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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-21
(45)【発行日】2022-03-02
(54)【発明の名称】風車設備および風車ブレード
(51)【国際特許分類】
   F03D 80/00 20160101AFI20220222BHJP
   F03D 3/06 20060101ALI20220222BHJP
【FI】
F03D80/00
F03D3/06 G
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020138598
(22)【出願日】2020-08-19
【審査請求日】2021-08-11
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】318001968
【氏名又は名称】株式会社OKYA
(72)【発明者】
【氏名】菅野優
【審査官】所村 陽一
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2010-0032268(KR,A)
【文献】特開2003-172245(JP,A)
【文献】特開2008-115781(JP,A)
【文献】特開2013-160158(JP,A)
【文献】国際公開第2005/095793(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F03D 80/00
F03D 3/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸1が水平で、かつ風向と交差する位置関係にあり、その回転軸まわりには少なくともひとつのブレード2が具備されそのブレードは、回転軸より上側では風上から風下に向かって回転する風車設備であって、ブレードの回転軸寄りの面の一部あるいは全てが回転軸側に所定の範囲で自由開閉できるフタ4が具備されており、風車が静止状態、あるいは回転速度が小さいときには回転軸より上部にあるブレードのフタが自重でストッパの位置まで開いて受風面となり起動トルクを発生させ、回転軸より下部にあるブレードのフタは自重で閉じてフタが開いている状態より受風面積が小さくなり、向かい風の抵抗を減じ、回転速度が大きいときには遠心力と進行風圧によりフタがブレード側に閉じて回転の空気抵抗を抑制することを特徴とする風車ブレードとその風車設備。
【請求項2】
前記風車設備を、係留型浮体上に積載した浮体式風車設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、風車用ブレード及びこれを備えた風車に関する。
【背景技術】
【0002】
風を受けて動力を得る風車としては、例えばプロペラ型風車に代表される水平軸風車と、ダリウス型風車やジャイロミル風車などがある垂直軸風車が挙げられる。それぞれ回転軸と、回転軸の周囲に具備された1枚または複数のブレードを有している。
【0003】
風車のブレードの種類については、風によりブレードに発生する揚力を利用して回転する揚力型と、ブレードを風が押す力を利用して回転する抗力型とに分類される。
【0004】
ブレードに発生する揚力を利用する垂直軸風車は、回転トルクが得にくく起動性に乏しい。一方、ブレードへの抗力を利用する垂直軸風車は、弱い風でも起動するものの、ブレードの回転が風速と同程度までしか上がらないためエネルギー効率が悪い。そのため揚力型風車を抗力型風車と組み合わせて利用することが多い。起動性は向上するものの、風車が回転し始めると抗力型風車部が回転の抵抗となり、回転効率を低下させてしまう。
【0005】
風車の性能を特徴づける重要な特性係数のひとつにソリディティ(solidity)がある。ソリディティは「風車の掃過面積に対するロータ・ブレードの全投影面積の比」として定義される。ただし、ここでの投影面積は風向に垂直な面への投影を意味している。
【0006】
一般に抗力型風車は揚力型風車よりソリディティが大きいためブレードに発生するトルクが揚力型風車よりも大きい。静止状態から弱風の起動性も抗力型風車の方が良い。しかし風車に作用する風速以上の周速度で回転することができない。
【0007】
