(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-21
(45)【発行日】2022-03-02
(54)【発明の名称】タイヤ
(51)【国際特許分類】
B60C 11/13 20060101AFI20220222BHJP
B60C 11/03 20060101ALI20220222BHJP
【FI】
B60C11/13 B
B60C11/03 100A
B60C11/03 100B
B60C11/03 100C
B60C11/03 100Z
(21)【出願番号】P 2018008980
(22)【出願日】2018-01-23
【審査請求日】2020-11-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104134
【氏名又は名称】住友 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100156225
【氏名又は名称】浦 重剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168549
【氏名又は名称】苗村 潤
(74)【代理人】
【識別番号】100200403
【氏名又は名称】石原 幸信
(72)【発明者】
【氏名】石崖 雄一
(72)【発明者】
【氏名】中島 幸一
【審査官】弘實 由美子
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-174226(JP,A)
【文献】特開2008-302740(JP,A)
【文献】特開昭63-025107(JP,A)
【文献】国際公開第2008/114668(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 1/00-19/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行時に接地するトレッド面を含むトレッド部を有するタイヤであって、
前記トレッド部には、タイヤ周方向に連続してのびる周方向溝が形成され、
前記周方向溝は、溝底と、前記溝底から前記トレッド面に向けてタイヤ半径方向にのびる一対の溝壁とを有し、
前記溝底は、トレッド平面視において、前記周方向溝の中心線に対して対称に形成され、かつ、前記周方向溝の溝深さの最も深い位置で前記トレッド面に平行な面として規定される溝底基準面から、
前記周方向溝のタイヤ幅方向の全幅にわたってタイヤ半径方向外側に突出する複数の溝底隆起部を含み、
前記各溝底隆起部は、タイヤ半径方向にのびる第1溝底面と、前記第1溝底面よりもタイヤ半径方向に対する角度が大きい第2溝底面とを有し、
前記各溝壁は、前記周方向溝の溝幅の最も広い位置でタイヤ周方向に沿った面として規定される溝壁基準面から、前記周方向溝内側に突出する複数の溝壁隆起部を含み、
前記各溝壁隆起部は、タイヤ幅方向にのびる第1溝壁面と、前記第1溝壁面よりもタイヤ幅方向に対する角度が大きい第2溝壁面とを有
し、
前記第1溝底面と前記第1溝壁面とは、タイヤ周方向において、異なる位置に配されるタイヤ。
【請求項2】
走行時に接地するトレッド面を含むトレッド部を有するタイヤであって、
前記トレッド部には、タイヤ周方向に連続してのびる周方向溝が形成され、
前記周方向溝は、溝底と、前記溝底から前記トレッド面に向けてタイヤ半径方向にのびる一対の溝壁とを有し、
前記溝底は、トレッド平面視において、前記周方向溝の中心線に対して対称に形成され、かつ、前記周方向溝の溝深さの最も深い位置で前記トレッド面に平行な面として規定される溝底基準面から、タイヤ半径方向外側に突出する複数の溝底隆起部を含み、
前記各溝底隆起部は、タイヤ半径方向にのびる第1溝底面と、前記第1溝底面よりもタイヤ半径方向に対する角度が大きい第2溝底面とを有し、
前記溝底隆起部のタイヤ周方向の長さは、タイヤ周方向に隣接する前記第1溝底面間の間隔に等しく、
前記各溝壁は、前記周方向溝の溝幅の最も広い位置でタイヤ周方向に沿った面として規定される溝壁基準面から、前記周方向溝内側に突出する複数の溝壁隆起部を含み、
前記各溝壁隆起部は、タイヤ幅方向にのびる第1溝壁面と、前記第1溝壁面よりもタイヤ幅方向に対する角度が大きい第2溝壁面とを有するタイヤ。
