(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-21
(45)【発行日】2022-03-02
(54)【発明の名称】修復用内装材及び内装の修復方法
(51)【国際特許分類】
B32B 5/18 20060101AFI20220222BHJP
E04F 13/08 20060101ALI20220222BHJP
【FI】
B32B5/18
E04F13/08 101S
E04F13/08 A
E04F13/08 U
E04F13/08 101K
(21)【出願番号】P 2018007515
(22)【出願日】2018-01-19
【審査請求日】2020-09-01
(73)【特許権者】
【識別番号】390023009
【氏名又は名称】共和レザー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【氏名又は名称】加藤 和詳
(72)【発明者】
【氏名】笹瀬 忠久
(72)【発明者】
【氏名】寺田 雅信
【審査官】弘實 由美子
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-182009(JP,A)
【文献】特開2002-120331(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
E04F 13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
可とう性を有する発泡樹脂層と、
前記発泡樹脂層の片方の面上に設けられた接着層と、
前記接着層の発泡樹脂層と接する面とは反対側に設けられ、前記発泡樹脂層の厚みを100とした場合、厚みが10~40の範囲にあり、可とう性を有する水不透過性の表皮層とを有
し、下記ソフトネステスター試験による硬さが、0.2~0.8である修復用内装材。
-ソフトネステスター試験-
前記修復用内装材をMSAエンジニアリングシステム社製 ソフトネステスター#ST300を用いて、標準的条件で硬さを測定する。
【請求項2】
前記発泡樹脂層は、独立気泡を内包する請求項1に記載の修復用内装材。
【請求項3】
前記発泡樹脂層は、架橋ポリオレフィン、ポリウレタン及びポリエステルから選ばれる少なくとも1種を含む請求項1又は請求項2に記載の修復用内装材。
【請求項4】
前記表皮層は、ポリ塩化ビニル、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビフェニール、及びアクリル樹脂から選ばれる少なくとも1種を含む請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の修復用内装材。
【請求項5】
前記表皮層は、防かび剤を含む請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の修復用内装材。
【請求項6】
前記発泡樹脂層の、接着層と接する側とは反対側の面上に、さらに、プライマー層を備える請求項1~請求項5のいずれか1項に記載の修復用内装材。
【請求項7】
内装基材の被修復面の面上に接着剤を塗布
して、被修復面の凹凸の深さよりも厚い接着剤層を形成する工程と、
接着剤の塗布により形成された接着剤層の面上に、請求項1~請求項6のいずれか1項に記載の修復用内装材を、修復用内装材の発泡樹脂層を有する側が、前記接着剤層に接する方向に重ねて押圧する工程と、を有する内装の修復方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、修復用内装材及び内装の修復方法に関する。
【背景技術】
【0002】
住宅の内装、特に古い家屋の場合、浴室、台所などの水周りの内装材としては、タイル、塗り壁等が使われている例が多い。
内装材が経年劣化して修復が必要な場合、古い家屋では、近年汎用されているサイズが規格化されているユニットバスを組みこむことは困難である。従って、修復に際しては、破損又は劣化したタイル、漆喰等の内装材を一旦剥離し、その後に、新たな内装材を用いて修復を行なう必要がある。その場合、古い内装材の剥離、内装材の基材である壁面に凹凸がある場合には、はつりなど平滑化を行なう再仕上げ、再仕上げをした壁面に新たな内装材を設置するといった工程が必要であり、完成までに相当の時間を要する。
さらに、古い内装材の剥離、基材である壁面のはつり等に伴い大量の産業廃棄物が発生する場合がある。
なかでも、浴室は、リビングルームなどの壁紙の下地と異なり、タイルや塗り壁が使われていることが多く、内装材を剥離した後の基材表面の凹凸が大きいため、平滑化処理にはベテランの職人が必要である。また、平滑化した後に用いる内装材としては、浴室、台所では、水を使うために、通常の、裏打ちに紙を使った壁紙は用いられず、浴室等専用の樹脂フィルムのみで構成された内装材を使用する必要がある。樹脂フィルムのみで構成された内装材は柔軟で腰が弱く、施工には、一般の壁紙施工より高度な施工技術が必要となる。
【0003】
タイルはつりや不陸調整などの作業を必要としない浴室壁の改装方法として、既設のタイル張り浴室壁面の上に、新規の下地板をタイル下地の躯体壁に固定して取り付け、この下地板の上に新規の化粧パネルを貼り付ける方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
また、簡易な方法で良好な仕上がりができる浴室リフォーム用壁材として、板状の発泡樹脂層の表面にフィルム状の非発泡樹脂層を積層した壁材が提案されている(例えば、特許文献2参照)。軽量性と曲げ剛性とを保つ観点から、壁材は厚さ0.5mm~5mmの範囲が好ましいとされている。
さらに、簡易な浴室の補修方法として、表面は浴室構成面と同じ色彩が施され、置面に粘着層を有する強化プラスチック製の薄板を、損傷箇所を被覆する状態で粘着する方法が提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2004-143758号公報
【文献】特開2000-25138号公報
【文献】特開2004-176397号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載の技術では、新規の下地板を既存の躯体壁にビス止めなどにより固定して取り付けることが必要であり、振動、騒音が出る、躯体壁に損傷を与える懸念があるといった問題がある。
