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特許7028358水処理装置、水処理方法、薬剤、および薬剤の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-21
(45)【発行日】2022-03-02
(54)【発明の名称】水処理装置、水処理方法、薬剤、および薬剤の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/52 20060101AFI20220222BHJP
   C02F 1/60 20060101ALI20220222BHJP
   B01D 21/01 20060101ALI20220222BHJP
【FI】
C02F1/52 K
C02F1/60
B01D21/01 102
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2021139914
(22)【出願日】2021-08-30
【審査請求日】2021-08-30
(31)【優先権主張番号】P 2021003271
(32)【優先日】2021-01-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2021003369
(32)【優先日】2021-01-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004123
【氏名又は名称】JFEエンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 祐也
(72)【発明者】
【氏名】辻 猛志
(72)【発明者】
【氏名】渕上 浩司
(72)【発明者】
【氏名】功刀 亮
(72)【発明者】
【氏名】大里 彩
(72)【発明者】
【氏名】江川 拓也
【審査官】富永 正史
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-069399(JP,A)
【文献】特開2019-155216(JP,A)
【文献】特開2014-168742(JP,A)
【文献】特開2019-042646(JP,A)
【文献】特開2019-051450(JP,A)
【文献】特開2021-000597(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 1/52- 1/60
C02F 11/00-11/20
B01D 21/01
B01D 61/00-71/82
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリカを含む被処理水から前記シリカを除去する水処理装置であって、
前記被処理水を貯留し、前記被処理水に含まれるシリカと薬剤とを反応させる反応部と、
前記反応部に設けられ、前記シリカを凝集可能なアルミニウム塩からなる凝集剤を添加する凝集剤添加部と、
前記被処理水の流れ方向に沿って前記反応部の下流側に設けられ、前記反応部において反応した前記シリカと前記薬剤とが凝集して凝集沈殿汚泥として沈殿する沈殿部と、
前記沈殿部において沈殿した前記凝集沈殿汚泥を、前記薬剤として前記反応部に投入する汚泥輸送部と、
前記反応部および前記沈殿部の少なくとも一方に貯留された前記被処理水のpHを、8以上12以下に調整するpH調整部と、を備える
ことを特徴とする水処理装置。
【請求項2】
前記反応部が複数の反応槽から構成され、前記汚泥輸送部は、前記凝集沈殿汚泥を、前記複数の反応槽のうちの前記被処理水の流れ方向に沿った最下流の反応槽以外の反応槽に供給する
ことを特徴とする請求項1に記載の水処理装置。
【請求項3】
前記反応部は、第1反応槽と、前記被処理水の流れ方向に沿って前記第1反応槽の下流側に設けられた第2反応槽とを有し、前記汚泥輸送部は、前記凝集沈殿汚泥を、前記第1反応槽に供給する
ことを特徴とする請求項1または2に記載の水処理装置。
【請求項4】
前記反応部は、第1反応槽と、前記被処理水の流れ方向に沿って前記第1反応槽の下流側に設けられた第2反応槽とを有し、前記汚泥輸送部は、前記凝集沈殿汚泥を、前記第2反応槽に供給する
ことを特徴とする請求項1または2に記載の水処理装置。
【請求項5】
前記凝集剤添加部が前記第2反応槽に設けられている
ことを特徴とする請求項3または4に記載の水処理装置。
【請求項6】
前記反応部が複数の反応槽から構成され、前記汚泥輸送部は、前記凝集沈殿汚泥を、前記複数の反応槽のうちの前記被処理水の流れ方向に沿った最下流の反応槽に供給する
ことを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の水処理装置。
【請求項7】
前記凝集剤添加部が前記最下流の反応槽に設けられている
ことを特徴とする請求項6に記載の水処理装置。
【請求項8】
前記沈殿部において沈殿した前記凝集沈殿汚泥を前記薬剤として用いるサイクル回数が、前記凝集沈殿汚泥の生成から5回以内である
ことを特徴とする請求項1~7のいずれか1項に記載の水処理装置。
【請求項9】
前記汚泥輸送部は、前記凝集沈殿汚泥を、再生処理を行うことなく前記薬剤として用いて前記反応部に投入可能に構成されている
ことを特徴とする請求項1~8のいずれか1項に記載の水処理装置。
【請求項10】
前記pH調整部は、前記被処理水のpHを9以上11以下に調整可能に構成されている
ことを特徴とする請求項1~9のいずれか1項に記載の水処理装置。
【請求項11】
シリカを含む被処理水から前記シリカを除去する水処理方法であって、
前記被処理水に含まれるシリカと薬剤とを反応部において反応させる反応工程と、
前記反応部にアルミニウム塩からなる凝集剤を添加する添加工程と、
前記被処理水の流れ方向に沿って前記反応部の下流側に設けられた沈殿部において、前記シリカと前記薬剤とを凝集させて凝集沈殿汚泥として沈殿させる沈殿工程と、
前記沈殿部に沈殿した前記凝集沈殿汚泥を、前記反応部に投入する汚泥輸送工程と、
前記反応工程および前記沈殿工程の少なくとも一方において前記被処理水のpHを、8以上12以下に調整するpH調整工程と、を含む
ことを特徴とする水処理方法。
【請求項12】
前記汚泥輸送工程において、前記凝集沈殿汚泥を、再生処理を行うことなく前記薬剤として用いて前記反応部に投入する
ことを特徴とする請求項11に記載の水処理方法。
【請求項13】
前記pH調整工程において、前記被処理水のpHを9以上11以下に調整する
ことを特徴とする請求項11または12に記載の水処理方法。
【請求項14】
pHが8以上12以下のシリカ含有水に添加することによって凝集沈殿を生じさせるアルミニウム塩からなる凝集剤と、
前記凝集剤によって凝集沈殿されたシリカと、を含み、
前記シリカ含有水に前記凝集剤を添加して凝集沈殿した凝集沈殿汚泥からなる
ことを特徴とする薬剤。
【請求項15】
前記シリカ含有水に再生処理を行うことなく前記凝集剤を添加して凝集沈殿した凝集沈殿汚泥からなる
ことを特徴とする請求項14に記載の薬剤。
【請求項16】
前記シリカ含有水のpHは、9以上11以下である
ことを特徴とする請求項14または15に記載の薬剤。
【請求項17】
pHが8以上12以下に調整されたシリカ含有水にアルミニウム塩からなる凝集剤を添加する工程と、