【請求項3】
走行時に接地するトレッド面を含むトレッド部を有するタイヤであって、
前記トレッド部には、タイヤ周方向に連続してのびる周方向溝が形成され、
前記周方向溝は、溝底と、前記溝底から前記トレッド面に向けてタイヤ半径方向にのびる一対の溝壁とを有し、
前記溝底は、トレッド平面視において、前記周方向溝の中心線に対して対称に形成され、かつ、前記周方向溝の溝深さの最も深い位置で前記トレッド面に平行な面として規定される溝底基準面から、タイヤ半径方向外側に突出する複数の溝底隆起部を含み、
前記各溝底隆起部は、タイヤ半径方向にのびる第1溝底面と、前記第1溝底面よりもタイヤ半径方向に対する角度が大きい第2溝底面とを有し、
前記第1溝底面のタイヤ半径方向の高さは、0.5mm以上であり、
前記各溝壁は、前記周方向溝の溝幅の最も広い位置でタイヤ周方向に沿った面として規定される溝壁基準面から、前記周方向溝内側に突出する複数の溝壁隆起部を含み、
前記各溝壁隆起部は、タイヤ幅方向にのびる第1溝壁面と、前記第1溝壁面よりもタイヤ幅方向に対する角度が大きい第2溝壁面とを有し、
タイヤ周方向に隣接する前記第1溝壁面間の間隔は、タイヤ周方向に隣接する前記第1溝底面間の間隔に等しいタイヤ。
【請求項4】
走行時に接地するトレッド面を含むトレッド部を有するタイヤであって、
前記トレッド部には、タイヤ周方向に連続してのびる周方向溝が形成され、
前記周方向溝は、溝底と、前記溝底から前記トレッド面に向けてタイヤ半径方向にのびる一対の溝壁とを有し、
前記溝底は、トレッド平面視において、前記周方向溝の中心線に対して対称に形成され、かつ、前記周方向溝の溝深さの最も深い位置で前記トレッド面に平行な面として規定される溝底基準面から、前記周方向溝のタイヤ幅方向の全幅にわたってタイヤ半径方向外側に突出する複数の溝底隆起部を含み、
前記各溝底隆起部は、タイヤ半径方向にのびる第1溝底面と、前記第1溝底面よりもタイヤ半径方向に対する角度が大きい第2溝底面とを有し、
前記第1溝底面のタイヤ半径方向の高さは、0.5mm以上であり、
前記各溝壁は、前記周方向溝の溝幅の最も広い位置でタイヤ周方向に沿った面として規定される溝壁基準面から、前記周方向溝内側に突出する複数の溝壁隆起部を含み、
前記各溝壁隆起部は、タイヤ幅方向にのびる第1溝壁面と、前記第1溝壁面よりもタイヤ幅方向に対する角度が大きい第2溝壁面とを有するタイヤ。
【請求項5】
走行時に接地するトレッド面を含むトレッド部を有するタイヤであって、
前記トレッド部には、タイヤ周方向に連続してのびる周方向溝が形成され、
前記周方向溝は、溝底と、前記溝底から前記トレッド面に向けてタイヤ半径方向にのびる一対の溝壁とを有し、
前記溝底は、トレッド平面視において、前記周方向溝の中心線に対して対称に形成され、かつ、前記周方向溝の溝深さの最も深い位置で前記トレッド面に平行な面として規定される溝底基準面から、前記周方向溝のタイヤ幅方向の全幅にわたってタイヤ半径方向外側に突出する複数の溝底隆起部を含み、
前記各溝底隆起部は、タイヤ半径方向にのびる第1溝底面と、前記第1溝底面よりもタイヤ半径方向に対する角度が大きい第2溝底面とを有し、
タイヤ周方向に隣接する前記第1溝底面間の間隔は、10~15mmであり、
前記各溝壁は、前記周方向溝の溝幅の最も広い位置でタイヤ周方向に沿った面として規定される溝壁基準面から、前記周方向溝内側に突出する複数の溝壁隆起部を含み、
前記各溝壁隆起部は、タイヤ幅方向にのびる第1溝壁面と、前記第1溝壁面よりもタイヤ幅方向に対する角度が大きい第2溝壁面とを有するタイヤ。
【請求項6】
前記第2溝壁面は、
平面で構成される請求項1~5のいずれかに記載のタイヤ。
【請求項7】
走行時に接地するトレッド面を含むトレッド部を有するタイヤであって、
前記トレッド部には、タイヤ周方向に連続してのびる周方向溝が形成され、
前記周方向溝は、溝底と、前記溝底から前記トレッド面に向けてタイヤ半径方向にのびる一対の溝壁とを有し、
前記溝底は、トレッド平面視において、前記周方向溝の中心線に対して対称に形成され、かつ、前記周方向溝の溝深さの最も深い位置で前記トレッド面に平行な面として規定される溝底基準面から、前記周方向溝のタイヤ幅方向の全幅にわたってタイヤ半径方向外側に突出する複数の溝底隆起部を含み、
