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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-21
(45)【発行日】2022-03-02
(54)【発明の名称】路面成型補助部材、及び、路面成型方法
(51)【国際特許分類】
   E01C 7/26 20060101AFI20220222BHJP
   E01C 7/10 20060101ALI20220222BHJP
   E01C 7/18 20060101ALI20220222BHJP
【FI】
E01C7/26
E01C7/10
E01C7/18
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021184452
(22)【出願日】2021-11-12
【審査請求日】2021-11-12
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】520110250
【氏名又は名称】PUMP MAN株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100176256
【弁理士】
【氏名又は名称】相田 隆敬
(72)【発明者】
【氏名】小澤 辰矢
【審査官】柿原 巧弥
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-132302(JP,A)
【文献】特開2004-169375(JP,A)
【文献】特開平07-158076(JP,A)
【文献】特開2016-132891(JP,A)
【文献】特開2012-067589(JP,A)
【文献】特開2014-211056(JP,A)
【文献】特開2012-082684(JP,A)
【文献】特開2007-169940(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0368866(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01C 7/26
E01C 7/10
E01C 7/18
E01C 11/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
路面の成型時に使用される路面成型補助部材であって、
可撓性を有する素材で形成された複数の連通管が網状に配置され、前記網状に配置された複数の連通管の複数の交差部に複数の第1の貫通孔がそれぞれ形成された本体部と、
前記複数の第1の貫通孔にそれぞれ連通する複数の第2の貫通孔を有し、前記本体部からそれぞれ突出した複数の筒状部と、
各連通管の下端部から当該連通管の外側に向けて略水平方向に延出したリブ部と、
を備え、
前記網状に配置された複数の連通管間には空間が設けられており、
前記複数の筒状部は、前記本体部が載置面上に載置された状態で上方に向けて突出しており、
前記載置面上に載置された前記本体部上の前記第2の貫通孔以外の部分にコンクリート、モルタル、セメント、又は、アスファルトが打ち込まれることで、前記第2の貫通孔、前記第1の貫通孔及び前記連通管により排水路が形成されることを特徴とする路面成型補助部材。
【請求項2】
各連通管は、下部が開放された凹形状を有していることを特徴とする請求項1に記載の路面成型補助部材。
【請求項3】
複数の連通管上には棒状の補強部材を掛け渡して載置可能であり、前記連通管上の前記補強部材が載置されるべき位置には、前記補強部材を保持するための保持溝が形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の路面成型補助部材。
【請求項4】
前記本体部の端部には、接続部が形成されており、一の前記本体部の端部に形成された接続部と他の前記本体部の端部に形成された接続部とは互いに接続可能であり、
前記一の本体部に形成された連通管は、前記接続部同士が接続された際に、前記他の本体部に形成された連通管又は第1の貫通孔と連通する位置に形成されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の路面成型補助部材。
【請求項5】
