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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-21
(45)【発行日】2022-03-02
(54)【発明の名称】水性カルボジイミド含有液の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08G 18/79 20060101AFI20220222BHJP
   C08G 18/80 20060101ALI20220222BHJP
   C08G 18/28 20060101ALI20220222BHJP
【FI】
C08G18/79 070
C08G18/80 064
C08G18/28 015
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2018031209
(22)【出願日】2018-02-23
(65)【公開番号】P2019143108
(43)【公開日】2019-08-29
【審査請求日】2020-12-14
(73)【特許権者】
【識別番号】309012122
【氏名又は名称】日清紡ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100131635
【弁理士】
【氏名又は名称】有永 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100113561
【弁理士】
【氏名又は名称】石村 理恵
(72)【発明者】
【氏名】飯塚 俊輔
(72)【発明者】
【氏名】柳沢 健一
【審査官】小森 勇
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-182990(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 18/00-18/87
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
イソシアネート基含有カルボジイミド(A)、末端封止剤、並びに、有機チタン化合物、有機ジルコニウム化合物及び有機アルミニウム化合物から選ばれる1種以上の有機金属化合物を混合して反応させて、前記イソシアネート基が前記末端封止剤により封止された末端封止カルボジイミド(B)を得る工程(1)と、
前記末端封止カルボジイミド(B)を水性溶媒に溶解又は分散し、水性カルボジイミド含有液を得る工程(2)とを有し、
前記末端封止剤が、イソシアネート基との反応性を有する官能基、及び前記官能基以外の親水基を有する親水性化合物(X)を含む、水性カルボジイミド含有液の製造方法。
【請求項2】
前記有機金属化合物の添加量が、前記イソシアネート基含有カルボジイミド(A)100質量部に対して、含有金属元素量換算で0.0005~15質量部である、請求項1に記載の水性カルボジイミド含有液の製造方法。
【請求項3】
前記工程(1)において、前記イソシアネート基含有カルボジイミド(A)に代えて、ポリイソシアネート及びカルボジイミド化触媒を用い
前記カルボジイミド化触媒が有機リン化合物であり、
前記ポリイソシアネート及び前記カルボジイミド化触媒を混合して反応させた後、前記末端封止剤及び前記有機金属化合物を添加混合する、請求項1に記載の水性カルボジイミド含有液の製造方法。
【請求項4】
前記ポリイソシアネートが、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、2,2-ビス(4-イソシアナトシクロヘキシル)プロパン、イソホロンジイソシアネート、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、1,3-ビス(2-イソシアナト-2-プロピル)ベンゼン、トルエン-2,4-ジイソシアネート、2,2’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4,6-トリイソプロピルベンゼン-1,3-ジイルジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、ビフェニル-2,4,4’-トリイソシアネート、及び1,6,11-ウンデカントリイソシアネートから選ばれる1種以上である、請求項3記載の水性カルボジイミド含有液の製造方法。
【請求項5】
前記有機金属化合物の添加量が、前記ポリイソシアネート100質量部に対して、含有金属元素量換算で0.0005~15質量部である、請求項3又は4に記載の水性カルボジイミド含有液の製造方法。
【請求項6】
前記末端封止カルボジイミド(B)は、末端イソシアネート基のすべてが前記親水性化合物(X)で封止されている、請求項1~のいずれか1項に記載の水性カルボジイミド含有液の製造方法。
【請求項7】
前記末端封止カルボジイミド(B)は、1分子中の末端イソシアネート基の1つ以上が前記親水性化合物(X)で封止され、かつ、1つ以上の残りのイソシアネート基が前記親水性化合物(X)以外で封止されているものを含む、請求項1~のいずれか1項に記載の水性カルボジイミド含有液の製造方法。
