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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-21
(45)【発行日】2022-03-02
(54)【発明の名称】金型
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/26 20060101AFI20220222BHJP
   B29C 33/12 20060101ALI20220222BHJP
   H01M 10/02 20060101ALI20220222BHJP
   H01G 11/78 20130101ALI20220222BHJP
【FI】
B29C45/26
B29C33/12
H01M10/02
H01G11/78
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018052228
(22)【出願日】2018-03-20
(65)【公開番号】P2019162806
(43)【公開日】2019-09-26
【審査請求日】2020-12-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 敬史
(74)【代理人】
【識別番号】100148013
【弁理士】
【氏名又は名称】中山 浩光
(74)【代理人】
【識別番号】100140682
【弁理士】
【氏名又は名称】妙摩 貞茂
(72)【発明者】
【氏名】田丸 耕二郎
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 貴文
(72)【発明者】
【氏名】真里谷 毅
【審査官】北澤 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-042922(JP,A)
【文献】国際公開第2012/121065(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/151193(WO,A1)
【文献】特開2011-204386(JP,A)
【文献】特開2017-073374(JP,A)
【文献】国際公開第2008/129840(WO,A1)
【文献】特公昭50-009971(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 33/00-33/76
B29C 45/00-45/84
H01G 11/00-11/86
H01M 50/00-50/298
H01M 4/64- 4/84
H01M 10/00-10/39
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
周縁に一次封止体を有する複数の電極体が積層された積層体に対して、前記積層体における前記一次封止体の積層方向に沿った側面を覆う二次封止体を形成するための金型であって、
少なくとも前記積層体における前記一次封止体の積層方向に沿った側面を囲み、前記二次封止体を形成するための樹脂が充填される空間を画定する内側面と、
前記内側面の少なくとも一部に形成されたコーティング部と、を備え、
前記コーティング部は、当該金型の母材の熱伝導率よりも小さい熱伝導率を有するコーティング材料によって形成されており、
前記コーティング部の厚みは、300μm以下である、金型。
【請求項2】
前記コーティング部は、前記内側面のうちの前記積層方向に沿って延在する面のみに形成されている、請求項1に記載の金型。
【請求項3】
前記金型は、前記積層体の積層方向の一方側に配置される第1金型と、前記積層体の積層方向の他方側に配置される第2金型と、からなり、
前記第1金型及び前記第2金型によって、前記積層体が積層方向に挟持される、請求項1又は2に記載の金型。
【請求項4】
前記コーティング部の熱伝導率は、1W/m・k以下である、請求項1~3のいずれか一項に記載の金型。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一側面は、金型に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の蓄電モジュールとして、電極板の一方面に正極が形成され、他方面に負極が形成されたバイポーラ電極を備えた、いわゆるバイポーラ型の蓄電モジュールが知られている(特許文献1参照)。かかる蓄電モジュールは、複数のバイポーラ電極が積層された積層体を備えている。積層体の周囲には、積層方向で隣り合うバイポーラ電極間を封止する封止体が設けられている。封止体が設けられることによって、バイポーラ電極間には内部空間が形成されている。内部空間には電解液が収容されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2011-204386号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のような封止体を形成する場合、例えば周縁に一次封止体が配置されたバイポーラ電極を積層して積層体を形成し、積層された各バイポーラ電極の一次封止体同士を二次封止体によって結合することにより、封止体を形成することが考えられる。例えば、二次封止体は、例えば樹脂の射出成形によって形成され得る。この場合、射出成形後の二次封止体では、一次封止体との界面側に比べて、射出成形に用いられる金型側における樹脂の冷却速度が大きくなる。そのため、冷却に応じて収縮する樹脂が金型側に偏ることによって、一次封止体と二次封止体との界面にボイド(空洞)が形成される場合がある。