可撓性を有する素材で形成された複数の連通管が網状に配置され、前記網状に配置された複数の連通管の複数の交差部に複数の第1の貫通孔がそれぞれ形成された本体部と、前記複数の第1の貫通孔にそれぞれ連通する複数の第2の貫通孔を有し、前記本体部からそれぞれ突出した複数の筒状部と、各連通管の下端部から当該連通管の外側に向けて略水平方向に延出したリブ部と、を有し、前記網状に配置された複数の連通管間には空間が設けられており、前記複数の筒状部は、前記本体部が載置面上に載置された状態で上方に向けて突出している路面成型補助部材を用いた路面成型方法であって、
前記複数の筒状部が上方になるように前記路面成型補助部材を載置面上に載置する工程と、
前記本体部上の前記第2の貫通孔以外の部分にコンクリート、モルタル、セメント、又は、アスファルトを打ち込む工程と、
を備えたことを特徴とする路面成型方法。
【請求項6】
前記コンクリート、モルタル、セメント、又は、アスファルトを打ち込む工程の前に、各筒状部内に前記コンクリート、モルタル、セメント、又は、アスファルトが侵入することを防止するための第1の蓋部材を各筒状部に取り付ける工程と、
前記コンクリート、モルタル、セメント、又は、アスファルトを打ち込む工程の後に、各筒状部に取り付けられた前記第1の蓋部材を取り外す工程と、
を更に備えたことを特徴とする請求項5に記載の路面成型方法。
【請求項7】
前記第1の蓋部材は、前記筒状部の第2の貫通孔に挿入される挿入部と、前記挿入部の上部から上方かつ外側に向けて広がる面取り形成部と、を有していることを特徴とする請求項6に記載の路面形成方法。
【請求項8】
各筒状部に取り付けられた前記第1の蓋部材を取り外す工程の後に、前記筒状部の第2の貫通孔に挿入される筒状の挿入部と、前記第2の貫通孔よりも小さな径を有する第3の貫通孔が形成された天面部と、を有する第2の蓋部材を各筒状部に取り付ける工程を更に備えたことを特徴とする請求項6又は7に記載の路面形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地表水を適切に排水及び貯水することのできる路面を容易に成型することが可能な路面成型補助部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、底板部8に孔部14が形成され、孔部14の上方側が肉薄部19によって塞がれた排水口ユニット7において、肉薄部19の空隙20から透水した水分が、孔部14を介して下部へ排出される技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、一般的に、コンクリート等で路面を成型する際には、路面上に降雨等の地表水による水溜まりができてしまうことを防止するために、路面に水勾配を設けている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2012-172506号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、水勾配によって地表水の排水を行う場合、所定の場所(河川等)に排水が集中してしまい、河川の氾濫等の環境問題が生じるおそれがある。
【0006】
また、コンクリート等で路面を成型した場合、路面の下方にある地中に地表水がしみ込まないため、地中の水分不足による地盤沈下等の環境問題が生じるおそれもある。
【0007】
更に、上記した環境問題とは別に、コンクリート路面を水平にしたいという要望もあり、その場合には、排水性(水溜まりの防止)と(路面の)水平性という相反する要素を両立させる技術が必要となる。
【0008】
特許文献1では、底板部8がポーラスコンクリートで形成されていることが必須になってしまう上に、そもそも排水口ユニットに関するものであるため、コンクリート等を打ち込んで路面を成型する際に使用できるものではない。
【0009】
そこで、本発明は、地表水を適切に排水及び貯水することのできる路面を容易に成型することが可能な路面成型補助部材を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、路面の成型時に使用される路面成型補助部材であって、可撓性を有する素材で形成された複数の連通管が網状に配置され、前記網の複数の網目に複数の第1の貫通孔がそれぞれ形成された本体部と、前記複数の第1の貫通孔にそれぞれ連通する複数の第2の貫通孔を有し、前記本体部からそれぞれ突出した複数の筒状部と、を備え、前記網状に配置された複数の連通管間には空間が設けられており、前記複数の筒状部は、前記本体部が載置面上に載置された状態で上方に向けて突出しており、前記載置面上に載置された前記本体部上の前記第2の貫通孔以外の部分にコンクリート、モルタル、セメント、又は、アスファルトが打ち込まれることで、前記第2の貫通孔、前記第1の貫通孔及び前記連通管により排水路が形成されることを特徴とする路面成型補助部材を提供している。
