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  • 特許-不飽和炭化水素製造装置 図1
  • 特許-不飽和炭化水素製造装置 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-21
(45)【発行日】2022-03-02
(54)【発明の名称】不飽和炭化水素製造装置
(51)【国際特許分類】
   C07C 2/76 20060101AFI20220222BHJP
   C07C 11/04 20060101ALI20220222BHJP
   C07C 11/24 20060101ALI20220222BHJP
   C07C 7/144 20060101ALI20220222BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20220222BHJP
【FI】
C07C2/76
C07C11/04
C07C11/24
C07C7/144
C07B61/00 300
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020523511
(86)(22)【出願日】2019-02-20
(86)【国際出願番号】 JP2019006331
(87)【国際公開番号】W WO2019234991
(87)【国際公開日】2019-12-12
【審査請求日】2020-11-17
(31)【優先権主張番号】P 2018107491
(32)【優先日】2018-06-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2018124111
(32)【優先日】2018-06-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(74)【代理人】
【識別番号】110000936
【氏名又は名称】特許業務法人青海特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】木村 博幸
(72)【発明者】
【氏名】妹尾 悟史
(72)【発明者】
【氏名】松野 伸介
(72)【発明者】
【氏名】村本 知哉
【審査官】佐溝 茂良
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-303184(JP,A)
【文献】特表2006-522081(JP,A)
【文献】特開2015-196619(JP,A)
【文献】特表2010-526759(JP,A)
【文献】特表2005-515295(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 2/76
C07C 11/04
C07C 11/24
C07C 7/144
C07B 61/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽光を集光して太陽熱に変換する集光装置と、
メタンおよび素をみ、前記水素が前記メタンに対し3モル以上8モル以下である原料ガスを、前記集光装置によって発生させた太陽熱で700℃以上2000℃以下に加熱する加熱炉と、
を備える不飽和炭化水素製造装置。
【請求項2】
前記加熱炉で生成された生成ガスを600℃以下まで急冷する冷却部を備える請求項1に記載の不飽和炭化水素製造装置。
【請求項3】
前記加熱炉は、前記原料ガスの、エチレンおよびアセチレンのいずれか一方または両方への反応を促進する触媒を収容する請求項1に記載の不飽和炭化水素製造装置。
【請求項4】
前記加熱炉から放出された熱で前記原料ガスを予熱する予熱部を備える請求項1から3のいずれか1項に記載の不飽和炭化水素製造装置。
【請求項5】
前記加熱炉で生成された生成ガスと、前記原料ガスとを熱交換させる第1熱交換部を備え、
前記予熱部には、前記第1熱交換部で熱交換された前記原料ガスが導入される請求項4に記載の不飽和炭化水素製造装置。
【請求項6】
前記加熱炉で生成された生成ガスと、前記予熱部によって予熱された前記原料ガスとを熱交換させる第2熱交換部を備える請求項4または5に記載の不飽和炭化水素製造装置。
【請求項7】
前記加熱炉で生成された生成ガスからエチレンまたはアセチレンを分離する分離部を備える請求項1から6のいずれか1項に記載の不飽和炭化水素製造装置。
【請求項8】
