、タッチスクリーン要素、およびディスプレイなどの動作制御装置を含むことができる。ユーザインターフェース28は、互いに集中し、または分散することもできる1つまたは複数の要素を含むことができる。コントローラ14は、また、電源12によって供給される電圧レベルを選択することもできる。
【0013】
コントローラ14は、メモリおよび中央処理装置(CPU)を備えることができ、好ましくはマイクロコントローラ内に具体化され得る。メモリは、調理サイクルを完了する際にCPUによって実行され得る制御ソフトウェアを格納するために使用され得る。例えば、メモリは、ユーザによって選択され、電磁調理器10によって完了され得る1つまたは複数の予めプログラムされた調理サイクルを格納することができる。コントローラ14はまた、1つまたは複数のセンサから入力を受信することもできる。コントローラ14と通信可能なように結合され得るセンサの非限定的な実施例としては、RF電力レベルを測定するためのRF電波光学の当業界で知られているピークレベル検出器と、密閉されたキャビティあるいは1つまたは複数の高出力増幅器18A-Dの温度を測定するための温度センサとがある。
【0014】
ヒューマンマシンインターフェース28によって提供されるユーザ入力、ならびに(
図1においてRF信号発生器16を通して高出力増幅器18A-Dの各々からコントローラ14までの経路によって表されている)複数の高出力増幅器18A-Dから生じる順方向および逆方向(または反射)の電力の大きさを含むデータに基づいて、コントローラ14は、調理方針を決定し、RF信号発生器16の設定値を計算することができる。このように、コントローラ14の主な機能のうちの1つは、ユーザによって開始される調理サイクルを例示化するように、電磁調理器10を作動させることである。次いで、下記に説明されるRF信号発生器16は、複数のRF波形、すなわち、コントローラ14によって示される設定値に基づく各高出力増幅器18A-Dに対するものを生成することができる。
【0015】
RFフィード26A-Dのうちの1つにそれぞれ結合される高出力増幅器18A-Dは、RF信号発生器16によって供給される低電力RF信号に基づいて高電力RF信号をそれぞれ出力する。高出力増幅器18A-Dの各々への低電力RF信号入力は、電源12によって供給される直流電力を高電力無線周波信号に変換することによって増幅され得る。1つの非限定的な実施例においては、各高出力増幅器18A-Dは、50から250ワットに及ぶRF信号を出力するように構成され得る。各高出力増幅器の最大出力ワット数は、実装に応じて250ワットより大きくても小さくてもよい。各高出力増幅器18A-Dは、過度のRF反射を吸収するようにダミーロードを含むことができる。
【0016】
複数のRFフィード26A-Dは、複数の高出力RF増幅器18A-Dから密閉されたキャビティ20に電力を供給する。複数のRFフィード26A-Dは、空間的に分離されるが固定された物理的位置で密閉されたキャビティ20に結合され得る。複数のRFフィード26A-Dは、RF信号の低電力損失伝播のために設計された導波管構造を介して実施され得る。1つの非限定的な実施例においては、マイクロ波工学で知られている金属の矩形導波管は、RF電力を、高出力増幅器18A-Dから密閉されたキャビティ20までおよそ0.03デシベル/メートルの電力減衰で導くことができる。
【0017】
そのうえ、RFフィード26A-Dの各々は、増幅器出力において順方向および逆方向の電力レベルまたは位相の大きさを測定する感知能力を含むことができる。測定された逆方向電力は、高出力増幅器18A-Dと密閉されたキャビティ20との間のインピーダンス不整合の結果として高出力増幅器18A-Dに戻された電力レベルを示す。コントローラ14およびRF信号発生器16にフィードバックして調理戦を部分的に実施することに加えて、逆方向の電力レベルは、高出力増幅器18A-Dに損傷を与え得る過度の反射電力を示すことができる。
【0018】
高出力増幅器18A-Dの各々における逆方向の電力レベルの決定に加えて、ダミー負荷を含む高出力増幅器18A-Dにおける温度感知は、逆方向の電力レベルが所定の閾値を超えたかどうかを決定するのに必要なデータを提供することができる。閾値を超える場合は、電源12、コントローラ14、RF信号発生器16、または高出力増幅器18A-Dを含むRF伝送チェーン内の制御要素のいずれかは、高出力増幅器18A-Dがより低い電力レベルに切り換えられるかまたは完全にオフにされ得ることを決定することができる。例えば、各高出力増幅器18A-Dは、逆方向の電力レベルまたは感知された温度が数ミリ秒の間に高すぎる場合は、自動的にそれ自体を切ることができる。あるいは、電源12は、高出力増幅器18A-Dに供給される直流電力を遮断することができる。