【0011】
このような構成によれば、本体部上の第2の貫通孔以外の部分にコンクリート等の路面成型材料を打ち込むことで、筒状部(第2の貫通孔)及び第1の貫通孔により排水路が形成された路面が成型され、路面上の地表水は、この排水路を介して載置面に排水される。これにより、路面の下方にある地中に地表水がしみ込むこととなり、地中の水分不足により地盤沈下等の環境問題が生じることが抑制される。この際、空間の存在により、可撓性を有する本体部は、不陸に応じて容易に撓むことが可能であるため、不陸の影響により本体部(特に連通管)の強度が低下し、排水路としての機能が損なわれることが抑制される。また、路面成型補助部材を用いることで、排水のための水勾配を設ける必要がなくなるので、水平な路面を成型することが可能となる。これにより、地表水が所定の場所に集中して排水されることが防止されるので、河川の氾濫等の環境問題が生じることも抑制されると共に、路面を水平にしたいという要望に応えることも可能となる。また、コンクリート等は、本体部上に打ち込まれるので、本体部の分までコンクリート等の強度を増加させることができる。従って、本体部として、厚みの大きいものを採用すれば、より強度を増加させることが可能となる。また、複数の第1の貫通孔間が連通管により連通されているので、一の第1の貫通孔や第2の貫通孔が外部からの粉塵等によって目詰まりしたとしても、他の第1の貫通孔や第2の貫通孔から排水が行われるので、排水機能が損なわれることが抑制される。また、地表水は、連通管により本体部全体に分散されるので、地表水を地中に満遍なくしみ込ませることが可能となる。更に、地中の水量が多い場合には、連通管と載置面との間に貯水されるので、地中の水量が自動的に調節される。
【0012】
また、各連通管は、下部が開放された凹形状を有していることが好ましい。
【0013】
このような構成によれば、下部が開放された凹形状は不陸に応じて容易に変形することができるので、不陸の影響により連通管の強度が低下し、排水路としての機能が損なわれることが更に抑制される。
【0014】
また、各連通管の下端部から当該連通管の外側に向けて略水平方向に延出したリブ部を更に備えたことが好ましい。
【0015】
このような構成によれば、リブ部が載置面に当接するので、コンクリート等の路面形成材料が空間から連通管内に流れ込むことが抑制される。
【0016】
また、複数の連通管上には棒状の補強部材を掛け渡して載置可能であり、前記連通管上の前記補強部材が載置されるべき位置には、前記補強部材を保持するための保持溝が形成されていることが好ましい。
【0017】
このような構成によれば、補強部材を載置する位置を測定したり、補強部材を別途固定する労力が不要となる。
【0018】
また、前記本体部の端部には、接続部が形成されており、一の前記本体部の端部に形成された接続部と他の前記本体部の端部に形成された接続部とは互いに接続可能であり、前記一の本体部に形成された連通管は、前記接続部同士が接続された際に、前記他の本体部に形成された連通管又は第1の貫通孔と連通する位置に形成されていることが好ましい。
【0019】
このような構成によれば、広い範囲に渡って路面成型補助部材を載置することができるので、多くの地表水を貯水することが可能となると共に、広い範囲に渡って地表水を地中に満遍なくしみ込ませることが可能となる。
【0020】
また、本発明の別の観点によれば、可撓性を有する素材で形成された複数の連通管が網状に配置され、前記網の複数の網目に複数の第1の貫通孔がそれぞれ形成された本体部と、前記複数の第1の貫通孔にそれぞれ連通する複数の第2の貫通孔を有し、前記本体部からそれぞれ突出した複数の筒状部と、を有し、前記網状に配置された複数の連通管間には空間が設けられており、前記複数の筒状部は、前記本体部が載置面上に載置された状態で上方に向けて突出している路面成型補助部材を用いた路面成型方法であって、前記複数の筒状部が上方になるように前記路面成型補助部材を載置面上に載置する工程と、前記本体部上の前記第2の貫通孔以外の部分にコンクリート、モルタル、セメント、又は、アスファルトを打ち込む工程と、を備えたことを特徴とする路面成型方法を提供している。
