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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-21
(45)【発行日】2022-03-02
(54)【発明の名称】容量分圧器
(51)【国際特許分類】
   H01G 5/013 20060101AFI20220222BHJP
   G01R 15/04 20060101ALI20220222BHJP
   H01F 38/24 20060101ALI20220222BHJP
   H01G 2/02 20060101ALI20220222BHJP
   H01G 2/10 20060101ALI20220222BHJP
   H01G 4/228 20060101ALI20220222BHJP
   H01G 4/38 20060101ALI20220222BHJP
   H01G 5/38 20060101ALI20220222BHJP
【FI】
H01G5/013 100
G01R15/04
H01F38/24 501
H01G2/02 101E
H01G2/10 K
H01G4/228 J
H01G4/38 A
H01G5/38
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018115060
(22)【出願日】2018-06-18
(65)【公開番号】P2019220519
(43)【公開日】2019-12-26
【審査請求日】2020-09-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000006105
【氏名又は名称】株式会社明電舎
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【弁理士】
【氏名又は名称】富岡 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100104938
【弁理士】
【氏名又は名称】鵜澤 英久
(74)【代理人】
【識別番号】100210240
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 友幸
(72)【発明者】
【氏名】竹谷 修
(72)【発明者】
【氏名】谷水 良行
(72)【発明者】
【氏名】深井 利眞
(72)【発明者】
【氏名】巽 敏規
(72)【発明者】
【氏名】谷水 徹
【審査官】多田 幸司
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-163314(JP,A)
【文献】実開昭60-013729(JP,U)
【文献】特開2017-157453(JP,A)
【文献】実開昭48-114009(JP,U)
【文献】実開平01-113325(JP,U)
【文献】特開2003-297608(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G 5/013
G01R 15/04
H01F 38/24
H01G 2/02
H01G 2/10
H01G 4/228
H01G 4/38
H01G 5/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直列に接続される複数のコンデンサと、
前記直列に接続される複数のコンデンサを収容する絶縁管と、
前記直列に接続されたコンデンサの外周部に備えられる樹脂製の碍管と、
前記碍管の各端部にそれぞれ設けられる端子と、を備え、
前記コンデンサは、
絶縁筒と、
前記絶縁筒の端部にそれぞれ備えられる一対の電極と、
前記一対の電極のうちの一方の電極の前記絶縁筒外側の端面に設けられ、前記絶縁筒の軸方向に突出する凸部と、
前記一対の電極のうちの前記凸部が設けられていない側の電極に形成される接続穴と、を備え、
前記複数のコンデンサのうち隣接するコンデンサは、一方のコンデンサの凸部を、他方のコンデンサの接続穴に挿入して直列に接続され、
該直列に接続されたコンデンサの一方のコンデンサの凸部と、他方のコンデンサの接続穴の奥部と、の間に、導電性を有する弾性部材が備えられ
前記絶縁管は、当該絶縁管の外周部に、該絶縁管の軸方向に延びるスリットを備え、
前記碍管は、前記絶縁管に収容された複数のコンデンサに対して樹脂で一体に成型して形成された、
ことを特徴とする容量分圧器。
【請求項2】
前記接続穴に挿入された凸部の外周部に、シール部材が備えられた、ことを特徴とする請求項1に記載の容量分圧器。
【請求項3】