【0005】
本発明の一側面は、蓄電モジュールを構成する一次封止体と二次封止体との界面にボイドが形成されることを抑制できる金型を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面に係る金型は、周縁に一次封止体を有する複数の電極体が積層された積層体に対して、積層体における一次封止体の積層方向に沿った側面を覆う二次封止体を形成するための金型であって、少なくとも積層体における一次封止体の積層方向に沿った側面を囲み、二次封止体を形成するための樹脂が充填される空間を画定する内側面と、内側面の少なくとも一部に形成されたコーティング部と、を備え、コーティング部は、当該金型の母材の熱伝導率よりも小さい熱伝導率を有するコーティング材料によって形成されている。
【0007】
この金型では、二次封止体を形成するための樹脂が充填される空間を画定する内側面の少なくとも一部にコーティング部が形成されている。このコーティング部は、金型の母材の熱伝導率よりも小さい熱伝導率を有している。コーティング部が形成されることによって、金型側における樹脂の冷却速度はコーティング部が形成されない場合に比べて小さくなる。すなわち、一次封止体との界面側と金型側とにおいて、樹脂の冷却速度の差が小さくなる。これにより、樹脂が冷却される際に金型側に偏って収縮することが抑制されるので、ボイドの形成が抑制される。
【0008】
コーティング部は、内側面のうちの積層方向に沿って延在する面のみに形成されていてもよい。この構成では、一次封止体と二次封止体との界面に対面する内側面における熱伝導率を小さくすることができるので、当該内側面側に樹脂が収縮されることが抑制される。
【0009】
金型は、積層体の積層方向の一方側に配置される第1金型と、積層体の積層方向の他方側に配置される第2金型と、からなり、第1金型及び第2金型によって、積層体が積層方向に挟持されてもよい。この構成では、積層体における一次封止体の積層方向に沿った側面を囲む空間を容易に構成することができる。
【0010】
コーティング部の厚みは、300μm未満であってよい。また、コーティングの熱伝導率は、1W/m・k以下であってよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明の一側面に係る金型によれば、蓄電モジュールを構成する一次封止体と二次封止体との界面にボイドが形成されることを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】蓄電モジュールを備える蓄電装置の一例を示す概略断面図である。
図2図1の蓄電装置を構成する蓄電モジュールを示す概略断面図である。
図3】一実施形態に係る金型を説明するための断面図である。
図4】コーティング部の厚みと界面ヒケ量との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態が詳細に説明される。図面の説明において、同一又は同等の要素には同一符号が用いられ、重複する説明は省略される。図面にはXYZ直交座標系が示される。
【0014】
本実施形態に係る金型は、蓄電装置を構成する蓄電モジュールを形成し得る。そこで、まず、蓄電装置及び蓄電モジュールについて説明する。図1は、蓄電モジュールを備える蓄電装置の一例を示す概略断面図である。同図に示す蓄電装置10は、例えばフォークリフト、ハイブリッド自動車、電気自動車等の各種車両のバッテリとして用いられる。蓄電装置10は、複数(本実施形態では3つ)の蓄電モジュール12を備えるが、単一の蓄電モジュール12を備えてもよい。蓄電モジュール12は例えばバイポーラ電池である。蓄電モジュール12は、例えばニッケル水素二次電池、リチウムイオン二次電池等の二次電池であるが、電気二重層キャパシタであってもよい。以下の説明では、ニッケル水素二次電池を例示する。
【0015】
複数の蓄電モジュール12は、例えば金属板等の導電板14を介して積層され得る。積層方向D1から見て、蓄電モジュール12及び導電板14は例えば矩形形状を有する。各蓄電モジュール12の詳細については後述する。導電板14は、蓄電モジュール12の積層方向D1(Z方向)において両端に位置する蓄電モジュール12の外側にもそれぞれ配置される。導電板14は、隣り合う蓄電モジュール12と電気的に接続される。これにより、複数の蓄電モジュール12が積層方向D1に直列に接続される。積層方向D1において、一端に位置する導電板14には正極端子24が接続されており、他端に位置する導電板14には負極端子26が接続されている。正極端子24は、接続される導電板14と一体であってもよい。負極端子26は、接続される導電板14と一体であってもよい。正極端子24及び負極端子26は、積層方向D1に交差する方向(X方向)に延在している。これらの正極端子24及び負極端子26により、蓄電装置10の充放電を実施できる。