【0021】
このような構成によれば、地表水を適切に排水及び貯水することのできる路面を容易に成型することが可能となる。
【0022】
また、前記コンクリート、モルタル、セメント、又は、アスファルトを打ち込む工程の前に、各筒状部内に前記コンクリート、モルタル、セメント、又は、アスファルトが侵入することを防止するための第1の蓋部材を各筒状部に取り付ける工程と、前記コンクリート、モルタル、セメント、又は、アスファルトを打ち込む工程の後に、各筒状部に取り付けられた前記第1の蓋部材を取り外す工程と、を更に備えたことが好ましい。
【0023】
このような構成によれば、路面に排水路を確実に形成することが可能となる。
【0024】
また、前記第1の蓋部材は、前記筒状部の第2の貫通孔に挿入される挿入部と、前記挿入部の上部から上方かつ外側に向けて広がる面取り形成部と、を有していることが好ましい。
【0025】
このような構成によれば、筒状部に隣接する位置に打ち込まれたコンクリート等は、破損しやすい直角ではなく、面取り形成部の形状に沿った(面取りされた)状態で成型されることになり、これにより、筒状部に隣接する位置で成型されたコンクリート等が破損することが抑制される。
【0026】
また、各筒状部に取り付けられた前記第1の蓋部材を取り外す工程の後に、前記筒状部の第2の貫通孔に挿入される筒状の挿入部と、前記第2の貫通孔よりも小さな径を有する第3の貫通孔が形成された天面部と、を有する第2の蓋部材を各筒状部に取り付ける工程を更に備えたことが好ましい。
【0027】
このような構成によれば、地表水以外の物が第2の貫通孔内に落下することが抑制される。
【発明の効果】
【0028】
本発明の路面成型補助部材によれば、地表水を適切に排水及び貯水することのできる路面を容易に成型することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本発明の実施の形態による路面成型補助部材の使用状態の説明図
図2】本発明の実施の形態による路面成型補助部材の平面図
図3】本発明の実施の形態による本体部(連通管)の部分側面図
図4】本発明の実施の形態による本体部の接続の説明図
図5】本発明の実施の形態による第1の蓋部材の説明図
図6】本発明の実施の形態による第2の蓋部材の上面図
図7】本発明の実施の形態による路面成型方法のフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の実施の形態による路面成型補助部材1及び路面成型方法について、図1図7を参照して説明する。
【0031】
路面成型補助部材1は、コンクリート、モルタル、セメント、又は、アスファルトによる路面成型時に使用されるものであって、図1及び図2に示すように、本体部2と、複数の筒状部3と、を備えている。以下では、コンクリート、モルタル、セメント、又は、アスファルトを路面成型材料と称す。
【0032】
本体部2は、載置面上に載置されるものであり、図1では、本体部2が、地面Xに敷かれた砕石Y(“載置面”に相当)上に載置された例が示されている。本体部2の素材としては、可撓性を有するものが好ましく、樹脂や生分解性プラスチック等が考えられる。但し、路面成型材料としてアスファルトを用いる場合には、耐熱性の素材を用いることが好ましい。
【0033】
図2に示すように、本体部2は、可撓性を有する素材で形成された複数の連通管21が網状に配置されたものであり、当該網の複数の網目には、複数の第1の貫通孔22がそれぞれ形成されている。網状に配置された複数の連通管21間には空間Sが設けられている。
【0034】
本実施の形態では、図2に示すように、複数の連通管21は、格子形状を有するように配置されており、複数の第1の貫通孔22は、上下方向(図2におけす紙面方向)に貫通しており、複数の連通管21全体で、上面23と下面24を有する略平板形状(シート形状)を有している。
【0035】
また、図1及び図3に示すように、各連通管21は、下部が開放された凹形状を有している。後述するように、連通管21と載置面との間には貯水が可能であるが、本実施の形態では、複数の連通管21全体で10リットル以上の貯水が可能となるように連通管21のサイズ、本数等が設定されている。
【0036】