【請求項8】
前記有機金属化合物が、下記一般式(1-1)~(1-3)のいずれかで表される金属アルコキシドである、請求項1~のいずれか1項に記載の水性カルボジイミド含有液の製造方法。
Ti(OR)4 (1-1)
Zr(OR)4 (1-2)
Al(OR)3 (1-3)
(式(1-1)~(1-3)中、Rは、それぞれ独立に、炭素数1~20のアルキル基である。)
【請求項9】
前記親水性化合物(X)が、ポリアルキレングリコールモノヒドロカルビルエーテルである、請求項1~のいずれか1項に記載の水性カルボジイミド含有液の製造方法。
【請求項10】
前記工程(1)における反応温度が20~200℃である、請求項1~のいずれか1項に記載の水性カルボジイミド含有液の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水性の塗料やインキ等の水性樹脂の架橋剤として好適に用いることができる水性カルボジイミドの含有液の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
水溶性又は水分散性を有する水性樹脂は、環境面や安全面の点で取り扱い性に優れていることから、塗料やインキ、繊維処理剤、接着剤、コーティング剤等の各種用途で用いられている。水性樹脂は、樹脂自体に水溶性又は水分散性を付与するために、水酸基やカルボキシ基等の親水基が導入されている。それゆえに、水性樹脂は、油性樹脂に比べて、耐水性や耐久性の点で劣る傾向にある。
このため、水性樹脂の耐水性や耐久性、強度等の諸物性を向上させるために、該水性樹脂には、架橋剤が添加される。
【0003】
このような架橋剤の1つとして、カルボジイミド化合物が知られている。例えば、特許文献1及び2には、ポリカルボジイミド架橋剤を、アルカリ金属又はアルカリ土類金属のアルコラート(アルコキシド)の存在下で、水酸基又はメルカプト基を有する化合物と反応させることにより、カルボジイミド基による架橋反応が促進されることが記載されている。
また、特許文献3及び4には、加水分解し難い架橋剤として、チタンアルコキシドやチタンキレート化合物と、アミン化合物と、グリコール化合物とからなる水性チタン組成物が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平9-221532号公報
【文献】特開平9-216931号公報
【文献】特開2004-256505号公報
【文献】特開2009-132762号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1及び2では、ポリカルボジイミド架橋剤として水性カルボジイミドは用いられていない。また、金属アルコキシドの金属としてアルカリ金属又はアルカリ土類金属が用いられており、これらは加水分解しやすく、反応系が強アルカリ性となり、取り扱い時の安全性の点で好ましくない。このため、特許文献1及び2に記載されているような方法による架橋は、水性樹脂に適しているとは言い難い。
【0006】
一方、上記特許文献3及び4に記載されている水性チタン組成物は、アミン化合物を必須成分としており、カルボジイミド化合物を成分として含むものではない。カルボジイミド基含有成分を該水性チタン組成物と混合すると、アミンとカルボジイミド基とが容易に反応し、架橋反応性官能基(架橋性基)が減少してしまう。
【0007】
また、従来の水性カルボジイミドは、アルコール性水酸基との反応性が低いため、アルコール性水酸基の含有割合が多い水性樹脂に対しては、架橋反応が十分に進行しないという課題があった。
【0008】
このような状況の下、本発明者らは、水性カルボジイミドの架橋反応性を向上させるべく検討を重ねた結果、水性カルボジイミドを製造する際に、所定の有機金属化合物を添加することにより、架橋反応性に優れた水性カルボジイミドを得られることを見出した。
【0009】
本発明は、このような知見に基づいてなされたものであり、水性樹脂のアルコール性水酸基等の架橋性基との架橋反応性に優れた水性カルボジイミドの含有液の製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、水性カルボジイミドを製造する際に、所定の有機金属化合物を添加することが、水性樹脂のアルコール性水酸基等の架橋性基と良好な反応性を有する水性カルボジイミドを得る上で有効であることを見出したことに基づくものである。
【0011】
すなわち、本発明は、以下の[1]~[15]を提供する。
[1]イソシアネート基含有カルボジイミド(A)、末端封止剤、並びに、有機チタン化合物、有機ジルコニウム化合物及び有機アルミニウム化合物から選ばれる1種以上の有機金属化合物を混合して反応させて、前記イソシアネート基が前記末端封止剤により封止された末端封止カルボジイミド(B)を得る工程(1)と、前記末端封止カルボジイミド(B)を水性溶媒に溶解又は分散し、水性カルボジイミド含有液を得る工程(2)とを有し、前記末端封止剤が、イソシアネート基との反応性を有する官能基、及び前記官能基以外の親水基を有する親水性化合物(X)を含む、水性カルボジイミド含有液の製造方法。
