(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-21
(45)【発行日】2022-03-02
(54)【発明の名称】棒状物付筆記具
(51)【国際特許分類】
B43K 24/06 20060101AFI20220222BHJP
B43K 29/00 20060101ALI20220222BHJP
【FI】
B43K24/06
B43K29/00 Z
(21)【出願番号】P 2018043128
(22)【出願日】2018-03-09
【審査請求日】2021-02-03
(73)【特許権者】
【識別番号】390017891
【氏名又は名称】シヤチハタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078101
【氏名又は名称】綿貫 達雄
(74)【代理人】
【識別番号】100085523
【氏名又は名称】山本 文夫
(74)【代理人】
【識別番号】230117259
【氏名又は名称】綿貫 敬典
(72)【発明者】
【氏名】木村 武佐士
【審査官】中澤 俊彦
(56)【参考文献】
【文献】実開平3-112390(JP,U)
【文献】実開昭63-166481(JP,U)
【文献】実開平3-112388(JP,U)
【文献】特開2000-62390(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B43K 24/06
B43K 29/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筆記具本体が、筆記体を備えた先軸部と棒状物を備えた後軸部からなり、この後軸部を先軸部に対し軸中心に回転自在に取り付け、先軸部と後軸部の相対回転によって筆記具本体の端部から筆記具あるいは棒状物を繰出し可能とした棒状物付筆記具であって、
前記先軸部又は前記後軸部の内部には、内筒を取り付け、
該内筒内には、先軸部側に筆記体が装着され後軸部側に棒状物が装着された軸状の摺動部材を挿入するとともに、
前記内筒の内周面又は前記摺動部材の外周壁のいずれか一方に筆記具案内用の螺旋溝と、この筆記具案内用の螺旋溝とピッチが異なる棒状物案内用の螺旋溝、他方に前記螺旋溝に係合する突起を設けたことを特徴とする棒状物付筆記具。
【請求項2】
筆記具案内用の螺旋溝と棒状物案内用の螺旋溝との連結部には、傾斜のない水平溝部が設けられている請求項1に記載の棒状物付筆記具。
【請求項3】
後軸部の端部には、常に閉じ方向に弾発されているキャップが取り付けられている請求項1または2に記載の棒状物付筆記具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筆記具と棒状物の繰出し操作を正確かつ簡単に行うことができる棒状物付筆記具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1や特許文献2に示されるように、軸部を回転させることによって先端部から印鑑を繰出すようにした印鑑装置は従来から公知である。
【0003】
また、特許文献3に示されるように、前記のような印鑑装置と筆記具とを組み合わせて印鑑付筆記具としたものも公知である。この特許文献3には、筆記具の繰出しは軸部の回動により筆記体の前端部を出没させる構造や、先軸に対して後軸をノックすることにより筆記体の先端部を出没させる等の従来知られている構造を用いることができるとの記載がある(明細書第4欄11~22行)。
【0004】
一方、特許文献4には、筒状容器の両端部に出入口部を回動自在に取り付け、ラセン溝と係合突起との係合により移動体を前後に移動させるとともに、回転方向によって、例えば鉛筆芯と消しゴムのように異なる種類の棒状物を繰出せるようにした棒状物繰出し容器が開示されている。
しかしながら、特許文献4のものでは、異なる種類の棒状物の繰出し量は個々に異なっているのに対し、ラセン溝のピッチが一定であるため、最適な繰出し量を得るには棒状物に応じて回転数を微調整する必要があり、微妙な操作を強いられ操作性が悪いという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】実用新案登録第3027325号公報
【文献】特許第4208829号公報
【文献】実用新案登録第2510301号公報