前記加熱炉は、前記原料ガスを1000℃以上1200℃以下に加熱する請求項1から7のいずれか1項に記載の不飽和炭化水素製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、不飽和炭化水素製造装置に関する。本出願は、2018年6月5日に提出された日本特許出願第2018-107491号および2018年6月29日に提出された日本特許出願第2018-124111号に基づく優先権の利益を主張するものであり、その内容は本出願に援用される。
【背景技術】
【0002】
エチレンまたはアセチレンは、プラスチックの原料となる。エチレンまたはアセチレンは、灯油、ナフサ、プロパン、エタン等の原料を900℃程度に加熱して、熱分解させることで生成される。
【0003】
従来、原料の加熱は、石油等の化石燃料をバーナで燃焼させることで為される(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-178827号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来技術では、化石燃料の燃焼に伴って、二酸化炭素(CO)、硫黄酸化物(SO)、窒素酸化物(NO)を含む排気ガスが排出されてしまう。排気ガスに含まれる二酸化炭素は、地球温暖化の要因とされる温室効果ガスのひとつとして考えられている。このため、二酸化炭素の排出量を低減させて、原料を熱分解させる技術の開発が希求されている。
【0006】
そこで、本開示は、このような課題に鑑み、二酸化炭素の排出量を低減することが可能な不飽和炭化水素製造装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本開示の一態様に係る不飽和炭化水素製造装置は、太陽光を集光して太陽熱に変換する集光装置と、メタンおよび素をみ、水素がメタンに対し3モル以上8モル以下である原料ガス原料ガスを、集光装置によって発生させた太陽熱で700℃以上2000℃以下に加熱する加熱炉と、を備える。
【0008】
また、加熱炉で生成された生成ガスを600℃以下まで急冷する冷却部を備えてもよい。
【0009】
また、加熱炉は、原料ガスの、エチレンおよびアセチレンのいずれか一方または両方への反応を促進する触媒を収容してもよい。
【0010】
また、加熱炉から放出された熱で原料ガスを予熱する予熱部を備えてもよい。
【0011】
また、加熱炉で生成された生成ガスと、原料ガスとを熱交換させる第1熱交換部を備え、予熱部には、第1熱交換部で熱交換された原料ガスが導入されてもよい。
【0012】
また、加熱炉で生成された生成ガスと、予熱部によって予熱された原料ガスとを熱交換させる第2熱交換部を備えてもよい。
【0013】
また、加熱炉で生成された生成ガスからエチレンまたはアセチレンを分離する分離部を備えてもよい。
【0014】
また、加熱炉は、原料ガスを1000℃以上1200℃以下に加熱してもよい。
【発明の効果】
【0015】
本開示によれば、二酸化炭素の排出量を低減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、第1の実施形態の不飽和炭化水素製造装置を説明する図である。
図2図2Aは、集光装置および加熱部の外観を説明する図である。図2Bは、加熱部の一部を切り欠いた斜視図である。
図3図3は、第2の実施形態の不飽和炭化水素製造装置を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に添付図面を参照しながら、本開示の実施形態について詳細に説明する。実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値等は、理解を容易とするための例示にすぎず、特に断る場合を除き、本開示を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。また本開示に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0018】
[第1の実施形態]
図1は、第1の実施形態の不飽和炭化水素製造装置100を説明する図である。なお、図1中、実線の矢印は、原料ガスの流れを示す。図1中、破線の矢印は、生成ガスの流れを示す。また、図1中、一点鎖線の矢印は、エチレンおよびアセチレンの流れを示す。図1中、白抜き矢印は、集光された太陽光を示す。