また、特許文献2に記載の技術では、用いる材料が軽量で、曲げ剛性がある程度望めるが、壁剤を貼付する箇所の凹凸が著しい場合には、平滑な表面仕上げが困難となることがある。特許文献2では、壁材を構成する発泡樹脂層及び非発泡樹脂層の材料については特に検討されていない。
特許文献3に記載の技術では、修復箇所に貼付する材料は板材であり、表面における凹凸が著しい修復箇所、なかでも、タイル地の修復については、特に考慮されておらず、十分な仕上がり感が得られない場合がある。
【0006】
本発明の一実施形態の課題は、修復箇所の表面の凹凸が著しい場合であっても、簡易に短期間で修復することができる修復用内装材を提供することにある。
また、本発明の別の実施形態の課題は、修復箇所の表面の凹凸が著しい場合であっても、簡易に短期間で修復することができる内装の修復方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
課題を解決するための手段は以下の実施形態を含む。
<1> 可とう性を有する発泡樹脂層と、前記発泡樹脂層の片方の面上に設けられた接着層と、前記接着層の発泡樹脂層と接する面とは反対側に設けられ、前記発泡樹脂層の厚みを100とした場合、厚みが10~40の範囲にあり、可とう性を有する水不透過性の表皮層とを有する修復用内装材。
【0008】
<2> 前記発泡樹脂層は、独立気泡を内包する<1>に記載の修復用内装材。
<3> 前記発泡樹脂層は、架橋ポリオレフィン、ポリウレタン及びポリエステルから選ばれる少なくとも1種を含む<1>又は<2>に記載の修復用内装材。
【0009】
<4> 前記表皮層は、ポリ塩化ビニル、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビフェニール、及びアクリル樹脂から選ばれる少なくとも1種を含む<1>~<3>のいずれか1つに記載の修復用内装材。
<5> 前記表皮層は、防かび剤を含む<1>~<4>のいずれか1つに記載の修復用内装材。
<6> 前記発泡樹脂層の、前記接着層と接する側とは反対側の面上に、さらに、プライマー層を備える<1>~<5>のいずれか1つに記載の修復用内装材。
【0010】
<7> 内装基材の被修復面の面上に接着剤を塗布する工程と、接着剤の塗布により形成された接着剤層の面上に、<1>~<6>のいずれか1つに記載の修復用内装材を、前記修復用内装材の発泡樹脂層を有する側が前記接着剤層に接する方向に重ねて押圧する工程と、を有する内装の修復方法。
<8> 前記接着剤層の厚みは、前記内装材の被修復面の凹凸の深さよりも厚い<7>に記載の内装の修復方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明の一実施形態によれば、修復箇所の表面の凹凸が著しい場合であっても、簡易に短期間で修復することができる修復用内装材を提供することができる。
本発明の別の実施形態によれば、修復箇所の表面の凹凸が著しい場合であっても、簡易に短期間で修復することができる内装の修復方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本開示の修復用内装材の一態様を示す概略断面図である。
【
図2】
図2(A)~
図2(C)は、本開示の修復用内装材の一態様を用いた、内装の修復方法の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本開示の修復用内装材及び内装の修復方法について詳細に説明する。しかし、以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施態様の一例(代表例)であり、本開示は、これらの内容に限定されず、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0014】
なお、本明細書において「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。
本明細書において組成物に含まれる各成分の量は、組成物中に、各成分に該当する物質が複数含まれる場合、特に断らない限り、当該複数の物質の合計量を意味する。
本明細書中に段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本明細書中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
本明細書において、好ましい態様の組み合わせは、より好ましい態様である。
本明細書において「工程」との語は、独立した工程だけでなく、他の工程と明確に区別できない場合であっても工程の所期の目的が達成されれば、本用語に含まれる。
【0015】
<修復用内装材>
本開示の修復用内装材は、可とう性の発泡樹脂層と、前記発泡樹脂層の片方の面上に設けられた接着層と、前記接着層の発泡樹脂層と接する面とは反対側に設けられ、前記発泡樹脂層の厚みを100とした場合、厚みが10~40の範囲にあり、可とう性を有する水不透過性の表皮層とを有する。
【0016】
修復用内装材は、可とう性を有する発泡樹脂層と可とう性を有する表皮層とを備えているため、修復用内装材自体も可とう性を有し、柔軟性が良好である。よって、修復用内装材は、被修復面への貼付が容易であり、且つ、被修復面における凹凸を効果的に吸収することができる。
なお、表皮層と発泡樹脂層とが、それぞれ可とう性を有することは、表皮層と発泡樹脂層とを有する修復用内装材が可とう性を有することにより、確認することができる。
また、修復用内装材は、可とう性を有する水不透過性の表皮層を有し、表皮層は発泡樹脂層と接着層を介して積層されているため、防水性、気密性に優れている。
このため、浴室、台所などの水を使用する室内の内装の修復に好適に使用することができる。
なお、本開示の修復用内装材の好ましい態様では、発泡樹脂層が独立気泡を含むことで、連通気泡を有する発泡樹脂層に比較して、防水性及び気密性がより良好となる。
さらに、水不透過性の表皮材と発泡樹脂層とが接着層を介して強固に密着しているため、修復用内装材を折り曲げた場合でも、層間剥離がなく、耐久性が良好である。このため、本開示の修復用内装材は可とう性を有し、形状追従性が良好となり、深い凹凸を有する被修復面の修復に好適であり、さらに、例えば、折り曲げたり、巻いたりした状態で保存、搬送ができるという利点をも有する。