前記シリカ含有水に含まれるシリカを凝集沈殿させて凝集沈殿汚泥を生成する工程と、含む
ことを特徴とする薬剤の製造方法。
【請求項18】
前記シリカ含有水に再生処理を行うことなく凝集沈殿汚泥を生成する
ことを特徴とする請求項16に記載の薬剤の製造方法。
【請求項19】
前記シリカ含有水のpHを、9以上11以下に調整する
ことを特徴とする請求項17または18に記載の薬剤の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水処理装置、水処理方法、薬剤、および薬剤の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、カルシウムイオンと溶解性シリカを含む随伴水から溶解性シリカを効率よく除去し、後の逆浸透膜処理工程で逆浸透膜を閉塞させない方法として、随伴水にアルカリ性の条件下でマグネシウム塩を添加、混合して、不溶性のシリカと硫酸カルシウムを生成させるマグネシウム塩添加工程と、マグネシウム塩添加工程で得られた第1反応液を精密膜ろ過処理して、不溶化したシリカおよび硫酸カルシウムをろ過分離する精密膜ろ過処理工程と、精密膜ろ過処理工程で得られたろ過水に酸を添加、混合して、ろ過水のpH値を5~9の範囲内、かつ、ランゲリア指数を負の範囲とする酸添加工程と、酸添加工程で得られた第2反応液を逆浸透膜処理して、淡水と膜濃縮水を得る逆浸透膜処理工程とを有する方法が記載されている。
【0003】
特許文献2には、シリカを含む被処理水に、マグネシウム化合物を添加するか、被処理水中に含まれるマグネシウムを利用してpH10以上でシリカを不溶化するための反応槽と、得られた不溶化物を固液分離する沈殿槽と、沈殿槽により分離した汚泥の少なくとも一部に酸を添加する汚泥再生槽、酸添加配管と、酸を添加した汚泥を固液分離する汚泥分離槽と、汚泥分離槽により分離した第2固液分離水の少なくとも一部を沈殿槽の前段に返送する固液分離水返送配管と、を備える、シリカ含有水の処理装置が記載されている。
【0004】
上述したシリカなどの塩を含有する水を逆浸透膜(RO)膜などの半透膜を用いた水処理装置によって処理する際には、スケーリングの発生が問題になる。スケーリングは、溶解度の低い塩類が、半透膜の表面上に析出することによって発生する。スケーリングの発生は、半透膜の透過性能の大幅な低下や、原水の供給側における圧力損失を大きく上昇させることになるので、運転の継続を困難にする。スケーリングの原因物質は、主として難溶性の塩であり、例えば、シリカ(SiO2、二酸化ケイ素)、炭酸カルシウム(CaCO3)、硫酸カルシウム(CaSO4)、水酸化マグネシウム(Mg(OH)2)、硫酸バリウム(BaSO4)、フッ化カルシウム(CaF2)などが挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開第2013/153587号
【文献】特開2019-069399号公報
【文献】特開2011-147847号公報
【文献】特開2019-155216号公報
【文献】特開2019-051450号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特に、シリカ(SiO2)の原因物質であるケイ酸イオン(SiO4 4-)は水中において種々の形態をとることが知られており、塩を含有する水からの除去が極めて困難なスケーリングの原因物質の1つである。ケイ酸イオン(SiO4 4-)を除去するためには、主として樹脂や吸着剤を利用した除去方法と、薬剤の投入による共沈または凝集沈殿による除去方法との2つの方法が検討されている。
【0007】
これらのうちの樹脂や吸着剤を利用したシリカの除去方法として、純水製造プロセスにおいてはイオン交換樹脂を利用したシリカの除去方法が知られている。ところが、高濃度のシリカ含有排水や、シリカ以外の陰イオンが多く存在する陰イオンリッチな高塩濃度の排水においては、イオン交換樹脂の再生頻度が増加することになるため、水処理が高コスト化するため好ましくない。また、イオン交換樹脂の交換容量の近傍においては、吸着していたシリカが溶出して、シリカ濃度が急激に上昇するという問題も生じる。この場合、不可逆的なシリカによるスケールが突然発生することになるため、半透膜を用いた水処理プロセスにおいて大きな問題になる。そこで、特許文献1,2に記載されているような、凝集剤を投入することによってシリカを除去する方法を採用すると、凝集剤の高コスト化が問題になることから、シリカ含有水を処理する際の凝集剤の使用量の低減が求められていた。
【0008】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、その目的は、シリカを含む被処理水を処理する際に、添加する凝集剤の使用量を低減できる水処理装置、水処理方法、薬剤、および薬剤の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の一態様に係る水処理装置は、シリカを含む被処理水から前記シリカを除去する水処理装置であって、前記被処理水を貯留し、前記被処理水に含まれるシリカと薬剤とを反応させる反応部と、前記反応部に設けられ、前記シリカを凝集可能なアルミニウム塩からなる凝集剤を添加する凝集剤添加部と、前記被処理水の流れ方向に沿って前記反応部の下流側に設けられ、前記反応部において反応した前記シリカと前記薬剤とが凝集して凝集沈殿汚泥として沈殿する沈殿部と、前記沈殿部において沈殿した前記凝集沈殿汚泥を、前記薬剤として前記反応部に投入する汚泥輸送部と、を備えることを特徴とする。
【0010】
本発明の一態様に係る水処理装置は、上記の発明において、前記反応部が複数の反応槽から構成され、前記汚泥輸送部は、前記凝集沈殿汚泥を、前記複数の反応槽のうちの前記被処理水の流れ方向に沿った最下流の反応槽以外の反応槽に供給することを特徴とする。
【0011】
本発明の一態様に係る水処理装置は、上記の発明において、前記反応部は、第1反応槽と、前記被処理水の流れ方向に沿って前記第1反応槽の下流側に設けられた第2反応槽とを有し、前記汚泥輸送部は、前記凝集沈殿汚泥を、前記第1反応槽に供給することを特徴とする。
【0012】
本発明の一態様に係る水処理装置は、上記の発明において、前記反応部は、第1反応槽と、前記被処理水の流れ方向に沿って前記第1反応槽の下流側に設けられた第2反応槽とを有し、前記汚泥輸送部は、前記凝集沈殿汚泥を、前記第2反応槽に供給することを特徴とする。
【0013】
本発明の一態様に係る水処理装置は、上記の発明において、前記凝集剤添加部が前記第2反応槽に設けられていることを特徴とする。
【0014】
本発明の一態様に係る水処理装置は、上記の発明において、前記反応部が複数の反応槽から構成され、前記汚泥輸送部は、前記凝集沈殿汚泥を、前記複数の反応槽のうちの前記被処理水の流れ方向に沿った最下流の反応槽に供給することを特徴とする。
【0015】
本発明の一態様に係る水処理装置は、上記の発明において、前記凝集剤添加部が前記最下流の反応槽に設けられていることを特徴とする。
【0016】
本発明の一態様に係る水処理装置は、上記の発明において、前記反応部および前記沈殿部の少なくとも一方に貯留された前記被処理水のpHを、8以上12以下に調整するpH調整部を備えることを特徴とする。
【0017】