[2]前記有機金属化合物の添加量が、前記イソシアネート基含有カルボジイミド(A)100質量部に対して、含有金属元素量換算で0.0005~15質量部である、上記[1]に記載の水性カルボジイミド含有液の製造方法。
【0012】
[3]前記工程(1)において、前記イソシアネート基含有カルボジイミド(A)に代えて、ポリイソシアネート及びカルボジイミド化触媒を用いる、上記[1]に記載の水性カルボジイミド含有液の製造方法。
[4]前記ポリイソシアネート及び前記カルボジイミド化触媒を混合して反応させた後、前記末端封止剤及び前記有機金属化合物を添加混合する、上記[3]に記載の水性カルボジイミド含有液の製造方法。
[5]前記ポリイソシアネート、前記カルボジイミド化触媒及び前記有機金属化合物を混合して反応させた後、前記末端封止剤を添加混合する、上記[3]に記載の水性カルボジイミド含有液の製造方法。
[6]前記ポリイソシアネート、前記カルボジイミド化触媒、前記末端封止剤及び前記有機金属化合物を同時に混合して反応させる、上記[3]に記載の水性カルボジイミド含有液の製造方法。
[7]前記ポリイソシアネート、前記末端封止剤及び前記有機金属化合物を混合して反応させた後、前記カルボジイミド化触媒を添加混合する、上記[3]に記載の水性カルボジイミド含有液の製造方法。
[8]前記ポリイソシアネート及び前記末端封止剤を混合して反応させた後、前記カルボジイミド化触媒及び前記有機金属化合物を添加混合する、上記[3]に記載の水性カルボジイミド含有液の製造方法。
[9]前記ポリイソシアネートが、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、2,2-ビス(4-イソシアナトシクロヘキシル)プロパン、イソホロンジイソシアネート、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、1,3-ビス(2-イソシアナト-2-プロピル)ベンゼン、トルエン-2,4-ジイソシアネート、2,2’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4,6-トリイソプロピルベンゼン-1,3-ジイルジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、ビフェニル-2,4,4’-トリイソシアネート、及び1,6,11-ウンデカントリイソシアネートから選ばれる1種以上である、上記[3]~[8]のいずれか1項に記載の水性カルボジイミド含有液の製造方法。
[10]前記有機金属化合物の添加量が、前記ポリイソシアネート100質量部に対して、含有金属元素量換算で0.0005~15質量部である、上記[3]~[9]のいずれか1項に記載の水性カルボジイミド含有液の製造方法。
【0013】
[11]前記末端封止カルボジイミド(B)は、末端イソシアネート基のすべてが前記親水性化合物(X)で封止されている、上記[1]~[10]のいずれか1項に記載の水性カルボジイミド含有液の製造方法。
[12]前記末端封止カルボジイミド(B)は、1分子中の末端イソシアネート基の1つ以上が前記親水性化合物(X)で封止され、かつ、1つ以上の残りのイソシアネート基が前記親水性化合物(X)以外で封止されているものを含む、上記[1]~[10]のいずれか1項に記載の水性カルボジイミド含有液の製造方法。
[13]前記有機金属化合物が、下記一般式(1-1)~(1-3)のいずれかで表される金属アルコキシドである、上記[1]~[12]のいずれか1項に記載の水性カルボジイミド含有液の製造方法。
Ti(OR)4 (1-1)
Zr(OR)4 (1-2)
Al(OR)3 (1-3)
(式(1-1)~(1-3)中、Rは、それぞれ独立に、炭素数1~20のアルキル基である。)
[14]前記親水性化合物(X)が、ポリアルキレングリコールモノヒドロカルビルエーテルである、上記[1]~[13]のいずれか1項に記載の水性カルボジイミド含有液の製造方法。
[15]前記工程(1)における反応温度が20~200℃である、上記[1]~[14]のいずれか1項に記載の水性カルボジイミド含有液の製造方法。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、水性樹脂のアルコール性水酸基等の架橋性基との架橋反応性に優れた水性カルボジイミド含有液が得られる。
したがって、本発明の製造方法により得られた水性カルボジイミド含有液は、水性樹脂の架橋剤として好適に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の水性カルボジイミドの含有液の製造方法を詳細に説明する。
本発明の水性カルボジイミド含有液の製造方法は、イソシアネート基含有カルボジイミド(A)、末端封止剤、並びに、有機チタン化合物、有機ジルコニウム化合物及び有機アルミニウム化合物から選ばれる1種以上の有機金属化合物を混合して反応させて、前記イソシアネート基が前記末端封止剤により封止された末端封止カルボジイミド(B)を得る工程(1)と、前記末端封止カルボジイミド(B)を水性溶媒に溶解又は分散し、水性カルボジイミド含有液を得る工程(2)とを有している。そして、前記末端封止剤が、イソシアネート基との反応性を有する官能基、及び前記官能基以外の親水基を有する親水性化合物(X)を含むことを特徴としている。