請求項1または請求項に記載の容量分圧器を備えた、ことを特徴とするコンデンサ形計器用変圧器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容量分圧器に関する。例えば、真空コンデンサ形計器用変圧器に用いられ、一次線路側端子と分圧点の間に主コンデンサである複数のコンデンサを備える容量分圧器に関する。
【背景技術】
【0002】
容量分圧器は、例えば、絶縁筒内に直列接続された複数のコンデンサを備える(例えば、特許文献1)。
【0003】
容量分圧器は、例えば、真空コンデンサ形計器用変圧器や高圧プローブ等に用いられる(例えば、特許文献2、3、非特許文献1)。真空コンデンサ形計器用変圧器は、真空コンデンサの高耐電圧により、従来の計器用変圧器(VT)より小型化することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2003-059738号公報
【文献】特開2011-054796号公報
【文献】特開2001-228180号公報
【非特許文献】
【0005】
【文献】「計器用変成器」JEC-1201-2007、株式会社 電気書院、2007年、p.75-76
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
容量分圧器において、耐電圧性能を上げるためコンデンサを直列構造とした場合、外部絶縁のために絶縁油または絶縁ガスが必要であり、小型化が困難であった。
【0007】
また、直列接続されたコンデンサが外部応力を受けて変形した場合に、コンデンサに応力が集中すると、コンデンサが破損するおそれがあった。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、容量分圧器を小型化し、容量分圧器を構成するコンデンサの破損を抑制した容量分圧器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成する本発明の容量分圧器の一態様は、
直列に接続される複数のコンデンサと、
前記直列に接続されたコンデンサの外周部に備えられる樹脂製の碍管と、
前記碍管の各端部にそれぞれ設けられる端子と、を備え、
前記コンデンサは、
絶縁筒と、
前記絶縁筒の端部にそれぞれ備えられる一対の電極と、
前記一対の電極のうちの一方の電極の前記絶縁筒外側の端面に設けられ、前記絶縁筒の軸方向に突出する凸部と、
前記一対の電極のうちの前記凸部が設けられていない側の電極に形成される接続穴と、を備え、
前記複数のコンデンサのうち隣接するコンデンサは、一方のコンデンサの凸部を、他方のコンデンサの接続穴に挿入して直列に接続され、
該直列に接続されたコンデンサの一方のコンデンサの凸部と、他方のコンデンサの接続穴の奥部と、の間に、導電性を有する弾性部材が備えられた、ことを特徴としている。
【0010】
また、上記目的を達成する本発明の容量分圧器の他の態様は、上記容量分圧器において、
前記接続穴に挿入された凸部の外周部に、シール部材が備えられた、ことを特徴としている。
【0011】
また、上記目的を達成する本発明の容量分圧器の他の態様は、上記容量分圧器において、
前記直列に接続される複数のコンデンサを収容する絶縁管を、さらに備え、
前記絶縁管は、当該絶縁管の外周部に、該絶縁管の軸方向に延びるスリットを備え、
前記碍管は、前記絶縁管に収容された複数のコンデンサに対して樹脂で一体に成型して形成された、ことを特徴としている。
【0012】
また、上記目的を達成する本発明の真空コンデンサ形計器用変圧器は、上記いずれかの容量分圧器を備えた、ことを特徴としている。
【発明の効果】
【0013】
以上の発明によれば、容量分圧器を小型化し、容量分圧器を構成するコンデンサの破損を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施形態に係る容量分圧器の概略図である。
図2】真空コンデンサの側面図である。
図3】直列接続された真空コンデンサの接続部の説明図である。
図4】(a)絶縁管の側面図、(b)絶縁管のA-A断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施形態に係る容量分圧器について、図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施形態の説明では、容量分圧器を真空コンデンサ形計器用変圧器に適用した形態を例示して説明するが、容量分圧器の用途は実施形態に限定されるものではなく、例えば、高圧プローブ等に適用することができる。
【0016】
