(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-21
(45)【発行日】2022-03-02
(54)【発明の名称】自動車の下部構造
(51)【国際特許分類】
B62D 25/20 20060101AFI20220222BHJP
B62D 25/18 20060101ALI20220222BHJP
【FI】
B62D25/20 N
B62D25/18 A
(21)【出願番号】P 2018038272
(22)【出願日】2018-03-05
【審査請求日】2021-02-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121603
【氏名又は名称】永田 元昭
(74)【代理人】
【識別番号】100141656
【氏名又は名称】大田 英司
(74)【代理人】
【識別番号】100182888
【氏名又は名称】西村 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100196357
【氏名又は名称】北村 吉章
(74)【代理人】
【識別番号】100067747
【氏名又は名称】永田 良昭
(72)【発明者】
【氏名】中山 翔太
【審査官】林 政道
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-199199(JP,A)
【文献】特開2013-159192(JP,A)
【文献】実開平01-062176(JP,U)
【文献】特開2018-030379(JP,A)
【文献】実開昭59-008867(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 17/00-25/08
B62D 25/14-29/04
B62D 35/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車の床面をなすフロアパネルを車両下方から覆うアンダーカバーと、ホイールハウス内に配設された車輪を覆うホイールハウスカバーとが、点ファスナで連結された自動車の下部構造であって、
前記アンダーカバーが、
前記ホイールハウスカバーの車両前方において、車両前後方向に沿って延びるカバー側部と、
該カバー側部の後端を車両上方へ折曲して形成されるとともに、前記ホイールハウスカバーの前面下部に前記点ファスナを介して連結される連結部とを備え、
前記アンダーカバーの前記カバー側部が、
前記連結部の下端との境界部分である後端折曲部分と、
該後端折曲部分よりも車両前方で車両上下方向に折曲した少なくとも1つの折曲部分と、
該少なくとも1つの折曲部分のうち、前記後端折曲部分よりも車両前方、かつ最も車両下方に位置する折曲部分である下端折曲部分の車両後方に隣接して開口形成された開口部とを備えた
自動車の下部構造。
【請求項2】
前記下端折曲部分が、
側面視において、車両後方下方へ向けて延びる下方傾斜部分と、該下方傾斜部分の後端から車両後方上方へ向けて延びる上方傾斜部分との境界部分で構成された
請求項1に記載の自動車の下部構造。
【請求項3】
前記アンダーカバーの前記カバー側部が、
前記開口部を挟んで車幅方向に所定間隔を隔てた位置に車両上方へ突設するとともに、前記連結部に連結された車両前後方向に延びる左右一対の側方補強部を備えた
請求項1または請求項2に記載の自動車の下部構造。
【請求項4】
前記アンダーカバーの前記カバー側部が、
左右の前記側方補強部の間において、車両上方に突設するとともに、前記側方補強部の前端よりも車両後方の位置から車両前方へ延設された中央補強部を備えた
請求項3に記載の自動車の下部構造。
【請求項5】
前記アンダーカバーにおける前記連結部の車幅方向外側に隣接して配設されたデフレクタを備え、
該デフレクタが、
前記連結部に隣接配置されたデフレクタ基部と、
前記アンダーカバーよりも車両下方に突出したデフレクタ本体とで構成され、
該デフレクタ本体が、
車幅方向外側の前記側方補強部の車両下方に、車幅方向内側の端部である内側端部が位置する車幅方向の長さで形成され、
車幅方向内側の前記側方補強部が、
その前端の車両後方に隣接して開口形成された補強開口部を備えた
請求項3または請求項4に記載の自動車の下部構造。
【請求項6】
前記アンダーカバーにおけるカバー側部の車幅方向内側に揺動可能に支持されたサスペンション部材を備え、
該サスペンション部材の前端が、
底面視において、車幅方向内側の前記側方補強部における前端よりも車両前方の位置で前記自動車の車体に締結され、
車幅方向内側の前記側方補強部が、
前記サスペンション部材と前記車体との締結部分と対向する位置に開口形成された締結開口部を備えた
請求項5に記載の自動車の下部構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば車両の床面をなすフロアパネルを車両下方から覆うアンダーカバーと、車両の車輪を覆うようにホイールハウス内に配設されたホイールハウスカバーとが連結されたような自動車の下部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、走行中の自動車は、空気(走行風)との衝突や摩擦などによる空気抵抗を受けている。この空気抵抗は、自動車の動力性能及び燃費性能に多大な影響を与えるため、車体形状や整流板などによる整流によって低減することが望ましいとされている。
【0003】
自動車の性能に影響を与える走行中の空気抵抗としては、例えば、自動車の床下の凹凸によって床下走行風の流れが撹乱されることによる空気抵抗や、ホイールハウス内へ流動した床下走行風が、車輪の回転によってかき乱れながら車両側方に排出されることで車両側面の側面流が撹乱されることによる空気抵抗がある。
【0004】
そこで、例えば、特許文献1のように、自動車の床下を合成樹脂製のアンダーカバーで覆うことで、床下走行風の流れを整流するとともに、ホイールハウスの内部への床下走行風の侵入を抑制する自動車の下部構造が知られている。
【0005】
ところで、車両前後のホイールハウスの間を覆うアンダーカバーの場合、ホイールハウスの前後端に隣接する縁端が、床下走行風によってバタつくと、床下走行風のホイールハウスへの侵入を安定して抑えることができないおそれがある。このため、アンダーカバーの縁端を、ホイールハウス内に配設したホイールハウスカバー(マッドガードともいう)に連結することがある。