本発明の一態様に係る水処理方法は、シリカを含む被処理水から前記シリカを除去する水処理方法であって、前記被処理水に含まれるシリカと薬剤とを反応部において反応させる反応工程と、前記反応部にアルミニウム塩からなる凝集剤を添加する添加工程と、前記被処理水の流れ方向に沿って前記反応部の下流側に設けられた沈殿部において、前記シリカと前記薬剤とを凝集させて凝集沈殿汚泥として沈殿させる沈殿工程と、前記沈殿部に沈殿した前記凝集沈殿汚泥を、前記反応部に投入する汚泥輸送工程と、を含むことを特徴とする。
【0018】
本発明の一態様に係る薬剤は、シリカ含有水に添加することによって凝集沈殿を生じさせる凝集剤と、前記凝集剤によって凝集沈殿されたシリカと、を含み、前記シリカ含有水に前記凝集剤を添加して凝集沈殿した凝集沈殿汚泥からなることを特徴とする薬剤。
【0019】
本発明の一態様に係る薬剤は、上記の発明において、前記凝集剤は、アルミニウム塩から構成されることを特徴とする。
【0020】
本発明の一態様に係る薬剤の製造方法は、シリカ含有水に凝集剤を添加する工程と、前記シリカ含有水に含まれるシリカを凝集沈殿させて凝集沈殿汚泥を生成する工程と、含むことを特徴とする。
【0021】
本発明の一態様に係る薬剤の製造方法は、上記の発明において、前記シリカ含有水のpHを8以上12以下に調整することを特徴とする。
【0022】
本発明の一態様に係る薬剤の製造方法は、上記の発明において、前記凝集剤は、アルミニウム塩から構成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
本発明に係る水処理装置、水処理方法、薬剤、および薬剤の製造方法によれば、シリカを含む被処理水を処理する際に、添加する凝集剤の使用量を低減することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1図1は、本発明の第1の実施形態による水処理システムを示すブロック図である。
図2図2は、本発明の実施形態による反応槽におけるスラッジのみを複数サイクル使用したサイクル回数に対する残存シリカ濃度を示すグラフである。
図3図3は、本発明の実施形態による反応槽におけるスラッジのサイクル回数に対する残存シリカ濃度を示すグラフである。
図4図4は、図3に示すグラフのサイクル回数が5回の場合の、PACの添加量に対する残存シリカ濃度を示すグラフである。
図5図5は、本発明の実施形態による水処理システムの反応槽において、スラッジのサイクル回数に対するシリカ除去率をpHに応じて示すグラフである。
図6図6は、本発明の第2の実施形態による水処理システムを示すブロック図である。
図7図7は、本発明の第3の実施形態による水処理システムを示すブロック図である。
図8図8は、本発明の第3の実施形態による水処理システムの反応槽における水処理方法を説明するための図である。
図9図9は、本発明の第4の実施形態による水処理システムを示すブロック図である。
図10図10は、本発明の第4の実施形態による水処理システムの反応槽における水処理方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しつつ説明する。なお、以下の実施形態の全図においては、同一または対応する部分には同一の符号を付す。また、本発明は以下に説明する実施形態によって限定されるものではない。
【0026】
(第1の実施形態)
まず、本発明の第1の実施形態による水処理装置を備えた水処理システムおよび水処理方法について説明する。図1は、第1の実施形態による水処理システムを示すブロック図である。
【0027】
図1に示すように、第1の実施形態による水処理システム1は、受入槽10、薬注装置25が設けられた第1反応槽20、第2反応槽30、沈殿槽40,pH調整槽50、ろ過処理部60、シリカ濃度計71,72、ポンプ80、および脱水機90を備える。
【0028】
受入槽10は、例えば冷却塔(図示せず)などから排出される排水などのシリカを含む被処理水が流入される槽である。受入槽10におけるシリカ濃度(SiO2濃度)はシリカ濃度計71により計測される。シリカを含むシリカ含有水である被処理水は、受入槽10に貯留された後、第1反応槽20にその下部から供給される。なお、本明細書において、シリカとは、二酸化ケイ素(SiO2)、またはSiO2によって構成される物質の総称である。
【0029】
(反応工程)
反応部を構成する反応槽としての第1反応槽20においては、シリカを含む被処理水を塩基性とするように、pH調整部(図示せず)によってpHが調整され、具体的にpHは、例えば8以上12以下(pH8~pH12)、好適には9以上12以下(pH9~pH12)、より好適には9以上11以下(pH9~pH11)に調整される。また、第1反応槽20においては、主としてシリカ以外のスケール成分として、カルシウム(Ca)の難溶性塩などを除去するために、例えば炭酸ナトリウム(Na2CO3)などのカルシウム除去剤が注入される。第1反応槽20においては、攪拌部21によって撹拌が実行され、被処理水は懸濁状態となる。被処理水は、第1反応槽20の上部から越流させて第2反応槽30の下部に供給される。なお、スケール成分としては、主としてSiO2を含むシリカが含まれ、例えば炭酸カルシウム(CaCO3)、硫酸カルシウム(CaSO4)、およびフッ化カルシウム(CaF2)などのカルシウム(Ca)の化合物以外にも、水酸化マグネシウム(Mg(OH)2)、または硫酸バリウム(BaSO4)なども含まれる場合がある。
【0030】
被処理水が第2反応槽30に供給されると、第2反応槽30には、凝集剤として、後段の沈殿槽40において採取された凝集沈殿汚泥であるスラッジ5が添加される。なお、スラッジ5の添加は、スラッジ5に対しては酸性溶液などを用いた洗浄、いわゆる再生処理を行うことなく実行される。
【0031】
(添加工程)
他方、反応部を構成する反応槽としての第2反応槽30には、必要に応じて、第2反応槽30に設けられた凝集剤添加部(図示せず)によって、凝集剤として、例えばポリ塩化アルミニウム([Al2(OH)nCl6-nm:PAC)などのアルミニウム塩が添加される。第2反応槽30に添加されるPACなどのアルミニウム塩の添加量は、シリカ濃度計71,72により計測されたシリカ濃度の計測値に基づいて決定される。第2反応槽30においては、攪拌部31によって撹拌が実行され、被処理水は懸濁状態となる。被処理水は、第2反応槽30から沈殿槽40に供給される。なお、後段のシリカ濃度計72により計測されたシリカ濃度が所定のシリカ濃度以下であれば、PACなどのアルミニウム塩を添加しなくても良い。シリカ濃度計72によるシリカ濃度の計測については後述する。
【0032】
(沈殿工程)
沈殿槽40においては、被処理水が静置されることより、攪拌されたスラッジ5が凝集剤として機能し、被処理水に含有されたシリカと混合してシリカを含むスラッジ5が沈殿する。すなわち、第2反応槽30において、懸濁状態となったスラッジ5が凝集剤として機能して、被処理水からシリカの一部がスラッジ5に吸着され、沈殿槽40において沈殿することによって除去される。なお、沈殿槽40において、pH調整部(図示せず)によって、被処理水のpHを、8以上12以下(pH8~pH12)、好適には9以上12以下(pH9~pH12)、より好適には9以上11以下(pH9~pH11)に調整してもよい。
【0033】
(汚泥輸送工程)