前記各溝底隆起部は、タイヤ半径方向にのびる第1溝底面と、前記第1溝底面よりもタイヤ半径方向に対する角度が大きい第2溝底面とを有し、
前記各溝壁は、前記周方向溝の溝幅の最も広い位置でタイヤ周方向に沿った面として規定される溝壁基準面から、前記周方向溝内側に突出する複数の溝壁隆起部を含み、
前記各溝壁隆起部は、タイヤ幅方向にのびる第1溝壁面と、前記第1溝壁面よりもタイヤ幅方向に対する角度が大きい第2溝壁面とを有し、
前記第2溝壁面は、曲面で構成されるタイヤ。
【請求項8】
前記第1溝底面は、タイヤ幅方向にのびる平面で構成される請求項
1~7のいずれかに記載のタイヤ。
【請求項9】
前記一対の溝壁は、トレッド平面視において、前記周方向溝の中心線に対して対称に形成される請求項
1~8のいずれかに記載のタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トレッド部に、タイヤ周方向に連続してのびる周方向溝が形成されたタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、雪上性能を向上させるために、トレッド部に形成されたタイヤ周方向に連続してのびる周方向溝の溝壁形状を特定する試みが行われている。例えば、下記特許文献1は、周方向溝に拡幅部を設けることで雪上性能を向上させたタイヤを提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1のタイヤは、使用状態によって雪上走行時の駆動力及び制動力が不足する場合があり、高い雪上性能を維持するために更なる改善が求められていた。
【0005】
本発明は、以上のような実状に鑑み案出されたもので、周方向溝の形状を特定することを基本として、雪上性能を向上し得るタイヤを提供することを主たる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、走行時に接地するトレッド面を含むトレッド部を有するタイヤであって、前記トレッド部には、タイヤ周方向に連続してのびる周方向溝が形成され、前記周方向溝は、溝底と、前記溝底から前記トレッド面に向けてタイヤ半径方向にのびる一対の溝壁とを有し、前記溝底は、トレッド平面視において、前記周方向溝の中心線に対して対称に形成され、かつ、前記周方向溝の溝深さの最も深い位置で前記トレッド面に平行な面として規定される溝底基準面から、タイヤ半径方向外側に突出する複数の溝底隆起部を含み、前記各溝底隆起部は、タイヤ半径方向にのびる第1溝底面と、前記第1溝底面よりもタイヤ半径方向に対する角度が大きい第2溝底面とを有し、前記各溝壁は、前記周方向溝の溝幅の最も広い位置でタイヤ周方向に沿った面として規定される溝壁基準面から、前記周方向溝内側に突出する複数の溝壁隆起部を含み、前記各溝壁隆起部は、タイヤ幅方向にのびる第1溝壁面と、前記第1溝壁面よりもタイヤ幅方向に対する角度が大きい第2溝壁面とを有することを特徴とする。
【0007】
本発明に係るタイヤにおいて、前記溝底隆起部は、前記周方向溝のタイヤ幅方向の全幅にわたって形成されるのが望ましい。
【0008】
本発明に係るタイヤにおいて、前記第1溝底面は、タイヤ幅方向にのびる平面で構成されるのが望ましい。
【0009】
本発明に係るタイヤにおいて、前記第1溝底面のタイヤ半径方向の高さは、0.5mm以上であるのが望ましい。
【0010】
本発明に係るタイヤにおいて、前記一対の溝壁は、トレッド平面視において、前記周方向溝の中心線に対して対称に形成されるのが望ましい。
【0011】
本発明に係るタイヤにおいて、前記第2溝壁面は、曲面で構成されるのが望ましい。
【0012】
本発明に係るタイヤにおいて、前記第2溝壁面は、平面で構成されるのが望ましい。
【0013】
本発明に係るタイヤにおいて、タイヤ周方向に隣接する前記第1溝底面間の間隔は、10~15mmであるのが望ましい。
【0014】
本発明に係るタイヤにおいて、タイヤ周方向に隣接する前記第1溝壁面間の間隔は、タイヤ周方向に隣接する前記第1溝底面間の間隔に等しいのが望ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明のタイヤの周方向溝は、溝底が、トレッド平面視において、周方向溝の中心線に対して対称に形成され、かつ、周方向溝の溝深さの最も深い位置で前記トレッド面に平行な面として規定される溝底基準面から、タイヤ半径方向外側に突出する複数の溝底隆起部を含んでいる。このような周方向溝は、溝底隆起部が雪に食い込み、良好な雪上性能を維持することができる。