【0019】
図1に示すように、不飽和炭化水素製造装置100は、集光装置110と、加熱部120と、第1熱交換部130と、第2熱交換部140と、冷却部150と、第1分離部160と、第2分離部170(分離部)とを含む。
【0020】
集光装置110は、太陽光を集光して加熱部120(採光窓212)へ導く。加熱部120は、筐体210と、炉室220と、伝熱材222と、加熱炉230と、予熱部250と、断熱材260を含む。なお、図1中、伝熱材222をハッチングで示し、断熱材260をクロスハッチングで示す。
【0021】
図2Aは、集光装置110および加熱部120の外観を説明する図である。図2Bは、加熱部120の一部を切り欠いた斜視図である。なお、図2B中、伝熱材222をハッチングで示し、断熱材260をクロスハッチングで示す。
【0022】
図2Aに示すように、集光装置110は、太陽光を集光して太陽熱に変換する装置である。集光装置110は、1または複数のヘリオスタット(平面鏡)112と、放物曲面鏡114と、後述する炉壁220aを含む。ヘリオスタット112は、太陽光を反射して放物曲面鏡114に導く。放物曲面鏡114は、反射面が凹形状の鏡である。放物曲面鏡114は、ヘリオスタット112で反射された太陽光を集光して加熱部120(採光窓212)へ導く。
【0023】
図2Bに示すように、加熱部120の筐体210は、円筒形状である。筐体210は、軸方向が水平方向となるように設けられる。筐体210の側面には採光窓212が設けられる。炉室220は、採光窓212に連続して筐体210の内部に設けられる。つまり、採光窓212は、炉室220と外部とを区画する。炉室220は、水平方向に延在する空間である。炉室220を形成する炉壁220aは、吸熱材(黒体のセラミックス等の耐熱性が高い無機材料)で構成される。
【0024】
加熱炉230、および、予熱部250は、管形状である。加熱炉230、および、予熱部250は、炉室220を貫通するように設けられる。加熱炉230は、採光窓212に最も近い位置に設けられる。予熱部250は、加熱炉230に隣接する。つまり、採光窓212に近い方から順に、加熱炉230、予熱部250が、炉室220内に設けられる。伝熱材222は、炉室220のうち、加熱炉230と予熱部250との間、および、予熱部250と断熱材260との間に設けられる。つまり、伝熱材222は、加熱炉230とは離隔し、予熱部250を囲繞する。伝熱材222は、例えば、グラファイトまたはセラミックスである。
【0025】
採光窓212を通過して炉室220の内部に導かれた太陽光は、加熱炉230に照射されたり、炉室220を形成する炉壁220aに照射されたりすること等によって熱エネルギー(太陽熱)に変換され、加熱炉230および炉壁220aを加熱する。これにより、加熱炉230は、1000℃以上2000℃以下に維持される。なお、伝熱材222が加熱炉230と非接触であることにより、加熱炉230の全周が輻射に曝される。これにより、加熱炉230は、太陽光によって効率的に加熱される。また、予熱部250は、加熱炉230から放出された熱(放熱)が伝熱材222によって伝達され、所定の予熱温度(常温(25℃)を上回る温度)に維持される。伝熱材222が予熱部250の全周と接触することにより、予熱部250が効率的に加熱される。
【0026】
断熱材260は、筐体210内に設けられる。断熱材260は、炉室220を囲繞する。断熱材260は、炉室220から外部への熱の流出(放熱)を抑制する。
【0027】
図1に戻って説明すると、第1熱交換部130は、加熱炉230で生成され、後述する第2熱交換部140によって除熱された生成ガス(詳しくは後述する)と、原料ガスとを熱交換させる。これにより、生成ガスが有する熱で原料ガスが加熱され、生成ガスが冷却される。原料ガスは、メタンおよび水素を少なくとも含むガスである。原料ガスは、例えば、天然ガスおよび水素の混合気である。第1熱交換部130によって加熱された原料ガスは、予熱部250に送出される。一方、第1熱交換部130によって冷却された生成ガスは、後述する第2分離部170に送出される。
【0028】
予熱部250は、上記したように、加熱炉230の放熱によって予熱温度に維持される。したがって、予熱部250は、第1熱交換部130によって加熱された原料ガスを予熱温度まで予熱(加熱)することができる。
【0029】