【0017】
「可とう性」とは、応力を掛けた場合、容易に変形し、且つ、応力が除かれると元の状態に戻る性質を指す。本明細書における「可とう性」とは、より具体的には、後述のJIS A6909(2014年)、建築用仕上塗材 7.25可とう性試験に準じて、評価対象である塗材を塗布した試験体に変えて修復用内装材を用いて、表皮層側を外側にした90度折り曲げを行なった場合、修復用内装材の表皮層にひび割れ又はシワ残りを生じない性質を指す。
【0018】
(修復用内装材の好ましい物性)
修復用内装材は、適度な硬さを持っていることが好ましい。
修復用内装材の硬さの目安としては、ソフトネステスターによる価を挙げることができる。具体的には、MSAエンジニアリングシステム社製 ソフトネステスター#ST300を用いて、標準的な条件で測定した価が0.2~0.8であることが好ましく、0.3~0.6の範囲であることがより好ましい。
ソフトネステスターによる測定値が上記範囲であることで、タイル等、凹凸を伴う下地壁に、後述するように、接着剤を塗布し、修復用内装材を貼り付けた場合も、表面側に位置する表皮層に下地壁の凹凸が視認されることが抑制される。
即ち、上記測定値が、0.8以下であることで、積層体が柔らかすぎて下地の凹凸の影響を受け、内装材表面の外観が低下することが抑制される。また、価が0.2以上であることで、上記積層体が適度な硬さとなり、長尺方向に垂直な方向に折れが生じたり、施工後の仕上がりに折れしわが残ったりすることが抑制される。
修復用内装材の硬さの目安となる上記ソフトネステスターによる測定値は、発泡樹脂層の形成に用いる樹脂の種類、樹脂の発泡倍率、発泡樹脂層の厚み、表皮層の形成に用いる樹脂の種類、重合度、可塑剤部数、及び表皮層の厚みのうち少なくともいずれかを選択することで、制御することができる。
【0019】
本開示の修復用内装材について、
図1を参照して説明する。
図1は、本開示の修復用内装材10の層構成の一態様を示す概略断面図である。
修復用内装材(以下、適宜、内装材と称することがある)10は、発泡樹脂層12と、その一方の面上に設けられた接着層14と、接着層14の、発泡樹脂層12と接する面とは反対側の面に設けられ、発泡樹脂層12の厚みを100とした場合、厚みが10~40の範囲にあり、可とう性を有する水不透過性の表皮層(以下、適宜、表皮層と称することがある)16と、をこの順に備える。
即ち、
図1に示す内装材10の一実施形態は、発泡樹脂層12と、接着層14と、特定の厚みを有する水不透過性の表皮層16とを順次有する積層構造を有し、表皮層16は、防水性及び気密性が良好であることから、内装材10の表面(修復面と接する側と反対側で、外部に露出する面)からの水分の内装材10の内部、惹いては被修復面への侵入が抑制される。従って、内装材10は、浴室などの水回りの修復に好適である。
また、可とう性の発泡樹脂層12は、柔軟で弾力性を有することから、被修復面における凹凸を吸収し易い。
本開示の内装材10を用いて、例えば、浴室の壁面を修復する場合には、壁面に接着剤を塗布し、内装材10の発泡樹脂層12を備える面を、接着剤を塗布してなる接着剤層の面に押しつけて貼付する等の方法をとることができる。
なお、以下の図面において、同一の符号を用いて示される構成要素は、同一の構成要素であることを意味する。
【0020】
以下、内装について、これを構成する材料とその製造方法とともに順次説明する。
(1.発泡樹脂層)
発泡樹脂層は、可とう性を有し、気泡を内在する樹脂層であれば特に制限はない。
発泡樹脂層に含まれる樹脂としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリブチレン(PB)等のポリオレフィン;ポリウレタン(PUR);ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル;等が挙げられる。これらの樹脂は変性されていてもよく、架橋剤等により形成された架橋構造を有する樹脂であってもよい。
なかでも、耐久性、柔らかさ及び内在する気泡の保持性の観点から、ポリエチレン等のポリオレフィンが好ましく、架橋ポリエチレン、架橋ポリプロピレン、架橋ポリブチレン等の架橋ポリオレフィンがより好ましい。
【0021】
発泡樹脂層に含まれる気泡は、独立気泡であってもよく、連通気泡であってもよい。なかでも、発泡樹脂層の断熱性、強度、弾力性、及び耐水性がより良好となるという観点からは、発泡樹脂層は独立気泡を含むことが好ましい。
【0022】
発泡樹脂層は、公知の方法で形成することができる。発泡樹脂層の形成に際しては、機械発泡方式、化学発泡方式のいずれを用いてもよい。なかでも、独立気泡を形成しやすいという観点からは化学発泡方式が好ましい。
化学発泡方式には、公知の化学発泡材、例えば、熱膨張ビーズ等を用いることができる。熱膨張ビーズとは、中空の熱可塑性樹脂粒子中に炭化水素系溶剤などの有機溶剤等を内包してなる粒子であり、加熱により有機溶剤の体積膨張により粒子の体積が増加し、結果として樹脂層中に気泡を内在させることができる。
熱膨張ビーズは、加熱により膨張して樹脂マトリックスに中空の気泡が形成され、形成された気泡の状態を維持しうるものであれば、いずれのものを用いてもよい。
熱膨張ビーズは市販品としても入手可能であり、例えば、日本フェライト社製のエクスパンセルシリーズ(商品名)などが挙げられる。
【0023】
発泡樹脂層は、市販品を用いてもよい。市販品としては、例えば、東レ(株)製のトーレペフ(登録商標、以下同様)、積水化学工業(株)製のソフトロン(登録商標、以下同様)Sシリーズ、等が挙げられる。トーレペフは、ポリオレフィンに、ソフトロンSは、ポリエチレンに、それぞれ電子線照射して加熱発泡させた気泡を内在するシートである。
【0024】
発泡樹脂層の厚みには特に制限はなく、被修復面の状態により適宜選択される。一般的な浴室、台所などの壁面の修復に用いる場合には、1mm~10mm程度とすることができ、1mm~5mmの範囲が好ましい。
発泡樹脂層は、基材となる樹脂に加え、樹脂以外の種々の成分を含んでもよい。発泡樹脂層が含みうるその他の成分としては、着色剤、可塑剤、架橋剤、充填剤、加工助剤、難燃剤等が挙げられる。
【0025】
なお、発泡樹脂層は、後述するように、片面に接着層が設けられ、接着層の面上には表皮層が設けられる。
