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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-21
(45)【発行日】2022-03-02
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/00 20060101AFI20220222BHJP
   G03G 15/02 20060101ALI20220222BHJP
【FI】
G03G15/00 303
G03G15/02 102
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018029335
(22)【出願日】2018-02-22
(65)【公開番号】P2019144442
(43)【公開日】2019-08-29
【審査請求日】2020-12-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086933
【弁理士】
【氏名又は名称】久保 幸雄
(74)【代理人】
【識別番号】100125117
【弁理士】
【氏名又は名称】坂田 泰弘
(72)【発明者】
【氏名】岡田 拓也
(72)【発明者】
【氏名】村内 淳二
(72)【発明者】
【氏名】小田切 和喜
【審査官】三橋 健二
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-145848(JP,A)
【文献】特開2012-230139(JP,A)
【文献】特開2009-175675(JP,A)
【文献】特開2013-073097(JP,A)
【文献】特開2008-152208(JP,A)
【文献】特開2005-242050(JP,A)
【文献】特開平10-239956(JP,A)
【文献】特開平07-295341(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0131155(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/00
G03G 15/02
G03G 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
像担持体を回転させながら潜像を形成する画像形成装置であって、
前記像担持体のうちの回転時に帯電位置を通過する部分を帯電させる帯電部材と、
前記像担持体を帯電させるときに前記帯電部材に流れる電流の値を検出するセンサと、
前記帯電位置の上流側において前記像担持体の表面電位を調整する電位調整部材と、
検出された前記電流の値に応じて、当該電流の値が設定範囲内の値になるよう前記電位調整部材による前記表面電位の調整を制御する電位調整制御部と、を有し、
前記電位調整制御部は、複数の動作条件それぞれに対応する前記設定範囲を示すテーブルを記憶しており、前記電流の値がそのときの動作条件に対応する前記設定範囲内の値になるよう前記表面電位の調整を制御し、
複数の動作条件は、画像形成の累積回数により区別される条件であり、
前記設定範囲は、前記累積回数が多いほど下限値および上限値が大きい範囲とされている、
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
像担持体を回転させながら潜像を形成する画像形成装置であって、
前記像担持体のうちの回転時に帯電位置を通過する部分を帯電させる帯電部材と、
前記像担持体を帯電させるときに前記帯電部材に流れる電流の値を検出するセンサと、
前記帯電位置の上流側において前記像担持体の表面電位を調整する電位調整部材と、
検出された前記電流の値に応じて、当該電流の値が設定範囲内の値になるよう前記電位調整部材による前記表面電位の調整を制御する電位調整制御部と、を有し、
前記電位調整制御部は、複数の動作条件それぞれに対応する前記設定範囲を示すテーブルを記憶しており、前記電流の値がそのときの動作条件に対応する前記設定範囲内の値になるよう前記表面電位の調整を制御し、
複数の動作条件は、使用環境温度により区別される条件であり、
前記設定範囲は、前記使用環境温度が低いほど下限値および上限値が小さい範囲とされている、
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項3】
所定の使用期間の開始時および終了時それぞれにおいて検出された前記電流の値に基づいて、当該開始時および当該終了時それぞれにおける前記像担持体の表層部の膜厚を特定し、当該開始時の膜厚と当該終了時の膜厚との差を実削れ量として算出する算出部と、
前記電流の値と前記表層部の削れ量との関係を示すデータに基づいて、前記使用期間における前記電流の値の複数の検出結果の代表値に対応する前記削れ量を前記使用期間における想定削れ量として取得する取得部と、
前記実削れ量が前記想定削れ量よりも多い場合は、前記設定範囲をその上限値および下限値を小さくするよう補正し、前記実削れ量が前記想定削れ量よりも少ない場合は、前記設定範囲をその上限値および下限値を大きくするよう補正する補正部と、を有する、
請求項1または2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記電位調整部材として、前記像担持体に残留電荷を減少させる光を照射するイレーサを有する、
