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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-21
(45)【発行日】2022-03-02
(54)【発明の名称】内燃機関用ピストン
(51)【国際特許分類】
   F02F 3/22 20060101AFI20220222BHJP
   F01P 3/10 20060101ALI20220222BHJP
   F16J 1/08 20060101ALI20220222BHJP
【FI】
F02F3/22 A
F01P3/10 A
F16J1/08
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018188103
(22)【出願日】2018-10-03
(65)【公開番号】P2020056371
(43)【公開日】2020-04-09
【審査請求日】2021-01-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】特許業務法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 圭介
【審査官】二之湯 正俊
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-232589(JP,A)
【文献】特表2011-524958(JP,A)
【文献】特開2018-119492(JP,A)
【文献】特開2005-48650(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02F 3/22
F01P 3/10
F16J 1/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関用のピストンであって、
前記ピストンの内部には、冷却用オイルを流通させるオイル通路が形成されており、
前記オイル通路は、
オイルを流入させる流入口と流出させる流出口を有し、前記ピストンの周方向に形成されており、
シリンダ内における前記ピストンを往復移動させるストローク方向において、前記オイル通路に対して前記ピストンのヘッド側の方向を上方向とし、反対側の方向を下方向とした場合、
前記オイル通路の内側壁面には、前記流出口側に向かって傾斜するように下から上に線状に伸びる第1凹部又は第1凸部と、前記流出口側に向かって傾斜するように上から下に線状に伸びる第2凹部又は第2凸部と、の少なくとも一方が設けられ、
前記第1凹部及び前記第1凸部は、前記オイル通路の中心軸線を通り、前記ストローク方向に直交する平面で上下に分割した場合における前記オイル通路の前記ストローク方向上側となる内側壁面である第1オイル誘導面にのみ設けられるものであり
前記第2凹部及び前記第2凸部は、前記オイル通路の前記中心軸線を通り、前記ストローク方向に直交する平面で上下に分割した場合における前記オイル通路の前記ストローク方向下側となる内側壁面である第2オイル誘導面にのみ設けられるものである
内燃機関用ピストン。
【請求項2】
内燃機関用のピストンであって、
前記ピストンの内部には、冷却用オイルを流通させるオイル通路が形成されており、
前記オイル通路は、
オイルを流入させる流入口と流出させる流出口を有し、前記ピストンの周方向に形成されており、
シリンダ内における前記ピストンを往復移動させるストローク方向において、前記オイル通路に対して前記ピストンのヘッド側の方向を上方向とし、反対側の方向を下方向とした場合、
前記オイル通路の中心軸線を通り、前記ストローク方向に直交する平面で上下に分割した場合における前記オイル通路の前記ストローク方向上側となる内側壁面である第1オイル誘導面の少なくとも一部に前記流出口側に向かって傾斜するように下から上に線状に伸びる第1凹部又は第1凸部と、
前記オイル通路の前記中心軸線を通り、前記ストローク方向に直交する平面で上下に分割した場合における前記オイル通路の前記ストローク方向下側となる内側壁面である第2オイル誘導面の少なくとも一部に前記流出口側に向かって傾斜するように上から下に線状に伸びる第2凹部又は第2凸部と、
の少なくとも一方が設けられており
前記第1凹部、又は前記第1凸部は、
前記オイル通路の前記中心軸線を通り、前記ストローク方向に平行な円筒面で分割した場合の前記第1オイル誘導面における前記ピストンの径方向内側の面と、
前記オイル通路の前記中心軸線を通り、前記ストローク方向に平行な円筒面で分割した場合の前記第1オイル誘導面における前記ピストンの径方向外側の面と、
に設けられており、
前記第2凹部、又は前記第2凸部は、
前記オイル通路の前記中心軸線を通り、前記ストローク方向に平行な円筒面で分割した場合の前記第2オイル誘導面における前記ピストンの径方向内側の面と、
前記オイル通路の前記中心軸線を通り、前記ストローク方向に平行な円筒面で分割した場合の前記第2オイル誘導面における前記ピストンの径方向外側の面と、
に設けられている、
内燃機関用ピストン。
【請求項3】
内燃機関用のピストンであって、
前記ピストンの内部には、冷却用オイルを流通させるオイル通路が形成されており、
前記オイル通路は、
オイルを流入させる流入口と流出させる流出口を有し、前記ピストンの周方向に形成されており、
シリンダ内における前記ピストンを往復移動させるストローク方向において、前記オイル通路に対して前記ピストンのヘッド側の方向を上方向とし、反対側の方向を下方向とした場合、
前記オイル通路の中心軸線に直交する前記オイル通路の断面は長円であり、かつ、前記長円の長径の方向は前記ストローク方向に対して傾いており、
前記オイル通路の内側壁面には、前記流出口側に向かって傾斜するように下から上に線状に伸びる第1凹部又は第1凸部と、前記流出口側に向かって傾斜するように上から下に線状に伸びる第2凹部又は第2凸部と、の少なくとも一方が設けられ、
前記第1凹部及び前記第1凸部は、前記オイル通路の前記中心軸線を通り、前記中心軸線を通る前記長径を母線とする円錐面で上下に分割した場合における前記オイル通路の前記ストローク方向上側となる内側壁面である第1オイル誘導面にのみ設けられるものであり、
前記第2凹部及び前記第2凸部は、前記オイル通路の前記中心軸線を通り、前記中心軸線を通る前記長径を母線とする円錐面で上下に分割した場合における前記オイル通路の前記ストローク方向下側となる内側壁面である第2オイル誘導面にのみ設けられるものである、
内燃機関用ピストン。
【請求項4】
請求項3に記載の内燃機関用ピストンであって、
前記第1凹部と前記第2凹部、又は、前記第1凸部と前記第2凸部は、
連続する螺旋状とされて一体的に形成されている、
内燃機関用ピストン。
【請求項5】
請求項4に記載の内燃機関用ピストンであって、
前記第1凸部及び前記第2凸部は、前記ピストンとは別部材とされた螺旋状部材にて構成されており、
前記螺旋状部材が、前記オイル通路に配置されている、