前記有機金属化合物を用いることにより、親水性化合物(X)を含む末端封止剤による封止反応が促進され、水性溶媒に溶解又は分散した状態で、水性樹脂の架橋剤として好適な水性カルボジイミド含有液を得ることができる。
【0016】
[水性カルボジイミド]
本発明の水性カルボジイミドは、1個又は2個以上のカルボジイミド基を有する化合物であり、1種の化合物であっても、2種以上の化合物を含む混合物であってもよい。なお、カルボジイミドについての「重合度」とは、該カルボジイミド中の、ポリイソシアネート化合物の脱炭酸縮合反応に由来するカルボジイミド基の数を指す。前記重合度は、水性カルボジイミドを添加する水性樹脂に求められる諸特性に応じて適宜設定され、通常1~20であり、好ましくは2~15、より好ましくは3~10である。カルボジイミド基を2個以上有する化合物は、ポリカルボジイミドとも言う。
また、本発明で言う「水性」とは、水性溶媒に対する溶解性又は分散性を有していることを意味する。水性溶媒は、水、又は、アルコール類、エーテル類、ケトン類、エステル類等から選ばれる親水性溶剤、並びにこれらの混合溶剤を指す。
【0017】
[工程(1)]
工程(1)においては、イソシアネート基含有カルボジイミド(A)、末端封止剤、並びに、有機チタン化合物、有機ジルコニウム化合物及び有機アルミニウム化合物から選ばれる1種以上の有機金属化合物を混合して反応させて、前記イソシアネート基が前記末端封止剤により封止された末端封止カルボジイミド(B)を得る。すなわち、工程(1)は、イソシアネート基含有カルボジイミド(A)の末端封止工程である。
なお、工程(1)において混合される末端封止カルボジイミド(B)を得るための各反応原料は、それらの添加順序は問わず、同時添加でも、逐次添加でもよい。
【0018】
(イソシアネート基含有カルボジイミド(A))
本発明で言う「イソシアネート基含有カルボジイミド」とは、イソシアネート基及びカルボジイミド基を有する化合物である。イソシアネート基含有カルボジイミド(A)の1分子中のイソシアネート基の数は、1~3個であることが好ましく、より好ましくは1~2個である。また、イソシアネート基含有カルボジイミド(A)の1分子中のカルボジイミド基の数は、1~20個であることが好ましく、優れた架橋反応性を有する水性カルボジイミドを得る観点から、2~15個であることがより好ましく、さらに好ましくは3~10個である。
【0019】
イソシアネート基含有カルボジイミド(A)としては、例えば、ポリイソシアネートの脱炭酸縮合反応により得られた、末端にイソシアネート基を有するカルボジイミドを用いることができる。
【0020】
[工程(1A)~(1E)]
工程(1)においては、イソシアネート基含有カルボジイミド(A)に代えて、ポリイソシアネート及びカルボジイミド化触媒を用いてもよい。具体的には、工程(1)は、これに代えて、反応原料の添加混合順序に応じて、以下に示す工程(1A)~(1E)のいずれかにより行うことができる。
【0021】
<工程(1A)>
ポリイソシアネート及びカルボジイミド化触媒を混合して反応させた後、末端封止剤及び有機金属化合物を添加混合して、末端封止カルボジイミド(B)を得る。
<工程(1B)>
ポリイソシアネート、カルボジイミド化触媒及び有機金属化合物を混合して反応させた後、末端封止剤を添加混合して、末端封止カルボジイミド(B)を得る。
<工程(1C)>
ポリイソシアネート、カルボジイミド化触媒、末端封止剤及び有機金属化合物を同時に混合して反応させて、末端封止カルボジイミド(B)を得る。
<工程(1D)>
ポリイソシアネート、末端封止剤及び有機金属化合物を混合して反応させた後、カルボジイミド化触媒を添加混合して、末端封止カルボジイミド(B)を得る。
<工程(1E)>
ポリイソシアネート及び末端封止剤を混合して反応させた後、カルボジイミド化触媒及び有機金属化合物を添加混合して、末端封止カルボジイミド(B)を得る。
【0022】
工程(1A)~(1E)は、任意に選択することができるが、ポリイソシアネートのカルボジイミド化反応後に、有機金属化合物の存在下で末端封止反応を行う方が、末端封止カルボジイミド(B)の重合度や末端封止の制御等が容易である。また、末端封止反応を先に行う方が、反応時間が長くなる傾向にある。このため、製造効率化や反応安定性等の観点からは、工程(1D)及び(1E)よりも、工程(1A)及び(1B)の方が好ましい。
【0023】
(ポリイソシアネート)
ポリイソシアネートとは、イソシアネート基を2個以上有する化合物である。本発明で用いられるポリイソシアネートは、特に限定されるものではないが、一般的には、イソシアネート基を2個有するジイソシアネート、又は、3個有するトリイソシアネートが好適に用いられる。また、脂肪族(鎖状)ポリイソシアネート、脂環式ポリイソシアネート、芳香族ポリイソシアネート、又は複素環式ポリイソシアネートのいずれでもよく、これらのうち、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