第2熱交換部140は、予熱部250によって予熱された原料ガスと、加熱炉230から排出された生成ガスとを熱交換させる。これにより、生成ガスが有する熱で原料ガスが加熱され、生成ガスが冷却される。第2熱交換部140によって加熱された原料ガスは、加熱炉230に導入される。一方、第2熱交換部140によって冷却された生成ガスは、第1熱交換部130に導入される。
【0030】
加熱炉230には、第1熱交換部130、予熱部250、および、第2熱交換部140によって加熱された原料ガスが導入される。
【0031】
加熱炉230に導入された原料ガスは、上記したように、集光装置110によって1000℃以上2000℃以下に維持される。そうすると、例えば、下記反応式(1)、反応式(2)に示す反応が進行し、原料ガスに含まれるメタン(CH)が、エチレン(C)およびアセチレン(C)に変換される。
2nCH + 6nH → nC + 9nH …反応式(1)
2nCH + 6nH → nC + 8nH …反応式(2)
なお、反応式(1)、反応式(2)をはじめとする反応式中、nは1以上の整数である。
【0032】
加熱炉230に導入された原料ガス中の水素は、原料ガス中のメタン(1モル)に対し、0.1モル以上8モル以下である。原料ガス中の水素は、原料ガス中のメタンに対し3モル以上であることが好ましい。メタンに対して3モル以上の水素が導入されることにより、加熱炉230は、エチレンおよびアセチレンの収率を向上させることができる。
【0033】
なお、水素は、相対的に熱容量が大きい。このため、メタンに対して8モルを上回る水素が導入されると、加熱炉230の温度維持に要する熱エネルギーが大きくなってしまう。そこで、メタンに対して8モル以下の水素を加熱炉230に導入する。これにより、加熱炉230の温度を1000℃以上2000℃以下に維持するために投入される熱エネルギーを削減することができる。
【0034】
また、アセチレンと比較してエチレンの収率を向上させる場合、集光装置110は、加熱炉230内の原料ガスを1000℃以上1200℃以下に加熱するとよい。一方、エチレンと比較してアセチレンの収率を向上させる場合、集光装置110は、加熱炉230内の原料ガスを1200℃以上1600℃以下に加熱するとよい。
【0035】
このように、加熱炉230に原料ガスが導入されることにより、エチレン、アセチレン、および、未反応の水素を少なくとも含む生成ガスが生成される。
【0036】
冷却部150は、加熱炉230で生成された生成ガスを600℃以下まで急冷する。これにより、冷却部150は、生成ガスに含まれるエチレンおよびアセチレンの熱分解を抑制することができる。
【0037】
冷却部150によって急冷された生成ガスは、第1分離部160に導入される。第1分離部160は、セラミック製の水素分離膜(例えば、多孔質セラミック製の水素分離膜)を含む。第1分離部160は、生成ガスから水素を分離して除去する。第1分離部160を備える構成により、不飽和炭化水素製造装置100は、生成ガス中の水素の量を低減することができる。そして、第1分離部160によって水素が除去された生成ガスは、上記第2熱交換部140、および、第1熱交換部130によって熱交換された後、第2分離部170に導入される。
【0038】
第2分離部170は、例えば、マイクロ多孔性金属-有機フレームワーク材料を含む。第2分離部170は、生成ガスをエチレンとアセチレンに分離する。第2分離部170を備える構成により、不飽和炭化水素製造装置100は、エチレンの純度を高めるとともに、アセチレンの純度を高めることができる。そして、第2分離部170によって分離されたエチレンは、後段の設備(例えば、プラスチック(樹脂)製造プラント)に送出される。また、第2分離部170によって分離されたアセチレンは、後段の設備(例えば、燃料製造プラント)に送出される。
【0039】
以上説明したように、第1の実施形態の不飽和炭化水素製造装置100は、集光装置110が加熱炉230内の原料ガスを加熱する。これにより、不飽和炭化水素製造装置100は、エチレンおよびアセチレン(不飽和炭化水素)を生成する際に、二酸化炭素の排出量をほぼ0(ゼロ)とすることが可能となる。つまり、不飽和炭化水素製造装置100は、加熱源を得るために化石資源の燃焼熱やそれに由来した電気エネルギーを利用する場合とは異なり、加熱源を得る過程で新たに二酸化炭素を発生させることがない。したがって、不飽和炭化水素製造装置100は、二酸化炭素の削減効果を向上させることができる。さらに、不飽和炭化水素製造装置100は、加熱源を得るために有価な化石資源を消費する必要がなくなり、加熱に要するコストを大きく抑えることができる。