【文献】実開昭62-127981号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記のような従来の問題点を解決して、筆記具と棒状物の繰出し量を微調整することなく正確かつ簡単に繰出し操作することが可能で、優れた操作性を発揮することができる棒状物付筆記具を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するためになされた本発明の棒状物付筆記具は、筆記具本体が、筆記体を備えた先軸部と棒状物を備えた後軸部からなり、この後軸部を先軸部に対し軸中心に回転自在に取り付け、先軸部と後軸部の相対回転によって筆記具本体の端部から筆記具あるいは棒状物を繰出し可能とした棒状物付筆記具であって、
前記先軸部又は前記後軸部の内部には、内筒を取り付け、
該内筒内には、先軸部側に筆記体が装着され後軸部側に棒状物が装着された軸状の摺動部材を挿入するとともに、
前記内筒の内周面又は前記摺動部材の外周壁のいずれか一方に筆記具案内用の螺旋溝と、この筆記具案内用の螺旋溝とピッチが異なる棒状物案内用の螺旋溝、他方に前記螺旋溝に係合する突起を設けたことを特徴とするものであり、これを請求項1に係る発明とする。
【0008】
好ましい実施形態によれば、筆記具案内用の螺旋溝と棒状物案内用の螺旋溝との連結部には、傾斜のない水平溝部が設けられているものが好ましく、これを請求項2に係る発明とする。
【0009】
また、その他の好ましい実施形態によれば、後軸部の端部には、常に閉じ方向に弾発されているキャップが取り付けられているものが好ましく、これを請求項3に係る発明とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に係る発明では、筆記具本体が、筆記体を備えた先軸部と棒状物を備えた後軸部からなり、この後軸部を先軸部に対し軸中心に回転自在に取り付け、先軸部と後軸部の相対回転によって筆記具本体の端部から筆記具あるいは棒状物を繰出し可能とした棒状物付筆記具であって、前記先軸部又は前記後軸部の内部には、内筒を取り付け、該内筒内には、先軸部側に筆記体が装着され後軸部側に棒状物が装着された軸状の摺動部材を挿入するとともに、前記内筒の内周面又は前記摺動部材の外周壁のいずれか一方に筆記具案内用の螺旋溝と、この筆記具案内用の螺旋溝とピッチが異なる棒状物案内用の螺旋溝、他方に前記螺旋溝に係合する突起を設けたので、2種類の螺旋溝の設定により、筆記体と棒状物に必要な突出量が異なっているにも関わらず、一定の回転量でそれぞれ最適な量で突出させることができ、繰出し操作を正確かつ簡単に行うことができる。
【0011】
また、請求項2に係る発明では、筆記具案内用の螺旋溝と棒状物案内用の螺旋溝との連結部には、傾斜のない水平溝部が設けられているものとしたので、前記水平溝部で筆記体と棒状物のいずれもが繰出さないニュートラル位置を確認することができ、優れた操作性を発揮することができる。
【0012】
また、請求項3に係る発明では、後軸部の端部には、常に閉じ方向に弾発されているキャップが取り付けられているものとしたので、押印時を除き常時は棒状物がキャップに保護されて破損や汚れを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図2】本発明の実施の形態を示す中央縦断面図である。
【
図3】(a)は本発明の実施の形態を示す右側面図であり、(b)はA-A断面図、(c)はB-B断面図、(d)は、C-C断面図である。
【
図4】(a)は摺動部材の正面図、(b)は平面図、(c)は底面図、(d)は左側面図である。
【
図5】(a)はスライダーの平面図、(b)は正面図、(c)は左側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、図面を参照しつつ本発明の好ましい実施の形態を示す。
図1は本発明の一例として棒状物が印鑑である棒状物付筆記具を示す正面図で、
図2は
図1の中央縦断面図である。図において、1は筆記具本体で、この筆記具本体1は筆記体2を備えた先軸部1aと棒状物3(印鑑)を備えた後軸部1bからなる。前記先軸部1aと前記後軸部1bの間には、前記先軸部1aに回動自在に嵌合され、前記後軸部1bに回動不能に嵌合固定された中軸部1cが取り付けられている。また、先軸部1aと中軸部1cの相対回転によって筆記具本体1の端部から筆記具2あるいは棒状物3(印鑑)が繰出し可能な構造となっている。なお。図示のものでは筆記具2としてリフィルの場合を例示している。