【0006】
例えば、従来技術におけるタイヤハウスカバー101とアンダーカバー111との連結箇所の外観斜視図を示す
図8のように、ポリプロピレン製(以下、「PP製」と呼ぶ)のアンダーカバー111の後端に立設したカバー連結部112のファスナ係合孔112aと、タイヤハウスカバー101の前面に設けた挿入孔(図示省略)とを対向させた状態において、点ファスナPTを車両後方から車両前方へ向けて、タイヤハウスカバー101の挿入孔、及びアンダーカバー111のファスナ係合孔112aに押し込むことで、アンダーカバー111とタイヤハウスカバー101とを連結している。
【0007】
しかしながら、上述したようなPP製アンダーカバーは、その重量が重くなり易いため、自動車の燃費性能向上の観点からさらなる軽量化が求められている。このため、昨今では、PP製アンダーカバーにかえて、例えば、ポリエチレンテレフタレート不織布(以下、PET不織布と呼ぶ)製アンダーカバーにすることで、遮音性を向上するとともに、アンダーカバーの重量増加を抑えている。
【0008】
一方で、PP製アンダーカバーに比べて剛性が低いPET不織布製アンダーカバーの場合、点ファスナを押し込む際、連結部に作用する車両前後方向の押圧荷重によって、アンダーカバーの連結部が大きく変位して、点ファスナが連結部に装着されず、アンダーカバーとホイールハウスカバーとの確実な連結を確保できないという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上述の問題に鑑み、ホイールハウスの内部への床下走行風の侵入抑制を阻害することなく、ホイールハウスカバーと比較的低剛性なアンダーカバーとを確実に連結できる自動車の下部構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明は、自動車の床面をなすフロアパネルを車両下方から覆うアンダーカバーと、ホイールハウス内に配設された車輪を覆うホイールハウスカバーとが、点ファスナで連結された自動車の下部構造であって、前記アンダーカバーが、前記ホイールハウスカバーの車両前方において、車両前後方向に沿って延びるカバー側部と、該カバー側部の後端を車両上方へ折曲して形成されるとともに、前記ホイールハウスカバーの前面下部に前記点ファスナを介して連結される連結部とを備え、前記アンダーカバーの前記カバー側部が、前記連結部の下端との境界部分である後端折曲部分と、該後端折曲部分よりも車両前方で車両上下方向に折曲した少なくとも1つの折曲部分と、該少なくとも1つの折曲部分のうち、前記後端折曲部分よりも車両前方、かつ最も車両下方に位置する折曲部分である下端折曲部分の車両後方に隣接して開口形成された開口部とを備えたことを特徴とする。
【0012】
上記点ファスナは、例えば、アンダーカバーの連結部に設けた係合孔に係合されることで、アンダーカバーとタイヤホイールハウスとを連結する合成樹脂製のファスナ、あるいは剛性樹脂製のクリップと呼ばれるもののことをいう。
この発明により、ホイールハウスの内部への床下走行風の侵入抑制を阻害することなく、ホイールハウスカバーと比較的低剛性なアンダーカバーとを確実に連結させることができる。
【0013】
具体的には、連結部との境界部分である後端折曲部分と、少なくとも1つの折曲部分とを、アンダーカバーのカバー側部が備えたことにより、自動車の下部構造は、車両前方への押圧荷重に対するカバー側部の剛性を、略平板状のカバー側部に比べて向上することができる。
【0014】
これにより、自動車の下部構造は、車両前方へ押圧荷重によって、アンダーカバーの連結部が車両前方へ変位することを抑えることができる。このため、自動車の下部構造は、アンダーカバーの連結部に点ファスナを確実に装着することができる。
【0015】
さらに、下端折曲部分に隣接した開口部により、自動車の下部構造は、カバー側部の下面に沿って車両後方へ流下する床下走行風を、カバー側部の下面から離間するように剥離させることができる。このため、自動車の下部構造は、路面近傍を車両後方へ流下する走行風へ向けて床下走行風を偏向することができる。
【0016】
これにより、自動車の下部構造は、カバー側部が凹凸形状に形成された場合であっても、ホイールハウスカバーに確実に連結されたアンダーカバーのカバー側部によって、床下走行風の流れを整流して、ホイールハウスの内部への床下走行風の侵入を抑えることができる。
従って、自動車の下部構造は、ホイールハウスの内部への床下走行風の侵入抑制を阻害することなく、ホイールハウスカバーと比較的低剛性なアンダーカバーとを確実に連結させることができる。
【0017】
この発明の態様として、前記下端折曲部分が、側面視において、車両後方下方へ向けて延びる下方傾斜部分と、該下方傾斜部分の後端から車両後方上方へ向けて延びる上方傾斜部分との境界部分で構成されてもよい。
この発明により、自動車の下部構造は、ホイールハウスカバーに確実に連結されたアンダーカバーによって、ホイールハウスの内部への床下走行風の侵入を安定して阻止することができる。
【0018】
具体的には、車両後方下方へ向けて延びる下方傾斜部分により、自動車の下部構造は、車両後方へ流下する床下走行風を、下方傾斜部分の下面に沿って車両後方下方へ向けて案内することができる。
【0019】
そして、車両後方下方へ流下する床下走行風が折曲部分に到達すると、自動車の下部構造は、床下走行風が上方傾斜部分の下面に沿って車両後方上方へ偏向することを、折曲部分に隣接した開口部によって阻止することができる。
【0020】
この際、自動車の下部構造は、車両後方へ向かう床下走行風を開口部によって剥離させる場合に比べて、車両後方下方へ向かう床下走行風をさらに車両後方下方へ偏向させることができる。
従って、自動車の下部構造は、ホイールハウスカバーに確実に連結されたアンダーカバーによって、ホイールハウスの内部への床下走行風の侵入を安定して阻止することができる。
【0021】
またこの発明の態様として、前記アンダーカバーの前記カバー側部が、前記開口部を挟んで車幅方向に所定間隔を隔てた位置に車両上方へ突設するとともに、前記連結部に連結された車両前後方向に延びる左右一対の側方補強部を備えてもよい。
【0022】