【0019】
密閉されたキャビティ20は、その中に任意の仕切り24を挿入することによって、サブキャビティ22A-Bを選択的に含むことができる。密閉されたキャビティ20は、食品の配置および取り出しのために密閉されたキャビティ20の内部へのユーザアクセスを可能にする遮蔽されたドア、または任意の仕切り24を、少なくとも1つの側面に含むことができる。
【0020】
RFフィード26A-Dの各々の伝送帯域幅は、2.4GHzから2.5GHzに及ぶ周波数を含むことができる。RFフィード26A-Dは、他のRF帯域を伝送するように構成され得る。例えば、2.4GHzと2.5GHzとの間の周波数の帯域幅は、工業、科学、および医療(ISM)無線帯域を構成するいくつかの帯域のうちの1つである。他のRF帯域の伝送が考えられ、13.553MHzから13.567MHz、26.957MHzから27.283MHz、902MHzから928MHz、5.725GHzから5.875GHz、および24GHzから24.250GHzの周波数によって定義されるISM帯域に含まれる非限定的な実施例を含むことができる。
【0021】
次に
図2を参照すると、RF信号発生器16のブロック図が示されている。RF信号発生器16は、RFコントローラ32の方向の下に順次結合されたる周波数発生器30、位相発生器34、および振幅発生器38を含む。このように、RF信号発生器16から高出力増幅器に出力される実際の周波数、位相、および振幅は、好ましくはデジタル制御インターフェースとして実装されるRFコントローラ32を通してプログラム可能である。RF信号発生器16は、調理コントローラ14から物理的に分離されていてもよく、コントローラ14に物理的に取り付けられていてもよく、またはコントローラ14に一体化されていてもよい。RF信号発生器16は、好ましくは、特注の集積回路として実装される。
【0022】
図2に示されるように、RF信号発生器16は、共通であるが可変の周波数(例えば、2.4GHzから2.5GHzに及ぶ)を共有する4つのRFチャンネル40A-Dを出力するが、各RFチャンネル40A-Dに対して位相および振幅に関して設定可能である。本明細書において説明される構成は、例示的なものであり、限定的なものとみなされるべきではない、例えば、RF信号発生器16は、多かれ少なかれチャンネルを出力するように構成されることができ、実装に応じてチャンネルの各々に固有の可変周波数を出力する能力を含むことができる。
【0023】
前述のように、RF信号発生器16は、電源12から電力を引き出し、コントローラ14から1つまたは複数の制御信号を入力することができる。追加の入力は、高出力増幅器18A-Dによって決定される順方向および逆方向の電力レベルを含むことができる。これらの入力に基づいて、RFコントローラ32は、周波数を選択し、選択された周波数を示す信号を出力するように周波数発生器30に信号を送ることができる。
図2において周波数発生器30を表すブロックに図式的に表されているように、選択された周波数は、その周波数が一組の離散周波数にわたる正弦波信号を決定する。1つの非限定的な実施例においては、2.4GHzから2.5GHzに及ぶ選択可能な帯域幅は、101の固有の周波数選択を可能にする1MHzの分解能で離散化され得る。
【0024】
周波数発生器30の後、信号は、出力チャンネル毎に分割され、位相発生器34に方向付けられる。各チャンネルは、異なる位相、すなわち正弦関数の初期角度を割り当てられ得る。
図2においてチャンネル毎の位相発生器36A-Dを表すブロックに図式的に表されているように、チャンネルに対するRF信号の選択された位相は、一組の離散的な角度にわたることができる。1つの非限定的な実施例においては、選択可能な位相(振動の半サイクル、または180度にわたって包まれている)は、チャンネル毎に19の固有の位相選択を可能にする10度の分解能で離散化され得る。
【0025】
位相発生器34の後で、チャンネル毎のRF信号が、振幅発生器38に方向付けられ得る。RFコントローラ32は、チャンネル40A-Dに異なる振幅を出力するように、各チャンネル(共通の周波数および異なる位相で
図2に示されている)を割り当てることができる。
図2においてチャンネル毎の振幅発生器を表すブロックに図式的に表されているように、RF信号の選択された振幅は、一組の離散的振幅(または電力レベル)にわたって変化することができる。1つの非限定的な実施例においては、選択可能な振幅は、チャンネル毎に47の固有の振幅選択を可能にする0から23デシベルの範囲にわたって0.5デシベルの分解能で離散化され得る。
【0026】