内燃機関用ピストン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関用ピストンに関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関において、ピストンを冷却するため、オイルを流通させるオイル通路が設けられているピストンの構造が知られている。ここで、ピストンのオイル通路におけるオイルの冷却効果を向上させるため、種々の方法が提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1に記載の内燃機関用ピストンは、図18に示すように、ピストン本体110(ピストンに相当)にオイルを流通させ冷却する冷却空洞120(オイル通路に相当)が設けられている。冷却空洞120は、入口通路212の開口(流入口に相当)側から出口通路214の開口(流出口に相当)側へ向けて徐々に大きく(断面積を大きく)なるように設けられ、冷却空洞120内を流れるオイルの圧力損失を低減して、オイルの流量を増大させている。
【0004】
また、冷却空洞120は、ピストン本体110が上下に移動する方向に対して、冷却空洞120の下側を入口通路212の開口側から出口通路214の開口側へ向けて下方に傾斜させ、冷却空洞120内のオイルを出口通路214の方向へと積極的に移動させている。これにより、ピストン本体110の冷却空洞120におけるオイルの流量が増大し、ピストン本体110における冷却効果は向上される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2005-48650号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の内燃機関用ピストンにおいて、冷却空洞120内のオイルは、冷却空洞120内に隙間なく充填されているわけではない。オイルは、ピストンが上方に向かって移動中の場合、冷却空洞120内の下端部に溜まっており、ピストンが下方に向かって移動中の場合、冷却空洞120内の上端部に溜まっている。つまり、ピストンの上下運動に応じて、冷却空洞120内のオイルも、上端部と下端部の間で移動する。
【0007】
このオイルの移動の運動エネルギーは、冷却空洞120内における上下移動の運動エネルギーであって、特許文献1では、冷却空洞120内において入口通路212から出口通路214に向かう運動エネルギーとして利用されていない。
【0008】
オイルが冷却空洞120内の上端部から下端部に移動した場合、オイルが得た運動エネルギーは、下端部への衝突と攪拌によってほとんどが失われ、オイルは下端部に溜まる。同様にオイルが冷却空洞120内の下端部から上端部へ移動した場合、オイルが得た運動エネルギーは、上端部への衝突と攪拌によってほとんどが失われ、オイルは上端部に溜まる(上下方向の運動エネルギーは、入口通路212から出口通路214に向かう運動エネルギーとして利用されていない。)。
【0009】
特許文献1では、ピストンが上方に向かって移動している際、冷却空洞120内の下端部に押し付けられたオイルを、冷却空洞120内の下側の傾斜に沿って入口通路212から出口通路214に向かう方向に移動させている。
【0010】
このように、特許文献1では、冷却空洞120内で上下に移動しているオイルの運動エネルギーを、入口通路212から出口通路214に向かう方向に移動する運動エネルギーとして有効利用していないので、冷却空洞120内のオイルを、より効率良く入口通路212から出口通路214に向かう方向に移動させることができない。
【0011】
本発明は、このような点に鑑みて創案されたものであり、内燃機関のピストンにおいて、ピストンのシリンダ内における往復運動に伴うオイルの運動エネルギーをオイル通路内における流入口から流出口へ移動する運動エネルギーに効率良く変換できる内燃機関用ピストンを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するため、第1の発明は、内燃機関用のピストンであって、前記ピストンの内部には、冷却用オイルを流通させるオイル通路が形成されており、前記オイル通路は、オイルを流入させる流入口と流出させる流出口を有し、前記ピストンの周方向に形成されており、シリンダ内における前記ピストンを往復移動させるストローク方向において、前記オイル通路に対して前記ピストンのヘッド側の方向を上方向とし、反対側の方向を下方向とした場合、前記オイル通路の内側壁面には、前記流出口側に向かって傾斜するように下から上に線状に伸びる第1凹部又は第1凸部と、前記流出口側に向かって傾斜するように上から下に線状に伸びる第2凹部又は第2凸部と、の少なくとも一方が設けられ、前記第1凹部及び前記第1凸部は、前記オイル通路の中心軸線を通り、前記ストローク方向に直交する平面で上下に分割した場合における前記オイル通路の前記ストローク方向上側となる内側壁面である第1オイル誘導面にのみ設けられるものであり、前記第2凹部及び前記第2凸部は、前記オイル通路の前記中心軸線を通り、前記ストローク方向に直交する平面で上下に分割した場合における前記オイル通路の前記ストローク方向下側となる内側壁面である第2オイル誘導面にのみ設けられるものである、内燃機関用ピストンである。
【0013】
本発明の第2の発明は、燃機関用ピストンであって、前記ピストンの内部には、冷却用オイルを流通させるオイル通路が形成されており、前記オイル通路は、オイルを流入させる流入口と流出させる流出口を有し、前記ピストンの周方向に形成されており、シリンダ内における前記ピストンを往復移動させるストローク方向において、前記オイル通路に対して前記ピストンのヘッド側の方向を上方向とし、反対側の方向を下方向とした場合、前記オイル通路の中心軸線を通り、前記ストローク方向に直交する平面で上下に分割した場合における前記オイル通路の前記ストローク方向上側となる内側壁面である第1オイル誘導面の少なくとも一部に前記流出口側に向かって傾斜するように下から上に線状に伸びる第1凹部又は第1凸部と、前記オイル通路の前記中心軸線を通り、前記ストローク方向に直交する平面で上下に分割した場合における前記オイル通路の前記ストローク方向下側となる内側壁面である第2オイル誘導面の少なくとも一部に前記流出口側に向かって傾斜するように上から下に線状に伸びる第2凹部又は第2凸部と、の少なくとも一方が設けられており、前記第1凹部、又は前記第1凸部は、前記オイル通路の前記中心軸線を通り、前記ストローク方向に平行な円筒面で分割した場合の前記第1オイル誘導面における前記ピストンの径方向内側の面と、前記オイル通路の前記中心軸線を通り、前記ストローク方向に平行な円筒面で分割した場合の前記第1オイル誘導面における前記ピストンの径方向外側の面と、に設けられており、前記第2凹部、又は前記第2凸部は、前記オイル通路の前記中心軸線を通り、前記ストローク方向に平行な円筒面で分割した場合の前記第2オイル誘導面における前記ピストンの径方向内側の面と、前記オイル通路の前記中心軸線を通り、前記ストローク方向に平行な円筒面で分割した場合の前記第2オイル誘導面における前記ピストンの径方向外側の面と、に設けられている、内燃機関用ピストンである。