【0016】
導電板14は、蓄電モジュール12において発生した熱を放出するための放熱板としても機能し得る。導電板14の内部に設けられた複数の空隙14aを空気等の冷媒が通過することにより、蓄電モジュール12からの熱を効率的に外部に放出できる。各空隙14aは例えば積層方向D1に交差する方向(Y方向)に延在する。積層方向D1から見て、導電板14は、蓄電モジュール12よりも小さいが、蓄電モジュール12と同じかそれより大きくてもよい。
【0017】
蓄電装置10は、交互に積層された蓄電モジュール12及び導電板14を積層方向D1に拘束する拘束部材16を備え得る。拘束部材16は、一対の拘束プレート16A,16Bと、拘束プレート16A,16B同士を連結する連結部材(ボルト18及びナット20)とを備える。各拘束プレート16A,16Bと導電板14との間には、例えば樹脂フィルム等の絶縁フィルム22が配置される。各拘束プレート16A,16Bは、例えば鉄等の金属によって構成されている。積層方向D1から見て、各拘束プレート16A,16B及び絶縁フィルム22は例えば矩形形状を有する。絶縁フィルム22は導電板14よりも大きくなっており、各拘束プレート16A,16Bは、蓄電モジュール12よりも大きくなっている。積層方向D1から見て、拘束プレート16Aの縁部には、ボルト18の軸部を挿通させる挿通孔H1が蓄電モジュール12よりも外側となる位置に設けられている。同様に、積層方向D1から見て、拘束プレート16Bの縁部には、ボルト18の軸部を挿通させる挿通孔H2が蓄電モジュール12よりも外側となる位置に設けられている。
【0018】
一方の拘束プレート16Aは、負極端子26に接続された導電板14に絶縁フィルム22を介して突き当てられ、他方の拘束プレート16Bは、正極端子24に接続された導電板14に絶縁フィルム22を介して突き当てられている。ボルト18は、例えば一方の拘束プレート16A側から他方の拘束プレート16B側に向かって挿通孔H1に通され、他方の拘束プレート16Bから突出するボルト18の先端には、ナット20が螺合されている。これにより、絶縁フィルム22、導電板14及び蓄電モジュール12が挟持されてユニット化されると共に、積層方向D1に拘束荷重が付加される。
【0019】
図2は、図1の蓄電装置を構成する蓄電モジュールを示す概略断面図である。蓄電モジュール12は、複数のバイポーラ電極(電極)32が積層された電極積層体30を備える。電極積層体30は、バイポーラ電極32の積層方向D1から見て、例えば矩形形状を有する。隣り合うバイポーラ電極32間にはセパレータ40が配置され得る。バイポーラ電極32は、電極板34と、電極板34の一方面に設けられた正極36と、電極板34の他方面に設けられた負極38とを含む。電極積層体30において、一のバイポーラ電極32の正極36は、セパレータ40を挟んで積層方向D1に隣り合う一方のバイポーラ電極32の負極38と対向し、一のバイポーラ電極32の負極38は、セパレータ40を挟んで積層方向D1に隣り合う他方のバイポーラ電極32の正極36と対向している。
【0020】
積層方向D1において、電極積層体30の一端には、内側面に負極38が配置された電極板34(負極側終端電極)が配置され、電極積層体30の他端には、内側面に正極36が配置された電極板34(正極側終端電極)が配置される。負極側終端電極の負極38は、セパレータ40を介して最上層のバイポーラ電極32の正極36と対向している。正極側終端電極の正極36は、セパレータ40を介して最下層のバイポーラ電極32の負極38と対向している。これら終端電極の電極板34はそれぞれ隣り合う導電板14(図1参照)に接続される。
【0021】
蓄電モジュール12は、積層方向D1に延在する電極積層体30の側面30aにおいて電極板34の縁部34aを保持する枠体50を備える。枠体50は、積層方向D1から見て電極積層体30の周囲に設けられている。すなわち、枠体50は、電極積層体30の側面30aを取り囲むように構成されている。枠体50は、電極板34の縁部34aを保持する第1樹脂部(一次封止体)52と、積層方向D1から見て第1樹脂部52の周囲に設けられる第2樹脂部(二次封止体)54とを備え得る。
【0022】