各チャンネル40A-Dの振幅は、実装に応じていくつかの方法のうちの1つによって制御され得る。例えば、各チャンネルに対する振幅発生器38の供給電圧の制御は、それぞれの高出力増幅器18A-Dに対する所望のRF信号出力に正比例する、RF信号発生器16からの各チャンネル40A-Dの出力振幅をもたらし得る。あるいは、チャンネル毎の出力は、振幅レベルがパルス幅変調信号のデューティサイクルによって符号化されるパルス幅変調信号として符号化され得る。さらにもう1つの代替は、高出力増幅器18A-Dの各々に供給される供給電圧を変化させて密閉されたキャビティ20に伝送されるRF信号の最終振幅を制御するように、電源12のチャンネル毎の出力を調整することである。
【0027】
上記のように、電磁調理器10は、制御された量の電力を複数のRFフィード26A-Dにおいて密閉されたキャビティ20に供給することができる。さらに、各RFフィード26A-Dから供給される電力の振幅、周波数、および位相の制御を維持することによって、電磁調理器10は、密閉されたキャビティ20に供給される電力をコヒーレントに制御することができる。コヒーレントRFソースは、電磁波の干渉特性を利用するように制御された方法で電力を供給する。すなわち、空間の定義された領域および時間にわたって、コヒーレントRFソースは、電界が付加的な方法で分布されるように変化のない干渉パターンを生成することができる。その結果として、干渉パターンは、RFソースのいずれかよりも振幅が大きい(すなわち、強め合う干渉)か、またはRFソースのいずれかよりも小さい(すなわち、弱め合う干渉)電磁界分布を作り出すように加えることができる。
【0028】
RFソースの調整および動作環境(すなわち、密閉されたキャビティおよび内部の内容物)の特徴付けは、電磁調理のコヒーレント制御を可能にし、密閉されたキャビティ20内の物体とのRF電力の結合を最大化することができる。動作環境への効率的な伝送は、RF生成手順の較正を必要とする場合もある。上記のように、電磁加熱システムにおいては、電力レベルは、電源12からの電圧出力を含む多くの構成要素、高出力増幅器18A-Dおよび振幅発生器38の両方を含む可変利得増幅器の段の利得、周波数発生器30の同調周波数等によって制御され得る。出力電力レベルに影響を及ぼす他の要因には、構成要素の寿命、構成要素間相互作用、および構成要素の温度がある。
【0029】
次に
図3を参照すると、本明細書において説明されるさまざまな態様による、導波管110に結合される高出力増幅器18を示す概略図が示されている。高出力増幅器18は、ガイド構造102を介してサーキュレータ104に結合される1つまたは複数の増幅段100を含む。サーキュレータ104は、ガイド構造106によって導波管励振器108に結合される。高出力増幅器18は、導波管励振器108によって導波管110に電気的に結合され、電磁ガスケット112によって機械的に結合される。
【0030】
高出力増幅器18は、いくつかの増幅段100が相互連結されて、増幅器入力から増幅器出力への無線周波数信号を増幅するように構成される。増幅段100は、入力電圧の小さな変化を変換して出力電圧の大きな変化を生成するように構成される1つまたは複数のトランジスタを含む。回路の構成に応じて、増幅段100は、電流利得、電圧利得、またはその両方を生成することができる。
【0031】
増幅段100の出力は、ガイド構造102を介してサーキュレータ104に結合される。ガイド構造102は、印刷回路基板の誘電体基板上に印刷されるマイクロストリップを含むがこれに限定されない高出力無線周波数信号を搬送することができる任意の電気コネクタであることができる。サーキュレータ104は、無線周波数信号を1つの構成要素からもう1つの構成要素に結合するために、ポートがサーキュレータ104上のポイントである、あるポートから次の構成要素に無線周波数信号を伝送するパッシブマルチポート構成要素である。高出力増幅器18において、サーキュレータ104は、不整合負荷が電力を反射する時に起こり得る有害な影響から増幅段100を隔離するように保護装置として働く。
【0032】
サーキュレータ104は、ガイド構造106を介して導波管励振器108に結合される。高出力増幅器18は、その出力側で導波管励振器108によって終端となる。導波管励振器108は、電磁エネルギーを、高出力増幅器18内の伝送に適した第1のモードから導波管110内の伝送に適した第2のモードに変換する。このように、導波管110は、増幅された電磁信号を高出力増幅器からマイクロ波キャビティに搬送するためのRFフィード26A-Dとして働く。
【0033】