請求項1ないしのいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記電位調整部材として、前記像担持体にその残留電荷を減少させる光を照射するイレーサと、前記像担持体との間で電荷をやりとりするための電極部材とを有する、
請求項1ないしのいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記帯電部材を負電位にバイアスするための第1の直流電源と、
前記電極部材を正電位にバイアスするための第2の直流電源と、を有する、
請求項記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式の画像形成装置は、筒状の感光体の周面を一様に帯電させ、感光体が安定に回転している状態で画像データに応じた光照射を行い、それによって周面の帯電荷を部分的に消去して潜像(静電潜像)を形成する。そして、感光体の周面にトナーを付着させて静電潜像をトナー像として可視化し、そのトナー像を用紙に転写することにより用紙に画像を形成する。その後、次の画像形成の準備として、感光体に残存するトナーを取り除くクリーニングを行う。
【0003】
帯電においては、感光体に電子またはイオンが衝突し、そのために感光体の表層が脆くなる。そして、クリーニングにおいて、例えばブレードが感光体の表層に押し当てられることにより、印刷回数が増えるにつれて感光体の表層が徐々に削り取られて薄くなっていく。
【0004】
このように感光体が削られることによって、感光体の表面がリフレッシュされることから、画質を良好に保つことができる。特に、帯電を行うために帯電部材を感光体と接触させる場合において、クリーニング後に僅かに残ったトナーなどが膜状に拡がって付着するフィルミングが起きにくくなり、フィルミングによる画像不良の発生を抑えることができる。
【0005】
感光体の初期の膜厚は、所定の印刷回数当りの膜厚の削れ量である単位削れ量の標準値に基づいて、感光体の寿命(最大印刷枚数)が画像形成装置の仕様で定めた枚数以上となるように選定される。単位削れ量の標準値は、例えば、実験により求められる。
【0006】
しかし、感光体の個体差、または画像形成装置の使用環境などの要因により、感光体の削れの進行が必ずしも想定通りになるとは限らない。つまり、実際の単位削れ量の値が標準値とずれることがある。単位削れ量が多過ぎる場合は、感光体の寿命が想定よりも短くなってしまう。逆に、単位削れ量が少な過ぎる場合は、リフレッシュが不十分となって良質の画像を形成することができなくなる。
【0007】
単位削れ量を適正な値に保つための先行技術として、特許文献1、2に記載の技術がある。
【0008】
特許文献1には、感光体の被帯電膜の膜厚を検知し、検知した膜厚に応じて帯電時間を制御することが開示されている。
【0009】
特許文献2には、帯電電圧を保ちつつ帯電電流を検知し、画像部帯電電流が増加したときに非画像部帯電電流を減少させることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特開平10-239955号公報
【文献】特開平7-295341号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上に述べた特許文献1の技術には、帯電時間を長くした場合に、画像形成の生産性が低下する、という問題がある。
【0012】
特許文献2の技術には、画像形成のための画像部帯電とその準備のための非画像部帯電とで帯電部材を異なる条件で動作させるので、画像部帯電の品質を良好に保つのが難しく、地肌にトナーが付着するカブリなどの現像不良を起こしやすい、という問題がある。
【0013】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、生産性および帯電品質への影響を抑えつつ、感光体の膜厚の減少の進行を適正化することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の形態に係る画像形成装置は、像担持体を回転させながら潜像を形成する画像形成装置であって、前記像担持体のうちの回転時に帯電位置を通過する部分を帯電させる帯電部材と、前記像担持体を帯電させるときに前記帯電部材に流れる電流の値を検出するセンサと、前記帯電位置の上流側において前記像担持体の表面電位を調整する電位調整部材と、検出された前記電流の値に応じて、当該電流の値が設定範囲内の値になるよう前記電位調整部材による前記表面電位の調整を制御する電位調整制御部と、を有し、前記電位調整制御部は、複数の動作条件それぞれに対応する前記設定範囲を示すテーブルを記憶しており、前記電流の値がそのときの動作条件に対応する前記設定範囲内の値になるよう前記表面電位の調整を制御し、複数の動作条件は、画像形成の累積回数により区別される条件であり、前記設定範囲は、前記累積回数が多いほど下限値および上限値が大きい範囲とされている。または、複数の動作条件は、使用環境温度により区別される条件であり、前記設定範囲は、前記使用環境温度が低いほど下限値および上限値が小さい範囲とされていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施形態に係る画像形成装置の構成の概要を示す図である。