【0016】
本発明のタイヤの各溝底隆起部は、タイヤ半径方向にのびる第1溝底面と、第1溝底面よりもタイヤ半径方向に対する角度が大きい第2溝底面とを有している。このような溝底隆起部は、第1溝底面によりタイヤ幅方向のエッジ成分が増加するので、雪上走行時の駆動力及び制動力が向上し得る。また、この溝底は、雪が第2溝底面に沿って移動することで雪の凝縮が促進され、雪柱せん断力を向上させ得る。
【0017】
本発明のタイヤの各溝壁は、周方向溝の溝幅の最も広い位置でタイヤ周方向に沿った面として規定される溝壁基準面から、周方向溝内側に突出する複数の溝壁隆起部を含み、各溝壁隆起部は、タイヤ幅方向にのびる第1溝壁面と、第1溝壁面よりもタイヤ幅方向に対する角度が大きい第2溝壁面とを有している。
【0018】
このような溝壁は、第1溝壁面によりタイヤ幅方向のエッジ成分が増加するので、雪上走行時の駆動力及び制動力が向上し得る。また、この溝壁は、雪が第2溝壁面に沿って移動することで、雪の凝縮が促進され、雪柱せん断力を向上させ得る。このため、本発明のタイヤは、溝壁により凝縮された雪に、溝底隆起部が食い込むことで、雪上性能をさらに向上させ得る。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明のタイヤの周方向溝の一実施形態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の一形態が図面に基づき説明される。
図1は、本実施形態のタイヤ1の周方向溝3を示す斜視図である。
図1に示されるように、本実施形態のタイヤ1は、走行時に路面に接地するトレッド面2Aを含むトレッド部2を有している。本実施形態のタイヤ1は、冬用タイヤとして好適に用いられる。ここで、冬用タイヤとは、スタッドレスタイヤ、スノータイヤ及びオールシーズンタイヤを含む雪上走行に適したタイヤ1である。
【0021】
本実施形態のトレッド部2は、タイヤ周方向に連続してのびる少なくとも1本の周方向溝3と、周方向溝3により区分される複数の陸部4とを含んでいる。
【0022】
図2は、周方向溝3の平面図であり、
図3は、
図2のA-A線の断面図である。
図1~
図3に示されるように、本実施形態の周方向溝3は、溝底5と、溝底5からトレッド面2Aに向けてタイヤ半径方向にのびる一対の溝壁6とを有している。ここで、本明細書において、「方向にのびる」とは、その方向の成分を多く含むことを意味する。
【0023】
図2に示されるように、本実施形態の溝底5は、トレッド平面視において、周方向溝3の中心線3cに対して対称に形成されている。
【0024】
図1及び
図3に示されるように、溝底5は、周方向溝3の溝深さDの最も深い位置でトレッド面2Aに平行な面として規定される溝底基準面5Aから、タイヤ半径方向外側に突出する複数の溝底隆起部7を含んでいる。
図3では、理解を容易にするために、溝底隆起部7の1つを着色して示している。
【0025】
このような周方向溝3は、タイヤ1が摩耗した状態であっても、溝底隆起部7が雪に食い込み、良好な雪上性能を維持することができる。また、このような溝底隆起部7は、周方向溝3の気柱内の振動を攪乱し、走行時の気柱共鳴音を低減させることができるので、タイヤ1のノイズ性能を向上することができる。
【0026】
本実施形態の溝底隆起部7は、タイヤ半径方向にのびる第1溝底面8と、第1溝底面8よりもタイヤ半径方向に対する角度が大きい第2溝底面9とを有している。このような溝底隆起部7は、第1溝底面8によりタイヤ幅方向のエッジ成分が増加するので、雪上走行時の駆動力及び制動力が向上し得る。また、この溝底5は、タイヤ1が第2回転方向R2に回転するとき、雪が第2溝底面9に沿って移動することで雪の凝縮が促進され、タイヤ1が摩耗した状態であっても、雪柱せん断力を向上させ得る。
【0027】
図1及び
図2に示されるように、本実施形態の各溝壁6は、周方向溝3の溝幅Wの最も広い位置でタイヤ周方向に沿った面として規定される溝壁基準面6Aから、周方向溝3内側に突出する複数の溝壁隆起部11を含んでいる。