図1に示すように、本発明の実施形態に係る容量分圧器1は、直列に接続された複数の真空コンデンサ2を備える。この直列に接続された複数の真空コンデンサ2は、真空コンデンサ形計器用変圧器3の主コンデンサとして備えられる。すなわち、容量分圧器1は、複数の真空コンデンサ2と、この真空コンデンサ2に直列接続される分圧コンデンサ4を備える。分圧コンデンサ4は、例えば、真空コンデンサやフィルムコンデンサ等である。また、主コンデンサ(直列に接続された複数の真空コンデンサ2)と分圧コンデンサ4の共通接続点には、出力端子5が接続される。図示省略しているが、分圧コンデンサ4と並列に共振リアクトルや変圧器、または電圧検出部が備えられ、これらの出力を必要な出力形態に変換する変成装置部が備えられる。
【0017】
直列に接続された複数の真空コンデンサ2は、絶縁管6内に備えられる。絶縁管6の一方の端部には高圧端子7が備えられ、絶縁管6の他方の端部には、ベース8が備えられる。高圧端子7は一次線路側に接続され、ベース8は分圧コンデンサ4に接続される。また、絶縁管6の外周部にはブッシング9が備えられる。
【0018】
ブッシング9は、例えば、絶縁管6とともにポリマー(樹脂)で成型される。したがって、ブッシング9は、絶縁管6内に充填された内部ポリマー9aと、絶縁管6の外周部に形成される碍子部ポリマー9bを備える。碍子部ポリマー9bをひだ状に形成することで、ブッシング9の外周部における沿面閃絡が防止される。ブッシング9は、例えば、シリコーン樹脂やエポキシ樹脂等のポリマー(樹脂)により形成される。
【0019】
図2に示すように、真空コンデンサ2は、例えば、高圧側電極2aとベース側電極2bを絶縁筒2cで絶縁して構成される。絶縁筒2cは、例えば、セラミック等により形成される。絶縁筒2cの一方の端部に高圧側電極2aをろう付け接合し、絶縁筒2cの他方の端部にベース側電極2bをろう付け接合して、絶縁筒2cの内部が真空状態となるように封止される。図示省略しているが、絶縁筒2c内部には、接触しない状態で対向配置される高圧側内部電極と低圧側内部電極が備えられる。高圧側内部電極は、例えば、円筒状であり高圧側電極2aの絶縁筒2c内側端面に備えられる。低圧側内部電極は、例えば、高圧側内部電極内に挿入される円筒状または棒状でありベース側電極2bの絶縁筒2c内側端面に備えられる。
【0020】
高圧側電極2aの絶縁筒2c外側端面の中央部には、絶縁筒2cの軸方向外側に突出して円筒状の凸部2dが備えられる。そして、ベース側電極2bの絶縁筒2c外側端面の中央部には接続穴2eが形成される。なお、ベース側電極2bには接続穴2eが形成されるので、ベース側電極2bは接続穴2eの深さ以上の厚みを有している。
【0021】
図3に示すように、凸部2dは、隣接する他の真空コンデンサ2の接続穴2eまたは高圧端子7に形成された接続穴(接続穴2eと同様の接続穴)に挿入される。凸部2dには、凸部2dの軸方向に延びる穴2fが形成される。この穴2fに、導電ばね10等の導電性を有する弾性部材が備えられる。導電ばね10は、凸部2dと凸部2dが挿入された接続穴2eの奥部の間に設けられ、凸部2dと凸部2dが挿入された接続穴2eの奥部の間の電気的接続を確保する。また、凸部2dの外周部には、凸部2dの外周に沿って径方向に突出する一対の保持部2gが備えられており、この保持部2g間にOリング11等のシール部材が備えられる。なお、Oリング11は、凸部2dの軸方向に並んで複数備えてもよい。
【0022】
接続穴2eは、隣接する他の真空コンデンサ2の凸部2dまたは、ベース8に備えられた凸部(凸部2dと同様の凸部)が挿入される穴である。接続穴2eの内径は、凸部2dの外径よりも大きく形成される。接続穴2eに凸部2dを挿入することで、隣接する真空コンデンサ2間(真空コンデンサ2と高圧端子7間、または真空コンデンサ2とベース8間も同様、以下同じ)が接続される。このとき、隣接する真空コンデンサ2間の高圧側電極2aとベース側電極2bはOリング11によって保持され、この真空コンデンサ2間の電気的接続は導電ばね10によって確保される。
【0023】
絶縁管6は、例えば、FRP(繊維強化プラスチック)で環状に形成された筒である。図4に示すように、絶縁管6の外周部には、絶縁管6の軸方向に延びる複数のスリット6aが形成される。絶縁管6にスリット6aを形成することで、ブッシング9のポリマー成型時にボイド等の成型不良が発生することが抑制される。
【0024】
以上のような本発明の実施形態に係る容量分圧器1によれば、直列接続した真空コンデンサ2の絶縁をポリマーで形成されたブッシング9で行うことで、容量分圧器1の小型・軽量化とメンテナンスフリー化が可能となる。
【0025】