一方で揚力型風車はソリディティは小さいものの、ブレードに生じる揚力を利用するため、風速の数倍以上の高い周速比で回転することが可能である。したがって得られるエネルギー効率は揚力型風車の方が抗力型風車よりも高い。ところが、例えば揚力型風車に属する垂直型のダリウス形風車は起動性に乏しいというデメリットがある。抗力型風車のサボニウス形と組み合わせるなどの工夫をされることが多い(特許文献1)。
【0008】
垂直軸風車において、揚力型風車部と抗力型風車部を回転軸の上下に配置し、機械的に連結したり解除する方法が提案されている(特許文献2)。
【0009】
垂直軸風車であるサボニウス形風車の改良として、受風面を縦長の複数の羽に分割し、各々の羽がその縦辺の一方に回転軸を有し、受風面の回転進行方向うしろ側において自由に開閉でき、受風面が追い風の場合は各々の羽が閉まり風を受け、向かい風の場合は各々の羽が開くことで風の抵抗を減じる方法が提案されている(特許文献3)。抗力型風車は、受風面は風速より速くは動けないため、大きなエネルギー効率を得ることはできない。
【0010】
特許文献3の提案に揚力型風車翼を組み合わせた提案がされている(特許文献4)。高速回転風域では、前記縦型翼は風向によらず開放状態となる。しかし、前記縦型翼はわずかながらでも回転の抵抗となりエネルギー効率を低減させてしまう。
【0011】
拡縮可能な受風体を、同受風体を両側から支持する向き合う梁が各々の回転軸との接合部において鋭角であって、回転軸に対して鉛直下側では支持梁が平行となり、上側では受風面を最大に広がることができる風力回転装置の技術が記載されている(特許文献5)。水上浮体構造物上に設置する例示がされているが、浮体構造物が外乱により動揺、または傾斜すると鉛直上部受風面が受風面積最大とはならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】特開昭56-143367号公報
【文献】特開2016-205255
【文献】特開2012-017729
【文献】特開2015-7417
【文献】韓国登録特許第10-1034924号報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、起動性に優れ、かつエネルギー効率が高い風車を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
風車は回転軸を水平、かつ風向と交差する構成とし、例えば直線翼垂直軸風車を横に倒した形とする。
【0015】
風車の回転方向は、回転軸の上側ではブレードは風上から風下へ、下側ではブレードは風下から風上へ向かう形で用いる。
【0016】
風車ブレードには、ブレードの回転内側、つまり回転軸側の面に、回転軸の方に自由開閉可能なフタを設ける。例えばフタを支軸を利用して開閉する形体においてはフタ開閉の支軸が回転進行側、自由側が回転後方側とする。フタの開き角度は所望の範囲で制約する。
【0017】
風車は静止状態か低い回転速度の状態では、回転軸より上側のブレードのフタは自重により制限された範囲内で下側に開き、開いたフタは受風面となり風車の起動トルクを発生させる。
【0018】
風車は静止状態か回転速度が小さいときにブレードが回転軸より下側にある状態では、フタは自重および風に押されて閉じる。
【0019】
風車の回転速度が十分に大きくなると、ブレードのフタは開くことがなくなる。フタに働く遠心力およびブレードが回転する進行風圧によりブレードに押し付けられるためである。
【発明の効果】
【0020】
本発明によると、風車の静止状態、あるいは回転数が低い状態では、ブレードが回転軸より上側に位置する場合、ブレードの回転軸側にあるフタは自重により垂れ下がり開く。フタの開き角度はストッパーで制限され、フタが受風面となりソリディティが大きくなり風車の機動性が向上する。一方で、ブレードが回転軸よりも下側に位置する場合、フタは自重または風を受けてブレード側に閉じる。ブレードが向かい風側に運動する際は受風面が小さくなる。
【0021】
風車の回転数が十分に大きくなると、受ける遠心力と回転の進行風とにより、回転軸との位置関係によらずブレードのフタは常にブレード側に閉じた状態となる。ソリディティが小さくブレードは揚力を発生させ続けるため高速回転できエネルギー効率が良くなる。
【0022】