図2】イメージングユニットおよび電位調整部の構成を示す図である。
図3】感光体の層構造の例を示す図である。
図4】画像形成装置の制御回路の機能的構成を示す図である。
図5】設定範囲テーブルの例を示す図である。
図6】帯電に関わる放電電流値と感光体の削れ量との関係の例を示す図である。
図7】感光体の表面電位調整の例を示す図である。
図8】電位調整部の構成の他の例を示す図である。
図9】感光体の表面電位調整の他の例を示す図である。
図10】電位調整部の構成の他の例を示す図である。
図11】感光体の表面電位調整の他の例を示す図である。
図12】画像形成装置における処理の流れを示す図である。
図13】設定範囲補正処理の流れを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1には本発明の一実施形態に係る画像形成装置1の構成の概要が、図2にはイメージングユニット3および電位調整部の構成が、図3には感光体4の層構造の例が、それぞれ示されている。
【0017】
図1に示される画像形成装置1は、タンデム型のプリンタエンジン10を備える電子写真方式のカラープリンタである。画像形成装置1は、ネットワークを介して外部のホスト装置から入力されるジョブに応じて、カラーまたはモノクロの画像を形成する。画像形成装置1は、その動作を制御する制御回路100を有している。制御回路100は、制御プログラムを実行するプロセッサおよびその周辺デバイス(ROM、RAMなど)を備えている。
【0018】
プリンタエンジン10は、4個のイメージングユニット3y,3m,3c,3k、プリントヘッド6、および中間転写ベルト12を有する。
【0019】
イメージングユニット3y~3kは、それぞれ筒状の感光体4、帯電ローラ5、現像器7、イレーサ8、およびクリーナ9などを有している。イメージングユニット3y~3kの基本的な構成は同様であるので、以下においてこれらを区別せずに「イメージングユニット3」と記すことがある。
【0020】
プリントヘッド6は、イメージングユニット3y~3kのそれぞれに対してパターン露光を行うためのレーザビームL1を射出する。プリントヘッド6において、感光体4の回転軸方向にレーザビームL1を偏向する主走査が行われる。この主走査と並行して、感光体4を定速回転させる副走査が行われる。
【0021】
中間転写ベルト12は、トナー像の一次転写における被転写部材である。中間転写ベルト12は、一対のローラ12A,12B間に巻回されて回転する。中間転写ベルト12の内側には、イメージングユニット3y,3m,3c,3kごとに一次転写ローラ11が配置されている。
【0022】
カラー印刷モードにおいて、イメージングユニット3y~3kは、Y(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)、およびK(ブラック)の4色のトナー像を並行して形成する。4色のトナー像は、回転中の中間転写ベルト12に順次に一次転写される。最初にYのトナー像が転写され、それに重なるようMのトナー像、Cのトナー像、およびKのトナー像が順次に転写される。
【0023】
一次転写されたトナー像は、二次転写ローラ16と対向するとき、下方の給紙カセット14から取り出されてタイミングローラ15を経て搬送されてきたシート(記録用紙)2に二次転写される。そして、二次転写の後、定着器17の内部を通って上部の排紙トレイ19へ送り出される。定着器17を通過するとき、加熱および加圧によってトナー像がシート2に定着する。
【0024】
図2において、感光体4は、潜像を形成するための像担持体であり、支持体であるドラムと一体に一方向に回転するよう駆動される。
【0025】
帯電ローラ5は、接触式の帯電部材であり、感光体4に当接して回転しながら感光体4の周面を帯電させる。感光体4の周面のうちの一様に帯電した部分に対して画像データに基づいてパターン露光を行うことにより、印刷するべき画像の潜像を形成することができる。帯電ローラ5の構造、材質、および寸法などは、従来から知られているものと同様であってもよい。
【0026】
現像器7は、感光体の周面にトナーを付着させて潜像をトナー像として可視化する。現像器7は、例えばトナーをキャリアと混合して撹拌することにより帯電させる。そして、帯電したトナーを感光体4と近接する現像位置へ供給する。
【0027】
イレーサ8は、トナー像の一次転写が終わった後の感光体4の周面に、残留電荷を減少させる光ビームL2を照射する。光源は、例えば波長685nmの可視光を射出する発光ダイオードアレイである。イレーサ8は、光源および光源を発光させるための給電回路を有している。
【0028】
クリーナ9は、トナー像の一次転写が終わった後の感光体4の周面から残留トナーなどの付着物を除去する。その方式は、例えば弾性のブレード9aを接触させて付着物をかき取るブレードクリーニング方式である。ブラシまたはローラなどを用いる他の方式であってもよい。
【0029】
中間転写ベルト12の近傍には、一次転写位置を通過した転写面の明暗に応じた信号を出力する濃度センサ21が設けられている。これにより、画像安定化処理において、トナー像が通過するときの濃度センサ21の出力に基づいて、像の濃淡および下地部におけるトナー付着量などを測定することができる。