電磁ガスケット112は、高出力増幅器18と導波管110との間の確実な接続を提供し、高出力増幅器18と導波管110との間に配置される導波管励振器108の部分を取り囲む。電磁ガスケット112は、高出力増幅器18と導波管110との間の接続を確実にし、無線周波数で電磁シールドを行うために有用な1つまたは複数の材料から形成され得る。この種の材料は、銀またはニッケルなどの導電性粒子で充填されたシリコーンベースの成分が含まれ得るが、これらに限定されるものではない。
【0034】
高出力増幅器18の出力を終端とする導波管励振器108を設けると、従来のコネクタを介して結合されるマイクロ波装置の接合部で典型的に発生する電磁損失が低減される。すなわち、従来のマイクロ波装置は、コネクタの追加の経路長ならびに同軸コネクタの結合における損失に起因するRF損失を被る同軸コネクタ(例えば、BNCまたはN型コネクタ)を介して相互連結される。電磁ガスケット112は、導波管励振器108を遮蔽し、ならびに高出力増幅器18と導波管110との間の結合の機械的支持を提供することによって、導波管励振器108の効率を増大させる。
【0035】
次に
図4を参照すると、本明細書において説明されるさまざまな態様による、サーキュレータ104を示す断面側面図が示されている。上記のように、サーキュレータ104は、ガイド構造102を介して増幅段の出力側に結合される。サーキュレータ104は、金属ベース板120に取り付けられる積層体122を含む。
【0036】
積層体122に垂直な軸線方向に整列した2つのフェライト磁石126,128は、クリップ130によって積層体122に固定される。フェライト磁石126,128は、ディスクを含むがこれに限定されるものではない、サーキュレータ設計に適した任意の形状であってもよい。
【0037】
ガイド構造102は、積層体122上に印刷されたマイクロストリップを含むことができる。積層体122は、FR-2材料またはFR-4材料を含むがこれに限定されるものではない、プリント回路基板の絶縁層を設けるのに適した任意の材料を含むことができる誘電体基板である。積層体122は、サーキュレータ104に機械的支持を提供する金属ベース板120上に配置される。そのうえ、金属ベース板120は、熱散逸部分として、およびサーキュレータ104によって発生した熱を放散するように作用する。金属ベース板120は、下部フェライト磁石128を収容するポケット124を含む。
【0038】
サーキュレータ104の製造中、下部フェライト磁石128は、金属ベース板120のポケット124内に配置される。積層体122およびマイクロストリップガイド構造は、金属ベース板120に当てがわれる。上部フェライト磁石126は、下部フェライト磁石128の上に配置され、クリップ130によって積層体122に固定される。
【0039】
図5は、
図4の統合型サーキュレータを示す上面図である。
【0040】
上記のように、サーキュレータ104は、その磁気回路の一部として、プリント回路基板の積層体122、ならびに増幅段(
図3の要素100を参照)の出力側に結合されるマイクロストリップガイド構造102を含む。このように、サーキュレータ104は、製造プロセス中にはんだ接続部を必要とする入力または出力ピンを含まない。従来のはんだ接合部は、はんだ付けプロセスがコールドスポットまたは結合不良となる場合もあるので、高出力増幅器を信頼性の問題にさらす可能性がある。したがって、サーキュレータ104は、高出力増幅器にはんだ付けされる従来の別個の部品ではない。その代わりに、サーキュレータ104は、高出力増幅器の構成要素として直接一体化される。
【0041】
増幅段100の端部の出力電力レベルが所望の設定点レベルに達するために、RF信号発生器(
図1の要素16を参照)は、順方向および逆方向の電力レベルを示す信号の形のフィードバック、または密閉されたキャビティ(
図1の要素20を参照)に搬送される無線周波数信号の相対的な位相を利用することができる。したがって、入力無線周波数信号に対して電力増幅された無線周波数信号を出力するための増幅構成物に加えて、従来の高出力増幅器は、増幅構成物によって伝送され、受信される無線周波数電力を示す信号を出力する測定構成要素を含むことができる。しかしながら、この種の測定構成要素を高出力増幅器内に一体化することによって、高出力増幅器の出力段は、導波管などの無線周波数フィード(
図1の要素26A-Dを参照)への無線周波数信号出力の電力および忠実度を低減する可能性がある電気損失を被る場合もある。
【0042】
次に
図6を参照すると、本明細書において説明されるさまざまな態様に従った、一体化された測定システム150を有する導波管110に結合された高出力増幅器18を示す概略図が示されている。一体化された測定システム150は、電子構成物154に結合されるプローブアンテナ152を含む。プローブアンテナ152は、導波管110内の無線周波数電磁波をアナログ電力信号に変換する導波管110内に配置された部分を含む。プローブアンテナ152は、ダイポールアンテナを含むがこれに限定されるものではない、導波管内の無線周波数電磁波を測定するのに有用な任意のタイプのアンテナであってもよい。