沈殿槽40において沈殿したスラッジ5の少なくとも一部は、汚泥輸送部としてのポンプ80によって引き抜かれる。ポンプ80によって引き抜くスラッジ5の量は、沈殿槽40内におけるスラッジ5の略全量としても良い。この場合、ポンプ80は、引き抜いたスラッジ5の一部、例えばスラッジ5の沈殿量の20%や、引き抜く周期の時間において沈殿した量の分を、例えばフィルタープレスなどの脱水機90に供給することができる。この場合、沈殿槽40に沈殿しているスラッジ5の全沈殿量の80%分や、引き抜く周期の時間において沈殿した分と略同量のスラッジ5を除いた残部が、第2反応槽30に投入される。また、ポンプ80は、沈殿槽40内におけるスラッジ5の一部だけ引き抜くようにしても良い。この場合、ポンプ80によって引き抜かれたスラッジ5において、被処理水との接触が累計で所定回数以上、例えば5回以上となったスラッジ5を脱水機90に供給することも可能である。また、ポンプ80は、沈殿槽40においては、略一定量のスラッジ5が残留するように引き抜き量を調整することも可能である。ここで、一定量は、スラッジ5を引き抜く1周期分の時間において増加するスラッジ5の量の5倍程度とすることができる。これにより、スラッジ5における凝集剤としての機能を確保することができる。また、引き抜いた凝集汚泥の全量を脱水機90に供給して、脱水した脱水ケーキの一部または全量を第2反応槽30へ投入することも可能である。この場合、脱水機90の負荷が上昇する可能性があるが、引き抜いた凝集汚泥に含まれる水分による処理量の増加を抑制できたり,第2反応槽30への投入量の制御をより正確にしたりすることができる。
【0034】
引き抜かれたスラッジ5の一部は、ポンプ80によって第2反応槽30に供給される。引き抜かれたスラッジ5の残部は、脱水機90に供給されて脱水され、脱水ケーキとなって廃棄または所定の用途に再利用される。
【0035】
沈殿槽40の後段である被処理水の流出側で、pH調整槽50の前段である流入側に、シリカ濃度計72が設けられている。シリカ濃度計72によって、例えば6分~10分の間隔で継続して沈殿槽40の上澄み水のシリカ濃度が計測される。その後、シリカ濃度計71,72によって計測されたシリカ濃度に基づいたフィードバック制御によって、第2反応槽30におけるアルミニウム塩の添加量が決定される。
【0036】
具体的に、第2反応槽30にスラッジ5が添加されて、懸濁状態のスラッジ5が凝集剤として機能することにより、被処理水中のシリカが除去される。続いて、シリカ濃度計72によって計測されたシリカ濃度が、シリカ濃度計71によって計測されたシリカ濃度から所望とするシリカ濃度以下になるために必要なアルミニウム塩の量を、アルミニウム塩の添加量に決定する。アルミニウム塩としてPACを添加する場合、添加量は、計測されたシリカ濃度の1当量以上2当量以下が好ましい。これにより、従来に比して、アルミニウム塩の添加量を低減できる。
【0037】
なお、上述した水処理システム1において、第1反応槽20、第2反応槽30、および沈殿槽40をそれぞれ複数設け、第1反応槽20、第2反応槽30、および沈殿槽40からなる水処理系列を複数並列させて、被処理水を処理可能な2系列や3系列などの複数系列から構成しても良い。
【0038】
また、上述した水処理システム1において、被処理水の流れ方向に沿って第1反応槽20の上流側に、少なくとも1槽の他の反応槽を設けても良い。また、被処理水の流れ方向に沿った第1反応槽20と第2反応槽30の間に、さらに少なくとも1槽の他の反応槽を設けても良い。これらの場合、第2反応槽30を、反応部を構成する複数の反応槽のうちの、被処理水の流れ方向に沿った最下流の反応槽としても良い。また、被処理水の流れ方向に沿って第2反応槽30の下流側に、さらに少なくとも1槽の反応槽が設けられていても良い。この場合、第1反応槽20を、反応部を構成する複数の反応槽において、被処理水の流れ方向に沿った最上流の反応槽としても良い。さらに、これらの構成を組み合わせることも可能である。すなわち、反応部を3槽以上の複数の反応槽から構成し、これらの3槽以上の反応槽のうちの1つの反応槽を第1反応槽20とし、第1反応槽20より下流側の少なくとも1槽の反応槽のうちの1つの反応槽を第2反応槽30としても良い。
【0039】
また、第1反応槽20を複数の反応槽から構成してもよく、第2反応槽30を複数の反応槽から構成しても良い。同様に、沈殿部を構成する沈殿槽40を、被処理水が直列に輸送される複数の沈殿槽から構成しても良い。
【0040】
(アルミニウム除去工程)
沈殿槽40において得られた上澄み水は、pH調整槽50に供給されてpHが4以上8以下に調整される。これにより、上澄み水のアルミニウム(Al)が不溶性になって除去される。pH調整槽50においてpHが調整された調整水であるAl含有水は、ろ過処理部60に供給される。なお、pH調整槽50においてpHが調整されたAl含有水の一部を第2反応槽30に戻すようにしても良い。
【0041】
ろ過処理部60は、砂ろ過または例えばMF膜やUF膜などの所定の膜を有して構成される。ろ過処理部60においては、pH調整槽50から供給された調整水からAlを除去するろ過処理が行われる。これにより、処理水が得られる。
【0042】
上述したように、シリカの処理槽である第2反応槽30の前段に、シリカ以外の夾雑物を除去する第1反応槽20を設けていることにより、第2反応槽30において、アルミニウム塩がシリカ以外の物質によって消費されるのを抑制することが可能となる。
【0043】
(凝集沈殿汚泥)
次に、凝集剤として機能する凝集沈殿汚泥であるスラッジ5について説明する。まず、第1反応槽20、第2反応槽30、および沈殿槽40に順次流入される被処理水であるシリカ含有水に含まれるシリカについて、本発明者が行った鋭意検討について説明する。
【0044】
すなわち、本発明者の知見によれば、シリカは、排水中で溶解性シリカと非溶解性のコロイド状シリカに分類される。本発明者の実験および実験に伴う鋭意検討によれば、溶解性シリカおよびコロイド状シリカに対して、アルミニウム塩の投入によって発生する凝集汚泥フロックは、次のような効果を示すと考えられる。
【0045】
まず、主としてケイ酸イオンを含む溶解性シリカは、pHが8以上12以下の塩基性条件下において負の電荷を帯びている。一般に、塩基性条件下における溶解性シリカは、重合して不溶性のシリカとなる反応速度が速いことが知られている。一方、アルミニウム塩を含んだ凝集汚泥フロックは、アルミニウムイオンに由来する正の電荷を帯びた部位が局在している。そこで、本発明者が、凝集沈殿汚泥を再使用する実験を行ったところ、凝集汚泥フロックは、アルミニウムイオンの価数およびモル数から導出されるイオン強度よりも、多くの溶解性シリカを捕捉していることが判明した。
【0046】
そこで、溶解性シリカの凝集汚泥フロックに対する反応機構は、次の通りに考えられる。すなわち、負に帯電した溶解性シリカは、凝集汚泥フロック中におけるアルミニウムイオンのような正に帯電した部分(吸着活性点)に静電気的に引き寄せられて吸着する。塩基性条件下においては、ケイ酸イオンの重合速度が大きいことから、溶解性シリカは、ケイ酸イオンが吸着したサイトの近傍に接近した他の溶解性シリカと重合して凝集汚泥フロックに吸着される。このため、吸着可能なシリカの量は、アルミニウムの価数から導き出される量より大きくなる。攪拌を行うことにより、溶解性シリカと凝集汚泥フロック中の吸着活性点との接触確率が増加することから、シリカの除去率が向上する。さらに、スラッジ5の使用回数、すなわちサイクル回数を多くすることによって、未活用の吸着活性点を低減することが可能となる。