図2では、理解を容易にするために、溝壁隆起部11の1つを着色して示している。ここで、本明細書において、「方向に沿った」とは、その方向に平行であることを意味する。
【0028】
このような周方向溝3は、溝壁隆起部11が雪に食い込み、雪上性能を向上させることができる。また、このような溝壁隆起部11は、周方向溝3の気柱内の振動を攪乱し、走行時の気柱共鳴音を低減させることができるので、タイヤ1のノイズ性能を向上することができる。
【0029】
各溝壁隆起部11は、タイヤ幅方向にのびる第1溝壁面12と、第1溝壁面12よりもタイヤ幅方向に対する角度が大きい第2溝壁面13とを有している。このような溝壁6は、第1溝壁面12によりタイヤ幅方向のエッジ成分が増加するので、雪上走行時の駆動力及び制動力を向上させ得る。また、この溝壁6は、タイヤ1が溝壁隆起部11の開く方向を先着側とする第1回転方向R1に回転するとき、雪が第2溝壁面13に沿って移動することで、雪の凝縮が促進され、雪柱せん断力を向上させ得る。このため、本実施形態のタイヤ1は、溝壁6により凝縮された雪に、溝底隆起部7が食い込むことで、雪上性能をさらに向上させ得る。また、このような周方向溝3は、トレッド面2Aの接地時と離地時とにおける溝底隆起部7及び溝壁隆起部11の変形により、排雪作用が向上し、雪上性能をさらに向上させ得る。
【0030】
上述の周方向溝3を有するタイヤ1は、溝底5及び溝壁6の形状を特定することにより、タイヤ1が摩耗していない状態であっても、タイヤ1が摩耗した状態であっても、良好な雪上性能を維持することができる。溝底5及び溝壁6のより好ましい形状が、以下に説明される。
【0031】
図2に示されるように、溝底隆起部7は、周方向溝3のタイヤ幅方向の全幅にわたって形成されるのが望ましい。また、第1溝底面8は、周方向溝3の中心線3cに直交するのが望ましい。なお、周方向溝3は、例えば、その溝幅方向の中心線3cが、タイヤ周方向に沿ってのびている。
【0032】
図3に示されるように、第1溝底面8のタイヤ半径方向の高さH1は、好ましくは、0.5mm以上である。また、第1溝底面8の高さH1は、タイヤ1の摩耗限界を示すトレッドウェアインジケータ(図示省略)の溝底基準面5Aからの高さよりも小さいのが望ましい。このような第1溝底面8を有する溝底隆起部7は、タイヤ1の摩耗限界まで使用した場合であっても、第1溝底面8が確実に雪に食い込み、良好な雪上性能を維持することができる。
【0033】
タイヤ周方向に隣接する第1溝底面8間の間隔P1は、好ましくは、10~15mmである。このような第1溝底面8を有する溝底隆起部7は、第1溝底面8が適切に雪に食い込み、雪上性能を向上させることができる。
【0034】
第2溝底面9は、タイヤ半径方向に対して、好ましくは、70~87°の角度θ1をなしている。このような第2溝底面9は、タイヤ1が第2回転方向R2に回転するとき、雪が第2溝底面9に沿って移動することで、雪の凝縮が促進され、雪柱せん断力を向上させ得る。
【0035】
本実施形態の溝底隆起部7のタイヤ周方向の長さLbは、タイヤ周方向に隣接する第1溝底面8間の間隔P1に略等しい。なお、溝底隆起部7の長さLbは、タイヤ周方向に隣接する第1溝底面8間の間隔P1よりも小さくてもよい。
【0036】
図2に示されるように、一対の溝壁6は、トレッド平面視において、周方向溝3の中心線3cに対して対称に形成されるのが望ましい。すなわち、一方の溝壁6に形成される溝壁隆起部11と他方の溝壁6に形成される溝壁隆起部11とは、タイヤ周方向の位置が同一である。本実施形態の第1溝壁面12及び第2溝壁面13は、それぞれ、平面で構成されている。このような溝壁6は、第2溝壁面13による雪の凝縮がより促進され、雪柱せん断力をさらに向上させ得る。
【0037】
第1溝壁面12のタイヤ幅方向の長さW1は、好ましくは、1mm以上である。第1溝壁面12の長さW1が1mmよりも小さいと、第2溝壁面13による雪の凝縮効果が低下するおそれがある。
【0038】
第1溝壁面12のタイヤ幅方向の長さW1は、好ましくは、タイヤ周方向に隣接する第1溝壁面12間の間隔P2の20%以下である。タイヤ周方向に隣接する第1溝壁面12間の間隔P2は、タイヤ周方向に隣接する第1溝底面8間の間隔P1に等しいのが望ましい。このような周方向溝3は、トレッド面2Aの接地時と離地時とにおける溝底隆起部7及び溝壁隆起部11の変形による排雪作用をさらに向上させ得る。