【0040】
なお、原料ガス中の水素の含有率によっては、加熱炉230内において固体炭素が生成される場合もある。この場合、図1に示すように、加熱炉230の形状が、上部開口232の径が下部開口234の径より小さく、流路断面積(水平断面積)が上部開口232から下部開口234に向かうに従って漸増する形状に設計される。また、加熱炉230は、線膨張係数が固体炭素と異なる材料で構成される。加熱炉230は、例えば、アルミナ、ステアライト、フォルステライト、ジルコニアなどのセラミックス材料で形成される。
【0041】
これにより、不飽和炭化水素製造装置100において、不飽和炭化水素(エチレン、アセチレン)の製造を停止する期間、加熱炉230内の温度を変化させることで、加熱炉230の熱膨張量と、加熱炉230の内壁に付着した固体炭素の熱膨張量との間に差を生じさせることができる。したがって、不飽和炭化水素製造装置100は、固体炭素が加熱炉230の内壁に付着していたとしても、これらの熱膨張量に差が生じることによって、加熱炉230と固体炭素との間の接触面に沿って剪断力を作用させることが可能となる。つまり、不飽和炭化水素製造装置100は、加熱炉230の内壁と固体炭素との付着力を低下させることができ、加熱炉230の内壁からの固体炭素の剥離を誘発させることが可能となる。そして、剥離された固体炭素は、下部開口234を通じて自重で加熱炉230外に落下する。
【0042】
また、上記したように、不飽和炭化水素製造装置100は、第1熱交換部130を備える。これにより、第1熱交換部130は、生成ガスが有する熱で原料ガスを加熱することができる。さらに、不飽和炭化水素製造装置100は、予熱部250を備える。これにより、予熱部250は、加熱炉230から放出された熱で原料ガスを予熱することができる。また、不飽和炭化水素製造装置100は、第2熱交換部140を備える。これにより、第2熱交換部140は、生成ガスが有する熱で原料ガスを加熱することができる。このように、不飽和炭化水素製造装置100は、排熱で原料ガスを加熱することができるため、加熱に要するコストを抑えることができる。
【0043】
[第2の実施形態]
上記第1の実施形態の加熱炉230は、触媒を収容していない。しかし、加熱炉330が触媒を収容してもよい。
【0044】
図3は、第2の実施形態の不飽和炭化水素製造装置300を説明する図である。なお、図3中、実線の矢印は、原料ガスの流れを示す。図3中、破線の矢印は、生成ガスの流れを示す。また、図3中、一点鎖線の矢印は、エチレンおよびアセチレンの流れを示す。図3中、白抜き矢印は、集光された太陽光を示す。
【0045】
図3に示すように、不飽和炭化水素製造装置300は、集光装置110と、加熱部320と、第1熱交換部130と、第2熱交換部140と、第1分離部160と、第2分離部170とを含む。また、加熱部320は、筐体210と、炉室220と、伝熱材222と、加熱炉330と、予熱部250と、断熱材260を含む。なお、上記不飽和炭化水素製造装置100と実質的に等しい構成要素については、同一の符号を付して説明を省略する。また、図3中、伝熱材222をハッチングで示し、断熱材260をクロスハッチングで示す。
【0046】
加熱炉330は、原料ガスの、エチレンおよびアセチレンのいずれか一方または両方への反応(例えば、上記反応式(1)に示す反応、または、上記反応式(2)に示す反応)を促進する触媒を収容する。加熱炉330は、充填層として触媒を収容する。原料ガスの、エチレンおよびアセチレンのいずれか一方または両方への反応を促進する触媒は、例えば、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、鉄(Fe)、バナジウム(V)、および、クロム(Cr)の群から選択される1または複数である。
【0047】
加熱炉330が触媒を収容することにより、生成ガスを急冷せずとも、エチレンおよびアセチレンの熱分解を抑制することができる。これにより、不飽和炭化水素製造装置100と比較して、不飽和炭化水素製造装置300は、冷却部150を省略することが可能となる。したがって、不飽和炭化水素製造装置300は、第2熱交換部140による生成ガスの熱回収効率を向上させることができる。
【0048】