この発明により、自動車の下部構造は、車両前方への押圧荷重に対するカバー側部の剛性をより向上することができる。
このため、自動車の下部構造は、連結部に作用する車両前方への押圧荷重によって、カバー側部が少なくとも1つの折曲部分で折れ曲がり変形することを防止できる。
【0023】
さらに、左右の側方補強部が連結部に連結されているため、自動車の下部構造は、連結部に作用する車両前方への押圧荷重によって、連結部が、後端折曲部分を回動中心として車両前方へ回動するように倒れることを防止できる。
【0024】
従って、自動車の下部構造は、カバー側部が左右一対の側方補強部を備えたことにより、ホイールハウスの内部への床下走行風の侵入抑制を阻害することなく、ホイールハウスカバーと比較的低剛性なアンダーカバーとをより確実に連結させることができる。
【0025】
またこの発明の態様として、前記アンダーカバーの前記カバー側部が、左右の前記側方補強部の間において、車両上方に突設するとともに、前記側方補強部の前端よりも車両後方の位置から車両前方へ延設された中央補強部を備えてもよい。
【0026】
この発明により、自動車の下部構造は、車両前方への押圧荷重に対するカバー側部の剛性をより確実に向上することができる。
このため、自動車の下部構造は、連結部に作用する車両前方への押圧荷重によって、カバー側部が側方補強部の前端で折れ曲がり変形することを防止できる。
【0027】
これにより、自動車の下部構造は、車両前方への押圧荷重が連結部に作用した際、車両前方への連結部の変位をより安定して抑えることができる。
従って、自動車の下部構造は、側方補強部の間に設けた中央補強部により、ホイールハウスの内部への床下走行風の侵入抑制を阻害することなく、ホイールハウスカバーと比較的低剛性なアンダーカバーとをさらに確実に連結させることができる。
【0028】
またこの発明の態様として、前記アンダーカバーにおける前記連結部の車幅方向外側に隣接して配設されたデフレクタを備え、該デフレクタが、前記連結部に隣接配置されたデフレクタ基部と、前記アンダーカバーよりも車両下方に突出したデフレクタ本体とで構成され、該デフレクタ本体が、車幅方向外側の前記側方補強部の車両下方に、車幅方向内側の端部である内側端部が位置する車幅方向の長さで形成され、車幅方向内側の前記側方補強部が、その前端の車両後方に隣接して開口形成された補強開口部を備えてもよい。
【0029】
この発明により、自動車の下部構造は、ホイールハウスカバーに確実に連結されたカバー側部の開口部、及び補強開口部と、カバー側部に隣接して配設されたデフレクタとによって、ホイールハウスの内部への床下走行風の侵入をより確実に抑制することができる。
【0030】
具体的には、側方補強部における前端よりも車両後方の部分は、側面視において、前端に対して車両上方、または車両後方上方に向けて起立した部分となるため、車両後方へ流下する床下走行風をホイールハウスの内部へ向けて案内し易くなる。
【0031】
そこで、折曲部分となる側方補強部の前端に隣接して補強開口部を設けたことにより、自動車の下部構造は、カバー側部における車幅方向略中央部分、及び車幅方向内側部分に沿って車両後方へ流下する床下走行風を、開口部と補強開口部とによって、カバー側部の下面から離間するように剥離させることができる。
【0032】
このため、自動車の下部構造は、車幅方向内側の側方補強部の車両下方に、デフレクタ本体の内側端部が位置するようなデフレクタを不要にでき、デフレクタ本体における車幅方向の長さを短くできる。
【0033】
これにより、自動車の下部構造は、車両前方からの床下走行風に対するデフレクタ本体の剛性を容易に確保することができる。加えて、自動車の下部構造は、例えば、揺動可能に支持されたサスペンション部材が、カバー側部の車幅方向内側に配設された場合であっても、デフレクタ本体の内側端部とサスペンション部材とが接触することを防止できる。
【0034】
このため、自動車の下部構造は、カバー側部における車幅方向外側部分に沿って車両後方へ流下する床下走行風を、デフレクタによって車両後方下方へより安定して偏向させることができる。
【0035】
従って、自動車の下部構造は、ホイールハウスカバーに確実に連結されたカバー側部の開口部、及び補強開口部と、カバー側部に隣接して配設されたデフレクタとによって、ホイールハウスの内部への床下走行風の侵入をより確実に抑制することができる。
【0036】
またこの発明の態様として、前記アンダーカバーにおけるカバー側部の車幅方向内側に揺動可能に支持されたサスペンション部材を備え、該サスペンション部材の前端が、底面視において、車幅方向内側の前記側方補強部における前端よりも車両前方の位置で前記自動車の車体に締結され、車幅方向内側の前記側方補強部が、前記サスペンション部材と前記車体との締結部分と対向する位置に開口形成された締結開口部を備えてもよい。
【0037】
この発明により、自動車の下部構造は、アンダーカバーを脱着することなく、サスペンション部材の締結と締結の開放とを容易にすることができる。
さらに、側方補強部の補強開口部に隣接して締結開口部が開口形成されたため、自動車の下部構造は、カバー側部における車幅方向内側部分に沿って車両後方へ流下する床下走行風が補強開口部に到達する前に、補強開口部へ向かう床下走行風と、カバー側部から離間するように剥離した床下走行風とに分流させることができる。
【0038】
これにより、自動車の下部構造は、補強開口部に到達する床下走行風の流量を低減できるため、床下走行風を補強開口部によってより安定して、かつより効果的に車両後方下方へ偏向させることができる。
従って、自動車の下部構造は、ホイールハウスカバーに確実に連結されたアンダーカバーによって、ホイールハウスの内部への床下走行風の侵入をさらに確実に阻止することができる。
【発明の効果】
【0039】
本発明により、ホイールハウスの内部への床下走行風の侵入抑制を阻害することなく、ホイールハウスカバーと比較的低剛性なアンダーカバーとを確実に連結できる自動車の下部構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【
図1】車両の車両後部における下部を底面視で示す底面図。
【
図2】
図1中における車両左側の要部を底面視で示す要部底面図。
【
図3】アンダーカバーにおけるカバー側部を車両前方上方視で示す外観斜視図。