【0014】
本発明の第3の発明は、内燃機関用のピストンであって、前記ピストンの内部には、冷却用オイルを流通させるオイル通路が形成されており、前記オイル通路は、オイルを流入させる流入口と流出させる流出口を有し、前記ピストンの周方向に形成されており、シリンダ内における前記ピストンを往復移動させるストローク方向において、前記オイル通路に対して前記ピストンのヘッド側の方向を上方向とし、反対側の方向を下方向とした場合、前記オイル通路の中心軸線に直交する前記オイル通路の断面は長円であり、かつ、前記長円の長径の方向は前記ストローク方向に対して傾いており、前記オイル通路の内側壁面には、前記流出口側に向かって傾斜するように下から上に線状に伸びる第1凹部又は第1凸部と、前記流出口側に向かって傾斜するように上から下に線状に伸びる第2凹部又は第2凸部と、の少なくとも一方が設けられ、前記第1凹部及び前記第1凸部は、前記オイル通路の前記中心軸線を通り、前記中心軸線を通る前記長径を母線とする円錐面で上下に分割した場合における前記オイル通路の前記ストローク方向上側となる内側壁面である第1オイル誘導面にのみ設けられるものであり、前記第2凹部及び前記第2凸部は、前記オイル通路の前記中心軸線を通り、前記中心軸線を通る前記長径を母線とする円錐面で上下に分割した場合における前記オイル通路の前記ストローク方向下側となる内側壁面である第2オイル誘導面にのみ設けられるものである、内燃機関用ピストンである。

【0015】
本発明の第4の発明は、上記第3の発明に係る内燃機関用ピストンであって、前記第1凹部と前記第2凹部、又は、前記第1凸部と前記第2凸部は、連続する螺旋状とされて一体的に形成されている、内燃機関用ピストンである。
【0016】
本発明の第5の発明は、上記第4の発明に係る内燃機関用ピストンであって、前記第1凸部及び前記第2凸部は、前記ピストンとは別部材とされた螺旋状部材にて構成されており、前記螺旋状部材が、前記オイル通路に配置されている、内燃機関用ピストンである。
【発明の効果】
【0017】
第1の発明によれば、オイルは、ピストンの移動がストローク上向きから下向きに変わると、第1オイル誘導面に設けられた第1凹部又は第1凸部に沿って流れ、オイル通路内を流入口から流出口へ向かって移動される。また、オイルは、ピストンの移動がストローク下向きから上向きに変わると、第2オイル誘導面に設けられた第2凹部又は第2凸部に沿って流れ、オイル通路内を流入口から流出口へ向かって移動される。このように、ピストンの往復運動に伴うオイルの運動エネルギーを流入口から流出口へ向かってオイル通路内を移動させる運動エネルギーに効率良く変換できるため、流入口から流出口へ向かって移動されるオイルの流量が増加するため、ピストンの冷却効率を向上させることができる。
【0018】
第2の発明によれば、第1凹部、又は第1凸部が第1オイル誘導面におけるピストンの径方向内側の面と径方向外側の面の双方に設けられ、第2凹部、又は第2凸部が第2オイル誘導面におけるピストンの径方向内側の面と径方向外側の面の双方に設けられている。これにより、第1オイル誘導面と第2オイル誘導面のそれぞれにおいて径方向内側の面と径方向外側の面のいずれか一方にのみ設けられている場合と比べて、ピストンの往復運動に伴うオイルの運動エネルギーをオイル通路内における流入口から流出口へ移動する運動エネルギーにより効率良く変換できる。
【0019】
第3の発明によれば、第1オイル誘導面及び第2オイル誘導面のほとんどが長径方向に沿った曲率の小さい面に形成されるので、曲率の大きい面と比べて面から受ける抵抗力を小さくできるため、オイルの移動に際し、オイルの運動エネルギーを流入口から流出口へ移動する運動エネルギーにより効率良く変換できる。
【0020】
第4の発明によれば、第1凹部と第2凹部、又は、第1凸部と第2凸部が、オイル通路の内側壁面に連続して一体的に形成されているため、オイルは、オイル通路内を流入口から流出口へ向かって滑らかに移動される。
【0021】
第5の発明によれば、第1凸部、及び、第2凸部を形成する材料の熱伝導率をオイル通路(ピストン)を形成する材料の熱伝導率より高くすることで、ピストンから第1凸部又は第2凸部への熱伝達と第1凸部又は第2凸部からオイルへの熱伝達を促進でき、冷却効率をより向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】第1の実施形態のピストンの全体構成を説明する図である。
図2図1におけるII-II方向から見た断面図である。
図3図2におけるIII方向から見たオイル通路の径方向内側の面の詳細を説明する拡大された模式図である。
図4】ピストンの上から下への移動に伴うオイル通路内におけるオイルの動きを説明するオイル通路の断面の模式図である。
図5図2におけるV方向から見たオイル通路の径方向外側の面の詳細を説明する拡大された模式図である。
図6】ピストンの下から上への移動に伴うオイル通路内におけるオイルの動きを説明するオイル通路の断面の模式図である。
図7】第2の実施形態のオイル通路を説明する斜視図である。
図8図7におけるVIII方向から見た断面を説明する図である。
図9】第3の実施形態のオイル通路を説明する斜視図である。
図10】第3の実施形態のオイル通路の別例を説明する斜視図である。
図11】第4の実施形態のオイル通路を説明する斜視図である。
図12】第5の実施形態のオイル通路を説明する斜視図である。
図13】第6の実施形態のオイル通路を説明する斜視図である。
図14】第7の実施形態のオイル通路を説明する斜視図である。
図15】ピストン内に塩中子により形成されたオイル通路を説明する断面図である。
図16】螺旋状部材にて構成された第1凸部と第2凸部が別部材である場合のオイル通路を説明する断面図である。
図17】オイル通路の断面が長円でも円でもない場合のオイル通路を説明する断面図である。
図18】従来の内燃機関用ピストンを説明する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
●[第1の実施形態の内燃機関用ピストン(ピストン10)の構成及び動作(図1図6)]
図1図6を用いて本発明を実施するための形態の構成及び動作を説明する。図1は、第1の実施形態の内燃機関用ピストン(以下、ピストン10)の全体構成を説明する図である。図2は、図1におけるII-II方向から見た断面図である。
【0024】
なお、X軸とY軸とZ軸が記載されている図では、X軸とY軸とZ軸は互いに直交している。図1で示すように、X軸方向はピストンピン穴PHの軸方向に沿っており、Z軸方向はピストン10の軸方向であってピストン10のスカート部からピストン10のヘッドHへ向かう方向である。また、Y軸方向はピストン10の軸JKから流出口14に向かう方向をY軸方向とする。
【0025】
また、シリンダ(図示省略)内におけるピストン10を往復移動させるストローク方向において、オイル通路20a(20)に対してピストン10のヘッドH側の方向を上方向(Z軸方向)とし、反対側の方向を下方向(Z軸方向と反対方向)とする。