接着層が設けられる面とは反対側の面が、被修復面に貼着される。
発泡樹脂層の、被修復面に貼着される側には、接着性をより向上させる目的で、プライマー層を設けてもよい。
【0026】
(プライマー層)
プライマー層は転写法又は塗布法により形成することができる。即ち、プライマー層を形成するための樹脂を適切な溶媒で溶解し、前記発泡樹脂層の、表皮層側とは反対側の面に転写又は塗布し、乾燥することでプライマー層を形成することができる。
プライマー層に含まれる樹脂は、発泡樹脂層に含まれる熱可塑性樹脂、及び、被修復面の面上に塗布される接着剤層に含まれる接着剤等との親和性が良好であるという観点から、ポリエステル樹脂などの樹脂を用いて形成されることが好ましい。
プライマー層の塗布量には特に制限はなく、目的に応じて適宜選択される。一般的には、接着性向上効果の観点から、1g/m2~10g/m2の範囲であることが好ましく、2g/m2~3g/m2の範囲であることがさらに好ましい。
さらに、発泡樹脂層側と内装基材側のそれぞれに親和性が向上するという観点から、プライマー層を2層以上積層してもよい。
【0027】
(2.接着層)
接着層は、発泡樹脂層と、後述の表皮層との接着性向上の目的で設けられる。接着層の形成に使用される接着剤としては特に制限はなく、発泡樹脂層及び表皮層に含まれる樹脂の種類により適宜選択される。
接着剤としては、例えば(1)2液硬化型ポリエステル系接着剤、(2)2液硬化型ウレタン接着剤、(3)2液硬化型アクリル粘着剤などが好適に使用される。
なお、接着層の形成に使用される接着剤は市販品としても入手可能であり、例えば、オリバインシリーズ〔東洋インキ(株)〕、ウェルダー用接着剤No.3660〔2液硬化型ポリウレタン接着剤:ノーテープ工業(株)〕、ダイカラック7250NT〔2液硬化型ポリエステル接着剤:大同化成工業(株)〕などが好適である。
接着剤や粘着剤により形成される接着層の厚さは、20μm~50μmの範囲であることが好ましい。
【0028】
発泡樹脂層に接着層を形成する場合には、発泡樹脂層と接着層との間に、接着性を向上させる目的で、既述のプライマー層を形成し、形成したプライマー層表面に、接着剤及び粘着剤の少なくとも一方を付与することで接着層を形成することができる。
発泡樹脂層又はプライマー層上に接着層を付与する方法としては、転写法、塗布法など公知の方法をいずれも使用できる。均一な厚みの接着層を簡易に形成しうるという観点からは、転写法を用いることが好ましい。
【0029】
(3.表皮層)
本開示の修復用内装材は表皮層を有する。本開示における表皮層は、前記発泡樹脂層の厚みを100とした場合、厚みが10~40の範囲にあり、可とう性を有する水不透過性の表皮層である。
表皮層が水不透過性であることで、内装材は、防水性、防湿性及び耐久性が良好となる。さらに、表皮材が可とう性を有することで、内装材の柔軟性が向上し、作業性が向上し、且つ、発泡樹脂層と表皮層との間が剥離し難いものとなる。
また、表皮層は内装材の外部に露出して内装材の意匠を決定する。
【0030】
表皮層に含まれる樹脂には特に制限はなく、必要な水不透過性(防水性)及び耐久性を有する樹脂であればいずれも使用することができる。
ここで、「水不透過性」とは、表面側の水又は水蒸気が発泡樹脂層まで到達しない性質を指す。
表皮層が水不透過性であることは、表皮層の一方の面に滴下した水が、表皮層の他方の面に浸透しないことにより確認することができる。
具体的には、例えば、表皮層をビーカーの表面に張って固定し、表皮層の表面(外側の面)にスポイトで純水1mlを滴下し、25℃の条件下で24時間放置した後、表皮層のビーカーの内面の側に水が浸み出さないことにより確認することができる。
水不透過性の表皮層を有することで、内装材自体も水不透過性の特性を有することになる。
表皮層としては、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリエステル、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビフェニール、アクリル樹脂等が挙げられ、柔軟性、耐久性及び防水性に優れるという観点から、PVCが好ましい。
PVCとしては、従来、例えば、塩化ビニルレザーに使用されているものであれば特に制限なく使用できる。具体的には、平均重合度700~2000、好ましくは800~1500程度のポリ塩化ビニルの他、塩化ビニルを主成分とし、エチレン、酢酸ビニル、メタクリル酸エステル等とを含む共重合樹脂、既述の樹脂とポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、酢酸ビニル樹脂、ウレタン樹脂、アクリロニトリル、スチレン-ブタジエン共重合樹脂、部分ケン化ビニルアルコール等との混合樹脂等が挙げられる。
【0031】
表皮層には樹脂を1種のみ含んでもよく、目的に応じて2種以上含んでいてもよい。
2種以上の合成樹脂を含む場合には、互いに相溶性の高い樹脂同士を組み合わせることが好ましい。
2種以上の合成樹脂を組み合わせて用いることで、所望の性能をより高めることができる。
例えば、ポリ塩化ビニル樹脂に対し、改質剤を添加することで、得られる内装材の柔軟性をより向上させることができ、凹凸のある被修復面へ適用する際の適性をより向上させることができる。改質剤としては、例えば、ポリメチルメタクリレート(PMMA)樹脂、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン共重合体(ABS樹脂)、ウレタン樹脂等が挙げられる。
【0032】
表皮層には、樹脂に加えて、目的に応じて種々の化合物を含んでいてもよい。表皮層が含みうる化合物としては、例えば、着色剤、可塑剤、滑剤、加工助剤、難燃剤、耐光安定剤、紫外線吸収剤、防かび剤、抗菌剤、熱安定剤等が挙げられる。
なかでも、表皮層は着色剤を含むことが好ましい。表皮層が着色剤を含むことで、内装剤の外観を良好なものとしたり、修復箇所と、被修復箇所との色相の際を目立たなくさせたりすることができる。
また、防かび剤、抗菌剤を含むことで、浴室、台所に内装材を使用した場合に、湿度の高い環境下においてもかびの発生、細菌の増殖等を抑制することができる。
【0033】
表皮層が着色剤を含む場合の着色剤としては、耐候性、耐久性に優れる着色剤を選択することが好ましい。耐候性、耐久性に優れた着色剤としては、例えば、染料、有機顔料、無機顔料などが挙げられ、なかでも、顔料が一般的に使用される。
