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特許7028103移動電源車および逆潮流補償用抵抗の収納構造
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-21
(45)【発行日】2022-03-02
(54)【発明の名称】移動電源車および逆潮流補償用抵抗の収納構造
(51)【国際特許分類】
   B60P 3/00 20060101AFI20220222BHJP
【FI】
B60P3/00 U
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018158819
(22)【出願日】2018-08-28
(65)【公開番号】P2020032770
(43)【公開日】2020-03-05
【審査請求日】2021-02-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000006105
【氏名又は名称】株式会社明電舎
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【弁理士】
【氏名又は名称】富岡 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100104938
【弁理士】
【氏名又は名称】鵜澤 英久
(74)【代理人】
【識別番号】100210240
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 友幸
(72)【発明者】
【氏名】川合 真ノ介
(72)【発明者】
【氏名】小野 夢樹
【審査官】川村 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-025680(JP,A)
【文献】特開平06-269102(JP,A)
【文献】実開昭58-073543(JP,U)
【文献】米国特許第6329900(US,B1)
【文献】特開平04-095539(JP,A)
【文献】特開2015-151964(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60P 3/00
H01C 1/014
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力機器を備える移動電源車であって、
前記電力機器は、抵抗を備え、
前記抵抗は、
並べて配置される複数の抵抗素子と、
前記抵抗素子間の距離の変化に応じて変形し、並設された抵抗素子間を電気的に接続する接続導体と、
前記抵抗素子の並べられた方向に伸縮可能であり、前記抵抗素子を支持する支持支柱と、を備えた、ことを特徴とする移動電源車。
【請求項2】
前記支持支柱は、前記抵抗素子にそれぞれ固定される絶縁筒を備え、
並設された抵抗素子のうち外側に配置された抵抗素子に固定された絶縁筒の内径は、この抵抗素子より中央部側に配置された抵抗素子に固定された絶縁筒の外径より大きく、前記外側に配置された抵抗素子に固定された絶縁筒に、前記中央部側に配置された抵抗素子に固定された絶縁筒の一部が挿入して設けられた、ことを特徴とする請求項1に記載の移動電源車。
【請求項3】
前記支持支柱は、前記抵抗素子に絶縁部材を介して固定される複数の分割支柱を備え、
隣り合う抵抗素子に固定された分割支柱間は、前記抵抗素子間の距離の変化に応じて変形可能な接続部材で接続された、ことを特徴とする請求項1に記載の移動電源車。
【請求項4】
前記抵抗を収納する覆いを備え、
前記覆いは、前記抵抗素子の並べられた方向に対向配置される一対の筐体を備え、
前記抵抗素子間または前記筐体間に、前記抵抗素子間または前記筐体間の距離が狭い場合にONとなり、前記抵抗素子間または前記筐体間の距離が広い場合にOFFとなる検出部を備え、
前記検出部がONの場合、前記電力機器を動作させない、ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の移動電源車。
【請求項5】