【0039】
本実施形態の溝壁隆起部11のタイヤ周方向の長さLwは、タイヤ周方向に隣接する第1溝壁面12間の間隔P2に略等しい。このため、第1溝壁面12のタイヤ幅方向の長さW1は、溝壁隆起部11のタイヤ周方向の長さLwの20%以下であるのが好ましい。このような第1溝壁面12を有する溝壁隆起部11は、適切なピッチで雪に食い込むことができ、安定した雪上性能を発揮することができる。
【0040】
第2溝壁面13は、トレッド平面視において、タイヤ周方向に対して、好ましくは、3~20°の角度θ2をなしている。このような第2溝壁面13は、雪の凝縮を促進し、雪柱せん断力を向上させ得る。
【0041】
図4は、さらに他の実施形態の周方向溝20,30の平面図である。上述の実施形態と同一の構成には、同一の符号が付され、その説明が省略される。
【0042】
図4(a)は、溝壁隆起部21の第2溝壁面22が曲面で構成される周方向溝20である。図
4(a)に示されるように、この実施形態の周方向溝20は、複数の溝底隆起部7と複数の溝壁隆起部21とを含んでいる。この実施形態の溝壁隆起部21は、タイヤ幅方向にのびる第1溝壁面12と、第1溝壁面12よりもタイヤ幅方向に対する角度が大きい第2溝壁面22とを有している。
【0043】
この実施形態の第2溝壁面22は、周方向溝20のタイヤ幅方向外側に凹となる曲面で構成されている。このような溝壁隆起部21は、第2溝壁面22の曲面に沿って、雪を凝縮することができ、雪柱せん断力を向上させ得る。
【0044】
図4(b)は、溝壁隆起部31の第2溝壁面32が曲面で構成される周方向溝30である。
図4(b)に示されるように、この実施形態の周方向溝30は、複数の溝底隆起部7と複数の溝壁隆起部31とを含んでいる。この実施形態の溝壁隆起部31は、タイヤ幅方向にのびる第1溝壁面12と、第1溝壁面12よりもタイヤ幅方向に対する角度が大きい第2溝壁面32とを有している。
【0045】
この実施形態の第2溝壁面32は、周方向溝30のタイヤ幅方向内側に凸となる曲面で構成されている。このような溝壁隆起部31は、第2溝壁面32の曲面に沿って、雪を凝縮することができ、雪柱せん断力を向上させ得る。
【0046】
以上、本発明の特に好ましい実施形態について詳述したが、本発明は、図示の実施形態に限定されることなく、種々の態様に変形して実施し得る。
【実施例】
【0047】
図1の溝底隆起部及び溝壁隆起部を有する周方向溝が設けられた実施例のタイヤと、溝底隆起部及び溝壁隆起部を有さない周方向溝が設けられた従来例のタイヤと、溝壁隆起部のみを有する周方向溝が設けられた比較例のタイヤとが試作された。これら試作タイヤの雪上走行時の駆動性能及び制動性能並びに各試作タイヤを摩耗限界の50%まで摩耗させた状態での雪上走行時の駆動性能及び制動性能がテストされた。比較例及び実施例のタイヤは、溝底隆起部及び溝壁隆起部の開く方向を先着側とするように回転させた比較例1及び実施例1と、その反対側に回転させた比較例2及び実施例2とがテストされた。各テストタイヤの共通仕様やテスト方法は、以下のとおりである。
【0048】
タイヤサイズ:255/50R20
リムサイズ:20×8.0J
【0049】
<駆動性能及び摩耗時駆動性能>
雪上における各供試タイヤの駆動力が、試験機を用いて測定された。結果は、それぞれ、従来例を100とする指数で表示され、数値が大きいほど駆動性能に優れていることを示す。
【0050】
<制動性能及び摩耗時制動性能>
雪上における各供試タイヤの制動力が、試験機を用いて測定された。結果は、それぞれ、従来例を100とする指数で表示され、数値が大きいほど制動性能に優れていることを示す。
【0051】
テストの結果が表1に示される。
【0052】
【0053】
テストの結果、実施例のタイヤは、従来例及び比較例に対して、雪上走行時の駆動性能及び制動性能に優れており、タイヤが摩耗した状態であっても、良好な雪上性能を維持していることが確認できた。
【符号の説明】
【0054】
2A トレッド面
3 周方向溝
5 溝底
5A 溝底基準面
6 溝壁
6A 溝壁基準面
7 溝底隆起部
8 第1溝底面
9 第2溝底面
11 溝壁隆起部
12 第1溝壁面
13 第2溝壁面