着色剤としては、チタン白(二酸化チタン)、亜鉛華、群青、コバルトブルー、弁柄、朱、黄鉛、チタン黄、カーボンブラック等の無機顔料、キナクリドン、パーマネントレッド4R、イソインドリノン、ハンザイエローA、フタロシアニンブルー、インダスレンブルーRS、アニリンブラック等の有機顔料又は染料、アルミニウム及び真鍮等金属の箔粉からなる群より選択される金属顔料、二酸化チタン被覆雲母及び塩基性炭酸鉛の箔粉からなる群より選択される真珠光沢(パール)顔料等が挙げられる。
【0034】
表皮層が着色剤を含む場合、着色剤を1種のみ含んでもよく、調色などの目的で2種以上を含んでいてもよい。
表皮層の形成に用いられる樹脂組成物における着色剤の含有量には特に制限はなく、合成樹脂表皮材において目的とする色相、被修復面の隠蔽性などに応じて、用いる着色剤の種類、含有量などを適宜選択すればよい。
着色剤を用いる際の一般的な着色剤の含有量は、表皮層を構成する樹脂組成物の全固形分中に対し、3質量%~20質量%であることが好ましく、3質量%~10質量%であることがより好ましい。なお、ここで固形分とは、表皮層を構成する樹脂組成物の全成分中、溶剤を除いた成分の総量を指す。
【0035】
表皮層の厚みは、既述の発泡樹脂層の厚みを100としたとき、10~40の範囲であることが好ましく、20~30の範囲であることがより好ましい。
また、具体的な厚みとしては、100μm~600μmが好ましく、200μm~300μmがより好ましい。
厚みが上記範囲にあることで、内装材の柔軟性を損なうことなく、表皮層と発泡樹脂層との剥離が抑制され、内装材の防水性、防湿性及び耐久性が良好なものとなる。
内装材における各層の厚みは、内装材を面方向に垂直に切断した切断面を観察することで測定することができる。従って、本明細書における内装材における各層の膜厚は、乾燥後の膜厚を指す。
【0036】
表皮層の形成方法には特に制限はなく、公知のシート成形方法、例えば、Tダイなどで押し出し成形する溶融法、カレンダー法、コーティング法等を適用することができる。
なかでも、カレンダー法が製造の簡易性、装置のメンテナンスが容易である点で好ましい。特に、表皮層が着色剤を含有する場合、軟化した樹脂と固体状の着色剤とをカレンダーロールに供給し、シート又はフィルム状に成形することができるため、種々の着色剤を含有する基材層を簡易に製造することができる。
また、カレンダー法を適用することにより、溶融法等の成形法に比較して、着色剤の種類や添加量を変更する際に必要な装置内の清掃を、より容易に行うことができる。このため、着色剤を含む表皮層の形成に、カレンダー法を適用することで、所望の色相を有する様々な内装材を簡易に製造することができ、修復箇所における既存の色相と調和する内装材の小ロット生産にも適する。
【0037】
本開示の内装材は、水不透過性の表皮層と発泡樹脂層とを有し、両者が接着層を介して密着しており、耐久性が良好であり、修復箇所の表面の凹凸が著しい場合であっても、簡易に短期間で修復することができる。さらに、水不透過性の表皮層を備えることから、風呂、台所など水回りの箇所の修復にも好適に使用することができる。
さらに、内装材は柔軟性が良好であり、被修復面への貼付が容易に行なえること、搬送時には、巻いたり、畳んだりして搬送できるため、狭い室内への搬入も容易に行うことができること、等の利点を有する。
【0038】
(5.その他の層)
内装材は、既述の発泡樹脂層、接着層、及び表皮層に加え、効果を損なわない限り、その他の層をさらに有していてもよい。
その他の層としては、既述のプライマー層、表面処理層、表面プリント着色層等が挙げられる。
【0039】
(5-1.表面処理層)
内装材は、汚れ防止性向上の観点から、表面処理層を設けてもよい。
表面処理層の形成に使用される表面処理剤としては特に制限はなく、水系及び溶剤系の表面処理剤より適宜選択される。
表面処理剤としては、例えば、エスケー化研(株)セラミフレッシュINなどが好適に使用される。
表面処理層の厚さは、2μm~10μmの範囲であることが好ましい。
表皮層上に表面処理層を付与する方法としては、グラビアロール、ダイコーターなど公知の方法をいずれも使用できる。均一な厚みの表面処理層を簡易に形成しうるという観点からは、グラビアロールを用いることが好ましい。
【0040】
(5-2.表面プリント着色層)
内装材は、外観向上などの目的で、装飾性を付与するため、表面プリント着色層を設けてもよい。
表面プリント着色層の形成に使用される表面プリント着色剤としては特に制限はなく、水系顔料インク、及び溶剤系顔料インキ等から適宜選択される。
表面プリント着色層は、全面を着色剤により着色した層であってもよく、種々の意匠のプリント柄を全面又は一部領域に付した層であってもよい。
表面プリント着色層の形成に用いる着色剤としては、例えば東洋インキ(株)VIインキなどが好適に挙げられる。
表面プリント着色層の厚さは、3μm~10μmの範囲であることが好ましい。
表皮層上に表面プリント着色層を付与する方法としては、グラビアロール、ロータリースクリーン、オフセットなど公知の方法をいずれも使用できる。多重刷りや着色層を簡易に形成しうるという観点からは、グラビアロールを用いることが好ましい。
【0041】
<内装材の製造方法>
本開示の内装材の製造方法には特に制限はなく、公知の樹脂積層体の製造方法を適用することができる。
内装材の製造方法としては、例えば、表皮層形成用樹脂組成物を調製し、カレンダー法、Tダイ法などによりフィルム化し、別途、公知の発泡樹脂フィルム等の製造方法によって発泡樹脂層を製造し、得られた表皮層と発泡樹脂層とを接着剤を介して接着する方法などが挙げられる。
接着層の形成に用いられる接着剤は、発泡樹脂層の表皮層側の面に塗布することが好ましい。塗布は公知の方法で行うことができ、例えば、グラビアロール、ダイコーター、ナイフコーター等の装置により塗布することができる。
【0042】
表皮層と発泡樹脂層との接着に際しては、一対の加熱ロール間を通過させて接着する熱ラミネート方法、仕上がりサイズに予め裁断しておいて、1枚ずつ単板で熱プレス圧着する方法等が挙げられる。
なお、発泡樹脂層の変形を防ぐため、ラミネートロールや熱プレス機のクリアランスを、形成する内装材の厚みに合わせて調整することが好ましい。