【0030】
画像の形成に際して、帯電ローラ5は、高圧電源回路32によりマイナスの電位(Vc)にバイアスされる。このとき、回転している感光体4の表面のうちの帯電ローラ5に対する上流側の部分、すなわち帯電ローラ5に近づくよう移動する部分は、帯電ローラ5に対して相対的にプラス側の電位になっている。なお、以下において、帯電ローラ5のバイアス電位を「帯電バイアスVc」と記す。
【0031】
このため、帯電ローラ5と感光体4とのニップ部の上流側の近傍である帯電位置P1において放電が生じ、帯電ローラ5と近接する感光体4の表面にマイナスの電荷が付与される。これと並行して現像器7もマイナスの電位(Vdc)にバイアスされ、現像器7内のトナーがマイナスの電荷を帯びる。電荷が付与された帯電状態の感光体4の表面電位(これを「感光体電位Vo」と記す)がトナーと同電位となるよう高圧電源回路32の出力が調整される。
【0032】
ところで、感光体4は、図3に示すように、導電性基体41、下引き層42、および感光層43から構成される。これらのうち、感光層43は、電荷発生層44と電荷輸送層45との2層構造とされている。これらの層の材質は公知のものでよい。
【0033】
導電性基体41は、アルミニウムまたは他の金属からなり、下引き層42および感光層43を支持する。下引き層42は、導電性基体41と感光層43との接合性を高めるために設けられ、導電性粒子を分散させた樹脂バインダからなる。
【0034】
電荷発生層44は、アゾ原料またはキノン顔料などの電荷発生物質を分散させた樹脂バインダからなる。電荷輸送層45は、電荷輸送物質を分散させた樹脂バインダからなる。電荷輸送物質の例として、4,4’-ジメチル-4”-(β-フェニルスチリル)トリフェニルアミンがある。樹脂バインダの例として、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン、アクリル樹脂、メタクリル樹脂などがある。
【0035】
感光層43の表面を一様にマイナスに帯電させておいた状態でレーザビームL1を照射すると、電荷発生層44のうちの露光領域(感光領域)82にプラスの電荷およびマイナスの電荷が発生する。
【0036】
電荷発生層44に発生した電荷のうち、マイナスの電荷は、下引き層42を通って導電性基体41へ移動する。他方、プラスの電荷は、電荷発生層44から電荷輸送層45の表層部に移動する。このとき、電荷は、表層部に近づくにつれて面方向に拡がる。表層部に移動した電荷は、感光層43の表面のマイナスの電荷を打ち消す。これにより、感光層43の表面において、電荷の消失した除電領域が形成される。その後、この除電領域にマイナスに帯電したトナーが付着することにより、潜像がトナー像となる。
【0037】
このような感光体4の寿命は、電荷輸送層45が摩耗してその膜厚Hが下限値になるまでの期間である。つまり、電荷輸送層45の膜厚が感光体4の寿命に深く関係し、電荷発生層44、下引き層42、および導電性基体41の寸法は、感光体4の寿命に直接には関係しない。つまり、本実施形態において、感光体4の膜厚Hとは、実質的には電荷輸送層45の膜厚である。以下において例示する感光体4の膜厚Hの具体値は、電荷輸送層45の膜厚Hの値である。
【0038】
さて、画像形成装置1は、感光体4を適度に摩耗させるために、帯電ローラ5による帯電に先立って感光体4の表面電位を調整する機能を有している。以下、この機能を中心に画像形成装置1の構成および動作を説明する。
【0039】
図2に戻って、イメージングユニット3は、電子写真プロセスに関わる上に述べた感光体4およびその周辺のデバイスに加えて、電位調整ローラ51を有している。また、画像形成装置1は、高圧電源回路52、電流センサ35、および電位調整制御部120を有する。図2の例においては、電位調整ローラ51と高圧電源回路52とにより電位調整部50が構成される。
【0040】
電位調整ローラ51は、帯電ローラ5とクリーナ9との間に配置され、帯電位置P1の上流において感光体4と接触し、感光体4に従動して回転する。ただし、従動に限らず、電位調整ローラ51を回転駆動してもよい。
【0041】
電位調整ローラ51は、感光体4との間で電荷をやりとりするための電極部材として、高圧電源回路52によりバイアスされる。電位調整ローラ51は、帯電位置P1の上流において感光体4の表面電位を調整する電位調整部材の例である。
【0042】
電位調整ローラ51の基本的な構成は、帯電ローラ5の構成と同様でよい。すなわち、芯金とその周面を覆う導電性弾性体とで電位調整ローラ51を構成することができる。導電性弾性体としては、導電フィラーを分散させたゴムがある。
【0043】
高圧電源回路52は、電位調整ローラ51をマイナスの電位にもプラスの電位にもバイアス可能な両極例出力型の直流電源回路である。高圧電源回路52は、電位調整制御部120により制御される。
【0044】
電流センサ35は、感光体4を帯電させるときに帯電ローラ5に流れる放電電流の値(放電電流値Ic)を検出する。すなわち、放電電流値Icを示す検出信号を出力する。
【0045】
電位調整制御部120は、電流センサ35からの検出信号に基づいて放電電流値Icを検知し、放電電流値Icに応じて、当該放電電流値Icが設定範囲内の値になるよう高圧電源回路52の出力を設定することにより、電位調整ローラ51による感光体4の表面電位の調整を制御する。詳しくは以下の通りである。