浮体構造物上に設置した風車は風や水面の波による外乱の影響で動揺する。例えば図7は風車が風上側あるいは風下側に傾斜している状態を示している。ブレードに具備されたフタの開閉は自重と進行風圧により発生するため、風車の傾斜状態に影響されず鉛直方向上下の位置関係によって機能する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の第1の実施形態であって、風車が静止、または低速度回転域であり、回転軸より上にあるブレードであって、回転内側面の支軸からブレード風下側のフタが自重で開いている状態を回転軸側から見た斜視図
図2】本発明の第1の実施形態であって、風車が高速度回転域であって、回転軸より上にあるブレードの回転内側面のフタがブレード側に閉じている状態を回転軸側から見た斜視図
図3】本発明の第1の実施形態であって、風車が静止、または低速度回転域であって、回転軸より上にあるブレードの回転内側面のフタが自重で開き、ストッパーの位置まで下がっていて、回転軸より下にあるブレードのフタは自重により閉じている状態の模式的構成例の側面図。
図4】本発明の第1の実施形態であって、風車が回転軸を中心に図中時計回りに高速度で回転しており、すべてのブレードの回転内側面のフタが閉じている状態の模式的構成例の側面図。分かり易いようにフタがブレードからわずかに離れて示しているが、実運用時はブレードと一体化して回転の抵抗にならない状態となる。
図5】本発明の第1の実施形態であって、水上の浮体上に、フタ付きブレードを適用した風車を積載した状態を示す模式的構成例の斜視図。
図6】本発明の第2の実施形態であって、回転テーブル上に、フタ付きブレードを適用した風車を積載した状態を示す模式的構成例の斜視図。
図7】本発明の風車部分が風上側、または風下側に傾斜した際の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
(第1の実施の形態)
図1、2は本発明のブレードとフタの開閉状態について示す。
【0025】
本発明の風車設備に適用されるブレード2は、翼型形状をしている。開いたフタ4aは支軸7でブレードと連結されており、自由開閉ができる。支軸7のブレード上の位置は自由であり、ブレードの前縁部に近くてもよく、後縁部に近くてもよい。支軸7のブレード上の位置は、回転軸の反対側である回転外側にあることも含まれる。フタの自由端の位置も自由であり、ブレード後縁部でもよく、後縁部と支軸の間の任意の位置でよい。支軸とフタの自由端までの長さが長いほど受風部として用される面積が大きくなる。
【0026】
フタのブレード長さ方向に対する長さは、全長に渡って一枚でもよく、複数枚に分割しても、断続的に配置してもよい。
【0027】
フタが閉じた状態では、空気抵抗を生じさせないように凹凸が極力ないこととする。
【0028】
フタが閉じた状態では、フタの表面はブレード全体の翼型プロファイルの一部となる形状となることが望ましい。
【0029】
図3、4は本発明の第1の実施形態の構成を表す。
【0030】
本発明の風車設備に適用されるブレード2は、風車の回転軸1の周囲にアーム3を介してひとつ、または複数のブレードが等間隔に敷設される。回転軸は水平に、かつ風31の風向と交差する位置関係にある。ブレードの前縁部は、ブレードが回転の上部にあるとき風下を向くようにする。ブレードの回転軸寄りの面には、回転軸と平行な向きの軸を支軸とし、回転軸寄りに自由開閉するフタ4(開いた状態のフタは4a)が取り付けられている。フタは閉じた状態ではブレードと一体化し、開いた状態では最大開き角度はストッパー5までとなる。風車が回転すると回転軸に接続された発電機15で電気を発生する。
【0031】
ストッパーは例えばアーム3に取り付けてよい。フタとブレードをワイヤでつなぎ、フタの最大開き角度を制限する方法でもよい。ストッパーなどでフタの最大開き角度を制限することで、適切な受風面を得られる。
【0032】
図3は本実施例1の風が弱く風車が停止している、または回転速度が小さい場合の側面図を示している。回転軸より上にあるブレードのフタは自重で開く。最大開き角度はストッパーの位置で制限する。フタが開いていない状態と比較して、フタが開く分受風面積が増えるためソリディティが大きくなり、風車回転の起動トルクが増大する。
【0033】
回転軸より下に位置するブレードのフタは自重によりブレード側に閉じる。フタが開いている状態より受風面積が小さくなるため、ブレードが風上側に戻る際の風の抵抗を小さくすることができる。
【0034】
図4は風速が十分に大きい場合の状態を示す。風車の遠心力と回転の進行風によりブレードのフタはブレードに押し付けられ、位置にかかわらず常に閉じた状態となる。すなわちソリディティが小さくなる。垂直軸抗力型風車にみられるような受風部の風の抵抗による回転速度の制約を排除することができる。