【0015】
前記後軸部1bの内部には、内筒4が一体成型されている。また、前記中軸部1cの内部には、筒状ガイド部材11が一体成型されている。
図3に示されるように、前記内筒4及び前記筒状ガイド部材11は互いに連結されることで筆記具案内用の螺旋溝5aと、この筆記具案内用の螺旋溝5aよりはピッチが大きい棒状物案内用の螺旋溝5bが連続するように形成されている。なお、前記中軸部1cは前記後軸部1bと一体成型として構成されていても良く、その場合当然、前記筒状ガイド部材11もまた前記内筒4の一体として構成される。
本明細書でいう螺旋溝のピッチとは、内筒4の軸方向に対して垂直な面を基準(0度)として、この垂直面に対する螺旋溝の傾斜角度を意味しており、棒状物案内用の螺旋溝5bの傾斜角度が筆記具案内用の螺旋溝5aの傾斜角度よりも大きいという意味である。
【0016】
また、筆記具案内用の螺旋溝5aと棒状物案内用の螺旋溝5bとの連結部には、傾斜のない水平溝部5cが設けられている。この水平溝部5cにより、筆記体と棒状物のいずれもが繰出さないニュートラル位置を確認することができるので、優れた操作性を発揮することができる。
【0017】
前記内筒4内及び前記筒状ガイド部材11で形成された筒体内には、先軸部1a側に筆記体2が装着され、後軸部1b側に棒状物3(印鑑)が装着された軸状の摺動部材6が挿入されている。
図4に示されるように、この摺動部材6は筆記体2を装着する筆記体保持部6aと、棒状物3を装着する棒状物保持部6bからなり、外周壁には突起7が突設されている。
【0018】
この摺動部材6の突起7は、前記螺旋溝5a、6bに係合させられており、後軸部1bを回転させると突起7が螺旋溝5a、6bに案内されて移動し、この結果、摺動部材6が筆記具本体1内を前後に移動する構造となっている。
【0019】
なお、前記摺動部材6の前方部(先軸部1a側)にはスライダー8が装着されている。このスライダー8は、
図5に示されるように、外周壁に2個の突起9が突設されており、筆記具本体1の内周壁に設けられた直線状のスリット溝10に挿入されている。この結果、摺動部材6は前記スリット溝10に案内されて筆記具本体1内を直線的に前後に移動する構造となっている。尚、前記スライダー8を、前記摺動部材6の後方部(後軸部1b側)に装着することも可能であり、その場合、螺旋溝を設けた前記内筒4は、先軸部1aの内部に取り付ければよい。
【0020】
また、後軸部1bの端部には、常に閉じ方向に弾発されているキャップが取り付けられており、押印時を除き常時は棒状物3(印鑑)がキャップに保護されて破損や汚れを防止するように構成されている。なお、13は弾発力を付与するためのねじりバネである。
【0021】
以上のように構成した棒状物付筆記具は、先軸部と後軸部の相対回転によって筆記具本体の端部から筆記具あるいは棒状物を繰出し可能としたものであり、後軸部を筆記具繰出し側へ回転すると筆記具の先端が突出し、反対側へ回転すると棒状物の先端が突出する。
この場合、筆記具の繰出し量と棒状物の繰出し量とは異なるが、本発明では内筒の内周面に筆記具案内用の螺旋溝と、この筆記具案内用の螺旋溝よりはピッチが大きい棒状物案内用の螺旋溝が連続して形成されていて、それぞれの繰出し量が最適となるように設計してある。この結果、後軸部を止まるまで完全に回転させると、筆記具の繰出し量は短く、一方、棒状物の繰出し量は長くなってそれぞれの最適位置まで突出することになる。このように、本発明では筆記具と棒状物の繰出し量を微調整することなく正確かつ簡単に繰出し操作することが可能で、優れた操作性を発揮することが可能となる。
なお、以上は筆記具案内用の螺旋溝よりはピッチが大きい棒状物案内用の螺旋溝を連続して形成した場合について説明したが、筆記具案内用の螺旋溝よりはピッチが小さい棒状物案内用の螺旋溝を連続して形成できることは勿論である。
【符号の説明】
【0022】
1 筆記具本体
1a 先軸部
1b 後軸部
1c 中軸部
2 筆記体
3 棒状物
4 内筒
5a 筆記具案内用の螺旋溝
5b 棒状物案内用の螺旋溝
5c 水平溝部
6 摺動部材
6a 筆記体保持部
6b 棒状物保持部
7 突起
8 スライダー
9 突起
10 スリット溝
11 筒状ガイド部材
12 キャップ