【0046】
図4には画像形成装置1の制御回路100の機能的構成が、図5には設定範囲テーブル126の例が、図6には帯電に関わる放電電流値Icと感光体4の削れ量dHとの関係の例が、図7には感光体4の表面電位調整の例が、それぞれ示されている。
【0047】
図4において、画像形成装置1は、上位制御部110、電位調整制御部120、検出値蓄積部131、実削れ量算出部132、想定削れ量取得部133、および設定範囲補正部134などを有している。これらの機能は、制御回路100のハードウェア構成により、およびプロセッサが制御プログラムを実行することにより実現される。
【0048】
上位制御部110は、画像形成装置1の全体の動作を制御する。例えば、ネットワーク通信により入力されるジョブを受け付けると、プリンタエンジン10およびプリントヘッド6などに指令を与えて画像形成のための動作を行わせる。ジョブの実行履歴を記録するとともに、ジョブを実行するごとに累積印刷枚数Nを更新する。累積印刷枚数Nは、ジョブごとの印刷枚数の累積であり、画像形成の累積回数に相当する。
【0049】
また、上位制御部110は、電源オン時、多数枚の印刷を行っているとき、画像形成装置1内の温度が変化したときなど、予め定められた実行条件に当てはまるときに、画像安定化処理を実行する。画像安定化処理は、色の再現を一定の状態に保つために電子写真プロセス条件を調整する処理である。この画像安定化処理を実行する際に、電位調整制御部120に対して電位調整の実施を指令する。この指令は、例えば累積印刷枚数Nを通知することにより行われる。
【0050】
電位調整制御部120においては、設定範囲テーブル126が不揮発性メモリにより記憶されている。設定範囲テーブル126は、図5に示すように、累積印刷枚数Nおよび使用環境温度Tにより区別される複数の動作条件について、帯電に関わる放電電流値Icの適正範囲として定めた設定範囲RIcを示すデータである。
【0051】
設定範囲テーブル126において、設定範囲RIcは、累積回数Nが多いほど下限値および上限値が大きい範囲とされている。一般に、クリーナ9による感光体4の削れは、ブレード9aの使用に伴う永久歪みにより感光体4に対する摺擦力が低下して徐々に減少する。累積回数Nが多いほど放電電流値Icを大きくすることにより、ブレード9aの経時変化を補って削れ量dHを適正化することができる。
【0052】
また、使用環境温度Tが低いほど、設定範囲RIcは、下限値および上限値が小さい範囲とされている。これは、温度が低いほど、感光体4が脆くなって削れやすいからである。つまり、温度が低いときには、放電電流値Icを小さくして削れ量dHを少なくするよう設定範囲RIcが定められている。
【0053】
このような設定範囲テーブル126における各動作条件の設定範囲RIcは、放電電流値Icと感光体4の削れ量dHとの関係を求める実験の結果に基づいて定められている。その実験は、感光体4を例えば10万回転させてその期間における削れ量dH(回転開始時と終了時との膜厚Hの差)を測定するものである。10万回転させる期間にわたって、帯電、イレーサ8による除電、およびクリーナ9によるクリーニングを繰り返し、帯電については放電電流値Icを一定に保つよう帯電バイアスVcを制御する。動作条件を変えずに、放電電流値Icを段階的に変更して同様の測定を繰り返す。これにより、1つの動作条件について、放電電流値Icと削れ量dHとの関係が求まる。他の動作条件についても、同様の測定を行う。
【0054】
なお、1回の画像形成における感光体4の回転回数は一般に1ではない。感光体4の周長よりもシート2が長い場合には、回転回数は1よりも大きい値になる。
【0055】
図6においては、一例として、使用環境温度Tが標準温度(20℃)であり、回転開始時の累積印刷枚数Nが「0」である、という動作条件における放電電流値Icと削れ量dHとの関係が示されている。図6から分かるように、削れ量dHは、放電電流値Icにほぼ比例する。
【0056】
ここで、画質を良好に保つよう感光体4の表面をリフレッシュし、かつ感光体4の寿命をほぼ仕様通りとするために、削れ量dHを2.15~2.75μmの範囲RdHに収めたいとする。この場合には、放電電流値Icが30~40μAの範囲内の値となればよい。
【0057】
電位調整制御部120は、上位制御部110からの指令を受けると、温度センサ38により検出された使用環境温度Tと上位制御部110から通知された累積印刷枚数Nとの両方に対応する設定範囲RIcを、設定範囲テーブル126から読み込む。
【0058】
続いて、電流センサ35により検出された放電電流値Icに基づいて、電位調整の要否を判断する。すなわち、検出された放電電流値Icが読み込んだ設定範囲RIc内の値であれば、電位調整は不要と判断し、設定範囲RIc内の値でなければ、電位調整が必要と判断する。
【0059】
電位調整は不要と判断した場合は、高圧電源回路52の出力設定を変更しない。この場合は、以後に再び画像安定化処理が実行される際に電位調整が必要と判断するまで、高圧電源回路52の出力設定を現状のまま維持することになる。
【0060】