具体的には、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、1,6,11-ウンデカントリイソシアネート等の脂肪族(鎖状)ポリイソシアネート;1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、2,2-ビス(4-イソシアナトシクロヘキシル)プロパン、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジイソシアネート等の脂環式ポリイソシアネート;1,3-ビス(2-イソシアナト-2-プロピル)ベンゼン等の芳香族環を含む脂肪族ポリイソシアネート;トルエン-2,4-ジイソシアネート、2,2’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4,6-トリイソプロピルベンゼン-1,3-ジイルジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、ビフェニル-2,4,4’-トリイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネート等が挙げられる。これらのうち、カルボジイミドの合成の容易さ、及び合成したカルボジイミドの保存安定性の観点から、ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジイソシアネート、1,3-ビス(2-イソシアナト-2-プロピル)ベンゼンが好適に用いられ、入手容易性等の観点から、ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジイソシアネートがより好適に用いられる。
【0024】
(カルボジイミド化触媒)
カルボジイミド化触媒は、ポリイソシアネートの脱炭酸縮合反応を促進する作用を有するものである。カルボジイミド化触媒としては、特に限定されるものではなく、公知のものを用いることができる。例えば、ホスホレン化合物やリン酸エステル化合物等の有機リン化合物、金属カルボニル錯体や金属アセチルアセトン錯体等の有機金属化合物等が挙げられる。具体的には、1-フェニル-2-ホスホレン-1-オキシド、3-メチル-2ホスホレン-1-オキシド、1-エチル-2-ホスホレン-1-オキシド、3-メチル-1-フェニル-2-ホスホレン-1-オキシド、及びこれらの3-ホスホレン異性体等が挙げられる。これらのうち、触媒活性やコスト等の観点から、3-メチル-1-フェニル-2-ホスホレン-1-オキシドが好適に用いられる。
【0025】
カルボジイミド化触媒の添加量は、カルボジイミド化反応を促進することができる程度の一般的な触媒量でよく、所望のカルボジイミドの重合度に応じて適宜調整される。通常、ポリイソシアネート100質量部に対して0.01~2.0質量部である。
【0026】
(末端封止剤)
末端封止剤は、イソシアネート基と反応して、カルボジイミドの末端イソシアネート基を封止する役割を担うものである。本発明で用いられる末端封止剤は、末端イソシアネート基を封止するため、イソシアネート基との反応性を有する官能基を有するとともに、該官能基以外の親水基を有する親水性化合物(X)を含むものである。このような親水基を有する親水性化合物(X)を含む末端封止剤は、前記親水基により、末端封止カルボジイミド(B)が水性となるような末端構造を付与することができる。
親水性化合物(X)は、1種単独であっても、2種以上の混合物であってもよい。
【0027】
末端封止剤は、カルボジイミドの末端イソシアネート基のすべてが封止される量を添加するものとし、その添加量は、工程(1)では、イソシアネート基含有カルボジイミド(A)のイソシアネート基1モルに対して、通常、1.0~1.5モル添加される。
また、工程(1A)~(1E)では、ポリイソシアネートのイソシアネート基の数やカルボジイミドの重合度等に応じて、末端封止剤の添加量は適宜調整される。
【0028】
末端封止カルボジイミド(B)が、良好な水溶性又は水分散性を有するものとなるようにするためには、その末端イソシアネート基のすべてが、親水性化合物(X)で封止されていることが好ましい。すなわち、末端封止剤は、親水性化合物(X)のみからなるものであることが好ましい。
【0029】
また、末端封止カルボジイミド(B)は、水性カルボジイミドとして得られる限り、その末端イソシアネート基のすべてが、親水性化合物(X)によって封止されていない態様であってもよく、1分子中の末端イソシアネート基の1つ以上が親水性化合物(X)で封止され、かつ、1つ以上の残りのイソシアネート基が親水性化合物(X)以外で封止されているものを含んでいてもよい。すなわち、末端封止剤は、親水性化合物(X)以外の、イソシアネート基を封止し得る官能基を有する化合物を含んでいてもよい。前記化合物は、末端封止カルボジイミド(B)が水性媒体中で強固なミセルを形成して、良好な水分散性を示すようにする観点から、例えば、イソシアネート基との反応性を有する官能基を除いて、親水基を有しない、分子量300以下の低分子化合物であることが好ましい。具体的には、前記化合物は、炭化水素化合物のモノアルコール、モノカルボン酸、モノアミン、モノイソシアネート等が好ましい。前記化合物の親水性の有無は問わない。