前記電力機器は、電力三相平衡補償装置を備えた、ことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の移動電源車。
【請求項6】
並べて配置される複数の抵抗素子と、
前記抵抗素子間の距離の変化に応じて変形し、並設された抵抗素子間を電気的に接続する接続導体と、
前記抵抗素子の並べたられた方向に伸縮可能であり、前記抵抗素子を支持する支持支柱と、を備え、
使用時には、前記支持支柱を伸ばして前記抵抗素子間の距離を広げ、非使用時には、前記支持支柱を縮めて前記抵抗素子間の距離を狭めた、ことを特徴とする逆潮流補償用抵抗の収納構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動電源車および逆潮流補償用抵抗の収納構造に関する。
【背景技術】
【0002】
配電線工事や非常時の電源として用いられる移動電源車に、電力三相平衡補償装置などの電力機器を搭載する技術がある(例えば、特許文献1)。
【0003】
電力三相平衡補償装置は、電源の不平衡対策、電圧変動対策、力率改善または高周波抑制などの電力品質向上を目的として備えられる(例えば、特許文献1、2)。
【0004】
近年、接続先の配電系統に太陽光パネル発電機などが設置されていることがあり、昼間時間帯で特に電力の逆潮流が起こる。
【0005】
従来は逆潮流が起こると移動電源車は発電を止める必要があったため、それを防止するために電力三相平衡補償装置の直流側に連続的に電力を吸収・消費する目的で逆潮流補償用抵抗および抵抗用チョッパ回路が備えられる。
【0006】
図11(a)に示すように、逆潮流補償用抵抗37は、複数の抵抗素子38、抵抗素子38同士を電気的に接続する接続導体39および抵抗素子38を支持する支柱40を備える。抵抗素子38は、感電防止のための覆い41で覆われる。覆い41は、放熱のためにスリットが形成された板金などが用いられる。
【0007】
抵抗素子38は、電力用途に用いられるものでは、一般的にステンレスなどの鉄系金属材料が用いられる。同様に、接続導体39も一般的に鉄系金属材料が用いられる。直列に接続された抵抗素子38の端部には、それぞれ端子部42が備えられる。端子部42には、ボルトやナットなどを用いて電線が取り付けられる。
【0008】
支柱40は、例えば、棒状の絶縁部材であり、抵抗回路部分を支え、且つ対地電位から抵抗素子38や接続導体39を絶縁する。
【0009】
なお、逆潮流補償用抵抗37では、抵抗素子38を並列接続して用いることもある。抵抗値と抵抗の定格電力に対する設計によって、抵抗素子38の直列数・並列数が変わる。また、図11(b)に示すように、抵抗素子38を鉛直方向に多段に重ねた逆潮流補償用抵抗43もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特開平06-269102号公報
【文献】特開2016-025680号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
逆潮流補償用抵抗の寸法は、抵抗素子の放熱のために抵抗素子間にスペースを要するため、移動電源車に搭載される他の機器より大きくなる。また、抵抗素子には一般的にステンレスなどの比重の大きい金属が用いられるため重量が大きくなる。
【0012】
また、従来は逆潮流がほとんどなかったため、逆潮流補償用抵抗が移動電源車には搭載されておらず、逆潮流補償用抵抗を搭載する移動電源車の車両設計は困難である。例えば、特許文献1に記載の移動電源車には、逆潮流補償機能および逆潮流を補償する回路は備えられていない。
【0013】
また、逆潮流補償用抵抗は、抵抗の寸法が大きく、移動用のスペースを確保することが困難となるおそれがある。したがって、発電機などが搭載されている移動電源車に逆潮流補償用抵抗を載せられないおそれがある。この場合、逆潮流補償用抵抗だけを積んだ別のトラックを用意し、現地にて移動電源車に搭載された電力機器と逆潮流補償用抵抗をケーブルを用いて接続することとなり、現地にてケーブル接続作業が発生する問題が生じる。また、逆潮流補償用抵抗を備えた電力三相平衡補償装置をトラックで運ぶ場合でも、車両寸法が大きい特別なトラックを用いる必要が生じるおそれがある。