他方、電位調整が必要と判断した場合は、放電電流値Icが設定範囲RIc内の値となるよう高圧電源回路52の出力設定を変更する。例えば、出力設定を少し変更し、新たに検出された放電電流値Icが設定範囲RIcでなければさらに少し変更する。これを繰り返して放電電流値Icを設定範囲RIc内に収める。この処理において、最初の放電電流値Icと設定範囲RIcとの大小関係に応じて、放電電流値Icが大きくなる方向または小さくなる方向に出力設定を変更することにより、電位調整を効率化することができる。
【0061】
図7の例において、設定範囲RIcは30~40μAである。図7では、感光体電位Voおよび帯電バイアスVcの設定が異なる複数の状況それぞれにおける高圧電源回路52の出力設定(調整出力Va)が示されている。
【0062】
例えば、感光体電位Voが-500Vになるよう帯電バイアスVcが-1100Vに設定された状況で、電位調整前に検出した放電電流値Icが23μAであった場合には、この値が設定範囲RIcの下限値(30μA)よりも小さいので、電位調整を行う必要がある。詳しくは、放電電流値Icを大きくするために、帯電に先立って感光体4の表面電位を帯電バイアスVcとの電位差が大きくなるよう調整しておく必要がある。
【0063】
放電電流値Icを大きくするには、イレーサ8では除電し切れずに残ったマイナスの電荷を低減し、場合によってはプラスの電荷を帯電させればよい。つまり、調整出力Vaの極性をプラスにする。図7の例では、調整出力Vaが700Vに設定された。これにより、電位調整後の放電電流値Icは、35μAであって設定範囲RIc内に収まっている。
【0064】
図7に示される他の状況のうち、感光体電位Voと帯電バイアスVcとが-700Vと-1300Vとに設定された状況では、電位調整前に検出した放電電流値Icが34μAであった。この場合は、放電電流値Icが設定範囲RIc内の値であるので、電位調整は不要である。実質的に電位調整は行われず、放電電流値Icは元の34μAのままとなっている。
【0065】
また、感光体電位Voと帯電バイアスVcとが-900Vと-1500Vとに設定された状況で、放電電流値Icが53μAであった場合には、この値が設定範囲RIcの上限値(40μA)よりも大きいので、放電電流値Icを小さくする調整が必要がある。つまり、調整出力Vaの極性をマイナスにする。図7の例では、調整出力Vaが-900Vに設定された。これにより、電位調整後の放電電流値Icは、34μAであって設定範囲RIc内に収まっている。
【0066】
ところで、電位調整の要否の判断において参照する設定範囲テーブル126は、上に述べたように実験の結果に基づいて作成され、画像形成装置1の製造段階で記憶される。感光体4およびその摩耗に関係するイメージングユニット3の各デバイスには個体差がある。また、標準の環境と極端に異なる環境で使用されることもある。このため、放電電流値Icと感光体4の削れ量dHとの実際の関係が想定されている関係からずれていることがあり得る。
【0067】
そこで、画像形成装置1には、所定期間にわたる使用による実際の削れ量dHを測定して設定範囲テーブル126の内容を補正する機能が搭載されている。詳しくは次の通りである。
【0068】
図4に戻って、検出値蓄積部131は、累積印刷枚数Nが所定数(例えば3万枚)だけ増える期間において、画像安定化処理が行われるごとに、電位調整制御部120が最初に電流センサ35から取り込んだ放電電流値Icを検出値データD2として、そのときの動作条件と対応付けて蓄積する。期間中に最初に記憶する放電電流値Icを開始時の放電電流値Icsとし、最後に記憶する放電電流値Icを終了時の放電電流値Iceとする。
【0069】
実削れ量算出部132は、放電電流値Icと感光体4の膜厚Hとの標準の関係を示すデータ(テーブルまたは算出式)D1を用いて、開始時の放電電流値Icsに対応する膜厚(Hs)と終了時の放電電流値Ice対応する膜厚(He)とを特定する。なお、一般に放電電流値Icは膜厚Hにほぼ比例する。
【0070】
そして、実削れ量算出部132は、膜厚(Hs)と膜厚(He)との差を実削れ量dH1として算出する。例えば、膜厚(Hs)が26μmであって膜厚(He)が23.2μmであった場合は、実削れ量dH1は2.8μmと算出される。
【0071】
想定削れ量取得部133は、図6に示したような放電電流値Icと削れ量dhとの関係を示すデータ(テーブルまたは算出式)D3に基づいて、検出値データD2として蓄積されている複数の放電電流値Icのうち、例えば最頻の動作条件に対応付けられている放電電流値Icを抽出する。そして、抽出した放電電流値Icに対応する削れ量dHを想定削れ量dH2として取得する。放電電流値Icの代表値としては、平均値、中央値、または最頻値などを用いることができる。
【0072】
例えば、当該最頻の動作条件に対応する放電電流値Icと削れ量dhとの関係が図6に示した関係と同様であるものとすると、放電電流値Icの代表値が例えば35μAであるときは、想定削れ量dH2は2.43μmとなる。
【0073】
設定範囲補正部134は、実削れ量dH1が想定削れ量dH2よりも多い場合は、設定範囲RIcをその上限値および下限値を小さくするよう実削れ量dH1と想定削れ量dH2との差に応じて補正する。また、実削れ量dH1が想定削れ量dH2よりも少ない場合は、設定範囲をその上限値および下限値を大きくするよう補正する。
【0074】