【0047】
また、コロイド状シリカは、溶解性シリカが互いに重合して数10nm~数l00nmの大きさになったものである。コロイド状の場合、粒子径が小さいため沈降性が極めて低い。また、塩基性条件下におけるコロイド状シリカは、一部が溶解して溶解性シリカと同様の形態になり、上述した反応機構と同様の反応が生じる。溶解しなかったコロイド状シリカにおいても、表面が負の電荷を帯びていることから、アルミニウムイオンの正の電荷に静電気的に引き寄せられ、凝集および重合して沈降性が向上する。これにより、シリカ含有水からシリカが除去される。
【0048】
以上のようにして、シリカ含有水に対してPACなどの凝集剤を添加することによって得られたスラッジ5を、複数回再利用した場合におけるシリカの除去の効果について以下に説明する。なお、薬剤としてのスラッジ5は、第2反応槽30および沈殿槽40における凝集沈殿処理によって得られる。具体的には、第2反応槽30においてシリカ含有水に凝集剤を添加する添加工程と、沈殿槽40においてシリカ含有水に含まれるシリカを凝集沈殿させてスラッジ5を生成する工程とによって得られる。
【0049】
図2は、本実施形態による沈殿槽40においてスラッジ5を再利用したサイクル回数に対する残存シリカ濃度を示すグラフである。なお、例えば冷却塔などから排出されるシリカ含有排水の場合、第1反応槽20に流入されるシリカ含有水のシリカ濃度は例えば126ppm程度である。また、スラッジ5のサイクル回数が1回の場合とは、PACのみを投入して得られたスラッジ5を意味し、サイクル回数が2回~5回の場合においては、凝集剤としてPACなどのアルミニウム塩を追加していない。
【0050】
図2から、サイクル回数が1回の場合、すなわちPACを添加した場合には、残存シリカ濃度は10ppm程度であって、サイクル回数が増加するごとに残存シリカ濃度が増加することが分かる。この場合、図2からは、スラッジ5のサイクル回数の増加に伴って、SiO2(シリカ)の除去率は低下することになるが、スラッジ5のサイクル回数が5回になっても残存するシリカ濃度は、40ppm程度に抑制されていることが分かる。すなわち、サイクル回数が5回のスラッジ5であっても、シリカは、(126-40=)86ppm程度除去されていることが分かる。なお、図2に示す検量線は、例えば以下の(1)式で表すことができる。なお、これらの検量線の式は、水処理システム1における第2反応槽30および沈殿槽40ごとにそれぞれ測定して導出すれば良い。
残存シリカ濃度=8.4×サイクル回数 …(1)
【0051】
図3は、本実施形態による水処理システム1の第2反応槽30および沈殿槽40におけるスラッジ5のサイクル回数に対する残存シリカ濃度を示すグラフである。図3は、スラッジ5のみを複数回再使用した場合(図2参照)、およびスラッジ5を複数回再使用するとともに、スラッジ5の再使用ごとにPACをそれぞれ、10ppm,20ppm,30ppmだけ添加した場合の残存シリカ濃度を示す。図4は、本実施形態による水処理システム1の第2反応槽30および沈殿槽40におけるスラッジ5のサイクル回数が5回の場合の、PACの添加量に対する残存シリカ濃度を示すグラフである。
【0052】
図3から、スラッジ5のサイクル回数が増加するほど、基本的には残存シリカ濃度が増加することが分かる。この傾向は、PACを添加した場合においても、同様に得られることが分かる。さらに、図4から、PACの添加量の増加に伴って、残存シリカ濃度が低減することが分かる。すなわち、水処理システム1において、PACの添加量を決定する場合には、図4に示すグラフ、すなわち検量線を作成して、所望とする残存シリカ濃度になるように、PACの添加量を決定することが好ましい。なお、図4に示す例では、スラッジ5を例えば5回再使用した場合の残存シリカ濃度のデータに基づいて、グラフおよび検量線を作成したが、必ずしもサイクル回数が5回に限定されるものではなく、サイクル回数が2回~4回や、6回以上の場合においても、サイクル回数が5回の場合と同様にして、グラフおよび検量線を作成することができる。その上で、作成したグラフおよび検量線と、所望とする残存シリカ濃度に基づいて、PACの添加量を決定することができる。
【0053】
また、本発明者は、さらに第2反応槽30および沈殿槽40におけるpHに応じたシリカ除去率について実験および検討を行った。図5は、本実施形態による水処理システム1の第2反応槽30および沈殿槽40において、pHに応じたスラッジ5のサイクル回数に対するシリカ除去率を示すグラフである。図5から、スラッジ5のサイクル回数が増加するのに伴って、シリカ除去率が低下することが分かる。具体的には、第2反応槽30および沈殿槽40におけるシリカ含有水のpHを8.0とした場合、スラッジ5のサイクル回数に伴って、シリカ除去率が47%程度から27%程度まで低減することが分かる。同様に、第2反応槽30および沈殿槽40におけるシリカ含有水のpHを10.5とした場合、シリカ除去率がスラッジ5のサイクル回数に伴って、シリカ除去率が97%程度から70%程度まで低減することが分かる。また、図5から、第2反応槽30および沈殿槽40内におけるシリカ含有水のpHを8.0とした場合に比して、pHを10.5としてより塩基性を強くした場合には、シリカ除去率が2~2.6倍程度向上することが分かる。
【0054】
すなわち、第1反応槽20、第2反応槽30、および沈殿槽40におけるシリカ含有水に対するシリカの除去処理を行った場合、シリカ含有水のpHと、PACを添加する場合にはPACの添加量とを上述のように決定することで、処理水において所望とするシリカ濃度を得ることが可能となる。
【0055】
(実験例)
また、本発明者が実験を行って、シリカ濃度が126ppmである冷却塔の排水に対して、pHを10.5としてアルミニウム塩を主成分とした凝集沈殿汚泥であるスラッジ5を投入して30分間攪拌し、再度沈殿させた。その結果、シリカ濃度を10ppmまで低減できることが確認された。同様に、サイクル回数が5回のスラッジ5を投入して攪拌および沈殿させたところ、シリカ濃度を40ppmまで低減させるだけの性能を維持できることが確認された。
【0056】
また、同様の実験条件によって沈降速度の比較実験を行った。すなわち、実施例として凝集剤にアルミニウム塩(PAC)を用いた場合、凝集沈殿汚泥であるスラッジ5の沈降速度は、いずれのサイクル回数においても1.12m/hであることが確認された。これに対し、比較例として凝集剤にマグネシウム塩(Mg(OH)2:水酸化マグネシウム)を用いた場合(特許文献4参照)、スラッジ5の沈降速度は、いずれのサイクル回数においても0.92m/hと、凝集剤としてPACを用いた場合に比して速度が遅くなることが確認された。なお、本実験例において、被対象水は上述した第1の実施形態と同様のシリカ含有水とし、凝集剤としては汚泥循環を行っていない純粋な凝集剤を使用した。すなわち、上述した第1の実施形態によれば、凝集沈殿におけるスラッジ5の沈降速度を向上させることができ、水処理システム1の水処理速度の向上を図ることができる。
【0057】