また、加熱炉330が触媒を収容する場合、原料ガス中の水素は、原料ガス中のメタンに対し0.5モル以上であることが好ましく、1モル以上であることがより好ましく、1.5モル以上であることがさらに好ましい。メタンに対して0.5モル以上の水素が導入されることにより、エチレンおよびアセチレンの収率を向上させることができる。
【0049】
以上、添付図面を参照しながら実施形態について説明したが、本開示は上記実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本開示の技術的範囲に属するものと了解される。
【0050】
例えば、上記実施形態において、原料ガスが、メタンおよび水素を少なくとも含むガスである場合を例に挙げて説明した。しかし、原料ガスは、メタンおよび酸素を少なくとも含むガスであってもよい。この場合、集光装置110は、700℃以上2000℃以下に、加熱炉330内の原料ガスを加熱してもよい。そうすると、例えば、下記反応式(3)に示す酸化カップリング反応が進行し、原料ガスに含まれるメタンが、エチレンに変換される。
2nCH + nO → nC + 2nHO …反応式(3)
また、この場合、加熱炉330は、上記反応式(3)に示す酸化カップリング反応を促進する触媒を収容する。酸化カップリング反応を促進する触媒は、SrO/La、Mn/NaWO/SiO、Li/MgO、BaF/Y、RbWO/SiO、La-CeO、および、NaWO/SiOの群から選択される1または複数である。
【0051】
さらに、原料ガスが、メタンおよび酸素を少なくとも含むガスである場合、原料ガス中のメタンを部分酸化させ、下記反応式(4)に示す反応を進行させて、メタンをアセチレンに変換してもよい。
2nCH + nO → nC + nH + 2nHO …反応式(4)
この場合、集光装置110は、1500℃程度に、加熱炉230内の原料ガスを加熱してもよい。
【0052】
また、原料ガスは、エタン(C)を少なくとも含むガスであってもよい。この場合、集光装置110は、1000℃以上2000℃以下に、加熱炉230、330内の原料ガスを加熱してもよい。そうすると、例えば、下記反応式(5)に示す熱分解(クラッキング)反応が進行し、原料ガスに含まれるエタンが、エチレンに変換される。
nC → nC + nH …反応式(5)
【0053】
さらに、原料ガスは、エタンおよび水素を少なくとも含むガスであってもよい。この場合、集光装置110は、1000℃以上2000℃以下に、加熱炉230、330内の原料ガスを加熱してもよい。そうすると、例えば、下記反応式(6)、および、反応式(7)に示す熱分解(クラッキング)反応が進行し、原料ガスに含まれるエタンが、エチレンおよびアセチレンに変換される。
nC + 3nH → nC + 5nH …反応式(6)
nC + 3nH → nC + 4nH …反応式(7)
【0054】
また、原料ガスは、エタンおよび酸素を少なくとも含むガスであってもよい。この場合、原料ガス中のエタンを部分酸化させ、下記反応式(8)に示す反応を進行させて、エタンをアセチレンに変換してもよい。
nC + nO → nC + 2nHO …反応式(8)
この場合、集光装置110は、1500℃程度に、加熱炉230内の原料ガスを加熱してもよい。
【0055】
また、上記第実施形態において、加熱炉230、330は、上部開口232から下部開口234に向かうに従って流路断面積が漸増する形状である場合を例に挙げて説明した。しかし、加熱炉230、330は、炉室220に配される箇所の流路断面積が、他の流路断面積より小さくてもよい。これにより、加熱炉230、330は、700℃以上2000℃以下の温度環境下の原料ガスの滞留時間を短くすることができる。つまり、滞留時間が短くなり、かつ、流速が高くなることにより、層流対流熱伝達条件から乱流対流熱伝達条件に切り替わり、加熱炉230、330から原料ガスへの伝熱速度を高める(急加熱する)ことができる。また、滞留時間が短くなる、つまり、加熱時間が短くなることから、原料ガスが加熱されてから冷却されるまでの時間が短くなる(急冷却することができる)。換言すれば、炉室220に配される箇所の流路断面積が、他の流路断面積より小さい加熱炉230、330とすることにより、原料ガスを急加熱した直後に急冷却させることができる。これにより、急加熱によって生成された生成ガスに含まれるエチレンおよびアセチレンの熱分解の進行を抑制することが可能となる。したがって、生成ガス中のエチレンおよびアセチレンの収率を高めることができる。なお、加熱炉230、330は、炉室220に配される箇所に不活性粒子が充填されることで、流路断面積が狭められるとよい。この場合、加熱炉230、330の内壁と接触する不活性粒子は、加熱炉230、330の内壁から熱伝導で加熱される。したがって、原料ガスは、加熱炉230、330の内壁の表面に加えて、不活性粒子の表面からも加熱されることになる(つまり、伝熱面積が増大する)。これにより、加熱炉230、330は、原料ガスをさらに急加熱することができる。