例えば、元の設定範囲RIcが30~40μAであって、実削れ量dH1と想定削れ量dH2とが2.8μmと2.43μmとである場合に、設定範囲RIcを例えば25~35μAに補正する。
【0075】
なお、最頻の動作条件以外の動作条件に対応する設定範囲RIcについては、最頻の動作条件の設定範囲RIcとの相対関係(例えば比例関係)に基づいて、補正することができる。
【0076】
図8には電位調整部50の構成の他の例が、図9には感光体4の表面電位調整の他の例が、それぞれ示されている。
【0077】
図8に示されるイメージングユニット3bは、図2に示したイメージングユニット3から電位調整ローラ51を除いたものに相当する。図8の例において、電位調整部50bは、イレーサ8により構成され、電位調整制御部120bにより制御される。
【0078】
電位調整制御部120bは、電流センサ35により検出された放電電流値Icに応じて、当該放電電流値Icが設定範囲テーブル126に示される設定範囲RIc内の値になるようイレーサ8の出力光量を制御する。
【0079】
図9の例において、設定範囲RIcは20~30μAである。図9では、感光体電位Voおよび帯電バイアスVcの設定が異なる複数の状況それぞれにおけるイレーサ8の出力設定(イレーサ出力割合J)が示されている。イレーサ出力割合Jは、電位調整を行わない従来通りの除電を行う場合の出力光量を「1」として、電位調整を行う場合の出力光量を表わしている。
【0080】
例えば、感光体電位Voと帯電バイアスVcとが-500Vと-1100Vとに設定された状況では、電位調整前に検出した放電電流値Icが23μAであった。この場合は、放電電流値Icが設定範囲RIc内の値であるので、電位調整は不要である。したがって、イレーサ出力割合Jは「1」とされ、通常の除電が行われる。電位調整は行われないので、放電電流値Icは元の23μAのままとなっている。
【0081】
感光体電位Voと帯電バイアスVcとが-700Vと-1300Vとに設定された状況で、放電電流値Icが34μAであった場合は、この値が設定範囲RIcの上限値(30μA)よりも大きいので、放電電流値Icを小さくする調整が必要がある。つまり、イレーサ8による除電を控え目にして感光体4にマイナスの電荷を残しておく必要がある。図9の例では、イレーサ出力割合Jが「0.5」とされた。これにより、電位調整後の放電電流値Icは、29μAであって設定範囲RIc内に収まっている。
【0082】
また、感光体電位Voと帯電バイアスVcとが-800Vと-1400Vとに設定された状況で、放電電流値Icが40μAであった場合は、イレーサ出力割合Jが「0」とされた。これは、イレーサ8により実施可能な最大限の電位調整を行うことを意味する。この場合も、電位調整後の放電電流値Icは、29μAであって設定範囲RIc内に収まっている。
【0083】
図10には電位調整部50の構成の他の例が、図11には感光体4の表面電位調整の他の例が、それぞれ示されている。
【0084】
図10において、イメージングユニット3は、図2に示したイメージングユニット3と同様である。電位調整部50cは、イレーサ8、電位調整ローラ51、および電位調整ローラ51をプラスの電位にバイアスする高圧電源回路52cから構成され、電位調整制御部120cにより制御される。
【0085】
電位調整制御部120cは、電流センサ35により検出された放電電流値Icに応じて、当該放電電流値Icが設定範囲テーブル126に示される設定範囲RIc内の値になるようイレーサ8の出力光量および高圧電源回路52cの出力を制御する。
【0086】
図11の例において、設定範囲RIcは30~40μAである。図11では、感光体電位Voおよび帯電バイアスVcの設定が異なる複数の状況それぞれにおけるイレーサ出力割合Jおよび高圧電源回路52cの調整出力Vaが示されている。
【0087】
例えば、感光体電位Voと帯電バイアスVcとが-500Vと-1100Vとに設定された状況では、電位調整前に検出した放電電流値Icが23μAであった。この場合は、放電電流値Icを大きくする電位調整を行う必要がある。そこで、イレーサ出力割合Jは「1」とされ、調整出力Vaは700Vに設定された。これにより、電位調整後の放電電流値Icは、35μAであって設定範囲RIc内に収まっている。
【0088】
また、感光体電位Voと帯電バイアスVcとが-850Vと-1450Vとに設定された状況で、放電電流値Icが47μAであった場合は、放電電流値Icを小さくする電位調整を行う必要がある。そこで、イレーサ出力割合Jは「0.5」とされ、調整出力Vaはオフレベルとされた。これにより、電位調整後の放電電流値Icは、37μAであって設定範囲RIc内に収まっている。
【0089】
図12には画像形成装置1における処理の流れが、図13には設定範囲補正処理の流れが、それぞれ示されている。
【0090】
図12に示すように、画像安定化を行うべきタイミングであるか否かをチェックする(#301)。すなわち、電源オン時、多数枚の印刷を行っているときなど、上に述べた画像安定化を行うべき条件に当てはまるか否かを確認する。
【0091】
画像安定化を行うべきタイミングではない場合は(#301でNO) 、画像形成を行うか否かを判断する(#309)。すなわち、実行待ちのジョブまたは画像安定化などのために中断しているジョブがあるか否かを確認する。画像形成を行うと判断した場合は(#309でYES) 、画像形成を行ってジョブを完了させる(#310)。