また、凝集剤としてアルミニウム塩を用いてシリカを凝集させる場合には、マグネシウム塩を共存させることが好ましい。そのため、処理排水にマグネシウム塩が十分含まれる場合においては、マグネシウム塩の添加は不要であるが、マグネシウム塩の濃度がアルミニウム塩の濃度の1当量未満の場合には、マグネシウム塩の濃度がアルミニウム塩の濃度に対して1当量以上になるようにマグネシウム塩を添加することが望ましい。
【0058】
以上説明したように本発明の第1の実施形態によれば、沈殿槽40において沈殿した凝集沈殿汚泥であるスラッジ5を、沈殿槽40の前段の反応槽、具体的には第2反応槽30に再度投入してシリカ含有水からシリカを除去している。すなわち、本実施形態においては、沈殿槽40において凝集沈殿したスラッジ5を、第2反応槽30に投入して、改めてシリカの吸着核、すなわち凝集剤として使用しているので、シリカの除去に要するPACなどの薬剤の添加量を低減できる。さらに、スラッジ5を凝集剤として使用していることにより、排出するスラッジ5の量を低減できるので、排出されたスラッジ5の後処理に要するコストを低減することが可能となる。
【0059】
さらに、従来、反応槽の前段においてpHを調整してpHを9.5~11.5程度とし、反応槽において中性(pH7~8)としている(特許文献3参照)が、上述した第1の実施形態においては、第1反応槽20におけるpHを8以上12以下(pH8~pH12)にしている。これにより、凝集剤やpH調整剤の使用量を低減しつつ、凝集沈殿をより効率良く行うことが可能となる。
【0060】
また、従来技術においては汚泥を再利用する場合に酸を用いた再生を行っている(特許文献3,5参照)。これに対し、上述した第1の実施形態においては、再生を行うことなくスラッジ5を再利用している。これにより、従来に比して工程を増やすことなく、凝集沈殿汚泥を有効に再利用できる。
【0061】
また、従来技術においては、マグネシウム系凝集剤による凝集効果を高めるために,高分子凝集剤を添加する必要があった(特許文献4,5参照)。これに対し、上述した第1の実施形態においては、アルミニウム塩からなる凝集剤を単体で用いることによって、凝集効果を向上でき、高分子凝集剤を添加する必要がないため、低コスト化を図ることができる。
【0062】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態による水処理装置を備えた水処理システムについて説明する。図6は、第2の実施形態による水処理システムを示すブロック図である。図6に示すように、第2の実施形態による水処理システム2は、第1の実施形態と同様に、受入槽10、第1反応槽20、第2反応槽30、沈殿槽40,pH調整槽50、ろ過処理部60、シリカ濃度計71,72、ポンプ80、および脱水機90を備える。
【0063】
第2の実施形態においては、沈殿槽40において、被処理水が静置されることより、攪拌されたスラッジ5が凝集剤として機能し、被処理水に含有されたシリカと混合してシリカを含むスラッジ5が沈殿する。沈殿したスラッジ5の少なくとも一部は、ポンプ80によって引き抜かれる。引き抜くスラッジ5の量は、沈殿槽40内におけるスラッジ5の増加量分とすることが好ましいが限定されない。換言すると、沈殿槽40においては、略一定量のスラッジ5が残留するように引き抜き量を調整することが好ましい。第2の実施形態においては、第1の実施形態と異なり、引き抜かれたスラッジ5の一部は、ポンプ80によって第1反応槽20に供給される。これにより、第1反応槽20には、後段の沈殿槽40からスラッジ5が輸送されて添加される。添加されたスラッジ5によって第1反応槽20内のシリカの一部が除去される。
【0064】
一方、第1反応槽20においては、被処理水を塩基性とするようにpHが調整され、具体的に、例えば8以上12以下(pH8~pH12)、好適には9以上12以下(pH9~pH12)、より好適には9以上11以下(pH9~pH11)に調整される。また、第1反応槽20においては、主としてシリカ以外のスケール成分として、例えばCaの難溶性塩などを除去するために、例えばNa2CO3などのカルシウム除去剤が注入される。第1反応槽20においては、攪拌部21によって撹拌が実行され、被処理水は懸濁状態となる。これによって、第1反応槽20内においては、カルシウム除去剤によってCaの難溶性塩などが除去されるとともに、スラッジ5によってシリカの一部が除去される。
【0065】
懸濁状態の被処理水は、第1反応槽20の上部から越流させて第2反応槽30の下部に供給される。被処理水のシリカ濃度は、第1反応槽20の後段で第2反応槽30の前段に設けられたシリカ濃度計71により計測される。なお、第1反応槽20において被処理水のシリカ濃度を計測しても良い。
【0066】
第2の実施形態においては、第1反応槽20から流出された被処理水のシリカ濃度と、沈殿槽40から流出された被処理水のシリカ濃度とに基づいて、第2反応槽30内の被処理水に添加する、例えばPACなどのアルミニウム塩の添加量が決定される。すなわち、シリカ濃度計72によって、例えば6分~10分の間隔で継続して沈殿槽40の上澄み水のシリカ濃度が計測される。同様にして、シリカ濃度計71によって、例えば6分~10分の間隔で第1反応槽20から流出された被処理水のシリカ濃度が計測される。シリカ濃度計71,72によって計測されたシリカ濃度に基づいたフィードバック制御によって、第2反応槽30におけるアルミニウム塩の添加量が決定される。その他の構成は、第1の実施形態と同様である。
【0067】
以上説明した第2の実施形態によれば、第1反応槽20、第2反応槽30、および沈殿槽40における凝集沈殿処理によって得られた凝集沈殿汚泥であるスラッジ5を、シリカの凝集剤として用いていることにより、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。さらに、第2の実施形態によれば、第1反応槽20に凝集剤として機能するスラッジ5を投入して、第1反応槽20の下流側においてシリカ濃度を計測していることにより、スラッジ5に吸着するシリカの濃度をより正確に計測することができるので、第2反応槽30において添加するアルミニウム塩の添加量を最適化できる。また、受入槽10から第1反応槽20の下部に被処理水を注入し、第1反応槽20の上部から被処理水を越流させて第2反応槽30の下部に注入していることにより、スラッジ5の侵入量を抑制できるので、新たに注入するPACなどのアルミニウム塩とスラッジ5との反応を抑制でき、第1の実施形態に比して、シリカの除去率をさらに向上できる。
【0068】
(第3の実施形態)
次に、本発明の第3の実施形態による水処理装置を備えた水処理システムについて説明する。図7は、第3の実施形態による水処理システムを示すブロック図である。図8は、第3の実施形態による水処理システムの反応槽における水処理方法を説明するための図である。なお、図8の上部の文言は工程を示す。
【0069】