【
図8】従来技術におけるタイヤハウスカバーとアンダーカバーとの連結箇所を示す外観斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0041】
この発明の一実施形態を以下図面と共に説明する。
本実施形態における車両1のアンダーカバー30について、
図1から
図7を用いて詳しく説明する。
【0042】
なお、
図1は車両1の車両後部における下部の底面図を示し、
図2は
図1中における車両左側の要部底面図を示し、
図3はアンダーカバー30におけるカバー側部32の外観斜視図を示し、
図4は
図2中のA-A矢視断面図を示し、
図5は
図2中のB-B矢視断面図を示し、
図6は
図2中のC-C矢視断面図を示し、
図7は
図2中のD-D矢視断面図を示している。
【0043】
また、図中において、矢印Fr及びRrは前後方向を示しており、矢印Frは前方を示し、矢印Rrは後方を示している。
さらに、矢印Rh及びLhは幅方向を示しており、矢印Rhは右方向を示し、矢印Lhは左方向を示している。加えて、矢印INは車幅方向内側を示し、矢印OUTは車幅方向外側を示している。
【0044】
まず、本実施形態の車両1の下部車体構造について、
図1を用いて、簡単に説明する。
車両1の下部車体は、
図1に示すように、底面視において、車幅方向に所定間隔を隔てた位置で車両前後方向に延びる左右一対のサイドシル2と、サイドシル2の間に配設されるとともに、車幅方向略中央に車両方向に延びるトンネル部3aを有するフロアパネル3と、フロアパネル3の下面を車両前後方向に延びる左右一対のフロアフレーム(図示省略)の後端、及びサイドシル2の後端から一体的に車両後方へ延びる左右一対のリヤサイドフレーム4と、リヤサイドフレーム4の上面に接合された車両1の荷室床面をなすリヤフロアパネル5とで構成されている。
【0045】
サイドシル2は、詳細な図示を省略するが、車幅方向外側に配設されたサイドシルアウタと、サイドシルアウタに対して車幅方向内側に配設されたサイドシルインナとで、車幅方向に沿った縦断面における縦断面形状が閉断面をなすよう構成されている。
このサイドシル2の下面には、
図1に示すように、飛び石などから車体を保護するストーンガード6が、図示を省略した合成樹脂製の点ファスナを介して装着されている。
【0046】
フロアフレーム、及びリヤサイドフレーム4は、詳細な図示を省略するが、車幅方向に沿った縦断面における縦断面形状が車両下方に突出した断面略ハット状であって、それぞれフロアパネル3の下面、及びリヤフロアパネル5の下面に接合されて閉断面をなすよう構成されている。
【0047】
さらに、車両1の下部車体は、
図1に示すように、リヤサイドフレーム4の下面に連結されたリヤサブフレーム7と、リヤサブフレーム7の車両前方側に配設された燃料タンク8とを備えている。
リヤサブフレーム7は、
図1に示すように、車幅方向に所定間隔を隔てて配設された左右一対のサイドメンバ7aと、サイドメンバ7aを車幅方向に連結する前側クロスメンバ7b、及び後側クロスメンバ7cと、前側クロスメンバ7b、及び後側クロスメンバ7cを連結する左右一対の傾斜メンバ7dとで構成されている。
【0048】
サイドメンバ7aは、
図1に示すように、車幅方向内側へ突出した底面視略円弧状に形成されている。このサイドメンバ7aは、後述するナックル9よりも車両前方の位置で前端がリヤサイドフレーム4に連結され、ナックル9よりも車両後方の位置で後端がリヤサイドフレーム4に連結されている。
【0049】
前側クロスメンバ7bは、
図1に示すように、底面視において、ナックル9の前端よりも車両後方の位置で、サイドメンバ7aの前部を車幅方向に連結している。
後側クロスメンバ7cは、
図1に示すように、底面視において、ナックル9の後端よりも車両後方の位置で、サイドメンバ7aの後部を車幅方向に連結している。
【0050】
左右の傾斜メンバ7dは、
図1に示すように、底面視において、後端が後側クロスメンバ7cにおける車幅方向略中央近傍に接合され、前端が後端に対して車幅方向外側に位置で前側クロスメンバ7bに接合されている。
【0051】
このようなリヤサブフレーム7には、
図1に示すように、車両1の後輪(図示省略)を回転自在に支持するナックル9に連結されるとともに、車両1のリヤサスペンションを構成する左右一対の前側ロアアーム11、左右一対の後側ロアアーム12、及び左右一対のアッパアーム(図示省略)が揺動自在に連結されている。
【0052】
前側ロアアーム11は、
図1に示すように、車幅方向内側の端部が前側クロスメンバ7bに揺動自在に支持されている。
後側ロアアーム12は、
図1に示すように、車幅方向内側の端部が後側クロスメンバ7cに揺動自在に支持されている。なお、後側ロアアーム12には、図示を省略したリヤサスダンパの下端が連結される。
【0053】
上述した左右一対の前側ロアアーム11、左右一対の後側ロアアーム12、及び左右一対のアッパアーム(図示省略)における車幅方向外側の端部が連結されるナックル9には、
図1に示すように、左右一対のトレーリングリンク13が連結されている。
【0054】
トレーリングリンク13は、
図1及び
図2に示すように、ナックル9の前端と、ナックル9よりも車両前方に位置するフロアフレームの下面とを連結している。なお、トレーリングリンク13は、前端が後端に対して車幅方向内側に位置するよう配設されている。
【0055】
さらに、トレーリングリンク13の前端は、
図2及び
図3に示すように、車幅方向に延びる軸部材13aを回動軸として、車両上下方向に揺動自在の状態で、軸部材13aの車幅方向両端がフロアフレームの下面に締結固定されている。
【0056】
このような車両1の下部車体には、
図1及び
図2に示すように、ホイールハウス(図示省略)に配設された後輪を覆うリヤホイールハウスカバー20と、トンネル部3aを挟んでフロアパネル3の下面に配設された左右一対のアンダーカバー30と、ストーンガード6の後端に配設された左右一対のデフレクタ40とを備えている。
【0057】
リヤホイールハウスカバー20は、例えば、比較的低剛性のPP製であって、車両上方へ突出した略ドーム状に形成されている。さらに、リヤホイールハウスカバー20の前面下部には、
図3及び