表皮層と発泡樹脂層とを接着層を介して積層した後、接着剤を加熱熟成させて接着性をより向上させる手段をとることが好ましい。
【0043】
<内装の修復方法>
本開示の内装材を用いて、浴室壁面などの内装を修復するには、内装材の発泡樹脂層面側を、修復を必要とする領域の被修復面に接着剤を用いて接着すればよい。本明細書では、修復の必要な領域における、元々存在している内装部分を、内装基材と称する。
以下に、図を参照して、修復方法の一例について説明する。
図2(A)~
図2(C)は、本開示の修復用内装材の一態様を用いた、内装の修復方法の一例を示す概略図である。
本開示の内装の修復方法は、内装基材の被修復面の面上に接着剤を塗布する工程(工程(I))と、塗布により形成された接着剤層の面上に、上記本開示の修復用内装材を、修復用内装材の発泡樹脂層を有する側が、前記接着剤層に接する方向に重ねて押圧する工程(工程(II))と、を有する。
本開示内装材は、弾力性が良好で、適度な厚みと硬さとを有する発泡樹脂層を備えるため、発泡樹脂層が被修復面の凹凸を吸収し、外観に影響を与えずに修復することができる。
なお、ここで、接着剤層の厚みを、内装基材に存在する被修復面の凹凸の深さよりも厚くすることで、凹凸の外観に与える影響をより小さくすることができる。
【0044】
(工程(I))
工程(I)では、まず、修復を必要とする内装の被修復面に、内装材を接着するための接着剤を塗布して、被修復面上に接着剤層を形成する。
図2(A)は修復前の被修復面の状態の一例を示す概略図である。修復を必要とする内装箇所、例えば、欠陥が生じた内装箇所を被修復面とする。
図2(A)では、被修復面がタイル地である態様を示す。内装基材18は、下地モルタル20によりタイル22が貼り付けられており、経時によりタイル22には、欠け22A、ひび22B等が形成される。また、隣接する複数のタイル22間に露出した下地モルタル20、所謂目地の部分にも、欠落20Aが形成される。
図2(B)に示すように、タイル地が被修復面の場合、内装基材18上に配置されたタイル22の表面に接着剤を塗布し、接着剤層24を形成する。
接着剤としては、建築現場において、内装ボード、内装パネル、壁紙などの接着に用いられる公知の接着剤を用いることができる。
工程(I)に用いうる接着剤としては、シリコーン系1液型弾性接着剤等が挙げられる。
【0045】
接着剤の塗布量は、被修復面の凹凸の状態、損傷の状態を考慮して適宜決定すればよい。
一般的には、例えば、タイル張りの被修復面に内装材を貼着する場合には、100g/m2~1000g/m2の範囲が好ましく、200g/m2~500g/m2の範囲がより好ましい。
既述のように、乾燥後の接着剤層の厚みを、被修復面の凹凸の深さよりも大きくすることで、被修復面における凹凸の外観への影響をより効果的に抑制することができる。接着剤の塗布に際しては、凹凸の凹部の底面まで接着剤を十分に浸透させることが、修復した内装の耐久性向上の観点から好ましい。
【0046】
(工程(II))
工程(II)では、塗布により形成された接着剤層の面上に、修復用内装材を、修復用内装材の発泡樹脂層を有する側が、接着剤層に接する方向に重ねて押圧する。押圧により、内装材が被修復面に貼付され、固定化される。
図2(B)に示すように、形成された接着剤層24の表面に、本開示の内装材10を重ね合わせる。内装材10が柔軟であるために、重ね合わせが容易に行なえる。さらに、内装材10は、弾力性がある発泡樹脂層を備えるため、接着剤層24の面状は厳密な均一性を有しなくても接着剤層24の不均一性が外観に大きな影響を与えることが抑制される。
次に、
図2(C)に示すように、被修復面に重ね合わせた内装材10を押圧して密着させる。本開示の内装材10における発泡樹脂層12は、柔軟で形状追従性に優れることから、被修復面におけるタイルの欠け部分22A、目地の欠落部分20A等の凹凸は、発泡樹脂層12により吸収され、内装材10の表面は平滑な外観を示す。
本開示の内装材は、柔軟性に優れ、発泡樹脂層に起因して被修復面の凹凸を効果的に吸収することから、内装材を接着剤層に重ねて押圧する際に気泡などが入り難く、必要に応じて折り曲げたり、角を丸めたりできることから、簡易に貼付することができる。
また、柔軟な樹脂層により構成された内装材は、カッターナイフ、はさみ等で容易に切断できることから、修復現場にて状況に応じて行うサイズの調整も簡易である。
【0047】
(任意の工程)
本開示の内装の修復方法では、上記工程(I)及び工程(II)に加え、任意の工程をさらに含んでいてもよい。
本開示の内装材は、既述のように、特に被修復面の前処理は必要ないが、所望により、被修復面の凹凸を緩和する工程、被修復面の面上に、接着剤層との密着性を向上する目的で、粗面化などの易接着加工を行う工程などを行なってもよい。また、被修復面の端部において、内装材と被修復面との空隙にコーキング材を充填する工程、被修復面に複数の内装材を貼付する場合、複数の内装材同士の境目に、ジョイントとも称されるT字型の部材を配置する工程、等を行ってもよい。
例えば、修復用内装材と、被修復面である天井又は床面と、の境部分には空隙が形成される場合がある。空隙が形成された場合、シリコーン系1液型コーキング材等のコーキング材を空隙に充填することで、被修復面への水、水蒸気などの浸入が容易に抑制される。また、複数の内装材同士の境目にT字型の部材を接着剤等で固定化することで、内装材同士の隙間からの被修復面への水、水蒸気などの浸入が容易に抑制される。
【0048】
(工程(III))
本開示の製造方法は、被修復面に複数の内装材を貼付する場合、複数の内装材同士の境目にT字型のジョイントを配置する工程(工程(III))を有することができる。
本開示の内装材を用いて、被修復面である部屋の壁面の全領域を覆って修復することができる。被修復面の面積によっては、複数の内装材を互いに接する位置に並べて貼り合せる場合がある。
工程(III)は、複数の内装材を用いて被修復面を修復する場合、
図2(C)に示すように、複数の内装材10同士の境目に、ジョイントとも称される断面がT字型の部材(以下、T字型部材と称することがある)26を用いて、内装材10の表皮層16側から、T字型部材26の中央の凸部を内装材10の境目に挿入し、両翼部分を、表皮層16を覆う位置に配置し、T字型部材26と内装材10とを、接着剤28を用いて固定する工程である。