末端封止剤が親水性化合物(X)以外の化合物も含む場合、末端封止剤中の親水性化合物(X)の含有量は、末端封止カルボジイミド(B)が水性カルボジイミドとして得られる範囲内とし、末端封止剤100モル%中、50モル%以上であることが好ましく、より好ましくは80モル%以上、さらに好ましくは90モル%以上である。
なお、末端封止剤が2種以上の化合物の混合物である場合、これらの添加順序は問わず、同時添加でも、逐次添加でもよい。
【0030】
イソシアネート基との反応性を有する官能基としては、例えば、水酸基、カルボキシ基、アミノ基、イソシアネート基等が挙げられる。水酸基場合には、末端イソシアネート基がウレタン化されることにより末端封止される。カルボキシ基の場合には、末端イソシアネート基がアミド化されることにより末端封止される。アミノ基の場合には、末端イソシアネート基がウレア化されることにより末端封止される。イソシアネート基の場合には、末端イソシアネート基とのカルボジイミド化により末端封止される。
また、前記親水基は、イソシアネート基との反応性を有する官能基以外の基であり、例えば、ポリオキシアルキレン基等が挙げられる。
【0031】
親水性化合物(X)としては、下記一般式(2)で表されるようなポリアルキレングリコールモノヒドロカルビルエーテルが好ましい。
1(OCHR2CH2nOH (2)
前記式(2)中、R1は、炭素数1~4のアルキル基又はフェニル基であり、好ましくはメチル基又はエチル基、より好ましくはメチル基である。R2は、水素原子又は炭素数1~4のアルキル基であり、好ましくは水素原子又はメチル基であり、より好ましくは水素原子である。nは4~45、好ましくは5~30、より好ましくは6~15の整数である。
これらの中でも、ポリアルキレングリコールモノアルキルエーテルが好ましい。具体的には、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、ポリエチレングリコールモノエチルエーテル等が挙げられ、特に、ポリエチレングリコールモノメチルエーテルが好適に用いられる。
【0032】
(有機金属化合物)
有機金属化合物としては、有機チタン化合物、有機ジルコニウム化合物及び有機アルミニウム化合物から選ばれる1種以上が用いられる。これらのうち、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
前記有機金属化合物は、末端封止剤の親水性化合物(X)によるイソシアネート基の封止反応を促進する作用を有しており、特に、水酸基により末端封止する場合における反応促進作用が大きく、これにより、水性カルボジイミドが容易に得られるものと推測される。
また、工程(1A)~(1D)のように、有機金属化合物は、いずれの時期で添加した場合であっても、イソシアネート基の封止反応を促進することができる。
【0033】
前記有機金属化合物は、下記一般式(1-1)~(1-3)のいずれかで表される金属アルコキシドであることが好ましい。
Ti(OR)4 (1-1)
Zr(OR)4 (1-2)
Al(OR)3 (1-3)
式(1-1)~(1-3)中、Rは、それぞれ独立に、炭素数1~20のアルキル基であり、好ましくは、炭素数2以上、より好ましくは炭素数3以上のアルキル基である。4つのRは、同一であっても、異なっていてもよい。
具体的には、テトライソプロピルチタネート、テトライソプロピルジルコネート、テトラノルマルブチルチタネート、テトラノルマルブチルジルコネート、テトラオクチルチタネート、テトラオクチルジルコネート、テトラステアリルチタネート、テトラステアリルジルコネート、アルミニウムトリ-sec-ブトキシド等が挙げられる。
【0034】
工程(1)でイソシアネート基含有カルボジイミド(A)と混合される有機金属化合物の添加量は、水性カルボジイミド含有液が白濁することなく、水性樹脂のアルコール性水酸基等の架橋性基との良好な架橋反応性を有するものとする観点から、イソシアネート基含有カルボジイミド(A)100質量部に対して、含有金属元素量換算で0.0005~15質量部であることが好ましく、より好ましくは0.0008~12質量部、さらに好ましくは0.001~10質量部である。
【0035】
前記有機金属化合物が、工程(1A)~(1E)のいずれかで添加される場合、その添加量は、ポリイソシアネート100質量部に対して、含有金属元素量換算で0.0005~15質量部であることが好ましく、より好ましくは0.0008~12質量部、さらに好ましくは0.001~10質量部である。
【0036】
(反応温度)
末端封止カルボジイミド(B)を得るための反応温度は、末端封止剤によるイソシアネート基の封止反応を安定的に進行させる観点から、20~200℃であることが好ましく、より好ましくは20~190℃である。さらに、反応促進の観点からは、60~180℃であることが好ましい。
なお、工程(1)における反応系は、無溶媒であっても、溶媒中であってもよい。無溶媒の場合には、イソシアネート基含有カルボジイミド(A)を溶融させて反応を行う。また、溶媒を用いる場合は、イソシアネート基含有カルボジイミド(A)を溶解することができる溶媒を用いることが好ましい。