【0014】
なお、特許文献2では、電力三相平衡補償装置に電力吸収用抵抗およびスイッチング回路が備えられている。しかし、電力吸収用抵抗は、あくまでも急峻な負荷変動を補償する用途に用いられるものである。つまり、電力吸収用抵抗は、連続的に電力を吸収する目的で備えられるものではないので、抵抗もそれほど大形とする必要はなく、移動電源車への収納が問題になるほどの大きさではない。ゆえに、特許文献2では、電力吸収用抵抗の収納について言及されていない。
【0015】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、非使用時の設置スペースを低減可能な逆潮流補償用抵抗を備えた移動電源車および逆潮流補償用抵抗の収納構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記目的を達成する本発明の移動電源車の一態様は、
電力機器を備える移動電源車であって、
前記電力機器は、抵抗を備え、
前記抵抗は、
並べて配置される複数の抵抗素子と、
前記抵抗素子間の距離の変化に応じて変形し、並設された抵抗素子間を電気的に接続する接続導体と、
前記抵抗素子の並べられた方向に伸縮可能であり、前記抵抗素子を支持する支持支柱と、を備えた、ことを特徴としている。
【0017】
また、上記目的を達成する本発明の移動電源車の他の態様は、上記の移動電源車において、
前記支持支柱は、前記抵抗素子にそれぞれ固定される絶縁筒を備え、
並設された抵抗素子のうち外側に配置された抵抗素子に固定された絶縁筒の内径は、この抵抗素子より中央部側に配置された抵抗素子に固定された絶縁筒の外径より大きく、前記外側に配置された抵抗素子に固定された絶縁筒に、前記中央部側に配置された抵抗素子に固定された絶縁筒の一部が挿入して設けられた、ことを特徴としている。
【0018】
また、上記目的を達成する本発明の移動電源車の他の態様は、上記の移動電源車において、
前記支持支柱は、前記抵抗素子に絶縁部材を介して固定される複数の分割支柱を備え、
隣り合う抵抗素子に固定された分割支柱間は、前記抵抗素子間の距離の変化に応じて変形可能な接続部材で接続された、ことを特徴としている。
【0019】
また、上記目的を達成する本発明の移動電源車の他の態様は、上記の移動電源車において、
前記抵抗を収納する覆いを備え、
前記覆いは、前記抵抗素子の並べられた方向に対向配置される一対の筐体を備え、
前記抵抗素子間または前記筐体間に、前記抵抗素子間または前記筐体間の距離が狭い場合にONとなり、前記抵抗素子間または前記筐体間の距離が広い場合にOFFとなる検出部を備え、
前記検出部がONの場合、前記電力機器を動作させない、ことを特徴としている。
【0020】
また、上記目的を達成する本発明の移動電源車の他の態様は、上記の移動電源車において、
前記電力機器は、電力三相平衡補償装置を備えた、ことを特徴としている。
【0021】
また、上記目的を達成する本発明の逆潮流補償用抵抗の収納構造は、
並べて配置される複数の抵抗素子と、
前記抵抗素子間の距離の変化に応じて変形し、並設された抵抗素子間を電気的に接続する接続導体と、
前記抵抗素子の並べたられた方向に伸縮可能であり、前記抵抗素子を支持する支持支柱と、を備え、
使用時には、前記支持支柱を伸ばして前記抵抗素子間の距離を広げ、非使用時には、前記支持支柱を縮めて前記抵抗素子間の距離を狭めた、ことを特徴としている。
【発明の効果】
【0022】
以上の発明によれば、非使用時の逆潮流補償用抵抗の設置スペースを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の第1実施形態に係る移動電源車が適用されたシステムの一例を示すシステム構成図である。
図2】本発明の第1実施形態に係る移動電源車の逆潮流補償用抵抗の概略を示す図であり、(a)移動時の状態を示す図、(b)移動時の支持支柱の詳細を示す拡大断面図、(c)支持支柱の抵抗素子貫通部分の断面図である。