T字型部材は、ステンレス、アルミニウムなどの金属製部材でもよく、樹脂製部材でもよい。なかでも、耐水性、防錆性等がより良好である点から、樹脂製部品であることが好ましい。
【0049】
従来の修復方法では、欠陥を生じたタイルなどの内装材を剥離し、剥離面を均一にならした後、新しい内装材を貼付けることが一般的であった。
本開示の内装材及び内装材を用いた内装の修復方法によれば、風呂場、台所などの水回りにおいても、内装の修復を簡易に行うことができ、特段の被修復面の前処理を必要としないことから、廃棄物の発生も最小限に抑えられ、短期間での施工が可能である。このため、本開示の内装材は、種々の内装の修復に好適に使用しうる。
【実施例】
【0050】
以下、実施例を挙げて本開示の内装材について具体的に説明するが、本開示はこれらに制限されるものではない。
【0051】
〔実施例1〕
(表皮層の製造)
表皮層は、重合度1050のストレートPVC(ポリ塩化ビニル樹脂、(株)カネカ製)を100重量部に、可塑剤としてDINP((株)ジェイ・プラス製)20重量部、エポキシ系可塑剤(サンワ合成(株)製)4重量部、潤滑剤として3.0重量部の亜鉛系安定剤、0.5質量部の紫外線吸収剤(ADEKA(株)製)、有機窒素硫黄系化合物の抗菌・防カビ剤(住化エンバイロメンタルサイエンス(株)製)3.0重量部を混合し、5分間~10分間、スーパーミキサーで十分に撹拌混合し、可塑化された混合物を調製した。
その後、得られた混合部を、さらにミキシングロールにて5分間~10分間混練し、混練物を、カレンダーロールによる圧延加工により、乾燥後の膜厚が0.30mmのフィルム状に成形し、表皮層を得た。
【0052】
(発泡樹脂層の製造)
発泡樹脂層は、15倍発泡の厚さ2mmのシート状のポリオレフィン架橋フォーム(東レ(株)製トーレペフ(登録商標)SPVS)を用いた。
発泡樹脂層の表皮層を形成する面とは反対側の面に、被修復面である浴室壁面との密着性改良措置として、プライマー塗料(主剤 ポリエーテル系接着剤100重量部(大日精化工業(株)製)に対し、イソシアネート系架橋剤3重量部(大日精化工業(株)製)及び希釈溶剤としてのメチルエチルケトン 70重量部を含む)をグラビアロールで、塗布量10g/m2で塗布し、100℃で2分間加熱乾燥して、プライマー層を形成した。
【0053】
表皮層と発泡樹脂層との貼り合せは、接着剤として2液架橋タイプの接着剤を用い、以下の条件で貼り合せを行い、実施例1の内装材を得た。
接着剤:主剤であるポリエステル系樹脂 100重量部に、イソシアネート架橋剤 3重量部及び希釈溶剤としてのメチルエチケトン 60重量部を配合して接着塗料を調整し、発泡樹脂層の表皮層と接着させる面の表面にグラビアロールにて、塗布量10g/m2で塗布した。表皮層の接着層を形成する側を80℃に加熱し、発泡樹脂層の接着剤の塗布面を重ね、クリアランスを1.9mmに調整したラミネートロールで貼り合せた。
その後、既定サイズに裁断し、50℃24時間加熱して、接着剤を熟成架橋させた。
なお、実施例1の内装材は、発泡樹脂層の厚み100に対し、表皮層の厚みは15である。
【0054】
(可とう性の評価)
表皮層及び発泡樹脂層が可とう性を有することを、得られた実施例1の内装材の可とう性を、以下に詳述する方法にて評価することで確認した。
可とう性の評価は、JIS A6909(2014年) 建築用仕上塗材 7.25可とう性試験に準じて行なった。
【0055】
JIS A6909(2014年) 建築用仕上塗材の7.25可とう性試験における試験体に代えて、実施例1の内装材を用い、内装材の発泡樹脂層側に鉄棒をあて、表皮層側を外側として90度折り曲げ試験を行い、以下の基準にて評価した。
(評価基準)
内装材を90度に折り曲げることができ、試験後に表皮層にひび割れ又はシワ残りを生じない場合を、可とう性を有すると評価した。
硬質で90度まで折り曲げられない場合、並びに、折り曲げられるが、試験後に表皮層にひび割れ又はシワ残りを生じた場合、の少なくともいずれかである場合を、可とう性を有しないと評価した。
【0056】
(硬さの評価)
得られた実施例1の内装材を、MSAエンジニアリングシステム社製 ソフトネステスター#ST300を用いて、標準的な条件で測定し、硬さを評価した。ソフトネステスターによる測定値を下記表1に示す。
ソフトネステスターによる測定値は0.4であり、測定値が、既述の内装材として好ましい値の範囲内であることが確認された。
【0057】
〔実施例2〕
発泡樹脂層に、20倍発泡の厚さ3mmのシート状のポリエチレン架橋フォーム(積水化学工業(株)製 ソフトロン(登録商標)S)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして実施例2の内装材を作製した。
なお、実施例2の内装材は、発泡樹脂層の厚み100に対し、表皮層の厚みは10である。
実施例2の内装材を、実施例1と同様にして評価した。
その結果、実施例2の内装材は可とう性を有することを確認した。
また、ソフトネステスターによる測定値は0.5であり、測定値が、既述の内装材として好ましい値の範囲内であることが確認された。
【0058】
〔比較例1〕
実施例1における表皮層の形成と同様にして、厚さが0.3mmの、PVC樹脂を含むフィルムを形成し、そのまま比較例1の内装材とした。
比較例1の内装材は、発泡樹脂層を有さない。
比較例1の内装材を、実施例1と同様にして評価した。
その結果、比較例1の内装材は可とう性を有することを確認した。
また、ソフトネステスターによる測定値は1.5であり、内装材としては、柔らかすぎることがわかった。
【0059】
〔比較例2〕
接着剤塗布処理が施された厚さ1mmの亜鉛めっき鋼板を、200℃で1分間加熱した後、加熱面に、実施例1と同様にして得たPVCを含む表皮層を貼り合せ、化粧鋼板パネルを得て、比較例2の内装材とした。
比較例2の内装材を、実施例1と同様にして評価した。
その結果、比較例2の内装材は基材に鋼板を用いているため、前記評価法によれば、可とう性を有しないことが確認された。
また、ソフトネステスターによる測定値は0.0であり、内装材としては、硬すぎることがわかった。
【0060】
〔比較例3〕
表皮層の厚みを0.15mmとし、発泡樹脂層に、20倍発泡の厚さ3mmのシート状のポリエチレン架橋フォーム(積水化学工業(株)製 ソフトロン(登録商標)S)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして比較例3の内装材を作製した。