また、工程(1A)~(1E)の場合も、反応系は、無溶媒であっても、溶媒中であってもよい。溶媒を用いる場合は、ポリイソシアネート化合物を溶解することができる溶媒を用いることが好ましい。
【0037】
[工程(2)]
工程(2)では、前記工程(1)、又は、工程(1A)~(1E)のいずれかで得られた末端封止カルボジイミド(B)を水性溶媒に溶解又は分散し、水性カルボジイミド含有液を得る。
水性カルボジイミド含有液の濃度は、特に限定されるものではなく、水性カルボジイミドの使用用途に応じて適宜調整される。通常、10~70質量%であり、好ましくは15~60質量%、より好ましくは20~50質量%である。
【実施例
【0038】
以下、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明はこれにより限定されるものではない。
下記実施例及び比較例の水性カルボジイミド含有液の製造原料の詳細は以下のとおりである。
<ポリイソシアネート>
・HMDI:4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート
・TMXDI:1,3-ビス(2-イソシアナト-2-プロピル)ベンゼン(別名:テトラメチルキシレンジイソシアネート)
<末端封止剤>
・MPEG(400):ポリエチレングリコールモノメチルエーテル(質量平均分子量400)
・MPEG(410):ポリエチレングリコールモノメチルエーテル(質量平均分子量410)
・MPEG(550):ポリエチレングリコールモノメチルエーテル(質量平均分子量550)
・AA:N,N-ジエチルイソプロパノールアミン(分子量131)
なお、各MPEGの質量平均分子量は、カタログ値による。前記質量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC法)によって測定することもできる。
<カルボジイミド化触媒>
・3-メチル-1-フェニル-2-ホスホレン-1-オキシド
<有機金属化合物>
・T1:テトラオクチルチタネート(分子量564)
・T2:テトライソプロピルチタネート(分子量284)
・T3:テトラステアリルチタネート(分子量1126)
・Z1:テトラノルマルブチルジルコネート(分子量383)
・A1:アルミニウムトリ-sec-ブトキシド(分子量246)
【0039】
なお、カルボジイミドの重合度は、封止する前の末端イソシアネート基量を以下のようにして測定し、この末端イソシアネート基量から算出した。
末端イソシアネート基を封止する前のカルボジイミドに、既知濃度のジノルマルブチルアミンのトルエン溶液を混合して、前記末端イソシアネート基とジノルマルブチルアミンとを反応させた。残存するジノルマルブチルアミンを塩酸標準液で中和滴定し、電位差滴定法(使用装置:自動滴定装置「COM-900」、平沼産業株式会社製)によりイソシアネート基の残存量[質量%](末端イソシアネート基量)を算出した。
【0040】
(実施例1)
・工程(1)(工程(1A)):ポリイソシアネートとしてHMDI 1000g、及びカルボジイミド化触媒5gを還流管及び撹拌機付き反応容器に入れ、窒素雰囲気下、190℃で8時間撹拌し(1A-1)、イソシアネート基含有カルボジイミド(A)(重合度3)を得た。赤外吸収(IR)スペクトル測定(赤外分光光度計「FT/IR-6100」、日本分光株式会社製;以下、同様。)により、波長2150cm-1前後のカルボジイミド基による吸収ピークを確認した。
上記で得られたイソシアネート基含有カルボジイミド(A)875gを150℃で溶融させ、末端封止剤としてMPEG(400) 770g(イソシアネート基含有カルボジイミド(A)のイソシアネート基1モルに対して1.01モル相当)及び有機金属化合物としてT1 1.4g(イソシアネート基含有カルボジイミド(A)(使用ポリイソシアネート)100質量部に対して含有金属元素換算で0.014質量部)を添加し、180℃まで加熱して撹拌しながら1時間反応させた(1A-2)。得られた反応生成物について、IRスペクトル測定により波長2200~2300cm-1のイソシアネート基の吸収が消失したことを確認し、末端封止カルボジイミド(B)を得た。
・工程(2):得られた末端封止カルボジイミド(B)を70℃まで冷却し、水を投入して撹拌混合し、濃度40質量%の水性カルボジイミド含有液を得た。
【0041】
(実施例2~11)
実施例1において、ポリイソシアネート、重合度、末端封止剤、及び有機金属化合物の添加条件を、下記表1に示すように変更し、それ以外は実施例1と同様にして、水性カルボジイミド含有液を得た。
【0042】
(実施例12)
・工程(1B):実施例1の工程(1)において、ポリイソシアネート(HMDI)、カルボジイミド化触媒、及び有機金属化合物(T1)を190℃で8時間反応させた後(1B-1)、末端封止剤(MPEG(400))を添加混合し、180℃で1時間反応させ(1B-2)、それ以外は実施例1と同様にして、末端封止カルボジイミド(B)を得た。