図3】本発明の第1実施形態に係る移動電源車の逆潮流補償用抵抗の概略を示す図であり、(a)使用時の状態を示す図、(b)使用時の支持支柱の詳細を示す拡大断面図である。
図4】(a)絶縁筒と抵抗素子の固定状態を示す断面図、(b)絶縁筒と抵抗素子の固定状態を支持支柱の軸方向から見た図である。
図5】本発明の第1実施形態に係る移動電源車の概略を示す図であり、(a)移動時の逆潮流補償用抵抗の状態を示す図、(b)逆潮流補償用抵抗の使用時の状態を示す図である。
図6】本発明の第2実施形態に係る移動電源車の逆潮流補償用抵抗の概略を示す図であり、(a)移動時の状態を示す図、(b)移動時の支持支柱の詳細を示す拡大断面図、(c)抵抗素子に備えられた分割支柱の断面図である。
図7】本発明の第2実施形態に係る移動電源車の逆潮流補償用抵抗の概略を示す図であり、(a)使用時の状態を示す図、(b)使用時の支持支柱の詳細を示す拡大断面図である。
図8】本発明の第3実施形態に係る移動電源車の逆潮流補償用抵抗の概略を示す図であり、(a)移動時の状態を示す図、(b)使用時の状態を示す図である。
図9】抵抗素子間に設けられたボタンスイッチを説明する図であり、(a)スイッチがONの状態を示す図、(b)スイッチがOFFの状態を示す図である。
図10】筐体に設けられたボタンスイッチを説明する図であり、(a)スイッチがONの状態を示す図、(b)スイッチがOFFの状態を示す図である。
図11】従来技術に係る逆潮流補償用抵抗を示す図であり、(a)抵抗素子が水平方向に重ねられた逆潮流補償用抵抗を示す図、(b)抵抗素子が垂直方向に重ねられた逆潮流補償用抵抗を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の実施形態に係る移動電源車および逆潮流補償用抵抗の収納構造について、図面に基づいて詳細に説明する。
【0025】
まず、図1に基づいて、本発明の第1実施形態に係る移動電源車1のシステム構成について説明する。なお、本発明の実施形態に係る移動電源車および逆潮流補償用抵抗の収納構造が適用されるシステムは、図1に示した回路構成を有するシステムに限定されるものではなく、逆潮流補償用抵抗を移動して用いる用途全般に適用可能である。
【0026】
移動電源車1は、発電機2、発電制御装置3および電力三相平衡補償装置4を備え、これらの装置(例えば、図中点線で囲まれた範囲に示す装置)はトラックに搭載される。
【0027】
発電機2には、軸カップリング5を介してエンジン6が接続される。軸カップリング5は、発電機2とエンジン6を機械的に接続し、軸カップリング5によりエンジン6の動力が発電機2に伝えられる。
【0028】
電力三相平衡補償装置4は、三相交流直流電力変換器7、抵抗用チョッパ回路8、逆潮流補償用抵抗9およびフィルタ回路10を備える。抵抗用チョッパ回路8は、電力を逆潮流補償用抵抗9に吸収させる際に動作する回路である。
【0029】
移動電源車1は、発電機2から必要な電力を配線系統に供給し、供給された電力が一般需要家11に供給される。一般需要家11では、供給された電力が単相電源として用いられるので、発電機2の出力が不平衡になるのを平衡化するために電力三相平衡補償装置4が備えられる。
【0030】
図1では、一般需要家11が一つしか図示されていないが、一般需要家11は、家屋の分だけ並列接続される。一般需要家11は、太陽光パネル発電機12を備える。太陽光パネル発電機12は、太陽光発電用電力変換器13や図示していない高周波除去フィルタを介して配線系統に接続される。また、需要家負荷14は、家庭用電源降圧用変圧器15を介して配線系統に接続される。家庭用電源降圧用変圧器15により、系統の3相電力は、家庭用単相にされながら家庭用電源電圧に降圧される。ここでは、一般需要家11に太陽光パネル発電機12が備えられた例を示しているが、直流電源は、太陽光パネル発電機12に限定されるものではない。また、必ずしもすべての一般需要家11が太陽光パネル発電機12などの直流電源を備えるものではない。
【0031】