本体部2は、図2及び図3に示すように、各連通管21の下端部から当該連通管21の外側に向けて略水平方向に延出したリブ部25を備えている。リブ部25は、略水平方向に延出しているので、本体部2が載置面(地面Xに敷かれた砕石Y)に載置された際に、載置面(地面Xに敷かれた砕石Y)に当接することとなる。
【0037】
また、空間Sは、リブ部25の端部によって画定されることとなる。本実施の形態では、空間Sは、上下方向から見て略四角形状に画定されている(図2では、煩雑化を防ぐために中心部にのみリブ部25を示している)。
【0038】
なお、後述するように、本体部2上には、コンクリート、モルタル、セメント、又は、アスファルト等の路面成型材料が打ち込まれるが、これらの路面成型材料は、空間Sを介して載置面(地面Xに敷かれた砕石Y)と一体に硬化されるので、空間Sは、路面成型材料が通過可能なサイズであることが好ましい。
【0039】
この空間Sのサイズは、使用する路面成型材料に応じて設計することが考えられる。例えば、路面成型材料として生コンクリートを使用する場合、生コンクリートに使用する砂利の大きさは、「最大寸法40mm」「最大寸法20mm(25mm)」の2種類に大きく分けられる。40mmの砂利は、土木工事で多く使用され、20mm(25mm)の砂利は、建築工事で多く使用される。
【0040】
従って、生コンクリートを使用する場合には、空間Sは、砂利が通過可能なサイズであることが好ましい。例えば、20mmの砂利を使用し、対向する連通管21の端部間の距離が40mmの場合には、図3に示すように、各リブ部25の延出距離は、10mm未満となるように設定することが考えられる。
【0041】
複数の連通管21上には鉄筋等の棒状の補強部材を掛け渡して載置可能であり、連通管21上の補強部材が載置されるべき位置には、補強部材を保持するための保持溝26が形成されている(図2では、煩雑化を防ぐために一部にのみ保持溝26を示している)。
【0042】
本体部2の端部には、図2に示すように、接続部27が形成されており、図4に示すように、一の本体部2Aの端部に形成された接続部27と他の本体部2Bの端部に形成された接続部27とは、互いに接続可能であり、一の本体部2Aの連通管21は、接続部27同士が接続された際に、他の本体部2Bの連通管21と連通する位置に形成されている。
【0043】
接続部27は、本体部2の各辺に設けられ、四方に所望の数だけ他の本体部2(路面成型補助部材1)と接続可能であることが好ましい。接続部27の接続方式としては、様々なものが考えらえるが、後述する不陸にも対応可能なように、接続部27は、本体部2同士が接続された際に多少の遊びを有するように設計されていることが好ましい。
【0044】
複数の筒状部3は、図1及び図2に示すように、複数の第1の貫通孔22にそれぞれ連通する複数の第2の貫通孔31を有し、本体部2(上面23)からそれぞれ突出している。複数の筒状部3は、本体部2が載置面上に載置された状態で上方に向けて突出している。筒状部3の素材としては、本体部2と同様に、可撓性を有するものが好ましく、樹脂や生分解性プラスチック等が考えられる。但し、路面成型材料としてアスファルトを用いる場合には、耐熱性の素材を用いることが好ましい。
【0045】
また、上記したように、複数の連通管21上には鉄筋等の補強部材を掛け渡して載置可能であるが、筒状部3の高さは、補強部材の直径よりも高いことが好ましい。保持溝26が形成されている場合には、筒状部3の高さは、(補強部材の直径-保持溝25の深さ)よりも高ければ良い。
【0046】
上記構成の下、本体部2上の第2の貫通孔31以外の部分に(図1では、筒状部3の先端付近まで)路面成型材料(図1では、コンクリートZ)を打ち込むことで、排水路(第2の貫通孔31及び第1の貫通孔22)が形成された路面が成型され、路面上の地表水は、この排水路を介して載置面(砕石Y及び地面X)に排水される。
【0047】
これにより、路面の下方にある地中に地表水がしみ込むこととなり、地中の水分不足による地盤沈下等の環境問題が生じることが抑制される。また、路面成型補助部材1を用いることで、排水のための水勾配を設ける必要がなくなるので、水平な路面を成型することが可能となる。これにより、地表水が所定の場所に集中して排水されることが防止されるので、河川の氾濫等の環境問題が生じることが抑制されると共に、路面を水平にしたいという要望に応えることも可能となる。
【0048】