【0026】
図1で示すように、ピストン10は、内燃機関用のピストンであって、ピストン10の内部には、冷却用オイルを流通させるオイル通路20aが形成されている。
【0027】
オイル通路20aは、オイルを流入させる流入口12と流出させる流出口14を有し、ピストン10の周方向に形成されている。オイル通路20aの内側壁面には、第1凹部22aと第2凹部24aと、が設けられている(図3図5参照)。また、図2に示すように、オイル通路20aの中心軸線CKに直交するオイル通路20aの断面は、長円であり、かつ、その長円の長径LDの方向はストローク方向(Z軸方向)に対して傾いている(図2図4図6参照)。また、図1に示すように、流入口12に流入したオイルは、オイル通路20aにおいて、ピストン10の軸JKの時計回りの方向Dckと反時計回りの方向Dukのそれぞれの方向の経路を流れ、流出口14から流出される。
【0028】
●[オイル通路20aにおけるオイルの移動の詳細な説明(図2図6)]
図2図6を用いて、ピストン10(図1参照)の上下方向の往復運動に伴うオイル通路20aにおけるオイルの移動について詳細に説明する。
【0029】
図3は、図2におけるIII方向から見た領域S1で示された面の詳細を説明する拡大された模式図である。図4は、ピストン10の上から下への移動に伴うオイル通路20a内におけるオイルの動きを説明するオイル通路20aの断面の模式図である。なお、図3において、矢印Afは、流入口12から流出口14への方向を示している。
【0030】
図3で示すように、第1凹部22aは、第1オイル誘導面ML1(図4参照)の一部に、流出口14側に向かって傾斜するように下から上に線状に伸びるように、所定の間隔で設けられている。なお、傾斜及び所定の間隔は、第1凹部22aの形状、オイル通路20aの断面等に基づいて決められる。
【0031】
図3において、第1凹部22aは、例えば、オイル通路20aにおける内側壁面にV字型の溝として形成されている。また、第1凹部22aにおいて、細い実線はV字型の溝における底部を示し、太い実線はV字型の溝における開放されている側の縁部を示している。
【0032】
図2及び図4で示すように、第1オイル誘導面ML1は、オイル通路20aの中心軸線CKを通り、中心軸線CKを通る一点鎖線で示す長径LDを母線とする円錐面EMで上下に分割した場合におけるオイル通路20aのストローク方向上側となる内側壁面である(オイル通路20aにおける領域RL1で示された内側壁面)。なお、図4において、説明を簡単にするため、第1凹部22aと第2凹部24aは、省略されている。矢印APdnは、ピストン10が下方からストローク方向の最上位置へ到達し、下方へ移動する状態を表している。また、オイル通路20a内におけるハッチング部は、オイルを表している。
【0033】
図4で示すように、オイルは、ピストン10がストローク方向の下方から上方に向けて移動すると、それに伴って下向きの慣性力を受けて、オイル通路20aの底部へ移動される。オイル通路20aの底部に移動されたオイルは、ピストン10がストローク方向の最上位置に到達し下方へ向けて移動し始めると、それに伴って上向きの慣性力を受ける。
【0034】
オイルは、上向きの慣性力を受けると、矢印で示すようにオイル通路20aの底部から上に向かって移動され、第1オイル誘導面ML1へ移動される。
【0035】
第1オイル誘導面ML1へ移動されたオイルは、ピストン10がストローク方向の最下位置に到達するまで上向きの慣性力を受け、第1凹部22a(図3参照)に沿って矢印Aupで示す方向に移動される。
【0036】
図3において、例えば、オイルが、上向きの慣性力を受け第1凹部22aに沿って距離Duの距離を移動されると、オイルは、上方向に距離Dm1に相当する距離を移動され、流入口12から流出口14の方向に距離Df1に相当する距離を移動される。
【0037】
図5は、図2におけるV方向から見た領域S2で示された面の詳細を説明する拡大された模式図である。図6は、ピストン10の下から上への移動に伴うオイル通路20a内におけるオイルの動きを説明するオイル通路20aの断面の模式図である。なお、図5において、矢印Afは、流入口12から流出口14への方向を示している。
【0038】
図5で示すように、第2凹部24aは、第2オイル誘導面ML2(図6参照)の一部に、流出口14側に向かって傾斜するように上から下に線状に伸びるように、所定の間隔で設けられている。なお、傾斜及び所定の間隔は、第2凹部24aの形状、オイル通路20aの断面形状等に基づいて決められる。
【0039】
図5において、第2凹部24aは、例えば、オイル通路20aにおける内側壁面にV字型の溝として形成されている。また、第2凹部24aにおいて、細い実線はV字型の溝における底部を示し、太い実線はV字型の溝における開放されている側の縁部を示している。なお、第1凹部22aと第2凹部24aは、ピストン10を鋳造により製造した場合、例えば、オイル通路20aを形成するための塩中子に第1凹部22aと第2凹部24aに相当する凸状部を設けることで形成しても良い。
【0040】
図2及び図6で示すように、第2オイル誘導面ML2は、オイル通路20aの中心軸線CKを通り、中心軸線CKを通る一点鎖線で示す長径LDを母線とする円錐面EMで上下に分割した場合におけるオイル通路20aのストローク方向下側となる内側壁面である(オイル通路20aにおける領域RL2で示された内側壁面)。なお、図6において、説明を簡単にするため、第1凹部22aと第2凹部24aは、省略されている。矢印APupは、ピストン10が上方からストローク方向の最下位置へ到達し、上方へ移動する状態を表している。また、オイル通路20a内におけるハッチング部は、オイルを表している。
【0041】
オイルは、ピストン10がストローク方向の上方から下方に向けて移動すると、それに伴って上向きの慣性力を受けて、オイル通路20aの天井部へ移動される。オイル通路20aの天井部に移動されたオイルは、ピストン10がストローク方向の最下位置に到達し上方へ向けて移動し始めると、それに伴って下向きの慣性力を受ける。
【0042】
オイルは、下向きの慣性力を受けると、矢印で示すようにオイル通路20aの天井部から下に向かって移動され、第2オイル誘導面ML2へ移動される。
【0043】
第2オイル誘導面ML2へ移動されたオイルは、ピストン10がストローク方向の最上位置に到達するまで下向きの慣性力を受け、第2凹部24a(図5参照)に沿って矢印Adnで示す方向に移動される。
【0044】
図5において、例えば、オイルが、下向きの慣性力を受け第2凹部24aに沿って距離Ddの距離を移動されると、オイルは、下方向に距離Dm2に相当する距離を移動され、流入口12から流出口14の方向に距離Df2に相当する距離を移動される。
【0045】