移動電源車1の電源を接続する際、一般需要家11と商用電源16の間に備えられた配電切断用遮断器17(開閉器)の前後にバイパス回路が配線される。その後、移動電源車1のバイパス用遮断器18(開閉器)を投入し、エンジン6、発電機2、電力三相平衡補償装置4などの発電システムが起動される。そして、連系用遮断器19を投入した後、配電切断用遮断器17を開放して移動電源車1から一般需要家11への給電が開始される。復旧時は、移動電源車1の電源を接続する手順と逆の手順がとられる。
【0032】
次に、移動電源車1に備えられた逆潮流補償用抵抗9の収納構造について説明する。
【0033】
図2に示すように、逆潮流補償用抵抗9は、複数の抵抗素子20、複数の抵抗素子20間を電気的に接続する接続導体21および抵抗素子20を支持する支持支柱22を備える。抵抗素子20は、感電防止のための覆い23で覆われる。覆い23は、例えば、開口部を有する一対の筐体23a、23bを備え、一方の筐体23aをもう一方の筐体23bに差し込んで備えられる。覆い23の外部表面には、取っ手(図示せず)が取り付けられており、覆い23の長さ(筐体23a、23b間の距離)が伸縮可能となっている。
【0034】
抵抗素子20は、電力用途に用いられるものでは、一般的にステンレスなどの鉄系金属材料が用いられる。抵抗素子20は、逆潮流補償用抵抗9の伸縮方向に並べて備えられる。直列に接続された抵抗素子20の端部には、それぞれ端子部24が備えられる。端子部24には、ボルトやナットなどを用いて電線が取り付けられる。抵抗素子20の直列数・並列数は、抵抗値と定格電力に対する設計によって適宜選択される。
【0035】
接続導体21は、例えば、メッシュ状の導体(可とう性のある編線)が用いられる。接続導体21は、抵抗素子20間の距離の変化に応じて変形し、並設された抵抗素子20間を電気的に接続する。接続導体21は、例えば、抵抗素子20と同様の鉄系金属材料や銅などにより形成される。なお、接続導体21は、変形可能で、電気回路の導体として適用可能な部材であれば、メッシュ状の導体に限定されるものではない。
【0036】
支持支柱22は、径の異なる複数の絶縁筒22aを備え、抵抗回路部分を支え、対地電位から抵抗素子20や接続導体21を絶縁する。支持支柱22は、例えば、径の異なる複数の絶縁筒22aが、一部が重なるように同軸に配置された構造(いわゆる、アンテナ状の伸縮機構)を備え、抵抗素子20の並んだ方向に伸縮可能となっている。支持支柱22の両端部に配置される絶縁筒22aの端部は、それぞれ覆い23に固定されており、覆い23の伸縮と同時に支持支柱22が軸方向に伸縮する。支持支柱22の形状は、伸縮可能であるものならば、実施形態に限定されるものではない。
【0037】
図2(b)に示すように、絶縁筒22aは、抵抗素子20にそれぞれ固定される。絶縁筒22aは、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)などの高強度の絶縁体で形成される。中央部に配置された抵抗素子20に固定された絶縁筒22aの径が最も小さく、外側に配置された抵抗素子20に固定された絶縁筒22aの径は、外側に行くにしたがってより大きくなる。すなわち、並設された抵抗素子20のうち外側に配置された抵抗素子20に固定された絶縁筒22aの内径は、この抵抗素子20より中央部側に配置された抵抗素子20に固定された絶縁筒22aの外径よりも大きい。また、中央部に配置された抵抗素子20に設けられた絶縁筒22aは、抵抗素子20の両側に延在するように備えられ、他の抵抗素子20に設けられた絶縁筒22aは、抵抗素子20から外側方向に延在するように備えられる。抵抗素子20から延在した絶縁筒22aの端部の外周部には係止部22bが備えられる。また、中央部に備えられた絶縁筒22aを除く他の絶縁筒22aは、係止部22bが備えられた端部と反対側の端部の内周側に、隣り合って備えられる他の絶縁筒22aの係止部22bと係わり合って止まる係止部22cが備えられる。
【0038】