枠体50の内壁を構成する第1樹脂部52は、各バイポーラ電極32の電極板34の一方面(正極36が形成される面)から縁部34aにおける電極板34の端面にわたって設けられている。本実施形態では、バイポーラ電極32の周縁に第1樹脂部52が形成されることによって電極体60が構成されている。積層方向D1から見て、各第1樹脂部52は、各バイポーラ電極32の電極板34の縁部34a全周にわたって設けられている。隣り合う第1樹脂部52同士は、各バイポーラ電極32の電極板34の他方面(負極38が形成される面)の外側に延在する面において当接している。その結果、第1樹脂部52には、各バイポーラ電極32の電極板34の縁部34aが埋没して保持されている。各バイポーラ電極32の電極板34の縁部34aと同様に、電極積層体30の両端に配置された電極板34の縁部34aも第1樹脂部52に埋没した状態で保持されている。これにより、積層方向D1に隣り合う電極板34,34間には、当該電極板34,34と第1樹脂部52とによって気密に仕切られた内部空間Vが形成されている。当該内部空間Vには、例えば水酸化カリウム水溶液等のアルカリ溶液からなる電解液(不図示)が収容されている。
【0023】
枠体50の外壁を構成する第2樹脂部54は、積層方向D1を軸方向として延在する筒状部である。第2樹脂部54は、積層方向D1において電極積層体30の全長にわたって延在する。第2樹脂部54は、積層方向D1に延在する第1樹脂部52の外側面を覆っている。第2樹脂部54は、積層方向D1から見て内側において第1樹脂部52に溶着されている。
【0024】
電極板34は、例えばニッケルからなる矩形の金属箔である。電極板34の縁部34aは、正極活物質及び負極活物質が塗工されない未塗工領域となっており、当該未塗工領域が枠体50の内壁を構成する第1樹脂部52に埋没して保持される領域となっている。正極36を構成する正極活物質としては、例えば水酸化ニッケルが挙げられる。負極38を構成する負極活物質としては、例えば水素吸蔵合金が挙げられる。電極板34の他方面における負極38の形成領域は、電極板34の一方面における正極36の形成領域に対して一回り大きくなっている。
【0025】
セパレータ40は、例えばシート状に形成されている。セパレータ40を形成する材料としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン系樹脂からなる多孔質フィルム、ポリプロピレン等からなる織布又は不織布等が例示される。また、セパレータ40は、フッ化ビニリデン樹脂化合物等で補強されたものであってもよい。枠体50を構成する樹脂材料としては、例えばポリプロピレン(PP)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、又は変性ポリフェニレンエーテル(変性PPE)等が挙げられる。
【0026】
本実施形態では、セパレータ40を介して積層された複数の電極体60によって積層体65が構成される。そして、積層体65の第1樹脂部52の外周(側面)に対して、射出成形によって第2樹脂部54が形成されている。
【0027】
以下、第2樹脂部54を形成するための本実施形態に係る金型について説明する。図3は、金型の一例を説明するための断面模式図である。図3では、内側に積層体65が配置された状態の金型100の一部を示す。
【0028】
図3に示されるように、金型100は、積層方向D1を上下方向とした場合に、上側(一方側)に配置される上部金型(第1金型)110と、下側(他方側)に配置される下部金型(第2金型)130とを有する。例えば、金型100では、下部金型130が固定されており、下部金型130に対して当接及び離間するように上部金型110が上下動可能となっていてもよい。
【0029】
上部金型110は、例えば矩形板状をなし、積層方向D1に交差(直交)する方向に延在する主壁111を有する。主壁111には、主壁111を積層方向D1に貫通する貫通孔112が形成されている。この貫通孔112は、金型100内に樹脂を注入する際の注入口として使用される。積層方向D1から見て、主壁111の外縁には、積層方向D1に沿って下部金型130側に突出する周壁113が形成されている。また、主壁111の下面(内面)の中央には、周壁113から離間した位置において、積層方向D1に沿って下部金型130側に突出する突出部115が形成されている。突出部115は、例えば矩形柱状をなしている。主壁111の下面のうち、突出部115を構成しない面は、突出部115を囲む矩形環状の平面111aとなっている。上部金型110では、突出部115の下面115a、突出部115の側面115b、主壁111の平面111a、及び、周壁113の内面113aによって、金型100の内部に面する内側面120が構成されている。
【0030】
下部金型130は、例えば矩形板状をなし、積層方向D1に交差(直交)する方向に延在する主壁131を有する。積層方向D1から見て、主壁131の外縁には、積層方向D1に沿って上部金型110側に突出する周壁133が形成されている。本実施形態では、積層方向D1における周壁133の高さは、上部金型110の周壁113の高さよりも大きくなっている。また、主壁131の上面(内面)の中央には、周壁133から離間した位置において、積層方向D1に沿って上部金型110側に突出する突出部135が形成されている。突出部135は、例えば矩形柱状をなしている。主壁131の上面のうち、突出部135を構成しない面は、突出部135を囲む矩形環状の平面131aとなっている。下部金型130では、突出部135の上面135a、突出部135の側面135b、主壁131の平面131a、及び、周壁133の内面133aによって、金型100の内部に面する内側面140が構成されている。