図4に示すように、アンダーカバー30を連結するための合成樹脂製の点ファスナPFが車両後方から挿通される開口である挿通孔20aが開口形成されている。
【0058】
また、左右のアンダーカバー30は、
図1に示すように、底面視において、サイドシル2の下面に装着したストーンガード6とトンネル部3aとの間、かつリヤサブフレーム7の前側クロスメンバ7b、及びリヤホイールハウスカバー20によりも車両前方のフロアパネル3を車両下方から覆う形状に形成されている。
【0059】
具体的には、アンダーカバー30は、リヤホイールハウスカバー20よりも低剛性で、例えば、所定の厚みを有するPET不織布を成形して所望される凹凸形状に形成されている。
なお、アンダーカバー30は、詳細な図示を省略するが、フロアパネル3の下面、及びフロアフレームの下面に対して、点ファスナやボルトによって固定されるとともに、車幅方向外側の後端がリヤホイールハウスカバー20に点ファスナPFで連結されている。
【0060】
さらに、アンダーカバー30後部には、
図1及び
図2に示すように、底面視において、トレーリングリンク13の揺動範囲と重合する部分を切り欠いた切欠き部31が、リヤホイールハウスカバー20に沿った後端に形成されている。
【0061】
また、デフレクタ40は、
図2及び
図3に示すように、リヤホイールハウスカバー20の前面下部と略同じ車両前後方向の位置において、ストーンガード6の下面に締結固定されている。このデフレクタ40は、ストーンガード6に締結固定されるデフレクタ基部41と、デフレクタ基部41から車両下方へ突出したデフレクタ本体42とで一体形成されている。
【0062】
引き続き、上述したアンダーカバー30における切欠き部31よりも車幅方向外側の部分、及びデフレクタ40について、さらに詳述する。なお、アンダーカバー30、及びデフレクタ40は、底面視において、車幅方向略中央をとおる車両前後方向に沿った仮想直線に対して略左右対称形状のため、本実施形態では車両左側のアンダーカバー30、及びデフレクタ40について説明する。
【0063】
アンダーカバー30における切欠き部31よりも車幅方向外側の部分は、
図2及び
図3に示すように、ストーンガード6に沿って車両前後方向に延びる帯状部分であるカバー側部32と、カバー側部32の後端から車両上方へ立設されるとともに、リヤホイールハウスカバー20の前面下部に連結されるカバー連結部33とで構成されている。
【0064】
さらに、カバー側部32の後部には、
図3から
図5に示すように、車幅方向に所定間隔を隔てた位置で車両上方に突設された左右一対の側方補強部34と、左右の側方補強部34の間から車両上方に突設された中央補強部35とが一体形成されている。
【0065】
カバー側部32の後部は、
図3から
図5に示すように、側面視において、車両前方から緩やかに車両後方下方へ向けて延設された略平板状のカバー延設部分32aと、カバー延設部分32aからさらに車両後方下方へ向けて延設された略平板状の下方傾斜部分32bと、下方傾斜部分32bから車両後方上方へ向けて延設された略平板状の上方傾斜部分32cとで形成されている。
【0066】
下方傾斜部分32bは、
図3から
図5に示すように、側面視において、リヤホイールハウスカバー20の前面下端と略同じ車両上下方向の位置に位置するカバー延設部分32aの後端を、デフレクタ本体42の車両上下方向略中央近傍へ向けて折曲したのち、ストーンガード6の下面と略同じ車両上下方向の位置まで延設されている。
【0067】
上方傾斜部分32cは、
図3から
図5に示すように、下方傾斜部分32bの下端を、リヤホイールハウスカバー20の前面下端へ向けて折曲したのち、リヤホイールハウスカバー20の前面下端の近傍まで延設されている。
カバー連結部33は、
図3及び
図4に示すように、車両前後方向に厚みを有するとともに、車両上下方向の長さに対して車幅方向の長さが長い正面視略矩形の平板状に形成されている。
【0068】
より詳しくは、カバー連結部33は、
図4に示すように、車両前後方向に沿った縦断面において、上方傾斜部分32cの後端から車両上方に立設されたのち、僅かに車両後方上方へ延びる断面形状に形成されている。
さらに、カバー連結部33には、リヤホイールハウスカバー20の挿通孔20aに車両前後方向で対向する位置に、点ファスナPFが係合するファスナ係合孔33aが開口形成されている。
【0069】
ここで、カバー延設部分32aと下方傾斜部分32bとの境界部分である折曲部分を第1折曲部分321とし、最も車両下方に位置するとともに、下方傾斜部分32bと上方傾斜部分32cとの境界部分である折曲部分を第2折曲部分322とし、上方傾斜部分32cとカバー連結部33との境界部分である折曲部分を第3折曲部分323とする。
【0070】
また、左右の側方補強部34は、
図3から
図5に示すように、第1折曲部分321からカバー連結部33に至る車両前後方向の範囲において、下方傾斜部分32b、及び上方傾斜部分32cにおける車幅方向の両端に沿った部分を、車幅方向に所定長さを有して車両上方へ突設した形状に形成されている。
【0071】
この左右の側方補強部34は、
図6に示すように、車幅方向に沿った縦断面において、車幅方向外側の側方補強部341と、車幅方向内側の側方補強部342とが左右非対称となる形状に形成されている。
【0072】
具体的には、左右の側方補強部34のうち、車幅方向外側の側方補強部341は、
図3、
図4、及び
図6に示すように、第1折曲部分321と略同じ車両前後方向の位置に位置するカバー延設部分32aの後端から車両後方上方へ向けて延設した外方上面部分341aと、外方上面部分341aにおける車幅方向内側の縁端から車両下方へ延設された外方側壁部分341bとで、車幅方向に沿った縦断面における断面形状が断面略L字状に形成されている。
【0073】
外方上面部分341aは、
図4に示すように、第1折曲部分321と略同じ車両前後方向の位置に位置するカバー延設部分32aの後端を車両後方上方へ向けて折曲したのち、上方傾斜部分32cと側面視略平行な角度で車両後方上方へ延設されている。
【0074】
さらに、外方上面部分341aの後端は、
図4に示すように、上方傾斜部分32cの後端よりも車両上方の位置で、カバー連結部33の前面に連結されている。
外方側壁部分341bは、
図4に示すように、下端が下方傾斜部分32b、及び上方傾斜部分32cに連結され、後端がカバー連結部33の前面に連結されている。