これにより、逆潮流補償用抵抗9を収納する際には、覆い23の幅を狭めることで、内側(中央部側)の抵抗素子20に備えられた絶縁筒22aが、外側に隣り合って備えられる抵抗素子20に固定された絶縁筒22a内に挿入されることで、隣り合って備えられた抵抗素子20間の距離が短くなるように収納される。一方、図3に示すように、逆潮流補償用抵抗9を使用する際(すなわち、電力三相平衡補償装置4を通電動作させる際)には、覆い23の幅を広げることで、絶縁筒22aの他の絶縁筒22aに挿入された部分が引き出され、支持支柱22の長さが長くなる。そして、隣り合って備えられた絶縁筒22aの係止部22b、22cが係止することで、隣り合って備えられた抵抗素子20間の距離が確保される。
【0039】
図4に示すように、絶縁筒22aは、抵抗素子20を貫通して設けられる。絶縁筒22aは、例えば、固定金具25を用いて抵抗素子20に固定される。固定金具25は、抵抗素子20を挟み込むように一対備えられ、ねじ26により絶縁筒22aに固定される。
【0040】
図5に示すように、逆潮流補償用抵抗9は、例えば、移動電源車1の荷台27内に備えられる。逆潮流補償用抵抗9は、例えば、移動電源車1の進行方向に抵抗素子20が並ぶように配置される。この場合、逆潮流補償用抵抗9は、移動電源車1の直進方向と平行な方向に伸縮する。図5(a)に示すように、移動電源車1を移動させる際には、逆潮流補償用抵抗9は縮めた状態で荷台27に実装される。移動電源車1から電力を供給する際(すなわち、逆潮流補償用抵抗9に通電する際)には、図5(b)に示すように、荷台27のドアを開放して、荷台27後ろ方向に逆潮流補償用抵抗9を引き伸ばす。この時、逆潮流補償用抵抗9の下に、逆潮流補償用抵抗9を支える構造体28を備えてもよい。また、覆い23には、逆潮流補償用抵抗9を伸ばしたときに、逆潮流補償用抵抗9が縮むことを防止するストッパ機構(図示せず)が設けられる。ストッパ機構としては、例えば、筐体23a、23b(または、覆い23と移動電源車1の荷台27)のそれぞれに、逆潮流補償用抵抗9を伸ばしたときに重なり合う貫通穴(図示せず)を形成し、重なり合った貫通穴に棒状の杭を差し込むことにより、逆潮流補償用抵抗9が縮むことを防止する機構などが用いられる。また、覆い23をストッパ機構によって移動電源車1の荷台27にロックさせることによって、電源供給中(逆潮流補償用抵抗9への通電中)に、逆潮流補償用抵抗9が縮むことが防止される。
【0041】
以上のような、本発明の第1実施形態に係る移動電源車1によれば、移動電源車1の走行時などの電力三相平衡補償装置4に通電を行わない状態(すなわち、逆潮流補償用抵抗9に通電しない状態)では、抵抗素子20同士が密着しても良いので、支持支柱22を縮めておき、逆潮流補償用抵抗9の寸法が極力小さくなる状態とすることができる。
【0042】
本発明の第2実施形態に係る移動電源車および逆潮流補償用抵抗の収納構造について、図6、7に基づいて詳細に説明する。第2実施形態に係る移動電源車は、逆潮流補償用抵抗29の収納構造が第1実施形態に係る移動電源車1と異なる。よって、第2実施形態に係る移動電源車の説明において、第1実施形態に係る移動電源車1と同様の構成については同じ符号を付して詳細な説明を省略し、異なる部分について詳細に説明する。
【0043】
本発明の第2実施形態に係る移動電源車のシステム構成は、図1で示したシステム構成図と同様である。第2実施形態に係る移動電源車は、図6に示すような、逆潮流補償用抵抗29を備える。
【0044】
図6に示すように、逆潮流補償用抵抗29は、複数の抵抗素子20、複数の抵抗素子20間を電気的に接続する接続導体21および抵抗素子20を支持する支持支柱30を備える。支持支柱30は、抵抗素子20にそれぞれ固定される分割支柱31を備える。抵抗素子20は、感電防止のための覆い23で覆われる。
【0045】
分割支柱31は、例えば、金属であり、抵抗素子20を挿通して設けられる。抵抗素子20の分割支柱31貫通部には、ゴムなどの絶縁部材32が備えられ、絶縁部材32を介して抵抗素子20に分割支柱31が固定される。具体的に説明すると、抵抗素子20には、円形状の孔20aが形成されており、この孔20aの内側にリング状の絶縁部材32が設けられる。さらに、絶縁部材32の内側に分割支柱31が備えられ、抵抗素子20に分割支柱31が固定される。隣り合って備えられる分割支柱31間には、それぞれ蝶番33などの折り曲げ可能な接続部材が設けられる。蝶番33は、例えば、上下または左右に一対設けられ、ねじなどにより分割支柱31に固定される。これにより、抵抗素子20を支える分割支柱31間が蝶番33によって接続され、逆潮流補償用抵抗29の伸縮が可能となる。なお、接続部材は、蝶番33に限定されるものではなく、抵抗素子20間の距離の変化に応じて変形可能な部材が適宜用いられる。