比較例3の内装材は、発泡樹脂層の厚み100に対し、表皮層の厚みは5であり、請求項1に規定する厚み比の範囲外である。
比較例3の内装材を、実施例1と同様にして評価した。
その結果、比較例3の内装材は可とう性を有することを確認した。
また、ソフトネステスターによる測定値は0.7であり、測定値が、既述の内装材として好ましい値の範囲内であることが確認された。
【0061】
〔比較例4〕
発泡樹脂層に、10倍発泡の厚さ1mmのシート状のポリオレフィン架橋フォーム(東レ(株)製 トーレペフ(登録商標)SPVS)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、比較例4の内装材を作製した。
比較例4の内装材は、発泡樹脂層の厚み100に対し、表皮層の厚みは30である。
比較例4の内装材を、実施例1と同様にして評価した。
その結果、比較例4の内装材は、試験後に表皮層にシワ残りを生じたため、可とう性を有しないと評価した。これは、発泡樹脂層の発泡倍率が10倍と低いことに起因すると考えられる。
また、ソフトネステスターによる測定値は0.9であったが、感触は柔らかすぎではなく、この測定値は、内装材の総厚が薄いために生じた結果と考えられる。
【0062】
(内装材の評価:外観、施工性)
得られた内装材を、
図2(A)に示す如き浴室のタイルを模した評価用の被修復面に、接着剤として積水フーラー(株)製、セキスイボンド#75を200g/m
2塗布し、貼着して、以下の項目を評価した。
なお、比較例2の内装材は可とう性を有さず、硬質であるため、そのままでは、被修復面に貼り付けられなかった。このため、タイルと下地モルタルを予め剥離し、露出した内装基材のモルタル面を平滑化し、平滑化した内装基材の面上に接着剤を塗布して、貼着した。
【0063】
(修復面平滑性)
修復後の内装材の外観を目視で観察し、以下の基準で評価した。なお、下記評価においてAランクが実用上問題のないレベルである。
A:平滑
B:若干の凹凸が観察され、光の当たり方によっては外観に劣る
C:被修復面の凹凸が観察され、外観に劣る
【0064】
(重量)
単位面積当たりの重量を測定し、以下の基準で評価した。
A:600g/m2以下
B:600g/m2を超え、1200g/m2以下
C:1200g/m2を超える
【0065】
(施工期間)
壁面の被修復面の総面積が12m2のモデル浴室について、修復の完成までに係る時間を測定し、以下の基準で評価した。
A:8時間以下
B:8時間を超え、24時間以下
C:24時間を超える
【0066】
(産業廃棄物量)
壁面の被修復面の総面積が12m2のモデル浴室について、施工時に、タイルの剥離及びモルタル面の平滑化の少なくともいずれかが必要な場合、剥離及び平滑化工程を実施する際に排出された産業廃棄物であるモルタル及びタイルの総重量を測定し、以下の基準で評価した。
A:50kg以下
B:50kgを超え、100kg以下
C:100kgを超える
【0067】
実施例1の内装材は、被修復面への貼付が容易であり、タイルの凹凸は修復箇所の外観に影響を与えず、外観の良好な修復がなされた。
一方、比較例1の内装材は、薄く、腰がないために貼付時に気泡を除去することが困難であった。また、貼付後の修復箇所では、タイルの凹凸を補修した接着剤の表面仕上がりのわずかな凹凸が外観に影響を与え、修復面の外観に劣るものであった。
比較例2の内装材は、タイルの凹凸に追従しないため、そのまま接着剤により貼付を試みたが、安定に固定化ができなかった。このため、タイルの剥離及び表面の平滑化であるはつりを行い、その後、貼着した。
【0068】
比較例3の内装材は、表皮層が薄く、発泡樹脂層に対する厚み比が低すぎるため、タイルの凹凸を補修した接着剤の表面仕上がりのわずかな凹凸が、外観に影響を与え、修復面の外観に劣るものであった。
比較例4の内装材は、発泡樹脂層の発泡倍率が10倍と低く、発泡樹脂層が硬すぎるため、施工時に折れ曲がった時に生じた折れしわが、施工後に残ってしまい、修復面の外観に劣るものであった。
【0069】
(内装材の評価:断熱性)
京都電子工業(株)製、迅速熱伝導率計 QTM-710を用い、実施例ならびに比較例の内装材の熱伝導率を測定し、得られた熱伝導率の値(λ:W/mK)より、以下の基準で断熱性を評価した。結果を下記表1に示す。
【0070】
(断熱性)
A:熱伝導率の値が0.08W/mK以下
B:熱伝導率の値が0.08W/mKを超え、0.16W/mK以下
C:熱伝導率の値が0.16W/mKを超える
【0071】
表1における断熱性の評価結果より明らかなように、表皮層に発泡樹脂層を積層した実施例1、実施例2、比較例3、比較例4の熱伝導率は、発泡層を積層しない比較例1、比較例2に比べ小さい数値となっており、断熱効果があると考えることができる。
【0072】
【0073】
上記各項目の評価結果を下記表2に示す。全ての項目で評価がAの場合を、総合評価Aとし、Aの項目が3以上、その他がB以下の項目のものを総合評価Bとし、Aの項目が2以下のものを総合評価Cとした。
【0074】
【0075】
表2の結果より、実施例1及び実施例2の内装材は、内装の修復方法に好適であり、修復後の外観が良好であり、簡易な施工が可能であった。さらに、実施例1及び実施例2の内装材は、断熱性が良好であるという副次的効果を奏することから、風呂、台所などの修復用の内装材として好適であることがわかる。
他方、発泡樹脂層を有しない比較例1、発泡樹脂層と表皮層とを有していても、発泡樹脂層と表皮層との厚み比において表皮層が薄い比較例3は、修復面の平滑性に劣っていた。特に、発泡樹脂層を有しない比較例1の内装材は、柔らかすぎて被修復面の形状の影響を受けてしまい、ソフトネステスターの測定結果が0.8mmを超えると下地のわずかな凹凸の影響をうけ、外観の平滑性を損なうことが目視で確認された。
また、発泡樹脂層の発泡倍率が低く、可とう性を有しない比較例4の内装材は、表皮層にシワが発生して外観にやや劣り、断熱性も不十分であった。
【符号の説明】
【0076】
10 修復用内装材(内装材)
12 発泡樹脂層
14 接着層
16 表皮層
18 内装基材
20 下地モルタル
22 タイル
24 接着剤層
26 T字型部材(ジョイント)
28 接着剤