【0075】
一方、車幅方向内側の側方補強部342は、
図3、
図5、及び
図6に示すように、第1折曲部分321と略同じ車両前後方向の位置に位置するカバー延設部分32aの後端から車両後方上方へ向けて延設した内方上面部分342aと、内方上面部分342aにおける車幅方向両端から車両下方へ延設された左右の内方側壁部分342bとで、車幅方向に沿った縦断面における断面形状が、車両下方が開口した断面略門型形状に形成されている。
【0076】
内方上面部分342aは、
図5に示すように、第1折曲部分321と略同じ車両前後方向の位置に位置するカバー延設部分32aの後端を車両後方上方へ向けて折曲したのち、上方傾斜部分32cと側面視略平行な角度で車両後方上方へ延設されている。
【0077】
さらに、内方上面部分342aの後端は、
図5に示すように、外方上面部分341aの後端と略同じ車両上下方向の位置で、カバー連結部33の前面に連結されている。
車幅方向外側の内方側壁部分342bは、
図5及び
図6に示すように、下端が下方傾斜部分32b、及び上方傾斜部分32cに連結され、後端がカバー連結部33の前面に連結されている。
【0078】
上述した構成の左右の側方補強部34は、第1折曲部分321からカバー連結部33に至る車両前後方向の範囲に突設されているため、第1折曲部分321と略同じ車両前後方向の位置に前端が位置し、第3折曲部分323と略同じ車両後方の位置に後端が位置している。
【0079】
ここで、左右の側方補強部34における前端とカバー延設部分32aとの境界部分を、側方補強部34における車両前方側の折曲部分である第1補強折曲部分343し、左右の側方補強部34における後端とカバー連結部33との境界部分を、側方補強部34における車両後方側の折曲部分である第2補強折曲部分344とする。つまり、車両前後方向において、第1折曲部分321と第1補強折曲部分343とは略同位置に形成されている。
【0080】
また、中央補強部35は、
図3、
図4、及び
図7に示すように、左右の側方補強部34の間における下方傾斜部分32b、並びに下方傾斜部分32bの前端から連続するカバー延設部分32aを、車幅方向に所定長さを有して車両上方に突設した形状に形成されている。
【0081】
具体的には、中央補強部35は、
図4及び
図5に示すように、車両前後方向に沿った縦断面において、第2折曲部分322から車両前方上方へ向けて、第1補強折曲部分343と略同じ車両前後方向の位置まで延設された略平板状の中央後面部分35aと、カバー延設部分32aに対して側面視略平行な角度で中央後面部分35aの上端から車両前方上方へ延設された略平板状の中央上面部分35bとを有する形状に形成されている。
【0082】
なお、中央後面部分35aと中央上面部分35bとの境界部分を、中央補強部35における車両前方側の折曲部分である第1中央折曲部分351とすると、中央後面部分35aの後端、すなわち第2折曲部分322が、中央補強部35における後端の折曲部分である第2中央折曲部分となる。
【0083】
そして、上述した形状のカバー側部32には、
図3に示すように、車両後方へ流下する床下走行風をカバー側部32から離間するように剥離させるための開口である中央開口部S1、及び側方開口部S2と、トレーリングリンク13における軸部材13aの車幅方向外側をフロアフレームに締結するための締結ボルトTが挿通する開口である締結開口部S3とが開口形成されている。
【0084】
中央開口部S1は、
図2、
図4、及び
図6に示すように、上方傾斜部分32cにおける前端、すなわち第2折曲部分322の車両後方に隣接して開口形成されている。この中央開口部S1は、車両前後方向の長さに対して車幅方向の長さが長い底面視略矩形の開口形成されている。
【0085】
側方開口部S2は、
図2、
図5、及び
図7に示すように、車幅方向内側の側方補強部342における内方上面部分342aの前端、すなわち第1補強折曲部分343の車両後方に隣接して開口形成されている。この側方開口部S2は、車両後方側を短辺とする底面視略台形の開口形成されている。
【0086】
締結開口部S3は、
図2、
図3、及び
図5に示すように、車幅方向内側の側方補強部342における内方上面部分342aとカバー延設部分32aと境界部分、すなわち第1補強折曲部分343の車両前方に隣接して開口形成されている。この締結開口部S3は、締結ボルトTが挿通可能な直径の底面視略円形状に開口形成されている。
【0087】
また、デフレクタ40は、上述したようにデフレクタ基部41と、デフレクタ本体42とで構成されている。
デフレクタ基部41は、
図2及び
図4に示すように、車両上下方向に厚みを有する平板状であって、その後端を、ストーンガード6の後端に略一致させた状態で、ストーンガード6の下面に締結固定されている。
【0088】
デフレクタ本体42は、
図4及び
図6に示すように、デフレクタ基部41の後端から車両下方へ延設されるとともに、車両前後方向に厚みを有する略平板状に形成されている。このデフレクタ本体42は、正面視において、車幅方向内側の端部が、車幅方向外側の側方補強部341の車両下方に位置する形状に形成されている。
【0089】
より詳しくは、デフレクタ本体42は、
図6及び
図7に示すように、正面視において、ストーンガード6における車幅方向外側の端部よりも僅かに車幅方向外側の位置から、車幅方向外側の側方補強部341における外方側壁部分341bの下端位置に至る車幅方向の長さを有する正面視略矩形に形成されている。
【0090】
以上のように、車両1の床面をなすフロアパネル3を車両下方から覆うアンダーカバー30と、ホイールハウス内に配設された車輪を覆うリヤホイールハウスカバー20とが、点ファスナPFで連結された車両1の下部構造は、アンダーカバー30が、リヤホイールハウスカバー20の車両前方において、車両前後方向に沿って延びるカバー側部32と、カバー側部32の後端を車両上方へ折曲して形成されるとともに、リヤホイールハウスカバー20の前面下部に点ファスナPFを介して連結されるカバー連結部33とを備え、アンダーカバー30のカバー側部32が、カバー連結部33の下端との境界部分である第3折曲部分323と、第3折曲部分323よりも車両前方で車両上下方向に折曲した第1折曲部分321、及び第2折曲部分322と、第1折曲部分321、及び第2折曲部分322のうち、第3折曲部分323よりも車両前方、かつ最も車両下方に位置する第2折曲部分322の車両後方に隣接して開口形成された中央開口部S1とを備えたことにより、ホイールハウスの内部への床下走行風の侵入抑制を阻害することなく、リヤホイールハウスカバー20と比較的低剛性なアンダーカバー30とを確実に連結させることができる。