第1の実施形態の内燃機関用ピストンにおいて、オイルは、ピストン10が上方から下方に向けて移動すると、流入口12から流出口14の方向に距離Df1を移動され、ピストン10が下方から上方に向けて移動すると、流入口12から流出口14の方向に距離Df2を移動される。このように、ピストン10のシリンダ内における往復運動に伴うオイルの運動エネルギーをオイル通路20a内における流入口12から流出口14へ移動(距離Df1+距離Df2)する運動エネルギーに効率良く変換できる。これにより、オイルは、オイル通路20a内において流入口12から流出口14へ向かって移動する流量が増加するため、オイル通路20a内の流入口12付近に滞留するオイルが減少し、ピストン10の移動に伴って下向きの慣性力がオイルに作用した際に、流入口12からピストン10外に逆流するオイルが減少、オイル通路20aを通過するオイル流量が向上し、ピストンの冷却効率を向上させることができる。
【0046】
また、第1オイル誘導面ML1及び第2オイル誘導面ML2が長径LD方向に沿った曲率の小さい面に形成され、曲率の大きい面と比べて面から受ける抵抗力を小さくできるため、オイルの移動に際し、オイルの運動エネルギーを流入口12から流出口14へ移動する運動エネルギーにより効率良く変換できる。
【0047】
●[第2の実施形態におけるオイル通路20bの構成及び動作(図7図8)]
第2の実施形態の内燃機関用ピストンは、第1の実施形態における断面が長円状のオイル通路20a(図2参照)が、断面が円状のオイル通路20b(20)である点で相違する。以下、オイル通路20bにおけるオイル通路20aと相違する点について詳細に説明する。
【0048】
図7は、第2の実施形態のオイル通路20bを説明する斜視図であり、図1における領域AAのオイル通路であって、断面が円の場合のオイル通路の例を示している。図8は、図7におけるVIII方向から見た断面を説明する図である。なお、図7において、矢印Afは、流入口12から流出口14への方向を示している。
【0049】
図7及び図8で示すように、オイル通路20bは、第1オイル誘導面M1と、第2オイル誘導面M2で形成されている。第1オイル誘導面M1は、オイル通路20bの中心軸線CKaを通り、ストローク方向に直交する平面HM1で上下に分割した場合におけるオイル通路のストローク方向上側となる内側壁面である。第2オイル誘導面M2は、オイル通路20bの中心軸線CKaを通り、ストローク方向に直交する平面HM1で上下に分割した場合におけるオイル通路20bのストローク方向下側となる内側壁面である。
【0050】
図8で示すように、第1オイル誘導面M1は、面M1b(領域R1bで示された内側壁面)と、面M1a(領域R1aで示された内側壁面)と、から構成されている。図7及び図8で示すように、面M1bは、オイル通路20bの中心軸線CKaを通り、ストローク方向に平行な円筒面HM2で分割した場合の第1オイル誘導面M1におけるピストン10(図1参照)の径方向内側の面である。また、面M1aは、オイル通路20bの中心軸線CKaを通り、ストローク方向に平行な円筒面HM2で分割した場合の第1オイル誘導面M1におけるピストン10の径方向外側の面である。図8で示すように、第2オイル誘導面M2は、面M2b(領域R2bで示された内側壁面)と、面M2a(領域R2aで示された内側壁面)と、から構成されている。図7及び図8で示すように、面M2bは、オイル通路20bの中心軸線CKaを通り、ストローク方向に平行な円筒面HM2で分割した場合の第2オイル誘導面M2におけるピストン10(図1参照)の径方向内側の面である。また、面M2aは、オイル通路20bの中心軸線CKaを通り、ストローク方向に平行な円筒面HM2で分割した場合の第2オイル誘導面M2におけるピストン10の径方向外側の面である。
【0051】
図7で示すように、第1凹部22bは、第1オイル誘導面M1における面M1aと面M1bのそれぞれにおいて流出口14側に向かって傾斜するように下から上に線状に伸びるように、所定の間隔で設けられている。なお、傾斜及び所定の間隔は、第1凹部22bの形状、オイル通路20bの断面形状等に基づいて決められる。
【0052】
第2凹部24bは、第2オイル誘導面M2における面M2aと面M2bのそれぞれにおいて流出口14側に向かって傾斜するように上から下に線状に伸びるように、所定の間隔で設けられている。なお、傾斜及び所定の間隔は、第2凹部24bの形状、オイル通路20bの断面形状等に基づいて決められる。
【0053】
第1凹部22b及び第2凹部24bは、例えば、オイル通路20bにおける内側壁面にV字型の溝として形成されている。第1凹部22bに対して、第2凹部24bは、オイルの流れる方向に沿って対向してオイル通路20b内に設けられていることに限定されず、対向しない位置にそれぞれ設けられても良い。
【0054】
図7において、オイルは、ピストン10(図1参照)の移動がストローク上向きから下向きに変わると、面M1aと面M1b(図8参照)のそれぞれにおける第1凹部22bに沿って距離Du1a、Du1bのそれぞれの距離を移動され、距離Df1a、Df1bのそれぞれの距離を流入口12から流出口14へ向かってそれぞれ移動される。また、オイルは、ピストン10の移動がストローク下向きから上向きに変わると、面M2aと面M2b(図8参照)のそれぞれにおける第2凹部24bに沿って距離Dd2a、Dd2bのそれぞれの距離を移動され、距離Df2a、Df2bのそれぞれの距離を流入口12から流出口14へ向かってそれぞれ移動される。
【0055】
第2の実施形態の内燃機関用ピストンは、第1オイル誘導面M1において周方向全体に第1凹部22bが設けられ、かつ、第2オイル誘導面M2における周方向全体に第2凹部24bが設けられているため、より効率良くオイルを流入口12から流出口14側へ移動させることができる。
【0056】
●[第3の実施形態におけるオイル通路20c及びオイル通路20dの構成及び動作(図9図10)]
第3の実施形態の内燃機関用ピストンは、第2の実施形態おいて、ピストン10(図1参照)の径方向内側の面M1b、M2bと径方向外側の面M1a、M2aのそれぞれに第1凹部22bと第2凹部24bのそれぞれがあるオイル通路20bが(図7図8参照)、第1オイル誘導面M1におけるピストン10の径方向内側の面M1bと径方向外側の面M1aのそれぞれに第1凹部22cのみが設けられているオイル通路20c(20)である点で相違する。また、第3の実施形態の内燃機関用ピストンは、第2の実施形態のオイル通路20bに対して、第2オイル誘導面M2におけるピストン10の径方向内側の面M2bと径方向外側の面M2aのそれぞれに第2凹部24dのみが設けられているオイル通路20d(20)である点で相違する。以下、オイル通路20c及びオイル通路20dにおけるオイル通路20bと相違する点について詳細に説明する。
【0057】
図9は、第3の実施形態のオイル通路20cを説明する斜視図であり、図1における領域AAのオイル通路であって、断面が円の場合のオイル通路かつ第1オイル誘導面M1において第1凹部22cのみが形成されている例を示している。図10は、第3の実施形態のオイル通路20dを説明する斜視図であり、図1における領域AAのオイル通路であって、断面が円の場合のオイル通路かつ第2オイル誘導面M2において第2凹部24dのみが形成されている例を示している。なお、矢印Afは、流入口12から流出口14への方向を示している。