具体的に説明すると、絶縁管6(および、絶縁管6の外周に設けられるひだを含むブッシング9)を樹脂で形成することで、セラミック等で碍子を形成した場合と比較して、容量分圧器1を軽量化することができる。また、内部に絶縁オイルやガスを充填する必要がないので、容量分圧器1の構成を簡略化することができる。
【0026】
一方で、絶縁管6(および、ブッシング9)を樹脂等で形成した場合、絶縁管6(および、ブッシング9)は熱等により伸縮する。絶縁管6(および、ブッシング9)が伸縮して真空コンデンサ2に応力が加えられると、真空コンデンサ2が破損するおそれがある。
【0027】
そこで、本発明の実施形態に係る容量分圧器1は、接続穴2eに凸部2dを挿入して真空コンデンサ2間を直列に接続することで、熱による絶縁管6(および、ブッシング9)のサイズ変化や外部から応力の影響による真空コンデンサ2の破損を防止することができる。
【0028】
また、凸部2dにOリング11を備えることで、容量分圧器1の絶縁管6の径方向の可動領域が増加する。つまり、高圧側電極2aの凸部2dの軸径をベース側電極2bの接続穴2eの穴径より小さくし、さらにOリング11等のシール部材で真空コンデンサ2間を保持する構造とすることで、ブッシング9に応力が加えられ変形した際に、真空コンデンサ2の接続部が可動し、応力が真空コンデンサ2に集中することが防止される。その結果、絶縁管6(および、ブッシング9)のサイズ変化や外部からの応力によって、真空コンデンサ2が破損することが防止される。
【0029】
また、凸部2dにOリング11を備えることで、絶縁管6内にポリマーを充填した際に、凸部2dの端面と接続穴2eの奥部の間にポリマーが入り込むことが防止される。このように、Oリング11によって、接続穴2eの内周面と凸部2dの端部とOリング11で囲まれた空間に対するポリマーの充填を防ぐことで、導電ばね10による高圧側電極2aとベース側電極2bの電気的接続をブッシング9変形時も保つことができる。
【0030】
そして、本発明の実施形態に係る容量分圧器1を、高電圧CVT(例えば、真空コンデンサ形計器用変圧器3)に適用することで、軽量且つ絶縁材の交換を不要とすることができる。また、外部応力による真空コンデンサ2の破壊を防止することができる。
【0031】
以上、具体的な実施形態を示して本発明の容量分圧器について説明したが、本発明の容量分圧器は、実施形態に限定されるものではなく、その特徴を損なわない範囲で適宜設計変更が可能であり、設計変更されたものも、本発明の技術的範囲に属する。
【0032】
例えば、真空コンデンサ2の凸部2dは、必ずしも高圧端子7側に設けることに限定されるものではなく、ベース8側に突出した凸部を設けることもできる。この場合、真空コンデンサの高圧端子側に接続穴が形成されることとなる。
【0033】
また、実施形態で説明した容量分圧器1の特徴の一部を備える形態も本発明の技術的範囲に属する。例えば、実施形態の説明では、凸部2dの外周部にOリング11を設けた例を示しているが、Oリング11は、必ずしも必要なものではなく、凸部2dを接続穴2eに摺動可能に設ける態様とすることもできる。また、コンデンサ間のジョイント部を可動な状態で支持する支持部材をOリングの代わりに用いたり、ジョイント部に空間が形成されるように絶縁管6と各真空コンデンサ2の間を固定または支持する態様としたりすることで、コンデンサの破損を防止できる。
【0034】
また、凸部2dは、円筒状だけでなく、円柱状または円柱状の端面に導電ばね10(弾性部材)が備えられる溝が形成された態様とすることもできる。
【0035】
また、実施形態の説明では、絶縁管6内に同様の真空コンデンサ2を複数収納した例を示したが、絶縁管6内に種類の異なる真空コンデンサを配置する態様とすることもできる。例えば、直列に接続された真空コンデンサの静電容量を、下段より上段が大きいようにすることで、各真空コンデンサに印加される電圧が地面の影響により不均一になることが緩和される。また、本発明の容量分圧器を構成するコンデンサは、真空コンデンサに限定されるものではなく、ガス封入コンデンサ、オイルコンデンサまたはセラミックコンデンサ等を用いることもできる。
【符号の説明】
【0036】
1…容量分圧器
2…真空コンデンサ(コンデンサ)
2a…高圧側電極(電極)、2b…ベース側電極(電極)、2c…絶縁筒
2d…凸部、2e…接続穴、2f…穴、2g…保持部
3…真空コンデンサ形計器用変圧器
4…分圧コンデンサ
5…出力端子
6…絶縁管、6a…スリット
7…高圧端子(端子)
8…ベース(端子)
9…ブッシング(碍管)
9a…内部ポリマー、9b…碍子部ポリマー
10…導電ばね(弾性部材)
11…Oリング(シール部材)
図1
図2
図3
図4