【0091】
具体的には、カバー連結部33との境界部分である第3折曲部分323と、第1折曲部分321、及び第2折曲部分322とを、アンダーカバー30のカバー側部32が備えたことにより、車両1の下部構造は、車両前方への押圧荷重に対するカバー側部32の剛性を、略平板状のカバー側部32に比べて向上することができる。
【0092】
これにより、車両1の下部構造は、車両前方へ押圧荷重によって、アンダーカバー30のカバー連結部33が車両前方へ変位することを抑えることができる。このため、車両1の下部構造は、アンダーカバー30のカバー連結部33に点ファスナPFを確実に装着することができる。
【0093】
さらに、第2折曲部分322に隣接した中央開口部S1により、車両1の下部構造は、カバー側部32の下面に沿って車両後方へ流下する床下走行風を、カバー側部32の下面から離間するように剥離させることができる。このため、車両1の下部構造は、路面近傍を車両後方へ流下する走行風へ向けて床下走行風を偏向することができる。
【0094】
これにより、車両1の下部構造は、カバー側部32が凹凸形状に形成された場合であっても、リヤホイールハウスカバー20に確実に連結されたアンダーカバー30のカバー側部32によって、床下走行風の流れを整流して、ホイールハウスの内部への床下走行風の侵入を抑えることができる。
従って、車両1の下部構造は、ホイールハウスの内部への床下走行風の侵入抑制を阻害することなく、リヤホイールハウスカバー20と比較的低剛性なアンダーカバー30とを確実に連結させることができる。
【0095】
また、第2折曲部分322が、側面視において、車両後方下方へ向けて延びる下方傾斜部分32b、及び中央補強部35の中央後面部分35aと、下方傾斜部分32bの後端から車両後方上方へ向けて延びる上方傾斜部分32cとの境界部分で構成されたことにより、車両1の下部構造は、リヤホイールハウスカバー20に確実に連結されたアンダーカバー30によって、ホイールハウスの内部への床下走行風の侵入を安定して阻止することができる。
【0096】
具体的には、車両後方下方へ向けて延びる下方傾斜部分32b、及び中央後面部分35aにより、車両1の下部構造は、車両後方へ流下する床下走行風を、下方傾斜部分32b、及び中央後面部分35aの下面に沿って車両後方下方へ向けて案内することができる。
【0097】
そして、車両後方下方へ流下する床下走行風が第2折曲部分322に到達すると、車両1の下部構造は、床下走行風が上方傾斜部分32cの下面に沿って車両後方上方へ偏向することを、第2折曲部分322に隣接した中央開口部S1によって阻止することができる。
【0098】
この際、車両1の下部構造は、車両後方へ向かう床下走行風を中央開口部S1によって剥離させる場合に比べて、車両後方下方へ向かう床下走行風をさらに車両後方下方へ偏向させることができる。
従って、車両1の下部構造は、リヤホイールハウスカバー20に確実に連結されたアンダーカバー30によって、ホイールハウスの内部への床下走行風の侵入を安定して阻止することができる。
【0099】
また、アンダーカバー30のカバー側部32が、中央開口部S1を挟んで車幅方向に所定間隔を隔てた位置に車両上方へ突設するとともに、カバー連結部33に連結された車両前後方向に延びる左右一対の側方補強部34を備えたことにより、車両1の下部構造は、車両前方への押圧荷重に対するカバー側部32の剛性をより向上することができる。
【0100】
このため、車両1の下部構造は、カバー連結部33に作用する車両前方への押圧荷重によって、カバー側部32が第1折曲部分321、及び第2折曲部分322で折れ曲がり変形することを防止できる。
さらに、左右の側方補強部34がカバー連結部33に連結されているため、車両1の下部構造は、カバー連結部33に作用する車両前方への押圧荷重によって、カバー連結部33が、第3折曲部分323を回動中心として車両前方へ回動するように倒れることを防止できる。
【0101】
従って、車両1の下部構造は、カバー側部32が左右一対の側方補強部34を備えたことにより、ホイールハウスの内部への床下走行風の侵入抑制を阻害することなく、リヤホイールハウスカバー20と比較的低剛性なアンダーカバー30とをより確実に連結させることができる。
【0102】
また、アンダーカバー30のカバー側部32が、左右の側方補強部34の間において、車両上方に突設するとともに、側方補強部34の前端よりも車両後方の位置から車両前方へ延設された中央補強部35を備えたことにより、車両1の下部構造は、車両前方への押圧荷重に対するカバー側部32の剛性をより確実に向上することができる。
【0103】
このため、車両1の下部構造は、カバー連結部33に作用する車両前方への押圧荷重によって、カバー側部32が側方補強部34の前端で折れ曲がり変形することを防止できる。
これにより、車両1の下部構造は、車両前方への押圧荷重がカバー連結部33に作用した際、車両前方へのカバー連結部33の変位をより安定して抑えることができる。
【0104】
従って、車両1の下部構造は、側方補強部34の間に設けた中央補強部35により、ホイールハウスの内部への床下走行風の侵入抑制を阻害することなく、リヤホイールハウスカバー20と比較的低剛性なアンダーカバー30とをさらに確実に連結させることができる。
【0105】
また、アンダーカバー30におけるカバー連結部33の車幅方向外側に隣接して配設されたデフレクタ40を備え、デフレクタ40が、カバー連結部33に隣接配置されたデフレクタ基部41と、アンダーカバー30よりも車両下方に突出したデフレクタ本体42とで構成され、デフレクタ本体42が、車幅方向外側の側方補強部341の車両下方に、車幅方向内側の端部である内側端部が位置する車幅方向の長さで形成され、車幅方向内側の側方補強部342が、その前端の車両後方に隣接して開口形成された側方開口部S2を備えたことにより、車両1の下部構造は、リヤホイールハウスカバー20に確実に連結されたカバー側部32の中央開口部S1、及び側方開口部S2と、カバー側部32に隣接して配設されたデフレクタ40とによって、ホイールハウスの内部への床下走行風の侵入をより確実に抑制することができる。