【0043】
電子構成物154は、プローブアンテナ152に結合され、出力信号がデジタルであり、RF信号発生器(
図1の要素16を参照)、コントローラ(
図1の要素14を参照)、またはRFコントローラ(
図1の要素32を参照)などの装置に容易に入力されるように、アナログ-デジタル変換器(ADC)を含むことができる。電子構成物154は、導波管110内で検出された無線周波数電力レベルに対して対数線形である直流出力電圧を提供する無線周波数対数パワー検出器を含むがこれに限定されるものではない、無線周波数信号の測定に有用な任意の構成要素であってもよい。
【0044】
測定システムは、導波管110を通して搬送される無線周波数伝送をさらに特徴付けるために有用な追加の構成要素を含むことができる。次に
図7を参照すると、本明細書において説明されるさまざまな態様に従った、反射率計164を含む一体化された測定システム160を有する導波管110に結合される高出力無線周波数増幅器18を示す概略図が示されている。一体化された測定システム160は、反射率計164に結合されるプローブアンテナ162を含む。プローブアンテナ162は、導波管110内の無線周波数電磁波をアナログ電力信号に変換する導波管110内に配置された部分を含む。プローブアンテナ162は、ダイポールアンテナを含むがこれに限定されるものではない、導波管内の無線周波数電磁波を測定するのに有用な任意のタイプのアンテナであってもよい。
【0045】
反射率計164は、整合した較正された検出器を含む方向性結合器、または導波管110内で両方向に流れる電力を測定するように配向される一対の単一検出器の結合器を含むがこれに限定されるものではない、無線周波数信号の位相を測定するのに有用な任意の構成要素を含むことができる。このように、一体化された測定システム160は、電力および位相に従って無線周波数伝送を特徴付けることができ、散乱マトリックスまたはSパラメータに具体化されるようにネットワーク記述を形成するのに使用され得る。1つの非限定的な実装においては、反射率計164は、導波路内の順方向および逆方向無線周波数放射の位相を測定するように構成される6ポート反射率計である。
【0046】
反射率計164は、プローブアンテナ162に結合され、導波管110内の無線周波数電磁波の位相または電力を示す出力信号、あるいは散乱マトリックスがデジタルであり、RF信号発生器(
図1の要素16を参照)、コントローラ(
図1の要素14を参照)、またはRFコントローラ(
図1の要素32を参照)などの装置に容易に入力されるように、アナログ-デジタル変換器(ADC)を含むことができる。
【0047】
電力および位相測定値または散乱マトリックスに従って搬送された無線周波数伝送を特徴付けることによって、ソリッドステート無線周波数ソースを有する電磁調理器(
図1の要素10を参照)は、その中の加熱パターンを決定する共振モードまたは定在波の結合係数を制御することによって、密閉されたキャビティ(
図1の要素20を参照)を正確に励起することができる。すなわち、ソリッドステート電磁調理器は、加熱パターンが共振モードの係数によって決定される無線周波数ソースの作動を介して特定の共振モードをマイクロ波キャビティに結合することによって、所望の加熱パターンにエネルギーを与えることができる。共振モードは、キャビティ寸法、食品負荷のタイプ、食品負荷の配置、および複数のコヒーレント無線周波数ソースの励起条件(例えば、ソース間の動作周波数および位相シフト等)の関数である。電磁調理器は、ソリッドステート無線周波数ソースを制御して、共振モードの結合係数を選択して特定の加熱パターンまたは一連の加熱パターンに経時的にエネルギーを与えるように構成され得る。特定の共振モードに関連している加熱パターンは、調理プロセスの均一性または不均一性を決定することができる。しかし、共振モードは食品負荷のタイプおよび配置、キャビティサイズ、および励起条件の関数であるため、共振モードおよびそれらの臨界周波数の先験的な知識を有することはできない。
【0048】
したがって、電磁調理器は、密閉されたキャビティ内の共振モードをその場で決定するように構成され得る。次に
図8を参照すると、本明細書において説明されるさまざまな態様に従った、導波管として具体化される2つのRFフィード226A、Bに結合される共振キャビティ222を示す概略図が示されている。RFフィード226A、Bは、それらのそれぞれの高出力増幅器(