【0058】
図9で示すように、オイル通路20cは、第1オイル誘導面M1と、第2オイル誘導面M2で形成されている(図8参照)。また、図10で示すように、オイル通路20dは、第1オイル誘導面M1と、第2オイル誘導面M2で形成されている(図8参照)。
【0059】
図9で示すように、第1凹部22cは、第1オイル誘導面M1における面M1aと面M1b(図8参照)のそれぞれにおいて流出口14側に向かって傾斜するように下から上に線状に伸びるように、所定の間隔で設けられている。なお、傾斜及び所定の間隔は、第1凹部22cの形状、オイル通路20cの断面形状等に基づいて決められる。
【0060】
図10で示すように、第2凹部24dは、第2オイル誘導面M2における面M2aと面M2b(図8参照)のそれぞれにおいて流出口14側に向かって傾斜するように上から下に線状に伸びるように、所定の間隔で設けられている。なお、傾斜及び所定の間隔は、第2凹部24dの形状、オイル通路20dの断面形状等に基づいて決められる。
【0061】
第1凹部22cは、例えば、オイル通路20cにおける内側壁面にV字型の溝として形成されている。第2凹部24dは、例えば、オイル通路20dにおける内側壁面にV字型の溝として形成されている。
【0062】
図9において、オイルは、ピストン10(図1参照)の移動がストローク上向きから下向きに変わると、面M1aと面M1b(図8参照)のそれぞれにおける第1凹部22cに沿って距離Du1a、Du1bのそれぞれの距離をそれぞれ移動され、距離Df1a、Df1bのそれぞれの距離を流入口12から流出口14へ向かってそれぞれ移動される。また、図10において、オイルは、ピストン10の移動がストローク下向きから上向きに変わると、面M2aと面M2b(図8参照)のそれぞれにおける第2凹部24dに沿って距離Dd2a、Dd2bのそれぞれの距離をそれぞれ移動され、距離Df2a、Df2bのそれぞれの距離を流入口12から流出口14へ向かってそれぞれ移動される。
【0063】
第3の実施形態の内燃機関用ピストンは、第1オイル誘導面M1における周方向全体に第1凹部22cが設けられ、又は、第2オイル誘導面M2における周方向全体に第2凹部24dが設けられているため、第2の実施形態と比較して、よりシンプルな構成とすることができる。
【0064】
●[第4の実施形態におけるオイル通路20eの構成及び動作(図11)]
第4の実施形態の内燃機関用ピストンは、第2の実施形態おいて、ピストン10(図1参照)の径方向内側の面M1b、M2bと径方向外側の面M1a、M2aのそれぞれに第1凹部22bと第2凹部24bのそれぞれが設けられているオイル通路20bが(図7図8参照)、第1オイル誘導面M1と第2オイル誘導面M2におけるピストン10の径方向外側のそれぞれの面M1a、M2aにのみ第1凹部22eと第2凹部24eのそれぞれが設けられているオイル通路20e(20)である点で相違する。以下、オイル通路20eにおけるオイル通路20bと相違する点について詳細に説明する。
【0065】
図11は、第4の実施形態のオイル通路20eを説明する斜視図であり、図1における領域AAのオイル通路であって、断面が円の場合のオイル通路の例を示している。なお、矢印Afは、流入口12から流出口14への方向を示している。
【0066】
図11で示すように、オイル通路20eは、第1オイル誘導面M1と、第2オイル誘導面M2で形成されている(図8参照)。
【0067】
図11で示すように、第1凹部22eは、第1オイル誘導面M1における面M1a(図8参照)において流出口14側に向かって傾斜するように下から上に線状に伸びるように、所定の間隔で設けられている。なお、傾斜及び所定の間隔は、第1凹部22eの形状、オイル通路20eの断面形状等に基づいて決められる。
【0068】
第2凹部24eは、第2オイル誘導面M2における面M2a(図8参照)において流出口14側に向かって傾斜するように上から下に線状に伸びるように、所定の間隔で設けられている。なお、傾斜及び所定の間隔は、第2凹部24eの形状、オイル通路20eの断面形状等に基づいて決められる。
【0069】
第1凹部22eは、例えば、オイル通路20eにおける内側壁面にV字型の溝として形成されている。第2凹部24eは、例えば、オイル通路20eにおける内側壁面にV字型の溝として形成されている。なお、第1凹部22eに対して、第2凹部24eは、オイルの流れる方向に沿って対向してオイル通路20e内に設けられていることに限定されず、対向しない位置にそれぞれ設けられても良い。
【0070】
図11において、オイルは、ピストン10(図1参照)のストローク方向の上方から下方への移動により、面M1a(図8参照)における第1凹部22eに沿って距離Du1aの距離を移動され、距離Df1aの距離を流入口12から流出口14へ向かって移動される。また、オイルは、ピストン10のストローク方向の下方から上方への移動により、面M2a(図8参照)における第2凹部24eに沿って距離Dd2aの距離を移動され、距離Df2aの距離を流入口12から流出口14へ向かって移動される。
【0071】
第4の実施形態の内燃機関用ピストンは、第1オイル誘導面M1におけるピストン10の径方向外側の面M1aに第1凹部22eが設けられ、かつ、第2オイル誘導面M2におけるピストン10の径方向外側の面M2aに第2凹部24eが設けられているため(図8参照)、第2の実施形態と比較して、よりシンプルな構成とすることができる。
【0072】
●[第5の実施形態におけるオイル通路20fの構成及び動作(図12)]
第5の実施形態の内燃機関用ピストンは、第2の実施形態おいて、ピストン10(図1参照)の径方向内側の面M1b、M2bと径方向外側の面M1a、M2aのそれぞれに第1凹部22bと第2凹部24bのそれぞれが設けられているオイル通路20bが(図7図8参照)、第1オイル誘導面M1におけるピストン10の径方向外側の面M1aに第1凹部22fが設けられ、第2オイル誘導面M2おける径方向内側の面M2bに第2凹部24fが設けられているオイル通路20f(20)である点で相違する。以下、オイル通路20fにおけるオイル通路20bと相違する点について詳細に説明する。
【0073】
図12は、第5の実施形態のオイル通路20fを説明する斜視図であり、図1における領域AAのオイル通路であって、断面が円の場合のオイル通路の例を示している。なお、矢印Afは、流入口12から流出口14への方向を示している。
【0074】
図12で示すように、第1凹部22fは、第1オイル誘導面M1における径方向外側の面M1a(図8参照)において流出口14側に向かって傾斜するように下から上に線状に伸びるように、所定の間隔で設けられている。なお、傾斜及び所定の間隔は、第1凹部22fの形状、オイル通路20fの断面形状等に基づいて決められる。
【0075】