【0092】
他方、画像安定化を行うべきタイミングである場合は(#301でYES) 、画像安定化処理を開始する。まず、現状の電子写真プロセス条件でテストパターンのトナー像を形成し、濃度センサ21の出力に基づいて画像品質を検知する(#302)。画像品質が適正となるよう現像バイアスVdc、感光体電位Voを設定し(#303)、感光体電位Voに応じて帯電バイアスVcを設定する(#304)。また、必要に応じて、転写電圧、イレーサ8の光量などの他の電子写真プロセス条件を設定する(#305)。
【0093】
その後、電流センサ35を用いて帯電ローラ5における放電電流値Icを検知し(#306)、放電電流値Icが設定範囲RIc内の値であるか否かをチェックする(#307)。放電電流値Icが設定範囲RIc内の値であれば(#307でYES) 、ステップ#309へ進む。
【0094】
放電電流値Icが設定範囲RIc内の値でない場合には(#307でNO) 、電位調整部50,50b,50cの出力を制御することにより、感光体4の帯電前の表面電位を調整する(#308)。放電電流値Icが設定範囲RIc内の値になるようステップ#306~#308の処理を繰り返す。
【0095】
図13おいて、感光体4の膜厚Hを検知し(#401)、開始時の膜厚Hsとして保存する(#402)。累積印刷枚数Nが所定枚数以上になるまで(#403でNO) 、検出した放電電流値Icを検出値データD2として蓄積する(#404)。
【0096】
累積印刷枚数Nが所定枚数以上になると(#403でYES) 、改めて感光体4の膜厚Hを検知し(#405)、終了時の膜厚Heとして一時記憶用レジスタに格納する(#406)。開始時の膜厚Hsから終了時の膜厚Heを差し引く演算を行って実削れ量dH1を算出する(#407)。
【0097】
蓄積されている検出値データD2から放電電流値Icの代表値を選出し(#408)、放電電流値Icと削れ量dhとの関係を示すデータD3に基づいて、放電電流値Icの代表値に対応する削れ量dHを想定削れ量dH2として特定する(#409)。そして、実削れ量dH1と想定削れ量dH2との差に応じて、設定範囲RIcを補正する(#410)。
【0098】
以上の実施形態によると、感光体4の膜厚Hの減少の進行を、画質を良好に保ちかつ寿命が想定通りの長さとなるよう適正化することができる。しかも、帯電に先立って感光体4の電位を調整するので、帯電バイアスVcと他のプロセズ条件とのバランスが崩れて画質が低下するのを防ぐことができる。さらに、毎回の帯電の時間を長くする手法とは違って、高速の連続印刷を行う場合であっても十分な電位調整幅を確保することができ、かつ電位調整の実施による生産性の低下を抑えることができる。
【0099】
上に述べた実施形態において、印刷した画像の印字カバレッジを蓄積し、所定期間における印字カバレッジの代表値が高いほど、上限値および下限値を小さくするよう設定範囲RIcを補正してもよい。
【0100】
上に述べた実施形態において、バイアスにより感光体4の表面電位を調整するための電極部材は、例示の電位調整ローラ51に限らず、板バネまたはブラシなどの他のデバイスであってもよい。接触式に限らず非接触式でもよい。
【0101】
また、帯電ローラ5のバイアスの方式としては、DCバイアス方式に限らず、DCバイアスにACバイアスを重畳する方式でもよい。ただし、DCバイアス方式によると、ACバイアスを重畳する方式と比べて、帯電ローラ5に突入する上流側での電位調整によって放電電流Icの変化の感度が大きいので、感光体4の電位調整が容易となる。
【0102】
感光体4の電位調整手段としてイレーサ8を使用する態様において、イレーサ8の出力光量が小さい場合には、帯電ローラ5の上流側での感光体4の電位が直前の画像形成における画像印字部と非画像印字部とで異なりやすい。放電電流Icは、白紙画像時に合わせているので、画像印字部が増えると放電電流Icが想定よりも増え、削れ量dHの増加を招く。このため、任意の期間における印字カバレッジを集計し、印字カバレッジが多かった場合には、次の放電電流調整時の設定範囲RIcを低めにすることにより、削れ量をより高精度に適正化することができる。
【0103】
その他、画像形成装置1の全体または各部の構成、処理の内容、順序、またはタイミング、表面電位Voの極性および値、設定範囲テーブル126の内容などは、本発明の趣旨に沿って適宜変更することができる。
【符号の説明】
【0104】
1,1b,1c 画像形成装置
4 感光体(像担持体)
5 帯電ローラ(帯電部材)
8 イレーサ(電位調整部材)
32 高圧電源回路(第1の直流電源)
35 電流センサ(センサ)
43 感光層(表層部
51 電位調整ローラ(電位調整部材、電極部材)
52c 高圧電源回路(第2の直流電源)
120,120b,120c 電位調整制御部
126 設定範囲テーブル(テーブル)
132 実削れ量算出部(算出部)
133 想定削れ量取得部(取得部)
134 想定範囲補正部(補正部)
dH1 実削れ量
dH2 想定削れ量
H 膜厚
Ic 放電電流値(電流の値)
P1 帯電位置
RIc 設定範囲
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13