また、本実施の形態では、第1の貫通孔22間が連通管21により連通されている。これにより、一の第1の貫通孔22や第2の貫通孔31が外部からの粉塵等によって目詰まりしたとしても、他の第1の貫通孔22や第2の貫通孔31から排水が行われるので、排水機能が損なわれることが抑制される。また、地表水は、連通管21により本体部2全体及び周囲に分散されるので、地表水を地中に満遍なくしみ込ませることが可能となる。更に、地中の水量が多い場合には、連通管21と載置面との間に貯水されるので、地中の水量が自動的に調節される。
【0049】
ところで、地面Xに敷かれた砕石Y等の載置面には、多少なりとも不陸が生じる。そのため、その載置面上に載置された路面成型補助部材1上にコンクリートZ等が打ち込まれると、本体部2は、不陸により歪んだ状態や負荷が強くかけられた状態で周りをコンクリートZ等で固められてしまうこととなり、本体部2の強度が低下してしまうおそれがある。
【0050】
しかしながら、本実施の形態では、網状に配置された複数の連通管21間には空間Sが設けられており、この空間Sの存在により、可撓性を有する連通管21は、不陸に応じて容易に撓むことが可能である。従って、不陸の影響により連通管21の強度が低下し、排水路としての機能が損なわれることが抑制される。更には、各連通管21は、不陸に応じて容易に変形することのできる下部が開放された凹形状を有しているので、これによっても、連通管21の強度が低下し、排水路としての機能が損なわれることが抑制される。
【0051】
一方、上記したように、連通管21は、下部が開放された凹形状を有しており、連通管21間には空間Sが設けられているため、コンクリート等の路面成型材料が打ち込まれた際に、路面成型材料は空間Sから連通管21内に流れ込んでしまい、排水路としての機能が損なわれてしまうおそれがある。
【0052】
しかしながら、本実施の形態では、リブ部25が、各連通管21の下端部から当該連通管21の外側に向けて略水平方向に延出しており、このリブ部25が載置面(地面Xに敷かれた砕石Y)に当接するので、路面成型材料が空間Sから連通管21内に流れ込むことが抑制されている。
【0053】
なお、路面成型材料は、図5に示すように、筒状部3の第2の貫通孔31の上端に打設用の第1の蓋部材4が取り付けられた(嵌め込まれた)状態で打ち込まれることが好ましい。
【0054】
第1の蓋部材4は、図5に示すように、筒状部3の第2の貫通孔31に挿入される第1の挿入部41と、第1の挿入部41の上部から上方かつ外側に向けて広がる面取り形成部42と、を有している。図5では、第1の挿入部41は、第2の貫通孔31と略同一の径を有する円柱形状を有している。また、面取り形成部42は、円錐台形状を有しており、その上底が第1の挿入部41の上部に取り付けられた構造を有している。
【0055】
また、第1の蓋部材4を取り外した後、仕上用の第2の蓋部材5を筒状部3の第2の貫通孔31に挿入し、その状態で路面の完成とすることが好ましい。
【0056】
第2の蓋部材5は、図6に示すように、筒状部3の第2の貫通孔31に挿入される筒状の第2の挿入部51と、第2の貫通孔31よりも小さな径を有する第3の貫通孔52が形成された天面部53と、を備えている。これにより、地表水以外の物が第2の貫通孔31内に落下することを抑制しつつ、第3の貫通孔52及び第2の挿入部51を介して筒状部3の第2の貫通孔31内に地表水が流れ込むこととなる。第3の貫通孔52としては、状況に応じて(ハイヒールを履いた人が多く通る場所、小銭を落としやすい場所等)、適当なサイズ及び形状(網状等)のものを用いれば良い。
【0057】
続いて、図7のフローチャートを用いて、路面成型補助部材1を用いた路面成型方法について説明する。
【0058】
まず、複数の筒状部3が上方となるように路面成型補助部材1を載置面上に載置する(S1)。
【0059】
続いて、各筒状部3に第1の蓋部材4を取り付ける(S2)。
【0060】
続いて、本体部2上の筒状部3の第2の貫通孔31以外の部分にコンクリート等の路面成型材料を打ち込む(S3)。この工程では、第1の蓋部材4の面取り形成部42の全体は埋まらない程度の量の路面成型材料を打ち込むことが好ましい。
【0061】
続いて、各筒状部3に取り付けられた第1の蓋部材4を取り外す(S4)。なお、第1の蓋部材4は、路面成型材料が完全に硬化していなくても、形状が崩れない程度に硬化していれば、取り外し可能である。
【0062】
最後に、各筒状部3に第2の蓋部材5を取り付けて(S5)、路面の完成とする。
【0063】
これにより、筒状部3が路面から突出しない安全性の高い路面が成型されることとなる。