【0035】
図5は本発明の第1の実施形態を浮体構造物に設置した状態を表す。
【0036】
風車は回転軸の両端を支柱13で支持され、浮体11に接続される。浮体は本実施形態では2体から構成される双胴船としており、2体の浮体は連結架台12で連結されて風車設備を構成している。風車設備は係留索14で海底や周囲構造物、船舶等に係留され、風で吹き流されることで、常に風車回転軸と風向が交差する位置関係となる。
【0037】
風車が回転すると、回転軸1と連結した発電機15を回して電気を発生する。また風車の回転は直接動力として利用してもよい。
【0038】
前記発電機で発電された電気は、浮体内に積載された蓄電池に貯められ浮体に積載した機器の駆動に使用されたり、周囲の水を電気分解して水素を発生させタンクに貯留したり、電線を通じて外部に供給することができる。
【0039】
図7は本発明の実施例1を浮体構造物に載せた状態で、浮体構造物が風向に前後に動揺している状態を表す。浮体構造物が動揺すると支柱13が傾斜する。しかし風車とその回転軸の姿勢は風向に対して変化することがない。また風車設備の掃過面積も変化することがない。
【0040】
(第2の実施形態)
図6は本発明の第2の実施形態の全体構成を表す。
【0041】
本実施形態の風車設備に適用されるブレード2は、風車の回転軸1の周囲に風車ホイール6を介して複数のブレードが等間隔に敷設される。回転軸は水平に、かつ風31の風向と交差する位置関係にある。ブレードの前縁部は、ブレードが回転の上部にあるとき風下を向くようにする。ブレードの回転軸寄りの面には、回転軸と平行な向きの開閉軸を支点とし、回転軸寄りに自由開閉するフタ4(開いた状態のフタは4a)が取り付けられている。フタは閉じた状態ではブレードと一体化し、開いた状態では最大開き角度は風車ホイール上に取り付けられたストッパー5までとなる。風車が回転すると風車ホイールが発電機ホイールを回し、発電機ホイールに接続された発電機15で電気を発生する。
【0042】
風車は回転軸の両端を軸受け21を介して支柱13で支持され、風車架台22に固定されて風車設備を構成している。風車設備は尾羽24が敷設されることで、常に風車回転軸と風向が交差する位置関係となる。風車ホイールは発電機ホイールの回転中心とずれた位置にあり、風車架台の回転中心は発電機ホイールの回転中心と同軸上にあるため、風向が変化し、風車設備の向きが変わっても発電機は位置固定のまま発電できる。
【0043】
前記発電機で発生した電気は、蓄電池に貯留して独立電源として利用したり、配線系統に接続して広域に利用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明の風車設備および風車ブレードは、浮体式洋上風力発電設備において、浮体が動揺しても風車の回転軸と風向との交差関係が変わらない水平横軸風車に利用されていく可能性がある。
【符号の説明】
【0045】
1 回転軸
2 ブレード
3 アーム
4 フタ
4a 開いたフタ
4b 閉じたフタ
5 ストッパー
6 風車ホイール
7 フタ支軸
11 浮体
12 連結架台
13 支柱
14 係留索
15 発電機
21 軸受け
22 風車架台回転テーブル
23 発電機ホイール
24 尾羽
31 風
41 風向に対し前傾した本発明設備の風車部
42 風向に対し基準位置の本発明設備の風車部
43 風向に対し後傾した本発明設備の風車部
【要約】
【課題】風車が静止、または低速回転時の起動トルクを得やすく、また高速回転時のブレードの空気抵抗を抑制することで高いエネルギー効率を得ることができる風車ブレードおよび風車設備を提供する。
【解決手段】回転軸1が水平で、かつ風向と交差する位置関係にある風車設備であって、そのブレード2は、回転軸より上側では風上から風下に向かって回転し、ブレードの回転軸寄りの面にある支軸から回転進行方向後ろ側が回転軸側にストッパー5まで自由開閉できるフタ4が具備されており、風車の回転速度が小さいときには回転軸より上部にあるブレードのフタが開いて受風面となり起動トルクを発生させ、回転軸より下部にあるブレードのフタが閉じて回転の空気抵抗を減じ、回転速度が大きいときには遠心力および回転進行風により閉じて空気抵抗を抑制する。
【選択図】図5
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7