【0046】
逆潮流補償用抵抗29を収納する際には、覆い23の幅を狭くすることで、蝶番33の羽根が重なるように変形することで、隣り合って備えられた抵抗素子20間の距離が短くなるように収納される。一方、図7に示すように、逆潮流補償用抵抗29を使用する際には、覆い23の幅を広げることで、蝶番33の羽根が広がり、隣り合って備えられた抵抗素子20間の距離が長くなる。
【0047】
以上のような、本発明の第2実施形態に係る移動電源車によれば、分割支柱31を抵抗素子20に固定し、分割支柱31間を蝶番33で接続することで、逆潮流補償用抵抗29が伸縮可能となる。その結果、第1実施形態に係る移動電源車1と同様に、抵抗素子20間の距離を縮めておき、逆潮流補償用抵抗29の寸法が極力小さくなる状態とすることができる。
【0048】
本発明の第3実施形態に係る移動電源車および逆潮流補償用抵抗の収納構造について、図8図10を参照して詳細に説明する。第3実施形態に係る移動電源車は、第1実施形態に係る移動電源車1の逆潮流補償用抵抗9または第2実施形態に係る移動電源車の逆潮流補償用抵抗29に、逆潮流補償用抵抗9、29が縮んだ状態であるか、伸びた状態であるかを検知する検出部を設けたものである。よって、第3実施形態に係る移動電源車の説明において、第1実施形態に係る移動電源車1と同様の構成については同じ符号を付して詳細な説明を省略し、検出部について詳細に説明する。
【0049】
図8に示すように、逆潮流補償用抵抗34は、検出部であるボタンスイッチ35、36を備える。ボタンスイッチ35、36は、隣り合う抵抗素子20の間、または、覆い23(例えば、筐体23aの端部と向かい合う筐体23bの奥面)に設けられる。ボタンスイッチ35、36を複数設ける場合、ボタンスイッチ35、36は、抵抗素子20間または覆い23のいずれか、若しくは抵抗素子20間と覆い23の両方に備えられる。また、逆潮流補償用抵抗34の伸縮状態を検知できるものであれば、検出部としてボタンスイッチ35、36以外の装置を用いることもできる。また、実施形態の説明では、逆潮流補償用抵抗34が縮んだ状態を検出しているが、接点スイッチなどを用いて、逆潮流補償用抵抗34が伸びた状態であることを検出する態様とすることもできる。
【0050】
図9に示すように、抵抗素子20間にボタンスイッチ35を設けた場合、逆潮流補償用抵抗34が縮んだ状態では、抵抗素子20間の間隔が狭くなり、ボタンスイッチ35のボタン35aが押された状態となる。そして、逆潮流補償用抵抗34が伸びた状態では、抵抗素子20間の間隔が広がり、ボタンスイッチ35のボタンが押されていない状態になる。
【0051】
ボタンスイッチ35のON/OFF状態信号は、移動電源車の制御装置(図示せず)に入力され、ボタンスイッチ35のボタン35aが押されている状態では、エンジン6、発電機2、電力三相平衡補償装置4などの電力機器が動作しないようにする機構(インターロック)が備えられる。なお、ボタンスイッチ35のボタン35aが押されている状態では、移動電源車の連系用遮断器19(開閉器)が閉路しないようにする機構(インターロック)を備える態様とすることもできる。また、ボタンスイッチ35(およびボタンスイッチ36)を複数設けた場合は、少なくとも1つのボタンスイッチ35(およびボタンスイッチ36)において、ボタン35a、36aが押されている状態を検出した場合に、発電および不平衡補償動作のための電力機器が動作しないようにインターロックが組まれる。
【0052】
図10に示すように、覆い23内にボタンスイッチ36を設けた場合、逆潮流補償用抵抗34が縮んだ状態では、筐体23aの端部と筐体23bの奥面の間隔が狭くなり、ボタンスイッチ36のボタン36aが押された状態となる。そして、逆潮流補償用抵抗34が伸びた状態では、筐体23aの端部と筐体23bの奥面の間隔が広がり、ボタンスイッチ36のボタン36aが押されていない状態になる。