【0064】
なお、第1の蓋部材4の面取り形成部42は、第1の挿入部41の上部から上方かつ外側に向けて広がっているので、筒状部3に隣接する位置に打ち込まれたコンクリート等の路面成型材料は、破損しやすい直角ではなく、面取り形成部42の形状に沿った(面取りされた)状態で成型されることとなり、これにより、仮に第2の蓋部材5を各筒状部3に取り付けなかったとしても、筒状部3に隣接する位置で成型された路面成型材料が破損することが抑制される。
【0065】
以上説明したように、本実施の形態による路面成型補助部材1では、複数の筒状部3が本体部2(網状に配置された複数の連通管21)に連通していると共に、網状に配置された複数の連通管21間には空間Sが設けられている。
【0066】
このような構成によれば、本体部2上の第2の貫通孔31以外の部分にコンクリート等の路面成型材料を打ち込むことで、筒状部3(第2の貫通孔31)及び第1の貫通孔22により排水路が形成された路面が成型され、路面上の地表水は、この排水路を介して載置面に排水される。これにより、路面の下方にある地中に地表水がしみ込むこととなり、地中の水分不足により地盤沈下等の環境問題が生じることが抑制される。この際、空間Sの存在により、可撓性を有する本体部2は、不陸に応じて容易に撓むことが可能であるため、不陸の影響により本体部2(特に連通管21)の強度が低下し、排水路としての機能が損なわれることが抑制される。また、路面成型補助部材1を用いることで、排水のための水勾配を設ける必要がなくなるので、水平な路面を成型することが可能となる。これにより、地表水が所定の場所に集中して排水されることが防止されるので、河川の氾濫等の環境問題が生じることも抑制されると共に、路面を水平にしたいという要望に応えることも可能となる。また、コンクリート等は、本体部2上に打ち込まれるので、本体部2の分までコンクリート等の強度を増加させることができる。従って、本体部2として、厚みの大きいものを採用すれば、より強度を増加させることが可能となる。また、複数の第1の貫通孔22間が連通管21により連通されているので、一の第1の貫通孔22や第2の貫通孔31が外部からの粉塵等によって目詰まりしたとしても、他の第1の貫通孔22や第2の貫通孔31から排水が行われるので、排水機能が損なわれることが抑制される。また、地表水は、連通管21により本体部2全体に分散されるので、地表水を地中に満遍なくしみ込ませることが可能となる。更に、地中の水量が多い場合には、連通管21と載置面との間に貯水されるので、地中の水量が自動的に調節される。
【0067】
また、本実施の形態による路面成型補助部材1では、各連通管21が、下部が開放された凹形状を有している。
【0068】
このような構成によれば、下部が開放された凹形状は不陸に応じて容易に変形することができるので、不陸の影響により連通管21の強度が低下し、排水路としての機能が損なわれることが更に抑制される。
【0069】
また、本実施の形態による路面成型補助部材1では、各連通管21の下端部から外側に向けて略水平方向に延出したリブ部25を備えている。
【0070】
このような構成によれば、リブ部25が載置面(地面Xに敷かれた砕石Y)に当接するので、コンクリート等の路面形成材料が空間Sから連通管21内に流れ込むことが抑制される。
【0071】
また、本実施の形態による路面成型補助部材1では、複数の連通管21上には鉄筋等の棒状の補強部材を掛け渡して載置可能であり、連通管21上の補強部材が載置されるべき位置には、補強部材を保持するための保持溝26が形成されている
【0072】
このような構成によれば、補強部材を載置する位置を測定したり、補強部材を別途固定する労力が不要となる。
【0073】
また、本実施の形態による路面成型補助部材1では、本体部2の端部には、接続部27が形成されており、一の本体部2Aに形成された連通管21は、接続部27同士が接続された際に、他の本体部2Bに形成された連通管21又は第1の貫通孔22に連通する位置に形成されている。
【0074】
このような構成によれば、広い範囲に渡って路面成型補助部材1を載置することができるので、多くの地表水を貯水することが可能となると共に、広い範囲に渡って地表水を地中に満遍なくしみ込ませることが可能となる。
【0075】
また、本実施の形態による路面成型補助部材1を用いた路面成型方法では、路面成型補助部材1を載置した上で、本体部2上の第2の貫通孔31以外の部分にコンクリート等の路面形成材料を打ち込む。