【0056】
また、上記実施形態において、加熱部120、320の筐体210が、円筒形状である場合を例に挙げて説明した。しかし、加熱部120、320の筐体210の形状に限定はない。さらに、上記実施形態において、筐体210は、軸方向が水平方向となるように設けられる場合を例に挙げて説明した。しかし、筐体210の設置方向に限定はない。例えば、筐体210は、軸方向が水平方向と交差する方向となるように設けられてもよい。
【0057】
また、上記実施形態において、炉室220に加熱炉230、330が配され、加熱炉230、330を通過する原料ガスが間接的に加熱される間接加熱式の加熱部120、320を例に挙げて説明した。しかし、不飽和炭化水素製造装置100、300は、気密性を有する採光窓212を備え、炉室220の内部に原料ガスが直接導入されることによって、原料ガスが直接的に加熱される直接加熱式の加熱部を備えてもよい。
【0058】
また、上記実施形態において、ヘリオスタット112と、放物曲面鏡114とを備える集光装置110を例に挙げて説明した。しかし、集光装置110は、太陽光を集光させて太陽熱を発生させることが可能であれば、その種類や構成に限定はない。例えば、集光装置110は、タワー型の集光装置であってもよい。
【0059】
また、上記実施形態において、加熱炉230、330の加熱源として、集光装置110を例に挙げて説明した。しかし、加熱炉230、330の加熱源は、集光装置110に限定されない。加熱炉230、330の加熱源として、集光装置110に代えて、または、加えて、燃焼装置や、電気ヒータ等が用いられてもよい。そして、曇天、雨天等の集光装置110の機能が低下する間、加熱炉230、330の加熱源は、燃焼装置または電気ヒータに切り換えられてもよい。なお、燃焼装置は、原料ガス、または、第1分離部160によって分離された水素を燃焼させてもよい。
【0060】
また、上記実施形態において、不飽和炭化水素製造装置100、300は、予熱部250を備える構成を例に挙げて説明した。しかし、予熱部250は、必須の構成ではない。
【0061】
また、上記実施形態において、不飽和炭化水素製造装置100、300は、第1熱交換部130を備える構成を例に挙げて説明した。しかし、第1熱交換部130は、必須の構成ではない。
【0062】
また、上記実施形態において、不飽和炭化水素製造装置100、300は、第2熱交換部140を備える構成を例に挙げて説明した。しかし、第2熱交換部140は、必須の構成ではない。
【0063】
また、上記実施形態において、加熱炉230、330、および、予熱部250が鉛直方向に延在する場合を例に挙げて説明した。しかし、加熱炉230、330、および、予熱部250のうちいずれか1または複数は、鉛直方向と交差する方向(例えば、水平方向)に延在してもよい。
【0064】
また、上記実施形態において、第2分離部170がマイクロ多孔性金属-有機フレームワーク材料を含む構成を例に挙げて説明した。しかし、第2分離部170は、生成ガスからエチレンまたはアセチレンを分離できれば構成に限定はない。第2分離部170は、例えば、アセチレンを溶解する吸収剤を含んでもよい。
【0065】
また、冷却部150によって回収された熱で原料ガスが予熱されてもよい。
【0066】
また、第1分離部160によって分離された水素が、原料ガスとして利用されてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本開示は、不飽和炭化水素製造装置に利用することができる。
【符号の説明】
【0068】
100:不飽和炭化水素製造装置 110:集光装置 130:第1熱交換部 140:第2熱交換部 150:冷却部 170:第2分離部(分離部) 230:加熱炉 250:予熱部 300:不飽和炭化水素製造装置 330:加熱炉
図1
図2
図3