図1の要素18A、Bを参照)から密閉されたキャビティ222に電力を結合する。RFフィード226A、Bは、空間的に分離されているが固定された物理的位置において密閉されたキャビティ222に結合され得る。RFフィード226A、Bは、RF伝送の間の位相シフトまたは位相差が結合された共振モードの対称性のクラスに直接関係する、選択された周波数および位相でRF伝送を密閉されたキャビティ222に搬送することができる。例えば、同相関係(すなわち、位相シフト=0°)でRFソースを作動させると、偶対称のモードが活性化されるが、逆相関係(すなわち、位相シフト=180°)でRFソースを作動させると、奇対称のモードが活性化される。対称性は、以下に説明されるようにオーブン内の加熱パターンを決定する。
【0049】
動作時に、電磁調理器は、共振モードがキャビティ222内で励起される対称性の組(例えば、偶数または奇数)を決定する。電磁調理器は、一組の動作周波数に対してキャビティ222を励起し、各周波数について測定された効率を格納するように構成される。効率は、消費された総電力で割られた有用な電力出力によって決定され、この効率は、逆方向電力を減じた順方向電力対順方向電力の比から測定され得る。すなわち、この効率は、下記式で表される。
【0050】
【0051】
電磁調理器は、励起された対称性クラスについてメモリ内に効率マップを格納するように構成される。
【0052】
次に
図9を参照すると、共振キャビティの同相励起228および逆相励起230に関する周波数に対する効率を示すグラフ図が示されている。この非限定的な例示の実施例においては、電磁調理器は、各動作周波数に対して2組の励振を行い、2つの効率測定値を得るように構成される。
【0053】
次に
図10を参照すると、本明細書において説明されるさまざまな態様による、キャビティの共振モードを決定するための解析方法の特徴を示す図が示されている。電磁調理器は、特定の対称性クラスに対して励起されている極の臨界周波数(すなわち、共振モードの共振周波数)を認識するために、通過帯域RLC回路として応答をモデル化することによって、記録された効率マップ(同相励起228について示されている)を解析することができる。このために、コントローラ(
図1の要素14を参照)またはRFコントローラ(
図1の要素32を参照)の物理的または論理的サブコンポーネントとしてのプロセッサ250は、効率関数の極大値を確認するように構成され得る。プロセッサ250は、ベクトルフィッティング、マグニチュードベクトルフィッティングなどを含むがこれに限定されるものではない、効率マップの極の臨界周波数を決定するのに有用な任意のアルゴリズムを実装することができる。このように、プロセッサ250は、各対称面について共振周波数252のリストを決定することができる。
【0054】
そのうえ、プロセッサ250は、各決定された極の相対的な帯域幅に基づいて品質係数を決定することができる。プロセッサ250は、品質係数の推定値に基づいてキャビティ内に配置された食料品の存在を決定することができる。例えば、選択された共振モードが7以下のような低い品質係数を有することをプロセッサ250が決定した場合、プロセッサ250は、励起モードが局所的または全体的な最大値を有する密閉されたキャビティの部分が食料品を含むと決定することができる。同様に、選択された共振モードが、例えば1000より大きい等と高い品質係数を有するとプロセッサ250が決定した場合、プロセッサは、励起モードが局所的または全体的な最大値を有する密閉されたキャビティの部分が食料品を有していないと決定することができる。プロセッサ250は、品質係数の推定値に基づいて、キャビティ内に配置された食料品の種類を分類することができる。例えば、冷凍食品は約300の品質係数を有し、水は約7の品質係数を有し、金属物体は約1000の品質係数を有する。各決定された極について、プロセッサ250は、モードを励起するために使用される共振周波数と、モードによって加熱されることになる食料品の種類を決定するための品質係数とを関連させることができる。
【0055】
次に
図11を参照すると、本明細書において説明されるさまざまな態様による、キャビティの共振モードを特徴付ける方法における特徴を示す図が示されている。電磁調理器のプロセッサがキャビティ222内で励起可能な共振モードを示す一組の極252を決定する無線周波数フィード226A、Bの同相励起228の先に説明した実施例を基にして、決定された極252A-Cは、キャビティ222内の加熱パターン260A-Cにそれぞれ対応する。加熱パターンは、共振モードの係数によって決定されることを思い出してください。各加熱パターン260A-Cは、均一な加熱を示す輪郭を持つ空間パターンを有する。輪郭のバイナリセットを有して
図11に描かれているが、実際の加熱パターンは、加熱レベルの連続を示す多くの輪郭を含むことになる。理解を容易にするため、単一の輪郭レベルは、加熱パターンの最も熱い領域を示し、共振モードの偶および奇対称を示す。