【0076】
このような構成によれば、地表水を適切に排水及び貯水することのできる路面を容易に成型することが可能となる。
【0077】
また、本実施の形態による路面成型補助部材1を用いた路面成型方法では、路面形成材料を打ち込む工程の前に、各筒状部3に第1の蓋部材4を取り付ける。
【0078】
このような構成によれば、路面に排水路を確実に形成することが可能となる。
【0079】
また、本実施の形態による路面成型補助部材1を用いた路面成型方法では、第1の蓋部材4は、第1の挿入部41の上部から上方かつ外側に向けて広がる面取り形成部42を有している。
【0080】
このような構成によれば、筒状部3に隣接する位置に打ち込まれたコンクリート等は、破損しやすい直角ではなく、面取り形成部42の形状に沿った(面取りされた)状態で成型されることになり、これにより、筒状部3に隣接する位置で成型されたコンクリート等が破損することが抑制される。
【0081】
また、本実施の形態による路面成型補助部材1を用いた路面成型方法では、各筒状部3に第1の蓋部材4を取り外す工程の後に、各筒状部3に第2の蓋部材5を取り付ける。
【0082】
このような構成によれば、地表水以外の物が第2の貫通孔内に落下することが抑制される。
【0083】
尚、本発明の路面成型補助部材、及び、路面成型方法は、上述した実施の形態に限定されず、特許請求の範囲に記載した範囲で種々の変形や改良が可能である。
【0084】
例えば、上記実施の形態では、連通管21は、矩形の本体部2の辺に平行に延びる格子を形成していたが、斜め等の他の方向に延びる格子を形成しても良い。また、連通管21は、必ずしも格子を形成する必要もなく、網状であれば様々なパターンで形成することができる。
【0085】
また、上記実施の形態では、鉄筋等の補強部材は、連通管21と略平行に連通管21上に載置されたが、連通管21に対して斜め(約45度等)に載置しても良い。この場合、補強部材が載置されるべき位置(保持溝26)が多くなるので、補強部材を、より確実に支持することが可能となる。
【0086】
また、上記実施の形態では、連通管21として、凹状溝を例に説明したが、筒状等の他の構造を用いても良い。筒状の場合には、下部に排水孔が形成されていることが好ましい。
【0087】
また、上記実施の形態では、本体部2は、地面Xに敷かれた砕石Y(“載置面”に相当)上に載置されたが、地面Xに直接載置されても良く、この場合には、地面Xが“載置面”に相当することとなる。
【0088】
また、上記実施の形態では、本体部2及び筒状部3に、可撓性を有する素材が用いられたが、不陸の影響を抑制するためには、少なくとも、連通管21に可撓性を有する素材が用いられていれば良い。また、可撓性を有するのであれば、樹脂に限らず、金属等を用いても良い。
【0089】
また、本発明の“可撓性”とは、大きく撓むことに限定されず、不陸の影響により本体部2(連通管21)の強度が低下することを抑制する程度のものであっても良い。
【符号の説明】
【0090】
1 路面成型補助部材
2 本体部
3 筒状部
4 第1の蓋部材
5 第2の蓋部材
21 連通管
22 第1の貫通孔
23 上面
24 下面
25 リブ部
26 保持溝
27 接続部
31 第2の貫通孔
41 第1の挿入部
42 面取り形成部
51 第2の挿入部
52 第3の貫通孔
53 天面部
S 空間
X 地面
Y 砕石
Z コンクリート
【要約】
【課題】 地表水を適切に排水及び貯水することのできる路面を容易に成型することが可能な路面成型補助部材を提供する。
【解決手段】 路面成型補助部材1は、可撓性を有する素材で形成された複数の連通管21が網状に配置され、網の複数の網目に複数の第1の貫通孔22がそれぞれ形成された本体部2と、複数の第1の貫通孔22にそれぞれ連通する複数の第2の貫通孔31を有し、本体部2からそれぞれ突出した複数の筒状部3と、を備えている。網状に配置された複数の連通管21間には空間Sが設けられており、複数の筒状部3は、本体部2が載置面上に載置された状態で上方に向けて突出している。載置面上に載置された本体部2上の第2の貫通孔31以外の部分にコンクリート等が打ち込まれることで、第2の貫通孔31、第1の貫通孔22及び連通管21により排水路が形成される。
【選択図】図2
図1
図2
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図7