【0031】
上部金型110に形成された突出部115と下部金型130に形成された突出部135とは、積層方向D1から見て同形状であり、互いに重複する位置に形成されている。上部金型110の突出部115の下面115aと下部金型130の突出部135の上面135aとは、上部金型110及び下部金型130が互いに当接された状態において、互いに離間している。本実施形態では、下面115aと上面135aとによって積層体65が積層方向D1に挟持される。積層体35が挟持されている状態において、積層体65の側面65aを含む周縁は、積層方向D1から見て突出部115,135よりも外方に突出している。
【0032】
金型100には、積層体65の周縁が配置され、第2樹脂部54を形成するための樹脂が充填される空間SPが画定されている。この空間SPは、上部金型110における周壁113の内面113a、主壁111の平面111a、及び、突出部115の側面115bと、下部金型130における周壁133の内面133a、主壁131の平面131a、及び、突出部135の側面135bと、によって画定されている。例えば、積層体65の側面65aから周壁113の内面133a及び周壁133の内面133aまでの距離は、側面115b,135bの高さよりも大きくなっている。
【0033】
金型100は、内側面120,140の少なくとも一部に形成されたコーティング部150、を備えている。本実施形態では、コーティング部150は、内側面120,140のうちの積層体65の積層方向D1に沿って延在する面のみに形成されている。すなわち、コーティング部150は、上部金型110の周壁113の内面113aに形成された第1コーティング部151、及び、下部金型130の周壁133の内面133aに形成された第2コーティング部153を有する。コーティング部150は、金型100の母材よりも熱伝導率の小さいコーティング材料によって形成されている。例えば、金型100が炭素鋼によって形成されている場合、金型100の熱伝導率は、約44W/m・kである。この場合、コーティング部150の熱伝導率は、例えば約40W/m・k以下であり、好ましくは約20W/m・k以下であり、より好ましくは約1W/m・k以下である。
【0034】
一例として、コーティング部150は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、窒化ジルコニウム(ZrN)、酸化アルミニウム(Al)、ダイアモンドライクカーボン(DLC)等によって形成され得る。なお、例えばPTFE、ZrN、Al、DLCの熱伝導率は、いずれも40W/m・k以下であり、それぞれ約0.23W/m・k、約10W/m・k、約20W/m・k、約40W/m・kである。また、積層体65の外周面を構成する第1樹脂部52の熱伝導率は、例えば約0.18W/m・k程度となっている。コーティング部150の厚みは、300μm以下であり、好ましくは、50~250μmであり、より好ましくは、100~200μmである。
【0035】
以下、金型100を用いた蓄電モジュール12の製造方法について説明する。蓄電モジュール12の製造方法では、まず、バイポーラ電極32の電極板34の縁部34aに第1樹脂部52が形成される。これにより、電極板34の周縁に第1樹脂部52が形成された電極体60が得られる。第1樹脂部52は、例えば、予め射出成形により矩形枠状に形成された後、超音波又は熱を用いた溶着により縁部34aに取り付けられる。
【0036】
続いて、電極体60がセパレータ40を介して積層されることによって積層体65が形成される。続いて、積層方向D1に隣り合う第1樹脂部52同士を接合する第2樹脂部54を樹脂の射出成形によって形成する。この工程では、まず、積層体65が金型100にセットされる。すなわち、上部金型110の突出部115及び下部金型130の突出部135によって積層体65が積層方向D1に挟持される。この状態では、積層体65を構成する各電極体60における第1樹脂部52の側面65aが空間SPに露出している。また、図示例では、積層体65における積層方向の一端面65b及び他端面65cの周縁は、主壁111の平面111a及び主壁131の平面131aに所定の距離を空けてそれぞれ対面している。そして、上部金型110と下部金型130との互いの周壁113,133同士が当接されることによって、空間SPが形成される。この状態で、貫通孔112から空間SPに射出成形用の樹脂が射出されることによって、第2樹脂部54が形成され得る。
【0037】