【0053】
ボタンスイッチ36のON/OFFの状態信号は、移動電源車の制御装置(図示せず)に入力される。ボタンスイッチ36のボタン36aが押されている状態における移動電源車の動作は、抵抗素子20間にボタンスイッチ35を設けた場合と同様である。
【0054】
以上のような本発明の第1~第3実施形態に係る移動電源車および逆潮流補償用抵抗の収納構造によれば、複数の抵抗素子20を備え、抵抗素子20間を伸縮可能な支持支柱22(または、支持支柱30)で支持することで、逆潮流補償用抵抗9(逆潮流補償用抵抗29、34も同様である。以下同じ)が伸縮可能となる。逆潮流補償用抵抗9が伸縮機能を備えることで、移動時などの非使用時における逆潮流補償用抵抗9の設置スペースを低減することができる。その結果、荷台の大きい特別なトラックを用いなくとも、逆潮流補償用抵抗9を備えた電力三相平衡補償装置4、発電機2、発電制御装置3、エンジン6などを1台の移動電源車の荷台に収納できるようになる。また、逆潮流補償用抵抗9だけを積んだ別のトラックを用意して現地にて移動電源車とケーブルを用いて接続する作業が不要となるため、非常電源供給時の作業性が向上する。
【0055】
また、覆い23と荷台27との間に、ストッパ機構を設けることで、通電中に抵抗素子20間の距離が縮むことが防止される。万が一、抵抗素子20間の距離が縮んだ状態で移動電源車1が電源供給して、電力三相平衡補償装置4が動作すると、抵抗素子20が密着して逆潮流補償用抵抗9の抵抗値が変わってしまい、電力三相平衡補償装置4の過電流や過電圧保護が動作してしまうおそれや、放熱できずに抵抗素子20が焼損してしまうおそれがあるが、ストッパ機構を設けることで、電力三相平衡補償装置4の過電流や過電圧保護が動作することが防止され、抵抗素子20の焼損が防止される。
【0056】
さらに、第3実施形態に係る移動電源車のように、逆潮流補償用抵抗34が縮んだ状態または伸びた状態を検出する検出部(例えば、ボタンスイッチ35、36)を備えることで、万が一ストッパ機構に故障が発生した場合でも、逆潮流補償用抵抗34の安全性を担保することができる。
【0057】
以上、具体的な実施形態を示して本発明の移動電源車および逆潮流補償用抵抗の収納構造について説明したが、本発明の移動電源車および逆潮流補償用抵抗の収納構造は、実施形態に限定されるものではなく、その特徴を損なわない範囲で適宜設計変更が可能であり、設計変更されたものも、本発明の技術的範囲に属する。
【0058】
例えば、実施形態では、移動電源車の直進方向と平行方向に逆潮流補償用抵抗を伸縮させているが、移動電源車の直進方向と垂直方向に逆潮流補償用抵抗を伸縮させる態様とすることもできる。
【0059】
また、逆潮流補償用抵抗は、必ずしも移動電源車に搭載する態様に限定するものではなく、逆潮流補償用抵抗だけを積んだ別のトラックに搭載する際にも、逆潮流補償用抵抗の設置スペースを低減することができる。
【符号の説明】
【0060】
1…移動電源車、2…発電機、3…発電制御装置
4…電力三相平衡補償装置、5…軸カップリング、6…エンジン
7…三相交流直流電力変換器、8…抵抗用チョッパ回路
9、29、34…逆潮流補償用抵抗(抵抗)、10…フィルタ回路
11…一般需要家、12…太陽光パネル発電機、13…太陽光発電用電力変換器
14…需要家負荷、15…家庭用電源降圧用変圧器、16…商用電源
17…配電切断用遮断器、18…バイパス用遮断器、19…連系用遮断器
20…抵抗素子、20a…孔、21…接続導体
22…支持支柱、22a…絶縁筒、22b、22c…係止部
23…覆い、23a、23b…筐体
24…端子部、25…固定金具、26…ねじ、27…荷台、28…構造体
30…支持支柱、31…分割支柱、32…絶縁部材、33…蝶番(接続部材)
35、36…ボタンスイッチ(検出部)、35a、36a…ボタン
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11