・工程(2):得られた末端封止カルボジイミド(B)について、実施例1の工程(2)と同様にして、水性カルボジイミド含有液を得た。
【0043】
(実施例13)
・工程(1C):ポリイソシアネートとしてHMDI 1000g、カルボジイミド化触媒5g、末端封止剤としてMPEG(400) 770g、及び有機金属化合物としてT1 1.6g(ポリイソシアネート100質量部に対して含有金属元素換算で0.014質量部)を還流管及び撹拌機付き反応容器に入れ、窒素雰囲気下、190℃で撹拌しながら12時間反応させた。得られた反応生成物について、IRスペクトル測定により波長2200~2300cm-1のイソシアネート基の吸収が消失したことを確認し、末端封止カルボジイミド(B)を得た。
・工程(2):得られた末端封止カルボジイミド(B)について、実施例1の工程(2)と同様にして、水性カルボジイミド含有液を得た。
【0044】
(実施例14)
・工程(1D):実施例1の工程(1)において、ポリイソシアネート(HMDI)、末端封止剤(MPEG(400))、及び有機金属化合物(T1)を180℃で1時間反応させた後(1D-1)、カルボジイミド化触媒を添加混合し、190℃で12時間反応させ(1D-2)、それ以外は実施例1と同様にして、末端封止カルボジイミド(B)を得た。
・工程(2):得られた末端封止カルボジイミド(B)について、実施例1の工程(2)と同様にして、水性カルボジイミド含有液を得た。
【0045】
(実施例15)
・工程(1E):実施例1の工程(1)において、ポリイソシアネート(HMDI)、及び末端封止剤(MPEG(400))を180℃で3時間反応させた後(1E-1)、カルボジイミド化触媒、及び有機金属化合物(T1)を添加混合し、190℃で12時間反応させ(1E-2)、それ以外は実施例1と同様にして、末端封止カルボジイミド(B)を得た。
・工程(2):得られた末端封止カルボジイミド(B)について、実施例1の工程(2)と同様にして、水性カルボジイミド含有液を得た。
【0046】
(実施例16)
・工程(1A):ポリイソシアネートとしてHMDI 1000g、及びカルボジイミド化触媒5gを還流管及び撹拌機付き反応容器に入れ、窒素雰囲気下、190℃で17時間撹拌し(1A-1)、イソシアネート基含有カルボジイミド(A)(重合度6)を得た。IRスペクトル測定により、波長2150cm-1前後のカルボジイミド基による吸収ピークを確認した。
上記で得られたイソシアネート基含有カルボジイミド(A)856gを150℃で溶融させ、末端封止剤としてMPEG(400)218g及びAA72g(イソシアネート基含有カルボジイミド(A)のイソシアネート基1モルに対して、それぞれ0.5モル相当)、並びに有機金属化合物としてT1 1.4g(イソシアネート基含有カルボジイミド(A)(使用ポリイソシアネート)100質量部に対して含有金属元素換算で0.014質量部)を添加し、180℃まで加熱して撹拌しながら1時間反応させた(1A-2)。得られた反応生成物について、IRスペクトル測定により波長2200~2300cm-1のイソシアネート基の吸収が消失したことを確認し、末端封止カルボジイミド(B)を得た。
・工程(2):得られた末端封止カルボジイミド(B)について、実施例1の工程(2)と同様にして、水性カルボジイミド含有液を得た。
【0047】
(比較例1)
実施例1において、有機金属化合物を添加せずに、それ以外は実施例1と同様にして水性カルボジイミド含有液を得た。
【0048】
(比較例2)
実施例10において、有機金属化合物を添加せずに、それ以外は実施例10と同様にして水性カルボジイミド含有液を得た。
【0049】
(比較例3)
実施例1において、有機金属化合物の添加時期を工程(2)に変更し、それ以外は実施例1と同様にして、水性カルボジイミド含有液を得た。
【0050】
(比較例4)
実施例13において、有機金属化合物の添加時期を工程(2)に変更し、それ以外は実施例13と同様にして水性カルボジイミド含有液を得た。
【0051】
[水性カルボジイミド含有液の評価]
上記実施例及び比較例で得られた各水性カルボジイミド含有液について、以下のようにして、アルコール性水酸基との反応性を評価した。評価結果を下記表1に示す。
実施例及び比較例で得られた水性カルボジイミド含有液100gに、アルコール性水酸基を有する化合物としてMPEG(400)を、水性カルボジイミドのカルボジイミド基に対して同モル当量加え、還流管及び撹拌機付き反応容器に入れ、120℃で90分撹拌した。得られた反応生成物のIRスペクトル測定において、カルボジイミド基由来の2150cm-1のピークが減少し、カルボジイミド基とアルコール性水酸基との反応により生じるイソウレア構造由来の1660cm-1のピークが、反応前のピーク高さに比べて50%以上増加したものを、アルコール性水酸基との反応性「有」と判定した。
【0052】
【表1】
【0053】
表1の評価結果から分かるように、本発明の製造方法によれば、アルコール性水酸基(架橋性基)との反応性に優れた水性カルボジイミドを得ることができる。
このことから、本発明の製造方法により得られた水性カルボジイミドは、水性樹脂の架橋剤としても好適に適用し得るものであると言える。