図7に示すように、第3の実施形態による水処理システム3は、受入槽110、反応槽120、pH調整槽130、ろ過処理部140、シリカ濃度計151,152、ポンプ160、および脱水機170を備える。受入槽110は、例えば冷却塔(図示せず)などから排出される排水などのシリカ含有水が流入される槽である。受入槽110におけるシリカ濃度(SiO2濃度)はシリカ濃度計151により計測される。シリカを含むシリカ含有水は、受入槽110に貯留された後に反応槽120に供給される。反応槽120に凝集剤などの薬剤が添加されて、シリカ含有水からスケール成分が除去される。なお、反応槽120は、並列してシリカ含有水を流入可能な2槽や3槽などの複数の槽から構成して、処理水の流れを複数系列として構成することが可能である。反応槽120において得られた上澄み水は、pH調整槽130に供給されてpHが4以上8以下に調整される。これにより、上澄み水のアルミニウム(Al)が不溶性になる。pH調整槽130におけるシリカ濃度は、シリカ濃度計152により計測される。pH調整槽130においてpHが調整された調整水であるAl含有水は、ろ過処理部140に供給される。ろ過処理部140は砂ろ過または所定の膜を有して構成される。ろ過処理部140においては、調整水からAlを除去するろ過処理が行われ、処理水が得られる。
【0070】
上述したように水処理システム3における反応槽120においては、シリカを含むスケール成分が除去される。すなわち、図8に示すように、例えば冷却塔などから排出されたシリカ含有水はシリカを含む被処理水として受入槽110に一時的に貯留された後、反応槽120に供給される。反応槽120の初期状態としては、すでに複数回の凝集沈殿処理が行われた後における、凝集汚泥としてのスラッジ5の一部が残留した状態とする。反応槽120のpHは、塩基性を示すpHに調整され、例えば、8以上12以下、好適には10以上12以下に調整される。
【0071】
次に、反応槽120において、例えばスケール成分を除去するための例えばカルシウム(Ca)の化合物などを除去するための例えば炭酸ナトリウム(Na2CO3)などの薬剤を注入しながら、攪拌部121によって撹拌が実行される。ここで、本実施形態においては、攪拌されたスラッジ5が凝集剤として機能するため、被処理水に含有されたシリカと混合して、シリカの一部が沈殿する。ここで、シリカ濃度計(図示せず)や上澄み水をサンプリングの上、分析をして反応槽120におけるシリカ含有水のシリカ濃度を計測する。なお、スケール成分としては、主としてSiO2を含むシリカが含まれ、例えば炭酸カルシウム(CaCO3)、硫酸カルシウム(CaSO4)、およびフッ化カルシウム(CaF2)などのカルシウム(Ca)の化合物以外にも、水酸化マグネシウム(Mg(OH)2)、または硫酸バリウム(BaSO4)なども含まれる場合がある。
【0072】
スラッジ5が沈降した反応槽120から、ポンプ160によってスラッジ5の一部を排出させて、脱水機170に供給する。スラッジ5の排出量としては、初期状態におけるスラッジ5の量に対して、増加したスラッジ5の増加量分とすることが好ましい。排出されたスラッジ5は、脱水機170によって脱水されて脱水ケーキとなって、廃棄または所定の用途に再利用される。
【0073】
次に、反応槽120において、pH調整手段としての薬剤注入装置(図示せず)によってpH調整剤を添加する一方、攪拌手段としての攪拌部121によって攪拌を行う。これにより、スラッジ5が再度攪拌されて懸濁状態となる。本実施形態においては、懸濁状態となったスラッジ5が凝集剤として機能して、被処理水からシリカの一部がスラッジ5に吸着され、沈殿することによって除去される。なお、上述した反応槽120において計測されシリカ濃度に応じて、ポリ塩化アルミニウム([Al2(OH)nCl6-nm:PAC)をさらに添加しても良い。PACを添加する場合、添加量はシリカ濃度の1当量以上2当量以下が好ましい。なお、PACの添加量の算出方法の詳細については後述する。スラッジ5が沈殿した後、上澄み水は、後段のpH調整槽130に供給される。水処理は、流入・薬剤注入に復帰する。
【0074】
(凝集沈殿汚泥)
次に、凝集剤として機能する凝集沈殿汚泥であるスラッジ5について説明する。本発明者は、反応槽120に流入される例えば冷却塔からの排水などのシリカ含有水に含まれるシリカについて上述と同様に鋭意検討を行った。すなわち、本発明者は、シリカ含有水に対してPACなどの凝集剤を添加することによって得られたスラッジ5を、複数回再利用した場合におけるシリカの除去の効果について検討を行った。薬剤としてのスラッジ5は、反応槽120における凝集沈殿処理によって得られ、具体的には、シリカ含有水に凝集剤を添加する添加工程と、シリカ含有水に含まれるシリカを凝集沈殿させてスラッジ5を生成する工程とによって得られる。その結果、上述した図2図3、および図4と同様の結果が得られることが判明した。
【0075】
また、本発明者は、反応槽120におけるpHに応じたシリカ除去率について実験および検討を行った。その結果、図5に示す結果と同様の結果が得られることが判明した。すなわち、図5に示すように、シリカ除去率はスラッジ5のサイクル回数が増加するのに伴って低下する。具体的には、反応槽120内のシリカ含有水のpHを8.0とした場合、スラッジ5のサイクル回数に伴って、シリカ除去率が47%程度から27%程度まで低減する。同様に、反応槽120内のシリカ含有水のpHを10.5とした場合、シリカ除去率がスラッジ5のサイクル回数に伴って、シリカ除去率が97%程度から70%程度まで低減する。また、反応槽120内のシリカ含有水のpHを8.0とした場合に比して、pHを10.5としてより塩基性を強くした場合には、シリカ除去率が2~2.6倍程度向上することが分かる。これにより、反応槽120内のシリカ含有水に対するシリカの除去処理を行った場合に、シリカ含有水のpH、およびPACを添加する場合にはPACの添加量を決定することによって、所望とするシリカ濃度を得ることが可能となる。
【0076】
以上説明したように本発明の第3の実施形態によれば、シリカの除去の際に発生した凝集沈殿汚泥であるスラッジ5を用いて、シリカ含有水からシリカを除去している。すなわち、本実施形態においては、反応槽120において凝集沈殿したスラッジ5を、改めてシリカの吸着核、すなわち凝集剤として使用しているので、シリカの除去に要するPACなどの薬剤の添加量を低減できる。さらに、スラッジ5を凝集剤として使用していることにより、排出する汚泥の量を低減できるので、排出されたスラッジ5の後処理に要するコストを低減することが可能となる。
【0077】
また、本発明者が実験を行ったところ、シリカ濃度が120ppmである冷却塔の排水に対して、pHを10.5として、アルミニウム塩を主成分とした凝集沈殿汚泥であるスラッジ5を投入して30分程度攪拌し、再度沈殿させたところ、シリカ濃度を10ppmまで低減できることが確認された。同様に、サイクル回数が5回のスラッジ5を投入して攪拌および沈殿させたところ、シリカ濃度を40ppmまで低減させるだけの性能を維持できることが確認された。
【0078】
(第4の実施形態)
次に、本発明の第4の実施形態による水処理装置を備えた水処理システムについて説明する。図9は、第4の実施形態による水処理システムを示すブロック図である。図10は、第4の実施形態による水処理システムの反応槽における水処理方法を説明するための図である。なお、図10の上部の文言は工程を示す。
【0079】
図9に示すように、第4の実施形態による水処理システム4は、受入槽110、反応槽120、pH調整槽130、ろ過処理部140、シリカ濃度計151,152、ポンプ160、脱水機170、および汚泥貯留槽180を備える。受入槽110、反応槽120、pH調整槽130、ろ過処理部140、シリカ濃度計151,152、ポンプ160、および脱水機170については、第3の実施形態と同様である。汚泥貯留槽180は、ポンプ160を用いて、反応槽120から排出させたスラッジ5を一時的に貯留した後に反応槽120に戻すための槽である。