【0056】
次に
図12を参照すると、本明細書において説明されるさまざまな態様による、共振キャビティ222内に配置された食料品300A、Bを捜し出し、分類する方法の特徴を示す概略図が示されている。電磁調理器は、同相励起を開始すると、キャビティ222の中心に最大加熱輪郭302が生じない偶対称によってキャビティ222内に加熱パターン360Aを生成することができる。食料品300Aの大きな部分312が加熱パターン360Aの最小範囲内に横たわっているので、キャビティ反射は、比較的低い効率をもたらす食料品300Aからの電磁応答がより重要である。対照的に、食料品300Bの大きな部分314は、逆相励起のために加熱パターン360Bの最大範囲内に横たわっているので、キャビティ反射は、最小限に抑えられ、効率は、偶対称励起中に決定される効率よりも高い。したがって、電磁調理器は、同相励起と逆相励起との間の効率を比較することによって、食料品がキャビティ222の中心に配置されているかどうかを決定することができる。すなわち、同相励起による効率が高いことは、食料品がキャビティの中心に配置されていないことを示し、逆相励起による効率が高いことは、食料品がキャビティの中心に配置されていることを示す。このように、電磁調理器は、偶対称の活性化された共振モードの効率に基づいて、マイクロ波キャビティの中心に配置された食料品の存在を決定し、または、奇対称の活性化された共振モードの効率に基づいてマイクロ波キャビティの中心から遠くに配置された食料品の存在を決定するように構成され得る。
【0057】
そのうえ、プロセッサは、共振モードの効率および対称性に従って品質係数をさらに解析して、キャビティ222内の食料品の2つ以上の種類を検出し、捜し出すように構成され得る。プロセッサは、確認された共振モードのサブセットの品質係数を平均して、食料品300A、300Bの一部310,314をマイクロ波キャビティ222内のその位置に従って分類するように構成され得る。例えば、プロセッサは、偶対称モードの品質係数を平均して、偶対称加熱パターン360Aの最大加熱輪郭302と交差する食料品300Aの一部310に配置された食料品の種類を決定することができる。同様に、プロセッサは、奇対称モードの品質係数を平均して、奇対称加熱パターン360Bの最大加熱輪郭304と交差する食料品300Bの一部314に配置された食料品の種類を決定することができる。
【0058】
次に
図13を参照すると、本明細書において説明されるさまざまな態様に従って、共振モードを確認し、共振キャビティ内に配置される食料品を分類する方法400を示すフローチャートが示されている。方法400は、選択されたフェーザでマイクロ波キャビティを励起するステップと、一組の周波数およびフェーザの順方向および反射した電力測定値を収集するステップと、選択されたフェーザの効率スペクトルを決定するために周波数と対照して効率を計算するステップと、計算された効率スペクトルに基づいてマイクロ波キャビティの共振モードを確認するステップと、共振モードおよび効率スペクトルに従って食料品を分類するステップとを含む。
【0059】
ステップ402においては、電磁調理器は、一組の動作周波数に対して選択されたフェーザを用いてマイクロ波キャビティを励起する。フェーザの選択された組は、RFフィードが位相シフトなしの無線周波数信号を搬送する同相フェーザと、RFフィードが180°の位相シフトを有する無線周波数信号を搬送する逆相フェーザを含むことができる。
【0060】
ステップ404においては、一体化された測定システムを通した電磁調理器は、RFフィードの導波管内の順方向および逆方向の電力測定値を収集することができる。代替的にまたは追加的に、測定システムは、位相を測定し、または散乱パラメータに従って無線周波数ネットワークを特徴付けるように構成され得る。
【0061】
ステップ406においては、プロセッサを通した電磁調理器は、共振モードの各対称性についての効率スペクトルを決定することができる。プロセッサは、各選択されたフェーザについての動作周波数セットの効率を決定するように構成される。例えば、フェーザの選択された組が同相および逆相関係を含む場合、プロセッサは、偶および奇モードについて効率スペクトルを決定することができる。
【0062】
ステップ408においては、プロセッサを通した電磁調理器は、マイクロ波キャビティ内の共振モードを確認することができる。プロセッサは、通過帯域RLC回路としてキャビティをモデル化し、共振モードを示す各極について中心周波数および品質係数を決定するように構成される。
【0063】