【0106】
具体的には、側方補強部34における前端よりも車両後方の部分は、側面視において、前端に対して車両上方、または車両後方上方に向けて起立した部分となるため、車両後方へ流下する床下走行風をホイールハウスの内部へ向けて案内し易くなる。
【0107】
そこで、折曲部分となる側方補強部34の前端に隣接して側方開口部S2を設けたことにより、車両1の下部構造は、カバー側部32における車幅方向略中央部分、及び車幅方向内側部分に沿って車両後方へ流下する床下走行風を、中央開口部S1と側方開口部S2とによって、カバー側部32の下面から離間するように剥離させることができる。
【0108】
このため、車両1の下部構造は、車幅方向内側の側方補強部342の車両下方に、デフレクタ本体42の内側端部が位置するようなデフレクタ40を不要にでき、デフレクタ本体42における車幅方向の長さを短くできる。
【0109】
これにより、車両1の下部構造は、車両前方からの床下走行風に対するデフレクタ本体42の剛性を容易に確保することができる。加えて、車両1の下部構造は、揺動可能に支持されたトレーリングリンク13が、カバー側部32の車幅方向内側に配設された場合であっても、デフレクタ本体42の内側端部とトレーリングリンク13とが接触することを防止できる。
【0110】
このため、車両1の下部構造は、カバー側部32における車幅方向外側部分に沿って車両後方へ流下する床下走行風を、デフレクタ40によって車両後方下方へより安定して偏向させることができる。
【0111】
従って、車両1の下部構造は、リヤホイールハウスカバー20に確実に連結されたカバー側部32の中央開口部S1、及び側方開口部S2と、カバー側部32に隣接して配設されたデフレクタ40とによって、ホイールハウスの内部への床下走行風の侵入をより確実に抑制することができる。
【0112】
また、アンダーカバー30におけるカバー側部32の車幅方向内側に揺動可能に支持されたトレーリングリンク13を備え、トレーリングリンク13の前端が、底面視において、車幅方向内側の側方補強部342における前端よりも車両前方の位置で車両1の車体に締結され、車幅方向内側の側方補強部342が、トレーリングリンク13と車体との締結部分と対向する位置に開口形成された締結開口部S3を備えたことにより、車両1の下部構造は、アンダーカバー30を脱着することなく、トレーリングリンク13の締結と締結の開放とを容易にすることができる。
【0113】
さらに、側方補強部34の側方開口部S2に隣接して締結開口部S3が開口形成されたため、車両1の下部構造は、カバー側部32における車幅方向内側部分に沿って車両後方へ流下する床下走行風が側方開口部S2に到達する前に、側方開口部S2へ向かう床下走行風と、カバー側部32から離間するように剥離した床下走行風とに分流させることができる。
【0114】
これにより、車両1の下部構造は、側方開口部S2に到達する床下走行風の流量を低減できるため、床下走行風を側方開口部S2によってより安定して、かつより効果的に車両後方下方へ偏向させることができる。
従って、車両1の下部構造は、リヤホイールハウスカバー20に確実に連結されたアンダーカバー30によって、ホイールハウスの内部への床下走行風の侵入をさらに確実に阻止することができる。
【0115】
この発明の構成と、上述の実施形態との対応において、
この発明の自動車は、実施形態の車両1に対応し、
以下同様に、
ホイールハウスカバーは、リヤホイールハウスカバー20に対応し、
連結部は、カバー連結部33に対応し、
後端折曲部分は、第3折曲部分323に対応し、
少なくとも1つの折曲部分は、第1折曲部分321、及び第2折曲部分322に対応し、
下端折曲部分は、第2折曲部分322に対応し、
開口部は、中央開口部S1に対応し、
下方傾斜部分は、下方傾斜部分32b、及び中央補強部35の中央後面部分35aに対応し、
側方補強部の前端は、第1補強折曲部分343に対応し、
補強開口部は、側方開口部S2に対応し、
サスペンション部材は、トレーリングリンク13に対応するが、
この発明は、上述の実施形態の構成のみに限定されるものではなく、多くの実施の形態を得ることができる。
【0116】
例えば、上述した実施形態において、後輪を覆うリヤホイールハウスカバー20の前面下部に連結されるアンダーカバー30のカバー側部32について説明したが、これに限定せず、前輪を覆うホイールハウスカバーの前面下部に連結されるアンダーカバーのカバー側部であってもよい。
【0117】
また、フロアパネル3のトンネル部3aを挟んで左右に配置された左右一対のアンダーカバー30としたが、これに限定せず、左右一対のアンダーカバー30を一体化して、フロアパネル全体を車両下方から覆ってもよい。
【0118】
また、下方傾斜部分32bと上方傾斜部分32cとを有するカバー側部32としたが、これに限定せず、下方傾斜部分32bを不要にして、カバー延設部分32aの後端を車両後方上方へ折曲したのち、車両後方上方に位置するカバー連結部33の下端に連結された上方傾斜部分としてもよい。この場合、第1折曲部分321が最も車両下方に位置するため、第1折曲部分321の車両後方に隣接して中央開口部S1を開口形成する。
【0119】
また、下方傾斜部分32b、及び中央補強部35の中央後面部分35aと、上方傾斜部分32cとの境界部分で構成された第2折曲部分322としたが、これに限定せず、例えば、中央補強部35を不要にして、下方傾斜部分32bと上方傾斜部分32cとの境界部分で構成された第2折曲部分322としてもよい。
【符号の説明】
【0120】
1…車両
3…フロアパネル
13…トレーリングリンク
20…リヤホイールハウスカバー
30…アンダーカバー
32…カバー側部
32b…下方傾斜部分
32c…上方傾斜部分
33…カバー連結部
34…側方補強部
35…中央補強部
35a…中央後面部分
40…デフレクタ
41…デフレクタ基部
42…デフレクタ本体
321…第1折曲部分
322…第2折曲部分
323…第3折曲部分
343…第1補強折曲部分
S1…中央開口部
S2…側方開口部
S3…締結開口部
PF…点ファスナ