第2凹部24fは、第2オイル誘導面M2における径方向内側の面M2b(図8参照)において流出口14側に向かって傾斜するように上から下に線状に伸びるように、所定の間隔で設けられている。なお、傾斜及び所定の間隔は、第2凹部24fの形状、オイル通路20fの断面等に基づいて決められる。
【0076】
第1凹部22fは、例えば、オイル通路20fにおける内側壁面にV字型の溝として形成されている。第2凹部24fは、例えば、オイル通路20fにおける内側壁面にV字型の溝として形成されている。なお、第1凹部22fに対して、第2凹部24fは、オイルの流れる方向に沿って対向してオイル通路20f内に設けられていることに限定されず、対向しない位置にそれぞれ設けられても良い。
【0077】
図12において、オイルは、ピストン10(図1参照)の移動がストローク上向きから下向きに変わると、面M1a(図8参照)における第1凹部22fに沿って距離Du1aの距離を移動され、距離Df1aの距離を流入口12から流出口14へ向かって移動される。また、オイルは、ピストン10の移動がストローク下向きから上向きに変わると、面M2b(図8参照)における第2凹部24eに沿って距離Dd2bの距離を移動され、距離Df2bの距離を流入口12から流出口14へ向かって移動される。
【0078】
第5の実施形態の内燃機関用ピストンは、第1オイル誘導面M1におけるピストン10の径方向外側の面M1aに第1凹部22fが設けられ、かつ、第2オイル誘導面M2におけるピストン10の径方向内側の面M2bに第2凹部24fが設けられているため(図8参照)、第2の実施形態と比較して、よりシンプルな構成とすることができる。
【0079】
●[第6の実施形態におけるオイル通路20gの構成及び動作(図13)]
第6の実施形態の内燃機関用ピストンは、第2、4及び5の実施形態では、第1オイル誘導面M1の第1凹部(22b、22e、22f)と、第2オイル誘導面M2の第2凹部(24b、24e、24f)は、対向するように配置されているが(図7図11図12参照)、第6の実施形態では、対向しない位置に配置されている点で相違する。以下、オイル通路20gにおけるオイル通路20bと相違する点について詳細に説明する。
【0080】
図13は、第6の実施形態のオイル通路20gを説明する斜視図であり、図1における領域AAのオイル通路であって、断面が円の場合のオイル通路の例を示している。なお、矢印Afは、流入口12から流出口14への方向を示している。
【0081】
第6の実施形態のオイル通路20gは、第2の実施形態のオイル通路20bに対して、流入口12側から流出口14側へ向かう方向に沿って、所定の間隔で第1凹部22gと第2凹部24gのそれぞれが交互に設けられている点で相違する。なお、所定の間隔は、第1凹部22g及び第2凹部24gの形状、オイル通路20gの断面形状等に基づいてそれぞれ決められる。
【0082】
第1凹部22gは、例えば、オイル通路20gにおける内側壁面にV字型の溝として形成されている。第2凹部24gは、例えば、オイル通路20gにおける内側壁面にV字型の溝として形成されている。
【0083】
図13において、オイルは、ピストン10(図1参照)の移動がストローク上向きから下向きに変わると、第1凹部22gに沿って距離Du1a、Du1bのそれぞれの距離をそれぞれ移動され、距離Df1a、Df1bのそれぞれの距離を流入口12から流出口14へ向かってそれぞれ移動される。また、オイルは、ピストン10の移動がストローク下向きから上向きに変わると、第2凹部24gに沿って距離Dd2a、Dd2bの距離を移動され、それぞれ距離Df2a、Df2bのそれぞれの距離を流入口12から流出口14へ向かってそれぞれ移動される。
【0084】
第6の実施形態の内燃機関用ピストンは、第1オイル誘導面M1における周方向全体に第1凹部22gが設けられ、又は、第2オイル誘導面M2における周方向全体に第2凹部24gが、所定の間隔で交互に設けられているため、第2の実施形態における第1凹部22b、第2凹部24b(図7参照)よりも少なくなるので、よりシンプルな構成とすることができる。
【0085】
●[第7の実施形態におけるオイル通路20hの構成及び動作(図14)]
第7の実施形態の内燃機関用ピストンは、第1の実施形態において、第1凹部22aと第2凹部24aが不連続に設けられているオイル通路20aが、第1凸部22hと第2凸部24hが連続した螺旋状に設けられているオイル通路20h(20)である点で相違する。以下、オイル通路20hにおけるオイル通路20aと相違する点について詳細に説明する。
【0086】
図14は、第7の実施形態のオイル通路20hを説明する斜視図であり、図1における領域AAのオイル通路であって、断面が長円の場合のオイル通路(第1の実施形態)の別例を示している。なお、矢印Afは、流入口12から流出口14への方向を示している。
【0087】
図14で示すように、オイル通路20hは、第1の実施形態のオイル通路20aと同様に、上面の内側壁面である第1オイル誘導面ML1と、下面の内側壁面である第2オイル誘導面ML2で形成されている(図4図6参照)。
【0088】
オイル通路20hは、オイル通路20aに対して第1凹部22aと第2凹部24aの代わりに、第1凸部22hと第2凸部24hがそれぞれ設けられている点で相違する。また、第1凸部22hと第2凸部24hは、連続する螺旋状とされて一体的に凸部29として形成されている。凸部29は、例えば、オイル通路20hにおける内側壁面に逆V字型に突出させて形成されている。あるいは、凸部29(第1凸部22h、第2凸部24h)が別部材とされた螺旋状部材にて構成されており、オイル通路20hに配置されている。
【0089】
第1オイル誘導面ML1は、長径LDに対して、ストローク方向上側の面であり、第2オイル誘導面ML2は、長径LDに対して、ストローク方向下側の面である。
【0090】
実線で示された第1凸部22hは、第1オイル誘導面ML1において流出口14側に向かって傾斜するように下から上に線状に伸びるように、所定の間隔で設けられている。また、二点鎖線で示された第2凸部24hは、第2オイル誘導面ML2において流出口14側に向かって傾斜するように上から下に線状に伸びるように、所定の間隔で設けられている。
【0091】
図14において、オイルは、ピストン10(図1参照)の移動がストローク上向きから下向きに変わると、第1凸部22hに沿って距離Du1sの距離を移動され、それぞれ距離Df1sの距離を流入口12から流出口14へ向かって移動される。また、オイルは、ピストン10の移動がストローク下向きから上向きに変わると、第2凸部24hに沿って距離Dd2sの距離を移動され、それぞれ距離Df2sの距離を流入口12から流出口14へ向かって移動される。
【0092】
第7の実施形態の内燃機関用ピストンは、第1凸部22hと第2凸部24hが、オイル通路20hの内側壁面に連続して一体的に形成されているため、オイルは、オイル通路20h内を流入口12から流出口14へ向かって滑らかに移動される(図1参照)。また、第1凸部22hと第2凸部24hを別部材で形成して設けた場合、第1凸部22hと第2凸部24hを形成する材料の熱伝導率は、オイル通路20h(ピストン10)を形成する材料の熱伝導率より高くできる。これにより、ピストン10から第1凸部22hと第2凸部24hへの熱伝達と第1凸部22hと第2凸部24hからオイルへの熱伝達を促進することができ、ピストン10における冷却効率をより向上することができる。