ステップ410においては、プロセッサを通した電磁調理器は、キャビティ内で食料品を分類することができる。プロセッサは、キャビティ内の食料品の位置を捜し出すように、偶対称モードと奇対称モードとの間の効率を比較するように構成され得る。プロセッサは、モードの決定された品質係数に基づいて食料品の構成物を決定するようにさらに構成され得る。最後に、プロセッサは、確認された共振モードのサブセットにつて品質係数を平均することによって、食料品の部分の構成物および配置を決定するように構成され得る。
【0064】
上記のように、本方法は、電磁調理器の無線周波数ソースが順方向および逆方向の電力の読取り値または進行波の位相に基づいてエネルギーをマイクロ波キャビティに結合する場合に活性化される共振モードを決定し、分類するステップを含む。本方法により、電磁調理器は伝送された周波数の吸収スペクトルの効率測定に基づいて共振モードを決定することができる。さらに、本方法により、電磁調理器は決定された共振モードによって結果として得られる加熱パターンの空間分布を特徴付けることができる。共振モードは特定の離散周波数においてのみ存在するので、無線周波数ソースと共振モードとの間の結合は、無線周波数ソースの動作周波数の関数である。そのうえ、共振キャビティのモードとの放射線ソースの結合は、放射線ソース励起、放射線ソース配置、および放射線ソース間の位相関係の関数である。本方法は、電磁調理器がキャビティ内で調理されるべき食料品の構成物を捜し出し、確認することを可能とする。
【0065】
本開示の目的のために、用語「結合された(coupled)」(結合(couple)、結合している(coupling)、結合された(coupled)等、その形式の全てについて)は、一般に、(電気的または機械的な)2つの構成要素の直接的または間接的な相互の結合を意味する。この種の結合は、本質的に静止しているか、または本質的に可動である。この種の結合は、(電気的または機械的な)2つの構成要素によって実現されることができ、任意の追加の中間部材が、互いにまたは2つの構成要素で単一の一体物として一体的に形成される。この種の結合は、本質的に永久的であることができ、または特に明記されない限り、本質的に着脱自在もしくは剥離可能であることができる。
【0066】
また、例示的な実施形態に示されている装置の要素の構成および配置は、一例にすぎないことに留意することが重要である。本発明の少数の実施形態のみが本開示で詳細に説明されているが、本開示を検討する当業者は、列挙された主題の新規な教示および利点から実質的に逸脱することなく、多くの改造(例えば、さまざまな要素のサイズ、寸法、構造、形状、および割合の変化、パラメータの値、取り付け配置、材料の使用、色彩、方向付け、等)が可能であることを容易に理解するであろう。例えば、一体的に形成されるとして示された要素は、複数の部品が一体的に形成され得るように示される複数の部品または要素から構成されることができ、インターフェースの動作は、逆にされ、または別様に変更されることができ、構造体および/もしくは部材の長さまたは幅、あるいはシステムのコネクタまたは他の要素は、変更されることができ、要素間に設けられる調整位置の性質または数は、変更され得る。システムの要素および/またはアセンブリは、多種多様の色彩、テクスチャ、および組み合わせのいずれかにおいて、十分な強度または耐久性を提供する多種多様の材料のいずれかから構成され得ることに留意されたい。したがって、この種の改造は全て、本発明の範囲内に含まれるように意図されている。他の置換、改造、変更、および省略が、本発明の趣旨から逸脱することなく、所望のおよび他の例示的な実施形態の設計、動作条件、および配置について行われ得る。
【0067】
説明されたプロセス内の任意の説明されたプロセスまたはステップは、本装置の範囲内の構造を形成するように、他の開示されたプロセスまたはステップと組み合わせられ得ることを理解されたい。本明細書において開示された例示的な構造およびプロセスは、説明のためのものであり、限定するものとして解釈されるべきではない。
【0068】
また、変形および改造が、本装置の概念から逸脱することなく上述の構造および方法に行われることができ、さらに、この種の概念は、その言語によるこれらの特許請求の範囲が明示的に別段の定めをした場合を除き、次の特許請求の範囲によって保護されるように意図されていることを理解されたい。
【0069】
上記の説明は、図示された実施形態のみのものと考えられる。装置の改造は、当業者および装置を製造しまたは使用する者に思い浮かぶであろう。したがって、図面に示され、上で説明された実施形態は、単に説明のためのものであり、装置の範囲を限定するように意図しているものではなく、これは、均等論を含む特許法の原則に従って解釈される次の特許請求の範囲によって定義される。