金型100を用いて第2樹脂部54を形成する場合、射出された樹脂の熱が積層体65及び金型100に移動することによって、樹脂が冷却される。上記実施形態のようなコーティング部150が形成されていない場合、積層体65の熱伝導率と金型100の熱伝導率との差が大きいため、積層体65に移動する熱に比べて、熱伝導率の大きい金型側へ移動する熱が多くなる。これにより、金型側の樹脂ほど冷却されやすくなるので、冷却が進むに従って樹脂が金型側に偏り、第1樹脂部52と第2樹脂部54との界面にボイドが発生しやすい。一般に、このようなボイドの発生を回避する場合、保圧の上昇によって樹脂の流動性を向上させることが考えられる。しかし、実施形態のように積層体65の外周に第2樹脂部54を形成したい場合には、積層体65が変形する虞があるため保圧を上昇させることが困難である。また、型温の上昇によって樹脂の流動性を向上させることも考えられる。しかし、積層体65を構成するセパレータ40の耐熱温度との関係で型温を上昇させることも困難である。
【0038】
上記実施形態における金型100では、樹脂が充填される空間SPを画定する内側面120,140の少なくとも一部にコーティング部150が形成されている。このコーティング部150は、金型100の母材の熱伝導率よりも小さい熱伝導率を有している。コーティング部150が形成されることによって、金型100側における樹脂の冷却速度をコーティング部150が形成されない場合に比べて小さくすることができる。すなわち、第1樹脂部52との界面側と金型100側とにおいて、樹脂の冷却速度の差が小さくなる。これにより、樹脂が冷却される際に金型100側に偏って収縮することが抑制されるので、第1樹脂部52と第2樹脂部54との界面におけるボイドの形成が抑制される。
【0039】
コーティング部150は、内側面120,140のうちの積層方向D1に沿って延在する面である内面113a,133aのみに形成されていてもよい。この構成では、第1樹脂部52と第2樹脂部54との界面に対面する内面113a,133aにおける熱伝導率のみを小さくすることができる。これにより、当該内面113a,133a側に樹脂が収縮されることが抑制される。また、平面111a,131a及び側面115b,135bにおける熱伝導率は低下していないので、樹脂の冷却速度を過剰に抑制することがない。これにより、射出成型のサイクルタイムが長くなることを抑制できる。
【0040】
金型100は、積層体65の積層方向D1の一方側に配置される上部金型110と、他方側に配置される下部金型130と、からなり、上部金型110及び下部金型130によって、積層体65が積層方向D1に挟持されてもよい。この構成では、積層体65の側面65aを囲む空間SPを金型100内に容易に構成することができる。
【0041】
[実施例]
以下、実施例を参照し、上記実施形態をについてさらに説明するが、上記実施形態は下記の実施例に限定されるものではない。本実施例では、コーティング部の厚みを変化させた場合の第1樹脂部と第2樹脂部との間の界面におけるヒケ量を計測した。なお、金型の構成は、上記実施形態と同様であり、コーティング部はPTFEによって形成した。図4は、コーティング部の厚みとヒケ量との関係を示すグラフである。図4では、ヒケ量を任意単位によって示している。なお、ヒケ量の大きさは、第1樹脂部と第2樹脂部との間の界面に形成されたボイドの径の大きさに応じて示されている。
【0042】
本実施例では、コーティング部の厚みを100μm、200μm、300μm、400μmと変化させて、それぞれのヒケ量を計測した。なお、射出条件は、金型温度が75℃、射出速度が25m/s、保圧が45Mpa、VP切替位置が93%、保圧時間が60s、冷却時間が30sである。
【0043】
図4に示されるように、界面のヒケ量は、コーティング部の厚みが100μm前後のときに最も小さくなり、そこからコーティング部の厚みが大きくなるにつれて大きくなっている。そして、コーティング部の厚みが300μmよりも大きくなったときに、コーティング部を設けない場合のヒケ量よりも大きなヒケ量を計測した。このように、コーティングの材料としてPTFEを用いた場合、コーティング部の厚みが300μm以下のときに、ヒケ量を低減させることが確認された。
【0044】
以上、実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではない。
【0045】
例えば、枠体50が第1樹脂部52及び第2樹脂部54によって形成されている積層体65を例示したが、これに限定されない。例えば、第2樹脂部54の外周を囲む枠体として、さらに第3樹脂部が形成されてもよい。
【0046】
また、上記のコーティング部を形成する材料は単なる例示であり、これらに限定されない。コーティング部は、金型を形成する母材の熱伝導率よりも小さい熱伝導率を有する材料であって、金型の内側面に断熱層を形成可能な材料であればよく、上記例示した材料以外の樹脂材料、セラミック材料等であってよい。
【符号の説明】
【0047】
52…第1樹脂部(一次封止体)、54…第2樹脂部(二次封止体)、60…電極体、65…積層体、65a…側面、100…金型、120,140…内側面、150…コーティング部、D1…積層方向、SP…空間。
図1
図2
図3
図4