【0080】
水処理システム4における反応槽120においては、シリカを含むスケール成分が除去される。すなわち、図10に示すように、例えば冷却塔などから排出されたシリカ含有水は、受入槽110に一時的に貯留された後に、反応槽120に供給される。反応槽120の初期状態としては、すでに複数回の凝集沈殿処理が行われた後における、凝集汚泥としてのスラッジ5の一部が残留した状態とする。反応槽120のpHは、塩基性を示すpHに調整され、例えば8以上12以下、好適には10以上12以下に調整される。
【0081】
次に、反応槽120において、スケール成分である例えばCaの化合物などを除去するための例えばNa2CO3などの薬剤を注入しながら、攪拌部121によって撹拌が実行される。ここで、本実施形態においては、汚泥貯留槽180に貯留されたスラッジ5の一部を脱水機170に供給して脱水を行う一方、スラッジ5の残部の少なくとも一部を反応槽120に供給する。これにより、反応槽120内で攪拌されたスラッジ5は凝集剤として機能して、シリカ含有水におけるシリカと混合して、シリカの一部が沈殿させる。ここで、シリカ濃度計(図示せず)や上澄み水をサンプリングの上、分析をして反応槽120におけるシリカ含有水のシリカ濃度を計測する。
【0082】
スラッジ5が沈降した反応槽120から、ポンプ160によってスラッジ5の少なくとも一部、好適には全部を汚泥貯留槽180に供給する。ここで、汚泥貯留槽180に貯留されたスラッジ5のうちの脱水機170に供給されるスラッジ5の量としては、初期状態におけるスラッジ5の量に対して、増加したスラッジ5の増加量分とすることが好ましい。
【0083】
次に、反応槽120において、pH調整剤を添加する一方、攪拌部121によって攪拌を行う。これにより、スラッジ5が再度攪拌されて懸濁状態となる。本実施形態においては、懸濁状態となったスラッジ5が凝集剤として機能して、シリカ含有水からシリカの一部がスラッジ5に吸着され、沈殿することによって除去される。なお、上述したシリカ濃度計によって計測されたシリカ濃度に応じて、PACをさらに添加しても良い。PACを添加する場合、添加量はシリカ濃度の1当量以上2当量以下が好ましいが、PACの添加量の詳細については後述する。スラッジ5が沈殿した後、上澄み水は、後段のpH調整槽130に供給される。また、水処理は、流入・薬剤注入に復帰する。その他の構成は、第3の実施形態と同様である。
【0084】
以上説明した第4の実施形態によれば、反応槽120における凝集沈殿処理によって得られた凝集沈殿汚泥であるスラッジ5を、シリカの凝集剤として用いていることにより、第3の実施形態と同様の効果を得ることができる。さらに、反応槽120からスラッジ5の少なくとも一部、好適には全部を排出させて汚泥貯留槽180に一時的に貯留していることにより、アルミニウム凝集剤とシリカ以外の夾雑物との反応を抑制することが可能になるので、使用する薬剤の量を低減でき、薬剤のコストが低減できる。
【0085】
上述した第3および第4の実施形態による水処理方法は以下の特徴を有する。
(1)シリカを含む被処理水から前記シリカを除去する水処理方法であって、シリカ含有水に添加することによって凝集沈殿を生じさせる凝集剤を、前記シリカ含有水に添加してシリカを含む凝集沈殿汚泥を生成する工程と、前記凝集沈殿汚泥を、前記被処理水と接触させて、前記被処理水に含まれるシリカを凝集沈殿させる工程と、を含むことを特徴とする水処理方法である。
【0086】
(2)前記凝集沈殿汚泥を前記被処理水と接触させる回数が5回以下であることを特徴とする(1)に記載の水処理方法である。
【0087】
(3)前記被処理水のpHを、8以上12以下に調整することを特徴とする(1)または(2)に記載の水処理方法である。
【0088】
上述した第3および第4の実施形態による水処理装置は以下の特徴を有する。
(4)シリカを含む被処理水から前記シリカを除去する水処理装置であって、前記被処理水を貯留し、前記被処理水と薬剤とを接触させて凝集沈殿を生じさせる反応槽を備え、前記薬剤として、シリカ含有水に添加することによって凝集沈殿を生じさせる凝集剤と、凝集沈殿されたシリカと、を含み、前記凝集剤によって凝集されて前記反応槽において沈殿した凝集沈殿汚泥を用いることを特徴とする水処理装置である。
【0089】
(5)前記反応槽において生成され、排出された前記凝集沈殿汚泥を貯留可能な汚泥貯留槽をさらに備え、前記汚泥貯留槽において、前記反応槽から排出された前記凝集沈殿汚泥を貯留した後、前記凝集沈殿汚泥を前記反応槽に供給可能に構成されていることを特徴とする(4)に記載の水処理装置である。
【0090】
(6)前記反応槽に貯留された前記被処理水のpHを、8以上12以下に調整するpH調整手段を備えることを特徴とする(4)または(5)に記載の水処理装置である。
【0091】
以上、本発明の実施形態について具体的に説明したが、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づく各種の変形が可能である。例えば、上述の実施形態において挙げた数値はあくまでも例に過ぎず、必要に応じてこれと異なる数値を用いてもよく、本実施形態による本発明の開示の一部をなす記述および図面により本発明は限定されることはない。
【0092】
上述した第1~第4の実施形態において凝集剤として用いる薬剤は、シリカ含有水に添加することによって凝集沈殿を生じさせる凝集剤と、この凝集剤によって凝集沈殿されたシリカと、を含み、シリカ含有水に凝集剤を添加して凝集沈殿した凝集沈殿汚泥からなる薬剤である。ここで、シリカ含有水に添加することによって凝集沈殿を生じさせる凝集剤は、アルミニウム塩から構成される。
【0093】
また、上述した第1および第2の実施形態において凝集剤として用いる薬剤は、シリカ含有水に凝集剤を添加する工程と、シリカ含有水に含まれるシリカを凝集沈殿させて凝集沈殿汚泥を生成する工程と、含む製造方法によって製造可能である。この際、シリカ含有水のpHを8以上12以下に調整することが好ましい。
【符号の説明】
【0094】
1,2,3,4 水処理システム
5 スラッジ
10,110 受入槽
20 第1反応槽
21,31,121 攪拌部
25 薬注装置
30 第2反応槽
40 沈殿槽
50,130 pH調整槽
60,140 ろ過処理部
71,72,151,152 シリカ濃度計
80,160 ポンプ
90,170 脱水機
120 反応槽
180 汚泥貯留槽
【要約】
【課題】シリカ含有水を処理する際に、添加する凝集剤の使用量を低減すること。
【解決手段】シリカを含む被処理水からシリカを除去する水処理装置であって、被処理水を貯留し、被処理水に含まれるシリカと薬剤とを反応させる反応部と、反応部に設けられ、シリカを凝集可能なアルミニウム塩からなる凝集剤を添加する凝集剤添加部と、被処理水の流れ方向に沿って反応部の下流側に設けられ、反応部において反応したシリカと薬剤とが凝集して凝集沈殿汚泥として沈殿する沈殿部と、沈殿部において沈殿した凝集沈殿汚泥を、薬剤として反応部に投入する汚泥輸送部と、を備える。
【選択図】図1
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