【0093】
●[その他の実施形態におけるオイル通路20の構成(図15図17)]
その他の実施形態のオイル通路20の構成例について図15図17を用いて説明する。
【0094】
図15は、ピストン10m(10)内に塩中子により形成されたオイル通路20m(20)を説明する断面図である。第1凸部と第2凸部は、ピストン10mの鋳造による製造において、オイル通路20mを形成するための塩中子に第1凸部と第2凸部に相当する凹状部を設けることで形成される。
【0095】
図16は、螺旋状部材にて構成された凸部29b(第1凸部と第2凸部に相当)が別部材である場合のオイル通路20n(20)を説明する断面図である。
【0096】
凸部29bは、ピストン10n(10)の製造に際し、螺旋状部材をオイル通路中子に内包し、ピストン10nを鋳造することにより、オイル通路20n内に配置される。なお、凸部29bは、図16の紙面において、軸JKの右側では右巻きに螺旋が形成され、左側では左巻きに螺旋が形成されている。
【0097】
図17は、第1凸部と第2凸部が形成されているオイル通路の断面が長円でも円でもない場合(図17の例では略三角形)のオイル通路20p(20)を説明する断面図である。ピストン10p(10)におけるオイル通路20pの断面は、例えば、底部が下になるように配置された三角形状でも良い。また、上記断面をもつオイル通路20pは、分割された部材で成形されたピストンでなく一体で成形されたピストンに設けても良い。
【0098】
●[本願の効果]
以上に説明したように、本願の発明の内燃機関用ピストンは、ピストンのシリンダ内における往復運動に伴うオイルの運動エネルギーをオイル通路内における流入口から流出口へ移動させる運動エネルギーに効率良く変換できる。これにより、オイルは、オイル通路内において流入口から流出口へ向かって移動される流量が増加するため、オイル通路20a内の流入口12付近に滞留するオイルが減少し、ピストン10の移動に伴って下向きの慣性力がオイルに作用した際に、流入口12からピストン外に逆流するオイルが減少、オイル通路を通過するオイル流量が向上し、ピストンの冷却効率を向上させることができる(図1参照)。
【0099】
本発明の内燃機関用ピストンは、本実施の形態で説明した構成、構造等に限定されず、本発明の要旨を変更しない範囲で種々の変更、追加、削除が可能である。
【0100】
実施形態の説明において、オイル通路の断面は、長円又は円で説明したが、これらに限定されず、第1オイル誘導面及び第2オイル誘導面の少なくとも一つを形成できる形状であれば良い。例えば、半円又は、長円を長径又は短径において半分にしたものをオイル通路の断面としても良い。
【0101】
第1~第6の実施形態(図1図3図5図7図9図13参照)において、第1凹部(22a、22b、22c、22e、22f、22g)の代わりに、第1凸部を設けても良い。第2凹部(24a、24b、24d、24e、24f、24g)の代わりに、第2凸部を設けても良い。この場合、第1凸部と第2凸部は、例えば、オイル通路(20a、20b、20c、20d、20e、20f、20g)における内側壁面に逆V字型に突出させて形成しても良い。
【0102】
また、実施形態の説明において、第1凹部及び第2凹部は、V字型の溝を用いて説明したがオイル通路の内側壁面において凹状に設けられた形状であれば良い。第1凸部及び第2凸部は、逆V字型で突出させて形成することに限定されず、オイル通路の内側壁面において凸状に設けられた形状であれば良い。第1凹部と第2凹部の組み合わせに限定されず、第1凹部と第2凸部の組み合わせ、第1凸部と第2凹部の組み合わせ、第1凸部と第2凸部の組み合わせでも良い。これらの組み合わせは、オイル通路全体において同一であっても良いし、また場所により異なっても良い。
【0103】
第1~第6の実施形態(図3図5図7図9図13参照)において、第1凹部(又は第1凸部)、第2凹部(又は第2凸部)は、等間隔で設けられても、異なる間隔で設けても良い。また、第1~第6の実施形態において第1凹部(又は第1凸部)、第2凹部(又は第2凸部)は、複数設けられている例で説明したが、オイル通路(20a、20b、20c、20d、20e、20f、20g)において、ピストン10の軸JKの時計回りの方向Dckと反時計回りの方向Dukのそれぞれの方向の経路(図1参照)おいて少なくとも一つ設けられていれば良い。また、第1凹部(又は第1凸部)が設けられている所定の間隔と第2凹部(又は第2凸部)が設けられている所定の間隔は、同じでも異なるものでも良い。
【0104】
第4の実施形態において(図11参照)、第1凹部22eは、第1オイル誘導面M1の径方向内側の面M1b(図8参照)に下から上に向かって流出口14側に傾斜して、所定の間隔で設けても良い。第2凹部24eは、オイル通路20eの第2オイル誘導面M2の径方向内側の面M2b(図8参照)に流出口14側に向かって傾斜するように上から下に線状に伸びるように、所定の間隔で設けても良い。
【0105】
第5の実施形態において(図12参照)、第1凹部22fは、オイル通路20fの面M1b(図8参照)に流出口14側に向かって傾斜するように下から上に線状に伸びるように、所定の間隔で設けても良い。第2凹部24fは、オイル通路20fの面M2a(図8参照)に流出口14側に向かって傾斜するように上から下に線状に伸びるように、所定の間隔で設けても良い。
【符号の説明】
【0106】
10、10m ピストン(内燃機関用ピストン)
10n、10p ピストン(内燃機関用ピストン)
12 流入口
14 流出口
20 オイル通路
20a、20b、20c オイル通路
20d、20e、20f オイル通路
20g、20h オイル通路
22a、22b、22c 第1凹部
22e、22f 第1凹部
22g 第1凹部
22h 第1凸部
24a、24b 第2凹部
24d、24e、24f 第2凹部
24g 第2凹部
24h 第2凸部
29、29b 凸部
M1、ML1 第1オイル誘導面
M2、ML2 第2オイル誘導面
M1a、M1b 面
M2a、M2b 面
LD 長径
H ヘッド
CK、CKa 中心軸線
JK 軸
Dck 時計回りの方向
Duk 反時計回りの方向
EM 円錐面
HM1 平面
HM2 円筒面
RL1、RL2 領域
R1a、R1b 領域
R2a、R2b 領域
S1、S2 領域
Dd、Dm2、Df2 距離
Du1a、Df1a 距離
Du1b、Df1b 距離
Dd2a、Df2a 距離
Dd2b、Df2b 距離
Af 矢印
APdn、APup 矢印
PH ピストンピン穴
110 ピストン本体
120 冷却空洞
212 入口通路
214 出口通路
図1
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